JP2008519128A - 遺伝子送達用の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーおよびそれを製造する方法 - Google Patents

遺伝子送達用の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーおよびそれを製造する方法 Download PDF

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Abstract

直鎖ポリエチレンイミン(LPEI)(LPEIブロックが、生分解性ジスルフィド結合を有する親水性リンカーにより互いに架橋されている)の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーおよびその製造方法が開示される。生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーもまた、好ましくは、レセプターリガンド、膜透過性剤、エンドソーム溶解剤、核局在化配列、pH感受性エンドソーム溶解性ペプチド、発色色素または蛍光色素である、ペンダント官能性部分を含有してもよい。
【選択図】なし

Description

発明の詳細な説明
発明の属する分野
本発明は、概して、生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーおよびその調製方法に関する。本発明は、特に、低分子量直鎖ポリエチレンイミン(LPEI)と生分解性リンカーとを含む生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー〔それぞれのLPEIユニットは、生分解性リンカーを介して隣にユニットと共有結合している〕の組成物、およびそれを調製するための方法に関する。本発明は、上述した生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーおよび蛍光タグを含む蛍光標識ポリマーの組成物およびその調製方法にも関する。本発明の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーは、膜透過型輸送を促進することにより、または生物学的表面に対する接着、およびその細胞局在を亢進することにより、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、およびその他のアニオン性物質を送達するために有用である。
本発明の背景
遺伝子治療の成功は、遺伝子送達システムが効率的にそして安全に標的組織に対して治療用遺伝子を送達する能力に依存する。遺伝子送達システムは、ウィルス性のものそして非-ウィルス性のもの(またはプラスミドDNA-ベースのもの)に分類することができる。現在の臨床現場において使用される本発明の遺伝子送達技術は、固有の化学的、生化学的、そして分子生物学的特性を介して、標的細胞にトランスフェクトするかまたは感染する能力を有する、という点で、第一世代と考えることができる。しかしながら、これらの単純な特性に依存することにより、それらの治療への応用は限定される。例えば、哺乳動物細胞に感染する能力を有するウィルスは、高い形質導入効率を有する遺伝子導入のために、効果的に使用されてきた。しかしながら、重大な安全性の懸念(例えば、宿主による強力な免疫応答および変異生成についての可能性)が、臨床現場において使用された場合に生じた。
“むき出しのDNA”または製剤化されたプラスミドDNAに基づく非-ウィルス性の遺伝子送達システムは、使用方法が単純であり、そして特異的免疫反応を刺激することがないため、ウィルスベクターを超える潜在的な有益性を有する。むき出しのDNAの制限を克服するため、カチオン性脂質、ペプチド類、およびポリマー類を含む多数の合成遺伝子送達システムが記載された。初期においては楽観的であったが、効率が低いこと、毒性、および難溶性の性質のため、カチオン性脂質ベースのシステムの臨床的な妥当性は、限定的である。
一方、ポリマー類は、ポリマー類の優れた分子の柔軟性によって複雑な改良や新たな化学物質の取り込みが可能になるため、現行のシステムに対する実行可能な選択肢として出現した。ポリ(L-リジン)(PLL)、ポリ(L-アルギニン)(PLA)、およびポリエチレンイミン(PEI)などのカチオン性ポリマー類は、DNAを濃縮し、DNA安定性および膜透過型送達を促進するそれらの能力により、遺伝子送達候補物質として幅広く研究されてきた。カチオン性ポリマー類のトランスフェクション効率は、それらの分子量により影響を受ける。高分子量、>20 kDのポリマー類は、より低分子量のポリマー類と比べて、より良好なトランスフェクション効率を有する。皮肉なことに、高分子量を有するポリマー類は、細胞傷害性も高い。この問題を回避しそしてカチオン性ポリマー類のトランスフェクション活性をそれらの細胞傷害性を高めることなく改良するため、いくつかの努力が行われた。例えば、Limらは、融解縮合(melting condensation)により、分解性ポリマー、ポリ[α-(4-アミノブチル)-L-グリコール酸](PAGA)を合成した(Pharm. Res. 17:811-816, 2000)PAGAは、いくつかの遺伝子送達研究において使用されたが、トランスフェクション活性が低いため、そして水溶液中での安定性が低いため、その実用化は限定的である(J Controlled. Rel. 88:33-342, 2003;Gene Ther. 9:1075-1084, 2002)。ヒドロキシプロリンエステル(PHPエステル)およびネットワーク化ポリ(アミノエステル)は、分解性ポリマー類の数件のその他の事例に含まれるものである。PHPエステルは、融解縮合(melting condensation)により、またはジシクロヘキシルカルボジイミド(ジメチル-アミノ)ピリジン(DCC/DMAP)-活性化重縮合により、Cbz-4-ヒドロキシ-L-プロリンから合成された(J. Am. Chem. Soc. 121:5633- 5639, 1999;Macromolecules, 32:3658-3662, 1999)。ネットワーク化ポリ(アミノエステル)(n-PAE)は、bis(2-メトキシ-カルボニルエチル)[tris-(ヒドロキシメチル)メチル]アミンのヒドロキシル基とカルボキシル基との間のバルク重縮合を使用して、6-(Fmoc-アミノ)ヘキサン酸を用いた縮合により、合成された(Bioconjugate Chem.13:952-957, 2002)。これらのポリエステル類は、DNAを縮合し、そしてで低細胞傷害性で細胞にトランスフェクトするが、しかしそれらの水溶液中での安定性が低いことが示された。
ポリ(エチレンイミン)(PEI)は、狭い範囲に分布した小型の正に荷電した球状複合体中にDNAを効率的に濃縮し、そしてin vitroおよびin vivoで細胞にトランスフェクトすることができる。PEIは、その他のカチオン性ポリマー類と、PEIのトランスフェクション活性が、ポリマー/DNA比を上昇させるにつれて上昇する点で、類似している。PEIのPLLを超える特徴的な利点は、PEIにより高いトランスフェクション効率を得ることができる、そのエンドソーム溶解活性である。商業的な分岐鎖PEIは、25%第1アミン、50%の第2アミン、および25%の第3アミンから構成される。PEIの全体的なプロトン化レベルは、pH 7からpH 5までで2倍になり、このことはエンドソーム中においてPEIが激しくプロトン化されることを意味している。PEIのプロトン化は、エンドソーム膜を介した塩素流入を誘導し、そしてエンドソーム内部の高イオン濃度に対抗するように水が流れ、それが最終的には、浸透圧膨張からエンドソーム破壊を引き起こし、そして捕捉されたDNAの放出を引き起こす。その固有のエンドソーム溶解活性のため、PEIは、通常、トランスフェクションのためのエンドソーム溶解物質を追加する必要がない。これらの利点のため、PEIは、より安全でより効率的な送達システムを作製するために、ポリマー機能付与戦略においてますます利用されている。PEIの細胞傷害性およびトランスフェクション活性は、ポリマーの分子量と直線的に関連している。その細胞傷害活性を高めることなくPEIトランスフェクション活性を高めるため、Ahnらは、低分子量の分岐鎖PEIブロックをPEG分子に対してアミド結合を介して共有結合させることにより、高分子量マルチブロックコポリマーを合成した(J Control Release 80:273-282, 2002;US.特許No.6652886)。これらのマルチブロックコポリマーは、水溶液中にわずかながら溶解性であり、そしてトランスフェクション活性において、単一ブロックポリマー類よりもややよいだけである(せいぜい3倍高い)。
本発明の概要
本発明は、直鎖ポリ(アルキレンイミン)(LPAI)および親水性リンカーの生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーを提供し、ここで前記LPAIブロックは、生分解性エステル結合、アミド結合、ジスルフィド結合、またはリン酸結合を有する前記親水性リンカーにより架橋される。好ましくは、直鎖ポリ(アルキレンイミン)(LPAI)は、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、アミノグリコシド-ポリアミン、ジデオキシ-ジアミノ-β-シクロデキストリン、スペルミンおよびスペルミジンからなる群から選択される構成成分である。より好ましくは、直鎖ポリ(アルキレンイミン)(LPAI)は、直鎖ポリ(エチレンイミン)(LPEI)である。
本発明の架橋カチオン性マルチブロックコポリマーは、例えば、蛍光マーカー、脂質アンカー、またはそれらの誘導体、すなわち、コレステロール、脂肪酸、またはそれらの誘導体等のその他の成分に対して、生分解性リンカーにより結合されていてもよい。好ましくは、本発明において使用される直鎖PEIの分子量は、1000〜25000ダルトンの範囲内にある。直鎖PEIブロックは、好ましくは、生分解性ジスルフィドジアシド-誘導化リンカー、すなわち、ジチオジプロピオネート誘導体、を利用してジアミド結合を介して互いに結合される。リンカーのPEIに対するモル比は、好ましくは、1/1〜5/1の範囲内である;脂質アンカーのPEIに対するモル比は、好ましくは0/1〜3/1の範囲である。本発明のポリマーは、ポリアンモニウム塩として作製され、好ましくは、塩素対イオンと共に作製される。PEIの毒性は、その分子量が増加するにつれて増加するため、本発明のポリマー中でより低分子量のPEIをブロックとして使用することにより、哺乳動物細胞のトランスフェクションのためのそして遺伝子治療のin vivo応用のための一般的試薬として使用するための、改良型遺伝子キャリアを提供する。
本発明の生分解性、架橋カチオン性マルチブロックコポリマーは、核酸を有する個別のナノメートルサイズの粒子を自発的に形成することができ、それがLipofectamineTMおよび単純なポリエチレンイミン類を用いて従来から行うことができるものよりも効率的な、哺乳動物細胞株中への遺伝子トランスフェクションを促進する。本発明の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーは、動物細胞中に取り込まれた後、代謝性の分解を受けやすい。さらに、本発明の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーは、様々な生理活性物質、例えばDNA、を全身性送達するために特に有用である、ミセル水溶液を形成することができる。
本発明はさらに、in vivoトランスフェクションおよびin vitroトランスフェクションの両方において最適に効果的である適切な電荷比(リポポリマーの正電荷/核酸の負電荷)で、選択された核酸と複合化された生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーを含むトランスフェクション配合物を提供する。本発明はまた、その共有結合された蛍光色素分子(例えば、ローダミン)のおかげで蛍光顕微鏡により可視化することができるトランスフェクション試薬を提供し、それによりポリマーの細胞分布やトラフィッキング、およびアニオン性物質とのその複合体を可視化するためのツールが提供される。
本発明はまた、スルフェート型の直鎖ポリエチレンイミン(PEI)の合成のための、合成方法を提供する。本発明はまた、核酸およびその他のアニオン性生理活性物質を縮合し、そして生理学的条件下で安定な複合体を形成することができる、生分解性・水溶性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーの調製方法を提供する。本発明はまた、特殊なトレーサー、すなわち、蛍光マーカーまたはいくつかのその他の機能化リガンド、を有する生分解性水溶性マルチブロックコポリマー類の調製方法を提供する。その様なポリマー類は、核酸またはその他のアニオン性生理活性物質を縮合しそして生理学的条件下にて安定な複合体を形成することができ、分析および研究において使用するために追加的な利点を有する。
発明の詳細な説明
生理活性物質を送達するための本発明の組成物および方法を開示しそして記載する前に、特定の構成、プロセス工程、および材料が幾分変化する可能性があることから、本発明が、本明細書中に開示された特定の構成、プロセス工程、そして材料に限定されないことは、理解されるべきである。本発明の範囲は添付の請求の範囲およびその均等範囲によってのみ限定されるものであるため、本明細書中で使用される用語用法は、特定の態様のみを記載する目的で使用されるものであり、そして限定を意図するものではないこともまた、理解されるべきである。
本明細書および添付の請求の範囲において使用される場合、単数形(“a”“an”および“the”)には、文脈において明確にそうでないと解釈しているのでなければ、複数の言及が含まれることは注意されなければならない。従って、例えば、“ジスルフィド結合”を含有するポリマーの言及には、2またはそれ以上のその様なジスルフィド結合が含まれ、 “リガンド”の言及には、1またはそれ以上のその様なリガンドの言及が含まれ、そして “薬物”の言及には、2またはそれ以上のその様な薬物の言及が含まれる。
本発明を記載しそして請求項に記載する際、以下に記載する定義に従って、以下の用語用法を使用する。
“トランスフェクト”または“トランスフェクション”は、細胞の外部環境から細胞内部環境へ、特に細胞質および/または細胞核に関して核酸を輸送することを意味する。何らかの具体的な理論により縛られないが、1またはそれ以上のカチオン性ポリマー/核酸複合体中にカプセル化するかまたはその様な複合体に対して結合させたのち、またはそれと同調させたのち、細胞に対して送達することができる。特定のトランスフェクションの事例は、核酸を細胞核に送達する。核酸には、DNAおよびRNA、ならびに合成の同様のものが含まれる。その様な核酸には、ミスセンス、アンチセンス、ナンセンス、ならびにタンパク質生成性ヌクレオチド、タンパク質やペプチドや核酸の生成を調節するオン・オフや速度制御型のヌクレオチドが含まれる。特に、限定されないが、それらは、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、tRNA、rRNA、ハイブリッド配列、または合成または半合成配列、および天然由来のものまたは人工由来のものであってもよい。さらに、核酸は、オリゴヌクレオチドから染色体までの範囲で、サイズが可変であってもよい。これらの核酸は、ヒト由来、動物由来、植物由来、細菌由来、ウィルス由来、または合成由来であってもよい。それらは、当業者に既知のいずれかの技術により得ることができる。
本明細書中で使用する場合、用語“生理活性物質”または“薬物”、あるいは何らか他の類似の用語は、当該技術分野において以前から知られている方法により、および/または本発明中で教示される方法により、投与するために適したいずれかの化学的物質または化合物または生物学的物質または化合物のことを意味し、所望の生物学的作用または医薬的作用を誘導し、そして(1)生物に対する予防的作用を有し、そして望まれない生物学的作用を予防すること、例えば感染を予防すること、(2)疾患により生じる症状を緩和すること、例えば、疾患の結果として生じる疼痛または炎症を緩和すること、および/または(3)生物から疾患を緩和し、低減しまたは完全に除去することのいずれか、を含んでもよいが、これらには限定されない。この作用は局所的な麻酔作用を提供するものなどの局所的なものであってもよく、またはそれは全身性のものであってもよい。
本発明は、新規な薬物や、生理活性物質それ自体の新規なクラスについてのものではない。むしろ、本発明は、当該分野の技術水準において存在しまたは活性物質としてその後証明され得、そして本発明により送達するために適している、遺伝子またはその他の生理活性物質の送達のための、生分解性カチオン性コポリマー組成物、およびその様な組成物を使用する方法に関するものである。その様な物質には、通常生体内に送達される幅広いクラスの化合物が含まれる。一般的には、これには:DNA、RNA、およびオリゴヌクレオチド等の核酸、抗生物質および抗ウィルス薬などの抗-感染薬、鎮痛剤および組合せ鎮痛剤;食欲抑制薬;抗寄生虫薬; 抗関節炎薬;抗ぜんそく薬;抗けいれん薬;抗うつ薬;抗糖尿病薬;抗下痢薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症薬;抗片頭痛調製物;抗嘔吐薬;抗新生物薬;抗パーキンソン薬;鎮痒薬;抗精神病薬;解熱剤;抗けいれん薬;抗コリン作動薬;交感神経興奮薬;キサンチン誘導体;カリウムチャンネルブロッカー、カルシウムチャンネルブロッカー、β-ブロッカー、α-ブロッカー、および抗不整脈薬を含む心臓血管調製物;抗高血圧薬;利尿薬および抗利尿薬;全身性、冠状血管性、末梢性、および中枢性のものを含む、血管拡張薬;中枢神経系興奮薬;血管収縮薬;充血除去剤を含む感冒薬;エストラジオール、またはコルチコステロイドを含むその他のステロイド等のホルモン;睡眠薬;免疫抑制薬;筋弛緩薬;副交感神経遮断薬;精神刺激薬;鎮静剤;およびトランキライザー;が含まれるが、これらには限定されない。本発明の方法により、例えば、イオン化、非イオン化、遊離塩基、酸付加塩、等のあらゆる形状の薬物を、高分子量の薬物または低分子量の薬物と同様に送達することができる。送達される生理活性物質の上位概念または下位概念についての唯一の限定は、日常的な実験により容易に決定することができる機能性の限定である。
本明細書中で使用される場合、用語“生分解性の”または“生分解”は、可溶化加水分解、により、または酵素および生物のその他の生成物であってもよい生物学的に形成された構成要素の作用により、物質をあまり複雑ではない中間体または最終生成物へと変換することとして定義される。
本明細書中で使用される場合、“有効量”は、所望の局所的または全身性作用ならびになんらかの医療的処置に伴う適度なリスク/便益比の性能を得るために十分な、核酸または生理活性物質の量を意味する。
本明細書中で使用される場合、“ペプチド”は、いずれかの長さのペプチドを意味し、そしてタンパク質を含む。用語“ポリペプチド”および“オリゴペプチド”は、特定のサイズが特に指定されていない限り、何らかの具体的な目的とするサイズ制限なしに使用される。使用することができる典型的なペプチドは、オキシトシン、バソプレッシン、副腎皮質刺激ホルモン、上皮細胞増殖因子、プロラクチン、ルリベリン(luliberin)または黄体形成ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン、インターフェロン類、ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストリン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドルフィン、アンギオテンシン、レニン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン(gramicidines)、および合成類似体、修飾物質および薬理学的に活性なそのフラグメント、モノクローナル抗体、および可溶性ワクチン、からなる群から選択されるものである。使用することができるペプチドまたはタンパク質薬物についての唯一の限定は、機能性の一つである。
本明細書中で使用される場合、炭水化物の“誘導体”には、例えば、糖の酸型、例えば、グルクロン酸;糖のアミン、例えば、ガラクトサミン;糖のホスフェート、例えば、マンノース-6-リン酸;などが含まれる。
本明細書中で使用される場合、“投与”および類似の用語は、組成物が全身を循環することができ、そこで組成物が標的細胞に結合し、そしてエンドサイトーシスにより取り込まれることができるように、組成物を治療される個体に送達することを意味する。このように、組成物を、好ましくは、全身的に、典型的には皮下経路、筋肉内経路、経皮経路、静脈内経路、または腹腔内経路により、個体に対して投与する。そのような用途のための注射は、溶液またはサスペンジョンとしていずれかの従来の形状で、または注射の前に液体中の溶液またはサスペンジョンとしてまたはエマルジョンとして調製するために適している固体形状で、調製することができる。投与用に使用することができる適した賦形剤には、例えば、水、塩類溶液、デキストロース、グリセロール、エタノールなどが含まれ;そして所望の場合、湿潤剤または乳化剤、バッファーなどの少量の補助物質が含まれる。
全身投与後に安全で効率のよい遺伝子送達ビヒクルを開発することが、遺伝子治療を成功させるために重要である。本発明は、核酸を標的細胞に送達するための、効率的な非-ウィルス性のポリマーベースの遺伝子キャリアを提供する。本発明の一態様は、低分子量直鎖PEIブロックおよびジチオ酸部分、すなわち、ジチオジプロピオン酸、を生分解性リンカーとして含む生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーに関する。本発明の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーは、低分子量直鎖PEIユニットを生分解性ジスルフィド結合を介して架橋することにより合成される。これらの生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーは水溶性であり、そして単一ブロックポリマー類トランスフェクション的に優れている(68〜70倍高い活性)。本発明のコポリマー類と現在利用可能なポリマー類との間のトランスフェクション活性のこの大きな差異は、ポリマー組成物、合成スキーム、および生理化学的特性の差異のためである可能性がある。
例えば、本発明のマルチブロックコポリマーは、直鎖ポリエチレンイミン(LPEI)ブロックを使用して合成され、分岐型のポリエチレンイミン類と比較して、かなり異なる可溶性パターンを示す。直鎖PEIの構造が、第1アミンを有さないため、以前の報告(Bioconjugate Chem., 2003, 14, 934; Bioconjugate chem. 2001, 12, 989)において使用されたものとは、異なる結合/カップリング試薬を本発明において使用する。さらに、リンカーの分岐型PEIに対する分子量比が≧1である場合、そのことがカチオン性ポリマーのポリアミンバックボーンの顕著な希釈を引き起こす可能性があり、そしてそのことがそれらの架橋生成物のトランスフェクション活性の穏やかな上昇の理由である可能性がある。本発明において、短いリンカーを使用し、そしてポリマーの分子量に対するリンカーの比は、<0.2であり、ポリアミンポリマーバックボーンの希釈を最小にする。本発明と先行技術との間の別の顕著な差異は、リンカーとポリマーブロックとの間の化学結合の性質である。好ましくは、本発明は、アミド結合と比較して、より容易に生分解され得るジスルフィド結合を使用する。ホスホエステル類、ヒドラゾン、シス-アソチニル(asotinyl)、ウレタンおよびポリ(エチル)を含むその他の生分解性結合もまた、本発明において使用することができる。いずれのリンカーも段階的に反応するため、異なるブロックに結合するかまたは同一ブロックの異なる領域に結合する(ループ形成)ことができる。後者は、複数のループ形成のために溶解度が低下した軽度に架橋された物質の形成を補助する。本発明のプロセスは、LPEIブロック中窒素原子に部分的なそして可逆的なブロッキング/保護化を導入することにより、この問題を解決する。このようなLPEI機能化によりポリマー溶解度が上昇し、LPEIブロックの結合が促進される。このプロセスにより、ペンダント補助リガンド(例えば、脂質、または蛍光マーカー)をカチオン性ポリマー上に都合よく取り込むことも可能になる。最終的に、本発明の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーは、水溶性でありそして高いトランスフェクション活性を発現し(単一ブロックポリマー類よりもトランスフェクション活性が68〜70倍高い)、一方で先行技術のマルチブロックコポリマーはほとんど水溶性ではなく、そして単一ブロックポリマー類と比較して、活性がそこそこ良好であるだけである(3〜4倍)。
一般的に、本発明のカチオン性ブロックコポリマー類は、以下の式:
(CP)xLyYz
〔式中、CPは、少なくとも1つの第2アミン基を含有するカチオン性ポリマーを示し、そのCPポリマーは1000ダルトン〜25000ダルトンの範囲内の平均分子量を有し;Yはエステル結合、アミド結合、ジスルフィド結合、またはリン酸結合を含有する二機能性生分解性リンカーを示し;Lはリガンドを示し;xは1〜20の範囲の整数であり;yは1〜100の範囲の整数であり;そしてzは0〜40の範囲の整数である〕により示すことができる。
より具体的には、本発明の好ましい態様は、以下の式:
LS[-CO(CH2aSS(CH2aCO-]p{[(CH2nNH2 +qr
〔式中、(CH2nは、窒素に共有結合する脂肪族炭素鎖でありそして直鎖ポリアルキレンイミンブロックのバックボーンを形成し;Lは脂質、蛍光マーカーおよびターゲティング部分からなる群から選択されたリガンドを示し;[-CO(CH2aSS(CH2aCO-]は生分解性ジチオジアシドリンカーを示し;ここで整数aの範囲は1〜15であり;nは2〜15の整数であり;pは1〜100の整数であり;qは20〜500の整数であり;rは1〜20の整数であり;そしてsは1〜40の整数である〕により示すことができる。
様々な分子量の直鎖ポリエチレンイミン類は、図1に示されるように合成することができ、この方法は、Tanakaの方法(Macromolecules, 16: 849-853, 1983)に基づいてわずかに改変されたものである。具体的には、精製2-フェニル-2-オキサゾリンを、様々な量のイニシエータ、Me2SO4の存在下にて、140℃で、大量にポリマー化する。得られたポリ(N-ベンゾイルエチレンイミン)は、60%H2SO4とともに140〜150℃まで加熱することにより加水分解される。蒸気蒸留により副産物、安息香酸、を除去した後、LPEI(NMRは図2に示す)を、硫酸塩(化学量論的に2つの窒素あたり1つの硫酸と1つの水分子を有する硫酸塩水和物に近い)の形状で、冷却する際に高収率で分離される。厳しい加水分解条件のあいだのバックボーンの完全性が保存されることが、再ベンゾイル化LPEI不含塩基の分子量を測定することにより、示された(以下参照)。
LPEIのこれらの硫酸塩は、通常条件下で低溶解度を有するが、強酸(pH<0)または弱塩基性水溶液(NaHCO3など〜ポリアンモニウムポリマーバックボーンの脱プロトン化およびLPEI硫酸塩結晶格子の崩壊)のいずれかに可溶性である。LPEIの硫酸塩およびそれらの誘導体のこの低溶解度は、LPEIおよびその誘導体の単離および精製において、本発明者により有利に使用された。LPEIのその他のより可溶性の塩は、対応するバリウム塩と交換することにより、硫酸塩から調製することができた。遊離の塩基(ほとんど可溶性ではない水和物として)は、大過剰なNaOHを用いて硫酸塩を処理することにより調製される。2 kD〜20 kDの分子量を有するLPEI系列は、このようにして調製することができる。
LPEIの生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーは、図3に示されるように合成することができる。LPEIの化学的修飾は、水和物としてのそれらの低溶解度のため、そして無水の遊離塩基としての吸湿性のため、特定の不都合を提示する。PEI架橋のために使用されるいずれかの二機能性リンカーは、同一のポリマーブロックに属する2つの窒素原子の間で(すなわち、現実にポリマー分子を結合することなしにループを形成する)、または異なるポリマーブロック由来の2つの窒素原子の間で(すなわち、真にポリマーブロックを結合することにより)、結合を形成することができる。これらの2つの結合様式を分光的に識別することは非常に困難であるため、最も容易な分析試験は、光分散測定または溶液粘度測定により分子量を測定すること、そして得られたマルチブロック生成物の生物学的活性を測定すること、であろう(J. Mater. Chem. 1995, 5, 405-411)。いずれかの所定の窒素原子の近傍において、同一-バックボーンの窒素の[局所的]濃度が高いが溶液濃度には依存せず、一方異なるバックボーン由来の窒素濃度は、低くそして濃度依存的である。したがって、通常の条件下において、ループ形成が、リンカーの好ましい反応経路であることを予想することができる。
その様なループ形成を最小にするため、以下のアプローチ(の少なくとも1つ)を使用することができる。第一のアプローチは、反応混合物中において、ポリマー分子の濃度を増加させることによるものである。しかしながら、ポリマー溶解度は、このアプローチに対して、明らかな限定を引き起こす。第二のアプローチは、適切な保護基を用いて可逆的にブロッキングすることにより、すべてのポリマー分子上の利用可能な窒素原子の数を増加させることによるものである。これもまた、有機溶媒中のLPEIの溶解度を増加させる。限定をする際に、分子当たり利用できる1つの窒素原子により、ループ形成が不可能になり、そして唯一可能な凝集体は二量体である。あまり完全には保護化されていないポリマー類について、その他のポリマー鎖由来の窒素原子の局所濃度は、同一の鎖の窒素の局所濃度と並列的に減少するが、それに匹敵するものとすることができ、結合vs. ループ形成の50%の可能性を引き起こす。
その結合が段階的に生じるものとして可視化される場合、既に結合したポリマー分子の近接領域だけではなく、非常に多量の溶液もまた、その範囲内で得ることができる。ポリマー濃度が、別のポリマー分子がこの容量中に入りそして利用可能になる(既に結合したポリマー分子の残りと一緒に)ほどに十分に高い場合、ポリマーブロック結合の可能性が高まる。このアプローチの明らかな欠点は、対応する高分子量を有する非常に長いリンカーを使用する必要がある点、および高質量リンカーにより架橋生成物の希釈が不可避であること、である。
これらの検討に基づいて、より高分子量のPEI凝集体を使用することは問題があることである。従って、本発明において、最低の(低毒性の)分子量を有する直鎖PEIを、PEI構成ブロックとして選択する(Macromolecules, 1983, vol 16, 849;J. Polym. Sci. Polym. Lett. Ed. 1978, vol 16 (1), 13)。遺伝子トランスフェクション能力および毒性について異なる分子量のLPEIを研究したところ、3.6 KのMWを有するLPEIが、適切なLPEIブロックとして選択される。tert-ブトキシカルボニル(Boc)基を、除去可能な保護基として使用する。次いで、無水LPEIを、それらの非-完全保護化形態に変換する。90%〜95%のBoc取り込みにより、最適な結果を得られることが見いだされる。得られた物質は、より高い溶解度を有し、そして残存する遊離のNH基に対する化学的修飾の影響を受けやすい。これらのポリマー類のNMRを、図4に示す。このアプローチは、保護されていないLPEIを使用する場合に不可避であるループ形成を最小にするため、いくつかのより小型のLPEI分子を結合するために好ましい。
生分解性(例えば、ジスルフィド)リンカーを使用して、LEPIを使用することに伴う毒性を最小にするはずである、より小さなサイズのLPEIを連結することが、意味をなす。概念的に類似するアプローチ〜低分子量の疎水性に修飾された分岐型PEIの物理的凝集〜がKlibanovらにより使用され、そして分岐型PEIが従前のように結合された(Proc. Nat. Acad. ScI, 2002, vol.99(23) 14640;US. Pat 6.652.886;Bioconjugate Chem., 2003, 14, 934;Bioconjugate chem. 2001, 12, 989)。しかしながら、これらの著者らは、BPEIの第1アミノ基に特異的なジスルフィド結合試薬を使用し、そしてゲル-透過クロマトグラフィーによる非-調製的な時間と労力を必要とする精製を使用する。本発明の方法は、これらの制限を有さない。ブロック結合が達成されるため、ペンダントリガンドを、ポリエチレンイミンブロックに対してワンポット反応で同時に結合させることが、好都合であることが見いだされる。本発明の合成スキームの別の利点は、それらの分岐型異性体よりもより活性が高いLPEIを使用することである。
本発明のLPEIおよびリポポリマー類生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーは、核酸等のポリアニオン性化合物に対して静電的に結合されるアミン基を有する。本発明オンカチオン性コポリマーは、DNAを濃縮し、そしてコンパクトな構造を形成する。さらに、生理活性物質の送達後に形成される単量体の分解産物の低毒性は、細胞傷害性が低下し、そしてトランスフェクション効率が上昇した遺伝子キャリアをもたらす。
本発明の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーは、トレーサー(例えば、蛍光マーカー)または標的化リガンドと、直接的にまたはスペーサー分子を介して、複合化することもできる。好ましくは、利用可能なアミノ基の小さな部分のみが、リガンドにカップリングされる。ポリマー類に複合化された標的化リガンドは、ポリマー類-核酸/薬物複合体を特異的な標的細胞に対して結合させ、そしてその様な細胞(腫瘍細胞、肝臓細胞、造血幹細胞など)中に浸透させる。標的リガンドは、細胞内の標的化要素でもあってよく、核酸/薬物の輸送を特定の好ましい細胞区画(ミトコンドリア、核など)に対して導くことができる。好ましい態様において、リガンドは、アミノ基にカップリングされた糖部分であってもよい。その様な糖部分は、好ましくは、ガラクトース、グルコース、フコース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マンノース、セロビオース、ニトロース(nytrose)、トリオース、デキストロース、トレハロース、マルトース、ガラクトサミン、グルコサミン、ガラクツロン酸、グルクロン酸、およびグルコン酸等の単糖またはオリゴ糖である。肝細胞上のガラクトース受容体の高親和性および結合活性のため、ラクトースのガラクトシル単位は、肝細胞のための便利な標的化分子を提供する。
使用することができるその他のタイプの標的化リガンドには、ペプチド(例えば、抗体または抗体フラグメント、細胞受容体、増殖因子受容体、サイトカイン受容体、葉酸、トランスフェリン、上皮細胞増殖因子(EGF)、インスリン、アシアロオロソムコイド、マンノース-6-リン酸(単球)、マンノース(マクロファージ、いくつかのB細胞)、ルイスxおよびシアリルルイスx(内皮細胞)、N-アセチルラクトサミン(T細胞)、ガラクトース(結腸癌細胞)、およびトロンボモジュリン(マウス胚内皮細胞)など)、融合誘導因子(fusogenic agent)(例えば、ポリミキシンBおよび血球凝集素HA2)、リソゾー栄養性物質(lysosomotrophic agents)、核局在化シグナル(NLS)(T-抗原など)が含まれる。
固有粘度測定を使用する生分解性架橋リポポリマーの分子量分析は、直鎖ポリエチレンイミン標準に対して、7.5 kDの見かけ分子量を示した(表I)。固有粘度(および光分散)は、ポリマー分子の効果的な旋回半径(gyrational radius)を実際に測定し、それは分子量および分子のサイズに依存している(Introduction to Physical Polymer Science, 3rd, Leslie Howard Sperling Wiley, 2001, page 96-102)。直鎖較正曲線から、LPEI分子は、pH 2.5の水溶液中、“棒型”となる傾向があるようである。分岐型PEIについては、“形状係数”、>1、を取り込まなければならず、これは同一の旋回性半径(gyrational radius)中にポリマー分子をより高密度にパッキングする原因となる。このように、分岐型PEIの実際の分子量は、形状係数値により直鎖PEI標準に対して測定したその見かけ値よりも高い。このことは、2ユニットの直鎖分子と、形状係数が非常に高い可能性がある中程度に分岐した任意に導かれた3ユニット分子とにより、示される。生分解性架橋ポリマートランスフェクション活性についてのデータから(図8)、形状係数はむしろ低く、1.5〜2であり、従って測定オリゴマーは、三量体分子により近いすべての可能性があるようである。
Figure 2008519128
本発明の利点は、粒子サイズおよび電荷密度が容易に調節される遺伝子キャリアを提供することにある。粒子サイズがトランスフェクション効率、細胞毒性、およびin vivoでの組織標的化をしばしば支配するため、粒子サイズの調節は、遺伝子送達システムの最適化のために重要である。本発明において、粒子サイズは、直径100 nm程度(図5)であることが示され、これはエンドサイトーシスを介して細胞中に導入されるための効率的な粒子サイズである。加えて、正に荷電した粒子表面は、負に荷電した細胞表面に対して結合して、その後エンドサイトーシスにより細胞中に取り込まれる、十分な可能性を提供する。本発明中に開示された遺伝子キャリアは、+10〜+20 mVの範囲のゼータ-電位を有する(図6)。
本発明のカチオン性マルチブロックコポリマーは、哺乳動物細胞中のDNA等の高分子を送達するために適している。大型で負に荷電したDNA分子を小型の(<200 nm)そして正に荷電したナノ粒子に濃縮する能力は、カチオン性ポリマー類による遺伝子導入において不可欠の工程と考えられている。カチオン性ポリマー/DNA複合体の粒子サイズおよびゼータ電位は、ポリマー/DNA複合体中のポリマーとDNA分子との間のリン酸に対する窒素(N/P)比により影響を受ける。以下に示された実験および結果は、生分解性ポリマーの物理化学的特性が、安全でそして効率的な遺伝子送達システムとしてのその用途と互換性があることを示す。
本発明の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーを小粒子中にDNA分子を濃縮する能力は、ゲル電気泳動および粒子サイズ決定を使用して調べた。増加濃度の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーを添加する前、および添加した後の、プラスミドDNAの電気泳動移動度を、図7に示す。ポリマーとのDNA複合化の程度は、ポリマーとDNAとの間の比が増加するにつれて、改良された。最適な濃縮は、N/P比が5/1〜10/1で得られた。ポリマー/DNA複合体の平均直径は、200 nm以下であり、このサイズは、標的細胞による複合体のエンドサイトーシス的取り込みのために適したサイズであった。
生分解性マルチブロックコポリマーのDNA複合体は、哺乳動物細胞中で、トランスフェクト的に活性である。本発明の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー遺伝子キャリアのトランスフェクション効率を、基本構造のポリマーブロックのトランスフェクション効率に対する比較を、図8に示す。生分解性ポリマー性キャリアを使用する場合に、およそ70倍の発現の改善が生じた。脂質部分の生分解性マルチブロックコポリマーへの共有結合は、さらに遺伝子導入効率を向上させ、基本構造のポリマーブロックよりも全体として140倍向上した(図8)。遺伝子導入をトランスフェクション複合体に対して暴露された全細胞数の%として定量する別のタイプのアッセイにおいて、生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーは、通常、75〜90%の標的細胞にトランスフェクトした。生分解性架橋マルチブロックコポリマーのトランスフェクション活性および細胞傷害性を、25 kD直鎖PEIのトランスフェクション活性および細胞傷害性と、様々なN/P比で比較した。図9に示されるように、生分解性架橋コポリマー類から得られたすべての試験したN/P比でのトランスフェクション活性は、25 kD直鎖PEIから得られたトランスフェクション活性よりも顕著に高かった。これらのデータは、本発明中に記載される架橋スキームにより、ずっと高い分子量の直鎖PEI(25 kD)で得られたレベルと比較して、低分子量直鎖PEI(3.6 kD)のトランスフェクション活性を、劇的に向上されることが示される。
細胞生存率または細胞傷害性は、遺伝子キャリアの有用性を決定する場合の重要なパラメータである。前述したように、カチオン性ポリマー類の高いトランスフェクション効率は、しばしば高い細胞毒性と関連する。生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーのCos-1細胞における細胞傷害性を、25 kD PEIの場合と平行して調べた。図10および図11に示されるように、Cos-1細胞をルシフェラーゼプラスミドおよび本発明の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーを含有するトランスフェクション複合体とともにインキュベーションすることにより、25 kD直鎖PEIでは細胞傷害性が見られたのと対照的に、細胞傷害性はほんのわずかであった。これらのデータは、本発明において記載されるスキームを使用して低分子量直鎖PEIを低分子生分解性結合を介してカップリングすることにより、細胞毒性を顕著に増加させることなく、ポリマートランスフェクション活性を劇的に亢進させることを示す。
生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーがin vivoで機能する能力を評価するため、マウス腫瘍モデルを組み込んだ。これらの研究について、純系マウス系統にマウス乳癌細胞を移植した。増殖期間の後、腫瘍に生分解性ポリマー性キャリアと複合化されたルシフェラーゼプラスミドを注射した。処置後24時間後に、腫瘍を取り出し、そしてホモジネートをタンパク質発現について分析した(図12)。生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー(脂質部分を有するもの、および有しないもの)の両方とも、腫瘍組織にトランスフェクトすることができ、これらのポリマー類がヒト疾患の遺伝子治療についての治療可能性を有することが示された。
トランスフェクション複合体の細胞局在を補助するため、蛍光ローダミンを、生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーに共有結合させた。蛍光標識生分解性マルチブロックコポリマーを、β-ガラクトシダーゼプラスミドと複合化指せ、そしてCos-1細胞培養に対して4時間添加した。標識ポリマーをトランスフェクトされた細胞の蛍光顕微鏡は、Cos-1細胞によるほぼ100%の取り込みを示した(図13、パネルA)。生分解性マルチブロックコポリマーの蛍光標識は、ウシ胎児血清の存在下または非存在下の両方において、非標識ポリマー/DNA複合体と比較して、遺伝子導入に影響を与えなかった(パネルB)。蛍光標識ポリマーをルシフェラーゼプラスミドと共に使用した場合に、同様の結果が得られた(パネルC)。
以下の実施例は、当業者に、本発明をどのようにして実施するかをより明確に理解させるものである。本発明は、その好ましい具体的な態様と組み合わせて記載されたが、それらは本発明を説明することを意図したものであって、本発明の範囲を限定することを意図しないことは、理解されるべきである。本発明のその他の側面が本発明が包含するものであることは、当業者には自明である。
実施例1:直鎖ポリエチレンイミンの合成
本実施例は、硫酸塩の形状の本発明の直鎖ポリエチレンイミンポリマーブロックの調製を説明する(図1、2)。これらの物質は、Tanakaの方法を若干改変することにより調製された(Macromolecules, 1983, vol 16, 849-853)。
1.単量体の精製
市販の2-フェニルオキサゾリンを通常は着色し(黄緑〜茶色)、そして減圧下(bp 110°/8 mmHg)にて蒸留して、無色物質を得た。300 gのその様な上流物に対して、約45 gの粉にした(粉末)KOHを添加し、そして混合物を500 mLフラスコ中に静置した。フラスコをロータリーエバポレーターに接続し、そして次いで50℃の温浴中で大気圧で4〜5時間回転させた。黄色みがかった色が発色した。混合物を焼結ガラス漏斗を通して濾過した;固体ケーキを少量の塩化メチレンで洗浄し、その後廃棄した。濾過物を水で洗浄し(2×100〜150 mL)、次いでNa2SO4上で乾燥させた。乾燥させた液体に対して、1 gの塩化ベンゾイルを添加し、そして混合物を蒸留した(最初は、塩化メチレンを760 mmで除去し、次いでベンゾニトリルの強い匂いを伴う少量の濁った徴候(forerun)(bp<100°/8)、次いで精製フェニルオキサゾリンを110°/8 mmHgで回収した)。アルゴン雰囲気下、Na2SO4上で、少なくとも数日間保存することができる。回収率は、約90%である。
2. 重合化:ポリ(N-ベンゾイルエチレンイミン)
特注のシール可能なバイアルを、100 g(680 mMol)の精製フェニルオキサゾリンおよび0.62 gのMe2SO4でチャージした。混合物を回転させて、混合を確実に行い、そしてバイアルを減圧/Arマニホルドに接続し、そして冷却浴中に静置した。混合物を固化した後すぐに、次いでバイアルを温水浴中に静置した。混合物を溶解させ、そして減圧下で脱気させ、そしてバイアルを減圧下でシールした。次いで、シールしたバイアルを、熱浴中に整地した(140℃;しかしながら、より大型の触媒を充填するため、ポリマー化を激しく進行させることができ、そしてより低温の浴(120℃)が、少なくともポリマー化の始まりには好ましい)。バイアルを140℃で48時間維持し、その間に混合物を固化した。次いで、バイアルを熱浴中から取り出し、冷却し、そして破壊した。もろいポリマーを、小片に壊し、そして粉末になるように挽いた。均等な8-10 mmサイズの塊を、ゆっくりと加水分解し、そして次の工程の間熱酸中で攪拌しながら分散させ、それにより微粉砕は必要ではなくなる可能性があるようである。回収物は、GPC vs. ポリスチレン標準により決定した、12KのMWを有する98〜99 gであった。異なるMW(8K〜51K)のポリマー類を、異なる量の触媒を使用してこのようにして調製した。
3. 脱ベンゾイル化:直鎖ポリエチレンイミンスルフェート
1リットルの丸底フラスコを、約50 gのポリ(N-ベンゾイル-エチレンイミン)、水(180 mL)、および濃縮H2SO4(300 g)を提供した。フラスコには、1”の卵形マグネティックスターラーバー、そして(空気)還流コンデンサを装備した。フラスコを、140〜145℃の加熱浴中に静置し、そして混合物を加熱・攪拌した。最初に、ポリマーが粘着性の塊を形成し、それがすぐに濁った分散物となった;(強力な混合が必須である)。加熱・攪拌を約20時間継続した。次いで、攪拌を停止した;融解された安息香酸が、(上部)分離層を形成した。次いで、熱い下部層を、大型のピペットを使用して別のフラスコに移した;冷却時にそれは固化し、従って移す作業は迅速に行わなければならない。この固化した下部層は、水(約400 mL)で希釈し、そしていずれかの残留安息香酸を蒸気蒸留で除去した。追加の試験として:熱いポットの液体を、蒸気蒸留の終了の前に透明にしなければならない。この時点での固体の存在は、脱ベンゾイル化が不完全であることを示す。ポットの液体を冷却する際、ポリエチレンイミンスルフェート(水和物)の白〜オフホワイトの結晶に分離する;それらは濾過により回収され、フィルター上で水で洗浄し、次いでアセトンで洗浄し、そしてその後乾燥させた。回収は、約33 g(97%)である。
ベンゾイル-LPEIから得られた51 KのMWを有する物質は、そのクレーム記載の構造に対応するNMR(D2SO4、標準としてMe3SiCD2CD2CO2Na)を有する:53.62(s、CH2基);6.4〜8.2(少量のベンゾイル基)。元素解析(Galbraith Laboratories):C 22.37%;N 12.54%、S 16.58%。計算値:(-CH2NHCH2CH2NHCH2-×1 H2SO4×1 H2O)C 23.75%;N 13.87%、S 15.85%。この物質の少量のサンプルを、再ベンゾイル化し(完全ではない)そして45KのMWを有したが、このことは顕著なバックボーン分解が厳しい加水分解条件下では生じないことを示す。
実施例2:生分解性マルチブロックカチオン性コポリマーの合成
本実施例は、3.6 kDの直鎖PEIの生分解性マルチブロックコポリマー(BD3.6K)の調製を説明する(図3、4)。
1.直鎖ポリエチレンイミン遊離塩基
2 LのErlenmeyerフラスコに、マグネティックスターラーを装着し、そしてLPEI(Mw 3.6 kD)硫酸塩水和物(30 g、約0.15 Mol SO4 2")、および水(1 L)を装填した。NaOH(20 g、0.5 Mol)を攪拌混合物に対して添加し、そして不均一な混合物を50〜60℃にまで温め、そして3時間攪拌した。混合物を冷却した;沈殿させたLPEI水和物を濾過し、水で洗浄し、そして乾燥させた。
2. LPEI3600BOC95%
予めタールを塗った(pre-tarred)250 mLのフラスコに、LPEI遊離塩基水和物(7.1 g)を装填し、そして減圧ラインに接続した。減圧フラスコを油浴中で75℃にまで加熱した。LPEI水和物を、バブリングにより無水LPEIの溶解物中でゆっくりと変換した。3時間の減圧下における加熱の後、茶色のLPEI溶解物を冷却し、そしてフラスコをアルゴンでフラッシュした。5.4 g(125 mMolのN)の無水LPEIを得た。LPEIを含むフラスコに対して、120 mLの乾燥クロロホルムおよびマグネティックスターラーバーを添加した。混合物をLPEI溶解物が溶解するまでアルゴン存在下にて攪拌し、わずかに白濁した溶液を形成した。この攪拌溶液に対して、無水t-ブトキシカルボニル(BOC)(26 g、119 mMol、95%)を10分間かけて添加した。添加には、穏やかな発熱性の反応そしてガスの発生を伴った。混合物を3時間攪拌し、少量の懸濁微粒子を濾別し、そして混合物を減圧下で濃縮した。回収は、17 gであり、約11700のMWを有する(ポリスチレン標準に対するGPCによる)。
3. LPEI-リンカー複合体
バイアルに、マグネティックスターラーを装着し、そして2.3 g(197μMol)のLPEI3600BOC95%および5 mLの乾燥クロロホルムを装填した。混合物を温めそして攪拌して溶解させ、そして0.5 mLのクロロホルム中150 mg(600μMol)の塩化ジチオジプロピオニル(市販のジチオジプロピオン酸および塩化チオニルから得た)を、攪拌混合物に対して10分間かけてゆっくりと添加した。攪拌混合物を、強力なゲル形成が生じるまで、数日間室温に維持した。この時点で、10 mLのトリフルオロ酢酸を添加し、そして混合物を30分間攪拌した。得られた不均一混合物の下層(茶色)を取り除き、そして40 mLの水で希釈した。残りのクロロホルムおよび少量の不純物微粒子を、遠心分離により除去した。10 mLの水中Na2SO4(3 g)の水溶液を上清に添加し、そして架橋LPEI(BD3.6K)スルフェートの得られた沈殿物を回収し、水で洗浄し、次いでアセトンで洗浄し、そして乾燥させた。得られたものは、1.2 gのオフホワイトの物質である。
50 mLのフラスコに、1.2 gのBD3.6Kスルフェート(約520 mgのスルフェート)および30 mLの水を装填した。BaCl2二水和物(1200 mg、90%理論値)を添加し、そして不均一混合物を、48時間、激しく攪拌した。次いで、硫酸バリウムを濾別し、水溶性濾過物をさらに0.2μmシリンジフィルターを介して濾過し、そして次いで、水溶性濾過物を減圧下にて濃縮して、約6 mLの容量とした。200 mLのアセトンを用いて希釈する際、沈殿された架橋塩化LPEIを濾過し、アセトンで洗浄し、そして乾燥させた。回収量は、約0.9 gであった。
あるいは、ゲル化させたBOC-保護化物質を、過剰量のHCl/ジオキサン溶液を用いて処理することにより、脱保護化することができる。脱保護化反応混合物の減圧濃度および固体残渣のTHF粉砕により、直接的に、塩酸塩型の標的物質を生成する。
実施例3:生分解性マルチブロックカチオン性コポリマーの脂質複合体の合成
本実施例は、生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーの脂質複合体の調製を説明する。3.6 kDの直鎖PEIの生分解性マルチブロックコポリマー(BD3.6K)を脂質オレオイルテトラエチレングリコールカルボニルと複合化させ、BD3.6K-オレオイル(BD3.6K-O)を形成した。
バイアルに、マグネティックスターラーを装着し、そして2.3 g(197μMol)のLPEI3600BOC95%および6 mLの乾燥クロロホルムを装填した。混合物を温めそして攪拌して溶解させ、そして1.2 mLのクロロホルム中150 mg(600μMol)の塩化ジチオジプロピオニル(市販のジチオジプロピオン酸および塩化チオニルから得た)および1.2 mLのクロロホルム中110 mg(約200μMol)の塩化オレオイルテトラエチレングリコールカルボニル(市販のポリエチレングリコールモノオレオイルエステルおよびホスゲンから得た)を、10分間かけて攪拌混合物に対してゆっくりと添加した。攪拌混合物を、強力なゲル形成が生じるまで、数日間室温に維持した。この時点で、10 mLのトリフルオロ酢酸を添加し、そして混合物を30分間攪拌した。得られた不均一混合物の下層(茶色)を取り除き、そして40 mLの水で希釈した。残りのクロロホルムおよび少量の不純物微粒子を、遠心分離により除去した。10 mLの水中Na2SO4(3 g)の水溶液を上清に添加し、そして架橋官能化LPEI(BD3.6K-O)スルフェートの得られた沈殿物を回収し、水で洗浄し、次いでアセトンで洗浄し、そして乾燥させた。得られたものは、1.35 gのオフホワイト物質である。
50 mLのフラスコに、1.3 g(BD3.6K-O)スルフェート(約550 mgのスルフェート)および30 mLの水を装填した。BaCl2二水和物(1.25 g、90%理論値)を添加し、そして不均一混合物を、48時間、激しく攪拌した。硫酸バリウムを濾別し、水溶性濾過物をさらに0.2μmシリンジフィルターを介して濾過し、そして次いで、水溶性濾過物を減圧下にて濃縮して、約6 mLの容量とした。200 mLのアセトンを用いて希釈する際、沈殿された塩化(BD3.6K-O)を濾過し、アセトンで洗浄し、そして乾燥させた。回収量は、0.9 gであった。
あるいは、ゲル化させたBOC-保護化物質を、過剰量のHCl/ジオキサン溶液を用いて処理することにより、脱保護化することができる。脱保護化反応混合物の減圧濃度および固体残渣のTHF粉砕により、直接的に、塩酸型の標的物質を精製する。
実施例4:蛍光マーカーに共有結合した生分解性マルチブロックカチオン性コポリマーの脂質複合体の合成
本実施例は、生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーの蛍光標識脂質複合体の調製を説明する。実施例3の生分解性マルチブロックリポポリマー(BD3.6K-O)を、蛍光マーカーローダミンで標識した。
バイアルに、マグネティックスターラーを装着し、そして1.86 g(156μMol)のLPEI3600BOC95%および5 mLの乾燥クロロホルムを装填した。混合物を温めそして攪拌して溶解物を得た。蛍光マーカーリサミン(lissamine)塩化スルホニル(9 mg、1 mL CHCl3中約15μMol)および0.5 mLのCHCl3中120 mg(470μMol)の塩化ジチオジプロピオニルおよび0.5 mLのCHCl3中85 mg(約160μMol)の塩化オレオイルテトラエチレングリコールカルボニルを、攪拌混合物に対して10分間かけてゆっくりと添加した。攪拌混合物を、減圧下でさらに濃縮して6 mLの容量とし、そして強力なゲル形成が生じるまで、50℃の温浴中に数日間静置した。48時間後、混合物を100 mLの石油エーテルで希釈し、そして固形物質を濾過により回収し、そして濾過物がほぼ無色になるまでフィルター上アセトンで洗浄し、そして乾燥させた。乾燥物質に対して、5 mLのCHCl3および5 mLのトリフルオロ酢酸を添加し、そして混合物を90分間攪拌した。不均一混合物の下層(茶色)を取り除き、そして40 mLの水で希釈した。残りのクロロホルムおよび少量の不純物微粒子を、遠心分離により除去した。10 mLの水中Na2SO4(3 g)の水溶液を混合物に添加し、そして架橋官能化LPEIスルフェートの得られた沈殿物を回収し、水で洗浄し、次いでアセトンで洗浄し、そして乾燥させた。かなりの量の非複合化ローダミン(紫色色素)を洗浄中に取り除き、これはおそらく塩化スルホニル加水分解を示す。約1.4 gの紫色物質を得た。
50 mLのフラスコに、1.4 gの標識LPEI複合体(約550 mgスルフェート)および30 mLの水を装填した。BaCl2二水和物(1.4 g、約95%)を添加し、そして不均一混合物を、48時間、激しく攪拌した。次いで、硫酸バリウムを濾別し、水溶性濾過物をさらに0.2μmシリンジフィルターを介して濾過し、そして次いで、水溶性濾過物を減圧下にて濃縮して、5 mLの容量とした。200 mLのアセトンを用いて希釈する際、沈殿された架橋官能化塩化LPEIを濾過し、アセトンで洗浄し、そして乾燥させた。回収量は、約0.9 gであった。
実施例5:生分解性マルチブロックカチオン性コポリマーの分子量の推定
蒸留水中LPEI塩酸塩および生分解性架橋マルチブロックポリマーの溶液(5 mg/mlの範囲の正確に測定された濃度、pH 約2.5)を調製した。Cannon-Fenskeの一般的な粘度計を浸漬浴(水を満たした大型のビーカー、21℃)中に設置し、粘度計の毛細管を通過する固定容量のこれらの溶液および溶媒(蒸留水)の流れ時間を測定した。溶媒の流れ時間に対する溶液の流れ時間の無次元比を、相対粘度として記録した。溶液の濃度に対する相対粘度比(g/dlで測定)を、固有粘度として得られた(より厳密に言えば、それは、無限希釈時の限界値として測定されるべきである)。この値(g/dl)を、前駆体ポリ(N-ベンゾイルエチレンイミン)のGPC対ポリスチレン標準から以前に計算されたように、LPEIポリマー類の分子量に対してプロットした。粘度測定および分子量分析の結果は、表I中に記載する。
Figure 2008519128
実施例6:プラスミドの増幅と精製
本実施例は、本発明の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーと複合化させるために使用されるDNAの調製を説明する。ルシフェラーゼタンパク質をコードするプラスミドとβ-ガラクトシダーゼ(β-Gal)タンパク質をコードするプラスミドとを、JM109 E.coli系統中で増幅し、そして次いで、Qiagen EndoFree Plasmid Maxi-prepキットまたはGiga-prepキット(Chatsworth, CA)を製造者の指示に従って使用して、生成した。精製後、、DNA濃度を260 nmの吸収を使用して分光光度法で測定した。プラスミドDNAの完全性は、アガロースゲル電気泳動の後、エチジウムブロマイド染色を使用して評価した。
実施例7:生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーを有するDNAの水溶性複合体の調製
本実施例は、BD3.6K-O/DNA複合体の形成について説明する。BD3.6K-Oポリマーを滅菌水中に溶解し、3 mg/mlの最終濃度とする。DNAを滅菌水中に溶解し、1 mg/mlの最終濃度とする。ポリマー/DNA複合体を形成するため、2種類の構成成分を5%グルコースで別個に希釈し、それぞれ150μLの容量とし、そして次いで、プラスミドDNA溶液をポリマー溶液に対して添加した。複合体形成を、室温にて15分間進行させた。電荷比の遺伝子導入に対する効果を研究するため、BD3.6K-O/DNA複合体を、窒素/リン酸(N/P)の異なる比、1/1、5/1、10/1、および20/で調製した。複合体形成の後、複合体を、複合体の粒子サイズ測定(図5)およびゼータ電位測定(図6)のため、キュベット中で希釈した。サンプルの電気泳動移動度を、25℃で、657 nmの波長で、そしてBI-ゼータオプション(Brookhaven Instruments Corp., Holtsville, N.Y.)により90Plus/BI-MAS粒子サイズと90°の定角で、測定した。
実施例8:ゲル遅延アッセイ
BD3.6K-Oポリマー類がプラスミドDNAを濃縮する能力を、本実施例において評価した(図7)。簡単に述べると、BD3.6K-Oを、5%グルコース(w/v)の存在下、様々なN/P比(1/1、5/1、10/1、20/1)で、プラスミドDNAと複合化される。複合体を1%アガロースゲル上で電気泳動した。正に荷電したBD3.6K-Oポリマーは、DNAの糖バックボーン上の負に荷電したリン酸イオンと強力な複合体を形成した。N/P比が(10/1)に達すると、遊離のDNAは見いだせなかった。
実施例9:In vitro遺伝子導入
本実施例は、本発明の生分解性架橋マルチブロックコポリマーと共にDNA複合体を使用した、in vitro遺伝子導入を示す(図8、9)。ルシフェラーゼプラスミド、pCMV-Luc、およびBD3.6K-Oまたは高分子量のLPEI(25 kD)を含有するトランスフェクション複合体を、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で様々なポリマー/DNA(N/P)比で調製し、そして細胞培養中でのルシフェラーゼ遺伝子導入について試験した。Cos-1細胞(1.5×105)を撒き、80%コンフルエントになるまで12ウェル組織培養プレート中で10%FBSの存在下培養した。1μgのプラスミドDNAを含有するトランスフェクション複合体を、10%ウシ胎児血清の存在下または非存在下にて、6時間、CO2インキュベーター中で各ウェルに対して添加した。トランスフェクション培地を除去し、そして細胞を、40時間、1 mlの新鮮なDMEM(10%FBS含有)中でインキュベートした。細胞をリン酸緩衝化塩類溶液で洗浄し、そしてTENTバッファ(50 mM Tris-Cl [pH 8.0]、2 mM EDTA、150 mM NaCl、1%Triton X-100)で溶解した。細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性を、Orion Microplate Luminometer(Berthold DetectionシステムUSA, Oak Ridge, TN)を使用して、比光単位(RLU)として測定した。RLU/mgの全タンパク質に関して、ルシフェラーゼの最終値を報告した。全タンパク質アッセイを、BCタンパク質アッセイキット(Pierce Chemical C, Rockford, IL)を使用して行った。
上述のプロトコルもまた、β-ガラクトシダーゼ遺伝子導入のために使用された。β-ガラクトシダーゼ遺伝子導入レベルを、Gene Therapy Systems, Inc.(San Diego, CA)から入手したX-Gal染色アッセイキットを用いて定量した。
実施例10:細胞毒性
本実施例は、様々な窒素対リン酸比のBD3.6K-Oを有するDNA複合体を使用して、生分解性架橋マルチブロックコポリマーの細胞傷害性スクリーニングが関与する工程をもたらす(図10、11)。トランスフェクション複合体の細胞傷害性を、全タンパク質アッセイおよび細胞増殖アッセイにより、評価した(Promega Corporation, 2800 Woods Hollow Road, Madison, WI 53711-5399)。タンパク質アッセイは、実施例8に記載する。
Cos-1(African Green Monkey Kidney cells)を、10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン、1%ストレプトマイシンおよびグルタミンを添加したDMEM培地中で、増殖させ、そして維持させる。細胞を、37℃の加湿5%CO2インキュベーター中で維持した。
Cos-1細胞を、1.5×103細胞/ウェルの密度で96ウェルプレート中に撒き、そして5%CO2中37℃で一晩、インキュベートした。70〜80%のコンフルエントに達した後、0.1μgのDNAを、様々な電荷比で、BD3.6K-Oに対して添加した。次に、BD3.6K-O/DNA複合体を、FBSを含有するDMEM、およびFBSを含まないDMEM(両群とも各ウェル中100μLの全量を有する)、の2群に分けたウェルに対して添加した。血清なしのウェルを、5〜6時間インキュベートし、培地を吸引除去し、そして次いで、抗生物質を含まない通常の増殖培地を添加した。FBSを含有するウェルを24時間インキュベートし、そして等量の血清含有培地(血清を含まず)を添加した。両群をトランスフェクション後48時間インキュベートしたのち、すべてのウェルから培地を吸引し、そして100μLの通常の増殖培地(抗生物質を含まず)をすべてのウェルに添加した。次に、20μLの室温CellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Reagentを各ウェルに対して添加し、そしてプレートを4時間インキュベートした。インキュベーション期間ののち、ELISAプレートリーダー上で490の実行により、プレートを分光光度的に読みとった。相対%細胞生存率は、以下の式を使用して計算した:
生存率(%)=OD490(サンプル)/OD490(対照)×100
OD490(対照)は、増殖培地のみで処置したウェルからの測定値を示し、そしてOD490(サンプル)は、様々な比のBD3.6K-O/DNAで処置したウェルからの測定値を示す。タンパク質ベースの細胞傷害性アッセイにおいて、BD3.6K-Oと25 KD LPEIとの隣り合わせの比較を行ったところ、BD3.6K-Oの細胞傷害性がより低いことが示される(図10)。BD3.6Kおよび脂質誘導体BD3.6K-Oの細胞傷害性もまた、細胞生存率アッセイにおいて測定した。図11に示されるように、Cos-1細胞のBD3.6KまたはBD3.6K-Oを含有するトランスフェクション複合体への曝露は、細胞生存率に対して影響を与えなかった。図11に示されるように、Cos-1細胞のBD3.6KまたはBD3.6K-Oを含有するトランスフェクション複合体への曝露は、細胞生存率に影響を及ぼさなかった。
実施例11:In vivo遺伝子導入
本実施例は、プラスミド送達のための生分解性架橋マルチブロックコポリマーを使用したin vivo遺伝子発現について説明する(図12)。ルシフェラーゼタンパク質をコードするプラスミドを、30μlの容量中、10:1のN:P比でポリマー性キャリアBD3.6K-Oと共に複合化された全DNAの0.2 mg/mlの容量で、マウス体内の腫瘍内に注入した。このことは、腫瘍あたり6μgのDNA用量をもたらした。本実施例において、細胞培養で調製された、PBS中1×106の4T1細胞(マウス乳癌)を投与することにより、乳癌を7〜8週齢のBALB/cマウスの左および右の脇腹に誘導した。10〜11日後、腫瘍サイズが、以下の式:
用量=4/3×3.14×(L/2×W/2×H/2)
〔式中、Lは腫瘍の長さであり、Wは幅、そしてHは高さである〕により計算された場合に約70 mm3に到達した際に、腫瘍にプラスミド/ポリマー複合体を注入した。1日後、腫瘍を取り出し、そしてLN2を使用して凍結した。次いで、腫瘍を溶解バッファー中でホモジナイズし、そして製造者の指示に従ってPromegaのルシフェラーゼアッセイシステム(Madison, WI)を使用して、Orion Microplate Luminometer(Berthold Detection Systems, Oak Ridge, TN)を使用して、ルシフェラーゼ活性について解析した。
実施例12:蛍光標識ポリマー:in vitroトランスフェクション/解析
本実施例は、トランスフェクション複合体の細胞局在およびin vitro遺伝子導入における蛍光標識生分解性架橋マルチブロックポリマー類の応用を示す(図13)。Cos-1細胞をm10%FBS含有DMEM中1.5×105/ウェルの細胞密度で、12ウェル組織培養プレートに撒いた。細胞は、BD3.6K-O/DNA複合体をトランスフェクトしてから24時間後に80%コンフルエントに達した。全DNA装填量を一定の1μg/ウェルに維持し、そして10%FBSの存在下、または血清の非存在下、トランスフェクションを行った。細胞を、複合体の存在下にて6時間インキュベートし、その後1 mlの10%FBS含有DMEMに置換し、そしてさらに40時間インキュベートした。次いで、β-Galの発現レベルを、Gene Therapy Systems, Inc(San Diego, CA)から入手したX-Gal染色アッセイキットを使用して評価した。
蛍光顕微鏡を使用した測定のため、細胞トランスフェクション法は、BD3.6K-O/DNAと共に2時間のインキュベーション時間後、培地を除去しそして細胞をPBSで洗浄し、そして次いでトリプシンを用いて回収した点以外は、β-Gal解析用のものと同一であった。次いで、細胞を固定し、スライド上に静置し、そして倒立蛍光顕微鏡を使用して測定した。標識ポリマーでトランスフェクトした細胞の蛍光顕微鏡像は、Cos-1によるほぼ100%の取り込みを示した(図13、パネルA)。生分解性マルチブロックコポリマーの蛍光標識は、非標識ポリマー/DNA複合体を用いた場合と比較した際、ウシ胎児血清の存在下または非存在下のいずれの場合にも、遺伝子導入に影響を与えなかった(パネルB)。同様の結果は、蛍光標識ポリマーをルシフェラーゼプラスミドと共に使用した場合に得られた(パネルC)。
実施例13:生分解性マルチブロックカチオン性コポリマー、BD15K-12の合成
本実施例は、生分解性マルチブロック化カチオン性ポリマー、BD15K-12(単量体ポリエチレンイミンが、PEI単量体あたり12分子のジチオジプロピオネートリンカーを有する15 kD直鎖PEIである)の調製を説明する。以前の実施例において、我々は、架橋のために3.6 kDのLEPI単量体を使用した。
1.直鎖ポリエチレンイミン(MW:15kD;遊離塩基)
2 LのErlenmeyerフラスコに、マグネティックスターラーを装着し、そしてLPEI(Mw 15000 D)の硫酸塩水和物(30 g、約0.15 Mol SO4 2-)、および水(1 L)を装填した。NaOH(20 g、0.5 Mol)を攪拌混合物に対して添加し、そして得られた不均一混合物を50〜60℃にまで温め、そして3時間攪拌した。混合物を冷却した;沈殿させたLPEI水和物を濾過し、水で洗浄し、そして乾燥させた。
2. LPEI15000BOC95%
予めタールを塗った(pre-tarred)250 mLフラスコに、LPEI遊離塩基水和物(6 g)を装填し、そして減圧ラインに接続した。減圧フラスコを油浴中で80℃にまで加熱した。LPEI水和物を、バブリングにより無水LPEIの溶解物中でゆっくりと変換した。3時間の減圧下における加熱の後、茶色のLPEI溶解物を冷却し、そしてフラスコをアルゴンでフラッシュした。4 g(93 mMolのN)の無水LPEIを得た。マグネティックスターラーバーと共にLPEIを含むフラスコに対して、80 mLの乾燥クロロホルムを添加した。混合物をLPEI溶解物が溶解するまでアルゴン存在下にて攪拌し、わずかに白濁した溶液を形成した。この攪拌溶液に対して、無水BOC(19.26 g、88 mMol、95%)を10分間かけて添加した。添加には、穏やかな発熱性の反応およびガスの発生を伴った。混合物をさらに16時間攪拌し、少量の懸濁微粒子から濾別し、そして減圧下で濃縮した。残渣をヘキサンで粉砕し、そして乾燥させた。回収は、12.5 gであった。
3. LPEI-リンカー複合体(PP 15-12)
バイアルに、マグネティックスターラーを装着し、そして100 mg(2μMol)のLPEI15000BOC95%および0.5mLの乾燥クロロホルムを装填した。混合物を温めそして攪拌して溶解させ、そして0.05 mLのクロロホルム中6 mg(24μMol、12倍モル過剰)の塩化ジチオジプロピオニル(市販のジチオジプロピオン酸および塩化チオニルから得た)を、攪拌混合物に対してゆっくりと添加した。攪拌混合物を、強力なゲル形成が生じるまで、数日間室温に維持した。この時点で、1 mLのトリフルオロ酢酸を添加し、そして混合物を30分間攪拌した。不均一混合物の下層(茶色の層)を分離し、そして2 mLの水で希釈した。残りのクロロホルムおよび少量の不純物微粒子を、遠心分離により除去した。2 mLの水中Na2SO4(0.2 g)の水溶液を上清に添加し、そして架橋LPEIスルフェートの得られた沈殿物を回収し、水で洗浄し、次いでアセトンで洗浄し、そして乾燥させた。80 mgのオフホワイトの物質を得た。
バイアルに、80 mgの架橋LPEIスルフェート(約39 mgのスルフェート)および3 mLの水を装填した。BaCl2二水和物(80 mg、80%理論値)を添加し、そして不均一混合物を、48時間、激しく攪拌した。次いで、硫酸バリウムを濾別し、水溶性濾過物をさらに0.2μシリンジフィルターを介して濾過し、そして次いで、0.25 mlの容量となるまで減圧濃縮した。5 mLのTHFで希釈する際、架橋塩化LPEIを沈殿させ、そして回収して、乾燥させた。60 mgが回収された。
実施例14:生分解性マルチブロックカチオン性コポリマー、BD15K-12-PEGの合成
本実施例は、生分解性マルチブロック化カチオン性ポリマー、BD15K-12-PEG(単量体ポリエチレンイミンが、12分子のジチオジプロピオネートリンカーとPEI 15kD単量体あたり1分子の2 kD mPEGを有する15 kD直鎖PEIである)の調製を説明する。
バイアルに、マグネティックスターラーを装着し、そして次いで、100 mg(2μMol)のLPEI15000BOC95%および0.5 mLの乾燥クロロホルムを装填した。混合物を温めそして攪拌して溶解させ、そして6 mg(24μMol、12倍過剰量)の塩化ジチオジプロピオニル(市販のジチオジプロピオン酸および塩化チオニルから得た)および0.05 mLのクロロホルム中4 mg(2μMol)の新たに調製したMPEG2000クロロホルメート(市販のメトキシポリエチレングリコールMW2000(MPEG2000OH)およびホスゲンから標準的な方法により調製された)を、攪拌混合物に対してゆっくりと添加した。攪拌混合物を、強力なゲル形成が生じるまで、室温に数時間維持した。この時点で、1 mLのトリフルオロ酢酸を添加し、そして混合物を30分間攪拌した。不均一混合物の下層(茶色)を分離し、そして2 mLの水で希釈した。残りのクロロホルムおよび少量の不純物微粒子を遠心分離により除去した。2 mLの水中Na2SO4(0.2 g)の水溶液を上清に添加し、そして架橋LPEIスルフェートの得られた沈殿物を回収し、水で洗浄し、次いでアセトンで洗浄し、そして乾燥させた。81 mgのオフホワイトの物質を得た。
バイアルに、81 mgの架橋LPEIスルフェート(約39.5 mgスルフェート)および3 mLの水を装填した。BaCl2二水和物(80 mg、80%理論値)を添加し、そして不均一混合物を48時間激しく攪拌した。次いで、硫酸バリウムを濾別し、水溶性濾過物を0.2μシリンジフィルターを介してさらに濾過し、そして次いで、減圧濃縮して0.25 mlの容量にした。5 mLのTHFで希釈する際、MPEGを保持する架橋塩化LPEIを沈殿させ、次いで回収しそして乾燥させた。60 mgを回収した。
実施例15:マルチブロックコポリマーBD15K-12およびBD15K-12-PEGでの全身性遺伝子導入
本実施例は、生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー、BD15K-12およびBD15K-12-PEG、の、全身性投与によるin vivo遺伝子導入を亢進させる能力を示す。比較のため、市販されている25 kD分岐型PEI、bPEI-25K、を研究に含めた。最初の実験において、マウスに対して、尾静脈に静脈的(iv)に、以前に言及したポリマー類と複合化されたルシフェラーゼ遺伝子をコードするプラスミドを注入した。すべての実験群に関して、30μgのDNAを使用しそして11:1のN:P比でポリマーと共に複合化した。注入時の最終DNA濃度は、300μl中0.1 mg/mlであった。24時間後、動物を犠死せしめ、そして肺、肝臓、および脾臓を解析用に回収した。サンプルを溶解バッファー中でホモジナイズし、そしてルシフェラーゼ活性を測定した。結果を図14にまとめられているが、ポリマー類は両方とも(PEG部分を有するものおよび有しないもの)、肺、脾臓および肝臓において市販されている25K BPEIポリマーを使用する場合に生成されるよりも顕著に高い発現レベルを引き起こすことが示される。これらの結果は、肺および脾臓において非常に顕著であるが、肝臓においてはそれほどでもない。
実施例16:BD3.6K-OおよびBD15K-12と複合化されたIL-12遺伝子発現プラスミドの腹腔内投与による、腹膜散在性結腸直腸腫瘍の治療
本実施例は、癌の治療のためのマルチブロックコポリマーの治療への応用を示す。治療用遺伝子を送達するためのポリマー類の利用可能性を、散在性結腸直腸癌のマウスモデルを使用して評価した。使用した治療用遺伝子は、強力な抗癌特性を有することが知られている免疫調節性サイトカインである、マウスインターロイキン-12(IL-12)であった。プラスミドを、2種類の異なるポリマー類:BD LPEI-15K-12またはBD3.6K-Oと、それぞれ11:1および20:1のN:P比で複合化した。両方のポリマー類の合成および遺伝子送達用途を、上記の実施例において検討した。腫瘍を誘導するため、Balb/Cマウス(8週齢)に1.0×105CT-26細胞(マウス結腸癌)を、PBS中500μlの容量で腹腔内に注入した。24時間後、プラスミド/ポリマー投与を開始した。処置計画は、0.5 mg/ml最終DNA濃度で500μlのプラスミド/ポリマー複合体を1週間に1回5回処置した。効率は、動物の生存により測定した。結果を図15に示す。両ポリマー送達システムとも、非処置対照と比較して、生存率が上昇する傾向があった(パネルA)。この研究において、生存時間中央値の40〜50%の上昇が、両ポリマー類ともに観察された(パネルB)。
上述した態様は、単に本発明の原理の応用の説明であると理解されるべきである。多数の修飾および代替的態様を、本発明の概念および範囲から離れることなく導き出すことができ、そして添付する請求の範囲は、その様な修飾および配置をカバーすることを意図する。このように、本発明は、現在のところ本発明の最も現実的なそして(1または複数の)好ましい態様とみなされるものと関連して、図面中に示され、そして具体的かつ詳細に完全に上述されているが、一方、請求項に記載された本発明の原理および概念から離れることなく多数の修飾を行うことができることは、当業者にとっては自明である。
図1は、本発明の直鎖PEI(LPEI)の合成スキームを示す; 図2は、LPEIの解析についての1H NMRデータを示す; 図3は、本発明のLPEIの生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーについての合成スキームを示す; 図4は、脂質成分を有するLPEI 3.6Kの生分解性架橋カチオン性マルチブロックリポポリマー類(BD3.6K-O)の解析についての1H NMRデータを示す; 図5は、様々なN/P比でLPEI 3.6 kDの生分解性架橋カチオン性マルチブロックリポポリマー類(BD3.6K-O)を有するDNA複合体の粒子サイズを示す; 図6は、様々なN/P比でLPEI 3.6 kDの生分解性架橋カチオン性マルチブロックリポポリマー類(BD3.6K-O)を有するDNA複合体のゼータ電位を示す; 図7は、様々なN/P比でLPEI 3.6 kDの生分解性架橋カチオン性マルチブロックリポポリマー類(BD3.6K-O)を有するDNA複合体の電気泳動移動度を示す; 図8は、生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー(BD3.6K)、LPEI 3.6 kDの生分解性架橋カチオン性マルチブロックリポポリマー類(BD3.6K-O)、および非-架橋単一PEI 3.6 kDブロックポリマー類を使用したin vitro遺伝子導入を示す; 図9は、直鎖PEI 3.6 kDの生分解性架橋カチオン性マルチブロックリポポリマー類(BD3.6K-O)および25 kD直鎖PEIの生分解性架橋カチオン性マルチブロックリポポリマー類を使用したin vitro遺伝子導入を示す; 図10は、直鎖PEI 3.6 kDの生分解性架橋カチオン性マルチブロックリポポリマー類(BD3.6K-O)および直鎖PEI 25 kDの生分解性架橋カチオン性マルチブロックリポポリマー類を使用した遺伝子導入後の、結果として生じた細胞傷害性を示す; 図11は、直鎖PEI 3.6 kDの生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー(BD3.6K)およびLPEI 3.6 kDの生分解性架橋リポポリマー類(BD3.6K-O)をCos-1細胞中に遺伝子導入した後の細胞生存率を示す; 図12は、直鎖PEI 3.6 kDの生分解性架橋カチオン性マルチブロックリポポリマー類(BD3.6K-O)を使用した4T1腫瘍中へのin vitro遺伝子導入を示す;および 図13は、遺伝子導入用の直鎖PEI 3.6 kDの蛍光標識生分解性架橋カチオン性マルチブロックリポポリマー類(BD3.6K-O)の使用およびポリマー/DNA複合体の細胞局在を示す。

Claims (22)

  1. 直鎖ポリ(アルキレンイミン)(LPAI)ブロックが、親水性リンカーにより、エステル結合、アミド結合、ジスルフィド結合、リン酸結合、およびこれらの組合せからなる群から選択される生分解性結合により架橋される、LPAIおよび親水性リンカーの生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー。
  2. 直鎖ポリ(アルキレンイミン)(LPAI)が、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、アミノグリコシド-ポリアミン、ジデオキシ-ジアミノ-β-シクロデキストリン、スペルミン、スペルミジン、およびこれらの組合せからなる群から選択される構成分子である、請求項1に記載の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー。
  3. 直鎖ポリ(アルキレンイミン)(LPAI)が、直鎖ポリ(エチレンイミン)(LPEI)である、請求項2に記載の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー。
  4. LPEIが、1000〜25000ダルトンの平均分子量を有し、親水性リンカーが、100〜500ダルトンの平均分子量を有し、そして親水性リンカーのLPEIに対する分子比が、1/1〜5/1の範囲内である、請求項3に記載の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー。
  5. レセプターリガンド、膜透過性剤、エンドソーム溶解剤、核局在化配列、pH感受性エンドソーム溶解性ペプチド、発色マーカーおよび蛍光マーカー、脂肪酸、それらの誘導体およびそれらの組合せからなる群から選択されるペンダント官能基をさらに含む、請求項1に記載の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー。
  6. その官能基が、オレイン酸、パルミチン酸、およびステアリン酸、およびこれらの組合せからなる群から選択される構成分子であり、そして脂肪酸アシル鎖のLPEIに対するモル比が0/1〜3/1である、請求項5に記載の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー。
  7. 蛍光マーカーが、ローダミンおよびその誘導体、CyDye蛍光色素、フルオレセインおよびその誘導体、カルボキシフルオレセイン、アトーラベル(atto label)およびこれらの組合せからなる群から選択される構成分子であり、そしてLPEIと蛍光マーカーとのあいだのモル比が0.001〜0.100である、請求項5に記載の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー。
  8. 親水性リンカーが、炭素数1(アセチル)〜炭素数10(ウンデカノイル)を有するジチオジアルカノイル酸、または生分解性ジスルフィド結合を有するエチレングリコール部分、またはジチオジ(テトラエチレングリコールカルボニル)、またはこれらの組合せである、請求項1に記載の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー。
  9. 生分解性結合がジスルフィド結合である、請求項2に記載の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー。
  10. 以下の式:
    (CP)xLyYz
    〔式中、CPは、少なくとも1つの第2アミン基を含有するカチオン性ポリマーを示し、そのCPポリマーは、1000ダルトン〜25000ダルトンの範囲の平均分子量を有し;Yは、エステル結合、アミド結合、ジスルフィド結合、またはリン酸結合を含有する二機能性生分解性リンカーを示し;Lは、リガンドを示し;xは、1〜20の整数を示し;yは、1〜100の整数を示し;そしてzは、0〜40の範囲の整数を示す〕
    により示される生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー。
  11. 以下の式:
    [-CO(CH2aSS(CH2aCO-]p{[(CH2nNH2 +]q}r
    〔式中、(CH2nは、直鎖のポリエチレンイミンブロックのバックボーンの窒素に共有結合された脂肪族炭素鎖であり;Lは、脂質、蛍光マーカーおよびターゲティング部分からなる群から選択されるリガンドを示し;[-CO(CH2aSS(CH2aCO-]は、生分解性ジチオジアシドリンカーを示し;整数aの範囲は1〜15であり;nは、2〜15の整数であり;pは、1〜100の整数であり;qは、20〜500の整数であり;rは、1〜20の整数であり;そしてsは、1〜40の整数である〕;
    により示される、生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー。
  12. 1)直鎖ポリ(エチレンイミン)(LPEI)ブロックが生分解性ジスルフィド結合を有する親水性リンカーにより架橋される前に窒素原子の50%以上を可逆的に保護化させることにより前記LPEIブロックを調製する工程;
    2)前記保護化されたLPEIブロックを前記親水性リンカーと架橋する工程;
    3)LPEIブロックの前記保護を、親水性リンカーと架橋させた後に除去する工程;そして
    4)得られた可溶性が低い架橋されたLPEIを硫酸塩の形状で沈殿することにより、架橋されたLPEIを単離しそして精製する工程;
    を含む、請求項1に記載の生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーを作製するための方法。
  13. 核酸および直鎖ポリ(アルキレンイミン)(LPAI)および親水性リンカーの生分解性の架橋されたカチオン性マルチブロックコポリマーを含み、前記LPAIブロックが、生分解性エステル結合、アミド結合、ジスルフィド結合、またはリン酸結合を有する前記親水性リンカーにより架橋される、トランスフェクト組成物。
  14. 核酸が、ルシフェラーゼ遺伝子、β-ガラクトシダーゼ遺伝子、ハイグロマイシン耐性、ネオマイシン耐性、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、およびこれらの組合せからなる群から選択された遺伝子マーカーをコードするDNA配列を含む、請求項13に記載のトランスフェクト組成物。
  15. 核酸が、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、インターフェロン類(IFNs)、腫瘍壊死因子(TNF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、グルカゴン-様ペプチド(GLP-1)、凝固因子、腫瘍抑制遺伝子、チミジンキナーゼ、p53、p16、転写因子、およびこれらの組合せからなる群から選択されるタンパク質をコードするDNA配列を含む、請求項13に記載のトランスフェクト組成物。
  16. 核酸が、ウィルス抗原、細菌抗原、または腫瘍抗原をコードするDNA配列を含む、請求項13に記載のトランスフェクト組成物。
  17. 核酸が、siRNA、センスRNA、アンチセンスRNA、およびリボザイムからなる群から選択されるRNAである、請求項13に記載のトランスフェクト組成物。
  18. 細胞を請求項13に記載のトランスフェクト組成物と接触させる工程、そして組成物がその細胞に入ることができ、そして細胞中で核酸を発現することができる条件下にて、細胞をインキュベートする工程、を含む、細胞を形質転換する方法。
  19. 薬剤および直鎖ポリ(アルキレンイミン)(LPAI)と親水性リンカーとの生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマーを含み、前記LPAIブロックが生分解性エステル結合、アミド結合、ジスルフィド結合、リン酸結合、またはそれらの組合せを有する前記親水性リンカーにより架橋されている、組成物。
  20. 薬剤が、IL-2、IL-12、IFNs、TNF、インスリン、GLP-1、エクセンジン(excendin)、凝固因子、成長因子、細菌抗原、ウィルス抗原、腫瘍抗原、その他の低分子抗原、およびこれらの組合せからなる群から選択されるポリペプチドである、請求項19に記載の組成物。
  21. 薬剤が、アドリアマイシン、ブレオマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、タキソール、トポテカン、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択される抗癌剤である、請求項19に記載の組成物。
  22. 有効量の薬物および直鎖ポリ(アルキレンイミン)(LPAI)と親水性リンカーとの生分解性架橋カチオン性マルチブロックコポリマー〔ここで、LPAIブロックが、生分解性エステル結合、アミド結合、ジスルフィド結合、リン酸結合、またはこれらの組合せを有する親水性リンカーにより架橋される〕、を投与することを含む、温血動物に対して薬物を投与する方法。
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