JP5186775B2 - ポリエステル樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

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本発明は、熱安定性および色調に優れた脂環族成分含有ポリエステルの製造方法である。さらに詳しくは、リン化合物の添加時期を特定の範囲とすることで重合時における熱劣化異物の発生を抑制し、さらに優れた色調を有する脂環族成分を含有するポリエステル樹脂組成物の製造方法に関する。
脂環族成分を含有するポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(以下PET)などの芳香族ポリエステルとは異なった光学特性、結晶化特性、機械特性を有しており、該ポリエステル単独で、または芳香族ポリエステルと組み合わせて使用される。
例えば、特許文献1では、環状アセタール骨格を有したポリエステル樹脂組成物に対してリン系酸化防止剤等を配合させたポリエステル樹脂が、特許文献2では、チタン化合物の存在下でエステル交換反応を進め、黄色度が小さいポリエステル樹脂を得る製造方法が示されている。
しかしながら、特許文献1では、ポリエステル樹脂製造後に酸化防止剤を単にブレンド・混練するものであり、ポリエステル樹脂製造中における熱劣化には対応できず、またポリエステル製造の途中に添加する場合においても、多量のリン化合物を添加すると重合触媒が失活して重合反応が著しく遅延する。特許文献2ではチタン化合物をエステル交換などのオリゴマー化工程に存在させることで黄色度の小さいポリマーの製造方法を示しているが、黄色度の改善及びポリマー重合時や成型時の熱劣化による異物発生抑制には効果が不十分である。
特開2004−67830号公報(第1項) 特開2006−225621号公報(第1〜19項)
本発明の目的は、上記した従来の課題を解決し、熱安定性や色調に優れた脂環族成分含有ポリエステル樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
前記した本発明の目的は、少なくとも脂環族ジカルボン酸成分を全ジカルボン酸成分中5〜80モル%およびスピログリコール成分を全ジオール成分中5〜80モル%含む下記式(1)〜(4)を満足するポリエステル樹脂を製造するに際して、重合触媒の添加後に重合反応器内の減圧を開始してからポリエステルが目標とする重合度に到達するまでの間にリン化合物をリン元素換算で50ppm以上ポリエステル樹脂に添加することを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造方法によって達成される。
65℃≦示差走査熱量測定によるガラス転移点温度≦90℃・・・(1)
1.500≦ナトリウムD線での屈折率≦1.570・・・(2)
5≦チタン元素≦100 ppm・・・(3)
70≦リン元素≦300 ppm・・・(4)
本発明によれば、リン化合物による重合触媒の失活を招くことなく熱安定性や色調に優れた脂環族成分含有ポリエステル組成物を製造することができる。
本発明によるポリエステル樹脂組成物は液晶ディスプレイに好適な低光弾性係数を有したポリエステル樹脂組成物を得ることができ、また光反射性に優れた積層ポリエステルフィルムを得ることができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法は、少なくとも脂環族ジカルボン酸成分および脂環族ジオール成分を含む下記式(1)〜(4)を満足するポリエステル樹脂を製造するに際して、重合触媒の添加後に重合反応器内の減圧を開始してからポリエステルが目標とする重合度に到達するまでの間にリン化合物をリン元素換算で50ppm以上ポリエステル樹脂に添加することを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造方法である。
65℃≦示差走査熱量測定によるガラス転移点温度≦90℃・・・(1)
1.500≦ナトリウムD線での屈折率≦1.570・・・(2)
5≦チタン元素≦100 ppm・・・(3)
70≦リン元素≦300 ppm・・・(4)
本発明の製造方法によるポリエステル樹脂組成物は、ガラス転移点温度(以下Tg)が65℃から90℃の範囲にあることが必要である。
Tgが65℃未満の場合、耐熱性が不足するため、本製造方法によって得られたポリエステル樹脂組成物またはその成形体の光学特性が経時変化しやすく、またPET等と積層製膜する目的に使用する際には積層樹脂間のTg差が大きくなるために積層ムラ等発生し、製膜安定性が損なわれる。積層フィルムとする場合、本発明の製造方法によって得られるポリエステル樹脂組成物のTgを積層ポリマーのTgと合致させることが好ましく、積層ポリマーのTg(Tg1)と本発明におけるポリエステル樹脂のTg(Tg2)の差(|Tg1−Tg2|)が10℃以内、さらには5℃以内であることが好ましい。
Tgが90℃を超える場合には、PET等を積層する際にTg差が大きくなりすぎるために、上記同様、積層ムラ等発生し、製膜安定性が損なわれ、またポリエステル樹脂の屈折率を低くすることが困難になってくる。よって本発明におけるポリエステル樹脂のTgは、70〜87℃の範囲が好ましく、さらには75〜85℃の範囲が好ましい。
本発明の製造方法によって得られるポリエステル樹脂の屈折率については、1.500〜1.570の範囲にあることが必要である。屈折率を1.500未満とすることはポリエステル樹脂では困難であり、1.570を超える場合には、積層ポリマーとの屈折率差が小さくなるため、得られた積層フィルムの光反射性が小さくなる。さらに本発明の製造方法によって得られるポリエステル樹脂の屈折率は、1.510〜1.560の範囲であることが好ましい。なお、本発明における屈折率は、23℃の条件にてナトリウムD線を用いて測定した屈折率を指す。
本発明の製造方法では、前記した特性を与えるためには、ポリエステル樹脂は少なくとも脂環族ジカルボン酸成分および脂環族ジオール成分を含むことが必要である。ポリエステル樹脂に含まれる芳香環はTgを高める効果があるが、同時に屈折率を高め、光弾性係数を高める効果がある。
光弾性係数が大きい場合、フィルムに応力が作用した際に位相差が大きく変化するため、液晶ディスプレイ用途のフィルムには不適である。
そこで、本発明では、この芳香環成分を脂環族ジカルボン酸成分や脂環族ジオールで置換することにより、屈折率や光弾性係数を低減させている。本発明における脂環族ジカルボン酸成分としては、シクロヘキサンジカルボン酸成分やデカリンジカルボン酸成分等を挙げることができる。特に入手の容易性や重合反応性の観点からはシクロヘキサンジカルボン酸成分が好ましい。シクロヘキサンジカルボン酸成分は、シクロヘキサンジカルボン酸やそのエステルを原料として用いることができる。
なお、シクロヘキサンジカルボン酸成分など脂環族成分には立体異性体として、シス体、トランス体が存在するが、本発明ではトランス体の割合が40%以下であることが好ましい。トランス体比率が高いと光弾性係数が大きくなるため劣る傾向にある。また、トランス体は、シス体に比べ、融点が高いため、トランス体比率が高くなると、室温程度で保管、または、輸送中等に、容易に凝固し、沈降してしまい、不均一となり反応性が悪くなるだけでなく、取り扱い上においても作業性が悪くなる。よって、トランス体比率は、好ましくは、35%以下、より好ましくは、30%以下である。
本発明における脂環族ジオールとしては、スピログリコール成分やイソソルビド成分が好ましく、特に得られるポリエステルの色調の観点からスピログリコール成分が好ましい。ここでスピログリコールとは3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンを指す。
本発明において、例えばPETの場合、テレフタル酸成分(芳香環成分)をシクロヘキサンジカルボン酸等で置換するとTgが低下する。そこでスピログリコール成分やイソソルビド成分など脂環族ジオール成分をエチレングリコール成分に置換することでTgが上昇し、結果として本発明の積層するPETと同程度のTgに調整することができる。Tgを上昇させる効果はスピログリコール成分やイソソルビド成分において顕著である。
本発明の製造方法では、ゲル化率が50%以下であるポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
ゲル化率とは、ポリエステル樹脂組成物を大気下、300℃×2.5hrの条件で加熱処理後、オルト―クロロフェノール不溶物重量の全体に対する割合である。スピログリコールを共重合したポリエステル樹脂組成物は、スピロ環を有することから、酸性、水分含有下、熱により分解しゲル化する特徴がある。よって、このゲル化率が50%以上の場合、ポリエステル樹脂組成物が著しくゲル化しやすいポリマーであることを意味し、例えば、重縮合後、ストランド状に吐出する際に、形状がフシ糸状となりカッターでカッティングできなくなることや製膜する際のフィルター濾過工程で多量のゲルにより濾圧が異常に上昇したり、積層フィルムの表面欠点が増加したり、多層積層フィルムの積層厚みが変動する等の問題を生じることがある。
本発明の製造方法では、ゲル化の抑制の観点から、活性の高いチタン化合物を用いて重縮合反応させることが必要であり、チタン原子として重量基準で5〜100ppm含有させることが必要である。100ppmを越える場合は、含有する金属量が増えることからゲル化が促進され、また、5ppm未満の場合は、重合活性が十分でないため重合時間が結果として遅延してしまい、高温下での滞留時間が長くなることでゲル化が促進されるため好ましくない。よって、チタン原子の含有量は、好ましくは5〜70ppm、より好ましくは10〜50ppmである。
本発明の製造方法において、重縮合用触媒としてのチタン化合物の置換基がアルコキシ基、フェノキシ基、アシレート基、アミノ基、水酸基の少なくとも1種であるチタン化合物が好ましく用いられる。
具体的なアルコキシ基には、テトラエトキシド、テトラプロポキシド、テトライソプロポキシド、テトラブトキシド、テトラ−2−エチルヘキソキシド等のチタンテトラアルコキシド、アセチルアセトン等のβ−ジケトン系官能基、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸等のヒドロキシ多価カルボン酸系官能基、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のケトエステル系官能基が挙げられ、テトラブトキシド、乳酸、クエン酸が好ましく、特に乳酸、クエン酸が好ましい。また、フェノキシ基には、フェノキシ、クレシレイト等が挙げられる。また、アシレート基には、ラクテート、ステアレート等のテトラアシレート基、フタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸またはそれらの無水物等の多価カルボン酸系官能基、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、カルボキシイミノ二酢酸、カルボキシメチルイミノ二プロピオン酸、ジエチレントリアミノ五酢酸、トリエチレンテトラミノ六酢酸、イミノ二酢酸、イミノ二プロピオン酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二プロピオン酸、メトキシエチルイミノ二酢酸等の含窒素多価カルボン酸系官能基が挙げられ、特に脂肪族アシレート基が好ましい。また、アミノ基には、アニリン、フェニルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。また、これらの置換基を2種含んでなるジイソプロポキシビスアセチルアセトンやトリエタノールアミネートイソプロポキシド等が挙げられる。
本発明の製造方法において、前記チタン触媒は、重合反応器内の減圧を始める前に反応系へ添加させることが好ましい。しかしながら、ジカルボン酸成分とグリコール成分からエステル交換反応やエステル化反応によって低重合体を製造する段階においては、チタン触媒は存在させない方が好ましい。低重合体を得る反応前または反応中にチタン触媒を添加した場合、チタン触媒起因の微細粒子が発生し、得られたポリエステル樹脂に濁りが発生するため好ましくない。チタン触媒の添加時期は、低重合体を得るエステル交換反応やエステル化反応が実質的に終了した後から反応容器内を減圧する前の間を選択することが最も好ましい。
本発明において、得られるポリエステル樹脂組成物は、リン化合物をリン元素換算で70〜300ppm(重量基準)含有することが必要である。
リン化合物の含有量がリン元素換算で70ppm未満である場合、得られるポリエステル樹脂組成物の熱安定性は不足しており、重合中に熱劣化異物を発生させたり、得られるポリエステル樹脂組成物が着色するなど品位が低下する。
一方、リン化合物の含有量がリン元素換算で300ppmを超える場合、もはや熱安定性向上や色調向上において顕著な効果が現れなくなる。
本発明において、リン化合物の添加時期は重要であり、重合触媒の添加後に重合反応器内の減圧を開始してからポリエステルが目標とする重合度に到達するまでの間にリン化合物をリン元素換算で50ppm以上ポリエステル樹脂に含有させることが必要である。
このように、重合反応器内の減圧を開始した後にリン化合物を添加すれば、重合触媒の大幅な失活を招くことなく重合をおこなうことができ、熱安定性に優れた色調良好なポリエステル樹脂組成物を製造することができる。
リン化合物を重合反応器内の減圧を開始する以前に添加する方法は従来から知られるものであるが、重合触媒の失活を招くために多量のリン化合物を添加することができず、結果的に熱安定性や色調に優れたポリエステル樹脂組成物を得ることができなかった。また、重合完了後のポリエステル樹脂にリン化合物を添加する場合、重合中における熱劣化異物発生を抑制することができない。
特にポリエステルをバッチ重合で重合する場合、前バッチのポリマーが反応器内に一部残存した状態で次バッチの重合をおこなうため、重合中における熱劣化異物抑制は次バッチ以降のポリマー品位に大きな影響を与えてしまう。
本発明の製造するポリエステル樹脂組成物は、芳香族成分よりも熱的に弱い脂環族成分をジカルボン酸成分、グリコール成分ともに含有するため、前記リン化合物の添加方法を採用することが必要となる。
本発明において、重合反応器内の減圧開始から重合完了までにリン化合物をリン元素換算で50ppm以上含有させることが必要である。50ppm未満である場合、十分な熱安定性や色調をポリエステル樹脂に付与させることができない。
前記添加時期以外にリン化合物を添加してももちろん構わない。例えば、重合反応器内の減圧を開始する以前にリン化合物を添加しても構わない。ただし、この場合には、重合触媒の失活を招かない程度の量にとどめる必要がある。
このように本発明により、従来の製造方法では成し得なかった熱安定性や色調を有した脂環族成分含有ポリエステル樹脂組成物を製造することが可能となった。
本発明において、リン化合物を添加する時期は重合反応器内の減圧を開始してから重合が完了するまでの任意の時期でよいのであるが、重合反応器の撹拌トルク増加値が重合終了目標トルク増加値の50〜95%の時期に添加することが好ましい。なお、本発明における撹拌トルク増加値とは、重合開始時の撹拌トルクをT1、重合進行による撹拌トルクをT2としたときT2−T1であるΔTを指す。よってT1が1,重合完了トルクが2の場合、重合完了目標トルク増加値は1であり、リン化合物添加時のトルクが1.8であればリン化合物添加時のトルク増加値は0.8であるため、80%の時期に添加したことになる。50%未満の時点でリン化合物を添加すると、その後の重合反応が遅延する場合があり、95%を超える時点で添加すると、リン化合物が重合反応系と十分混合されない内に重合終了を迎える場合がある。好ましくは重合終了目標トルク増加値の70〜90%の時期にリン化合物を添加することが好ましい。
本発明において、リン化合物は一度に添加しても、複数回に分割して添加しても構わない。またリン化合物は単独で添加してもよいし、重合原料であるグリコールで希釈して添加しても構わない。原料グリコールを多量に添加すると重合中のポリエステル樹脂の分子量が低下することから、リン化合物単独で添加することが好ましい。
リン化合物添加にあたっては、リン化合物を適当な容器に充填し、その容器ごと重合反応器に添加しても構わない。この場合、容器としてはPETボトルなど、重合するポリエステルの組成に近い容器を用いることが好ましい。
また、リン化合物を重合反応器に添加する際には、重合器内を減圧状態に保ったまま添加することが好ましい。このため、リン化合物を充填した容器を減圧可能な添加用ボックスに収納し、該ボックス内の圧力を反応容器内とほぼ同圧にし、該ボックスと反応容器を隔てるバルブを解放してリン化合物を反応容器内に添加する方法が好ましい。
本発明において、リン化合物に含有されるリン元素の内、50モル%以上が3価のリン元素であることが好ましい。3価のリンを含有するリン化合物は、ポリエステル樹脂重合中における熱劣化を抑制する効果や色調を改善させる効果が大きい。
このようなリン化合物として、例えば亜リン酸エステル、ジアリール亜ホスフィン酸アルキル、ジアリール亜ホスフィン酸アリール、アリール亜ホスホン酸ジアルキル、アリール亜ホスホン酸ジアリールを挙げることができ、具体的にはトリフェニルホスファイト、トリス(4−モノノニルフェニル)ホスファイト、トリ(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ビス[2,4−(ビス1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、3,9―ビス(2,4−ジクミルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、フェニル−ネオペンチレングリコール−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4―ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラ(C12〜C15アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。
本発明において、重合中のポリエステル樹脂の熱劣化、着色抑制の観点から重合温度は260〜290℃の出来るだけ低温で実施することが好ましい。重縮合温度とは、通常、230〜240℃から徐々に温度を上げていき、ある目標の温度に到達した後は一定の温度で重縮合するため、その最終の一定温度のことである。290℃より高い場合は、重合は促進されるものの、熱劣化物が発生しやすく、また、260℃より低い場合は、重合活性が落ち、重合時間が遅延することで熱劣化物が発生しやすいために好ましくない。
本発明において、ポリエステル樹脂組成物は、屈折率や光弾性係数を低下させるために、ポリエステル樹脂組成物1kg中に含有される芳香環モル数を4.8モル以下とすることが好ましい。4.8モルを超える場合には屈折率や光弾性係数が増大する傾向にあるため好ましくない。なお、本発明における芳香環モル数とはベンゼン環モル数を基本単位としている。本発明における定義をPETとPENを例にして説明する。
PETの場合、基本繰り返し単位の分子量は192であるため、ポリマー1kg当たりの基本繰り返し単位数は5.2となる。基本繰り返し単位中にテレフタル酸成分(ベンゼン環1個相当)は1モル含まれるため、PETの芳香環モル数は5.2と計算される。一方、PENの場合、基本繰り返し単位の分子量は242であり、ポリマー1kg当たりの基本繰り返し単位数は4.1である。基本繰り返し単位中にナフタレンジカルボン酸成分は1モル含まれるが、ナフタレン環はベンゼン環2個に相当するため、PENの芳香環モル数は8.2モルと計算する。
本発明において、ポリエステル樹脂組成物は、少なくとも脂環族ジカルボン酸成分および脂環族ジオール成分を含むが、その他ジカルボン酸成分としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、テレフタル酸成分、イソフタル酸成分から選択される少なくとも一種のジカルボン酸成分を全ジカルボン酸成分に対して20〜95モル%含有することが好ましい。またグリコール成分については、エチレングリコール成分をグリコール成分として20〜95モル%含有することが好ましい。前記した芳香族ジカルボン酸成分が20モル%未満の場合、Tgを65℃以上にすることが難しくなったり、例えばPETやPENと積層する際にはこれらの樹脂との層間接着性が悪化してくる。同様にエチレングリコール成分が20モル%未満の場合、PETやPENと積層した際、これらの樹脂との層間接着性が悪化してくる。一方、芳香族ジカルボン酸成分が95モル%を超える場合、屈折率や光弾性係数を低減することが難しくなり、エチレングリコール成分が95モル%を超える場合にはTgを65℃以上にすることが難しくなる。
本発明のポリエステル樹脂組成物において、脂環族ジカルボン酸成分、脂環族ジオールの含有量は、前記記載よりそれぞれ5〜80モル%の範囲が好ましく、さらに8〜50モル%が好ましい。
本発明において、ポリエステル樹脂組成物は、非晶性であることが好ましく、また前記した共重合範囲では実質的に非晶性である。本発明における非晶性とは、DSC測定において融解熱量が4J/g以下であることをいう。このような非晶性のポリエステル樹脂組成物はフィルム製造においてその光学特性が変化しにくく、好ましい。
一方、このような非晶性ポリエステル樹脂組成物は乾燥によって熱融着し、塊を作りやすい傾向がある。そこで、結晶性ポリエステル樹脂組成物を5〜50重量%含ませることで乾燥による塊形成を抑制することができる。そのような結晶性ポリエステル樹脂組成物としては、示差走査熱量測定における結晶融解熱量が4J/g以上であることが好ましい。
結晶性ポリエステルを含ませる方法としては、ベント式押出機による溶融混練が好ましい。すなわち、結晶性ポリエステルと本発明のポリエステル樹脂組成物をベント式押出機で溶融混練してペレットを得る方法である。結晶性ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートやこれらの共重合体を挙げることができるが、ポリエチレンテレフタレートが一番好ましい。
本発明におけるポリエステル樹脂組成物に含有される芳香族ジカルボン酸成分は、前記した種類から少なくとも選択されるが、屈折率や光弾性係数の観点からテレフタル酸成分やイソフタル酸成分が好ましく、これらは同時に使用してもかわまない。特にテレフタル酸成分はその他ポリエステル樹脂組成物との接着性等の観点から主に使用することが好ましい。その他ジカルボン酸成分としては、特性の許す限り従来公知のものを共重合しても構わない、グリコール成分についても同様である。このような成分としては、例えばアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸やそのエステル、4,4’−ビスフェニレンジカルボン酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、ジフェン酸等の芳香族ジカルボン酸やそのエステル、ジエチレングリコール、ブタンジオール、プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のグリコール成分を挙げることができる。さらに無機粒子、有機粒子、染料、顔料、帯電防止剤、酸化防止剤、ワックス等を含有させても構わない。
本発明において、ポリエステル樹脂組成物には、金属成分としてアルカリ金属、アルカリ土類金属、Zn、Co、Mnから選択される元素を含有させることが好ましい。これらの金属元素を含有することでポリエステル樹脂組成物をフィルム成形する際の静電印加性が向上する。なおアルカリ金属の場合、Naはポリエステル樹脂組成物を黄色く着色しやすく、Kがよい。アルカリ土類金属ではCaは異物を形成し易く、Mgがよい。Zn、Co、MnではMnが異物や色調の点から好ましい。このなかでもMgとMnが樹脂の透明性の観点から好ましく、特にMnが好ましい。
前記した金属化合物は、エステル交換反応触媒で兼ねても構わない。特にマンガン化合物はエステル交換反応での活性が強く、好ましい。金属化合物はポリエステルに可溶なものが好ましく、水酸化物や塩化物、酢酸塩が好ましく、特に酢酸塩が好ましい。
次に本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法について詳しく説明する。
本発明の製造方法は、ジカルボン酸とジオールとをエステル化させて低重合体を合成し、次いでこれを重縮合する方法とジカルボン酸エステルとジオールとをエステル交換反応させて低重合体を合成し、次いでこれを重縮合する方法を用いることができる。スピログリコールは酸成分によって分解しやすいため、これを用いる場合には、その分解を避けるためにエステル交換反応によって重合することが好ましい。
エステル交換法の場合、原料として例えばテレフタル酸ジメチル、シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、エチレングリコール、スピログリコールを所定のポリマー組成となるように反応缶へ仕込む。この際には、エチレングリコールを全ジカルボン酸成分に対して1.7〜2.3モル倍添加すれば反応性が良好となる。これらを150℃程度で溶融したのち酢酸マンガンなどをエステル交換反応触媒として添加する。150℃では、これらのモノマー成分は均一な溶融液体となる。次いで反応容器内を235℃まで昇温しながらメタノールを留出させ、エステル交換反応を実施する。このようにしてエステル交換反応が終了した後必要に応じてトリメチルリン酸等のエステル交換反応触媒失活剤を添加する。
次いでクエン酸チタンキレートやテトラブチルチタネート等のチタン系重合触媒を添加する。
重合触媒の添加が終了したら反応物を重合装置へ仕込み、装置内温度をゆっくり280℃まで昇温しながら装置内圧力を常圧から133Pa以下まで減圧する。重合反応の進行に従って反応物の粘度が上昇する。反応物の撹拌トルク増加値が重合終了目標の80%程度となった時点でPETボトルに充填した3価リン化合物を重合反応装置内に減圧を維持したまま添加する。
リン化合物添加後、目標トルク値となった時点で反応を終了し、重合装置からポリエステルを水槽へ吐出する。吐出されたポリエステルは水槽で急冷され、カッターでチップとする。
このようにしてポリエステル樹脂組成物を得ることができるが、上記は一例であって、モノマーや触媒および重合条件はこれに限定されるわけではない。
このようにして得られたポリエステル樹脂組成物は、光弾性係数が低く、液晶ディスプレイ用フィルムとして好適である。またPET等を交互に積層したフィルムは光反射性に優れ、反射材用途に好適である。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
なお、物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
(1)ポリエステルの熱特性(ガラス転移点、結晶融解熱量)
重合完了後の2バッチ分のポリマーをブレンドし、この中から測定するサンプルを約10mg秤量し、アルミニウム製パン、パンカバーを用いて封入し、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製 DSC7型)によって測定した。測定においては窒素雰囲気中で20℃から285℃まで16℃/分の速度で昇温した後液体窒素を用いて急冷し、再び窒素雰囲気中で20℃から285℃まで16℃/分の速度で昇温する。この2度目の昇温過程でガラス転移点を測定した。
また、結晶融解熱量は、2度目の昇温過程で現れる結晶融解ピークの面積から算出した。
(2)ポリエステルの屈折率
重合完了後の2バッチ分のポリマーをブレンドし、この中から得たポリエステル樹脂組成物を溶融押し出しすることで厚さ100μmの未延伸シートを得る。ついで光源としてナトリウムD線を用い23℃の温度条件にて株式会社アタゴ製 「アッベ式屈折率計 NAR−4T」で屈折率を測定した。
(3)固有粘度
重合完了後の2バッチ分のポリマーをブレンドし、この中からポリエステルチップサンプルを取りだし、固有粘度はオルトクロロフェノールを溶媒とし、25℃で測定した。
(4)ゲル化率
重合完了後の2バッチ分のポリマーをブレンドし、この中から得たポリエステル樹脂組成物1gを凍結粉砕して直径300μm以下の粉体状とし真空乾燥する。この試料を、オーブン中で、大気下、300℃で2.5時間熱処理する。これを、50mlのオルトクロロフェノール(OCP)中、80〜150℃の温度で0.5時間溶解させる。続いて、ブフナー型ガラス濾過器(最大細孔の大きさ20〜30μm)で濾過し、洗浄・真空乾燥する。濾過前後の濾過器の重量の増分より、フィルターに残留したOCP不溶物の重量を算出し、OCP不溶物のポリエステル樹脂組成物重量(1g)に対する重量分率を求め、ゲル化率(%)とした。
(5)シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸のシス、トランス体比率
試料をメタノールで5〜6倍に希釈し、その希釈溶液を0.4μlを液体クロマトグラフィーで下記条件にて測定した。
装置:島津製LC−10ADvp
カラム:キャピラリーカラム Agilent Technologies社製DB−17(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)
昇温条件:初期温度110℃、初期時間25分、昇温速度6℃/min、最終温度200℃
(6)光弾性係数(×10−12Pa−1
短辺1cm長辺7cmのサンプルを切り出した。このサンプルの厚みをd(μm)とする。このサンプルを(株)島津製作所社製TRANSDUCER U3C1−5Kを用いて、上下1cmずつをチェックに挟み長辺方向に1kg/mm(9.81×10Pa)の張力(F)をかけた。この状態で、ニコン(株)社製偏光顕微鏡5892を用いて位相差R(nm)を測定した。光源としてはナトリウムD線(589nm)を用いた。これらの数値を光弾性係数=R/(d×F)にあてはめて光弾性係数を計算した。
光弾性係数が100未満の場合を合格とした。
(7)反射率
日立製作所製 分光光度計(U−3410 Spectrophotometer)にφ60積分球130−0632((株)日立製作所)および10°傾斜スペーサーを取り付け反射率のピーク値を測定した。なお、バンドパラメーターは2/servoとし、ゲインは3と設定し、187nm〜2600nmの範囲を120nm/min.の検出速度で測定した。また、反射率を基準化するため、標準反射板として付属のBaSO板を用いた。なお、本評価法では相対反射率となるため、反射率は100%以上となる場合もある。
(8)熱劣化異物
重合完了後の2バッチ分のポリマーをブレンドし、この中からポリエステルチップ1kgを取り出し、このチップ中に含まれる大きさ1ミリ以上の黒色異物数をカウントする。なお、黒色異物の大きさとは、この異物を囲む最も小さな長方形の短辺の長さとする。
黒色異物が0〜3個/kg(ポリマー)以下の場合・・・○
黒色異物が4〜9個/kg(ポリマー)の場合・・・△
黒色異物が10個/kg(ポリマー)以上の場合・・×
なお、大きさが5ミリ以上の黒色異物が観察されれば、異物の個数に関係なく×とした。
(9)ポリエステルの色調
重合完了後の2バッチ分のポリマーをブレンドし、この中から得たポリエステルチップを色差計(スガ試験機社製、SMカラーコンピュータ型式SM−T45)を用いて、ハンター値(L,b値)として測定した。
(10)ポリマーのヘイズ値
重合完了後の2バッチ分のポリマーをブレンドし、この中から得たポリエステルチップ2gをo−クロロフェノール20mlに溶解し、光路長20mmの石英セルおよびヘイズメーター(スガ試験機社製 HGM−2DP型)を用い、積分球式光電光度法によって溶液のヘイズ値を測定した。
(11)ポリエステル樹脂組成物中のチタン元素、リン元素、アンチモン元素の含有量
堀場製作所社製蛍光X線装置(型番MESA−500W)を用い、ポリマの蛍光X線の強度を測定した。この値を含有量既知のサンプルで予め作成した検量線を用い、金属含有量に換算した。
なお、以下に触媒の合成方法を記す。
参考例1(チタン触媒A.クエン酸キレートチタン化合物の合成方法)
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lのフラスコ中に温水(371g)にクエン酸・一水和物(532g、2.52モル)を溶解させた。この撹拌されている溶液に滴下漏斗からチタンテトライソプロポキシド(284g、1.0モル)をゆっくり加えた。この混合物を1時間加熱、還流させて曇った溶液を生成させ、これよりイソプロパノール/水混合物を減圧下で蒸留・留去した。その生成物を70℃より低い温度まで冷却し、その溶液を撹拌しながらNaOHの32重量%水溶液380gを滴下漏斗によりゆっくり加えた。得られた生成物をろ過し、次いでエチレングリコール(504g、8.1モル)と混合し、そして真空下で加熱してイソプロパノール/水を除去し、わずかに曇った淡黄色の生成物(Ti含有量3.85重量%)を得た。
参考例2(チタン触媒B.乳酸キレートチタン化合物の合成方法)
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.0モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(218g、3.51モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節した。その反応混合物を15分間撹拌し、その反応フラスコに乳酸アンモニウムの85重量%水溶液252gを加え、透明な淡黄色の生成物(Ti含有量6.54重量%)を得た。
参考例3(チタン触媒C.チタンアルコキシド化合物の合成方法)
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた2Lのフラスコ中に撹拌されているチタンテトライソプロポキシド(285g、1.0モル)に滴下漏斗からエチレングリコール(496g、8.0モル)を加えた。添加速度は、反応熱がフラスコ内容物を約50℃に加温するように調節した。その反応フラスコに、NaOHの32重量%水溶液125gを滴下漏斗によりゆっくり加えて透明な黄色の液体を得た(Ti含有量5.2重量%)。
実施例1
(ポリエステルの合成)
テレフタル酸ジメチルを67.6重量部、シス/トランス体比率が70/30である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルを17.4重量部、エチレングリコールを49重量部、スピログリコールを20重量部、酢酸マンガン四水塩を0.06重量部それぞれ計量し、エステル交換反応装置に仕込んだ。次いで内容物を150℃で溶解させて撹拌した。
撹拌しながら反応内容物の温度を235℃までゆっくり昇温しながらメタノールを留出させた。所定量のメタノールが留出したのち、トリエチルホスホノアセテートを0.019重量部添加した。トリエチルホスホノアセテートを添加して10分後にチタン触媒Aをチタン元素としてポリマーに対して30ppm含有するように添加した。チタン触媒Aを添加した後さらに10分間撹拌してエステル交換反応を終了した。その後エステル交換反応物を重合装置に移行した。
次いで重合装置内容物を撹拌しながら減圧および昇温し、エチレングリコールを留出させながら重合をおこなった。なお、減圧は90分かけて常圧から133Pa以下に減圧し、昇温は90分かけて235℃から285℃まで昇温した。
重合装置の撹拌トルク増加値が所定の80%値に達したら、PETボトルに充填したビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(旭電化工業製 商品名PEP36)を0.15重量部を重合装置内の減圧状態を維持したまま添加した。なお、PETボトルに充填したリン化合物は、PETボトルごとバルブで重合装置と隔てられたボックス内にセットし、添加前に該ボックス内部の圧力を重合装置内と同等になるように減圧し、添加バルブを開くことで重合装置内に添加した。
リン化合物を添加した後も引き続いて重合をおこない、所定の撹拌トルク増加値となったところで重合を終了した。
重合終了後、重合装置内を窒素ガスにて常圧へ戻し、重合装置下部のバルブを開けてガット状のポリマーを水槽へ吐出した。水槽で冷却されたポリエステルガットはカッターにてカッティングし、チップとした。
1バッチ目の重合が完了した後、重合装置の温度を初期状態に戻し、そのまま再度原料を仕込んで2バッチ目の重合を実施した。得られた2バッチ分のポリマーは均等に混合した。
このようにしてポリエステルAを得た。ポリマーの特性を表1,2に示す。
(単層2軸延伸フィルムの製膜)
ポリエステルチップAを真空乾燥したが、一部に塊状物が見られたため、これを崩してから、押出機に供給した。押出機に供給されたポリエステルは280℃で溶融されて金属不織布フィルターによって濾過されたのち、Tダイから溶融シートとして押し出した。溶融シートは静電印加法(電極は直径0.15ミリのタングステンワイヤーを使用)によって表面温度が25℃に制御された鏡面ドラム上で冷却固化され、未延伸シートとなった。該未延伸シートを用いて光弾性係数を測定した。
光弾性係数は85×10−12Pa−1であった。
(積層ポリエステルフィルムの製膜)
前記ポリエステルAおよび固有粘度が0.65であるPET樹脂をそれぞれ真空乾燥した後、2台の押出機にそれぞれ供給した。
ポリエステルAおよびPET樹脂は、それぞれ、押出機にて280℃の溶融状態とし、ギヤポンプおよびフィルタを介した後、101層のフィードブロックにて合流させた。このとき、積層フィルムの両表層がPET樹脂層となるようにし、積層厚みはポリエステルA層/PET樹脂層が1/2となるように交互に積層した。すなわちポリエステルA層は50層、PET層は51層となるように交互に積層した。
このようにして得られた101層からなる積層体を、ダイに供給し、シート状に押し出し、静電印加(直流電圧8kV)にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化した。
得られたキャストフィルムは、ロール式縦延伸機に導き、87℃に加熱されたロール群によって加熱し、周速の異なるロール間で長手方向に3.2倍に延伸した。縦方向に延伸が終了したフィルムは、次いでテンター式横延伸機に導いた。フィルムはテンター内で100℃の熱風で予熱し、横方向に3.5倍に延伸した。延伸されたフィルムはそのままテンター内で200℃の熱風にて熱処理した。このようにして厚さ50μmのフィルムを得ることができた。本発明のポリエステル樹脂組成物は光弾性係数が100未満であり、屈折率も低いために積層フィルムとした際には優れた光反射性を有していた。フィルムの特性を表2に示す。
実施例2〜3
用いるチタン触媒の種類を表1のとおり変更する以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を重合してフィルムを得た。特性を表1,2に示す。
実施例4
減圧後に添加するリン化合物をトリエチルホスホノアセテートに変更する以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を重合してフィルムを得た。特性を表1,2に示す。
トリエチルホスホノアセテートは5価のリン元素なので、特に2バッチ目のポリマーでは熱劣化異物が1バッチ目よりも若干発生し易く、色調も黄味がはっきりとわかるものであった。
実施例5
減圧後に添加するリン化合物としてPEP36とトリエチルホスホノアセテートを併用する以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を重合してフィルムを得た。特性を表1,2に示す。5価のリンと3価のリンがそれぞれ50%であり、熱劣化異物や色調は実施例4よりも改善された。
実施例6
減圧後に添加するリン化合物としてテトラ(C12〜C15アルキル)−4,4−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト(旭電化工業社製 商品名AS1500)に変更する以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を重合してフィルムを得た。特性を表1,2に示す。
実施例7〜12
減圧後にリン化合物を添加するタイミングやリン化合物添加量、チタン触媒量を変更する以外は変更する以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を重合してフィルムを得た。特性を表1,2に示す。
実施例13〜15、17、参考例16
原料とするテレフタル酸ジメチル、1,4シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルおよびそのトランス体含有比率、エチレングリコール、スピログリコール、デカリンジカルボン酸ジメチル、イソソルビド量をそれぞれ表2の組成となるように変更し、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を重合してフィルムを得た。特性を表1,2に示す。
比較例1
減圧後にリン化合物を添加しない以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を重合してフィルムを得た。特に2バッチ目のポリマーには5ミリを超える熱劣化異物が発生していた。製膜ではポリマーフィルターに異物が詰まり、濾過圧が大きく上昇し、製膜は短時間で終了した。特性を表1,2に示す。
比較例2
重合触媒としてチタン触媒を使用せず、代わりに三酸化アンチモンをアンチモン金属として100ppmポリマーに含有されるように使用して重合した。ポリマーを重合装置から吐出する際、ゲルが混ざっているためガットの太細が見られた。また製膜時においては積層ムラが大きく、反射率は大きくなかった。
比較例3
減圧後に添加するリン化合物の量を表1に変更して重合をおこなったが、リン化合物の添加量が多すぎるため触媒が失活し、4時間以内に重合が終了しないため1バッチ目で中止とした。
比較例4〜6
リン化合物の添加量、チタン触媒の添加量を変更する以外は変更する以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を重合してフィルムを得た。特性を表1,2に示す。
ただし、比較例5ではチタン触媒の量が少なすぎるため、4時間以内に重合が終了しなかったので1バッチ目で中止とした。
比較例7
比較例1の1バッチ目のポリマー(黒色異物△(9固/kg))を用い、ベント付き2軸混練機(L/D=45)でベント孔を減圧しながらビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(旭電化工業製 商品名PEP36)をリン元素換算で150ppm相当添加し、280℃で混練した。混練時の熱溶融により新たな熱劣化異物が発生した。
得られたポリマーを用い、実施例1と同様にしてフィルムを得た。
リン元素としては実施例1と同様に含有するが、重合後の添加のため、フィルム押し出し中にも黒色異物が発生し、製膜フィルター詰まりが発生して製膜は短時間で終了した。
Figure 0005186775
Figure 0005186775

Claims (7)

  1. 少なくとも脂環族ジカルボン酸成分を全ジカルボン酸成分中5〜80モル%およびスピログリコール成分を全ジオール成分中5〜80モル%含む下記式(1)〜(4)を満足するポリエステル樹脂を製造するに際して、重合触媒の添加後に重合反応器内の減圧を開始してからポリエステルが目標とする重合度に到達するまでの間にリン化合物をリン元素換算で50ppm以上ポリエステル樹脂に添加することを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造方法。
    65℃≦示差走査熱量測定によるガラス転移点温度≦90℃・・・(1)
    1.500≦ナトリウムD線での屈折率≦1.570・・・(2)
    5≦チタン元素≦100 ppm・・・(3)
    70≦リン元素≦300 ppm・・・(4)
  2. リン化合物に含まれるリン元素の内、50モル%以上が3価のリン元素であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  3. アルコキシ基、フェノキシ基、アシレート基、アミノ基および水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を有しているチタン化合物を添加することを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  4. チタン化合物のアルコキシ基がβ−ジケトン系官能基、ヒドロキシカルボン酸系官能基およびケトエステル系官能基からなる群から選ばれる少なくとも一種の官能基であることを特徴とする請求項3に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  5. 脂環族ジカルボン酸成分がシクロヘキサンジカルボン酸成分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  6. シクロへキサンジカルボン酸成分として立体異性体のシス、トランス体を含有し、トランス体の割合が40%以下であることを特徴とする請求項5に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
  7. ポリエステル繰り返し単位に含まれる芳香環モル数がポリエステル樹脂1kg当たりに換算して4.8モル以下である請求項1〜6のいずれか1項記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
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