JP2008510724A - 親和性クロマトグラフィーによるタンパク質の逐次的単離および精製スキーム - Google Patents

親和性クロマトグラフィーによるタンパク質の逐次的単離および精製スキーム Download PDF

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Abstract

本発明は、生物学的試料より、親和性クロマトグラフィーによってタンパク質を逐次的に単離および精製するための方法を開示する。親和性クロマトグラフィーは、生物学的試料中のタンパク質に対して選択的かつ特異的に結合するリガンドまたはリガンド担体複合体を用いて行う。リガンドまたはリガンド担体複合体は、予め定められた順序で生物学的試料と逐次的に接触して、各リガンドまたはリガンド担体複合体が生物学的試料に由来するタンパク質と逐次的に結合することを可能とする。

Description

本発明は、生物学的試料由来のタンパク質を単離するための方法に関する。特に、本発明は、生物学的試料より、高精製度のタンパク質を逐次的に回収するための方法に関する。
タンパク質の処理および開発は、必要とされる純度を達成するために、最小の工程数と最大の収量を伴う高効率の処理を必要とする。タンパク質の分離および精製プロセスは、種々のタンパク質、各タンパク質調製に伴い生じうる夾雑物および/または不純物の異なる性質、ならびに一般に、バイオ医薬の製造に必要とされる大量のタンパク質により特有の課題が存する。従来の精製技術は一般に、単一のタンパク質標的を単離することを目的とした一連の精製工程を含む。各工程に伴い、収量は減少し、製造コストは増大する。タンパク質の分離および精製コストは一般的に、全ての治療タンパク質の総製造コストの50%を超える。
親和性クロマトグラフィーは、薬物発見およびプロセス開発の中心において、最も重要な分離技術のうちの一つである。親和性工程が選択的であるほど、全事業の効率は大きくなるが、このことは、タンパク質の分画実験において決定的な要件である。親和性クロマトグラフィーは、多成分の流れからの、標的分子の精製、検出および除去において、いくつかの実用的な用途を見出した。親和性クロマトグラフィーは、標的分子とそれらが結合する物質(すなわち、リガンド)間の特異的な、三次元相互作用に基づく。リガンドは、実際にいずれかの標的分子に対して、特異的なおよび可逆的な様式で結合するために単離または製造されうる。潜在的なリガンドとしては、生物学的分子(例えば、タンパク質、抗体、ペプチドなど)および、とりわけ、設計または選択された合成リガンドを含む。数百万の潜在的リガンドからなるライブラリーは、コンビナトリアル合成技術を用いて製造でき、これらの多くは、当該分野にて周知である(例えば、非特許文献1を参照のこと)。試料からの標的分子の分離を促進するために、リガンドを、固体担体マトリックス(例えば、個々の粒子(例えば、クロマトグラフィー樹脂ビーズ)または連続的担体(例えば、アレイ))に固定できる。固体担体マトリックスに固定されたリガンドを用いて、複合溶液から標的を精製できる。
おそらく、スケールにおける、親和性クロマトグラフィーの最大の成功は、バイオ医薬のモノクローナル抗体の精製の分野で達成された。プロテインA樹脂に対する要求は、毎年10,000 Lを超え、一年につき50%増加し、2002年において5000万米国ドルを上回るプロテインA吸着剤市場を示す。免疫親和性クロマトグラフィーの使用によって、血漿由来および組換え凝固因子VIIIおよびIXならびに他の血漿タンパク質、また天然および組換供給源に由来するバイオ医薬の製造を可能とする。
しかしながら、下流の処理に用いるための現代の親和性クロマトグラフィーの最も有力な形態の1つは、天然供給源に由来するリガンド(抗体など)に依存しないが、高安定性の合成親和性リガンドの使用に依存する。例えば、非特許文献2を参照のこと。このアプローチは、市販の化合物を使用する代わりに、オーダーメイドまたは改造されたリガンドを使用する。
当該分野にて単離された血漿タンパク質のなかで、アルブミンおよびガンマグロブリンは特に、薬用目的で標的とされている。これらのタンパク質を血漿から単離するために一般的に用いられている方法は、E. J. Cohnおよび共同研究者らによって、1940年代に開発された冷エタノール沈殿法に基づいていた。非特許文献3を参照のこと。この方法は、高収率でアルブミンを製造するために元々開発されたものであり、製造されたタンパク質の多様なアレイを血漿より単離または精製するために設計されていなかった。特に、これらの技術による少量の血漿タンパク質成分の収量が、絶えず低いために、この技術は、全体的な分画総収量に関して、必然的に非効率的である。例えば、特許文献1を参照のこと。
血漿アルブミンの精製への親和性クロマトグラフィーの利用は、当該分野で公知である(非特許文献4を参照のこと)。血漿からタンパク質を分離したことについての最初の報告は、約30年前に記されており、血漿よりクロマトグラフィーによってヒト血漿アルブミン (HSA)を欠乏させ、低濃度タンパク質の同定および精製を可能とすることに関するものであった(非特許文献5)。この研究は、Procion Blue デキストラン-Sepharose(登録商標)結合体を用いて実施され、色素親和性クロマトグラフィーに伴う最初の問題、すなわち、溶出液への色素の漏出が見つかった。著者らは、血漿よりα1−アンチトリプシンを単離することに関心があり、そしていずれの非特異的イオン交換結合も最小である場合に、高イオン強度にて、このタンパク質をアルブミンより分離することは困難であることを記した。
様々な他のタンパク質を血漿より単離することも、報告されている。例えば、先行技術の方法は、血漿タンパク質因子VIIIおよびフィブロネクチン画分の単離および精製を記した。例えば、特許文献2、特許文献3および特許文献4を参照のこと。アンチトロンビン-IIIを単離および精製するための方法が、例えば、特許文献5に記載されている。プラスミノーゲンを単離および精製するための方法は、例えば、非特許文献6、特許文献6および特許文献7に開示されている。免疫グロブリンを単離および精製するための方法は、例えば、特許文献8および特許文献9に記載されている。ヘプタグロブリンを単離および精製するための方法は、例えば、特許文献10および特許文献11に記載されている。しかしながら、これらの方法は、複数のバイオ医薬剤を製造するのに用いられるタンパク質を同一の開始物質(例えば、ヒト血漿)より単離するために必要とされる特異性および選択性を欠く。
生物学的試料よりタンパク質を単離するための方法は、増大された特異的な活性および純度に関する、生成物の品質、また収率または回収率の面におけるいくつかの改善を与えるが、しばしば先行技術の方法に関連する、単離されたタンパク質の比活性の減少を最小限にしながら、高収率かつ高純度でタンパク質濃縮物を得るために、さらなる方法の改良が未だに必要とされている。このことは、複数のタンパク質標的が、共通の供給源より同時に単離される場合に、特に当てはまる。本発明は、予め決められた、および規定した順序で吸着プロセスを組み合わせることにより、生物学的材料(特に血漿)から様々なタンパク質を効率的に単離および精製するための、親和性クロマトグラフィー技術を用いる方法を提供することによって、上記のまた他の長期にわたる切実な要求を解決する。
米国特許第5,138,034号 米国特許第4,822,872号 米国特許第4,093,608号 米国特許第4,565,651号 米国特許第3,842,061号 米国特許第4,361,652号 米国特許第4,361,653号 米国特許第4,371,520号 米国特許第4,093,606号 米国特許第4,061,735号 米国特許第4,137,307号 Lamら、Nature:354, 82-84 (1991) Sprouleら、New Strategy for the Design of Ligands for the Purification of pharmaceutical proteins by affinity chromatography;J. Chromatography B, 740, 17-33 (2000) Cohnら、Preparation and Properties of Serum and Plasma Proteins. IV. A System for the Separation into Fractions of the Protein and Lipoprotein Components of Biological Tissues and Fluids;J. Am. Chem. Soc., 68, 459-475 (1946) Harvey MJ. In:Curling JM (編) Methods of Plasma Protein Fractionation. Academic Press London. pp 189-200 Travis, J.およびPannell, R. Behring Inst. Mitt. 54:30-32 (1974) Science:170, 1095 (1970)
本明細書中に開示また記載される発明は、生物学的試料よりタンパク質を逐次的に単離および精製するための方法を提供する。本方法は、(i)生物学的試料を用意すること、(ii)それぞれ生物学的試料に由来する標的タンパク質に選択的かつ特異的に結合する2またはそれ以上のリガンドを用意すること、ここで各リガンドが場合によって担体に結合され、2またはそれ以上のリガンド−担体複合体を形成する、(iii)逐次的に2もしくはそれ以上のリガンドまたはリガンド担体複合体を予め決めた順序で生物学的試料と接触させ、各リガンドまたはリガンド担体複合体が、接触前に前調整工程によって処理されていない生物学的試料に由来する標的タンパク質と逐次的に結合させること、(iV)2もしくはそれ以上のリガンドまたはリガンド担体複合体のそれぞれに対して結合した標的タンパク質を溶出すること、ならびに(V)生物学的試料より標的タンパク質を逐次的に単離すること、を含む。前調整工程は、様々なプロセス(例えば、アルコール沈殿、低温沈殿、脂質および/もしくは脂質タンパク質の除去、ユーグロブリン沈殿、またはそれらの組合せ)を含む。
1実施形態において、生物学的試料は、血漿であり、標的タンパク質は、フィブリノゲン (Fg)、α-1 プロテイナーゼインヒビター (A1PI)、アポリポプロテインA1 (ApoA1)、免疫グロブリン(IgG)、パラオキソナーゼ (PON)、凝固因子、Von Willebrand因子(vWF)、因子VIII (FVIII)、ヒト血漿アルブミン(HSA)、プラスミノーゲン (Pg)、またはそれらいずれかの組合せを含む。
別の実施形態において、生物学的試料は、in vitro発酵物もしくは細胞培養物またはトランスジェニック動物もしくは植物より抽出された組織もしくは体液を含み、そしてタンパク質は、組換えタンパク質である。
さらに別の実施形態において、パラオキソナーゼの活性は、タンパク質単離の間、生物学的試料において実質的に維持されている。
1実施形態において、vWF/FVIIIは、他のタンパク質よりも前に、または他のタンパク質の後に血漿より単離される。
別の実施形態において、アポリポプロテインA1は、他のタンパク質よりも後に血漿より単離される。
さらに別の実施形態において、アルブミンは、IgGよりも前に、またはIgGより後に、血漿より単離される。
別の実施形態において、プラスミノーゲンは、フィブリノゲンより前に血漿より単離される。
さらに別の実施形態において、予め定められた順序で2またはそれ以上のリガンドを生物学的試料と接触させることによって、次の順番でvWF/FVIII、Pg、Fg、ApoA1/ PON、IgG、HSA、およびA1PIの逐次的結合を生じる。
別の実施形態において、予め定められた順序で2またはそれ以上のリガンドと生物学的試料を接触させることによって、次の順番でvWF/FVIII、ApoA1/PON、Pg、Fg、IgG、HAS、およびA1PIの逐次的結合を生じる。
さらなる実施形態において、予め定められた順序で、2またはそれ以上のリガンドと生物学的試料とを接触させることによって、次の順番でvWF/FVIII、IgG、HAS、およびA1PIの逐次的結合を生じる。
本発明のリガンドは、ポリペプチドもしくは核酸主体の分子、抗体もしくは抗原結合断片、非ポリペプチドもしくはヌクレオチド主体の分子、炭水化物模倣体、ペプチド模倣体、小分子、無機物質、色素、炭水化物、脂質またはそれらの組合せを含む。
1実施形態において、リガンドは、約1〜約15アミノ酸を含むペプチドである。
別の実施形態において、リガンドおよび/またはリガンド担体複合体は、合成親和性リガンド(例えば、Mimetic Blue(登録商標)リガンド、MAbsorbent(登録商標)リガンド、ProMetic PBL 112-80、ProMetic PBL 112-81、ProMetic PBL 112-82およびProMetic PBL 112-83)を含む。
担体は、合成物質、天然物質またはその両方を含む。担体の例としては、アガロース、ポリアクリルアミド、デキストラン、セルロース、多糖類、ニトロセルロース、シリカ、アルミナ、酸化アルミニウム、チタニア、酸化チタン、ジルコニア、スチレン、ポリビニルジフルオライドナイロン、スチレンおよびジビニルベンゼンのコポリマー、ポリメタクリル酸エステル、ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリル系、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、誘導体化アズラクトンポリマーまたはコポリマー、ガラス、セルロース、アガロース、上記物質のいずれかの誘導体、ならびに上記物質のいずれかの組合せ、を含む。
好ましい実施形態において、担体は、多糖類または樹脂ビーズである。
別の態様において、本発明は、本発明の逐次的なタンパク質単離によって製造された実質的に純粋な血漿タンパク質を含む製剤を提供する。
1実施形態において、血漿は、少なくとも70%の純度で実質的に精製される。
別の実施形態において、製剤は、実質的に精製され、免疫吸着によって生じる不純物が無く、少なくとも1つの病原体不活性化工程にかけられる。
さらに別の実施形態において、生物学的試料は、該生物学的試料中の1または複数の標的物質の濃度および活性をさらに保存するために、接触工程の前に緩衝剤によって処理する。
別の態様において、製剤は、医薬組成物として製剤化される。
本発明の上記および他の態様および実施形態は、本明細書中に詳細に開示される。
生物学的試料に由来するタンパク質を効率的に単離および精製するための方法が、本明細書中に開示される。特に、本発明は、親和性クロマトグラフィーを使用して、血漿より逐次的にタンパク質を精製するための方法を開示する。本発明の逐次的にタンパク質を精製する方法は、2またはそれ以上のリガンドを使用し、各リガンドは、場合によって担体に結合され、リガンド−担体複合体を形成する。各リガンドまたはリガンド担体複合体は、予め定められた順序で、標的血漿タンパク質に選択的かつ特異的に結合し、各リガンドまたはリガンド担体複合体が、血漿由来の標的タンパク質に逐次的に結合することを可能とする。
本発明のタンパク質を逐次的に単離および精製するための方法は、高特異的であり、先行技術で従来用いられていたように、リガンドと接触させる前に、血漿を予め特に調整する必要がない。このような前調整工程には、緩衝化または一般的な濾過は含まない。本発明の範囲に含まれる前調整工程としては、例えば、アルコール沈殿、低温沈殿、脂質および/もしくは脂質タンパク質の除去、ユーグロブリン沈殿、またはそれらの組合せなどの方法およびプロセスが含まれる。上記前調整工程は、請求した発明から特に除外されることが、本明細書中で意図される。本発明の血漿タンパク質の精製方法は、バイオ医薬の製造において非常に有用であり、それは実質的に純粋かつ高活性の血漿タンパク質を効率的かつ迅速に製造できるためである。本発明の方法はまた、種々の他の用途(異常の予後、診断および/または検出を含む)にも有用である。
1. 定義
本用途に用いられる定義は、例示を目的としたものであって、本発明の範囲を限定しない。
本明細書中に用いられる場合、「試料」とは、本発明の方法によって単離および精製できる標的タンパク質を含む任意の試料を含む。試料は、標的タンパク質を潜在的に含む任意の供給源より得ることができる。このような供給源としては、動物、植物、土壌、大気、水、菌類、細菌およびウイルスなどを含む。動物性試料は、例えば、組織生検、血液、髪、頬腔内の掻爬物(buccal scrape)、血漿、血清、皮膚、腹水、複数の浸出物、胸腔穿刺液、髄液、リンパ液、骨髄、呼吸器内液、腸内液、生殖器内液、便、尿、痰、涙、唾液、腫瘍、器官、組織、in vitro 細胞培養構成物の試料、胎児の細胞、胎盤細胞または羊水の細胞および/もしくは液体などから得られる。
本明細書中で用いられる場合、「細胞培養物」とは、原核細胞または真核細胞の培養物、例えば、細菌、酵母および他の微生物学的細胞培養物、哺乳動物細胞培養物、植物細胞培養物、および昆虫細胞培養物、発酵ブロスならびに、バイオ医薬および治療剤の製造および送達に用いられる他の細胞培養物が含まれる。
本明細書中で用いられる場合、「血漿」とは、液体の血液成分を指し、血漿誘導体、および血漿含有組成物を含む。
本明細書中で用いられる場合、「結合(attachment)」は、本発明の範囲内で広く定義され、2つの物質間の物理的、化学的、または生物学的結合プロセスの任意の型を含み、例えば、限定はしないが、吸収、吸着、共有結合、イオン交換、疎水性、水素結合、双極子、四極子または親和性相互作用、電荷種の形成、親和性リガンドの結合(例えば、ペプチド、オリゴヌクレオチド、タンパク質、スペーサーアーム、疎水性部分およびフッ化物質を含む)などを含む。
本明細書中で用いられる場合、「リガンド」とは、本発明の範囲内で広く定義され、標的タンパク質に結合する化学的または生物学的物質を含む。リガンドは、化合物、分子、細胞および細胞構成物であり、標的タンパク質に結合し、また天然または合成により製造された物質より単離できる。リガンドは、原核生物または真核生物について、内在性または外因性のものでありうる。リガンドとしては、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣体、小分子、色素、トリアジン含有化合物、抗体もしくは抗原結合断片、核酸主体の分子、非ポリペプチドもしくはヌクレオチド主体の分子、炭水化物、炭水化物模倣体、脂質、無機物質、インヒビター、基質またはそれらの任意の組合せを含む。
本明細書中で用いられる場合、「実質的に精製された」または「実質的に存在しない」とは、その天然の環境から取り出され、単離または分離され、それらが天然に関連する他の成分が少なくとも約70%取り除かれ、好ましくは約85%取り除かれ、より好ましくは約95%、最も好ましくは約99%またはそれ以上取り除かれたタンパク質を指す。
本明細書中で用いられる場合、「ポリペプチド主体の分子」とは、任意のタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチド断片、天然のペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの変異体、改変ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質、アゴニスト、アンタゴニストおよび抗体などを含む。
本明細書中で用いられる場合、「小分子」とは、限定はしないが、炭水化物、炭水化物模倣体、ペプチド模倣体、1モルあたり約10,000グラム未満の分子量を有する有機化合物もしくは無機化合物(すなわち、ヘテロ有機化合物および有機金属化合物を含む)、1モルあたり約5,000グラム未満の分子量を有する有機化合物または無機化合物、1モルあたり約1,000グラム未満の分子量を有する有機化合物または無機化合物、1モルあたり約500グラム未満の分子量を有する有機化合物または無機化合物、および塩、エステル、ならびに上記化合物の他の化学的に受容可能な形態を含む。
本明細書中で用いられる場合、用語「病原体」とは、生物学的試料(例えば、血液試料)において見出すことができ、生物体に感染する複製可能な因子を意味することが意図される。このような病原体としては、一般的に、全血または血液成分中にて見出されるか、または全血または血液成分に感染することが当業者に公知である様々なウイルス、細菌、原生動物および寄生虫、ならびに未知の他の病原性汚染物が含まれる。このような病原体の例示としては、限定はしないが、細菌(例えば、ストレプトコッカス種、エシェリキア種およびバチルス種)、ウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルスおよび他のレトロウイルス、ヘルペスウイルス、パラミクソウイルス、サイトメガロウイルス、肝炎ウイルス(A型肝炎、B型肝炎およびC型肝炎を含む)、ポックスウイルスおよびトガウイルス)ならびに寄生虫(例えば、プラスモジウム種を含むマラリア寄生虫およびトリパノソーマ寄生虫)を含む。
本明細書中で用いられる場合、タンパク質精製の分野で用いられる他の用語は、一般的に当業者に理解されるであろう。
1実施形態において、本発明は、血漿より特定の血漿タンパク質を抽出するための方法を提供する。これらの方法は、クロマトグラフィー樹脂を用いて、特異的な2またはそれ以上の血漿タンパク質に選択的かつ特異的なリガンドをこのクロマトグラフィー樹脂に結合させる。当該樹脂を、血漿と接触させ、この接触によって、リガンドと標的タンパク質の選択的な結合を生じる。次に、標的タンパク質を、高収率および高純度で溶出できる。本発明方法に従って、血漿を、様々な成分血漿タンパク質に効率的に分画できる。特定の血漿タンパク質の抽出、および続く単離についての好ましい順番は、本明細書中に開示される。
本発明の範囲に含まれる血漿タンパク質としては、血漿中に生じる10,000以上の様々なタンパク質のいずれか、もしくは全てを含む(例えば、限定はしないが、ブチリルコリンエステラーゼ(BChE)、血液凝固因子(例えば、フィブリノゲン、因子II、因子V、因子VII、因子VIII、因子IX、因子X、因子XIおよび因子XII)、フィブロネクチン、プロトロンビン、タンパク質C、プラスミノーゲン、アンチトロンビン−III、ハプトグロビン、トランスフェリン、アルブミン、α1 プロテイナーゼインヒビター、アポリポプロテインA1 (Apo-A1リポプロテインとしても知られる)、免疫グロブリン、パラオキソナーゼ、Von Willebrand因子(vWF)、これらは全て、非疾患状態にある生物の血漿中に生来見出される)。
あるいは、本発明の範囲内に含まれる血漿タンパク質は、疾患状態にある血漿中に存在し、健全な被験体の血漿中には、存在しても、しなくても良い。また、剤、例えば、薬物を投与することによって、血漿中に存在する血漿タンパク質も本発明の範囲内に含まれる。この点に関して、当該血漿タンパク質は、感染性PrPscプリオンタンパク質でありうる。
1. リガンド
本発明のタンパク質精製方法は、担体系に結合されている2またはそれ以上のリガンドを利用する。リガンドは、1または複数の官能基を含み、分離される生体分子上の基に対応して、イオン結合、疎水性結合、水素結合またはファンデルワールス相互作用を与えることができる。本発明方法に好適なリガンドとしては、合成化学化合物を含み、当該化合物は、例えば、直接的な合成、または多様なライブラリー(例えば、ランダムまたはコンビナトリアルペプチドまたは非ペプチドライブラリー)によって製造する。当該分野で公知である他のライブラリーとしては、化学合成ライブラリー、組換えライブラリー(例えば、ファージディスプレイライブラリー)、およびin vitro翻訳ベースのライブラリーを含む。ライブラリーは、本発明の標的タンパク質に特異的に結合する分子についてスクリーニングできる。
化学的に合成されたライブラリーの例は、例えば、Fodorら、Science 251:767-773 (1991);Houghtenら、Nature 354:84-86 (1991);BrennerおよびLemer, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5381-5383 (1992)、ならびに米国特許第6,117,996号などに記載される。ファージディスプレイライブラリーの例は、例えば、ScottおよびSmith, Science 249:386-390 (1990);Devlinら、Science 249:404-406 (1990)、ならびにChristianら、J. Mol. Biol. 227:711-718 (1992)などに記載される。In vitro翻訳ベースのライブラリーは、例えば、Mattheakisら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:9022-9026 (1994)などに記載される。
1実施形態において、本発明のリガンドは、約3〜約5、8、10、15もしくは30またはそれ以上のアミノ酸から実質的に成るペプチドである。アミノ酸は、Dアミノ酸および/またはLアミノ酸である。ペプチドは、任意のペプチドライブラリー(ランダムペプチドライブラリー、コンビナトリアルペプチドライブラリーまたは偏性(biased)ペプチドライブラリーを含む)より適宜選択できる。本明細書において「偏性」という用語は、ライブラリー作製方法が、得られる分子コレクションの多様性を支配する1または複数のパラメーターを限定するように操作されることを意味する。
ペプチドライブラリーにおいて、様々な配列の別々のペプチドの数は、実施されるカップリング反応の数、ペプチドの大きさ、および用いた別個のアミノ酸の数に伴い、劇的に増大する。例えば、19アミノ酸のペンタペプチドへのランダムな取り込みによって、2,476,099 (195)種に及ぶ異なる配列の個々のペプチドを生じる(Lamら、前出)。コンビナトリアル法によって、担体上にリガンドのライブラリーを直接的に作製することが可能である。一般に、リガンドは、担体の粒子上に合成し、その結果、単一リガンドの複数のコピーが、各粒子(例えば、ビーズ)上に合成されるが、このことは本発明との関連において必要とされない。
用いることができるライブラリーの他の例は、ペプチドのアミド官能性が、過メチル化され、化学的に変換されたコンビナトリアルライブラリーが作製されており、これはOstreshらによって、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11138-11142 (1994)に記載される。
非ペプチドライブラリーは、大きく2種類に分類することができ、それは装飾(decorated)モノマーおよびオリゴマーである。装飾モノマーライブラリーは、比較的単純な構造を使用し、かかる構造上に種々の官能基が付加されている。しばしばこの構造は、既知の有用な薬理活性を有する分子でありうる。例えば、この構造は、ベンゾジアゼピン構造でありうる。
非ペプチドオリゴマーライブラリーは、多数のモノマーを利用し、かかるモノマーは、モノマーの順序によって決まる新しい形状をつくるように一緒に集められている。その中で、用いられているモノマー単位は、カルバミン酸、ピロリノンおよびモルフォリノである。その側鎖がα炭素よりもαアミノ基に結合しているペプトイドおよびペプチド様オリゴマーは、別の型の非ペプチドオリゴマーライブラリーのベースを形成する。最初の非ペプチドオリゴマーライブラリーは、単一の種類のモノマーを利用し、そのために反復型の骨格を含んでいた。最近のライブラリーは、1種以上のモノマーが利用されており、柔軟性が加えられたライブラリーを生じる。
本発明に有用である他の非ペプチドライブラリーは、例えば、EckerおよびCrooke, Bio/Technology 13:351-360 (1995)に記載されるライブラリーである。これらのライブラリーは、例えば、ベンゾジアゼピンなどの化合物を使用し(例えば、Buninら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:4708-4712 (1994)を参照のこと)、用途に適合させることができる。さらに、ペプトイドライブラリー(例えば、Simonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:9367-9371 (1992))もまた、使用できる。ペプチドライブラリーに用いられる他の化合物としては、ヒダントイン、ピペラジンジオン、ビフェニル、糖類似体、β−メルカプトケトン、アリール酢酸、アシルピペリジン、ベンゾピラン、キュバン、キサンチン、アミンイミドおよびオキサゾロンなどを含む。
ライブラリーのスクリーニングは、種々の一般に既知の方法によって達成できる。例えば、ペプチドライブラリーのスクリーニングについて開示する以下の参考文献を参照のこと:ParmleyおよびSmith, Adv. Exp. Med. Biol. 251:215-218 (1989);ScottおよびSmith, 同上;Fowlkesら、BioTechniques 13:422-427 (1992);Oldenburgら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5393-5397 (1992);ならびにYuら、Cell 76:933-945 (1994)など。標的タンパク質に結合する分子を同定するためのスクリーニングはまた、ライブラリーのメンバーを固相に固定されている標的タンパク質と接触させ、そして目的のタンパク質に結合するライブラリーのメンバーを回収することによって、実施することができる。「パニング」技術と呼ばれる、このようなスクリーニング方法の例は、Fowlkesら、(同上)に例示される方法によって説明される。
好ましくは、本発明のリガンドは、モデリングおよびコンビナトリアル化学によって設計され、合成/バイオミメティック(biomimetic)リガンドを含み、対照的または非対照的、単一または分枝状の分子でありうる。リガンドは好ましくは、アルカリ耐性であり、通常のアルカリ再生および衛生化方法に耐える。本発明のリガンドは、漏出が非常に少なく、安全であり、かつ標的タンパク質に対する高結合能および特異性を有する。
本発明の範囲内で用いられる好ましいリガンドまたはリガンドおよび担体系としては、例示であり限定はしないが、Mimetic Blue(登録商標)リガンド(HASカラム用)、樹脂は、Mimetic Blue(登録商標)SAHL P6XLと名付けられている;MAbsorbent (登録商標)リガンド(IgG結合用)、MAbsorbent(登録商標) A2Pと名付けられている吸着剤; A1PI用のProMetic PBL 112-80吸着剤;フィブリノゲン用のProMetic PBL 112-81吸着剤;プラスミノゲン用のProMetic PBL 112-82吸着剤;vWF/FactorVIII用のProMetic PBL 112-83吸着剤;ECH-Lys-Sepharose FF. Lot# 243526;SAHL P6XL Resin;ならびにARQFDF (配列番号1)を含むペプチドリガンド樹脂、を含む。前述の吸着剤は、担体マトリックスとしてPurabead 6XL (架橋アガロース)を使用する。Purabead 6または6XL 担体マトリックスは、その上にある上記タンパク質を吸収しない。
2. 担体
本発明方法の1実施形態において、リガンドは、担体に結合している。本明細書中で用いられる場合「担体」という用語は、任意の担体マトリックス(例えば、当業者に公知である固体担体など)を指し、これはリガンドを固定するためのものである。担体または担体マトリックスは、固体または液体、多孔性または非多孔性、二次元または三次元であり、これに対してリガンドを結合でき、また当該マトリックスは、接触溶液中の溶質とリガンドとを分離するための従来方法を与える。好ましくは、担体は、リガンド結合後に不活性となるために、標的との共有結合性反応が最小化する。
リガンドを担体にカップリングするためのスペーサーアームの使用も、本発明の範囲内に含む。スペーサーアームは、種々の様々な形状をとることができ、限定はしないが、ポリエチレングリコールなどのヒドロキシル化物質、酸化ポリエチレン、直鎖または分枝状アルカン、ジアミン、グリコール、芳香環および炭水化物、またはそれらの組合せなどを含む。
1実施形態において、担体マトリックスは、標的物質の吸着または吸収が可能である多孔性粒子を含む。粒子は場合によって、1または複数の物質によってコーティングされ、担体マトリックスの表面特性を改質する。このコーティングに用いる物質は、有機液または水性液中にて非膨張性または膨張性であり、実質的に、水または液体中にて不溶性である。
本発明の逐次的なタンパク質精製スキームに用いられる好ましい担体マトリックスは、多孔性粒子である。吸着分離用の多孔性粒子は、シリカ、ガラス、セルロース、アガロース、および種々の様々なポリマー(ポリスチレンポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、アガロース、ハイドロゲル、アクリル系樹脂および電気泳動に用いられる他の種類のゲルを含む)を含む、種々の様々な物質が利用可能である。シリカ、ガラスおよびポリマーなど、多くの多孔性吸着粒子は、乾燥でき、乾燥粒子1gあたり約1−2 m2〜300 m2以上の表面積を有する相互連絡性の孔を有する。粒子の1つの型は、架橋ハイドロゲルである。
特に好ましい担体マトリックスは、アガロースおよびポリヒドロキシル化メタクリレート樹脂である。様々なビーズ状アガロースゲルおよびポリマー樹脂が市販されている。これらの担体は、リガンドが予め結合している状態で購入でき、あるいは、このリガンドは、標準的な方法を用いて、担体上に間接的に結合されているか、または直接的に固定されうる。例えば、HarlowおよびLane, Antibodies, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1988);Biancalaら、Letters in Peptide Science, 7(291), 297(2000);MacBeathら、Science, 289, 1760-1763 (2000);Cassら(編)、Proceedings of the Thirteenth American Peptide Symposium. Leiden, Escom, 975-979 (1994);米国特許第5,576,220号;Cookら、Tetrahedron Letters;35, 6777-6780 (1994);ならびにFodorら(前出)を参照のこと。1実施形態において、リガンドは、担体の表面上で合成され、これはペプチドライブラリーの作製において都合がよい。リガンドは、担体に化学的に結合でき、またはリンカー(例えば、ストレプトアビジン、βアラニン、グリシン、グリシン−セリン含有ポリマー、式--(CH2)で表される単鎖炭化水素、ポリエチレングリコール、εアミノカプロン酸、および--O(CH2)n(nは1〜30である)を含むリンカー)を介して結合できる。
3. 標的タンパク質の結合および溶出
標的タンパク質または標的生体分子のリガンドまたはリガンド−担体複合体に対する結合は通常、リガンドまたはリガンド−担体複合体と標的を含有する水溶液との接触によって実施する。これは、種々の方法で達成できる(リガンド−担体複合体の充填床もしくはカラムに標的含有溶液を通すこと、または撹拌槽もしくはスラリーにおけるバッチ吸着を含むが、これらに限定しない)。好ましくは、標的タンパク質は、流速を制御するためにポンプを用いて、水溶液をクロマトグラフィーカラムに通すことによって捕捉される。理想的には、タンパク質標的の結合は、溶液を前調整する必要がなく、標的含有溶液をリガンド−担体複合体に直接アプライするような方法で行うべきである。しかし、結合に必要とされる場合、標的含有溶液の特性を、例えば、希釈、pH、イオン強度または極性の変更、温度変化、および溶解剤(緩衝塩、無機塩、有機塩、キレート化化合物、チオール、洗剤(detergent)、界面活性剤(surfactant)、有機溶媒、アルコール、グリコール、カオトロピック剤、金属イオンまたはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない)を添加することによって、調整できる。
リガンドまたはリガンド−担体複合体より標的タンパク質を回収するために、リガンドまたはリガンド担体複合体を、溶液(例えば、「トランスファー溶液」または「溶出緩衝液」)と接触させることができ、これによって、リガンドまたはリガンド−担体複合体からの標的タンパク質の解離を促進する。トランスファー溶液は、様々な塩濃度、pH、または変性能の緩衝液、有機溶媒、極性改変剤(例えば、アルコールおよび脱イオン化水)より選択できる。あるいは、またはさらに、電気勾配または温度変化によって、タンパク質-リガンド−担体複合体より標的タンパク質を解離できる。トランスファー溶液はまた、リガンド(タンパク質-リガンド−担体複合体のリガンドとは異なる)、標的タンパク質の補因子、エナンチオマー特異的分子などを含むことができる。様々なトランスファー溶液を用いることによって、溶出条件の検討または特異的な標的タンパク質のトランスファーが可能となる。本発明方法に用いられる解離およびトランスファーの条件は、リガンドおよび標的タンパク質の崩壊が最小となるように選択する。言い換えれば、溶出およびトランスファー条件は、所望されない限り、担体からリガンドを放出したり、標的タンパク質を変性させたりすべきではない。
1実施形態において、標的タンパク質は、溶出前に、タンパク質-リガンド担体上に検出および同定される。タンパク質-リガンド担体上での標的タンパク質の検出および同定は、結合アッセイを行うことを含むことができる。結合アッセイは一般に、タンパク質-リガンド担体と基質に結合することが知られている部分とを接触させることを含む。結合アッセイに用いるための結合部分は、例えば、抗体もしくはその抗原結合断片、タンパク質またはオリゴヌクレオチドを含む。好ましくは、タンパク質-リガンド担体を、標的タンパク質 (または標的タンパク質もしくはその断片の化学的もしくは生物学的副産物)に結合する抗体またはその抗原結合断片と接触させる。結合部分は好ましくは、検出可能なタグ(例えば、放射性同位体、発色団または蛍光タグ)で標識されている。このような結合アッセイにおいて、検出可能なタグによって放射されるシグナルを検出し、それによって、標的タンパク質の存在を示す。タンパク質-リガンド担体上の標的タンパク質の存在が明らかとなれば、そのタンパク質を単離できる。
標的を検出するための結合アッセイはさらに、例えば、HarlowおよびLane, 前出;Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual,第2版, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989);ならびにHaugland, Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (第9版), Molecular Probes, Eugene, OR (2002)に記載される。場合によって、本発明方法はさらに、検出前に、過剰量の未結合の結合部分またはマーカーを除去するために洗浄工程を含むことができる。
あるいは、本発明方法は、生物学的活性に基づいて標的タンパク質を特徴付けるための酵素活性アッセイを行うことを含むことができる。酵素基質を、タンパク質-リガンド担体に加え、標的タンパク質による基質の酵素的改変が行われ、生成物を生じる。次に、この生成物を検出し、それによって、試料中における標的タンパク質の存在を同定する。
標的タンパク質の結合および溶出は、任意の好適な方法によって測定することが可能であり、多数のその方法の存在、ならびにその実行および特定の目的に対する適合性は、当業者に公知である。
4. 使用方法
本明細書中に記載される本発明は、生物学的試料よりタンパク質を逐次的に単離するための方法を提供し、かかる方法は、高活性であり、かつ実質的に精製されたタンパク質を生じる。本発明方法は、高感度であり、少量の標的タンパク質であっても試料より分離することができる。逐次的にタンパク質を精製するための本発明方法は、予後、診断、検出、精製、分離、発現されたin vitro遺伝子産物のプロセシングおよびバイオ医薬の製造を含む種々の用途において有用である。本発明の精製および抽出技術は、精製工程の数を減らし、収率を改善し、純度を高め、および従来方法における制限を克服することによって、従来の精製技術を上回る有利な点を与える。
特に、本発明方法は、タンパク質精製プロセスを最適化し、効率および純度を高めることによって、バイオ医薬の製造プロセスを改善する。バイオ医薬とは、タンパク質、ペプチドまたは他の複合ポリヌクレオチドもしくはタンパク質主体の巨大分子(総称して「遺伝子産物」)を含む薬剤である。それらの製造プロセスは、その宿主(host)のバイオマス(例えば、血漿)または非ヒト生物学的供給源(例えば、組換えもしくは非組換え細胞培養物、トランスジェニック動物の乳汁または他の組換えもしくは非組換え供給源)より所望される遺伝子産物を回収することを含む。バイオマスからの所望のタンパク質の収率を商業的に実行可能なほど改善する試みがなされており、それは、得られたタンパク質が、望んでいない宿主のタンパク質、核酸分子および他の天然の化学物質を含むためである。
1実施形態において、本発明方法は、全血、赤血球細胞濃縮物、血小板濃縮物、血漿、血漿誘導体、白血球、白血球除去血液、哺乳動物の細胞培養物、発酵ブロスおよびバイオ医薬および治療剤の製造および送達に用いられる他の培地よりタンパク質を単離するために用いる。
好ましい実施形態において、本発明方法は、高活性の血漿タンパク質を血漿試料より逐次的に単離する。治療剤および/または医薬品の製造を目的とした血漿処理産業における動向に由来する本発明方法によって、試料より同時にかつ迅速に複数のタンパク質を分離することができる。血漿タンパク質の単離される順序の一例を、以下の表1に開示する。
Figure 2008510724
単離された血漿タンパク質は、約70%、好ましくは約85%、より好ましくは約95%、および最も好ましくは約99%以上の純度で「実質的に精製されている」。本明細書中において、このような特定の精製値の記載によって、記載された値がまた、記載された値の間にある全ての特定の整数値を含むことを意図する。例えば、約85%とは、その実質的な精製についてそれぞれ特定の程度が実際に述べられていない限り、80%、81%、82%、83%および84%を含むことも意図する。
本明細書中に記載される方法および用途に対する他の好適な改変および適合が、当業者に公知である情報の観点から、本明細書中に含まれる発明の詳細な説明より容易に明らかとなり、また本発明の範囲またはその実施形態から離れることなくなされうることは、当業者に理解される。本明細書中に詳細に本発明が記載されているために、当業者は、以下の実施例を参照することによってより明確に理解するであろう。本明細書中に含まれる当該実施例は、例示のみを目的とし、本発明を限定することを意図しない。
実施例1:直線的カスケード順番シナリオ1〜7の定義
直線的なカスケードは、5つの親和性クロマトグラフィーカラム、すなわち、アルブミン (HSA)、フィブリノゲン (Fg)、IgG、プラスミノーゲン (Pg)およびPON1/ApoA1より構成した。まず、これらのカラムを、4種の異なる順序で連続的にランし、直線的なカスケードについて最適な順序を決定した。処理中の試料分析を単純化するために、希釈していないフロースルー(すなわち、素通り)のみを、順番に次のカラムへのロード(load)として回収した。特に、これによって、バックグラウンドのタンパク質の濃度が実験を通して一定となるように促した。また、各カラムにおける出力対入力の比較も単純化した。ロードした試料および各フロースルーをアッセイし、フロースルー中の標的タンパク質および非標的タンパク質の回収率を調べた。これらの値を用いて各カラムをモニターし、その下流の標的タンパク質を最小となるように保持しながら標的タンパク質を捕捉する能力を決定した。この基準に最も当てはまる順番を、線形カスケードの順番(LCS)として用いた。最初のランより分析データを得たら、3つのさらなる順序を試験し、そしてA1PI カラムを、シナリオ6および7に加えた。
<材料および装置>
以下の樹脂を、Pharmacia XK 50 カラム(20または30 m 長)に充填したカスケードに用いた。
プラスミノーゲン カラム:Pharmacia ECH-Lys-Sepharose FF. Lot# 243526
フィブリノゲン カラム:ProMetic Purabead, (連結した2つのカラム) Lot#CG1251およびLot#CG1252
IgG カラム:ProMetic MAbsorbent A2P, Lot#FA0582-Z
HSA カラム:ProMetic Mimetic Blue SAHL P6XL Batch # FA0500Z
PON1/ApoA1 カラム:Peptide International, Toyopearl WWLHAN Lot#217772
A1PI カラム:ProMetic 12/330 P6XL Resin Batch # CG 1255
全てのクロマトグラフィーは、950フラクションコレクター (Amersham Biosciences)を備えたAKTA Explorer 100 クロマトグラフィー系を使用して実施した。限外濾過 (UF) / ダイアフィルトレーション (DF)を、2枚の200cm2 Hydrosart 酢酸セルロースメンブレン (10 kD 分子量カットオフ)を用いたSartorius Sartocon Slice 200 Ultrafiltration Systemによって実施した。
<方法>
各ランについて、第1カラムのロードは、0.2μmに対して濾過したプールしたヒト血漿 + 50 mM Tris(pH 7.5)であった。各カラムのフロースルーを分画して集め、クロマトグラムのUV吸光度 (A280)プロフィールに基づいてプールした。このプールを、次の順番のカラムへのロード物質として用いた。次のカラムが、翌日にランされる場合、フロースルーは、濾過滅菌し(0.2μm真空フィルター)、室温で保管した。シナリオ6 および7において、UF/DFを用いて、量を減らし、そして以下の表2に示したように、プールしたフロースルーに緩衝液を交換した。これは、A1PIロード物質を、A1PI カラムランニング緩衝液(15mM リン酸ナトリウム, pH 6.1)に移すのに必要とした。
Figure 2008510724
<結果>
工程収率の表およびグラフを、各シナリオについて以下に示す。N/Aとは、データが得られなかったことを意味する。<LODとは、タンパク質のレベルが、特定のアッセイの検出限界よりも低かったことを示す。
Figure 2008510724
表3は、シナリオ#1の結果の概要を示す。
Figure 2008510724
表4は、シナリオ#2の結果の概要を示す。
Figure 2008510724
表5は、シナリオ#3の結果の概要を示す。
Figure 2008510724
表6は、シナリオ#4の結果の概要を示す。
Figure 2008510724
表7は、シナリオ#5の結果の概要を示す。
Figure 2008510724
表8は、シナリオ#6の結果の概要を示す。
Figure 2008510724
表9は、シナリオ#7の結果の概要を示す。
<結論>
シナリオ #1に先行するランにおいて(シナリオ #1の順番と同じ)、開始物質は、何ら緩衝化系が加えられていない濾過した血漿であった。この血漿がカラムへとロードされた場合、フロースルーのpHにかなりのスパイクを生じた。この観察によって、第1カラムへロードされる前に、終濃度が50mM Trisとなるように1M Tris緩衝液(pH 7.5)を血漿に加えた。緩衝液選択プロセスの概説については、以下の実施例3を参照のこと。上記7つのシナリオは、血漿タンパク質を精製するのに有効なプロセスとして、親和性カラムの直線的なカスケードをランすることについての実行可能性を示した。データを分析して、順番を以下の観察に基づいて選択した。シナリオ 1において、下流標的タンパク質の回収率は、ランを通してかなり高いままであった。シナリオ 2において、IgG カラムは、プラスミノーゲン、フィブリノゲンおよびApoA1の供給流についてほぼ全体的に減少した。さらに、シナリオ 3においては、IgG カラムは、ApoA1を捕捉した。この観察に基づいて、PON1、PgおよびFg カラムを、順番においてIgG カラムの前に配置しなければならないことを決定した。
上記実験に従って、直線的なカスケードにおけるクロマトグラフィー工程の順序を決定するに際して、以下の点を考慮した:
・PON1、PgおよびFgの捕捉工程は、IgGの前に配置しなければならない。
・アルブミンおよびクエン酸は、A1PI クロマトグラフィーと干渉するため、A1PI カラムは、アルブミンカラムの後に配置しなければならない。このフロースルーは、緩衝液交換のためのUF/DFプロセス工程を、A1PI カラムの前に必要とする。
・IgGは、アルブミンの前に配置し、IgGの損失を回避すべきである。
従って、本実験における直線的なカスケードの順序は、
PON1/ApoA1→ プラスミノーゲン → フィブリノゲン → IgG → HSA → UF/DF → A1PIとなるように選択した。
別の実験において、PON1/ApoA1 カラムが、現行のカスケードの順序より取り除かれ、樹脂が利用できる場合、vWF/FVIIIが、プラスミノーゲンの前に挿入されたことに留意すべきである。
実施例2:血漿タンパク質の親和性捕捉
以下のカラムの順序を、本実験に用いた:
vWF/FVIII → プラスミノーゲン → フィブリノゲン → IgG → UF/DF → HSA→ UF/DF。
血漿の調製:4 Lの冷凍しプールした血漿を、-20℃の保管庫より得た。この血漿プールを、水浴中で37.0℃ ± 2℃にて解凍した。血漿が解凍したら、すぐに水浴から取り出した。血漿を、50倍希釈の1M Tris(pH 7.5)および40倍希釈の2M NaClを用いて20mM Tris, 50mM NaClに調整した。血漿を十分に混合し、SartoPure 300 PP2 (8μm) 滅菌フィルターを用いて濾過した。
a. von Willebrand因子/VIII因子 (vWF/FVIII)親和性捕捉
vWF/FVIII 親和性キャプチャーを捕捉するために開発された、アフィニティー吸着剤410 mLを含む、7 cm×10.6 cmの充填床カラムを調製した。このカラムは一般に、長期間使用しない場合には、0.1 N NaOHを含有する保管溶液中に維持した。事前に保管したカラムを、流速80 cm/hrにて、3 CVのMilli Q水を用いて、伝導率が1mS/cmを下回るまで洗浄した。カラムを、4 CVの平衡化(EQ)緩衝液(20mM Tris, 20mM クエン酸, 140mM NaClから成る(pH 7.5))を用いて平衡化した。濾過した血漿を、カラムにアプライした。280nm における吸光度が、吸光度単位フルスケール(AUFS=2)の5%に達した時、フロースルーの流出液を、回収した。
吸光度がAUFSの5% に下がるまで、カラム流出液の回収を継続しながら、カラムを、4CVのEQ緩衝液を用いて洗浄した。この溶液を完全に、しかし穏やかに混合し、次に、3/0.8um SartoClean CA (H8)、続いて0.45/0.22um Sartobran P (H8)フィルターを通して濾過した。フィルターを500mLのEQ緩衝液を用いて洗浄した。濾液を合わせて、穏やかに混合した。この濾過した溶液は、vWF/FVIII捕捉工程のフロースルー画分を構成した(vWF/FVIII-FT(フロースルー))。vWF/FVIII を、4 CVの溶出緩衝液(20mM Tris, 500mM NaCl, 3mM CaCl2, 0.01% Polysorbate 80, 30% エチレングリコールから成る(pH 6.5))を用いて溶出した。カラム流速は、30cm/hrに設定した。溶出液の回収は、% UVが、2% AUFSまで増加したときに開始した。溶出液を、吸光度がAUFSの2%に下がるまで、継続して回収した。このカラム溶出液を穏やかに混合し、さらなる処理の用意ができるまで−80℃にて保管した。樹脂を、CIP-1 溶液(0.5N NaOH/ 1% Triton X100からなる)を用いて再生した。およそ3 CVのCIP-1 溶液を、減速した流速5mL/分にて「上方向への流れ」で、カラムにアプライした。次に、樹脂を2 CVのCIP-2 溶液(0.5N NaOH中30% イソプロパノールからなる)を用いて、5 mL/分にて洗浄した。樹脂を、次に使用するまで、3 CVの保管溶液を用いて平衡化した。
b. プラスミノーゲン (Pg) 親和性捕捉
5 cm×13 cmの充填床カラムを、プラスミノーゲンを捕捉するために開発された255mLのアフィニティー吸着剤を含有して調製した。カラムは一般的に、短時間使用しない場合、0.1 N NaOH を含有する保管溶液中に維持した。事前に保管したカラムを、伝導率が1mS/cmを下回るまで、流速160 cm/hr にて、1〜2 CVのMilli Q水を用いて洗浄した。カラムを、3〜4 CVの平衡化(EQ)緩衝液を用いて平衡化した。vWF/FVIII-FT を、カラムへ、事前の捕捉工程よりアプライした。280nmにおける吸光度が、AUFS (吸光度単位フルスケール)の5%に達した時、フロースルー流出液を、回収した。
カラムを、吸光度がAUFSの5%に低下するまで、カラム流出液を継続して回収しながら、2〜3 CVのEQ緩衝液を用いて洗浄した。溶液を穏やかに混合し、次に、0.22μm Sartobranフィルターを通して濾過した。フィルターを、500mLのEQ緩衝液を用いて洗浄した。濾液を組み合わせて穏やかに混合した。この濾過した溶液は、プラスミノーゲン捕捉工程のフロースルー画分(Pg-FT)を構成した。カラムを、2 CVの洗浄緩衝液(EQ中30 mM カプリル酸からなる(pH 7.5))、続いて2 CVのEQ緩衝液を用いて洗浄した。プラスミノーゲンを、2〜3 CVの溶出緩衝液(50mM リン酸ナトリウム, 0.5M EACAからなる(pH 7.0))を用いて溶出した。% UVが、2% AUFSにまで増加したら、溶出液の回収を開始した。溶出液を、吸光度が、AUFSの2%に下がるまで、継続して回収した。カラム溶出液を穏やかに混合し、さらなる処理の用意ができるまで-80℃にて保管した。樹脂を、CIP-1 溶液(0.5N NaOHからなる)を用いて再生した。およそ 4 CVのCIP-1溶液を、減速した流速40mL/分にて「上方向への流れ」で、カラムにアプライした。樹脂を、3 CVの保管溶液を用いて次に使用するまで平衡化した。
c. フィブリノゲン (Fg) 親和性捕捉
10 cm×10.1 cmの充填床カラムを、フィブリノゲンを捕捉するために開発された790mLのアフィニティー吸着剤を含有して調製した。カラムは一般的に、短時間使用しない場合には、0.1 N NaOHを含有する保管溶液中に維持した。事前に保管したカラムは、流速60cm/hrにて、1〜2 CVのMilli Q水を用いて、伝導率が1mS/cmを下回るまで、洗浄した。
カラムは、3〜4 CVの平衡化(EQ)緩衝液(20mM Tris, 20mM クエン酸, 140mM NaClからなる(pH 7.5))を用いて平衡化した。Pg-FTを、前の捕捉工程より、カラムへアプライした。280nmにおける吸光度が、AUFS (吸光度単位フルスケール)の5%に達した時、フロースルー流出液を回収した。カラムを、4〜5 CVのEQ緩衝液を用いて洗浄し、吸光度がAUFSの5%に下がるまで、カラム流出液を、連続的に回収した。溶液を、穏やかに混合し、次に0.22μm Sartobranフィルターを通して濾過した。フィルターは、500mLのEQ緩衝液を用いて次に洗浄し、濾液を合わせて穏やかに混合した。この濾過した溶液は、フィブリノゲン捕捉工程のフロースルー画分を構成する(Fg-FT)。フィブリノゲンを4〜5 CVの溶出緩衝液(20mM Tris, 20mM クエン酸, 140mM NaCl,1%コール酸, 10% プロピレングリコール, pH 7.5)を用いて溶出した。% UVが、AUFS の2%まで増加したら、溶出液の回収を開始した。吸光度がAUFSの2%に下がるまで、溶出液を、連続的に回収した。カラム溶出液を、穏やかに混合し、さらなる処理の用意ができるまで-80℃にて保管した。樹脂を、CIP-1 溶液(1.0N NaOHから成る)を用いて再生した。およそ4 CV のCIP-1 溶液を、減速した流速80mL/分にて「上方向への流れ」で、カラムにアプライした。樹脂を、次に使用するまで、3 CVの保管溶液を用いて平衡化した。
d. 免疫グロブリンG (IgG) 親和性捕捉
ロード(load)を、1/10容量のロード調整緩衝液 (EQ溶液中300mM カプリル酸)をFg-FTに加えることによって調製し、十分に混合した。14 cm×12.2 cmの充填床カラムを、IgGを捕捉するために開発されたアフィニティー吸着剤を1880mL含有して調製した。カラムは一般的に、短時間使用しない場合、0.1 N NaOHを含有する保管溶液中に維持した。事前に保管したカラムは、流速73 cm/hrにて、2 CVのMilli Q水を用いて、伝導率が1mS/cmを下回るまで洗浄した。カラムを、2 CVの洗浄緩衝液(20mM Tris, 20mM クエン酸, 1 M NaClからなる(pH 7.5))、その後、3〜5 CVのIgG 平衡化緩衝液(30mM カプリル酸, 20mM Tris, 20mM クエン酸, 140mM NaClからなる(pH 7.5))を用いて平衡化した。Fg-FTは、前の捕捉工程より、カラムへアプライした。280nmにおける吸光度が、AUFS(吸光度単位フルスケール)の5%に達した時、フロースルー流出液を回収した。
カラムは、吸光度がAUFSの5%に下がるまで、4〜5 CVの洗浄緩衝液を用いて洗浄し、継続してカラム流出液を回収した。溶液を穏やかに混合し、次に0.22μm Sartobranフィルターを通して濾過した。フィルターは500mLのEQ緩衝液を用いて洗浄し、そして濾液を穏やかに合わせた。この濾過した溶液は、IgG 捕捉工程のフロースルー画分(IgG-FT)を構成する。IgGを溶出する前に、カラムを、1 CVの前溶出緩衝液(50mM クエン酸から成る(pH 6.0))を用いて調整した。IgGを、4 CVの溶出緩衝液(50mM クエン酸から成る(pH 3.0))を用いて溶出する。溶出液の回収は、% UVが2% AUFSに増加した時に、開始した。溶出液の回収は、吸光度が、AUFSの2%に下がるまで継続した。カラム溶出液を、穏やかに混合し、そのpHを、十分量の1M トリス塩基を用いてpH 7.0より高く調整し、さらなる処理の用意ができるまで-80℃にて保管した。樹脂は、CIP-1 溶液(1.0N NaOHから成る)を用いて再生した。およそ 4 CVのCIP-1 溶液を、減速した流速170 mL/分で「上方向への流れ」で、その後3 CVのMilli Q水を下向きにカラムにアプライした。樹脂は、次に使用するまで、3 CVの保管溶液を用いて平衡化した。
e. 限外濾過/ダイアフィルトレーション
濾過を行い、およそ1.5〜2 Lの目的量に達するまで、IgG-FT産物を濃縮した。ダイアフィルトレーションは、6倍容量のEQ緩衝液に対して、18 ± 1psiのフィルター入り口圧力(P1)および15 ± 1psiのTMPを用いて行った。透過液を、ダイアフィルトレーション開始時およびおよそ全ての保持量ごとにpHおよび伝導率を測定するためにサンプリングし、いつダイアフィルトレーションが完了したのかをモニターした。
f. アルブミン (HSA) 親和性捕捉
20 cm×17.8 cmの充填床カラムを、アルブミンを捕捉するために開発されたアフィニティー吸着剤5600 mL を含有して調製した。カラムは一般的に、短時間使用しない場合、0.1 N NaOHを含有する保管溶液中に維持した。事前に保管したカラムを、流速86 cm/hrにて2 CVのMilli Q水を用いて、伝導率が1mS/cmを下回るまで洗浄した。カラムを、3〜4 CVのEQ緩衝液を用いて平衡化した。UF/DF保持液を、前の工程よりカラムへアプライした。フロースルー流出液を、280nmにおける吸光度が、AUFS (吸光度単位フルスケール)の5%に達した時、回収した。
カラムを、2〜3 CVのEQ緩衝液を用いて洗浄し、吸光度がAUFSの5%を下回るまで、カラム流出液を継続して回収した。溶液を穏やかに混合した。この濾過した溶液は、アルブミン捕捉工程のフロースルー画分(HSA-FT)を構成した。アルブミンを溶出する前に、カラムを2 CVの前溶出緩衝液(50mM クエン酸, 300mM NaClから成る(pH 7.5))を用いて調整した。アルブミンを、2〜3 CVの溶出緩衝液(50mM クエン酸ナトリウム, 50mMカプリル酸ナトリウムから成る(pH 6.2))を用いて溶出した。溶出液の回収は、% UVが、2% AUFSまで増加したときに開始した。溶出液を、吸光度が、AUFSの2%に下がるまで、継続して回収した。カラム溶出液を穏やかに混合し、さらなる処理の用意ができるまで-80℃にて保管した。樹脂は、CIP-1 溶液(1.0N NaOHから成る)を用いて再生した。およそ 4 CVのCIP-1 溶液を、減速した流速400mL/分で「上方向への流れ」で、その後、3 CVのMilli Q水を下向きにカラムへアップライした。樹脂は、次に使用するまで、3 CVの保管溶液を用いて平衡化した。
g. HSAフロースルーの濃縮
残りの試料を含むHSA-FTバッグを生成物用容器にあるチューブ状の入り口に繋げる。Slice 200システムのポンプを、1300mL/分の「一定の流速」で動かす。フィルター出口における圧力(P2)を13 ± 1psiに設定する。これによって、18 ± 1 psiのフィルター入り口圧力(P1)および15 ± 1psiのTMPを生じる。生成物を濃縮する間、さらなるHSA-FTを、システムの容器に継続して供給した。HSA-FTの濃縮は、およそ1.5〜2 Lの目的量が達成されるまで継続した。再循環を、フィルターシステムよりUF生成物を回収する前に、圧力またはメンブレンを通すことによる濾過を伴わず、1分間継続した。約500〜1000 mLの平衡化緩衝液を容器に加え、フィルターシステムをすすいだ。再循環を、およそ3〜5分間、濾過または圧力を伴わずに、ゆっくりと開始し、システムのリンスが「泡立つ」のを回避した。UF-生成物を組合せ、すすぎ、そして-80℃にて保管した。HAS-FT濃縮物は、A1PI精製のための適切な開始物質と考えられた。
<結果>
Figure 2008510724
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実施例3:直線的なカスケードプ順番による血漿タンパク質精製スキームのための最適な緩衝系を決定するために行った。IgG カラムローディングの間、pHが血漿のpH (pH 約7.5)よりも2単位上昇したことが観察された。IgGローディングの間のpHの変化は、数回観察され、ローディングによるタンパク質減少の程度に依存しているように思われた。このことは、特定の血漿タンパク質が緩衝化能を有すること、およびローディング溶液よりこれらのタンパク質を除去することによって、pHが変化する可能性が高まりうることを示唆した。血漿用の緩衝系は、血漿中のタンパク質濃度および活性を保存するのに必要とされた。緩衝系は、pHが、プロセス全体にわたって、約7.5 ± 0.4の容認されうる範囲内に維持されるようなものでなければならなかった。
pHのシフトが、以降のランにおいて生じないことを確実にするために、その後の操作における血漿ロードは1 M Tris (pH 7.5)の保管溶液を用いて緩衝化した。このストック緩衝液は、2つの別個のストック、すなわち1 M トリス塩基および1 M Tris HClを用いて作製した。これらの緩衝液は、互いに滴定し、pH 7.5にした。次にストック緩衝液を、濾過前に血漿で1:20に希釈した。最終的に調製したロードは、50 mM Tris調整血漿を含み、0.45/0.2μmフィルターを用いて濾過した。この緩衝系を、直線的なカスケード順番(LCS)実験1-7の測定に用いた。50 mM Tris緩衝液を、血漿およびプロセス全体にわたるランニング緩衝液に用いた。50 mM Tris(pH 7.5)を用いている間、カラムローディング中のpHの問題は見られなかった。表16は、血漿緩衝液として50 mM Tris(pH 7.5)を用いて実施したLCS精製の工程収率の概要を示す。
Figure 2008510724
製造規模では、50 mM Tris緩衝液について比較的高い費用が見積もられるために、代替的な緩衝系が求められた。いくつかの実験は、炭酸水素、リン酸およびTris(pH 7.5)を用いて緩衝した血漿の少量のアリコートを用いて実施した。これらの実験は、数日にわたって実施し、複数日LCSの模擬実験を行った。同じ血漿プールのアリコートを緩衝化し、室温 (RT)にて数日間インキュベートした。各試料を、活性およびタンパク質濃度について分析した。表17は、各系を用いて血漿を緩衝化した場合の、インキュベーション工程当たりの収率を示す。50 mM Trisを用いて緩衝化した血漿は、比較のためのベンチマークとして複数回行った。
Figure 2008510724
上記結果は、対照(水)と比較して、試験した様々な緩衝液を用いてもタンパク質または活性について大きな損失がなかったことを示した。緩衝剤を血漿に添加することによって、不利な影響を受ける標的タンパク質はなかった。次に、各緩衝化スキームを、カスケード研究にて試験して、最適な緩衝化条件を決定した。
10 mM リン酸ナトリウムの緩衝系を、LCS実験の間に調べた。血漿ロードの調製の間に、0.2 M リン酸ナトリウムのストック溶液を、血漿を用いてストック緩衝液を20倍希釈することによって、10 mM リン酸ナトリウムに希釈した。10 mM リン酸緩衝化血漿を、直線的なカスケード研究に使用する前に、0.2μmに対して濾過した。本緩衝化スキームの試行の間に、標的タンパク質およびタンパク質活性を示す他の因子についてのタンパク質活性が、著しく低下した。以下の表18は、10 mM リン酸緩衝液を用いた複数のLCSランについての工程収率の概要を示す。
Figure 2008510724
50 mMにTris緩衝した血漿は、pH変動をうまく回避することができたが、より費用対効果がよい、血漿を緩衝する方法が必要とされた。結果として、20 mM Tris(pH 7.5)をLCSに用いた。血漿を、1 M Tris(pH 7.5)を50倍希釈することによって、20 mM Tris(pH 7.5)調整にした。このストック緩衝液を上記にように作製し、Tris HClを用いてトリス塩基を滴定した。表19は、20 mM Trisに対して滴定された血漿を使用することによるLCSランの性能が、標的タンパク質の回収率、緩衝化能、およびロード安定性に関して、上記のように50 mM Tris緩衝液を用いた場合の性能に匹敵することを示す。
Figure 2008510724
Figure 2008510724
表20は、LCSによるHSA工程収率に関して、調べた緩衝系間の比較結果を示す。概して、調べた3種の緩衝液間のHAS捕捉についての工程回収率は、互いに類似していたが、ただし、10mM リン酸を用いた場合、HASの低い収率が、IgG 捕捉工程によって示された。また、IgG(高い値の標的タンパク質)は、10mM リン酸緩衝液を用いた場合、フィブリノゲン捕捉工程の間、低い収率であった。全ての値は、各捕捉工程について示された%収率であった。データは、0.5Lのランより集め、工程収率は、ロードおよびフロースルー中に存在したアルブミンの量に基づいて算出しただけである。
50mM Trisを含有する緩衝液は、有効な血漿緩衝液であるが、プロセスが製造スケールまで拡大される場合、非常に費用が高くなりうると結論付けた。Trisに代わるものをいくつか調べ、また完全なLCSランに付した。これらの代替物は、緩衝化能、使いやすさ、費用、ならびにタンパク質の濃度および活性の保存に基づいて判断した。モル濃度が減少したTris (20 mM)(pH 7.5)が、血漿緩衝液として有効であることが見出された。
本発明は、本発明の思想または重要な特質から逸脱することなく他の特定の形態で具現化することが可能である。従って、参照は、前述の明細書よりも、本発明の範囲を示しているために、添付の特許請求の範囲に対してなされるべきである。

Claims (25)

  1. タンパク質を逐次的に単離および精製するための方法であって、(i)生物学的試料を用意すること、(ii)該生物学的試料中の標的タンパク質に、それぞれ特異的に結合する2またはそれ以上のリガンドを用意すること、ここで該2またはそれ以上のリガンドはそれぞれ場合によって、担体に結合され、2またはそれ以上のリガンド−担体複合体を形成している、(iii)該2もしくはそれ以上のリガンドまたはリガンド−担体複合体を、逐次的におよび予め定めた順番で該生物学的試料と接触させ、各リガンドまたはリガンド−担体複合体が該生物学的試料に由来する標的タンパク質に逐次的に結合するようにすること、ここで該生物学的試料は、接触前の前調整工程によって処理されていない、(iv)該2もしくはそれ以上のリガンドまたはリガンド−担体複合体の各々に結合した該標的タンパク質を溶出すること、ならびに(v)該標的タンパク質を該生物学的試料より逐次的に単離すること、を含む、上記方法。
  2. 前記生物学的試料が血漿であり、かつ前記標的タンパク質が、フィブリノゲン、α-1 プロテイナーゼインヒビター、アポリポプロテインA1、免疫グロブリン、パラオキソナーゼ、凝固因子、vWF/FVIII、アルブミン、プラスミノーゲン、またはそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記生物学的試料が、in vitro 細胞培養物を含み、かつ前記タンパク質が、組換えタンパク質である、請求項1に記載の方法。
  4. パラオキソナーゼの活性が、タンパク質単離の間、前記生物学的試料中に保持されている、請求項2に記載の方法。
  5. vWF/FVIIIが、他のタンパク質よりも前に、血漿より単離される、請求項2に記載の方法。
  6. アポリポプロテインA1が、他のタンパク質よりも後から、血漿より単離される、請求項2に記載の方法。
  7. アルブミンが、IgGよりも前に、血漿より単離される、請求項2に記載の方法。
  8. アルブミンが、IgGよりも後に、血漿より単離される、請求項2に記載の方法。
  9. プラスミノーゲンが、フィブリノゲンよりも前に、血漿より単離される、請求項2に記載の方法。
  10. 2もしくはそれ以上のリガンドまたはリガンド−担体複合体と生物学的試料とを予め決められた順序で接触させることによって、次の順序で、vWF/FVIII、プラスミノーゲン、フィブリノゲン、アポリポプロテインA1、パラオキソナーゼ、IgG、アルブミンおよびα-1 プロテイナーゼインヒビターの逐次的結合を生じさせる、請求項1に記載の方法。
  11. 2もしくはそれ以上のリガンドまたはリガンド−担体複合体と生物学的試料とを予め決められた順序で接触させることによって、次の順序で、vWF/FVIII、アポリポプロテインA1、パラオキソナーゼ、プラスミノーゲン、フィブリノゲン、IgG、アルブミンおよびα-1 プロテイナーゼインヒビターの逐次的結合を生じさせる、請求項1に記載の方法。
  12. 2もしくはそれ以上のリガンドまたはリガンド−担体複合体と生物学的試料とを予め決められた順序で接触させることによって、次の順序で、vWF/FVIII、IgG、アルブミンおよびα-1 プロテイナーゼインヒビターの逐次的結合を生じさせる、請求項1に記載の方法。
  13. 前記リガンドが、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣体、小分子、色素、トリアジン含有化合物、抗体もしくは抗原結合断片、核酸主体の分子、非ポリペプチドもしくはヌクレオチド主体の分子、炭水化物、炭水化物模倣体、脂質、無機物質、インヒビター、基質または、それらの任意の組合せを含む、請求項1に記載の方法。
  14. 前記リガンドが、約1〜約15アミノ酸から本質的に成るペプチドを含む、請求項13に記載の方法。
  15. 前記生物学的試料が、組織生検、血液、髪、頬腔内の掻爬物、血漿、血清、皮膚、腹水、複数の浸出物、胸腔穿刺液、髄液、リンパ液、骨髄、呼吸器内液、腸内液、生殖器内液、便、尿、痰、涙、唾液、腫瘍、器官、組織、in vitro 細胞培養構成物の試料、胎児の細胞、胎盤細胞または羊水の細胞および/もしくは液体、ならし培地、発酵ブロス、脳髄液、乳汁、導管液、汗、および精液より得られる、請求項1に記載の方法。
  16. 前記担体が、合成物質、天然物質、またはその両方を含む、請求項1に記載の方法。
  17. 前記担体が、アガロース、ポリアクリルアミド、デキストラン、セルロース、多糖類、ニトロセルロース、シリカ、アルミナ、酸化アルミニウム、チタニア、酸化チタン、ジルコニア、スチレン、ポリビニルジフルオライドナイロン、スチレンおよびジビニルベンゼンのコポリマー、ポリメタクリル酸エステル、誘導体化アズラクトンポリマーまたはコポリマー、ガラス、セルロース、アガロース、上記物質のいずれかの誘導体、および上記物質のいずれかの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
  18. 前記担体が、樹脂ビーズである、請求項1に記載の方法。
  19. 前記前調整が、アルコール沈殿、低温沈殿、脂質および/もしくは脂質タンパク質の除去、ユーグロブリン沈殿、またはそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
  20. 請求項1に記載の方法によって製造された実質的に純粋な血漿タンパク質を含む、製剤。
  21. 前記血漿タンパク質が、フィブリノゲン、α-1 プロテイナーゼインヒビター、アポリポプロテインA1、免疫グロブリン、パラオキソナーゼ、凝固因子、vWF/FVIII、アルブミン、プラスミノーゲン、またはそれらいずれかの組合せを含む、請求項20に記載の製剤。
  22. 前記血漿タンパク質が、少なくとも70%の純度で実質的に精製されている、請求項20に記載の製剤。
  23. 前記製剤が、実質的に精製されており、免疫吸着によって生じる不純物が存在せず、かつ少なくとも1つの病原体の不活性化工程にかけられる、請求項20に記載の製剤。
  24. 医薬組成物として製剤化される請求項20に記載の製剤。
  25. 前記生物学的試料が、接触工程の前に緩衝剤によって処理し、該生物学的試料の1または複数の標的物質の濃度および活性をさらに保持する、請求項1に記載の方法。
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