JP2009072082A - 焙煎した小麦並びにこれを使用した食品及び飲料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】焼減率3.5質量%以上12.0質量%以下の範囲となるように焙煎した小麦である。また、4質量%以上剥皮した後に、焼減率3.5質量%以上12.0質量%以下の範囲となるように焙煎した小麦である。さらに、前記焙煎した小麦を含む食品及び前記焙煎した小麦からの抽出物を含む飲料である。
【選択図】なし
Description
さらに詳しくは、焼減率を特定範囲とした焙煎した小麦及び剥皮小麦に関する。
しかし、苦味は甘味や塩味など他の味と組み合わせることで、食品の味に奥行きを持たせたり、メリハリをつけたり、コクを付与する働きもあり、そのような目的で苦味を持つ食品素材が使われることがある。
苦味付けに使われる典型的な食品素材としては、ニガウリやセロリなど一部の野菜、魚や獣の内臓、カカオマスなどが挙げられる。
ビール製造にはホップが使用されるが、その目的のひとつは苦味付けである。
また、サンショウ由来の苦味化合物を苦味調味剤として使用することも知られている(例えば特許文献2参照)。
従って、本発明の目的は、すっきりした苦味と豊かなローストフレーバーを持つ食品素材を提供することである。
従って、本発明は、焼減率3.5質量%以上12.0質量%以下の範囲となるように焙煎した小麦である。
また、4質量%以上剥皮した後に、焼減率3.5質量%以上12.0質量%以下の範囲となるように焙煎した小麦である。
さらに、前記焙煎した小麦を含む食品及び前記焙煎した小麦からの抽出物を含む飲料である。
また、本発明の焙煎した小麦は小麦を穀粒のまま使用しているにもかかわらず、加熱による変性で脆くなっているため、程よい硬さとサクさがあるので食品の食感にアクセントを与えることができる。
さらに、本発明の焙煎した小麦は、用途によって破砕したり、粉砕したり、水などにより風味成分を抽出して使用することもでき、多くの食品に利用することができる。
本発明の焙煎した小麦における小麦とは、イネ科コムギ属の植物の頴果をいう。
小麦は、多くの品種が食用として使用されているが、食用となる品位のものであれば、品種や産地は限定されず使用することができる。
本発明で使用できる小麦の例としては、普通小麦、デュラム小麦、スペルト小麦、クラブ小麦などが挙げられる。
本発明と同様の方法で大麦やライ麦などを焙煎することも可能ではあるが、風味に癖があるなどの問題があるため、本発明の焙煎した小麦に比べて使用できる食品は大幅に限られてしまう。
加熱の方法は、3.5質量%以上12.0質量%以下の焼減率が達成できれば特に限定されず、特定の温度の窯などに入れる方法、直火で焙る方法、高温の水蒸気で加熱する方法、加熱した金属板などに乗せて煎る方法、マイクロ波を照射する方法などが適宜使用でき、さらにこれらを複数組み合わせる方法も利用できる。
焙煎により小麦中の水分が揮発するとともに、成分が分解して一部が気体として失われるため、固形分の質量が減少する。
この質量の減少は、風味とほぼ相関するため、風味の指標として使うことができる。
本発明の焼減率とは、
焼減率 =(焙煎前の小麦質量−焙煎後の小麦質量)÷焙煎前の小麦質量×100[%]で表される値であり、百分率で表示する。
このとき、焙煎前の小麦質量には、含まれる水分を除いた質量を使用する。
例えば、水分10質量%を含む小麦100gが焙煎後に81gとなった場合、焼減率は10質量%となる。
小麦のふすま(表皮)は食感が硬く、風味も良くないために、通常は製粉で取り除かれる。
焙煎した小麦でも同様に、ふすまは加熱されてエグミなど異味異臭を発生したり、硬さにより不快な食感を与えたりすることがある。
小麦を焙煎する前に4質量%以上剥皮すると、エグミや異味の発生を抑え、食感もザラザラ感や、飲み込む際のイガイガ感が除かれ、外観も色調が均一になる、というように剥皮せずに焙煎するよりもさらに好ましい品質となる。
剥皮率が高くなると胚芽や胚乳の上層部も除去される場合もあるが、それらも除去される皮部に含める。
剥皮率とは、剥皮前後の小麦の質量差を、剥皮前の小麦の質量で除した数値である。
皮部は穀粒全体からほぼ均一に除去しなければならず、例えば頴果の一部分だけから厚く剥皮するような場合には、剥皮されなかった部分が不快な風味及び食感を発生させるため、良好な効果は得ることができない。
ただし、クリーズ(穀粒の胚芽からみて裏側にある縦の溝)部分は物理的に除去困難であり、また穀粒の内側に隠れているために風味及び食感への悪影響も小さいので、この部分は除去の対象には入らない。
小麦穀粒中のふすまの比率は15質量%程度とされているが、風味や食感に悪影響を与えるのはその上層の部分であり、少なくとも表面から4質量%のふすまを除去すれば、風味や食感を改良することができる。
本発明においては、最終的に小麦の表皮がほぼ均一に4質量%以上除去されていれば、風味および食感の改良効果は得られるため、剥皮するための方法は特段問わない。
剥皮方法の一例として、精麦機や精米機の使用が挙げられる。
例えば、クッキーやケーキ、パンなどのベーカリー製品に加えることで、ローストフレーバーを強化し、さらに程良い苦味を付与して食味にアクセントを付けることができる。
また、チョコレートやおこしなどの菓子類に加えても、好ましい食味と香りを付けることができる。
たとえば、破砕して焼き菓子やパンなどのベーカリー製品に入れたり、微粉砕して牛乳や生クリーム等に混ぜたりすると、美味に食することができる。
微粉砕したものをカレーや炒め物などの食品に少量加えて苦味を調整したり、コクを付与したりなど、調味料のような使い方も可能である。
さらには、風味成分を水などで抽出して飲料とすることも可能であり、多彩な方法で使用することができる。
[実施例1〜7,比較例1〜2]各種試料の焙煎
各種銘柄の小麦(剥皮したものとしていないもの)および剥皮したライ麦と大麦を焙煎し、風味と食感を確認した。
表1に記載の試料を200℃のオーブンで1時間半焙煎し、10名のパネラーによる官能試験で評価を行った。
表1中、PHはオーストラリア産プライムハード小麦、1CWはナンバーワン・カナダ・ウエスタン・レッド・スプリング小麦、ASWはオーストラリア産日本向けヌードルブレンド小麦、ホクシンは北海道産の小麦、デュラムはカナダ産ウエスタン・アンバー・デュラム小麦、ライ麦はカナダ産ライ麦、大麦は北海道産りょうふうである。
PHの剥皮は、株式会社サタケ製の精麦機(VCW2A型)により行った。
それ以外の剥皮した試料は、株式会社サタケ製家庭用精米機(SKM5B型)を使用して皮部を除去した。
剥皮率(剥皮前後の穀粒の質量差÷剥皮前の穀粒の質量)は、剥皮PHで7質量%、剥皮1CWで6質量%、剥皮ASWで7質量%、剥皮ホクシンで6質量%、剥皮デュラムで8質量%、剥皮ライ麦で7質量%、剥皮大麦で不明(大麦の処理ではハルが混入するために計量できなかった)であった。
評価結果を表1に示す。
風味は、ライ麦や大麦と比べて癖がなかった。
剥皮の有無を比較すると、剥皮していない試料の場合には、ややエグミとざらつきがあるが、食品への利用上特に問題にはならない程度であった。
焙煎した剥皮ライ麦は苦味、ローストフレーバー、サクみはあるが、味と香りに強い癖があり本発明の焙煎した小麦に比べ劣っていた。
焙煎した剥皮大麦は苦味はあるがやや薄く、ローストフレーバー、サクみはあるが、香りが深煎りの麦茶そのものであり、食品によって向き不向きがはっきりし、用途が限定されるため本発明の焙煎した小麦に比べ劣っていた。
焙煎の程度を変えて、風味と食感を確認した。
剥皮PH(実施例2と同じもの)を200℃のオーブンで30分〜3時間半焙煎し、官能的に評価した。
結果を表2に示す。
なお、この表には載せていないが、剥皮PHを200℃のオーブンで1時間半焙煎した実施例2は、焼減率5.5質量%であった。
剥皮PH(実施例2と同じもの)を240℃のオーブンで30分〜2時間半焙煎し、官能的に評価した。
結果を表3に示す。
剥皮PH(実施例2と同じもの)を網に載せ、振り混ぜながらガスコンロ上で5分〜25分間焙煎し、官能的に評価した。
結果を表4に示す。
なお、表2,3,4中の焼減率の単位は質量%である。
官能評価は、10名のパネラーにより行った。
焙煎が強すぎると、炭化して苦味が薄れ、焦げ臭が強くなり、食感がジャリジャリしたものとなるため、風味、食感とも劣った。
焙煎条件や方法が異なっていても、焼減率が同程度なら官能評価の結果はほぼ同じであった。
したがって、焙煎の程度は焼減率で測定することができ、焼減率3.5質量%以上12.0質量%以下の範囲で小麦を焙煎すれば、良好な苦味、香り、食感が得られることが確認できた。
既存の食品にも、穀物もしくは穀粉を焙煎したものがある。
それらの製品のなかから、焙煎した小麦粉、麦茶、オルゾーの試作を行って焼減率を推定し、本発明の焙煎した小麦と比較した。
推定焼減率は、原料穀物(小麦粉または大麦粒)を焙煎して味、香り、色調が市販品(焙煎小麦粉、麦茶、オルゾー)と最も近くなる条件を探し、その時点での焼減率として求めた。
ルー用などに使われる焙煎した小麦粉は、焼減率としてマイナス(水分が飛びきっていない)の数値を示した。
麦茶の焼減率は0.2質量%程度と推定した。
イタリアなどで飲料にされているオルゾーは、焼減率が1.1質量%程度と推定した。
本発明の焙煎した小麦は、既存の穀物焙煎品と比べて焙煎度合いが格段に高く、その分苦味成分及び香気成分の生成が進んでいることが確認できた。
剥皮率と風味、食感の関係を調査した。
精選した1CWを0質量%〜24質量%の範囲で剥皮し、200℃のオーブンで焙煎したのちに、10名のパネラーによる官能試験により風味を確認した。
小麦の剥皮には、株式会社サタケ製家庭用精米機(SKM5B型)を用いた。
剥皮率は処理時間を手動で変えることで調整した。
風味と食感の評価はパネラー10名により行った。
結果を表5に示す。
剥皮率が4質量%を超えたあとは、24質量%に至るまで風味と食感に大きな差はみられなかった。
剥皮率を24質量%より高くしても、これ以上は胚乳を削るだけなので風味と食感に変化はみられないと考えられる。
したがって、本発明の焙煎した小麦のエグミとざらつきを解消するには、4質量%以上の任意の比率で剥皮した後に焙煎すればよい。
本発明の焙煎した小麦を使用してクッキーを試作した。
実施例2の剥皮して焙煎したPHを穀粒のまま使用して、実施例26のクッキーを作った。
実施例2の剥皮して焙煎したPHを乳鉢により粉砕したものを使用して、実施例27のクッキーを作った。
実施例1の焙煎したPHを穀粒のまま使用して、実施例28のクッキーを作った。
比較例1の剥皮して焙煎したライ麦を穀粒のまま使用して、比較例13のクッキーを作った。
比較例2の剥皮して焙煎した大麦を穀粒のまま使用して、比較例14のクッキーを作った。
クッキーの製法は以下のとおりである。
市販クッキーミックス200gに、やわらかくしたバター35gを入れて混合した。
さらに卵25gを加えてなめらかになるまで混合し、生地とした。
生地に本発明の焙煎した小麦25gを加えて良く混合し、厚さ5mm、径5cmの円形に整形した。
170℃のオーブンで20分間焼成し、クッキーを得た。
前記方法において、本発明の焙煎した小麦を加えないクッキーも作成し、比較例15とした。
これらのクッキーを、熟練のパネラー10名により官能的に評価した。
実施例26のクッキーは、焙煎した小麦を噛むときのザクッとした食感が良好であった。
実施例27のクッキーは、実施例26よりも風味の特徴が強かった。
実施例28のクッキーは、風味に若干の癖があり、食べた後に少しざらつきが残るため、実施例26と比べると評価はやや劣るが、比較例15と比べると特徴のある風味が良好で、優れていた。
この結果より、本発明の焙煎した小麦は焼き菓子などの風味改良に使用できることが確認できた。
比較例14のクッキーは、ローストフレーバーが麦茶そのもので、香り自体は悪くないが、クッキーとは相性が悪かった。
剥皮して焙煎したライ麦や大麦は、風味に癖があるため焼き菓子には向いておらず、利用範囲はかなり限定される。
本発明の焙煎した小麦を使用して以下のとおりチョコレートを調製した。
実施例2の焙煎した小麦20gを、あらかじめテンパリングしたクーベルチュールチョコレート100gに加え、厚さ1cm、径3cm程度の円形に整形し、冷やし固めて実施例29のチョコレートを得た。
実施例2の代わりに実施例1の焙煎した小麦を使用し、それ以外は実施例29と同様の方法を用いて実施例30のチョコレートを得た。
これらのチョコレートを、10名のパネラーにより評価した。
なお、前記チョコレートの製法において、テンパリングは45℃の湯煎でチョコレートを溶かし、冷水で品温27℃まで下げ、再び45℃位の湯煎で品温30℃まで上げるという方法を用いた。
実施例30のチョコレートは、若干ざらつきを感じるものの、風味は実施例29とほぼ同等で、美味であった。
本発明の焙煎した小麦はチョコレートと非常に相性が良いことが確認できた。
カレーに本発明の焙煎した小麦を加えて評価した。
実施例2の焙煎した小麦を微粉砕して加えたカレーを実施例31とした。
実施例1の焙煎した小麦を微粉砕して加えたカレーを実施例32とした。
比較例4の焙煎した小麦を微粉砕して加えたカレーを比較例16とした。
市販のオルゾーを微粉砕して加えたカレーを比較例17とした。
実施例1,2,比較例4の焙煎した小麦およびオルゾーは、レッチェ社製超遠心粉砕機で微粉砕し、目開き100μmの篩いを抜ける粒度に調整したのちにカレーに加えた。
試験に用いたカレーは市販の調理済みカレーであり、電子レンジで温めた後に使用した。
粉砕した焙煎した小麦およびオルゾーの添加量は、カレー一人前に対して0.5gであり、カレーソースに加えて良く混合した後に官能評価を行った。
実施例31と比べて実施例32には少し雑味があったが、カレーとして特に違和感はなかった。
比較例16は実施例31および32よりもローストフレーバーが弱く、苦味は比較例4を加えないカレーとほとんど差がなかった。
比較例17は苦味、ローストフレーバーともにほとんど感じず、オルゾーを加えていないカレーとほとんど差がなかった。
実施例2の焙煎した小麦を微粉砕して、一人前の麻婆豆腐に0.5g加えて良く混合したものを実施例33とした。
使用した実施例2の微粉砕品は、実施例31に用いたのと同じものである。
試験に用いたのは市販の調理済み麻婆豆腐であり、電子レンジで温めた後に使用した。
実施例33の麻婆豆腐は、風味にコクと深みが加わり、元の麻婆豆腐よりも美味であった。
実施例31〜33の結果より、本発明の焙煎小麦の粉砕物は、食品の風味調整に利用できることが確認できた。
実施例2の焙煎した小麦20gを乳鉢で粉砕し、エスプレッソメーカーを使用して60ml抽出し、6gの砂糖と120mlの牛乳を加えて実施例34の飲料とした。
実施例2の代わりに市販のオルゾーを使用し、それ以外は実施例34と同じ製法を用いて、比較例18の飲料を得た。
実施例34はカフェオレ風の風味をもった飲料であるが、コーヒーよりも苦味が強い割にすっきりとしており、また非常に豊かなローストフレーバーを有していて、美味であった。
さらに、本発明の焙煎した小麦の風味は、牛乳と非常に相性が良かった。
この結果より、本発明の焙煎した小麦は溶媒抽出して飲料にもできることが確認できた。
比較例18は美味ではあるが、実施例34よりも苦味、ローストフレーバーともに格段に弱く、麦茶のような香りがあり、麦芽飲料のような味であった。
Claims (4)
- 焼減率が3.5質量%以上12.0質量%以下の範囲となるように焙煎した小麦。
- 剥皮率が4質量%以上となるように剥皮した後に、焼減率が3.5質量%以上12.0質量%以下の範囲となるように焙煎した小麦。
- 請求項1又は請求項2に記載の焙煎した小麦を含む食品。
- 請求項1又は請求項2に記載の焙煎した小麦からの抽出物を含む飲料。
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