JPH11193489A - 溶接缶用錫めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

溶接缶用錫めっき鋼板の製造方法

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JPH11193489A
JPH11193489A JP36875497A JP36875497A JPH11193489A JP H11193489 A JPH11193489 A JP H11193489A JP 36875497 A JP36875497 A JP 36875497A JP 36875497 A JP36875497 A JP 36875497A JP H11193489 A JPH11193489 A JP H11193489A
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plating
steel sheet
plated
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JP36875497A
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Inventor
Hiroshi Kubo
啓 久保
Mikiyuki Ichiba
幹之 市場
Yoshinori Yomura
吉則 余村
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 錫めっきにより錫を鋼板面に対して部分的に
電析させることにより製造される錫めっき鋼板におい
て、塗料密着性、フィルム密着性、耐食性、溶接性とと
もに耐錫剥離性も改善する。 【構成】 鋼板の少なくとも片面を、脱脂および酸洗し
た後、二価錫イオンを20〜40g/l、フェノールス
ルホン酸を硫酸換算で10〜25g/l、硫酸を30〜
150g/l含む錫めっき浴を用い、電流密度10〜4
0ASDで所定の付着量の錫めっきを行い、必要に応じ
て加熱処理を行うことを特徴とする製造法であり、これ
により剥離すべき錫粒があまり存在しない疎めっき領域
と、錫粒が密集しているため剥離を生じにくい密めっき
領域とに二極化された、耐錫剥離性に優れた錫めっき被
覆を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、食品や飲料等をは
じめとする各種内容物の充填保存に適した溶接缶用の錫
めっき鋼板、より詳細には鋼板面に対して錫を部分的に
電析させた所謂粒状錫めっき鋼板の製造法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】飲料缶や食缶の分野において溶接缶は大
きな比率を占めており、その材料コストの削減は産業上
の重要な課題であるといえる。飲料缶や食缶の分野で用
いられる缶材料としてはブリキ、LTS(薄目付ぶり
き)、TFS(ティンフリースチール)等が一般的であ
り、最近ではこれらに有機被覆を施して用いるものも多
くなっている。有機被覆の下地鋼板として考えた場合、
TFSは安価で且つ塗料およびフィルム密着性に優れる
という長所があるが、一方において溶接性に劣るという
欠点がある。一方、ぶりきやLTSは溶接性には優れて
いるものの、コスト面や塗料およびフィルム密着性の点
でTFSに劣る。
【0003】従来、このような両者の短所を補うべく様
々な試みが行われてきた。その1つが鋼板面上に錫層を
不均一(部分的)に存在させた鋼板であり、この錫めっ
き鋼板は、塗料およびフィルム密着性と溶接性がともに
優れた鋼板として知られている。この種の錫めっき鋼板
に関して、特開昭57−23091号公報や特開昭57
−200592号公報では、有機被覆の下地鋼板とし
て、錫めっき後にリフローを行うことで錫を島状に分散
させた鋼板を用いることが示されており、錫めっき量の
削減により材料コストを低減化し、且つ溶接性を確保し
つつ塗料およびフィルム密着性の向上を図ることができ
るという点で実用的な技術である。
【0004】一方、特開平2−298277公報、特開
平2−310378公報、特公平6−33506公報で
は、リフロー工程を経ることなく鋼板面に錫を粒状に点
在させる所謂粒状錫めっき鋼板の製造法を開示してい
る。この粒状錫めっき鋼板は、色調(白色)、耐食性、
溶接性等に優れるとともに、上述したリフロー工程を経
ることで錫を島状に分散させた錫めっき鋼板に較べて塗
料密着性やフィルム密着性が格段に優れ、また、必要錫
量が少なく且つリフロー工程を必要としないために安価
に製造できるなど、溶接缶用素材として画期的な材料で
あるといえる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の粒状錫
めっき鋼板は鋼板表面の錫粒が剥離しやすく、製缶工程
における剥離錫のロール付着や製缶後の品質劣化といっ
た大きな問題を抱えており、この問題が缶用素材として
広く市場に普及することを妨げている。したがって本発
明の目的は、錫めっきにより錫を鋼板面に対して部分的
に電析させた錫めっき鋼板の製造方法において、塗料密
着性、フィルム密着性、耐食性、溶接性等に優れるだけ
でなく、耐錫剥離性にも優れた錫めっき鋼板を製造する
ことができる方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上述したような粒状錫め
っき鋼板の長所を残したまま、その短所を補うことがで
きれば、溶接缶用素材として最も高い品質を持つ材料が
期待できる。本発明者はこのような意図の下に鋼板面上
に形成される部分錫めっきの最適な形態とその製法につ
いて検討を重ね、その結果、鋼板面上に錫粒を特定の条
件で偏在させることにより、従来の粒状錫めっきに較べ
て錫の剥離が起こりにくく、しかも塗料密着性、フィル
ム密着性、耐食性、溶接性等の面でも優れた特性が得ら
れること、また、そのような錫粒の特定の存在形態が、
フェノールスルホン酸と硫酸とを特定の割合で含む錫め
っき浴中において所定の電流密度で錫めっきを行うこと
により安定して得られることを見い出した。本発明はこ
のような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下
の通りである。
【0007】[1] 鋼板の少なくとも片面を、脱脂および
酸洗した後、二価錫イオンを20〜40g/l、フェノ
ールスルホン酸を硫酸換算で10〜25g/l、硫酸を
30〜150g/l含む錫めっき浴を用い、電流密度1
0〜40ASDで錫めっき量が300〜2000mg/
2の錫めっきを行うことにより、鋼板の少なくとも片
面に、平均粒径が0.3〜1.5μmで且つ鋼板面に疎
密状態に分布した錫粒からなる錫めっき被覆であって、
錫粒による錫被覆率が10%以下の疎めっき領域が点在
するとともに、該疎めっき領域の平均面積が100〜2
000μm2であり、且つ疎めっき領域の鋼板面上での
合計の面積率が10〜50%であり、前記疎めっき領域
以外の領域には錫粒が疎めっき領域よりも密に存在する
とともに、該疎めっき領域以外の領域における錫粒によ
る平均錫被覆率が40%以上である錫めっき被覆を形成
することを特徴とする溶接缶用錫めっき鋼板の製造方
法。
【0008】[2] 鋼板の少なくとも片面を、脱脂および
酸洗した後、二価錫イオンを20〜40g/l、フェノ
ールスルホン酸を硫酸換算で10〜25g/l、硫酸を
30〜150g/l含む錫めっき浴において、電流密度
10〜40ASDで錫めっき量が400〜2000mg
/m2の錫めっきを行い、しかる後、加熱処理を行うこ
とにより、鋼板の少なくとも片面に、平均粒径が0.3
〜1.5μmの錫粒が疎密状態に分布し、金属錫量が
0.30g/m2以上、錫鉄合金中の錫量が0.05〜
0.5g/m2の錫めっき被覆であって、錫粒による錫
被覆率が10%以下の疎めっき領域が点在するととも
に、該疎めっき領域の平均面積が100〜2000μm
2であり、且つ疎めっき領域の鋼板面上での合計の面積
率が10〜50%であり、前記疎めっき領域以外の領域
には錫粒が疎めっき領域よりも密に存在するとともに、
該疎めっき領域以外の領域における錫粒による平均錫被
覆率が40%以上である錫めっき被覆を形成させること
を特徴とする溶接缶用錫めっき鋼板の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細と限定理由を
説明する。本発明法により製造される錫めっき鋼板は、
錫めっきにより錫を鋼板面に対して部分的且つ粒状に電
析させ、必要に応じて錫めっき後に加熱処理を施して錫
めっきの一部を錫鉄合金化させた錫めっき鋼板である。
一般に、錫めっき鋼板はTFSに較べて塗料密着性やフ
ィルム密着性が劣る。これは錫めっき表層に生成する錫
酸化物層が脆いためであり、このような問題は平板状の
錫めっき層を有する限り殆ど不可避的なものである。こ
れに対して、本発明法により製造される錫めっき鋼板の
ように表面の一部に地鉄を残した錫めっき構造(粒状錫
による平均一錫めっき)を持つものは、鋼板面に錫酸化
物層がない部分が存在し、地鉄に直接クロムめっきされ
た部分は層構造的にはTFSと同様になるため、高い塗
料密着性およびフィルム密着性が得られる。
【0010】また、粒状錫により形成される鋼板表面の
凹凸は塗料やフィルムの密着性を高める効果があり、し
たがって、このような不均一(部分)錫めっき鋼板は、
鋼板面全面に錫めっきを施した後にリフロー工程によっ
て錫を不連続状若しくは島状に分散させることにより製
造される錫めっき鋼板に較べても、格段に優れた塗料密
着性及びフィルム密着性を示す。本発明は、このような
粒状錫による不均一錫めっき鋼板の利点を損なうことな
く、耐錫剥離性が飛躍的に改善された錫めっき鋼板を得
ることができる製造方法である。
【0011】粒状錫めっきが鋼板面から剥離しやすいの
は、電析した錫の形態に負うところが大きい。すなわ
ち、鋼板面に対して錫粒が比較的に均一で且つ疎らに分
布している場合、鋼板表面の摩擦等によって錫粒は容易
に剥離するが、錫粒が密集した状態にあると、同種の物
理的衝撃に対して剥離し難くなる。これは錫粒が密集す
ることよって擬似的にひと固まりの偏平状の錫塊となる
ため、耐剥離性が向上するためであると考えられる。ま
た、上記のような錫めっき構造では、それぞれの錫粒の
径が上記擬似扁平状の錫塊の高さとなるため、錫粒の径
は錫剥離性に大きな影響を及ぼす。すなわち、錫粒の粒
径が大き過ぎると剥離を生じやすくなり、したがって、
錫粒は適当な粒径を選択する必要がある。
【0012】このような観点に基づく検討の結果、錫め
っきにより鋼板面に付着する錫粒の粒径および錫めっき
量を所定の範囲に規制するとともに、錫めっき被覆に錫
粒による錫被覆率が小さい“疎めっき領域”を特定の条
件で点在させ、錫の存在形態が局所化(偏在化)した錫
めっき構造とすることにより、換言すれば、鋼板面での
錫粒の存在形態を、剥離すべき錫粒があまり存在しない
上記“疎めっき領域”と錫粒が密集しているため剥離を
生じにくい“密めっき領域”とに二極化することによ
り、耐錫剥離性が効果的に高められることが判った。そ
して、このような特定の錫めっき構造は、以下に述べる
ようなフェノールスルホン酸と硫酸をそれぞれ適量含む
錫めっき浴中において所定範囲の電流密度で錫めっきを
行うことにより、安定的に得ることができる。
【0013】ところで、上記のような錫剥離に有利な特
定の錫めっき構造は、めっき浴中のフェノールスルホン
酸濃度を極端に高くする方法によっても得ることができ
る。しかし、この方法では薬液コストや廃液処理コスト
が高くなるという問題を生じる。これに対して本発明の
製造法では、フェノールスルホン酸を高濃度では使用せ
ず、適量のフェノールスルホン酸を含むめっき浴に硫酸
を添加しためっき浴を用いる。フェノールスルホン酸を
全く用いない硫酸浴で錫めっきを行った場合には錫粒は
鋼板面にほぼ均一に電析し、本発明が目的するような錫
粒の偏在化は生じないが、本発明のように適量のフェノ
ールスルホン酸と硫酸を含むめっき浴において所定の電
流密度で錫めっきを行うことにより、鋼板面上で錫粒が
偏在化し、疎密状態に分布した錫めっき被覆を得ること
ができる。
【0014】以下、本発明の製造法の詳細を説明する
と、本発明では冷延鋼板等の鋼板の少なくとも片面を、
脱脂および酸洗した後、二価錫イオンを20〜40g/
l、フェノールスルホン酸を硫酸換算で10〜25g/
l、硫酸を30〜150g/l含む錫めっき浴を用い、
電流密度10〜40ASDで錫めっき量が300〜20
00mg/m2、錫めっき後に加熱溶融処理を行う場合
には400〜2000mg/m2の錫めっきを行う。錫
めっき浴中の二価錫イオンの濃度が20g/l未満で
は、錫めっきの形態が粒状ではなく平板状になる。一
方、二価錫イオンの濃度が40g/lを超えるとスラッ
ジの発生が顕著になるため好ましくない。
【0015】錫めっき浴中のフェノールスルホン酸の濃
度が硫酸換算で10g/l未満では、錫粒の析出形態が
デンドリックとなり、耐錫剥離性が劣る。一方、フェノ
ールスルホン酸の濃度が硫酸換算で25g/lを超える
と、薬液コストや廃液処理コストが高くなるため好まし
くない。錫めっき浴中の硫酸濃度が30g/l未満で
は、鋼板面に錫粒が不均一に分布せず、本発明が狙いと
する錫粒の疎密状態が得られない。一方、硫酸濃度が1
50g/lを超えると錫粒が疎に分布する領域が少なく
なるため、この場合も本発明が狙いとする錫粒の疎密状
態が得られない。
【0016】また、電流密度が10ASD未満では、形
成される錫粒の形態(粒径)が大きくなり過ぎるため、
本発明が狙いとする錫めっき被覆を形成できない。一
方、電流密度が40ASDを超えると錫粒が疎に分布す
る領域が少なくなるため、この場合も本発明が狙いとす
る錫粒の疎密状態が得られない。また、錫めっき量が3
00mg/m2未満、また加熱処理を行う場合の錫めっ
き量が400mg/m2未満では十分な溶接性を得るこ
とができず、一方、錫めっき量が2000mg/m2
超えても錫量に見合う溶接性の改善効果が得られず、却
って経済性を損なう。
【0017】錫めっきの一部(鋼板との界面)を錫鉄合
金化するため、錫めっきされた鋼板には必要に応じて加
熱処理が施される。通常、この加熱処理は抵抗加熱によ
り行われるが、これに限定されるものではない。通常、
この加熱処理により少なくとも錫粒と地鉄との界面に錫
鉄合層が形成され、錫粒の耐錫剥離性が向上する。加熱
処理は合金化を効率的に行うため230℃以上の加熱温
度で行うのが好ましい。この加熱処理では、錫めっき被
覆の金属錫量が0.30g/m2以上確保され、且つ錫
鉄合金中の錫量が0.05〜0.5g/m2となるよう
に加熱条件(加熱温度、加熱時間等)が調整される。錫
めっき被覆の錫鉄合金中の錫量が0.05g/m2未満
では錫粒と地鉄との界面に合金層を設けることによる耐
錫剥離性の改善効果が不十分であり、一方、錫鉄合金中
の錫量が0.5g/m2を超えても錫量に見合うだけの
耐錫剥離性の改善効果が得られず、却って経済性を損な
う。また、金属錫量(純錫量)が0.30g/m2未満
では溶接性が著しく劣る。
【0018】以上のような錫めっきにより、鋼板の少な
くとも片面に、平均粒径が0.3〜1.5μmで且つ鋼
板面に疎密状態に分布した錫粒からなる錫めっき被覆で
あって、錫粒による錫被覆率が10%以下の疎めっき領
域が点在するとともに、該疎めっき領域の平均面積が1
00〜2000μm2であり、且つ疎めっき領域の鋼板
面上での合計の面積率が10〜50%であり、前記疎め
っき領域以外の領域には錫粒が疎めっき領域よりも密に
存在するとともに、該疎めっき領域以外の領域における
錫粒による平均錫被覆率が40%以上である錫めっき被
覆が形成される。また、加熱処理を行った場合には、少
なくとも錫粒と地鉄との界面に錫鉄合金層が形成され、
上記のように錫粒が疎密状態に分布しためっき被覆であ
って且つ金属錫量が0.30g/m2以上、錫鉄合金中
の錫量が0.05〜0.5g/m2の錫めっき被覆が形
成される。
【0019】以下、上述した構成の錫めっき被覆により
優れた特性が得られる理由を説明する。錫めっき被覆を
構成する微細錫粒の平均粒径が0.3μm未満ではめっ
き面の凹凸の度合いが小さくなるため、十分な塗料密着
性およびフィルム密着性が得られない。一方、錫粒の平
均粒径が1.5μmを超えると錫粒が剥離しやすくなる
ため、耐錫剥離性が劣る。なお、錫粒の粒径とは、錫粒
の鋼板面上への2次元投影面積を円換算したときの当該
円の直径を指す。
【0020】錫めっき被覆には、錫粒による錫被覆率が
小さい“疎めっき領域”が点在することが必要であり、
上述したような錫めっき量の範囲においてこのような
“疎めっき領域”を設けることにより錫の存在形態が局
所化(偏在化)し、耐錫剥離性が効果的に高められる。
つまり、鋼板面での錫粒の存在形態を、剥離すべき錫粒
があまり存在しない上記“疎めっき領域”と錫粒が密集
しているため剥離を生じにくい“密めっき領域”とに二
極化することにより、耐錫剥離性が効果的に高められる
ものである。このような観点からして“疎めっき領域”
は錫粒の存在密度が十分に低いこと、具体的には錫粒に
よる錫被覆率が10%以下であることが必要である。な
お、錫粒による錫被覆率とは、錫粒の鋼板面への2次元
投影面積の総和が鋼板面に対して占める割合を指す。
【0021】点在する疎めっき領域の平均面積が100
μm2未満では、地鉄部分の露出率が低いため十分な塗
料密着性とフィルム密着性を得ることができない。一
方、疎めっき領域の平均面積が2000μm2を超える
と、地鉄部分の露出率が過剰になるため耐食性が劣化す
る。また、疎めっき領域の鋼板面上での合計の面積率が
10%未満では、地鉄部分の露出率が低いため十分な塗
料密着性とフィルム密着性を得ることができない。一
方、疎めっき領域の鋼板面上での合計の面積率が50%
を超えると、地鉄部分の露出率が過剰になるため耐食性
が劣化する。
【0022】疎めっき領域以外の領域(以下、“密めっ
き領域”という)には錫粒が疎めっき領域よりも密に存
在する。この“密めっき領域”は錫粒が密集し若しくは
比較的密な状態で存在することよって、その一部または
全部に擬似的にひと固まりとなった偏平状の錫塊が形成
される領域であり、先に述べたようにこのような擬似的
偏平状錫塊あるいはそれに近い形態に錫粒が密集した状
態になると耐錫剥離性が顕著に向上する。密めっき領域
における錫粒による平均錫被覆率が40%未満では目的
とする錫粒の密集化が不十分である。図1および図2
は、以上述べたような錫めっき被覆を有する錫めっき鋼
板表面の顕微鏡拡大写真であり、図1が倍率1000
倍、図2が倍率3000倍で撮影した拡大写真である。
【0023】通常、上述した錫めっき被覆を有する錫め
っき面にはクロムめっきまたはクロメート処理が施さ
れ、この処理により錫めっき面に金属クロム層とその上
層の水和クロム酸化物層からなる皮膜が形成される。形
成される皮膜は、金属クロム層のクロム付着量を6〜2
5mg/m2、水和クロム酸化物層の金属クロム換算の
付着量を6〜25mg/m2とすることが好ましい。
【0024】金属クロム層のクロム付着量が6mg/m
2未満では十分な塗料密着性やフィルム密着性が得られ
ず、一方、25mg/m2を超えると溶接性が劣化す
る。また、水和クロム酸化物層の金属クロム換算の付着
量が6mg/m2未満では十分な塗料密着性やフィルム
密着性が得られず、一方、25mg/m2を超えると溶
接性が劣化する。また、錫めっき面に上記の金属クロム
層とその上層の水和クロム酸化物層を形成させるには、
硫酸添加の無水クロム酸浴で5〜50ASD程度の電流
密度でクロムめっきを行えばよい。
【0025】
【実施例】通常の方法によって冷間圧延、連続焼鈍およ
び調質圧延された厚さ0.22mmの低炭素冷延鋼板に
通常の脱脂および酸洗を施した後、錫めっき浴において
錫めっきを施し、一部の鋼板については加熱処理を施し
て、錫めっき鋼板を作製した。この錫めっき鋼板に対し
てクロムめっきを施して、錫めっき面に金属クロム層と
その上層の水和クロム酸化物層を形成し、溶接缶用素材
を得た。これら各溶接缶用素材の錫めっきの形態および
被覆率を測定するとともに、溶接性(接触抵抗)、耐錫剥
離性、塗料およびフィルム密着性、耐食性を評価した。
錫めっき条件、クロムめっき条件、各特性の評価法およ
び錫めっき被覆の構成の測定方法を以下に示す。
【0026】(1)錫めっき (a)めっき浴条件 二価錫イオン濃度:15〜40g/l フェノールスルホン酸濃度:5〜25g/l(硫酸換
算) 硫酸濃度:25〜160g/l (b)電解条件(陰極電解処理条件) 電流密度:5〜45ASD
【0027】(2)クロムめっき (a)めっき浴条件 無水クロム酸濃度:15g/l 硫酸濃度:0.3g/l 浴温度:45℃ (b)電解条件 電流密度:40ASD 電解時間:0.2秒
【0028】(3)各特性の評価 (a)溶接性(接触抵抗) 供試材に対して210℃×30分の熱処理を行った後、
50mm平方に切断し、この試料を2枚重ね合わせて電
極径4.5mmφの電極間に挟んだ後、この電極間を5
0kgfで加圧し、電極間に1Aの電流を流して接触抵
抗を測定した。測定された接触抵抗値に基づき、溶接性
は以下のように評価される。 30μΩ以下:合格 30μΩ超 :不合格
【0029】(b)耐錫剥離性 供試材を130mm×180mmの底面の箱底に張り付
けた上で、箱内に10mmφのアルミナボールを200
g入れ、600mmの振り幅で箱長辺方向に1往復/1
秒のスピードで100秒間振り続けた。アルミナボール
との摩擦によって供試材から剥離した錫量を、供試材の
試験前後の蛍光X線法による測定錫量の差によって求め
た。測定された錫剥離量に基づき、耐錫剥離性は以下の
ように評価される。 0.05g/m2以下:合格 0.05g/m2超 :不合格
【0030】(c)フィルム密着性(ラミネート板深絞り
試験) 供試材にポリエチレンテレフタレートフィルムをラミネ
ートした後、58mmφに打ち抜いて30mmφのダイ
で深絞りを行い、フィルムが剥離しない限界深絞り高さ
を求めた。この限界深絞り高さに基づき、フィルム密着
性は以下のように評価される。なお、深絞り高さが22
mmで剥離のない供試材は、この高さが絞り抜きとなる
ため上限値となったものである。 17mm以上:合格 17mm未満:不合格
【0031】(d)塗料密着性(Tピール試験) 供試材にエポキシフェノール系塗料を塗装焼付した後、
5mm×100mmの試験片に剪断した。この試験片を
2枚重ね合わせて5mm×50mmのナイロンフィルム
を間に挟み、加熱溶融圧着した。次いで、フィルムが付
いていない部分を外側にして90°に開き、T字形の試
験片を作った。試験片の開いた部分の端を掴んで、試験
片を剥離させていく時の引っ張り強度を測定した。この
引張り強度に基づき、塗料密着性は以下のように評価さ
れる。 4.0kg/5mm以上:合格 4.0kg/5mm未満:不合格
【0032】(e)耐食性試験(FFC試験) 供試材のおもて面にエポキシフェノール系塗料を50m
g/m2の付着量で塗装焼付(焼付条件:210℃×1
0分→190℃×10分)し、さらに裏面にも同一塗料
を塗装焼付(焼付条件:190℃×10分)した後、お
もて面の塗膜に鋭利なカッターでクロスカットを入れ、
次いでエリクセン5mm張り出し加工したものを試験片
とした。この試験片に1時間塩水噴霧した後、ろ紙で塩
水を拭き取り、相対湿度85%,温度45℃の雰囲気中
に10日間放置し、カットエッジ部及び加工部の発錆程
度を目視で観察し、以下により評価した。 ○:端面およびカット部からの発錆が無い或いは成長し
ていないもの ×:端面およびカット部より糸錆が成長しているもの
【0033】(4)錫めっき被覆の構成の測定方法 (a) 錫粒による錫被覆率の測定 SEMによる写真撮影(×3000)を行い、写真中の
錫粒を透明シートに写し取り、これら錫粒の面積(鋼板
面への2次元投影面積)の総和から錫被覆率を求めた。 (b) 疎めっき領域の平均面積の測定 SEMによる写真撮影(×1000)を行い、写真中の
疎めっき領域を透明シートに写し取り、これらの面積を
測定した。同測定を無作為に10箇所について行い、平
均値を疎めっき領域の平均面積とした。
【0034】(c) 疎めっき領域の鋼板面上での合計の面
積率の測定 上記(b)における疎めっき領域の平均面積の測定におい
て、写真中の疎めっき領域の割合を視野毎に算出し、1
0視野での平均値を疎めっき領域の鋼板面上での合計の
面積率の測定値とした。 (d)錫粒の粒径の測定 SEMによる写真撮影(×3000)を行い、写真中の
錫粒を透明シートに写し取った。この透明シートを方眼
紙上でコロニーカウンターにて換数し、錫粒の個々の面
積(鋼板面への2次元投影面積)を求めた。この測定面
積を円換算したときの当該円の直径を求め、これを各錫
粒の粒径とした。
【0035】各供試例の錫めっき条件と皮膜構成を表1
〜表8に、また性能評価の結果を表9〜表12に示す。
これによれば、本発明例はいずれも溶接性、塗料密着
性、フィルム密着性、耐食性、耐錫剥離性のすべての性
能に優れていることが判る。これに対して比較例1は、
めっき浴中の錫イオン濃度が低いために錫の析出形態が
平板状となり、塗料密着性、フィルム密着性、耐食性が
劣っている。比較例2は、めっき浴中のフェノールスル
ホン酸濃度が低いため錫の電析形態がデンドリックとな
り、耐錫剥離性が劣っている。
【0036】比較例3は、めっき浴中の硫酸濃度が低い
ため、疎めっき領域以外の領域での錫粒による平均錫被
覆率が低く、このため耐錫剥離性が劣っている。比較例
4はめっき浴中の硫酸濃度が高過ぎるため、疎めっき領
域の面積率が低く、このため塗料密着性、フィルム密着
性が劣っている。比較例5は錫めっきの際の電流密度が
小さいため錫粒の粒径が大き過ぎ、このため耐錫剥離性
が劣っている。
【0037】比較例6は電流密度が大き過ぎるため疎め
っき領域の面積率が低く、また、疎めっき領域以外の領
域での錫粒による平均錫被覆率も低く、このため塗料密
着性、フィルム密着性、耐錫剥離性が劣っている。比較
例7は錫めっき量が少ないため溶接性および耐食性が劣
っている。比較例8は金属錫量が少ないため溶接性が劣
っている。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
【表6】
【0044】
【表7】
【0045】
【表8】
【0046】
【表9】
【0047】
【表10】
【0048】
【表11】
【0049】
【表12】
【0050】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、塗料
密着性、フィルム密着性、耐食性、溶接性等に優れるだ
けでなく、耐錫剥離性にも優れた溶接缶用の錫めっき鋼
板を安価にしかも安定して製造することできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明法により製造された錫めっき鋼板表面の
顕微鏡拡大写真(拡大倍率:1000倍)
【図2】本発明法により製造された錫めっき鋼板表面の
顕微鏡拡大写真(拡大倍率:3000倍)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板の少なくとも片面を、脱脂および酸
    洗した後、二価錫イオンを20〜40g/l、フェノー
    ルスルホン酸を硫酸換算で10〜25g/l、硫酸を3
    0〜150g/l含む錫めっき浴を用い、電流密度10
    〜40ASDで錫めっき量が300〜2000mg/m
    2の錫めっきを行うことにより、鋼板の少なくとも片面
    に、平均粒径が0.3〜1.5μmで且つ鋼板面に疎密
    状態に分布した錫粒からなる錫めっき被覆であって、錫
    粒による錫被覆率が10%以下の疎めっき領域が点在す
    るとともに、該疎めっき領域の平均面積が100〜20
    00μm2であり、且つ疎めっき領域の鋼板面上での合
    計の面積率が10〜50%であり、前記疎めっき領域以
    外の領域には錫粒が疎めっき領域よりも密に存在すると
    ともに、該疎めっき領域以外の領域における錫粒による
    平均錫被覆率が40%以上である錫めっき被覆を形成す
    ることを特徴とする溶接缶用錫めっき鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 鋼板の少なくとも片面を、脱脂および酸
    洗した後、二価錫イオンを20〜40g/l、フェノー
    ルスルホン酸を硫酸換算で10〜25g/l、硫酸を3
    0〜150g/l含む錫めっき浴において、電流密度1
    0〜40ASDで錫めっき量が400〜2000mg/
    2の錫めっきを行い、しかる後、加熱処理を行うこと
    により、鋼板の少なくとも片面に、平均粒径が0.3〜
    1.5μmの錫粒が疎密状態に分布し、金属錫量が0.
    30g/m2以上、錫鉄合金中の錫量が0.05〜0.
    5g/m2の錫めっき被覆であって、錫粒による錫被覆
    率が10%以下の疎めっき領域が点在するとともに、該
    疎めっき領域の平均面積が100〜2000μm2であ
    り、且つ疎めっき領域の鋼板面上での合計の面積率が1
    0〜50%であり、前記疎めっき領域以外の領域には錫
    粒が疎めっき領域よりも密に存在するとともに、該疎め
    っき領域以外の領域における錫粒による平均錫被覆率が
    40%以上である錫めっき被覆を形成させることを特徴
    とする溶接缶用錫めっき鋼板の製造方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6769160B2 (en) 1999-10-08 2004-08-03 Murata Manufacturing Co., Ltd. Process for manufacturing electronic part

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US6769160B2 (en) 1999-10-08 2004-08-03 Murata Manufacturing Co., Ltd. Process for manufacturing electronic part

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