以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
<投写型表示装置:第1例>
図1は、背面投写型の表示装置の一実施形態(第1例)であるプロジェクションテレビジョン装置(以下プロジェクションテレビと記す)の概略図であり、図1(1)は正面図、図1(2)は側面図である。
図1(1),(2)に示すように、背面投写型の表示装置であるプロジェクションテレビ1Aは、フレーム(筐体の枠)30Aを備え、このフレーム30Aに、投写型表示装置の基本光学系である投射光学装置の一例としてプロジェクタユニット3、反射ミラー40、および透過型のスクリーン50が設けられている。スクリーン50の左右には、スピーカ2が設けられている。本例の場合、フレーム30Aとスクリーン50で筐体の全体が概ね構成される。透過型のスクリーン50を用いることで、背面投写の投写型表示装置が構成されるようにしている。
プロジェクタユニット3は、画像投影光束を出射するものであり、光源からの光を反射型パネルに入射して、反射型パネルで映像信号に基づき回転偏光して空間変調した光学像を投影手段(投影レンズ)で拡大投影するように構成されている。本実施形態では、反射型パネルとしては、対向する一対の基板と一対の基板の間に封入された液晶とを有する反射型の液晶パネルを使用する。
フレーム30Aは、プロジェクタユニット3を保持するボトムキャビネット31と、ボトムキャビネット31の上部に設けられた図示を割愛した矩形枠状のスクリーン取付部と、ボトムキャビネット31の上部でスクリーン取付部の後方に設けられた逆台形状の反射ミラー取付部33などを備えている。
反射ミラー40は、反射面40aを有し、プロジェクタユニット3の上方かつ背面投影型のスクリーン50の後方に配置され、反射面40aによってプロジェクタユニット3から出射された画像投影光束をスクリーン50の背面に向けて反射する。反射ミラー40は、上下左右のスクリーン取付部およびねじを介して反射ミラー取付部33に取り付けられ、スクリーン取付部および反射ミラー40を覆うように後部上カバー44がフレーム30Aに取り付けられている。
スクリーン50は、反射ミラー40によって反射された画像投影光束が背面に投射されることで前面にテレビジョン画像が表示されるものである。スクリーン50は、たとえば、映像源側に配置されるフレネルレンズと、このフレネルレンズの後段に配置されるレンチキュラースクリーンによって構成される。また、これに加えて外光によるコントラスト劣化の減少、および、レンチキュラースクリーンの保護を目的とする別のスクリーンを設置してもよい。
スクリーン50は、上下左右の図示を割愛した取付部材およびねじを介してスクリーン取付部に取り付けられ、取付部材およびスクリーン50の周囲の箇所を覆うように枠状の化粧板50aがスクリーン取付部に取り付けられている。また、スクリーン取付部の下方のフレーム30Aの前面部分は、ボトムキャビネット31の前面部分が位置しており、前面部分を覆うように化粧板50bが枠状の化粧板50aの下部に取り付けられている。
プロジェクタユニット3はボトムキャビネット31の前面部分の後方にベース部材28を介してフレーム30Aに取り付けられ、さらにプロジェクタユニット3などを覆うように後部下カバー46がフレーム30Aに取り付けられている。より詳細には、プロジェクタユニット3は光源側ユニット3aと画像出射側ユニット3bとを有し、光源側ユニット3aと画像出射側ユニット3bはともにベース部材28に取り付けられこのベース部材28を介してフレーム30Aに取り付けられている。
ベース部材28は、その前面がボトムキャビネット31(フレーム30A)にねじにより締結され固定されている。ベース部材28の上面には、すなわち、フレーム30A側には、投射レンズ18の光軸と合致する軸が突設され、軸の周囲の上面箇所に4つのボス部が突設され、それらボス部の上端面が、投射レンズ18の光軸と直交する平面に沿って延在する支持面として形成されている。
プロジェクションテレビ1Aの電装部については、図示を割愛するが、たとえば、放送波(アナログ波や、地上もしくは衛星のデジタル波)を受信するための受信回路、画像信号処理回路、スピーカ2を駆動する音声信号処理回路、全体を制御する制御回路、ユーザ操作を受け付ける操作スイッチなどを備える。
受信回路は、制御回路からの指令に基づいて選局を行ない、アンテナから受信したテレビジョン信号を復調して画像信号と音声信号に分離して出力する。画像信号処理回路は、画像信号に対して必要な信号処理を行い、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の画像情報を生成し、これら各画像情報に対応する画像信号(駆動信号)を3つの色別の液晶表示装置の液晶表示部(表示パネル)にそれぞれ供給する(詳細は後述する)。
音声信号処理回路は、音声信号に対して必要な信号処理や増幅処理を行なってオーディオ信号を生成しスピーカ2に供給する。これによりスピーカ2から音声が発生される。操作スイッチは、プロジェクションテレビ1Aによる放送の視聴に関係する種々の操作や設定を行なうためのものであり、たとえば、選局スイッチ、音量調整スイッチ、入力切替スイッチなどを含んでいる。制御回路は、操作スイッチの操作に基づいて、受信回路、画像信号処理回路、音声信号処理回路の制御を行なう。
また、図示しないが、DVDプレーヤやビデオデッキなどの外部装置から供給される画像信号および音声信号を入力するための外部入力端子と、これら外部入力端子に供給された画像信号および音声信号を画像信号処理回路および音声信号処理回路に切り替えて入力する入力切替回路が設けられている。操作スイッチの操作により外部入力端子に供給される画像信号および音声信号が入力切替回路を介して画像信号処理回路および音声信号処理回路に供給されるようになっている。
<投写型表示装置:第2例>
図1Aは、投写型表示装置の他の実施形態(第2例)である液晶プロジェクタ装置を使用した情報提示システムの一実施形態であるテレビ会議システムの全体概要を示す図である。図1Aでは、一般的なテレビ会議システムにおける発表者側の会議室における構成例を示している。会議室には、画像情報をスクリーン上に表示するための仕組みとして、会議資料としての各種の投影用の画像情報を記憶しているコンピュータ84、コンピュータ84と接続された投影装置である液晶プロジェクタ装置1B、液晶プロジェクタ装置1Bから出力される画像を表示するための反射型のスクリーン88、スクリーン88上の提示情報上に発表者90が指示するポイントとしてのマークを付すレーザポインタ92が備えられている。反射型のスクリーン88を用いることで、前面投写の投写型表示装置が構成されるようにしている。
前面投写型の表示装置である液晶プロジェクタ装置1Bには、プロジェクションテレビ1Aの場合と同様に、投写型表示装置の基本光学系である投射光学装置の一例としてプロジェクタユニット3が筐体30Bに内蔵されている。
また図示したテレビ会議システムでは、会議室にいる発表者90や聴講者(図示せず)などの音声をピックアップするヘッドセット94、スクリーン88上に投影された資料画像や発表者90などの会議が行なわれる場所の様子を撮影するテレビカメラ96が備えられている。テレビカメラ96は、単に会議室の様子を撮像するだけでなく、スクリーン88上のレーザポインタ92によって投影されたポインタマークを撮影するようにもなっている。なお、会議室の様子を撮像するカメラとポインタマークを撮影するカメラとを別体の物としてもよい。
発表者90は、レーザポインタ92を手に持って、スクリーン88に投影された画像の特定箇所をレーザポインタ92で指し示すことができるようになっている。レーザポインタ92には、たとえば赤色レーザダイオードが使用されており、スクリーン88におけるレーザポインタ92の照射位置には、赤い円形状のポインタが表示される。このとき、テレビカメラ96でスクリーン88上のポインタを撮影し、その撮像情報をコンピュータ84に送る。
コンピュータ84には、その画像情報からレーザポインタ92の示す位置を判別するソフトウエアがインストールされており、スクリーン88上のポインタ(光スポット)部分を輝度閾値レベルで分別するあるいは赤色に着目した判別を行なうなどの画像処理技術を利用して捜し出すことでポインタの指し示した位置を特定するようになっている。
<<投写型表示装置の基本光学系の詳細>>
<基本概念>
図2および図2Aは、本発明に係る偏光ビームスプリッタ(光学プリズム)や投射光学装置や投写型表示装置の一実施形態を構成するに当たっての基本原理を説明する図である。ここで、図2は、偏光ビームスプリッタにおいて生じる非点隔差を説明する図である。図2Aは、非点隔差が発生した場合の光学系のMTF(Modulation Transfer Function)のデフォーカス特性を説明する図である。
図2に示すように、投射光学装置や投写型表示装置の基本要素として、偏光ビームスプリッタ842と反射型液晶パネル870が設けられている。偏光ビームスプリッタ842は、2つの三角柱のガラスプリズム(直角プリズム)842A,842Bの斜面(対向面)の間に偏光分離機能を持つ厚みt_843の平行平板層843が光学部材の一例として配置されている。平行平板層843は、反射型液晶パネル870の法線に対して傾角θ(たとえば45度)で傾いた状態でガラスプリズム842A,842Bに挟みこまれている。
このような構成の偏光ビームスプリッタ842は、当該偏光ビームスプリッタ842に入射したP偏光成分とS偏光成分のうち、平行平板層843に対してP偏光成分を透過し、平行平板層843に対してS偏光成分を反射する機能を持つ。
ガラスプリズム842A,842Bの各屈折率をNp_842a ,Np_842b とし(両者は等しくNpとする)、平行平板層843の屈折率をN_843、厚みをt_843とすると、反射型液晶パネル870で反射された光(本構成例ではP偏光成分)が平行平板層843を通る間に、下記式(2)で表される非点隔差As_843が発生してしまう。平行平板層843がある程度の厚みt_843を持ち、平行平板層843の屈折率N_843とガラスプリズム842A,842Bの屈折率Npに屈折率差がある場合は、非点隔差As_843の発生によって光学系の解像力つまりフォーカス性能が劣化してしまう。
図13(1)は、非点隔差Asが発生した場合の光学系のMTFのデフォーカス特性を示している。図の実線は縦方向の解像力、破線は横方向の解像力を示している。ある距離に焦点を合わせた場合に、焦点面の前後に焦点が合ったように見える範囲(焦点深度と称する)が生じ、焦点深度は“レンズのFナンバー×許容ぼけ”で決まる。したがって、反射型液晶パネル870の解像力を示す指標(ここでは画素ピッチ)をδとし、使用される投影レンズのFナンバーをFとすると、画素ピッチδが許容ぼけに対応するので、本例における焦点深度はFδで表される。ここで、図のRは限界解像力を表している。
もし、投影レンズなどでの解像力劣化がないとすると(つまり理想状態では)、許される非点隔差Asの大きさ(許容非点隔差量As0)は、図13(1)に示すように“2×Fδ”、すなわち焦点深度Fδの2倍となる。
しかしながら実際には、投影レンズなどでの解像力劣化は存在する。したがって、この実体面での解像力劣化を勘案して、許容非点隔差量As0が決定されることになる。たとえば、図W13(2)は許容非点隔差量As0が焦点深度Fδに等しい場合のMTFのデフォーカス特性である。第1基準の許容非点隔差量As0_1がこの状態であれば、投影レンズなどでの解像力の劣化が存在しても十分に所望の解像力を得られることが可能である。望ましくは、実体面での解像力劣化の許容度合いをさらに大きくするべく、第2基準の許容非点隔差量As0_2は焦点深度Fδの半分のFδ/2以下であるのがよい。
なお、ここで示した例は、反射型液晶パネル870から出力されるパネル出射光が、偏光ビームスプリッタ842に入射して投影レンズによりスクリーン上の所望の位置に投影される過程において、平行平板層843を1回通る場合である。平行平板層843をn回通るように投射光学系を構成した場合には、その回数nに合わせて、第1基準の許容非点隔差量As0_1はFδ/n以下、第2基準の許容非点隔差量As0_2はFδ/(2×n)以下とする。
<第1実施形態>
図3〜図3Bは、偏光ビームスプリッタの第1実施形態の基本構成を説明する図である。ここで、図3は第1実施形態の偏光ビームスプリッタ100Aの全体概要を示す図である。詳細には、図3(1)は第1実施形態の偏光ビームスプリッタ100Aの全体概要を示す斜視図であり、図3(2)は第1実施形態の偏光ビームスプリッタ100Aのx−y平面における断面図である。図3Aは、第1実施形態の偏光ビームスプリッタ100Aの動作を説明する図である。図3Bは、第1実施形態の偏光ビームスプリッタ100Aの光学定数を示す図表である。
図3(1),(2)に示すように、第1実施形態の偏光ビームスプリッタ100Aは、ほぼ同じ屈折率を有するガラス(硝子)を基材とする三角柱形状のガラスプリズム(プリズム基板)102,104と、ガラスプリズム102,104の対向面間に配された2つの平行平板層106A,108Aを備えている。
第1平行平板層106Aは、ある程度の厚みt_106A を有する偏光性フィルムの膜を主要部に有して構成されており、それ全体が偏光分離素子として機能する。たとえば、Vikuiti(登録商標および/または商標)DBEF−Dフィルムを偏光分離素子に使用したものとする。
第2平行平板層108Aは、ある程度の厚みt_108A を有し、ガラスプリズム102,104と同様もしくは類似の基材(本例ではガラス基板)で構成されており、偏光分離機能を持つ第1平行平板層106Aを起因とする非点隔差As1を補正する機能を持つように、第1平行平板層106Aの光学定数に適合するような光学定数が設定されている(詳細は後述する)。
ガラスプリズム102は、三角柱形状として3つの側面102a,102b,102cを有するが、側面102a,102bは光学経路上に偏光ビームスプリッタ100Aが配置された際に入射面または出射面となる面である。側面102cは、他方のガラスプリズム104に対向する対向面となる。ガラスプリズム104も同様に、その三角柱形状として3つの側面104a,104b,104cを有するが、側面104a,104bは光学経路上に偏光ビームスプリッタ100Aが配置された際に入射面または出射面となり、側面104cは、一方のガラスプリズム102に対向する対向面となる。以下、説明を簡易にするために、側面102a,102b,104a,104bは、形成される光路に応じて入射面または出射面と称し、側面102c,104cは対向面と称することがある。
2つの平行平板層106A,108Aは、第1平行平板層106Aがガラスプリズム102の対向面(側面102c)側、第2平行平板層108Aがガラスプリズム104の対向面(側面104c)側となるようにして、2つの三角柱のガラスプリズム102,104の間に略平行に配置されている。このとき、第1平行平板層106Aは、接着剤によりガラスプリズム102の対向面2cに接着固定されるし、第2平行平板層108Aは、接着剤によりガラスプリズム104の対向面104cに接着固定される。
このようにガラスプリズム102,104間に2つの平行平板層106A,108Aが配置された第1実施形態の偏光ビームスプリッタ100Aの基本的な動作は以下の通りである。第1の動作例としては、図3A(1)に示すように、ガラスプリズム102の入射面(側面102a)から光線が入射されるものとする。入射光はP偏光成分とS偏光成分を有する。平行平板層106A,108Aはガラスプリズム102に入射する光線に対してθ1(=θp:たとえば45度±15度)傾いて配置される。
入射光は、先ずガラスプリズム102の入射面(図では側面102a)に入射し、次に、ガラスプリズム102と第1平行平板層106Aの接着面(対向面102c)に入射する。次に、第1平行平板層106Aに光が入射するが、第1平行平板層106Aは偏光分離機能を持つので、S偏光成分は反射し、P偏光成分は透過する。その後、S偏光成分は、再びガラスプリズム102に入り、出射面(図では側面102b)より出射される。一方、P偏光成分は、第1平行平板層106Aを出て先ず第2平行平板層108Aに入射・透過した後、さらに他方のガラスプリズム104に入る。そしてガラスプリズム104に入射後、これを透過し、出射面(図では側面104b)より出射される。
また、第2の動作例としては、図3A(2)に示すように、ガラスプリズム104の入射面(側面104a)から光線が入射されるものとする。入射光はP偏光成分とS偏光成分を有する。平行平板層106A,108Aはガラスプリズム102に入射する光線に対してθ1(=θp:たとえば45度±15度)傾いて配置される。
入射光は、先ずガラスプリズム104の入射面(図では側面104a)に入射し、第2平行平板層108Aを通過して、第2平行平板層108Aと第1平行平板層106Aの接着面に入射する。次に、第1平行平板層106Aに光が入射するが、第1平行平板層106Aは偏光分離機能を持つので、S偏光成分は反射し、P偏光成分は透過する。その後、S偏光成分は、第1平行平板層106Aを出て再び第2平行平板層108Aに入り、この第2平行平板層108Aを通過してガラスプリズム104に入り、出射面(図では側面104b)より出射される。一方、P偏光成分は、第1平行平板層106Aを出てガラスプリズム102に入る。そしてガラスプリズム102に入射後、これを透過し、出射面(図では側面102b)より出射される。
ここで、第1実施形態の偏光ビームスプリッタ100Aを構成する各光学部材(102,104,106A,108A)の各光学定数は、偏光分離機能を持つ第1平行平板層106Aを起因とする非点隔差を第2平行平板層108Aで補正できるように、ガラスプリズム102の屈折率N_102およびガラスプリズム104の屈折率N_104が等しく屈折率Np1(=Np)で、第1平行平板層106Aは屈折率N_106A (=Na)および厚みt_106A (=ta),第2平行平板層108Aは屈折率N_108A (=Nb)および厚みt_108A (=tb)であるとしたとき、図3Bに示す図表のように設定される。
図3Bに示すような光学定数の場合、第1平行平板層106Aとガラスプリズム102の屈折率差(N_106A −N_102)=(Na−Np)と第2平行平板層108Aとガラスプリズム104の屈折率差(N_108A −N_104)=(Nb−Np)の積は、(Na−Np)*(Nb−Np)=(1.56605−1.59142)*(1.62286−1.59142)=−0.000798となり、負(<0)となる条件を満たす。
また、図3Bに示すような光学定数の場合、式(1)(あるいは式(2))より、第1平行平板層106Aによる非点隔差As_106A (=As1)は15.5μm、第2平行平板層108Aによる非点隔差As_108A (=As2)は−15.8μmとなり、相当程度の大きさの値を持つ。しかしながら、両非点隔差As_106A ,As_108A は正負が逆であり、ほぼ同じ大きさの値を持つ。よって、両非点隔差As_106A ,As_108A の合成成分の絶対値(=|As1+As2|)である全体の非点隔差Asは0.3μmとなり、許容非点隔差量As0に対して十分に小さくできることが期待できる。
図4は、第1実施形態の偏光ビームスプリッタ100Aを使用した第1実施形態の基本構成のプロジェクタユニット3A_1(投射光学系)を示す図である。この基本構成は、反射型液晶パネル170にS偏光成分が入射するようにした例である。
図4に示すように、第1実施形態(基本構成)のプロジェクタユニット3A_1は、照明手段112と、画像形成手段114と、入射レンズ117aおよび投射レンズ117bを具備する投影レンズ117を備えている。
照明手段112は画像形成手段114に光束を照射し、画像形成手段114は、画像情報SVに基づいて変調した後に画像投影光束として投影レンズ117の入射レンズ117aに入射させる。入射レンズ117aに入射した画像投影光束は、投影レンズ117の投射レンズ117bにより図示を割愛したスクリーンに投射されることで、スクリーン上に画像が投影される。
照明手段112は、詳しくは、所定色の光(たとえば白色光)を出射する光源(放電ランプ)122と、照明光学系123を有している。照明光学系123は、光源122からの光を集光する反射鏡124(放物面鏡)と、光源122の前方に光軸に対して直線状に配置されたレンズ群125を有する。図では、レンズ群125として1枚の凸レンズのみを示しているが、この他にも、たとえばUVカットフィルタや1/2波長板を具備したコンデンサレンズなどが設けられることもある。
画像形成手段114は、前述の第1実施形態の偏光ビームスプリッタ100Aと、画像情報の光束を生成する反射型液晶パネル170を有している。偏光ビームスプリッタ100Aは光の偏光方向によって入射光を反射あるいは透過する機能を有する。この偏光ビームスプリッタ100Aの第1平行平板層106Aで反射されたS偏光成分の結像位置に反射型液晶パネル170が配置されている。
たとえば、光源122から出射される光(放射光)は、反射鏡124により集光され、略平行光の光束に変換されレンズ群125に入射する。レンズ群125を通過した光束は偏光分離機能を持つ偏光ビームスプリッタ100Aを介して反射型液晶パネル170に集光・照明する。反射型液晶パネル170の前に配置される偏光ビームスプリッタ100Aは、図3Aに示したように、第1平行平板層106Aにて、S偏光成分を選択的に反射し、P偏光成分を透過する。そして、S偏光成分が反射型液晶パネル170に入射する。
反射型液晶パネル170は、印加される映像信号SVに従い内部の液晶に電界を印加する。これにより、入射光(本例ではS偏光成分)は偏光回転し、S偏光成分からP偏光成分に変化し、出射する。つまり、反射型液晶パネル170によって映像信号SVに基づき空間変調され第2の偏光成分(本例ではP偏光成分)に変換され、反射型液晶パネル170に書き込まれた映像信号SVに応じた光学像が反射型液晶パネル170から出射する。
反射型液晶パネル170から出力される映像情報SVで空間変調されたパネル出射光は、映像信号SVに応じた光学像とされるが、再度偏光ビームスプリッタ100Aに入射する。このとき、反射型液晶パネル170により偏光の振動方向が回転されたP偏光成分は、先ず、一方のガラスプリズム102に入射した後に第1平行平板層106Aに入射・透過し、さらに第2平行平板層108Aに入射・透過した後に、他方のガラスプリズム104に入る。そしてガラスプリズム104に入射後、これを透過し、出射面より出射される。この後、投影レンズ117により図示を割愛したスクリーン上に、反射型液晶パネル170で光の偏光状態の変化として形成される光学像が拡大投影表示される。
ここで、反射型液晶パネル170から出力されるパネル出射光が、偏光ビームスプリッタ100Aに入射して投影レンズ117によりスクリーン上の所望の位置に投影される過程では、第1平行平板層106Aにて非点隔差As_106A (=As1)が発生し、また第2平行平板層108Aにて非点隔差As_108A (=As2)が発生する。
しかしながら、偏光ビームスプリッタ100Aの光学定数は図3Bに示したように設定されており、第1平行平板層106Aにより一旦15.5μmの正方向の非点隔差As_106A (=As1)が発生するが、第2平行平板層108Aにより−15.8μmの負方向の非点隔差As_108A (=As2)が発生するためにほぼ打ち消し合うことになり、全体の非点隔差As(=|As1+As2|)は十分に小さくなる。
たとえば、第1実施形態(基本構成)のプロジェクタユニット3A_1に使用される投影レンズ117のFナンバーが2.5であり、反射型液晶パネル170の画素ピッチが7μmであるとき、焦点深度Fδは17.5μm、焦点深度Fδの半分のFδ/2は8.75μmとなる。両非点隔差As_106A ,As_108A の絶対値は、ともに焦点深度Fδの半分のFδ/2(=8.75μm)よりも大きい。このため、第1平行平板層106Aのみの場合には、所望の解像力は得られない。これに対して、第1平行平板層106Aを起因とする非点隔差As_106A を補正する第2平行平板層108Aを設けることで、全体の非点隔差Asの絶対値(=|As1+As2|)は0.3μmとなる。全体の非点隔差Asの絶対値(=|As1+As2|)は、第1基準の許容非点隔差量As0_1である焦点深度Fδ(=17.5μm)以下を満たすし、第2基準の許容非点隔差量As0_2である焦点深度Fδの半分のFδ/2(=8.75μm)以下をも満たし、許容非点隔差量As0に対して格段に小さく、所望の解像力が得られるようになる。
ただし、第2平行平板層108Aの配置によっては、コントラストに悪影響を及ぼすことになるので、第1平行平板層106Aに対して第2平行平板層108Aを光路の前方側、後方側の何れに配置するのが好ましいかに留意する必要がある。
たとえば、図4に示す第1実施形態のプロジェクタユニット3A_1では、光源122からの光の道筋(光路)を辿ると、第2平行平板層108Aは、S偏光成分を選択反射しP偏光成分を透過させる第1平行平板層106Aの後方側に配置されている。このため、第1実施形態のプロジェクタユニット3A_1においては、第2平行平板層108Aによるコントラストの悪影響は殆どない。
<第1実施形態:変形例>
図4Aは、第1実施形態の偏光ビームスプリッタ100Aを使用した第1実施形態の変形構成のプロジェクタユニット3A_2(投射光学系)を示す図である。この変形構成は、図13(2)に示したのと同様に、反射型液晶パネル170にP偏光成分が入射するようにした例である。装置構成としては、図13(2)に示した構成において、従前の偏光ビームスプリッタ942に代えて第1実施形態の偏光ビームスプリッタ100Aを使用した状態と考えればよい。ここではその構成の詳細説明を割愛する。
このような変形構成の場合、反射型液晶パネル170から出力される映像情報SVで空間変調されたパネル出射光(S偏光成分)は、映像信号SVに応じた光学像とされるが、再度偏光ビームスプリッタ100Aに入射する。このとき、反射型液晶パネル170により偏光の振動方向が回転されたS偏光成分は、先ず、他方のガラスプリズム104に入射した後に第2平行平板層108Aに入射・透過し、さらに第1平行平板層106Aに入射する。第1平行平板層106Aは全体として偏光分離機能を持っているのでS偏光成分を反射する。
これにより、第1平行平板層106Aに入射したS偏光成分は反射され第1平行平板層106Aを出て再度第2平行平板層108Aに入射・透過した後に、他方のガラスプリズム104に入る。そしてガラスプリズム104に入射後、これを透過し、出射面(側面104b)より出射される。この後、投影レンズ117により図示を割愛したスクリーン上に、反射型液晶パネル170で光の偏光状態の変化として形成される光学像が拡大投影表示される。
ここで、反射型液晶パネル170から出力されるパネル出射光が、偏光ビームスプリッタ100Aに入射して投影レンズ117によりスクリーン上の所望の位置に投影される過程では、第2平行平板層108Aにて非点隔差As_108A (=As2)が発生し、また第1平行平板層106Aにて非点隔差As_106A (=As1)が発生する。さらに第1平行平板層106AによりS偏光成分のみ選択反射されることで、第1平行平板層106Aにて非点隔差As_106A (=As1)が発生し、また第2平行平板層108Aにて非点隔差As_108A (=As2)が発生する。
しかしながら、偏光ビームスプリッタ100Aの光学定数は図3Bに示したように設定されており、第2平行平板層108Aにより−15.8μmの負方向の非点隔差As_108A (=As2)が発生するが、第1平行平板層106Aにより一旦15.5μmの正方向の非点隔差As_106A (=As1)が発生するためにほぼ打ち消し合うことになるし、第1平行平板層106Aにより一旦15.5μmの正方向の非点隔差As_106A (=As1)が発生するが、第2平行平板層108Aにより−15.8μmの負方向の非点隔差As_108A (=As2)が発生するためにほぼ打ち消し合うことになり、全体の非点隔差As(=|2×As1+2×As2|)は十分に小さくなる。つまり、第1平行平板層106Aを2回通ることで発生する非点隔差は2×As1=31.0μmとなり、さらに、第2平行平板層108Aをも2回通ることで発生する非点隔差は2×As2=−31.6μmとなるので、ほぼ打ち消し合うことになる。
たとえば、第1実施形態(変形構成)のプロジェクタユニット3A_2に使用される投影レンズ117のFナンバーが2.5であり、反射型液晶パネル170の画素ピッチが7μmであるとき、焦点深度Fδは17.5μm、焦点深度Fδの半分のFδ/2は8.75μmとなる。両非点隔差As_106A ,As_108A の絶対値は、ともに焦点深度Fδの半分のFδ/2(=8.75μm)よりも大きく、第1平行平板層106Aのみの場合には31.0μmの非点隔差が発生してしまい所望の解像力は得られない。これに対して、第1平行平板層106Aを起因とする非点隔差As_106A を補正する第2平行平板層108Aを設けることで、全体の非点隔差As(=|2×As1+2×As2|)は0.6μmとなる。全体の非点隔差As(=|2×As1+2×As2|)は、第1基準の許容非点隔差量As0_1である焦点深度Fδの半分のFδ/2(=8.75μm)以下を満たすし、第2基準の許容非点隔差量As0_2である焦点深度Fδの4分の1のFδ/4(=4.38μm)以下をも満たし、許容非点隔差量As0に対して格段に小さく、所望の解像力が得られるようになる。
ただし、このような変形構成のプロジェクタユニット3A_2の場合、第1平行平板層106Aは膜全体で偏光分離機能を果たすものであるので、反射型液晶パネル170から出力される映像情報SVで空間変調されたパネル出射光が第1平行平板層106Aの全体を2回通るとは言えない。そのために、第2平行平板層108Aによる補正効果が過剰になることが懸念される。この点においては、図4に示した基本構成の方が優れていると考えてよい。
<第2実施形態>
図5〜図5Cは、偏光ビームスプリッタの第2実施形態の基本構成を説明する図である。ここで図5は、図3(1)に示した配置と同様条件でのx−y平面における第2実施形態の偏光ビームスプリッタ100Bの断面図である。図5Aは、第2実施形態の偏光ビームスプリッタ100Bにて使用するワイヤーグリッド偏光分離素子の構造例を示す図である。図5Bは、第2実施形態の偏光ビームスプリッタ100Bの動作を説明する図である。図5Cは、第3実施形態の偏光ビームスプリッタ100Bの光学定数を示す図表である。
図5に示すように、第3実施形態の偏光ビームスプリッタ100Bは、ほぼ同じ屈折率を有する三角柱形状のガラスプリズム102,104と、ガラスプリズム102,104の対向面間に配された2つの平行平板層106B,108Bを備えている。
第1平行平板層106Bは、ある程度の厚みt_106B を有するガラス基板上に、つまり第1平行平板層106Bの表面にワイヤーグリッドなどの薄膜の偏光分離素子が形成された構造をなしている。すなわち、第1平行平板層106Bはワイヤーグリッド偏光分離素子として構成されており、ガラス基板107bの一方の面に金属格子107cが所定ピッチで設けられて、金属格子構造面107aが形成される構造を持つ。
具体的には、第1平行平板層106Bは、図5A(1),(2)に示すように、ガラス基板107bの一方の面(金属格子構造面107a)に、アルミニウムなどの金属で平行な縞状の金属格子107cを形成したものである。金属格子107cを形成する個々の金属ストライプの幅をw、高さをhとし、また格子の形成周期(ピッチ)をptとしたとき、入射光の波長に対して約1/5以下の十分小さい周期ptで金属格子107cを形成すると、周期方向と垂直に振動する電界成分の光は反射し、また平行に振動する電界成分の光は透過し、殆ど光吸収がなく、効率よく偏光分離することができる。
このため図5A(3)に示すように、自然光がある入射角で入射したとき、反射する光は第1平行平板層106B(ワイヤーグリッド偏光分離素子)の入射面に対してS偏光成分、透過する光は入射面に対してP偏光成分となる。このような第1平行平板層106Bは、偏光分離特性がよく、また入射角に対して分光透過率の変化が小さいという利点を有する。三角柱のガラスプリズム102,104に、第1平行平板層106B(ワイヤーグリッド偏光分離素子)を挟み込むことで、偏光分離特性のよい偏光ビームスプリッタを構成することができる。
第2平行平板層108Bは、ある程度の厚みt_108B を有するガラス基板で構成されており、偏光分離機能を持つ第1平行平板層106Bを起因とする非点隔差As1を補正する機能を持つように、第1平行平板層106Bの光学定数に適合するような光学定数が設定されている(詳細は後述する)。
2つの平行平板層106B,108Bは、第1平行平板層106B(ワイヤーグリッド偏光分離素子)がガラスプリズム102の対向面(側面102c)側、第2平行平板層108Bがガラスプリズム104の対向面(側面104c)側となるようにして、2つの三角柱のガラスプリズム102,104の間に略平行に配置されている。このとき、第2平行平板層108Bは接着剤によりガラスプリズム104の対向面104cに接着固定される。第1平行平板層106Bは、先ずガラス基板107bが接着剤により第2平行平板層108Bに接着固定される。一方、第1平行平板層106Bの金属格子構造面107aは、ガラスプリズム102の対向面102cに対して、接着固定されるようにしてもよい。
なお、ワイヤーグリッド偏光分離素子は、微小な金属(たとえばアルミニウム)で平行に縞状の金属格子107cを形成したものであり、金属格子107cの高さは、100〜200nm程度で、金属格子107cの幅は50〜100nm程度であるため、このような金属格子107cが形成された面に三角柱プリズムを接着して挟み込むことで一体化すると、接着剤により金属格子107cが破壊されてしまい、所望する偏光分離性能が発揮されないことが懸念される。また、金属格子107cが破壊されなかったにしても、ガラス基板107bの逆側、つまり金属格子構造面107a側は屈折率が1でないと所望の性能が発揮し難い。屈折率1とは空気であるから、三角柱プリズムに挟み込んで接着することでは、十分な性能が発揮されない。
これらの問題の解決には、特開2006−3384号公報に記載の手法に準じて、ガラス基板107bの金属格子107cが形成されていない方の面を第2平行平板層108Bに固着し、ガラスプリズム102は、その対向面102cが、空気層(エアーギャップ)を形成する状態で、第1平行平板層106B(ワイヤーグリッド偏光分離素子)が第2平行平板層108B側に固着されている金属格子107c(金属格子構造面107a)に対向するように配置するのがよい。つまり、金属格子107c(金属格子構造面107a)とガラスプリズム102を、エアギャップ(空気層)を介して対向させて配置することで、ワイヤーグリッド偏光分離素子である第1平行平板層106Bについては、金属格子構造面107a側をガラスプリズム102に接着しないようにする。
第1平行平板層106Bの金属格子構造面107a側をガラスプリズム102に接着しない構成とする場合、たとえば、エアギャップを形成した状態が維持されるように、ガラスプリズム102,104の上面および下面を適当な大きさ・形状の固定プレートで接着固定するとよい。あるいは、第2平行平板層108B上に接着された第1平行平板層106Bの金属格子構造面107aの端部と、ガラスプリズム102の対向面102cの端部とを、スペーサを介在させる状態で接着固定するようにしてもよい。あるいは、スペーサを用いた上で、さらにガラスプリズム102,104の上面および下面を固定プレートで固定するようにしてもよい。スペーサを接着する端部は、金属格子構造面107a上で光が入射しない部位とする。スペーサは、第2平行平板層108Bに対して、その面の4辺上で囲むように形成してもよいし、少なくとも2辺に設けられてもよい。
このようにガラスプリズム102,104間に2つの平行平板層106B,108Bが配置された第2実施形態の偏光ビームスプリッタ100Bの基本的な動作は以下の通りである。第1の動作例としては、図5B(1)に示すように、ガラスプリズム102の入射面(側面102a)から光線が入射されるとする。入射光はP偏光成分とS偏光成分を有する。平行平板層106B,108Bはガラスプリズム102に入射する光線に対してθ1(=θp:たとえば45度±15度)傾いて配置される。
入射光は、先ずガラスプリズム102の入射面(図では側面102a)に入射し、次に、ガラスプリズム102と第1平行平板層106Bの接着面(対向面102c)に入射する。次に、第1平行平板層106Bの金属格子構造面107aに光が入射するが、金属格子構造面107aに対して、S偏光成分は反射し、P偏光成分は透過する。その後、S偏光成分は、再びガラスプリズム102に入り、出射面(図では側面102b)より出射される。一方、P偏光成分は、先ず第1平行平板層106Bのガラス基板107bに入り、このガラス基板107bを出て第2平行平板層108Bに入射・透過した後、さらに他方のガラスプリズム104に入る。そしてガラスプリズム104に入射後、これを透過し、出射面(図では側面104b)より出射される。
また、第2の動作例としては、図5B(2)に示すように、ガラスプリズム104の入射面(側面104a)から光線が入射されるものとする。入射光はP偏光成分とS偏光成分を有する。平行平板層106B,108Bはガラスプリズム102に入射する光線に対してθ2(=θp:たとえば45度±15度)傾いて配置される。
入射光は、先ずガラスプリズム104の入射面(図では側面104a)に入射し、第2平行平板層108Bを通過して、第1平行平板層106Bに入射する。第1平行平板層106Bに入射した光は先ずガラス基板107bを通過し金属格子構造面107aに達する。そして、金属格子構造面107aに対して、S偏光成分は反射し、P偏光成分は透過する。その後、S偏光成分は、第1平行平板層106Bのガラス基板107bを出て再び第2平行平板層108Bに入り、この第2平行平板層108Bを通過してガラスプリズム104に入り、出射面(図では側面104b)より出射される。一方、P偏光成分は、ガラスプリズム102に入射後、これを透過し、出射面(図では側面102b)より出射される。
ここで、第2実施形態の偏光ビームスプリッタ100Bを構成する各光学部材(102,104,106B,108B)の各光学定数は、偏光分離機能を持つ第1平行平板層106Bを起因とする非点隔差を第2平行平板層108Bで補正できるように、ガラスプリズム102の屈折率N_102およびガラスプリズム104の屈折率N_104が等しく屈折率Np2(=Np)で、第1平行平板層106Bは屈折率N_106B (=Na)および厚みt_106B (=ta),第2平行平板層108Bは屈折率N_108B (=Nb)および厚みt_108B (=tb)であるとしたとき、図5Cに示す図表のように設定される。
図5Cに示すような光学定数の場合、第1平行平板層106Bとガラスプリズム102の屈折率差(N_106B −N_102)=(Na−Np)と第2平行平板層108Bとガラスプリズム104の屈折率差(N_108B −N_104)=(Nb−Np)の積は、(Na−Np)*(Nb−Np)=(1.60548−1.56605)*(1.51633−1.56605)=−0.00196となり、負(<0)となる条件を満たす。
また、図5Cに示すような光学定数の場合、式(1)より、第1平行平板層106Bによる非点隔差As_106B (=As1)は−27.9μm、第2平行平板層108Bによる非点隔差As_108B (=As2)は27.6μmとなり、相当程度の大きさの値を持つ。一方、両非点隔差As_106B ,As_108B は正負が逆であり、ほぼ同じ大きさの値を持つ。よって、両非点隔差As_106B ,As_108B の合成成分の絶対値(=|As1+As2|)である全体の非点隔差Asは0.3μmとなり、許容非点隔差量As0に対して十分に小さくできることが期待できる。
図6は、第2実施形態の偏光ビームスプリッタ100Bを使用した第2実施形態の基本構成のプロジェクタユニット3B_1(投射光学系)を示す図である。この基本構成は、図13(2)や図4Aに示したのと同様に、反射型液晶パネル170にP偏光成分が入射するようにした例である。装置構成としては、図13(2)に示した構成の偏光ビームスプリッタ942に代えて、あるいは図4Aに示した第1実施形態の変形構成の偏光ビームスプリッタ100A_2に代えて、第2実施形態の偏光ビームスプリッタ100Bを使用した状態と考えればよい。ここではその構成の詳細説明を割愛する。
このような基本構成の場合、反射型液晶パネル170から出力される映像情報SVで空間変調されたパネル出射光(S偏光成分)は、映像信号SVに応じた光学像とされるが、再度偏光ビームスプリッタ100Bに入射する。このとき、反射型液晶パネル170により偏光の振動方向が回転されたS偏光成分は、先ず、他方のガラスプリズム104に入射した後に第2平行平板層108Bに入射・透過し、さらに第1平行平板層106Bに入射する。
第1平行平板層106Bはガラス基板107b上に金属格子107cが形成された構造を持つワイヤーグリッド偏光分離素子として構成されているので、ガラス基板107bに入射したS偏光成分は金属格子構造面107aにて反射されガラス基板107bを出て再度第2平行平板層108Bに入射・透過した後に、他方のガラスプリズム104に入る。そしてガラスプリズム104に入射後、これを透過し、出射面(側面104b)より出射される。この後、投影レンズ117により図示を割愛したスクリーン上に、反射型液晶パネル170で光の偏光状態の変化として形成される光学像が拡大投影表示される。
ここで、反射型液晶パネル170から出力されるパネル出射光が、偏光ビームスプリッタ100Bに入射して投影レンズ117によりスクリーン上の所望の位置に投影される過程では、第2平行平板層108Bにて非点隔差As_108B (=As2)が発生し、また第1平行平板層106B(特にガラス基板107b)にて非点隔差As_106B (=As1)が発生する。さらに第1平行平板層106BによりS偏光成分のみ選択反射されることで、第1平行平板層106B(特にガラス基板107b)にて非点隔差As_106B (=As1)が発生し、また第2平行平板層108Bにて非点隔差As_108B (=As2)が発生する。
しかしながら、偏光ビームスプリッタ100Bの光学定数は図5Cに示したように設定されており、第2平行平板層108Bにより27.6μmの正方向の非点隔差As_108B (=As2)が発生するが、第1平行平板層106Bにより一旦−27.9μmの負方向の非点隔差As_106B (=As1)が発生するためにほぼ打ち消し合うことになるし、第1平行平板層106Bにより選択反射されるS偏光成分についても、第1平行平板層106Bにより一旦−27.9μmの負方向の非点隔差As_106B (=As1)が発生するが、第2平行平板層108Bにより27.6μmの正方向の非点隔差As_108B (=As2)が発生するためにほぼ打ち消し合うことになり、全体の非点隔差As(=|2×As1+2×As2|)は十分に小さくなる。つまり、第1平行平板層106Bを2回通ることで発生する合成の非点隔差は2×As1=−55.8μとなり、さらに、第2平行平板層108Bを2回通ることで発生する合成の非点隔差は2×As2=55.2μmとなるので、ほぼ打ち消し合うことになる。
たとえば、第2実施形態(基本構成)のプロジェクタユニット3B_1に使用される投影レンズ117のFナンバーが2.5であり、反射型液晶パネル170の画素ピッチが7μmであるとき、焦点深度Fδは17.5μm、焦点深度Fδの半分のFδ/2は8.75μmとなる。両非点隔差As_106B ,As_108B の絶対値は、ともに焦点深度Fδの半分のFδ/2よりも大きく、第1平行平板層106Bのみの場合には−55.8μmの非点隔差が発生してしまい所望の解像力は得られない。これに対して、第1平行平板層106Bを起因とする非点隔差As_106B を補正する第2平行平板層108Bを設けることで、全体の非点隔差As(=|2×As1+2×As2|)は0.6μmとなる。全体の非点隔差As(=|2×As1+2×As2|)は、第1基準の許容非点隔差量As0_1である焦点深度Fδの半分のFδ/2(=8.75μm)以下を満たすし、第2基準の許容非点隔差量As0_2である焦点深度Fδの4分の1のFδ/4(=4.38μm)以下をも満たし、許容非点隔差量As0に対して格段に小さく、所望の解像力が得られるようになる。
<第2実施形態:変形例>
図6Aは、第2実施形態の偏光ビームスプリッタ100Bを使用した第2実施形態の変形構成のプロジェクタユニット3B_2(投射光学系)を示す図である。この変形構成は、図4に示したのと同様に、反射型液晶パネル170にS偏光成分が入射するようにした例である。装置構成としては、図4に示した構成において、第1実施形態の偏光ビームスプリッタ100Aに代えて第2実施形態の偏光ビームスプリッタ100Bを使用した状態と考えればよい。
このような変形構成の場合、反射型液晶パネル170から出力される映像情報SVで空間変調されたパネル出射光(P偏光成分)は、映像信号SVに応じた光学像とされるが、再度偏光ビームスプリッタ100Bに入射する。このとき、反射型液晶パネル170により偏光の振動方向が回転されたP偏光成分は、先ず、一方のガラスプリズム102に入射した後に第1平行平板層106Bの金属格子構造面107aに入射する。
第1平行平板層106Bはガラス基板107b上に金属格子107cが形成された構造を持つワイヤーグリッド偏光分離素子として構成されているので、第1平行平板層106Bに入射したP偏光成分は金属格子構造面107aを透過しガラス基板107bに入り、このガラス基板107bを出て第2平行平板層108Bに入射・透過した後に、他方のガラスプリズム104に入る。そしてガラスプリズム104に入射後、これを透過し、出射面(側面104b)より出射される。この後、投影レンズ117により図示を割愛したスクリーン上に、反射型液晶パネル170で光の偏光状態の変化として形成される光学像が拡大投影表示される。
ここで、反射型液晶パネル170から出力されるパネル出射光が、偏光ビームスプリッタ100Bに入射して投影レンズ117によりスクリーン上の所望の位置に投影される過程では、第1平行平板層106Bにて非点隔差As_106B (=As1)が発生し、また第2平行平板層108Bにて非点隔差As_108B (=As2)が発生する。
しかしながら、偏光ビームスプリッタ100Bの光学定数は図5Cに示したように設定されており、第1平行平板層106Bにより一旦−27.9の負方向の非点隔差As_106B (=As1)が発生するが、第2平行平板層108Bにより27.6μmの正方向の非点隔差As_108B (=As2)が発生するためにほぼ打ち消し合うことになり、全体の非点隔差As(=|As1+As2|)は十分に小さくなる。
たとえば、第2実施形態(変形構成)のプロジェクタユニット3B_2に使用される投影レンズ117のFナンバーが2.5であり、反射型液晶パネル170の画素ピッチが7μmであるとき、焦点深度Fδは17.5μm、焦点深度Fδの半分のFδ/2は8.75μmとなる。両非点隔差As_106B ,As_108B の絶対値は、ともに焦点深度Fδの半分のFδ/2(=8.75μm)よりも大きい。このため、第1平行平板層106Bのみの場合には、所望の解像力は得られない。これに対して、第1平行平板層106Bを起因とする非点隔差As_106B を補正する第2平行平板層108Bを設けることで、全体の非点隔差As(=|As1+As2|)は0.3μmとなる。両非点隔差As_106B ,As_108B の合成成分の絶対値(=|As1+As2|)は、第1基準の許容非点隔差量As0_1である焦点深度Fδ(=17.5μm)以下を満たすし、第2基準の許容非点隔差量As0_2である焦点深度Fδの半分のFδ/2(=8.75μm)以下をも満たし、許容非点隔差量As0に対して格段に小さく、所望の解像力が得られるようになる。
ただし、このような変形構成のプロジェクタユニット3B_2の場合、実体面としては、反射型液晶パネル170にて偏光されたS偏光成分を第1平行平板層106Bの金属格子構造面107aにて反射して投影レンズ117により拡大投影表示する基本構成のプロジェクタユニット3B_1に比べて、S/N(Signal (to) Noise ratio ,信号号対雑音比)やコントラストが劣ることが懸念される。この点においては、図6に示した基本構成の方が優れていると考えてよい。
変形構成が基本構成よりもS/Nやコントラストが劣る理由は、以下の通りである。すなわち、通常の硝子でも熱や応力の影響で硝子内部に複屈折が生じてしまい、偏光が乱れてしまう。これにより最終的に偏光を分離する素子の前に通常の硝子を配置してしまうとS/Nやコントラストが低下してしまう。高コントラストのプロジェクタに適用される場合は、それを避けるためには特殊な低光弾性光学ガラスを使用しなければならず、材料の屈折率が限られてしまうので適切な補正を行なうことが難しくなる。
ただし、このような変形構成であっても、低コントラストのプロジェクタへの適用であれば、S/Nやコントラストが劣る問題は気にしなくてよい。しかし、実際上は反射型パネルを用いたプロジェクタは高コントラストが利点であるので低コントラストのプロジェクタに使われることは通常あり得ないと考えられる。
<第3実施形態>
図7〜図7Cは、偏光ビームスプリッタの第3実施形態の基本構成を説明する図である。ここで、図7は、図3(1)に示した配置と同様条件でのx−y平面における第3実施形態の偏光ビームスプリッタ100Cの断面図である。図7Aは、第3実施形態の偏光ビームスプリッタ100Cの動作を説明する図である。図7Bは、第3実施形態の偏光ビームスプリッタ100Cの光学定数を示す図表である。図7Cは、第3実施形態を適用しない場合の偏光ビームスプリッタ100Cxにおける各平行平板層による合成の屈折率を説明する図である。
第3実施形態は、ガラスプリズム102,104の間に第1平行平板層や第2平行平板層以外の平行平板層(第3平行平板層とする)が介在する場合への適用例である。特に後述する第4実施形態との相違点として、ガラスプリズム102,104の間に第1平行平板層106Cと第3平行平板層109Cを備える場合に生じる非点隔差As1が許容非点隔差量As0を満たさない場合に、その非点隔差As1を補正する機能を持つ第2平行平板層108Cを設けるようにした点に特徴を有する。
図7に示すように、第3実施形態の偏光ビームスプリッタ100Cは、ほぼ同じ屈折率を有する三角柱形状のガラスプリズム102,104と、ガラスプリズム102,104の対向面間に配された3つの平行平板層106C,108C,109Cを備えている。
第1平行平板層106Cは、ある程度の厚みt_106C を有する偏光性フィルムの膜を主要部に有して構成されており、それ全体が偏光分離素子として機能する。たとえば、Vikuiti(登録商標および/または商標)DBEF−Dフィルムを偏光分離素子に使用したものとする。
第3平行平板層109Cは、第1平行平板層106Cを紫外光から保護するためのフィルム状の保護層であり、ある程度の厚みt_109C を有する。
第2平行平板層108Cは、ある程度の厚みt_108C を有するガラス基板で構成されており、偏光分離機能を持つ第1平行平板層106Cおよび第1平行平板層106Cの保護膜として機能する第3平行平板層109Cを起因とする非点隔差As1を補正する機能を持つように、第1平行平板層106Cおよび第3平行平板層109Cの光学定数に適合するような光学定数が設定されている(詳細は後述する)。
3つの平行平板層106C,108C,109Cは、先ず第3平行平板層109Cがガラスプリズム102の対向面(側面102c)側、第2平行平板層108Cがガラスプリズム104の対向面(側面104c)側となり、第3平行平板層109Cと第2平行平板層108Cとの間に第1平行平板層106Cが配置されるように、2つの三角柱のガラスプリズム102,104の間に略平行に配置されている。このとき、第3平行平板層109Cは接着剤によりガラスプリズム102の対向面2cに接着固定されるし、第1平行平板層106Cは接着剤により第3平行平板層109Cに接着固定されるし、第2平行平板層108Cは接着剤によりガラスプリズム104の対向面104cに接着固定される。
このようにガラスプリズム102,104間に3つの平行平板層106C,108C,109Cが配置された第3実施形態の偏光ビームスプリッタ100Cの基本的な動作は以下の通りである。
第1の動作例としては、図7A(1)に示すように、ガラスプリズム102の入射面(側面102a)から光線が入射されるものとする。入射光はP偏光成分とS偏光成分を有する。平行平板層106C,108C,109Cはガラスプリズム102に入射する光線に対してθ3(=θp:たとえば45度±15度)傾いて配置される。
入射光は、先ずガラスプリズム102の入射面(図では側面102a)に入射し、次に、第3平行平板層109Cに入射・透過した後に、第3平行平板層109Cと第1平行平板層106Cの接着面に入射する。次に、第1平行平板層106Cに光が入射するが、第1平行平板層106Cは偏光分離機能を持つので、S偏光成分は反射し、P偏光成分は透過する。その後、S偏光成分は、再びガラスプリズム102に入り、出射面(図では側面102b)より出射される。一方、P偏光成分は、第1平行平板層106Cを出て先ず第2平行平板層108Cに入射・透過した後、さらに他方のガラスプリズム104に入る。そしてガラスプリズム104に入射後、これを透過し、出射面(図では側面104b)より出射される。
また、第2の動作例としては、図7A(2)に示す通りであり、第1実施形態における図3A(2)に示す場合と同様である。ここではその動作の詳細説明を割愛する。
ここで、第3実施形態の偏光ビームスプリッタ100Cを構成する各光学部材(102,104,106C,108C,109C)の各光学定数は、偏光分離機能を持つ第1平行平板層106Cおよび第1平行平板層106Cの保護膜として機能する第3平行平板層109Cを起因とする非点隔差As1を第2平行平板層108Cで補正できるように、ガラスプリズム102の屈折率N_102およびガラスプリズム104の屈折率N_104が等しく屈折率Np1(=Np)で、第1平行平板層106Cは屈折率N_106C および厚みt_106C ,第2平行平板層108Cは屈折率N_108C および厚みt_108C ,第3平行平板層109Cは屈折率N_109C および厚みt_109C であるとしたとき、図7Bに示す図表のように設定される。
図7Bに示す図表から分るように、第3平行平板層109Cは、第2平行平板層108Cの屈折率N_108C と同様に、その屈折率N_109C がガラスプリズム102,104の屈折率Np1よりも大きく、一見すると機能的には第2平行平板層108Cと同様の機能を果たすようになるが、このようなものは、偏光分離機能を持つ第1平行平板層106Cなどを起因とする非点隔差As1を補正する機能を持つ本願発明における第2平行平板層には含まない。なお、ここで示した第3平行平板層109Cの屈折率N_109C の数値例は極端な例であり、実際に採用される第1平行平板層106C用のプラスティックフィルムと紫外線保護層(第3平行平板層109C)の屈折率N_109C はともにガラスプリズム102,104の屈折率Np1よりも小さいのが通常であると考えられる。
ここで、本実施形態の第2平行平板層108Cを適用しない場合のガラスプリズム102,104の対向面間に配置される平行平板層(第1平行平板層106Cおよび第3平行平板層109C)による合成の屈折率をNxc、合成の入射あるいは出射の角度をθxcとすると、図7Cに示す幾何光学的な関係から、屈折率Nxcの大凡の値を知ることができる。合成の屈折率Nxcは、ガラスプリズム102,104の対向面間に単一の媒質で構成された平行平板層が存在すると見なしたときの、その平行平板層の屈折率を意味する。
先ず、ガラスプリズム102から第3平行平板層109Cに光が入射する図中のA点に着目すると、θp<θxcであるからN_102>Nxcであることが分る。また、第1平行平板層106Cからガラスプリズム104に光が出射する図中のB点に着目すると、θp<θxcであることは元より、θa>θxcであるからN_106C <Nxcであることが分る。つまり最終的には、N_106C <Nxc<N_102となり、1.53<Nxc<1.58であることが分る。
これを、数式を用いて解析する場合、式(3)を適用すればよい。式に数値例を当て嵌めて計算すると、Nxc=1.5590となる。これからも、N_106C <Nxc<N_102となることが分る。ただし、この式からはθpの値によりNxcの値が微妙に異なるためθpを投射レンズのFナンバーから導かれる入射光線の開き角として計算している(2/F=tanθp)。具体的には、F=2から計算される角度θpは、tanθp=1/2/2より、θp=14.036としている。
よって、第1平行平板層106Cおよび第3平行平板層109Cによる合成の屈折率Nxcとガラスプリズム102の屈折率差(Nxc−N_102)=(Na−Np)は負となり、第2平行平板層108Cとガラスプリズム104の屈折率差(N_108C −N_104)=(Nb−Np)は正となるので、その積(Na−Np)*(Nb−Np)は負(<0)となる条件を満たす。
また、図7Bに示すような光学定数の場合、式(1)より、第1平行平板層106Cによる非点隔差As_106C は34μm、第2平行平板層108Cによる非点隔差As_108C (=As2)は−27.9μm、第3平行平板層109Cによる非点隔差As_109C は−9.2μm、第1平行平板層106Cによる非点隔差As_106C と第3平行平板層109Cによる非点隔差As_109C の合成の非点隔差As1は24.8μmとなり、相当程度の大きさの値を持つ。しかしながら、両非点隔差As1(=As_106C +As_109C ),As2(=As_108C )は正負が逆であり、ほぼ同じ大きさの値を持つ。よって、両非点隔差As1,As2の合成成分の絶対値(=|As1+As2|)である全体の非点隔差Asは3.1μmとなり、許容非点隔差量As0に対して十分に小さくできることが期待できる。
図8は、第3実施形態の偏光ビームスプリッタ100Cを使用した第3実施形態の基本構成のプロジェクタユニット3C(投射光学系)を示す図である。この基本構成は、図4に示した第1実施形態の基本構成と同様に、反射型液晶パネル170にS偏光成分が入射するようにした例である。装置構成としては、図4に示した構成の偏光ビームスプリッタ3A_1に代えて第3実施形態の偏光ビームスプリッタ100Cを使用した状態と考えればよい。ここではその構成の詳細説明を割愛する。
このような基本構成の場合、反射型液晶パネル170から出力される映像情報SVで空間変調されたパネル出射光(P偏光成分)は、映像信号SVに応じた光学像とされるが、再度偏光ビームスプリッタ100Cに入射する。このとき、反射型液晶パネル170により偏光の振動方向が回転されたP偏光成分は、先ず、一方のガラスプリズム102に入射した後に第1平行平板層106Cの保護層である第3平行平板層109Cに入射・透過し、さらに第1平行平板層106Cに入射・透過し、さらに第2平行平板層108Cに入射・透過した後に、他方のガラスプリズム104に入る。そしてガラスプリズム104に入射後、これを透過し、出射面(側面104b)より出射される。この後、投影レンズ117により図示を割愛したスクリーン上に、反射型液晶パネル170で光の偏光状態の変化として形成される光学像が拡大投影表示される。
ここで、反射型液晶パネル170から出力されるパネル出射光が、偏光ビームスプリッタ100Aに入射して投影レンズ117によりスクリーン上の所望の位置に投影される過程では、第3平行平板層109Cにて非点隔差As_109C が発生し、第1平行平板層106Aにて非点隔差As_106C が発生し、また第2平行平板層108Cにて非点隔差As_108C (=As2)が発生する。しかしながら、偏光ビームスプリッタ100Cの光学定数は図7Bに示したように設定されており、第3平行平板層109Cおよび第1平行平板層106Cにより一旦24.8μmの正方向の非点隔差As1が発生するが、第2平行平板層108Cにより−27.9μmの負方向の非点隔差As_108C (=As2)が発生するためにほぼ打ち消し合い、全体の非点隔差As(=|As1+As2|)は3.1μmとなり、十分に小さくなる。
たとえば、第3実施形態(基本構成)のプロジェクタユニット3Cに使用される投影レンズ117のFナンバーが2.0であり、反射型液晶パネル170の画素ピッチが5.4μmであるとき、焦点深度Fδは10.8μm、焦点深度Fδの半分のFδ/2は5.4μmとなる。第3平行平板層109Cおよび第1平行平板層106Cにより生じる合成の非点隔差As1および第2平行平板層108Cにより生じる非点隔差As2の絶対値は、ともに焦点深度Fδの半分のFδ/2(=5.4μm)よりも大きい。このため、第3平行平板層109Cおよび第1平行平板層106Cのみの場合には、24.8μmの非点隔差As1(=As_106C +As_109C )が発生してしまい、所望の解像力は得られない。
これに対して、第3平行平板層109Cおよび第1平行平板層106Cを起因とする非点隔差As1を補正する第2平行平板層108Cを設けることで、全体の非点隔差As(=|As1+As2|)は3.1μmとなる。両非点隔差As1,As2の合成成分の絶対値(=|As1+As2|)は、第1基準の許容非点隔差量As0_1である焦点深度Fδ(=10.8μm)以下を満たすし、第2基準の許容非点隔差量As0_2である焦点深度Fδの半分のFδ/2(=5.4μm)以下をも満たし、許容非点隔差量As0に対して格段に小さく、所望の解像力が得られるようになる。
ただし、第2平行平板層108Cの配置によっては、コントラストに悪影響を及ぼすことになるので、第1平行平板層106Cに対して第2平行平板層108Cを光路の前方側、後方側の何れに配置するのが好ましいかに留意する必要がある。
たとえば、図8に示す第3実施形態のプロジェクタユニット3Cでは、光源122からの光の道筋(光路)を辿ると、第2平行平板層108Cは、S偏光成分を選択反射しP偏光成分を透過させる第1平行平板層106Cの後方側に配置されている。このため、第3実施形態のプロジェクタユニット3Cにおいては、第2平行平板層108Cによるコントラストの悪影響は殆どない。
なお、ここでは、ガラスプリズム102,104の間に第1平行平板層106Cや第2平行平板層108C以外の平行平板層として配される平行平板層が第1平行平板層106Cに対しての紫外線保護膜として機能する第3平行平板層109Cのみである場合、つまり全体として、ガラスプリズム102,104の対向間に3つの平行平板層が配置される場合について説明したが、3層の場合に限定されるものではない。
n層に適用する場合、非点隔差を補正する機能を持つ第2平行平板層108Cと第1平行平板層106Cを含むその他の全平行平板層との関係において、第1平行平板層106Cとその他の全平行平板層(第2平行平板層108Cを除く)により生じる各非点隔差の合成の非点隔差As1と、第2平行平板層108Cにより生じる非点隔差As2の絶対値が、ともに許容非点隔差量As0(FδあるいはFδ/2)よりも大きい場合においても、両非点隔差As1,As2は正負が逆でほぼ同じ大きさの値を持つように光学定数を設定することで、両非点隔差As1,As2の合成成分の絶対値(=|As1+As2|)である全体の非点隔差Asを十分に小さくできる。
このとき、反射型液晶パネル170に光源122からのS偏光成分の照明光を入射し、映像信号SVに基づき空間変調したP偏光成分の光学像を投影レンズ117によりスクリーン上に拡大投影表示するようにプロジェクタユニット3Cを構成する場合には、全体の非点隔差Asが第1基準の許容非点隔差量As0_1(本例ではFδ)以内となるようにするのがよい。さらに好ましくは、全体の非点隔差Asが第2基準の許容非点隔差量As0_2(本例ではFδ/2)以内となるようにするのがよい。
この場合、第2平行平板層108Cを除く他の平行平板層(もちろん第1平行平板層106Cを含む)の合計の非点隔差As1を第2平行平板層108Cで補正するという機能に着目したときには、反射型液晶パネル170からのP偏光成分は全ての平行平板層を透過するので、第1平行平板層106Cおよび第2平行平板層108Cを除く他の平行平板層は、光路上、第1平行平板層106Cよりも前側、第2平行平板層108Cよりも後ろ側の何れに配置されていてもよい。この点は、反射型液晶パネル170で映像信号SVに基づき空間変調したS偏光成分を反射する構成の場合、補正対象となり得る平行平板層の配置位置が規定されるのと異なる。
たとえば、第1平行平板層106Cおよび第2平行平板層108Cを除く他の平行平板層としては、第1平行平板層106Cを紫外光から保護するための第3平行平板層109Cの他に、第1平行平板層106Cをガラスプリズム102に接着するための接着層や、ある波長の帯域のみの光を反射させる多層膜などが考えられる。
なお、それらの平行平板層の屈折率によっては、一見すると機能的には第2平行平板層108Cと同様の機能を果たすようになるものも存在する。つまり、ガラスプリズム102,104の屈折率Npに対して、第2平行平板層108Cと同様の方向(Npよりも大きいか、小さいか)の屈折率を持つ場合である。しかしながらこのようなものは、偏光分離機能を持つ第1平行平板層106Cなどを起因とする非点隔差As1を補正する機能を持つ本願発明における第2平行平板層には含まない。
また、図示を割愛するが、考え方としては、第1実施形態の変形構成のプロジェクタユニット3A_2と同様に、第3実施形態の偏光ビームスプリッタ100Cを用いて、反射型液晶パネル170に光源122からのP偏光成分の照明光を入射し、映像信号SVに基づき空間変調したS偏光成分の光学像を投影レンズ117によりスクリーン上に拡大投影表示するように構成することもできる。
<第4実施形態>
図9〜図9Cは、偏光ビームスプリッタの第4実施形態の基本構成を説明する図である。ここで、図9は、図3(1)に示した配置と同様条件でのx−y平面における第4実施形態の偏光ビームスプリッタ100Dの断面図である。図9Aは、第4実施形態の偏光ビームスプリッタ100Dの動作を説明する図である。図9Bは、第4実施形態の偏光ビームスプリッタ100Dの光学定数を示す図表である。図9Cは、第4実施形態を適用しない場合の偏光ビームスプリッタ100Dxにおける各平行平板層による合成の屈折率を説明する図である。
第4実施形態は、ガラスプリズム102,104の間に第1平行平板層や第2平行平板層以外の平行平板層(第3平行平板層とする)が介在する場合への適用例である。特に前述の第3実施形態との相違点として、ガラスプリズム102,104の間に第1平行平板層106Dと比較的厚い接着剤の層(第3平行平板層109D)を備える場合に生じる非点隔差As1が許容非点隔差量As0を満たさない場合に、その非点隔差As1を補正する機能を持つ第2平行平板層108Dを設けるようにした点に特徴を有する。
この場合も、第2平行平板層108Dは、第3実施形態と同様に、第1平行平板層106Dと第3平行平板層109Dにより生じる各非点隔差の合成の非点隔差As1を補正するように第2平行平板層108Dの光学定数を設定する。以下具体的に説明する。
図9に示すように、第4実施形態の偏光ビームスプリッタ100Dは、ほぼ同じ屈折率を有する三角柱形状のガラスプリズム102,104と、ガラスプリズム102,104の対向面間に配された3つの平行平板層106D,108D,109Dを備えている。
第1平行平板層106Dは、ある程度の厚みt_106D を有するガラス基板107b上に、つまり第1平行平板層106Dの表面に、金属格子107cが所定ピッチで設けられて、金属格子構造面107aが形成される構造を持つワイヤーグリッド偏光分離素子として構成されている。
第2平行平板層108Dは、ある程度の厚みt_108D を有するガラス基板で構成されている。第3平行平板層109Dは、第2平行平板層108Dをガラスプリズム104に接着固定するための接着材の層であり無視できない厚みt_109D を有する。
つまり、第4実施形態として図9に示している偏光ビームスプリッタ100Dの構成は、第2実施形態の偏光ビームスプリッタ100Bにおいて、第2平行平板層108Dをガラスプリズム104に接着固定するための接着材の層が無視できない厚みt_109D を有する場合に、その接着材の層を第3平行平板層109Dとして明示した態様である。
第2平行平板層108Dは、偏光分離機能を持つ第1平行平板層106Dおよび第3平行平板層109Dを起因とする非点隔差As1を補正する機能を持つように、第1平行平板層106Dおよび第3平行平板層109Dの光学定数に適合するような光学定数が設定されている(詳細は後述する)。
3つの平行平板層106D,108D,109Dは、第2実施形態の偏光ビームスプリッタ100Bと同様の順で、ガラスプリズム102,104の間に略平行に配置されている。第2平行平板層108Dをガラスプリズム104に接着固定する接着剤の層が厚く第3平行平板層109Dとして明示している点を除いて第2実施形態と同様である。ここではその詳細説明を割愛する。
このようにガラスプリズム102,104間に3つの平行平板層106D,108D,109Dが配置された第4実施形態の偏光ビームスプリッタ100Dの基本的な動作は以下の通りである。先ず、第1の動作例としては、図9A(1)に示す通りであり、第2実施形態における図5B(1)に示す場合と同様である。ここではその動作の詳細説明を割愛する。
第2の動作例としては、図9A(2)に示すように、ガラスプリズム104の入射面(側面104a)から光線が入射されるものとする。入射光はP偏光成分とS偏光成分を有する。平行平板層106D,108D,109Dはガラスプリズム102に入射する光線に対してθ4(=θp:たとえば45度±15度)傾いて配置される。
入射光は、先ずガラスプリズム104の入射面(図では側面104a)に入射し、第3平行平板層109Dを通過し、さらに第2平行平板層108Dを通過して、第1平行平板層106Dに入射する。第1平行平板層106Dに入射した光は先ずガラス基板107bを通過し金属格子構造面107aに達する。そして、金属格子構造面107aに対して、S偏光成分は反射し、P偏光成分は透過する。その後、S偏光成分は、第1平行平板層106Dのガラス基板107bを出て再び第2平行平板層108Dに入り、この第2平行平板層108Dを通過して第3平行平板層109Dに入り、この第3平行平板層109Dを通過してガラスプリズム104に入り、出射面(図では側面104b)より出射される。一方、P偏光成分は、ガラスプリズム102に入射後、これを透過し、出射面(図では側面102b)より出射される。
ここで、第4実施形態の偏光ビームスプリッタ100Dを構成する各光学部材(102,104,106D,108D,109D)の各光学定数は、偏光分離機能を持つ第1平行平板層106Dおよび第2平行平板層108Dをガラスプリズム104に接着するための第3平行平板層100D(接着層)を起因とする非点隔差As1を第2平行平板層108Dで補正できるように、ガラスプリズム102の屈折率N_102およびガラスプリズム104の屈折率N_104が等しく屈折率Np1(=Np)で、第1平行平板層106Dは屈折率N_106D および厚みt_106D ,第2平行平板層108Cは屈折率N_108D および厚みt_108D ,第3平行平板層109Dは屈折率N_109D および厚みt_109D であるとしたとき、図9Bに示す図表のように設定される。
ここで、本実施形態の第2平行平板層108Dを適用しない場合のガラスプリズム102,104の対向面間に配置される平行平板層(第1平行平板層106Dおよび第3平行平板層109D)による合成の屈折率をNxd、合成の入射あるいは出射の角度をθxdとすると、図9Cに示す幾何光学的な関係から、屈折率Nxdの大凡の値を知ることができる。すなわち、先ず、ガラスプリズム102から第1平行平板層106Dに光が入射する図中のA点に着目すると、θp<θa<θxdであるからN_106D >Nxdであることが分る。また、第3平行平板層109Dからガラスプリズム104に光が出射する図中のB点に着目すると、θd>θxdであるからN_109D <Nxdであることが分る。つまり最終的には、N_109D <Nxd<N_106D となり、1.47<Nxd<1.53であることが分る。
これを、数式を用いて解析する場合、式(4)を適用すればよい。式に数値例を当て嵌めて計算すると、Nxd=1.5196となる。これからも、N_109D <Nxd<N_106D となることが分る。ただし、この式からはθpの値によりNxcの値が微妙に異なるためθpを投射レンズのFナンバーから導かれる入射光線の開き角として計算している(2/F=tanθp)。具体的には、F=2.5から計算される角度θpは、tanθp=1/2.5/2より、θp=11.31としている。
よって、第1平行平板層106Dおよび第3平行平板層109Dによる合成の屈折率Nxdとガラスプリズム102の屈折率差(Nxd−N_102)=(Na−Np)は負となり、第2平行平板層108Dとガラスプリズム104の屈折率差(N_108D −N_104)=(Nb−Np)は正となるので、その積(Na−Np)*(Nb−Np)は負(<0)となる条件を満たす。
また、図9Bに示すような光学定数の場合、式(1)より、第1平行平板層106Dによる非点隔差As_106D は19.4μm、第2平行平板層108Dによる非点隔差As_108D (=As2)は−35.8μm、第3平行平板層109Dによる非点隔差As_109D は14.9μm、第1平行平板層106Dによる非点隔差As_106D と第3平行平板層109Dによる非点隔差As_109D の合成の非点隔差As1は34.3μmとなり、相当程度の大きさの値を持つ。しかしながら、両非点隔差As1(=As_106D +As_109D ),As2(=As_108D )は正負が逆であり、ほぼ同じ大きさの値を持つ。よって、両非点隔差As1,As2の合成成分の絶対値(=|As1+As2|)である全体の非点隔差Asは1.5μmとなり、許容非点隔差量As0に対して十分に小さくできることが期待できる。
図10は、第4実施形態の偏光ビームスプリッタ100Dを使用した第4実施形態の基本構成のプロジェクタユニット3D(投射光学系)を示す図である。この基本構成は、図6に示した第2実施形態の基本構成と同様に、反射型液晶パネル170にP偏光成分が入射するようにした例である。装置構成としては、図6に示した構成の偏光ビームスプリッタ3B_1に代えて第4実施形態の偏光ビームスプリッタ100Dを使用した状態と考えればよい。ここではその構成の詳細説明を割愛する。
このような基本構成の場合、反射型液晶パネル170から出力される映像情報SVで空間変調されたパネル出射光(S偏光成分)は、映像信号SVに応じた光学像とされるが、再度偏光ビームスプリッタ100Dに入射する。このとき、反射型液晶パネル170により偏光の振動方向が回転されたS偏光成分は、先ず、他方のガラスプリズム104に入射した後に第3平行平板層109Dに入射・透過し、さらに第2平行平板層108Dに入射・透過し、さらに第1平行平板層106Dに入射する。
第1平行平板層106Dはガラス基板107b上に金属格子107cが形成された構造を持つワイヤーグリッド偏光分離素子として構成されているので、ガラス基板107bに入射したS偏光成分は金属格子構造面107aにて反射されガラス基板107bを出て再度第2平行平板層108Dに入射・透過し、さらに第3平行平板層109Dに入射・透過した後に、他方のガラスプリズム104に入る。そしてガラスプリズム104に入射後、これを透過し、出射面(側面104b)より出射される。この後、投影レンズ117により図示を割愛したスクリーン上に、反射型液晶パネル170で光の偏光状態の変化として形成される光学像が拡大投影表示される。
ここで、反射型液晶パネル170から出力されるパネル出射光が、偏光ビームスプリッタ100Dに入射して投影レンズ117によりスクリーン上の所望の位置に投影される過程では、第3平行平板層109Dにて非点隔差As_109D が発生し、また第2平行平板層108Dにて非点隔差As_108D (=As2)が発生し、また第1平行平板層106D(特にガラス基板107b)にて非点隔差As_106D が発生する。さらに第1平行平板層106DによりS偏光成分のみ選択反射されることで、第1平行平板層106D(特にガラス基板107b)にて非点隔差As_106D が発生し、また第2平行平板層108Dにて非点隔差As_108D (=As2)が発生し、また第3平行平板層109Dにて非点隔差As_109D が発生する。
しかしながら、偏光ビームスプリッタ100Dの光学定数は図9Bに示したように設定されており、第3平行平板層109Dおよび第1平行平板層106Dにより34.3μmの正方向の非点隔差As1が発生するが、第2平行平板層108Dにより−35.8μmの負方向の非点隔差As2が発生するためにほぼ打ち消し合うことになるし、さらに第1平行平板層106Dにより選択反射されるS偏光成分についても、第3平行平板層109Dおよび第1平行平板層106Dにより34.3μmの正方向の非点隔差As1が発生するが、第2平行平板層108Dにより−35.8μmの負方向の非点隔差As2が発生するためにほぼ打ち消し合うことになり、全体の非点隔差As(=|2×As1+2×As2|)は十分に小さくなる。つまり、第1平行平板層106Dおよび第3平行平板層109Dをそれぞれ2回通ることで発生する合成の非点隔差は2×As1=34.3μmとなり、さらに、第2平行平板層108Aを2回通ることで発生する合成の非点隔差は2×As2=−35.8μmとなるので、ほぼ打ち消し合うことになる。
たとえば、第4実施形態(基本構成)のプロジェクタユニット3Dに使用される投影レンズ117のFナンバーが2.5であり、反射型液晶パネル170の画素ピッチが7μmであるとき、焦点深度Fδは17.5μm、焦点深度Fδの半分のFδ/2は8.75μm、焦点深度Fδの1/4のFδ/4は4.38μmとなる。両非点隔差As1,As2の絶対値は、ともに焦点深度Fδの半分のFδ/2や1/4のFδ/4よりも大きく、第1平行平板層106Dおよび第3平行平板層109Dのみの場合には68.6μmの非点隔差As1(=As_106D +As_109D )が発生してしまい、所望の解像力は得られない。これに対して、第1平行平板層106Dおよび第3平行平板層109Dを起因とする非点隔差As1を補正する第2平行平板層108Dを設けることで、全体の非点隔差As(=|2×As1+2×As2|)は3.0μmとなる。全体の非点隔差As(=|2×As1+2×As2|)は、第1基準の許容非点隔差量As0_1である焦点深度Fδの半分のFδ/2(=8.75μm)以下を満たすし、第2基準の許容非点隔差量As0_2である焦点深度Fδの4分の1のFδ/4(=4.38μm)以下をも満たし、許容非点隔差量As0に対して格段に小さく、所望の解像力が得られるようになる。
なお、ここでは、ガラスプリズム102,104の間に第1平行平板層106Dや第2平行平板層108D以外の平行平板層として配される平行平板層がガラスプリズム104に接着固定するための接着剤層として機能する第3平行平板層109Dのみである場合、つまり全体として、ガラスプリズム102,104の対向間に3つの平行平板層が配置される場合について説明したが、3層の場合に限定されるものではない。
n層に適用する場合、非点隔差を補正する機能を持つ第2平行平板層108Dと第1平行平板層106Dを含むその他の全平行平板層との関係において、第1平行平板層106Dとその他の全平行平板層(第2平行平板層108Dを除く)により生じる各非点隔差の合成の非点隔差As1と、第2平行平板層108Dにより生じる非点隔差As2の絶対値が、ともに許容非点隔差量As0(FδあるいはFδ/2)よりも大きい場合においても、両非点隔差As1,As2は正負が逆でほぼ同じ大きさの値を持つように光学定数を設定することで、両非点隔差As1,As2の合成成分の絶対値(=|As1+As2|)である全体の非点隔差Asを十分に小さくできる。
このとき、反射型液晶パネル170に光源122からのP偏光成分の照明光を入射し、映像信号SVに基づき空間変調したS偏光成分の光学像を投影レンズ117によりスクリーン上に拡大投影表示するようにプロジェクタユニット3Dを構成する場合には、全体の非点隔差Asが第1基準の許容非点隔差量As0_1(本例ではFδ/2)以内となるようにするのがよい。さらに好ましくは、全体の非点隔差Asが第2基準の許容非点隔差量As0_2(本例ではFδ/4)以内となるようにするのがよい。
この場合、第2平行平板層108Dを除く他の平行平板層(もちろん第1平行平板層106Dを含む)の合計の非点隔差As1を第2平行平板層108Dで補正するという機能に着目したときには、反射型液晶パネル170からのS偏光成分が偏光ビームスプリッタ100Dに入射し、第1平行平板層106Dで反射され投影レンズ117に導かれるまでに通過する平行平板層のみが補正の対象となる点を勘案する必要がある。具体的には、第1平行平板層106Dおよび第2平行平板層108Dを除く他の平行平板層は、光路上、第1平行平板層106Dよりも反射型液晶パネル170側に配置されているもののみが補正対象となり得る。つまり、反射型液晶パネル170と偏光ビームスプリッタ100Dの第1平行平板層106Dまでの間にある第2平行平板層108Dを除く平行平板層(第1平行平板層106Dの反射面までを構成する部材を含む)が補正対象となり得る平行平板層である。
たとえば、第1平行平板層106Cおよび第2平行平板層108Cを除く他の平行平板層としては、第2平行平板層108Dとガラスプリズム104を接着する接着剤の層である第3平行平板層109Dの他に、光源122から発せられる、反射型液晶パネル170に有害な紫外線光をカットするための紫外線吸収板が考えられる。
また、図示を割愛するが、考え方としては、第2実施形態の変形構成のプロジェクタユニット3B_2と同様に、第4実施形態の偏光ビームスプリッタ100Dを用いて、反射型液晶パネル170に光源122からのP偏光成分の照明光を入射し、映像信号SVに基づき空間変調したS偏光成分の光学像を投影レンズ117によりスクリーン上に拡大投影表示するように構成することもできる。
<第5実施形態>
図11および図11Aは、フルカラー表示対応の第5実施形態のプロジェクタユニットを説明する図である。ここで、図11は、第5実施形態のプロジェクタユニット3Eの概略構成を示した図である。図11Aは、第5実施形態のプロジェクタユニット3Eで使用される色別の偏光ビームスプリッタ242の光学定数を示す図表である。
以下の説明において、各部材やその他において、色別に区別するときには“_ ”の後に色の参照子R,G,Bを小文字で付して示し、色別に区別しないときにはこれらの参照子を割愛して示す。後述する第6実施形態でも同様である。
第5実施形態のプロジェクタユニット3Eは、偏光ビームスプリッタ242および反射型液晶パネル270を、R(赤),G(緑),B(青)の各色に対応してそれぞれ3個用いた投射光学系として構成されている。つまり、R,G,Bの3色の何れかを処理対象とする各色用のモノクロ対応の反射型液晶パネル270R,270B,270BをR,G,Bの光路ごとに設けて構成した3板方式のカラー表示装置として構成されている。
後述する第6実施形態との相違点としては、第1実施形態や第3実施形態のプロジェクタユニット3A_1,3Cと同様に、反射型液晶パネル270に光源からのS偏光成分の照明光を入射し、映像信号SVに基づき空間変調したP偏光成分の光学像を投影レンズ217によりスクリーン上に拡大投影表示するように構成している点に特徴を有する。
プロジェクタユニット3Eは、照明手段212と、画像形成手段214と、投影レンズ217とを備えている。第1〜第4実施形態のプロジェクタユニット3A〜3Dとの関係においては、照明手段212は照明手段112に対応し、画像形成手段214は画像形成手段114に対応し、投影レンズ217は投影レンズ117に対応する。
画像形成手段214は、色別の偏光ビームスプリッタ242R,242G,242Bと、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の画像情報をそれぞれ表示する3つの反射型液晶パネル270(270R,270G,270B)と、各反射型液晶パネル270で反射され3色の画像情報で空間変調された光束を合成して1つの画像投影光束を生成するクロスダイクロイックプリズム(色合成プリズム)279を有している。反射型液晶パネル270R,270G,270Bには、それぞれ色別の映像信号SV_R,SV_G,SV_Bが供給されている。偏光ビームスプリッタ242R,242G,242Bと、3つの反射型液晶パネル270R,270G,270Bと、クロスダイクロイックプリズム279は一体的に結合されている。
偏光ビームスプリッタ242R,242G,242Bは、光の偏光方向によって光を反射あるいは透過する機能を有するもので、本例では、ある程度の厚みを有する偏光性フィルムの膜を主要部に有して構成されており、それ全体が偏光分離素子として機能する第1平行平板層106Aと、この第1平行平板層106Aで生じる非点隔差As1を補正する第2平行平板層108Aをガラスプリズム102,104の対向面間に備えた第1実施形態の偏光ビームスプリッタ100Aと同様の構造を持つものを使用している。
ただし、詳細は後述するが、それぞれ色別に第1平行平板層106A_R,106A_G,106A_Bと第2平行平板層108A_R,108A_G,108A_Bを有しており、それらの光学定数の最適化が図られている。色別に最適化するのは、同じ物質(基材)でも、屈折率の波長依存性(R,G,Bで異なる)が存在することの理由による。
照明手段212は画像形成手段214に赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の光束を照射し、画像形成手段214は、3色の光束を、3色のそれぞれに対応する画像情報に基づいて変調した後1つの画像投影光束として合成する。画像投影光束は、投影レンズ217を介して図示を割愛したスクリーン上に拡大投影されることで、カラー画像が投影される。
照明手段212は、白色光を出射する光源222と、照明光学系223と、色分離光学系226とを有する。照明光学系223は、反射鏡224と、光源222の前方に直線状に配置された凹レンズ、UVカットフィルタ、コンデンサレンズなどを含んで構成されるレンズ群225を有し、光源222からの白色光がレンズ群225を通過し、色分離光学系226に入射されるように構成されている。色分離光学系226は、照明光学系223から導かれた光束(白色光)を赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の光束に分離するものである。
色分離光学系226は、たとえば、色分離用のダイクロイックミラー232,234と反射ミラー236を有する。たとえば、ダイクロイックミラー232は、青色(B)の光束を透過し、赤色(R)および緑色(G)の光束を反射するように構成されている。したがって、照明光学系223からダイクロイックミラー232に導かれた光束は、ダイクロイックミラー232により、赤色(R)および緑色(G)の光束と、青色(B)の光束との2つの光束に分離される。
ダイクロイックミラー234は、赤色(R)の光束を透過し、緑色(G)の光束を反射するように構成されている。したがって、ダイクロイックミラー232によって分離された赤色(R)および緑色(G)の光束は、ダイクロイックミラー234に導かれ、このダイクロイックミラー234で赤色(R)の光束が透過されるとともに緑色(G)の光束が反射される。
このようにして色分離光学系226のダイクロイックミラー232,234でR,G,Bの3原色に分解されたそれぞれの光束は、各色別の偏光ビームスプリッタ242R,242G,242Bに入射する。なお、B光は反射ミラー236で反射された後に偏光ビームスプリッタ242Bに入射する。
ダイクロイックミラー232,234でR,G,Bの3原色に分解された色別の光束は、各偏光ビームスプリッタ242R,242G,242Bに入射するが、第5実施形態の場合、偏光ビームスプリッタ242R,242G,242Bの第1平行平板層106Aに対してのS偏光が入射する位置に、反射型液晶パネル270R,270G,270Bが設置されている。
図11に示すように、照明手段212から画像形成手段214に出射された白色光の光束はダイクロイックミラー232に入射されるが、このダイクロイックミラー232により青色の帯域の光(青色(B)の光束)は透過し、黄色の帯域の光(赤色(R)の光束および緑色(G)の光束)は反射される。以下、青色(B)の光束をB光、赤色(B)の光束をR光、緑色(G)の光束をG光とも記す。
B光(S偏光成分)はさらに反射ミラー236で反射され偏光ビームスプリッタ242Bに入射する。偏光ビームスプリッタ242Bは、図3Aに示したことから推測されるように、第1平行平板層106A_Bにて、S偏光成分を選択的に反射し、P偏光成分を透過する。そして、S偏光成分が反射型液晶パネル270Bに入射する。
反射型液晶パネル270Bは、印加されるB色用の映像信号SV_Bに基づき空間変調され第2の偏光成分(本例ではP偏光成分)に変換し、反射型液晶パネル270Bに書き込まれた映像信号SV_Bに応じた光学像を出射する。反射型液晶パネル270Bから出力される映像情報SV_Bで空間変調されたパネル出射光は、再度偏光ビームスプリッタ242Bに入射する。このとき、反射型液晶パネル270Bにより偏光の振動方向が回転されたP偏光成分は、先ず、一方のガラスプリズム102_Bに入射した後に第1平行平板層106A_Bに入射・透過し、さらに第2平行平板層108A_Bに入射・透過した後に、他方のガラスプリズム104_Bに入る。そしてガラスプリズム104_Bに入射後、これを透過し、出射面(側面104b)より出射され、クロスダイクロイックプリズム279に導かれる。
また、ダイクロイックミラー232により反射されたR光およびG光はダイクロイックミラー234に入射されるが、このダイクロイックミラー234によりR光は透過し、G光は反射される。ダイクロイックミラー234で反射されたG光は偏光ビームスプリッタ242Gに入射する。偏光ビームスプリッタ242Gは、図3Aに示したことから推測されるように、第1平行平板層106A_Gにて、S偏光成分を選択的に反射し、P偏光成分を透過する。そして、S偏光成分が反射型液晶パネル270Gに入射する。
反射型液晶パネル270Gは、印加されるG色用の映像信号SV_Gに基づき空間変調され第2の偏光成分(本例ではP偏光成分)に変換し、反射型液晶パネル270Gに書き込まれた映像信号SV_Gに応じた光学像を出射する。反射型液晶パネル270Gから出力される映像情報SV_Gで空間変調されたパネル出射光は、再度偏光ビームスプリッタ242Gに入射する。このとき、反射型液晶パネル270Gにより偏光の振動方向が回転されたP偏光成分は、先ず、一方のガラスプリズム102_Gに入射した後に第1平行平板層106A_Gに入射・透過し、さらに第2平行平板層108A_Gに入射・透過した後に、他方のガラスプリズム104_Gに入る。そしてガラスプリズム104_Gに入射後、これを透過し、出射面(側面104b)より出射され、クロスダイクロイックプリズム279に導かれる。
また、ダイクロイックミラー234を透過したR光は偏光ビームスプリッタ242Rに入射する。偏光ビームスプリッタ242Rは、図3Aに示したことから推測されるように、第1平行平板層106A_Rにて、S偏光成分を選択的に反射し、P偏光成分を透過する。そして、S偏光成分が反射型液晶パネル270Rに入射する。
反射型液晶パネル270Rは、印加されるR色用の映像信号SV_Rに基づき空間変調され第2の偏光成分(本例ではP偏光成分)に変換し、反射型液晶パネル270Rに書き込まれた映像信号SV_Rに応じた光学像を出射する。反射型液晶パネル270Rから出力される映像情報SV_Rで空間変調されたパネル出射光は、再度偏光ビームスプリッタ242Rに入射する。このとき、反射型液晶パネル270Rにより偏光の振動方向が回転されたP偏光成分は、先ず、一方のガラスプリズム102_Bに入射した後に第1平行平板層106A_Rに入射・透過し、さらに第2平行平板層108A_Rに入射・透過した後に、他方のガラスプリズム104_Bに入る。そしてガラスプリズム104_Bに入射後、これを透過し、出射面(側面104b)より出射され、クロスダイクロイックプリズム279に導かれる。
クロスダイクロイックプリズム279に導かれたR,G,Bの3色の光束は、クロスダイクロイックプリズム279によって1つの画像投影光束として合成された後に投影レンズ217に導かれる。この後、投影レンズ217により図示を割愛したスクリーン上に、反射型液晶パネル270R,270G,270Bで各色光の偏光状態の変化として形成されるフルカラーの光学像(カラー映像)が拡大投影表示される。
なお、本実施の形態では、3つの偏光ビームスプリッタ242R,242G,242Bと、3つの反射型液晶パネル270R,270G,270Bと、クロスダイクロイックプリズム279で画像形成手段214を構成した場合について説明したが、画像形成手段214は本構成に限定されるものではなく、公知の様々な構成を適用できる。
ここで、反射型液晶パネル270Rから出力されるパネル出射光が、偏光ビームスプリッタ242Rに入射して投影レンズ217によりスクリーン上の所望の位置に投影される過程では、第1平行平板層106A_Rにて非点隔差As_106A_R (=As1)が発生し、また第2平行平板層108A_Rにて非点隔差As_108A_R (=As2)が発生する。同様に、反射型液晶パネル270Gから出力されるパネル出射光が、偏光ビームスプリッタ242Gに入射して投影レンズ217によりスクリーン上の所望の位置に投影される過程では、第1平行平板層106A_Gにて非点隔差As_106A_G (=As1)が発生し、第2平行平板層108A_Gにて非点隔差As_108A_G (=As2)が発生する。同様に、反射型液晶パネル270Bから出力されるパネル出射光が、偏光ビームスプリッタ242Bに入射して投影レンズ217によりスクリーン上の所望の位置に投影される過程では、第1平行平板層106A_Bにて非点隔差As_106A_B (=As1)が発生し、第2平行平板層108A_Bにて非点隔差As_108A_B (=As2)が発生する。
第5実施形態のプロジェクタユニット3Eで使用している偏光ビームスプリッタ242を構成する各光学部材(102,104,106A,108A)の各光学定数は、偏光分離機能を持つ第1平行平板層106Aを起因とする非点隔差を第2平行平板層108Aで補正できるように設定される。たとえば、R色用の偏光ビームスプリッタ242Rは、ガラスプリズム102_Rの屈折率N_102_Rおよびガラスプリズム104_Rの屈折率N_104_Rが等しく屈折率Np1_R(=Np)で、第1平行平板層106A_Rは屈折率N_106A_R (=Na)および厚みt_106A_R (=ta),第2平行平板層108A_Rは屈折率N_108A_R (=Nb)および厚みt_108A_R (=tb)であるとしたとき、図11A(1)に示す図表のように設定される。
図11A(1)に示すような光学定数の場合、第1平行平板層106A_Rとガラスプリズム102_Rの屈折率差(N_106A_R −N_102_R)=(Na−Np)と第2平行平板層108A_Rとガラスプリズム104_Rの屈折率差(N_108A_R −N_104_R)=(Nb−Np)の積は、(Na−Np)*(Nb−Np)=(1.56188−1.5871)*(1.61824−1.5871)=−0.000785となり、負(<0)となる条件を満たす。
同様に、G色用の偏光ビームスプリッタ242Gは、ガラスプリズム102_Gの屈折率N_102_Gおよびガラスプリズム104_Gの屈折率N_104_Gが等しく屈折率Np1_G(=Np)で、第1平行平板層106A_Gは屈折率N_106A_G (=Na)および厚みt_106A_G (=ta),第2平行平板層108A_Gは屈折率N_108A_G (=Nb)および厚みt_108A_G (=tb)であるとしたとき、図11A(2)に示す図表のように設定される。
図11A(2)に示すような光学定数の場合、第1平行平板層106A_Gとガラスプリズム102_Gの屈折率差(N_106A_G −N_102_G)=(Na−Np)と第2平行平板層108A_Gとガラスプリズム104_Gの屈折率差(N_108A_G −N_104_G)=(Nb−Np)の積は、(Na−Np)*(Nb−Np)=(1.56605−1.59142)*(1.62286−1.59142)=−0.000798となり、負(<0)となる条件を満たす。
同様に、B色用の偏光ビームスプリッタ242Bは、ガラスプリズム102_Bの屈折率N_102_Bおよびガラスプリズム104_Bの屈折率N_104_Bが等しく屈折率Np1_B(=Np)で、第1平行平板層106A_Bは屈折率N_106A_B (=Na)および厚みt_106A_B (=ta),第2平行平板層108A_Bは屈折率N_108A_B (=Nb)および厚みt_108A_B (=tb)であるとしたとき、図11A(3)に示す図表のように設定される。
図11A(3)に示すような光学定数の場合、第1平行平板層106A_Bとガラスプリズム102_Bの屈折率差(N_106A_B −N_102_B)=(Na−Np)と第2平行平板層108A_Bとガラスプリズム104_Bの屈折率差(N_108A_B −N_104_B)=(Nb−Np)の積は、(Na−Np)*(Nb−Np)=(1.57529−1.601)*(1.6331−1.601)=−0.0008253となり、負(<0)となる条件を満たす。
また、図11Aに示すような光学定数の場合、式(1)より、R色用の偏光ビームスプリッタ242Bでは、第1平行平板層106A_Rによる非点隔差As_106A_R (=As1)は18.6μm、第2平行平板層108A_Rによる非点隔差As_108A_R (=As2)は−18.9μmとなり、相当程度の大きさの値を持つ。同様にG色用の偏光ビームスプリッタ242Gでは、第1平行平板層106A_Gによる非点隔差As_106A_G (=As1)は15.5μm、第2平行平板層108A_Gによる非点隔差As_108A_G (=As2)は−15.8μmとなり、相当程度の大きさの値を持つ。同様にB色用の偏光ビームスプリッタ242Bでは、第1平行平板層106A_Bによる非点隔差As_106A_B (=As1)は12.4μm、第2平行平板層108A_Bによる非点隔差As_108A_B (=As2)は−12.7μmとなり、相当程度の大きさの値を持つ。
一方、両非点隔差As_106A_R ,As_108A_R や両非点隔差As_106A_G ,As_108A_G や両非点隔差As_106A_B ,As_108A_B は何れも正負が逆であり、ほぼ同じ大きさの値を持つので、ほぼ打ち消し合うことになり、全体の非点隔差As(=|As1+As2|)は十分に小さく、赤色、緑色、青色の光路での非点隔差の発生量は抑えられている。すなわち、両非点隔差As_106A_R ,As_108A_R や両非点隔差As_106A_G ,As_108A_G や両非点隔差As_106A_B ,As_108A_B の合成成分の絶対値(=|As1+As2|)である全体の非点隔差Asは、何れの色についても0.3μmとなり、許容非点隔差量As0に対して十分に小さくできることが期待できる。
たとえば、第5実施形態(基本構成)のプロジェクタユニット3Eに使用される227のFナンバーが2.0であり、反射型液晶パネル270R,270G,270Bの画素ピッチが4.8μmであるとき、焦点深度Fδは9.6μm、焦点深度Fδの半分のFδ/2は4.8μmとなる。両非点隔差As_106A_R ,As_108A_R や両非点隔差As_106A_G ,As_108A_G や両非点隔差As_106A_B ,As_108A_Bの絶対値は、ともに焦点深度Fδの半分のFδ/2(=4.8μm)よりも大きい。このため、第1平行平板層106A_R,106A_G,106A_Bのみの場合には、所望の解像力は得られない。これに対して、第1平行平板層106A_R,106A_G,106A_Bを起因とする非点隔差As_106A_R ,As_106A_G ,As_106A_B を補正する第2平行平板層108A_R,108A_G,108A_Bを設けることで、全体の非点隔差As(=|As1+As2|)は0.3μmとなる。全体の非点隔差Asは、第1基準の許容非点隔差量As0_1である焦点深度Fδ(=9.6μm)以下を満たすし、第2基準の許容非点隔差量As0_2である焦点深度Fδの半分のFδ/2(=4.8μm)以下をも満たし、許容非点隔差量As0に対して格段に小さく、所望の解像力が得られるようになる。
<第6実施形態>
図12は、フルカラー表示対応の第6実施形態のプロジェクタユニットの概略構成を示した図である。第6実施形態のプロジェクタユニット3Fは、第5実施形態のプロジェクタユニット3Eと同様に、偏光ビームスプリッタ242および反射型液晶パネル270を、R(赤),G(緑),B(青)の各色に対応してそれぞれ3個用いた投射光学系として構成されている。
前述の第5実施形態との相違点としては、第2実施形態や第4実施形態のプロジェクタユニット3B_1,3Dと同様に、反射型液晶パネル270に光源からのP偏光成分の照明光を入射し、映像信号SVに基づき空間変調したS偏光成分の光学像を投影レンズ217によりスクリーン上に拡大投影表示するように構成している点に特徴を有する。
プロジェクタユニット3Fは、第5実施形態のプロジェクタユニット3Eと同様に、照明手段212と、画像形成手段214と、投影レンズ217とを備えている。照明手段212は、白色光を出射する光源222と、照明光学系223と、色分離光学系226とを有し、その構成は第5実施形態のプロジェクタユニット3Eと同様である。
偏光ビームスプリッタ242R,242G,242Bは、光の偏光方向によって光を反射あるいは透過する機能を有するもので、本例では、ある程度の厚みt_106B を有するガラス基板107b上に金属格子107cが所定ピッチで設けられて、金属格子構造面107aが形成される構造を持つワイヤーグリッド偏光分離素子として構成された第1平行平板層106Bと、この第1平行平板層106Bで生じる非点隔差As1を補正する第2平行平板層108Bをガラスプリズム102,104の対向面間に備えた第2実施形態の偏光ビームスプリッタ100Bと同様の構造を持つものを使用している。ただし、それぞれ色別に第1平行平板層106B_R,106B_G,106B_Bと第2平行平板層108B_R,108B_G,108B_Bを有しており、それらの光学定数の最適化が図られている。
色別に最適化するのは、ワイヤーグリッド偏光分離素子自体は波長選択性はないのであるが、それを形成しているガラス基板107bは、同じ物質(基材)でも、屈折率の波長依存性(R,G,Bで異なる)が存在するので、R,G,Bに対して別々にする必要があることの理由による。
ダイクロイックミラー232,234でR,G,Bの3原色に分解された色別の光束は、各偏光ビームスプリッタ242R,242G,242Bに入射するが、第6実施形態の場合、偏光ビームスプリッタ242R,242G,242Bの第1平行平板層106Bの金属格子構造面107aに対してのP偏光が入射する位置に、反射型液晶パネル270R,270G,270Bが設置されている。
ダイクロイックミラー232を透過したB光は反射ミラー236で反射された後に偏光ビームスプリッタ242Bに入射・透過してP偏光成分が反射型液晶パネル270Bに入射する。反射型液晶パネル270Bから出力される映像情報SV_Bで空間変調されたパネル出射光(本例ではS偏光成分)は、再度偏光ビームスプリッタ242Bのガラスプリズム102_Bに入射した後に第2平行平板層108B_Bに入射・透過し、さらに第1平行平板層106B_Bに入射する。第1平行平板層106B_Bはワイヤーグリッド偏光分離素子として構成されているので、ガラス基板107bに入射したS偏光成分は金属格子構造面107aにて反射されガラス基板107bを出て再度第2平行平板層108B_Bに入射・透過した後に、他方のガラスプリズム104_Bに入る。そしてガラスプリズム104_Bに入射後、これを透過し、出射面(側面104b)より出射され、クロスダイクロイックプリズム279に導かれる。
また、ダイクロイックミラー232で反射された後にダイクロイックミラー234で反射されたG光は偏光ビームスプリッタ242Gに入射・透過してP偏光成分が反射型液晶パネル270Gに入射する。反射型液晶パネル270Gから出力される映像情報SV_Gで空間変調されたパネル出射光(本例ではS偏光成分)は、再度偏光ビームスプリッタ242Gのガラスプリズム102_Gに入射した後に第2平行平板層108B_Gに入射・透過し、さらに第1平行平板層106B_Gに入射する。第1平行平板層106B_Gはワイヤーグリッド偏光分離素子として構成されているので、ガラス基板107bに入射したS偏光成分は金属格子構造面107aにて反射されガラス基板107bを出て再度第2平行平板層108B_Gに入射・透過した後に、他方のガラスプリズム104_Gに入る。そしてガラスプリズム104_Gに入射後、これを透過し、出射面(側面104b)より出射され、クロスダイクロイックプリズム279に導かれる。
また、ダイクロイックミラー232で反射された後にダイクロイックミラー234を透過したR光は偏光ビームスプリッタ242Rに入射・透過してP偏光成分が反射型液晶パネル270Rに入射する。反射型液晶パネル270Rから出力される映像情報SV_Rで空間変調されたパネル出射光(本例ではS偏光成分)は、再度偏光ビームスプリッタ242Rのガラスプリズム102_Rに入射した後に第2平行平板層108B_Rに入射・透過し、さらに第1平行平板層106B_Rに入射する。第1平行平板層106B_Rはワイヤーグリッド偏光分離素子として構成されているので、ガラス基板107bに入射したS偏光成分は金属格子構造面107aにて反射されガラス基板107bを出て再度第2平行平板層108B_Rに入射・透過した後に、他方のガラスプリズム104_Rに入る。そしてガラスプリズム104_Rに入射後、これを透過し、出射面(側面104b)より出射され、クロスダイクロイックプリズム279に導かれる。
クロスダイクロイックプリズム279に導かれたR,G,Bの3色の光束は、クロスダイクロイックプリズム279によって1つの画像投影光束として合成された後に投影レンズ217に導かれる。この後、投影レンズ217により図示を割愛したスクリーン上に、反射型液晶パネル270R,270G,270Bで各色光の偏光状態の変化として形成されるフルカラーの光学像(カラー映像)が拡大投影表示される。
ここで、反射型液晶パネル270Rから出力されるパネル出射光が、偏光ビームスプリッタ242Rに入射して投影レンズ217によりスクリーン上の所望の位置に投影される過程では、第1平行平板層106B_Rにて非点隔差As_106B_R (=As1)が発生し、また第2平行平板層108B_Rにて非点隔差As_108B_R (=As2)が発生する。同様に、反射型液晶パネル270Gから出力されるパネル出射光が、偏光ビームスプリッタ242Gに入射して投影レンズ217によりスクリーン上の所望の位置に投影される過程では、第1平行平板層106B_Gにて非点隔差As_106B_G (=As1)が発生し、また第2平行平板層108B_Gにて非点隔差As_108B_G (=As2)が発生する。同様に、反射型液晶パネル270Bから出力されるパネル出射光が、偏光ビームスプリッタ242Bに入射して投影レンズ217によりスクリーン上の所望の位置に投影される過程では、第1平行平板層106B_Bにて非点隔差As_106B_B (=As1)が発生し、また第2平行平板層108B_Bにて非点隔差As_108B_B (=As2)が発生する。
ここで、第6実施形態のプロジェクタユニット3Fで使用している偏光ビームスプリッタ242を構成する各光学部材(102,104,106B,108B)の各光学定数は、詳細な数値例は割愛するが、偏光分離機能を持つ第1平行平板層106Bを起因とする非点隔差を第2平行平板層108Bで補正できるように設定される。
色別に定数を最適化すると言う点を除いて、基本的な考え方は、第2実施形態の偏光ビームスプリッタ100Bにおける第1平行平板層106Bと第2平行平板層108Bに対する光学定数の設定の仕方と同様であり、結果的には、第5実施形態の場合のように、両非点隔差As_106B_R ,As_108B_R や両非点隔差As_106B_G ,As_108B_G や両非点隔差As_106B_B ,As_108B_B は何れも正負が逆であり、ほぼ同じ大きさの値を持つようにしてほぼ打ち消し合うようにし、全体の非点隔差As(=|2×As1+2×As2|)が十分に小さく、赤色、緑色、青色の光路での非点隔差の発生量が抑えられるようにする。
そして、全体の非点隔差As(=|2×As1+2×As2|)は、第1基準の許容非点隔差量As0_1である焦点深度Fδの半分のFδ/2以下を満たし、さらに好ましくは、第2基準の許容非点隔差量As0_2である焦点深度Fδの4分の1のFδ/4以下を満たすようにする。
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