JP7159093B2 - 血中フリー体aim増加用組成物 - Google Patents
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Description
そしてAIMとIgMの結合様式は、IgM五量体のギャップの中にAIMが嵌まり込むような形で結合し、AIMが持つ、システインを多く含む3つのドメインのうち、2番目のドメインに存在するフリーのシステイン残基が、IgM五量体にあるギャップの片側に存在するフリーのシステインとジスルフィド結合により結合していること、AIMのC末端側の3番目のドメイン内に存在する正に荷電したアミノ酸のクラスターが、ギャップのもう片側に存在する負に荷電したアミノ酸クラスターと電荷による結合をしており、AIMにより、ギャップの両側のIgMがクロスブリッジされていることが明らかになっている(非特許文献3)。
特許文献1には、AIMを含有してなる、肝疾患の予防・治療剤の発明が記載されている。
特許文献1および2には、いずれもAIMタンパク質又はペプチド断片を有効成分とする疾患治療剤や、その遺伝子を利用した新たな治療剤やAIM遺伝子の利用が開示されている。
また特許文献3は、AIMの作用を抑止する医薬発明が記載されている。すなわちAIMと結合性を有し、AIM作用を抑制する抗体やAIM遺伝子に対するアンチセンス核酸や、RNAi効果を有する二本鎖核酸を投与することで、AIMの作用を抑制し、メタボリックシンドロームを治療するための医薬発明が記載されている。
例えば、急性腎障害、脂肪肝、肝細胞癌、肥満、真菌性腹膜炎、多発性硬化症などさまざまな疾患症状に対し抑制的な効果を示すことが確認されている。特にネコに腎不全が多発するのは、ネコのAIMが、AIM-IgM五量体(複合体)から解離しないためであることが明らかになっている(非特許文献4)。
また、このような疾患の指標として、血中のAIM濃度を測定する技術が、特許文献4、5、6に開示されている。
しかし、これまで血中に存在するIgMの五量体とAIMの複合体からAIMをフリー体として生成させる手段や薬剤は提供されていない。
すなわち、本発明は、血中のAIMとIgMの複合体からAIMを生成させ、血中のフリー体のAIM濃度を上昇させる作用を有する組成物を提供することを課題とする。
(1)ドリアン及び/又はアサフェティダの搾汁物、乾燥物または抽出物を有効成分として含有する血中のフリー体AIM増加用の組成物。
(2)ドリアン果実抽出物がγ-グルタミルシステインを含有する(1)に記載の組成物。
(3)ドリアン及び/又はアサフェティダの搾汁物、乾燥物または抽出物が、血中のAIMとIgM複合体からフリー体AIMを生成させる作用を有する(1)または(2)に記載の組成物。
本発明の組成物は、血中のフリー体AIMを増加させ、急性腎障害、脂肪肝、肝細胞癌、肥満、真菌性腹膜炎、多発性硬化症等のフリー体AIMが関与する疾患の予防改善剤として利用可能である。
本発明でいう「フリー体AIM」とは、AIMがIgMの五量体から生成して、単独で血中に存在している状態をいう。当該フリー体AIMは、IgMをはじめとする血中のタンパク質や糖蛋白質と非結合の状態である。
ドリアン及び/又はアサフェティダの搾汁物、乾燥物または抽出物とは、ドリアン果実或いはアギを搾汁した搾汁液、乾燥させた乾燥物、あるいはドリアン果実又はアサフェティダの溶媒抽出物あるいは水蒸気蒸留物をいう。
本発明でいう「組成物」とは、ドリアン及び/又はアサフェティダの搾汁物、乾燥物または抽出物を含有し、血中フリー体増加効果を発揮するものをいう。「組成物」には食品、医薬品、健康食品、動物用飼料を包含する。
本発明においては、IgM等と結合した状態のAIMを「複合体AIM」という。また複合体AIMとフリー体AIMの両方を合わせたAIM量を「全AIM量」という。
なお、AIMの検出、定量は、特許文献4~6に開示された抗AIMモノクローナル抗体を用いるイムノアッセイ法で測定することができる。
以下ドリアン果実抽出物について説明する。
本発明に用いるドリアン(Durio zibethinus Murr.、Durio oxleyanus、Durio graveolensを含むDurio spp.)は、ボルネオ島から西マレーシアを原産地とし、東南アジアに広く分布するパンヤ科の植物である。
本発明の有効成分であるドリアン果実抽出物は、ドリアンの果実の可食部から水性の溶媒によって抽出した物又は非水溶性の有機溶媒で抽出したもの、或いは水蒸気蒸留によって抽出したものをいう。
本発明で用いるアサフェティダは、和名をアギと呼ぶオオウイキョウ属アギ(assafoetida、学名:Ferula assa-foetida)の植物又は、この植物から得られる樹脂状の香料をいう。樹脂状の香料のアサフェティダは、複数の揮発性硫黄化合物を含みニンニクやドリアンに似た強烈な臭いがある。アサフェティダは、別名をヒングとも呼ばれている。樹脂又はアギ全草から水蒸気蒸留して得られる蒸留物や、水又はアルコール抽出物であるアギエキスを抽出原料として使用することができる。
水蒸気蒸留は、公知の方法で実施すればよい。水蒸気蒸留水又は精油画分を回収し、これを本発明の組成物として用いる。
或いは、公知の分離・精製に用いるクロマトグラフィー装置に高濃度に濃縮した画分を得ることもできる。これらの精製操作は繰り返して行うことができる。
<実施例1.ドリアン果実抽出物>
1.抽出物の調製
ドリアン果実を凍結乾燥させ、ミルサーにて粉末状にした。粉末状にしたドリアン果実(6.00g)を高速溶媒抽出ASE200(Thermo Scientific)を用いて、100℃ 1000psiの条件で抽出を行い、熱水抽出物(1.09g)を得た。
(1)試験試料
熱水抽出物(熱水抽出エキス)、ドリアン果実から搾汁した果汁(ドリアン果汁)、ドリアン果実凍結乾燥粉末を試験試料とした。
ヒト血清とPBS(-)とを2:3の比率で混合し、血清希釈液を調製した。
熱水抽出物及びドリアン果実凍結乾燥粉末は、20mg/mLの濃度になるように、PBSに分散又は溶解させた。ドリアン果汁は、そのまま試験に用いた。
果実の凍結乾燥粉末および熱水抽出物のPBS溶液(20mg/mL)あるいはドリアン果汁と血清希釈液を等容量で混合し、37℃1時間インキュベートした。インキュベートしたものをフリー体AIMの増加を確認するウエスタンブロッティング用の試料とした。
ウエスタンブロッティング用試料に4×LDS試料用緩衝液(Thermo Scientific)を加え混合し、1ウェルあたり血清が1μL含まれるようXV PANTERA MP Gel(ゲル濃度:5~20%、ディー・アール・シー)にロードし、200Vの定電圧でSDS-PAGE法により試料中のタンパク質を分離した。
SDS-PAGE後、タンパク質をPVDF膜(Amersham Hybond P PVDF 0.45、GEヘルスケア)に転写した。
転写後のPVDF膜をTris buffered saline with Tween(TBST 0.05%Tween20)で洗浄し、続いてブロッキング溶液(5%スキムミルク/TBST)に浸した後、室温で1時間振盪し、ブロッキング処理を行った。
ブロッキング処理を行ったPVDF膜は抗体希釈用緩衝液で希釈した抗体と4℃、16~18時間反応させた。反応後、PVDF膜を3回TBSTで洗浄し、ブロッキング溶液で二次抗体を希釈して室温、1時間の条件で二次抗体反応を行った。なお、使用した抗体の希釈条件は以下の通りである。一次抗体:抗ヒト/マウスAIM抗体 rab1(宮崎研究室で生産・非特許文献2等で使用)(1:3000)、二次抗体:抗ウサギ IgG(H+L)抗体HRP conjugate(1:5000)(Thermo Scientific)。
反応終了後、再度3回、TBSTで洗浄し、ECL Prime Western Blotting Detection Reagents(GEヘルスケア)を基質として用い、ChemiDoc Touch(BioRad)にてシグナルの検出・撮影を行った。
同様の操作を血清のみの試料(PBS添加)についても行った。
ウエスタンブロッティングの撮影画像を図1、画像より読み取ったフリー体AIM量を図2に示す。
図1、図2に示すとおり、本来は血清には殆ど検出されないフリー体のAIMに相当するバンドがドリアン果汁、ドリアン果実の凍結乾燥粉末及びドリアンの熱水抽出物(熱水抽出エキス)が出現した。なお図1には比較対照として、ヒト血清とPBSの混合物に試料に相当する容量のPBSを添加したものをPBSと略記して表示した。このバンドがフリー体のAIMであることは非特許文献2等で使用している組み換えAIMを電気泳動の対照とすることで確認できた。
以上の試験結果から、ドリアンの果実には、通常血中に存在しないフリー体のAIMを増加させる作用があることがわかった。
ドリアン抽出物による血中のフリー体AIMの増加により、急性腎障害、脂肪肝、肝細胞癌、肥満、真菌性腹膜炎、多発性硬化症等のフリー体AIMが関与する疾患の予防改善剤として期待される。
1.分画操作
ドリアン果汁25mLに対して、同量のブタノール(以下BuOH)25mLを加えて液々分配し、さらにその水層を再度BuOH 25mLで繰り返し抽出した。
水層およびBuOH層をそれぞれ乾固し、水層画分2.7gとBuOH層画分180mgを得た。
得られた水層画分2.7gをXG-C30M-5 10×250mm 5μmカラム、移動相2%アセトニトリル(0.1%ギ酸水溶液)、流速5mL/分、検出UV210nmの条件による高速液体クロマトグラフィーを用いてさらに分画を行った。
画分は、実施例1と同様にウエスタンブロッティングによって、フリー体AIMの増加効果を確認しながら行った。図3にブタノール抽出物のウエスタンブロット撮影画像、図4に画像より読み取ったフリー体AIMの量を示す。
得られた活性画分を乾固し、Amide-80 7.8×300mm 10μmカラム、移動相80%アセトニトリル水溶液、流速2.8mL/分、検出UV210nmの条件による高速液体クロマトグラフィーで再分画し、2mgの最終活性画分を得た。
得られた最終活性画分は、ToFMSにて分子量及び組成式を得た。この最終画分は、分子量m/z251.0696(M+H)、組成式C8H14N2O5Sであった。この結果から活性物質の1つは、γ-グルタミルシステインと推定し、標品試薬としてγ-グルタミルシステイン(SIGMA)を入手し、HPLCで保持時間の一致、ToFMSにて分子量組成式及びフラグメンテーションの一致を確認した。
γ-グルタミルシステインは、次の化学式1で表すことができる。
実施例1と同様に、グルタミルシステインのフリー体AIM増加効果を確認した。
図5に高純度γ-グルタミルシステインのヒト血清中のAIM増加効果を確認したウエスタンブロット画像、図6にこの画像から読み取ったフリー体AIM量のグラフを示す。(なお図5、図6には比較対照として、ヒト血清とPBSの混合物に試料に相当する容量のPBSを添加したものをPBSと略記して表示した。)
γ-グルタミルシステインは強いフリー体AIM増加作用を有することが確認された。
市販されている水蒸気蒸留法で抽出されたアサフェティダ抽出物を用いて血中フリー体AIMの増加作用について試験を行った。
(1)試験試料
アサフェティダオイル(バイオアクティブズジャパン株式会社)を試験試料とした。
アサフェティダオイルは、最終の濃度が1%(V/V)になるようジメチルスルフォオキシド(DMSO)に溶解させた。
ヒト血清とPBS(-)とを2:3の比率で混合し、血清希釈液を調製した。
DMSOに溶解したアサフェティダオイルをPBS(-)容量の1/5量を添加して調製した溶液と血清希釈液を等量で混合し、37℃1時間インキュベートした。果実の凍結乾燥粉末および熱水抽出物のPBS溶液(20mg/mL)あるいはドリアン果汁と血清希釈液を等容量で混合し、37℃1時間インキュベートした。これをウエスタンブロッティング用の試料とした。
ウエスタンブロッティング用試料に4×LDS試料用緩衝液(Thermo Scientific)を加え混合し、1ウェルあたり血清が1μL含まれるようXV PANTERA MP Gel(ゲル濃度:5~20%、ディー・アール・シー)にロードし、200Vの定電圧でSDS-PAGE法により試料中のタンパク質を分離した。
SDS-PAGE後、タンパク質をPVDF膜(Amersham Hybond P PVDF 0.45、GEヘルスケア)に転写した。
転写後のPVDF膜をTris buffered saline with Tween(TBST 0.05%Tween20)で洗浄し、続いてブロッキング溶液(5%スキムミルク/TBST)に浸した後、室温で1時間振盪し、ブロッキング処理を行った。
ブロッキング処理を行ったPVDF膜は抗体希釈用緩衝液で希釈した抗体と4℃、16~18時間反応させた。反応後、PVDF膜を3回TBSTで洗浄し、ブロッキング溶液で二次抗体を希釈して室温、1時間の条件で二次抗体反応を行った。なお、使用した抗体の希釈条件は以下の通りである。一次抗体:抗ヒト/マウスAIM抗体 rab1(1:3000)、二次抗体:抗ウサギ IgG(H+L)抗体HRP conjugate(1:5000)。
反応終了後、再度3回、TBSTで洗浄し、ECL Prime Western Blotting Detection Reagents(GEヘルスケア)を基質として用い、ChemiDoc Touch(BioRad)にてシグナルの検出・撮影を行った。
同様の操作を血清のみの試料についても行った。
ウエスタンブロッティングの撮影画像を図7に示す。
図7に示すとおり、アサフェティダ抽出物には、通常血中に存在しないフリー体のAIMを増加させる作用があることがわかった。アサフェティダ抽出物による血中のフリー体AIMの増加により、急性腎障害、脂肪肝、肝細胞癌、肥満、真菌性腹膜炎、多発性硬化症等のフリー体AIMが関与する疾患の予防改善剤として期待される。
Claims (3)
- ドリアン及び/又はアサフェティダの搾汁物、乾燥物または抽出物を有効成分として含有する血中のフリー体AIM増加用の組成物。
- ドリアン果実抽出物がγ-グルタミルシステインを含有する請求項1に記載の組成物。
- ドリアン及び/又はアサフェティダの搾汁物、乾燥物または抽出物が、血中のAIMとIgM複合体からフリー体AIMを生成させる作用を有する請求項1または2に記載の組成物。
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