JP3252725B2 - 耐錫剥離性に優れた錫めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

耐錫剥離性に優れた錫めっき鋼板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、各種の食品や飲料
等の充填保存に適した溶接缶用の錫めっき鋼板の製造法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】飲料缶や食缶の分野において溶接缶は大
きな比率を占めており、その材料コストの削減は産業上
の重要な課題であるといえる。飲料缶や食缶の分野で用
いられる缶材料としてはブリキ、LTS(薄目付ぶり
き)、TFS(ティンフリースチール)等が一般的であ
り、最近ではこれらに有機被覆を施して用いるものも多
くなっている。有機被覆の下地鋼板として考えた場合、
TFSは安価で且つ塗料およびフィルム密着性に優れる
という長所があるが、一方において溶接性に劣るという
欠点がある。一方、ぶりきやLTSは溶接性には優れて
いるものの、コスト面や塗料およびフィルム密着性の点
でTFSに劣る。
【0003】従来、このような両者の短所を補うべく様
々な試みが行われてきた。その1つが鋼板面上に錫層を
不均一(部分的)に存在させた鋼板であり、この錫めっ
き鋼板は、塗料およびフィルム密着性と溶接性がともに
優れた鋼板として知られている。この種の錫めっき鋼板
に関して、特開昭57−23091号公報や特開昭57
−200592号公報では、有機被覆の下地鋼板とし
て、錫めっき後にリフローを行うことで錫を島状に分散
させた鋼板を用いることが示されており、錫めっき量の
削減により材料コストを低減化し、且つ溶接性を確保し
つつ塗料密着性の向上を図ることができるという点で実
用的な技術である。
【0004】一方、特開平2−298277公報、特開
平2−310378公報、特公平6−33506公報で
は、リフロー工程を経ることなく鋼板面に錫を粒状に点
在させる粒状錫めっき鋼板の製造法を開示している。こ
の粒状錫めっき鋼板は、色調(白色)、耐食性、溶接性
等に優れるとともに、上述したリフロー工程を経ること
で錫を島状に分散させた錫めっき鋼板に較べて塗料密着
性やフィルム密着性が格段に優れ、また、必要錫量が少
なく且つリフロー工程を必要としないために安価に製造
できるなど、溶接缶用素材として画期的な材料であると
いえる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の粒状錫
めっき鋼板は鋼板表面の錫粒が剥離しやすく、製缶工程
における剥離錫のロール付着や製缶後の品質劣化といっ
た大きな問題を抱えており、この問題が缶用素材として
広く市場に普及することを妨げている。このような問題
に対して、特公平8−996号公報では微量のエトキシ
ナフトールスルホン酸(ENSA)を含有するフェロス
タン浴を用いて錫めっきすることにより、粒状錫の形状
を扁平にして耐錫剥離性を改善することが提案されてい
るが、この製造方法は浴中のENSA濃度の微妙な変化
に対応して粒状錫の形状が大きく変わるため粒状錫の形
状の制御が極めて難しく、実用化は困難である。またこ
のため、耐錫剥離性についても十分な改善効果は期待で
きない。
【0006】したがって本発明の目的は、錫めっきによ
り錫を鋼板面に対して部分的に電析させる錫めっき鋼板
の製造方法において、塗料密着性、フィルム密着性、耐
食性、溶接性等に優れるだけでなく、耐錫剥離性にも優
れた錫めっき鋼板を安定して製造することができる錫め
っき鋼板の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述したような粒状錫め
っき鋼板の長所を残したまま、その短所を補うことがで
きれば、溶接缶用材として最も高い品質を持つ材料が期
待できる。本発明者はこのような意図の下に鋼板面上に
形成される部分錫めっきの形態とその製造方法について
検討を重ね、その結果、鋼板面上に地鉄露出部分を適度
に残しながら、特定の形態の板状錫塊を点在させためっ
き皮膜構造とすることにより、従来の粒状錫めっきに較
べて錫の剥離が起こりにくく、しかも塗料密着性、フィ
ルム密着性、耐食性、溶接性等の面でも優れた特性が得
られること、また、このような形態の部分錫めっきは、
特定の浴組成の硫酸めっき浴に適量のポリエチレングリ
コールを添加し、且つ所定の電流密度で錫めっきを行う
ことにより得られることを見い出した。
【0008】本発明はこのような知見に基づきなされた
もので、その特徴とする構成は以下の通りである。 (1) 二価錫イオンを15〜60g/l、硫酸を5〜18
0g/l、添加剤として分子量が1000〜70000
のポリエチレングリコールを0.5〜30g/l含有す
る錫めっき浴において、鋼板に1ASD〜30ASDの
電流密度で錫めっき量が100〜1500mg/m2
電気錫めっきを施すことにより、鋼板面に板状の錫塊が
分散して点在し、面積率換算で70%以上の板状の錫塊
が、錫塊の鋼板面からの平均高さHと錫塊基底部の面積
を円換算したときの当該円の直径Dとの関係がH/D≦
0.3を満足し、板状の錫塊に覆われない地鉄露出部分
の面積率が30%以上である錫めっきを形成することを
特徴とする耐錫剥離性に優れた錫めっき鋼板の製造方
法。
【0009】(2) 二価錫イオンを15〜60g/l、硫
酸を5〜180g/l、添加剤として分子量が1000
〜70000のポリエチレングリコールを0.5〜30
g/l含有する錫めっき浴において、鋼板に1ASD〜
30ASDの電流密度で錫めっき量が300〜1500
mg/m2の電気錫めっきを施すことにより、鋼板面に
板状の錫塊が分散して点在し、面積率換算で70%以上
の板状の錫塊が、錫塊の鋼板面からの平均高さHと錫塊
基底部の面積を円換算したときの当該円の直径Dとの関
係がH/D≦0.3を満足し、板状の錫塊に覆われない
地鉄露出部分の面積率が30%以上である錫めっきを形
成し、次いで、電着した錫の一部を地鉄と合金化させる
加熱処理を施し、板状の錫塊と地鉄間に、合金錫量が錫
量換算で0.01〜0.20g/m2の錫鉄合金層を形
成することを特徴とする耐錫剥離性に優れた錫めっき鋼
板の製造方法。
【0010】(3) 上記(1)または(2)の製造方法におい
て、錫めっきまたは錫めっき−加熱処理後、板状の錫塊
が存在する鋼板面をクロムめっきまたはクロメート処理
することにより、板状の錫塊と地鉄露出部分をともに覆
うクロム付着量が5〜50mg/m2の金属クロム層
と、その上層の金属クロム換算の付着量が5〜30mg
/m2の水和クロム酸化物層を形成することを特徴とす
る耐錫剥離性に優れた錫めっき鋼板の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細と限定理由を
説明する。本発明法により製造される錫めっき鋼板は、
錫めっきにより錫を鋼板面に対して部分的に電析させる
ことにより製造される錫めっき鋼板である。このような
部分錫めっき鋼板は、鋼板面全面に錫めっきを施した後
にリフロー工程によって錫を不連続状若しくは島状に分
散させることにより製造される錫めっき鋼板に較べて、
格段に優れた塗料密着性及びフィルム密着性を示す。
【0012】既に述べたように、粒状錫めっきが鋼板面
から剥離しやすいのは、電析した錫の形状に負うところ
が大きい。すなわち、ロールとの摩擦等の物理的作用が
めっき鋼板の表面に加えられると、鋼板との接触面積が
小さく且つ鋼板表面に対して垂直方向の高さが大きい粒
状錫は剥離が起こりやすい。一方、粒状錫めっき鋼板に
クロムめっきを施した溶接缶用鋼板のフィルムや塗料と
の密着力は、表面の凹凸が激しいものほど、また地鉄露
出部分の面積が多いもの(すなわち、地鉄露出部分の上
層にクロムめっきを施した部分の面積が多いもの)ほど
強くなり、このことが粒状錫めっき鋼板がフィルム密着
性や塗料密着性に優れている理由となっている。
【0013】これらの事実を勘案すると、鋼板表面に、
鋼板との接触面積が大きく且つ平均高さが低い錫塊が適
度な比率で散在するような形態の錫めっきを形成すれ
ば、従来の粒状錫めっき鋼板の長所を維持しつつ、耐錫
剥離性の改善が可能であると考えられる。また、錫塊と
地鉄との間に錫鉄合金層を介在させることにより、錫塊
自体の剥離強度が高められ、耐錫剥離性がより効果的に
改善される。本発明者はこのような前提の下に、塗料密
着性、フィルム密着性、耐食性、溶接性等に優れるだけ
でなく、耐錫剥離性にも優れためっき皮膜構造について
検討を加え、その結果、鋼板面に錫めっきによる板状の
錫塊を分散して点在させ、且つ面積率換算で70%以上
の板状の錫塊が、錫塊の鋼板面からの平均高さHと錫塊
基底部の面積を円換算したときの当該円の直径Dとの関
係がH/D≦0.3を満足すること、全錫めっき量を1
00〜1500mg/m2とすること、板状の錫塊に覆
われない地鉄露出部分の面積率を30%以上とするこ
と、さらに好ましくは、全錫めっき量を300〜150
0mg/m2とした上で板状の錫塊と地鉄間に合金錫量
が錫量換算で0.01〜0.20g/m2の錫鉄合金層
を介在させること、という部分錫めっきの形態とするこ
とにより、上記の諸特性のすべてに優れた錫めっき鋼板
が得られることが判った。
【0014】図1および図2は上記のような錫めっき鋼
板の鋼板面に形成される板状錫塊の形態を模式的に示し
たもので、先に述べたような従来の粒状錫めっき鋼板で
は鋼板面に粒状錫が分散して点在した形態であるのに対
し、この錫めっき鋼板は板状の錫塊が分散して点在した
形態を有する。このような部分錫めっきの形態を有する
錫めっき鋼板は、本発明の製造方法に従い、二価錫イオ
ンを15〜60g/l、硫酸を5〜180g/l、添加
剤として分子量が1000〜70000のポリエチレン
グリコールを0.5〜30g/l含有する錫めっき浴に
おいて、鋼板に1ASD〜30ASDの電流密度で錫め
っき量が100〜1500mg/m2の電気錫めっきを
施すことにより、また、板状の錫塊と地鉄間に錫鉄合金
層が介在した錫めっき鋼板については、上記錫めっき条
件で錫めっき量が300〜1500mg/m2の電気錫
めっきを施した後、電着した錫の一部を地鉄と合金化さ
せる加熱処理を施すことにより製造することができる。
【0015】本発明の製造法で使用する錫めっき浴にお
いて、錫めっき浴中の二価錫イオンの濃度が15g/l
未満では錫めっきが鋼板面に対して部分的に電析するよ
うな状態となりにくく、目的とする地鉄露出部分の面積
率の確保が難しくなる。一方、二価錫イオンの濃度が6
0g/lを超えるとスラッジの発生が顕著になるため好
ましくない。また、錫めっき浴中の硫酸濃度が5g/l
未満では、電着した錫がデンドライトとなるため目的と
する形態の錫塊が得られず、耐錫剥離性が劣ったものと
なる。一方、硫酸濃度が180g/lを超えると鋼板か
らの鉄溶出量が多くなり、めっき浴の劣化が著しくなる
ため好ましくない。
【0016】本発明では錫めっき浴中にポリエチレング
リコールを添加することが大きな特徴であり、これによ
り目的とする錫塊の形態を安定して得ることができる。
錫めっき浴中でのポリエチレングリコールの濃度が0.
5g/l未満では、ポリエチレングリコールの添加効果
が十分に得られず、目的とする錫塊の形態を安定して得
ることができない。一方、ポリエチレングリコールを3
0g/lを超えて添加しても添加量に見合う効果が得ら
れず、却って経済性を損う結果となる。また、ポリエチ
レングリコールは分子量(数平均分子量)が1000〜
70000のものを用いる。ポリエチレングリコールの
分子量が1000未満では鋼板面に電析する錫が粒状に
なりやすく、目的とする錫塊の形態を安定して得ること
ができない。一方、ポリエチレングリコールの分子量が
70000を超えると地鉄露出部分の面積率が減少し、
目的とする地鉄露出部分の面積率が確保できなくなる。
【0017】本発明の製造法では、通常、素材鋼板(通
常は冷延鋼板)を脱脂および酸洗した後、上記の錫めっ
き浴において1ASD〜30ASDの電流密度で鋼板に
錫めっき量が100〜1500mg/m2の電気錫めっ
きを施す。錫めっきの電流密度が1ASD未満では、所
望の錫めっき量を得るために必要なめっき時間が長くな
り、生産性が劣る。一方、電流密度が30ASDを超え
ると電着した錫がデンドライト状になるため、耐錫剥離
性等の品質が劣ったものとなる。また、地鉄露出部分の
面積率の確保も難しくなる傾向がある。また、錫めっき
量が100mg/m2未満では十分な溶接性が得られ
ず、一方、1500mg/m2を超えても錫量に見合う
溶接性の改善効果が得られないため、却って経済性を損
う。
【0018】錫塊と地鉄との間に錫鉄合金層を介在させ
ることにより、錫塊自体の剥離強度が高められ、耐錫剥
離性がより効果的に改善される。このような板状の錫塊
と地鉄間に錫鉄合金層が介在した錫めっき鋼板を製造す
る場合には、上記の錫めっき条件で鋼板に錫めっき量が
300〜1500mg/m2の電気錫めっきを施した
後、電着した錫の一部を地鉄と合金化させる加熱処理を
施し、板状の錫塊と地鉄間に、合金錫量が錫量換算で
0.01〜0.20g/m2の錫鉄合金層を形成する。
上記の加熱処理では、錫塊が溶融してその一部が地鉄と
合金化して錫鉄合金層が形成される。
【0019】この錫鉄合金層の合金錫量が錫量換算で
0.01g/m2未満では錫塊の剥離強度(地鉄に対す
る密着力)を十分に高めることができず、一方、0.2
0g/m2を超えると錫塊剥離強度の改善効果が飽和す
るだけでなく、溶接性が悪化するため好ましくない。上
記の加熱処理は錫鉄合金層の合金錫量が錫量換算で0.
01〜0.20g/m2となるよう、その加熱条件が調
整される。なお、このように板状の錫塊と地鉄間に錫鉄
合金層を形成する錫めっき鋼板では、溶接性を確保する
ため錫めっき量は300mg/m2以上とする必要があ
る。
【0020】通常、上記のようにして錫めっきまたは錫
めっき−加熱処理された鋼板は、板状の錫塊が存在する
鋼板面をクロムめっきまたはクロメート処理し、板状の
錫塊と地鉄露出部分をともに覆う金属クロム層とその上
層の水和クロム酸化物層からなる皮膜を形成させる。こ
こで、前記金属クロム層のクロム付着量は5〜50mg
/m2、水和クロム酸化物層の金属クロム換算の付着量
は5〜30mg/m2とする。金属クロム層のクロム付
着量が5mg/m2未満では十分な塗料密着性やフィル
ム密着性が得られず、一方、50mg/m2を超えると
溶接性が劣化する。また、水和クロム酸化物層の金属ク
ロム換算の付着量が5mg/m2未満では十分な塗料密
着性やフィルム密着性が得られず、一方、30mg/m
2を超えると溶接性が劣化する。
【0021】次に、本発明法により得られる錫めっき鋼
板の板状錫塊の形態について説明すると、錫塊の鋼板面
からの平均高さHと錫塊基底部の面積を円換算したとき
の当該円の直径Dとの関係がH/D≦0.3を満足する
板状の錫塊が、鋼板面に対する面積率換算で70%以上
存在しないと、錫塊の耐剥離性が劣る。図3は、面積率
換算で70%以上の板状錫塊の平均高さH/直径Dと耐
錫剥離性(錫剥離量の測定法は後述する実施例に記載の
ものと同様)との関係を調べたもので、H/D>0.3
では耐錫剥離性が劣っていることが判る。なお、錫塊の
平均高さは、例えばSEMにて断面検鏡を行って100
00倍程度のSEM画像を得、これを画像処理すること
により算出することができる。また、鋼板面に板状の錫
塊が存在しない部分、すなわち地鉄露出部分の面積率が
30%未満では、この種の部分錫めっき鋼板に特有の優
れた塗料密着性やフィルム密着性が得られない。
【0022】
【実施例】通常の方法によって冷間圧延、連続焼鈍及び
調質圧延された厚さ0.22mmの低炭素冷延鋼板を通
常条件で脱脂および酸洗した後、硫酸浴において鋼板を
陰極として電気錫めっきを施すことにより錫めっき鋼板
を得た。また、一部の鋼板については、錫めっき後、2
10〜240℃で5〜20分の加熱処理を施した。これ
らの錫めっき鋼板に対してクロムめっきを施し、金属ク
ロムの付着量が15mg/m2の金属クロム層と、その
上層の金属クロム換算の付着量が10mg/m2の水和
クロム酸化物層を有する鋼板を製造した。これら各鋼板
の錫めっきの形態および被覆率を測定するとともに、溶
接性(接触抵抗)、耐錫剥離性、塗料およびフィルム密着
性、耐食性を評価した。
【0023】なお、鋼板面にめっきされた錫塊の面積率
と錫塊形状は以下のようにして測定した。すなわち、各
供試鋼板についてSEMによる写真撮影(×1000)
を行い、SEM画像の錫塊の部分を透明シートにペンで
写し取った。これを方眼紙上に貼り付け、コロニーカウ
ンターで1mm角を数えることで各錫塊の面積を測定
し、それぞれの錫塊について、その基底部の面積を円換
算したときの当該円の直径Dを算出した。次いで、供試
鋼板を樹脂に埋め込み、SEMにて断面検鏡を行って錫
塊の平均高さHを求め、先に算出した円換算の直径Dと
の関係から、H/D≦0.3を満たしている錫塊の総面
積を算出し、これが鋼板面に占める面積率を求めた。さ
らに、錫塊の面積の総和から錫被覆率を求めた。錫めっ
き条件、クロムめっき条件および各特性の評価法を以下
に示す。
【0024】(1)錫めっき (a)めっき浴条件 二価錫イオン濃度:10〜60g/l 硫酸濃度:15〜60g/l(硫酸換算) ポリエチレングリコール濃度:0.4〜30g/l ポリエチレングリコールの数平均分子量:比較例2,8
は600、それ以外は1000〜70000 (b)電解条件(陰極電解処理条件) 電流密度:1〜50A/dm2 電解時間:0.01〜9秒 (2)クロムめっき (a)めっき浴条件 酸化クロム濃度:15g/l 硫酸濃度:0.2g/l 浴温度:45℃ (b)電解条件 電流密度:40A/dm2 電解時間:0.2秒
【0025】(3)各特性の評価 (a)溶接性(接触抵抗) 供試材に対して210℃×30分の熱処理を行った後、
50mm平方に切断し、この試料を2枚重ね合わせて電
極径4.5mmφの電極間に挟んだ後、この電極間を5
0kgfで加圧し、電極間に1Aの電流を流して接触抵
抗を測定した。測定された接触抵抗値に基づき、溶接性
は以下のように評価される。 30μΩ以下:合格 30μΩ超 :不合格
【0026】(b)耐錫剥離性 供試材を130mm×180mmの底面の箱底に張り付
けた上で、箱内に10mmφのアルミナボールを200
g入れ、600mmの振り幅で箱長辺方向に1往復/1
秒のスピードで100秒間振り続けた。アルミナボール
との摩擦によって供試材から剥離した錫量を、試験前後
の蛍光X線法による測定錫量の差によって求めた。測定
された錫剥離量に基づき、耐錫剥離性は以下のように評
価される。 0.02g/m2以下:合格 0.02g/m2超 :不合格
【0027】(c)フィルム密着性(ラミネート板深絞り
試験) 供試材にポリエチレンテレフタレートフィルムをラミネ
ートした後、58mmφに打ち抜いて30mmφのダイ
で深絞りを行い、フィルムが剥離しない限界深絞り高さ
を求めた。この限界深絞り高さに基づき、フィルム密着
性は以下のように評価される。 18mm以上:合格 18mm未満:不合格
【0028】(d)塗料密着性(Tピール試験) 供試材にエポキシフェノール系塗料を塗装焼付した後、
5mm×100mmの試験片に剪断した。この試験片を
2枚重ね合わせて5mm×50mmのナイロンフィルム
を間に挟み、加熱溶融圧着した。次いで、フィルムが付
いていない部分を外側にして90°に開き、T字形の試
験片を作った。試験片の開いた部分の端を掴んで、試験
片を剥離させていく時の引っ張り強度を測定した。この
引張り強度に基づき、塗料密着性は以下のように評価さ
れる。 4.0kg/5mm以上:合格 4.0kg/5mm未満:不合格
【0029】(e)耐食性試験(FFC試験) 供試材のおもて面にエポキシフェノール系塗料を50m
g/m2の付着量で塗装焼付(焼付条件:210℃×1
0分→190℃×10分)し、さらに裏面にも同一塗料
を塗装焼付(焼付条件:190℃×10分)した後、お
もて面の塗膜に鋭利なカッターでクロスカットを入れ、
次いでエリクセン5mm張り出し加工したものを試験片
とした。この試験片に1時間塩水噴霧した後、ろ紙で塩
水を拭き取り、相対湿度85%,温度45℃の雰囲気中
に10日間放置し、カットエッジ部及び加工部の発錆程
度を目視で観察し、以下により評価した。 ○:端面およびカット部からの発錆が無い或いは成長し
ていないもの ×:端面およびカット部より糸錆が成長しているもの
【0030】各供試例の錫めっき条件と皮膜構成を表1
〜表5に、また性能評価の結果を表6〜表10に示す。
これによれば、本発明例はいずれも溶接性、塗料密着
性、フィルム密着性、耐食性、耐錫剥離性のすべての性
能に優れていることが判る。これに対して、比較例1は
めっき浴中の二価錫イオン濃度が低過ぎるため、錫めっ
きが鋼板面に対して部分に電析するような形態とはなら
ず、平坦な錫層となって地鉄露出部分の面積率も0%と
なっている。このため耐食性、塗料密着性、フィルム密
着性が劣っている。比較例2は錫めっき浴中に分子量が
1000未満(数平均分子量:600)のポリエチレン
グリコールを添加したものであるため、H/D≦0.3
を満足する錫塊の存在率が少なすぎる比較例であり、耐
錫剥離性が劣っている。
【0031】比較例3は電流密度が高すぎるため錫めっ
きがデンドライト状となったものであり、このため耐錫
剥離性が劣っている。比較例4は錫めっき量が少なすぎ
るため、溶接性と耐食性が劣っている。比較例5は電流
密度が高すぎるため地鉄露出部分の面積率が低すぎ、こ
のため塗料密着性、フィルム密着性、耐食性が劣ってい
る。また、錫がデンドライト状になるため耐錫剥離性も
劣っている。比較例6は錫めっき浴中にENSAを添加
し、平板状の錫めっきを施したものであり、このため塗
料密着性、フィルム密着性、耐食性が劣っている。比較
例7はめっき浴中の二価錫イオン濃度が低過ぎるため、
錫めっきが鋼板面に対して部分に電析するような形態と
はならず、平坦な錫層となって地鉄露出部分の面積率も
0%となっている。このため耐食性、塗料密着性、フィ
ルム密着性が劣っている。
【0032】比較例8は錫めっき浴中に分子量が100
0未満(数平均分子量:600)のポリエチレングリコ
ールを添加したものであるため、H/D≦0.3を満足
する錫塊の存在率が少なすぎる比較例であり、耐錫剥離
性が劣っている。比較例9は電流密度が高すぎるため錫
めっきがデンドライト状となったものであり、このため
耐錫剥離性が劣っている。比較例10は錫めっき量が少
なすぎるため耐食性が劣っている。比較例11は電流密
度が高すぎるため地鉄露出部分の面積率が低すぎ、この
ため塗料密着性、フィルム密着性、耐食性が劣ってい
る。比較例12は錫めっき浴中にENSAを添加し、平
板状の錫めっきを施したものであり、このため塗料密着
性、フィルム密着性、耐食性が劣っている。比較例13
は錫鉄合金層の合金錫量が多すぎるため、溶接性が劣っ
ている。比較例14は錫めっき浴中へのポリエチレング
リコールの添加量が少なすぎるため地鉄露出部分の面積
率が低く、このため塗料密着性とフィルム密着性が劣っ
ており、また耐食性も劣っている。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
【0039】
【表7】
【0040】
【表8】
【0041】
【表9】
【0042】
【表10】
【0043】
【発明の効果】以上述べたように本発明の製造方法によ
れば、塗料密着性、フィルム密着性、耐食性、溶接性等
に優れるだけでなく耐錫剥離性にも優れ、溶接缶用の材
料として極めて有用な錫めっき鋼板を安定して製造する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明法により製造される錫めっき鋼板の鋼板
面に形成される板状錫塊の形態を模式的に示した斜視図
【図2】本発明法により製造される錫めっき鋼板の鋼板
面に形成される板状錫塊の形態を模式的に示した断面図
【図3】鋼板面に板状錫塊が点在した錫めっき鋼板にお
いて、面積率換算で70%以上の板状錫塊の平均高さH
/直径Dと耐錫剥離性との関係を示すグラフ
フロントページの続き (72)発明者 岩井 一郎 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−207489(JP,A) 特開 平8−158091(JP,A) 特開 平8−158092(JP,A) 特開 平9−209187(JP,A) 特開 平4−128386(JP,A) 特公 平6−33506(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25D 3/30 C23C 28/00 C25D 5/26

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 二価錫イオンを15〜60g/l、硫酸
    を5〜180g/l、添加剤として分子量が1000〜
    70000のポリエチレングリコールを0.5〜30g
    /l含有する錫めっき浴において、鋼板に1ASD〜3
    0ASDの電流密度で錫めっき量が100〜1500m
    g/m2の電気錫めっきを施すことにより、鋼板面に板
    状の錫塊が分散して点在し、面積率換算で70%以上の
    板状の錫塊が、錫塊の鋼板面からの平均高さHと錫塊基
    底部の面積を円換算したときの当該円の直径Dとの関係
    がH/D≦0.3を満足し、板状の錫塊に覆われない地
    鉄露出部分の面積率が30%以上である錫めっきを形成
    することを特徴とする耐錫剥離性に優れた錫めっき鋼板
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 二価錫イオンを15〜60g/l、硫酸
    を5〜180g/l、添加剤として分子量が1000〜
    70000のポリエチレングリコールを0.5〜30g
    /l含有する錫めっき浴において、鋼板に1ASD〜3
    0ASDの電流密度で錫めっき量が300〜1500m
    g/m2の電気錫めっきを施すことにより、鋼板面に板
    状の錫塊が分散して点在し、面積率換算で70%以上の
    板状の錫塊が、錫塊の鋼板面からの平均高さHと錫塊基
    底部の面積を円換算したときの当該円の直径Dとの関係
    がH/D≦0.3を満足し、板状の錫塊に覆われない地
    鉄露出部分の面積率が30%以上である錫めっきを形成
    し、次いで、電着した錫の一部を地鉄と合金化させる加
    熱処理を施し、板状の錫塊と地鉄間に、合金錫量が錫量
    換算で0.01〜0.20g/m2の錫鉄合金層を形成
    することを特徴とする耐錫剥離性に優れた錫めっき鋼板
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 錫めっきまたは錫めっき−加熱処理後、
    板状の錫塊が存在する鋼板面をクロムめっきまたはクロ
    メート処理することにより、板状の錫塊と地鉄露出部分
    をともに覆うクロム付着量が5〜50mg/m2の金属
    クロム層と、その上層の金属クロム換算の付着量が5〜
    30mg/m2の水和クロム酸化物層を形成することを
    特徴とする請求項1または2に記載の耐錫剥離性に優れ
    た錫めっき鋼板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2497845A4 (en) * 2009-11-04 2016-10-12 Toyo Kohan Co Ltd METHOD FOR PRODUCING A SURFACE TREATED STEEL PLATE

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