JP2009072105A - コレステロール測定試薬、酵素含有試薬、酵素安定化剤、および酵素安定化方法。 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】コレステロール脱水素酵素(CDH)およびコレステロールエステラーゼ(CE)からなる群より選択される少なくとも一つと、酵素安定化剤(疎水性部分として分子内にステロールまたはスタノールを有する非イオン性界面活性剤)とを含むコレステロール測定試薬、CDHおよび/またはCEと酵素安定化剤とを含む酵素含有試薬、CDHおよび/またはCEによる酵素反応に使用することを特徴とする酵素安定化剤、およびCDHおよび/またはCEと酵素安定化剤とを共存させることにより酵素を安定化する方法を提供する。
【選択図】なし
Description
CDHやCEを含有する試薬の例としては、たとえばコレステロールを測定するための臨床検査用試薬が挙げられる。臨床検査において生体試料中のコレステロール測定は重要な検査項目であり、病院の検査室等では、高密度リポタンパク質中コレステロール(HDL−C)、低密度リポタンパク質中コレステロール(LDL−C)、総コレステロール(T−Cho)、遊離型コレステロール(F−Cho)、レムナント様リポタンパクコレステロール(RLP−C)等の検査が日常的に行われている。また、近年、尿に含まれるコレステロールが腎疾患の指標となり得ることが報告され、尿中コレステロールなどの微量のコレステロール(マイクロコレステロール:mCHO)を測定するための試薬の開発が盛んとなってきている。
研究用試薬は、たとえばCDHやCEの酵素活性の研究やCDHやCEを含む臨床検査用試薬の開発等、CDHやCEに関連する研究開発を行う際に提供される試薬である。
臨床検査用試薬の例としては、生体から採取した試料(生体試料)に含まれるコレステロールを測定するための臨床検査用試薬が挙げられる。生体試料としては、血液、血漿、血清、尿、髄液、唾液、精液などが例示される。測定対象となるコレステロールは、遊離型コレステロール(F−Cho)および/またはリポタンパク質にエステル型として存在するコレステロール(エステル型コレステロールともいう)であり、T−Cho、HDL−C、LDL−C、VLDL−C、RLP−C、mCHOなどが挙げられる。F−Choとは、リポタンパク質粒子表面に結合したコレステロールであり、エステル型コレステロールは、リポタンパク質中で脂肪酸とエステル結合を形成したコレステロールのことである。
F−Cho測定試薬は、水や緩衝液等の水性溶媒にCDH、CDH安定化物質およびCDHに対応する酸化型補酵素を添加して調製することができる。
T−Choの測定には、CDH、CDH安定化剤、および酸化型補酵素に加えて、コレステロール遊離酵素を含有させたT−Cho測定試薬を用いることが好ましい。コレステロール遊離酵素としては、CE、リパーゼ、リポプロテインリパーゼ等が例示される。
この場合、好ましくは、CDHは第二試薬に含まれ、酸化型補酵素は第一試薬および/または第二試薬に含まれ、コレステロール遊離酵素は第一試薬に含まれ、酵素安定化剤は安定化させる酵素と同一の容器に含まれる。測定においては、第一試薬と生体試料とが混合されると、第一試薬中のコレステロール遊離酵素によってリポタンパク質中のコレステロールはリポタンパク質から遊離する。ここにさらに第二試薬が添加され、上記式(IX)に示されるようにCDHの作用によって生体試料中のコレステロールを基質とする反応が起こり、T−Choが測定される。
HDL−Cは、T−Choと同様の組成の試薬(CDH、CDH安定化剤、酸化型補酵素およびコレステロール遊離酵素を含む試薬)を用いて、沈殿法により測定することができる。沈殿法によると、まずポリエチレングリコール(以下、PEGとする)等の高分子ポリマーと高密度リポタンパク質(以下、HDLとする)以外のリポタンパク質とを結合させ、これらを沈殿させる。遠心分離を行い、実質的にHDLのみが残る上清(HDL画分)を採取する。以降はT−Cho測定と同様に、HDL画分中のHDL−Cがコレステロール遊離酵素により遊離され、遊離したコレステロールは上記式(IX)に示されるように、CDHの酵素反応の基質となり、HDL−Cを測定することができる。
この方法は遠心分離等の操作が不要であるため、沈殿法よりも簡便に測定を行うことができる。
カリクスアレンは、HDL以外のリポタンパク質からのコレステロールの遊離を抑制するものであれば何れも用いることができる。具体的には、カリクス(4)アレン、カリクス(6)アレン、カリクス(8)アレン、硫酸カリクス(4)アレン、硫酸カリクス(6)アレン、硫酸カリクス(8)アレン、酢酸カリクス(4)アレン、酢酸カリクス(6)アレン、酢酸カリクス(8)アレン、カルボキシカリクス(4)アレン、カルボキシカリクス(6)アレン、カルボキシカリクス(8)アレン、カリクス(4)アレンアミン、カリクス(6)アレンアミン、カリクス(8)アレンアミンなどが挙げられる。上述したカリクスアレンの中でも硫酸カリクスアレンが水溶性に優れ取り扱いが容易であるため、好ましい。カリクスアレンの終濃度(試薬と生体試料とを混合した反応液中の濃度)は、好ましくは0.05〜20mM、より好ましくは0.1〜5mMである。これらのカリクスアレンは特にVLDLおよびLDLに対するコレステロール遊離酵素の反応性を抑制し、VLDL−CおよびLDL−Cの遊離を抑制する。
LDL−Cの測定は、以下のように行うことが好ましい。まず低密度リポタンパク質(以下、LDLとする)と上述の阻害剤とを結合させ、コレステロール遊離酵素およびコレステロールオキシダーゼによりLDL以外のリポタンパク質のコレステロールを全て反応させる。残ったLDLは阻害剤が結合しているため、この阻害剤をLDLから遊離させた後、LDLにコレステロール遊離酵素を作用させて実質的にLDLからのみコレステロールを遊離させる。上記式(IX)に示されるように、LDLから遊離したコレステロールにCDHが作用することによりLDL−Cの測定を行うことができる。
VLDL−Cの測定には、VLDLに優先的に作用するコレステロール遊離酵素を用いることが好ましい。その例としては、たとえばChromobacterium viscosumやPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼやリポプロテインリパーゼが挙げられる。さらに、VLDL以外のリポタンパク質からのコレステロールの遊離を抑制するために、上述したカリクスアレンを阻害剤として用いることが好ましい。VLDL測定の組成においては、カリクスアレンは特にLDLへのコレステロール遊離酵素の作用を抑制し、LDL−Cの遊離を抑制する。また、塩基性アミノ酸、アルブミン、あるいはこれらの誘導体を用いると、HDLへのコレステロール遊離酵素の作用を抑制し、HDL−Cの遊離を抑制することができる。アルブミンとしては、その由来は特に限定されず、ウシ血清アルブミン、ヤギ血清アルブミン等が好ましく用いられる。塩基性アミノ酸またはその誘導体としては、アルギニン、アルギニン塩酸塩、リジン、リジン塩酸塩、ヒスチジン、ヒスチジン塩酸塩、ヒドロキシリジン、ヒドロキシリジン塩酸塩等が例示される。
コレステロール遊離酵素の作用でVLDLからコレステロールが遊離され、上記式(IX)に示されるように遊離したコレステロールにCDHが作用することによりVLDL−Cの測定を行うことができる。
この場合、好ましくは、阻害剤は第一試薬に含まれ、CDHは第一試薬および/または第二試薬に含まれ、酸化型補酵素は第一試薬および/または第二試薬に含まれ、コレステロール遊離酵素は第一試薬に含まれ、酵素安定化剤は安定化させる酵素と同一容器に含まれる。
RLP−Cを測定する際は、コレステロール遊離酵素のレムナント様リポタンパク質(以下、RLPとする)に対する作用を高める効果のある物質か、コレステロール遊離酵素のRLP以外のリポタンパク質に対する作用を低減させる効果のある物質を用いることができる。このような物質の例としては、ラウリルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸またはこれらの塩類が挙げられ、塩類としては、たとえばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が例示される。より具体的には、ニューレックスR(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(日本油脂(株))、ポリスチレンスルホン酸カルシウム(三和ケミカル)等が例示される。
この場合、好ましくは、コレステロール遊離酵素のRLPに対する作用を高める効果のある物質および/またはコレステロール遊離酵素のRLP以外のリポタンパク質に対する作用を低減させる効果のある物質は第一試薬に含まれ、CDHは第一試薬および/または第二試薬に含まれ、酸化型補酵素は第一試薬および/または第二試薬に含まれ、コレステロール遊離酵素は第一試薬および/または第二試薬に含まれ、酵素安定化剤は安定化させる酵素と同一容器に含まれる。
コレステロール測定試薬が二試薬系である場合は、反応促進剤は第二試薬に含まれることが好ましいが、第一試薬に含まれていてもよく、両方の試薬に含まれていてもよい。
mCHOを測定する場合、特開平8−70894に記載されているように、下記化学反応式(X)の反応を利用することができる。
コレステロールを含む試料、CDH、酸化型補酵素A、および還元型補酵素Bを混合すると、まずコレステロールおよび酸化型補酵素AがCDHによりコレステノンおよび還元型補酵素Aとなる。生成したコレステノンおよび還元型補酵素Bは、CDHによりコレステロールおよび酸化型補酵素Bとなる。このコレステロールはCDHにより再びコレステノンとなる。このように、理論的には酸化型補酵素Aおよび還元型補酵素Bが存在する限り、コレステロールからコレステノンへの反応およびコレステノンからコレステロールへの反応が継続される。反応を十分な時間継続させると、還元型補酵素Aおよび酸化型補酵素Bの分子量が増加するため、これらのうちいずれかを定量することにより、コレステロールの定量を行うことができる。式(IX)に示される反応では、コレステロール1分子に対して生成する還元型補酵素は1分子である。従って、コレステロールが微量であればあるほど測定値が検出限界を下回る可能性が高くなる。しかし、式(X)の反応によると、コレステロール1分子が何度もコレステノンへの反応に供されるため、コレステロール1分子に対して還元型補酵素Aが多量に生成する。従って、コレステロールが微量であっても還元型補酵素Aが検出限界を下回る可能性は低く、高感度にコレステロールを測定することができる。
下記の成分を混合し、mCHO測定試薬(以下、試薬A1とする)を調製した。
PIPES(pH6.5) 10mM
EDDA 5mM
乳酸カルシウム 0.4mM
コール酸ナトリウム 0.2%
tNAD 0.85mM
クリスタリン 0.05%
CE 0.4KU/L
CDH 0.2KU/L
さらに、試薬A1に下記表1に示すような濃度でDM(ドデシルマルトシド)とDHC−30とを添加し、45種類の試薬を調製した(試薬A10〜A54)。
試薬A1〜A54を、37℃の恒温槽内に6日間静置して温度負荷をかけた。温度負荷後の試薬中のCDHの活性を測定し、温度負荷前よりもどの程度活性が残存しているかを下記式の通り算出した。
(温度負荷後のCDH活性)/(温度負荷前のCDH活性)×100=残存活性(%)
測定結果は下記表1および図1に示される。
TritonX−100 20g/L
コレステロール 1g/L
試薬2
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(pH8.5) 36.4g/L
βNAD 3g/L
上記試薬A1と同組成の試薬B1にDM 5mMと下記表2に示すような濃度のBPSH−25(ポリオキシエチレン(25)フィトスタノール:日光ケミカルズ(株))とを添加し、BPSH−25濃度の異なる8種類の試薬(試薬B2〜B9)を調製した。
また、上記試薬A1と同組成の試薬C1にDM 5mMと下記表3に示すような濃度のBPS−30(ポリオキシエチレン(30)フィトステロール:日光ケミカルズ(株))を添加し、BPS−30濃度の異なる6種類の試薬(試薬C2〜C7)を調製した。
試薬B1〜B9およびC1〜C7に対して、実施例1と同様の方法により温度負荷をかけ、CDHの残存活性を測定した。測定結果は表2および図2に示される。
また、温度負荷後の試薬C1中のCDHの残存活性よりも、BPS−30を添加した試薬C2〜C7中のCDHの残存活性の方が高かった。このことより、CDHを含む試薬にCDH安定化剤としてBPS−30を添加すると、試薬中のCDHの保存安定性が向上することが分かった。
上記試薬A1と同組成の試薬D1に下記表3に示すような濃度のBPSH−25(ポリオキシエチレン(25)フィトスタノール:日光ケミカルズ(株))を添加し、BPSH−25濃度の異なる8種類の試薬(試薬D2〜D9)を調製した。
また、上記試薬A1と同組成の試薬E1に下記表3に示すような濃度のBPS−20(ポリオキシエチレン(20)フィトステロール:日光ケミカルズ(株))を添加し、BPS−20濃度の異なる8種類の試薬(試薬E2〜E9)を調製した。
また、上記試薬A1と同組成の試薬F1に下記表3に示すような濃度のDHC−30(ポリオキシエチレン(30)コレスタノール:日光ケミカルズ(株))を添加し、DHC−30濃度の異なる8種類の試薬(試薬F2〜F9)を調製した。
また、上記試薬A1と同組成の試薬G1に下記表3に示すような濃度のBPS−30(ポリオキシエチレン(30)フィトステロール:日光ケミカルズ(株))を添加し、BPS−30濃度の異なる8種類の試薬(試薬G2〜G9)を調製した。
これらの試薬にDMは添加されていない。
これらの試薬に対して、実施例1と同様の方法により温度負荷をかけ、CDHおよびCEの残存活性を測定した。測定結果は、表3、表4、図3および図4に示される。
リン酸水素二ナトリウム(pH6.8) 5.6g/L
Triton X−100 3.4g/L
4−アミノアンチピリン 0.4g/L
POD 11KU/L
5%フェノール 4.5mL/L
CO 2.3kU/L
試薬2
リノール酸コレステリル 2g/L
Triton X−100 40g/L
Claims (12)
- 生体試料中のコレステロールを測定するための試薬であって、
コレステロール脱水素酵素(CDH)およびコレステロールエステラーゼ(CE)からなる群より選択される少なくとも一つと、
疎水性部分として分子内にステロールまたはスタノールを有する非イオン性界面活性剤と、
を含むコレステロール測定試薬。 - コレステロール脱水素酵素(CDH)と、疎水性部分として分子内にステロールまたはスタノールを有する非イオン性界面活性剤とを含む、酵素含有試薬。
- コレステロールエステラーゼ(CE)と、疎水性部分として分子内にステロールまたはスタノールを有する非イオン性界面活性剤とを含む、酵素含有試薬。
- 前記界面活性剤が親水性部分として分子内にポリオキシエチレンを有する、請求項1〜3のいずれかに記載の試薬。
- 前記ステロールがフィトステロールであり、前記スタノールがフィトスタノールである、請求項1〜4のいずれかに記載の試薬。
- 前記スタノールがコレスタノールである、請求項1〜5のいずれかに記載の試薬。
- CDHおよびCEの両方を含む、請求項1記載の試薬。
- 前記CDHに対応する酸化型補酵素をさらに含む、請求項1または7記載の試薬。
- コレステロール脱水素酵素を用いた酵素反応に使用することを特徴とする、分子内にステロールまたはスタノールを有する非イオン性界面活性剤を有効成分とする酵素安定化剤。
- コレステロールエステラーゼを用いた酵素反応に使用することを特徴とする、分子内にステロールまたはスタノールを有する非イオン性界面活性剤を有効成分とする酵素安定化剤。
- コレステロール脱水素酵素(CDH)と、前記CDHの安定化剤である疎水性部分としてステロールまたはスタノールを分子内に有する非イオン性界面活性剤とを共存させることにより、前記CDHを安定化させる方法。
- コレステロールエステラーゼ(CE)と、前記CEの安定化剤である疎水性部分としてステロールまたはスタノールを分子内に有する非イオン性界面活性剤とを共存させることにより、前記CEを安定化させる方法。
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