JP2009079159A - 包接水和物生成用の水溶液、蓄熱剤、包接水和物又はそのスラリーの製造方法、蓄放熱方法並びに潜熱蓄熱剤又はその主成分を生成するための水溶液の調製方法 - Google Patents

包接水和物生成用の水溶液、蓄熱剤、包接水和物又はそのスラリーの製造方法、蓄放熱方法並びに潜熱蓄熱剤又はその主成分を生成するための水溶液の調製方法 Download PDF

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啓二 戸村
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Hisao Kitagawa
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Abstract

【課題】3〜16℃の温度範囲で多くの冷熱を蓄熱でき、過冷却防止の効果が高く、また水和物の凝固と融解を頻繁に繰返しても過冷却防止の効果を維持できる蓄熱剤、当該蓄熱剤の主成分となる包接水和物の生成を可能にする水溶液、当該包接水和物の製造方法などを提供する。
【解決手段】臭化テトラnブチルアンモニウムを溶質として含み、弗化テトラnブチルアンモニウムが過冷却防止剤として添加されており、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が所定の範囲である水溶液を準備する。その水溶液を水和物生成温度以下に冷却することにより包接水和物を製造する。その包接水和物を主成分として含む蓄熱剤とする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、冷暖房などの空調設備や、食品等の冷却装置に用いられる蓄熱剤、その蓄熱剤の主成分として含まれる包接水和物の製造方法、その包接水和物を生成するための水溶液などに関する。
なお、次に掲げる用語の定義又は解釈は、以下のとおりとする。この用語の意味又は解釈は、本発明の技術的範囲が均等の範囲にまで及ぶことを妨げるものではない。
(1)複数の分子が適当な条件下で組み合わさって結晶ができるとき、一方の分子(ホスト分子)が籠状、トンネル形、層状または網状構造をつくり、その隙間に他の分子(ゲスト分子)が入りこんだ構造の化合物(包接化合物)のうち、ホスト分子が水分子であるものを「包接水和物」という。
ホスト分子である水分子が構成する籠状、トンネル形、層状または網状構造が不完全であっても、その隙間に他の分子(ゲスト分子)が入りこんだ構造の化合物であれば「包接水和物」に含まれる。簡便のため、「包接水和物」を「水和物」と略称する場合がある。
(2)「水和物生成温度」とは、包接水和物のゲスト分子を溶質とする水溶液を冷却したとき、包接水和物が生成する平衡温度をいう。当該水溶液のゲスト分子の濃度などにより包接水和物が生成する温度が変動する場合であっても、これを「水和物生成温度」という。ゲスト分子が異なる複数種の包接水和物が含まれている場合には、「水和物生成温度」には温度幅がある場合が多いので、横軸を温度、縦軸を比熱としたグラフにおいて比熱のピーク値をもって「水和物生成温度」と定義する。簡便のため、「水和物生成温度」を水和物の「融点」又は「凝固点」という場合がある。
(3)包接水和物のゲスト分子を溶質とする水溶液を水和物生成温度以下に冷却すると当該包接水和物が生成するという意味で、当該水溶液を「原料溶液」という場合がある。
(4)「調和融点」とは原料溶液を冷却することにより水和物を生成させる際、水溶液(液相)から水和物(固相)に変相する前後の組成が変わらない場合(例えばもとの水溶液中のゲスト分子濃度と同じゲスト分子濃度の水和物が冷却されて生成するとき)の温度をいう。水溶液のゲスト分子の濃度により包接水和物が生成する温度(融点)が変化するが、縦軸を融点温度、横軸を濃度とした状態図では極大点が調和融点となる。
(5)「調和濃度」とは、調和融点を与える原料溶液の濃度をいう。
(6)「調和水溶液」とは、調和融点を与える濃度の原料溶液をいう。
(7)「スラリー」とは、液体中に固体粒子が分散又は懸濁した状態又はその状態にある物質をいう。沈降しがちな固体粒子を浮遊状態とするために界面活性剤を添加したり、機械的に攪拌することもあるが、液体中に固体粒子が分散又は懸濁している限り、「スラリー」という。液体中に固体粒子が分散又は懸濁している限り、その分散又は懸濁が不均一なものであっても、「スラリー」という。
(8)「蓄熱剤」とは、熱エネルギーを蓄積する効果又は性質を有し、蓄熱用途に使用される物質をいう。熱エネルギーを蓄積する効果又は性質を有し、蓄熱用途に使用される物質である限り、複数種類の物質からなるか否か、添加物を含んでいるか否か、液体状態、固体状態或いはスラリー状態で使用されるか否か、容器やカプセルに収容されているか否か等は問わず、「蓄熱剤」とされる。「蓄熱剤」のうち、主に潜熱に相当する熱エネルギーを蓄積するものであるものを「潜熱蓄熱剤」、主に顕熱の熱エネルギーを蓄積するものであるものを「顕熱蓄熱剤」という場合がある。
包接水和物は、潜熱に相当する熱エネルギーを蓄積する効果又は性質を有し、蓄熱用途に使用されるので、「蓄熱剤」、特に「潜熱蓄熱剤」となり得る。
(9)蓄熱剤の「主成分」とは、蓄熱剤が有する熱エネルギーを蓄積する効果又は性質の発現に寄与する又はその発現の原因となる当該蓄熱剤の構成成分であって、その構成成分として存在するが故にその蓄熱剤が蓄熱用途に使用されるものをいう。そのような構成成分である限り、複数種類の物質からなるか否か、添加物を含んでいるか否か、液体状態、固体状態或いはスラリー状態で使用されるか否か、量が多いか少ないか、容器やカプセルに収容されているか否か等は問わず、当該蓄熱剤の「主成分」とされる。
包接水和物又はそのスラリーが蓄熱剤又はその「主成分」として使用される場合、その包接水和物のゲスト分子は当該蓄熱剤の「主成分」となり得る。
包接水和物のゲスト分子の調和水溶液は、それを原料溶液として冷却すると、液相から固相に変相する前後で組成が変わらず、調和水溶液それ自体が包接水和物に変相してゆく様相を呈する。この点に着目すると、包接水和物が蓄熱剤又はその「主成分」として使用される場合、そのゲスト分子の調和水溶液はそれ自体で蓄熱剤の「主成分」であるといえ、他面において、特に冷却されて固化した後においては蓄熱剤そのものといえる。
蓄熱剤の「主成分」を「蓄熱剤主成分」という場合がある。
潜熱蓄熱剤は、顕熱蓄熱剤に比べて蓄熱密度が高く、相変化温度が一定であり、熱の取り出し温度が安定である等の利点があるため、種々の用途に実用化されている。例えば、空調システムにおいては設備費や運転費の削減のため、熱媒体を輸送するポンプ動力の低減が求められており、熱輸送密度を増大させるために蓄熱密度の高い潜熱蓄熱剤を用いることが検討されている。
このような潜熱蓄熱剤として、テトラアルキルアンモニウム化合物の包接水和物が知られている(特許文献1、特許文献2)。
テトラアルキルアンモニウム化合物の包接水和物は、その生成の際の潜熱が大きいため、比較的蓄熱量が大きく、パラフィンのように可燃性ではないため取り扱いも容易であり、非常に有用な蓄熱剤である。また、テトラアルキルアンモニウム化合物の包接水和物は、調和融点が氷の融点の0℃よりも高いため、蓄熱剤を冷却して水和物を生成する際の冷媒の温度が高くてよく、冷凍機の成績係数(COP)が高くなり省エネルギーが図れるという利点もある(特許文献3)。
原料溶液を冷却して、水和物生成温度(融点又は凝固点)に達してさらに低温になっても水和物が生成されず水溶液の状態を保っている状態又は現象を過冷却状態若しくは過冷却現象(以下、単に「過冷却」という場合がある)というが、水和物を蓄熱剤に用いる場合にはこの過冷却の程度、即ち過冷却度が大きいと、原料溶液の冷却温度(冷媒により冷却している場合には冷媒温度)を低くしなければならず、また水和物の生成が遅延するなど問題となる。したがって、過冷却度をできるだけ小さくし、過冷却を防止又は抑制すること(以下、単に「過冷却防止」という場合がある)が重要である(特許文献4参照)。
従来、例えば微粒子を原料溶液に混入して、これを水和物の核生成材として機能させることにより(特許文献5)、或いは、過冷却防止の効果又は性質を有する薬剤、即ち過冷却防止剤を原料溶液に添加することにより過冷却を防止又は抑制する試みがなされてきた。
特公昭57−35224号公報 特許第3641362号公報 特開2007−40641号公報 特開2001−343139号公報 特許第3407659号公報
しかし、原料溶液に微粒子を混入させるという前者の手法には、その原料溶液に微粒子が均一に分散されていないと過冷却防止の効果が原料溶液に広く行き渡らず、顕在化するのに時間がかかるという問題や、水和物の生成又は凝固と融解とを繰り返すと微粒子が原料溶液から分離されて過冷却防止の効果がなくなるという問題がある。
他方、原料溶液に過冷却防止剤を添加するという後者の手法にも問題がある。例えば、過冷却が生じた場合又は過冷却が生じることを見込んで、原料溶液中に過冷却防止剤を供給する場合には、微粒子を添加する場合と類似の問題が生じる。即ち、適時に過冷却防止剤を原料溶液に供給したとしても過冷却防止剤は直ちに水溶液全体に行き渡るわけではないので、過冷却防止効果が水溶液全体に及ぶまでには時間がかかり、全体として過冷却を十分又は短時間に防止又は抑制することができない。この問題は、蓄熱のたびに包接水和物の生成時間が変動しないように(換言すれば包接水和物の生成が安定的であるように)する必要がある場合や蓄熱を短時間で行う必要から包接水和物の生成を急速に行う必要がある場合には、解決すべき大きな課題となる。それ故、はじめに原料溶液に添加しておけば過冷却防止の効果が生じる過冷却防止剤があれば、それに越したことはない。
尤も、はじめに原料溶液に過冷却防止剤を添加しておけば過冷却防止の効果が生じる場合であっても、原料溶液への過冷却防止剤の添加量が不適切であると、当初準備した原料溶液の水和物生成温度が過度に変化したり、予定していた蓄熱量を確保できなくなる場合がある。また、過冷却防止の効果が時間の経過に伴い劣化しないとも限らない。例えば蓄熱剤の実際の使用環境では、蓄熱と放熱(以下、まとめて「蓄放熱」という場合がある)、即ち包接水和物の生成又は凝固と融解とが頻繁に繰り返される。このような蓄熱と放熱の繰返しにより、過冷却防止効果の経時的な劣化が起こることがある。
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、原料溶液を冷却して包接水和物を生成する際、原料溶液の過冷却度を低減又は過冷却を防止又は抑制することができる技術、原料溶液中における水和物の生成又は凝固と融解とを頻繁に繰返しても過冷却防止効果の低下を起こりにくくすることができる技術並びにこれらに関連する技術を提供することを目的とする。
本発明の第1の形態に係る包接水和物生成用の水溶液は、臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)を溶質として含み、弗化テトラnブチルアンモニウム(TBAF)が過冷却防止剤として添加されていることを特徴とするものである。
本発明の第2の形態に係る包接水和物生成用の水溶液は、第1の形態に係る水溶液であって、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度(X重量%)が30重量%以上、40重量%以下であるとき、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が、(−0.03X+2.0)%以上、(−0.14X+10.6)%以下であることを特徴とするものである。
本発明の第3の形態に係る包接水和物生成用の水溶液は、第1の形態に係る水溶液であって、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度(X重量%)が30重量%以上、35重量%未満であるとき、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が、(−0.04 X+2.3)%以上、(−0.18 X+12.0)%以下であり、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度(X重量%)が35重量%のとき、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が0.9%以上、5.7%以下であり、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度(X重量%)が35重量%より大きく、40重量%以下であるとき、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が、(−0.02 X+1.6)%以上、(−0.14 X+10.6)%以下であることを特徴とするものである。
本発明の第4の形態に係る包接水和物生成用の水溶液は、第1の形態に係る水溶液であって、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度が30重量%以上、40重量%以下であるとき、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が、1.1%以上、5.0%以下であることを特徴とするものである。
本発明の第5の形態に係る包接水和物生成用の水溶液は、第1の形態に係る水溶液であって、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度が30重量%以上、35重量%未満であるとき、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が、1.1%以上、5.7%以下であり、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度(X重量%)が35重量%のとき、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が0.9%以上、5.7%以下であり、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度が35重量%より大きく、40重量%以下であるとき、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が、0.9%以上、5.0%以下であることを特徴とするものである。
本発明の第6の形態に係る包接水和物生成用の水溶液は、第1の形態に係る水溶液であって、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度が調和融点を与える濃度であり、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が、0.8%以上、5.0%以下であることを特徴とするものである。
本発明の第7の形態に係る包接水和物生成用の水溶液は、第1の形態に係る水溶液であって、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度に応じて定まる所定の範囲内にあることを特徴とするものである。
本発明の第8の形態に係る包接水和物生成用の水溶液は、第1乃至第7のいずれかの形態に係る水溶液であって、腐食抑制剤が添加されていることを特徴とするものである。
本発明の第9の形態に係る蓄熱剤は、第1乃至第8のいずれかの形態に係る包接水和物生成用の水溶液が水和物生成温度以下に冷却されることにより生成される包接水和物を含むことを特徴とするものである。
本発明の第10の形態に係る蓄熱剤は、第1乃至第8のいずれかの形態に係る包接水和物生成用の水溶液が水和物生成温度以下に冷却されることにより生成される包接水和物がその水溶液又は水溶媒に分散又は懸濁してなるスラリーを含むことを特徴とするものである。
本発明の第11の形態に係る蓄熱剤は、臭化テトラnブチルアンモニウムと過冷却防止剤としての弗化テトラnブチルアンモニウムと水を含んでなることを特徴とするものである。
本発明の第12の形態に係る蓄熱剤は、臭化テトラnブチルアンモニウムと弗化テトラnブチルアンモニウムと水を含んでなる蓄熱剤であって、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度に応じて定まる所定の範囲内にあることを特徴とするものである。
本発明の第13の形態に係る蓄熱剤は、第9乃至第12のいずれかの形態に係る蓄熱剤であって、腐食抑制剤が添加されていることを特徴とするものである。
本発明の第14の形態に係る包接水和物又はそのスラリーの製造方法は、第1乃至第8のいずれかの形態に係る包接水和物生成用の水溶液を準備する工程と、前記水溶液を冷却して包接水和物を生成させる工程とを有することを特徴とするものである。
本発明の第15の形態に係る蓄放熱方法は、第1乃至第8のいずれかの形態に係る包接水和物生成用の水溶液をを冷却し、包接水和物を生成させることにより熱エネルギーを蓄積し、生成した包接水和物を融解させることにより熱エネルギーを放出することを特徴とするものである。
本発明の第16の形態に係る潜熱蓄熱剤又はその主成分を生成するための水溶液の調製方法は、臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に、弗化テトラnブチルアンモニウムの調和融点を与える濃度の水溶液を添加する工程とを有することを特徴とするものである。
本発明の第17の形態に係る潜熱蓄熱剤又はその主成分を生成するための水溶液の調製方法は、第16の形態に係る水溶液の調製方法であって、臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液が、臭化テトラnブチルアンモニウムの調和融点を与える濃度の水溶液であることを特徴とするものである。
本発明の第18の形態に係る潜熱蓄熱剤又はその主成分を生成するための水溶液は、冷却されて包接水和物を生成させる水溶液であって、臭化テトラnブチルアンモニウムを溶質として含み、弗化テトラnブチルアンモニウムが添加されおり、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度に応じて定まる所定の範囲内にあることを特徴とするものである。
本発明の第19の形態に係る潜熱蓄熱剤又はその主成分を生成するための水溶液は、冷却されて包接水和物を生成させる水溶液であって、臭化テトラnブチルアンモニウムを溶質として含み、弗化テトラnブチルアンモニウムが添加されおり、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度が30重量%以上、40重量%以下であるとき、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が、1.1%以上、5.0%以下であることを特徴とするものである。
本発明の第20の形態に係る潜熱蓄熱剤又はその主成分となる包接水和物又はそのスラリーの製造方法は、第18又は第19の形態に係る水溶液を準備する工程と、その水溶液を冷却して包接水和物を生成させる工程とを有することを特徴とするものである。
(1) 本発明によれば、臭化テトラnブチルアンモニウムを溶質として含む水溶液に弗化テトラnブチルアンモニウムが添加されているので、蓄熱剤又はその主成分となる水和物を、当該水溶液の冷却により生成させる際、過冷却を防止又は抑制することができる。弗化テトラnブチルアンモニウムは、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が所定の範囲内になるように添加されるので、過冷却防止性が優れ、かつ、3〜16℃の温度範囲の潜熱量の低下を実用上の変動許容範囲内にすることができる。また、原料溶液中における水和物の生成又は凝固と融解とを頻繁に繰返しても過冷却防止効果の低下を起こりにくくすることができる。
それ故、本発明によれば、過冷却度が低減された又は過冷却が起こりにくい包接水和物生成用の又は蓄熱剤若しくはその主成分を生成するための水溶液或いは、水和物の生成又は凝固と融解とを頻繁に繰返しても過冷却防止効果の低下が起こりにくい包接水和物生成用の又は蓄熱剤若しくはその主成分を生成するための水溶液(第1乃至第8並びに第18及び第19の各形態)、過冷却が防止又は抑制されつつ原料溶液から生成され得る包接水和物を含む又はその包接水和物のスラリーを含む蓄熱剤(第9及び第10の各形態)、過冷却が防止又は抑制されつつ生成し得る蓄熱剤(第11乃至第13の各形態)、過冷却度を低減又は過冷却を防止若しくは抑制しつつ包接水和物又はそのスラリーを製造する方法(第14の形態)、原料溶液中における水和物の生成又は凝固と融解とを頻繁に繰返しても過冷却防止効果の低下が起こりにくい蓄放熱方法(第15の形態)、過冷却が防止又は抑制されつつ原料溶液から生成され得る潜熱蓄熱剤又はその主成分となる包接水和物又はそのスラリーの製造方法(第20の形態)、などを実現することができる。また、蓄熱剤の単位重量当たりの潜熱量がより大きくなるように調整することが容易になる潜熱蓄熱剤又はその主成分を生成するための水溶液の調製方法(第16及び第17の各形態)を実現することができる。
本発明の作用効果の詳細及び実施形態又は実施例に固有の作用効果については、別途後述する。
(2) 弗化テトラnブチルアンモニウムは、弗素イオンを有するために、臭素イオンを有する臭化テトラnブチルアンモニウムに比して高い腐食性を有する。それ故、本発明の第8及び第13の形態によれば、比較的高い腐食性を有する弗化テトラnブチルアンモニウムが添加されている原料溶液に腐食抑制剤も添加されているので、腐食性の増加が抑制された包接水和物生成用の水溶液及び蓄熱剤をそれぞれ実現することができる。
本発明において採用可能な腐食抑制剤は、脱酸型腐食抑制剤(亜硫酸塩またはチオ硫酸塩のナトリウム塩、リチウム塩など)、被膜形成型腐食抑制剤(ポリリン酸塩、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩、燐酸水素二塩、ピロ燐酸塩またはメタ珪酸塩のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩など)、脱酸型腐食抑制剤と被膜形成型腐食抑制剤との併用、その他の腐食抑制剤(亜硝酸塩、ベンゾトリアゾール、ヒドラジン、エリソルビン酸塩、アスコルビン酸塩、糖類など)である。これらの腐食抑制剤を蓄熱剤に添加することにより、融点や蓄熱量を大きく変えずに腐食性の少ない蓄熱剤を提供することができる。
(3) 本発明に係る蓄熱剤、特に潜熱蓄熱剤は、過冷却防止効果が高く、また水和物の生成又は凝固と融解とを頻繁に繰返しても過冷却防止効果を維持できることのみならず、3〜16℃の温度範囲で多くの冷熱を蓄積できる。このため、本発明に係る蓄熱剤は、空調向けの蓄熱剤として特に有望である。
3〜16℃の温度範囲で蓄熱できる潜熱蓄熱剤が空調用途に向いているとされる理由は次のとおりである。
即ち、潜熱蓄熱剤を用いた空調においては、冷熱源からの冷熱を潜熱として貯めている蓄熱剤と空調負荷の空気とを直接又は媒体を介して熱交換を行い、熱交換後の空気を空調対象の空間に送り出すことにより、その空間の温度や湿度を調整している。多くの場合、冷房空調において室内機から吹き出す冷空気の温度は一般に15℃程度であり、高くとも18℃程度である。それ以上に高い温度であると、空調対象の空間に向けて送り出すべき空気量を増やさない限り、同レベルの空調効果を得ることが困難になり、それどころか却って空調効率が低下する。そのため、冷空気に冷熱を供給する潜熱蓄熱剤は、空気との熱交換に必要な温度差(約2℃)を考慮して、16℃以下の潜熱を蓄熱できるものであることが要求される。また、空調向けの潜熱蓄熱剤の典型例である氷の場合、0℃より低い温度で冷却する必要があるため、冷凍機のCOPが低くなり、蓄冷に必要なエネルギーが大きくなり省エネルギー化ができないという問題がある。COPを高いまま維持し、省エネルギー化を実現するためには、空調向けの潜熱蓄熱剤は、5℃以上、低くとも3℃以上で蓄熱できるものであることが要求される。それ故、3〜16℃の温度範囲で蓄熱できる潜熱蓄熱剤が空調用途に向いているとされる。
しかし、空調用途に使用されると否とに拘らず、3〜16℃の温度範囲の熱エネルギーを蓄積できる蓄熱剤は、現実の使用に耐え得るものでなければならない。
例えば、トリメチロールエタン、水及び尿素を含有する水和物系の蓄熱剤主成分に、ポリグリセリンを添加した蓄熱剤(融点は10〜25℃)がある。この蓄熱剤については特開2000−256659号公報に詳しいが、その記載による限り、凝固・融解の繰返しを確認した回数は高々100回程度に留まっている。この程度の繰返し使用回数では、使用目的は限られるし、水溶液中における成分物質の分離や濃度の偏り又は冷却により生成した水和物と母相との相分離が生じると過冷却防止の効果も低下してしまうので、広く実際の使用(特に民需の使用)に耐え得るものとは言い難い。
これに対し、本発明に係る蓄熱剤は、臭化テトラnブチルアンモニウムと弗化テトラnブチルアンモニウムと水とを、本発明に係る水和物生成用の水溶液は臭化テトラnブチルアンモニウムと弗化テトラnブチルアンモニウムとを、それぞれ含有している。臭化テトラnブチルアンモニウムは、水溶液の状態であれば3〜16℃の温度範囲で潜熱に相当する熱エネルギーを蓄積する。その水和物生成温度は、弗化テトラnブチルアンモニウムが少量添加されていても大きくは変らない。そして、弗化テトラnブチルアンモニウムを添加剤として含む原料溶液から包接水和物を生成させる際には、原料溶液の過冷却度が低減又は過冷却が防止若しくは抑制される。しかも、当該原料溶液中において水和物の生成又は凝固と融解とを1000回以上繰り返しても過冷却防止の効果は低下しない。
従って、本発明によれば、3〜16℃の温度範囲の熱エネルギーを蓄積でき、現実的使用に耐え得る蓄熱剤を実現することができる、という特に有益な効果を奏する。
なお、本発明によれば3〜16℃の温度範囲で蓄熱できる(潜熱)蓄熱剤、3〜16℃の範囲に水和物生成温度を有する水溶液等を実現することができるからといって、本発明が空調用途に限定されるということではない。本発明は、空調用途に使用されると否とに拘らず、3〜16℃の温度範囲の熱エネルギーを蓄積できる蓄熱剤、3〜16℃の範囲に水和物生成温度を有する水溶液等を実現することができる技術的思想である。この点、念のため申し添えておく。
以下、実施形態により本発明を詳細に説明する。その際、必要に応じて図表を参照しつつ説明するが、各図表において同じ部分又は相当する若しくは共通する部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
なお、便宜的に、臭化テトラnブチルアンモニウムを「TBAB」と、弗化テトラnブチルアンモニウムを「TBAF」とそれぞれ略記する場合がある。
1. 本発明に関連する新たな知見について説明する。本発明の幾つかの形態は当該新たな知見を基礎としている。
(ア) 臭化テトラnブチルアンモニウムは包接水和物を形成し、その調和融点はおよそ12℃であり、この調和融点における潜熱量は178J/gである。臭化テトラnブチルアンモニウムをゲスト分子とする包接水和物を含む蓄熱剤(特に当該包接水和物を主成分として含む蓄熱剤)に関して、臭化テトラnブチルアンモニウムを溶質として含む原料溶液を冷却する際に生じる過冷却を防止又は抑制する効果を発揮する又は維持することができる物質及びその配合組成を検討し、当該物質として弗化テトラnブチルアンモニウム又はその水溶液を添加することが有効であることを見出した。
弗化テトラnブチルアンモニウムを、臭化テトラnブチルアンモニウムを溶質として含む原料溶液に添加することにより過冷却防止効果を奏する理由を推定すると、それは次のとおりである。
即ち、弗化テトラnブチルアンモニウムは水和物の調和融点が25℃であり、臭化テトラnブチルアンモニウムを溶質として含む原料溶液から生成される水和物の融点或いは臭化テトラnブチルアンモニウム水和物の融点より十分に高い。このため上記の原料溶液を冷却すると、弗化テトラnブチルアンモニウム水和物が臭化テトラnブチルアンモニウム水和物より先に形成される。すると、弗化テトラnブチルアンモニウム水和物が臭化テトラnブチルアンモニウム水和物の形成の契機又は誘発原因となる核(生成核)になり、蓄熱剤主成分となる水和物を短時間で生成させる結果、過冷却が防止又は抑制される。また、弗化テトラnブチルアンモニウム水和物は臭化テトラnブチルアンモニウム水和物の類縁物質であり、相溶性があり、結晶構造なども類似しているため、効果的に過冷却が防止又は抑制される。
(イ) 過冷却防止剤としての弗化テトラnブチルアンモニウムの添加量に関しては、例えば、弗化テトラnブチルアンモニウムを、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する重量比率(百分率)が所定の範囲内になるように添加することが好ましい。当該所定の範囲の下限値未満であると、弗化テトラnブチルアンモニウム水和物の量が減り、臭化テトラnブチルアンモニウム水和物の生成核となりにくくなり、過冷却を防止する効果が不足する。他方、当該所定の範囲の上限値超であると、臭化テトラnブチルアンモニウムと弗化テトラnブチルアンモニウムを含む水溶液から生成される水和物又は臭化テトラnブチルアンモニウムと弗化テトラnブチルアンモニウムを含む水和物、延いては当該水和物を主成分とする蓄熱剤の潜熱量が影響を受け、3〜16℃の温度範囲で蓄熱できる潜熱量が著しく減少してしまう。当該所定の範囲は、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度によって変動する。
それ故、弗化テトラnブチルアンモニウムを、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度に応じて、弗化テトラnブチルアンモニウムの添加を適量(又は適量の範囲)にすることにより、過冷却防止剤の添加による蓄熱剤主成分の熱的性質への悪影響を極力低減しつつ、過冷却防止の効果をより確実に又は効果的になものにすることができる。
(ウ) 水の量に対する臭化テトラnブチルアンモニウムと弗化テトラnブチルアンモニウムのそれぞれの量は、臭化テトラnブチルアンモニウムと弗化テトラnブチルアンモニウムのそれぞれの水溶液を混合すると仮定するとき、いずれも調和濃度になるような量に設定することが好ましい。
調和濃度とは、先に定義したように調和融点を与える原料溶液の濃度をいい、調和濃度の水溶液を冷却して水和物を生成するとき、もとの水溶液中のゲスト分子濃度と同じゲスト分子濃度の水和物が生成する。この調和濃度の水溶液から生成した水和物を説明のため、調和濃度水和物という。臭化テトラnブチルアンモニウムの調和濃度の水溶液(調和水溶液)と弗化テトラnブチルアンモニウムの調和濃度の水溶液(調和水溶液)を混合した原料溶液を冷却する際、一見、それぞれのゲスト分子の量に対して調和濃度水和物を生成するのに必要な水の量より過剰な水が存在するように見えるが、冷却されて水和物を生成し始める温度がそれぞれ単独の調和水溶液の場合と異なることがあっても、それぞれの調和濃度水和物を生成するのに必要な水の量だけが存在する(余分な水は存在しない)ので、最終的にはそれぞれの調和濃度水和物が生成される。このように臭化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液と弗化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液の混合溶液を冷却することにより、臭化テトラnブチルアンモニウムの調和濃度水和物と弗化テトラnブチルアンモニウムの調和濃度水和物が生成されることを、以下の説明の理解のため、念のため申し添える。
臭化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液と弗化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液を混合して原料溶液を調製する際に、臭化テトラnブチルアンモニウムと弗化テトラnブチルアンモニウムとの量の設定は、例えば、次の要領又は原理で行うことができる。即ち、今、臭化テトラnブチルアンモニウムと弗化テトラnブチルアンモニウムの各水溶液の調和濃度は既知であるので、それぞれP重量%とQ重量%とする。また、説明の便のため、各水溶液の比重はいずれも1(1cm3当たり1グラム)と近似でき、各溶質の溶解に伴う各水溶液の体積変動は生じないものとしておく(このような前提を設けても実際との乖離は小さい。その乖離が無視できない場合には補正すれば足りる)。まず、Xリットルの原料溶液を準備するために、M(Xより小さい任意の値)リットルの臭化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液と(X−M)リットルの弗化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液を混合する。これは、(X−10PM−10Q(X−M))リットルの水溶媒に、10PMグラムの臭化テトラnブチルアンモニウムと、10Q(X−M)グラムの弗化テトラnブチルアンモニウムとがそれぞれ投入されたことと同じである。従って、任意のXリットルの原料溶液を準備する際に、Mリットルの臭化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液と(X−M)リットルの弗化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液を混合する、或いは、10PMグラムの臭化テトラnブチルアンモニウム又はこれと等量の物質と、10Q(X−M)グラムの弗化テトラnブチルアンモニウム又はこれと等量の物質とを(X−10PM−10Q(X−M))リットルの水溶媒に投入し混合することにより、水の量に対する臭化テトラnブチルアンモニウムと弗化テトラnブチルアンモニウムのそれぞれの量を、いずれも調和濃度になるような量にすることができる。
上記のように臭化テトラnブチルアンモニウムと弗化テトラnブチルアンモニウムとの量を設定することが好ましいとする理由は、調和濃度でない濃度で生成される水和物に比べると、調和濃度で生成される水和物の方により多くの熱エネルギーが蓄積されることに鑑みるに、臭化テトラnブチルアンモニウムと弗化テトラnブチルアンモニウムのそれぞれの水和物が、調和濃度で生成し得るような条件を設定してやれば、それらの水和物を主成分とする蓄熱剤の単位重量当たりの潜熱量がより大きくなるように調整することが容易になるためである。上記の例でいえば、Xリットルの原料溶液を準備するために、Mリットルの臭化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液と(X−M)リットルの弗化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液を混合してやれば、或いは、(X−10PM−10Q(X−M))リットルの水溶媒に、10PMグラムの臭化テトラnブチルアンモニウム又はこれと等量の物質と、10Q(X−M)グラムの弗化テトラnブチルアンモニウム又はこれと等量の物質とをそれぞれ投入し、後はMの値を変動させて潜熱量が最大になるように又は潜熱量が過度に低下しないように調整してやればよい(換言すれば、潜熱量が最大になる又は過度に低下しないようなMの値を求めればよい)、ということである。
(エ) 以上においては、臭化テトラnブチルアンモニウムと弗化テトラnブチルアンモニウムの水和物を主成分とする蓄熱剤の単位重量当たりの潜熱量がより大きくなるように調整する際、臭化テトラnブチルアンモニウムと弗化テトラnブチルアンモニウムのそれぞれの水溶液を混合すると仮定するとき、いずれも調和濃度になるような条件(又は臭化テトラnブチルアンモニウムと弗化テトラnブチルアンモニウムのそれぞれの水和物が、調和濃度で生成し得るような条件)を設定するという手法について説明した。そこで、その他のバリエーションについて定性的説明を追記しておく。
1> 調和濃度の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に、調和濃度より低い濃度の弗化テトラnブチルアンモニウムの水溶液を添加すると、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度を調和濃度から実質的に低下させるように作用するので、また、調和濃度より高い濃度の弗化テトラnブチルアンモニウムの水溶液又は弗化テトラnブチルアンモニウム三水和物の粉末を添加すると、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度を調和濃度から実質的に増加させるように作用するので、冷却により生成される水和物の単位重量当たりの潜熱量は添加前より低下する。
2> 調和濃度より低い濃度の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に、調和濃度より低い濃度の弗化テトラnブチルアンモニウムの水溶液を添加すると、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度を低下させるように作用するので、冷却により生成される水和物の単位重量当たりの潜熱量は添加前より低下する。
調和濃度より低い濃度の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に、調和濃度の弗化テトラnブチルアンモニウムの水溶液を添加すると、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度を実質的に低下させるように作用しないので、冷却により生成される水和物の単位重量当たりの潜熱量は添加前より低下しない(又は弗化テトラnブチルアンモニウムの水和物生成による潜熱量が加わるため増加する)。
調和濃度より低い濃度の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に、調和濃度より高い濃度の弗化テトラnブチルアンモニウムの水溶液又は弗化テトラnブチルアンモニウム三水和物の粉末を添加すると、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度を実質的に増加させるように作用するので、その結果は添加量によって分かれる。即ち、添加量が値S(添加するものによって異なる特定の値)以下であるならば、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度を実質的に調和濃度に至るまで増加させるように作用するので、冷却により生成される水和物の単位重量当たりの潜熱量は添加前より増加する。添加量が値Sを超えており、値T(添加するものによって異なる別の特定の値)以下であれば、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度を実質的に増加させるものの、冷却により生成される水和物の単位重量当たりの潜熱量が添加前より低下する程度まで、これを実質的に増加させるようには作用しないので、当該潜熱量は添加前より低下しない又は増加する。添加量が値Tを超えていれば、冷却により生成される水和物の単位重量当たりの潜熱量は添加前より低下する。
3> 調和濃度より高い濃度の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に、調和濃度を超える濃度の弗化テトラnブチルアンモニウムの水溶液又は弗化テトラnブチルアンモニウム三水和物の粉末を添加すると、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度は実質的に増加するように作用するので、冷却により生成される水和物の単位重量当たりの潜熱量は添加前より低下する。
調和濃度より高い濃度の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に、調和濃度の弗化テトラnブチルアンモニウムの水溶液を添加すると、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度を実質的に調和濃度に近づけるようには作用しないので、冷却により生成される水和物の単位重量当たりの潜熱量は添加前より低下しない(又は増加する)。
調和濃度より高い濃度の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に、調和濃度より低い濃度の弗化テトラnブチルアンモニウムの水溶液を添加すると、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度を実質的に低下させるように作用するので、その結果は添加量によって分かれる。即ち、添加量がある値M(添加するものによって異なる特定の値)以下であるならば、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度を実質的に調和濃度に至るまで低下させるように作用するので、冷却により生成される水和物の単位重量当たりの潜熱量は添加前より増加する。添加量が値Mを超えており、ある別の値N(添加するものによって異なる特定の値)以下であれば、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度を実質的に低下させるものの、冷却により生成される水和物の単位重量当たりの潜熱量が添加前より低下する程度まで、これを実質的に低下させるようには作用しないので、当該潜熱量は添加前より低下しない又は増加する。添加量が値Nを超えていれば、冷却により生成される水和物の単位重量当たりの潜熱量は添加前より低下する。
従って、臭化テトラnブチルアンモニウムを溶質として含み、弗化テトラnブチルアンモニウムが添加された水溶液を冷却することにより水和物を生成させる場合、弗化テトラnブチルアンモニウムを添加する前に比べて、水和物の単位重量当たりの潜熱量を添加前より低下させないようにするためには、次のように調製すればよい。
(i) 調和濃度の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に弗化テトラnブチルアンモニウムを添加する場合には、調和濃度の弗化テトラnブチルアンモニウムの水溶液を添加する。
(ii) 調和濃度より低い濃度の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に弗化テトラnブチルアンモニウムを添加する場合には、調和濃度の弗化テトラnブチルアンモニウムの水溶液を添加する或いは、調和濃度より高い濃度の弗化テトラnブチルアンモニウムの水溶液又は弗化テトラnブチルアンモニウム三水和物の粉末を適量添加する。
(iii) 調和濃度より高い濃度の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に弗化テトラnブチルアンモニウムを添加する場合には、調和濃度の弗化テトラnブチルアンモニウムの水溶液を添加する或いは、調和濃度より低い濃度の弗化テトラnブチルアンモニウムの水溶液を適量添加する。
上記(i)乃至(iii)の調製の仕方を横断的に纏めると、少なくとも、調和濃度の弗化テトラnブチルアンモニウムの水溶液を添加すれば、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度を問わず、水和物の単位重量当たりの潜熱量は添加前より低下させないようにすることができる、といえる。臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液の濃度が調和濃度である場合において、当該潜熱量の低下を極力回避すべき局面であれば、調和濃度の弗化テトラnブチルアンモニウムの水溶液を添加するのが妥当である。
2. 次に、過冷却防止剤としての弗化テトラnブチルアンモニウムの添加とその効果についてより具体的に説明する。
<測定・評価方法>
(ア) ある濃度に調製された臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に、既知濃度の弗化テトラnブチルアンモニウムの水溶液を添加することにより、水和物生成用の水溶液(原料溶液)を準備する(因みに、この水溶液を冷却することにより生成する水和物は、それ自体で又は水溶液に分散又は懸濁してなるスラリーとして蓄熱剤(特に潜熱蓄熱剤)又はその主成分として使用され得るものである)。また、弗化テトラnブチルアンモニウムを添加していない臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液も準備する。
臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液について、その濃度が調和濃度であるとき冷却して生成される水和物の潜熱量が最大となることから、まず調和濃度(40重量%)の臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液に弗化テトラnブチルアンモニウム水溶液を添加した原料溶液を調製して評価し、次いで35重量%と30重量%の臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液に弗化テトラnブチルアンモニウム水溶液を添加した原料溶液も調製して評価することとした。
上記のように準備された各原料溶液を冷却することにより生成する水和物について、以下に示す過冷却防止性、潜熱量、潜熱量比及び融点の計測及び評価を行う。この計測と評価を通じて、過冷却防止の効果が高く、かつ、3〜16℃の温度範囲の潜熱量の低下が少ない弗化テトラnブチルアンモニウムの好ましい添加率(臭化テトラnブチルアンモニウムに対する添加した弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率)の範囲を求める。
(1)過冷却防止性
上記の要領により調製した原料溶液を冷媒を流した金属管に接触させて3℃に冷却し、水和物の結晶が生成し過冷却が解除されるまでの時間を計測し、5分以内に水和物結晶が生成すれば過冷却防止性又は過冷却防止の効果が認められると評価する。さらに、この原料溶液を3℃に冷却して水和物を生成させ、その後40℃に加熱して生成した水和物を融解させるという水和物の生成又は凝固と融解とを1000回繰返して、過冷却防止性の低下がないと認められたときに過冷却防止効果の耐久性があると評価する。
(2)潜熱量、潜熱量比及び融点
上記の要領により調製した原料溶液の差動走査型熱量計(DSC)測定を実施し潜熱量と融点を測定する。
上記の要領により調製した原料溶液を冷却することにより生成される固相物の融解時の熱量を3〜16℃の温度範囲で計測することにより潜熱量を求める。ここでいう潜熱量とは、3〜16℃の温度範囲における、潜熱に相当する熱エネルギーをいう。
弗化テトラnブチルアンモニウムを添加していない臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液から生成した水和物と、弗化テトラnブチルアンモニウムを添加した臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液から生成した水和物の融解潜熱量をDSCを用いて計測し、弗化テトラnブチルアンモニウムを添加していない臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液から生成した水和物の潜熱量(これを1とする)に対する弗化テトラnブチルアンモニウムを添加した臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液から生成した水和物の潜熱量の比をもって潜熱量比とし、潜熱量比により弗化テトラnブチルアンモニウムの添加率の変化による潜熱量の変化を評価する。
弗化テトラnブチルアンモニウムを添加していない臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液から生成した水和物と、弗化テトラnブチルアンモニウムを添加した臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液から生成した水和物の融解させたときの融点を計測する。横軸に温度、縦軸に比熱をとったグラフのピークを示す温度を融点とする。
<計測と評価の結果>
(イ) 臭化テトラnブチルアンモニウムの調和融点を与える濃度(約40重量%)の水溶液(調和水溶液)の場合
臭化テトラnブチルアンモニウムの調和融点を与える濃度(約40重量%)の水溶液(調和水溶液)に、弗化テトラnブチルアンモニウムの調和融点を与える濃度(約33重量%)の水溶液(調和水溶液)を添加することにより、水和物生成用の水溶液を準備した。より具体的には、臭化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液の重量に対する弗化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液の重量の比率(重量%)(以下「TBAF調和水溶液添加率」という場合がある)が異なる複数の原料溶液を準備し、かくして準備された各原料溶液に対して、上記(2−1)及び(2−2)に記載の計測と評価を行った。その結果を表1に示す。
表1には、各原料溶液における、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率(重量%)(以下「TBAF添加率」という場合がある)及び、TBABとTBAFの合計重量に対する水の重量比(以下「水/(TBAB+TBAF)」と表記する場合がある)も併せて記してある。過冷却防止の効果又は過冷却防止性があり、1000回の凝固融解繰返し後もその低下が認められなかった場合には○を、過冷却の効果又は過冷却防止性がない或いはその低下が認められた場合には×を記した。
Figure 2009079159
表1から、次のことが分かる。
〔a〕 TBAF調和水溶液添加率が1重量%又はTBAF添加率が0.8重量%を下回ると、過冷却防止の効果が不十分になる。
〔b〕 TBAF調和水溶液の添加率が6重量%又はTBAF添加率が5.0重量%を超えると、潜熱量比は大きく減少し、水和物が蓄熱剤又はその主成分として使用されるときの実用上の変動許容幅(10%)を超える。
上記〔b〕の結果、即ち3〜16℃の温度範囲の潜熱量がTBAF調和水溶液添加率又はTBAF添加率に依存するという結果は、従来の知見からは予測不能なものである。そこで、潜熱量が減少する理由について検討した。
DSC測定結果を、横軸に温度、縦軸に潜熱量をとってグラフ化したものを図1に示す。図1において点線で示すAが臭化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液に弗化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液を添加しない場合、実線で示すBが臭化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液に弗化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液を臭化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液に対して9重量%に相当する量を添加した場合である。弗化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液を添加した場合には、潜熱を持つ範囲が弗化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液を添加しない場合よりも高温側に移動していることが分かる。この現象が、3〜16℃の温度範囲の潜熱量が減少する理由であると推定される。なお、潜熱をもつ範囲が高温側に移動するのに伴い融点も高温側に移動する傾向がある。
以上の結果から、約40重量%の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に弗化テトラnブチルアンモニウムを添加する場合、弗化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液添加率が1重量%以上で6重量%以下の範囲にあれば、又は、TBAF添加率が0.8重量%以上で5.0重量%以下の範囲にあれば、過冷却防止性が優れ、かつ、3〜16℃の温度範囲の潜熱量の低下が、水和物が蓄熱剤又はその主成分として使用されるときの実用上の変動許容範囲内(蓄熱量比の変化が10%以下)となる、といえる。
なお、念のため、次の結果についても付記しておく。
1> TBAF添加率が5.0重量%以下の範囲にあれば、融点の変動幅が1度以下になっている。この結果も従来の知見からは予測不能なものである。水和物が蓄熱剤又はその主成分として使用されるときその融点の実用上の変動許容幅は、用途にもよるが1〜1.5度程度であることを考え併せると、TBAF添加率が所定値以内であれば融点の変動幅が1度以下になるということは重要である。図1に示すDSC測定結果によれば、潜熱をもつ範囲が高温側に移動するのに伴い融点も高温側に移動していることが分かる。これが融点が変動する理由であると推定される。
2> TBAF添加率が5.0重量%以下の範囲にあれば、水/(TBAB+TBAF)の値が1.50以上で1.53以下の範囲である。
臭化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液に弗化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液を添加する代わりに、弗化テトラnブチルアンモニウム三水和物の粉末を適量添加して又は弗化テトラnブチルアンモニウム三水和物を適量添加するとともに水も適量添加して、約40重量%の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に弗化テトラnブチルアンモニウムを添加したのと略同じ水溶液を調製し、上記(2−1)及び(2−2)に記載の計測と評価を行った結果、上記と略同じ結果が得られた。即ち、TBAF添加率が0.8重量%以上で5.0重量%以下の範囲であれば、過冷却防止性が優れ、かつ、3〜16℃の温度範囲の潜熱量の低下が実用上の変動許容範囲内(蓄熱量比の変化が10%以下)となる、という同様の結論が得られた。このとき、融点の変動幅は1度以下であり、水/(TBAB+TBAF)の値は1.50以上で1.53以下の範囲内であった。
(ウ) 35重量%の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液の場合
次に、35重量%の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に弗化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液を添加することにより調製又は準備される複数の原料溶液に対して、上記(2−1)及び(2−2)に記載の計測と評価を行った。その結果を表2に示す。
表2におけるTBAF添加率、水/(TBAB+TBAF)、○、×の意味は、表1の場合と同じである。TBAF調和水溶液添加率の意味も基本的には表1の場合と同じであるが、TBABの濃度が異なるので、35重量%の臭化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液の重量に対する弗化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液の重量の比率(重量%)で規定される(表2の注記参照)。
Figure 2009079159
表2から、次のことが分かる。
〔c〕 TBAF調和水溶液添加率が1重量%又はTBAF添加率が0.9重量%を下回ると、過冷却防止の効果が不十分になる。
〔d〕 TBAF調和水溶液の添加率が6重量%又はTBAF添加率が5.7重量%を超えると、潜熱量比は大きく減少し、実用上の変動許容幅(10%)を超える。
上記〔d〕の結果、即ち3〜16℃の温度範囲の潜熱量がTBAF調和水溶液添加率又はTBAF添加率に依存するという結果は、従来の知見からは予測不能なものである。
以上の結果から、35重量%の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に弗化テトラnブチルアンモニウムを添加する場合、TBAF調和水溶液添加率が1重量%以上で6重量%以下の範囲にあれば、又は、TBAF添加率が0.9重量%以上で5.7重量%以下の範囲にあれば、過冷却防止性が優れ、かつ、3〜16℃の温度範囲の潜熱量の低下が実用上の変動許容範囲内(蓄熱量比の変化が10%以下)となる、といえる。このとき、融点の変動幅は1度以下であり、水/(TBAB+TBAF)の値が1.86以上で1.87以下の範囲であることを念のため付記しておく。
なお、35重量%の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に弗化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液を添加する代わりに、弗化テトラnブチルアンモニウム三水和物の粉末を適量添加して又は弗化テトラnブチルアンモニウム三水和物を適量添加するとともに水も適量添加して、35重量%の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に弗化テトラnブチルアンモニウムを添加したのと同じ水溶液を調製し、上記(2−1)及び(2−2)に記載の計測と評価を行ったところ、上記と同じ結果が得られた。即ち、TBAF添加率が0.9重量%以上で5.7重量%以下の範囲であれば、過冷却防止性が優れ、かつ、3〜16℃の温度範囲の潜熱量の低下が実用上の変動許容範囲内(蓄熱量比の変化が10%以下)となる、という同様の結論が得られた。また、このとき、融点の変動幅は1度以下であり、水/(TBAB+TBAF)の値は1.86以上で1.87以下の範囲内であった。
(エ) 30重量%の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液の場合
更に、30重量%の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に弗化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液を添加することにより調製又は準備される複数の原料溶液に対して、上記(2−1)及び(2−2)に記載の計測と評価を行った。その結果を表3に示す。
表3におけるTBAF添加率、水/(TBAB+TBAF)、○、×の意味は、表1の場合と同じである。TBAF調和水溶液添加率の意味も基本的には表1の場合と同じであるが、TBABの濃度が異なるので、30重量%の臭化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液の重量に対する弗化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液の重量の比率(重量%)で規定される(表3の注記参照)。
Figure 2009079159
表3から、次のことが分かる。
〔e〕 TBAF調和水溶液添加率が1重量%又はTBAF添加率が1.1重量%を下回ると、過冷却防止の効果が不十分になる。
〔f〕 TBAF調和水溶液の添加率が6重量%又はTBAF添加率が6.6重量%を超えると、潜熱量比は大きく減少し、実用上の変動許容幅(10%)を超える。
上記〔f〕の結果、即ち3〜16℃の温度範囲の潜熱量がTBAF調和水溶液添加率又はTBAF添加率に依存するという結果は、従来の知見からは予測不能なものである。
以上の結果から、30重量%の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に弗化テトラnブチルアンモニウムを添加する場合、弗化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液添加率が1重量%以上で6重量%以下の範囲にあれば、又は、TBAF添加率が1.1重量%以上で6.6重量%以下の範囲にあれば、過冷却防止性が優れ、かつ、3〜16℃の温度範囲の潜熱量の低下が実用上の変動許容範囲内(蓄熱量比の変化が10%以下)となる、といえる。このとき、融点の変動幅は1度以下であり、水/(TBAB+TBAF)の値が2.31以上で2.33以下の範囲であることを念のため付記しておく。
なお、30重量%の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に弗化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液を添加する代わりに、弗化テトラnブチルアンモニウム三水和物の粉末を添加して、更に加えた弗化テトラnブチルアンモニウム三水和物を調和水溶液にするに足る水を添加して、上記(2−1)及び(2−2)に記載の計測と評価を行ったところ、30重量%の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に弗化テトラnブチルアンモニウムを添加する場合、TBAF添加率が1.1重量%以上で6.6重量%以下の範囲であれば、過冷却防止性が優れ、かつ、3〜16℃の温度範囲の潜熱量の低下が変動実用上の許容範囲内(蓄熱量比の変化が10%以下)となる、という同様の結論が得られた。また、このとき、融点の変動幅は1度以下であり、水/(TBAB+TBAF)の値は2.31以上で2.33以下の範囲内であった。
(オ) 図2は、横軸に臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液の濃度(X重量%)、縦軸にTBAF添加率(Y重量%)をとり、表1乃至表3に記載の結果のうち、過冷却防止性が優れ、かつ、3〜16℃の温度範囲の潜熱量の低下が実用上の変動許容範囲内(蓄熱量比の変化が10%以下)となるTBAF添加率の範囲の上下限の値Tmn(表番号:m=1〜3、下限:n=1、上限:n=2)をプロットしたものである。図中、L12は、T12とT22を通過する直線(
Y=−0.14X+10.6 )であり、L13は、T11とT31を通過する直線(
Y=−0.03X+2.0 )である。
また、T21とT31とを通過する直線はY=−0.04X+2.3、T11とT21とを通過する直線はY=−0.02X+1.6、T22とT32とを通過する直線はY=−0.18X+12.0である。
この図において、次のR1乃至R6の各領域内(その領域を画す外郭線上を含む)を画定することができる。
R1. 臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液の濃度(X重量%)が30〜40重量%の範囲である場合、直線L12と直線L13との間に位置するTBAF添加率(Y重量%)の範囲(T11−A−B−T12−T22−G−E−F−T31−H−T11で囲まれる領域)内、即ち、
30≦X≦ 40
であって、且つ
−0.03X+2.0≦Y≦−0.14X+10.6
である領域内。
R2. Xが30〜35重量%の範囲である場合、T31−D−C−T22−E−F−T31で囲まれる領域内、即ち
30≦X≦35
であって、且つ
1.1≦Y≦5.7
である領域内。
R3. Xが35〜40重量%の範囲である場合、H−A−B−T12−C−D−Hで囲まれる領域内、即ち
35≦X≦40
であって、且つ
0.9≦Y≦5.0
である領域内。
R4. Xが30〜40重量%の範囲である場合、T12−C−F−T31−D−B−T12で囲まれる領域内即ち
30≦X≦40
であって、且つ
1.1≦Y≦ 5.0
である領域内。
R5. Xが30〜35重量%の範囲である場合、T31−T21−H−D−C−T22−T32−G−E−F−T31で囲まれる領域内、即ち
30≦X≦35
であって、且つ
−0.04X+2.3≦Y≦−0.18X+12.0
である領域内。
R6. Xが35〜40重量%の範囲である場合、T21−T11−A−B−T12−T22−C−D−H−T21で囲まれる領域内、即ち
35≦X≦40
であって、且つ
−0.02X+1.6≦Y≦−0.14X+10.6
である領域内。
R1乃至R6の各領域内であれば、過冷却防止性が優れ、かつ、3〜16℃の温度範囲の潜熱量の低下が、蓄熱剤又はその主成分として使用されるときの実用上の変動許容範囲内となる。
また、上記(イ)において準備した臭化テトラnブチルアンモニウムを溶質として含む原料溶液は、その調和水溶液であった。一方、上記(ウ)及び(エ)において準備したものは、調和濃度ではない臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液であった。弗化テトラnブチルアンモニウムを添加した臭化テトラnブチルアンモニウムを溶質として含む原料溶液から生成される包接水和物の潜熱量(延いては当該包接水和物又は弗化テトラnブチルアンモニウムが添加され臭化テトラnブチルアンモニウムを主成分とする潜熱蓄熱剤全体として蓄積できる潜熱に相当する熱エネルギーの量)をより大きくするためには、調和濃度の臭化テトラnブチルアンモニウム水溶液を採用するのが望ましい。
3.本発明の実施例
臭化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液のみからなる水溶液(以下「当初原料溶液」という)に、弗化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液を添加して水和物生成用の水溶液を準備した(このような水溶液は蓄熱剤主成分であり、他面において、特に冷却後においては蓄熱剤そのものといえる)。このとき、臭化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液に対する弗化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液の添加量は3重量%とした(即ち、重量100相当の前者に、重量3相当の後者を添加した。従って合計重量を103相当に設定した)。
この弗化テトラnブチルアンモニウムが添加された水溶液(以下「被検原料溶液」という)に対し、次のとおり計測と評価を行い、結果を得た。その結果は、上記2(イ)に記載の結果と一部重複するが、矛盾なく整合するものである。
<過冷却防止性について>
(ア)
実施例1
被検原料溶液を3℃に冷却し、水和物の結晶が生成し過冷却が解除されるまでの時間を計測したところ、5分程度以内に水和物結晶が生成し過冷却が防止された(冷却は、冷媒を流した金属管に溶液を接触させて実施し、以下も特に断らなければ同じ方法で実施した)。この水和物結晶は1箇所だけでなく数箇所から生成し、それぞれの水和物結晶が10mm程度にまで成長するのに要した時間は、約5分間であり、短時間に水和物結晶が生成し成長することが確認できた。
被検原料溶液を3℃に冷却し水和物を生成させ、40℃に加熱し生成した水和物を融解させる凝固と融解とを1000回繰返して、過冷却防止性の変化を調べたところ、過冷却防止性の低下は認められなかった。
被検原料溶液から冷却により生成される固相物の3〜16℃の温度範囲の潜熱量を計測したところ、174J/gであった。一方、当初原料溶液から冷却により生成される固相物の3〜16℃の温度範囲の潜熱量は178J/gであった。それ故、弗化テトラnブチルアンモニウムによる潜熱量の低下は2%という小さい範囲に止まるものであった。
上記のとおり、臭化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液からなる蓄熱剤主成分に対して、弗化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液を、臭化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液に対して3重量%添加することにより、水和物結晶を短時間で生成でき、凝固と融解とを1000回繰返しても過冷却防止性は低下せず、3〜16℃の温度範囲の潜熱量の低下が少ない蓄熱剤又はその主成分を提供できる、ことを確認することができた。
(イ)比較例1
当初原料溶液を3℃に冷却したところ、24時間経過しても水和物の結晶が生成せず過冷却状態が続いた。これに対し、上記実施例では5分程度以内に水和物結晶が生成し過冷却が防止されている。それ故、弗化テトラnブチルアンモニウムが過冷却防止の効果を奏していることが分かる。
(ウ)比較例2
弗化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液を多孔質体である活性炭粒子に含浸させ、当初原料溶液にその活性炭粒子を数粒投入した。これは、弗化テトラnブチルアンモニウム調和水溶液を当初原料溶液に対して約0.1重量%添加したことに相当する。
当初原料溶液に上記の活性炭粒子を投入後3℃に冷却した。冷却開始から数分後に活性炭粒子の周辺から水和物結晶が生成し始め、過冷却の解除が確認できた。その水和物結晶が直径10mm程度にまで成長するのに要した時間は、約10分程度であった。
当初原料溶液に上記の活性炭粒子を投入後3℃に冷却し水和物を生成させ、40℃に加熱し生成した水和物を融解させる凝固と融解との繰返しを行い、過冷却防止性の変化を調べたところ、凝固と融解との繰返し僅か5回目で水和物結晶が生成しなくなった。
このように、上記の活性炭粒子の投入によれば、過冷却防止の効果は認められる。しかし、この方法では、水和物結晶が10mm程度にまで成長するために、上記の実施例の場合に比して、約2倍の時間がかかった。また、凝固と融解との繰返し僅か5回目で水和物結晶が生成しなくなった。それ故、上記の活性炭粒子の投入による過冷却防止方法では、蓄熱剤又はその主成分の凝固と融解との繰返しにより過冷却防止性が短期で低下してしまい、実用上著しく問題がある。
(エ)比較例3
弗化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液をアルミナ多孔質体に含浸させ、比較例2の場合と同様の計測を行った。過冷却の解除が確認できた。生成した水和物結晶が直径10mm程度にまで成長するのに要した時間は、約10分程度であった。しかし、凝固と融解との繰返し僅か20回目で水和物結晶が生成しなくなった。それ故、上記のアルミナ多孔質体の投入による過冷却防止方法でも、蓄熱剤又はその主成分の凝固と融解との繰返しにより過冷却防止性が短期で低下してしまい、実用上著しく問題がある。
30重量%及び35重量%の臭化テトラnブチルアンモニウムの各水溶液に、弗化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液を添加して水和物生成用の水溶液(低濃度被検溶液)を準備した。このとき、臭化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液に対する弗化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液の添加量は3.5重量%とした(即ち、重量100相当の前者に、重量3.5相当の後者を添加した。従って合計重量を103.5相当に設定した)。各低濃度被検溶液を3℃に冷却し水和物を生成させ、40℃に加熱し生成した水和物を融解させる凝固と融解とを1000回繰返して、過冷却防止性の変化を調べたところ、過冷却防止性の低下は認められなかった。また、弗化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液を添加しない場合に比べて、短時間に水和物結晶が生成し成長することが確認できた。
4.腐食抑制剤について
臭化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液に、弗化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液を添加すると、臭素イオンと弗素イオンの存在が炭素鋼やアルミニウムの腐食の原因となるので、腐食抑制剤を添加することが好ましい。
腐食抑制剤としては、例えば亜硫酸塩、チオ硫酸塩のナトリウム塩、リチウム塩が挙げられ、蓄熱剤に添加して溶存する酸素を消費して腐食を抑制することができる(脱酸型腐食抑制剤という)。他の腐食抑制剤としては、ポリリン酸塩、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩、燐酸水素二塩、ピロ燐酸塩またはメタ珪酸塩のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩が挙げられ、金属表面に腐食を防止する被膜を形成して腐食を抑制することができる(被膜形成型腐食抑制剤という)。これらの被膜形成型腐食抑制剤と前述した脱酸型腐食抑制剤の亜硫酸塩またはチオ硫酸塩を併用することにより、さらに腐食抑制効果を高めることができる。
さらに他の腐食抑制剤として亜硝酸塩、ベンゾトリアゾール、ヒドラジン、エリソルビン酸塩、アスコルビン酸塩、糖類が挙げられる。
上記の腐食抑制剤を添加することにより、融点や蓄熱量を大きく変えずに腐食性の少ない水和物生成用の水溶液や蓄熱剤又はその主成分を提供することができる。
臭化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液に、弗化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液を臭化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液重量に対して3重量%添加した基準原料溶液に腐食抑制剤を添加して腐食抑制効果について評価した。
基準原料溶液に表4に示す各腐食抑制剤を添加して、被検原料溶液(1〜4)を調製し、炭素鋼板とアルミニウム板を浸漬し90℃にて1週間保持したのち、重量減少量を測定して腐食速度を求めた。その結果を表4に併せて示す。
Figure 2009079159
亜硫酸ナトリウムを添加した場合(被検原料溶液1)、腐食抑制剤を添加しない場合(被検原料溶液4)に比して、炭素鋼では腐食速度が0.56mm/年から0.09mm/年になり、アルミニウムでは腐食速度が0.26mm/年から0.05mm/年になった。いずれの場合にも腐食速度を数分の1以下に抑制でき、腐食抑制効果が認められた。
ポリリン酸ナトリウムを添加した場合(被検原料溶液2)にも、腐食抑制剤を添加しない場合(被検原料溶液4)に比して、炭素鋼では腐食速度が0.56mm/年から0.12mm/年になり、アルミニウムでは腐食速度が0.26mm/年から0.02mm/年になった。いずれの場合にも亜硫酸ナトリウムを添加の場合と同様に腐食速度を数分の1以下に抑制でき、腐食抑制効果が認められた。
亜硫酸ナトリウムとポリリン酸ナトリウムを併用した場合(被検原料溶液3)には、腐食抑制剤を添加しない場合(被検原料溶液4)に比して、炭素鋼では腐食速度が0.56mm/年から0.05mm/年になり、アルミニウムでは腐食速度が0.26mm/年から0mm/年になった。いずれの場合にも各腐食抑制剤を単独で用いたときよりも高い腐食抑制効果が認められた。
なお、上述した他の腐食抑制剤でも同様に腐食を十分に抑制できる効果があることを確認した。
5.蓄熱剤又はその主成分を生成するための水溶液の調製方法について
(ア) 調和濃度、調和濃度より小さい濃度及び調和濃度より大きい濃度にそれぞれ調製された臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に、調和濃度、調和濃度より小さい濃度及び調和濃度より大きい濃度のうちのいずれかに調製された弗化テトラnブチルアンモニウムの水溶液を添加して水和物生成用或いは蓄熱剤又はその主成分を生成するための水溶液を準備する。このとき、臭化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液に対する弗化テトラnブチルアンモニウムの調和水溶液の添加量は1〜6重量%とする。(即ち、重量100相当の前者に、重量1〜6相当の後者を添加した。従って合計重量を101〜106相当に設定した)。このように調製することにより、過冷却防止性が優れて、かつ、3〜16℃の温度範囲の潜熱量の低下が少ない水和物であって、蓄熱剤若しくはその主成分となるものを得ることができる。
水和物生成用の水溶液の冷却により生成する水和物が蓄積する潜熱に相当する熱エネルギーは、その水溶液におけるゲスト分子の濃度が調和濃度であるときに最大となる。それ故、水和物を主成分として含む蓄熱剤の潜熱量をより多くするためには、臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液が調和濃度であることが好ましく、過冷却防止剤として添加される弗化テトラnブチルアンモニウムの水溶液も調和濃度であることが好ましい。
調和濃度より小さい濃度又は大きい濃度の臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液を用いれば、水和物生成用の水溶液の冷却により生成する水和物の融点を調和融点より低くすることができる。また、過冷却防止の効果又は過冷却防止性を発揮させる又は低下させないようにするという本来の添加目的を念頭に入れずに水和物生成用の水溶液の冷却により生成する水和物の融点を調和融点より低くすることだけを目的とするのであれば、弗化テトラnブチルアンモニウムを添加する場合においても、調和濃度の水溶液に限らず調和濃度より小さい濃度又は大きい濃度のものを用いることが好ましい。
(イ) 過冷却防止剤として弗化テトラnブチルアンモニウムを添加する場合、それを水溶液として添加する必要はなく、弗化テトラnブチルアンモニウム三水和物の粉末を添加してもよい。蓄熱剤又はその主成分を生成するための水溶液の調製するためには、臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液と弗化テトラnブチルアンモニウムの水溶液を混合してもよいし、臭化テトラnブチルアンモニウムの粉末と弗化テトラnブチルアンモニウムの粉末に水を投入して混合してもよく、水にこれらの粉末を投入して混合してもよく、いずれにおいても同じ結果になることは言うまでもない。
(ウ) 臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液の過冷却を防止するためには、リン酸水素二ナトリウムを過冷却防止剤として添加してもよい。
弗化テトラnブチルアンモニウムとリン酸水素二ナトリウムを過冷却防止剤として併用して添加して、より効果的に過冷却を防止することができる。例えば、臭化テトラnブチルアンモニウムの調和溶液に弗化テトラnブチルアンモニウムを添加する際、臭化テトラnブチルアンモニウムの調和溶液に対してリン酸水素二ナトリウムを添加し、弗化テトラnブチルアンモニウムと併用すれば、弗化テトラnブチルアンモニウムだけを添加した場合に比して、過冷却防止の効果が高まる。それ故、この併用によれば、弗化テトラnブチルアンモニウムの添加率を低減させても同水準の過冷却防止の効果を得ることができるとともに、弗化テトラnブチルアンモニウムの添加に起因する、水和物又はこれを主成分として含む蓄熱剤の潜熱量の変化を小さく抑えることできる。臭化テトラnブチルアンモニウムの調和溶液に添加される弗化テトラnブチルアンモニウムが、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が0.8%以上5.0%以下となる範囲内である場合には、リン酸水素二ナトリウムの添加量は、臭化テトラnブチルアンモニウムの調和溶液に対して0.1〜2重量%とするのが好適である。
最後に、本発明の技術的範囲は、以上の実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。例えば、以上において明記のない物質を添加するという実施形態は、本発明の奏効性を阻害しない限り、本発明の技術的範囲に属するものである。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲まで及ぶものである。
本発明に係る蓄熱剤のDSC測定結果を、横軸に温度、縦軸に潜熱量をとってグラフ化した図である。 本発明の効果を奏するTBAF添加率の範囲を示す図である。

Claims (15)

  1. 臭化テトラnブチルアンモニウムを溶質として含み、弗化テトラnブチルアンモニウムが過冷却防止剤として添加されていることを特徴とする包接水和物生成用の水溶液。
  2. 臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度(X重量%)が30重量%以上、40重量%以下であるとき、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が、(−0.03X+2.0)%以上、(−0.14X+10.6)%以下であることを特徴とする請求項1に記載の包接水和物生成用の水溶液。
  3. 臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度(X重量%)が30重量%以上、35重量%未満であるとき、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が、(−0.04 X+2.3)%以上、(−0.18 X+12.0)%以下であり、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度(X重量%)が35重量%のとき、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が0.9%以上、5.7%以下であり、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度(X重量%)が35重量%より大きく、40重量%以下であるとき、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が、(−0.02 X+1.6)%以上、(−0.14 X+10.6)%以下であることを特徴とする請求項1に記載の包接水和物生成用の水溶液。
  4. 臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度が30重量%以上、40重量%以下であるとき、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が、1.1%以上、5.0%以下であることを特徴とする請求項1に記載の包接水和物生成用の水溶液。
  5. 臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度が30重量%以上、35重量%未満であるとき、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が、1.1%以上、5.7%以下であり、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度(X重量%)が35重量%のとき、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が0.9%以上、5.7%以下であり、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度が35重量%より大きく、40重量%以下であるとき、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が、0.9%以上、5.0%以下であることを特徴とする請求項1に記載の包接水和物生成用の水溶液。
  6. 臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度が調和融点を与える濃度であり、臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が、0.8%以上、5.0%以下であることを特徴とする請求項1に記載の包接水和物生成用の水溶液。
  7. 臭化テトラnブチルアンモニウムに対する弗化テトラnブチルアンモニウムの重量比率が、臭化テトラnブチルアンモニウムの濃度に応じて定まる所定の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の包接水和物生成用の水溶液。
  8. 腐食抑制剤が添加されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の包接水和物生成用の水溶液。
  9. 請求項1乃至8のいずれかに記載の包接水和物生成用の水溶液が水和物生成温度以下に冷却されることにより生成される包接水和物を含むことを特徴とする蓄熱剤。
  10. 請求項1乃至8のいずれに記載の包接水和物生成用の水溶液が水和物生成温度以下に冷却されることにより生成される包接水和物がその水溶液又は水溶媒に分散又は懸濁してなるスラリーを含むことを特徴とする蓄熱剤。
  11. 臭化テトラnブチルアンモニウムと、過冷却防止剤としての弗化テトラnブチルアンモニウムと、水を含んでなることを特徴とする蓄熱剤。
  12. 請求項1乃至8のいずれかに記載の包接水和物生成用の水溶液を準備する工程と、前記水溶液を冷却して包接水和物を生成させる工程とを有することを特徴とする包接水和物又はそのスラリーの製造方法。
  13. 請求項1乃至8のいずれかに記載の包接水和物生成用の水溶液を冷却し、包接水和物を生成させることにより熱エネルギーを蓄積し、生成した包接水和物を融解させることにより熱エネルギーを放出することを特徴とする蓄放熱方法。
  14. 潜熱蓄熱剤又はその主成分を生成するための水溶液の調製方法であって、臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に、弗化テトラnブチルアンモニウムの調和融点を与える濃度の水溶液を添加する工程とを有することを特徴とする水溶液の調製方法。
  15. 臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液が、臭化テトラnブチルアンモニウムの調和融点を与える濃度の水溶液であることを特徴とする請求項14に記載の水溶液の調製方法。
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