JPH11193490A - 溶接缶用錫めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

溶接缶用錫めっき鋼板およびその製造方法

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JPH11193490A
JPH11193490A JP36875297A JP36875297A JPH11193490A JP H11193490 A JPH11193490 A JP H11193490A JP 36875297 A JP36875297 A JP 36875297A JP 36875297 A JP36875297 A JP 36875297A JP H11193490 A JPH11193490 A JP H11193490A
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steel sheet
plating
plated
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JP36875297A
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Hiroshi Kubo
啓 久保
Mikiyuki Ichiba
幹之 市場
Yoshinori Yomura
吉則 余村
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 錫めっきにより錫を鋼板面に対して部分的に
電析させることにより製造される錫めっき鋼板におい
て、塗料密着性、フィルム密着性、耐食性、溶接性とと
もに耐錫剥離性も改善する。 【構成】 錫めっき後、加熱処理を経ることで錫めっき
の一部を錫鉄合金化した錫めっき鋼板であって、平均粒
径が0.3〜1.5μmの錫粒が疎密状態に分布し、全
錫付着量、純錫量及び錫鉄合金中の錫量が所定の範囲に
ある錫めっき被覆を有し、この錫めっき被覆には、錫粒
による錫被覆率が10%以下の疎めっき領域が点在する
とともに、疎めっき領域の平均面積が100μm2
上、疎めっき領域の鋼板面上での合計の面積率が10%
以上であり、疎めっき領域以外の領域には錫粒が疎めっ
き領域よりも密に存在するとともに、この密めっき領域
における錫粒による平均錫被覆率が40%以上であるこ
とを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、食品や飲料等をは
じめとする各種内容物の充填保存に適した溶接缶用の錫
めっき鋼板、より詳細には鋼板面に対して錫を部分的に
電析させた所謂粒状錫めっき鋼板とその製造法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】飲料缶や食缶の分野において溶接缶は大
きな比率を占めており、その材料コストの削減は産業上
の重要な課題であるといえる。飲料缶や食缶の分野で用
いられる缶材料としてはブリキ、LTS(薄目付ぶり
き)、TFS(ティンフリースチール)等が一般的であ
り、最近ではこれらに有機被覆を施して用いるものも多
くなっている。有機被覆の下地鋼板として考えた場合、
TFSは安価で且つ塗料およびフィルム密着性に優れる
という長所があるが、一方において溶接性に劣るという
欠点がある。一方、ぶりきやLTSは溶接性には優れて
いるものの、コスト面や塗料およびフィルム密着性の点
でTFSに劣る。
【0003】従来、このような両者の短所を補うべく様
々な試みが行われてきた。その1つが鋼板面上に錫層を
不均一(部分的)に存在させた鋼板であり、この錫めっ
き鋼板は、塗料およびフィルム密着性と溶接性がともに
優れた鋼板として知られている。この種の錫めっき鋼板
に関して、特開昭57−23091号公報や特開昭57
−200592号公報では、有機被覆の下地鋼板とし
て、錫めっき後にリフローを行うことで錫を島状に分散
させた鋼板を用いることが示されており、錫めっき量の
削減により材料コストを低減化し、且つ溶接性を確保し
つつ塗料およびフィルム密着性の向上を図ることができ
るという点で実用的な技術である。
【0004】一方、特開平2−298277公報、特開
平2−310378公報、特公平6−33506公報で
は、リフロー工程を経ることなく鋼板面に錫を粒状に点
在させる所謂粒状錫めっき鋼板の製造法を開示してい
る。この粒状錫めっき鋼板は、色調(白色)、耐食性、
溶接性等に優れるとともに、上述したリフロー工程を経
ることで錫を島状に分散させた錫めっき鋼板に較べて塗
料密着性やフィルム密着性が格段に優れ、また、必要錫
量が少なく且つリフロー工程を必要としないために安価
に製造できるなど、溶接缶用素材として画期的な材料で
あるといえる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の粒状錫
めっき鋼板は鋼板表面の錫粒が剥離しやすく、製缶工程
における剥離錫のロール付着や製缶後の品質劣化といっ
た大きな問題を抱えており、この問題が缶用素材として
広く市場に普及することを妨げている。したがって本発
明の目的は、錫めっきにより錫を鋼板面に対して部分的
に電析させることにより製造される錫めっき鋼板におい
て、塗料密着性、フィルム密着性、耐食性、溶接性等に
優れるだけでなく、耐錫剥離性にも優れた錫めっき鋼板
とその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上述したような粒状錫め
っき鋼板の長所を残したまま、その短所を補うことがで
きれば、溶接缶用素材として最も高い品質を持つ材料が
期待できる。本発明者はこのような意図の下に鋼板面上
に形成される部分錫めっきの形態について検討を重ね、
その結果、鋼板面上に錫粒を特定の形態で存在させ且つ
鉄−錫界面を合金化させることにより、従来の粒状錫め
っきに較べて錫の剥離が起こりにくく、しかも塗料密着
性、フィルム密着性、耐食性、溶接性等の面でも優れた
特性が得られることを見い出した。本発明はこのような
知見に基づきなされたもので、その特徴は以下の通りで
ある。
【0007】[1] 錫めっき後、加熱処理を経ることで錫
めっきの一部を錫鉄合金化した錫めっき鋼板であって、
鋼板の少なくとも片面に、平均粒径が0.3〜1.5μ
mの錫粒が疎密状態に分布し、全錫付着量が2000m
g/m2以下、純錫量が300mg/m2以上、錫鉄合金
中の錫量が0.05〜0.5g/m2である錫めっき被
覆を有し、該錫めっき被覆には、錫粒による錫被覆率が
10%以下の疎めっき領域が点在するとともに、該疎め
っき領域の平均面積が100μm2以上であり、且つ疎
めっき領域の鋼板面上での合計の面積率が10%以上で
あり、前記疎めっき領域以外の領域には錫粒が疎めっき
領域よりも密に存在するとともに、該疎めっき領域以外
の領域における錫粒による平均錫被覆率が40%以上で
あることを特徴とする溶接缶用錫めっき鋼板。
【0008】[2] 上記[1]の錫めっき鋼板の表面に付着
量が6〜25mg/m2の金属クロム層と、その上層の
金属クロム換算の付着量が6〜25mg/m2の水和ク
ロム酸化物層とを有することを特徴とする溶接缶用錫め
っき鋼板。 [3] 上記[1]の溶接缶用錫めっき鋼板の製造方法であっ
て、鋼板表面を脱脂および酸洗した後、二価錫イオンを
25〜40g/l、フェノールスルホン酸を硫酸換算で
65〜130g/l含む錫めっき浴において、電流密度
10〜40ASDの範囲で錫めっきを行い、しかる後、
230℃以上の加熱処理を行うことを特徴とする溶接缶
用錫めっき鋼板の製造方法。
【0009】[4] 上記[2]の溶接缶用錫めっき鋼板の製
造方法であって、鋼板表面を脱脂および酸洗した後、二
価錫イオンを25〜40g/l、フェノールスルホン酸
を硫酸換算で65〜130g/l含む錫めっき浴におい
て、電流密度10〜40ASDの範囲で錫めっきを行
い、しかる後、230℃以上の加熱処理を行い、さら
に、この錫めっき鋼板に硫酸添加の無水クロム酸浴でク
ロムめっきを行うことを特徴とする溶接缶用錫めっき鋼
板の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細と限定理由を
説明する。本発明の錫めっき鋼板は、錫めっきにより錫
を鋼板面に対して部分的且つ粒状に電析させ、しかる
後、加熱処理によって錫めっきの一部を錫鉄合金化させ
た錫めっき鋼板である。一般に、錫めっき鋼板はTFS
に較べて塗料密着性やフィルム密着性が劣る。これは錫
めっき表層に生成する錫酸化物層が脆いためであり、こ
のような問題は平板状の錫めっき層を有する限り殆ど不
可避的なものである。これに対して、本発明の錫めっき
鋼板のように表面の一部に地鉄を残した錫めっき構造
(粒状錫による部分錫めっき)を持つものは、鋼板面に
錫酸化物層がない部分が存在し、地鉄に直接クロムめっ
きされた部分は層構造的にはTFSと同様になるため、
高い塗料およびフィルム密着性が得られる。
【0011】また、粒状錫により形成される鋼板表面の
凹凸は塗料やフィルムの密着性を高める効果があり、し
たがって、このような部分錫めっき鋼板は、鋼板面全面
に錫めっきを施した後にリフロー工程によって錫を不連
続状若しくは島状に分散させることにより製造される錫
めっき鋼板に較べても、格段に優れた塗料密着性及びフ
ィルム密着性を示す。本発明は、このような粒状錫によ
る部分錫めっき鋼板の利点を損なうことなく、耐錫剥離
性を飛躍的に改善した溶接缶用素材である。
【0012】粒状錫めっきが鋼板面から剥離しやすいの
は、電析した錫の形態に負うところが大きい。すなわ
ち、鋼板面に対して錫粒が比較的に均一で且つ疎らに分
布している場合、鋼板表面の摩擦等によって錫粒は容易
に剥離するが、錫粒が密集した状態にあると、同種の物
理的衝撃に対して剥離し難くなる。これは錫粒が密集す
ることよって擬似的にひと固まりの偏平状の錫塊となる
ため、耐錫剥離性が向上するためであると考えられる。
【0013】また、それぞれの錫粒の径が上記擬似扁平
状の錫塊の高さとなるため、錫粒の径は錫剥離性に大き
な影響を及ぼす。すなわち、錫粒の粒径が大き過ぎると
剥離を生じやすくなり、したがって、錫粒は適当な粒径
を選択する必要がある。また、析出した錫粒と鋼板との
界面を加熱処理によって合金化させることにより、耐錫
剥離性はさらに向上する。
【0014】本発明では以上のような観点に基づき、鋼
板の少なくとも片面に、平均粒径が0.3〜1.5μm
の錫粒が疎密状態に分布し、全錫付着量が2000mg
/m 2以下、純錫量が300mg/m2以上、錫鉄合金中
の錫量が0.05〜0.5g/m2である錫めっき被覆
を有すること、この錫めっき被覆には錫粒による錫被覆
率が10%以下の疎めっき領域が点在するとともに、こ
れら疎めっき領域の平均面積が100μm2以上であ
り、且つ疎めっき領域の鋼板面上での合計の面積率が1
0%以上であること、前記疎めっき領域以外の領域には
錫粒が疎めっき領域よりも密に存在するとともに、該疎
めっき領域以外の領域における錫粒による平均錫被覆率
が40%以上であることを条件とする。
【0015】錫めっき被覆は、平均粒径が0.3〜1.
5μmの錫粒が鋼板面に対して疎密に分布し付着した形
態を有する。なお、本発明において錫粒の粒径とは、錫
粒の鋼板面上への2次元投影面積を円換算したときの当
該円の直径を指す。錫粒の平均粒径が0.3μm未満で
はめっき面の凹凸の度合いが小さくなるため、十分な塗
料密着性およびフィルム密着性が得られない。一方、錫
粒の平均粒径が1.5μmを超えると錫粒が剥離しやす
くなるため、耐錫剥離性が劣る。
【0016】錫めっき被覆の全錫量が2000mg/m
2を超えると錫量に見合う溶接性の改善効果が得られ
ず、却って経済性を損なう。このため錫めっき被覆の全
錫量は2000mg/m2以下とする。錫めっき被覆の
錫鉄合金中の錫量が0.05g/m2未満では錫粒と地
鉄との界面に合金層を設けることによる耐錫剥離性の改
善効果が不十分であり、一方、錫鉄合金中の錫量が0.
5g/m2を超えても錫量に見合うだけの耐錫剥離性の
改善効果が得られず、却って経済性を損なう。また、錫
めっき被覆の純錫量(錫鉄合金化していない金属錫量)
が300mg/m2未満では十分な溶接性が得られな
い。このため純錫量を300mg/m2以上確保した上
で、錫鉄合金中の錫量を0.05〜0.5g/m2とす
る。
【0017】錫めっき被覆には、錫粒による錫被覆率が
小さい“疎めっき領域”が点在することが必要であり、
上述したような錫めっき量の範囲においてこのような
“疎めっき領域”を設けることにより錫の存在形態が局
所化(偏在化)し、耐錫剥離性が効果的に高められる。
つまり、鋼板面での錫粒の存在形態を、剥離すべき錫粒
があまり存在しない上記“疎めっき領域”と錫粒が密集
しているため剥離を生じにくい“密めっき領域”とに二
極化することにより、耐錫剥離性が効果的に高められる
ものである。このような観点からして“疎めっき領域”
は錫粒の存在密度が十分に低いことが必要であり、この
ため錫粒による錫被覆率が10%以下の領域を“疎めっ
き領域”とする。ここで、錫粒による錫被覆率とは、錫
粒の鋼板面への2次元投影面積の総和が鋼板面に対して
占める割合を指す。
【0018】点在する疎めっき領域の平均面積が100
μm2未満では、地鉄部分の露出率が低いため十分な塗
料密着性とフィルム密着性を得ることができない。ま
た、疎めっき領域の鋼板面上での合計の面積率が10%
未満では、地鉄部分の露出率が低いため十分な塗料密着
性とフィルム密着性を得ることができない。このため疎
めっき領域は、その平均面積を100μm2以上、鋼板
面上での合計の面積率を10%以上とする。また、耐食
性の観点から、疎めっき領域は平均面積を2000μm
2以下、鋼板面上での合計の面積率を40%以下とする
ことが好ましい。
【0019】疎めっき領域以外の領域(以下、“密めっ
き領域”という)は錫粒が疎めっき領域よりも密に存在
し、錫粒による平均錫被覆率が40%以上であることを
条件とする。この“密めっき領域”は錫粒が密集し若し
くは比較的密な状態で存在することよって、その一部ま
たは全部に擬似的にひと固まりとなった偏平状の錫塊が
形成される領域であり、先に述べたようにこのような擬
似的偏平状錫塊あるいはそれに近い形態に錫粒が密集し
た状態になると耐錫剥離性が顕著に向上する。密めっき
領域における錫粒による平均錫被覆率が40%未満では
目的とする錫粒の密集化が不十分である。図1および図
2は、以上述べたような錫めっき構造を有する本発明の
錫めっき鋼板表面の顕微鏡拡大写真であり、図1が倍率
1000倍、図2が倍率3000倍で撮影した拡大写真
である。
【0020】通常、上述した錫めっき被覆を有する錫め
っき面には、金属クロム層とその上層の水和クロム酸化
物層からなる皮膜が形成される。前記金属クロム層のク
ロム付着量は6〜25mg/m2、水和クロム酸化物層
の金属クロム換算の付着量は6〜25mg/m2とす
る。金属クロム層のクロム付着量が6mg/m2未満で
は十分な塗料密着性やフィルム密着性が得られず、一
方、25mg/m2を超えると溶接性が劣化する。ま
た、水和クロム酸化物層の金属クロム換算の付着量が6
mg/m2未満では十分な塗料密着性やフィルム密着性
が得られず、一方、25mg/m2を超えると溶接性が
劣化する。
【0021】次に、本発明の錫めっき鋼板を得るための
製造方法の一実施形態について説明する。本発明の錫め
っき鋼板を得るためには、鋼板表面を脱脂および酸洗
後、二価錫イオンを25〜40g/l、フェノールスル
ホン酸を硫酸換算で65〜130g/l含む錫めっき浴
において、電流密度10〜40ASDの範囲で錫めっき
を行った後、加熱処理を行うことが好ましい。
【0022】錫めっき浴中の二価錫イオンの濃度が25
g/l未満では、錫めっきの形態が粒状ではなく平板状
になる。一方、二価錫イオンの濃度が40g/lを超え
るとスラッジの発生が顕著になるため好ましくない。ま
た、フェノールスルホン酸の濃度が硫酸換算で65g/
l未満では、錫粒の密集化が生じないため本発明が規定
する錫めっき被覆を形成できない。一方、フェノールス
ルホン酸の濃度が硫酸換算で130g/lを超えるとめ
っき液の粘度が高くなるため、液の持ち出し量が多くな
ったり、洗浄不良を招いたりするなどの実用上の問題を
生じるため好ましくない。また、電流密度が10ASD
未満では、形成される錫粒の形態(粒径)が大きくなり
過ぎるため、本発明が規定する錫めっき被覆を形成でき
ない。一方、電流密度が40ASDを超えると錫が平板
状に電析してしまう。
【0023】錫めっき後の加熱処理は錫粒と鋼板との界
面を合金化させるために行うもので、合金化を効率的に
行うため230℃以上の加熱温度で行うことが好まし
い。また、錫めっき面に上記の金属クロム層とその上層
の水和クロム酸化物層を形成させるには、上記のように
して得られた錫めっき鋼板に対して、硫酸添加の無水ク
ロム酸浴で5〜50ASD程度の電流密度でクロムめっ
きを行う。
【0024】
【実施例】通常の方法によって冷間圧延、連続焼鈍およ
び調質圧延された厚さ0.22mmの低炭素冷延鋼板に
通常の脱脂および酸洗を施した後、錫めっき浴において
錫めっきを施し、次いで加熱処理を行うことにより錫め
っき鋼板を作製した。この錫めっき鋼板に対してクロム
めっきを施し、錫めっき面に金属クロム層とその上層の
水和クロム酸化物層を形成し、所望の溶接缶用素材を得
た。これら各溶接缶用素材の錫めっきの形態および被覆
率を測定するとともに、溶接性(接触抵抗)、耐錫剥離
性、塗料およびフィルム密着性、耐食性を評価した。錫
めっき条件、クロムめっき条件、各特性の評価法および
錫めっき被覆の構成の測定方法を以下に示す。
【0025】(1)錫めっき (a)めっき浴条件 二価錫イオン濃度:20〜40g/l フェノールスルホン酸濃度:58〜129g/l(硫酸
換算) (b)電解条件(陰極電解処理条件) 電流密度:5〜40ASD
【0026】(2)クロムめっき (a)めっき浴条件 無水クロム酸濃度:15g/l 硫酸濃度:0.3g/l 浴温度:45℃ (b)電解条件 電流密度:40ASD 電解時間:0.2秒
【0027】(3)各特性の評価 (a)溶接性(接触抵抗) 供試材に対して210℃×30分の熱処理を行った後、
50mm平方に切断し、この試料を2枚重ね合わせて電
極径4.5mmφの電極間に挟んだ後、この電極間を5
0kgfで加圧し、電極間に1Aの電流を流して接触抵
抗を測定した。測定された接触抵抗値に基づき、溶接性
は以下のように評価される。 30μΩ以下:合格 30μΩ超 :不合格
【0028】(b)耐錫剥離性 供試材を130mm×180mmの底面の箱底に張り付
けた上で、箱内に10mmφのアルミナボールを200
g入れ、600mmの振り幅で箱長辺方向に1往復/1
秒のスピードで100秒間振り続けた。アルミナボール
との摩擦によって供試材から剥離した錫量を、供試材の
試験前後の蛍光X線法による測定錫量の差によって求め
た。測定された錫剥離量に基づき、耐錫剥離性は以下の
ように評価される。 0.04g/m2以下:合格 0.04g/m2超 :不合格
【0029】(c)フィルム密着性(ラミネート板深絞り
試験) 供試材にポリエチレンテレフタレートフィルムをラミネ
ートした後、58mmφに打ち抜いて30mmφのダイ
で深絞りを行い、フィルムが剥離しない限界深絞り高さ
を求めた。この限界深絞り高さに基づき、フィルム密着
性は以下のように評価される。なお、深絞り高さが22
mmで剥離のない供試材は、この高さが絞り抜きとなる
ため上限値となったものである。 17mm以上:合格 17mm未満:不合格
【0030】(d)塗料密着性(Tピール試験) 供試材にエポキシフェノール系塗料を塗装焼付した後、
5mm×100mmの試験片に剪断した。この試験片を
2枚重ね合わせて5mm×50mmのナイロンフィルム
を間に挟み、加熱溶融圧着した。次いで、フィルムが付
いていない部分を外側にして90°に開き、T字形の試
験片を作った。試験片の開いた部分の端を掴んで、試験
片を剥離させていく時の引っ張り強度を測定した。この
引張り強度に基づき、塗料密着性は以下のように評価さ
れる。 4.0kg/5mm以上:合格 4.0kg/5mm未満:不合格
【0031】(e)耐食性試験(FFC試験) 供試材のおもて面にエポキシフェノール系塗料を50m
g/m2の付着量で塗装焼付(焼付条件:210℃×1
0分→190℃×10分)し、さらに裏面にも同一塗料
を塗装焼付(焼付条件:190℃×10分)した後、お
もて面の塗膜に鋭利なカッターでクロスカットを入れ、
次いでエリクセン5mm張り出し加工したものを試験片
とした。この試験片に1時間塩水噴霧した後、ろ紙で塩
水を拭き取り、相対湿度85%,温度45℃の雰囲気中
に10日間放置し、カットエッジ部及び加工部の発錆程
度を目視で観察し、以下により評価した。 ○:端面およびカット部からの発錆が無い或いは成長し
ていないもの ×:端面およびカット部より糸錆が成長しているもの
【0032】(4)錫めっき被覆の構成の測定方法 (a) 錫粒による錫被覆率の測定 SEMによる写真撮影(×3000)を行い、写真中の
錫粒を透明シートに写し取り、これら錫粒の面積(鋼板
面への2次元投影面積)の総和から錫被覆率を求めた。 (b) 疎めっき領域の平均面積の測定 SEMによる写真撮影(×1000)を行い、写真中の
疎めっき領域を透明シートに写し取り、これらの面積を
測定した。同測定を無作為に10箇所について行い、平
均値を疎めっき領域の平均面積とした。
【0033】(c) 疎めっき領域の鋼板面上での合計の面
積率の測定 上記(b)における疎めっき領域の平均面積の測定におい
て、写真中の疎めっき領域の割合を視野毎に算出し、1
0視野での平均値を疎めっき領域の鋼板面上での合計の
面積率の測定値とした。 (d)錫粒の粒径の測定 SEMによる写真撮影(×3000)を行い、写真中の
錫粒を透明シートに写し取った。この透明シートを方眼
紙上でコロニーカウンターにて換数し、錫粒の個々の面
積(鋼板面への2次元投影面積)を求めた。この測定面
積を円換算したときの当該円の直径を求め、これを各錫
粒の粒径とした。
【0034】各供試例の錫めっき条件と皮膜構成を表1
〜表6に、また性能評価の結果を表7〜表9に示す。こ
れによれば、本発明例はいずれも溶接性、塗料密着性、
フィルム密着性、耐食性、耐錫剥離性のすべての性能に
優れていることが判る。これに対して比較例1は、めっ
き浴中の錫イオン濃度が低いために錫の析出形態が平板
状となり、塗料密着性、フィルム密着性、耐食性が劣っ
ている。比較例2は、めっき浴中のフェノールスルホン
酸濃度が低いため錫粒が十分に密集せず、このため耐錫
剥離性が劣っている。
【0035】比較例3は錫めっきの際の電流密度が小さ
いため錫粒の平均粒径が大き過ぎ、このため耐錫剥離性
が劣っている。比較例4は錫粒の平均粒径が小さ過ぎる
ため塗料密着性、フィルム密着性が劣っている。比較例
5は疎めっき領域の平均面積と鋼板面上での合計の面積
率が少ないため、塗料密着性、フィルム密着性が劣って
いる。比較例6は金属クロム層の付着量が少ないため十
分な塗料密着性、フィルム密着性が得られていない。
【0036】比較例7は金属クロム層の付着量が多過ぎ
るため接触抵抗が高く、このため溶接性が劣っている。
比較例8は水和クロム酸化物層の付着量が少ないため十
分な塗料密着性、フィルム密着性が得られていない。比
較例9は水和クロム酸化物層の付着量が多過ぎるため接
触抵抗値が高く、このため溶接性に劣っている。比較例
10は錫鉄合金中の錫量が少ないため耐錫剥離性が劣っ
ている。比較例11は純錫量が少ないため溶接性が劣っ
ている。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】
【表7】
【0044】
【表8】
【0045】
【表9】
【0046】
【発明の効果】以上述べたように本発明の錫めっき鋼板
は、塗料密着性、フィルム密着性、耐食性、溶接性等に
優れるだけでなく、耐錫剥離性にも優れており、溶接缶
用の素材として極めて有用なものである。また、本発明
の製造方法によれば、このような錫めっき鋼板を安価に
しかも効率的に安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の錫めっき鋼板表面の顕微鏡拡大写真
(拡大倍率:1000倍)
【図2】本発明の錫めっき鋼板表面の顕微鏡拡大写真
(拡大倍率:3000倍)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 錫めっき後、加熱処理を経ることで錫め
    っきの一部を錫鉄合金化した錫めっき鋼板であって、鋼
    板の少なくとも片面に、平均粒径が0.3〜1.5μm
    の錫粒が疎密状態に分布し、全錫付着量が2000mg
    /m2以下、純錫量が300mg/m2以上、錫鉄合金中
    の錫量が0.05〜0.5g/m2である錫めっき被覆
    を有し、該錫めっき被覆には、錫粒による錫被覆率が1
    0%以下の疎めっき領域が点在するとともに、該疎めっ
    き領域の平均面積が100μm2以上であり、且つ疎め
    っき領域の鋼板面上での合計の面積率が10%以上であ
    り、前記疎めっき領域以外の領域には錫粒が疎めっき領
    域よりも密に存在するとともに、該疎めっき領域以外の
    領域における錫粒による平均錫被覆率が40%以上であ
    ることを特徴とする溶接缶用錫めっき鋼板。
  2. 【請求項2】 請求項1の錫めっき鋼板の表面に付着量
    が6〜25mg/m2の金属クロム層と、その上層の金
    属クロム換算の付着量が6〜25mg/m2の水和クロ
    ム酸化物層とを有することを特徴とする溶接缶用錫めっ
    き鋼板。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の溶接缶用錫めっき鋼板
    の製造方法であって、鋼板表面を脱脂および酸洗した
    後、二価錫イオンを25〜40g/l、フェノールスル
    ホン酸を硫酸換算で65〜130g/l含む錫めっき浴
    において、電流密度10〜40ASDの範囲で錫めっき
    を行い、しかる後、230℃以上の加熱処理を行うこと
    を特徴とする溶接缶用錫めっき鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項2に記載の溶接缶用錫めっき鋼板
    の製造方法であって、鋼板表面を脱脂および酸洗した
    後、二価錫イオンを25〜40g/l、フェノールスル
    ホン酸を硫酸換算で65〜130g/l含む錫めっき浴
    において、電流密度10〜40ASDの範囲で錫めっき
    を行い、しかる後、230℃以上の加熱処理を行い、さ
    らに、この錫めっき鋼板に硫酸添加の無水クロム酸浴で
    クロムめっきを行うことを特徴とする溶接缶用錫めっき
    鋼板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2381016A1 (en) * 2008-12-19 2011-10-26 Toyo Kohan Co., Ltd. Surface-treated steel sheet on which particulate tin is deposited and resin-coated steel sheet

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP2381016A1 (en) * 2008-12-19 2011-10-26 Toyo Kohan Co., Ltd. Surface-treated steel sheet on which particulate tin is deposited and resin-coated steel sheet
EP2381016A4 (en) * 2008-12-19 2014-09-24 Toyo Kohan Co Ltd SURFACE TREATED STEEL SHEET ON WHICH TIN PARTICLES ARE DEPOSITED AND RESIN COATED STEEL SHEET

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