JP2008308641A - ポリエステル樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
経済的に優れた方法で、耐熱性に優れ、色調のよい脂環族成分含有ポリエステル樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】
少なくとも脂環族ジカルボン酸成分および脂環族ジオール成分下記式(1)、(2)を満足するポリエステルを製造するに際して、ジカルボン酸と脂肪族ジオールのエステル化反応によって得られた酸価が100〜500μ当量/gのエステル低重合体中に、3価のリン化合物、次いで脂環族ジオールを添加し、エステル化反応、引き続き重縮合触媒存在下で重縮合反応を行うことを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造方法。
65℃≦示差走査熱量測定によるガラス転移点温度≦90℃・・・(1)
1.500≦ナトリウムD線での屈折率≦1.570・・・(2)
【選択図】 なし

Description

本発明は、耐熱性および色調に優れた脂環族成分含有ポリエステル樹脂組成物の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、特定のリン化合物を添加した後に、脂環族ジオールを添加することで、脂環族ジオールの分解を抑制し、耐熱性および色調に優れた脂環族成分を含有するポリエステル樹脂組成物を経済的に有意な方法で製造する方法に関する。
脂環族成分を含有するポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(以下PET)などの芳香族ポリエステルとは異なった光学特性、結晶化特性、機械特性を有しており、該ポリエステル単独で、または芳香族ポリエステルと組み合わせて使用される。
工業的な利用としてはたとえば、屈折率の異なるポリマーを交互に積層したフィルムは、特定の波長の光を効率良く反射させることができるため、光フィルターや反射体として利用されている。また光学等方性に優れたフィルムは、液晶ディスプレイ等において位相差フィルムなどとして利用されている。
しかしながら、脂環族成分のひとつである脂環族ジオールは、酸や水分に晒されると分解するため、ジカルボン酸とジオールを出発物質とする直接エステル化法で得られた脂環族成分含有ポリエステルは、ジカルボン酸ジエステルとジオールとを出発物質とするエステル交換法によって得られた脂環族成分含有ポリエステルと比較して、耐熱性が劣るという問題があった。直接エステル化法は、エステル交換法と比較して原料が安価であり、経済的に優位な方法であるため、脂環族成分を含有するポリエステルにおいても、エステル化法による製造方法の確立が切望されていた。
これに対し、特許文献1および2では、ジカルボン酸およびジオールのエステル化反応、重縮合反応によって特定値以下の酸価のエステルを得たのちに、脂環族ジオールを添加し、重縮合する方法が開示されている。しかし、酸価を特定値まで低下させるにはエステル化反応、重縮合反応に長時間を有するため、得られるポリエステル樹脂の耐熱性および色調が十分でなかった。
特開2006−225621号公報 特開2005−314643号公報
本発明の目的は、上記した従来の課題を解決し、経済的な方法で、耐熱性に優れ、色調のよい脂環族成分含有ポリエステル樹脂組成物を提供することである。
少なくとも脂環族ジカルボン酸成分および脂環族ジオール成分下記式(1)、(2)を満足するポリエステルを製造するに際して、ジカルボン酸と脂肪族ジオールのエステル化反応から得られた酸価が100〜500μ当量/gのエステル低重合体中に、3価のリン化合物、次いで脂環族ジオールを添加し、エステル化反応、引き続き重縮合触媒の存在下で重縮合反応を行うことを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造方法によって達成される。
65℃≦示差走査熱量測定によるガラス転移点温度≦90℃・・・(1)
1.500≦ナトリウムD線での屈折率≦1.570・・・(2)
本発明によれば、ジカルボン酸と脂肪族ジオールのエステル化反応から得られた酸価が100〜500μ当量/gのエステル低重合体中に、3価のリン化合物、次いで脂環族ジオールを添加し、エステル化反応、引き続き重縮合触媒の存在下で重縮合反応を行うことで、脂環族ジオールの酸による開裂を抑制し、耐熱性および色調に優れた脂環族成分含有ポリエステル樹脂を経済的な方法で製造することができる。
本発明によるポリエステル樹脂の製造方法は、液晶ディスプレイに好適な低光弾性係数を有したポリエステル樹脂組成物を得ることができ、また光反射性に優れた積層ポリエステルフィルムを得ることができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法は、少なくとも脂環族ジカルボン酸成分および脂環族ジオール成分な下記式(1)、(2)を満足するポリエステルを製造するに際して、ジカルボン酸と脂肪族ジオールのエステル化反応から得られた酸価が100〜500μ当量/gのエステル低重合体中に、3価のリン化合物、次いで脂環族ジオールを添加し、エステル化反応、引き続き重縮合触媒の存在下で重縮合反応を行うことを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造方法である。
65℃≦示差走査熱量測定によるガラス転移点温度≦90℃・・・(1)
1.500≦ナトリウムD線での屈折率≦1.570・・・(2)
本発明の製造方法によって得られるポリエステル樹脂組成物は、ガラス転移点温度(以下Tg)が65℃から90℃の範囲にあることが必要である。
Tgが65℃未満の場合、耐熱性が不足するために光学特性が経時変化しやすく、またPET等と積層製膜する際には積層樹脂間のTg差が大きくなるために積層ムラ等発生し、製膜安定性が損なわれる。積層フィルムとする場合、本発明のポリエステル樹脂組成物のTgを積層ポリマーのTgと合致させることが好ましく、積層ポリマーのTg(Tg1)と本発明のポリエステル樹脂のTg(Tg2)の差(|Tg1−Tg2|)が10℃以内、さらには5℃以内であることが好ましい。
Tgが90℃を超える場合には、PET等を積層する際にTg差が大きくなりすぎるために、上記同様、積層ムラ等発生し、製膜安定性が損なわれ、またポリエステル樹脂組成物の屈折率を低くすることが困難になってくる。よって本発明のポリエステル樹脂組成物のTgは、70〜87℃の範囲が好ましく、さらには75〜85℃の範囲が好ましい。
本発明の製造方法によって得られるポリエステル樹脂組成物の屈折率については,
1.500〜1.570の範囲にある必要がある。1.500未満とすることはポリエステル樹脂では困難であり、1.570を超える場合には、積層ポリマーとの屈折率差が小さくなるため、得られた積層フィルムの光反射性が小さくなる。なお、本発明における屈折率は、23℃の条件にてナトリウムD線を用いて測定した屈折率を指し、1.510〜1.560の範囲であることが好ましい。
前記した特性を与えるためには、ポリエステル樹脂組成物は少なくとも脂環族ジカルボン酸成分および脂環族ジオール成分を含むことが必要である。ポリエステル樹脂組成物に含まれる芳香環はTgを高める効果があるが、同時に屈折率を高め、光弾性係数を高める効果がある。光弾性係数が大きい場合、フィルムに応力が作用した際に位相差が大きく変化するため、液晶ディスプレイ用途のフィルムには不適当である。
そこで、本発明のポリエステル樹脂組成物は、この芳香環成分を脂環族ジカルボン酸成分や脂環族ジオールで置換することにより、屈折率や光弾性係数を低減させている。本発明における脂環族ジカルボン酸成分としては、シクロヘキサンジカルボン酸成分やデカリンジカルボン酸成分等を挙げることができる。特に入手の容易性や重合反応性の観点からはシクロヘキサンジカルボン酸成分が好ましい。シクロヘキサンジカルボン酸成分は、シクロヘキサンジカルボン酸やそのエステルを原料として用いることができる。
なお、シクロヘキサンジカルボン酸成分など脂環族成分には立体異性体として、シス体、トランス体が存在するが、本発明ではトランス体比率が40%以下であることが好ましい。トランス体比率が高いと光弾性係数が大きくなるため劣る傾向にある。また、トランス体は、シス体に比べ、融点が高いため、トランス体比率が高くなると、室温程度で保管、または、輸送中等に、容易に凝固し、沈降してしまい、不均一となり反応性が悪くなるだけでなく、取り扱い上においても作業性が悪くなる。よって、トランス体比率は、好ましくは、35%以下、より好ましくは、30%以下である。
本発明における脂環族ジオールとしては、スピログリコール成分やイソソルビド成分が好ましく、特に得られるポリエステルの色調の観点からスピログリコール成分が好ましい。ここでスピログリコールとは3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンを指す。
本発明において、例えばPETの場合、テレフタル酸成分(芳香環成分)をシクロヘキサンジカルボン酸等で置換するとTgが低下する。そこでスピログリコール成分やイソソルビド成分など脂環族ジオール成分をエチレングリコール成分に置換することでTgが上昇し、結果として本発明の積層するPETと同程度のTgに調整することができる。Tgを上昇させる効果はスピログリコール成分やイソソルビド成分において顕著である。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、屈折率や光弾性係数を低下させるために、ポリエステル樹脂組成物1kg中に含有される芳香環モル数を4.8モル以下とすることが好ましい。4.8モルを超える場合には屈折率や光弾性係数が増大する傾向にあるため好ましくない。なお、本発明における芳香環モル数とはベンゼン環モル数を基本単位としている。本発明における定義をPETとポリエチレンナフタレート(以下、PEN)を例にして説明する。
PETの場合、基本繰り返し単位の分子量は192であるため、ポリマー1kg当たりの基本繰り返し単位数は5.2となる。基本繰り返し単位中にテレフタル酸成分(ベンゼン環1個相当)は1モル含まれるため、PETの芳香環モル数は5.2と計算される。一方、PENの場合、基本繰り返し単位の分子量は242であり、ポリマー1kg当たりの基本繰り返し単位数は4.1である。基本繰り返し単位中にナフタレンジカルボン酸成分は1モル含まれるが、ナフタレン環はベンゼン環2個に相当するため、PENの芳香環モル数は8.2モルと計算する。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、少なくとも脂環族ジカルボン酸成分および脂環族ジオール成分を含むが、その他ジカルボン酸成分としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、テレフタル酸成分、イソフタル酸成分から選択される少なくとも一種のジカルボン酸成分を全ジカルボン酸成分に対して20〜95モル%含有することが好ましい。また脂肪族ジオール成分については、エチレングリコール成分をジオール成分として20〜95モル%含有することが好ましい。前記した芳香族ジカルボン酸成分が20モル%未満の場合、Tgを65℃以上にすることが難しくなり、例えばPETやPENと積層する際にはこれらの樹脂との層間接着性が悪化してくる。同様にエチレングリコール成分が20モル%未満の場合、PETやPENと積層した際、これらの樹脂との層間接着性が悪化してくる。一方、芳香族ジカルボン酸成分が95モル%を超える場合、屈折率や光弾性係数を低減することが難しくなり、エチレングリコール成分が95モル%を超える場合にはTgを65℃以上にすることが難しくなる。
本発明のポリエステル樹脂組成物において、脂環族ジカルボン酸成分、脂環族ジオールの含有量は、前記記載よりそれぞれ5〜80モル%の範囲が好ましく、さらに8〜50モル%が好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物に含有される芳香族ジカルボン酸成分は、前記した種類から少なくとも選択されるが、屈折率や光弾性係数の観点からテレフタル酸成分やイソフタル酸成分が好ましく、これらは同時に使用してもかまわない。特にテレフタル酸成分はその他ポリエステル樹脂組成物との接着性等の観点から主に使用することが好ましい。その他ジカルボン酸成分としては、特性の許す限り従来公知のものを共重合しても構わなく、グリコール成分についても同様である。このような成分としては、例えばアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸やそのエステル、4,4’−ビスフェニレンジカルボン酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、ジフェン酸等の芳香族ジカルボン酸やそのエステル、ジエチレングリコール、ブタンジオール、プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のグリコール成分を挙げることができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法におけるジカルボン酸と脂肪族ジオールのエステル化反応は、従来のジカルボン酸とジオールを原料とするポリエステル樹脂の製造方法におけるエステル化反応条件を採用することができる。例えば、原料ジカルボン酸に対するジオールの仕込み比(モル比)を1.01〜10として反応缶に仕込む。モル比は、ジオールの脱水反応などの副反応を抑制する点で、1.1〜5.0が好ましく、さらに好ましくは1.15〜2である。エステル化反応の温度は特に限定されないが、100〜270℃、より好ましくは120〜260℃、更に好ましくは150〜250℃である。エステル化反応の圧力は特に限定されないが50kPa〜300kPaが好ましい。エステル化反応は、得られる樹脂組成物の透明性、熱安定性、色調の面から無触媒で行うことが好ましいが、触媒を用いても良い。
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法では、ジカルボン酸と脂肪族ジオールのエステル化反応によって得られた酸価が100〜500μ当量/gであるエステル低重合体中に、3価のリン化合物、次いで脂環族ジオールを添加する必要がある。
エステル低重合体の酸価が100μ当量/g未満の場合は、エステル化工程に長時間を要するため、得られるポリエステル樹脂組成物が着色する。500μ当量/gを超える場合は次に添加する脂環属ジオールが酸によって分解され、得られるポリエステル樹脂の耐熱性が低下する。得られるポリエステル樹脂組成物の耐熱性と色調の点から、100〜400μ当量/gが好ましく、さらに好ましくは200〜300μ当量/gである。
本発明における3価のリン化合物としては、例えば亜リン酸エステル、ジアリール亜ホスフィン酸アルキル、ジアリール亜ホスフィン酸アリール、アリール亜ホスホン酸ジアルキル、アリール亜ホスホン酸ジアリールを挙げることができ、具体的にはトリフェニルホスファイト、トリス(4−モノノニルフェニル)ホスファイト、トリ(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ビス[2,4−(ビス1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、3,9―ビス(2,4−ジクミルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、フェニル−ネオペンチレングリコール−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4―ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラ(C12〜C15アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの中で脂環族ジオールの分解抑制の点から、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトが好ましく、さらに好ましくはビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトである。
本発明の製造方法では、3価のリン化合物は、脂環族ジオールを添加する前までに反応系に添加する必要がある。3価のリン化合物によって、酸による脂環族ジオールの分解を抑制し、得られるポリエステル組成物の耐熱性を向上することができる。
3価のリン化合物の添加量は、特に限定されないが、リン元素として70〜300ppmが好ましい。3価のリン化合物をリン元素として70〜300ppm添加することで、酸による脂環族ジオールの分解を抑制することができ、得られるポリエステル樹脂組成物の耐熱性、色調が向上する。3価のリン化合物の添加量がリン元素として70ppm未満の場合、脂環族ジオールの分解抑制が不十分で、得られるポリエステル樹脂組成物の熱安定性が不足し、色調が悪化する場合がある。一方、3価のリン化合物の添加量が、リン元素として300ppmを超えると、重縮合反応の進行が遅延する場合がある。
脂環族ジオールを添加する際の温度は特に限定されないが、脂環族ジオールの分解抑制の点から260℃以下で添加することが好ましく、特に好ましくは240℃以下である。
本発明の製造方法では、式(3)に示される5価のリン化合物をジカルボン酸と脂肪族ジオールのエステル化反応開始から重縮合反応終了までの任意の段階で添加することが得られるポリエステル樹脂組成物の熱安定性の点から好ましい。
Figure 2008308641
(但し、式中、R、Rは炭素数1以上の炭化水素基であり、Rは水素または炭素数
1以上の炭化水素基を示し、R、R、Rは同じであってもよく、異なっていてもよい。Xは、カルボニル基、エステル基のいずれかを示す。nは0または1である。)
式(3)で示されるリン化合物としては、例えばトリメチルホスホノフォメート、トリエチルホスホノフォメート、トリメチルホスホノアセテート、メチルジエチルホスホノアセテート、エチルジメチルホスホノアセテート、エチルジエチルホスホノアセテート、トリエチル―3−ホスホノプロピオネート、トリエチル−2−ホスホノプロピオネート、トリエチル−2−ホスホノブチレート、ジイソプロピル(エトキシカルボニルメチル)ホスホネート、tert−ブチルジエチルホスホノアセテート、ジエチルホルホノ酢酸、トリエチル−4−ホスホノクロトネート、アリールジエチルホルホノアセテート、ジメチル(2−オキソプロピル)ホスホネート、ジエチル(2−オキソ−2−フェニルエチル)ホスホネート、ジエチル(ヒドロキシメチル)ホスホノアセテート等を挙げることができるがこれに限定されるものではなく、これらのリン化合物は、二種以上を併用してもよい。
本発明では、5価のリン化合物の添加量は特に限定されないが、得られるポリエステル樹脂組成物の耐熱性や色調の点から、リン元素換算で得られるポリエステル樹脂組成物に対して5〜150ppmとすることが好ましい。5価のリン化合物の添加量がリン元素換算で5ppm未満である場合、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性に劣る場合がある。一方、5価のリン化合物の含有量がリン元素換算で150ppmを超えると、重縮合反応の進行が遅延する場合がある。5価のリン化合物の添加方法は、そのまま添加してもよいし、脂肪族ジオールなどの溶液もしくはスラリーとして添加してもよい。
本発明の製造方法では、ジカルボン酸と脂肪族ジオールのエステル化反応開始から重縮合反応終了までの任意の段階でアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物から選ばれる少なくとも一種を添加することが好ましい。アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物から選ばれる少なくとも一種を添加することによって、酸による脂環族ジオールの分解を抑制することができ、さらにはフィルム成形する際の静電印加性が向上する。アルカリ金属化合物もしくはアルカリ土類金属化合物の添加時期は特に限定されないが、得られるポリエステル樹脂組成物の耐熱性の点から、脂環族ジオールを添加する前が好ましい。アルカリ金属化合物としては、ナトリウム、カリウムの炭酸塩、水酸化物などが挙げられ、アルカリ土類金属化合物としては、マグネシウム、カルシウムの炭酸塩、水酸化物、およびカルボン酸などが挙げられる。なかでも得られるポリエステル樹脂組成物の色調の点からアルカリ金属化合物が好ましく、特に好ましくは酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、水酸化カリウムである。アルカリ金属化合物もしくはアルカリ土類金属化合物の添加量は、得られるポリエステル樹脂組成物の耐熱性や透明性の点から、アルカリ金属元素もしくはアルカリ土類金属元素として1〜50ppmが好ましく、より好ましくは1〜20ppmである。アルカリ金属化合物もしくはアルカリ土類金属化合物の添加方法は、化合物をそのまま添加してもよいし、脂肪族ジオールなどの溶液もしくはスラリーとして添加してもよい。
本発明の製造方法においては、酸価が100〜500μ当量/gのエステル低重合体に脂環族ジオールを添加した後、エステル化反応、引き続き重縮合触媒存在下で重縮合反応を実施する。エステル低重合体と脂環族ジオールのエステル化反応は、前述したジカルボン酸と脂肪族ジオールのエステル化反応と同様に、従来のジカルボン酸とジオールを原料とするポリエステル樹脂の製造方法におけるエステル化反応を採用することができる。
重縮合反応で用いる重縮合触媒は特に限定されないが、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。なかでも、得られるポリエステル樹脂組成物の耐熱性の観点から、反応活性が高く少量で重縮合反応できるチタン化合物が好ましい。重縮合触媒の添加量は特に限定されないが、例えばチタン化合物の場合は、チタン元素として0.5〜50ppm添加することが好ましい。50ppmを超えると、含有する金属量が増えることから耐熱性が低下したり、色調b値が高くなる場合がある。また、0.5ppm未満の場合は、重合活性が十分でない場合がある。
本発明で重縮合触媒として用いる具体的なチタン化合物としては、チタン原子の置換基がアルコキシ基、フェノキシ基、アシレート基、アミノ基、水酸基の少なくとも1種であるチタン化合物が好ましく用いられる。なかでも、チタン化合物がアルコキシ基を有するものが好ましく、チタン化合物のアルコキシ基が、β−ジケトン系官能基、ヒドロキシカルボン酸系官能基、ケトエステル系官能基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基であることが、反応活性と得られるポリエステル樹脂組成物の色調の点から特に好ましい。具体的なアルコキシ基には、テトラエトキシド、テトラプロポキシド、テトライソプロポキシド、テトラブトキシド、テトラ−2−エチルヘキソキシド等のチタンテトラアルコキシド、アセチルアセトン等のβ−ジケトン系官能基、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸等のヒドロキシ多価カルボン酸系官能基、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のケトエステル系官能基が挙げられ、特に脂肪族アルコキシ基が好ましい。また、フェノキシ基には、フェノキシ、クレシレイト等が挙げられる。また、アシレート基には、ラクテート、ステアレート等のテトラアシレート基、フタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸またはそれらの無水物等の多価カルボン酸系官能基、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、カルボキシイミノ二酢酸、カルボキシメチルイミノ二プロピオン酸、ジエチレントリアミノ五酢酸、トリエチレンテトラミノ六酢酸、イミノ二酢酸、イミノ二プロピオン酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二プロピオン酸、メトキシエチルイミノ二酢酸等の含窒素多価カルボン酸系官能基が挙げられ、特に脂肪族アシレート基が好ましい。また、アミノ基には、アニリン、フェニルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。また、これらの置換基を2種含んでなるジイソプロポキシビスアセチルアセトンやトリエタノールアミネートイソプロポキシド等が挙げられる。
本発明の製造方法において、重縮合触媒の添加時期は、重合反応器内の減圧を始める前に反応系へ添加させればよく、特に限定されないが、エステル低重合体と脂環族ジオールのエステル化反応においては、チタン触媒は存在させない方が好ましい。エステル低重合体と脂環族ジオールのエステル化反応終了前にチタン触媒を添加した場合、チタン触媒に起因した微細粒子が発生し、得られたポリエステル樹脂に濁りが発生する場合がある。
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法としては、ポリエステル樹脂組成物のゲル化抑制の観点から重縮合温度を260〜280℃の出来るだけ低温で実施することが好ましい。重縮合温度とは、通常、230〜240℃から徐々に温度を上げていき、ある目標の温度に到達した後は一定の温度で重縮合するため、その最終の一定温度のことである。280℃より高い場合は、重合は促進されるものの、同様に高温下でゲル化も促進され、また、260℃より低い場合は、重合活性が落ち、重合時間が遅延することで同様にゲル化が促進されるため好ましくない。従って、重縮合温度は、好ましくは、265〜275℃、より好ましくは268〜272℃である。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、固有粘度が0.65〜1.0の範囲であることが好ましい。固有粘度が0.65未満の場合、ポリエステル樹脂組成物が脆くなるために好ましくなく、固有粘度が1.0を超える場合にはその溶融粘度が高くなるため、精度の良い積層フィルムを得ることが困難になる。
次に、本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法について詳しく説明する。
テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸とエチレングリコールとを反応装置へ仕込み、常圧下温度を250℃付近までゆっくり昇温しながら水を留出させ、得られるエステル低重合体の酸価が100〜500μ当量/gとなるまで水を反応系外へ留出させながらエステル化反応を進行させる。
得られた酸価が100〜500μ当量/gのエステル低重合体に、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、エチルジエチルホスホノアセテート、水酸化カリウムを添加し、次いでスピログリコールを添加する。スピログリコールとエステル低重合体とのエステル化反応を実施し、所定量の水が留出した後、重縮合反応缶へ投入する。さらに、重縮合触媒としてチタン化合物を添加する。重縮合反応は、装置内温度をゆっくり280℃まで昇温しながら装置内圧力を常圧から133Pa以下まで減圧する。重合反応の進行に従って反応物の粘度が上昇する。反応物の攪拌トルクが重合終了目標となったら缶内の圧力を常圧に復帰し、ポリエステル樹脂組成物を得る。
このようにしてポリエステル樹脂組成物を得ることができるが、上記は一例であって、ジカルボン酸、ジオールや触媒および重合条件はこれに限定されるわけではない。
このようにして得られたポリエステル樹脂組成物は、光弾性係数が低く、液晶ディスプレイとして好適である。また、PET等を交互に積層したフィルムは光反射性に優れ、反射材用途に好適である。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
なお、物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
(1)ポリエステルの熱特性(ガラス転移点)
測定するサンプルを約10mg秤量し、アルミニウム製パン、パンカバーを用いて封入し、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製 DSC7型)によって測定した。測定においては窒素雰囲気中で20℃から285℃まで16℃/分の速度で昇温した後液体窒素を用いて急冷し、再び窒素雰囲気中で20℃から285℃まで16℃/分の速度で昇温する。この2度目の昇温過程でガラス転移点を測定した。
(2)ポリエステルの屈折率
ポリエステル樹脂組成物を溶融押し出しすることで厚さ100μmの未延伸シートを得る。ついで光源としてナトリウムD線を用い23℃の温度条件にて株式会社アタゴ製 「アッベ式屈折率計 NAR−4T」で屈折率を測定した。
(3)エステル低重合体の酸価
(i)N/25エタノール性水酸化ナトリウム溶液の力価
スルファミン酸0.08gを純水70mlに溶解したスルファミン酸水溶液を用いて滴定し、力価を求める。
(ii)エステル低重合体の酸価
エステル低重合体約0.2gを計量し、o−クレゾール/クロロホルム(3:2)溶液を50ml加え、90℃で1時間溶融した後、30分間放冷した。その後、クロロホルムを30ml加え、さらに13%塩化リチウムメタノール溶液を5ml加え、N/25エタノール性水酸化ナトリウム溶液で平沼社製COM−450を用いて滴定した。滴定結果から、酸価(μ当量/g)を下記式(5)により算出した。
酸価(μ当量/g)=A×f×10×(1/25)/w・・・(5)
但し、A:試料滴定数(ml)
f:N/25エタノール性水酸化ナトリウム溶液の力価
w:エステル低重合体採取量
(4)固有粘度(dl/g)
固有粘度はオルトクロロフェノールを溶媒とし、25℃で測定した。
(5)耐熱性(ゲル化率)
ポリエステル樹脂組成物1gを凍結粉砕して直径300μm以下の粉体状とし真空乾燥する。この試料を、オーブン中で、大気下、300℃で2.5時間熱処理する。これを、50mlのオルトクロロフェノール(OCP)中、80〜150℃の温度で0.5時間溶解させる。続いて、ブフナー型ガラス濾過器(最大細孔の大きさ20〜30μm)で濾過し、洗浄・真空乾燥する。濾過前後の濾過器の重量の増分より、フィルターに残留したOCP不溶物の重量を算出し、OCP不溶物のポリエステル樹脂組成物重量(1g)に対する重量分率を求め、ゲル化率(%)とした。
(6)ポリエステル樹脂組成物の色調
重合完了後のポリエステルチップを色差計(スガ試験機社製、SMカラーコンピュータ型式SM−T45)を用いて、ハンター値(L、b値)として測定した。
(7)ポリエステル樹脂組成物のリン元素含有量
堀場製作所製蛍光X線装置(型番MESA−500W)を用い、ポリマの蛍光X線の強度を測定した。この値を含有量既知のサンプルで予め作成した検量線を用い、金属含有量に換算した。
(8)シクロヘキサンジカルボン酸のシス、トランス体比率
試料をメタノールで5〜6倍に希釈し、その希釈溶液を0.4μlを液体クロマトグラフィーで下記条件にて測定した。
装置:島津製LC−10ADvp
カラム:キャピラリーカラム Agilent Technologies社製DB−17(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)
昇温条件:初期温度110℃、初期時間25分、昇温速度6℃/min、最終温度200℃
(9)光弾性係数(×10−12Pa−1
短辺1cm長辺7cmのサンプルを切り出した。このサンプルの厚みをd(μm)とする。このサンプルを(株)島津製作所社製TRANSDUCER U3C1−5Kを用いて、上下1cmずつをチェックに挟み長辺方向に1kg/mm(9.81×10Pa)の張力(F)をかけた。この状態で、ニコン(株)社製偏光顕微鏡5892を用いて位相差R(nm)を測定した。光源としてはナトリウムD線(589nm)を用いた。これらの数値を光弾性係数=R/(d×F)にあてはめて光弾性係数を計算した。
光弾性係数が100未満の場合を合格とした。
(10)反射率
日立製作所製 分光光度計(U−3410 Spectrophotometer)にφ60積分球130−0632((株)日立製作所)および10°傾斜スペーサーを取り付け反射率のピーク値を測定した。なお、バンドパラメーターは2/servoとし、ゲインは3と設定し、187nm〜2600nmの範囲を120nm/min.の検出速度で測定した。また、反射率を基準化するため、標準反射板として付属のBaSO板を用いた。なお、本評価法では相対反射率となるため、反射率は100%以上となる場合もある。
(11)剥離性
JIS K5600(2002年)に従って試験を行った。なお、フィルムを硬い素地とみなし、2mm間隔で25個の格子状パターンを切り込んだ。また、約75mmの長さに切ったテープを格子の部分に接着し、テープを60°に近い角度で0.5〜1.0秒の時間で引き剥がした。ここで、テープにはセキスイ製セロテープ(登録商標)No.252(幅18mm)を用いた。評価結果は、格子1つ分が完全に剥離した格子の数で表した。また、試験フィルムの厚みが100μmより薄い場合には、厚さ100μmの二軸延伸PETフィルム(東レ製“ルミラー”T60)に試験フィルムを接着剤で強固に貼りあわせしたサンプルを剥離試験に用いた。この際には、試験サンプルを貫通しないように試験サンプルの面に格子を切り込んでテストを実施した。剥離個数が4個以下を合格とした。
なお、以下に触媒の合成方法を記す。
参考例1(触媒A.クエン酸キレートチタン化合物の合成方法)
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。
実施例1
(ポリエステルの合成)
テレフタル酸を57.7重量部、シス/トランス体比率が75/25である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を14.8重量部、エチレングリコールを54.0重量部をエステル反応装置に仕込んだ。攪拌しながら反応内容物の温度を235℃になるまでゆっくり昇温しながら水を留出させた。所定量の水を留出させた後、得られたエステル低重合体の酸価を測定したところ、210μ当量/gであった。その後、エステル低重合体に旭電化工業(株)製ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト)0.15重量部、エチルジエチルホスホノアセテートを0.02重量部、水酸化カリウム0.001重量部を添加した。次いで、スピログリコール20.0重量部を添加し、スピログリコールとエステル低重合体とのエステル化反応を実施した。
引き続き、反応物を重合装置へ移行し、重縮合触媒としてチタン触媒Aをチタン原子換算で20ppmとなるように添加した。
重合装置内容物を撹拌しながら減圧および昇温し、エチレングリコールを留出させながら重合をおこなった。なお、減圧は90分かけて常圧から133Pa以下に減圧し、昇温は90分かけて235℃から270℃まで昇温した。
重合装置の撹拌トルクが所定の値に達したら重合装置内を窒素ガスにて常圧へ戻し、重合装置下部のバルブを開けてガット状のポリマーを水槽へ吐出した。水槽で冷却されたポリエステルガットはカッターにてカッティングし、チップとした。
このようにしてポリエステルAを得た。結果を表1、2に示す。得られたポリエステルAの固有粘度は0.72、ゲル化率は1.0%、色調b値は10でいずれも良好であった。
同様にテレフタル酸ジメチルを100重量部、エチレングリコールを64重量部用いる以外は前記と同様にしてPET樹脂を重合した。得られたPET樹脂の固有粘度は0.65でありTgは80℃であった。
(単層2軸延伸フィルムの製膜)
ポリエステルチップを真空乾燥したが、一部に塊状物が見られたため、これを崩してから、押出機に供給した。押出機に供給されたポリエステルは280℃で溶融されて金属不織布フィルターによって濾過されたのち、Tダイから溶融シートとして押し出した。溶融シートは静電印加法(電極は直径0.15ミリのタングステンワイヤーを使用)によって表面温度が25℃に制御された鏡面ドラム上で冷却固化され、未延伸シートとなった。該未延伸シートを用いて光弾性係数を測定した。
光弾性係数は85×10−12Pa−1であった。
(積層ポリエステルフィルムの製膜)
前記ポリエステルAおよびPET樹脂をそれぞれ真空乾燥した後、2台の押出機にそれぞれ供給した。
ポリエステルAおよびPET樹脂は、それぞれ、押出機にて280℃の溶融状態とし、ギヤポンプおよびフィルタを介した後、101層のフィードブロックにて合流させた。このとき、積層フィルムの両表層がPET樹脂層となるようにし、積層厚みはポリエステルA層/PET樹脂層が1/2となるように交互に積層した。すなわちポリエステルA層は50層、PET層は51層となるように交互に積層した。
このようにして得られた101層からなる積層体を、ダイに供給し、シート状に押し出し、静電印加(直流電圧8kV)にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化した。
得られたキャストフィルムは、ロール式縦延伸機に導き、90℃に加熱されたロール群によって加熱し、周速の異なるロール間で長手方向に3倍に延伸した。縦方向に延伸が終了したフィルムは、次いでテンター式横延伸機に導いた。フィルムはテンター内で100℃の熱風で予熱し、横方向に3.3倍に延伸した。延伸されたフィルムはそのままテンター内で200℃の熱風にて熱処理した。このようにして厚さ50μmのフィルムを得ることができた。得られたフィルムの特性を表3に示す。本発明のポリエステル樹脂組成物を使用して得られたフィルムは光弾性係数が100×10−12Pa−1未満であり、屈折率も低いために積層フィルムとした際には優れた光反射性を有していた。
実施例2
エステル化反応時間を短縮し、エステル低重合体の酸価が350μ当量/gであった以外は、実施例1と同様に行った。さらに実施例1で重合したPET樹脂を用い、実施例1と同様の条件で積層フィルムを得た。結果を表1〜3に示す。実施例1に比べ、ゲル化率、色調b値が若干悪化したものの、品質として満足する特性を示した。
実施例3、4
重縮合触媒をテトラ−n−ブチルチタネートもしくは三酸化アンチモンに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。さらに実施例1で重合したPET樹脂を用い、同様の条件で積層フィルムを得た。結果を表1〜3に示す。実施例1に比べ、ゲル化率、色調b値が若干悪化したものの、品質として満足する特性を示した。
実施例5,6
テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、エチレングリコール、スピログリコールの量比を変更する以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。さらに実施例1で重合したPET樹脂を用い、同様の条件で積層フィルムを得た。
結果を表1〜3に示す。実施例5も満足すべき特性を示したが、芳香環モル数が大きいために光弾性率が若干増加した。また実施例6は屈折率が十分低いために優れた光反射性を示したが、共重合成分量が増加したためにPETとの相溶性が低下し、層間剥離性が弱くなった。
実施例7
5価のリン化合物であるエチルジエチルホスホノアセテートを添加しない以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物を得た。さらに実施例1で重合したPET樹脂を用い、同様の条件で積層フィルムを得た。結果を表1〜3に示す。実施例1に比べ、ゲル化率、色調b値が若干悪化したものの、品質として満足する特性を示した。
実施例8
水酸化カリウムを添加せず、チタン触媒Aの添加量を減らした以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物を得た。さらに実施例1で重合したPET樹脂を用い、同様の条件で積層フィルムを得た。結果を表1〜3に示す。実施例1に比べ、ゲル化率が若干悪化したものの、品質として満足する特性を示した。
実施例9
水酸化カリウムの変わりに酢酸マンガンを添加し、3価のリン化合物である旭電化工業(株)製ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトの添加量を変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物を得た。さらに実施例1で重合したPET樹脂を用い、同様の条件で積層フィルムを得た。結果を表1〜3に示す。実施例1に比べ、ゲル化率、色調b値が若干悪化したものの、品質として満足する特性を示した。
実施例10
水酸化カリウムを添加せず、酢酸カリウムを0.003重量部添加した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物を得た。さらに実施例1で重合したPET樹脂を用い、同様の条件で積層フィルムを得た。結果を表1〜3に示す。実施例1と同様にゲル化率、色調b値は良好であり、品質として満足する特性を示した。
実施例11
エチルジエチルホスホノアセテートを添加せず、リン酸トリメチルを0.012重量部添加した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物を得た。さらに実施例1で重合したPET樹脂を用い、同様の条件で積層フィルムを得た。結果を表1から3に示す。実施例1に比べ、ゲル化率、色調b値が若干悪化したものの、品質として満足する特性を示した。
実施例12
エチルジエチルホスホノアセテートの量を変更する以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物を得た。さらに実施例1で重合したPET樹脂を用い、同様の条件で積層フィルムを得た。結果を表1〜3に示す。実施例1と比較すると色調b値が若干悪化したものの、ゲル化率、色調b値は良好であり、品質として満足する特性を示した。
実施例13
3価のリン化合物である旭電化工業(株)製ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトの添加量を変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物を得た。さらに実施例1で重合したPET樹脂を用い、同様の条件で積層フィルムを得た。結果を表1〜3に示す。実施例1に比べ、重縮合反応が遅延し、色調b値が若干悪化したものの、品質として満足する特性を示した。
実施例14
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のシス/トランス比率が60/40である以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。結果を表1〜3に示す。重合時にトランス体の析出により配管等が若干つまり気味になり、得られたフィルムもトランス体が多いことから光弾性係数が高くなった。
実施例15
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の代わりにデカリン酸25mol%を添加する以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物、積層フィルムを得た。結果を表1〜3に示す。品質は満足したものの、実施例1と比較して剥離性が低下した。
実施例16
スピログリコールの代わりにイソソルビド10mol%を添加する以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物、積層フィルムを得た。結果を表1〜3に示す。実施例1と比較して色調がやや悪化し、フィルムの光弾性係数も高かった。
比較例1
実施例1と同様にしてエステル低重合体を得て、さらに反応缶内を13.3kPaで3時間反応を行い、酸価が30μ当量/gのエステル低重合体を得た。そこに、旭電化工業(株)製ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、エチルジエチルホスホノアセテート、水酸化カリウム、スピログリコールを添加した以外は、実施例1と同様にポリエステル樹脂組成物、ポリエステル積層フィルムを得た。実施例1と比較してポリエステル樹脂組成物の色調が悪化した。
比較例2
酸価が700μ当量/gのエステル低重合体にスピログリコールを添加した以外は、実施例1と同様にポリエステル樹脂組成物、ポリエステル積層フィルムを得た。実施例1に比べて、ゲル化率、色調ともに悪化した。
比較例3
実施例1のポリエステル樹脂の重合において、シクロヘキサンジカルボン酸成分の代わりにイソフタル酸を15mol共重合し、スピログリコールは共重合しない以外は同様にしてポリエステルを重合し、積層フィルムを得た。結果を表1〜3に示すが、脂環族ジカルボン酸成分、脂環族ジオール成分のいずれも含有しないために屈折率、光弾性係数が大きく、積層フィルムの反射率も小さいものであった。
比較例4
実施例1のポリエステル樹脂の重合において、シクロヘキサンジカルボン酸成分は共重合せず、スピログリコール成分の代わりにシクロヘキサンジメタノール成分を30mol共重合する以外は同様にしてポリエステルを重合し、積層フィルムを得た。結果を表1〜3に示すが、若干光弾性係数が大きく、積層フィルムの反射率も若干劣るものであった。
比較例5
実施例1のポリエステル樹脂の重合において、シクロヘキサンジカルボン酸成分は共重合せず、スピログリコール成分を45mol共重合する以外は同様にしてポリエステルを重合し、積層フィルムを得た。結果を表1〜3に示すが、Tg、ゲル化率が非常に高く、積層フィルムの剥離性も劣るものであった。また、重縮合中に低分子量物の飛沫が多く、真空回路を少し閉塞し、真空度不良が発生した。
比較例6
実施例1のポリエステル樹脂の重合において、シクロヘキサンジカルボン酸成分を25mol共重合し、スピログリコールは共重合しない以外は同様にしてポリエステルを重合し、積層フィルムを得た。結果を表1〜3に示すが、屈折率は目標範囲内であるが、Tgが下がり、積層フィルムの剥離性に劣り、反射率も小さいものであった。また、重縮合中に低分子量物の飛沫が多く、真空回路を少し閉塞し、真空度不良が発生した。
比較例7
旭電化工業(株)製ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトを添加しない以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂組成物、ポリエステルフィルムを得た。結果を表1〜3に示すが、得られたポリエステル樹脂組成物のゲル化率は高く、色調b値も非常に高くなった。
Figure 2008308641
Figure 2008308641
Figure 2008308641

Claims (9)

  1. 少なくとも脂環族ジカルボン酸成分および脂環族ジオール成分を含む下記式(1)、(2)を満足するポリエステルを製造するに際して、ジカルボン酸と脂肪族ジオールのエステル化反応から得られた酸価が100〜500μ当量/gのエステル低重合体中に、3価のリン化合物、次いで脂環族ジオールを添加し、エステル化反応、引き続き重縮合触媒の存在下で重縮合反応を行うことを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造方法。
    65℃≦示差走査熱量測定によるガラス転移点温度≦90℃・・・(1)
    1.500≦ナトリウムD線での屈折率≦1.570・・・(2)
  2. ジカルボン酸と脂肪族ジオールのエステル化反応開始から重縮合反応終了までの任意の段階で下記式(3)で表される5価のリン化合物を添加することを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
    Figure 2008308641
    (但し、式中、R、Rは炭素数1以上の炭化水素基であり、Rは水素または炭素数
    1以上の炭化水素基を示し、R、R、Rは同じであってもよく、異なっていてもよい。Xは、カルボニル基、エステル基のいずれかを示す。nは0または1である。)
  3. ジカルボン酸と脂肪族ジオールのエステル化反応開始から重縮合反応終了までの任意の段階で、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物から選ばれる少なくとも一種を添加することを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  4. 重縮合触媒としてチタン化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物から選ばれる少なくとも一種を用いることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  5. 重縮合触媒としてアルコキシ基、フェノキシ基、アシレート基、アミノ基および水酸基からなる群から選ばれる少なくとも一種の置換基を有しているチタン化合物を用いることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  6. 重縮合触媒のチタン化合物がアルコキシ基を有し、アルコキシ基がβ−ジケトン系官能基、ヒドロキシカルボン酸系官能基およびケトエステル系官能基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  7. 脂環族ジカルボン酸成分がシクロヘキサンジカルボン酸成分であり、全ジカルボン酸成分中5〜80モル%含有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  8. 脂環族ジオール成分がスピログリコール成分であり、全ジオール成分中5〜80モル%含有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  9. ポリエステル繰り返し単位に含まれる芳香環モル数がポリエステル樹脂1kg当たりに換算して4.8モル以下である請求項1から8のいずれか1項記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
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