JP6236946B2 - ポリエステルの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は透明性に優れ、粗大な粒子を抑制した、酢酸マンガン、リン化合物およびチタン化合物を用いた、脂肪族ジカルボン酸成分および複素環ジオール成分含有ポリエステルの製造方法である。更に詳しくは、リン化合物を添加する際のジカルボン酸成分に対する、複素環ジオールを含まないジオール成分のモル比を特定の範囲とすることにより粗大な粒子の生成を抑制したポリエステルの製造方法に関する。
脂環族ジカルボン酸成分および複素環ジオール成分を含有するポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(以下PET)などの芳香族ポリエステルとは異なった光学特性、結晶化特性、機械特性を有しており、各種光学用フィルム、例えば液晶ディスプレイの部材のプリズムシート、光拡散シート、反射板、タッチパネル等のベースフィルム、反射防止用ベースフィルムやディスプレイの防爆用ベースフィルム、PDPフィルター用フィルム等の各種用途に用いられており、また、光反射性に優れた積層ポリエステルフィルムを得ることができることから、金属光沢調フィルム、熱線反射フィルムとしても好適に用いられている。特に、モバイル情報端末としてタッチパネル用途は近年拡大しており、従来の大型の液晶画面と比べ、小さな画面での画像鮮明度を向上させる目的から、フィルムの透明性に対してその要求特性が厳しくなっている。
しかしながら、複素環ジオールは高温、水分および酸により分解し、架橋によるポリエステルの高粘度化が発生したり、高温下での熱劣化によりポリエステルのゲル化が発生したり、また、未反応の複素環ジオールによる重縮合反応時の真空回路が閉塞するという問題が生じる。
複素環ジオールの分解および未反応を抑制する方法としては、エステル交換反応触媒として酢酸マンガンを、重縮合触媒としてチタン触媒を使用し、また熱劣化を抑制する方法としては、リン化合物を多量に添加する方法が挙げられる。しかしながら、ポリエステル中で酢酸マンガン、リン化合物およびチタン化合物が粗大な粒子を形成し、ポリエステルの透明性が悪化するという問題がある。
また、回分式の反応装置によりポリエステルを製造する場合、連続的に製造を行うことで、抜き出し後に僅かに装置内に付着したポリエステルと共に、ポリエステル中の粗大な粒子が反応器内に残留し、次回製造時に核となって、製造を繰り返す毎に粒子の粗大化が進むという問題がある。
ポリエステル中の粗大粒子を抑制する方法として、例えば特許文献1では、チタン化合物と共にホスホネート化合物を添加する方法が提案されている。
しかしながら、前述の方法では、粗大な粒子の形成の抑制および得られるポリエステルの透明性は不十分である。
特開2004−175914号公報
本発明の目的は、上記した従来の目的を解決し、粗大な粒子の形成を抑制し、透明性を向上したポリエステルの製造方法を提供することにある。
前記した本発明の目的は、脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と、複素環ジオールを含むジオール成分とを原料とするポリエステルの製造法において、エステル交換触媒として酢酸マンガンを、得られるポリエステルに対して金属原子換算で100〜200ppm添加し、エステル交換反応させた後、低重合体へリン化合物を、得られるポリエステルに対して金属原子換算で75〜150ppm添加し、更にチタン化合物を、得られるポリエステルに対して金属原子換算で10〜50ppm添加した後に重縮合反応させるに際して、リン化合物を添加する際の低重合体のジカルボン酸成分に対する、複素環ジオールを含まないジオール成分のモル比が1.0〜1.6であることを特徴とするポリエステルの製造方法によって達成できる。
本発明によれば、リン化合物を添加する際のジカルボン酸成分に対する、複素環ジオールを含まないジオール成分のモル比を特定の範囲とすることにより、粗大な粒子の形成を抑制し、透明性を向上したポリエステルを製造することができる。
本発明のポリエステルとは、脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分および複素環ジオールを含むジオール成分からなるポリエステルである。
本発明における脂環族ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸やデカリンジカルボン酸等を挙げることができる。特に入手の容易性や重縮合反応性の観点からはシクロヘキサンジカルボン酸成分が好ましい。
脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、金属スルホネート基を含有するイソフタル酸等のジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体が挙げられ、これらの2種以上を混合して用いても良い。なお、金属スルホネート基を含有するイソフタル酸成分とは、スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩、ホスホニウム塩、更にそれらの誘導体のことを指し、具体的には5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、5−(テトラアルキル)ホスホニウムスルホイソフタル酸、およびその誘導体である5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル、5−リチウムスルホイソフタル酸ジメチル、5−(テトラアルキル)ホスホニウムスルホイソフタル酸ジメチルが挙げられる。
本発明における複素環ジオールとしては、スピログリコールやイソソルビド等を挙げることができる。特に得られるポリエステルの色調の観点からスピログリコール成分が好ましい。ここでスピログリコールとは3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンを指す。
複素環ジオール以外のジオール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオールが挙げられ、これらの2種以上を混合して用いても良い。また、p−(β−オキシエトキシ)安息香酸等のオキシカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
本発明において、ポリエステルは、ガラス転移温度を上昇させ、またPET等の異種ポリエステルと交互に積層する場合の層間接着性を向上させる観点から、脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分を全ジカルボン酸成分に対して20〜95モル%含有することが好ましく、複素環ジオール以外のグリコール成分を全ジカルボン酸成分に対して20〜95モル%含有することが好ましい。
本発明のポリエステルにおいて、脂環族ジカルボン酸成分、複素環ジオールの含有量は、前記記載より、それぞれ5〜80モル%の範囲が好ましく、更に8〜50モル%が好ましい。
本発明のポリエステルは、エステル交換反応触媒として酢酸マンガンを添加し、エステル交換反応させた後、重縮合触媒の存在下で重縮合反応することにより得られるポリエステルである。エステル交換反応触媒として酢酸マンガンを用いることにより、エステル交換反応で未反応となった複素環ジオールによる、重縮合反応時の真空回路の閉塞を抑制することが可能となる。
本発明の製造方法では、酢酸マンガンを、得られるポリエステルに対して金属原子換算で100〜200ppm添加することが必要である。好ましい添加量は110〜175ppmであり、より好ましくは120〜150ppmである。200ppmを超えると、酢酸マンガンにより形成される粒子が粗大化され、ポリエステルの透明性が損なわれる。100ppm未満ではエステル交換反応が不良となり、複素環ジオールの未反応分が増加する。
本反応の製造方法では、エステル交換反応終了後、リン化合物を得られるポリエステルに対してリン原子換算で75〜150ppm添加することが必要である。好ましい添加量は85〜140ppmであり、より好ましくは95〜130ppmである。150ppmを超えると、リン化合物により形成される粒子が粗大化されることでポリエステルの透明性が損なわれ、また、重合時間が延長してポリエステルの色調等が不良となる。75ppm未満ではリン化合物によるポリエステルの劣化抑制が不十分となり、ポリエステルがゲル化を生じたり、熱劣化物による異物を発生させたりする。
本発明に用いられるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸もしくはこれらのメチルエステル又はエチルエステル、フェニルエステル、更にはハーフエステルより成る群から選ばれた一種以上であり、特にトリエチルホスホノアセテート、トリメチルホスフェート、フェニルホスホン酸ジメチルが好ましい。
本発明の製造方法では、リン化合物を添加する際の低重合体のジカルボン酸成分に対する、複素環ジオールを含まないジオール成分のモル比が1.0〜1.5である必要がある。好ましくは1.2〜1.5、より好ましくは1.4〜1.5である。かかる範囲のモル比でリン化合物を添加することにより、析出する粒子が極めて微細化され、透明性に優れたポリエステルを得ることが可能となる。モル比が1.6を超えると、析出する粒子が粗大となり、ポリエステルの透明性が損なわれる。モル比が1.0未満では、エステル交換反応またはリン化合物を添加するまでの工程が長期化するため、生産効率の低下およびポリエステルの品質悪化を引き起こす。
本発明の製造方法では、酢酸マンガンを添加する際とリン化合物を添加する際の、複素環ジオールを含まないジオール成分のモル比の差が0.4以上であることが好ましく、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.7以上である。モル比の差を0.4以上とすることにより、エステル交換反応時のモル比を高くすることが可能となることから、エステル交換反応の遅延を起こすことなく粒子が微細化され、ポリエステルの透明性を向上させることが可能となる。
本発明の製造方法では、リン化合物を添加する際の低重合体の温度が225〜250℃であることが好ましく、より好ましくは230〜245℃、更に好ましくは232〜240℃である。低重合体の温度をかかる範囲とすることにより、高温下でのリン化合物の飛散を抑制することでポリエステルの耐熱性が良好となり、かつ析出する粒子が微細化され、ポリエステルの透明性を更に向上することが可能となる。
本発明の製造方法では、リン化合物を添加した後、更に重縮合触媒としてチタン化合物を添加して重縮合反応する必要がある。チタン化合物を添加した後にリン化合物を添加した場合は、リン化合物によりチタン化合物の触媒活性が低下し、重縮合反応が不良となる。
本発明に用いられるチタン触媒としては、置換基がアルコキシ基、フェノキシ基、アシレート基、アミノ基、水酸基の少なくとも1種であるチタン化合物が好ましく用いられる。 具体的なアルコキシ基には、テトラエトキシド、テトラプロポキシド、テトライソプロポキシド、テトラブトキシド、テトラ−2−エチルヘキソキシド等のチタンテトラアルコキシド、アセチルアセトン等のβ−ジケトン系官能基、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸等のヒドロキシ多価カルボン酸系官能基、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のケトエステル系官能基が挙げられ、特に脂肪族アルコキシ基が好ましい。また、フェノキシ基には、フェノキシ、クレシレイト等が挙げられる。また、アシレート基には、ラクテート、ステアレート等のテトラアシレート基、フタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸またはそれらの無水物等の多価カルボン酸系官能基、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、カルボキシイミノ二酢酸、カルボキシメチルイミノ二プロピオン酸、ジエチレントリアミノ五酢酸、トリエチレンテトラミノ六酢酸、イミノ二酢酸、イミノ二プロピオン酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二プロピオン酸、メトキシエチルイミノ二酢酸等の含窒素多価カルボン酸系官能基が挙げられ、特に脂肪族アシレート基が好ましい。また、アミノ基には、アニリン、フェニルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。また、これらの置換基を2種含んでなるジイソプロポキシビスアセチルアセトンやトリエタノールアミネートイソプロポキシド等が挙げられる。
本発明の製造方法では、チタン化合物の添加量は、得られるポリエステルに対して金属原子換算で10〜50ppmであることが必要である。好ましい添加量は15〜45ppmであり、より好ましくは20〜40ppmである。50ppmを超えると、チタン触媒により形成される粒子が粗大化され、ポリエステルの透明性が損なわれる。10ppm未満では重縮合反応が不良となり、反応時間が遅延する。
本発明の製造方法では、リン化合物を添加してからチタン化合物を添加するまでの間隔が15〜60分であることが好ましく、より好ましくは20〜45分、更に好ましくは25〜30分である。かかる範囲でリン化合物を添加することにより、重縮合反応の遅延を起こすことなく粒子が微細化され、ポリエステルの透明性を向上させることが可能となる。
本発明の製造方法では、エステル交換反応器および重縮合反応器を用いてポリエステルを製造し、低重合体をエステル交換反応器から重縮合反応器へ移行した後、減圧、昇温による重縮合反応を開始する前にリン化合物を添加することが好ましい。リン化合物を重縮合反応器で添加することにより、前製造時に反応器内壁に付着した低重合体に含まれる粒子を核として、酢酸マンガンおよびリン化合物が粗大な粒子を形成することを抑制し、連続的に製造を行った際に装置の洗浄等を行うことなく粒子の微細化およびポリエステルの透明性を維持することが可能となる。
次に本発明のポリエステルの各製造方法について詳しく説明する。
本発明のポリエステルの製造方法は、原料として例えばテレフタル酸ジメチル、シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、エチレングリコール、スピログリコールを所定のポリマー組成となるように、エステル交換反応器へ仕込む。この際には、エチレングリコールを全ジカルボン酸成分に対して1.7〜2.3モル倍添加すれば反応性が良好となる。これらを150℃程度で溶融したのち酢酸マンガンをエステル交換反応触媒として、スピログリコールの分解抑制の点から水酸化カリウム等のアルカリ化合物を添加する。
150℃では、これらのモノマー成分は均一な溶融液体となる。次いで反応容器内を235℃まで昇温しながらメタノールを留出させ、エステル交換反応を実施する。このようにしてエステル交換反応が終了した後、得られた低重合体からエチレングリコールを系外へ留出させ、低重合体のジカルボン酸成分に対する、複素環ジオールを含まないジオール成分のモル比を1.0〜1.6、酢酸マンガンを添加した際とのモル比の差を0.4以上とする。
低重合体のモル比が規定の範囲となった時点で、得られた低重合体を重縮合反応器へ仕込み、低重合体の温度を225〜250℃に保持してトリエチルホスホノアセテート等のエステル交換反応触媒失活剤を添加する。
エステル交換反応触媒失活剤の添加終了より15〜60分後、次いでテトラ−n−ブトキシチタンを重縮合触媒として添加した後、装置内温度をゆっくり285℃まで昇温しながら装置内圧力を常圧から133Pa以下まで減圧する。重縮合反応の進行に従って反応物の粘度が上昇する。所定の撹拌トルクとなった時点で反応を終了し、重合装置からポリエステルを水槽へ吐出する。吐出されたポリエステルは水槽で急冷して、カッターでチップとする。
このようにしてポリエステルを得ることができるが、上記は一例であって、モノマーや触媒および重合条件はこれに限定されるわけではない。
このようにして得られたポリエステルは、透明性および色調に優れ、粗大な粒子や異物が抑制されており、タッチパネル用途のベースフィルムとして好適である。またポリエチレンテレフタレート等を交互に積層したフィルムは光反射性に優れ、金属光沢調フィルムや熱線反射フィルムとして好適である。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
なお、物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
(1)ポリエステルの金属元素量
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所社製、MESA−500W型)を用いて、各元素に対する蛍光X線強度を求め、あらかじめ作成しておいた検量線より求めた。
(2)ポリエステルの溶液ヘイズ
ポリエステル2gをo−クロロフェノール20mlに溶解し、光路長20mmの石英セルおよびヘイズメーター(スガ試験機社製、HGM−2DP型)を用い、積分球式光電光度法によって溶液のヘイズ値を測定した。
(3)ポリエステル中の粒子の最大粒子径
チップからポリマーをプラズマ低温灰化処理法で除去し、粒子を露出させる。処理条件は、ポリマーは灰化されるが粒子は極力ダメージを受けない条件を選択する。その粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、粒子画像をイメージアナライザで処理する。SEMの倍率は、5000倍を選択する。観察箇所を変えて20視野測定を行い、最大粒子径を求めた。
実施例1
テレフタル酸ジメチルを67.6重量部、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルを17.4重量部、エチレングリコールを63.4重量部、スピログリコールを20重量部、酢酸マンガン四水塩を0.060重量部(金属原子換算で135ppm)、水酸化カリウム0.005重量部をそれぞれ計量し、エステル交換反応器に仕込んだ。酢酸マンガンを添加した際のジカルボン酸成分に対する、複素環ジオールを含まないジオール成分のモル比は2.35であった。次いで内容物を150℃で溶解させて撹拌した。
撹拌しながら反応内容物の温度を235℃までゆっくり昇温しながらメタノールを留出させた。所定量のメタノールを留出してエステル交換反応を終了した後、エチレングリコールを系外に留出させてジカルボン酸成分に対する、複素環ジオールを含まないジオール成分のモル比を1.45とした。その後低重合体を重縮合反応器に移行した。
低重合体の温度が235℃となった時点で、重縮合反応器にトリエチルホスホノアセテートを0.085重量部添加し、30分間撹拌した後、テトラ−n−ブトキシチタンをチタン原子として30ppmとなる量添加した。
次いで重合装置内容物を撹拌しながら減圧および昇温し、エチレングリコールを留出させながら重縮合反応を行った。なお、減圧は90分かけて常圧から133Pa以下に減圧し、昇温は90分かけて235℃から285℃まで昇温した。
重縮合反応装置の撹拌トルクが所定の値に達したら重縮合反応装置内を窒素ガスにて常圧へ戻し、重縮合反応装置下部のバルブを開けてガット状のポリエステルを水槽へ吐出した。水槽で冷却されたポリエステルガットはカッターにてカッティングし、チップを得た。
ポリエステルの製造条件を表1に、得られたポリエステルの特性を表2に示す。本発明のポリエステルはヘイズが0.5%と低く透明性に優れ、ポリエステル中の粒子の最大粒子径は0.4μmと良好であった。
装置の洗浄等を行うことなく、同様の方法でポリエステルの重合を5回繰り返し、5回目に得られたポリエステルの評価を実施した。ポリエステルのヘイズは0.5%、ポリエステル中の粒子の最大粒子径は0.4μmと1回目と同等であり良好であった。
実施例2〜5
酢酸マンガンの添加量を変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。その条件および結果を表1、2に示す。実施例2、3においては、ポリエステルのヘイズおよび最大粒子径は良好であった。実施例4、5においては、酢酸マンガンの添加量を低減したことによりエステル交換反応時間の遅延が見られたが問題ないレベルであり、ポリエステルのヘイズおよび最大粒子径は良好であった。
実施例6〜9
トリエチルホスホノアセテートの添加量を変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。その条件および結果を表1、2に示す。実施例6〜9においては、ポリエステルのヘイズおよび最大粒子径は良好であった。
実施例10
トリエチルホスホノアセテートの添加をエステル交換反応器で実施した後、低重合体を重縮合反応器に以降した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。その条件および結果を表1、2に示す。実施例10においては、1回目の重合でのポリエステルのヘイズおよび最大粒子径は良好であった。リン化合物をエステル交換反応器で添加したことにより、5回目の重合でヘイズおよび最大粒子径の上昇が見られたものの問題ないレベルであった。
実施例11
装置としてオートクレーブを1基使用して、エステル交換反応および重縮合反応を同一装置で連続して実施した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。その条件および結果を表1、2に示す。実施例11においては、1回目の重合でのポリエステルのヘイズおよび最大粒子径は良好であった。エステル交換反応を実施する装置とリン化合物を添加する装置が同一であることにより、5回目の重合でヘイズおよび最大粒子径の上昇が見られたものの問題ないレベルであった。
実施例12〜15
トリエチルホスホノアセテートを添加する際の温度を変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。その条件および結果を表1、2に示す。実施例12〜15においては、ポリエステルのヘイズおよび最大粒子径は良好であった。
実施例16、18〜22
エステル交換反応器に仕込むエチレングリコールの量を変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。その条件および結果を表1、2に示す。実施例16はリン化合物を添加する際のモル比が1.5および1.6となったことにより、若干ヘイズが高く、最大粒子径が大きくなったものの問題ないレベルであった。実施例18、19においては、ポリエステルのヘイズおよび最大粒子径は良好であった。また、エステル交換反応時のジカルボン酸成分に対する、複素環ジオールを含まないジオール成分のモル比が2.3および1.9となったことによりエステル交換反応の若干の遅延が見られ、リン化合物を添加する際のモル比が1.4および1.0となったことにより、エステル交換反応終了後、エチレングリコールの留出を完了させるまでの時間に若干の遅延が見られたものの、いずれも問題ないレベルであった。実施例20〜22においては、酢酸マンガンを添加する際とリン化合物を添加する際のジカルボン酸成分に対する、複素環ジオールを含まないジオール成分のモル比の差が0.7、0.4および0.2であることから、エステル交換反応時のジカルボン酸成分に対する、複素環ジオールを含まないジオール成分のモル比が低くなったことにより、エステル交換反応に若干の遅延が見られたものの問題ないレベルであった。
実施例23〜26
テトラ−n−ブトキシチタンの添加量を変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。その条件および結果を表3、4に示す。実施例23〜26においては、ポリエステルのヘイズおよび最大粒子径は良好であった。
実施例27〜30
トリエチルホスホノアセテートを添加してからテトラ−n−ブトキシチタンを添加するまでの間隔を変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。その条件および結果を表3、4に示す。実施例27、28においては、ポリエステルのヘイズおよび最大粒子径は良好であった。実施例29、30においては、ポリエステルのヘイズおよび最大粒子径は良好であった。また、リン化合物を添加してからチタン化合物を添加するまでの間隔を15分および5分としたことにより、重縮合反応が完了するまでの時間に若干の遅延が見られたものの問題ないレベルであった。
実施例31
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルの代わりに、デカリンジカルボン酸ジメチル20モル%に変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。その条件および結果を表3、4に示す。実施例31においては、ポリエステルのヘイズおよび最大粒子径は良好であった。
実施例32
スピログリコールの代わりに、イソソルビド15モル%に変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。その条件および結果を表2に示す。実施例32においては、ポリエステルのヘイズおよび最大粒子径は良好であった。
実施例33、34
リン化合物の種類を表3に示す通りに変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。結果を表4に示す。実施例24、25においては、ポリエステルのヘイズおよび最大粒子径は良好であった。
実施例35
テトラ−n−ブトキシチタンの代わりに、テトラ−i−プロポキシチタンに変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。その条件および結果を表3、4に示す。実施例35においては、ポリエステルのヘイズおよび最大粒子径は良好であった。
実施例36
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(288g、1.00モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を真空下で蒸留した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、そしてその撹拌されている溶液にNaOH(380g、3.04モル)の32重量/重量%水溶液を滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、80モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色のクエン酸キレートチタン化合物(Ti含有量3.85重量%)であるチタン触媒Aを得た。
テトラ−n−ブトキシチタンの代わりに、前記のチタン触媒Aに変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。その条件および結果を表3、4に示す。実施例36においては、ポリエステルのヘイズおよび最大粒子径は良好であった。
実施例37
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.00モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節された。その反応混合物を15分間撹拌し、そしてその反応フラスコに乳酸アンモニウム(252g、2.00モル)の85重量/重量%水溶液を加えると、透明な淡黄色の乳酸キレートチタン化合物(Ti含有量6.54重量%)であるチタン触媒Bを得た。
テトラ−n−ブトキシチタンの代わりに、前記のチタン触媒Bに変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。その条件および結果を表3、4に示す。実施例37においては、ポリエステルのヘイズおよび最大粒子径は良好であった。
比較例1、2
酢酸マンガンの添加量を変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。その条件および結果を表3、4に示す。比較例1においては、酢酸マンガンの添加量が規定の範囲を超えたため、ポリエステルのヘイズが高く、最大粒子径が大きくなり不良であった。比較例2においては、酢酸マンガンの添加量が規定の範囲を下回ったため、エステル交換反応が完結せず、反応を中断し目的のポリエステルを得ることができなかった。
比較例3、4
トリエチルホスホノアセテートの添加量を変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。その条件および結果を表3、4に示す。比較例3においては、リン化合物の添加量が規定の範囲を超えたため、重縮合反応の遅延が発生し、ポリエステルのヘイズが高く、最大粒子径が大きくなり不良であった。比較例4においては、リン化合物の添加量が規定の範囲を下回ったため、ポリエステルのゲル化が発生し、目的のポリエステルを得ることができなかった。
比較例5、6
エステル交換反応器に仕込むエチレングリコールの量を変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。その条件および結果を表3、4に示す。比較例5においては、リン化合物を添加する際のジカルボン酸成分に対する、複素環ジオールを含まないジオール成分のモル比が規定の範囲を超えたため、ポリエステルのヘイズが高く、最大粒子径が大きくなり不良であった。比較例6においては、リン化合物を添加する際のジカルボン酸成分に対する、複素環ジオールを含まないジオール成分のモル比が規定の範囲を下回ったため、エステル交換反応終了からリン化合物を添加するまでの間隔が長期化することでポリエステルのゲル化が発生し、目的のポリエステルを得ることができなかった。
比較例7、8
テトラ−n−ブトキシチタンの添加量を変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。その条件および結果を表3、4に示す。比較例7においては、チタン化合物の添加量が規定の範囲を超えたため、ポリエステルのヘイズが高く、最大粒子径が大きくなり不良であった。比較例8においては、チタン化合物の添加量が規定の範囲を下回ったため、重縮合反応が完結せず、反応を中断し目的のポリエステルを得ることができなかった。
比較例9
トリエチルホスホノアセテートの添加を、重縮合反応開始から30分経過した時点に変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。その条件および結果を表3、4に示す。比較例9においては、チタン化合物を添加した後にリン化合物を添加したため、重縮合反応が完結せず、反応を中断し目的のポリエステルを得ることができなかった。
比較例10
エステル交換反応器に仕込むエチレングリコールの量をジカルボン酸成分に対する、複素環ジオールを含まないジオール成分のモル比が3.2となるように変更し、かつトリエチルホスホノアセテートの添加をエステル交換反応器で実施した後、低重合体を重縮合反応器に以降した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。その条件および結果を表3、4に示す。比較例10においては、リン化合物を添加する際のジカルボン酸成分に対する、複素環ジオールを含まないジオール成分のモル比が規定の範囲を超えたため、1回目の重合でのポリエステルのヘイズが高く、最大粒子径が大きくなり不良であった。更に、リン化合物をエステル交換反応器で添加したため、5回目の重合でヘイズおよび最大粒子径の大幅な上昇が見られ不良であった。
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Claims (3)

  1. 脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と、複素環ジオールを含むジオール成分とを原料とするポリエステルの製造法において、エステル交換触媒として酢酸マンガンを、得られるポリエステルに対して金属原子換算で100〜200ppm添加し、エステル交換反応させた後、低重合体へリン化合物を、得られるポリエステルに対して原子換算で75〜150ppm添加し、更にチタン化合物を、得られるポリエステルに対して金属原子換算で10〜50ppm添加した後に重縮合反応させるに際して、リン化合物を添加する際の低重合体のジカルボン酸成分に対する、複素環ジオールを含まないジオール成分のモル比が1.0〜1.5であることを特徴とするポリエステルの製造方法。
  2. 酢酸マンガンを添加する際の複素環ジオールを含まないジカルボン酸成分に対するジオール成分のモル比が、リン化合物を添加する際の複素環ジオールを含まないジカルボン酸成分に対するジオール成分のモル比より0.4以上高いことを特徴とする、請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
  3. エステル交換反応器および重縮合反応器を用いてポリエステルを製造し、低重合体をエステル交換反応器から重縮合反応器へ移行した後であり、減圧、昇温による重縮合反応を開始する前にリン化合物を添加することを特徴とする、請求項1または2に記載のポリエステルの製造方法
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