JP2007186667A - 蓄熱性物質、蓄熱剤、蓄熱材、熱輸送媒体、蓄熱剤用融点調整剤、蓄熱剤用過冷却防止剤及び蓄熱剤または熱輸送媒体の主剤の製造方法 - Google Patents

蓄熱性物質、蓄熱剤、蓄熱材、熱輸送媒体、蓄熱剤用融点調整剤、蓄熱剤用過冷却防止剤及び蓄熱剤または熱輸送媒体の主剤の製造方法 Download PDF

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【課題】低価格で、腐食性が低く、より潜熱量の大きい蓄熱性物質、蓄熱剤、熱輸送媒体、およびこれらの製造方法、当該蓄熱性物質を内容物とする蓄冷材を得る。
【解決手段】トリnブチルアルキルアンモニウム塩と水を含有してなることを特徴とする蓄熱性物質。臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムと水を含有してなることを特徴とする蓄熱性物質。トリnブチルアルキルアンモニウム塩と水を含有してなることを特徴とする蓄熱剤。臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムと水を含有してなることを特徴とする蓄熱剤。トリnブチルアルキルアンモニウム塩と水を含有してなることを特徴とする熱輸送媒体。臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムと水を含有してなることを特徴とする熱輸送媒体。
【選択図】図1

Description

本発明は、蓄熱機能を有する蓄熱性物質に関し、さらに例えば冷暖房などの空調設備や、食品等の冷却装置に用いられる蓄熱剤、蓄熱材、熱輸送媒体、蓄熱剤用融点調整剤及びに関する。また、本発明は、蓄熱剤または熱輸送媒体の主成分となる物質(以下「主剤」と称する)の製造方法に関する。
なお、本発明では、蓄熱機能を有する物質を「蓄熱性物質」と称する。
また、本発明では、蓄熱性物質を含有し蓄熱に供される物質を「蓄熱剤」と称し、該蓄熱剤が容器等に充填または収容され、蓄熱に供されるものを「蓄熱材」と称する。
また、本発明では、蓄熱性物質を含有し直接又は間接的に熱輸送に供される物質を広く「熱輸送媒体」と称する。従って、冷温水機と空調機器との間の熱搬送を目的とする物質(例えば、冷温水機において蓄熱又は蓄冷し、熱利用する場所に設置されている空調機器に搬送されて放熱又は放冷することができる物質)に限らず、熱を蓄積した後又は蓄積しながら貯留される物質であって、そこから当該熱が取り出されて所望の目的に供されるものも「熱輸送媒体」に含まれる。例えば、蓄熱性物質に熱が蓄積される場所と、当該蓄熱性物質が蓄積している熱が利用される場所とが異なるが故にこれらの場所間で熱の移動が起こる場合には、当該蓄熱性物質は、最終的に熱輸送に貢献するものとして「熱輸送媒体」に含まれる。
また、本発明では、蓄熱剤の主剤を「蓄熱主剤」という。ただし、蓄熱剤の主成分若しくはその主成分以外の成分となる物質について説明する場合又は特に明記して蓄熱剤と区別して表現する場合を除き、蓄熱主剤を含めて蓄熱剤と称する。同様に、熱輸送媒体の主成分若しくはその主成分以外の成分となる物質について説明する場合又は特に明記して熱輸送媒体と区別して表現する場合を除き、熱輸送媒体の主剤を含めて熱輸送媒体と称する。
また、本発明では、主成分となる物質を「主剤」と称するが、これは成分比率が最大のものに限らず、蓄熱、熱輸送などの機能を発現する主要な構成物であって、複数成分のものも含まれる。
潜熱蓄熱剤は、顕熱蓄熱剤に比べて蓄熱密度が高く、相変化温度が一定であり、熱の取り出し温度が安定である等の利点があるため、種々の用途に実用化されている。
また、空調システムにおいては設備費や運転費の削減のため、熱媒体を輸送するポンプ動力の低減が求められており、熱輸送密度を増大させるために蓄熱密度の高い潜熱蓄熱熱輸送媒体を用いることが検討されている。
このような潜熱蓄熱剤または潜熱蓄熱熱輸送媒体の主要な構成物質である蓄熱性物質として、ノルマルヘキサデカンやノルマルペンタデカン等のパラフィン類や、トリメチロールエタンやテトラアルキルアンモニウム化合物の包接水和物が知られている。しかしながら、パラフィン類は可燃性であるため取り扱いに注意を要し、粘性が高く熱交換するときの熱伝導性が悪いなどの問題点がある。また、トリメチロールエタンは水和物を生成する際に過冷却現象が大きいという問題がある。
他方、テトラアルキルアンモニウム化合物の包接水和物は、水和物を生成する際の潜熱が大きいため、比較的蓄熱量が大きく、またパラフィンのように可燃性ではないため取り扱いも容易であり、非常に有用な蓄熱性物質である。
また、テトラアルキルアンモニウム化合物の包接水和物は、調和融点が氷の融点の0℃よりも高いため、蓄熱剤を冷却して水和物を生成する際の冷媒の温度が高くてよく、冷凍機の成績係数(COP)が高くなり省エネルギーが図れるという利点もある。
なお、調和融点とは水和物を生成する化合物の水溶液を冷却して水和物を生成する際、水溶液(液相)から水和物(固相)に変相する前後の組成が変わらない場合(例えばもとの水溶液中の水和物を生成する化合物濃度と同じ濃度の水和物を生じる)の温度をいう。なお、縦軸を融点温度、横軸を濃度とした状態図では極大点が調和融点となる。本発明では調和融点を与える濃度を調和濃度という。
調和濃度の水溶液を冷却すると、調和融点で水和物が生成しはじめ、水溶液が全て水和物になるまでこの融点温度で温度は一定になる。融解時も同様にこの一定の融点温度で融解する。また、水和物の凝固融解時の潜熱量は調和濃度で最大となる。
調和濃度より濃度が低くなるか高くなると、融解温度は調和融点より低くなる。
テトラアルキルアンモニウム化合物として、例えば、臭化テトラnブチルアンモニウムは、調和融点がおよそ12℃であり、空調用蓄熱剤あるいは熱輸送媒体として用いることが開示されている(特許文献1参照)。
また、テトラアルキルアンモニウム化合物の他の例として、硝酸テトラnブチルアンモニウムは、調和融点がおよそ6.5℃であり、これも空調用蓄熱剤への応用が開示されている(特許文献2参照)。
そして、硝酸テトラnブチルアンモニウムの製造方法が、非特許文献1に開示されており、下記の方法によるとされている。
まず原料となるヨウ化テトラnブチルアンモニウムが、下記の反応により合成される。
適当な溶媒の存在下、
トリnブチルアミン+1-ヨウ化ブタン→ヨウ化テトラnブチルアンモニウム
(n-C4H93N + nC4H9I → (n-C4H94N-I
そして、水を溶媒として、
ヨウ化テトラnブチルアンモニウム+硝酸銀→硝酸テトラnブチルアンモニウム+ヨウ化銀
(n-C4H94N-I + AgNO3 → (n-C4H94N-NO3 + AgI↓
の反応式にて硝酸テトラnブチルアンモニウムが合成される。析出したヨウ化銀はフィルタリングにより除去される。
このように、硝酸テトラnブチルアンモニウムは、原料のヨウ化テトラnブチルアンモニウム合成工程、硝酸テトラnブチルアンモニウム合成工程、ヨウ化銀除去工程という少なくとも3つの工程が必要である。
一方、テトラアルキルアンモニウム化合物として、例えば、臭化テトラnブチルアンモニウムの水溶液に水よりも凝固点の小さい物質、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールなどを混入して、水和物の融点を低下させ、任意の融点の蓄熱剤を作ることが特許文献3に開示されている。
また、有機系水和物を主剤とする潜熱蓄熱剤としては、トリメチロールエタン(TME)水和物が知られており、TME−水−尿素の三成分系を中心とした検討がなされている(特許文献4参照)。
さらに、水和物生成物の水溶液を冷却して、水和物生成温度(融点)に達してさらに低温になっても水和物が生成されず水溶液の状態を保っている状態を過冷却というが、水和物を蓄熱剤に用いる場合にはこの過冷却が大きいと、水溶液を冷却するための冷媒温度を低くしなければならず、問題となる。従って、過冷却をできるだけ小さくし、過冷却を防止することが重要である。過冷却を防止するためには、微粒子を蓄熱剤に混入し水和物の核生成材として過冷却を解除することが行われている。
特許第3309760号公報 特開平9−291272号公報 特開平11-264681号公報 特開2000−256659号公報 Bull.Chem.Soc.Jpn, 56, 877 (1983)
蓄熱剤または熱輸送媒体により冷却されるべき目的温度より、蓄熱性物質たる包接水和物の調和融点が低い方が、潜熱を有効に利用できるため好ましい。一方、目的温度より包接水和物の調和融点が低すぎると冷凍機の成績係数(COP)が低くなり省エネルギーとならないので、好ましくない。
このように、蓄熱剤または熱輸送媒体により冷却されるべき対象あるいは蓄熱の目的に応じて蓄熱剤または熱輸送媒体の蓄熱温度が求められ、それに適合する調和融点を有する蓄熱剤または熱輸送媒体が求められ、また、これらの主剤となる蓄熱性物質が求められる。
例えば、蓄熱剤を空調装置に用いることを考えると蓄熱温度としては5〜8℃が求められる。この場合、例えば冷熱の取り出し温度を8℃とした場合、蓄熱剤の調和融点はこれよりも少し低いものが最も好ましい。このようなものとしては、前述した硝酸テトラブチルアンモニウム水和物(調和融点6.5℃)が知られている。
しかしながら、前述したように硝酸テトラnブチルアンモニウムは、原料のヨウ化テトラnブチルアンモニウム合成工程、硝酸テトラnブチルアンモニウム合成工程、ヨウ化銀除去工程という少なくとも3つの工程が必要であることから工業的には非常に高コストになり、空調システム等の設備費や運転費が高くなり実用的でないという問題がある。
また、ヨウ化銀などの副反応生成物が生じるという問題もある。
上述したように、蓄熱剤または熱輸送媒体により冷却されるべき対象あるいは蓄熱の目的に応じて蓄熱剤または熱輸送媒体の蓄熱温度が求められ、それに適合する調和融点を有する蓄熱剤または熱輸送媒体が求められ、また、これらの主剤となる蓄熱性物質が求められるが、従来においてはそのような蓄熱性物質、蓄熱剤、及び熱輸送媒体がよく知られておらず、知られていたとしても上述の硝酸テトラnブチルアンモニウムのように製造コストが高く実用的でない。
また、実用上の問題として、上述したトリメチロールエタンは水和物を生成する際に過冷却現象が大きいという問題がある。
さらに、硝酸テトラnブチルアンモニウムは著しく高い腐食性を持つため、実用上問題がある。また、実用上の問題として、上述したトリメチロールエタンは水和物を生成する際に過冷却現象が大きいという問題がある。
また、特許文献3に記載のように蓄熱剤の融点を調整するために水よりも融点の低い物質を混入すると、蓄熱剤全体の潜熱量が低下して蓄熱性能が低下する問題がある。
また、水和物を生成する際の過冷却を防止するために微粒子を混入させても、微粒子が均一に分散されていないと過冷却防止効能がなくなるという問題や、凝固と融解を繰返すと微粒子が分離され過冷却防止効能がなくなるという問題がある。
上記のように、低価格で、過冷却度が小さく、腐食性が低い蓄熱剤や熱輸送媒体にはこれまで実用的なものが無く、そのためこれらの条件を満足すると共により潜熱量の大きい蓄熱剤や熱輸送媒体及びこれらの主剤となる蓄熱性物質の開発が求められていた。
また、蓄熱剤の潜熱量を低下させず融点を調整できる融点調整剤や、過冷却防止効能が高く凝固と融解を繰返しても過冷却防止効能を維持できる過冷却防止剤が求められていた。
本発明は係る課題を解決するためになされたものである。
発明に係る蓄熱性物質は、トリnブチルアルキルアンモニウム塩と水を含有してなることを特徴とするものである。
トリnブチルアルキルアンモニウム塩と水を含有してなる水溶液を冷却してトリnブチルアルキルアンモニウム塩水和物を生成して該水和物を主成分とする蓄熱性物質とすることができる。
アルキルとしてnブチル以外のnペンチル、iso−ペンチルnプロピル、iso−プロピル、エチル、メチルnヘキシル、iso−ヘキシルnヘプチル、iso−ヘプチル、iso−ブチル等が挙げられる。
また、アンモニウム塩として、臭化アンモニウム塩、弗化アンモニウム塩、硝酸アンモニウム塩、亜硝酸アンモニウム塩、塩素酸アンモニウム塩、過塩素酸アンモニウム塩、臭素酸アンモニウム塩、よう素酸アンモニウム塩、炭酸アンモニウム塩、りん酸アンモニウム塩、タングステン酸アンモニウム塩、硫酸アンモニウム塩、水酸化アンモニウム塩、カルボン酸アンモニウム塩、ジカルボン酸アンモニウム塩、スルホン酸アンモニウム塩、ジスルホン酸アンモニウム塩等が挙げられる。
(2)また、本発明に係る蓄熱性物質は、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムと水を含有してなることを特徴とするものである。
(3)また、本発明に係る蓄熱性物質は、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物を主成分とすることを特徴とするものである。
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムは、包接水和物を形成し、その調和融点はおよそ6℃であり、この調和融点における潜熱量は193J/gであり、硝酸テトラnブチルアンモニウムの潜熱量176J/gに比べてかなり大きい。
また、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムは、硝酸テトラnブチルアンモニウムよりも簡単な工程で製造でき(製造方法は後述する。)、低コストにて製造することができることを見出した。
このように本発明に係る蓄熱性物質は、5〜8℃の範囲に調和融点を持ち、蓄熱性能に優れ、低コストの蓄熱性物質であると言える。
また、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの腐食性を調査した結果、硝酸テトラnブチルアンモニウムよりもはるかに腐食性が低いことが判明し、この意味でも実用性が極めて高いことを見出した。
(4)本発明に係る蓄熱剤は、トリnブチルアルキルアンモニウム塩と水を含有してなることを特徴とするものである。
トリnブチルアルキルアンモニウム塩と水を含有してなる水溶液を冷却してトリnブチルアルキルアンモニウム塩水和物を生成して該水和物を主成分とする蓄熱剤とすることができる。
(5)また、本発明に係る蓄熱剤は、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムと水を含有してなることを特徴とするものである。
(6)また、本発明に係る蓄熱剤は、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物を主成分とすることを特徴とするものである。
(7)また、本発明に係る蓄熱剤は、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムと、テトラアルキルアンモニウム化合物及び水を含有してなることを特徴とするものである。
(8)また、本発明に係る蓄熱剤は、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物と、テトラアルキルアンモニウム化合物の水和物を含有してなることを特徴とするものである。
(9)また、本発明に係る蓄熱剤は、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物と、臭化テトラnブチルアンモニウム水和物を含有してなることを特徴とするものである。
テトラアルキルアンモニウム化合物としてはテトラアルキルアンモニウム−アニオン塩が挙げられる。
アニオンとして、Br、F、Cl、C2H5COO、OH、CH3COO、HCOO、CH3SO3、CO3、PO4、HPO4、WO4、iC3H7COO、O3S(CH2)2SO3、sC4H9COO、NO3、(CH3)2CH(NH2)2COO、nC3H7SO3、CF3COO、CrO3、SO4が挙げられる。
また、アルキルとして、nブチル、isoブチル、nペンチル、isoペンチル、nプロピル、isoプロピル、エチル、メチル、nヘキシル、isoヘキシル、nヘプチル、isoヘプチル、isoブチル等が挙げられる。
テトラアルキルアンモニウム−アニオン塩の具体例としては、例えば、臭化テトラnブチルアンモニウムが挙げられる。
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物と融点の異なる水和物を生成するテトラアルキルアンモニウム化合物と、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを水と混合することにより、混合水溶液を冷却した際に水和物が生成する温度(混合物融点)を臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物単独の融点より低く、あるいは高くすることができる。したがって、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムと、テトラアルキルアンモニウム化合物との配合組成を調整することにより、混合物融点を所望の範囲に調整することができる。このため、蓄熱剤により冷却されるべき対象あるいは蓄熱の目的に応じて求められる蓄熱剤の蓄熱温度に適合する融点を有する蓄熱剤を提供できる。
なお、混合物の総潜熱量は臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物とテトラアルキルアンモニウム化合物それぞれ単独の潜熱量に配合組成比率を乗じた総和とほぼ等しいことを確認している。
(10)また、本発明に係る蓄熱剤は、上記(5)〜(9)のいずれかの臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムが、トリブチルアミンと1ブロモペンタンとから合成されることを特徴とするものである。具体的な製造方法は後述する。
(11)また、本発明に係る蓄熱剤は上記(4)〜(10)に記載のものにおいて、過冷却防止剤を添加したことを特徴とするものである。
水和物生成物の水溶液を冷却して、水和物生成温度(融点)に達してさらに低温になっても水和物が生成されず水溶液の状態を保っている状態を過冷却というが、水和物を蓄熱剤に用いる場合にはこの過冷却が大きいと、水溶液を冷却するための冷媒温度を低くしなければならず、問題となる。従って、過冷却をできるだけ小さくし、過冷却を防止することが重要である。
過冷却防止剤としては、蓄熱主剤であるトリnブチルアルキルアンモニウム塩水和物の融点より5℃以上高い融点の水和物を生成するテトラアルキルアンモニウム化合物が好ましい。
蓄熱主剤の融点より5℃以上高い融点の水和物を生成するテトラアルキルアンモニウム化合物を過冷却防止剤として蓄熱主剤に添加して冷却すると、先にテトラアルキルアンモニウム化合物の水和物を形成して蓄熱主剤の水和物形成の核になる。なお、融点の差が5℃より小さいと過冷却防止作用が十分に得られない。
テトラアルキルアンモニウム化合物は蓄熱主剤であるトリnブチルアルキルアンモニウム塩の類縁物質であるので、過冷却防止能を有している。つまり、トリnブチルアルキルアンモニウム塩蓄熱主剤と過冷却防止剤の水溶液を冷却すると先に過冷却防止剤の水和物が生成され、蓄熱主剤の水和物生成の核として作用し過冷却を防止することができる。
また、過冷却防止剤としては、蓄熱主剤であるトリnブチルアルキルアンモニウム塩の適宜設定した濃度の水溶液の水和物生成温度よりも高い温度で水和物を生成するテトラアルキルアンモニウム化合物が好ましい。蓄熱主剤と過冷却防止剤の水溶液を冷却すると先に過冷却防止剤の水和物が生成され、過冷却防止効果が発揮されるからである。
なお、過冷却防止剤の添加量に関しては、過冷却防止剤を蓄熱主剤に対して1〜20重量%添加することが好ましく、これにより確実に過冷却を防止することができる。添加量が1%未満であると、蓄熱主剤の水和物生成の核となって過冷却を防止する効果が不足する。他方、添加量が20%を超えると、蓄熱主剤と過冷却防止剤の混合物の融点が影響を受け上昇するので、不具合が生じる。
蓄熱主剤が例えば臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの場合には、例えばフッ化テトラブチルアンモニウムを過冷却防止剤として添加する。フッ化テトラブチルアンモニウム水和物は調和融点が25℃であり、効果的に過冷却を防止することができる。また、リン酸水素二ナトリウムを過冷却防止剤として添加しても効果的に過冷却を防止することができ、フッ化テトラブチルアンモニウムとリン酸水素二ナトリウムを過冷却防止剤として併用して添加して、さらに効果的に過冷却を防止することができる。
(12)また、本発明に係る蓄熱剤は上記(4)〜(11)に記載のものにおいて、腐食抑制剤を添加したことを特徴とするものである。
腐食抑制剤としては、例えば亜硫酸塩、チオ硫酸塩または亜硝酸塩のナトリウム塩、リチウム塩が挙げられ、蓄熱剤に添加して溶存する酸素を消費して腐食を抑制することができる(脱酸型腐食抑制剤という)。
また、他の腐食抑制剤としては、ポリリン酸塩、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩、燐酸水素二塩、ピロ燐酸塩またはメタ珪酸塩のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩が挙げられ、金属表面に腐食を防止する被膜を形成して腐食を抑制することができる(被膜形成型腐食抑制剤という)。これらの被膜形成型腐食抑制剤と前述した脱酸型腐食抑制剤の亜硫酸塩またはチオ硫酸塩を併用することにより、さらに腐食を抑制することができる。
さらに、他の腐食抑制剤としてベンゾトリアゾールが挙げられる。
上記の腐食抑制剤を蓄熱剤に添加することにより、融点や蓄熱量を大きく変えずに腐食性の少ない蓄熱剤を提供することができる。
(13)本発明に係る熱輸送媒体は、トリnブチルアルキルアンモニウム塩と水を含有してなることを特徴とするものである。
(14)また、本発明に係る熱輸送媒体は、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムと水を含有してなることを特徴とするものである。
(15)また、本発明に係る熱輸送媒体は、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物を主成分とすることを特徴とするものである。
(16)また、本発明に係る熱輸送媒体は、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを含む水溶液であって、冷却すると水和物を生成してスラリとなることを特徴とするものである。
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを含む水溶液を冷却すると水和物を生成して、水和物粒子が水溶液または水に分散したスラリとなる。このスラリーは高い潜熱蓄熱量を有し、また流動性が高いので熱輸送媒体として優れている。
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの15%水溶液を調製し、4℃に冷却して水和物を生成し、水和物粒子が水溶液に分散した水和物スラリを調製することで、動粘度が水と同程度であり、流動性が高く搬送性に優れた熱輸送媒体となることを確認している。
(17)本発明に係る熱輸送媒体は、上記(14)〜(16)に記載の臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムが、トリブチルアミンと1ブロモペンタンとから合成されることを特徴とするものである。
(18)本発明に係る蓄熱剤用融点調整剤は、トリnブチルアルキルアンモニウム塩を含有してなることを特徴とするものである。
蓄熱主剤と融点の異なる水和物を生成するトリnブチルアルキルアンモニウム塩を融点調整剤として用いることができる。
蓄熱主剤にトリnブチルアルキルアンモニウム塩もしくはその水溶液を添加して蓄熱剤を調製することにより、蓄熱剤を冷却した際に水和物が生成する温度(混合物融点)を蓄熱主剤単独の融点より低く、あるいは高くすることができる。したがって、トリnブチルアルキルアンモニウム塩もしくはその水溶液の添加率を調整することにより、混合物融点を所望の範囲に調整することができる。このため、蓄熱剤により冷却されるべき対象あるいは蓄熱の目的に応じて求められる蓄熱剤の蓄熱温度に適合する融点を有する蓄熱剤を提供できる。
融点調整剤としてトリnブチルアルキルアンモニウム塩を添加する蓄熱主剤としては、テトラアルキルアンモニウム化合物の水和物が類縁物質であり好ましい。テトラアルキルアンモニウム化合物としてはテトラアルキルアンモニウム−アニオン塩が挙げられる。
アニオンとして、Br、F、Cl、C2H5COO、OH、CH3COO、HCOO、CH3SO3、CO3、PO4、HPO4、WO4、iC3H7COO、O3S(CH2)2SO3、sC4H9COO、NO3、(CH3)2CH(NH2)2COO、nC3H7SO3、CF3COO、CrO3、SO4が挙げられる。
また、アルキルとして、nブチル、isoブチル、nペンチル、isoペンチル、nプロピル、isoプロピル、エチル、メチル、nヘキシル、isoヘキシル、nヘプチル、isoヘプチル、isoブチル等が挙げられる。
テトラアルキルアンモニウム−アニオン塩の具体例としては、例えば、臭化テトラnブチルアンモニウムが挙げられる。
蓄熱主剤にトリnブチルアルキルアンモニウム塩を融点調整剤として添加して調製した蓄熱剤の総潜熱量は蓄熱主剤とトリnブチルアルキルアンモニウム塩水和物それぞれ単独の潜熱量の総和とほぼ等しいので、融点調整剤を添加することにより蓄熱剤の潜熱量が低下することなく、融点を調整することができる。
(19)また、本発明に係る蓄熱剤用融点調整剤は、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを含有してなることを特徴とするものである。
蓄熱主剤と融点の異なる水和物を生成する臭化トリnブチルペンチルアンモニウムを融点調整剤として用いることができる。
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物を、例えばテトラアルキルアンモニウム化合物の水和物からなる蓄熱主剤に添加することにより、水和物が生成する温度(混合物融点)を蓄熱主剤単独の融点より低く、あるいは高くすることができる。
したがって、臭化トリnブチルペンチルアンモニウムもしくはその水溶液の添加率を調整することにより、混合物融点を所望の範囲に調整することができる。このため、蓄熱剤により冷却されるべき対象あるいは蓄熱の目的に応じて求められる蓄熱剤の蓄熱温度に適合する融点を有する蓄熱剤を提供できる。
融点調整剤としてトリnブチルアルキルアンモニウム塩を添加する蓄熱主剤としては、テトラアルキルアンモニウム化合物の水和物が類縁物質であり好ましい。テトラアルキルアンモニウム化合物としてはテトラアルキルアンモニウム−アニオン塩が挙げられる。
(20)本発明に係る蓄熱剤用過冷却防止剤は、トリnブチルアルキルアンモニウム塩を含有してなることを特徴とするものである。
蓄熱主剤に、トリnブチルアルキルアンモニウム塩もしくはその水溶液を適量添加することにより蓄熱主剤の過冷却を効果的に防止することができる。蓄熱主剤が例えばテトラアルキルアンモニウム化合物水和物の場合には、トリnブチルアルキルアンモニウム塩は蓄熱主剤の類縁物質であるので、効果的な過冷却防止能を有している。つまり、テトラアルキルアンモニウム化合物蓄熱主剤と、過冷却防止剤として蓄熱主剤の融点より高い融点のトリnブチルアルキルアンモニウム塩もしくはその水溶液を添加した水溶液を冷却すると、先に過冷却防止剤のトリnブチルアルキルアンモニウム塩の水和物が生成され、蓄熱主剤の水和物生成の核として作用し過冷却を防止することができる。
過冷却防止剤のトリnブチルアルキルアンモニウム塩は蓄熱主剤のテトラアルキルアンモニウム化合物の類縁物質であるので、均一に分散されて過冷却防止能が高く、さらに蓄熱剤の凝固、融解が繰返されても分離することなく、過冷却防止能を維持することができる。
(21)また、本発明に係る蓄熱剤用過冷却防止剤は、臭化トリnブチルisoペンチルアンモニウムを含有してなることを特徴とするものである。
臭化トリnブチルisoペンチルアンモニウムを例えばテトラアルキルアンモニウム化合物の水和物からなる蓄熱主剤に添加することにより、蓄熱剤の過冷却を防止できる。
蓄熱主剤がテトラアルキルアンモニウム化合物水和物の場合に、過冷却防止剤として臭化トリnブチルisoペンチルアンモニウムを用いると、臭化トリnブチルisoペンチルアンモニウムは蓄熱主剤の類縁物質であるので、均一に分散されて過冷却防止能が高く、さらに蓄熱剤の凝固、融解が繰返されても分離することなく、過冷却防止能を維持することができる。
(22)本発明に係る蓄熱剤または熱輸送媒体の主剤の製造方法は、トリブチルアミンと1ブロモペンタンとから臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを合成し、これを蓄熱剤または熱輸送媒体の主剤とすることを特徴とするものである。
トリnブチルアミンと1-ブロモペンタンを、適切な溶媒を用いて反応させると、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムが下式の反応により合成できることを見出した。
トリnブチルアミン + 1-ブロモペンタン →臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム
(n-C4H93N + nC5H11Br → (n-C4H93(nC5H11)N-Br
すなわち、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムは、上式のように1工程の合成方法で合成することができるので、合成にかかるコストを低くして製造できる。
本発明の蓄熱性物質、蓄熱剤、熱輸送媒体及びそれらの主剤は、トリnブチルアルキルアンモニウム塩と水を含有してなることから、低価格で腐食性が低く、潜熱量が大きい。それ故、蓄熱剤、熱輸送媒体(マイクロカプセル化したものを含む)及びそれらの主剤として、また蓄熱材や保冷材の内容物として優れた性質を有している。
また、本発明の蓄熱剤用融点調整剤は、蓄熱剤の潜熱量を低下させず融点を調整できる。
また、本発明の蓄熱剤用過冷却防止剤は、過冷却防止効能が高く凝固と融解を繰返しても過冷却防止効能を維持できる。
トリnブチルアルキルアンモニウム塩として臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムについて説明する。
後述する製造方法により臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを製造、精製し、30wt%〜50wt%の水溶液を調整した。水溶液について、DSC(差動走査型熱量計)測定を実施し水和物の融点と潜熱量を測定した。その結果、縦軸を融点温度、横軸を濃度とした状態図では34wt%で融点が極大となり、調和融点を与える濃度(以下調和濃度という)は34wt%であることを確認した。
また、調和融点は6℃で、その潜熱量は193J/gであった。
ここで背景技術で示した既知の物質(硝酸テトラnブチルnアンモニウム水和物および臭化テトラnブチルアンモニウム水和物)と本実施形態の臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物を比較するためそれぞれの調和融点と調和濃度での潜熱量とを対比して表1に示す。
Figure 2007186667
表1に示されるように、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物の調和融点が最も低く、潜熱量は最も大きく、蓄熱剤や熱輸送媒体として優れた性能を有していることが分かる。
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの腐食性について評価した。
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム34wt%水溶液に、炭素鋼板またはアルミニウム板を浸漬し、90℃にて1週間保持したのち、重量減少量を測定して、それを腐食速度に換算した。
また、硝酸テトラnブチルアンモニウムのほぼ調和濃度である36wt%水溶液に対して、同様に腐食速度を測定した。
これらの結果を表2に示す。
Figure 2007186667
表2から分かるように、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムは炭素鋼に対する腐食性が硝酸テトラnブチルアンモニウムに比べて大幅に低く、アルミニウムに対しては腐食性がない又は殆どない。
なお、上記においてはトリnブチルアルキルアンモニウム塩の例として臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを示したが、トリnブチルアルキルアンモニウム塩の他の例として、臭化トリnブチルisoペンチルアンモニウムが挙げられる。
臭化トリnブチルisoペンチルアンモニウムは、トリnブチルアミンと1ブロモ3メチルブタンを原料にし、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムと同様の方法で合成できる。
臭化トリnブチルisoペンチルアンモニウム30wt%〜50wt%の水溶液を調整し、その水和物の調和融点と潜熱量を測定したところ、調和濃度33wt%、調和融点約17℃、潜熱227J/gであり、高い潜熱量を有する。
次に、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの製造、精製方法を説明する。
まず、製造、精製工程を説明し、その後具体例を示す。
1.原料仕込み工程
トリnブチルアミン(TBA)、1ブロモペンタン(PB)、溶媒(アセトニトリル)を容器に仕込む。
2.反応工程
常圧下、アルゴンガスを微量流通させ不活性ガス雰囲気下、温度80〜85℃下で反応させる。
3.濃縮工程
反応後の溶液を加熱し、TBA、PB、アセトニトリルを揮発させて生成物を濃縮する。なお、減圧下で濃縮工程を行うことにより効率が向上する。
4.精製工程
濃縮液に水を加え、油層と水層に分離した溶液から油層を除去する。得られた水層にシクロヘキセンを加えて洗浄し、油層を除去する。さらに、得られた水層にnヘキサンを加えて洗浄し、油層を除去する。このように洗浄することにより残留している溶媒や原料を除去する。このように精製して得られた臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水溶液中の臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの純度は99%になる。
上記の製造工程により、実際に臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを製造した実施例を以下に示す。
トリnブチルアミンを278g、1-ブロモペンタン249g、溶媒のアセトニトリル400gを反応容器に仕込み、アルゴンを微量流通させながら、常圧下還流温度(80〜85℃)にて22時間反応させた。
反応後の溶液を、減圧下30℃程度にて、原料と溶媒を除去して生成物を濃縮した。
得られた濃縮液に水を400g加え、油層と水槽に分離した溶液から油層を除去した。
得られた水層にシクロヘキセン300gを加えて洗浄した後、油層を除去した。更に得られた水層にnヘキサン300gを加えて洗浄した後、油層を除去した。
得られた水層を分析したところ、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの53wt%水溶液であることが分かった。収率は86%であった。水を除いた純度を測定したところ、99%であった。本実施例には示していないが、反応圧力と温度を高めることによって、反応速度を引き上げられることは言うまでもない。
なお、上記「4.精製工程」に代えて、以下のようにして精製してもよい。
濃縮液に溶媒として酢酸エチルを加え、必要であれば加熱して全体を一様にする。得られた液を30℃以下に冷却し、更に臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの固体粉末を極少量添加して、再結晶により臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを析出させる。結晶をろ過し、更に乾燥して残留した溶媒等の不純物を除去して、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの純度を99%以上に精製できる。5℃以下で再結晶させると、収率や効率の面で更に好ましい。
本発明の臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの水和物を主成分とする蓄熱剤または熱輸送媒体の特性や利用形態について、以下に述べる。
(1)純度と潜熱量の関係
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの純度と水和物潜熱量の関係について調べた。
上記の製造、精製工程のうち、精製工程中の有機溶媒による洗浄を経ずに製造した場合、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの純度は94%であった。そこで、この粗製品と精製品とを混合し、純度94〜99%の臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを生成し、それぞれの水和物の潜熱量を計測した。測定結果を表3に示す。
Figure 2007186667
表3に示されるように臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物の潜熱量は、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの純度により異なることが判明した。すなわち、純度が高い(不純物が少ない)臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの方が純度の低い(不純物の多い)ものより高い潜熱量が得られることが分かった。製品に残存する原料や溶媒などの不純物がある程度以上含まれると、十分な潜熱量が得られないことがわかり、不純物を十分に取り除くことが重要であることが分かった。特に、表3にも示されるように純度を97%以上にすることで、それ以下の場合よりも高い潜熱量を確保できることが判明した。
不純物が潜熱量を減少させる理由としては、単に物理的に不純物が入ることにより純物質である水和物の割合が減少することにとどまらず、不純物が水和物に化学的に作用して潜熱量を減少させることがあると考えられる。表3において、96%以下の例では、後者の化学的な作用が顕著になることにより潜熱量が大きく減少したことが推定される。このような化学的な作用により潜熱量を減少させる物質としては、例えば水和物の結晶構造に影響を与える水素結合を作り得る物質が挙げられる。このような物質は、水素結合により籠状に形成される水和物の水の構造を不安定化させたり、構造を変化させたりすることなどにより潜熱量を減少させる原因物質となり得る。化学的な作用により潜熱量を減少させる物質としてはほかにも、水和物の結晶構造に影響を与えるイオンを含む物質が考えられる。このような物質は、水和物を構成する例えば臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの臭素イオンとトリnブチルnペンチルアンモニウムイオンの結合の状況に影響を与える原因物質となり得る。
(2)融点調整
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムとテトラアルキルアンモニウム化合物とを混合することで融点調整ができることを見出したので、以下詳細に説明する。
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム(TBPAB)とテトラアルキルアンモニウム化合物の一例として臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)のそれぞれ調和濃度水溶液を等量含有する混合水溶液の融点温度と潜熱量を計測した。図1はこの測定結果を示すグラフであり、縦軸が潜熱量、横軸が融解温度を示している。
図1から分かるように、混合水溶液から生成する水和物は、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物と臭化テトラnブチルアンモニウム水和物のそれぞれ単独の場合の融点温度の間で、融解することが判明した。また、混合物の総潜熱量はそれぞれ単独の潜熱量の総和とほぼ等しいことを確認した。
このように、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物と融点の異なる水和物を生成するテトラアルキルアンモニウム化合物を混合することにより、混合水溶液を冷却した際に水和物が生成する温度(混合物融点)を臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物単独の融点より低く、あるいは高くなるように調整することができる。
したがって、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムと、テトラアルキルアンモニウム化合物との配合組成を調整することにより、混合物融点を所望の範囲に調整することができる。このため、蓄熱剤により冷却されるべき対象あるいは蓄熱の目的に応じて求められる蓄熱剤の蓄熱温度に適合する融点を有する蓄熱剤を提供できる。
このように異なる水和物を混合して用いることにより、混合水和物の潜熱を利用できる温度幅が広がるので、幅広い温度域で潜熱を利用したいような用途に適する。また、冷却時の条件が周辺環境またはその他の理由で多少変動した(例えば冷却時に温度が十分低下しなかった)としても一定の潜熱蓄熱が達成できる。
上記では臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの融点調整のために、テトラアルキルアンモニウム化合物を用いているが、代わりにトリnブチルアルキルアンモニウム塩を用いてもよい。
アルキルとして、nブチル以外の nペンチル、isoペンチル、nプロピル、isoプロピル、エチル、メチル、nヘキシル、isoヘキシル、nヘプチル、isoヘプチル、isoブチル等が挙げられる。
また、アンモニウム塩として、臭化アンモニウム塩、弗化アンモニウム塩、塩化アンモニウム塩、硝酸アンモニウム塩、亜硝酸アンモニウム塩、塩素酸アンモニウム塩、過塩素酸アンモニウム塩、臭素酸アンモニウム塩、よう素酸アンモニウム塩、炭酸アンモニウム塩、りん酸アンモニウム塩、タングステン酸アンモニウム塩、硫酸アンモニウム塩、水酸化アンモニウム塩、カルボン酸アンモニウム塩、ジカルボン酸アンモニウム塩、スルホン酸アンモニウム塩、ジスルホン酸アンモニウム塩等が挙げられる。
また、水溶液中の臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの濃度を、調和融点を与える濃度(調和濃度という)より大きくしたり、小さくしたりすることにより、融点の調整が可能である。調和濃度より濃度を小さくしたり、大きくしたりすると、融点は調和融点より低くなる。調和濃度より低い濃度の水溶液を冷却して水和物を生成すると、生成が進行するにつれて水溶液の濃度が小さくなるため融点が次第に低下する。調和濃度よりも小さくした場合、生成される水和物の水和数が増大する場合があるが、その場合には水和数増大により潜熱量が増大する。
(3)過冷却防止
蓄熱主剤として臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを用いる場合、フッ化テトラブチルアンモニウムを過冷却防止剤として添加することにより効果的に過冷却を防止できる。蓄熱主剤と過冷却防止剤の水溶液を冷却すると先に過冷却防止剤の水和物が生成され、生成された過冷却防止剤の水和物が蓄熱主剤の水和物生成の核として作用し過冷却を防止する。
以下、過冷却防止剤の適切な添加率を検討したので、詳細に説明する。
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを蓄冷主剤とし、過冷却防止剤としてフッ化テトラnブチルアンモニウムを添加した蓄冷剤を、冷房空調用に供する場合について検討した。
多くの場合、冷房空調において室内機から吹き出す冷空気の温度は一般に15℃程度であり、高くとも18℃程度である。それ以上に高い温度であると、空調対象の空間に向けて送り出すべき空気量を増やさない限り、同レベルの空調効果を得ることが困難になり、それどころか却って空調効率が低下する。そのため、冷空気に冷熱を供給する潜熱蓄熱剤は、空気との熱交換に必要な温度差(約2℃)を考慮して、16℃以下の潜熱を蓄熱できるものであることが要求される。
また、空調向けの潜熱蓄熱剤の典型例である氷の場合、0℃以下で冷却する必要があったため、冷凍機のCOPが低くなり、冷房に必要なエネルギーが大きくなり省エネルギー化ができないという問題があった。COPを高いまま維持し、省エネルギーを実現するためには、空調向けの潜熱蓄熱剤は、5℃以上、低くとも3℃以上で蓄熱できるものであることが要求される。上記の理由から、3℃〜16℃の温度範囲で蓄熱できる空調向けの潜熱蓄熱剤が望まれている。
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物は融点が6℃であり、冷房空調用に適した蓄熱剤であり、過冷却防止剤としてフッ化テトラnブチルアンモニウムを添加した蓄熱剤を検討した。臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの調和濃度水溶液にフッ化テトラnブチルアンモニウムの調和濃度水溶液を添加して、蓄熱剤総量中のフッ化テトラnブチルアンモニウム調和濃度水溶液の重量比率を0〜20%の範囲で数水準とった蓄熱剤について、過冷却解除性能と、3℃〜16℃の温度範囲の潜熱量を調べた結果を表4に示す。
DSC(差動走査型熱量計)測定により3〜16℃の温度範囲の潜熱量を求め、さらに潜熱量の変化を調べるため、過冷却防止剤を添加しないものの潜熱量との比を潜熱量比として表す。また、融点を示すが、 ここでの融点はDSC測定結果において横軸に温度、縦軸に比熱をとったグラフのピーク値とした。 さらに、過冷却防止性能について、3℃に冷却して数分以内に水和物結晶の成長が認められること、過冷却防止剤を入れない場合に比べて水和物結晶成長速度が大きくなっていること、1000回の凝固融解の繰り返しで過冷却防止性能の低下がないことが満たされた場合を○とし、満たされない場合を×とした。
Figure 2007186667
潜熱量比は、フッ化テトラnブチルアンモニウム調和濃度水溶液の添加率が20%を超えると大きく減少し、 16%までの添加であれば潜熱量比の低下がほとんどない。過冷却解除性は、添加率が4%以下であると不十分である。
したがって、潜熱量の低下がなく、冷却温度と融点との差が3℃程度でも過冷却解除性が十分となるフッ化テトラnブチルアンモニウム調和濃度水溶液の添加率は、7〜16%が好ましい。
また、フッ化テトラnブチルアンモニウムを調和濃度水溶液として添加する例を挙げたが、フッ化テトラnブチルアンモニウム三水和物等の粉末を添加する場合であっても同様の過冷却解除効果がある。
なお、フッ化テトラnブチルアンモニウム以外の過冷却防止剤として適するテトラアルキルアンモニウム化合物としては、蓄熱主剤の融点より高い融点をもつ以下に示すようなものが挙げられる。
(i-C5H11)4N-F、(i-C5H11)4N-Cl、(i-C5H11)4N-C2H5COO、(n-C4H9)4N-OH、(i-C5H11)4N-CH3COO、(i-C5H11)4N-HCOO、(i-C5H11)4N-CH3SO3、((n-C4H9)4N)2-CO3、((n-C4H9)4N)3-PO4、((n-C4H9)4N)2-HPO4、(n-C4H9)4N-Cl、((n-C4H9)4N)2-WO4
(n-C4H9)4N-Br
また、蓄熱主剤として臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを用いる場合、リン酸水素二ナトリウムを過冷却防止剤として0.1〜2重量%添加しても効果的に過冷却を防止することができ、さらにフッ化テトラブチルアンモニウムとリン酸水素二ナトリウムを過冷却防止剤として併用して添加して、さらに効果的に過冷却を防止することができる。
(4)腐食抑制
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムは硝酸テトラnブチルアンモニウムに比べて大幅に腐食性が低いが、臭素イオンを含むため炭素鋼に対して腐食性があるので、腐食抑制剤を添加して腐食を抑制することが好ましい。
腐食抑制剤としては、例えば亜硫酸塩、チオ硫酸塩または亜硝酸塩のナトリウム塩、リチウム塩が挙げられ、蓄熱剤に添加して溶存する酸素を消費して腐食を抑制することができる(脱酸型腐食抑制剤という)。
また、他の腐食抑制剤としては、ポリリン酸塩、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩、燐酸水素二塩、ピロ燐酸塩またはメタ珪酸塩のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩が挙げられ、金属表面に腐食を防止する被膜を形成して腐食を抑制することができる(被膜形成型腐食抑制剤という)。これらの被膜形成型腐食抑制剤と前述した脱酸型腐食抑制剤の亜硫酸塩またはチオ硫酸塩を併用することにより、さらに腐食を抑制することができる。
さらに、他の腐食抑制剤としてベンゾトリアゾールが挙げられる。
上記の腐食抑制剤を添加することにより、融点や蓄熱量を大きく変えずに腐食性の少ない蓄熱剤を提供することができる。
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムに腐食抑制剤を添加して腐食抑制効果について評価した。
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム調和濃度水溶液に、表5に示すように腐食抑制剤を添加して、炭素鋼板を浸漬し90℃にて1週間保持したのち、重量減少量を測定して、それを腐食速度に換算し、結果を表5に示す。
Figure 2007186667
表5に示すように、亜硫酸ナトリウムを添加すること、またはポリリン酸ナトリウムを添加することにより腐食速度を無添加の場合に比べて1/2以下に抑制でき、さらに亜硫酸ナトリウムとポリリン酸ナトリウムを併用することにより腐食を十分に抑制できる。また、上述した他の腐食抑制剤でも同様に腐食を十分に抑制できる効果があった。
また、これらの腐食抑制剤は他のトリnブチルアルキルアンモニウム塩の腐食に対しても抑制する効果がある。
(5)熱輸送媒体
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの15%水溶液を調製し、4℃に冷却して水和物を生成し、水和物粒子が水溶液に分散した水和物スラリを調製した。この水和物スラリは動粘度が水と同程度であり、流動性が高く搬送性に優れているので、蓄熱量の高い熱輸送媒体として好適である。
また、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム以外の他のトリnブチルアルキルアンモニウム塩水溶液も、熱輸送媒体として利用できることは言うまでもない。特に、臭化トリnブチルisoペンチルアンモニウム水溶液は調和融点が約17℃であるので、例えば4℃にて水和物スラリを熱輸送媒体として使用する場合には、水溶液の濃度を調和濃度より小さい濃度にして融点を下げるように調整する。この濃度調整は臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの場合よりも小さい水溶液濃度にて融点を調整することになる。つまり、臭化トリnブチルisoペンチルアンモニウム水溶液(調和融点17℃)の場合は、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム(調和融点約6℃)や臭化テトラnブチルアンモニウム(調和融点約12℃)の水溶液を熱輸送媒体として用いる場合に比べて、熱輸送媒体主剤の濃度をより小さく設定して同じ温度の熱輸送媒体として利用できるので、熱輸送媒体の材料コストを低減することが可能である。また、水和物を生成する材料の濃度を小さくすることにより、生成する水和物の水和数が増加して潜熱量が増加する効果も期待できる。
このように、トリnブチルアルキルアンモニウム塩の調和濃度より小さい濃度の水溶液を冷却して調製した水和物スラリは熱輸送媒体として好適である。また、調和濃度や調和濃度より大きい濃度の水溶液でも与える冷熱量を調整することでスラリ状とすることができ、これらも熱輸送媒体として利用できる。
トリnブチルアルキルアンモニウム塩を熱輸送媒体として使用する場合には、例えば特開平7-91872号公報に開示されている手法を用いてマイクロカプセル化し、これをスラリにして使用してもよい。
また、必要に応じて、別途、適宜選択した界面活性剤又は抵抗低減剤を添加するなどして抵抗低減措置を追加してもよい。
このような、マイクロカプセル化または界面活性剤又は抵抗低減剤の添加により流動性を高めることができ、熱輸送媒体を輸送するポンプ動力の低減を図ることができる。
(6)高温蓄熱剤
上記の実施形態ではトリnブチルアルキルアンモニウム塩のうち主に臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを例に挙げて冷熱(特に20℃未満の熱)を蓄熱する蓄熱剤や熱輸送媒体として用いることを述べたが、トリnブチルアルキルアンモニウム塩のうち水和物融点温度が20℃以上のもの(好ましくは20〜30℃のもの)は、温室や床暖房等に適用される温熱を蓄熱する蓄熱剤または熱輸送媒体として用いることができる。
このような高温蓄熱剤としては、フッ化トリnブチルイソペンチルアンモニウム、フッ化トリnブチルnペンチルアンモニウムが挙げられる。
また、水和物融点温度を適宜設定することによって、冷熱、温熱の各領域のみならず、冷温熱の両領域においても適用可能である。つまり、夏場と冬場の両方に単一媒体で適用可能である。
次に本発明の臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの水和物を例に挙げ、これを主剤とする蓄熱剤または熱輸送媒体の利用形態について以下の実施例で説明する。他のトリnブチルアルキルアンモニウム塩又はその水和物も、蓄熱剤または熱輸送媒体として同様の利用形態で利用できることは言うまでもない。
実施例1は、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの水和物を熱輸送媒体として利用した空調設備に関するものである。
図2は本実施例の空調設備の説明図である。図2に示す空調設備は、室外ユニット1と負荷側の機器2とから構成され、この負荷側の機器2はたとえば複数の室内ユニット14を備えている。また、上記の室外ユニット1は、冷凍装置3と蓄熱装置4から構成されている。
上記の冷凍装置3は、圧縮機5を備えており、フロン等の冷媒を圧縮し、凝縮器6で冷却して凝縮させる。そして、この凝縮された冷媒は制御弁7、膨脹弁8を介して流通されて蒸発し、冷熱を生成する。なお、蒸発膨脹した冷媒は再び上記の圧縮機5により圧縮される。
また、上記の蓄熱装置4には、一体形の蓄熱槽10が設けられ、この蓄熱槽10は断熱構造を採用している。そして、この蓄熱槽10内には、本発明の臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの水溶液Sが収容されている。また、この蓄熱槽10内には、熱交換器11が内蔵され、前記の冷凍装置3からの冷媒が供給され、この蓄熱槽10の内部の水溶液を冷却し、水和物の粒子を生成する。
この水和物の粒子と水溶液の混合した水和物スラリは、この蓄熱槽10内に貯留されて冷熱を蓄熱し、さらに制御弁12を介してポンプ13により前記の各室内ユニット14に送られ、空気と熱交換して冷熱を供給する。空気と熱交換した水和物スラリまたは水溶液は上記の蓄熱槽10内に戻される。なお、15は各室内ユニット14の流量調整弁である。
本実施例に示したものは、深夜電力等により圧縮機5を作動させ、深夜に水和物スラリを生成し、この水和物スラリは蓄熱槽10内に貯蔵される。そして、昼間などにおいてこの空調設備を作動させる際には、この蓄熱槽10内に貯蔵されている水和物スラリを室内ユニット14に供給して空調を行い、深夜電力を有効に利用する。
実施例2は、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの水和物を蓄熱剤として利用した空調設備に関するものである。
図3は本実施例の空調設備の説明図である。図2と同一のものには同一の符号が付してある。本実施例の空調設備は貯蔵された水和物スラリをフロン等の冷媒と熱交換して負荷側に供給するとともに、蓄熱槽10内に貯蔵されている水和物スラリを冷熱源として使用するのと並行して冷凍装置を運転可能としたものである。
すなわち、本実施例のものは図3に示すように、蓄熱槽10内の水和物スラリとフロン等の冷媒とを熱交換する冷媒熱交換器20を備えており、この冷媒熱交換器20と前記の熱負荷側の室内ユニット14との間は、往き配管22および戻り配管23を介してフロン等の冷媒が循環するように構成されている。そして、この冷媒熱交換器20には、弁12、ポンプ13を介して蓄熱槽10内の水和物スラリが供給され、冷媒と熱交換されてこの冷媒を冷却または凝縮する。また、この冷媒熱交換器20内を流通する冷媒は、弁24,25を介して冷凍装置に流通される。
なお、図中で実線の矢印は夜間の蓄熱運転時の冷媒の流通経路を示し、また破線の矢印は昼間の負荷運転時の冷媒および水和物スラリの流通経路を示す。
本実施例のものは、昼間の負荷運転の場合には冷凍装置を作動させ、凝縮器6を通過したガス状または液状の一部の冷媒を上記の冷媒熱交換器20に供給して蓄熱槽10内の水和物スラリと熱交換して冷却または凝縮し、この冷媒を熱負荷側の室内ユニット14等に送る。また、これらの室内ユニット14から戻された冷媒は、再び圧縮器5により圧縮され、凝縮器6に送られる。
本実施例では、室内ユニット14に送られる熱媒体がフロン等の冷媒であり、このような従来の冷媒を使用する室内ユニット14をそのまま使用することができる。また、この実施例のものは、蓄熱槽10内の水和物スラリと冷凍装置を冷熱源とする並行運転が可能であり、負荷の変動等に柔軟に対応することができる。
実施例3は、実施例2と同様に臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの水和物を蓄熱剤として利用した空調設備に関するものである。
図4は本実施例に係る空調設備の説明図である。図2と同一のものには同一の符号が付してある。本実施例の空調設備は、蓄熱槽10内に貯蔵された水和物スラリの冷熱をフロン等の冷媒と熱交換して負荷側に供給する水和物スラリのみを冷熱源とする運転と、冷凍装置を冷熱源とする運転との少なくとも一つを運転可能としたものである。
すなわち、本実施例の空調設備は図4に示すように、蓄熱槽10内の水和物スラリとフロン等の冷媒とを熱交換する第1の熱交換器である冷媒熱交換器20を備えており、この冷媒熱交換器20と熱負荷側の室内ユニット14との間は、第1の往き配管である往き配管22および第1の戻り配管である戻り配管23を介してフロン等の冷媒が循環するように構成されている。そして、この冷媒熱交換器20には、弁12、ポンプ13を介して蓄熱槽10内の水和物スラリが供給され、冷媒と熱交換されてこの冷媒を冷却または凝縮する。
また、この冷媒熱交換器20内を流通する冷媒は、弁24,25を介して冷凍装置5,6に流通可能となっている。また、蓄熱槽10内には、水和物を形成する臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの調和温度を生じる濃度より薄い濃度の水溶液が収容されている。また、この蓄熱槽10内には、第2の熱交換器である熱交換器11が内蔵され、冷凍装置5,6からの冷媒が第2の往き配管を介して供給され、この蓄熱槽10の内部の水溶液を冷却し、水和物の粒子を生成し水和物スラリを生成する。さらに第2の熱交換器である熱交換器11から冷媒が第2の戻り配管を介して圧縮形の冷凍装置5,6に循環される。
なお、図中で実線の矢印は夜間の蓄熱運転時の冷媒の流通経路を示し、また破線の矢印は昼間の負荷運転時の冷媒および水和物スラリの流通経路を示す。
本実施例のものは、第1の戻り配管である冷媒の戻り配管23の途中に冷媒ガスポンプ31を設けるとともに、切換え用の弁32,33,34,35を設け、冷凍装置の圧縮器5を経由せずに、冷媒を室内ユニット14と第1の熱交換器である冷媒熱交換器20との間で循環させ、この冷媒と水和物スラリとを熱交換させることができるものである。
また、本実施例のものは、上記の実施例2のものと同様に室内ユニット14に送られる熱媒体がフロン等の冷媒であり、このような従来の冷媒を使用する室内ユニット14をそのまま使用することができる。
また、本実施例のものは、切換え用の弁32,33,34,35を操作することにより、蓄熱槽10内の水和物スラリのみを冷熱源とする運転、冷凍装置のみによる運転、蓄熱槽10内の水和物スラリと冷凍装置を冷熱源とする並行運転のいずれも選択可能であり、状況に応じた柔軟な運転が可能である。
なお、空調設備の形態は上記図2〜図4に示したものには限定されず、例えば冷凍機の形式は上記のものには限定されず、各種のものが採用可能である。
本実施例は臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの水溶液から包接水和物スラリを製造する包接水和物スラリ製造装置に関するものである。
図5は本実施例の包接水和物スラリ製造装置の説明図である。本実施例の包接水和物スラリ製造装置は、図5に示すように、包接水和物スラリを製造する水和物生成蒸発器(以下、円筒形熱交換器41という)が設置されている。この円筒形熱交換器41は、上部に開口部42を有する大気開放型の円筒容器43によって構成され、下部には漏斗状部44が一体に設けられている。さらに、円筒形熱交換器41の円筒容器43の外周面にはジャケット43aが形成され、円筒容器43の内周面は冷却面43bに形成されている。
前記漏斗状部44は配管45を介して蓄熱槽46に接続されており、この配管45の途中には電磁弁47及びポンプ48が設けられている。蓄熱槽46は上部に開口部46aを有する大気開放型の容器46bによって構成されている。
前記円筒形熱交換器41の内部には冷却すると包接水和物を生成する臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの水溶液Wが貯留されている。
円筒形熱交換器41の外部には冷凍装置50が設けられ、この冷凍装置50には円筒形熱交換器41の内部に包接水和物の生成温度以下の温度に冷却された冷却用流体としてのブラインを供給するためのブラインポンプ51を備えた供給用冷媒配管52が設けられ、円筒形熱交換器41のジャケット43aに接続されている。また、円筒形熱交換器41には戻り用冷媒配管53が接続され、冷凍装置50に循環するようになっている。
そして、前記円筒形熱交換器41でブラインによって内部の水溶液Wを冷却し、水溶液Wが冷却されて包接水和物が生成され、生成された包接水和物は冷却面43bに付着するようになっている。
また、円筒形熱交換器41には冷却面43bに付着した包接水和物を掻落としながら包接水和物と水溶液Wを撹拌する撹拌機構54が設けられている。この撹拌機構54は円筒形熱交換器41の上部に設けられた電動機55と、円筒形熱交換器41の中心部に挿入され電動機55によって回転する回転軸56及びこの回転軸56に取付けられ冷却面43bと摺擦する回転撹拌翼57とから構成されている。
回転撹拌翼57はゴムシート、軟質合成樹脂シート等の弾性体によって形成され、円筒形熱交換器41の冷却面43bに摺擦するようになっている。また、回転撹拌翼57を弾性体とすることにより、円筒形熱交換器41の真円度の精度が悪くても冷却面43bに確実に摺擦して掻落とすことができるとともに、掻落し音を低減できるという効果がある。
また、前記蓄熱槽46には包接水和物スラリW1を円筒形熱交換器41に還流する還流配管58及び包接水和物スラリW1を空調設備等の熱負荷側(図示しない)に送る供給配管59が設けられ、冷熱源として使用される。
次に、前述のように構成された包接水和物スラリの製造装置の作用について説明する。円筒形熱交換器41の円筒容器43に水溶液Wを貯留し、冷凍装置50を作動すると、ブラインはブラインポンプ51によって円筒形熱交換器41に導かれ、円筒形熱交換器41内の水溶液Wは冷却されて包接水和物が生成されて冷却面43bに付着する。
このとき、電動機55の作動により回転軸56が回転し、回転撹拌翼57が回転して冷却面43bを摺擦するため、冷却面43bに付着した包接水和物は掻落とされる。包接水和物が掻落とされることによって包接水和物が溶液中に分散してクリーム状の包接水和物スラリW1となるとともに、包接水和物スラリW1は回転撹拌翼57によって撹拌されるため流動性を維持できる。
また、電磁弁47を開放し、ポンプ48を作動させると、円筒容器43の底部に溜った包接水和物スラリW1は配管45を介して蓄熱槽46に送り出され、蓄熱槽46にて蓄熱される。蓄熱槽46にて蓄熱された包接水和物スラリーW1は供給配管59を介して空調設備等の熱負荷側に送られ、冷熱源として使用される。
実施例5は臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物スラリ製造装置を組み込んだ空調システムに関するものである。図6は本実施例の水和物スラリ製造装置を組み込んだ空調システムの説明図である。まず、この空調システムにおける主要な構成部材を概略的に説明する。
冷却塔、ポンプ、熱交換器などを含む冷凍機61は、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの水溶液および水和物スラリを冷却するための冷熱媒体としての冷水を生成する。水和物スラリを製造するための熱交換器としては二段階の熱交換器が設けられている。顕熱熱交換器(第1の熱交換器)62は冷水との熱交換により水溶液を冷却する。顕熱熱交換器62の下流に設けられた2台の潜熱熱交換器(第2の熱交換器)63a、63bは冷水との熱交換により水和物スラリを冷却する。
図6の例では冷凍機61で生成した冷水を顕熱熱交換器62と潜熱熱交換器63a、63bに並列に供給しているが、直列に供給してもよい。なお、潜熱熱交換器の台数は、空調負荷に応じて3台以上にしてもよい。蓄熱槽64からゲスト化合物である臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの水溶液が顕熱熱交換器62へ送られて過冷却状態にまで冷却され、顕熱熱交換器62の下流において水溶液の過冷却を解除することにより生成した水和物スラリが一方の潜熱熱交換器63aまたは63bでさらに冷却されて蓄熱槽64へ戻る。
この装置では、顕熱熱交換器62と潜熱熱交換器63a、63bとの間の配管に、潜熱熱交換器63a、63bの下流の配管から注入配管65を接続し、過冷却状態の水溶液に水和物スラリの一部を注入することにより水溶液の過冷却を解除する。蓄熱槽64から水和物スラリが空調負荷66へ送られ、空調負荷66で冷熱を供給して水和物スラリから相変化した水溶液が蓄熱槽64へ戻る。温水タンク67からは、水和物スラリの融解運転が必要になった潜熱熱交換器63aまたは63bに対して温水が送られる。
なお、図6では、冷却媒体として冷凍機61で生成した冷水を用いて水溶液および水和物スラリを冷却しているが、冷却媒体としてたとえば氷蓄熱槽などから取り出した冷水などを用いてもよい。また、図6では、蓄熱槽64を設けているが、蓄熱槽は必ずしも設ける必要はなく、潜熱熱交換器で製造した水和物スラリを直接に空調負荷へ送るようにしてもよい。
以下、本実施例に係る空調システムの動作をより詳細に説明する。
システムの起動時には水和物スラリがなく、蓄熱槽64内にゲスト化合物(臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム)を含む水溶液のみが収容されている。水溶液中のゲスト化合物の濃度は空調システムの空調負荷に応じて設定する。この濃度を変えることによって、空調システムの空調負荷に適するように水和物スラリの熱密度や冷水温度を変えることができる。
空調運転を開始する前に水和物スラリを用意する。まず、蓄熱槽64内の水溶液を製造ポンプ72により顕熱熱交換器62および一方の潜熱熱交換器63aを通して蓄熱槽64へ循環させる。他方の潜熱熱交換器63bは使用しない。
次に、冷凍機61を動作させて、冷凍機61の熱交換器で生成した冷水を冷水ポンプ71により顕熱熱交換器62と潜熱熱交換器63aを通して冷凍機61の熱交換器へ循環させる。このとき、顕熱熱交換器62による水溶液の冷却は過冷却が自然に解除する程度として、少量の水和物スラリを生成させる。さらに、潜熱熱交換器63aにより水和物スラリを冷却しながら、空調運転が可能になる量の水和物スラリを生成させる。このように、水和物スラリ製造装置内に最初に水溶液を流した後に、冷却媒体としての冷水を流すことにより、潜熱熱交換器の閉塞を防止できる。
次いで、顕熱熱交換器62で水溶液を過冷却する。そして、顕熱熱交換器62と潜熱熱交換器63aとの間の配管を流れる過冷却状態の水溶液に対し、注入ポンプ73を動作させ、注入配管65を通して潜熱熱交換器63aの下流配管からの水和物スラリを注入する。注入された水和物スラリ中の水和物は、水溶液中での水和物生成の核となる。
こうして、顕熱熱交換器62で過冷却された水溶液の過冷却状態を解除して固相割合の小さい水和物スラリを生成させる。その後、潜熱熱交換器63aでさらに水和物スラリを冷却する。潜熱熱交換器63aには水和物スラリが送られるので過冷却がすでに解除されている。このとき、潜熱熱交換器63aに流す冷水の流量を制御することにより、空調負荷66に応じた所望の熱密度を持つ水和物スラリを製造する。このようにして、高効率な水和物スラリの製造運転に移行することができ、かつ空調運転を開始することができる。
空調運転時には、空調負荷66から蓄熱槽64へ戻った水溶液は製造ポンプ72により顕熱熱交換器62へ送られて過冷却され、注入配管65からの水和物スラリの注入により過冷却が解除されて水和物スラリとなり、水和物スラリは潜熱熱交換器63aでさらに冷却されて蓄熱槽64へ戻り、蓄熱槽64からは負荷ポンプ74により水和物スラリが空調負荷66へ送られる。この際、空調負荷に応じて、熱交換器への搬送動力と負荷への搬送動力の合計動力が最も少なくなるように水和物スラリの熱密度を制御すると、省エネルギーを図ることができる。
空調運転中に、潜熱熱交換器63aの伝熱面で水和物スラリの付着が起こり始めていると判断された場合には、閉塞を防止するために潜熱熱交換器63aでの水和物スラリの製造を停止し、潜熱熱交換器63bに切り換えて水和物スラリの製造を継続する。
そして、潜熱熱交換器63aは融解運転に入る。潜熱熱交換器の伝熱面での水和物スラリの付着は、たとえば各々の潜熱熱交換器の上流側配管に取り付けた流量計(図示せず)で水和物スラリの流量を監視し、潜熱熱交換器へ流入する水和物スラリの流量の減少が検出されたことに基づいて判断することができる。同様に、潜熱熱交換器の伝熱面での水和物スラリの付着は、圧力損失の増大や潜熱熱交換器へ供給される冷水または水和物スラリの出入口温度差を計測することによる交換熱量の減少によっても判断することができる。
融解運転時の動作について説明する。一方の潜熱熱交換器63aへの冷水の供給を停止し、他方の潜熱熱交換器63bへの冷水の供給を開始する。このように、潜熱熱交換器63aから潜熱熱交換器63bへの切り換えにより、水和物スラリを継続して製造することができる。冷水の供給を停止した潜熱熱交換器63aに対しては、温水タンク67から温水を供給し、熱交換器内部の伝熱面に付着した水和物を融解する。なお、図6では、温水タンク67においてヒータによって温めた融解用温水を使用しているが、潜熱熱交換器や顕熱熱交換器から排出される熱交換されて温度の上がった冷水を融解運転に使用してもよい。
上記の説明では、潜熱熱交換器への水和物スラリの流量が減少した場合または圧力損失が増大した場合または熱交換量が減少した場合に融解運転を行うようにしている。これに対して、複数台の潜熱熱交換器を一定時間ごとに順次切り換えて、融解運転を行うようにすると、流量計や圧力計や温度計などの検出機器を削減でき、システムを簡素化できる。
以上のように本実施例のように、水和物スラリ製造装置の熱交換器を、水溶液を溶液状態のままで過冷却する顕熱熱交換器と水和物スラリを冷却する潜熱熱交換器に分離し、かつ複数台の潜熱熱交換器を切り換え可能に設置すれば、潜熱熱交換器の閉塞を確実に防止することができ、水和物スラリを継続的に高効率で製造することができる。
実施例6は、既設ヒートポンプ式空調装置の冷房能力を増強する蓄熱ユニットに関するものである。
図7は本実施例の蓄熱ユニット装置を組み込んだヒートポンプ式空調装置の構成を説明する説明図である。この例のヒートポンプ式空調装置は、既設のヒートポンプ式空調装置として室外機81と室内機85を2本の冷媒配管で接続していたものに、新たに蓄熱ユニット装置83を後から組み込んだものであり、室外機81と、蓄熱ユニット装置83と、複数の室内機85とから構成される。
室外機81と蓄熱ユニット装置83とは2本の冷媒配管87、89で接続され、蓄熱ユニット装置83と室内機85とは同様に2本の冷媒配管91、93で接続されている。既設のヒートポンプ式空調装置において、冷媒配管87および冷媒配管91は主として液冷媒が流れる液冷媒配管、冷媒配管89および冷媒配管93は主としてガス冷媒が流れるガス冷媒配管である。
室外機81は、ガス冷媒を所定の圧力に昇圧する圧縮機95、冷媒と外気との間で熱交換を行う室外側熱交換器97、運転モードによって冷媒の流れを切り替える4方弁99、膨張弁101を備えている。4方弁99の4つの接続口は、それぞれ圧縮機95の吐出側および吸込み側、室外側熱交換器97の一端側、冷媒配管89に配管を介して連結されている。また、室外側熱交換器97における4方弁99に連結されている側と反対側は膨張弁101を介して冷媒配管87に接続されている。
蓄熱ユニット装置83は、蓄熱剤105を貯留する蓄熱槽103、蓄熱槽内の蓄熱剤105と冷媒とを熱交換させる蓄熱用熱交換器107を備えている。
蓄熱剤105は、本発明に係る臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの水溶液を用いる。臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの調和融点Tmは9℃であり、冷媒の蒸発温度Teより高く凝縮温度Tcより低い融点である。なお、蒸発温度Te、凝縮温度Tcとは、既設ヒートポンプ式空調装置の設計蒸発温度および設計凝縮温度のことをいう。
融点Tmが上記範囲であることから、既設のヒートポンプ式空調装置の蒸発温度と凝縮温度での運転条件をそのまま用いた高効率な運転状態を保ったまま、蓄熱剤が液体から固体に相変化するときの凝固融解潜熱を利用して多量の熱量を蓄冷および蓄温熱することが可能となる。
このように、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムはその調和融点Tmが上記の範囲であることから、蓄熱ユニット装置83を既設ヒートポンプ式空調装置にそのまま取り付けて冷暖房能力を増強させることができる。
再び図7に戻って装置構成を説明する。
一端側が冷媒配管87に接続され他端側が冷媒配管91に接続される配管109(本発明の第1配管に相当)、一端側が冷媒配管89に接続され他端側が冷媒配管93に接続される配管111(本発明の第2配管に相当)を備えている。そして、配管109には冷媒配管87に近い方から順に開閉弁113(本発明の第1開閉弁に相当)、開閉弁115(本発明の第2開閉弁に相当)が設けられている。また、配管111には開閉弁117(本発明の第3開閉弁に相当)が設けられている。
蓄熱用熱交換器107の一端側は配管119を介して配管109における開閉弁113、115の間に接続されている。そして配管119には蓄熱用熱交換器107に近い方から順に膨張弁121、アキュムレータ123、開閉弁125(本発明の第4開閉弁に相当)が設けられている。
また、蓄熱用熱交換器107の他端側は3つの配管127、129、131を介して、配管111および配管109に接続されている。すなわち、配管127を介して配管111における開閉弁117よりも冷媒配管89に近い位置に接続され、配管129を介して配管109における開閉弁113よりも冷媒配管87に近い位置に接続され、配管131を介して配管109における開閉弁115よりも冷媒配管91に近い側に接続されている。そして、配管127には開閉弁133(本発明の第5開閉弁に相当)が、配管129には開閉弁135(本発明の第7開閉弁に相当)が、配管131には開閉弁137(本発明の第6開閉弁に相当)が設けられている。
室内機85には室内空気と冷媒との熱交換を行う室内側熱交換器139が設けられている。室内側熱交換器139の一端側は冷媒配管91に、他端側は冷媒配管93に、それぞれ配管を介して接続されている。室内側熱交換器139と冷媒配管91とを連結する経路には膨張弁141が設けられている。
なお図7において、室外機81、室内機85は主要な構成機器のみを図示した代表的な構成を示しており、必要に応じてアキュムレータや制御弁などが接続されたり、構成機器が複数組設置されてもよい。すなわち、室外機と室内機が2本の冷媒配管で接続されているヒートポンプ式空調装置であれば、室外機および室内機における機器構成は問わない。
上記のように構成されたヒートポンプ式空調装置においては、蓄熱ユニット装置83を機能させないで冷房運転を行う通常冷房運転、蓄熱槽103内の蓄熱剤105に冷熱を蓄冷する蓄冷運転、蓄熱剤105に蓄冷した冷熱を利用した冷房運転を行う蓄冷利用冷房運転、蓄熱ユニット装置83を機能させないで暖房運転を行う通常暖房運転、蓄熱槽103内の蓄熱剤105に温熱を蓄熱する温熱蓄熱運転、蓄熱剤105に蓄熱した温熱を利用した暖房運転をする蓄熱利用暖房運転の各運転モードが可能である。
実施例7は、水等の冷媒液中に蓄熱体を浸漬して蓄熱をなす蓄熱装置に関するものである。
図8は本実施例に係る蓄熱装置の説明図である。このものは、貯留槽151を備え、その内部には冷媒液たとえば水152が貯留されている。また、153は冷凍機であって、上記の貯留槽151の内部の水152は、配管154,155を介して上記の冷凍機153との間を循環し、冷却され、冷熱を蓄熱する。
また、この貯留槽151内の水152は、配管156,157を介して空調設備などの冷熱負荷(図示せず)との間で循環され、蓄熱された冷熱が使用される。そして、この貯留槽151の内部の水152中には、内部に臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水溶液を封入した多数の蓄熱体180が浮遊状態で浸漬されており、この貯留槽151内の水152の蓄熱量を増大するように構成されている。なお、これらの蓄熱体180の構成については後述する。
また、上記の貯留槽151には、上記の蓄熱体180の姿勢変化または移動をさせる容器駆動手段として、循環機構160が設けられており、この循環機構160はポンプ161、ノズル162等から構成され、この貯留槽151内の水152を循環させ、流動または攪拌する。
次に、前記の蓄熱体180の構成を説明する。この蓄熱体180は、密封性を有する球形の容器を備え、この容器の内部に臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水溶液が封入されている。
また、この容器内には、所定量の空気またはその他のガスが封入されて空間部を形成しており、この蓄熱体180の全体の見かけ上の比重が周囲の冷媒液たとえば水と等しくなるように構成され、この水中を自由に浮遊できるように構成されている。
また、上記の空間部は、その膨張、収縮により、この蓄熱体180の容器内部の水溶液の膨張、収縮、および水和物の生成による体積変化等を補償することができる。
次に、上記装置の作用を説明する。上記の冷凍機153は、たとえば深夜電力等で運転され、生成した冷熱を上記の貯留槽151内の水152に蓄熱する。
この場合に、貯留槽151内の水152が冷却されると、蓄熱体180の容器の壁を介して内部の臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水溶液が冷却されて水和物粒子を生成し、水和物スラリが生成される。貯留槽151内の水が冷熱源として使用されると、上記とは逆に蓄熱体180の内部の水和物スラリが融解する。このように水和物の潜熱により、蓄熱量が増大する。
また、上記の水和物スラリは流動性があるので、周囲の水との熱交換の効率が高い。
実施例8は貯蔵室内に蓄冷材を収容した蓄冷型冷蔵庫に関するものである。本実施例の蓄冷型冷蔵庫は、例えば臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水溶液を容器に封入して蓄冷体とし、貯蔵室内に収容するトレイの下部に固定するようにする。このようにすることで、高い潜熱量を有する臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物を用いて蓄冷できるので、電力消費量を抑制できる。
実施例9は臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを蓄熱剤として利用した缶飲料等の冷蔵自動販売機に関するものである。
本実施例の冷蔵自動販売機は、例えば上記冷蔵庫の場合と同様に臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水溶液を容器に封入して蓄冷体とし、商品貯蔵庫の内壁面に配置する。そして、前記容器と内壁面との間に蒸発器を配置するようにする。
このようにすることで、高い潜熱量を有する臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物を用いて蓄冷できるので、商品の冷蔵に要する電力消費量を低減することができる。
以上、実施例1〜9で例示して説明したように、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムは蓄熱剤または熱輸送媒体として利用価値が高く種々の利用形態が可能である。
本発明のトリnブチルアルキルアンモニウム塩を含有してなる融点調整剤の例として、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを含有してなる融点調整剤の特性について、以下に述べる。
蓄熱主剤と融点の異なる水和物を生成する臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを蓄熱主剤に添加して蓄熱剤を調製することにより、蓄熱剤を冷却した際に水和物が生成する温度(混合物融点)を蓄熱主剤単独の融点より低く、あるいは高くすることができる。したがって、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの添加率を調整することにより、混合物融点を所望の範囲に調整することができる。このため、蓄熱剤により冷却されるべき対象あるいは蓄熱の目的に応じて求められる蓄熱剤の蓄熱温度に適合する融点を有する蓄熱剤を提供できる。
融点調整剤として臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを添加する蓄熱主剤としては、テトラアルキルアンモニウム化合物の水和物が臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの類縁物質であり、融点調整効果が顕著にあり好ましい。
テトラアルキルアンモニウム化合物としてはテトラアルキルアンモニウム−アニオン塩が挙げられる。
アニオンとして、Br、F、Cl、C2H5COO、OH、CH3COO、HCOO、CH3SO3、CO3、PO4、HPO4、WO4、iC3H7COO、O3S(CH2)2SO3、sC4H9COO、NO3、(CH3)2CH(NH2)2COO、nC3H7SO3、CF3COO、CrO3、SO4が挙げられる。
また、アルキルとして、nブチル、isoブチル、nペンチル、isoペンチル、nプロピル、isoプロピル、エチル、メチル、nヘキシル、isoヘキシル、nヘプチル、isoヘプチル、isoブチル等が挙げられる。
融点調整剤として臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを添加する蓄熱主剤としては、例えば、臭化テトラnブチルアンモニウムが挙げられる。蓄熱主剤の臭化テトラnブチルアンモニウムに、融点調整剤として臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを添加することにより、蓄熱剤の融点を蓄熱主剤の臭化テトラnブチルアンモニウム単独の調和融点12℃から、添加の割合に応じて連続的に変化させ、調整することができる。
表6に蓄熱主剤の臭化テトラnブチルアンモニウム調和濃度水溶液と、融点調整剤の臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム調和濃度水溶液との重量比率と、融点と潜熱量の関係の一例を示す。例えば、臭化テトラnブチルアンモニウム調和濃度水溶液と臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの調和濃度水溶液を50:50に混合すると融点は9.4℃に、75:25に混合するとおよそ10.7℃となり、このように蓄熱主剤と融点調整剤の融点の間で任意に融点を調整することが可能である。なお、融点調整剤を添加した蓄熱剤の総潜熱量は蓄熱主剤の臭化テトラnブチルアンモニウム水和物と融点調整剤の臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物それぞれ単独の潜熱量に配合組成比率を乗じた総和とほぼ等しいことを確認している。
また、他の融点調整剤として臭化トリnブチルisoペンチルアンモニウムを用いることも可能であり、表6に蓄熱主剤の臭化テトラnブチルアンモニウム調和濃度水溶液と、融点調整剤の臭化トリnブチルisoペンチルアンモニウム調和濃度水溶液とを50:50に混合した一例を示す。蓄熱剤の融点を蓄熱主剤の臭化テトラnブチルアンモニウム単独の調和融点12℃から、14.4℃に調整することができる。
Figure 2007186667
なお、上記は蓄熱主剤が臭化テトラnブチルアンモニウムである場合の融点調整剤として臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムまたは臭化トリnブチルisoペンチルアンモニウムを添加することを述べているが、蓄熱主剤としては臭化テトラnブチルアンモニウムに限らず、テトラアルキルアンモニウム化合物から適宜選択できることは言うまでもなく、融点調整剤の添加量を調整することにより効果的に蓄熱剤の融点を調整することができる。
本発明のトリnブチルアルキルアンモニウム塩の水和物を含有してなる過冷却防止剤の特性について、以下に述べる。
蓄熱主剤に、トリnブチルアルキルアンモニウム塩を適量添加することにより蓄熱主剤の過冷却を効果的に防止することができる。
蓄熱主剤が例えばテトラアルキルアンモニウム化合物水和物の場合には、トリnブチルアルキルアンモニウム塩は蓄熱主剤の類縁物質であるので、効果的な過冷却防止能を有している。
過冷却防止剤のトリnブチルアルキルアンモニウム塩の融点より融点が低い別のトリnブチルアルキルアンモニウム塩又はその水和物が蓄冷主剤であっても、効果的な過冷却防止能を発揮する。
つまり、テトラアルキルアンモニウム化合物やトリnブチルアルキルアンモニウム塩又はその水和物の蓄熱主剤に、過冷却防止剤として蓄熱主剤の融点より高い融点のトリnブチルアルキルアンモニウム塩を添加した水溶液を冷却すると、先に過冷却防止剤の水和物が生成され、蓄熱主剤の水和物生成の核として作用し過冷却を防止することができる。
蓄冷主剤となるテトラアルキルアンモニウム化合物の具体例としては、例えば、臭化テトラnブチルアンモニウムが挙げられ、過冷却防止剤として臭化トリnブチルisoペンチルアンモニウムを用いる場合について説明する。
蓄熱主剤の臭化テトラnブチルアンモニウムの調和濃度水溶液(融点12℃)に、過冷却防止剤として臭化トリnブチルisoペンチルアンモニウムの調和濃度水溶液(融点17℃)を1〜20重量%の範囲で添加して蓄熱剤を調製することにより、蓄熱剤の過冷却を防ぎ短時間で確実に蓄熱剤の水和物を生成することができる。さらに蓄熱剤の凝固、融解が繰返されても分離することなく、過冷却防止能を維持することができる。
同様に、蓄熱主剤の臭化テトラnブチルアンモニウムの調和濃度水溶液に、過冷却防止剤としてフッ化トリnブチルisoペンチルアンモニウムの調和濃度水溶液(融点27℃)を添加したり、蓄熱主剤の臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの調和濃度水溶液(融点6℃)に、過冷却防止剤として臭化トリnブチルisoペンチルアンモニウムの調和濃度水溶液(融点17℃)を添加して蓄熱剤を調製することにより、蓄熱剤の過冷却を防ぐことができる。
また、過冷却防止剤としてのトリnブチルアルキルアンモニウム塩の添加方法は、調和濃度水溶液を添加する方法だけに限らず、粉末のトリnブチルアルキルアンモニウム塩を添加してもよい。
なお、上記は蓄熱主剤が臭化テトラnブチルアンモニウムや臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムである場合の過冷却防止剤として、トリnブチルアルキルアンモニウム塩を添加することを述べているが、蓄熱主剤としてはこれらに限らず、テトラアルキルアンモニウム化合物やトリnブチルアルキルアンモニウム塩から適宜選択できることは言うまでもなく、過冷却防止剤の添加量に関しては、過冷却防止剤を蓄熱主剤に対して1〜20重量%添加することが好ましく、これにより効果的に過冷却を防止することができ、過冷却防止能を維持することができる。
なお、過冷却防止剤の添加量が下限値未満であると、蓄熱主剤の水和物生成の核となって過冷却を防止する効果が不足する。他方、添加量が上限値を超えると、過冷却防止剤により蓄熱主剤である水和物の融点が強く影響を受け融点が上昇するので、不具合が生じる。
上記の過冷却防止剤の添加率の数値範囲は一例であって、本発明に係る過冷却防止剤の添加率はこれに限定されないことは言うまでもない。
上記の実施の形態では、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの水和物を主成分とする蓄熱剤、熱輸送媒体、融点調整剤および過冷却防止剤について述べたが、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの水和物は融点温度が6℃と氷の融点0℃より高く、また高い潜熱量を有しているので、従来氷やパラフィンが用いられていた生鮮魚貝類や生鮮食品を保冷するための保冷剤として用いることができる。特に従来氷を用いていた場合は保冷温度が0℃と低すぎて生鮮魚貝類の食味を損なうことがあったが、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物や、これを主剤として他の成分を配合した組成物を保冷剤とすることにより、生鮮魚貝類に対して最適な保冷温度である0℃より高く10℃より低い温度範囲で保冷することができる保冷剤を提供できる。
保冷剤をプラスチック製容器や袋体に充填して保冷材を作成して、予めこの保冷材を冷却しておき、断熱性のある壁材で構成された保冷容器に生鮮魚貝類や生鮮食品と共に収納して流通、貯蔵に供する。
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物を主成分とする保冷剤の特性について、表7に示し以下に詳細に説明する。
Figure 2007186667
1)臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム調和濃度水和物(保冷剤実施例1)
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム(TBPAB)水和物の調和融点(6℃)における潜熱量は193J/gであり、大きい潜熱量を有しているので、凝固した水和物が融解し蓄熱した冷熱を放出し終わるまでの時間が長く、融解温度に維持される時間が長いので、保冷剤として用いる場合に被保冷物を適冷温度に維持する時間が長く優れている。
また、水和物が融解した水溶液の比熱は3.7J/g・Kと、大きいため昇温しにくく、水溶液の温度がその雰囲気温度に達するまでの時間が長く、保冷材として用いる場合に被保冷物を適冷温度に近い温度に長時間保持することができる。
また、凝固融解を少なくとも1000回繰返しても相分離や蓄熱性能の低下がないことを確認した。また、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物は、毒性もなく生鮮食品の保冷剤として好ましい。
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物はこのような特性を有しているため、0℃より高く10℃未満の範囲に適冷温度を有する被保冷物の保冷剤として好適である。
2)臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム調和濃度未満水和物(保冷剤実施例2)
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの調和濃度未満の水溶液を冷却して生成した水和物では、融解温度領域を調和融点より低い温度の領域にすることができるので、被保冷物を一定の温度領域に保冷可能な保冷剤として用いることができる。
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム(TBPAB)の調和濃度未満である例えば18%水溶液を冷却して生成した調和濃度未満水和物の融解開始温度は4℃で、融解温度は融解の進行に伴い次第に高くなるように変化し、融解終了温度は6℃である。その融解時の潜熱量は144J/gで、水和物が融解した水溶液の比熱は3.8J/g・Kであって、大きいため昇温しにくい。また、凝固融解を少なくとも1000回繰返しても相分離や蓄熱性能の低下がないことを確認した。調和濃度水和物にくらべて潜熱量は少なくなるが、4〜6℃の範囲で保冷可能な保冷剤として用いることができる。
3)臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムと臭化テトラnブチルアンモニウムの混合水和物(保冷剤実施例3,4)
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの調和濃度水和物(TBPAB、融点6℃)と、臭化テトラnブチルアンモニウムの調和濃度水和物(TBAB、融点12℃)とを重量比率で50:50と30:70の比率で混合した混合水和物の融解温度、潜熱量、水溶液の比熱を調べ、表7に示した。
表7に示すように融解温度は8〜9℃で、潜熱量は184〜186J/gであって大きい潜熱量を有していて、水和物が融解した水溶液の比熱は3.6〜3.7J/g・Kであって、大きいため昇温しにくく、また、凝固融解を少なくとも1000回繰返しても相分離や蓄熱性能の低下がないことを確認した。8〜9℃の温度範囲で保冷可能な保冷剤として用いることができる。
上記のように臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物や、これを主剤として他の成分を配合した組成物を保冷剤として、さらに該保冷剤をプラスチック製容器や袋体に充填して保冷材を提供することができる。
保冷剤を充填する容器または袋体としては、保冷材の容器または袋体として用いられている公知のものを用いることができる。例えば、金属箔(アルミニウム箔など)をラミネートした合成樹脂フィルムからなるフレキシブルな材質のシートで形成された袋体や容器(ゼリー飲料や詰め替え用シャンプーが入っているような袋・パック)、プラスチック成形容器などが挙げられる。
保冷剤をプラスチック製容器や袋体に充填して保冷材を作成して、予めこの保冷材を冷却しておき、保冷容器に被保冷物と共に収納して流通、貯蔵に供することができる。
臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム調和濃度水和物(保冷剤実施例1)と、臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムの調和濃度水和物と臭化テトラnブチルアンモニウムの調和濃度水和物とを重量比率で50:50に混合した混合水和物(保冷剤実施例3)の保冷性能を評価した。
保冷剤実施例1、3と比較例としてパラフィン(nテトラデカン)それぞれ3kgをポリエチレン製袋に充填した保冷材を、0℃に冷却して凝固させ、保冷材を真空断熱パネルを用いた容量20lの保冷箱の底面に装着し、保冷箱を30℃の恒温室に置き、保冷箱内部の温度の経時変化を測定した。
図9、図10はこの結果を示すグラフであり、図9が保冷剤実施例1、3を示し、図10が比較例を示している。図9、図10においては縦軸が温度、横軸が経過日数を示している。
保冷剤実施例1では6℃で一定のまま、3.5日経過後に保冷剤の融解が終了し温度が上昇した。
保冷剤実施例3では8℃で一定のまま、3.5日経過後に保冷剤の融解が終了し温度が上昇した。
比較例では6℃で一定のまま、2.7日経過後に保冷剤の融解が終了し温度が急上昇した。
保冷剤実施例1,3は比較例にくらべて、保冷時間が長く、また融解後の温度上昇が小さく保冷剤として好適である。
また、上記保冷剤は冷却防止剤として用いることもできる。周囲環境が保存対象物より低温の時に、保存対象物の周囲に融解している保冷剤を容器に充填した冷却防止材を配置し、水溶液から水和物を生成して凝固する際に周囲環境からの冷熱を吸熱して保存対象物の冷却を防止する冷却防止剤としても適用できる。
冬季に生鮮野菜、食品の凍結を防止する冷却防止剤として用いることができる。
本発明の一実施の形態に係る臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム(TBPAB)と臭化テトラnブチルアンモニウム(TBAB)とを含有する混合水溶液の融解温度と潜熱量のグラフである。 実施例1に係る空調設備の説明図である。 実施例2に係る空調設備の説明図である。 実施例3に係る空調設備の説明図である。 実施例4に係る包接水和物スラリ製造装置の説明図である。 実施例5に係る水和物スラリ製造装置を組み込んだ空調システムの説明図である。 実施例6に係る蓄熱ユニットを設置した既設ヒートポンプ式空調装置の説明図である。 実施例7に係る蓄熱装置の説明図である。 本発明の保冷剤実施例1,3の保冷剤としての特性を示すグラフである。 保冷剤実施例1,3の比較例の保冷剤としての特性を示すグラフである。

Claims (22)

  1. トリnブチルアルキルアンモニウム塩と水を含有してなることを特徴とする蓄熱性物質。
  2. 臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムと水を含有してなることを特徴とする蓄熱熱性物質。
  3. 臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物を主成分とすることを特徴とする蓄熱熱性物質。
  4. トリnブチルアルキルアンモニウム塩と水を含有してなることを特徴とする蓄熱剤。
  5. 臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムと水を含有してなることを特徴とする蓄熱剤。
  6. 臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物を主成分とすることを特徴とする蓄熱剤。
  7. 臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムと、テトラアルキルアンモニウム化合物及び水を含有してなることを特徴とする蓄熱剤。
  8. 臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物と、テトラアルキルアンモニウム化合物の水和物を含有してなることを特徴とする蓄熱剤。
  9. 臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物と、臭化テトラnブチルアンモニウム水和物を含有してなることを特徴とする蓄熱剤。
  10. 臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムが、トリブチルアミンと1ブロモペンタンとから合成されることを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の蓄熱剤。
  11. 過冷却防止剤を添加したことを特徴とする請求項4〜10のいずれか一項に記載の蓄熱剤。
  12. 腐食抑制剤を添加したことを特徴とする請求項4〜11のいずれか一項に記載の蓄熱剤。
  13. トリnブチルアルキルアンモニウム塩と水を含有してなることを特徴とする熱輸送媒体。
  14. 臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムと水を含有してなることを特徴とする熱輸送媒体。
  15. 臭化トリnブチルnペンチルアンモニウム水和物を主成分とすることを特徴とする熱輸送媒体。
  16. 臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを含む水溶液であって、冷却すると水和物を生成してスラリとなることを特徴とする熱輸送媒体。
  17. 臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムが、トリブチルアミンと1ブロモペンタンとから合成されることを特徴とする請求項14〜16のいずか一項に記載の熱輸送媒体。
  18. トリnブチルアルキルアンモニウム塩を含有してなることを特徴とする蓄熱剤用融点調整剤。
  19. 臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを含有してなることを特徴とする蓄熱剤用融点調整剤。
  20. トリnブチルアルキルアンモニウム塩を含有してなることを特徴とする蓄熱剤用過冷却防止剤。
  21. 臭化トリnブチルisoペンチルアンモニウムを含有してなることを特徴とする蓄熱剤用過冷却防止剤。
  22. トリブチルアミンと1ブロモペンタンとから臭化トリnブチルnペンチルアンモニウムを合成し、これを蓄熱剤または熱輸送媒体の主剤とすることを特徴とする蓄熱剤または熱輸送媒体の主剤の製造方法。
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