JP2009085529A - 気化フィルタおよび加湿装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】水を気化させて加湿を行う気化フィルタにおいて、長期間に渡って高い加湿性能を発揮し、かつ、気化フィルタ上にスケールが析出しても加湿能力を維持できる気化フィルタおよび加湿装置を提供することを目的とする。
【解決手段】水を気化させて加湿を行う疎水性加工を施した気化フィルタ11において、その基材である発泡ウレタン13の表面に樹脂14で構成する多孔質な三次元構造を持たせることで、三次元構造が水を保持および離脱し、気化フィルタの表層部で加湿が行われるために、高い加湿性能を得ることができる。また、毛細管現象を利用せずとも気化フィルタが水を保持できるために、気化フィルタ上にスケールが析出しても加湿性能を維持できる気化フィルタおよび加湿装置が得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、気化フィルタおよびそれを利用する加湿装置に関する。
従来の加湿装置の一例を図6に示す。すなわち、波状やU字状に変形したシート状の気化フィルタ101の端面を水槽102に浸漬し、水を吸い上げたシート状の気化フィルタ101の間隔にファン103で乾燥空気を通過させることにより、加湿空気を得るものである(例えば、特許文献1参照)。
また、この種の気化フィルタには、気化フィルタへの水供給方法が、毛細管現象によらないものもある。すなわち、図7に一例を示すように、水汲み用リブ201を設けた複数のプレートで構成された回転可能な気化フィルタ202は、その一部を水槽に浸漬させて水を得る。そうして保水した気化フィルタ202に、乾燥空気を接触させることによって、加湿空気を得るものである(例えば、特許文献2参照)。
また、この種の気化フィルタには、加湿効率を向上させるために、気化フィルタの表面積を大きくしたものもある。すなわち、図8に一例を示すように、気化フィルタ301は、空気が通過できる空隙302を有する基材303に、粒子径2μ〜55μmの無機材料304を担持して、基材表面を凹凸にしたことで気化フィルタの表面積を大きくし、効率よく加湿空気を得るものである(例えば、特許文献3参照)。
特許第2514145号公報 特開2006−329467号公報 特開2006−200834号公報
しかしながら、水を吸い上げた気化フィルタに乾燥空気を通過させる方式では、供給される水が含有する珪素やカルシウム、マグネシウムなどの元素を含む微量の化合物や、気化フィルタが乾燥していく過程でフィルタの表面にスケールとなって析出する。析出したスケールは通風路を阻害する。気化フィルタをシート状にし、その間隔に乾燥空気を通風すれば、通風路は常に確保されるものの、スケールはフィルタの固定個所に析出し、気化フィルタによる水の吸い上げ効果は著しく低下するため気化フィルタの寿命が短いという課題があった。
また、水汲み用リブを設けた複数のプレートで構成された気化フィルタでは、スケールが析出しても、気化フィルタに保持できる水の量にはほとんど影響を与えないため、長期間に渡って加湿能力を維持できるが、更なる加湿能力の向上が求められていた。
また、空気が通過できる空隙を有する基材に、粒子径2μ〜55μmの無機材料を担持して、基材表面を凹凸にした気化フィルタでは、基材表面に粒子が担持されているため、加湿効率は高いが、洗浄時などに気化フィルタを変形した際に粉落ちがおきるという課題があった。
本発明は、このような課題を解決するものであり、長期間に渡って高い加湿能力を発揮でき、かつ、気化フィルタ上にスケールが析出しても加湿能力を維持でき、気化フィルタを変形しても粉落ちのない気化フィルタおよび本発明の気化フィルタを搭載した加湿装置を提供するものである。
本発明は、気化フィルタの基材の表面に、樹脂で構成する多孔質の三次元構造を持たせたことを特徴とする気化フィルタである。
また、気化フィルタが柔軟であることを特徴とする。
また、添着材を樹脂で基材の表面に固定化後に、添着材を、それを溶解する能力のある溶液で溶出させることで、基材の表面に樹脂で構成する三次元構造を作ることを特徴とする。
また、気化フィルタの基材の表面に、水溶液に溶出する添着材を樹脂で固定化したことを特徴とする。
また、添着材が粒子であることを特徴とする。
また、樹脂がアクリルを含むことを特徴とする。
また、樹脂がコロイダルシリカを重合していることを特徴とする。
また、添着材を固定化した樹脂が樹脂エマルジョンを乾燥したものであることを特徴とする。
また、添着材を溶解する能力のある溶液が酸性、アルカリ性の水溶液、または有機溶剤のいずれかを含むことを特徴とする。
また、添着材を溶解する能力のある液体がクエン酸を含むことを特徴とする。
また、添着材がマグネシウムおよび/またはカルシウムを含む酸化物、または水酸化物であることを特徴とする。
また、空気が通過できる空隙を有する基材が発泡構造体であることを特徴とする。
また、空気が通過できる空隙を有する基材が開口のある表面と開口のある裏面とを繊維で連結してなる三次元構造体であることを特徴とする。
また、基材が樹脂で構成されていることを特徴とする。
また、気化フィルタに抗菌剤および/または防カビ剤を含むことを特徴とする。
また、気化フィルタに親水性、または疎水性の処理を施したことを特徴とする。
また、請求項1乃至16いずれかに記載の気化フィルタと、気化フィルタに水を供給するための水供給手段と、水を供給された湿潤した気化フィルタに空気を送るための送風手段とを設けた加湿装置である。
また、請求項1乃至17いずれかに記載の気化フィルタと、気化フィルタに水を供給するための水供給手段と、水を供給された湿潤した気化フィルタに空気を送るための送風手段と、気化フィルタに送る空気の温度を上げるための空気加熱手段とを設けた加湿装置である。
本発明によれば、気化フィルタの基材の表面に、樹脂で構成する多孔質の三次元構造を持たせたことにより、長期間に渡って高い加湿性能を発揮し、かつ、気化フィルタ上にスケールが析出しても加湿能力を維持でき、気化フィルタを変形しても粉落ちのない気化フィルタおよび加湿装置を提供できる。
本発明の請求項1記載の発明は、水を気化させて加湿を行う気化フィルタにおいて、気化フィルタの基材の表面に、樹脂で構成する多孔質の三次元構造を持たせたことを特徴とする気化フィルタであり、多孔質の三次元構造が水を保持することにより、毛細管現象を利用せずとも気化フィルタが水を保持できるため、気化フィルタ上にスケールが析出しても加湿能力を維持でき、気化フィルタの寿命を長くできるという効果が得られる。また、多孔質の三次元構造を有するために、通過する乾燥空気と保持された水との接触面積が増大し、より高い加湿能力が得られる。また、樹脂であれば基材の表面と強く結合し、樹脂間は重合しているため粉落ちすることがなく、形状が長期間に渡って保持されるため、安定した加湿性能を長期間に渡って得られる。
多孔質の三次元構造体の作成方法としては、基材の表面に新たに樹脂を多孔質の三次元構造体となるように付加する方法や、基材が樹脂であれば、基材自体に物理的に傷をつけて凹凸をつけたり、酸などの薬剤を用いて表面を荒げたりする方法などがある。なお、ここでの多孔質な三次元構造とは、多数の細孔を持つもののほかに、0.1μm〜1mmまでの連続した微小な凹凸や三次元網目構造、または発泡構造なども含む。
また、気化フィルタが柔軟であることを特徴とするものであり、気化フィルタが柔軟であるために、気化フィルタが変形するような環境でも使用可能で汎用性が高く、また、気化フィルタを洗浄する際にもみ洗いが可能であるため、より綺麗に洗浄することができ気化フィルタを清潔に保つことができる。なお、ここでの柔軟であるとは気化フィルタを90度に折り曲げ、広げたときに元に戻ることができることをいう。
また、添着材を樹脂で基材の表面に固定化後に、添着材を、それを溶解する能力のある溶液で溶出させることで、基材の表面に樹脂で構成する三次元構造を作ることを特徴とするものであり、三次元構造を作成するのに常温で処理できるため、作業性に優れ、また、熱を必要としないため、省エネであり環境への負荷が少なくてすむという効果を有する。
また、気化フィルタの基材の表面に、水溶液に溶出する添着材を樹脂で固定化したことを特徴とするものであり、基材の表面に、水溶液に溶出する添着材を樹脂で固定化することで、気化フィルタ表面に凹凸のある形状を形成することができる。このため、気化フィルタの表面積を大きくすることができ、乾燥空気と水の接触面積が増大し、より高い加湿性能を得ることができるという効果を有する。また、溶出する添着材として抗菌性や防カビ性のものを選べば、添着材が溶出することで気化フィルタに供給される水を除菌できるため、清潔な加湿が行えるという効果を有する。
また、添着材が粒子であることを特徴とするものであり、粒子であれば、その大きさや形状を選ぶことで、多孔質な三次元構造体の孔径を制御できるため、目的にあった表面積や形状の三次元構造体を形成することができるという効果を有する。
また、樹脂がアクリルを含むことを特徴とするものであり、アクリルは耐水性、耐候性に優れるため、長時間水にさらされる気化フィルタの耐水性を向上させ、寿命を延ばす効果を有する。また、アクリルは化学的に安定な物質であるため、長時間放置してもゲル化などの変性を生じにくく、作業性に優れる。
また、樹脂がコロイダルシリカを重合していることを特徴とするものであり、樹脂がコロイダルシリカを重合していることで、乾燥時に樹脂粒子表面のコロイダルシリカによって部分的に融着が阻害され、コロイダルシリカで包囲された空孔が生じるため、気化フィルタ表面に凹凸のある形状を形成することができる。このため、気化フィルタの表面積を大きくすることができ、乾燥空気と水の接触面積が増大し、より高い加湿性能を得ることができるという効果を有する。
また、添着材を固定化した樹脂が樹脂エマルジョンを乾燥したものであることを特徴とするものであり、樹脂が樹脂エマルジョンを乾燥したものであれば、水に分散できるため作業性に優れる。また、基材を腐食させることがないため基材の種類を問わず用いることができるという効果を有する。
添着材を溶解する能力のある溶液が酸性、アルカリ性の水溶液、または有機溶剤のいずれかを含むことを特徴とするものであり、酸性水溶液の中でも、特に弱酸ならば取り扱いが容易で作業性に優れる。また、アルカリ性水溶液であれば基材に付着した有機物を溶かすことができ、洗浄効果がある。また、有機溶剤であれば、揮発性が高いため乾燥時間が短くて済み、製造時間を短縮できるという効果を有する。
また、添着材を溶解する能力のある液体がクエン酸を含むことを特徴とするものであり、クエン酸は生体内物質で食品添加物としても使用されている化学物質であるため、取り扱いが容易であり、作業性に優れるという効果を有する。
また、添着材がマグネシウムおよび/またはカルシウムを含む酸化物、または水酸化物であることを特徴とするものであり、マグネシウムおよび/またはカルシウムを含む酸化物、または水酸化物は弱酸(クエン酸)でも可溶であるため、作業性に優れる。また、マグネシウムやカルシウムの酸化物、または水酸化物は容易に粒子径が制御できるため、多孔質の三次元構造の構造制御を容易に行うことができるという効果を有する。
また、空気が通過できる空隙を有する基材が発泡構造体であることを特徴とするものであり、表面積が大きいために、水と空気との接触面積が大きくなり加湿効率を高めることができるという効果を有する。
また、空気が通過できる空隙を有する基材が開口のある表面と開口のある裏面とを繊維で連結してなる三次元構造体であることを特徴とするものであり、表面積が大きいため、水と空気との接触面積が大きくなり加湿効率を高めることができる。また、開口部が大きいために、気化フィルタ上にスケールが析出した場合でも目詰まりを起こしにくく、通風路を阻害しにくいという効果が得られる。
また、基材が樹脂で構成されていることを特徴とするものであり、樹脂であれば発泡構造や三次元立体編物構造などにでき、これらの構造にすることで柔軟性が向上し、気化フィルタが変形するような環境でも使用可能で汎用性が高く、また、気化フィルタを洗浄する際にもみ洗いが可能であるため、より綺麗に洗浄することができ気化フィルタを清潔に保つことができる。
気化フィルタに抗菌剤および/または防カビ剤を含むことを特徴とするものであり、気化フィルタの表面での細菌やカビの繁殖を抑制することができ、気化フィルタを清潔に保つことができるという効果を有する。
また、気化フィルタに親水性、または疎水性の処理を施したことを特徴とするものであり、親水性であれば保水性に優れるために、気化フィルタに多くの水を持たせることができ、加湿性能を向上させることができる。また、親水性であれば、表面張力が大きいために気化フィルタの開口に水膜が形成するのを防ぐことができ、気化フィルタを低圧損にでき、騒音を小さくできるという効果を有する。疎水性であれば、気化フィルタの多孔質の三次元構造に水を保持することで加湿を行うことができ、表面張力が小さいために気化フィルタの開口に水膜が形成するのを防ぐことができるために、気化フィルタを低圧損にでき、騒音を小さくできるという効果を有する。なお、ここでの親水性とは水との接触角が40度以下のことをいい、疎水性とは水との接触角が90度以上から150度以下のことをいう。
また、請求項1乃至16いずれかに記載の気化フィルタと、気化フィルタに水を供給するための水供給手段と、水を供給された湿潤した気化フィルタに空気を送るための送風手段とを設けた加湿装置は、樹脂が基材の表面に形成する多孔質の三次元構造により水を保持するために、通過する乾燥空気と保持された水との接触面積が増大し、高い加湿能力が得られる。また、気化フィルタの表面にのみ水が保持されるために、気化フィルタから水が離れやすく、より高い加湿能力が得られる。また、気化フィルタ上にスケールが析出しても長期間にわたって、加湿能力を維持できる。
また、請求項1乃至17いずれかに記載の気化フィルタと、気化フィルタに水を供給するための水供給手段と、水を供給された湿潤した気化フィルタに空気を送るための送風手段と、気化フィルタに送る空気の温度を上げるための空気加熱手段とを設けた加湿装置では、装置内に導入される乾燥空気が加熱されるために、気化フィルタを通過する空気の飽和水蒸気量が上昇し、より高い加湿能力を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1に気化フィルタの断面の一例を示すように、柔軟な親水性加工を施した気化フィルタ11は、樹脂で空気が通過できる空隙12を有する発泡構造体である基材としての発泡ウレタン13の表面に、樹脂14により多孔質な三次元構造を形成し、三次元構造の表面15に抗菌剤16、防カビ剤17を添着したものである。
上記構成において、柔軟であれば、気化フィルタが変形するような環境でも使用可能で汎用性が高く、また、気化フィルタを洗浄する際にもみ洗いが可能であるため、より綺麗に洗浄することができ気化フィルタを清潔に保つことができる。なお、ここでの柔軟であるとは気化フィルタを90度に折り曲げ、広げたときに元に戻ることができることをいう。柔軟性を有するフィルタ基材の材質はとくに限定しないが、たとえば、樹脂や紙などが使用できる。樹脂であれば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリル、セルロース、およびこれらの共重合体や誘導体から構成されているものなどがあり、成形性に優れている。また、アクリルであれば耐水性、耐候性に優れるため、長時間水にさらされる気化フィルタの耐水性を向上させ、寿命を延ばす効果を有する。
また、アクリルは化学的に安定な物質であるため、長時間放置してもゲル化などの変性を生じにくく、作業性に優れる。ポリエチレンであれば、耐候性に優れるため、長時間水にさらされる気化フィルタの耐水性を向上させ、寿命を延ばす効果を有する。ポリプロピレンであれば、強度が大きく、耐薬品性があり気化フィルタに強度を持たせることができる。ポリ塩化ビニリデンであれば、熱安定性、耐薬品性、耐水性に優れ、長時間水にさらされる気化フィルタの耐水性を向上させ、寿命を延ばす効果を有する。また、紙であれば吸水性に優れるため多くの水を気化フィルタに含むことができ、加湿性能を向上させることができる。
また、気化フィルタ上に三次元構造体を形成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリル、セルロース、およびこれらの共重合体や誘導体から構成されているものなどがあり、成形性に優れている。また、樹脂であれば基材の表面と強く結合し、樹脂間は重合しているため粉落ちすることがなく、形状が長期間に渡って保持されるため、安定した加湿性能を長期間に渡って得られる。また、アクリルであれば耐水性、耐候性に優れるため、長時間水にさらされる気化フィルタの耐水性を向上させ、寿命を延ばす効果を有する。また、アクリルは化学的に安定な物質であるため、長時間放置してもゲル化などの変性を生じにくく、作業性に優れる。ポリエチレンであれば、耐候性に優れるため、長時間水にさらされる気化フィルタの耐水性を向上させ、寿命を延ばす効果を有する。ポリプロピレンであれば、強度が大きく、耐薬品性があり気化フィルタに強度を持たせることができる。ポリ塩化ビニリデンであれば、熱安定性、耐薬品性、耐水性に優れ、長時間水にさらされる気化フィルタの耐水性を向上させ、寿命を延ばす効果を有する。また、紙であれば吸水性に優れるため多くの水を気化フィルタに含むことができ、加湿性能を向上させることができる。
また、基材が空気が通過できる空隙を有する発泡構造体であれば、基材の表面積が大きくなり、乾燥空気と気化フィルタ上の水との接触面積が大きくなり、加湿効率を向上させることができる。また、開口面積が大きく、気化フィルタ上にスケールが析出しても目詰まりを起こしにくく、通風路を阻害しにくいという効果が得られる。発泡構造体としては発泡ウレタンなどの発泡樹脂が挙げられる。
また、抗菌材料を含むことで、気化フィルタに細菌やカビが繁殖するのを防止することができ、気化フィルタを清潔に保つことができる。抗菌材料としては特に限定しないが、例えば抗菌剤として、銀・銅・亜鉛などの金属イオンを溶出する無機化合物、銀・銅・亜鉛の金属微粒子、銀ゼオライト、銀含有リン酸ジルコニウム、ヨウ素化合物類、フェノール類、第4級アンモニウム塩類、イミダゾール化合物類、安息香酸類、過酸化水素、クレゾール、クロルヘキシジン、イルガサン、アルデヒド類、ソルビン酸等の薬剤やリゾチーム・セルラーゼ・プロテアーゼなどの酵素製剤、カテキン類、竹抽出物、ヒノキ抽出物、わさび抽出物、からし抽出物などの天然成分抽出物などが挙げられる。また防カビ剤としては、有機窒素化合物、硫黄系化合物、有機酸エステル類、有機ヨウ素系イミダゾール化合物、ベンザゾール化合物などが挙げられる。
また、気化フィルタに親水性加工を施すことで、親水性であれば保水性に優れるために、気化フィルタに多くの水を持たせることができ、加湿性能を向上させることができる。また、親水性であれば、表面張力が大きいために気化フィルタの開口に水膜が形成するのを防ぐことができ、気化フィルタを低圧損にでき、騒音を小さくできるという効果を有する。親水性加工の方法としては、シリカやリン酸チタニア系化合物などの親水性材料の塗布など公知の方法を用いることができる。なお、ここでの親水性とは水との接触角が40度以下のことをいう。
(実施の形態2)
実施の形態1と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。図2に断面の一例を示すように、気化フィルタ21は、コロイダルシリカ重合樹脂エマルジョン22を用いて、添着材で粒子である水酸化マグネシウム23をフィルタ基材24に固定化したものである。
上記構成において、気化フィルタの基材の表面に、水溶液に溶出する添着材を樹脂で固定化することで、気化フィルタ表面に凹凸のある形状を形成することができる。このとき、基材の表面に固定化する添着材と樹脂の量を調整し、膜厚を調整することで、膜厚が薄ければ連続した微小な凹凸が形成でき、厚ければ多孔質な三次元構造を形成することができる。また、添着材と樹脂の配合量を調整することで孔が連続的につながった三次元網目構造を形成することができる。このため、気化フィルタの表面積を大きくすることができ、乾燥空気と水の接触面積が増大し、より高い加湿性能を得ることができるという効果を有する。
また、添着材としては溶液で溶解できるものなら特に規定しないが、例えば弱酸に溶解するものならば、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウムなどが挙げられ、弱酸ならば取り扱いが容易であるため作業性に優れる。アルカリ性溶液で溶解するものとしては、水酸化銅、フッ化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化マグネシウムなどが挙げられ、アルカリ性水溶液ならば、基材に付着した有機物を溶かすことができ、基材の洗浄効果という付加効果が得られる。有機溶剤に可溶なものであれば、有機溶剤は揮発性が高いため乾燥時間が短くて済み、製造時間を短縮できるという効果が得られる。特に有機溶剤の中でもアルコールに溶解するものとしては、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、塩化コバルトなどが挙げられ、アルコールは殺菌作用があるため気化フィルタを清潔に製造できるという効果が得られる。
また、添着材が粒子であれば、その大きさや形状を選ぶことで目的にあった表面積や形状の三次元構造体を樹脂で形成することができるという効果が得られる。
また、樹脂がエマルジョン状態であれば、水に分散できるため作業性に優れる。また、化学的に安定であるため、基材と反応して腐食させることがないため基材の種類を問わず用いることができるという効果を有する。樹脂エマルジョンとしてはアクリルエマルジョンやウレタンエマルジョンなどが挙げられる。
また、コロイダルシリカを樹脂が重合していることで、乾燥時に樹脂粒子表面のコロイダルシリカによって部分的に融着が阻害され、コロイダルシリカで包囲された空孔が生じるため、気化フィルタ表面に凹凸のある形状を形成することができる。このため、気化フィルタの表面積を大きくすることができ、乾燥空気と水の接触面積が増大し、より高い加湿性能を得ることができるという効果を有する。
(実施の形態3)
実施の形態1、2と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。図3に断面の一例を示すように、気化フィルタ31は、空気が通過できる空隙を有する開口のある表面と開口のある裏面とを繊維で連結してなる三次元構造体である樹脂の基材としてのポリエステル32に、樹脂としてのアクリル33で固定化した添着材で粒子である水酸化カルシウム34を、添着材を溶解する能力のある酸性溶液であるクエン酸溶液35で溶解して三次元構造を作成したものである。
上記構成において、基材が空気が通過できる空隙を有する開口のある表面と開口のある裏面とを繊維で連結してなる三次元構造体であれば、表面積が大きいため、水と空気との接触面積が大きくなり加湿効率を高めることができる。また、開口部が大きいために、気化フィルタ上にスケールが析出した場合でも目詰まりを起こしにくく、通風路を阻害しにくいという効果が得られる。開口のある表面と開口のある裏面とを繊維で連結してなる三次元構造体としては、三次元立体編物が挙げられる。繊維の材質としては、樹脂やガラス繊維、金属などが挙げられる。
また、添着材を溶解する能力のある液体としては、特に規定しないが、酸性水溶液ならば、取り扱いが容易で作業性に優れる。また、アルカリ性水溶液であれば基材に付着した有機物を溶かすことができ、洗浄効果がある。また、有機溶剤であれば、揮発性が高いため乾燥時間が短くて済み、製造時間を短縮できるという効果を有する。また、特にクエン酸であれば、クエン酸は生体内物質で食品添加物としても使用されている化学物質であるため、取り扱いが容易であり、作業性に優れるという効果を有する。
(実施の形態4)
実施の形態1乃至3と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。図4にその概略断面図を示す加湿装置41は、疎水性加工を施した気化フィルタ42と送風手段としてのファン43と水供給手段としての水槽44を備えてなり、疎水性加工を施した気化フィルタ42の風上側にヒータ45を配している。ファン43によって加湿装置41内へ取り入れられた乾燥空気46は、ヒータ45で温められた後、疎水性加工を施した気化フィルタ42に接触し抜けていく。このとき、疎水性加工を施した気化フィルタ42は、水供給手段としての水槽44から水を受けて湿った状態にあるので水が気化し、下流側には加湿された空気が供給される。
上記構成において、気化フィルタの形状としては、特に限定されるものでなく、気化フィルタが変形するようなベルト状の形状や、フィルタ形状の変形しない円筒形状などが挙げられる。
また、気化フィルタに疎水性加工を施すことで、疎水性であれば、気化フィルタの多孔質の三次元構造に水を保持することで加湿を行うことができ、表面張力が小さいために気化フィルタの開口に水膜が形成するのを防ぐことができるために、気化フィルタを低圧損にでき、騒音を小さくできるという効果を有する。また、水が基材内部に入り込むことがなく、基材表面が汚れた場合でも、基材内部が汚れたり菌が繁殖したりすることがないため、容易に洗浄することができ、清潔に保つことができる。疎水性加工の方法としては、フッ素系物質などの疎水性材料の塗布など公知の方法を用いることができる。なお、ここでの疎水性とは水との接触角が90度以上から150度以下のことをいう。
また、ヒータを使用しない場合低電力で加湿を行うことができる。また、ファンの回転数を制御することで、容易に加湿量を制御することができる。
また、空気加熱手段を使用すれば、飽和蒸気圧が高くなるため、より高い加湿能力を得ることができる。上記空気加熱手段は、ヒータである必要は必ずしもなく、ハロゲンランプなど空気を加熱できるものなら何でもよい。
(実施例1)気化フィルタ
アクリルエマルジョンを、水で10倍に希釈し、これに水酸化マグネシウムと抗菌材料を加え攪拌して処理液とした。作成した処理液を、開口のある表面と開口のある裏面とをポリエステル繊維で連結してなる三次元立体編物の表裏両面にスプレー噴霧した。その後、約100℃で20分間乾燥し、気化フィルタを作成した。乾燥後、クエン酸溶液に浸漬し、30分間置いて水酸化マグネシウムを溶出させ、樹脂で多孔質な三次元構造を構成した気化フィルタを作成した。
表1に基材のみの無処理品と作成した気化フィルタのクエン酸洗浄前とクエン酸洗浄後の加湿性能を、基材のみの無加工のときを100として示した。基材のみの無加工品に比べ、作成した気化フィルタの加湿性能が高いことが確認された。
Figure 2009085529
(実施例2)気化フィルタ表面状態
アクリルエマルジョンを、水で10倍に希釈し、これに粒子径0.6μmの水酸化マグネシウムを加え攪拌して処理液とした。作成した処理液を、開口のある表面と開口のある裏面とをポリエステル繊維で連結してなる三次元立体編物の表裏両面にスプレー噴霧した。その後、約100℃で20分間乾燥した。乾燥後、クエン酸溶液に浸漬し、30分間置いて水酸化マグネシウムを溶出させ、気化フィルタを作成した。
図5に上記方法で添着材を固定化したもの(A)と、クエン酸で洗浄した後(B)の、気化フィルタの表面状態の倍率5000倍での電子顕微鏡写真を示す。(A)クエン酸洗浄前の気化フィルタの電子顕微鏡写真で、水酸化マグネシウムの粒子が観察された。(B)クエン酸洗浄後の気化フィルタの電子顕微鏡写真で、クエン酸洗浄によって水酸化マグネシウムの粒子が溶出し、水酸化マグネシウムの粒子があった場所に孔があき、多孔質な三次元構造体が観察された。
本発明により、長期間に渡って高い加湿能力を発揮でき、かつ、気化フィルタ上にスケールが析出しても加湿能力が維持でき、気化フィルタを変形しても粉落ちのない気化フィルタおよび加湿装置を提供することができるため、家庭用、業務用加湿装置および空気調和装置への展開用途が期待できる。
本発明の実施の形態1の気化フィルタの概略断面図 同実施の形態2の気化フィルタの概略断面図 同実施の形態3の気化フィルタの概略断面図 同実施の形態4の加湿装置の概略断面図 本発明の実施例2の気化フィルタの電子顕微鏡写真((a)同クエン酸洗浄前の気化フィルタを示す図、(b)同クエン酸洗浄後の気化フィルタを示す図) 従来技術の加湿装置の概略斜視図 従来技術の気化フィルタの概略斜視図 従来技術の気化フィルタの概略図
符号の説明
11 親水性加工を施した気化フィルタ
12 空隙
13 発泡ウレタン
14 樹脂
15 三次元構造の表面
16 抗菌剤
17 防カビ剤
21 気化フィルタ
22 コロイダルシリカ重合樹脂エマルジョン
23 水酸化マグネシウム
24 フィルタ基材
31 気化フィルタ
32 ポリエステル
33 アクリル
34 水酸化カルシウム
35 クエン酸溶液
41 加湿装置
42 疎水性加工を施した気化フィルタ
43 ファン
44 水槽
45 ヒータ
46 乾燥空気
101 気化フィルタ
102 水槽
103 ファン
201 水汲み用リブ
202 気化フィルタ
301 気化フィルタ
302 空隙
303 基材
304 無機材料

Claims (18)

  1. 気化フィルタの基材の表面に、樹脂で構成する多孔質の三次元構造を持たせたことを特徴とする気化フィルタ。
  2. 気化フィルタが柔軟であることを特徴とする請求項1に記載の気化フィルタ。
  3. 添着材を樹脂で基材の表面に固定化後に、添着材を、それを溶解する能力のある溶液で溶出させることで、基材の表面に樹脂で構成する三次元構造を作ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の気化フィルタ。
  4. 気化フィルタの基材の表面に、水溶液に溶出する添着材を樹脂で固定化したことを特徴とする気化フィルタ。
  5. 添着材が粒子であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の気化フィルタ。
  6. 樹脂がアクリルを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の気化フィルタ。
  7. 樹脂がコロイダルシリカを重合していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の気化フィルタ。
  8. 添着材を固定化した樹脂が樹脂エマルジョンを乾燥したものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の気化フィルタ。
  9. 添着材を溶解する能力のある溶液が酸性、アルカリ性の水溶液、または有機溶剤のいずれかを含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の気化フィルタ。
  10. 添着材を溶解する能力のある液体がクエン酸を含むことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の気化フィルタ。
  11. 添着材がマグネシウムおよび/またはカルシウムを含む酸化物、または水酸化物であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の気化フィルタ。
  12. 空気が通過できる空隙を有する基材が発泡構造体であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の気化フィルタ。
  13. 空気が通過できる空隙を有する基材が開口のある表面と開口のある裏面とを繊維で連結してなる三次元構造体であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の気化フィルタ。
  14. 基材が樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の気化フィルタ。
  15. 気化フィルタに抗菌剤および/または防カビ剤を含むことを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の気化フィルタ。
  16. 気化フィルタに親水性、または疎水性の処理を施したことを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の気化フィルタ。
  17. 請求項1乃至16のいずれかに記載の気化フィルタと、気化フィルタに水を供給するための水供給手段と、水を供給された湿潤した気化フィルタに空気を送るための送風手段とを設けた加湿装置。
  18. 請求項1乃至17のいずれかに記載の気化フィルタと、気化フィルタに水を供給するための水供給手段と、水を供給された湿潤した気化フィルタに空気を送るための送風手段と、気化フィルタに送る空気の温度を上げるための空気加熱手段とを設けた加湿装置。
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