JP3271235B2 - 耐錫剥離性に優れた錫めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents

耐錫剥離性に優れた錫めっき鋼板及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、各種の食品や飲料
等の充填保存に適した溶接缶用の錫めっき鋼板およびそ
の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】飲料缶や食缶の分野において溶接缶は大
きな比率を占めており、その材料コストの削減は産業上
の重要な課題であるといえる。飲料缶や食缶の分野で用
いられる缶材料としてはブリキ、LTS(薄目付ぶり
き)、TFS(ティンフリースチール)等が一般的であ
り、最近ではこれらに有機被覆を施して用いるものも多
くなっている。有機被覆の下地鋼板として考えた場合、
TFSは安価で且つ塗料およびフィルム密着性に優れる
という長所があるが、一方において溶接性に劣るという
欠点がある。一方、ぶりきやLTSは溶接性には優れて
いるものの、コスト面や塗料およびフィルム密着性の点
でTFSに劣る。
【0003】従来、このような両者の短所を補うべく様
々な試みが行われてきた。その1つが鋼板面上に錫層を
不均一(部分的)に存在させた鋼板であり、この錫めっ
き鋼板は、塗料およびフィルム密着性と溶接性がともに
優れた鋼板として知られている。この種の錫めっき鋼板
に関して、特開昭57−23091号公報や特開昭57
−200592号公報では、有機被覆の下地鋼板とし
て、錫めっき後にリフローを行うことで錫を島状に分散
させた鋼板を用いることが示されており、錫めっき量の
削減により材料コストを低減化し、且つ溶接性を確保し
つつ塗料密着性の向上を図ることができるという点で実
用的な技術である。
【0004】一方、特開平2−298277公報、特開
平2−310378公報、特公平6−33506公報で
は、リフロー工程を経ることなく鋼板面に錫を粒状に点
在させる粒状錫めっき鋼板の製造法を開示している。こ
の粒状錫めっき鋼板は、色調(白色)、耐食性、溶接性
等に優れるとともに、上述したリフロー工程を経ること
で錫を島状に分散させた錫めっき鋼板に較べて塗料密着
性やフィルム密着性が格段に優れ、また、必要錫量が少
なく且つリフロー工程を必要としないために安価に製造
できるなど、溶接缶用素材として画期的な材料であると
いえる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の粒状錫
めっき鋼板は鋼板表面の錫粒が剥離しやすく、製缶工程
における剥離錫のロール付着や製缶後の品質劣化といっ
た大きな問題を抱えており、この問題が缶用素材として
広く市場に普及することを妨げている。このような問題
に対して、特公平8−996号公報では微量のエトキシ
ナフトールスルホン酸(ENSA)を含有するフェロス
タン浴を用いて錫めっきすることにより、粒状錫の形状
を扁平にして耐錫剥離性を改善することが提案されてい
るが、この製造方法は浴中のENSA濃度の微妙な変化
に対応して粒状錫の形状が大きく変わるため粒状錫の形
状の制御が極めて難しく、実用化は困難である。またこ
のため、耐錫剥離性についても十分な改善効果は期待で
きない。
【0006】したがって本発明の目的は、錫めっきによ
り錫を鋼板面に対して部分的に電析させることにより製
造される錫めっき鋼板において、塗料密着性、フィルム
密着性、耐食性、溶接性等に優れるだけでなく、耐錫剥
離性にも優れた錫めっき鋼板とその製造方法を提供する
ことにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述したような粒状錫め
っき鋼板の長所を残したまま、その短所を補うことがで
きれば、溶接缶用材として最も高い品質を持つ材料が期
待できる。本発明者はこのような意図の下に鋼板面上に
形成される部分錫めっきの形態について検討を重ね、そ
の結果、鋼板面上に地鉄露出部分を適度に残しながら、
特定の形態の板状錫塊を点在させためっき皮膜構造とす
ることにより、従来の粒状錫めっきに較べて錫の剥離が
起こりにくく、しかも塗料密着性、フィルム密着性、耐
食性、溶接性等の面でも優れた特性が得られることを見
い出した。本発明はこのような知見に基づきなされたも
ので、その特徴とする構成は以下の通りである。
【0008】(1) 錫めっきにより錫を鋼板面に対して部
分的に電析させた後、加熱処理によって電着錫の一部を
地鉄と合金化させることにより製造される錫めっき鋼板
であって、鋼板の少なくとも片面側に、錫めっきにより
形成された板状の錫塊が分散して点在し、全錫めっき量
が300〜1500mg/m2であり、面積率換算で7
0%以上の板状の錫塊が、錫塊の鋼板面からの平均高さ
Hと錫塊基底部の面積を円換算したときの当該円の直径
Dとの関係がH/D≦0.3を満足し、板状の錫塊に覆
われない地鉄露出部分の面積率が30%以上であり、板
状の錫塊と地鉄間には錫鉄合金層が介在し、該錫鉄合金
層の合金錫量が錫量換算で0.01〜0.20g/m2
であることを特徴とする耐錫剥離性に優れた錫めっき鋼
板。
【0009】(2) 上記(1)の錫めっき鋼板において、板
状の錫塊が存在する鋼板面に、板状の錫塊と地鉄露出部
分をともに覆うクロム付着量が5〜50mg/m2の金
属クロム層と、その上層の金属クロム換算の付着量が5
〜30mg/m2の水和クロム酸化物層とを有すること
を特徴とする耐錫剥離性に優れた錫めっき鋼板。 (3) 上記(1)の錫めっき鋼板の製造方法において、鋼板
表面を脱脂および酸洗した後、二価錫イオンを15〜6
0g/l、フェノールスルホン酸を硫酸換算で5〜40
g/l、添加剤として分子量が1000〜70000の
ポリエチレングリコールを0.5〜30g/l含有する
錫めっき浴において、1ASD〜30ASDの電流密度
で電気錫めっきを行い、次いで、電着した錫の一部を地
鉄と合金化させる加熱処理を行うことを特徴とする耐錫
剥離性に優れた錫めっき鋼板の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細と限定理由を
説明する。本発明の錫めっき鋼板は、錫めっきにより錫
を鋼板面に対して部分的に電析させた後、加熱処理によ
って電着錫の一部を地鉄と合金化させることにより製造
される錫めっき鋼板である。このような部分錫めっき鋼
板は、鋼板面全面に錫めっきを施した後にリフロー工程
によって錫を不連続状若しくは島状に分散させることに
より製造される錫めっき鋼板に較べて、格段に優れた塗
料密着性及びフィルム密着性を示す。
【0011】既に述べたように、粒状錫めっきが鋼板面
から剥離しやすいのは、電析した錫の形状に負うところ
が大きい。すなわち、ロールとの摩擦等の物理的作用が
めっき鋼板の表面に加えられると、鋼板との接触面積が
小さく且つ鋼板表面に対して垂直方向の高さが大きい粒
状錫は剥離が起こりやすい。一方、粒状錫めっき鋼板に
クロムめっきを施した溶接缶用鋼板のフィルムや塗料と
の密着力は、表面の凹凸が激しいものほど、また地鉄露
出部分の面積が多いもの(すなわち、地鉄露出部分の上
層にクロムめっきを施した部分の面積が多いもの)ほど
強くなり、このことが粒状錫めっき鋼板がフィルム密着
性や塗料密着性に優れている理由となっている。
【0012】これらの事実を勘案すると、鋼板表面に、
鋼板との接触面積が大きく且つ平均高さが低い錫塊が適
度な比率で散在するような形態の錫めっきを形成すれ
ば、従来の粒状錫めっき鋼板の長所を維持しつつ、耐錫
剥離性の改善が可能であると考えられる。また、上記の
ような錫塊と地鉄との間に錫鉄合金層を介在させれば、
錫塊自体の剥離強度が高められ、耐錫剥離性がより効果
的に改善される。本発明はこのような前提の下に、鋼板
の少なくとも片面側に、錫めっきによる板状の錫塊が分
散して点在し、面積率換算で70%以上の板状の錫塊
が、錫塊の鋼板面からの平均高さHと錫塊基底部の面積
を円換算したときの当該円の直径Dとの関係がH/D≦
0.3を満足すること、全錫めっき量が300〜150
0mg/m2であること、板状の錫塊に覆われない地鉄
露出部分の面積率が30%以上であること、板状の錫塊
と地鉄間に錫鉄合金層が介在し、該錫鉄合金層の合金錫
量が錫量換算で0.01〜0.20g/m2であること
を、その条件とする。
【0013】図1および図2は本発明の錫めっき鋼板に
おいて、鋼板面に形成される板状錫塊の形態を模式的に
示したもので、先に述べたような従来の粒状錫めっき鋼
板では鋼板面に粒状錫が分散して点在した形態であるの
に対し、本発明では板状の錫塊が分散して点在した形態
を有する。板状の錫塊の存在形態に関しては、錫塊の鋼
板面からの平均高さHと錫塊基底部の面積を円換算した
ときの当該円の直径Dとの関係がH/D≦0.3を満足
する板状の錫塊が、鋼板面に対する面積率換算で70%
以上存在しないと、錫塊の耐剥離性が劣る。図3は、面
積率換算で70%以上の板状錫塊の平均高さH/直径D
と耐錫剥離性(錫剥離量の測定法は後述する実施例に記
載のものと同様)との関係を調べたもので、H/D>
0.3では耐錫剥離性が劣っていることが判る。なお、
錫塊の平均高さは、例えばSEMにて断面検鏡を行って
10000倍程度のSEM画像を得、これを画像処理す
ることにより算出することができる。
【0014】また、鋼板面に板状の錫塊が存在しない部
分、すなわち地鉄露出部分の面積率が30%未満では、
この種の部分錫めっき鋼板に特有の優れた塗料密着性や
フィルム密着性が得られない。全錫めっき量は300〜
1500mg/m2とする。全錫めっき量が300mg
/m2未満では十分な溶接性が得られず、一方、150
0mg/m2を超えても錫量に見合う溶接性の改善効果
が得られないため、却って経済性を損う。本発明の錫め
っき鋼板は、板状の錫塊と地鉄との間に、錫めっき後の
加熱処理によって錫塊の一部が地鉄と合金化した錫鉄合
金層が介在している。このような錫鉄合金層を錫塊と地
鉄との間に設けることにより、錫塊自体の剥離強度が高
められ、耐錫剥離性がより効果的に改善される。この錫
鉄合金層の合金錫量が錫量換算で0.01g/m2未満
では錫塊の剥離強度(地鉄に対する密着力)を十分に高
めることができず、一方、0.20g/m2を超えると
錫塊剥離強度の改善効果が飽和するだけでなく、溶接性
が悪化するため好ましくない。
【0015】通常、上記の板状錫塊が形成された鋼板面
には、金属クロム層とその上層の水和クロム酸化物層か
らなる皮膜が形成される。前記金属クロム層のクロム付
着量は5〜50mg/m2、水和クロム酸化物層の金属
クロム換算の付着量は5〜30mg/m2とする。金属
クロム層のクロム付着量が5mg/m2未満では十分な
塗料密着性やフィルム密着性が得られず、一方、50m
g/m2を超えると溶接性が劣化する。また、水和クロ
ム酸化物層の金属クロム換算の付着量が5mg/m2
満では十分な塗料密着性やフィルム密着性が得られず、
一方、30mg/m2を超えると溶接性が劣化する。
【0016】次に、本発明の錫めっき鋼板の製造方法の
好ましい構成例について説明する。本発明の錫めっき鋼
板を得るための錫めっき浴としては、二価錫イオンを1
5〜60g/l、フェノールスルホン酸を硫酸換算で5
〜40g/l、添加剤として分子量(数平均分子量)が
1000〜70000のポリエチレングリコールを0.
5〜30g/l含有する錫めっき浴を用いることが好ま
しい。錫めっき浴中の二価錫イオンの濃度が15g/l
未満では電解効率が著しく劣り(電解効率が50%以下
となる)、また、錫めっきが鋼板面に対して部分的に電
析するような状態となりにくく、本発明の規定する地鉄
露出部分の面積率の確保が難しくなる。一方、二価錫イ
オンの濃度が60g/lを超えるとスラッジの発生が顕
著になるため好ましくない。
【0017】また、錫めっき浴中のフェノールスルホン
酸の濃度が硫酸換算で5g/l未満では、電着した錫が
デンドライトとなるため本発明が規定するような形態の
錫塊が得られず、耐錫剥離性が劣ったものとなる。一
方、フェノールスルホン酸の濃度が硫酸換算で40g/
lを超えると鋼板からの鉄溶出量が多くなり、めっき浴
の劣化が著しくなるため好ましくない。本発明では錫め
っき浴中にポリエチレングリコールを添加することが大
きな特徴であり、これにより本発明が規定する錫塊の形
態を安定して得ることができる。錫めっき浴中でのポリ
エチレングリコールの濃度が0.5g/l未満では、ポ
リエチレングリコールの添加効果が十分に得られず、本
発明が規定する錫塊の形態を安定して得ることができな
い。一方、ポリエチレングリコールを30g/lを超え
て添加しても添加量に見合う効果が得られず、却って経
済性を損う結果となる。
【0018】また、ポリエチレングリコールは分子量
(数平均分子量)が1000〜70000のものを用い
る。ポリエチレングリコールの分子量が1000未満で
は鋼板面に電析する錫が粒状になりやすく、本発明が規
定する錫塊の形態を安定して得ることができない。一
方、ポリエチレングリコールの分子量が70000を超
えると地鉄露出部分の面積率が減少し、本発明が規定す
る地鉄露出部分の面積率が確保できなくなる。本発明の
錫めっき鋼板は、素材鋼板(通常は冷延鋼板)を脱脂お
よび酸洗した後、上記の錫めっき浴において1ASD〜
30ASDの電流密度で電気錫めっきを行い、次いで、
電着した錫の一部を地鉄と合金化させる加熱処理を施す
ことにより製造される。
【0019】錫めっきにおける電流密度が1ASD未満
では、所望の錫めっき量を得るために必要なめっき時間
が長くなり、生産性が劣る。一方、電流密度が30AS
Dを超えると電着した錫がデンドライト状になるため、
耐錫剥離性等の品質が劣ったものとなる。また、地鉄露
出部分の面積率の確保も難しくなる傾向がある。錫めっ
き後の加熱処理では、錫塊が溶融してその一部が地鉄と
合金化し、錫塊と地鉄との間に錫鉄合金層が形成され
る。この加熱処理は錫鉄合金層の合金錫量が錫量換算で
0.01〜0.20g/m2となるよう、その加熱条件
を調整する。
【0020】
【実施例】通常の方法によって冷間圧延、連続焼鈍及び
調質圧延された厚さ0.22mmの低炭素冷延鋼板を通
常条件で脱脂および酸洗した後、フェノールスルホン酸
浴において鋼板を陰極として電気錫めっきを施し、次い
で210〜240℃で5〜20分の加熱処理を施すこと
により錫めっき鋼板を得た。この錫めっき鋼板に対して
クロムめっきを施し、金属クロムの付着量が15mg/
2の金属クロム層と、その上層の金属クロム換算の付
着量が10mg/m2の水和クロム酸化物層を有する鋼
板を製造した。これら各鋼板の錫めっきの形態および被
覆率を測定するとともに、溶接性(接触抵抗)、耐錫剥離
性、塗料およびフィルム密着性、耐食性を評価した。
【0021】なお、鋼板面にめっきされた錫塊の面積率
と錫塊形状は以下のようにして測定した。すなわち、各
供試鋼板についてSEMによる写真撮影(×1000)
を行い、SEM画像の錫塊の部分を透明シートにペンで
写し取った。これを方眼紙上に貼り付け、コロニーカウ
ンターで1mm角を数えることで各錫塊の面積を測定
し、それぞれの錫塊について、その基底部の面積を円換
算したときの当該円の直径Dを算出した。次いで、供試
鋼板を樹脂に埋め込み、SEMにて断面検鏡を行って錫
塊の平均高さHを求め、先に算出した円換算の直径Dと
の関係から、H/D≦0.3を満たしている錫塊の総面
積を算出し、これが鋼板面に占める面積率を求めた。さ
らに、錫塊の面積の総和から錫被覆率を求めた。錫めっ
き条件、クロムめっき条件および各特性の評価法を以下
に示す。
【0022】(1)錫めっき (a)めっき浴条件 二価錫イオン濃度:10〜60g/l フェノールスルホン酸濃度:15〜40g/l(硫酸換
算) ポリエチレングリコール濃度:0.3〜29g/l (数平均分子量:1000〜70000) (b)電解条件(陰極電解処理条件) 電流密度:1〜45A/dm2 電解時間:0.01〜9秒 (2)クロムめっき (a)めっき浴条件 酸化クロム濃度:15g/l 硫酸濃度:0.2g/l 浴温度:45℃ (b)電解条件 電流密度:40A/dm2 電解時間:0.2秒
【0023】(3)各特性の評価 (a)溶接性(接触抵抗) 供試材に対して210℃×30分の熱処理を行った後、
50mm平方に切断し、この試料を2枚重ね合わせて電
極径4.5mmφの電極間に挟んだ後、この電極間を5
0kgfで加圧し、電極間に1Aの電流を流して接触抵
抗を測定した。測定された接触抵抗値に基づき、溶接性
は以下のように評価される。 30μΩ以下:合格 30μΩ超 :不合格
【0024】(b)耐錫剥離性 供試材を130mm×180mmの底面の箱底に張り付
けた上で、箱内に10mmφのアルミナボールを200
g入れ、600mmの振り幅で箱長辺方向に1往復/1
秒のスピードで100秒間振り続けた。アルミナボール
との摩擦によって供試材から剥離した錫量を、試験前後
の蛍光X線法による測定錫量の差によって求めた。測定
された錫剥離量に基づき、耐錫剥離性は以下のように評
価される。 0.02g/m2以下:合格 0.02g/m2超 :不合格
【0025】(c)フィルム密着性(ラミネート板深絞り
試験) 供試材にポリエチレンテレフタレートフィルムをラミネ
ートした後、58mmφに打ち抜いて30mmφのダイ
で深絞りを行い、フィルムが剥離しない限界深絞り高さ
を求めた。この限界深絞り高さに基づき、フィルム密着
性は以下のように評価される。 18mm以上:合格 18mm未満:不合格
【0026】(d)塗料密着性(Tピール試験) 供試材にエポキシフェノール系塗料を塗装焼付した後、
5mm×100mmの試験片に剪断した。この試験片を
2枚重ね合わせて5mm×50mmのナイロンフィルム
を間に挟み、加熱溶融圧着した。次いで、フィルムが付
いていない部分を外側にして90°に開き、T字形の試
験片を作った。試験片の開いた部分の端を掴んで、試験
片を剥離させていく時の引っ張り強度を測定した。この
引張り強度に基づき、塗料密着性は以下のように評価さ
れる。 4.0kg/5mm以上:合格4.0kg/5mm未
満:不合格
【0027】(e)耐食性試験(FFC試験) 供試材のおもて面にエポキシフェノール系塗料を50m
g/m2の付着量で塗装焼付(焼付条件:210℃×1
0分→190℃×10分)し、さらに裏面にも同一塗料
を塗装焼付(焼付条件:190℃×10分)した後、お
もて面の塗膜に鋭利なカッターでクロスカットを入れ、
次いでエリクセン5mm張り出し加工したものを試験片
とした。この試験片に1時間塩水噴霧した後、ろ紙で塩
水を拭き取り、相対湿度85%,温度45℃の雰囲気中
に10日間放置し、カットエッジ部及び加工部の発錆程
度を目視で観察し、以下により評価した。 ○:端面およびカット部からの発錆が無い或いは成長し
ていないもの ×:端面およびカット部より糸錆が成長しているもの
【0028】各供試例の錫めっき条件と皮膜構成を表1
〜表4に、また性能評価の結果を表5〜表8に示す。こ
れによれば、本発明例はいずれも溶接性、塗料密着性、
フィルム密着性、耐食性、耐錫剥離性のすべての性能に
優れていることが判る。これに対して、比較例1はめっ
き浴中の二価錫イオン濃度が低過ぎるため、錫めっきが
鋼板面に対して部分に電析するような形態とはならず、
平坦な錫層となって地鉄露出部分の面積率も0%となっ
ている。このため耐食性、塗料密着性、フィルム密着性
が劣っている。比較例2は本発明が規定する錫塊(H/
D≦0.3を満足する錫塊)の存在率が少なすぎる比較
例であり、耐錫剥離性が劣っている。比較例3は製造時
の電流密度が高すぎるため錫めっきがデンドライト状と
なったものであり、このため耐錫剥離性が劣っている。
比較例4は錫めっき量が少なすぎるため、溶接性と耐食
性が劣っている。
【0029】比較例5は製造時の電流密度が高すぎるた
め地鉄露出部分の面積率が低すぎ、このため塗料密着
性、フィルム密着性、耐食性が劣っている。また、錫が
デンドライト状になるため耐錫剥離性も劣っている。比
較例6は錫めっき浴中にENSAを添加し、平板状の錫
めっきを施したものであり、このため塗料密着性および
フィルム密着性が劣っている。比較例7は金属クロム層
のクロム付着量が少なすぎるため、塗料密着性、フィル
ム密着性および耐食性が劣っている。比較例8は水和ク
ロム酸化物層の付着量が少なすぎるため、塗料密着性と
フィルム密着性が劣っている。比較例9は錫鉄合金層の
合金錫量が多すぎるため、溶接性が劣っている。比較例
10は錫めっき浴中へのポリエチレングリコールの添加
量が少なすぎるため地鉄露出部分の面積率が低く、この
ため塗料密着性とフィルム密着性が劣っており、また耐
食性も劣っている。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
【表5】
【0035】
【表6】
【0036】
【表7】
【0037】
【表8】
【0038】
【発明の効果】以上述べたように本発明の錫めっき鋼板
は、塗料密着性、フィルム密着性、耐食性、溶接性等に
優れるだけでなく、耐錫剥離性にも優れており、溶接缶
用の材料として極めて有用なものである。また、本発明
の製造方法によれば、このような錫めっき鋼板を安価に
しかも効率的に安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鋼板面に形成される板状錫塊の形態を
模式的に示した斜視図
【図2】本発明の鋼板面に形成される板状錫塊の形態を
模式的に示した断面図
【図3】鋼板面に板状錫塊が点在した錫めっき鋼板にお
いて、面積率換算で70%以上の板状錫塊の平均高さH
/直径Dと耐錫剥離性との関係を示すグラフ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岩井 一郎 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平2−159386(JP,A) 特開 昭62−124296(JP,A) 特開 昭62−103390(JP,A) 特開 平8−176882(JP,A) 特開 平8−269770(JP,A) 特開 平3−36288(JP,A) 特開 平2−282498(JP,A) 特開 平4−247897(JP,A) 特許3252725(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25D 3/30 C23C 28/00 C25D 5/26

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 錫めっきにより錫を鋼板面に対して部分
    的に電析させた後、加熱処理によって電着錫の一部を地
    鉄と合金化させることにより製造される錫めっき鋼板で
    あって、鋼板の少なくとも片面側に、錫めっきにより形
    成された板状の錫塊が分散して点在し、全錫めっき量が
    300〜1500mg/m2であり、面積率換算で70
    %以上の板状の錫塊が、錫塊の鋼板面からの平均高さH
    と錫塊基底部の面積を円換算したときの当該円の直径D
    との関係がH/D≦0.3を満足し、板状の錫塊に覆わ
    れない地鉄露出部分の面積率が30%以上であり、板状
    の錫塊と地鉄間には錫鉄合金層が介在し、該錫鉄合金層
    の合金錫量が錫量換算で0.01〜0.20g/m2
    あることを特徴とする耐錫剥離性に優れた錫めっき鋼
    板。
  2. 【請求項2】 板状の錫塊が存在する鋼板面に、板状の
    錫塊と地鉄露出部分をともに覆うクロム付着量が5〜5
    0mg/m2の金属クロム層と、その上層の金属クロム
    換算の付着量が5〜30mg/m2の水和クロム酸化物
    層とを有することを特徴とする請求項1に記載の耐錫剥
    離性に優れた錫めっき鋼板。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の錫めっき鋼板の製造方
    法において、鋼板表面を脱脂および酸洗した後、二価錫
    イオンを15〜60g/l、フェノールスルホン酸を硫
    酸換算で5〜40g/l、添加剤として分子量が100
    0〜70000のポリエチレングリコールを0.5〜3
    0g/l含有する錫めっき浴において、1ASD〜30
    ASDの電流密度で電気錫めっきを行い、次いで、電着
    した錫の一部を地鉄と合金化させる加熱処理を行うこと
    を特徴とする耐錫剥離性に優れた錫めっき鋼板の製造方
    法。
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