JP4801026B2 - ロースト食品の製造方法、この製造方法により得られるロースト食品、これを含有する食品 - Google Patents
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また、従来のロースト食品は、食品素材そのものを加熱することにより得られているが、豊かなロースト香味を有する食品とするためには、加熱条件の厳密な制御下で、加熱過剰や加熱不足を防止する必要がある。
前記従来のロースト食品を得る方法では、ロースト時の過加熱によりロースト食品に臭みが生じたり、ロースト食品から食品素材の香味が消失してしまう等の問題があり、また香味豊かなロースト食品を再現性よく安定的に得ることは困難であった。
(1)糖類を、糖類の品温が糖類の熔融温度±20℃になるように加熱し、次いで水を添加することにより当該品温を10〜40℃低下させた後、食品素材を加え、加熱濃縮することを特徴とするロースト食品の製造方法。
(2)上記記載の製造方法により得られるロースト食品。
(3)上記記載のロースト食品を含有する食品。
また、当該ロースト食品は、製菓・製パン、冷菓、乳製品、加工食品や飲料等の広範囲な食品に利用することができ、これら食品に好ましいロースト香味及びコク味等の香味を付与することができるので、食品の嗜好性を増大させることができる。
糖類を熔融温度−20℃より低い温度で加熱すると、糖類の分解が不十分であるため、糖類をローストした香味が弱く、また、食品素材のロースト香味がうまく糖類に封じ込められず、糖類をローストした糖の香ばしさを併せ持つコク味があり香味豊かなロースト食品は得られない。
糖類を熔融温度+20℃を超える温度で加熱すると、糖類の分解が過剰なため、糖のにがみや雑味が生じ、また、食品素材のロースト香味がうまく糖類に封じ込められず、糖類をローストした糖の香ばしさを併せ持つコク味があり香味豊かなロースト食品は得られない。
固形状態にある砂糖やブドウ糖等を仕込む場合、加熱開始前又は加熱開始時に、糖類に水を加えて半固形や液体状態とすることが好ましい。具体的には、製品の均一性、加熱時間の短縮の点から、糖類の固形分濃度は、好ましくは40〜85重量%であり、より好ましくは60〜85重量%であり、特に好ましくは75〜85重量%である。
また、水飴、糖蜜、蜂蜜、メープルシラップ、オリゴ糖シラップ等糖成分が一定でない糖類を用いる場合、原料として単品そのままを用いても良いが、より安定的な熔融温度の範囲を得、ひいてはロースト香味の良好なロースト食品を安定的に得るため、熔融温度が安定な純度の高い糖類と併用することが好ましい。一例として、蜂蜜又はメープルシラップに対して砂糖を所定量加えて仕込んだものが挙げられる。
このことによって香味に悪影響を与える過剰な糖分解反応を抑制することができ、かつ後に加える食品素材のローストを適度なものとすることができる。
当該低下させる糖類の品温の温度範囲は品質安定、再加熱時間短縮の点から、好ましくは10〜35℃であり、更に好ましくは、10〜30℃である。
添加する水の温度や量は、糖類の品温を上記温度範囲に低下させることができれば特に限定されないが、常温水を十分な量加えることが好ましい。
具体的には、糖類又は糖類及び水の合計仕込量100重量部に対して、添加する水の量は、好ましくは5〜50重量部であり、より好ましくは10〜30重量部である。また、水を添加した際、品温が当該特定の温度範囲を下回った場合には、再び当該特定の温度範囲になるように再び加熱すればよい。
このとき、加える食品素材の量は、注水後の糖類と水の合計仕込量100重量部に対して0.1〜200重量部、好ましくは0.1〜100重量部の範囲である。食品素材は加えられた時点でローストされ、ロースト香味が糖類に封じ込められ保持される。
食品素材を加えた後、沸騰状態を維持しながら加熱濃縮することが好ましい。
当該加熱濃縮は、糖類及び食品素材を混合しながらそれらに含まれる水分を加熱することにより蒸発させ、更にロースト香味を付与する。当該加熱濃縮によって、食品素材と糖類のローストが適度に進み、ロースト香味が増強され、香ばしい香味のロースト食品が得られる。
このときの加熱温度は、食品素材によって適宜調整すればよいが、食品素材のロースト時に生じる香味を高める点から、少なくとも80℃以上であることが好ましく、より好ましくは100〜130℃であり、更に好ましくは110〜130℃である。
砂糖100重量部と水20重量部を撹拌機付き開放加熱釜に仕込み加熱し、表1に示すように、砂糖の品温が砂糖の熔融温度(185℃)±20℃の温度範囲にある170℃又は175℃の温度に達した際に、水を20重量部添加し、糖類の品温を低下させた後、各種食品素材を加えた。そのときに、必要に応じて水を追加し、さらに100〜130℃にて加熱濃縮し煮詰めた。ついで、各加熱品の固形分濃度を所定濃度に調整し、ロースト食品(本発明品1〜5)を得た。これらの製品は、ローストした食品素材の香味と砂糖をローストした糖の香ばしさを併せ持つコク味があり香味豊かなペーストであった。
本発明品2の固形分濃度を70%に調製したロースト豆乳ペーストは、豆乳のコクを持ちながらも、ローストした糖の香ばしさを併せ持ち、また、豆乳特有の生っぽい臭いが低減された香味豊かなものであった。
本発明品3の固形分濃度を75%に調製したローストカスタードペーストは、淡いロースト香味のカスタードのコク深い香味豊かなものであった。
本発明品4の固形分濃度を75%に調製したローストビーフペーストは、ローストビーフの香味とコク味を有するものであった。
本発明品5の固形分濃度を80%に調製したロースト醤油ペーストは、ローストした醤油の香味とコク味を有するものであった。
砂糖100重量部と水20重量部を、撹拌機付き開放加熱釜に仕込み、加熱し、砂糖の品温が砂糖の熔融温度(185℃)−20℃よりも低い、155℃に達した際に、水を7重量部添加し、糖類の品温を低下させた後、豆乳40重量部を150℃で加え、さらに100〜120℃にて加熱濃縮し煮詰め、ついで、加熱品の固形分濃度を70%に調整し、ペースト品(比較品1)を得た。このペースト品は、砂糖の甘味が残り、ロースト香味が乏しく、また、豆乳特有の生っぽい臭いが残っていた。
以上のように、砂糖の加熱品温が熔融温度−20℃よりも低い、155℃の加熱では、加熱が弱く、糖類の分解が不十分であるため、食品素材のロースト香味がうまく糖類に封じ込められず、食品素材のロースト香味が発揮できず弱く、糖類をローストした香味も弱く、ローストした糖の香ばしさを併せ持つコク味があり香味豊かなロースト食品は得られない。
砂糖100重量部と水20重量部を、撹拌機付き開放加熱釜に仕込み、加熱し、砂糖の加熱品温が砂糖の熔融温度(185℃)+20℃を超える、210℃に達した際に、水を30重量部添加し、糖類の品温を低下させた後、豆乳40重量部を150℃で加え、さらに100〜120℃にて加熱濃縮し煮詰め、ついで、加熱品の固形分濃度を70%に調整し、ペースト品(比較品2)を得た。このペースト品は、糖由来のにがみや雑味を有し、ローストした豆乳の香味が十分に感じられないものであった。
以上のように、砂糖の加熱品温が熔融温度+20℃を超える、210℃の加熱では、加熱が強く、糖類の分解が過剰なため、食品素材のロースト香味がうまく糖類に封じ込められず、食品素材のロースト香味が発揮できず弱く、さらに糖由来のにがみや雑味を有し、ローストした糖の香ばしさを併せ持つコク味があり香味豊かなロースト食品は得られない。
砂糖100重量部とクリーム40重量部を、撹拌機付き開放加熱釜に一緒に仕込んで加熱昇温したところ、粘度が増大してきたが、均一加熱可能で焦げつかない温度迄加熱したところ、その温度は135℃であった。ついで、水を10重量部添加し品温を低下させ、固形分濃度を70%に調整し、ペースト品(比較品3)を得た。得られた加熱品は、砂糖の甘味がそのまま残り、ロースト香味が乏しいものであった。
以上のように、従来のロースト食品を得る方法では、砂糖の加熱品温は熔融温度(185℃)よりはるかに低い温度の135℃であり、加熱が十分でないため、砂糖をローストした糖の香ばしさを併せ持つコク味があり香味豊かなロースト食品は得られない。
ブドウ糖100重量部と水20重量部を、撹拌機付き開放加熱釜に仕込み、加熱し、ブドウ糖の品温がブドウ糖の熔融温度(150℃)±20℃内にある155℃に達した際、水を20重量部添加し、糖類の品温を低下させた後、食品素材として予め加熱してアルコールを揮発させた赤ワイン30重量部を125℃で加え、さらに100〜120℃にて加熱し煮詰めた。得られた加熱品を、固形分濃度70%に調整し、ローストワインペースト(本発明品6)が得られた。得られた製品は、ワイン特有の芳香を持ちながらも、ローストした糖の香ばしさを併せ持つ香味豊かなものとなった。また、加熱によりアルコール分が揮発し、残存アルコールが1%以下となるため、食品に使用の際にアルコール分による制限がない。
砂糖100重量部と水20重量部を、撹拌機付き開放加熱釜に仕込み、加熱し、砂糖の品温が砂糖の熔融温度(185℃)±20℃内にある175℃に達した際、水20重量部を加え、糖類の品温を低下させた後、クリーム40重量部を150℃で加え、さらに約100〜130℃にて加熱し煮詰めた。得られた加熱品を、乳化機で均質化し、固形分濃度を80%に調整し、ロースト食品(本発明品7)が得られた。得られた製品は、クリームのコク、香味がありながらもローストした糖の香ばしさを有するキャラメル香味のものとなった。乳製品と糖類を一緒に仕込んで混合昇温加熱して作る従来のキャラメルとは異なる、香ばしさとロースト感を持つ香味豊かなキャラメルペーストとなった。
砂糖90重量部と固形分70%の水飴10重量部と水15重量部を、撹拌機付き開放加熱釜に仕込み、加熱し、砂糖の品温が熔融温度(185℃)±20℃内にある175℃で、水20重量部を添加し、糖類の品温を低下させた後、バルサミコ酢50重量部を150℃で加え、さらに約100〜120℃にて加熱し煮詰めた。得られた加熱品を、固形分濃度70%に調整し、ロースト食品(本発明品8)が得られた。得られた製品は、バルサミコ酢特有の芳香を持ちながらも、ローストした糖の香ばしさを併せ持つコク味があり香味豊かなものとなった。
牛乳 40.0
卵黄 12.0
砂糖 7.0
ローストアーモンドペースト(本発明品1)1.0
クリーム 40.0
クリームを除く原料を配合した後、クリームをホイップして混合し、冷凍することによって、アーモンド風味の手作り風アイスクリームを製造した。このアイスクリームは本来の乳風味に加え、香味に深みが増し、コク味が非常に強い濃厚な風味のアイスクリームとなった。
牛乳 40.0
卵黄 11.0
砂糖 7.0
ロースト豆乳ペースト(本発明品2) 2.0
クリーム 40.0
クリームを除く原料を配合した後、クリームをホイップして混合し、冷凍することによって、豆乳風味の手作り風アイスクリームを製造した。このアイスクリームは本来の乳風味に加え、香味に深みが増し、コク味が非常に強い濃厚な風味のアイスクリームとなった。
豆乳 85.0
砂糖 8.0
コーヒーエキス(BX.50°) 2.0
ロースト豆乳ペースト(本発明品2) 5.0
上記原料を配合し、調整豆乳飲料を製造した。この豆乳飲料は、豆乳の生臭味がマスキングされ、且つコーヒーの香ばしさが引き立つ、非常に香味豊かな飲みやすい調整豆乳飲料となった。
クッキーミックス 80.0
バター 10.0
砂糖 8.0
ローストワインペースト(本発明品6) 2.0
上記原料を配合し、170℃で10分間、オーブンにて焼く事によりクッキーを製造した。このクッキーは、ワインの香味をほんのりと感じ、コク深いクッキーとなり、高級感のある物に仕上がった。
クッキーミックス 80.0
バター 10.0
砂糖 8.0
ローストアーモンドペースト(本発明品1)2.0
上記原料を配合し、170℃で10分間、オーブンにて焼く事によりクッキーを製造した。このクッキーは、ローストされたアーモンドの香味をほんのりと感じ、コク深いクッキーとなり、高級感のある物に仕上がった。
サラダ油 40.0
醤油 38.0
食酢 20.0
ロースト醤油ペースト(本発明品5) 2.0
上記原料を配合し、サラダ用ドレッシングを製造した。このドレッシングはローストした醤油の香ばしい風味香味を有するものになった。このドレッシングを生野菜にかけて喫食すると、生野菜の風味が引き立ち、美味であった。
Claims (9)
- 単糖及び二糖類から選ばれる1種以上の糖類を、糖類の品温が糖類の熔融温度±20℃になるように加熱し、次いで水を添加することにより当該品温を10〜40℃低下させた後、食品素材を加え、加熱濃縮することを特徴とするロースト食品の製造方法。
- 前記加熱が、糖類の熔融温度±15℃の温度である請求項1に記載の製造方法。
- 糖類がブドウ糖、果糖、砂糖、マルトース、ラクトース及びトレハロースから選ばれる1種以上である請求項1又は2記載のロースト食品の製造方法。
- 食品素材が、植物性素材、動物性素材及び醸造物から選ばれる1種以上である請求項1〜3の何れか1項記載のロースト食品の製造方法。
- 植物性素材が、穀類、キノコ類、野菜類、果実類、種実類、海草類及び豆乳から選ばれる1種以上である請求項4記載のロースト食品の製造方法。
- 動物性素材が、魚介類、肉類、乳製品及び卵製品から選ばれる1種以上である請求項4記載のロースト食品の製造方法。
- 醸造物が、味噌、醤油、酒類、酢及びソース類から選ばれる1種以上である請求項4記載のロースト食品の製造方法。
- 請求項1〜7の何れか1項記載の製造方法により得られるロースト食品。
- 請求項8記載のロースト食品を含有する食品。
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