JP2008533994A - γ−グルタミルシステインの製造プロセス - Google Patents

γ−グルタミルシステインの製造プロセス Download PDF

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Abstract

本発明は、γ-グルタミルシステインまたはγ-グルタミルシステイン誘導体のような、システイン部分とグルタミン酸部分との間にα,γアミド結合を含む化合物を調製するプロセスであって、γ-グルタミル基のシステイン誘導体への転移を促進する反応環境中に、システイン誘導体と、γ-グルタミルドナーと、γ-グルタミル基をシステイン誘導体に転移させることができる酵素とを提供することを含むプロセスに関する。本発明はまた、本発明のプロセスにより得られた場合に、γ-グルタミルシステインまたはγ-グルタミルシステイン誘導体のように、システイン部分とグルタミン酸部分との間にα,γアミド結合を含む化合物、並びにその使用にも関する。

Description

発明の分野
本発明は、γ-グルタミルシステインを製造するための酵素的プロセス、そのようなプロセスにより製造されたγ-グルタミルシステイン、およびその使用に関する。
発明の背景
全ての好気性生物は、呼吸のためおよび、エネルギー用の栄養素の酸化のために分子酸素を使用する。分子酸素から水への還元中に、遊離基としても公知の反応性酸素種が発生する。これらは極めて反応性があり、DNA、タンパク質および脂質を含む殆ど全ての細胞成分を攻撃して損傷を与え得る。老化、関節炎、動脈硬化、AIDS、癌、白内障、肝炎、心筋梗塞、アルツハイマー病および脳卒中を含む多くの種々の退行性疾患において、これらの反応性酸素種により誘発される酸化ストレスが関係していると見なされてきた。酸化ストレスに対抗するために、細胞は、酵素および、アスコルビン酸塩、α-トコフェロール、尿酸、β-カロテンおよびグルタチオンのような抗酸化剤を含む防御機構を開発してきた。主な細胞抗酸化剤として、グルタチオンの代謝および修飾が、酸化ストレスに対する保護において重要である。
グルタチオン(GSH)は、γ-グルタミン酸、システインおよびグリシンのトリペプチドであり、最も生物学的に豊富な低分子量細胞内チオールであり、その遊離スルフィドリル(-SH)の還元力により、多くの細胞プロセスにおいて重要な役割を果たす。これらは、酸化ストレス、生体異物および放射線に対する細胞の保護を含む。GSHは、γ-グルタミルシステインシンセターゼ(γ-GCS)およびGSHシンセターゼ(GS)の連続的作用により、その構成アミノ酸から細胞内で合成され、いずれの反応もATPを消費する。
グルタチオンの細胞合成(デノボ)
Figure 2008533994
低下した細胞中および組織中GSH水準は、ますます増加する疾患および退行性症状、特に、遊離基損傷に関わるものの発症機序に関係があると思われる。多くのこれらの医学的症状の治療において細胞中GSH水準を回復することが有益であると分かった。
GSHの投与は、GSHが細胞中に効果的に運ばれず、細胞外でそのアミノ酸に分解するので、細胞中GSHの増加に非効果的であると考えられる。
GSH合成における制限アミノ酸であるシステインの投与も、システインが素早く酸化して難溶性のシスチンになると共に、報告によれば毒性であるので、非効果的であると考えられる。GSH水準を高める対策は、主に、N-アセチルシステインおよび2-オキソチアザリジン-4-カルボキシレートのようなシステイン送達化合物に集中している。システインプロドラッグによるGSH水準の上昇は、第1の合成酵素であるγ-GCSのGSHによるフィードバック阻害により、使用が制限されている。第2の酵素であるGSはフィードバック阻害されず、その基質GGCは通常、GSH合成における制限基質である。γ-グルタミルシステイン(GGC)はGSHへの最も直前の前駆体であり、GGCは通常、システインより低い水準で存在する。多くの細胞型が、細胞膜を通して外因性GGCを輸送する性能を有しており、GGCは細胞中GSH水準を高める臨床的可能性を有することが示されている。
γ-グルタミルシステインは天然にはウシミルク中に存在し、特に、ホエー画分中に豊富であり、その中でジスルフィド結合を介してタンパク質に結合している。多くの報告が、ホエータンパク質の消費がGSHの水準を増加させることを示している。所定範囲のホエータンパク質単離物は市販されており、GGCを活性構成要素として含むことが主張されている。筋肉性能およびHIV患者についての最近のヒト臨床的試行により、ホエータンパク質単離物がGSH水準を高める効果を確認した。
ホエータンパク質単離物として既に十分に確立されているGGC用の栄養補給食品の市場は別として、GGCについての他の用途としては、抗酸化剤物質としての食品および化粧品へのGGCの添加、および重金属または酸化剤で毒された患者の治療がある。
現在のところ、GGCの製造のための産業的に適した費用効果的プロセスは無い。これは、システインの反応性スルヒドリル、および従来には無かったγ-グルタミルペプチド結合に必要な、手間のかかる保護および脱保護化学が原因である。
グルタチオンの商業的製造について科学および特許文献に記載されているプロセスの大部分が、酵母、特に、天然においてGSH中に豊富であるパン酵母サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の発酵を包含している。しかしながら、微生物によるGGCの生成は多くの不利益を被ることが分かっている。例えば、低体積収率、基質に対する低収率、長い発酵時間(数日)、複雑な精製手順、多数の廃液流の発生、および高い設備投資費用である。
GSHの大規模化学的合成も、構成アミノ酸上に8つの官能基が存在するために、困難を被る。GGCの場合、6つの官能基がある。GSHの化学的合成のための大部分の方法は、低収率(<10%)である。GGCの化学的合成の商業的成功を妨げる主要な欠点は、含まれる工程の数である。すなわち、各々がシステインとグルタミン酸の両方のためである2つの保護工程、1つのカップリング工程、および、次に、少なくとももう2つの脱保護工程である。GGCの化学的合成におけるもう一つの困難は、エステル化によるグルタミン酸のα-カルボキシル基の選択的保護が、γ-カルボキシル基の高い反応性により複雑であることである。白金触媒に対するシステインからの硫黄の毒性効果故に、GGC中におけるグルタメートのアミノ基のベンジロキシカルボニル保護基の白金触媒された水素添加分解(脱保護)を利用できないことも、主要な不利益である。GGCの化学的合成の軽微な欠点としては、ペプチド合成における一般的問題であるGGCの2つのキラル中心のいずれかがラセミ化される可能性、および、大容積の必要な毒性試薬と溶媒の使用に特有である環境安全性関連事項がある。
従って、前述の不利益、すなわち低収率、高価な回収、複雑なおよび/または費用のかかる工程、複数の廃液流の形成、長時間の発酵工程、および高い設備投資費用の少なくとも一つまたは複数を被らない、γ-グルタミルシステインの産業的規模の製造の効果的プロセスが必要とされている。
本発明の目的は、反応工程の数、用いられる原料の量および副産物の形成による出発材料の損失を減少させることにより、γ-グルタミルシステインまたはその誘導体を経費効果的に製造するプロセスを提供することにある。
発明の概要
本発明は、酵素的合成を用いてγ-グルタミルシステインを製造するための、効率的で、比較的単純な、費用効率の高いプロセスを提供する。
すなわち、本発明の一つの局面によれば、システイン部分とグルタミン酸部分との間にα,γアミド結合を含む化合物を調製するプロセスであって、γ-グルタミル基のシステイン誘導体への転移を促進する反応環境中に、システイン誘導体と、γ-グルタミルドナーと、γ-グルタミル基をシステイン誘導体に転移させることができる酵素とを提供することを含むプロセスが提供される。
本発明の一つの態様によれば、酵素はγ-グルタミルトランスペプチダーゼのようなγ-グルタミルエステラーゼまたはγ-グルタミルアミダーゼ活性を有する。
もう一つの態様によれば、γ-グルタミルドナーはグルタミン酸のγ-エステルまたはγ-アミドである。
本発明の方法で用いるためのγ-グルタミルドナーの例として、グルタミン酸のγ-アルキル-、α,γ-ジアルキル-、γ-p-クロロフェニル-およびγ-シアノメチル-エステルが含まれる。
本発明の方法で用いるためのγ-アルキル-およびα,γ-ジアルキル-グルタミルエステルの例として、グルタミン酸のγ-メチル-、γ-エチル-、α,γ-ジメチル-およびα,γ-ジエチル-エステルが含まれる。
もう一つの態様によれば、システイン誘導体は水溶性である。この局面において、本発明のプロセスで用いるためのシステイン誘導体の例として、以下のものが含まれる:
システインと低分子量水溶性チオールとの混合ジスルフィド;
S-アセチルシステイン;
S-アセトアミドメチルシステイン;
S-メトキシカルボニルスルフェニルシステイン;
S-スルホシステイン;
シスチンジメチルエステル;および
シスチンモノメチルエステル。
混合ジスルフィドを調製するための水溶性チオールとしては、チオグリコール酸、シスタミン、チオ酢酸、メタンチオールまたはエタンチオールのような任意の適当な低分子量水溶性チオールが含まれ得る。本発明のプロセスで用いるためのシステインの適当な混合ジスルフィドの例は、システイン-メルカプトエタノール混合ジスルフィドである。
もう一つの態様によれば、反応環境は水性である。ジメチルホルムアミドのような水混和性溶媒が、反応環境に含まれてよい。
本発明のもう一つの態様によれば、酵素は、ウシ腎臓またはウシ乳γ-グルタミルトランスペプチダーゼのようなウシγ-グルタミルトランスペプチダーゼから選択される。
もう一つの態様によれば、酵素は、樹脂のような固定相の上に固定化される。
もう一つの態様によれば、本プロセスはバッチ式プロセスであってもよい。または、本プロセスは連続式であってよい。後者の場合、γ-グルタミルドナーおよびシステイン誘導体を、固定化された酵素を含む反応器の入口に連続的に供給することができ、生成物化合物を含む溶出液を出口から連続的に回収することができる。
本発明のプロセスの一つの態様によれば、そのプロセスは、γ-グルタミルシステイン誘導体を調製するためのものである。そのようなプロセスは、γ-グルタミル基のγ-グルタミルトランスペプチダーゼによるγ-グルタミルエステルからシステイン誘導体への転移を促進する反応環境中に、下記のものを提供することを含んでもよい:
γ-グルタミルエステル;
下記から選択されるシステイン誘導体:
システインと低分子量水溶性チオールとの混合ジスルフィド、
S-アセチルシステイン、
S-アセトアミドメチルシステイン、
S-メトキシカルボニルスルフェニルシステイン、
S-スルホシステイン、
シスチンジメチルエステル、および
シスチンモノメチルエステル;ならびに
γ-グルタミルトランスペプチダーゼ。
本プロセスの一つの態様によれば、γ-グルタミルエステルが、グルタミン酸のγ-メチル-、γ-エチル-、α,γ-ジメチル-、およびα,γ-ジエチル-エステルから選択され、γ-グルタミル受容体が、システインとチオグリコール酸またはシスタミンまたは他の低分子量水溶性チオールとの混合ジスルフィドから選択される。
前述のプロセスにより製造された、システイン部分とグルタミン酸部分との間にα,γアミド結合を含む化合物も提供される。この化合物は、γ-グルタミルシステイン-メルカプトエタノール混合ジスルフィド誘導体であってもよい。
γ-グルタミルシステイン誘導体の合成のための本発明のプロセスのもう一つの態様によれば、本プロセスは、電気透析またはイオン排除クロマトグラフィーによりγ-グルタミルシステイン誘導体を精製するさらなる工程を含む。
システイン部分とグルタミン酸部分との間にα,γアミド結合を含む化合物は、γ-グルタミルシステインまたは、γ-グルタミルシステイン-メルカプトエタノール混合ジスルフィド誘導体のようなγ-グルタミルシステインの誘導体であってよい。
したがって、本発明のもう一つの態様によれば、γ-グルタミルシステイン誘導体から誘導体化基を開裂してγ-グルタミルシステインが提供される。一つの態様によれば、誘導体化基が電気化学的還元により開裂される。次にγ-グルタミルシステインを単離し、任意で、還元もしくは酸化型として、または還元型および酸化型の両方の混合物として精製することができる。
前述のプロセスにより製造されたγ-グルタミルシステインも提供される。
発明の詳細な説明
GGCの製造のための産業的に効果的なプロセスは利用できない。現存の非酵素的プロセスは、典型的には、複合的な多工程プロセスであり、高価な装置を必要とし、生成物の経費のかかる回収を含み、毒性化合物および有機溶媒の使用を含み、種々の廃液流を産生する。酵素的プロセスも記載されているが、それらは、典型的には、非効率的であり収率が低く、しばしば、高価なまたは取扱い困難な出発化合物または中間体を使用する。
本検討の結果、GGCの大規模/産業的規模製造のための効率的かつ効果的なプロセスが考案された。すなわち、本発明は、システイン部分とグルタミン酸部分との間にα,γアミド結合を含む化合物を調製するプロセスであって、γ-グルタミル基のシステイン誘導体への転移を促進する反応環境中に、システイン誘導体と、γ-グルタミルドナーと、γ-グルタミル基をシステイン誘導体に転移させることができる酵素とを含むプロセスを提供する。
定義
本明細書において用いられる「含む(comprising)」という用語は、「主に含むが、必ずしも単独ではない」ことを意味する。「含む(comprise)」および「含む(comprises)」のような「含む(comprising)」という用語の変形は、対応して同様に意味を有する。
本明細書において用いられる「システイン誘導体」という用語は、一つまたは複数の官能基で置換されたシステインまたはその酸化/二量体化型であるシスチンを包含する。
本明細書において用いられる「有効量」は、所望の効果を提供するのに充分な、しかし、非毒性量の物質を含む。「有効量」は、用途間において(例えば、栄養補給食品での使用から薬学的組成物中での使用に)、および用途中においても(例えば、薬学的組成物において被験者から被験者に、および栄養補給食品中で)変化する。任意の所与の場合、適当な「有効量」は、所定の実験のみを用いて当業者により決めることができる。
本明細書において用いられる「γ-グルタミルドナー」という用語は、γ-結合を介してシステイン部分に転移され得るグルタミル基を含む任意の適当な化合物を包含する。そのようなドナーは、グルタミン酸のγ-アミド、または、γ-アルキル、α,γ-ジアルキル-またはγ-アリール-エステルのようなγ-エステルであってもよく、ヒドロキシル、エーテル、ハロゲン、シアノ、チオール、ニトロ、アミンまたはアミドから選択される置換基を含んでよい。
γ-グルタミルシステインに関して用いられる「単離された」という用語は、問題の材料が反応混合物から除去され、関連する不純物が低減または取り除かれていることを示す。本質的に、「単離された」材料は、同じ供給源からの他の材料に対して豊富であり(すなわち、モル基準で、所与の供給源からの個々の種の任意の他のものよりも豊富である)、好ましくは、実質的に精製されたフラクションは、「単離された」材料が、存在する全ての分子種の少なくとも約60%(モル基準)を含む組成物である。通常、材料の実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する分子種を合計の約80〜90%より多く含む。最も好ましくは、「単離された」材料は、本質的に均一になるまで精製される(汚染物質種が検知可能な量で検出できない)。
本明細書において用いられる「水溶性」という用語は、pH8.0〜9.0、標準温度および圧力(25℃および1気圧)で少なくとも約2g/Lの量で水中に溶解し得る化合物に言及する。
特記しない限り、アミノ酸のグルタミン酸およびシステイン(またはシスチン)に言及される場合、これらの化合物のL-異性体を意味する。
本発明のプロセスで用いるための酵素
γ-グルタミル基をγ-グルタミルドナーからシステイン誘導体に転移することができる任意の酵素が、本発明で考えられる。多くの酵素の正常の生物学的機能は、タンパク質またはペプチドからアミノ酸を除去する、またはタンパク質またはペプチドを加水分解することであるが、これらの反応は適当な条件下に可逆性であることが多い。従って、熱力学的に好ましい反応が化合物からのγ-グルタミル基の除去である酵素が、熱力学的に好ましい反応が化合物へのγ-グルタミル基の付加または転移である酵素と共に、本発明の範囲内と考えられる。従って、本発明のプロセスにおいて用いられると考えられる酵素として、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(E.C.2.3.2.2)のようなトランスペプチダーゼ、およびγ-グルタミルヒドロラーゼ(E.C.3.4.19.9)のようなエステラーゼ活性を有する加水分解酵素、パパイン(E.C.3.4.22.2)、ブロメライン(E.C.3.4.22.32)、フィシン(E.C.3.4.22.3)、トリプシン(E.C.3.4.21.4)、キモトリプシン(E.C.3.4.21.1)、スブチリシン(E.C.3.4.21.62)およびエラスターゼ(E.C.3.4.21.37)のようなプロテアーゼまたはペプチダーゼ、およびブタ膵臓、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、サーモマイセス・ラヌギノサ(Thermomyces lanuginosa)またはリゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)からのリパーゼのようなリパーゼ(E.C.3.1.1.3)が挙げられる。システイン誘導体用の酵素の特異性が増加すると、反応の効率が良くなる。
これらの酵素は、天然供給源から単離することができる、または、天然の酵素の変異体を含んで、組換え的に生成することができる。
γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(E.C.2.3.2.2)
天然には、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GT)は、水、アミノ酸またはジもしくはトリペプチドであってよい受容体への、グルタチオンのγ-グルタミル部分の転移を触媒する。これらの酵素は、加水分解よりもアミノ分解の可能性を増加させる特異的ドナーおよび受容体部位を有しており、水中で等モル濃度の基質を用いて比較的高い合成収率を得ることを可能にする。さらに、GGCの化学的合成に必須であると共に、一般的プロテアーゼを用いる時にしばしば必要とされる保護手段は、γ-GT触媒された反応を用いた場合、基質への高い特異性故に、不必要である。
高水準のγ-GTを含む生物学的供給源が、動物(豚回虫(Ascaris suum)、新鮮ウシ乳、ウシ腎臓、ヒト腎臓、ヒツジ腎臓、ブタ腎臓、ラット腎臓、ラット肝癌、ラット膵臓)、細菌(Actinobacillus actinomycetemcomitans(アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス)、Bacillus subtilis Natto(バチルス・スブチリス・ナット)(上清)、大腸菌(Escherichia coli)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis))、真菌類(アガリクス・ビスポルス(Agaricus bisporus)、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、モルシェラ・エスクレンタ(Morchella esculenta)、ペニシリウム・ロケホルチ(Penicillium roqueforti)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、および植物(アッキー種子、インゲン豆果実)において確認された。γ-GTの従来の供給源は、ウシ乳のホエーフラクションである。しかしながら、別のγ-GT供給源の検討により、より容易に入手できる酵素、および/または、システイン特異性のような優れたパラメーターを有する酵素が提供される。
γ-グルタミルトランスペプチダーゼは、最も好都合には、例えば、限外濾過による濃縮、塩析、溶媒沈澱、およびタンパク質分解消化(汚染タンパク質の除去)技術、またはそれらの組み合わせのような当技術分野において公知の低費用手順を用いて、ウシ乳のホエーフラクションから得ることができる。精製されたγ-GTは、反応カラム中に含まれる適当な樹脂ビーズ基質上に固定することができ、それにより、連続的フロープロセスが可能になり、増加した酵素安定性および、多工程バッチ用に固定化γ-GTを再使用する性能の利益が得られる。
γ-グルタミルヒドロラーゼ(E.C.3.4.19.9)
γ-グルタミルヒドロラーゼは、プテロイルポリ-γ-グルタメートからポリ-γ-グルタメートまたはγ-グルタメートを除去してプテロイルグルタメート(葉酸)を除去することを触媒する。その酵素は、γ-グルタミル結合への特異性を有するので、逆にγ-グルタミル基を受容体分子に転移させることに用いることができる。
プロテアーゼおよびペプチダーゼ
多くのプロテアーゼおよびペプチダーゼは、加水分解の性質を有するが、水ポテンシャルの低下(加水分解時の濃縮に好ましいように)および低温を含む適当な条件が提供されると、逆の合成反応を触媒するために用いることができる。本発明の範囲内で考えられるプロテアーゼおよびペプチダーゼには、パパイン(E.C.3.4.22.2)、ブロメライン(E.C.3.4.22.32)、フィシン(E.C.3.4.22.3)、トリプシン(E.C.3.4.21.4)、キモトリプシン(E.C.3.4.21.1)、スブチリシン(E.C.3.4.21.62)およびエラスターゼ(E.C.3.4.21.37)のようなエステラーゼ活性を有するプロテアーゼが挙げられる。これらの酵素に対して、γ-グルタミルトランスペプチダーゼを用いる主な利益は、これらの酵素のための反応環境が、合成反応に好ましいように水混和性溶媒(例えば、DMF)を高い割合で加えることを必要とすることであるが、γ-GTにより触媒された反応は、100%水において実施し得る。
リパーゼ(E.C.3.1.1.3)
プロテアーゼと同様に、加水分解の性質を有するが、リパーゼは、水濃度の低下(加水分解時の濃縮に好ましいように)および低温を含む適当な条件が提供されると、逆の合成反応を触媒するために用いることができる。プロテアーゼとは異なり、リパーゼはα-カルボキシルに対して限定された特異性を有さず、このことにより、グルタミン酸のγ-カルボキシルへの有用な活性が提供され得る。本発明の範囲内で考えられるリパーゼとして、ブタ膵臓、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)、サーモマイセス・ラヌギノサ(Thermomyces lanuginosa)またはリゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)からのリパーゼのような任意の好適なリパーゼが挙げられる。これらの酵素に対して、γ-グルタミルトランスペプチダーゼを用いる主な利益は、これらの酵素のための反応環境が、合成反応に好ましいように水混和性溶媒(例えば、DMF)を高い割合で加えることを必要とすることであるが、γ-GTにより触媒された反応は、100%水において実施し得る。
酵素固定化
本発明のプロセスで用いるための酵素は、当技術分野において公知と共に、例えば、Wiseman, A.(1995)Handbook of Enzyme Biotechnology(London, Ellis Horwood)に記載されているようなプロセスおよび材料を用いて、任意の適当な支持体に固定することができる。提案されたプロセスに関するマトリクス固定の主な基準には、
1.高い酵素結合性能を有すること、
2.反応条件下に酵素の安定性を維持し、再使用できること、
3.流動床反応に耐えるように十分に頑強であること、および
4.費用効率が高いこと、がある。
例えば、酵素は、Eupergit(登録商標)活性化樹脂(例えば、Eupergit(登録商標)C250L活性化固定用樹脂ビーズ)のような市販されている活性化された支持体上に、提供された指示に従って、任意で適当なスペーサーを用いて固定することができる。あるいは、公知のジイミド、エポキシまたは臭化シアノゲン化学を用いて、典型的にはクロマトグラフィー用支持ビーズである所望の表面に酵素を固定することができる。
ペプチド転移基質
γ-グルタミルドナー
以下の基準を満たす任意の適当なγ-グルタミルドナーが、本発明により考えられる:
・溶媒系への適度の溶解性(>0.1M)、
・γ-グルタミルドナーとの酵素の適度の活性、および
・任意の誘導体化基を容易に除去して、遊離γ-グルタミルシステインを放出できなくてはならないこと。例えば、ベンジルオキシカルボニルのような誘導体化基は、γ-グルタミル受容体が一つまたは複数のチオール基を有する場合、この基の除去にチオール基により毒される白金触媒の使用を必要とするので、不適当である。
ドナー基質の化学的誘導体化が、γ-グルタミル転移酵素の相対的活性に影響を与え得る。例えば、γ-GTを用いる場合、γ-エチルエステルより強い電子吸引効果を有するγ-エステルを用いてグルタミン酸を誘導体化すると、アミノ分解反応がさらに増加することになる。従って、グルタミン酸のγ-ベンジルおよびγ-p-ニトロベンジルエステル(いずれも、強度の電子吸引性基を有する)は、増加したアミノ分解を提供するはずであるが、溶媒系中への溶解性(<30mM)は乏しいと分かった。p-クロロフェニルおよびシアノメチルエステルのような活性化エステルは、活性の乏しいエステラーゼ酵素のための好適な誘導体であり得る。エステルの選択についての主な制限は、誘導体の費用および、溶解性へのその影響である。
γ-GTは、γ-グルタミルドナー上の遊離α-アミノ基を絶対的に必要とするが、α-カルボキシルは活性を損失することなく誘導体化することができる。また、α-メチルのエステル化(例えば、グルタミン酸α,γ-ジエチルエステル中に存在)は、自発的ペプチド転移反応を阻害し得る。
ペプチド転移に適したドナーであるγ-グルタミル誘導体としては、例えば、
・グルタミン酸のγ-エチル、メチル、プロピルまたは他の水溶性のエステル
・グルタミン酸のγ-エチレングリコールエステル
・グルタミン酸のメトキシエタノールまたはエトキシエタノールエステル
・グルタミン酸のγ-p-クロロフェニルエステル
・グルタミン酸のγ-シアノメチルエステル
・グルタミン酸のα,γ-ジエチル(またはジメチル)エステル
・γ-グルタミルエチル、メチル、プロピルまたは他の水溶性アミド
が挙げられる。
γ-グルタミルドナーの合成
a.γ-グルタミルエステル
グルタミン酸のγ-アルキルエステルは、酸性条件下でのグルタミン酸と適当なアルキルアルコールとの標準的エステル化反応により容易に調製することができる。例えば、グルタミン酸エステルは、触媒としての鉱酸(例えば、塩化水素または硫酸)の存在下に適切なアルコール(例えば、エチルエステルについてはエタノール)にアミノ酸を溶解するフィッシャーエステル化のような従来のプロセスに従って、合成することができる。グルタミン酸のγ-カルボキシル基は、α-カルボキシル基よりも塩基性であるので、エステル化するのが好ましい。長い反応時間および加熱の後に初めて、α,γ-ジエステルが形成される。
グルタミン酸γ-エチルエステルの合成のために、以下の手順を、任意でスケールアップして用いてよい。溶解された無水塩化水素ガス(23g;63mmol)を含む無水エタノール(350mL)中にグルタミン酸(35g;24mmol)を含む懸濁液を、室温で全ての固形分が溶解するまで(約20分間)攪拌して調製する。溶液を無水エタノールで1Lまで希釈し、トリエチルアミンを、溶液がアルカリ性になるまで滴下する。混合物を4℃で一晩放置して、結晶性懸濁液を得、これはブフナー漏斗内で濾過することにより集めることができ、続いて、冷たい無水エタノール、次にエーテルで順次洗う。次に、フィルターケーキを、デシケーター中、シリカ上で減圧下に乾燥する。
α,γ-ジエチルエステルの合成は、同様の経路にて行うことができ、グルタミン酸/無水エタノール溶液を塩化水素ガスで飽和させ、加熱して穏やかに3時間還流させ、次に、室温に約1時間冷却してから、無水エタノールで1Lに希釈する。
あるいは、グルタミン酸γ-エチルエステルを僅かに修飾した手順により調製することができ、無水塩化水素ガスの代わりに、硫酸(98%)を、無水エタノール中にグルタミン酸を含む攪拌下の懸濁液に滴下し、混合物を室温で約2時間反応させる。次に、混合物を、エタノール濃度を約60%v/v以上に維持(硫酸ナトリウムはこの溶液に不溶性であるが、グルタミン酸γ-エチルエステルは可溶性である)しつつ10℃より低い温度で水酸化ナトリウムで注意深く中和し、濾液を濃縮し、エタノールを添加することにより約80%v/vまで結晶化させる。結晶化の代わりに、エタノールを留去してもよく、グルタミン酸γ-エチルエステル溶液を、任意で希釈してから、本発明のプロセスにおいて直接用いることができる。
b.γ-グルタミルアミド
グルタミン酸の幾つかのγ-アミドは、ペプチド転移反応用の適当なドナーであり得る。例えば、実施例2で用いられるアミドであるL-γ-グルタミル-p-ニトロアニリドは、有効なγ-グルタミルドナーであることが示された。しかしながら、L-γ-グルタミル-p-ニトロアニリドおよび多くの他の類似のγ-グルタミルアミドを合成するために複雑な保護および脱保護化学が必要であるので、経済的観点でのそれらの有用性が損なわれる。幾つかの単純なγ-グルタミルアミドを保護基を必要とすることなく合成することができ、それらは、ピロリドンカルボン酸(グルタミン酸を180℃に加熱したときに水の損失により形成される環状誘導体)と反応させた時に自発的にγ-グルタミルアミドを形成することができる、メチルアミンおよびエチルアミンのような強度に塩基性のアミンである。例えば、Lichtenstein(Lichtenstein, N. Preparation of γ-alkylamides of glutamic acid. Journal of the American Chemical Society, 1942. 64 p.1021-1022)は、ピロリドンカルボン酸の水溶液を37℃で適切なアミンにより10日間処理することにより幾つかのγ-グルタミルアルキルアミド(メチルおよびエチル)を合成することを記載している。ピロリドンカルボン酸をアンモニア水溶液で処理することによりグルタミンは得られなかった。実施例3で用いられた最も単純なγ-グルタミルアミドであるグルタミンは、効果の無いγ-グルタミルドナーであることが示された。
システイン誘導体
システインはγ-グルタミルトランスペプチダーゼにより触媒される反応にとって乏しいγ-グルタミル受容体であり、この酵素は、受容体としてのシスチンに約100倍以上特異的である。しかしながら、シスチンは水溶性が乏しく(37℃およびpH9.1において約5g/Lであり、溶解性は、より低い温度およびpH値において低い)、その結果、シスチンは、産業的規模のプロセスのためのγ-グルタミル受容体として用いることに適していない。
受容体基質(システイン誘導体)の化学的誘導体化も、γ-グルタミル化誘導体の収率に影響を与え得る。反応の最高効率のために、システイン誘導体は、理想的には、以下の基準を満たすべきである。
・溶媒系への適度の溶解性(>0.1M)、
・γ-グルタミル受容体との酵素の適度の活性、および
・受容体上の任意の保護および/または可溶化基を、容易に除去して、遊離γ-グルタミル化誘導体(例えば、S-ベンジルシステインのような誘導体は、除去のために過酷な化学的条件を必要とするので、不適当である)を放出できなくてはならない。
これらの検討中に、幾つかのシスチン(システイン)誘導体が、有能な受容体であると確認された。これらには、システインとメルカプトエタノールとの混合ジスルフィド(Cys-Merc)、システインとチオグリコール酸との混合ジスルフィド、S-スルホ-システインの塩、および、シスチンの部分的エステル化により合成できる可能性があるシスチンのモノメチルエステル(半エステル)がある。3つの全ての誘導体が、良好な水溶性を有すべきであり、過剰にチオールを用いる還元によりまたは電気化学的に容易に脱保護される。誘導体であるS-アセトアミドメチルシステインは、高い水溶性(2Mが可能)を有することが示されており、医薬用ペプチドの産業的合成において最も一般的に用いられているシステインの保護形の一つである。S-アセトアミドメチル基の除去は、ヨウ素での処理により行われ、結果として、対応するジスルフィドが形成される。
α-アミノのpKaの低下につながるシステイン誘導体は、アミノ分解反応を著しく増加させる。α-アミノ基に近接しているために、シスチン(システイン)のα-カルボキシル基の誘導体化は、S-誘導体化よりも、そのpKaに大きな影響を有するようである。理想的には、シスチン(システイン)のα-カルボキシル基は、アミンのような強力な電子吸引基により誘導体化される。しかしながら、その適合は、その基がいかに容易に除去されるかに強く依存し、プロテアーゼで触媒された脱保護が可能な選択肢である。
ペプチド転移反応用に適したシステイン誘導体の例として、以下のものが含まれる:
・システインと低分子量水溶性チオールとの混合ジスルフィド
・S-アセチルシステイン
・S-アセトアミドメチルシステイン
・S-メトキシカルボニルスルフェニルシステイン
・S-スルホシステイン
・シスチンジメチルエステル
・シスチンモノメチルエステル。
混合ジスルフィドの調製のための水溶性チオールとして、チオグリコール酸、シスタミン、チオ酢酸、メタンチオールまたはエタンチオールのような任意の適当な低分子量水溶性チオールを挙げることができる。本発明のプロセスにおいて用いるためのシステインの適当な混合ジスルフィドの例は、システイン-メルカプトエタノール混合ジスルフィドである。
シスチン(システイン)誘導体の合成
システインのチオール基の効果的保護は、ペプチド化学における現時点での問題であり、Kudryavtsevaによって、誘導体化/保護基が十分に再検討されている(Kudryavtseva, E.V., et al. Peculiarities of synthesis of the cysteine-containing peptides. Uspekhi Khimii, 1998. 67(7): p.611-630)。しかしながら、この文献に記載されたシステイン誘導体の殆ど全ての主な不利益は、非極性有機溶媒に可溶性であるように設計されていることであり、それにより、水が選択される溶媒である本発明に不適切となる。システインの幾つかの水溶性誘導体が確認されており、以下に列挙する。
a. 混合ジスルフィド
混合ジスルフィドの形成のために、以下のものを含む多くの選択肢が存在する。2-メルカプトエタノールによるS-スルホ-システイン中間体の還元(Stapleton, I.W., et al. Amino acids and peptides .9. Some unsymmetrical disulphides derived from cysteine. Australian Journal of Chemistry, 1962. 15(3):p.570);システインによるS-(2-ヒドロキシエチル)-メタンチオールスルホネート中間体の還元(Nagasawa, H.T., J.F.Cohen, and W.B. Rathbun, Mixed disulfides of L-cysteine and its derivatives with 2-mercaptoethanol. Organic Preparations and Procedures International(Briefs), 1996. 28(2):p.237-241)、およびジアクアコビンアミド(diaquacobinamide)で触媒した混合ジスルフィド形成(Budy, B., et al., A facile synthesis of homocysteine-cysteine mixed disulfide. Analytical Biochemistry, 2001. 291(2):p.303-305)。システインとチオグリコール酸との混合ジスルフィドは、例えば、Greenstein, J.P. and M.Winitz, Chemistry of the amino acids. Vol.3.1961, New York: John Wiley & Sons. p.1879-1928に記載のように調製することができる。混合ジスルフィドの形成のための他の方法としては、「Reaction of cysteine with excess mercaptoethanol and cyanogen bromide」(Abe, O., et al. Synthesis of mixed disulfides with cyanogen-bromide and its consequences for elucidation of protein structure. Journal of Organic Chemistry, 1974. 39(2):p.253-255)がある。システインまたはメルカプトエタノールを、塩化アルコキシカルボニルスルフェニルと反応させてS-アルキルオキシカルボニルスルフェニル誘導体を形成し、これが、チオールと容易に反応して混合ジスルフィドが形成される(Rietman, B. H., et al. A facile method for the preparation of S-(alkylsulfenyl)cysteines. Synthetic Communications, 1994. 24(9):p.1323-1332)。
システインの混合ジスルフィドの合成のための一つの方法は、最初にSchoberlにより記載されたようにチオスルフィネート(モノジスルフィド酸化物)中間体の使用である(Schoberl, A., et al. Synthese und reaktions weise von unsymmetrischen disulfiden .6. Aminocarbonsauren und haarkeration mit unsymmetrisch eingebauten disulfidaustausches. Annalen Der Chemie-Justus Liebig, 1958, 617(1-3):p.71-88)。
Figure 2008533994
得られるスルフェン酸を、以下のように、チオールによりさらに還元して混合ジスルフィドを形成することができる。
R-SOH + R1SH → R-S-S-R1 + H2O
前述の反応スキームにおいて、システインまたは所望の誘導体化基(例えば、メルカプトエタノール)は、RまたはR1であってよい。シスチンチオスルフィネートおよび大部分の他のチオスルフィネートは、(Savige, W.E., et al. The S-monoxides of cystine, cystamine and homocystine. Tetrahedron Letters, 1964.(43-4):p.3289-3293)、(Walti, M., et al. Synthesis of isomers of mono- and di-hydroxy-analogues of cystine and comparison with metabolites excreted in urine. Journal of the Chemical Society C-Organic, 1971. 12:p.2326)および(Batistaviera, F., et al. Solid-phase thiolsulfinates for the reversible immobilization of thiols. Applied Biochemistry and Biotechnology, 1994. 44(1):p.1-14)により示されるように、有機過酸(例えば、過酢酸、過蟻酸、およびモノペルオキシフタレート)で酸化することにより合成することができる。
システインの混合ジスルフィドの合成のためのもう一つのプロセスは、以下のような銅イオンで触媒した空気/O2酸化である。
Figure 2008533994
R-SHはメルカプトエタノールであり得、またはR-S-S-Hは2,2'-ジチオジエタノール(DTDE)、およびR1SHはシステインまたはR1-S-S-R1はシスチンであり得る。主な反応生成物となる混合ジスルフィド(R-S-S-R1,Cys-Merc)のために、3〜4モル過剰のR-SHまたはR-S-S-H(R-SHに基づく)が必要である。迅速な反応の完了のために低い出発チオール濃度が好ましく、シスチンの沈澱を避けるために3〜4モル過剰のR-SHまたはR-S-S-H(R-SHに基づく)が必要であり、R-S-S-R(例えば、DTDE)およびR1SH(システイン)を含む酸化は、R-SHとR1-S-S-R1の間の反応より迅速であるが、この反応はR-SHとR1-SHの間の反応より迅速である。得られる混合ジスルフィドのシスチン汚染も、本発明のプロセスにおいてGGC-シスチンの望ましくない生成につながるので、望ましくない。3〜4モル過剰のR-SHまたはR-S-S-H(R-SHに基づく)を用いると、シスチン汚染の危険性が低下する。
例えばフリットを通して空気を反応混合物中に吹き込むことにより激しく空気混入しつつ、pH8.5〜pH9.0までで、銅II(Cu2+)イオンの存在下に、反応が生じる。その後にGGC誘導体をチオール形に還元するために電気化学的還元を用いる場合、Cys-Mercの合成の完了時に銅(II)イオンの除去が必要である。これは、例えば、固定化イミノ二酢酸基を有するセファロースのような銅(II)イオンに高い選択性を有するキレート化樹脂のカラムを通して通過させることにより行うことができる。反応混合物の完全な溶離の前に樹脂床の末端に達することが許されない銅イオンのキレート化により付与される樹脂の強度の青色着色によりカラムにおける効果的除去が視覚的に観察される。
前述の方法により製造されるシステインの混合ジスルフィドを精製および結晶化することができ、または、反応混合物を、本発明のプロセスにおいて直接用いることができる。例えば、酢酸でpH5.2(Cys-Mercの等電点)に調節し、続いて、-20℃で3体積のアセトンを添加し、Cys-Merc結晶の迅速沈降に至らせることにより、Cys-Merc混合ジスルフィドを結晶化することができる。
システインの混合ジスルフィドの合成を、電気化学的酸化を用いることにより達成することもできる。これは、GGCをシステインに取り換える以外は以下におよび実施例12にさらに記載しているように、本質的に、電気化学的還元反応の逆である。混合ジスルフィドの合成のために、チオールからのジスルフィドの合成のために陽極において行われる酸化反応が、報告されている(Do, Q. A new electrochemical method of preparation of unsymmetrical disulfides Tetrahedron Letters, 1997, 38, 3383-3384)。
b. S-アセトアミドアルキル誘導体
システインのS-アセトアミドアルキル誘導体は、希塩酸中で適切なN-(ヒドロキシアルキル)アセトアミドとシステイン塩酸塩とを反応させることにより最も都合良く調製される。例えば、Milkowskiは、N-(ヒドロキシメチル)アセトアミドを用いるS-アセトアミドメチルシステインの合成を記載(Milkowski, J.D., et al. Thiol protection with the acetamidomethyl group - S-acetamidomethyl-1-cysteine hydrochloride. Organic Syntheses, 1988. 6:p.5-8)しており、以下の反応スキームに示す。
Figure 2008533994
両性イオン性型S-アセトアミドメチルシステインは、水酸化ナトリウムで中和することにより、イオン交換クロマトグラフィーにより、または、ピリジンを用いてイソプロパノールから沈澱させることにより、塩酸塩から容易に得ることができる。S-アセトアミドメチルシステインは、液体フッ化水素中およびトリフルオロ酢酸中、無水条件下に、N-(ヒドロキシメチル)アセトアミドから調製することもできる。S-アセトアミドメチル基の除去は、ヨウ素での処理により行われ、その結果、対応するジスルフィドが形成される。
c. S-スルホシステイン
S-スルホシステインの形成のために、以下のような幾つかの選択肢が存在する。大過剰の亜硫酸アンモニウムでのシステインのアンモニア溶液の処理(Clarke, H. T. Journal of Biological Chemistry, 1932. 97:p.235);第二銅イオンの存在下における亜硫酸ナトリウムによるシスチンまたはシステインの転化(Moore, W., et al. Inactivation of γ-glutamylcystine synthetase, but not glutamine synthetase, by S-sulphocystine and S-sulphohomocystine. The Journal of Biological Chemistry, 1987. 262:p.16771-16777);または、システインへのテトラチオン酸ナトリウムの作用(Maugras, I., et al. Peptide-synthesis using novel S-sulphocysteine derivatives. International Journal of Peptide and Protein Research, 1995. 45(2):p.152-156)。以下の反応スキームに示す後者の選択肢に従って、S-スルホシステインのモノナトリウム塩を大規模かつ優れた収率で調製することができる。
Figure 2008533994
S-スルホ基は、Jocelyn,P.C.により記載されているように、標準的還元条件下に、二酸化硫黄ガスとして容易に除去される(Jocelyn, P. C., Chemical reduction of disulfides. Methods in Enzymology, 1987. 143:p.246-56)。
d. シスチンのアルキルエステル
シスチンエステルは、触媒としての鉱酸(例えば、塩化水素または硫酸)の存在下に適切なアルコール(例えば、メチルエステルについてはメタノール)にシスチンを溶解するフィッシャーエステル化のような従来のプロセスに従って、合成することができる。大過剰のアルコール、および還流下の長い反応時間を用いると、結果として、シスチンジアルキルエステルが形成される。例えば、メタノールを用いるシステインジメチルエステル二塩酸塩の合成が、以下の反応スキームに示される。
Figure 2008533994
同様の反応条件下に、シスチンのクロロホルム溶液中、化学量論量の半分の量のアルコールを用いると、シスチンモノアルキルエステルが形成される。そのエステルの遊離塩基形は、水酸化ナトリウムで中和することにより、イオン交換クロマトグラフィーにより、または、ピリジンを用いてイソプロパノールから沈澱させることにより、塩酸塩から容易に得ることができる。そのエステルの除去は、過剰の水酸化ナトリウムを用いて鹸化することにより成される。
e. S-アルコキシカルボニルスルフェニル誘導体
システインのS-アルコキシカルボニルスルフェニル誘導体は、メタノール溶液中、適切な塩化アルコキシカルボニルスルフェニルと塩酸システインとを反応させることにより最も都合良く調製される。例えば、Rietmanは、塩化メトキシカルボニルスルフェニルを用いるS-(メトキシカルボニルスルフェニル)システイン・HClの合成を記載しており(Rietman, B. H. A facile method for the preparation of S-(alkylsulfenyl)cysteines. Synthetic Communications, 1994. 24(9):p.1323-1332)、以下の反応スキームに示す。
Figure 2008533994
両性イオン性型は、水酸化ナトリウムで中和することにより、イオン交換クロマトグラフィーにより、または、ピリジンを用いてイソプロパノールから沈澱させることにより、塩酸塩から容易に得ることができる。S-メトキシカルボニルスルフェニル基は、Jocelyn,P.C.により記載されているように、標準的還元条件下に、容易に除去される(Jocelyn, P. C., Chemical reduction of disulfides. Methods in Enzymology., 1987. 143:p.246-56)。
f. S-アセチルシステイン
S-アセチルシステインの調製は、2つの手順に従って行うことができる。チオ酢酸を用いる、システインの酸触媒したS-エステル化(Uotila, L. Preparation and assay of glutathione esters. Biochemistry, 1973. 12 p.3938-3943)、またはシステインのアミノ基を保護するための、溶媒としてトリフルオロ酢酸を用いるシステインへの塩化アセチルの作用による。以下の反応スキームに示す後者の選択肢は、高い収率および選択率でグルタチオンをS-アシル化するプロセスを記載しているGalzignaの特許に最初に示された(Galzigna, L. A process for the preparation of glutathione S-acyl derivatives. 1990. PCT/ EP91/ 01154)。
Figure 2008533994
S-アセチル基を、酸性またはアルカリ性加水分解のいずれかにより除去することができる。
反応条件
γ-グルタミルドナー(例えば、グルタミン酸γ-エステル)およびγ-グルタミル受容体/シスチン(システイン)誘導体(例えば、システイン-メルカプトエタノール混合ジスルフィド)を、選択された酵素の存在下に、シスチン(システイン)誘導体とγ-グルタミルドナーとの間のα,γ-アミド結合(ペプチド結合)の酵素で触媒された形成に好ましい条件下に、混合(例えば、等モル濃度で)することができる。γ-グルタミルドナーがグルタミン酸γ-エステルである場合、γ-グルタミルトランスペプチダーゼのような適当な酵素がエステラーゼ活性を示す。
a. pH
反応環境は、対象酵素によるγ-グルタミル基のシステイン誘導体への転移に最適である約1〜2の範囲のpHを有すべきである。しかしながら、酵素が比較的平坦なpH活性プロフィールを有する場合、より広いpH範囲を適用することができる。反応pHは反応体濃度にも影響を与えることができ、これは決定的要因であり得、酵素の最適pHは、必ずしも、最適反応条件を提供することができない。一旦、塩基性酵素および反応体のパラメーターが知られると、pHの最適化は、当業者により、直接的手順およびモデリングにより容易に行うことができる。
この反応のための最適pHは、逆反応用の最適pHと必ずしも同じではない。
ウシγ-GTは最適pHが約pH8.8〜pH9.0であるが、約pH9.5を超えるpH値において変性することができる。従って、ウシγ-GTが用いられる反応環境pHは、約pH7〜約pH9.5、例えば、約pH7.5〜約pH9.4、約pH7.9〜約pH9.3、約pH8.0〜約pH9.0、約pH8.1〜約pH9.2、約pH8.3〜約pH9.1、約pH8.5〜約pH9.0、約pH8.0、約pH8.1、約pH8.2、約pH8.3、約pH8.4、約pH8.5、約pH8.6、約pH8.7、約pH8.8、約pH8.9または約pH9.0であってもよい。
γ-グルタミルヒドロラーゼ、カルボキシペプチダーゼおよびアミノペプチダーゼのような多くの加水分解酵素は、典型的には、中性を下回る最適pHを有し、従って、最適pHは、酵素に依り、約pH2.5〜約pH7である。
ウシγ-グルタミルトランスペプチダーゼを用いる本研究において、反応pHを約8.5〜9に維持するために比較的高濃度の緩衝剤(DEA、0.2M)が必要とされることが分かり、これにより、反応混合物のイオン強度が著しく増加し、これがγ-GTの見掛け活性に著しく影響を与えると共に、本発明のプロセスにおいて用いることができる他の酵素の活性に影響を与え得る。pHプローブと、pHを特定の設定点に維持するために酸または塩基を添加するためのポンプとが設けられた反応容器であるpH-statの使用は、緩衝の必要性を取り除き、反応混合物のイオン強度を低下させる。
8.5以上のpHでは、ウシγ-グルタミルトランスペプチダーゼのアミダーゼ活性により、γ-グルタミル誘導体産物が加水分解すると分かった(以下の項目(d)を参照)が、これは、ジメチルホルムアミドのような水混和性溶媒の使用により低減または回避することができる。しかしながら、pH-statにより達成することができるような反応pHの良好な制御により、より低いpHを選択することができるが、pH-statを用いてpH8.0では、γ-グルタミル誘導体産物の二次的加水分解が同じ程度には起こらないことが分かった。
b. 温度
通常、用いられる温度は最も早い反応速度を提供する温度であるが、これは、加熱費用に対して上昇した温度により得られるべき改良、酵素、反応体および/または産物の安定性によって左右され得る。反応温度は、塩基性酵素および反応体パラメーターが一旦知られると、当業者により直接的手順およびモデリングにより、容易に最適化することができる。
γ-GTにより触媒される反応には、最適温度は約37℃であると分かったが、約20℃〜約50℃の温度、例えば、約20℃、22℃、24℃、26℃、28℃、30℃、32℃、34℃、36℃、38℃、40℃、42℃、44℃、46℃、48℃または50℃を用いることができる。
固定化された酵素および可溶性の酵素のいずれを使用しても低い反応温度(-15〜20℃)においてプロテアーゼを用いる速度論的に制御された反応により収率を上げることもできるが、これは、おそらく、低温での受容体の酵素への強固な結合による。低温は、媒体の誘電率を増加させることにより、有機共溶媒が酵素に対して有する悪影響を相殺することもできる。しかしながら、反応温度を下げることは、基質の可溶性を低下させ得る。
c. 反応体濃度
一般的に言って、反応体は、最大の反応速度を提供する濃度で、反応環境中に提供すべきである。しかしながら、バッチ式プロセスにおいては達成し得るまたは所望の最終的産物濃度により決められ連続式プロセスにおいては反応器中の滞留時間の制限の対象でもある、反応時間によっても濃度は影響を受ける。特に連続式反応については、溶出液流中の未反応成分の濃度を最少にするような最適化が必要であるが、これは、塩基性酵素パラメーターが一旦知られると直接的手順およびモデリングにより達成することができる、および/または、当業者により容易に決めることができる。
反応体濃度は、各反応体の費用および、最も高価な反応体に基づく反応収率の最適化にも依存する。ここでも、塩基性酵素パラメーターが一旦知られると、そのような反応を最適化するためのモデルおよび手順を入手することができる、および/または、当業者が容易に決めることができる。
典型的には、反応がγ-グルタミルトランスペプチダーゼにより触媒される場合、γ-グルタミルメチルまたはエチルエステルがγ-グルタミルドナーとして使用され、システイン-メルカプトエタノール混合ジスルフィドがシステイン誘導体として使用され、γ-グルタミルドナーおよびシステイン誘導体の濃度は、独立して、約4Mまで、例えば、約2M、約1.75M、約1.5M、約1.25M、約1M、約90OmM、約80OmM、約70OmM、約60OmM、約50OmM、約40OmM、約30OmM、約20OmMまたは約10OmMであってもよい。
最高反応体濃度は、水混和性溶媒または他の成分の存在、または反応環境のパラメーター(例えば、温度)によっても影響を受け得る。例えば、システイン-メルカプトエタノール混合ジスルフィドは、水単独中よりも水混和性溶媒としてDMFを含む反応環境中への溶解性が低いが、水溶性の低い反応体は、水中よりもそのような環境中への溶解性が大きい。
d. 溶媒
多くの酵素を用いた場合、水の存在が加水分解反応を促進することができる。これは、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、γ-グルタミルヒドロラーゼおよびγ-グルタミルトランスペプチダーゼを用いた場合である。そのような状況において、反応(システイン誘導体へのγ-グルタミル基の転移)効率は、水濃度を低下させるために水混和性溶媒を含むことにより向上させることができる。γ-グルタミルトランスペプチダーゼを含む反応混合物中に水混和性溶媒を含ませることは、アミダーゼ反応(GGCからのγ-グルタミル部分の除去)を示し、有意なエステラーゼ活性を呈することが発見された。
適当な水混和性溶媒としては、例えば、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、ジメチルホルムアミド(DMF)、エタノール、エトキシエタノール、エチレングリコール、グリセロール、イソプロパノール、メタノールおよびメトキシエタノールが挙げられる。
前記項目(a)において述べたように、適当なpH制御を提供し得るなら、水混和性溶媒を加える必要無く、アミダーゼ反応が少ない程度に起こることが分かっている約8.0のような低い反応pHを用いることができる。
e. 反応時間
反応時間は、バッチ式プロセスが利用されるか連続式プロセスが利用されるかに依存し、バッチ式プロセスにおける酵素の濃度および連続式プロセスにおけるカラム滞留時間が決定因子である。反応時間の最適化が、両方の場合に必要であり、当業者により標準的試行および実験により容易に決められる。
酵素、反応体または産物の劣化につながる反応の微生物汚染を低減または回避するために、抗菌剤が反応溶液に含まれてよい。
f. プロセス
プロセスは、供給バッチ(fed-batch)もしくはバッチ式プロセス、またはγ-GT固定化反応カラムを利用する連続フロープロセスにおいて行うことができる。
i) バッチ式プロセス
図4および5に示すようなγ-GTを用いるGGCの産業的製造のためのバッチ式プロセスは、3つの主要な工程からなるが、本発明のプロセスの性質に影響を与えることなく広範囲の変更または適合を設け得ることが明らかである。
前述したような適当なγ-グルタミル誘導体の調製は、最初の工程の一つである。例えば、出発材料としての、グルタミン酸およびアルコール、好ましくはエタノールを、鉱酸の存在下に25℃でアルコール溶液中で反応させて、グルタミン酸γ-エステルを含む溶液を調製する。塩基の添加により過剰な酸を中和する。過剰のアルコールを蒸発により除去し、水で置き換えることにより、濃度が好ましくは少なくとも0.2Mであるグルタミン酸γ-エステルの水溶液に転化する。
前述したような適当なシステイン誘導体の調製は、GGCの産業的製造の最初の工程のもう一つである。例えば、出発材料のシステインは多くの誘導体化剤と反応させることができるが、誘導体化剤の一部は、チオール基(-SH)を保護して、酸化により難溶性のシスチンになることを妨げるものである。従って、誘導体化基が、シスチンの水溶性を向上させることが好ましい。ここで確認されるシステインの一つの効果的な誘導体化基は、システイン-メルカプトエタノール(Cys-Merc)の混合ジスルフィドである。誘導体システイン-メルカプトエタノールは、例えば、チオールスルフィネート中間体を用いることにより、または、前述のようにメルカプトエタノールまたはDTDEおよびシステインまたはシスチンを、銅イオン触媒した空気/O2酸化により合成することができる。
酵素、理想的にはγ-グルタミルトランスペプチダーゼの調製は、GGCの産業的製造におけるもう一つの最初の工程である。γ-GTは、例えば、限外濾過による濃縮、塩析、溶媒沈澱およびタンパク質分解消化(汚染タンパク質を除去する)技術、あるいはそれらの組み合わせのような当技術分野において公知の低コスト手順を用いることにより、ウシ乳のホエーフラクションから得ることが最も都合良い。
GGCの産業的製造のためのバッチ式プロセスにおける第2の段階は、γ-グルタミル結合の形成を含む。アミノ酸の2つの誘導体の調製された水溶液を、適度にpHおよび温度が制御された容器中で、略等モル割合で混合し、反応をγ-グルタミルトランスペプチダーゼで触媒する場合は、混合物のpHは、理想的には、約pH8.0〜約9.0に調節される。反応pHが約8.5以上の場合、ジメチルホルムアミドのような水混和性有機溶媒を、任意で、反応混合物に約50%(v/v)の濃度になるまで添加し、その後、酵素を添加して生成物の形成を向上させると共にペプチド産物の加水分解を防止する。反応pHが約8.0のように約8.5未満である場合、γ-グルタミルシステイン産物の望ましくないアミダーゼ加水分解があまり起こらないので、水混和性溶媒を添加する必要がないことが分かった。凍結乾燥してよい調製されたγ-GTを、最終濃度が1〜5 U/mLとほぼ同程度となるように反応混合物に添加し、反応の進行を、時間基準でサンプリングすることによりモニターする。γ-グルタミルシステイン-メルカプトエタノールジスルフィドの収率が最大値(約30%)に達すると、反応を、濃厚水酸化ナトリウムで混合物のpHを約pH12に調節することにより停止させる。
GGCの産業的製造の第3の段階は、メルカプトエタノール基を除去すること、最終生成物を精製することまたはGGC-メルカプトエタノールジスルフィドを精製すること、およびメルカプトエタノール基を除去してから、さらに精製することを含む。GGCまたは、GGC-メルカプトエタノール混合ジスルフィドを反応混合物から精製するための幾つかの選択肢が可能であり、それら選択肢として、イオン交換またはイオン排除クロマトグラフィー、電気透析、差分結晶化(differential crystallisation)、またはそれらの組み合わせがあり、そのような精製の前後にメルカプトエタノール基を除去する。産業的使用のために規模を拡大してよい幾つかの適当な実験室規模のプロセスを、実施例12〜14に詳細に説明する。
GGC-メルカプトエタノールジスルフィドの形成から実質的に純粋なGGCまでの一連の工程は、GGC-メルカプトエタノールジスルフィドを電気化学的に還元してメルカプトエタノール基を開裂し、続いて、反応混合物からメルカプトエタノールを除去することを含む。メルカプトエタノールの除去は、非極性溶媒を用いる分液により達成することができ、精製されたGGCは、エタノールの添加(80%v/v超)により沈澱する。
または、GGC-メルカプトエタノールジスルフィドからのメルカプトエタノール基の開裂は、ジスルフィド交換反応の誘発により行うことができる。これは、反応混合物のpHをpH12に調節することにより始まり、反応を、混合ジスルフィドが存在しなくなるまで(数時間)、HPLC解析によりモニターする。同時に、減圧下の蒸発により反応混合物から水を除去することができる。次に、反応混合物のpHを酢酸によりpH3に調整するが、これには、濾過により除去することができる未反応シスチンの沈澱が伴うはずである。副生物の2-ヒドロキシエチルジスルフィドを、濾液の連続的向流抽出により酢酸エチル中に分液し、所定体積の得られる水相を、さらに、減圧下の蒸発により減少させることができる。反応副生物のシスチンおよび2-ヒドロキシエチルジスルフィドの反応は、任意で、次の製造バッチにおいて用いるためにリサイクルすることができる。ビス-γ-グルタミルシスチンの精製は、分別結晶および、その後の、イオン交換クロマトグラフィーの任意の最後の研磨工程(polishing step)により行うことができる。
ii) 連続式プロセス
図4および5に示すようなγ-GTを用いるGGCの産業的製造のための連続式プロセスは、3つの主要な工程からなるが、本発明のプロセスの性質に影響を与えることなく広範囲の変更または適合が明らかに可能である。
酵素反応に適した基質を形成するためのグルタミン酸およびシステインの化学的誘導体化は、前記バッチ式プロセスについて記載した第1の工程の同じ部分である。酵素、理想的にはγ-GTの調製は、連続フローカラム内への充填に適した固体基質の上に酵素を固定化することが好ましい点においてバッチ式プロセスと異なる。連続式プロセスの第2の段階も、生成物の最高収率に最適化された速度で反応混合物を固定化酵素カラムをポンプで通過させる点においてバッチ式プロセスと異なる。このプロセスの選択肢は、酵素活性を感知し得るほど損なうことなく固定化酵素のカラムを効果的に再使用できる性能、および単位体積当たりの増加した生産性を含む、バッチ式プロセスを超える幾つかの利点を有する。
固定化酵素の調製は、GGCの産業的製造のための連続式プロセスにおける第1の工程である。γ-GTは、上清中の可溶性酵素を適当に活性化された樹脂ビーズと反応させることにより固定化することを除いてバッチ式プロセスについて前述したように、ウシ乳のホエーフラクションから得ることが最も都合良い。得られる樹脂は、約350U/gのγ-GTを含み得る。
GGCの産業的製造のための連続式プロセスにおける次の段階として、γ-グルタミル結合の形成がある。アミノ酸の2つの誘導体の調製された水溶液(前記バッチ式プロセスにおいて記載)を、適度にpHが調節された連続流混合装置を通してポンプで送ることにより略等モル割合で混合し、ここで、γ-グルタミルトランスペプチダーゼにより反応が触媒され、混合物のpHが、理想的には、約pH8.0〜約pH9.0に調節される。カラム内でのpH調節が困難であるので、適度の緩衝が必要とされ、8.0に近いpHを用いる場合、特に重要であり得る。約8.5以上のpHを用いる場合、酵素反応の前に、ジメチルホルムアミドのような水混和性有機溶媒を、任意で、約50%(v/v)の濃度になるまで反応混合物に添加して、生成物の形成を向上させると共にペプチド生成物の加水分解を防止することができる。調製された固定化γ-GT酵素樹脂ビーズを、約37℃に温度調整されたジャケットを備えるカラムに充填し、前記混合物を、いずれかの基材上でのγ-グルタミルシステイン-メルカプトエタノールの収率が予め定められた設定点(約30%)を下回らないような速度で、前記カラムをポンプで通過させる。50%DMFが共溶媒として用いられない場合、反応は、特に約8.5以上のpHが用いられる場合、γ-グルタミルシステイン-メルカプトエタノールの任意の有意に2次加水分解が起こる前の最適カラム滞留時間を決めるためにモニタリングを必要とする。反応カラムを出る流出液を、適度にpH調節された連続流混合装置をポンプで通過させ、混合物のpHを濃厚水酸化ナトリウムでpH12に調節して反応を停止させる。
GGCの産業的製造のための連続式プロセスの第3の段階として、メルカプトエタノール基の除去および最終生成物の精製、またはGGC-メルカプトエタノールジスルフィドの精製、メルカプトエタノール基の除去、および、さらなるGGCの精製およびその結晶化があるが、前記バッチ式プロセスで記載したものと同様にして行うことができる。
g. 誘導体化または可溶化基の除去
反応生成物に結合している誘導体化基を除去することができ、ジスルフィド還元工程を用いるかどうかに依存して、純ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチンまたはγ-グルタミルシステインを、イオン交換クロマトグラフィーを含む当技術分野において周知の種々のプロセス/化学により回収することができるが、分別結晶により回収することが最も好ましい。
i) γ-グルタミル部分からの保護/可溶化基の除去
γ-グルタミルドナーとしてグルタミン酸α,γ-アルキルエステルを用いる場合、α-エステル基が1M水酸化ナトリウムで鹸化することにより容易に除去され、精製選択肢としてジスルフィド交換反応(pHを12に調整)を用いると、同時に生じるはずである。
ii) システイニル部分からの保護/可溶化基の除去
システイニル部分からの保護/可溶化基の除去は、用いられる特定の保護/可溶化基に依存する。しかしながら、通常、混合ジスルフィドは、化学的手段(すなわち、過剰のチオールの添加、ホウ水素化ナトリウムのような強力な還元剤の使用、または、酸溶解-金属反応により得られる発生したばかりの水素の使用)(Jocelyn, P. C. Chemical reduction of disulfides. Methods in Enzymology, 1987. 143:p.246-56)により、または既述した電気化学的手段(Genders, J. D., et al. High yield methods for electrochemical preparation of cysteine and analogues. 1988. US patent 5,106,463)により対応するチオールに還元することができる。別の選択肢は、希NaOHで処理することによりジスルフィド交換反応を誘発させることである。提案された反応スキームにおいて、反応混合物中の混合(非対称)ジスルフィドの全てが、その対称ジスルフィドに転化する。ジスルフィド交換反応は、微量のチオールの添加により、またはUV光を照射する(Eager, J. E., et al. Photolysis and photo-oxidation of amino acids and peptides .6. A study of the initiation of disulphide interchange by light irradiation. Photochemistry and Photobiology, 1963. 2(1):p.25-37)ことにより阻害することができ、この反応を、セレノール(Singh, R., et al. Selenols catalyze the interchange reactions of dithiols and disulfides in water. Journal of Organic Chemistry, 1991. 56(24):p.6931-6933)により、または遷移金属イオン(Choi, J. S., et al. Synthesis of disulfides by copper-catalyzed disproportionation of thiols. Journal of Organic Chemistry, 1995. 60(11):p.3266-3267)により触媒することができる。
シスチンの定電流還元によるシステインのバッチ電気的合成は、プロセスの収率および選択性が100%に近い確立された産業的プロセスである。システインのようなジスルフィドの電気化学的還元用の一般的プロセスは、イオン交換膜により分けられた陰極チャンバー(陰極液)および陽極チャンバー(陽極液)を備える平行板電池(図7参照)において行われる。電池分割により、陽極におけるジスルフィドまたはチオールの酸化が防止される。陰極材料は、Pb、Zn、Ag、ステンレススチールまたはグラファイトを含む幾つかの材料から選択することができ、還元すべきジスルフィドを含む溶液と接触している。陽極材料は、Pt、DSA、白金メッキされたチタンまたはグラファイトを含む幾つかの材料から選択することができ、硫酸の溶液と接触している。電流を適用したときに、以下の反応が生じる。
R-S-S-R + 2H + 2e- → 2R-SH 陰極反応
2H2O → O2 + 4H + 4e- 陽極反応
このプロセスは、バッチ中のジスルフィドの全てがチオール形に還元するまで、25℃でバッチリサイクルモードで行われる。
h. γ-グルタミル誘導体の単離および/または精製
保護/可溶化基の除去後、γ-グルタミルシステインまたはその誘導体を分別結晶により反応混合物から精製することができる。酵素プロセス後に、どの誘導体をプロセスで用いられるかに依り、反応混合物は、シスチン、グルタミン酸、グルタミン酸γ-エステル、ジスルフィド(例えば、2-ヒドロキシエチルジスルフィド)および無機塩のような種々の汚染物質を含み得る。反応混合物からの水の大部分を蒸発により除去した後、シスチンおよびグルタミン酸を、pH3での低い水溶性(それぞれ、0.1および8.6g/L)故に、結晶化により容易に除去する。大部分の低分子量ジスルフィドは、非極性であり、そのものとして、適当な非極性有機溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル、1-ブタノールまたは2-エチル-1-ヘキサノール)中に分液することにより除去することができる。γ-グルタミルシステインまたはその誘導体は高い水溶性(>50g/L)を有する可能性が高く、生成物の大部分を、水混和性有機溶媒(例えば、エタノール、アセトン)の添加により沈澱させ得ることが予想される。沈澱した生成物の純度に依り、最終的研磨工程を、イオン交換クロマトグラフィーにより行うことができる。
γ-グルタミルシステインまたはその誘導体を単離/精製する別の手段としては、γ-グルタミルシステインまたはその誘導体と反応体(γ-グルタミルドナーおよびシステイン誘導体)との間に充分な相違がある場合、イオン交換クロマトグラフィー、イオン排除クロマトグラフィー(例えば、Eisenbraun, A., 「Separation of amino acids by ion exclusion」, 1962, US patent No. 3,045,026を参照されたい)および電気透析が挙げられる。
例えば、γ-グルタミルシステイン-メルカプトエタノールジスルフィド(GGC-Merc pI=3.0)と基質(Cys-Merc pI=5.3、およびGEE pI=5.8)との間に、等電点(pI)の大きな相違が存在する。これにより、イオン交換クロマトグラフィー、イオン排除クロマトグラフィーおよび電気透析のようなイオン電荷に基づく精製系を容易に利用することができる。
イオン交換、イオン排除または電気透析法を利用できる場合、これらは、酵素反応と同時に行うことができ、形成されたばかりの生成物を効果的に除去(または捕捉)することにより生成物収率を上げることができ、それにより、平衡を、生成物形成の方向に移動させることができる。例えば、水酸化ナトリウムを酵素反応に添加して酸性生成物GGC-Mercを中和する代わりに、OH-型のアニオン交換樹脂を添加してpHを維持すると共に反応生成物を選択的に除去することができる。同様に、酵素反応を、電気透析セル中で行って、それにより、GGC-Mercの連続的除去を容易にすることができる。
GGCまたはGGC-Mercを用いる場合、溶媒/溶離剤として水を用いることができるので、イオン排除クロマトグラフィーは特に関心対象である技術であり、pH5〜7においてカチオン交換樹脂カラムの合計排除体積中でGGCまたはGGC-Mercが溶離し、一方、Cys-Mercの溶離は、このpHで実質的に電荷を有さないグルタミン酸γ-エチルエステルの溶離の場合のように、このpHにおけるその僅かに陽性の電荷故に、遅延する。
金属イオン親和クロマトグラフィー(IMAC)は、γ-グルタミルシステインまたはその誘導体の精製に適用することができるもう一つの有効な方法である。一部の研究者は、樹脂結合イミノ二酢酸基に固定化されている銅(II)イオンを用いる、アミノ酸およびジペプチドの効率的分離を報告している(例えば:Belew and Porath, Immobilized metal ion affinity chromatography: effect of solute structure, ligand density and salt concentration on the retention of peptides, Journal of Chromatography, 1990, 516, 333-54; Shao and Liu, Preparation of chromatograph medium for separating amino acid and polypeptide and separating process thereof, 1997, 中国特許第1163902号を参照されたい)。
γ-グルタミルシステイン-メルカプトエタノールジスルフィドのようなγ-グルタミルシステイン誘導体を単離/精製した場合、これは、誘導体化基(例えば、メルカプトエタノール)を除去するための化学的または電気化学的還元を必要とする。その後の、放出された/汚染化合物(例えば、2-メルカプトエタノール)からのγ-グルタミルシステインの分離が必要であり:これは、蒸発および差分(differential)結晶化、または、γ-グルタミルシステインからのメルカプトエタノールの除去に有効であると分かっている技術である適当な非極性有機溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、1-ブタノールまたは2-エチル-1-ヘキサノール)中への汚染化合物の分液を含む前述の技術のような、当技術分野において公知の多くの技術のいずれかにより達成することができる。
本発明の例示的なプロセスにおいて、適当なγ-グルタミル誘導体の調製が、GGCの産業的製造の第1の工程の一つである。1000L規模の酵素反応のために、好ましいγ-グルタミル誘導体であるグルタミン酸γ-エチルエステルは、とりわけ、以下に記載のような幾つかのプロセスにより合成することができる。
第1のプロセスにおいて、グルタミン酸(15kg)を、溶解した塩化水素ガス(9kg)を含む無水エタノール(150L)中に懸濁し、混合物を、25℃に温度調節された冷却ジャケットを備える反応容器中で、全ての固形分が溶解するまで攪拌する。溶液を水(250L)で希釈し、過剰の酸を、50%水酸化ナトリウム溶液を添加することにより中和する。反応混合物から、減圧下の蒸発によりエタノールを除去でき、体積損失を水で置き換える(最終容積400L)。グルタミン酸γ-エチルエステルの最終的収率は、ほぼ17kg程度であると予想される。
第2のプロセスにおいて、グルタミン酸γ-エチルエステルは、米国特許第3,770,807号(1973年)に記載の方法により合成することができる。例えば、グルタミン酸(23kg)を、濃硫酸(98%、18.7kg、エステル化触媒としても作用する)を滴下して無水エタノール(150L)中に可溶化することができ、次に、27℃で2時間反応させる。次に、反応混合物を0℃に冷却し、水に溶解された等モル量の水酸化ナトリウム(エタノールの体積の40%)をゆっくりと添加して酸を中和する。これにより、60%エタノールに溶解しない硫酸ナトリウムが結晶化する。γ-グルタミルエステルは、60%エタノールに溶解する。得られる濾液は蒸発により濃縮することができ、最終的に、80%より多いエタノールを添加することにより結晶化される。エタノールを留去し、水で置換し、その後の酵素反応において直接用いることができるので、エステルの結晶化は必要でない。グルタミン酸γ-エチルエステルの最終的収率は、ほぼ17〜18kg程度であると予想される。適度に可溶性のシステイン誘導体の調製は、GGCの産業的製造の第1工程のもう一つの手順である。1000L規模の酵素反応のために、好ましいシステイン誘導体であるシステイン-メルカプトエタノールジスルフィド(Cys-Merc)を、チオスルフィネート中間体の使用、または、前述のように2-メルカプトエタノール、またはDTDEおよびシステイン、またはシステインの銅イオン空気/O2酸化の使用のような任意の適当な手段により合成することができる。
例えば、チオスルフィネート中間体の使用の場合、2-ヒドロキシエチルジスルフィド(メルカプトエタノールジスルフィド)(10kg)を、20℃に温度調節された冷却ジャケットを備える反応容器中で水(100L)に溶解する。25%(w/v)酢酸(100L)中に溶解された過酢酸(9.8kg)を、一定速度で攪拌しつつ、ゆっくり添加する。3時間攪拌後、溶媒を、減圧下の蒸発により除去する。得られる2-ヒドロキシエチルチオールスルフィネートに、水(200L)を加え、50%水酸化ナトリウムでpHを6.5に調整する。システイン(14kg)を水(200L)に溶解し、pH6.5に調節した攪拌下の溶液に、2-ヒドロキシエチルチオールスルフィネート溶液を20分間にわたって加える。反応混合物を一晩攪拌し、任意の未反応の2-ヒドロキシエチルチオールスルフィネートを、連続的向流抽出により酢酸エチル中に分液する。次に、水相を50%水酸化ナトリウムでpH5.2に調整し、任意の残っている酢酸エチル溶媒を減圧下の蒸発により除去(最終体積400L)する。Cys-Mercの最終的収率は、ほぼ19kg程度であると予想される。
または、Cys-メルカプトエタノール中間体の銅イオン空気/O2酸化生成物の場合、2-ヒドロキシエチルジスルフィド(10kg)およびシステイン(5.2kg)を水(約210L)に溶解することができ、溶液のpHを水酸化ナトリウムで約8.5に調整し、温度を37℃に制御し、塩化銅(II)溶液(100mg/mL)の一部(約45mL)を加える。次に、pHを約8.5に維持しつつ、混合物に空気を激しく約18時間供給する。得られる反応混合物中の銅イオンを、銅(II)イオンに高い選択性を有するキレート樹脂を用いて除去することができる。得られる反応混合物は約0.2MのCys-Mercを含み、GGCまたはその誘導体の製造のためのその後の酵素触媒した反応において直接用いることができる、または、等体積のアセトンを添加すると共に反応混合物のpHを酢酸で5.2に調節することによりCys-Mercを単離することができ、得られる結晶性材料を、濾過または遠心分離により回収し、任意で、洗浄および乾燥する。
適量の酵素γ-グルタミルトランスペプチダーゼの調製が、GGCの産業的製造におけるもう一つの第1の工程である。限外濾過による濃縮、塩析、溶媒沈澱、およびタンパク質分解消化(汚染タンパク質の除去)技術、またはそれらの組み合わせのような当技術分野において公知の低費用手順を用いて、ウシ乳からγ-グルタミルトランスペプチダーゼを抽出および精製することが好ましい。可溶化されたγ-GTを、γ-グルタミルトランスペプチダーゼを含む溶液中にEupergit C250L(Rohm GmbH & Co)エポキシ活性化樹脂ビーズ(20kg)を懸濁させ、混合物を室温で約3日間インキュベーションすることにより固定化することができる。理想的条件下では、その樹脂は、合計で約7,000,000単位のγ-GTを含むはずである。
GGCの産業的製造の第2の段階は、γ-グルタミル結合の形成を含む。調製された、アミノ酸の2つの誘導体の水溶液400Lを混合し、混合物のpHを約8.0〜約9.0に調整する。クロマトグラフィーカラムにおいてpHを制御することが困難であるため、pHを所望の水準またはそれに近い値に維持するために適切な緩衝が必要であり、特に8.0に近いpHを用いる場合に必要である。体積を調節して、γ-グルタミル酸エチルエステルの最終的濃度を約18g/Lにし、Cys-Mercの最終的濃度を20g/Lにする(最終容積:約1000L)。調製された固定化γ-GT酵素樹脂ビーズを、37℃に温度調節されたジャケットを備えるカラムに充填し、前記混合物を、流出液が少なくとも10g/Lのγ-グルタミルシステイン-メルカプトエタノールジスルフィド(どの基質上でも30%収率)を含むような速度で、そのカラムをポンプで通過させる。固定化されたカラムは、γ-GT活性が感知できるほど損なわれることなく、多くのバッチで再使用することができるべきである。
GGCの産業的製造の第3の段階には、メルカプトエタノール基の除去とその後のGGCの精製、またはGGC-メルカプトエタノールジスルフィドの単離、メルカプトエタノール基の除去、およびGGCのさらなる精製が含まれる。
GGCまたはGGC-Mercを、その一部は既に前述している任意の適当な手段により、反応体(γ-グルタミルドナー、システイン誘導体および副産物、例えば、5-オキソピロリドン-2-カルボン酸)から単離または精製、あるいはγ-グルタミルシステイン誘導体から放たれた誘導体から単離または精製することができる。産業的プロセスに適用することができる特に適切なプロセスとして、溶媒分液、分別結晶、イオン交換クロマトグラフィー(カラム中で行うことができるが、必要ではない)、イオン排除クロマトグラフィー、電気透析または金属イオン親和クロマトグラフィーがある。
GGCまたはGGC-メルカプトエタノールジスルフィドの産業的精製に特に適しているのはイオン排除クロマトグラフィーであり、イオン排除クロマトグラフィーにおいてGGCまたはGGC-Mercが溶離され、適当なカチオン交換体(pH約5〜7)を充填したカラムの全体として排除されたまたは空隙の体積中に、システイン-メルカプトエタノール、グルタミン酸γ-エチルエステル混合ジスルフィドおよび副産物は実質的に含まれない。反応体および副産物は、遅延フラクション中に溶離される。また、所与期間中の分離数を増加させるために、酵素反応混合物のその次の分量を、前のピークの注入分が溶離される前に注入を行うことにより増加させることができる。
メルカプトエタノール基を、単離/精製の前または後にGGC-Mercから開裂することができ、放たれたGGCは、その一部は前述している適当な任意の手段により精製またはさらに精製される。
例えば、前述したように、産業的プロセスにおける実行に特に魅力的であるGGC-メルカプトエタノールジスルフィドの形成から実質的に純粋なGGCまでの一連の工程は、GGC-メルカプトエタノールジスルフィドを電気化学的に還元してメルカプトエタノール基を開裂し、続いて、反応混合物からメルカプトエタノールを除去することを含む。メルカプトエタノールの除去は、非極性溶媒を用いる分液により達成することができ、精製されたGGCは、エタノールの添加により沈澱される(80%v/vを超えるまで)。
メルカプトエタノール基を開裂すると共に放たれたGGCを精製するためのもう一つの手段において、50%水酸化ナトリウムで反応混合物のpHを12に調整することによりジスルフィド交換反応を開始し、反応を、混合ジスルフィドが存在しなくなるまで(数時間)、HPLC解析によりモニターする。同時に、体積が半分(500L)減少するまで減圧下に蒸発させることにより、反応混合物から水を除去することができる。次に、反応混合物のpHを、氷酢酸でpH3に調節するが、これには未反応シスチンの沈澱が伴うはずであり、未反応シスチンは濾過により除去することができる。副産物の2-ヒドロキシエチルジスルフィドを、濾液の連続的向流抽出により酢酸エチル中に分液し、得られる水相の体積を、減圧下の蒸発によりさらに減少させることができる。ビス-γ-グルタミルシスチンの精製は、分別結晶、その後の最終的研磨工程としてのイオン交換クロマトグラフィーにより行うことができる。ビス-γ-グルタミルシスチンの最終的収率は、ほぼ15kg程度であると予想される。
γ-グルタミルシステインまたは、本発明のプロセスにより得られるシステイン部分とグルタミン酸部分との間にα,γ-アミド結合を含む他の化合物の使用
本発明のプロセスを用いて、システインとグルタミン酸部分との間にα,γ-アミド結合を含む広範囲の化合物を調製することができるが、本発明により特に考えられるのは、γ-グルタミルシステイン、その酸化ダイマーであるビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチンおよびγ-グルタミルシステインα-グルタミルアルキルエステルである(エステルは、γ-グルタミルシステインよりも効果的に細胞膜を通過して輸送されることが示され、抗酸化効果の向上が示され得る)。
このように、本発明は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチン、および、本発明のプロセスにより得られるγ-グルタミルシステインα-グルタミルアルキルエステルのようなシステインとグルタミン酸部分との間にα,γ-アミド結合を含む他の化合物から選択される化合物にも関する。この化合物は、所望の程度に精製することができる。
γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチンまたはγ-グルタミルシステインα-グルタミルアルキルエステルは、触媒、反応体または還元剤/抗酸化剤のような種々の用途において用いることができる。用途の分野には、個人的ヘルスケア、医薬、栄養補給食品、化粧品、食品(パン製造および発酵技術)、農業(動物飼料を含む)および発酵培地があるが、これらに限定されない。薬学的目的では、好ましくはγ-グルタミルシステインは、典型的には純度が60%を超える、より典型的には純度が70%を超える、より典型的には純度が80%を超える、さらにより典型的には純度が90%を超える、およびより好ましくは純度が95%を超える、精製された化合物として提供される。
すなわち、本発明は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチンまたは本発明のプロセスにより得られるγ-グルタミルシステインα-グルタミルアルキルエステル、および薬学的または局所的に許容されるキャリアを含む個人用ヘルスケア組成物にも関する。
本発明は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチンまたは本発明のプロセスにより得られるγ-グルタミルシステインα-グルタミルアルキルエステル、および薬学的に許容されるキャリアを含む薬学的組成物にも関する。そのような薬学的組成物は、例えば、癌、心臓血管疾患(例えば、アテローム動脈硬化)、組織への酸化的損傷(例えば、老化、眼レンズにおける進行性タンパク質酸化)、呼吸窮迫症候群、中毒、AIDS、および肝臓疾患の治療において用いることができる。
本発明は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチンまたは本発明のプロセスにより得られるγ-グルタミルシステインα-グルタミルアルキルエステルを、任意で一つまたは複数の食品成分と組み合わせて含む食品または栄養補給食品組成物にも関する。食品/栄養補給食品組成物は、液体、半固体および固体から選択される。
本発明は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチンまたは本発明のプロセスにより得られるγ-グルタミルシステインα-グルタミルアルキルエステル、および適当なキャリアを含むパン生地またはパンを改良する組成物にも関する。キャリアは、穀粉および/または糖を含む製パンで許容される種々の成分から選択することができ、組成物は、酵素(セルラーゼ、グルカナーゼ、アミラーゼ、キシラナーゼ、アラビノキシラナーゼ、デキストリナーゼ、マルターゼ等を含む)のような他の製パン改良成分も含むことができる。この組成物は、粉末、顆粒または液体の状態であってよい。
本発明は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチンまたは本発明のプロセスにより得られるγ-グルタミルシステインα-グルタミルアルキルエステル、および適当なキャリアを含む動物飼料添加剤組成物にも関する。キャリアは、穀粉(小麦、トウモロコシまたは大豆を含む)のような種々の許容される動物飼料成分から選択することができ、組成物は、酵素(セルラーゼ、グルカナーゼ、アミラーゼ、キシラナーゼ、アラビノキシラナーゼ、デキストリナーゼ、マルターゼ等を含む)のような食品の消化性を向上させるものを含む他の動物飼料添加剤も含むことができる。この組成物、粉末、顆粒または液体の状態であってよい。
本発明は、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチンまたは本発明のプロセスにより得られるγ-グルタミルシステインα-グルタミルアルキルエステル、および獣医学的に許容されるキャリアを含む動物ヘルスケア組成物にも関する。
本発明は、動物の循環系または組織における酸化的損傷を予防するプロセスであって、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチンまたは本発明のプロセスにより得られるγ-グルタミルシステインα-グルタミルアルキルエステルを含む組成物の有効量をその動物に投与することを含むプロセスにも関する。
本発明は、食品産物を酸化的劣化から保護するプロセスであって、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチンまたは本発明のプロセスにより得られるγ-グルタミルシステインα-グルタミルアルキルエステルの有効量、またはそれを含む組成物をその食品産物に加えることを含むプロセスにも関する。そのプロセスにより調製される食品産物も提供される。食品産物は液体、半固体または固体であってよい。
本発明は、パン生地成分を、γ-グルタミルシステイン、ビス-γ-グルタミルシスチン、γ-グルタミルシスチンまたは本発明のプロセスにより得られるγ-グルタミルシステインα-グルタミルアルキルエステルの有効量と組み合わせることを含むパン生地を調製するプロセスにも関する。このプロセスにより調製されるパン生地、またはそれから誘導される製パン産物も提供される。
本発明の好ましい形態を、比較データを含む以下の実施例を参照して例示のためにのみ本明細書において記載するが、本発明の範囲または精神を制限するものと決して解すべきでない。
実施例
実施例1
材料およびプロセス
1.1 HPLCサンプル調製
酸停止した酵素反応混合物(100μL)を0.1M K2HPO4(900μL)中に希釈し、その一部(250μL)を、同じ緩衝剤(250μL)中に0.2Mメルカプトエタノールを含むエッペンドルフ試験管に分注した。この試験管を、37℃で20分間インキュベーションして全てのジスルフィドを還元し、過剰のメルカプトエタノールを酢酸エチルの3分画(750μL)で抽出することにより除去した。サンプルをHPLC移動相中で適度に希釈し、HPLC上への注入の準備のために4℃で貯蔵した。
1.2 HPLCを用いるチオール決定
Alltima(Alltech製)C18, 5 μm(250×4.6mm)カラム(P/N 88057)を備えるShimadzu(Class VP)HPLCシステムを用いてチオールを分離した。85%(w/v)リン酸でH3.0に調整された、0.1Mリン酸二水素カリウム、0.35%アセトニトリル(v/v)からなる移動相を1ml/分の流速で用いて、定組成溶離を行った。+700mVに設定されたCoulochem II(ESA, Bedford, MA)検出器を用いて電気化学的検出によりチオールを測定した。典型的に20μLのサンプルまたは標準をHPLC系上に注入して、4〜25μMの濃度で移動相中でGGC標準溶液を調製した。
1.3 γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GT)
多くの以下の実施例で用いられるγ-GTはウシ腎臓からの粗製剤であり、γ-GTを最高濃度で含む組織は腎臓であるので、一般的に用いられるγ-GTの供給源である。しかしながら、ウシ乳がγ-GTの優れた供給源であると確認されており、比較的高い濃度(約4 U/mL)で見られるので、この酵素を特定した実施例において用いた。パパイン消化により汚染タンパク質を除去し、アセトン沈澱(等体積のアセトンを添加)させ、続いて凍結乾燥することにより、産業的製造に適したウシ乳からγ-GTを高収率で精製した。最終的凍結乾燥生成物は、初期活性に基づき30%の収率かつ167倍の精製係数で、γ-GTを23.3 U/g含んでいた。乳γ-GTを用いる反応条件における予備試験は、腎臓を供給源とする酵素に対して、活性およびGGC収率において著しい相違を示さなかった。精製の例を以下に示す。乳清を、まず、遠心分離により10倍に濃縮し、汚染タンパク質の大部分を、適当なプロテアーゼ、好ましくはパパインにより消化することにより除去する。37℃で数時間消化した後、混合物を水でダイアフィルトレーションし、2倍に濃縮する。濃厚物中のγ-GTを、硫酸アンモニウム(40% w/v)の添加により沈澱させ、形成された固形物を、遠心分離により集める。酵素沈澱を、1% Triton X100を含むpH8.5の0.5Mリン酸カリウム緩衝剤中に再懸濁し、任意の残りの不溶解固形物を濾過により除去する。濃厚物中のγ-GTを、等体積のアセトンの添加により沈澱させ、形成された固形物を遠心分離により集める。次に、固形物を凍結乾燥して、好ましくは少なくとも20 U/mgのγ-GTを含む乾燥粉末が得られる。
ウシ乳からのγ-GTの精製のための別のプロセスが、以下のように開発された:
新鮮な低温殺菌していない4℃のウシ乳(10L、γ-グルタミルトランスペプチダーゼを約3 U/mL含む)に、強度混合下に、Triton X-100(10g)を加えた。乳の主要タンパク質含有物(カゼイン80%)を、以下の3つのプロセスのいずれかにより沈澱させることができる。
従来のプロセス(1番)では、通常、乳酵素活性が50%損失する。他の2つのプロセス(2番および3番)は、通常、わずか10%の損失となる。1番は、ホエーが廃棄産物であることから商業的チーズ生成における第1の工程であり、ここに示す。
1. 20℃において、強度混合下に酢酸の50%溶液をゆっくり加えることにより、乳(10L)中1% Triton X-100のpHを4.5に調整した。カード(カゼイン)を、細かいナイロンメッシュを通して濾過することにより除去し、ホエーをさらなる加工のために集めた。
2. キトサンの溶液(4.5L、10mM酢酸ナトリウム中1%、pH5.9)を、乳(10L)中1% Triton X-100に、強度混合下に添加した。カード(カゼイン)を、細かいナイロンメッシュを通して濾過することにより除去し、ホエーをさらなる加工のために回収した。
3. 4℃に冷却したエタノール(4.5L)を、4℃で強度混合下に、乳(10L)中1% Triton X-100にゆっくり添加した。カード(カゼイン)を、細かいナイロンメッシュを通して濾過することにより除去し、ホエーをさらなる加工のために回収した。
3つの前記プロセスのいずれかにより調製されたホエーのために、以下のプロセスを用いることができる。この例では、2番のプロセスで調製されたホエーを用いた。得られるホエーのpHを、汚染性であり膜を汚す可能性のあるリポタンパク質を沈澱させるために加えられた、1M水酸化ナトリウムおよび1M塩化カルシウム(100mL)で、pH7.4に調整した。溶液を、30℃で4時間インキュベーションし、固形物を、5,000gで15分間遠心分離することにより除去した。上清を、膜フィルター(Sartorius, Hydrosart 0.2μm, 0.6m2)を通したクロスフロー濾過により清澄化し、次に、クロスフロー限外濾過(Sartorius, Ultrasart 10,000 Mwtカットオフ, 0.7m2)により、初期体積の10%まで濃縮した。透過残物を、50mMトリエタノールアミン緩衝剤(20L)に対してダイアフィルトレーションすることにより洗い、これを2回繰り返し、各々において初期体積の10%まで濃縮した。透過残物(1.5L)に、EDTA二ナトリウム(1g/L)、システイン(0.5g/L)およびパパイン(3000 U)を加え、1M塩酸を添加することによりpHを5.0に調整した。汚染タンパク質を、37℃で1時間インキュベーションすることにより加水分解した。次に、pHを、1M水酸化ナトリウムを添加することによりpH7.0に調整し、37℃で1時間インキュベーションした。次に、pHを、1M水酸化ナトリウムを添加することによりpH5.0に調整し、37℃でさらに1時間インキュベーションした。加水分解物を、15℃に冷却し、塩化アンモニウムを40%飽和となるまで加えた。汚染タンパク質固形物を、8,000gで10分間遠心分離することにより除去し、上清を塩化アンモニウム60%飽和にした。得られた固形物であるγ-グルタミルトランスペプチダーゼを、8,000gで10分間遠心分離することにより回収し、水(200mL)中に再懸濁し、-20℃で貯蔵または凍結乾燥した。濃厚物は、8 U/mg総タンパク質(Lowryタンパク質アッセイの改変のとおり決定されたタンパク質(Peterson, Simplification of Protein Assay Method of Lowry Et A1-Which Is More Generally Applicable, Analytical Biochemistry, 1977, 83, 346-56))の比活性において130 U/mlのγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(収率87%)を含んでいた。
1.4 γ-グルタミルトランスペプチダーゼアッセイ法
反応サンプルを、0.1M Tris緩衝剤(pH 8.0)中に希釈して、希釈サンプル中の0.02〜0.44単位/mLの範囲の最終的γ-グルタミルトランスペプチダーゼ濃度を得た。酵素濃度がこの範囲内であるサンプルは、0.060〜1.300吸光単位の補正吸光読み取り値(410nm)を呈し、これは、γ-グルタミル-p-ニトロアニリドアッセイ法の線形範囲であると認められた(データは示さず)。この一部(100μL)を、2mM L-γ-グルタミル-p-ニトロアニリド基質、0.1Mグリシルグリシン、10mM塩化ナトリウムおよび0.1M Tris緩衝剤を含むpH8.0に調整された反応混合物(900μL)に加え、37℃で10分間インキュベーションした。反応液を、1.5N酢酸(2.0mL)を添加することにより急冷し、410nmでの吸光度を測定した(p-ニトロアニリンに対するε410nmは8800M-1cm-1)。γ-グルタミルトランスペプチダーゼの1単位を、37℃およびpH8.0で1分間当たりp-ニトロアニリドの1μモルを放出する酵素の量であると定義した。研究で用いたSigma Chemical Co.から供給されるγ-グルタミルトランスペプチダーゼは、(Szewczuk, A. and T. Baranowski, Purification and Properties of γ-Glutamyltranspeptidase from Beef Kidney. Biochimische Zeitschrift, 1963. 338(338):p.317-329)に記載のように、ウシ腎臓(フラクション1)から抽出された粗凍結乾燥品であり、精製された酵素の最適pHはpH8.8〜9.0であった。酵素の活性は、7.2 U/mg固形物であると決められた。
1.5 γ-グルタミルメチルアミドの合成
出典(Lichtenstein, N. Preparation of γ-alkylamides of glutamic acid. Journal of the American Chemical Society, 1942. 64:p.1021-1022)
17%メチルアミン(30mL)の水溶液に、ピロリドンカルボン酸(2.5g)を溶解し、密閉瓶中にて37℃で10日間インキュベーションする。反応混合物を結晶化皿に移し、硫酸を含むデシケーター内に置き、減圧下に1日間濃縮する。得られるシロップを、エタノール(25mL)でこすり落とし、4℃で一晩放置する。得られる結晶性沈澱を、ブフナー漏斗内で濾過により集め、冷エタノールで洗う。フィルターケーキを、デシケーター内のシリカゲル上で減圧下に乾燥する。
1.6 システイン-メルカプトエタノール混合ジスルフィドの合成
1.6.1a シスチンチオスルホネートの合成
シスチン(9.6g)を、磁気攪拌器および温度計を備える500mL丸底フラスコ内に置き、蟻酸(88%、222mL)を混合しながら加えた。フラスコを、必要な場合、氷浴中に浸すことにより冷却して、溶液の温度を20℃に維持した。濃塩酸(36%、8mL)をゆっくり加え、続いて、過酸化水素(30%、10mL)を一定速度で攪拌しつつゆっくり加えた。
20℃で2.5時間攪拌した後、50℃に設定された水浴を用いてロータリーエバポレーター上で減圧下で溶媒を除去した。得られる濃厚シロップに水(100mL)を添加し、続いて、水酸化アンモニウム(26%、約10mL)を添加してpHを3.5に調整した。フラスコを4℃で一晩放置し、得られる沈澱を、ブフナー漏斗内で濾過することにより回収し、氷冷水(30mL)で洗った。フィルターケーキを、デシケーター内においてシリカゲル上で減圧下に乾燥した。
1.6.1b システイン-メルカプトエタノール混合ジスルフィド(Cys-Merc)の合成
水(25mL)中にメルカプトエタノール(1.02g;13mmol)を含む溶液を、2M水酸化ナトリウムでpH6.3に調整した。水(70mL)中にシスチンチオスルホネート(4.17g;16.3mmol)を含む溶液を、2M水酸化ナトリウムでpH6.3に調整し、一定速度で攪拌しつつ10分間にわたって添加した。反応混合物を、室温で一晩攪拌し、次に、酢酸エチル3×50mLで抽出して、未反応メルカプトエタノールを除去した。次に、水相を、2M水酸化ナトリウムでpH5.2に調整し、溶媒を、60℃に設定された水浴を用いてロータリーエバポレーター上で減圧下で除去した。得られる残渣を、温水(50mL)に溶解し、ブフナー漏斗内でWhatman No.1ペーパーを通して濾過することにより清澄化した。温かいイソプロピルアルコール(約100mL)を、形成される濁りが消えなくなるまで、濾液に加えた。混合物を4℃で一晩放置し、得られる沈澱物を、ブフナー漏斗内で濾過することにより集め、冷たい30%(v/v)イソプロピルアルコール(30mL)で洗った。フィルターケーキを、デシケーター内にてシリカゲル上で減圧下で乾燥させた。
前述のようなシスチンチオスルホネート中間体を介するシステイン-メルカプトエタノールの合成とは別に、幾つかの別法が可能であり、以下に記載する。
1.6.2 システイン-メルカプトエタノールジスルフィドの別法合成
出典(Schoberl, A. Synthese und reaktions weise von unsymmetrischen disulfiden .6. Aminocarbonsauren und haarkeration mit unsymmetrisch eingebauten disulfidaustausches. Annalen Der Chemie-Justus Liebig, 1958. 617(1-3):p.71-88)およびNagasawa et al(「Mixed disulfides of L-cysteine and its derivatives with 2-mercaptoethanol」 Organic Preparations and Procedures International(Briefs), 1996. 28(2):p.237-241)
2-ヒドロキシエチルジスルフィド(メルカプトエタノールジスルフィド)(7.7g)を、磁気攪拌器および温度計を備える500mL丸底フラスコ内でメタノール(100mL)に溶解する。フラスコを、必要な場合、氷浴中に浸すことにより冷却して、溶液の温度を20℃に維持する。25%(w/v)酢酸(100mL)に溶解された過酢酸(3.8g)を、一定速度で攪拌しつつゆっくり加える。3時間攪拌後、溶媒を、60℃に設定された水浴を用いてロータリーエバポレーター上で減圧下に除去する。得られる2-ヒドロキシエチルチオスルフィネートの濃厚シロップに水(100mL)を加え、2M水酸化ナトリウムでpHを6.5に調整する。pH6.5に調節された水(150mL)中にシステイン(10g)を含む攪拌溶液に、10分間にわたって、2-ヒドロキシエチルチオスルフィネート溶液を加える。反応混合物を一晩攪拌し、次に、酢酸エチル3×100mLで抽出して未反応2-ヒドロキシエチルチオスルフィネートを除去する。次に、水相を、2M水酸化ナトリウムでpH5.2に調整し、溶媒を、60℃に設定された水浴を用いてロータリーエバポレーター上で減圧下で除去する。得られる残渣を、温水(200mL)に溶解し、ブフナー漏斗内でWhatman No.1ペーパーを通して濾過することにより清澄化する。イソプロピルアルコール(約300mL)を、形成される濁りが消えなくなるまで、濾液に加える。混合物を4℃で一晩放置し、得られる沈澱物を、ブフナー漏斗内で濾過することにより集め、冷たい30%(v/v)イソプロピルアルコール(30mL)で洗う。フィルターケーキを、デシケーター内にてシリカゲル上で減圧下に乾燥する。メルカプトエタノール基は、Jocelyn,P.C.により記載された標準的還元条件下で容易に除去される(Jocelyn, P. C., Chemical reduction of disulfides. Methods in Enzymology., 1987. 143:p.246-56)。
1.6.3a システイン-メルカプトエタノールジスルフィドの別法合成-シスチンチオールスルフィネート(S-モノオキシド)の合成
出典(Walti, M. Synthesis of isomers of mono- and di-hydroxy-analogues of cystine and comparison with metabolites excreted in urine. Journal of the Chemical Society C-Organic, 1971.(12):p.2326 -&)
シスチン(10g)を、磁気攪拌器および温度計を備える500mL丸底フラスコ内で2N硫酸(100mL)に溶解する。フラスコを、氷浴中に浸すことにより冷却して、溶液の温度を0℃に維持する。酢酸(100mL)に溶解された1M過酢酸(83mL)の溶液を、一定速度で攪拌しつつゆっくり加える。混合物を、0℃で一晩維持し、次に、冷たいピリジンでpH4に調整する。混合物にエタノール(500mL)を加え、得られた沈澱物をブフナー漏斗内で濾過することにより回収し、まずメタノール(100mL)で洗い、次にエーテル(50mL)で洗う。フィルターケーキを、デシケーター内にてシリカゲル上で減圧下に乾燥する。生成されたシスチンチオールスルフィネートは、メルカプトエタノールとの混合ジスルフィドを調製するための以下の合成において用いることができる。
1.6.3b システイン-メルカプトエタノールジスルフィドの別法合成
出典(Walti, M. Synthesis of isomers of mono- and di-hydroxy-analogues of cystine and comparison with metabolites excreted in urine. Journal of the Chemical Society C-Organic, 1971. (12):p.2326 -&)およびNagasawa et al(「Mixed disulfides of L-cysteine and its derivatives with 2-mercaptoethanol」 Organic Preparations and Procedures International(Briefs), 1996. 28(2):p.237-241)
水(25mL)中にメルカプトエタノール(3.9g;50mmol)を含む溶液を、2M水酸化ナトリウムでpH6.3に調整する。2M水酸化ナトリウムでpH6.3に調整された水(100mL)中に溶解された上記で調製されたシスチンチオールスルフィネート(6.5g;25mmol)の溶液を、一定速度で攪拌しつつ10分間にわたって添加する。反応混合物を、室温で一晩攪拌し、次に、酢酸エチル3×50mLで抽出して未反応メルカプトエタノールを除去する。反応生成物を前述の実施例に記載のように加工し:次に、水相を、2M水酸化ナトリウムでpH5.2に調整し、溶媒を、60℃に設定された水浴を用いてロータリーエバポレーター上で減圧下に除去する。得られる残渣を、温水(200mL)に溶解し、ブフナー漏斗内でWhatman No.1ペーパーを通して濾過することにより清澄化する。イソプロピルアルコール(約300mL)を、形成される濁りが消えなくなるまで、濾液に加える。混合物を4℃で一晩放置し、得られた沈澱物を、ブフナー漏斗内で濾過することにより回収し、冷たい30%(v/v)イソプロピルアルコール(30mL)で洗う。フィルターケーキを、デシケーター内にてシリカゲル上で減圧下に乾燥する。
1.6.3c システイン-メルカプトエタノールジスルフィドの別法合成
2-ヒドロキシエチルジスルフィド(2-メルカプトエタノールジスルフィド)(23.3g)およびシステイン(12.1g)を、エルレンマイヤーフラスコ内で水(500mL)に溶解し、溶液のpHを、水酸化ナトリウム(2M)でpH8.5に調節した。フラスコを、37℃に温度調節した水浴中に置き、塩化銅(II)溶液(100mg/mL)の一部(100μL)を加えた。混合物を、ステンレススチールフリットを通して空気を18時間吹き込むことにより激しく空気に晒した。反応期間を通して、pHを時々確認し、必要であれば、希塩酸を添加することによりpH8.5に調整した。反応混合物中のチオールの濃度を、Ellman's試薬を用いて分光光度分析により便宜的にモニターした。反応混合物をEllman's試薬に添加したときに黄色形成が観察されなくなったとき、すなわち、全てのチオールがジスルフィドに酸化されたことが示されたときに、反応が完了したと考えた。得られる反応混合物中の銅イオンは、Chelex 100樹脂(Bio-Rad)のような銅イオンに高い選択性を有するキレート樹脂のカラム(1×3cm)を通して通過させることにより除去した。得られる反応混合物は0.2M Cys-Mercを含み、GGCまたはその誘導体の製造のためのその後の酵素触媒した反応において直接使用することができる、または、等体積のアセトンを添加すると共に反応混合物のpHを酢酸でpH5.2に調整することによりCys-Mercを単離することができる。自発的結晶化が起こり、混合物を4℃で一晩放置する。得られる結晶性懸濁液を、ブフナー漏斗内で濾過することにより回収し、冷たい50%アセトンで洗い、デシケーター内にてシリカゲル上で減圧下に乾燥した。乾燥させることにより、Cys-Merc(17.9g、理論的収率の91%)を得た。
1.7 シスチンジメチルエステル二塩酸塩(CDME)の合成
無水塩化水素ガスの流れを、無水メタノール(50mL)中のシスチン(10g)の懸濁液中に迅速に散布し、磁気攪拌器で攪拌した。シスチンの全てが溶解した後、温かい溶液を氷浴中で冷却し、0〜5℃でHClの散布を飽和するまで続けた。反応混合物を、塩化カルシウム乾燥管を用いて環境中の湿分から保護し、室温で3時間放置した。溶媒を、50℃に設定された水浴を用いてロータリーエバポレーター上で減圧下に反応混合物から除去した。得られるシロップにメタノールの一部(50mL)を添加し、次に、ロータリーエバポレーターにより濃縮を繰り返した。乾燥シロップ状残渣に、無水エーテル(20mL)を加えると、自発的結晶化が生じた。混合物を4℃で一晩放置し、得られる結晶性懸濁液を、ブフナー漏斗内で濾過することにより回収し、冷たい無水エーテル(30mL)で洗った。フィルターケーキを、デシケーター内にて水酸化カリウムペレット上で減圧下に乾燥した。
1.8 他の水溶性シスチン(システイン)誘導体の合成
1.8.1 S-アセトアミドアルキル誘導体
S-アセトアミドメチルシステイン塩酸塩の合成
出典(Milkowski, J. D. Thiol protection with the acetamidomethyl group -S-acetamidomethyl-L-cysteine hydrochloride. Organic Syntheses, 1988. 5:p.5-8)
1L丸底フラスコ中、N-(ヒドロキシメチル)アセトアミド(127g)およびシステイン塩酸塩一水和物(228g)を水(350mL)に溶解する。得られる溶液を回転攪拌し、濃塩酸(50mL)をゆっくりと加えつつ氷浴内で冷却する。フラスコを窒素でフラッシングし、窒素充填バルーンで蓋をし、室温で1〜2日間放置する。反応の進行を、展開溶媒として1-ブタノール、酢酸および水の10:2:3(v/v/v)溶液を用いて、シリカゲル60F-254予備被覆プレート(Merck)上で行うことができるTLCによりモニターする。スポットを、UV光を用いて、またはニンヒドリンを使用して視覚化することができる。システイン塩酸塩がもはや検出できなくなったときに、溶液を約40℃の浴温で減圧下で蒸発させる。残りの固形物を、少量の無水エタノール中に懸濁させ、混合物を、再び、突沸を避けるために注意深く蒸発させる。無水エタノールを用いる取り込み手順を繰り返して、微量の水を除去する。乾燥固形物を、最少量のメタノールに溶解し、曇点に達するまで無水ジエチルエーテルを加える。濁った溶液を4℃で1週間放置し、その間に、結晶性塊を数回破壊する。白色結晶性生成物を、ブフナー漏斗内にて濾過することにより回収し、冷たいエーテルで洗う。フィルターケーキを、デシケーター内にてシリカゲル上で減圧下に乾燥させる。S-アセトアミドメチルシステイン誘導体を、ペプチド転移反応において受容体として直接使用することができ、S-アセトアミドメチルを、ヨウ素またはHg(II)塩を用いる反応を含む種々の方法により除去することができる。
1.8.2 S-スルホシステイン
S-スルホシステインナトリウム塩二水和物の合成
出典(Maugras, I. Peptide-synthesis using novel S-sulfocysteine derivatives. International Journal of Peptide and Protein Research, 1995. 45(2):p.152-156)
水(100mL)中にシステイン塩酸塩二水和物(10.54g)を含む溶液に、1M水酸化ナトリウム(60mL)およびナトリウムテトラチオネート二水和物(18.38g)を順次添加する。室温で1時間攪拌後、反応を完了する(前述のようなTLCモニタリング)。反応混合物を、ロータリーエバポレーター上にて減圧下で、その体積の半分まで濃縮し、4℃で一晩放置する。得られた固形物を、濾過により除去し、廃棄する。4℃で数時間静置後、濾液から沈澱した硫黄を、濾過により除去する。濾液の体積を減圧下でロータリーエバポレーター上で100mLまで減少させ、エタノールを加える(800mL)。混合物を4℃で一晩静置し、得られた沈澱物をブフナー漏斗内にて濾過することにより回収し、冷たい70%(w/v)エタノールで洗う。フィルターケーキを、デシケーター内にてシリカゲル上で減圧下で乾燥させる。S-スルホシステイン誘導体は、ペプチド転移反応において受容体として直接用いることができる、または、Stapletonにより記載されているように所望のチオールと反応させることによりシステインの混合ジスルフィドを合成するために用いることができる(Stapleton, I. W. Amino acids and peptides .9. Some unsymmetrical disulphides derived from cysteine. Australian Journal of Chemistry, 1962. 15(3):p.570-&)。S-スルホ基は、Jocelyn,P.C.により記載されているように標準的還元条件下で容易に除去される(Jocelyn, P. C., Chemical reduction of disulfides. Methods in Enzvmology., 1987. 143:p.246-56)。
1.8.3 シスチンのアルキルエステル
シスチンジメチルエステルの合成のために、以下の手順を、任意で規模拡大して用いることができる。メタノール(300mL)中にシスチン(20g)を含む還流下の懸濁液に、無水塩化水素ガスを一定割合で2時間吹き込む。室温でさらに1時間後、反応混合物を減圧下でロータリーエバポレーター上で濃縮し、メタノール(50mL)を加えて、乾燥するまで蒸発する操作を繰り返す。乾燥残渣をエーテル(50mL)で希釈し、4℃で一晩静置すると、結晶性懸濁液が得られ、これは、ブフナー漏斗内にて濾過し、エーテルで洗うことにより回収することができる。次に、フィルターケーキを、デシケーター内にてシリカおよび水酸化ナトリウムペレット上で減圧下に乾燥する。
シスチンのモノメチルエステルの合成は、同様の経路により、メタノールのモル当量の半分のみを使用し、クロロホルム溶液中のシスチン/メタノールを塩化水素ガスで飽和し、1時間穏やかに加熱還流し、次に、約1時間室温に冷却することにより行うことができる。反応生成物を前記実施例に記載のように加工する。
1.8.4 S-アルコキシカルボニルスルフェニル誘導体
S-メトキシカルボニルスルフェニルシステイン塩酸塩の合成
出典(Rietman, B. H. A facile method for the preparation of S-(alkylsulfenyl)cysteines. Synthetic Communications, 1994. 24(9):p.1323-1332)
無水メタノール(38mL)中にシステイン塩酸塩(4.46g)を含む溶液に、塩化水素を短時間吹き込む。混合物を、メタノール(40mL)中に塩化メトキシカルボニルスルフェニル(5mL)を含む溶液中にゆっくり滴下し、0℃で磁気的に攪拌する。1時間攪拌後、反応を完了し、溶媒を、減圧下にロータリーエバポレーター上で除去する。得られた残渣を、ブフナー漏斗内にて濾過することにより回収し、エーテルで洗う。フィルターケーキを、デシケーター内にてシリカゲル上で減圧下に乾燥する。S-メトキシカルボニルスルフェニルシステイン誘導体を、ペプチド転移反応において受容体として直接用いることができる、または、BroisおよびRietmanにより記載されているように所望のチオールとの反応によりシステインの混合ジスルフィドを合成するために使用することができる(Brois, S. J., et al. A new pathway to unsymmetrical disulfides. The thiol-induced fragmentation of sulfenyl thiocarbonates. Journal of the American Chemical Society, 1970. 92(26):p.7629)および(Rietman, B. H. A facile method for the preparation of S-(alkylsulfenyl)cysteines. Synthetic Communications, 1994. 24(9):p.1323-1332)。S-メトキシカルボニルスルフェニル基は、Jocelyn,P.C.により記載されているように標準的還元条件下で容易に除去される(Jocelyn, P. C., Chemical reduction of disulfides. Methods in Enzvmology., 1987. 143:p.246-56)。
1.8.5 S-アセチルシステイン
S-アセチルシステインの合成
出典(Galzigna, L., et al. S-acetyl-glutathione and S-phenylacetyl-glutathione as glutathione precursors in rat plasma and tissue preparations. Enzyme & Protein. 1994. 48(2):p.98-104)
窒素雰囲気下に攪拌しつつ、塩化アセチル(9.57g)を、室温で、トリフルオロ酢酸(200ml)中にシステイン(6.09g)を含む溶液に滴下する。反応混合物を40℃に加熱し、約20分後、水(5ml)を加えて反応を停止する。さらに20分間40℃でインキュベーションした後、溶媒を減圧下にロータリーエバポレーター上で除去し、得られた油状物を、酢酸エチルに溶解する。混合物を4℃で一晩静置し、得られた沈澱物を、ブフナー漏斗内にて濾過することにより回収する。粗沈澱を、温かい(40℃)アセトン/水(2/1、200ml)に溶解する。氷水浴中で約2時間冷却後、得られた溶液を、さらなるアセトン(100ml)でさらに希釈し、形成された白色結晶性材料を、ブフナー漏斗内で濾過することにより回収し、冷たい溶媒混合物で洗う。フィルターケーキを、デシケーター内にてシリカゲル上で減圧下に乾燥する。S-アセチルシステイン誘導体は、ペプチド転移反応において受容体として直接用いることができ、S-アセチル基を、酸性またはアルカリ性加水分解により除去することができる。
1.8.6 S-エチルアミノカルボニル-L-システイン
システイン塩酸塩(158g)をジメチルホルムアミド(1.5L)に溶解し、0℃でカルバミン酸エチル(EtNCO, 78.3g)で処理し、20℃で70時間静置する。溶媒を、減圧下で除去し、粘性残渣をジエチルエーテルと研和し、pH6.5に調整された水(2L)に溶解し、減圧下で蒸発させることにより1.3Lまで濃縮する。濃厚物を0℃で一晩結晶化させると、S-エチルアミノカルボニル-L-システインが131g得られる。S-エチルアミノカルボニル基は酸性および中性条件下に安定であるが、塩基性試薬により容易に開裂し;システインの脱硫もラセミ化も観察されていない(出典:Guttmann, S., Synthesis of glutathione and oxytocin by using a new thiol protecting group, Helvetica Chimica Acta, 1965, 49, 83-96)。
1.9 グルタミン酸γ-エチルエステルの合成
グルタミン酸(70g)をエタノール(450mL)に懸濁させ、磁気攪拌器および温度計を備える丸底フラスコ(1L)中に仕込んだ。この懸濁液中に、反応混合物の温度を27℃に維持しつつ強力な混合しながら、硫酸(56g、96%(w/v))を滴下した。硫酸の添加が完了した後、反応液を室温に2時間維持した。次に、混合物を0℃に冷却し、そこに、水酸化カリウムの溶液(水230mL中に64g)を滴下した。中和中に、フラスコを冷却することにより温度を10℃未満に維持した。中和後に形成されたスラリーを濾去し、フィルターケーキを、エタノール(79mL)と水(40g)から構成される混合物で洗った。回収した固形物を乾燥させ、硫酸カリウム(99g)を得た。
濾液を洗浄液と併せ、混合物を、減圧下でロータリーエバポレーターにより重量82gまで濃縮した。得られたシロップにエタノール(105mL)を添加すると、自発的結晶化が生じる。混合物を、4℃で一晩静置し、得られた結晶性懸濁液を、ブフナー漏斗内にて濾過することにより回収した。フィルターケーキを、デシケーター内にてシリカゲル上で減圧下で乾燥した。乾燥すると、グルタミン酸γ-エチルエステル(67g、理論的収率の80%)を得た(融点:191℃)。
1.10 固定化γ-グルタミルトランスペプチダーゼの調製
1型ウシ腎臓γ-GT(100mg, Sigma-Aldrich)を、プラスチック管(容量20mL)中にてpH8.5の1Mリン酸カリウム緩衝液(6mL)に溶解した。Eupergit(登録商標)C250L活性化固定化用樹脂ビーズ(1g)を穏やかに混合しつつ加え、管を乱すことなく室温で3日間インキュベーションした。ビーズを、吸引下に焼結ガラスフィルター上に集め、pH8.5で0.1Mリン酸カリウム緩衝剤で広範囲に洗った。固定化された酵素を、0.5g/Lのp-ヒドロキシ安息香酸メチルを含む同じ緩衝剤中において4℃で貯蔵した。
吸引乾燥した固定化された酵素(10mg)を、エッペンドルフ試験管中に秤量して入れ、37℃加熱ブロック内で予備加温した。γ-GTアッセイ緩衝剤(1mL)を加え、試験管を1分間隔で5分間十分に混合した。次に、試験管を、数分間遠心分離し、上清を、1.5M酢酸(2mL)を含むキュベットに分注した。410nmでの吸光度を吸光光度計において測定し、U/gで表わされる活性を実施例1におけるように計算した。
実施例2
アミド結合したγ-グルタミルドナーを用いるγ-グルタミルシステイン(GGC)の合成
シスチン(36mg, 3mM)を、温めつつ、pH8.5で50mMリン酸ナトリウム緩衝液(50mL)に溶解した。その一部(10mL)を、L-γ-グルタミル-p-ニトロアニリド(GPNA)(4mg, 1.5mM)を含む試験管に分注し、pHを、10%NaOHでpH8.5に調整した。試験管を37℃でインキュベーションし、γ-GT(3mg, 2.2U/mL)を添加することにより反応を開始した。サンプル(0.5mL)を、15、30および90分間隔で採取し、反応液を、等容積の4.5%(w/v)リン酸を添加することにより急冷した。サンプルは、HPLC解析の前は-20℃で貯蔵した。90分間のインキュベーション後、反応液は156mg/LのGGCを含み、理論的最大値に基づく収率はシスチンについて21%、GPNAについて42%であった。前述のような反応を、100mMリン酸塩緩衝剤中におけるpH8.5でのGPNAおよびシスチンの両方の溶解性限界に相当する基質の最初の濃度(シスチン;16.6mM、GPNA;8.4mM)の5.5倍の濃度で、繰り返した。30分間のインキュベーション後にGGCの最高濃度(1.4g/L)が達成され、収率はGPNAについて66.5%、シスチンについて34%であった。基質L-γ-グルタミル-p-ニトロアニリド$50.90/g(Sigma)の高いコスト故に、前記反応が経済的に実行する可能性が低い。高いコストは、基質の製造のために必要とされる複雑で多工程の合成プロセスに関する。
実施例3
エステル結合したγ-グルタミルドナーを用いるγ-グルタミルシステイン(GGC)の合成
γ-グルタミルドナーとしてL-グルタミンおよびγ-グルタミルエステルを用いるGGCの合成を、水溶液中で行った。シスチン(50mg, 20mM)を、別々に、試験管中のグルタミン(14.6mg, 10 mM)およびグルタミン酸γ-メチルエステル(GME)(16mg, 10mM)に加えた。各試験管の内容物を、100mMリン酸ナトリウム緩衝液(10mL)に溶解し、2M NaOHでpH8.5に調整した。γ-GT(3mg, 2.2U/mL)の添加により反応を開始し、試験管を、サンプルを周期的に採取しつつ37℃で24時間インキュベーションした。GGCの収率は約5時間のインキュベーションで最高値となり、GMEを用いて生成されたGGCの78.4mg/Lで収率(γ-グルタミルドナーに基づく)が3.1%であり、グルタミンを用いて生成されたGGCの1.5mg/Lで収率が1%未満であった。
実施例4
水混和性溶媒の反応混合物中への含有
以下の水混和性有機溶媒:アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジオキサンおよびジメチルホルムアミド(DMF)を、まず、水との50:50の比で、シスチンを溶解するそれらの性能について試験した。溶媒DMFは、その優れた溶媒和特性故に、最適な有機共溶媒であると確認された。しかしながら、他の溶媒混合物中でのCys-Merc誘導体の溶解性は未知であり、研究する価値があるかもしれない。
50%DMFの存在下におけるGMEを用いたGGCの合成
シスチン(50mg, 20mM)およびγ-グルタミルメチルエステル(GME, 16mg, 10mM)を、秤量して試験管入れた。試験管の内容物を、まず、100mMリン酸ナトリウム緩衝液(5mL)に溶解し、等容積のジメチルホルムアミド(DMF)(5mL)加えた。γ-GT(3mg, 2.2U/mL)を添加することにより反応を開始し、サンプルを周期的に採取しつつ37℃で24時間インキュベーションした。約9時間のインキュベーションでGGCピーク収率になり465mg/LのGGCで、GMEについて18.6%の収率、およびシスチンについて9.3%の収率であった。前記反応を繰り返し、pH9.0を超えると、シスチン溶解性が劇的に増加するので、シスチン(約30mM)の最高の可能な濃縮(飽和溶液)をpH9.1で行った。リン酸塩緩衝剤はpH9.1で非効果的であるので、ジエタノールアミン(DEA)緩衝剤で置換した。GGCの収率の著しい増加が観察されず、実用的価値のある反応のために、シスチンの可溶性をかなり向上させる必要があることが示された。
実施例5
システイン誘導体を用いるγ-グルタミルシステイン(GGC)の合成
提案された酵素のバイオプロセスについての単位体積当たりの生産性は、反応が実用的価値があるかを決めるのに重要であり、シスチン溶解性限界が既に約30mM(9g/L)に達しているので、基質濃度を著しく増加させる必要がある。以下の判断基準を満たす必要があるシスチンの一連の化学的誘導体を評価した。
・溶媒系中への増加した溶解性
・受容体への酵素活性の有意な損失がないこと
・化学的誘導体が容易に除去されて遊離GGCを放出しなくてはならないこと
システインと、メルカプトエタノールのような可溶性チオールとの混合(非対称)ジスルフィドの形成が公知である。Cys-Merc誘導体の増加した溶解性(約20g/L)とは別に、このタイプのジスルフィド結合した保護基の主な利点は、還元法、例えば、過剰の還元剤、例えば、メルカプトエタノールを用いるジスルフィド-スルフィドリル平衡の変更による除去の容易さである。
酵素活性を維持しつつ、シスチンのより可溶性形を生成するために、シスチンの化学的誘導体化を試した。シスチンおよびメルカプトエタノール(Cys-Merc)の混合ジスルフィドを、実施例1.5.1に記載のように合成し、2つの工程の各々において約50%の収率で得、シスチンに基づいて25%の累積的収率を得た。シスチンジメチルエステル二塩酸塩(CDME)を、実施例1.7にも記載されているように、シスチンに基づいて90%の収率で合成した。両方の誘導体が、比較的高い水溶性を有すると決められた(Cys-Merc 約20 g/l, CDME>20 g/L)。
GME(100mM)を用いたpH9.0における50:50の水:DMF中でのGGC合成のための受容体としての2つのシスチン誘導体CDMEおよびCys-Merc(100 mM)の比較
グルタミン酸γ-メチルエステル(GME, 161 mg, 100 mM)を、別々に、試験管中のシスチンジメチルエステル・HCl(CDME)(343mg, 100mM)およびシステイン-メルカプトエタノール混合ジスルフィド(Cys-Merc)(199mg, 100mM)に添加した。各試験管の内容物を、まず、200mMジエタノールアミン(DEA)(5mL)に溶解し、等容積のDMF(5mL)を添加した。反応混合物のpHを、5M HClで9.0に調整し、γ-GT(12.5mg, 9U/mL)を添加することにより反応を開始した。試験管を、サンプルを周期的に採取しつつ、37℃で21時間にわたりインキュベーションした。メチルエステル基を除去するために、CDME反応液(250μL)から採取したサンプルを、1M NaOH(250μL)を含むエッペンドルフ試験管に分注し、60℃で15分間インキュベーションしてからHPLC解析を行った。
両方のシスチン誘導体が、溶媒混合物(約20g/L)に容易に溶解することができた。21時間インキュベーションした後、Cys-Merc受容体基質について4.7g/LのGGC最高濃度が得られ、両方の基質において18.8%の収率が得られた(図1参照)。12時間インキュベーションした後、CDME受容体基質について1.6g/LのGGC最高濃度が得られ、両方の基質において6.3%の収率が得られた。
シスチンCys-MercおよびCDMEの2つの可溶性誘導体の評価により、同じ反応条件下に、GGCの最終的濃度が、飽和した未誘導体化シスチンを含む先の反応と比較してほとんど7倍増加し得ることが示された。誘導体Cys-Mercは、CDMEよりも、3倍より効果的なγ-グルタミル受容体であり、21時間インキュベーションした後、両方の基質上において、4.7g/L GGCを含む反応混合物の収率が18.8%であった。
実施例6
Cys-Mercとの1:1および1:2の割合のグルタミン酸のγ-メチルおよびγ-エチルエステルの、GGCの収率に対する効果
受容体およびドナー基質の割合の変化の、GGCの収率およびエステル置換基に対する効果を研究した。誘導体Cys-Merc(796mg, 100mM)を、200mM DEAを含む50:50 DMF/水(40mL)に溶解した。その一部(1OmL)を4本の試験管に分注し、以下のγ-グルタミルエステル基質を各試験管に溶解した;GME(80mg, 50mM)、GME(161mg, 100mM)、グルタミン酸γ-エチルエステル(GEE)(88mg, 50mM)およびGEE(175mg, 100mM)。反応混合物のpHを、5M HClまたは2M NaOHでpH9.0に調整し、γ-GT(7mg, 5U/mL)を添加することにより反応を開始した。試験管を、サンプルを周期的に採取しつつ、37℃で10時間インキュベーションした。10時間サンプルについて、γ-GT酵素活性アッセイ法(実施例1)を行って、酵素の安定性を決めた。
グルタミン酸のγ-エチルエステル(GEE)を用いると、γ-メチルエステル(GME)を比べて、GGCの収率が40%増加した。10時間インキュベーションした後、100mM等モル反応液中のGEEおよびCys-Mercについて30.4%の収率で7.6g/LのGGC最高濃度が得られた(表1参照)。
4つの全ての反応の反応速度は、γ-エチルエステルについて同様の傾向を示し、γ-メチルエステルよりも約40%多いGGCを産生した(いずれもモル比、表1参照)。10時間サンプル中のγ-GTの活性は0.8 U/mLであり、酵素安定性に著しい損失(84%)があったことが示された。
受容体Cys-Mercのモル比が2倍になると、GEEの収率が48%に増加し、Cys-Mercの収率が同時に24%に減少した。GEE対Cys-Mercのモル比が2:1に増加すると、Cys-Merc上でのGGCの収率が30%を超えず、GEE上での収率が15%より低くなった。アミノ分解反応に向かうγ-エチルエステルの増加した反応性は、おそらくは、γ-エチル基の強力な電子吸引効果による。
(表1)9.5時間反応サンプルにおける、GGCの収率への、エステル置換基およびモル比の効果
Figure 2008533994
γ-グルタミルエステルに対する受容体(Cys-Merc)の比の上昇により、GEE上での収率が増加したが、シスチンは、ドナー(GEE)よりも、著しく高価であるので、Cys-Merc上でのGGCの収率を最適化することが必要であり、すなわち、全てのその後の反応が、等モル比で行われた。
実施例7
GGCの合成およびγ-GTの安定性に対する、反応pHの影響
グルタミン酸γ-メチルエステル(85mg, 100mM)およびCys-Merc(0.1g, 100mM)を、3つの別々の試験管に秤量して入れた。一つの試験管の内容物を、0.4M NaH2PO4(2.5mL)の一定量に溶解し、等容積のDMF(2.5mL)を添加した。混合物のpHを、2M NaOHでpH7.5に調整した。他の2本の試験管の内容物を各々、0.4M DEA(2.5 mL)の一定量に溶解し、等容積のDMF(2.5mL)を添加した。試験管のpHを、5M HCLでpH8.3またはpH9.0に調整した。γ-GT(12mg, 17.2 U/mL)を添加することにより反応を開始し、試験管を、サンプルを周期的に採取しつつ、37℃で20時間インキュベーションした。サンプル(100μL×2)を、HPLC解析のために採取し(直ちに、4.5%(w/v)リン酸(100μL)を含むエッペンドルフ試験管中に分注)、γ-GT酵素活性アッセイ法のために、両方を-20℃で貯蔵した。
19時間インキュベーションした後のpH8.3での反応ランにおいて、8.3g/Lの最高濃度のGGCが得られ(図2A参照)、両方の基質上で収率が33.2%であった。pH7.5および9.0における反応ランは、GGCの反応速度および最終的収率において僅かな低下を示した。
最適反応条件下における酵素安定性の測定は、活性の有意な損失が生じ、10時間のインキュベーション後に、初期活性の10%よりも活性が低くなることを示した。提案されたような酵素はバイオプロセスにおいて大きな費用になるので、反応に実用的価値を持たせる場合、反応混合物中での酵素の安定性をかなり向上させる必要がある。
酵素安定性の向上に関して研究される幾つかの選択肢が利用可能であった。ラット腎臓γ-GTはpH9.4を超えると、不可逆的に不活性化されるので、反応pHを、酵素安定性における可能な要因として決めた。しかしながら、pH7.5、8.3および9.0における反応ランにおいて、3つのpH処理において酵素安定性に有意な相違は観察されず、3つの全ての反応pHについて、10時間インキュベーション後、活性は初期活性の30%未満に減少した。
実施例8
GGCの合成および、γ-GTの固定化製剤を用いた安定性
吸引乾燥した固定化されたγ-GT酵素(200mg)(実施例1)を、2本のエッペンドルフ試験管(容積2mL)に秤量して入れた。200mMのDEAおよび、100mMのCys-MercとGEEを含む50:50=DMF/水の溶液(pH9.0)からなる反応混合物(1.5mL)を、各試験管に添加した。試験管を、37℃のインキュベーター中、10rpmで回転しているホイール上でインキュベーションした。試験管を、数秒間遠心分離してから、サンプリングして、固定化酵素をペレット化した。上清のサンプル(100μL)を、30時間周期的に採取し、1本の試験管に、各採取後に、等容積の新しい反応混合物を補給した。200mM DEA中に固定化酵素(200mg)を含むpH9.0の陰性対照試験管(1.5mL)も調製し、反応試験管と並べてインキュベーションした。30時間のインキュベーション後、3本の全ての試験からの使用した固定化酵素を、焼結ガラスフィルター上に集め、pH8.5で0.5M Tris緩衝剤で広範囲に洗った。実施例1に記載のように、使用した固定化酵素上で、γ-GT活性アッセイ法を行った。
30時間のインキュベーション後の非補給反応液において、7.2g/LのGGCの最高濃度が得られ、両方の基質上において収率は28.7%であった。30時間のインキュベーション後の補給反応液において、6.8g/LのGGCの最高濃度が得られ、両方の基質上において収率は27.2%であった。
反応で用いられた固定化γ-GTの初期活性は、122.3U/g(表2を参照)であり、これは、16.2U/mLの反応混合物中投与水準に相当する。30時間のインキュベーション後、非補給反応試験管中において初期γ-GT活性の55%が残り、補給試験管中においては48%であった。陰性対照試験管中において、初期γ-GT活性の10%低下が観察された。
(表2)反応混合物中における30時間のインキュベーション後の固定化γ-GTの安定性
Figure 2008533994
固定化γ-GTは、有意に増加した安定性を有しており、30時間のインキュベーション後においても50%より高いその初期活性が保持していた(表2)。固定化γ-GTを用いる反応は、GGCの形成速度およびGGCの最終収率のいずれにおいても有意な低下が見られないことを示した。混合物に新しい反応混合物を常に補給すると、反応液中において、GGCの収率の有意な低下は観察されなかった。これは、固定化酵素のターンオーバーの割合が、バッチプロセスを超える幾つかの利点を有する連続的酵素プロセスに充分であることを示し、最も注目すべきものは、生産性を最大化して経済的に大規模に反応を行う性能である。
固定化γ-GTを用いて、DMFを含まない陰性対照混合物中の酵素が、30時間のインキュベーションで僅かに10%の活性損失しか示さないことが観察された。これは、DMFが、酵素の安定性に有意な有害効果を有することを示した。
実施例9
γ-GT安定性に対する、DMF濃度の影響
グルタミン酸γ-エチルエステル(43mg, 100mM)およびCys-Merc(50mg, 100mM)を、4本の別々の試験管に秤量して入れた。各試験管の内容物を、0、10、25および50%の濃度のDMFを含む200mM DEA(2.5mL)の一定量に溶解した。反応混合物のpHを、2M NaOHまたは5M HClで8.5に調整した。γ-GT(1mg, 7.2U/mL)を添加することにより反応を開始した。試験管を、サンプルを周期的に採取しつつ、37℃で24時間インキュベーションした。
100%水を用いる反応においてGGCの予想外の高い収率が観察され、5時間のインキュベーション後に、6.0g/LのGGCの最高濃度が得られ(図3参照)、いずれの基質上においても収率が24%であった。DMF濃度が上昇すると、GGCの収率が増加し、10、25および50%DMF処理で、それぞれ、6.9、7.6および8.0g/Lが得られる。0〜25%DMF反応の反応速度は同様のパターンを示し、5時間のインキュベーション中にGGCの最高濃度に達し、続いて、その後の20時間で、全ての反応においてGGC濃度が5g/Lまで低下した。50%DMFを含む反応では、18時間のインキュベーション後に、GGCの最高濃度に達し、GGC濃度はさらに低下することが無かった。加水分解反応を低下させる水活性の低下とは別に、水混和性溶媒の添加は、γ-GTのアミダーゼ活性も阻害し、有意なエステラーゼ(アミノ分解)活性を残す。これは、50%DMFの存在下における長時間のインキュベーションの後でも、ペプチド生成物GGCの劣化が無いことで明らかである。固定化反応においては、二次的加水分解も観察されなかった。
0、10および25%DMFを含む反応液における酵素活性は、35時間のインキュベーション中に安定であり、25%DMF処理においては僅か25時間後に活性の14%の公称(nominal)損失が観察された。
実施例10
水混和性溶媒を使用しないpH8.0におけるGGC-メルカプトエタノールジスルフィドの酵素的合成
磁気攪拌器、温度計およびpHプローブを備える平底反応器(500mL)に、R.O.水(150mL)を仕込んだ。容器を、37℃に温度調節された水浴中に置き、内容物が37℃になるまで攪拌した。次に、Cys-Merc(5.9g, 0.2M)および凍結乾燥したウシ乳γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(6単位/mL)の両方を加え、溶解するまで混合した。pH-Stat(Radiometer, PHM 290)を作動し、水酸化ナトリウム(2M)の添加によりpHを8.0に制御した。溶液が一旦pH8.0に達すると、グルタミン酸γ-エチルエステル(5.3g, 0.2M)を、少しずつ(約1g)、10分間で加えた。サンプルを一定間隔で採取し、GGC-Mercの生成およびNaOHの添加をモニターした(図4参照)。
7時間インキュベーションした後、GGC-Mercの合成が92mMでピークに達した(理論収率の46%)。GGC-Merc(ジカルボン酸)が酸性であるので、GGC-Mercの合成速度と、pH8を維持するための水酸化ナトリウムの添加速度との密な結合を観察した。
実施例11
GGC-Mercの精製
反応生成物(GGC-Merc, pI=3.0)と基質(Cys-Merc, pI=5.3およびGEE pI=5.8)との間の等電点(pI)の大きな相違により、イオン交換クロマトグラフィー、イオン排除クロマトグラフィーおよび電気透析のようなイオン電荷に基づく精製系を容易に実施することができる。さらに、イオン交換および電気透析法は、酵素反応と同時に行う場合、形成されたばかりの生成物を効果的に除去(または捕捉)し、それにより平衡を生成物形成の方向に移動させることにより、生成物収率を向上させることができる。例えば、実施例10に記載の酵素反応に水酸化ナトリウムを添加して酸性生成物GGC-Mercを中和する代わりに、OH-型のアニオン交換樹脂を添加してpHを維持すると共に反応生成物を選択的に除去することができる。同様に、電気透析セル中で酵素反応を行い、それにより、GGC-Mercの連続的除去を容易にすることができる。
イオン排除クロマトグラフィー
イオン排除クロマトグラフィーにおいては、酵素プロセスからの反応混合物をpH5〜7に調節し、Na型のカチオン交換樹脂(スルホン酸型)のカラム上に乗せる。GGC-Mercは他の反応成分より強力な酸であるので、Donnan排除と呼ばれるプロセスにより樹脂ビーズに入らないようにされ、それにより空隙体積に入る。他の成分(例えば、Cys-Merc混合ジスルフィド)は、非帯電であるか、僅かに陽性の電荷を有し、樹脂ビーズ内で拡散することができ、それにより遅れて溶離する。この技術の主要な利点は、純水が移動相として用いられ、生成物の溶離に塩またはpHグラジエントが必要でないことである。タンパク質加水分解物からのL-グルタミン酸の分離のために(Eisenbraun, 「Separation of amino acids by ion exclusion」, 1962, 米国特許第3,045,026号)に記載されているように、分離のこのタイプのランを連続式に行うこともできる。カラム上への水と反応混合物の選択的供給のタイミングを図ることにより、反応混合物の新しいバッチを、最初の溶離の前にカラム上に乗せることができる(図5参照)。クロマトグラフィー条件を制御して、初期pHを変えることによりGGC-Mercから塩を分離することもできる。
実験的には、ナトリウム型のスルホン酸カチオン交換樹脂(Dowex 50WX4, 100〜200メッシュサイズ)を充填したカラム(直径3.5cm×高さ30cm)を調製した。カラムを、R.O.水の移動相(15mL/分)を用いて室温で平衡させた。分離の各サイクルは、実施例10で調製した酵素反応混合物(10mL、pH5.0に調整)のカラム上に注入することからなる。流出液の250nmにおける吸光度を、オンラインUV-Vis HPLC検出器によりモニターした。ジスルフィドの濃度は、250nmにおける吸光度に比例しており、流出液のフラクションを、フラクション収集機の使用により集めた。ピーク(図6参照)に相当するフラクションを、9分と40分との間に集め、HPLC:9〜13分、GGC-Merc 1.6mM、14〜16分5-オキソプロリン 1.5 mM、20〜33分Cys-Merc 0.5mMにより分析した。所与期間中の分離数を増やすために、酵素反応混合物をその後の分量を、先の注入の最後のピークを溶離する前に、注入することにより増加させることができる。
実施例12
GGC-Mercの電気化学的還元
幾何学的陰極面積が50cm2であり、電解液の流れ方向が10cmであり幅(電流の方向)が0.5cmである電解液チャンネルを備える平行プレートフィルタープレスフローセル(図7参照)を、既に記載されているように組み立てた(Ralph, et al., Evaluation of a reactor model and cathode materials for batch electrolysof L-cystine hydrochloride, Journal of Electroanalvtical Chemistry, 1999, 462, 97-110)。Nafion(登録商標)117カチオン交換膜を用いて、陰極液と陽極液の分室を分けた。セルハウジング、末端プレートおよびセル枠はポリプロピレンで構成した。完成した組み立て体を、ネオプレンガスケットで密封し、ねじプレスで締めた。電解液フローループは、陰極液と陽極液の両方のためのバッチリサイクル操作を提供した。鉛陰極、および、貯蔵部内で一定温度およびpHがそれぞれ25℃およびpH7に維持された0.2MまでのGGC-Mercジスルフィドを含む陰極液(200mL)を用いて、バッチ電気分解を行った。陽極は白金メッキしたチタンであり、陽極液(200mL)は2M硫酸であった。電気分解の前に、両電極を、1200グレード炭化シリコン紙で湿潤研磨した。陰極液および陽極液流量を、ぜん動ポンプを用いて20mL/分に設定し、3Vで1Aの定電流を電池にかけた。周期的に、HPLC解析のためにサンプルを陽極液貯蔵部から除去し、pH7を維持するためのpH-Statにより添加される1M水酸化ナトリウムの体積を記録した。電気化学的還元を、未反応酵素反応混合物および、精製GGC-Mercの貯留フラクションの両方において行った。両混合物について、電気分解から数時間以内に全てのジスルフィド結合の完全な還元を達成した。遊離チオール基が酸性であるので、ジスルフィドの還元速度と、陰極液中でpH7を維持するための水酸化ナトリウムの添加速度との密な結合を観察した(図8を参照)。未処理/未分離酵素反応混合物から調製された陰極液のGGC内容物を、実施例11に記載のプロセスと同様にして行われる、同程度の効率であるが、GGCの再酸化を防止するために特別の注意が必要である、イオン排除クロマトグラフィーに付することができる。
実施例13
GGCからのメルカプトエタノールの分離
実施例12に記載のような電気化学的還元により生成する2-メルカプトエタノールを、有機溶媒中に分液することにより効果的に除去した。電気化学的還元(実施例12)からの陰極液の幾つかのバッチを、1-ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチルまたは2-エチル-1-ヘキサノールのいずれかの50容積%で3回抽出した。チオールの再酸化を防止するために、全ての操作を、窒素雰囲気下に行った。2-メルカプトエタノールを、4種類の全ての試験した溶媒により、水相中で最初の濃度の5%未満まで効果的に減少させた。
減少させたGGC-Mercの貯留フラクションから2-メルカプトエタノールを抽出した後、凍結乾燥により純GGCをクリーム白色粉末として得た。HPLCにより決められた純度:GGC 98%(システイン1%、メルカプトエタノールは検出不可)。
実施例14
GGCの製造のための商業的バイオプロセス
これらの研究の成果から、図9に示すようなγ-GTを用いるGGCの製造のための商業的バイオプロセスを開発することができる。最初の2つの工程は、2つのアミノ酸基質の化学的誘導体化からなる。その次のγ-GT触媒した合成は、固定化酵素を用いて、バッチプロセスで、またはより有利なことに、連続プロセスで行うことができる。ウシ乳は、5 U/mLまで含むγ-GTの優れた供給源であると確認された。産業的製造に適した、ウシ乳からのγ-GTの適当な精製プロセスは、既に実施例1.3に記載した。理想的には、固定化γ-GTをカラムに充填し、新しい基質を一方の端部にポンプで連続して送りこみ、GGCを含む反応混合物を、他の端部から引き出す。共溶媒として50%DMFを使用しない場合、任意の有意な2次的加水分解が起こる前にGGCを捕捉するための最適速度(または、連続プロセスにおける滞留時間)を決めるためのモニタリングが反応に必要である。あるいは、反応を約8.0のpHで行うことができるが、これでは、γ-GTのアミダーゼ活性が有意に低下し、γ-GGC誘導体生成物の加水分解が低下すると分かっている。
未反応基質の除去、および、反応混合物からのGGCまたはその誘導体(例えば、GGC-Merc)の精製のために幾つかの選択肢が存在する。GGC、またはGGC-Mercの精製(およびその後の、GGCへの還元)のための好ましいプロセスが、前記実施例11〜12に記載されている。
実施例13は、GGCおよび2-メルカプトエタノールを含む混合物からのGGCの精製、およびその後の凍結乾燥を記載している。しかしながら、凍結乾燥が、産業的規模での経済的選択肢であるとは予想されない。40℃を超える温度での従来法による蒸発により水が除去されると、生成物が劣化する。しかしながら、ナノ濾過による濃縮プロセスは、水除去のための低温であると共に費用効果的なプロセスであるので、産業的規模で最も適していると期待される。アミノ酸およびペプチドの濃縮のためのナノ濾過の効果は、十分に確立(Martin-Orue, C. et al., Nanofiltration of amino acid and peptide solutions: mechanisms of separation, Journal of Membrane Science, 1998, 142, 225-33)されており、最近では、グルタチオンの分離のためのナノ濾過の使用が示されている(Gotoh, K. et al., Separation of glutathione and its related amino acids by nanofiltration, Biochemical Engineering Journal, 2004, 19, 165-70)。ナノ濾過により水の大部分を除去し、pHを等電点(GGC=pH2.8)のpHに調整した後、エタノールまたはアセトンのような抗溶媒(antisolvent)を添加して自発的結晶化を始めることができる。最終的生成物を濾過により集め、減圧下に乾燥することができる。
本発明の方法により製造されたGGCの精製のための他の2つの可能な産業的に適用できる選択肢を以下に記載し、図9および図10に示す。GGCの合成中の欠点であったシスチンの不溶性を使用して、その後のGGCの精製を有利にすることができる。
精製の選択肢1
一つの選択肢は、過剰のメルカプトエタノールを添加することにより、または下記電気化学的還元により、反応混合物中の全てのジスルフィド結合を最初に還元することである。
R1-S-S-R2 + 2H + 2e- → R1-SH + R2-SH (電気化学的還元)
酢酸エチルでの溶媒抽出は、還元されたメルカプトエタノールと酸化されたメルカプトエタノールの両方を有機相中に選択的に分液するために用いることができる。GGC、システインおよびグルタミン酸塩の混合物を含む水相を、イオン交換クロマトグラフィー(選択肢1A)により精製して純GGC(還元されたもの)を得ることができる。例えば、この混合物を、Dowex I蟻酸塩カラム上のイオン交換クロマトグラフィーにより精製することができる。カラムを、最初に、等体積の水と0.4M蟻酸との間で達成された線形グラジエントで洗う。GGCを含む溶離フラクションを併せ、次に、凍結乾燥する。他の別法(選択肢IB)は、空気に長時間さらすことにより混合物中のチオールを再酸化してシスチンを形成し、pHを3に下げることにより沈澱させることである(pH3におけるシスチン溶解性;0.1g/L)。固形物の除去後、溶液を蒸発により濃縮することができ、純ビス-γ-グルタミルシスチンを、8.6g/Lしか溶解しない残っている遊離酸状態のグルタミン酸から分別結晶化することができる。
精製の選択肢2
第2の選択肢は、下記のジスルフィド交換反応を誘発させることである:
Figure 2008533994
提案された反応スキームにおいて、反応混合物中の全ての混合(非対称)ジスルフィド(Cys-MercおよびGGC-Merc)が、希NaOHで処理(塩基は、GEEをエタノールおよびグルタミン酸塩に鹸化するはずである)することにより、その対称形ジスルフィド(シスチン、ビス-γ-グルタミルシスチンおよびメルカプトエタノールジスルフィド)に転化される。得られるメルカプトエタノールジスルフィドは、酢酸エチル中に溶媒分液することにより除去される。水相のpHを3まで下げると、シスチンが沈澱するはずであり、選択肢1Aについて記載したような精製を続いて実施することにより純ビス-γ-グルタミルシスチンを得ることができる。
GGC生成物の最終型
CGCの最終型は、γ-グルタミルシステインのような還元状態またはビス-γ-グルタミルシスチンのようなジスルフィド形態であるが、ジペプチドの最終的用途に依存する。マウスにおけるGGCの利用についての先の研究は、GGCの還元型態のものの投与とジスルフィド形態のものの投与の両方が、グルタチオン水準を著しく上昇させることを示した。ビス-γ-グルタミルシスチンの酸化型態は、スルフィドリルの酸化を防止するための特別の注意が必要無いので、栄養補給食品の用途に適する可能性がより高いが、中毒の治療または食品もしくは化粧品における抗酸化剤としての用途には、γ-グルタミルシステインのスルフィドリルを還元する力が必要である。所望の形態が何であれ、いずれも、化学的(Jocelyn, P. C., Chemical reduction of disulfides. Methods in Enzvmology, 1987. 143:p.246-56)または電気化学的(Genders, J.D., N.L. Weinberg,and D.J.Mazur, High yield methods for electrochemical preparation of cysteine and analogues. 1988, 米国特許第5,106,463号、The Electrosynthesis Company, Inc.)に達成することができる還元により比較的容易に相互交換される、あるいは、反応を触媒するために加えられた微量の銅または鉄塩と共に、溶液を空気(酸素)に晒すだけで、簡単にジスルフィド形態に酸化される。
GGCは、
カチオンとの塩:Na、K、Ca、Mg、塩基性アミノ酸、例えば、ロイシン、アルギニンとの塩ダイマー、およびキトサンのようなポリアミンとの塩;または、
アニオンとの塩:HCl、メタンスルホン酸、酢酸塩、およびカルボキシメチルセルロースのようなポリカチオン
として、提供することもできる。
本発明の特定の態様を説明の目的で本明細書において記載したが、特許請求の範囲に定義されるような本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の改変を加えることができると解される。
シスチン誘導体CDMEおよびシステイン-メルカプトエタノール混合ジスルフィド(100mM)を伴うグルタミン酸のγ-メチルエステル(GME、100mM)の、pH9.0での水:DMF=50:50中でのγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GT)で触媒したGGC合成の反応速度を示す。 基質上にシステイン-メルカプトエタノール混合ジスルフィド(100mM)およびグルタミン酸のγ-エチルエステル(GEE、100mM)を用いた、水:DMF=50:50中でのγ-GTで触媒したGGC合成の、反応速度へのpHの効果(図2A)および酵素安定性へのpHの効果(図2B)を示す。 基質としてCys-Merc(100mM)およびGEE(100mM)を用いた、γ-GTで触媒したGGC合成の反応速度へのDMF濃度の効果を示す。 実施例10に記載の本発明のプロセスにおけるγ-GGC-メルカプトエタノールジスルフィド生成および、pH8.0を維持するための水酸化ナトリウム添加のグラフである。 γ-GGC-メルカプトエタノールジスルフィド、反応体および副産物を含む本発明のプロセスにより調製された反応混合物の連続的イオン排除クロマトグラフィーの概略図である。 γ-GGC-メルカプトエタノールジスルフィド(最初の溶離ピーク)、反応体および副産物(次のピーク)を含む本発明のプロセスにより調製された酵素反応混合物についての分取イオン排除クロマトグラフィー溶離プロフィールを提供する。 GGC-メルカプトエタノールジスルフィドの電気化学的還元のための装置を示す。 実施例12に記載のGGC-メルカプトエタノールジスルフィドの電気化学的還元中における陰極液貯留器への水酸化ナトリウム添加のグラフである。 γ-GGCの製造のための本発明の商業的バイオプロセスについての流れ図である。 図4に示すプロセスによりγ-グルタミルシステイン-メルカプトエタノールからγ-GGCを得るための第2選択肢についての流れ図である。

Claims (34)

  1. システイン部分とグルタミン酸部分との間にα,γアミド結合を含む化合物を調製するプロセスであって、γ-グルタミル基のシステイン誘導体への転移を促進する反応環境中に、システイン誘導体と、γ-グルタミルドナーと、γ-グルタミル基をシステイン誘導体に転移させることができる酵素とを提供することを含むプロセス。
  2. 酵素がγ-グルタミルエステラーゼまたはγ-グルタミルアミダーゼ活性を有する、請求項1記載のプロセス。
  3. 酵素がγ-グルタミルトランスペプチダーゼである、請求項2記載のプロセス。
  4. γ-グルタミルドナーがグルタミン酸のγ-エステルまたはγ-アミドである、請求項1記載のプロセス。
  5. γ-グルタミルドナーがγ-グルタミル-エステルである、請求項4記載のプロセス。
  6. γ-グルタミルドナーがグルタミン酸のγ-アルキル、α,γ-ジアルキル、γ-p-クロロフェニルまたはγ-シアノメチル-エステルである、請求項4記載のプロセス。
  7. γ-グルタミルドナーがグルタミン酸のγ-メチル、γ-エチル、α,γ-ジメチルまたはα,γ-ジエチル-エステルである、請求項6記載のプロセス。
  8. γ-グルタミルドナーがγ-グルタミル-エチルエステルである、請求項7記載のプロセス。
  9. システイン誘導体が水溶性である、請求項1記載のプロセス。
  10. システイン誘導体が、
    システインと低分子量水溶性チオールとの混合ジスルフィド;
    S-アセチルシステイン;
    S-アセトアミドメチルシステイン;
    S-メトキシカルボニルスルフェニルシステイン;
    S-スルホシステイン;
    シスチンジメチルエステル;および
    シスチンモノメチルエステル
    から選択される、請求項9記載のプロセス。
  11. γ-グルタミル受容体がシステイン-メルカプトエタノール混合ジスルフィドである、請求項10記載のプロセス。
  12. 反応環境が水性である、請求項1記載のプロセス。
  13. 水混和性溶媒が反応環境に含まれる、請求項12記載のプロセス。
  14. 反応環境が約30%〜約60%v/vの水混和性溶媒を含む、請求項13記載のプロセス。
  15. 水混和性溶媒がジメチルホルムアミドを含む、請求項14記載のプロセス。
  16. 水混和性溶媒がジメチルホルムアミドである、請求項15記載のプロセス。
  17. 反応環境が約50%v/vのジメチルホルムアミドを含む、請求項16記載のプロセス。
  18. 酵素がウシγ-グルタミルトランスペプチダーゼである、請求項1記載のプロセス。
  19. 酵素がウシ腎臓またはウシ乳から得られる、請求項18記載のプロセス。
  20. 反応環境が、約8.0〜約9.0のpHに維持される、請求項18記載のプロセス。
  21. 酵素が固定相の上に固定化される、請求項1記載のプロセス。
  22. 酵素が樹脂の上に固定化される、請求項21記載のプロセス。
  23. バッチ式プロセスである、請求項1記載のプロセス。
  24. 連続プロセスである、請求項1記載のプロセス。
  25. γ-グルタミルドナーおよびシステイン誘導体を、固定化された酵素を含む反応器の入口に連続的に供給し、生成物化合物を含む溶出液を出口から連続的に回収する、請求項24記載のプロセス。
  26. γ-グルタミルシステイン誘導体を調製するための請求項1記載のプロセス。
  27. γ-グルタミル基のγ-グルタミルトランスペプチダーゼによるγ-グルタミルエステルからシステイン誘導体への転移を促進する反応環境中に、
    γ-グルタミルエステル;
    下記から選択されるシステイン誘導体:
    システインと低分子量水溶性チオールとの混合ジスルフィド、
    S-アセチルシステイン、
    S-アセトアミドメチルシステイン、
    S-メトキシカルボニルスルフェニルシステイン、
    S-スルホシステイン、
    シスチンジメチルエステル、および
    シスチンモノメチルエステル;ならびに
    γ-グルタミルトランスペプチダーゼを提供することを含む、請求項26記載のプロセス。
  28. γ-グルタミルエステルが、グルタミン酸のγ-メチル、γ-エチル、α,γ-ジメチルおよびα,γ-ジエチル-エステルから選択され、
    γ-グルタミル受容体が、システインとチオグリコール酸またはシスタミンまたは他の低分子量水溶性チオールとの混合ジスルフィドから選択される、請求項27記載のプロセス。
  29. γ-グルタミルエステルがγ-グルタミル-エチルエステルであり、γ-グルタミル受容体がシステイン-メルカプトエタノール混合ジスルフィドである、請求項27記載のプロセス。
  30. 電気透析またはイオン排除クロマトグラフィーによりγ-グルタミルシステイン誘導体を精製するさらなる工程を含む、請求項26記載のプロセス。
  31. γ-グルタミルシステイン誘導体がγ-グルタミルシステイン-メルカプトエタノールジスルフィドである、請求項26記載のプロセス。
  32. システイン部分とグルタミン酸部分との間にα,γアミド結合を含む化合物から誘導体化基を開裂してγ-グルタミルシステインを提供するさらなる工程を含む、請求項1記載のプロセス。
  33. 誘導体化基が電気化学的還元により開裂される、請求項32記載のプロセス。
  34. 請求項32記載のプロセスであって、次にγ-グルタミルシステインが単離され、任意で、還元または酸化型として精製される、プロセス。
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