JP2000109066A - 内容物保護性に優れた一般缶用樹脂被覆鋼板および樹脂フィルム - Google Patents

内容物保護性に優れた一般缶用樹脂被覆鋼板および樹脂フィルム

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JP2000109066A
JP2000109066A JP29310098A JP29310098A JP2000109066A JP 2000109066 A JP2000109066 A JP 2000109066A JP 29310098 A JP29310098 A JP 29310098A JP 29310098 A JP29310098 A JP 29310098A JP 2000109066 A JP2000109066 A JP 2000109066A
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resin layer
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polyethylene
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JP29310098A
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English (en)
Inventor
Mikiyuki Ichiba
幹之 市場
Naoyuki Oba
直幸 大庭
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 酸性からアルカリ性までの用途適性に優れ、
且つ内容物保護性、外面塗装印刷性、樹脂密着性等に優
れた一般缶用樹脂被覆鋼板を得る。 【解決手段】 表面処理鋼板の缶内面側となる面に、複
層の樹脂層からなるオレフィン樹脂層を有し、このオレ
フィン樹脂層において、鋼板面と接する樹脂層を、融点
が低く密着性に優れ且つ加工時の上層樹脂層への応力緩
和が期待できるポリエチレン系樹脂層とし、缶内容物と
接する樹脂層を、融点が高く塗装印刷時の耐熱融着性に
優れ、且つ界面活性剤中での応力集中部の割れを生じに
くいポリプロピレン系樹脂層とし、さらに、界面を形成
して接するポリエチレン系樹脂層とポリプロピレン系樹
脂層の界面密着性を確保するため、両樹脂層のうちの少
なくとも一方の樹脂層が、シングルサイト系触媒を用い
て合成された樹脂を主成分とするオレフィン樹脂からな
ることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、18L缶、ペール
缶、ドラム缶等のような飲料缶以外の缶体(一般缶)の
缶胴部や蓋部として好適な用途適性、内容物保護性、樹
脂密着性および塗装印刷適性等に優れた樹脂被覆鋼板お
よびこの樹脂被覆鋼板に使用されるラミネート用樹脂フ
ィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】飲料缶以外の一般缶用途(特に大型缶分
野)において、各種ラミネート鋼板を使用した高耐食缶
を製造する試みがなされている。大型缶ではレトルト処
理などを行なわないため飲料缶のような高い樹脂密着性
は要求されない。一方、飲料缶以外の一般缶用途では、
充填される内容物が化学薬品、塗料、食品、油など多岐
にわたり、内容物の性状も酸性からアルカリ性まで多種
多様である。
【0003】酸からアルカリまでの幅広い内容物に対し
て耐食性を有する樹脂としては、ポリプロピレンやポリ
エチレンなどのオレフィン樹脂がよく知られている。こ
のようなオレフィン樹脂を用いた缶用材料として、特開
昭53−141786号等ではポリエチレンラミネート
鋼板が、また、特公平2−733589号等ではポリプ
ロピレンラミネート鋼板がそれぞれ開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、本発明者らが
これら従来の一般缶用途のオレフィン系樹脂ラミネート
鋼板の特性について詳細に検討した結果、以下のような
問題点があることが判明した。一般に、ラミネート鋼板
は通常の塗装鋼板に較べて樹脂被覆に要するコストが価
格が高い。しかし、缶外面側の塗装印刷前に大量生産ラ
インで連続的にラミネート処理を行うことにより、樹脂
被覆に要する生産コストを下げることが可能となる。従
来、樹脂を被覆するための代表的なラミネート方法とし
ては、以下の方法が知られている。
【0005】(1) フィルムによるコイルラミネート法:
素材鋼板を接着樹脂層の融点以上に加熱し、鋼板の片面
または両面に樹脂フィルムシートをラミネートし、樹脂
フィルムの融点〜250℃の温度域から水等で急冷する
方法。 (2) 溶融熱押出しラミネート法:予熱された素材鋼板の
片面または両面にTダイ等により樹脂を溶融押出しラミ
ネートした後、接着樹脂層の融点以上である130℃〜
250℃の温度範囲で保持し、しかる後、空冷または水
で急冷する方法。
【0006】上記各方法でラミネートを行う場合、いず
れの方法でもオレフィン樹脂の溶融と凝固を伴うが、融
点の高いオレフィン樹脂であるポリプロピレン樹脂をラ
ミネートした場合、ラミネート後の残留応力が高くなる
傾向にあり、このため良好な密着性や加工後耐食性が得
られにくくなる。
【0007】また、缶外面側への塗装印刷は、片面ラミ
ネート鋼板の非ラミネート面または両面ラミネート鋼板
の樹脂被覆面に対して行われることになるが、このよう
な焼付処理を伴う塗装印刷を行うためには、缶内面側の
ラミネート樹脂には焼付処理に耐え得る耐熱性が要求さ
れる。しかし、缶内面側にポリエチレン樹脂をラミネー
トした場合、ポリエチレン樹脂は融点が低いため、塗装
印刷工程の焼付処理の際にラミネート樹脂が板搬送設備
に融着したり、ラミネート樹脂面に接触跡を生じたりす
ることが避けられない。
【0008】さらに、ラミネート方法には拘りなく、ポ
リプロピレンラミネート鋼板やポリエチレンラミネート
鋼板には以下のような問題があることが判明した。 (1) ポリプロピレン樹脂層は、一般缶製缶時の衝撃加工
の際の応力集中により白化の問題を生じ易い。 (2) ポリプロピレン樹脂は重合方法がグラフト重合主体
であるため、商業的に選択できる接着性樹脂がポリエチ
レン樹脂に比較して限定される制約がある。 (3) ポリエチレン樹脂層は、一般缶用途では内容物とし
て多く使用される界面活性剤中で応力集中部の割れを生
じやすい問題がある。
【0009】したがって本発明の目的は、18L缶やペ
ール缶等のような大型缶をはじめとする一般缶用途の缶
胴部や蓋部に使用される樹脂被覆鋼板であって、酸性か
らアルカリ性までの用途適性に優れ、且つ内容物保護性
(耐食性および缶内容物中に金属や有機成分の溶出を生
じにくい特性)、外面塗装印刷性、樹脂密着性等の諸特
性に優れた一般缶用樹脂被覆鋼板および樹脂フィルムを
提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上述した
従来技術の課題を解決すべく種々の樹脂皮膜構成を有す
る樹脂被覆鋼板とその特性について調査および検討を行
い、その結果、以下のような知見を得た。
【0011】(1) 先に述べたようなポリエチレンラミネ
ート鋼板とポリプロピレンラミネート鋼板がそれぞれ有
する問題点に対し、缶内面側の樹脂被覆層を複層の樹脂
層からなるオレフィン樹脂層で構成するとともに、この
オレフィン樹脂層のうち缶内容物と接する側の樹脂層
を、融点が高く塗装印刷時の耐熱融着性に優れ、且つ界
面活性剤中での応力集中部の割れを生じにくいポリプロ
ピレン系樹脂層とするとともに、鋼板面と接する側の樹
脂層(接着層)を、融点が低く密着性に優れ、且つ加工
時の上層樹脂層への応力緩和が期待でき、さらに接着層
として樹脂種の選択範囲が広いポリエチレン系樹脂層と
することにより、先に述べたようなポリエチレンラミネ
ート鋼板とポリプロピレンラミネート鋼板がそれぞれ有
する問題を解消できる。
【0012】(2) 塗装印刷時の焼付工程で塗装印刷設備
との接触によりラミネート面に接触跡が生じるという問
題に対しても、上記ポリプロピレン系樹脂層/ポリエチ
レン系樹脂層からなるオレフィン樹脂層を有する樹脂被
覆鋼板は、接触跡が生じる限界温度がポリプロピレンラ
ミネート鋼板と同様に高く、このため接着跡を生じにく
い。
【0013】(3) ポリプロピレンラミネート鋼板では、
18L缶やペール缶等の製缶時に特有の衝撃加工を受け
ることにより、樹脂層の白化や加工後耐食性の劣化を生
じるが、上記ポリプロピレン系樹脂層/ポリエチレン系
樹脂層からなるオレフィン樹脂層を有する樹脂被覆鋼板
は衝撃加工による樹脂層の白化や加工後耐食性の劣化を
生じにくい。
【0014】(4) 従来広く用いられているチーグラーナ
ッタ触媒で合成されたオレフィン樹脂(ポリプロピレン
系樹脂、ポリエチレン系樹脂)では、前記ポリプロピレ
ン系樹脂層/ポリエチレン系樹脂層の界面の密着性が良
好なオレフィン樹脂層を得ることは難しい。また、接着
剤で両樹脂層の界面を密着させることも可能ではある
が、コストの点で好ましくなく、また、内容物によって
は接着成分の溶出が懸念される。
【0015】このような問題に対して、界面を形成して
接するポリプロピレン系樹脂層とポリエチレン系樹脂層
のうちの少なくとも一方の樹脂層を、シングルサイト系
触媒を使用して合成した樹脂を主成分とするオレフィン
樹脂から構成することにより、ポリプロピレン系樹脂層
/ポリエチレン系樹脂層の界面の密着性が良好な樹脂層
が得られる。このような複層の樹脂層からなるオレフィ
ン樹脂層は、例えば、Tダイなど使用して両樹脂層を構
成する樹脂を鋼板面に溶融熱押出しするラミネート法、
或いは両樹脂層を構成する樹脂を溶融状態から同時に熱
押出しすることにより、両樹脂層が界面を形成して接着
した樹脂フィルムを成型し、この樹脂フィルムを鋼板面
にラミネートする方法により形成できる。
【0016】(5) 上記のポリプロピレン系樹脂層/ポリ
エチレン系樹脂層からなるオレフィン樹脂層を有する樹
脂被覆鋼板において、缶内容物と接するポリプロピレン
系樹脂層をシングルサイト系触媒を使用して合成した樹
脂を主成分とするオレフィン樹脂で構成した樹脂被覆鋼
板は、従来のチーグラーナッタ触媒で合成されたオレフ
ィン樹脂を使用した樹脂被覆鋼板に較べて、塗装印刷時
の焼付工程で塗装印刷設備との接触によりラミネート面
に接触跡が生じる限界温度がさらに高くなり、このため
ラミネート面に接触跡を生じにくい。
【0017】(6) 上記のポリプロピレン系樹脂層/ポリ
エチレン系樹脂層からなるオレフィン樹脂層を有する樹
脂被覆鋼板において、鋼板面と接するポリエチレン系樹
脂層をシングルサイト系触媒で合成された樹脂を主成分
とするポリエチレン系樹脂で構成した樹脂被覆鋼板は、
従来のチーグラーナッタ触媒で合成された樹脂を使用し
たものに較べて加工後耐食性に優れている。
【0018】(7) 上記のポリプロピレン系樹脂層/ポリ
エチレン系樹脂層からなるオレフィン樹脂層を有する樹
脂被覆鋼板において、缶内容物と接するポリプロピレン
系樹脂層をシングルサイト系触媒で合成された樹脂を主
成分とするポリプロピレン系樹脂で構成した樹脂被覆鋼
板は、従来のチーグラーナッタ触媒で合成された同一組
成の樹脂を使用したものに較べて、衝撃加工を受けた際
の樹脂層の耐白化性に優れている。
【0019】本発明は以上のような知見に基づきなされ
たもので、その特徴とする構成は以下の通りである。 [1] 表面処理鋼板の少なくとも缶内面側となる面に、複
層の樹脂層からなるオレフィン樹脂層を有し、該オレフ
ィン樹脂層において、鋼板面と接する樹脂層がポリエチ
レン系樹脂からなり、且つ缶内容物と接する樹脂層がポ
リプロピレン系樹脂からなり、さらに、界面を形成して
接するポリエチレン系樹脂層とポリプロピレン系樹脂層
のうちの少なくとも一方の樹脂層が、シングルサイト系
触媒を用いて合成された樹脂を主成分とするオレフィン
樹脂からなることを特徴とする内容物保護性に優れた一
般缶用樹脂被覆鋼板。
【0020】[2] 上記[1]の樹脂被覆鋼板において、複
層の樹脂層からなるオレフィン樹脂層において、界面を
形成して接するポリエチレン系樹脂層とポリプロピレン
系樹脂層が、シングルサイト系触媒を用いて合成された
樹脂を主成分とするオレフィン樹脂からなることを特徴
とする内容物保護性に優れた一般缶用樹脂被覆鋼板。
【0021】[3] 缶内面側となる表面処理鋼板面に被覆
されべき複層の樹脂層からなるオレフィン樹脂フィルム
であって、鋼板面と接する樹脂層がポリエチレン系樹脂
からなり、且つ缶内容物と接する樹脂層がポリプロピレ
ン系樹脂からなり、さらに、界面を形成して接するポリ
エチレン系樹脂層とポリプロピレン系樹脂層のうちの少
なくとも一方の樹脂層が、シングルサイト系触媒を用い
て合成された樹脂を主成分とするオレフィン樹脂からな
ることを特徴とする一般缶用樹脂被覆鋼板用の樹脂フィ
ルム。
【0022】[4] 上記[3]の樹脂フィルムにおいて、界
面を形成して接するポリエチレン系樹脂層とポリプロピ
レン系樹脂層が、シングルサイト系触媒を用いて合成さ
れた樹脂を主成分とするオレフィン樹脂からなることを
特徴とする一般缶用樹脂被覆鋼板用の樹脂フィルム。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細と限定理由に
ついて説明する。本発明の樹脂被覆鋼板の素材鋼板とし
ては、鋼板表面(少なくとも、缶内面側となる面)にめ
っき層および/または化成処理層等からなる表面処理層
が形成された表面処理鋼板が用いられる。この表面処理
鋼板の種類は特に限定されないが、耐食性等の面からは
電解クロメート処理層を有する表面処理鋼板が望まし
い。また、表面処理層としては上記電解クロメート処理
層以外に、合金または純金属として錫(一般的な付着
量:5.6g/m2以下)、ニッケル(一般的な付着
量:1.0g/m2以下)、鉄、クロム(一般的な付着
量:200mg/m2以下)等の1種または2種以上を
含む表面処理層であってもよい。
【0024】具体的には、電解クロメート処理鋼板(例
えば、金属クロム層の付着量:5〜200mg/m2
クロム水和酸化物層の金属クロム換算の付着量:3〜4
0mg/m2)、ぶりき(例えば、錫めっき量:1.1
〜11.2g/m2)、薄錫めっきぶりき(例えば、錫
めっき量:0.6〜2.0g/m2、錫めっき層の上層
に電解クロメート処理層を有する場合には、金属クロム
層の付着量:5〜30mg/m2、クロム水和酸化物層
の金属クロム換算の付着量:3〜40mg/m2)、ニ
ッケルめっき鋼板(例えば、ニッケルめっき量:0.1
〜1.0g/m2、ニッケルめっき層の上層に電解クロ
メート処理層を有する場合には、金属クロム層の付着
量:2〜200mg/m2、クロム水和酸化物層の金属
クロム換算の付着量:3〜40mg/m2)、ティンフ
リースチールやニッケルめっき鋼板の表面に0.9g/
2未満の微量の不均一な錫層を設けた表面処理鋼板、
上記の各表面処理鋼板において表面処理層の下地として
Ni熱拡散処理を施した表面処理鋼板(ニッケル総付着
量:0.01〜10.0g/m2)等が挙げられる。
【0025】また、電解クロメート処理層を有する表面
処理鋼板では、そのクロム水和酸化物層の金属クロム換
算の付着量は、十分な耐食性を得るために3mg/m2
以上であることが好ましいが、40mg/m2を超える
と色調の劣化や付着ムラによる密着性の劣化が生じるた
め、3〜40mg/m2の範囲とすることが適当であ
る。
【0026】本発明の樹脂被覆鋼板は、上記の表面処理
鋼板の少なくとも缶内面側となる面に、複層の樹脂層か
らなるオレフィン樹脂層を有し、このオレフィン樹脂層
の鋼板面と接する樹脂層がポリエチレン系樹脂からな
り、且つ缶内容物と接する樹脂層がポリプロピレン系樹
脂からなる。
【0027】上記オレフィン樹脂層は2層以上の樹脂層
からなるが、このうち鋼板面と接する樹脂層(接着層)
と缶内容物と接する樹脂層が上記の各樹脂で構成される
ことが必要である。オレフィン樹脂層は2層以上の任意
の層数とすることができ、3層以上の場合には、鋼板面
と接する樹脂層(接着層)と缶内容物と接する樹脂層と
の間の中間樹脂層については、ポリエチレン系樹脂、ポ
リプロピレン系樹脂等のいずれでもよい。なお、オレフ
ィン樹脂層を構成する樹脂層の層数が4層を超えると製
造コストが著しく高くなるため好ましくない。
【0028】缶内容物と接する樹脂層を構成するポリプ
ロピレン系樹脂は、融点が高く塗装印刷時の耐熱融着性
に優れ、且つ界面活性剤中での応力集中部の割れを生じ
にくい。一方、鋼板面と接する樹脂層(接着層)を構成
するポリエチレン系樹脂は、融点が低く密着性に優れ、
且つ加工時の上層樹脂層への応力緩和が期待でき、さら
に接着層として樹脂種の選択範囲が広い利点がある。し
たがって、このような樹脂層の複合化により、従来のポ
リエチレンラミネート鋼板とポリプロピレンラミネート
鋼板がそれぞれ有する欠点を解消できる。
【0029】また、このポリプロピレン系樹脂層/ポリ
エチレン系樹脂層からなるオレフィン樹脂層を有する樹
脂被覆鋼板は、塗装印刷時の焼付工程で塗装印刷設備と
の接触によりラミネート面に接触跡が生じるという問題
に対しても、接触跡が生じる限界温度がポリプロピレン
ラミネート鋼板と同様に高く、このため接触跡を生じに
くい。さらに、18L缶やペール缶等の製缶時に特有の
衝撃加工を受けた際にも、樹脂層の白化や加工後耐食性
の劣化を生じにくい。
【0030】上記オレフィン樹脂層において、界面を形
成して接するポリエチレン系樹脂層とポリプロピレン系
樹脂層のうちの少なくとも一方の樹脂層が、シングルサ
イト系触媒を用いて合成された樹脂を主成分とするオレ
フィン樹脂からなることが好ましく、これにより従来広
く用いられているチーグラーナッタ触媒で合成されたオ
レフィン樹脂を用いた場合に較べて両樹脂層間の界面で
の良好な密着性が得られる。これは、シングルサイト系
触媒を使用して合成した樹脂では、ポリエチレン系樹脂
層とポリプロピレン系樹脂層の界面での密着性の妨げに
なると考えられる、樹脂中の高分子量成分や低分子量成
分がチーグラーナッタ触媒で合成された樹脂に較べて少
ないためであると考えられる。
【0031】また、缶内容物と接するポリプロピレン系
樹脂層の樹脂として、シングルサイト系触媒で合成され
た樹脂を主成分とするポリプロピレン系樹脂を用いた樹
脂被覆鋼板は、従来のチーグラーナッタ触媒で合成され
たオレフィン樹脂を使用した樹脂被覆鋼板に較べて、塗
装印刷時の焼付工程で塗装印刷設備との接触によりラミ
ネート面に接触跡が生じる限界温度が高く、このため接
触跡を生じにくい。また、この樹脂被覆鋼板は、従来の
チーグラーナッタ触媒で合成された同一組成の樹脂を使
用したものに較べて衝撃加工による樹脂層の耐白化性の
点でも優れている。また、鋼板面と接するポリエチレン
系樹脂層の樹脂として、シングルサイト系触媒で合成さ
れた樹脂を主成分とするポリエチレン系樹脂を用いた樹
脂被覆鋼板は、従来のチーグラーナッタ触媒で合成され
た樹脂を使用したものに較べて加工後耐食性が優れてい
る。
【0032】本発明に使用するポリエチレン系樹脂およ
びポリプロピレン系樹脂を合成するシングルサイト系触
媒としては、カミンスキー触媒、メタロセン触媒、ブル
ックハート触媒等が挙げられ、これらのいずれを用いた
ものでもよい。シングルサイト系触媒の最大の特徴は、
活性点が均一であるため分子量分布が狭いポリマーが得
られる点にある。例えば、シングルサイト系触媒の1つ
であるメタロセン触媒は、一般に、周期律表第IV又は
V族遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウム
化合物および/またはイオン性化合物の組合せが用いら
れ、その具体例としては、例えば、特開平8−2818
70号等に記載されたものを挙げることができる。
【0033】界面を形成して接するポリエチレン系樹脂
層とポリプロピレン系樹脂層のいずれか一方に、シング
ルサイト系触媒を使用して合成した樹脂を用いる場合、
シングルサイト系触媒を使用して合成した樹脂が主成分
樹脂であれば、他の触媒(例えば、チーグラーナッタ触
媒)を使用して合成された樹脂を適量配合することは差
し支えない。具体的には、シングルサイト系触媒を使用
して合成した樹脂の割合が60wt%以上であれば、所
望の樹脂層界面密着性が確保できる。
【0034】また、界面を形成して接するポリエチレン
系樹脂層とポリプロピレン系樹脂層の双方をシングルサ
イト系触媒を使用して合成した樹脂を主成分とするオレ
フィン樹脂で構成することにより、特に優れた樹脂層界
面密着性が得られる。なお、界面を形成して接するポリ
エチレン系樹脂層とポリプロピレン系樹脂層のいずれか
一方の樹脂層にシングルサイト系触媒を使用して合成し
た樹脂を主成分とするオレフィン樹脂を用いる場合、密
着性の観点からは、この樹脂には酸化防止剤などの低融
点の添加剤を添加しないことが好ましい。
【0035】本発明においてポリプロピレン樹脂層との
間で界面を形成するポリエチレン系樹脂層に使用するポ
リエチレンは、好ましくは密度が0.88〜0.94g
/cm2、メルトフローレート(MFR ASTM D1
238)が0.5〜50g/10minである、エチレ
ンの単独共重合体、エチレンとα−オレフィンとのブロ
ックまたはランダム共重合体である。ポリエチレンの密
度が上記範囲外またはメルトフローレートが0.5未満
では成膜性が劣る。また、メルトフローレートが50を
超えるとピンホール等を生じるため樹脂層の均質性が保
てない。
【0036】また、これらポリエチレンはポリプロピレ
ン系樹脂層との間の界面密着性を確保するため、重量平
均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比[Mw/
Mn]が2.5以下であることが好ましい。この[Mw
/Mn]が2.5を超えると分子量分布が広くなるため
良好な樹脂層界面密着性が得られにくい。
【0037】上記α−オレフィンとしては、プロピレ
ン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オ
クテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これ
らの1種を単独で、または2種以上を混合して使用でき
るが、特に、エチレンと25モル%以下のα−オレフィ
ンとのエチレン−α−オレフィン共重合体が適当であ
る。α−オレフィンが25モル%を超えるとポリエチレ
ンとしての樹脂の特性が失われ、加工性や薬品中での安
定性が低下するため好ましくない。また、エチレン−α
−オレフィン共重合体のなかでも、特にエチレンとα−
オレフィンとのランダム共重合体が好ましい。また、こ
れらの共重合体は、先に述べたようにシングルサイト系
触媒を使用してエチレンとα−オレフィンを共重合させ
たものが特に好ましい。
【0038】ポリエチレンの種類としては、中低圧法高
密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン樹
脂(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDP
E)のいずれもが使用可能であるが、樹脂層の白化の抑
制の観点からはLLDPEが特に好ましい。また、樹脂
の結晶化度は加工後耐食性の観点から90%以下が好ま
しい。
【0039】また、本発明において使用するポリエチレ
ン系樹脂には、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、
帯電防止剤、顔料、染料、各種ポリエチレン、低結晶性
若しくは非晶性のエチレンまたはこのエチレンとα−オ
レフィンとのランダム共重合体等を本発明の効果を損な
わない範囲で適宜配合してもよい。
【0040】但し、ポリプロピレン系樹脂層との間の界
面密着性の観点からは、ポリプロピレン系樹脂層との間
で界面を形成するポリエチレン系樹脂層には、低融点で
水溶液などへの易溶性を示す配合物や低融点の配合物、
例えばフェノール系、スルフィド系、ホスファイト系な
どの酸化防止剤等はできるだけ配合しないか、若しくは
配合する場合でも配合量は0.5wt%以下とすること
が望ましい。
【0041】本発明において鋼板面と接するポリエチレ
ン系樹脂層(接着層)に使用するポリエチレン系樹脂は
熱接着性ポリエチレン系樹脂であり、特に良好な接着性
を得るにはポリエチレンに不飽和カルボン酸またはその
誘導体を重合した不飽和カルボン酸変性ポリエチレン樹
脂を用いることが好ましい。
【0042】しがって、この鋼板面と接するポリエチレ
ン系樹脂層(接着層)がポリプロピレン系樹脂層と界面
を形成して接する樹脂層でもある場合には、ベースとな
るポリエチレンとして、上述したエチレンと25モル%
以下のα−オレフィンとのエチレン−α−オレフィン共
重合体(特に好ましくは、エチレン−α−オレフィンラ
ンダム共重合体)を用い、このポリエチレンに不飽和カ
ルボン酸またはその誘導体を重合した不飽和カルボン酸
変性ポリエチレン樹脂を用いることが好ましい。また、
上記のエチレン−α−オレフィン共重合体はシングルサ
イト系触媒を使用して共重合させたものが特に好まし
い。
【0043】不飽和カルボン酸もしくはその誘導体とし
ては、マレイン酸、アクリル酸、フマール酸、テトラヒ
ドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン
酸、ナジック酸などの不飽和カルボン酸またはそれらの
誘導体(例えば、アミド、イミド、無水物、エステル、
酸ハライド等)が挙げられ、それらの1種または2種以
上を使用できる。不飽和カルボン酸の誘導体の具体例と
しては、無水マレイン酸、アクリル酸メチル、メタクリ
ル酸メチル等が例示できる。また、これらのなかでも、
耐塗膜下腐食性の観点からは無水マレイン酸を単独で、
または無水マレイン酸と他の不飽和カルボン酸の1種ま
たは2種以上を混合したモノマーが望ましい。また、グ
リシジルメタクリレート、酢酸ビニル、アクリル酸メチ
ル、アイオノマーをそれぞれ単独で、または2種を混合
して用いてもよい。
【0044】これらの不飽和カルボン酸またはその誘導
体をポリエチレンに導入(重合)する方法としては、グ
ラフト重合、ランダム重合、ブロック重合を用いること
ができる。特に、無水マイレン酸を0.01〜2重量%
としたグラフト重合や、アイオノマーを3〜15重量%
としたランダム重合が好ましい。
【0045】また、接着層がポリプロピレン系樹脂層と
の間で界面を形成して接するポリエチレン樹脂層である
場合、この接着層として、シングルサイト系触媒を使用
して合成したポリエチレン系樹脂(好ましくは、エチレ
ン−α−オレフィン共重合体)に上記不飽和カルボン酸
またはその誘導体を重合した熱接着性ポリエチレン系樹
脂(不飽和カルボン酸変性ポリエチレン樹脂)を用いた
場合には、従来のチーグラーナッタ触媒で合成されたポ
リエチレン系樹脂を用いたものに較べて優れた密着性と
耐食性を示す。
【0046】先に述べたようにポリプロピレン系樹脂層
との間で界面を形成して接するポリエチレン系樹脂層
は、シングルサイト系触媒を使用して合成したポリエチ
レン系樹脂の割合が60wt%以上であれば所望の樹脂
層界面密着性が確保でき、したがって、このポリエチレ
ン系樹脂層が同時に接着層である場合にも、これを構成
する樹脂の60wt%以上をシングルサイト系触媒を使
用して合成したポリエチレン系樹脂、好ましくはエチレ
ン−α−オレフィン共重合体(より好ましくは、この共
重合体に不飽和カルボン酸またはその誘導体を重合した
不飽和カルボン酸変性ポリエチレン樹脂)とし、残りの
40wt%未満については他の触媒を使用して合成した
熱接着性ポリエチレン系樹脂、好ましくはエチレン−α
−オレフィン共重合体(より好ましくは、この共重合体
に不飽和カルボン酸またはその誘導体を重合した不飽和
カルボン酸変性ポリエチレン樹脂)を用いてもよい。
【0047】本発明においてポリプロピレン系樹脂層に
使用するポリプロピレンは、好ましくは密度が0.88
〜0.96g/cm2、メルトフローレート(MFR A
STM D1238)が0.5〜50g/10minで
ある、プロピレンの単独共重合体、プロピレンとα−オ
レフィンとのブロックまたはランダム共重合体である。
【0048】また、これらポリプロピレンはポリエチレ
ン樹脂層との間の界面密着性を確保するため、重量平均
分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比[Mw/M
n]が2.5以下であることが好ましい。この[Mw/
Mn]が2.5を超えると分子量分布が広くなるため良
好な樹脂層界面密着性が得られにくい。
【0049】上記α−オレフィンとしては、エチレン、
1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテ
ン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらの
1種を単独で、または2種以上を混合して使用できる
が、特に、プロピレンと25モル%以下のα−オレフィ
ンとのプロピレン−α−オレフィン共重合体が好適であ
る。α−オレフィンが25モル%を超えると融点が著し
く低下して樹脂の安定性が悪くなり、樹脂層にピンホー
ル等を生じやすくなるため好ましくない。
【0050】また、缶内容物と接するポリプロピレン系
樹脂層に適用するポリプロピレンとしては、α−オレフ
ィンの量が多いと融点が低下し、塗装印刷時の焼付工程
で塗装印刷設備との接触によりラミネート面に接触跡が
生じやすくなるため、α−オレフィンは15モル%以下
であることが望ましい。また、プロピレン−α−オレフ
ィン共重合体のなかでも特に好ましい共重合体は、プロ
ピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体である。
耐食性の観点からは、ポリプロピレン系樹脂としては結
晶性の樹脂が望ましく、結晶化度としては20〜60%
の範囲にあるものが望ましい。
【0051】また、本発明に使用するポリプロピレン系
樹脂には、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電
防止剤、顔料、染料、各種ポリエチレン、低結晶性もし
くは非晶性のエチレンまたはプロピレンのα−オレフィ
ンランダム共重合体などを本発明の効果を損なわない範
囲で適宜配合してもよい。
【0052】但し、ポリエチレン系樹脂層との間の界面
密着性の観点からは、ポリエチレン系樹脂層との間で界
面を形成するポリプロピレン系樹脂層および缶内容物と
接するポリプロピレン系樹脂層については、その樹脂中
には低融点で水溶液などへの易溶性を示す配合物や低融
点の配合物、例えばフェノール系、スルフィド系、ホス
ファイト系などの酸化防止剤等はできるだけ配合しない
か、若しくは配合する場合でも配合量は0.5wt%以
下とすることが望ましい。
【0053】缶内面側となる鋼板面を被覆するオレフィ
ン樹脂層の全厚さは、15〜200μmが望ましい。オ
レフィン樹脂層の全厚さが15μm未満では2回塗装材
以下の耐食性しか得られない。一方、全厚さが200μ
mを超えると18L缶などの巻締めが行いにくくなるた
め好ましくない。
【0054】なお、缶外面側となる鋼板面に樹脂被覆層
を形成する場合には、この樹脂被覆層としては、厚さが
6〜30μm程度の単層または複層のポリオレフィン系
樹脂層やポリエチレンテレフタレート系樹脂層が適して
いる。また、この缶外面側となる鋼板面を被覆するポリ
オレフィン層のポリエチレン系接着層の厚さは、鋼板と
の密着性の観点から約2μm以上あることが好ましい。
【0055】鋼板に樹脂被覆を施す方法に特別な制限は
なく、予め製造された樹脂フィルムを鋼板に連続的にラ
ミネートする方法(フィルムコイルラミネート法)、溶
融した樹脂をTダイ等で鋼板面に直接熱押出しする方法
(溶接熱、押出しラミネート法)、予め製造された樹脂
フィルムを切り板毎にラミネートをする方法(フィルム
シートラミネート法)等、任意の方法で樹脂被覆を施す
ことができる。
【0056】
【実施例】一般缶用途に通常用いられている板厚0.3
2mmの冷延鋼板を通常の方法で電解脱脂および酸洗し
た後、公知の方法で各種の表面処理を行った。この表面
処理鋼板に以下の方法で樹脂を被覆し、樹脂被覆鋼板を
製造した。
【0057】(1) フィルムコイルラミネート法 表面処理鋼板を樹脂フィルムの接着層の融点〜250℃
に加熱し、鋼板の片面または両面に樹脂フィルムをラミ
ネートした後、2秒以内に水で急冷した。 (2) フィルムシートラミネート法 表面処理鋼板の片面に樹脂フィルムを樹脂フィルムの融
点以下の温度で圧着した後、樹脂フィルムの接着層の融
点〜250℃の温度範囲に保持し、しかる後、空冷し
た。 (3) 溶融熱押出しラミネート法 予熱された表面処理鋼板の片面または両面にTダイによ
り樹脂を溶融押出しラミネートした後、接着層の融点〜
250℃の温度範囲で保持し、しかる後、水冷した。
【0058】本実施例において、シングルサイト系触媒
を用いて合成した樹脂として用いたのは、メタロセン触
媒で合成されたポリエチレン系樹脂(日本ポリケム社製
“カーネル”,日本ポリオレフィン社製の“ハーモレッ
クス”)、メタロセン触媒で合成されたポリプロピレン
系樹脂(日本ポリケム社製“カーネル”)である。缶胴
部に相当する鋼板については、必要に応じて鋼板の両エ
ッジに約10mm幅のラミネート避け部を設けた。ま
た、片面のみのラミネートを行った鋼板は、ラミネート
後、ラミネート樹脂の融点以下の温度で缶外面側に相当
する面にクリヤ塗装を行った。また、一部のラミネート
鋼板については、鋼板両面にラミネートを行った。
【0059】得られた樹脂被覆鋼板の性能評価を以下の
方法で行った。 (1) 樹脂層界面密着性(PE系樹脂層−PP系樹脂層の
界面の密着性) 樹脂層にカッターナイフで切れ込みを入れ、樹脂層を鋼
板から引き剥がした際、ポリエチレン系樹脂層とポリプ
ロピレン系樹脂層の界面で剥離を生じた面積の割合で評
価した。その評価基準は以下の通りであり、○〜◎であ
れば実用上差し支えない。 ◎:剥離なし ○:剥離面積率50%未満 △:剥離面積率50%以上、100%未満 ×:剥離面積率100%
【0060】(2) 耐ウィケット融着性(塗装印刷時にお
けるラミネート面のウィケットとの融着性) 樹脂被覆鋼板をそのラミネート面が金属製の保持台に接
するように置き、振動を与えながら所定温度で30分保
持した後、冷却し、ラミネート面への保持台の接触跡の
有無を調べ、接触跡が認められる限界温度(前記保持温
度)に基づき下記の基準で評価した。 ○:限界温度125℃以上 ×:限界温度125℃未満
【0061】(3) 加工後耐食性 樹脂被覆鋼板をデュポン衝撃加工した後、中性洗剤(商
品名:ライポンF)中に38℃で3か月間浸漬し、フィ
ルム抵抗の低下の有無を下記の基準により評価した。 ○:フィルム抵抗の変化なし ×:フィルム抵抗の低下あり
【0062】(4) 耐白化性 樹脂被覆鋼板をラミネート面が凸になるようにデュポン
衝撃加工した後、加工部の変色程度を評価した。この評
価では、変色の全く無いポリエチレンラミネート鋼板の
評点を5点、白色に変色するホモポリプロピレンラミネ
ート鋼板の評点を1点として、5点〜1点の間で変色の
程度を評価した。 (5) 塗膜下腐食性 樹脂被覆鋼板に対して平板のままクロスカットを行い、
20g/LのNaOH溶液中で38℃、10日間の浸漬
試験を行い、試験後のカット部の腐食幅で評価した。
【0063】[実施例1]表1および表2は、各種表面
処理鋼板に樹脂フィルムをコイルラミネート法でラミネ
ートした樹脂被覆鋼板の実施例を示している。なお、樹
脂被覆層が中間層を有する3層構造である実施例のう
ち、実施例No.5は中間層がフェノール系酸化防止剤
などの低融点の添加剤を含んでおらず、その他の実施例
は中間層がフェノール系酸化防止剤を含んでいる。
【0064】比較例である実施例No.10は表面処理
を施していない冷延鋼板をラミネートしたものであり、
良好な加工後耐食性が得られていない。比較例である実
施例No.11,No.12は、界面を形成して接して
いるポリエチレン系樹脂層とポリプロピレン系樹脂層が
ともにチーグラナッタ触媒を用いて合成した樹脂からな
っているため、樹脂層界面の密着性が劣っている。
【0065】これに対して、本発明条件を満足する実施
例No.1〜9はいずれも優れた加工後耐食性が得ら
れ、また、界面を形成して接しているポリエチレン系樹
脂層とポリプロピレン系樹脂層の少なくとも一方の樹脂
層が、シングルサイト系触媒(メタロセン触媒)を使用
して合成した樹脂からなっているため、良好な樹脂層界
面密着性が得られている。
【0066】また、実施例No.2,No.3,No.
8,No.9は、界面を形成して接しているポリエチレ
ン系樹脂層とポリプロピレン系樹脂層の両方がシングル
サイト系触媒(メタロセン触媒)を使用して合成した樹
脂からなっているため、特に優れた樹脂層界面密着性が
得られている。また、実施例No.2,No.3,N
o.7〜No.9は、缶内容物と接するポリプロピレン
系樹脂層がシングルサイト系触媒(メタロセン触媒)を
使用して合成した樹脂からなっているため、特に優れた
耐白化性が得られている。
【0067】また、実施例No.5は、界面を形成して
接している上層(ポリエチレン系樹脂層)と中間層(ポ
リプロピレン系樹脂層)のうち、上層がチーグラナッタ
触媒を用いて合成した樹脂からなり、中間層がシングル
サイト系触媒(メタロセン触媒)を使用して合成した樹
脂からなるものであるが、中間層がフェノール系酸化防
止剤などの低融点の添加剤を含んでいないため、上記実
施例No.2等とほぼ同等の樹脂層界面密着性が得られ
ている。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】[実施例2]表3および表4は、電解クロ
メート処理鋼板(金属クロム層のクロム付着量:100
mg/m2、クロム水和酸化物層の金属クロム換算の付
着量:10mg/m2)に各種オレフィン樹脂フィルム
をコイルラミネート法(但し、実施例No.10につい
ては、溶融熱押し出しラミネート法を適用)でラミネー
トした樹脂被覆鋼板の実施例を示している。
【0071】比較例である実施例No.13は、缶内容
物と接する樹脂層と鋼板面と接する樹脂層(接着層)が
ともにポリエチレン系樹脂からなっているため、缶内容
物が界面活性剤である場合に樹脂層に割れが発生する等
の問題を生じ、加工後耐食性が劣っている。また、この
実施例は缶内容物と接する樹脂層がポリエチレン系樹脂
からなっているため、耐ウイケット融着性にも劣ってい
る。
【0072】また、比較例である実施例No.14は缶
内容物と接する樹脂層と鋼板面と接する樹脂層(接着
層)がともにポリプロピレン系樹脂からなっているた
め、加工部において鋼板面からの樹脂層の剥離を生じ、
加工後耐食性が劣っている。また、この実施例No.1
4ではメタロセン触媒で合成した樹脂を使用していない
ため、耐白化性、耐塗膜下腐食性が著しく劣っている。
【0073】これに対して本発明例である実施例No.
1〜No.12は、いずれも加工後耐食性、耐白化性、
耐塗膜下腐食性、耐ウィケット融着性が優れている。ま
た、実施例No.1〜No.3、No.6〜No.9で
は、缶内容物と接する樹脂層にシングルサイト系触媒
(メタロセン触媒)を使用して合成したポリプロピレン
系樹脂を使用しているため、特に優れた耐白化性が得ら
れている。
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】[実施例3]表5および表6は、電解クロ
メート処理鋼板(金属クロム層のクロム付着量:100
mg/m2、クロム水和酸化物層の金属クロム換算の付
着量:10mg/m2)に各種オレフィン樹脂フィルム
をコイルラミネート法でラミネートした樹脂被覆鋼板の
実施例を示している。この実施例によれば、接着層にポ
リエチレン系樹脂を使用することにより、接着層の樹脂
種について種々の選択が可能であることが判る。
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
【0079】[実施例4]表7は、電解クロメート処理
鋼板(金属クロム層のクロム付着量:100mg/
2、クロム水和酸化物層の金属クロム換算の付着量:
10mg/m2)に樹脂フィルムをコイルラミネート法
でラミネートした樹脂被覆鋼板の実施例を示している。
この実施例では、外層(缶内容物に接する樹脂層)に異
なる樹脂種を用い、ラミネート面がウィケット融着を生
じない限界温度を調べた。なお、この実施例の接着層に
用いたのはメタロセン触媒で合成したポリエチレン系樹
脂である。
【0080】実施例No.1と実施例No.3、実施例
No.2と実施例No.4をそれぞれ比較すると、メタ
ロセン触媒で合成したポリプロピレン樹脂を使用した実
施例No.1、実施例No.2は樹脂の分子量分布が狭
いため、チーグラナッタ触媒で合成したポリプロピレン
樹脂を使用した実施例No.3、実施例No.4に較べ
て、ウィケット融着を生じない限界温度が相対的に高い
ことが判る。
【0081】
【表7】
【0082】
【発明の効果】以上述べた本発明によれば、18L缶や
ペール缶等のような大型缶をはじめとする一般缶用途の
缶胴部等に使用される樹脂被覆鋼板において、酸性から
アルカリ性までの用途適性に優れ、且つ内容物保護性
(耐食性、缶内容物中に金属や有機成分の溶出を生じに
くい特性)、外面塗装印刷性、樹脂密着性等の諸特性に
も優れている。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B65D 25/14 B65D 25/14 A 4J100 C08F 4/642 C08F 4/642 10/02 10/02 10/06 10/06 C08J 5/18 CES C08J 5/18 CES Fターム(参考) 3E061 AA17 AA18 AB13 AC09 AD01 DA02 3E062 AA04 AB01 AC09 JA01 JA07 JB11 JC02 JD03 JD06 JD10 4F071 AA15 AA16 AA17 AA18 AA19 AA20 AH04 AH05 BA01 BB06 BC02 BC04 CA02 CB06 CD02 CD06 4F100 HB31 JL11 4J028 AA01A AB00A AB01A AC01A AC10A AC20A AC28A AC29A AC31A AC39A BA01B BA02B BB00B BB01B BC12B BC14B EB02 EB04 EB05 EB07 EB09 EB10 EB25 4J100 AA02P AA03P CA01 FA10 JA59

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面処理鋼板の少なくとも缶内面側とな
    る面に、複層の樹脂層からなるオレフィン樹脂層を有
    し、該オレフィン樹脂層において、鋼板面と接する樹脂
    層がポリエチレン系樹脂からなり、且つ缶内容物と接す
    る樹脂層がポリプロピレン系樹脂からなり、さらに、界
    面を形成して接するポリエチレン系樹脂層とポリプロピ
    レン系樹脂層のうちの少なくとも一方の樹脂層が、シン
    グルサイト系触媒を用いて合成された樹脂を主成分とす
    るオレフィン樹脂からなることを特徴とする内容物保護
    性に優れた一般缶用樹脂被覆鋼板。
  2. 【請求項2】 複層の樹脂層からなるオレフィン樹脂層
    において、界面を形成して接するポリエチレン系樹脂層
    とポリプロピレン系樹脂層が、シングルサイト系触媒を
    用いて合成された樹脂を主成分とするオレフィン樹脂か
    らなることを特徴とする請求項1に記載の内容物保護性
    に優れた一般缶用樹脂被覆鋼板。
  3. 【請求項3】 缶内面側となる表面処理鋼板面に被覆さ
    れべき複層の樹脂層からなるオレフィン樹脂フィルムで
    あって、鋼板面と接する樹脂層がポリエチレン系樹脂か
    らなり、且つ缶内容物と接する樹脂層がポリプロピレン
    系樹脂からなり、さらに、界面を形成して接するポリエ
    チレン系樹脂層とポリプロピレン系樹脂層のうちの少な
    くとも一方の樹脂層が、シングルサイト系触媒を用いて
    合成された樹脂を主成分とするオレフィン樹脂からなる
    ことを特徴とする一般缶用樹脂被覆鋼板用の樹脂フィル
    ム。
  4. 【請求項4】 界面を形成して接するポリエチレン系樹
    脂層とポリプロピレン系樹脂層が、シングルサイト系触
    媒を用いて合成された樹脂を主成分とするオレフィン樹
    脂からなることを特徴とする請求項3に記載の一般缶用
    樹脂被覆鋼板用の樹脂フィルム。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002026495A1 (fr) * 2000-09-28 2002-04-04 Gunze Co., Ltd Pellicule de revetement et complexe lamine
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JP2009096091A (ja) * 2007-10-17 2009-05-07 Jfe Steel Corp 容器材料用ラミネート鋼板

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