JP2009074689A - 給排水用配管材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 配管材そのもので防火措置が可能な施工性に優れた給排水用配管材を提供することを目的としている。
【解決手段】 ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、鱗片状の熱膨張性黒鉛を1〜10重量部の割合で含む樹脂組成物が管状に押出成形されて形成される。鱗片状の熱膨張性黒鉛が配管材の長手方向断面(A)における長手方向軸(B)に対してなす角度と横断面(C)における中心(D)を通る線(E)に垂直な軸(F)に対してなす角度とが両方ともに、長手方向軸(B)と垂直な軸(F)とを90度としたときに80〜100度の範囲内で配向するものの比率が70%以上であることにより、鱗片状の熱膨張性黒鉛が、配管材の円周方向及び長手方向に沿って設けられている。
【選択図】図10

Description

本発明は、特に、建築物の仕切り部に貫通施工される耐火性に優れた給排水用配管材に関するものである。
建築物には、建物種類や仕様によって、防火区画が定められており、防火区画には、仕様に応じて、建築基準法によって定められている耐火構造または準耐火構造の床材や壁材が用いられる。建築基準法によって定められている耐火構造、準耐火構造の床材や壁材とは、その材質、構造が、国土交通大臣が定めたあるいは国土交通大臣の認定を受けたものであり、例えば、鉄筋コンクリート、鉄材によって補強されたコンクリートブロックまたは煉瓦造りまたは石造り、鉄材の両面を鉄網モルタルまたはコンクリートで覆ったもの、軽量発泡コンクリート、プレキャストコンクリート板、合板と石膏ボードまたは硬質木片セメント板または軽量気泡コンクリートなどの貼り合わせなどが挙げられる。
一方、建築物内には、配管(電線管、排水管、ダクト等)が設置されるが、かかる配管は、上記のような防火区画を貫通するものもある。
上記防火区画に、配管等を貫通させる貫通孔(以下、「区画貫通部」と記す)を設けた場合、火災が発生すると、この区画貫通部を介して、火災が発生した部屋から防火区画を挟んだ隣の部屋に、炎や煙がすぐに入り込み、短時間で大きな火災事故を招く恐れがある。
そのため、建物内の区画貫通部を貫通する配管材は、区画貫通耐火試験に合格し、国土交通省認定または消防評定を受けたものしか設置できないと建築基準法に定められている。
また、この区画貫通部には、配管を貫通させた後、前記区画貫通部と配管との間に隙間が生じないように、隙間を不燃材料であるモルタルなどにより閉塞する防火措置工法が行われている。
配管材が、金属製である場合は、それ自体に耐熱性、不燃性を有するので、上記のように、隙間を不燃材料であるモルタルなどにより閉塞するだけで十分な効果が認められるが、管の重量が重くなるため、運搬時や施工時の作業性に劣るという問題点がある。
一方、配管材が、合成樹脂製である場合は、金属製のものに比べて、軽量で取り扱い性に優れ、接合が簡単であるなどのメリットが大きいが、耐熱性、耐火性に劣る。したがって、火災時に、配管材が、燃焼によって消失したり、熱変形して、区画貫通部と配管材との間に隙間が生じて、防火区画の一方の側で発生した熱、火炎、煙等が他方側へ到達してしまう恐れがある。
そこで、例えば、合成樹脂製の配管材の外面にモルタルなどの防耐火被覆層を積層した耐火管が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このような耐火二層管は、異種材料を複合して形成したものであり、連続成形が困難で、生産性に劣るという問題点がある。また、外面をモルタルで被覆しているので、管の重量が非常に重くなるため、運搬時や施工時の作業性に劣るという問題点もある。さらに、管と継手の接合部分では、モルタル部分が完全に接触せず、隙間が必ず生じてしまう。その結果、この隙間を通して、樹脂管への延焼、熱や煙が非加熱部へ伝わる可能性がある。そこで、隙間部分を保護するために、隙間部分をシーリング剤で埋め戻したり、目地埋めテープを円周部分に貼り付けたりする後施工がなされている。しかしながら、このような施工は、煩雑であるばかりでなく、施工ばらつきも大きくなるため、一定の耐火性能が確保されにくい。
一方、合成樹脂製の配管材の外面に、耐火膨張性を備えたシート状被覆材を巻きつける防火措置工法も採用されている。そして、このようなシート状被覆材を構成する耐火性樹脂組成物としては、例えば、ゴムや熱可塑性エラストマーや液状ポリマーなどのベース樹脂に、無機系膨張剤として熱膨張性黒鉛を配合するとともに、形崩れ防止用樹脂としてポリカーボネート樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂などを配合したもの(例えば、特許文献2参照)、塩化ビニル系樹脂に、熱膨張性黒鉛、無機充填剤および可塑剤を配合するとともに、特定のリン化合物を配合したものも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかし、シート状被覆材を用いた防火措置工法の場合、一旦、合成樹脂製の配管材を仮配管して、シート状被覆材を巻きつける部位の位置決めを行った後に、シート状被覆材を配管材に巻きつけ、配管材の支持、固定を行ってから開口部をモルタルで埋め戻すようになっているため、作業工数が多く施工時間が長くかかる上、シート状被覆材を配管材に巻きつけた後は、配管の位置調整がやりにくいという問題がある。
そこで、耐火膨張性を有する樹脂組成物を用いて配管材を直接製造すれば、上記問題は解決されるのであるが、上記特許文献2の耐火性樹脂組成物の場合、ベース樹脂としてゴムや熱可塑性エラストマーや液状ポリマーなどが用いられているため、得られる配管材は、機械的強度に劣るという問題がある。
一方、上記特許文献3の耐火性樹脂組成物の場合、無機充填剤と可塑剤とが多量に配合されている。そのため、これらの耐火性樹脂組成物から配管材を成形した場合には、管として必須の条件である機械的強度が得られない。
特開平9−152065号公報 特許第3133683号公報 特開2006−348228号公報
本発明は、上記問題点に鑑みて提案されたものであって、配管材そのもので防火措置が可能な施工性に優れた給排水用配管材を提供することを目的としている。
そして、配管材そのもので防火措置を可能とするためには、配管材に以下の機能を持たせることが必要である。
(1)配管材の燃焼速度を遅延させて、非加熱側に火炎を噴出させないこと。
燃焼速度を遅延させるには、配管材そのものの燃焼を防止するとともに、燃焼時に管壁を熱膨張させ、配管材の貫通部内への熱の流入をできるだけ防ぐようにすることが望ましい。すなわち、加熱側において、配管材を閉塞させて遮炎することが最良である。また、膨張後の残渣が脱落しないことがより好ましい。
(2)燃焼時に配管材とその外周のモルタルとのシールを保って、非加熱側へ発煙させないこと。
そこで、本願発明者らは、上記(1)(2)の機能を配管材に持たせることを考慮した上で、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、以下の発明に至ったのである。
すなわち、請求項1記載の発明の給排水用配管材は、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、鱗片状の熱膨張性黒鉛を1〜10重量部の割合で含む樹脂組成物が管状に押出成形されており、鱗片状の熱膨張性黒鉛が配管材の長手方向断面(A)における長手方向軸(B)に対してなす角度と横断面(C)における中心(D)を通る線(E)に垂直な軸(F)に対してなす角度がともに、長手方向軸(B)と垂直な軸(F)とを90度としたときに80〜100度の範囲内で配向するものの比率が70%以上であることにより、鱗片状の熱膨張性黒鉛が、配管材の円周方向及び長手方向に沿って設けられていることを特徴とする。
請求項2の発明の給排水用配管材は、熱膨張性黒鉛の平均長さが、100〜400μmであることを特徴とする。
請求項3の発明の給排水用配管材の製造方法は、請求項1記載の建築用配管材を製造する製造方法として、ブリッジレスの押出機を使用することを特徴とする。
本発明における耐火試験は、平成12年6月1日に施行された改正建築基準法に基づく防火区画等を貫通する管の性能試験の評価方法に従い、床材には、建築基準法によって定められている耐火構造、準耐火構造の床材であるPC(プレキャストコンクリート)板(長さ600mm,幅1200mm,厚さ100mm)を使用した。
使用される床材としては、上記PC板の他に、
例えば、
1)構造用合板(厚さ12mm)の上に、石膏ボード(厚さ9.5mm)を張り、下面に強化石膏ボード(厚さ15mm)を張った木製枠組造の部材。
2)構造用合板(厚さ12mm)の上に、石膏ボード(厚さ12.5mm)を張り、下面に強化石膏ボード(厚さ12.5mm)を2枚張った木製枠組造の部材
3)厚さ100mm以上の軽量発泡コンクリート(ALC)板
4)厚さ70mm以上のプレキャストコンクリート(PC)板
などが用いられるが、特に、厚さ100mm以上のALC板、PC板が好適である。
配管材と区画貫通部との間隙はモルタルで閉塞した。配管材は、一端部を床材の加熱側の面から加熱側に300mm露出させ、配管材の他端部を床材の非加熱側の面から非加熱側に800mm露出させた。
また、耐火試験炉は、床材の片面を加熱できる構造のものとし、床材の加熱側の片面を試験面としたときに、ISO834−1の規定に従う下記の(式1)に基づく温度の時間的変化を床材の試験面の全面にほぼ一様に与えられるようなものとした。
つまり、耐火試験炉に、炉内温度を測定するための熱電対(以下、「炉内熱電対」という)の熱接点1〜10個を床材の試験面に対して均等に配置されるように、床材から100〜300mm離れた位置に設置した。
そして、ISO834−1の規定に従って、熱電対によって測定した温度(以下、「加熱温度」という)の時間経過が、下記の(式1)で表される数値となるように、耐火試験炉を加熱した。
T=345log10(8t+1)+20 (式1)
この(式1)において、Tは平均炉内温度(℃)、tは試験の経過時間(分)とする。また、温度測定は、1分以内ごとに行うものとした。
また、燃焼前の管材の加熱側端部における管内断面積S1は、耐火試験開始前に、管材の内寸を少なくとも2方向以上で測定し、平均内径を出した後、管内断面積S1を算出する。
燃焼後の管材の最小内径部における管内断面積S2は、耐火試験開始後、区画貫通部と配管材との隙間から非加熱側に煙が出た時点において、耐火試験炉の燃焼をストップした後、即座に床材パネルを耐火炉よりはずし、管が冷却された後に、閉塞された管の加熱側から観察し、投影面積をS2とする。S2の測定方法としては、以下のように種々挙げられる。
・加熱側から観察した写真を用いた画像解析する方法。
・投影部を紙にスケッチし、スケッチした部分を切り抜いて重さを測定し、すでに単位面積あたりの重さがわかっている紙の値から、比例計算で算出する方法。 煙が2時間出なかった場合は、2時間後に試験をストップし、上記の方法で測定する。
本発明において、残渣の長さは、図6に示すように、床材の加熱側の面から燃焼後の残渣Hの最先端部までの長さLをいう。残渣の長さは、請求項1記載の耐火試験開始後、区画貫通部と配管材との隙間から非加熱側に煙が出た時点で、耐火試験炉の燃焼をストップした後、即座に床材パネルを耐火炉よりはずし、管が冷却された後に、床材の加熱側の面に対して垂直に測定する。
煙が2時間出なかった場合は、2時間後に試験をストップし、上記の方法で測定する。
本発明において、熱膨張性黒鉛の膨張容積とは、熱膨張後における熱膨張性黒鉛1gあたりの容積のことである。
そして、熱膨張性黒鉛の膨張容積は、以下の方法により求められる。
1)試料1gを事前に加熱炉内で20分以上加熱していた500ccのビーカーに入れて、加熱炉(炉内温度:1000℃)内で加熱する。
2)30秒経過後、加熱炉内からビーカーを取り出す。
3)ビーカー内の試料を室温まで冷却する。
4)膨張後の試料の重量と容積とを測定する。
5)(膨張後の試料の容積)/(膨張後の試料の重量)を算出する。
熱膨張性黒鉛の膨張容積は、熱膨張性黒鉛の層間化合物の種類や量、熱膨張性黒鉛自体の粒径に依存して変化する量であり、耐火性を発現させるために非常に重要な因子となる。
請求項3記載の発明において、熱膨張性黒鉛の膨張容積を100〜250(ml/g)
とした理由としては、熱膨張性黒鉛の膨張容積が100(ml/g)未満であると、膨張
容積が小さく十分な耐火性を発現できず、耐火性を上げるために大量の熱膨張性黒鉛を添加する必要があり、物性や成形性等に不具合が生じる恐れがあるからである。一方、熱膨張性黒鉛の膨張容積が250(ml/g)を超えると、加熱により組織が熱膨張しすぎて
、その形状を保持できずに残渣が脱落し、耐火性が低下してしまう恐れがあるからである。なお、請求項3記載の発明で用いられる熱膨張性黒鉛の膨張容積は、好ましくは120〜230(ml/g)であり、さらに好ましくは140〜220(ml/g)である。
本発明で用いられるポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル単独重合体;塩化ビニルモノマーと、該塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体;塩化ビニル以外の(共)重合体に塩化ビニルをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。又、必要に応じて上記ポリ塩化ビニル系樹脂を塩素化してもよい。
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα−オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類などが挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記塩化ビニルをグラフト共重合する(共)重合体としては、塩化ビニルをグラフト(共)重合するものであれば、特に限定されず、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどが挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、特に限定されるものではないが、小さくなると成形体の物性低下が起こり、大きくなると溶融粘度が高くなって成形が困難になるので、400〜1600が好ましく、600〜1400が、特に好ましい。尚、上記平均重合度とは、複合塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K−6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度を意味する。
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の重合方法は、特に限定されず、従来公知の任意の重合方法が採用されてよく、例えば、塊状重合方法、溶液重合方法、乳化重合方法、懸濁重合方法等が挙げられる。
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の塩素化方法としては、特に限定されず、従来公知の塩素化方法が採用されてよく、例えば、熱塩素化方法、光塩素化方法等が挙げられる。
上記ポリ塩化ビニル系樹脂はいずれも、樹脂組成物としての耐火性能を阻害しない範囲で、架橋、変性して用いてもよい。この場合、予め架橋、変性した樹脂を用いてもよく、添加剤等を配合する際に、同時に架橋、変性してもよいし、あるいは樹脂に前記成分を配合した後に架橋、変性してもよい。上記樹脂の架橋方法についても、特に限定はなく、ポリ塩化ビニル系樹脂の通常の架橋方法、例えば、各種架橋剤、過酸化物を使用する架橋、電子線照射による架橋、水架橋性材料を使用した方法等が挙げられる。
また、本発明で用いられる熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理し、グラファイト層間化合物を生成させたもので、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
上記脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。上記アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
なお、上記熱膨張性黒鉛の粒径は、特に限定されないが、粒径が細かくなりすぎると、耐火性樹脂組成物の膨張率が低下してしまう。一方、粒径が大きくなりすぎると、加熱により組織が熱膨張しすぎて、その形状を保持できずに残渣が脱落し、耐火性が低下してしまうし、耐火性樹脂組成物を配管材としたときの引張強度や扁平強度などの物性が低下してしまい、管材として必要な機械的強度が得られなくなってしまう。
請求項2記載の発明で用いられる熱膨張性黒鉛の平均粒径は、一般的な大きさのものが用いられ、100〜400μmである。
なお、本発明には、その物性を損なわない範囲で、難燃剤、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、熱可塑性エラストマーなどの添加剤が添加されていてもよい。また、本発明には、その物性を損なわない範囲で、安定剤が添加されていてもよい。
上記難燃剤としては、燃焼時の難燃性を高めるためのものであれば特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、ハイドロタルサイト、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン、三酸化モリブデン、二硫化モリブデン、アンモニウムモリブデート等のモリブデン化合物、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン等の臭素系化合物、トリフェニルフォスフェート、アンモニウムポリフォスフェート等のリン系化合物、ホウ酸カルシウム、ホウ酸亜鉛などが挙げられるが、ポリ塩化ビニルの燃焼抑制効果としては、三酸化アンチモンが特に好ましい。アンチモン化合物は、ハロゲン系化合物の存在下では、高温条件のもとで、ハロゲン化アンチモン化合物を作り、燃焼サイクルを抑制させる効果が非常に強く、相乗効果が著しい。
したがって、ハロゲン化合物であるポリ塩化ビニル系樹脂に、熱膨張性黒鉛を入れながら、相乗効果の高いアンチモン化合物を混入すると、難燃性の相乗効果が非常に高くなり、燃焼遅延効果が著しく発揮される。
難燃剤を併用することにより、燃焼時において、熱膨張性黒鉛の膨張による断熱効果と、難燃剤による燃焼遅延効果とが相乗効果を発揮して、より効率的に耐火性能を向上させることができる。難燃剤の添加部数は、特に限定されないが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、1重量部以上20重量部以下、添加されていることが好ましい。難燃剤が1重量部未満であると、十分な相乗効果が得られにくいことがあるし、難燃剤が20重量部を超えて添加されると、成形性や物性が著しく低下してしまう恐れがあるからである。
上記安定剤としては特に限定されず、例えば、熱安定剤、熱安定化助剤などが挙げられる。上記熱安定剤としては特に限定されず、例えば、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫系安定剤;ステアリン酸鉛、二塩基性亜りん酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤;カルシウム−亜鉛系安定剤;バリウム−亜鉛系安定剤;バリウムーカドミウム系安定剤などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記熱安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、りん酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、ゼオライト等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤が挙げられる。 内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては特に限定されず、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。外部滑剤としては特に限定されず、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックスなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記加工助剤としては特に限定されず、例えば重量平均分子量10万〜200万のアルキルアクリレート−アルキルメタクリレート共重合体等のアクリル系加工助剤などが挙げられる。上記アクリル系加工助剤としては特に限定されず、例えば、n−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体、2−エチルヘキシルアクリレート−メチルメタクリレート−ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記衝撃改質剤としては特に限定されず、例えばメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、アクリルゴムなどが挙げられる。
上記耐熱向上剤としては特に限定されず、例えばα−メチルスチレン系、N−フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。
上記酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、フェノール系抗酸化剤などが挙げられる。
上記光安定剤としては特に限定されず、例えば、ヒンダードアミン系等の光安定剤等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、サリチル酸エステル系、ベンゾフ
ェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤などが挙げられる。
上記顔料としては特に限定されず、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料;酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアニン化物系などの無機顔料などが挙げられる。
また、上記ポリ塩化ビニル系樹脂には可塑剤が添加されていてもよいが、成形品の耐熱性や耐火性を低下させることがあるため、多量に使用することはあまり好ましくない。上記可塑剤としては特に限定されず、例えば、ジブチルフタレート、ジー2―エチルヘキシルフタレート、ジー2―エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。
上記熱可塑性エラストマーとしては特に限定されず、例えば、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体(EVACO)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体や塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等の塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
上記添加剤を上記ポリ塩化ビニル系樹脂に混合する方法としては特に限定されず、例えば、ホットブレンドによる方法、コールドブレンドによる方法等が挙げられる。
本発明の建築用配管材としては、例えば、耐火管や耐火管継手が挙げられる。また、本発明の建築用配管材は、一般的に用いられる押出成形機や射出成形機によって成形される。成形機の種類やスクリュー形状などは、特に限定されず、引張強度や衝撃を考慮して、十分に混練できるものであればよいが、連続成形可能な押出成形機が好ましい。
なお、成形温度は、熱膨張性黒鉛の膨張開始温度以下で成形することが好ましい。成形温度は、得られた成形体の引張強度や耐衝撃性に影響を及ぼすことから、上記熱膨張性黒鉛の膨張開始温度は180℃以上が好ましく、さらに好ましくは200℃以上である。
請求項1記載の発明の建築用配管材は、燃焼時には、管内断面積が、燃焼前の管内断面積の50%以下になる。その結果、管内を熱気が上昇するのを効果的に防止でき、床材に対する非加熱側の配管材の温度上昇を緩和することができる。したがって、配管材が燃えだしたり、配管材が軟化してモルタル界面との隙間が生じて非加熱側に発煙したりするのを防止することができ、遮炎性、遮熱性、遮煙性が向上する。
このように、本発明の建築用配管材は、それ自体が優れた耐火膨張性を備えており、燃焼時には配管材自体が膨張するとともに、燃焼速度の遅延効果を発揮して、区画貫通部で仕切られた他の側に火炎や煙が回るのを阻止することができる。そのため、従来のように、配管材の周囲に他の耐火部材を設ける必要がない。
また、施工時の仮配管時に、位置確認のためにマーキングするなどの作業が不要となり、単に、区画貫通部に前記建築用配管材を挿通させるだけでよいので、作業を大幅に軽減でき、現場施工性を飛躍的に向上させることができる。
さらに、本発明の建築用配管材は、塩化ビニル樹脂製パイプの外周に繊維強化モルタルを被覆した、いわゆる耐火二層管に比べて、管外径が大きくならないので、貫通口を複数設ける場合に、各貫通口の間隔を小さく取れる上、床下に配管する場合に、勾配がとりやすくなるなど、画期的に施工性が向上する。
ポリ塩化ビニル系樹脂は、自己消火性があるので、燃焼速度の遅延が効果的に行われ、燃焼時の火炎の伝播速度を抑えることができる。また、ポリ塩化ビニル系樹脂は、燃焼初期に発泡するので、熱膨張性黒鉛が膨張しやすいという利点がある。
また、熱膨張性黒鉛は、それ自体が燃えにくく、かつ熱により膨張して断熱効果が発現する。また、熱膨張性黒鉛の膨張容積が100〜250(ml/g)の範囲であるので、燃焼時には効果的に膨張する上、熱膨張性黒鉛が適度な割合で配合されているので、残渣の形状保持性に優れており、燃焼速度の遅延がさらに効果的に行われる。
そして、燃焼時には、ポリ塩化ビニル系樹脂が、脱塩酸を繰り返して、炭化が促進され強固な残渣を形成するため、熱膨張性黒鉛との相乗効果が大きくなる。
また、無機充填剤をポリ塩化ビニル系樹脂に配合したものでは、無機充填剤が燃焼時に骨材的な働きをして、膨張した管壁を強固に保つことができるので、残渣が脱落しにくく、管の燃焼速度を効果的に遅延させることができる。
その結果、建築用配管材を床面に貫通させた場合には、床下面で1000℃以上の熱が加わりながらも、床下面で残渣が脱落せず、管を閉塞するに近い状態が長時間続く。つまり、燃焼時に管内断面積が小さくなることで、管内を熱気が上昇するのを防止し、床面に対して非加熱側の配管材の温度上昇を緩和することができ、その結果、配管材が燃えだしたり、配管材が軟化してモルタル界面との隙間が生じて非加熱側に発煙したりするのを防止でき、遮炎性、遮熱性、遮煙性が飛躍的に向上する。
さらに、本発明の建築用配管材は、管として十分な機械的物性を備えている上、成形性に優れており、例えば、射出成形や押出成形などによって、高い寸法精度で連続的に生産できる。
本実施形態の建築用配管材Pは、単層管であり、長さ1200mm、外径114mm、厚さ6.6mm、呼び径100Aに作製されている。
以下、実施例を挙げて詳細に説明する。
(実施例1)〜(実施例16)、(比較例1)〜(比較例5)ともに、塩化ビニル樹脂(徳山積水工業社製 品番TS1000R)100重量部に、(表1)(表2)に示す熱膨張性黒鉛及び無機充填剤とを(表1)(表2)に示した割合で配合し、さらに、有機錫系安定剤(三共有機社製 商品名「ONZ−142F」)1部、ポリエチレンワックス系滑剤(三井石油化学工業社製 商品名「ハイワックス220MP」)0.5部、ステアリン酸(花王社製 商品名「S−30」)0.5部とともに、内容積200リットルのヘンシェルミキサー(川田工業社製)で攪拌混合し、耐火性樹脂組成物を得た後、一般的に用いられる押出成形機によって押出成形して、耐火性評価に用いる建築用配管材Pを作製した。
また、この建築用配管材Pから、熱膨張性評価および性能評価に用いる試験片を作製した。試験片は、前記建築用配管材Pの管壁の一部を切り出した後、荷重200kgf、190℃で3分間プレス成形して厚さ3mmのプレス板を1cm角に切り作製した。
また、(表1)(表2)に示す膨張容積(ml/g)は、熱膨張性黒鉛の膨張容積を示している。熱膨張性黒鉛の膨張容積の求め方は、上述した通りである。
(熱膨張性評価)
試験片について耐火試験を実施した。試験方法としては、まず、試験片を500℃に加熱した電気炉内に入れて、40分間放置した。そして、試験片を炉から取り出して放冷した後に、試験片の厚みを測定した。
耐火試験後の試験片の厚み(膨張後厚み)が4mm以上であれば合格、4mm未満であれば不合格とした。
(性能評価)
得られた試験片について、JISK7113に規定される引張試験(評価温度23℃)を行った。なお、管としての実用的な性能を満たしているかを判定するため、23℃で引張強度が45(MPa)以上のものを◎(優秀)、30(MPa)以上のものを○(合格)、30(MPa)未満のものを×(不合格)とした。
(耐火性評価)
図1に示す耐火試験炉Xにより、耐火試験(平成12年6月1日に施行された改正建築基準法の耐火性能試験の評価方法,ISO834-1に従う)を実施した。
床材Yには、プレキャストコンクリート板(長さ1200mm,幅600mm,厚さ100mm)を使用した。また、防火措置工法としては、建築用配管材Pと区画貫通部Rとの間隙をモルタルで閉塞した。また、建築用配管材Pの一端部を床材Yの加熱側の面から加熱側に300mm露出させ、建築用配管材Pの他端部を床材Yの非加熱側の面から非加熱側に800mm露出させた。なお、耐火試験炉Xの加熱室Zの内部の側壁には、バーナーV,Vが設置されている。また、加熱室Zの内部には、炉内熱電対Qの熱接点2個が、床材の試験面に対して均等に配置されるように、床材Yから300mm離れた位置に設置されている。さらに、耐火試験炉Xには、図示していないが、炉内圧力を測定する装置が設置されている。
耐火試験炉Xは、加熱温度の時間経過が上記の(式1)で表される数値となるように加熱した。
そして、加熱開始後、区画貫通部Rと建築用配管材Pとの隙間から煙が出るまでの時間を測定した。煙の発生の有無については、目視で判断した。
さらに、観察用窓Gから建築用配管材Pの燃焼の様子を目視観察し、区画貫通部Rと建築用配管材Pとの隙間から煙が出た時点で耐火試験炉Xの燃焼をストップした。
そして、図7に示すように、燃焼前の建築用配管材Pの加熱側端部における管内断面積をS1とし、図8に示すように、燃焼後の建築用配管材Pの最小内径部における管内断面積をS2として、以下の計算式により、燃焼後の建築用配管材Pの管内の閉塞度合いを燃焼後管内断面積割合として算出した。
燃焼後管内断面積割合=(S2/S1)×100
なお、管内断面積S1は、耐火試験開始前に、管材の内寸を2方向(直角)で測定し、平均内径を出した後、算出した。
燃焼後の管材の最小内径部における管内断面積S2は、耐火試験開始後、区画貫通部と配管材との隙間から非加熱側に煙が出た時点において、耐火試験炉の燃焼をストップした後、即座に床材パネルを耐火炉よりはずし、管が冷却された後に、閉塞された管の加熱側から観察し、投影面積をS2とした。
S2の測定方法は、加熱側から観察した写真で、管内最小内径部を紙にスケッチし、スケッチした部分を切り抜いて重さを測定し、すでに面積と重さがわかっている紙の値から、比例計算で算出した。 煙が2時間出なかった場合は、2時間後に試験をストップし、上記の方法で測定した。
(実験結果)
(表2)に示すように、(比較例1)〜(比較例5)は、すべて(耐火性評価)が不合格であった。
したがって、(熱膨張性評価)(性能評価)(耐火性評価)の全てを満足する建築用配管材を得るためには、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、膨張容積が100〜250(ml/g)である熱膨張性黒鉛を1〜10重量部配合させる必要があることがよくわかる。
なお、熱膨張性黒鉛が10重量部を超えると、図2に示すように、加熱により組織が熱膨張しすぎて、その形状を保持できずに残渣が脱落してしまった。
(実施例17)〜(実施例29)、(比較例6)〜(比較例8)はともに、塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製、品番TH1000)100重量部に、熱膨張性黒鉛(中越黒鉛社製、品番SFF、膨張容積180(ml/g))と、無機充填剤としての炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、品番ホワイトンSB)と、鉛系安定剤(堺化学株式会社製、商品名SL-1000)と、ポリエチレン系滑剤(三井化学株式会社製 商品名ハイワックス4202E)を(表3)(表4)に示した割合で配合し、内容積200リットルのヘンシェルミキサー(川田工業社製)で攪拌混合し、耐火性樹脂組成物を得た後、一般的に用いられる押出成形機によって押出成形して、耐火性評価に用いる建築用配管材Pを作製した。
また、作製した建築用配管材Pから性能評価に用いる試験片を作製した。試験片は、前記建築用配管材Pの管壁の一部を切り出した後、荷重200kgf、190℃で3分間プレス成形して得られた厚さ3mmのプレス板より作製した。
(熱膨張性評価)
試験片について耐火試験を実施した。試験方法としては、まず、試験片を500℃に加熱した電気炉内に入れて、40分間放置した。そして、試験片を炉から取り出して放冷した後に、試験片の厚みを測定した。耐火試験後の試験片の厚み(膨張後厚み)が4mm以上であれば合格、4mm未満であれば不合格とした。
(性能評価)
得られた試験片について、JISK7113に規定される引張試験(評価温度23℃)を行った。なお、管としての実用的な性能を満たしているかを判定するため、23℃で引張強度が45(MPa)以上のものを◎(優秀)、30(MPa)以上のものを○(合格)、30(MPa)未満のものを×(不合格)とした。
また、押出成形により所望の品質の建築用配管材Pを製造できるかを判定するため、良好に押出成形ができたものを○、押出成形ができなかったものを×、押出成形時に異変が見られたものを△とした。
(耐火性評価)
図1に示す耐火試験炉Xにより、耐火試験(平成12年6月1日に施行された改正建築基準法の耐火性能試験の評価方法,ISO834-1に従う)を実施した。
床材Yには、プレキャストコンクリート板(長さ1200mm,幅600mm,厚さ100mm)を使用した。また、防火措置工法としては、建築用配管材Pと区画貫通部Rとの間隙をモルタルで閉塞した。また、建築用配管材Pの一端部を床材Yの加熱側の面から加熱側に300mm露出させ、建築用配管材Pの他端部を床材Yの非加熱側の面から非加熱側に800mm露出させた。なお、耐火試験炉Xの加熱室Zの内部の側壁には、バーナーV,Vが設置されている。また、加熱室Zの内部には、炉内熱電対Qの熱接点2個が、床材の試験面に対して均等に配置されるように、床材Yから300mm離れた位置に設置されている。さらに、耐火試験炉Xには、図示していないが、炉内圧力を測定する装置が設置されている。
耐火試験炉Xは、加熱温度の時間経過が上記の(式1)で表される数値となるように加熱した。
そして、加熱開始後、区画貫通部Rと建築用配管材Pとの隙間から煙が出るまでの時間(発煙時間)を測定した。消防法の令8区画の判定基準に従って、発煙時間が130分以上の場合を◎(優秀)、120分以上の場合を○(合格)、120分未満の場合を×(不合格)とした。煙の発生の有無については、目視で判断した。
さらに、観察用窓Gから建築用配管材Pの燃焼の様子を目視観察し、区画貫通部Rと建築用配管材Pとの隙間から煙が出た時点で耐火試験炉Xの燃焼をストップした。そして、図7に示すように、燃焼前の建築用配管材Pの加熱側端部における管内断面積をS1とし、図8に示すように、燃焼後の建築用配管材Pの最小内径部における管内断面積をS2として、以下の計算式により、燃焼後の建築用配管材Pの管内の閉塞度合いを燃焼後管内断面積割合として算出した。
燃焼後管内断面積割合=(S2/S1)×100
なお、管内断面積S1は、耐火試験開始前に、管材の内寸を2方向(直角)で測定し、平均内径を出した後、算出した。
燃焼後の管材の最小内径部における管内断面積S2は、耐火試験開始後、区画貫通部と配管材との隙間から非加熱側に煙が出た時点において、耐火試験炉の燃焼をストップした後、即座に床材パネルを耐火炉よりはずし、管が冷却された後に、閉塞された管の加熱側から観察し、投影面積をS2とした。
S2の測定方法は、加熱側から観察した写真で、管内最小内径部を紙にスケッチし、スケッチした部分を切り抜いて重さを測定し、すでに面積と重さがわかっている紙の値から、比例計算で算出した。
また、残渣の伸長長さLは、耐火試験開始後、区画貫通部と配管材との隙間から非加熱側に煙が出た時点で、耐火試験炉の燃焼をストップし、即座に床材パネルを耐火炉よりはずし、管が冷却された後に、床材の加熱側の面に対して垂直に測定した。
なお、煙が2時間出なかった場合は、2時間後に耐火試験をストップし、S2および残渣の伸長長さLを上記の方法で測定した。
(実験結果)
(表4)に示すように、(比較例6)は、熱膨張性黒鉛が全く配合されていなかったため、配管材が燃え尽きてしまった。その結果、加熱側における配管材の温度上昇が速く、発煙時間が早かった。(比較例7)は、熱膨張性黒鉛の配合割合が大きすぎたため、配管材が膨張した後、その形状を保持できずに落下落してしまった。その結果、加熱側における配管材の温度上昇が速く、発煙時間が早かった。(比較例8)は、安定剤の配合割合が小さく、無機充填剤の配合割合が大きすぎたため、押出成形性に劣る上、引張強度が若干低くなった。
これに対して、(実施例17)〜(実施例29)は、管として必要な引張強度を有することはもちろんのこと、発煙時間が飛躍的に長くなっている。その理由は、(実施例17)〜(実施例29)は、残渣によって管内断面が閉塞され、管の温度上昇が抑えられたことが考えられる。
また、(実施例18)(実施例19)は、(実施例17)(実施例20)に比べて管内断面積だけでなく、残渣Hの伸長長さにおいても優れている。結果として発煙時間が向上した。
また、(実施例22)(実施例23)は、(実施例21)(実施例24)に比べて管内断面積だけでなく、残渣Hの伸長長さにおいても優れている。結果として発煙時間が向上した。
また、(実施例26)〜(実施例28)は、(実施例25)(実施例29)に比べて管内断面積だけでなく、残渣Hの伸長長さにおいても優れている。結果として発煙時間が向上した。
なお、(実施例25)は、安定剤の配合割合が少なかったため、押出成形時に若干偏流が起こった。
ところで、床材に貫通施工した合成樹脂製の配管材が、床下から加熱されると、まず、配管材は、床面より下部に突出している部分が直接加熱されて、軟化、燃焼し始める。そして、床配管材は、構造内にある部分と燃焼部分との間に硬さの差異が生じて、急激に軟化する。すると、配管材は、燃焼開始後5〜20分ほどで、床面より下部に突出している部分が、床面より離れて下部に脱落(落下)する。残った配管材の下面は、床の下面とほぼ同一面になる。さらに熱が加わった場合、配管材の配合組成により現象が変わってくる。
具体的には、(比較例6)に示す組成物からなる配管材は、図4に示すように、床面より下部に突出している部分が脱落した後、樹脂が流れ落ちて加熱側の端部を一旦閉塞するものの、熱膨張性黒鉛が配合されていないため耐火性がなく、再び加熱側の配管材の端部が脱落してしまった。その結果、配管材の貫通部内に熱気が流入し、床構造内にある部分が燃え尽きて、非加熱側に発煙してしまった。
(比較例7)に示す組成物からなる配管材は、熱膨張性黒鉛が多量に配合されているため、加熱により組織が膨張しすぎて、その形状を保持できなくなり、脱落してしまった。
また、(比較例8)に示す組成物からなる配管材は、無機充填剤が多量に配合されているため、図5に示すように、床面より下部に突出している部分が脱落した後、残った部分が強固な残渣となって燃焼を遅延するものの、樹脂に高温流動性がなく、管内を閉塞できない。その結果、管内を通じて熱気が上昇し、配管材が熱により変形し、配管材とモルタルとのシール部分に隙間が生じて、非加熱側に発煙してしまった。
一方、(実施例17)〜(実施例29)に示す組成物からなる配管材は、図6に示すように、床面より下部に突出している部分が脱落した後、残った部分が加熱されると、下部から軟化し、管が収縮する方向で内径がわずかに縮径した。その後、熱膨張性黒鉛が加熱膨張を開始し、燃焼後の管内断面積が、燃焼前の管内断面積の50%以下になるまで、管の断面中心方向に膨張していく。膨張後の残渣は、黒鉛(グラファイト)の結晶物が主成分と考えられ、床下面から加熱側に伸長する非常に強固な難燃性の残渣Hとなり、それ自体の脱落や燃焼を防止することができる。その結果、床下面で1000℃以上の熱が加わりながらも、床下面から残渣Hが脱落せず、管を閉塞するに近い状態が長時間続いた。また、燃焼時に管内断面積が小さくなる上、残渣が加熱側に伸長しているため、管内を熱気が上昇するのを防止し、床面に対して非加熱側の配管材の温度上昇を緩和することができる。その結果、配管材が燃えだしたり、配管材が軟化してモルタル界面との隙間が生じて非加熱側に発煙したりするのを防止できた。
したがって、管としての強度、成形時の安定性、加熱時の管の加熱側端部の閉塞性のいずれも満足する建築用配管材を得るためには、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、膨張容積が100〜250(ml/g)の範囲である熱膨張性黒鉛を1〜10重量部、無機充填剤を0〜10重量部の割合で含むことが必要であることが分かった。
そして、さらに好ましい配合割合としては、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、膨張容積が100〜250(ml/g)の範囲である熱膨張性黒鉛を4〜7重量部、無機充填剤としての塩基性化合物1〜5重量部、安定剤を0.3〜5重量部の割合であることがわかった。
(結論)
以上、実施例を提示して詳述したとおり、本実施形態の建築用配管材によれば、図6,図8に示すように、燃焼時には、耐火性樹脂組成物で構成された層が膨張して、建築用配管材の管内を閉塞するとともに、残渣Hが加熱側に伸長するため、床材Yで仕切られた他の側に火炎や煙が回るのを阻止することができる。
鱗片状の熱膨張性黒鉛が配管材の円周方向に沿って並ばないと、燃焼時に区画貫通部で黒鉛が内方に対しては閉塞に、外方に対してはスラブ孔内面のモルタルとのシールを効果的に行えないからである。
熱膨張性黒鉛の平均径の好ましい範囲は100〜400μmである。
粒径が小さいと、鱗片状が維持できず配向が効果的に達成されない。また、膨張度が小さく耐火性能に劣る。
径が大きいと、隣接する黒鉛同士が干渉し、配向が効果的に達成されない。
ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に鱗片状の熱膨張性黒鉛を1〜10重量部含有させた耐火性樹脂組成物を用いて管を製造する場合には、金型のブリッジ部で鱗片状の熱膨張性黒鉛の配向角度が変わってしまい、ブリッジ部以外と鱗片状の熱膨張性黒鉛の膨張方向が変わってしまうため、燃焼時に区画貫通部で黒鉛が内方に対しては閉塞に、外方に対してはスラブ孔内面のモルタルとのシールを効果的に行えない。
この問題を解決するためには、ブリッジレスの金型で管を製造すれば管の円周方向で鱗片状の熱膨張性黒鉛の配向角度が変化しないので、均一に円周方向に鱗片状の熱膨張性黒鉛を配向させることができる。
鱗片状の組成物を含む場合に、金型の流路に絞り部(レストリクタ)を設けることにより、効果的に鱗片状の組成物を配向させることが公知である。
ブリッジダイに絞り部(レストリクタ)を設けることも公知であるが、この場合には前述のようにブリッジ部で鱗片状の組成物の配向角度が変わってしまうので、ブリッジ部以外では効果的に配向させることができるが、均一に円周方向に鱗片状の熱膨張性黒鉛を配向させることができない。
ブリッジレス金型の流路それぞれに、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に鱗片状の膨張性黒鉛を1〜10重量部含有させた耐火性樹脂組成物を流動させて、共押出成形にて単層管を製造してもよいし、中間層にポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に鱗片状の膨張性黒鉛を1〜10重量部含有させた耐火性樹脂組成物を流動させ、内外層には鱗片状の膨張性黒鉛を含まないポリ塩化ビニル系樹脂を流動させて多層管を製造してもよい。
いずれの場合にも、ブリッジレス金型より押出した軟化状態のパリソンを冷却水槽のフォーミングチューブ内に導いて冷却・賦形を行う。
フォーミングチューブを通過した後は、冷却水槽内にて直接水が散布されて冷却され、その後切断装置にて所望の長さに切断される。
図9,図10に示すように、鱗片状の熱膨張性黒鉛が配管材の長手方向断面(A)における長手方向軸(B)に対してなす角度と横断面(C)における中心(D)を通る線(E)に垂直な軸(F)に対してなす角度がともに、長手方向軸(B)と垂直な軸(F)を90度としたときに80〜100度の範囲内で配向するものの比率(配向率)が70%以上である。
図10(b)は、鱗片状の熱膨張性黒鉛のモデル図である。図11は、本発明の建築用配管材の断面写真である。厚み7mmの配管材であり、倍率10倍で撮影した。図12は、図11の模式説明図である。図13は、比較のための建築用配管材の断面写真である。厚み7mmの配管材であり、倍率10倍で撮影した。図14は、図13の模式説明図である。
黒鉛の配向角度と平均径は以下の測定方法で計測を行った。まず、管を押出方法または押出方向に垂直な方向で切断し、サンプルを作製した。次に断面をサンドペーパー等で平滑に磨き、マイクロスコープ(キーエンス製 VH―8000)で断面写真を撮影した。得られた画像データを適宜拡大し2値化させ、画像解析装置(ニレコ製 LUZEX AP )により、平均径と配向角度を測定した。
黒鉛の径が小さいものは耐火性に影響が少なく、他の原料との識別も困難であるうえ、配向角度もバラツキが大きくなるため、所定の径以下のものは除外した。配向率は、配向角度については最大長さが200μm以上の黒鉛を対象とし80°〜100°に配向した黒鉛が数平均で何%存在するかを算出したものである。配向率が70%未満であると、鱗片状の熱膨張性黒鉛の適切な膨張方向が得られず、十分な耐火層が得られず断熱性が低下する。
また、平均径については最大長さが50μm以上の黒鉛を対象とし、100個程度の各黒鉛の径を測定し、数平均径を算出したものである。
ブリッジを有する金型を使い押出成形を行った場合、断面を観察すると明らかに黒鉛の配向が他の部位と異なる所が認められる場合がある。
そこで、管の黒鉛配向角度を出すためには、管の全周に渡り断面写真を撮影し、全数で80°〜100°に配向した黒鉛の存在割合を算出した。
平均径については配向の影響はないため、任意の1箇所の測定で平均径を算出した。
比較例1,2,3は、ブリッジのある金型で成形した。ブリッジのある金型で成形された配管材は配向度が悪く、80°以下か100°以上であった。図14において、Aのところがブリッジラインである。
図15は、3層構造の多層樹脂管の製造方法の一例である。図15に示すように、クロスヘッド押出金型31の内表面層形成用流路311及び外表面層形成用流路312に、硬質塩化ビニル樹脂と膨張性黒鉛を主材料とする組成物を図示しない押出機にて溶融混練して供給する。
クロスヘッド押出金型31より押し出した軟化状態の内層P1と外層P2と中間層P3とからなる3層構造のパリソンPを、その内層P1及び外層P2を発泡させつつ、冷却水槽33のフォーミングチューブ34内に導いて冷却・賦形を行う。
クロスヘッド押出金型31には、その出口より軟化状態の3層構造のパリソンP内に延設された棒状体35の基端部が固定されている。棒状体35の先端は、ほぼ、フォーミングチューブ34の円筒部341の先端まで延設されている。棒状体35の略中央部に第1の円板36が固定されている。円板36の外径は成形すべき熱可塑性樹脂管の内径よりもやや大きくなされている。棒状体35の先端部であって、フォーミングチューブ34の円筒部341の径方向内側の位置に、一対の第2の円板37,37が固定されている。各第2の円板37の外径は、成形すべき多層樹脂管1の内径と等しくなされている。
各第2の円板37には、外周面近傍に空気の吹出し口371が設けられており、クロスヘッド押出金型31及び棒状体35を経由して空気を吹き出すことができるようになっている。
押出金型31を出た3層構造のパリソンPは、その内層P1及び外層P2が発泡しながら冷却水槽33の入口に設けられたフォーミングチューブ34に向けて進行するが、フォーミングチューブ34に入る手前にて、その内周面が第1の円板36の外周面に接触して、やや膨径した状態となる。その後、パリソンPはフォーミングチューブ34の筒状体341に導かれて、その筒状体341の径方向内側の位置にて、その内周面が一対の第2の円板37,37の外周面に、その近傍に設けられた吹出し口371より空気を吹き出して摩擦抵抗を減少した状態にて接触する。この際、パリソンPの外層P2の外周面はフォーミングチューブ34の筒状体341の内周面に押圧されて、外表面に平滑なスキン層が形成される。従って、パリソンPはフォーミングチューブ34の筒状体341の内径に対応する所期の外径を有するとともに、その内周面も一対の第2の円板37,37の外径に対応する所期の内径を有し、かつ内層と外層が膨張性黒鉛を含有しない硬質塩化ビニル樹脂とから形成して平滑な内外表面状態を有するように冷却・フォーミングされる。
フォーミングチューブ34の筒状体341内を通過した多層樹脂管1は、更に、冷却水槽33内にて直接水が散布されて冷却された後、図示しない切断装置にて所望の長さに切断されて、内層及び外層が発泡樹脂から形成され、中間層がリサイクル樹脂を含有する樹脂から形成されているにもかかわらず、寸法精度に優れ、かつ平滑な内外表面を有する多層樹脂管1が製造される。
ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛1〜10重量部、酸中和剤を含有させてなる耐火性樹脂組成物からなる耐火膨張層を備えることを特徴とする建築用配管材。酸中和剤としてハイドロタルサイト、水酸化カルシウムまたはステアリン酸カルシウムである。ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、熱膨張性黒鉛1〜10重量部に対して、ハイドロタルサイトの場合は1〜10重量部であり、水酸化カルシウムの場合は0.1〜1重量部であり、ステアリン酸カルシウムの場合は0.5〜5重量部であることが好ましい。
熱膨張性黒鉛に硫酸を挿入する前の黒鉛(硫酸を含まない黒鉛)を使用すると、スクリュー等への付着が見られなかったことから原因は硫酸だと考えられる。
熱膨張性黒鉛に含まれる硫酸は成形温度である190℃付近になると徐々に黒鉛の層間から発生する。この硫酸はスクリュー等の金属面を劣化させるため、黒鉛やその他配合剤が付着し易くなると考えられる。また、安定剤として使用されるステアリン酸鉛と硫酸が反応し、硫酸鉛となることで、より付着性が悪化することが判明した。
よって、使用する安定剤は特に限定はされないが、鉛化合物を含まないことがより好ましい。一方、中和処理した熱膨張性黒鉛とpHが低い熱膨張性黒鉛を比較しても付着に差異は見られなかったことから、成形中に黒鉛の層間から発生した硫酸が付着の原因であると推定される。熱膨張性黒鉛のpHは特に限定されないがpHが高いと耐火性能が低く、膨張黒鉛の添加量を増やす必要があるためpH1.5〜4.5がより好ましい。そこで、成形中に発生した硫酸を捕捉するために、配合中に中和剤を添加したところ付着性が改善することが分かった。中和剤は何種類か試したところ請求項に記載した3種類で効果が見られた。中和剤
としては他にも塩基性のものなら効果があると考えられるが、NaOHのように塩基性が強いと塩ビが成形中に分解してしまい、炭酸カルシウムのように弱いと中和が不十分になるため、上記の3種類が好ましい。中和剤の必要添加量は中和能力によって変わるため、3つの配合剤で請求項を分けた。ハイドロタルトは5部程度が最適。1部未満だと効果がなく、10部超だと耐火性や物性が低下してしまう。3〜7部が好ましい。
水酸化カルシウムは0.5部程度が最適。0.1部未満だと効果が無く、1部超だと成形性(黄変)が悪化する。0.3〜0.7部が好ましい。
ステアリン酸カルシウムは3部程度が最適。0.5部未満だと効果が無く、5部超だと耐火性が低下する。2〜4部が好ましい。
黒鉛表面にステアリン酸 などで表面コートする。原料混合前に先に処理する。ステアリン酸の滑性により、耐火試験での軟化と黒鉛の膨張でばらけようとする状態を抑制する。すなわち、加熱時に樹脂と黒鉛がすべりながら一体感を保ち、加熱側に大きな残渣を残す。加熱側の残渣が生成することで効果的に遮炎でき耐火性が向上する。ステアリン酸は一般的に無機物と樹脂の分散性向上に利用されるが、今回は、耐火性向上に着目して特許にする。
ステアリン酸塩類の添加することが知られているが、この方法を配管材の成形方に適用させても耐火性は向上しない。さらに耐火性を向上させ、安定的に耐火性を確保させる方法が望まれている。
・ 黒鉛の表面処理方法
湿式または乾式で黒鉛表面処理剤を付着させる。
黒鉛が粉砕すると耐火時の膨張性が低下するため、混合時の剪断力が小さい湿式の方が望ましい。乾式で処理する場合は処理剤がただ添加されただけの状態にならないようにするため、適宜加熱混合する。
2)表面付着量の測定方法
黒鉛を還元雰囲気で950℃加熱させた時の重量減少から表面付着量を測定する。膨張黒鉛は層間に揮発分を含むため、表面処理しない黒鉛と表面処理した黒鉛の差によって付着量を測定する。黒鉛に対して0.3〜5重量%であることが望ましい。
3)表面処理するもの
高級脂肪酸または高級脂肪酸の金属塩。望ましくはステアリン酸系。
耐火試験に使用する耐火試験炉Xの構造を簡単に示す説明図である。 建築用配管材Pが加熱により熱膨張した後、その形状を保持できずに残渣が脱落する様子を示す説明図である。 図1に示す建築用配管材Pにおいて、加熱により熱膨張した後、その形状を保持して耐火性を維持している様子を示す説明図である。 床材に貫通施工した従来の配管材の燃焼の様子を模式的に示す説明図である。 床材に貫通施工した従来の配管材の燃焼の様子を模式的に示す説明図である。 床材に貫通施工した請求項2記載の発明の建築用配管材の燃焼の様子を模式的に示す説明図である。 請求項1記載の発明の建築用配管材の燃焼前の管内断面積S1を示す説明図である。 請求項1記載の発明の建築用配管材の燃焼後の管内断面積S2を示す説明図である。 本発明の建築用配管材の説明図である。 (a)は、本発明の建築用配管材の説明図であり、(b)は、鱗片状の熱膨張性黒鉛のモデル図である。 本発明の建築用配管材の断面写真である。 図11の模式説明図である。 比較のための建築用配管材の断面写真である。 図13の模式説明図である。 本発明の建築用配管材の製造装置の説明図である。 比較のための建築用配管材の製造装置の説明図である。
符号の説明
P 建築用配管材
H 残渣

Claims (3)

  1. ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、鱗片状の熱膨張性黒鉛を1〜10重量部の割合で含む樹脂組成物が管状に押出成形されており、鱗片状の熱膨張性黒鉛が配管材の長手方向断面(A)における長手方向軸(B)に対してなす角度と横断面(C)における中心(D)を通る線(E)に垂直な軸(F)に対してなす角度とが両方ともに、長手方向軸(B)と垂直な軸(F)とを90度としたときに80〜100度の範囲内で配向するものの比率が70%以上であることにより、鱗片状の熱膨張性黒鉛が、配管材の円周方向及び長手方向に沿って設けられていることを特徴とする給排水用配管材。
  2. 熱膨張性黒鉛の平均長さが、100〜400μmであることを特徴とする請求項1記載の給排水用配管材。
  3. 請求項1記載の給排水用配管材を製造する製造方法として、ブリッジレスの押出機を使用することを特徴とする給排水用配管材の製造方法。
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