JPWO2012036140A1 - クリングル配列を有する蛋白質またはペプチドを精製または除去するアフィニティ担体、及びそれを用いた精製方法、除去方法 - Google Patents
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Abstract
本発明はプラスミノゲンをはじめとするクリングル配列を有する蛋白質やペプチドを除去または精製するためのアフィニティ担体、及び、そのアフィニティ担体を用いたクリングル配列を有する蛋白質やペプチドの除去方法または精製方法に関する。本発明のアミノカプロン酸が固定化されたアフィニティ担体は、効率良くクリングル配列を有する蛋白質やペプチドを除去・精製可能である。また本発明は、前記アフィニティ担体を用いたクリングル配列を有する蛋白質またはペプチドの精製方法ならびに除去方法を提供する。
Description
本発明は、夾雑成分の混在するクリングル配列を有する蛋白質またはペプチドの溶液から、クリングル配列を有する蛋白質またはペプチドを特異的に精製・除去するためのアフィニティ担体、及び、そのアフィニティ担体を用いたクリングル配列を有する蛋白質またはペプチドの精製方法・除去方法に関する。また本発明は高度に精製されたクリングル配列を有する蛋白質またはペプチドの製造技術にも関する。
クリングル配列とは3対のS−S架橋で形成される独特の折りたたみ構造を有するアミノ酸配列であり、その構造がデンマークの菓子パンと似ていたことから名付けられた構造ドメインである。クリングル配列は、血液凝固や線溶に関わる蛋白質において頻繁に見出されているドメインであり、クリングル配列を有する蛋白質やその蛋白質断片は血液の凝固、血液の線溶のみならず、血管新生の促進、血管新生の阻害、細胞増殖の促進、細胞増殖の不活性化、アポトーシスなど、生体内において様々な生理活性を発揮している。
プラスミノゲンは791アミノ酸残基から構成される分子量約92kDaの一本鎖糖蛋白質であり、分子内にセリンプロテアーゼ領域と5つのクリングル配列を有する。プラスミノゲンは組織プラスミノゲン活性化因子やウロキナーゼプラスミノゲン活性化因子により限定分解を受け、酵素活性を有する活性型のプラスミンへ変換される。プラスミンは血栓の主成分であるフィブリン線維を溶解する。このように、プラスミノゲンや活性型のプラスミンは、血液の線溶系反応に関与するクリングル配列を有する生体内蛋白質である。
組織プラスミノゲン活性化因子は血管内皮細胞で産生される527アミノ酸残基より成る分子量約70kDaの糖蛋白質であり、分子内にセリンプロテアーゼ領域と2つのクリングル配列を有する。組織プラスミノゲン活性化因子はフィブリンに結合し、同じくフィブリンに結合しているプラスミノゲンを分解し、上記したように血液線溶を促進させる。また脳卒中や脳梗塞の治療薬としても用いられている。
ウロキナーゼは腎細胞で生産され尿中または血液中に存在するプロテアーゼであり、分子内に一つのクリングル配列を有する蛋白質であり、上記したようにプラスミノゲンを限定分解し、活性型のプラスミンに変換することで線溶系カスケードを促進させる。
プロトロンビンは分子量約72kDaの糖蛋白質であり、分子内にセリンプロテアーゼ領域と2つのクリングル配列を有する。セリンプロテアーゼトロンビンの前駆体である。プロトロンビンはプロトロンビナーゼ複合体を形成した第Xa因子によって分解され、αトロンビンになる。αトロンビンは、フィブリノーゲンを重合させフィブリンにする、また、第XIII因子を活性化してフィブリンを強固に架橋結合させる、血小板を活性化する、第VIII因子・第V因子を活性化して凝固を促進させる等の酵素作用を表わす。一方、トロンボモジュリンに補足されて、プロテインCを活性化して凝固を抑制する作用を持つ。
第XII因子は596個のアミノ酸から成る分子量約80kDaの一本鎖糖蛋白質であり、分子内に1つのクリングル配列を有する。第XII因子は、ガラス、カオリン、基底膜、コラーゲン等の異物面(陰性荷電膜面)と接触すると、その立体構造を変え、N基末端近くで異物面と結合し、カリクレイン等に限定分解され活性化を受け二本鎖の第XII因子となる。第XII因子はプレカリクレインを活性化してカリクレインに変換し、カリクレインは第XII因子を活性化するという相互活性化作用を持っている。第XII因子は異物面上で第XI因子を活性化し、内因系の凝固反応をスタートさせる。第XIIa因子には凝固反応だけでなく、細胞分裂促進作用、 線溶系の活性化、補体の活性化、カリクレインを介しての高分子キニノーゲンからのキニンの産生と、多くの生体反応に関与していることが報告されている。
アンジオスタチンは米国ハーバード大学のFolkman教授によって見出されたプラスミノゲンのN末端断片の蛋白質であり、分子内に複数のクリングル配列を有する。アンジオスタチンは血管新生阻害作用を有し、癌縮退効果や抗腫瘍転移効果があることが報告されている。
肝細胞増殖因子は大阪大学中村敏一教授によって肝細胞の増殖因子として発見された蛋白質であり、4つのクリングル配列を有する分子量約60kDaの重鎖と分子量約35kDaの軽鎖がジスルフィド結合したヘテロダイマーである。肝細胞増殖因子は肝細胞のみならず肺、心・血管系、神経系など様々な細胞に対して、細胞増殖促進、細胞運動促進、抗アポトーシス、形態形成誘導、血管新生など組織・臓器の再生と保護を担う多才な生理活性を有することが報告されている。一方、肝硬変や慢性腎不全(腎硬化症)に代表される慢性線維性疾患においては、その発現低下状態をきたすことも報告されている。また肝細胞増殖因子の遺伝子治療により閉塞性動脈硬化症患者に対する治療効果も見出されている。
NK4は肝細胞増殖因子が切断された肝細胞増殖因子の部分蛋白質であり、同様に4つのクリングル配列を有する。NK4は肝細胞増殖因子のアンタゴニストとして働き、癌の浸潤転移を抑制する一方で、VEGFやbFGFなどの血管新生因子の働きを抑制できることから、強力な血管新生阻害活性を持っていることが知られている。
アポリポプロテイン(a)はLDLコレステロールの構成蛋白質であり、個人差はあるが、分子内に12から51個の複数個のクリングル配列の繰り返し構造を持つ。急性心筋梗塞や急性炎症の際に、血中濃度の増加が報告されている。
このようにプラスミノゲンをはじめクリングル配列を有する蛋白質やペプチドは、生体内で種々の生理活性を発揮している。従ってクリングル配列を有する蛋白質やペプチドを除去すること、または、精製することは、体内濃度低下による治療効果や医薬品製造工程における不純物の除去など医療上の観点から非常に有用である。前記目的を達成する材料や方法として、アミノ酸であるリジンを固定化したアフィニティ担体がある。これはクリングル配列にリジン結合性があることを利用したものである。ところが、リジンは反応点であるアミノ基を二つ有しており、非特許文献1によると、αアミノ基で固定化した場合でないとクリングル配列に親和性が低いことから、リジンを選択的に固定化する必要がある。しかしながら、リジンを選択的に固定化するためには反応を厳密にコントロールしなければならず、容易なことではない。
リジン類似体として知られているアミノカプロン酸は反応点であるアミノ基が1つであり、担体への固定化に際して厳密に反応を制御する必要は無く容易に固定化することが可能である。溶液中において、アミノカプロン酸はリジン類似体としてプラスミノゲンと親和性があることは従来から知られているが、アミノカプロン酸を固定化したアガロースはリジンと親和性を持たない、または親和性が極端に低いことが分かっている(特許文献1、非特許文献2等)。クリングルの認識においてはアミノカプロン酸のアルキル部位、エプシロン末端のフリーアミノ基、末端のカルボキシル基が大きく寄与しており、アミノカプロン酸が固定化されるとアミノ基がフリーでは無くなりプラスミノゲンとの親和性が無くなったと想定される。このように、リジンに比して固定化の容易であるアミノカプロン酸固定化担体は、従来ではプラスミノゲンをはじめとするクリングル配列を有する蛋白質やペプチドを除去または精製することは難しいとされてきた。
Journal of Biomedical Materials Research Part A, Vol.49, Issue.3, 409-414(1999)
Biochimica et Biophysica Acta, Vol.379, p504-511(1975)
本発明の目的は、プラスミノゲンをはじめとするクリングル配列を有する蛋白質やペプチドを除去または精製するためのアフィニティ担体、及び、そのアフィニティ担体を用いたクリングル配列を有する蛋白質やペプチドの除去方法または精製方法を提供することである。
本発明者は、元来容易に作製することが困難であった、プラスミノゲンをはじめとするクリングル配列を有する蛋白質やペプチドを除去または精製するためのアフィニティ担体の作成方法に関して鋭意検討を行った。その結果、アミノカプロン酸が固定化された担体、特にポリビニルアルコール担体の場合に、効率良くクリングル配列を有する蛋白質やペプチドを除去・精製可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は第一にプラスミノゲンをはじめとするクリングル配列を有する蛋白質やペプチドを除去または精製するためのアフィニティ担体の作成方法に関する。第二に、アフィニティ担体を用いた、プラスミノゲンをはじめとするクリングル配列を有する蛋白質やペプチドの除去方法、精製方法に関する。
本発明は具体的には以下の発明を包含する。
(1)クリングル配列を有する蛋白質またはペプチドを精製または除去するためのアミノカプロン酸が固定化されたアフィニティ担体。
(2)アミノカプロン酸が共有結合で固定化された前記(1)記載のアフィニティ担体。
(3)アミノカプロン酸がアミノ基で共有結合された前記(2)記載のアフィニティ担体。
(4)アフィニティ担体がポリビニルアルコールからなることを特徴とする前記(1)から(3)のいずれかに記載のアフィニティ担体。
(5)ポリビニルアルコールが架橋されていることを特徴とする前記(4)記載のアフィニティ担体。
(6)アフィニティ担体が多孔質の水不溶性担体であることを特徴とする前記(1)から(5)のいずれかに記載のアフィニティ担体。
(7)多孔質の水不溶性担体が粒子状であることを特徴とする前記(6)記載のアフィニティ担体。
(8)クリングル配列を有する蛋白質またはペプチドが、プラスミノゲン、プラスミン、アンジオスタチン、アポリポプロテイン(a)、組織プラスミノゲン活性化因子、ウロキナーゼ、肝細胞増殖因子、NK4、プロトロンビン、第XII因子またはこれらの部分ペプチドから選択される少なくとも一種以上の蛋白質またはペプチドであることを特徴とする前記(1)から(7)のいずれかに記載のアフィニティ担体。
(9)クリングル配列を有する蛋白質またはペプチドが、プラスミノゲン、アンジオスタチンまたは、その部分ペプチドであることを特徴とする前記(8)記載のアフィニティ担体。
(10)クリングル配列を有する蛋白質またはペプチドがプラスミノゲンであることを特徴とする前記(9)記載のアフィニティ担体。
(11)前記(1)から(10)のいずれかに記載のアフィニティ担体を、夾雑成分の混在するクリングル配列を有する蛋白質溶液またはペプチド溶液と接触させる工程を含むことを特徴とする、クリングル配列を有する蛋白質またはペプチドの精製方法。
(12)前記(1)から(10)のいずれかに記載のアフィニティ担体を、夾雑成分の混在するクリングル配列を有する蛋白質溶液またはペプチド溶液と接触させる工程を含むことを特徴とする、クリングル配列を有する蛋白質またはペプチドの除去方法。
(13)前記(1)から(10)のいずれかに記載のアフィニティ担体を夾雑成分の混在するクリングル配列を有する蛋白質溶液またはペプチド溶液と接触しクリングル配列を有する蛋白質またはペプチドを選択的に吸着させる工程、及び
吸着したクリングル配列を有する蛋白質またはペプチドを該担体から解離、回収する工程を含むことを特徴とするクリングル配列を有する蛋白質またはペプチドの精製方法。
吸着したクリングル配列を有する蛋白質またはペプチドを該担体から解離、回収する工程を含むことを特徴とするクリングル配列を有する蛋白質またはペプチドの精製方法。
(14)選択的に吸着したクリングル配列を有する蛋白質またはペプチドを、溶出液を用いて解離、回収することを特徴とする前記(13)記載の精製方法。
(15)溶出液がアミノカプロン酸を含む溶液、リジンを含む溶液、アルギニン酸を含む溶液、トラネキサム酸を含む溶液、p−アミノベンズアミジンを含む溶液から選ばれる少なくとも一種類以上の溶出液を用いた前記(14)記載の精製方法。
(16)夾雑成分の混在するクリングル配列を有する蛋白質溶液またはペプチド溶液が、体液、動物組織抽出物、培養液、またはそれらを前処理した溶液であることを特徴とする前記(11)から(15)のいずれかに記載のクリングル配列を有する蛋白質またはペプチドの精製方法または除去方法。
(17)前記(13)から(15)のいずれかに記載の方法によって精製されたクリングル配列を有する蛋白質またはペプチド。
(18)クリングル配列を有する蛋白質またはペプチドを精製または除去するための、アミノカプロン酸が固定化されたアフィニティ担体の使用。
本発明に係るアミノカプロン酸が固定化されたポリビニルアルコール担体によれば、クリングル配列を有する蛋白質やペプチドを効率良く除去・精製することが可能である。このアフィニティ担体は、リジン固定化担体のようにアミノ基の選択的固定化も不必要であるため、非常に作製が容易である。
以下に本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
本発明におけるクリングル配列を有する蛋白質またはペプチドは、その構造中に少なくとも1つのクリングル配列を有するものであれば特に制限されない。具体的には、プラスミノゲン、プラスミン、アンジオスタチン、アポリポプロテイン(a)、組織プラスミノゲン活性化因子、ウロキナーゼ、肝細胞増殖因子、NK4、プロトロンビン、第XII因子などの蛋白質、および上記蛋白質の部分ペプチドでありクリングル配列を有するものを挙げることができる。
本発明に係るアフィニティ担体は、水不溶性担体にアミノカプロン酸が固定化されているものである。水不溶性担体とは、常温常圧で固体であり、水に対する溶解度が極めて小さい材料からなるものをいう。ここで水不溶性とは、日本薬局方や米国薬局方(The United States Pharmacopea)の定義における「極めて溶けにくい(Very slightly soluble)」と「ほとんど溶けない(Practically insoluble, or Insoluble)」に該当する。
水不溶性担体の形状は特に制限されず、その大きさも特に限定されないが、例えば、球状、粒子状、糸状、中空状、平膜状とすることができる。これらの中では、水不溶性担体は比表面積が大きいほど除去性能や精製効率が優れることから、球状または粒子状が特に好ましく用いられる。
球状や粒子状の担体の平均粒径は、一般的には0.5μm以上、10mm以下のものが用いられる。また、粒径が小さくなるほど比表面積が大きくなり、アフィニティ担体としての性能に優れるが、担体の物理的機械的強度が弱くなることから、10μm以上、3mm以下のものが好ましい。なお、担体の平均粒径は、カタログ値を参照してもよいし、また、カタログ値が無い場合には粒度分布計により体積基準で粒度分布を測定し、得られた粒度分布から求めてもよい。
担体は適当な大きさの細孔を多数孔有する、すなわち、多孔構造を有する担体であることが好ましい。多孔構造の孔径や多孔率は特に制限されない。多孔構造を有する多孔質担体であれば表面積が大きくなり、クリングル配列を有する蛋白質やペプチドの分離効率や除去効率が向上する。多孔構造を有する担体とは、基礎高分子母体が微小球の凝集により1個の球状粒子を形成する際に微小球の集塊によって形成される空間(マクロポアー)を有する担体の場合は当然であるが、基礎高分子母体を構成する1個の微小球内の核と核との集塊の間に形成される細孔を有する担体の場合、あるいは三次元構造(高分子網目)を有する共重合体が親和性のある有機溶媒で膨潤された状態の時に存在する細孔(ミクロポアー)を有する担体の場合も含まれる。
また担体の単位体積あたりの除去性能や精製効率から考えて、多孔構造を有する水不溶性担体は、表面多孔性よりも全多孔性が好ましく、また空孔容積および比表面積は、吸着性が損なわれない程度に大きいことが好ましい。
本発明における水不溶性担体の材料は特に制限されないが、一般的なアフィニティ担体に求められる特性と医療材料として求められる特性、つまり、有機溶媒に対する耐性、異常pHや熱に対する耐性、物理的機械的強度、非特異吸着、血球成分との相互作用、血栓形成や血液凝固の抑制などの特性が求められる。かかる観点から、デキストランやセルロース等の糖を含む天然高分子担体やポリビニルアルコール、ポリグリシジルメタクリレート、ポリヒドロキシメタクリレート等の合成高分子系担体が好ましい。また、これらの組み合わせによって得られる有機−有機、有機−無機などの複合担体等も好ましい。
本発明に係る水不溶性担体は、架橋されているものが好ましい。架橋方法は特に制限されないが、水不溶性担体の表面または末端に存在する官能基と反応する官能基を複数有する架橋剤を用いる方法を挙げることができる。この場合、水不溶性担体の官能基と架橋剤の官能基の両方に反応可能な重合性単量体を用いてもよい。例えば、水不溶性担体の官能基と架橋剤の官能基の両方がラジカル重合性の官能基である場合、架橋剤としては、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、グリセリンジメタクリレート(GDMA)などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。また、上記重合性単量体としては、例えば、酢酸ビニル、ビニルアルコール、スチレン、(メタ)アクリル酸、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリルなどを挙げることができる。
本発明に係る水不溶性担体は、非特異的吸着が少なく親水性が高いこと、活性基を導入するための官能基が必要なことから、水酸基を有していることが望ましい。ポリグリシジルメタクリレートはそのままでは水酸基を持っていないため親水性は低いが、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリによる処理や、希硫酸、過塩素酸、ベンゼンスルホン酸、またはトルエンスルホン酸などのエポキシに反応しない酸による処理を施すと、エポキシ基は開環し、ジオールに変換、親水化されるため、アフィニティ担体に適切な材料になる。このように本発明における水不溶性担体としては種々の材料が考えられるが、ポリビニルアルコール、ポリグリシジルメタクリレート、ポリヒドロキシメタクリレート等の合成高分子系担体を材料とした担体が、除去性能や精製効率の点より好ましく、特にポリビニルアルコールが好ましい。
本発明に記載した水不溶性担体の製法としては、懸濁重合や均一液滴化などが考えられるが、本発明はこれらに限定されない。
本発明に係るアフィニティ担体では、水不溶性担体にアミノカプロン酸が固定化されている。アミノカプロン酸の固定化方法としては共有結合やイオン結合などがあるが、アミノカプロン酸の溶出の可能性が極めて低いことから、本発明におけるアミノカプロン酸が固定化されたアフィニティ担体は、好ましくはアミノカプロン酸が共有結合で結合された担体である。アミノカプロン酸を固定化するための方法としては、担体に活性基を導入し、活性基に対してアミノカプロン酸を反応させる方法が一般的である。よく用いられる活性基としては、エポキシ基、ハロゲン化シアン、ハロゲン化トリアジン、ブロモアセチルブロミド、アルデヒド等である。本発明において活性基の種類は限定されないが、容易にその活性基を導入できること、温和な条件下でリガンドまたはリンカーを固定化できること、固定化されたリガンドまたはリンカーが安定であり溶出しにくいこと、工業的に大量に取扱うことが可能であること、目的に応じて活性基導入量を調整できること、から活性基はエポキシ基が好ましい。エポキシ基は水酸基、アミノ基、チオール基と容易に反応し、副反応は少なく、定量的にエーテル結合、アルキルアミン結合、チオエーテル結合を形成する。また、エポキシ基は水溶液中で分解させるとグリコールとなり、毒性が低くなることも利点である。
本発明に係るアフィニティ担体では、アミノカプロン酸のアミノ基と水不溶性担体の活性基が共有結合していることが好ましい。アミノカプロン酸が共有結合により水不溶性担体に共有結合していない場合、例えば、静電的相互作用などで間接的に固定化されている場合には、アミノカプロン酸がリークするおそれがあり得る。また、アミノカプロン酸を、そのアミノ基を通じて水不溶性担体に固定化する場合、クリングル配列に対するアミノカプロン酸本来の親和性が失われないという利点がある。通常、クリングル配列に対するアミノカプロン酸の認識は、アルキル部位、エプシロン末端のフリーアミノ基、末端カルボキシ基が大きく寄与しているので、アミノ基を固定化のために使用すると、クリングル配列に対するアミノカプロン酸の親和性が失われると想定される。ところが理由は不明であるが、ポリビニルアルコールなど、水酸基や、エポキシ基など水酸基へ容易に変換し得る官能基を多数有する合成高分子系担体を担体材料として用いれば、驚くべきことにクリングル配列に対するアミノカプロン酸の親和性は失われないことが見出された。その理由は明らかではないが、水不溶性担体上の官能基、特に多くの水酸基が親和性に関与していることや、例えばトリアリルイソシアヌレートのイミド基など、架橋剤の官能基が親和性に関与していることが考えられる。
エポキシ基を担体に導入するためのエポキシ化剤としてはエピクロロヒドリン、ビスエポキシド、ポリエポキシドが、エポキシ基を担体に導入しやすいこと、そして、上記エポキシ化剤によって導入されたエポキシ基とリガンドとの反応をコントロールしやすいこと、から好ましい。ここでいうビスエポキシド、ポリエポキシドとは、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルなどの1分子内に2個または3個以上のエポキシ基を持つ化合物を指す。
活性基導入の反応温度は、例えばエピクロロヒドリンの場合は、低温では反応速度が遅く、高温では副反応の架橋が起こりやすくなるため、10℃から60℃の範囲が好ましい。反応の時間は、希望する活性基量を考慮し、数分から数時間程度の反応時間を選ぶことができる。ビスエポキシドの場合もエピクロロヒドリンの場合と同様の条件で、担体に活性基を導入可能であるが、反応系に促進剤として水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤を少量加えることもよい。
本発明において活性基量は限定されないが、水に膨潤した担体、即ち湿潤状態の水不溶性担体1mLあたり1μmol以上、10,000μmol以下が、アフィニティ担体の使用上好ましい。目的外の物質による非特異吸着の点から、水に膨潤した担体1mLあたり10μmol以上、5,000μmol以下がより好ましい。さらに、15μmol以上が好ましく、20μmol以上がより好ましく、また、1,000μmol以下が好ましく、500μmol以下がより好ましく、100μmol以下がさらに好ましく、50μmol以下が特に好ましい。活性基量は用途に応じ、活性基導入反応の諸条件(活性基導入剤の添加量・アルカリ量・反応温度・反応時間など)を最適化し、適宜調節することができる。
本発明のエポキシ基導入量は、次の方法によって求められる。エポキシ基を導入した担体をある一定量、例えば6mL測り取り、グラスフィルター上、減圧下で15分、水分除去する。約1.5g測り取り、そこに1.3Mチオ硫酸ナトリウム水溶液4.5mLを加え、45℃で30分反応する。エポキシ基とチオ硫酸ナトリウムの反応によって生じるOHイオンを、フェノールフタレインを指示薬とし、0.01N塩酸または0.1N塩酸でフェノールフタレインの着色がなくなるまで滴定を繰り返し、総滴定量によりエポキシ基の量を求める。
このようにエポキシ基を結合させた担体へのアミノカプロン酸の固定化条件は、例えば、水溶液中、pH7〜13程度の塩基性条件下で反応させることが好ましい。炭酸、ホウ酸、リン酸などの緩衝液を用いてpH調整を行うとよい。反応温度は適宜選べばよいが、通常は0℃以上、80℃以下程度であり、反応時間は1時間から48時間が好ましい。アミノカプロン酸の固定化量は、滴定や元素分析により求めることもできる。過剰なエポキシ基は、グリシン、エタノールアミン、トリス−(ヒドロキシメチル)−アミノメタンなどの試薬によるブロッキング処理や、アルカリや酸で加水分解して処理することも可能である。
本発明に係るアフィニティ担体におけるアミノカプロン酸の固定化割合は、アミノカプロン酸を導入するための活性基量と同様に、クリングル配列を有する蛋白質またはペプチドの吸着効率と、その他の蛋白質などの非特異的吸着を考慮して、水に膨潤した担体、即ち湿潤状態の水不溶性担体1mLあたり1μmol以上が好ましく、10μmol以上がより好ましく、15μmol以上がさらに好ましく、20μmol以上が特に好ましく、また、10,000μmol以下が好ましく、5,000μmol以下がより好ましく、1,000μmol以下がさらに好ましく、500μmol以下がさらに好ましく、100μmol以下がさらに好ましく、50μmol以下が特に好ましい。
このようにして得られるアミノカプロン酸が固定化されたアフィニティ担体は、非常に安定な共有結合により結合されており、熱的にも安定である。高圧蒸気滅菌が可能であり、滅菌後のリガンド溶出やそれに伴う求める性能低下も生じない。熱滅菌以外の方法に関して、エチレンオキサイドガスによる滅菌も可能である。以上より、医療用途としても大変優れた性能を有している。
本発明におけるプラスミノゲンをはじめとするクリングル配列を有する蛋白質やペプチドの除去方法、精製方法とは、目的外の夾雑成分が混在するクリングル配列を有する蛋白質溶液またはペプチド溶液から目的とするクリングル配列を有する蛋白質やペプチドを除去すること、または、精製することを言う。例えば、クリングル配列を有する蛋白質またはペプチドが病因関連物質であった場合、血液などの体液から除去することにより疾患を治療することが可能である。また、クリングル配列を有する蛋白質またはペプチドが薬剤として用いられる場合、ヒト体液から精製し高純度の天然型蛋白質製剤として用いたり、菌による蛋白質産生培養液から精製し高純度の蛋白質製剤として用いたりする際の精製工程で用いることも可能である。
クリングル配列を有する蛋白質やペプチドの精製方法および除去方法では、本発明に係るアフィニティ担体を、夾雑成分の混在するクリングル配列を有する蛋白質溶液またはペプチド溶液と接触させる。
本発明に係るアフィニティ担体と接触させるべき溶液は、クリングル配列を有する蛋白質やペプチドを含む可能性のある液体であれば、特に制限されない。例えば、体液、動物組織抽出液、培養液、およびそれらを前処理した溶液を挙げることができる。
体液としては、例えば、血液、脳脊髄液、腹水、リンパ液、関節内液、骨髄液を挙げることができる。動物組織抽出液は、ヒトを含む動物の臓器から抽出された液をいうものとする。培養液としては、例えば、クリングル配列を有する蛋白質やペプチドの分泌能を有する形質転換菌の培養液を挙げることができる。これらを前処理した溶液としては、例えば、血液に抗凝固剤を加えてから遠心分離することにより血球を除去した血漿や、血液を放置して生じた血餅を除去した血清を挙げることができる。
クリングル配列を有する蛋白質やペプチドの精製方法および除去方法において、本発明に係るアフィニティ担体とクリングル配列を有する蛋白質溶液等とを接触させる方法は、本発明のアフィニティ担体をカラムに充填して使用しても良く、バッチ接触させる方法でも良く、接触方法は問わない。
カラムに充填して接触させる方法とは、液の入口・出口を有し、かつ担体の容器外への流出防止具を備えた容器内に、前記担体を充填した装置を作製し、装置の入口から夾雑成分が混在するクリングル配列を有する蛋白質溶液またはペプチド溶液を流し、出口から溶液を採取することによりクリングル配列を有する蛋白質またはペプチドが除去された溶液が得られる。
バッチ接触とは前記カラムへ充填せず、容器中で前記アフィニティ担体と夾雑成分が混在するクリングル配列を有する蛋白質溶液またはペプチド溶液を混合した後、溶液成分のみを採取することによりクリングル配列を有する蛋白質またはペプチドが除去された溶液が得られる。
本発明に係るアフィニティ担体の使用量は、例えば処理すべき液体に含まれるクリングル配列を有する蛋白質等の濃度などにより適宜調整すればよいが、通常、処理すべき液体に対して0.01容量倍以上、50容量倍以下程度とすることができる。当該割合が0.01容量倍以上であれば、液体中に含まれる当該蛋白質等をより確実に吸着することができる。一方、当該割合が大き過ぎると必要成分まで吸着されるといったおそれがあり得るので、当該割合は50容量倍以下が好ましい。当該割合としては、0.05容量倍以上が好ましく、0.1容量倍以上がより好ましく、0.15容量倍以上が特に好ましく、また、10容量倍以下が好ましく、5容量倍以下がより好ましく、1容量倍以下が特に好ましい。
クリングル配列を有する蛋白質やペプチドの精製方法においては、本発明に係るアフィニティ担体とクリングル配列を有する蛋白質溶液等とを接触させることにより当該蛋白質等を担体に吸着させた後、当該担体と液体とを分離し、当該担体から当該蛋白質等を解離、回収する。
クリングル配列を有する蛋白質等を吸着した担体と残液部分を分離する方法としては、常法を用いることができる。例えば、カラムを用いた場合には、カラムに充填された担体を水などで洗浄して残液を溶出すればよい。また、バッチ接触した場合には、濾過や遠心分離などを行った後、担体を水などで洗浄すればよい。
次いで、クリングル配列を有する蛋白質またはペプチドを吸着した担体から当該蛋白質等を解離、回収するには、溶出液を用いればよい。溶出液としては、アミノカプロン酸を含む溶液、リジンを含む溶液、アルギニン酸を含む溶液、トラネキサム酸を含む溶液、p−アミノベンズアミジンを含む溶液であり、前記を混合して用いても良い。さらに溶出液の濃度も限定されるものではなく、目的に応じて選定すればよい。
以上は除去方法または精製方法の一例であり、使用方法は限定されない。
以下、実施例において本発明に関して詳細に述べるが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
(1) アミノカプロン酸固定化担体の合成
酢酸ビニル45g、トリアリルイソシアヌレート13.95g、ヘプタン23.85g、酢酸エチル38.79g、ポリ酢酸ビニル(重合度400)4.32g、および、重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)2.25gよりなる均一混合液を、ポリビニルアルコール4g、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム0.9g、微粒子状の第三リン酸カルシウム62g、亜硝酸ナトリウム0.8gを溶解した水773mLを含む水相があらかじめ仕込まれた、平板状の撹拌翼と2枚の邪魔板を有する2Lセパラブルフラスコ中に添加し、65℃で5時間反応させた。
(1) アミノカプロン酸固定化担体の合成
酢酸ビニル45g、トリアリルイソシアヌレート13.95g、ヘプタン23.85g、酢酸エチル38.79g、ポリ酢酸ビニル(重合度400)4.32g、および、重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)2.25gよりなる均一混合液を、ポリビニルアルコール4g、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム0.9g、微粒子状の第三リン酸カルシウム62g、亜硝酸ナトリウム0.8gを溶解した水773mLを含む水相があらかじめ仕込まれた、平板状の撹拌翼と2枚の邪魔板を有する2Lセパラブルフラスコ中に添加し、65℃で5時間反応させた。
次いでセパラブルフラスコの内容物に塩酸を加えてpHを2以下に調整し、第三リン酸カルシウムを溶解させ、その後水で良く洗浄した。洗浄液のpHが中性付近になったことを確認した後、水をアセトンで置換し、重合物をアセトンで十分に洗浄した。次いでアセトンを水で置換した後、酢酸ビニル単位に対して過剰量となるよう下式の量の水酸化ナトリウム(NaOH)を水溶液として加えた。
NaOH(固形分重量)=粒子乾燥重量/86.09×40×1.5
なお水に対するNaOH濃度が4重量%になるように水量は調整した。これを撹拌下、反応温度40℃で6時間保持して鹸化を行った。その後、洗浄液のpHが中性付近になるまで水洗し、さらに80℃の温水で十分に洗浄を行った。次いで121℃、20分間のオートクレーブ処理を行い、清浄な架橋ポリマー担体を得た。得られた担体は粒子状であり、平均粒子径は約100μmであった。
なお水に対するNaOH濃度が4重量%になるように水量は調整した。これを撹拌下、反応温度40℃で6時間保持して鹸化を行った。その後、洗浄液のpHが中性付近になるまで水洗し、さらに80℃の温水で十分に洗浄を行った。次いで121℃、20分間のオートクレーブ処理を行い、清浄な架橋ポリマー担体を得た。得られた担体は粒子状であり、平均粒子径は約100μmであった。
この架橋ポリマー担体151gに、ジメチルスルホキシド(DMSO)183mL、30%NaOH15.2mL、エピクロロヒドリン122mLを加えて、40℃で5時間反応させた。DMSO0.6L、水3.0Lで洗浄することで、エポキシ活性化担体を得た。このエポキシ活性化担体のエポキシ量を測定したところ30μmol/mLであった。
このエポキシ活性化担体160mLに水100mL、2M炭酸ナトリウム水溶液40.1mL、2Mアミノカプロン酸水溶液20.5mLを加え、50℃で5時間反応させた。このスラリーを水3.2Lで洗浄することでアミノカプロン酸固定化担体を得た。滴定によりアミノカプロン酸の固定化量を測定したところ36μmol/mLであった。得られた担体の形状と粒子径は、原料担体からの変化は認められなかった。また、導入されたエポキシ基はアミノ基とカルボキシ基の両方と反応する可能性があるが、アルカリ条件下でのカルボン酸はエポキシ基に対して反応性が無いのに対して、エポキシ基に対するアミノ基の反応性は非常に高いことから、アミノカプロン酸は主にそのアミノ基を通じて担体に結合していると考えられる。
(2) アミノカプロン酸固定化担体のバッチによるプラスミノゲン精製評価
上記で得た湿潤状態のアミノカプロン酸固定化担体0.5mLの液体部分を生理食塩水に置換した後、クエン酸で抗凝固した血漿を2.5mL添加し、室温で10分間攪拌した。次に、アミノカプロン酸固定化担体が混入しないよう軽遠心分離して担体を沈降させた後、ピペッターを用いて血漿2.5mLを採取した。処理前の血漿中のプラスミノゲン濃度、攪拌後の血漿中のプラスミノゲン濃度よりプラスミノゲンの除去率を算出したところ、攪拌前の90%以上が除去されていることが確認された。
上記で得た湿潤状態のアミノカプロン酸固定化担体0.5mLの液体部分を生理食塩水に置換した後、クエン酸で抗凝固した血漿を2.5mL添加し、室温で10分間攪拌した。次に、アミノカプロン酸固定化担体が混入しないよう軽遠心分離して担体を沈降させた後、ピペッターを用いて血漿2.5mLを採取した。処理前の血漿中のプラスミノゲン濃度、攪拌後の血漿中のプラスミノゲン濃度よりプラスミノゲンの除去率を算出したところ、攪拌前の90%以上が除去されていることが確認された。
次に、リン酸緩衝液で担体を十分に洗浄した後、上清を出来るだけ除去し、0.01Mのアミノカプロン酸溶液を1.5mL添加し、室温で6分間攪拌した。担体が混入しないように上清を回収した。アミノカプロン酸の回収液を電気泳動したところ、目的とする分子量領域に単一バンドが検出され、その純度はほぼ100%であることが確認された。また、処理前の血漿中のプラスミノゲン濃度、回収液中のプラスミノゲン濃度からプラスミノゲンの回収率を算出したところ、精製されたプラスミノゲンの回収率は38%であった。
実施例2: アミノカプロン酸固定化担体のカラムによるプラスミノゲン精製評価
実施例1と同様にしてアミノカプロン酸固定化担体を得た。
実施例1と同様にしてアミノカプロン酸固定化担体を得た。
アミノカプロン酸固定化担体1mLをミニカラムに充填し、生理食塩水5mLを通液しプライミングし、次にクエン酸抗凝固血漿5mLを通液した。処理前の血漿中のプラスミノゲン濃度、カラム通液後の出口から採取した血漿中のプラスミノゲン濃度よりプラスミノゲンの除去率を算出したところ、90%以上であった。次にリン酸緩衝液60mLで洗浄した。最後に0.01Mアミノカプロン酸3mLでプラスミノゲンを回収した。これらの操作はすべて0.25mL/minの一定流速で実施した。アミノカプロン酸の回収液を電気泳動した所、目的とする分子量領域に単一バンドが検出され、その純度はほぼ100%であることが確認された。また、処理前の血漿中のプラスミノゲン濃度、回収液中のプラスミノゲン濃度からプラスミノゲンの回収率を算出したところ、精製されたプラスミノゲンの回収率は67%であった。
以上の実験結果のとおり、本発明に係るアフィニティ担体は、血液などからクリングル配列を有する蛋白質であるプラスミノゲンを選択的に吸着することができ、プラスミノゲンの除去や精製が可能になることが証明された。
Claims (18)
- クリングル配列を有する蛋白質またはペプチドを精製または除去するためのアミノカプロン酸が固定化されたアフィニティ担体。
- アミノカプロン酸が共有結合で固定化された請求項1記載のアフィニティ担体。
- アミノカプロン酸がアミノ基で共有結合された請求項2記載のアフィニティ担体。
- アフィニティ担体がポリビニルアルコールからなる請求項1から3のいずれかに記載のアフィニティ担体。
- ポリビニルアルコールが架橋されていることを特徴とする請求項4記載のアフィニティ担体。
- アフィニティ担体が多孔質の水不溶性担体であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のアフィニティ担体。
- 多孔質の水不溶性担体が粒子状であることを特徴とする請求項6記載のアフィニティ担体。
- クリングル配列を有する蛋白質またはペプチドが、プラスミノゲン、プラスミン、アンジオスタチン、アポリポプロテイン(a)、組織プラスミノゲン活性化因子、ウロキナーゼ、肝細胞増殖因子、NK4、プロトロンビン、第XII因子またはこれらの部分ペプチドから選択される少なくとも一種以上の蛋白質またはペプチドであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のアフィニティ担体。
- クリングル配列を有する蛋白質またはペプチドが、プラスミノゲン、アンジオスタチンまたは、その部分ペプチドであることを特徴とする請求項8記載のアフィニティ担体。
- クリングル配列を有する蛋白質またはペプチドがプラスミノゲンであることを特徴とする請求項9記載のアフィニティ担体。
- 請求項1から10のいずれかに記載のアフィニティ担体を、夾雑成分の混在するクリングル配列を有する蛋白質溶液またはペプチド溶液と接触させる工程を含むことを特徴とする、クリングル配列を有する蛋白質またはペプチドの精製方法。
- 請求項1から10のいずれかに記載のアフィニティ担体を、夾雑成分の混在するクリングル配列を有する蛋白質溶液またはペプチド溶液と接触させる工程を含むことを特徴とする、クリングル配列を有する蛋白質またはペプチドの除去方法。
- 請求項1から10のいずれかに記載のアフィニティ担体を、夾雑成分の混在するクリングル配列を有する蛋白質溶液またはペプチド溶液と接触させてクリングル配列を有する蛋白質またはペプチドを選択的に吸着させる工程、及び
吸着したクリングル配列を有する蛋白質またはペプチドを該担体から解離、回収する工程を含むことを特徴とするクリングル配列を有する蛋白質またはペプチドの精製方法。 - 選択的に吸着したクリングル配列を有する蛋白質またはペプチドを、溶出液を用いて解離、回収する請求項13記載の精製方法。
- アミノカプロン酸を含む溶液、リジンを含む溶液、アルギニン酸を含む溶液、トラネキサム酸を含む溶液、p−アミノベンズアミジンを含む溶液から選ばれる少なくとも一種類以上の溶出液を用いる請求項14記載の精製方法。
- 夾雑成分の混在するクリングル配列を有する蛋白質溶液またはペプチド溶液が、体液、動物組織抽出物、培養液、またはそれらを前処理した溶液である請求項11から15のいずれかに記載のクリングル配列を有する蛋白質またはペプチドの精製方法または除去方法。
- 請求項13から請求項15のいずれかに記載の方法によって精製されたクリングル配列を有する蛋白質またはペプチド。
- クリングル配列を有する蛋白質またはペプチドを精製または除去するための、アミノカプロン酸が固定化されたアフィニティ担体の使用。
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