JP2009074689A - 給排水用配管材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、鱗片状の熱膨張性黒鉛を1〜10重量部の割合で含む樹脂組成物が管状に押出成形されて形成される。鱗片状の熱膨張性黒鉛が配管材の長手方向断面(A)における長手方向軸(B)に対してなす角度と横断面(C)における中心(D)を通る線(E)に垂直な軸(F)に対してなす角度とが両方ともに、長手方向軸(B)と垂直な軸(F)とを90度としたときに80〜100度の範囲内で配向するものの比率が70%以上であることにより、鱗片状の熱膨張性黒鉛が、配管材の円周方向及び長手方向に沿って設けられている。
【選択図】図10
Description
一方、建築物内には、配管(電線管、排水管、ダクト等)が設置されるが、かかる配管は、上記のような防火区画を貫通するものもある。
上記防火区画に、配管等を貫通させる貫通孔(以下、「区画貫通部」と記す)を設けた場合、火災が発生すると、この区画貫通部を介して、火災が発生した部屋から防火区画を挟んだ隣の部屋に、炎や煙がすぐに入り込み、短時間で大きな火災事故を招く恐れがある。
そのため、建物内の区画貫通部を貫通する配管材は、区画貫通耐火試験に合格し、国土交通省認定または消防評定を受けたものしか設置できないと建築基準法に定められている。
また、この区画貫通部には、配管を貫通させた後、前記区画貫通部と配管との間に隙間が生じないように、隙間を不燃材料であるモルタルなどにより閉塞する防火措置工法が行われている。
一方、配管材が、合成樹脂製である場合は、金属製のものに比べて、軽量で取り扱い性に優れ、接合が簡単であるなどのメリットが大きいが、耐熱性、耐火性に劣る。したがって、火災時に、配管材が、燃焼によって消失したり、熱変形して、区画貫通部と配管材との間に隙間が生じて、防火区画の一方の側で発生した熱、火炎、煙等が他方側へ到達してしまう恐れがある。
一方、上記特許文献3の耐火性樹脂組成物の場合、無機充填剤と可塑剤とが多量に配合されている。そのため、これらの耐火性樹脂組成物から配管材を成形した場合には、管として必須の条件である機械的強度が得られない。
(1)配管材の燃焼速度を遅延させて、非加熱側に火炎を噴出させないこと。
燃焼速度を遅延させるには、配管材そのものの燃焼を防止するとともに、燃焼時に管壁を熱膨張させ、配管材の貫通部内への熱の流入をできるだけ防ぐようにすることが望ましい。すなわち、加熱側において、配管材を閉塞させて遮炎することが最良である。また、膨張後の残渣が脱落しないことがより好ましい。
(2)燃焼時に配管材とその外周のモルタルとのシールを保って、非加熱側へ発煙させないこと。
すなわち、請求項1記載の発明の給排水用配管材は、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、鱗片状の熱膨張性黒鉛を1〜10重量部の割合で含む樹脂組成物が管状に押出成形されており、鱗片状の熱膨張性黒鉛が配管材の長手方向断面(A)における長手方向軸(B)に対してなす角度と横断面(C)における中心(D)を通る線(E)に垂直な軸(F)に対してなす角度がともに、長手方向軸(B)と垂直な軸(F)とを90度としたときに80〜100度の範囲内で配向するものの比率が70%以上であることにより、鱗片状の熱膨張性黒鉛が、配管材の円周方向及び長手方向に沿って設けられていることを特徴とする。
請求項3の発明の給排水用配管材の製造方法は、請求項1記載の建築用配管材を製造する製造方法として、ブリッジレスの押出機を使用することを特徴とする。
使用される床材としては、上記PC板の他に、
例えば、
1)構造用合板(厚さ12mm)の上に、石膏ボード(厚さ9.5mm)を張り、下面に強化石膏ボード(厚さ15mm)を張った木製枠組造の部材。
2)構造用合板(厚さ12mm)の上に、石膏ボード(厚さ12.5mm)を張り、下面に強化石膏ボード(厚さ12.5mm)を2枚張った木製枠組造の部材
3)厚さ100mm以上の軽量発泡コンクリート(ALC)板
4)厚さ70mm以上のプレキャストコンクリート(PC)板
などが用いられるが、特に、厚さ100mm以上のALC板、PC板が好適である。
配管材と区画貫通部との間隙はモルタルで閉塞した。配管材は、一端部を床材の加熱側の面から加熱側に300mm露出させ、配管材の他端部を床材の非加熱側の面から非加熱側に800mm露出させた。
また、耐火試験炉は、床材の片面を加熱できる構造のものとし、床材の加熱側の片面を試験面としたときに、ISO834−1の規定に従う下記の(式1)に基づく温度の時間的変化を床材の試験面の全面にほぼ一様に与えられるようなものとした。
つまり、耐火試験炉に、炉内温度を測定するための熱電対(以下、「炉内熱電対」という)の熱接点1〜10個を床材の試験面に対して均等に配置されるように、床材から100〜300mm離れた位置に設置した。
そして、ISO834−1の規定に従って、熱電対によって測定した温度(以下、「加熱温度」という)の時間経過が、下記の(式1)で表される数値となるように、耐火試験炉を加熱した。
T=345log10(8t+1)+20 (式1)
この(式1)において、Tは平均炉内温度(℃)、tは試験の経過時間(分)とする。また、温度測定は、1分以内ごとに行うものとした。
燃焼後の管材の最小内径部における管内断面積S2は、耐火試験開始後、区画貫通部と配管材との隙間から非加熱側に煙が出た時点において、耐火試験炉の燃焼をストップした後、即座に床材パネルを耐火炉よりはずし、管が冷却された後に、閉塞された管の加熱側から観察し、投影面積をS2とする。S2の測定方法としては、以下のように種々挙げられる。
・加熱側から観察した写真を用いた画像解析する方法。
・投影部を紙にスケッチし、スケッチした部分を切り抜いて重さを測定し、すでに単位面積あたりの重さがわかっている紙の値から、比例計算で算出する方法。 煙が2時間出なかった場合は、2時間後に試験をストップし、上記の方法で測定する。
煙が2時間出なかった場合は、2時間後に試験をストップし、上記の方法で測定する。
本発明において、熱膨張性黒鉛の膨張容積とは、熱膨張後における熱膨張性黒鉛1gあたりの容積のことである。
そして、熱膨張性黒鉛の膨張容積は、以下の方法により求められる。
1)試料1gを事前に加熱炉内で20分以上加熱していた500ccのビーカーに入れて、加熱炉(炉内温度:1000℃)内で加熱する。
2)30秒経過後、加熱炉内からビーカーを取り出す。
3)ビーカー内の試料を室温まで冷却する。
4)膨張後の試料の重量と容積とを測定する。
5)(膨張後の試料の容積)/(膨張後の試料の重量)を算出する。
請求項3記載の発明において、熱膨張性黒鉛の膨張容積を100〜250(ml/g)
とした理由としては、熱膨張性黒鉛の膨張容積が100(ml/g)未満であると、膨張
容積が小さく十分な耐火性を発現できず、耐火性を上げるために大量の熱膨張性黒鉛を添加する必要があり、物性や成形性等に不具合が生じる恐れがあるからである。一方、熱膨張性黒鉛の膨張容積が250(ml/g)を超えると、加熱により組織が熱膨張しすぎて
、その形状を保持できずに残渣が脱落し、耐火性が低下してしまう恐れがあるからである。なお、請求項3記載の発明で用いられる熱膨張性黒鉛の膨張容積は、好ましくは120〜230(ml/g)であり、さらに好ましくは140〜220(ml/g)である。
請求項2記載の発明で用いられる熱膨張性黒鉛の平均粒径は、一般的な大きさのものが用いられ、100〜400μmである。
したがって、ハロゲン化合物であるポリ塩化ビニル系樹脂に、熱膨張性黒鉛を入れながら、相乗効果の高いアンチモン化合物を混入すると、難燃性の相乗効果が非常に高くなり、燃焼遅延効果が著しく発揮される。
上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。外部滑剤としては特に限定されず、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックスなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤などが挙げられる。
なお、成形温度は、熱膨張性黒鉛の膨張開始温度以下で成形することが好ましい。成形温度は、得られた成形体の引張強度や耐衝撃性に影響を及ぼすことから、上記熱膨張性黒鉛の膨張開始温度は180℃以上が好ましく、さらに好ましくは200℃以上である。
このように、本発明の建築用配管材は、それ自体が優れた耐火膨張性を備えており、燃焼時には配管材自体が膨張するとともに、燃焼速度の遅延効果を発揮して、区画貫通部で仕切られた他の側に火炎や煙が回るのを阻止することができる。そのため、従来のように、配管材の周囲に他の耐火部材を設ける必要がない。
また、施工時の仮配管時に、位置確認のためにマーキングするなどの作業が不要となり、単に、区画貫通部に前記建築用配管材を挿通させるだけでよいので、作業を大幅に軽減でき、現場施工性を飛躍的に向上させることができる。
さらに、本発明の建築用配管材は、塩化ビニル樹脂製パイプの外周に繊維強化モルタルを被覆した、いわゆる耐火二層管に比べて、管外径が大きくならないので、貫通口を複数設ける場合に、各貫通口の間隔を小さく取れる上、床下に配管する場合に、勾配がとりやすくなるなど、画期的に施工性が向上する。
また、熱膨張性黒鉛は、それ自体が燃えにくく、かつ熱により膨張して断熱効果が発現する。また、熱膨張性黒鉛の膨張容積が100〜250(ml/g)の範囲であるので、燃焼時には効果的に膨張する上、熱膨張性黒鉛が適度な割合で配合されているので、残渣の形状保持性に優れており、燃焼速度の遅延がさらに効果的に行われる。
そして、燃焼時には、ポリ塩化ビニル系樹脂が、脱塩酸を繰り返して、炭化が促進され強固な残渣を形成するため、熱膨張性黒鉛との相乗効果が大きくなる。
また、無機充填剤をポリ塩化ビニル系樹脂に配合したものでは、無機充填剤が燃焼時に骨材的な働きをして、膨張した管壁を強固に保つことができるので、残渣が脱落しにくく、管の燃焼速度を効果的に遅延させることができる。
その結果、建築用配管材を床面に貫通させた場合には、床下面で1000℃以上の熱が加わりながらも、床下面で残渣が脱落せず、管を閉塞するに近い状態が長時間続く。つまり、燃焼時に管内断面積が小さくなることで、管内を熱気が上昇するのを防止し、床面に対して非加熱側の配管材の温度上昇を緩和することができ、その結果、配管材が燃えだしたり、配管材が軟化してモルタル界面との隙間が生じて非加熱側に発煙したりするのを防止でき、遮炎性、遮熱性、遮煙性が飛躍的に向上する。
さらに、本発明の建築用配管材は、管として十分な機械的物性を備えている上、成形性に優れており、例えば、射出成形や押出成形などによって、高い寸法精度で連続的に生産できる。
以下、実施例を挙げて詳細に説明する。
また、この建築用配管材Pから、熱膨張性評価および性能評価に用いる試験片を作製した。試験片は、前記建築用配管材Pの管壁の一部を切り出した後、荷重200kgf、190℃で3分間プレス成形して厚さ3mmのプレス板を1cm角に切り作製した。
試験片について耐火試験を実施した。試験方法としては、まず、試験片を500℃に加熱した電気炉内に入れて、40分間放置した。そして、試験片を炉から取り出して放冷した後に、試験片の厚みを測定した。
耐火試験後の試験片の厚み(膨張後厚み)が4mm以上であれば合格、4mm未満であれば不合格とした。
得られた試験片について、JISK7113に規定される引張試験(評価温度23℃)を行った。なお、管としての実用的な性能を満たしているかを判定するため、23℃で引張強度が45(MPa)以上のものを◎(優秀)、30(MPa)以上のものを○(合格)、30(MPa)未満のものを×(不合格)とした。
図1に示す耐火試験炉Xにより、耐火試験(平成12年6月1日に施行された改正建築基準法の耐火性能試験の評価方法,ISO834-1に従う)を実施した。
床材Yには、プレキャストコンクリート板(長さ1200mm,幅600mm,厚さ100mm)を使用した。また、防火措置工法としては、建築用配管材Pと区画貫通部Rとの間隙をモルタルで閉塞した。また、建築用配管材Pの一端部を床材Yの加熱側の面から加熱側に300mm露出させ、建築用配管材Pの他端部を床材Yの非加熱側の面から非加熱側に800mm露出させた。なお、耐火試験炉Xの加熱室Zの内部の側壁には、バーナーV,Vが設置されている。また、加熱室Zの内部には、炉内熱電対Qの熱接点2個が、床材の試験面に対して均等に配置されるように、床材Yから300mm離れた位置に設置されている。さらに、耐火試験炉Xには、図示していないが、炉内圧力を測定する装置が設置されている。
そして、加熱開始後、区画貫通部Rと建築用配管材Pとの隙間から煙が出るまでの時間を測定した。煙の発生の有無については、目視で判断した。
さらに、観察用窓Gから建築用配管材Pの燃焼の様子を目視観察し、区画貫通部Rと建築用配管材Pとの隙間から煙が出た時点で耐火試験炉Xの燃焼をストップした。
そして、図7に示すように、燃焼前の建築用配管材Pの加熱側端部における管内断面積をS1とし、図8に示すように、燃焼後の建築用配管材Pの最小内径部における管内断面積をS2として、以下の計算式により、燃焼後の建築用配管材Pの管内の閉塞度合いを燃焼後管内断面積割合として算出した。
燃焼後管内断面積割合=(S2/S1)×100
なお、管内断面積S1は、耐火試験開始前に、管材の内寸を2方向(直角)で測定し、平均内径を出した後、算出した。
燃焼後の管材の最小内径部における管内断面積S2は、耐火試験開始後、区画貫通部と配管材との隙間から非加熱側に煙が出た時点において、耐火試験炉の燃焼をストップした後、即座に床材パネルを耐火炉よりはずし、管が冷却された後に、閉塞された管の加熱側から観察し、投影面積をS2とした。
S2の測定方法は、加熱側から観察した写真で、管内最小内径部を紙にスケッチし、スケッチした部分を切り抜いて重さを測定し、すでに面積と重さがわかっている紙の値から、比例計算で算出した。 煙が2時間出なかった場合は、2時間後に試験をストップし、上記の方法で測定した。
(表2)に示すように、(比較例1)〜(比較例5)は、すべて(耐火性評価)が不合格であった。
したがって、(熱膨張性評価)(性能評価)(耐火性評価)の全てを満足する建築用配管材を得るためには、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、膨張容積が100〜250(ml/g)である熱膨張性黒鉛を1〜10重量部配合させる必要があることがよくわかる。
なお、熱膨張性黒鉛が10重量部を超えると、図2に示すように、加熱により組織が熱膨張しすぎて、その形状を保持できずに残渣が脱落してしまった。
また、作製した建築用配管材Pから性能評価に用いる試験片を作製した。試験片は、前記建築用配管材Pの管壁の一部を切り出した後、荷重200kgf、190℃で3分間プレス成形して得られた厚さ3mmのプレス板より作製した。
試験片について耐火試験を実施した。試験方法としては、まず、試験片を500℃に加熱した電気炉内に入れて、40分間放置した。そして、試験片を炉から取り出して放冷した後に、試験片の厚みを測定した。耐火試験後の試験片の厚み(膨張後厚み)が4mm以上であれば合格、4mm未満であれば不合格とした。
得られた試験片について、JISK7113に規定される引張試験(評価温度23℃)を行った。なお、管としての実用的な性能を満たしているかを判定するため、23℃で引張強度が45(MPa)以上のものを◎(優秀)、30(MPa)以上のものを○(合格)、30(MPa)未満のものを×(不合格)とした。
また、押出成形により所望の品質の建築用配管材Pを製造できるかを判定するため、良好に押出成形ができたものを○、押出成形ができなかったものを×、押出成形時に異変が見られたものを△とした。
図1に示す耐火試験炉Xにより、耐火試験(平成12年6月1日に施行された改正建築基準法の耐火性能試験の評価方法,ISO834-1に従う)を実施した。
床材Yには、プレキャストコンクリート板(長さ1200mm,幅600mm,厚さ100mm)を使用した。また、防火措置工法としては、建築用配管材Pと区画貫通部Rとの間隙をモルタルで閉塞した。また、建築用配管材Pの一端部を床材Yの加熱側の面から加熱側に300mm露出させ、建築用配管材Pの他端部を床材Yの非加熱側の面から非加熱側に800mm露出させた。なお、耐火試験炉Xの加熱室Zの内部の側壁には、バーナーV,Vが設置されている。また、加熱室Zの内部には、炉内熱電対Qの熱接点2個が、床材の試験面に対して均等に配置されるように、床材Yから300mm離れた位置に設置されている。さらに、耐火試験炉Xには、図示していないが、炉内圧力を測定する装置が設置されている。
そして、加熱開始後、区画貫通部Rと建築用配管材Pとの隙間から煙が出るまでの時間(発煙時間)を測定した。消防法の令8区画の判定基準に従って、発煙時間が130分以上の場合を◎(優秀)、120分以上の場合を○(合格)、120分未満の場合を×(不合格)とした。煙の発生の有無については、目視で判断した。
さらに、観察用窓Gから建築用配管材Pの燃焼の様子を目視観察し、区画貫通部Rと建築用配管材Pとの隙間から煙が出た時点で耐火試験炉Xの燃焼をストップした。そして、図7に示すように、燃焼前の建築用配管材Pの加熱側端部における管内断面積をS1とし、図8に示すように、燃焼後の建築用配管材Pの最小内径部における管内断面積をS2として、以下の計算式により、燃焼後の建築用配管材Pの管内の閉塞度合いを燃焼後管内断面積割合として算出した。
燃焼後管内断面積割合=(S2/S1)×100
なお、管内断面積S1は、耐火試験開始前に、管材の内寸を2方向(直角)で測定し、平均内径を出した後、算出した。
燃焼後の管材の最小内径部における管内断面積S2は、耐火試験開始後、区画貫通部と配管材との隙間から非加熱側に煙が出た時点において、耐火試験炉の燃焼をストップした後、即座に床材パネルを耐火炉よりはずし、管が冷却された後に、閉塞された管の加熱側から観察し、投影面積をS2とした。
S2の測定方法は、加熱側から観察した写真で、管内最小内径部を紙にスケッチし、スケッチした部分を切り抜いて重さを測定し、すでに面積と重さがわかっている紙の値から、比例計算で算出した。
また、残渣の伸長長さLは、耐火試験開始後、区画貫通部と配管材との隙間から非加熱側に煙が出た時点で、耐火試験炉の燃焼をストップし、即座に床材パネルを耐火炉よりはずし、管が冷却された後に、床材の加熱側の面に対して垂直に測定した。
なお、煙が2時間出なかった場合は、2時間後に耐火試験をストップし、S2および残渣の伸長長さLを上記の方法で測定した。
(表4)に示すように、(比較例6)は、熱膨張性黒鉛が全く配合されていなかったため、配管材が燃え尽きてしまった。その結果、加熱側における配管材の温度上昇が速く、発煙時間が早かった。(比較例7)は、熱膨張性黒鉛の配合割合が大きすぎたため、配管材が膨張した後、その形状を保持できずに落下落してしまった。その結果、加熱側における配管材の温度上昇が速く、発煙時間が早かった。(比較例8)は、安定剤の配合割合が小さく、無機充填剤の配合割合が大きすぎたため、押出成形性に劣る上、引張強度が若干低くなった。
これに対して、(実施例17)〜(実施例29)は、管として必要な引張強度を有することはもちろんのこと、発煙時間が飛躍的に長くなっている。その理由は、(実施例17)〜(実施例29)は、残渣によって管内断面が閉塞され、管の温度上昇が抑えられたことが考えられる。
また、(実施例18)(実施例19)は、(実施例17)(実施例20)に比べて管内断面積だけでなく、残渣Hの伸長長さにおいても優れている。結果として発煙時間が向上した。
また、(実施例22)(実施例23)は、(実施例21)(実施例24)に比べて管内断面積だけでなく、残渣Hの伸長長さにおいても優れている。結果として発煙時間が向上した。
また、(実施例26)〜(実施例28)は、(実施例25)(実施例29)に比べて管内断面積だけでなく、残渣Hの伸長長さにおいても優れている。結果として発煙時間が向上した。
なお、(実施例25)は、安定剤の配合割合が少なかったため、押出成形時に若干偏流が起こった。
具体的には、(比較例6)に示す組成物からなる配管材は、図4に示すように、床面より下部に突出している部分が脱落した後、樹脂が流れ落ちて加熱側の端部を一旦閉塞するものの、熱膨張性黒鉛が配合されていないため耐火性がなく、再び加熱側の配管材の端部が脱落してしまった。その結果、配管材の貫通部内に熱気が流入し、床構造内にある部分が燃え尽きて、非加熱側に発煙してしまった。
(比較例7)に示す組成物からなる配管材は、熱膨張性黒鉛が多量に配合されているため、加熱により組織が膨張しすぎて、その形状を保持できなくなり、脱落してしまった。
また、(比較例8)に示す組成物からなる配管材は、無機充填剤が多量に配合されているため、図5に示すように、床面より下部に突出している部分が脱落した後、残った部分が強固な残渣となって燃焼を遅延するものの、樹脂に高温流動性がなく、管内を閉塞できない。その結果、管内を通じて熱気が上昇し、配管材が熱により変形し、配管材とモルタルとのシール部分に隙間が生じて、非加熱側に発煙してしまった。
そして、さらに好ましい配合割合としては、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、膨張容積が100〜250(ml/g)の範囲である熱膨張性黒鉛を4〜7重量部、無機充填剤としての塩基性化合物1〜5重量部、安定剤を0.3〜5重量部の割合であることがわかった。
以上、実施例を提示して詳述したとおり、本実施形態の建築用配管材によれば、図6,図8に示すように、燃焼時には、耐火性樹脂組成物で構成された層が膨張して、建築用配管材の管内を閉塞するとともに、残渣Hが加熱側に伸長するため、床材Yで仕切られた他の側に火炎や煙が回るのを阻止することができる。
熱膨張性黒鉛の平均径の好ましい範囲は100〜400μmである。
粒径が小さいと、鱗片状が維持できず配向が効果的に達成されない。また、膨張度が小さく耐火性能に劣る。
径が大きいと、隣接する黒鉛同士が干渉し、配向が効果的に達成されない。
鱗片状の組成物を含む場合に、金型の流路に絞り部(レストリクタ)を設けることにより、効果的に鱗片状の組成物を配向させることが公知である。
ブリッジダイに絞り部(レストリクタ)を設けることも公知であるが、この場合には前述のようにブリッジ部で鱗片状の組成物の配向角度が変わってしまうので、ブリッジ部以外では効果的に配向させることができるが、均一に円周方向に鱗片状の熱膨張性黒鉛を配向させることができない。
いずれの場合にも、ブリッジレス金型より押出した軟化状態のパリソンを冷却水槽のフォーミングチューブ内に導いて冷却・賦形を行う。
フォーミングチューブを通過した後は、冷却水槽内にて直接水が散布されて冷却され、その後切断装置にて所望の長さに切断される。
図10(b)は、鱗片状の熱膨張性黒鉛のモデル図である。図11は、本発明の建築用配管材の断面写真である。厚み7mmの配管材であり、倍率10倍で撮影した。図12は、図11の模式説明図である。図13は、比較のための建築用配管材の断面写真である。厚み7mmの配管材であり、倍率10倍で撮影した。図14は、図13の模式説明図である。
黒鉛の配向角度と平均径は以下の測定方法で計測を行った。まず、管を押出方法または押出方向に垂直な方向で切断し、サンプルを作製した。次に断面をサンドペーパー等で平滑に磨き、マイクロスコープ(キーエンス製 VH―8000)で断面写真を撮影した。得られた画像データを適宜拡大し2値化させ、画像解析装置(ニレコ製 LUZEX AP )により、平均径と配向角度を測定した。
また、平均径については最大長さが50μm以上の黒鉛を対象とし、100個程度の各黒鉛の径を測定し、数平均径を算出したものである。
ブリッジを有する金型を使い押出成形を行った場合、断面を観察すると明らかに黒鉛の配向が他の部位と異なる所が認められる場合がある。
そこで、管の黒鉛配向角度を出すためには、管の全周に渡り断面写真を撮影し、全数で80°〜100°に配向した黒鉛の存在割合を算出した。
平均径については配向の影響はないため、任意の1箇所の測定で平均径を算出した。
熱膨張性黒鉛に含まれる硫酸は成形温度である190℃付近になると徐々に黒鉛の層間から発生する。この硫酸はスクリュー等の金属面を劣化させるため、黒鉛やその他配合剤が付着し易くなると考えられる。また、安定剤として使用されるステアリン酸鉛と硫酸が反応し、硫酸鉛となることで、より付着性が悪化することが判明した。
としては他にも塩基性のものなら効果があると考えられるが、NaOHのように塩基性が強いと塩ビが成形中に分解してしまい、炭酸カルシウムのように弱いと中和が不十分になるため、上記の3種類が好ましい。中和剤の必要添加量は中和能力によって変わるため、3つの配合剤で請求項を分けた。ハイドロタルトは5部程度が最適。1部未満だと効果がなく、10部超だと耐火性や物性が低下してしまう。3〜7部が好ましい。
ステアリン酸カルシウムは3部程度が最適。0.5部未満だと効果が無く、5部超だと耐火性が低下する。2〜4部が好ましい。
ステアリン酸塩類の添加することが知られているが、この方法を配管材の成形方に適用させても耐火性は向上しない。さらに耐火性を向上させ、安定的に耐火性を確保させる方法が望まれている。
・ 黒鉛の表面処理方法
湿式または乾式で黒鉛表面処理剤を付着させる。
黒鉛が粉砕すると耐火時の膨張性が低下するため、混合時の剪断力が小さい湿式の方が望ましい。乾式で処理する場合は処理剤がただ添加されただけの状態にならないようにするため、適宜加熱混合する。
2)表面付着量の測定方法
黒鉛を還元雰囲気で950℃加熱させた時の重量減少から表面付着量を測定する。膨張黒鉛は層間に揮発分を含むため、表面処理しない黒鉛と表面処理した黒鉛の差によって付着量を測定する。黒鉛に対して0.3〜5重量%であることが望ましい。
3)表面処理するもの
高級脂肪酸または高級脂肪酸の金属塩。望ましくはステアリン酸系。
H 残渣
Claims (3)
- ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、鱗片状の熱膨張性黒鉛を1〜10重量部の割合で含む樹脂組成物が管状に押出成形されており、鱗片状の熱膨張性黒鉛が配管材の長手方向断面(A)における長手方向軸(B)に対してなす角度と横断面(C)における中心(D)を通る線(E)に垂直な軸(F)に対してなす角度とが両方ともに、長手方向軸(B)と垂直な軸(F)とを90度としたときに80〜100度の範囲内で配向するものの比率が70%以上であることにより、鱗片状の熱膨張性黒鉛が、配管材の円周方向及び長手方向に沿って設けられていることを特徴とする給排水用配管材。
- 熱膨張性黒鉛の平均長さが、100〜400μmであることを特徴とする請求項1記載の給排水用配管材。
- 請求項1記載の給排水用配管材を製造する製造方法として、ブリッジレスの押出機を使用することを特徴とする給排水用配管材の製造方法。
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