JP2004224917A - ポリエステル樹脂発泡体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】微細な気泡を含有し、発泡倍率の高いポリエステル樹脂の発泡体を容易に製造し得る方法を提供する。
【解決手段】環状アセタール骨格を有するグリコールまたは環状アセタール骨格を有するジカルボン酸を用い重縮合して得られるポリエステル樹脂を、加圧下にガスを含浸させる工程と、圧力を解放した後、該樹脂を加熱して発泡させる工程と、発泡させた樹脂を冷却する工程とを有することを特徴とする、気泡径50μm以下であるポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
【選択図】 無し
【解決手段】環状アセタール骨格を有するグリコールまたは環状アセタール骨格を有するジカルボン酸を用い重縮合して得られるポリエステル樹脂を、加圧下にガスを含浸させる工程と、圧力を解放した後、該樹脂を加熱して発泡させる工程と、発泡させた樹脂を冷却する工程とを有することを特徴とする、気泡径50μm以下であるポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
【選択図】 無し
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は保温材、断熱材、耐衝撃材、吸遮音材などとして使用される、耐熱性、機械特性、耐薬品性等に優れたポリエステル樹脂の微細発泡体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、樹脂発泡体の製造方法としては、以下のような方法が知られている。例えば、樹脂ペレットをガス収着量が平衡状態となる圧力より高い圧力の不活性ガス中に保持してガスを急速に収着させた後、ガス圧力を低下させてガス収着量を平衡状態に移行させ、そのまま押出機中へ注入し、溶融混練りした後、大気中へ押し出すことにより発泡体を得る方法が知られている(特許文献1、特許文献2参照。)。また、押出機中において溶融状態にある樹脂に、バレルの途中から不活性ガスを注入し、十分に混練りした後、大気中へ押し出すことにより発泡体を得る方法が知られている。
【0003】
しかし、これらの方法では、溶融状態の樹脂を急激に大気中へ押し出して発泡体を製造するものであるため、樹脂中の気泡の成長速度が大きく、気泡径が50μm以下の微細な気泡を含有する発泡体は得られない。
【0004】
これらの問題を解決する微細発泡体の成形方法として、バッチ法と、連続成形法(押出成形法及び射出成形法)とが開示されている(特許文献3参照。)。
【0005】
この方法のうち、バッチ法は以下のようにして行われる。予め成形された高分子材料(例えばポリスチレンのシート)に加圧下で不活性ガスを含浸させ、つづいてそのシートにかかっている圧力を下げてガスの過飽和状態にする。このとき、シートは熱力学的に不安定な状態となり、気泡の核が多数発生する。このような状態のシートをガラス転移温度にまで加熱して気泡を成長させ、その後冷却することにより気泡を固定する。
【0006】
この方法でポリスチレンなどの発泡体を製造した場合、2〜25μmの気泡を含有する発泡体が得られている。しかしながら、この方法でポリエステル樹脂の発泡体を製造した場合には、50μm以上の気泡径を有する発泡体しか得られない。
【0007】
この問題を解決する方法として、ポリエステル樹脂に特定の結晶核剤を添加することにより、微細な気泡を含有するポリエステル樹脂の発泡体を製造し得ることが報告されている(特許文献4参照。)。しかしながら、この方法では結晶核剤を添加して溶融成形する工程を必要とする。
【0008】
また、密度が0.9以下のポリエステル樹脂発泡体に炭酸ガスを含有させ、加熱再発泡させることにより、低密度でしかも微細な気泡が分散した高強度ポリエステル樹脂発泡体を製造できることが報告されている(特許文献5参照。)。しかし、この方法では二回の発泡工程が必要である。
【0009】
また、これらの方法では、結晶性ポリエステルの結晶化度を制御する方法であり、発泡前に結晶化が進んでおり、発泡倍率が10倍程度までに制限されるという問題があった。
【0010】
一方、環状アセタール骨格を有するグリコールあるいはジカルボン酸を用いて重縮合して得られるポリエステル樹脂を発泡体用に用いると独立気泡率が高く、耐熱性に優れたポリエステル発泡体の製造が可能であることが開示されている(特許文献6参照。)。しかし、前述した微細発泡成形への適用については、全く言及されていない。
【0011】
【特許文献1】
特公昭53−28189号公報
【特許文献2】
特公昭54−23386号公報
【特許文献3】
米国特許第4473665号公報
【特許文献4】
特開平4−268345号公報
【特許文献5】
特開平6−344457号公報
【特許文献6】
特開2002−201260号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、微細な気泡を含有し、発泡倍率の高いポリエステル樹脂の発泡体を容易に製造し得る方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討の結果、環状アセタール骨格を有するポリエステル樹脂を使用することにより、微細な気泡を含有し、発泡倍率の高いポリエステル樹脂の発泡体を容易に製造し得ることを見い出し、本発明に到達した。
【0014】
即ち、本発明は、以下に示すポリエステル樹脂発泡体の製造方法に関するものである。
(1)環状アセタール骨格を有するグリコールを10〜80モル%含むグリコールとジカルボン酸とを重縮合して得られるポリエステル樹脂を、加圧下にガスを含浸させる工程と、圧力を解放した後、該樹脂を加熱して発泡させる工程と、発泡させた樹脂を冷却する工程とを有することを特徴とする、気泡径50μm以下であるポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
(2)ジカルボン酸が、芳香族ジカルボン酸を90〜100モル%含む前記(1)記載のポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
(3)環状アセタール骨格を有するグリコールが、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン及び/又は5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサンである前記(1)〜(2)記載のポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
(4)環状アセタール骨格を有するジカルボン酸を10〜80モル%含むジカルボン酸とグリコールとを重縮合して得られるポリエステル樹脂を、加圧下にガスを含浸させる工程と、圧力を解放した後、該樹脂を加熱して発泡させる工程と、発泡させた樹脂を冷却する工程とを有することを特徴とする、気泡径50μm以下であるポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
(5)環状アセタール骨格を有するジカルボン酸が、3,9−ビス(2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン及び/又は3,9−ビス(2−カルボメトキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンである前記(4)記載のポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
(6)ポリエステル樹脂が、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの質量比が6:4の混合溶媒を用いて25℃で測定した極限粘度が0.3〜1.2(dl/g)であり、かつ溶融粘度/極限粘度の比が1500〜5000(Pa・s・g/dl)である前記(1)〜(5)記載のポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
(7)ポリエステル樹脂が、示差走査型熱量計で測定されるガラス転移温度が90℃以上、降温時結晶化発熱ピークの熱量が4J/g以下であることを特徴とする前記(1)〜(6)記載のポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
(8)含浸させるガスが二酸化炭素である前記(1)〜(7)記載のポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
(9)環状アセタール骨格を有するグリコールを10〜80モル%含むグリコールとジカルボン酸とを重縮合して得られるポリエステル樹脂を発泡して得られる気泡径50μm以下であるポリエステル樹脂発泡体。
(10) 環状アセタール骨格を有するジカルボン酸を10〜80モル%含むジカルボン酸とグリコールとを重縮合して得られるポリエステル樹脂を発泡して得られる気泡径50μm以下であるポリエステル樹脂発泡体。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明における環状アセタール骨格を有するグリコールとしては、従来公知の各種のもの、例えば、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンや5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
【0016】
本発明における環状アセタール骨格を有する以外のグリコールとしては、特に制限はされないが、その具体例を示すと、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル化合物類、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン、ペンタシクロドデカンジメタノール等の脂環族ジオール類、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、4,4’−スルホニルビスフェノール(ビスフェノールS)等のビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物、ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’―ジヒドロキシビフェニル、4,4’―ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’―ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物等が例示できる。また、3官能以上のポリオール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールを一部に使用することができる。
【0017】
本発明における環状アセタール骨格を有するジカルボン酸としては、従来公知の各種のもの、例えば、3,9−ビス(2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンや、3,9−ビス(2−カルボメトキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
【0018】
本発明における環状アセタール骨格を有する以外のジカルボン酸成分は、特に制限はされないが、その具体例を示すと、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸、イソホロンジカルボン酸等が挙げられる。また、3官能以上のポリカルボン酸、例えば、トリメリット酸、トリメシン酸、トリカルバリル酸、ピロメリット酸などを一部に使用することができる。
【0019】
本発明における芳香族ジカルボン酸としては、従来公知の各種のもの、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
【0020】
本発明に使用するポリエステル樹脂は以下の通りである。
(1)本発明で使用するポリエステル樹脂の1つの態様は、環状アセタール骨格を有するグリコールを10〜80モル%、さらに好ましくは、20〜80モル%含むグリコール成分とジカルボン酸から得られるポリエステル樹脂である。環状アセタール骨格を有するグリコールを上記配合割合とすることにより、本発明のポリエステル樹脂は、優れた発泡成形性を示すと共に、高い機械的性質、高い耐熱性を兼ね備えた発泡体を製造することができる特徴を有する。
【0021】
(2)本発明で使用するポリエステル樹脂のさらに他の態様は、環状アセタール骨格を有するグリコールを10〜80モル%含むグリコール成分と、芳香族ジカルボン酸を90〜100モル%含むジカルボン酸成分を重縮合して得られるポリエステル樹脂である。グリコールとジカルボン酸をそれぞれ上記配合割合とすることにより、本発明のポリエステル樹脂から得られる発泡体は、更に高い機械的性質、耐熱性を有する。
【0022】
(3)本発明で使用するポリエステル樹脂の他の態様は、環状アセタール骨格を有するジカルボン酸を10〜80モル%、さらに好ましくは、20〜80モル%含む含むジカルボン酸成分とグリコールとから得られるポリエステル樹脂である。環状アセタール骨格を有するジカルボン酸を上記配合割合とすることにより、本発明のポリエステル樹脂は、優れた発泡成形性を示すと共に、高い機械的性質、高い耐熱性を兼ね備えた発泡体を製造することができる。
【0023】
本発明において、ポリエステル樹脂の極限粘度及び溶融粘度は、以下の方法より測定する。
(1)極限粘度
混合溶媒(フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比)=6/4)を用いて25℃恒温下で測定した。
(2)溶融粘度
測定温度240℃、剪断速度100(1/s)の条件下で測定した。
【0024】
本発明で使用するポリエステル樹脂の極限粘度は、0.3〜1.2(dl/g)が好ましく、0.5〜1.0(dl/g)が特に好ましい。極限粘度が上記範囲内のポリエステル樹脂を使用した場合には、微細な気泡を含有し、発泡倍率の高いポリエステル樹脂の発泡体をより容易に製造し得る。本発明で使用するポリエステル樹脂の溶融粘度/極限粘度の比は、1500〜5000(Pa・s・g/dl)が好ましい。このような範囲の粘度比のポリエステル樹脂を使用することにより、気泡径50μm以下の微細な気泡を含有し、発泡倍率の高いポリエステル樹脂の発泡体をより容易に製造し得る。
【0025】
本発明で使用するポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が90℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度が90℃以上であると耐熱性の高い発泡体の製造が容易となる。また、本発明で使用するポリエステル樹脂は、降温時結晶化発熱ピークの熱量が4J/g以下(0も含む)であることが好ましい。降温時結晶化発熱ピークの熱量が4J/g以下(0も含む)であると微細な気泡を含有し、発泡倍率の高いポリエステル樹脂の発泡体を容易に製造し得る。
【0026】
本発明で使用するポリエステル樹脂を製造する方法には特に制限はなく、従来公知の方法を適用することが出来る。例えば、エステル交換法、直接エステル化法等の溶融重合法,溶液重合法などを挙げることが出来る。
【0027】
本発明で使用するポリエステル樹脂には、本発明の効果を妨げない範囲で、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、無機フィラー、発泡核剤などを添加しても良い。また、本発明の効果を妨げない範囲で、他の樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどをブレンドしても良い。
【0028】
本発明では、前記ポリエステル樹脂を成形体にして、発泡体を製造することが好ましい。成形する方法および成形体の形状には特に制限はなく、従来公知の方法を適用することが出来る。例えば、押出成形によりシート状、棒状あるいは管状の成形体を成形する、射出成形により各種の形状の成形体を成形する、プレス成形によりシート状の成形体を成形するなどが挙げられる。
【0029】
本発明で使用するガスとしては、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、フロンなどの不燃性ガス、酸素、塩素などの支燃性ガス、アセチレン、アンモニア、一酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、クロロメタン、ジクロロメタン、塩化ビニル、水素、二硫化炭素、メチルアミン、ジメチルエーテル、硫化水素、シアン化水素などの可燃性ガスが挙げられる。中でも樹脂への含浸量が多く、化学的に安定であることから、二酸化炭素が特に好ましい。
【0030】
本発明において、ガスを含浸させる条件は特に限定されないが、加圧含浸させる時間をできるだけ短くするため、圧力は3〜30MPa であることが好ましい。所定時間ガスを含浸させた後、圧力を解放する。圧力を解放する条件は特に限定されないが、短時間で圧力を解放することが好ましい。
【0031】
本発明において、ポリエステル樹脂成形体を加熱して発泡させる具体的な方法は、特に限定されず、成形体を熱媒体中に浸漬する方法でもよいし、成形体を加熱炉に装入する方法でもよい。前者の方法で用いられる熱媒体としては、非水溶媒、親水溶媒、又は常温常圧で気体の物質が挙げられる。また、所定の型内で加熱することにより,所望の形状、発泡倍率の発泡体を得ることもできる。加熱ロールで加熱するにより、シート状の発泡体を得ることもできる。発泡温度は50〜150℃が好ましい。また、加熱発泡時間は10〜1800秒であることが好ましい。加熱発泡時間が長すぎると、気泡径が大きくなるが、上記の範囲であれば気泡径50μm以下の微細な気泡を含有した発泡体を得ることができる。
【0032】
本発明においては、加熱発泡処理を受けた樹脂成形体を冷却することにより、所望のポリエステル樹脂発泡体を得る。
【0033】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に具体的に説明する。但し本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0034】
尚、実施例、比較例中、ジメチルテレフタレートを「DMT」と、3,9−ビス(2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンを「SPD」と、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルを「NDC」と、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルを「CDC」と、エチレングリコールを「EG」と、1,4−シクロヘキサンジメタノールを「CHDM」と、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンを「SPG」と、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサンを「DOG」、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールを「NPG」と略記する。
【0035】
実施例1〜8、比較例1〜4
ジカルボン酸成分として表中に記載のDMT、DMT/SPD、DMT/NDC、またはDMT/CDCの混合物を、グリコール成分としてEG、SPG/EG、DOG/EG、またはNPG/EGの混合物を用いて重縮合させポリエステル樹脂を得た。なお、比較例1はPETG(イーストマンケミカル社製 EASTER6763)を、比較例4はポリエチレンテレフタレート(日本ユニペット社製 RT543)を用いた。次いで、該樹脂を射出成形機を用いて2mm×19mm×42mmの直方体の形状に成形した。得られた成形品をオートクレーブに入れ、二酸化炭素を充填し9MPa、40℃の条件で24時間処理した後、圧力を解放した。その後、取り出した成形品を直ちに100℃の雰囲気で10分間処理し発泡させた。その後、発泡体を室温まで冷却した。得られた発泡体の性状を併せて表に示す。なお、樹脂及び発泡体の性状の測定は以下の方法によった。
【0036】
樹脂の性状の測定方法
〔ガラス転移温度〕ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、(株)島津製作所製、示査走査型熱量計(型式:DSC/TA−50WS)を使用し、試料約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(30ml/分)気流中昇温速度20℃/分で測定した。
〔降温時結晶化発熱ピーク熱量〕ポリエステル樹脂の降温時結晶化発熱ピーク熱量は、(株)島津製作所製、示査走査型熱量計(型式:DSC/TA−50WS)を使用し、試料約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(30ml/分)気流中昇温速度20℃/分で300℃まで加熱し、次いで降温速度10℃/分で20℃まで温度を低下させて測定した。
〔極限粘度〕混合溶媒(フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比)=6/4)を用いて25℃恒温下で測定した。
〔溶融粘度〕測定装置は東洋精機製キャピログラフを用いた。また、測定温度は240℃、剪断速度は100(1/s)の条件でおこなった。なお、比較例4は結晶性ポリエステルであり融点が測定温度以上であるため、測定できなかった。
【0037】
発泡体の性状の測定方法
〔発泡倍率〕発泡体の寸法より見掛け上の体積を求め、発泡前の成形品の体積で割った値を発泡倍率とした。
〔気泡径〕発泡体の気泡径は、発泡体の断面を走査型電子顕微鏡を使って観察し、平均気泡径を求めた。
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【発明の効果】
本発明の製造方法は、耐熱性、機械特性、耐薬品性、環境適性等に優れ、保温材、断熱材、耐衝撃材、吸遮音材などの有用な素材として用いることができる、発泡倍率が高く、気泡径50μm以下の微細な気泡を含有するポリエステル樹脂の発泡体を容易に製造することができ、本発明の工業的意義は大きい。
【発明の属する技術分野】
本発明は保温材、断熱材、耐衝撃材、吸遮音材などとして使用される、耐熱性、機械特性、耐薬品性等に優れたポリエステル樹脂の微細発泡体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、樹脂発泡体の製造方法としては、以下のような方法が知られている。例えば、樹脂ペレットをガス収着量が平衡状態となる圧力より高い圧力の不活性ガス中に保持してガスを急速に収着させた後、ガス圧力を低下させてガス収着量を平衡状態に移行させ、そのまま押出機中へ注入し、溶融混練りした後、大気中へ押し出すことにより発泡体を得る方法が知られている(特許文献1、特許文献2参照。)。また、押出機中において溶融状態にある樹脂に、バレルの途中から不活性ガスを注入し、十分に混練りした後、大気中へ押し出すことにより発泡体を得る方法が知られている。
【0003】
しかし、これらの方法では、溶融状態の樹脂を急激に大気中へ押し出して発泡体を製造するものであるため、樹脂中の気泡の成長速度が大きく、気泡径が50μm以下の微細な気泡を含有する発泡体は得られない。
【0004】
これらの問題を解決する微細発泡体の成形方法として、バッチ法と、連続成形法(押出成形法及び射出成形法)とが開示されている(特許文献3参照。)。
【0005】
この方法のうち、バッチ法は以下のようにして行われる。予め成形された高分子材料(例えばポリスチレンのシート)に加圧下で不活性ガスを含浸させ、つづいてそのシートにかかっている圧力を下げてガスの過飽和状態にする。このとき、シートは熱力学的に不安定な状態となり、気泡の核が多数発生する。このような状態のシートをガラス転移温度にまで加熱して気泡を成長させ、その後冷却することにより気泡を固定する。
【0006】
この方法でポリスチレンなどの発泡体を製造した場合、2〜25μmの気泡を含有する発泡体が得られている。しかしながら、この方法でポリエステル樹脂の発泡体を製造した場合には、50μm以上の気泡径を有する発泡体しか得られない。
【0007】
この問題を解決する方法として、ポリエステル樹脂に特定の結晶核剤を添加することにより、微細な気泡を含有するポリエステル樹脂の発泡体を製造し得ることが報告されている(特許文献4参照。)。しかしながら、この方法では結晶核剤を添加して溶融成形する工程を必要とする。
【0008】
また、密度が0.9以下のポリエステル樹脂発泡体に炭酸ガスを含有させ、加熱再発泡させることにより、低密度でしかも微細な気泡が分散した高強度ポリエステル樹脂発泡体を製造できることが報告されている(特許文献5参照。)。しかし、この方法では二回の発泡工程が必要である。
【0009】
また、これらの方法では、結晶性ポリエステルの結晶化度を制御する方法であり、発泡前に結晶化が進んでおり、発泡倍率が10倍程度までに制限されるという問題があった。
【0010】
一方、環状アセタール骨格を有するグリコールあるいはジカルボン酸を用いて重縮合して得られるポリエステル樹脂を発泡体用に用いると独立気泡率が高く、耐熱性に優れたポリエステル発泡体の製造が可能であることが開示されている(特許文献6参照。)。しかし、前述した微細発泡成形への適用については、全く言及されていない。
【0011】
【特許文献1】
特公昭53−28189号公報
【特許文献2】
特公昭54−23386号公報
【特許文献3】
米国特許第4473665号公報
【特許文献4】
特開平4−268345号公報
【特許文献5】
特開平6−344457号公報
【特許文献6】
特開2002−201260号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、微細な気泡を含有し、発泡倍率の高いポリエステル樹脂の発泡体を容易に製造し得る方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討の結果、環状アセタール骨格を有するポリエステル樹脂を使用することにより、微細な気泡を含有し、発泡倍率の高いポリエステル樹脂の発泡体を容易に製造し得ることを見い出し、本発明に到達した。
【0014】
即ち、本発明は、以下に示すポリエステル樹脂発泡体の製造方法に関するものである。
(1)環状アセタール骨格を有するグリコールを10〜80モル%含むグリコールとジカルボン酸とを重縮合して得られるポリエステル樹脂を、加圧下にガスを含浸させる工程と、圧力を解放した後、該樹脂を加熱して発泡させる工程と、発泡させた樹脂を冷却する工程とを有することを特徴とする、気泡径50μm以下であるポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
(2)ジカルボン酸が、芳香族ジカルボン酸を90〜100モル%含む前記(1)記載のポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
(3)環状アセタール骨格を有するグリコールが、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン及び/又は5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサンである前記(1)〜(2)記載のポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
(4)環状アセタール骨格を有するジカルボン酸を10〜80モル%含むジカルボン酸とグリコールとを重縮合して得られるポリエステル樹脂を、加圧下にガスを含浸させる工程と、圧力を解放した後、該樹脂を加熱して発泡させる工程と、発泡させた樹脂を冷却する工程とを有することを特徴とする、気泡径50μm以下であるポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
(5)環状アセタール骨格を有するジカルボン酸が、3,9−ビス(2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン及び/又は3,9−ビス(2−カルボメトキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンである前記(4)記載のポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
(6)ポリエステル樹脂が、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの質量比が6:4の混合溶媒を用いて25℃で測定した極限粘度が0.3〜1.2(dl/g)であり、かつ溶融粘度/極限粘度の比が1500〜5000(Pa・s・g/dl)である前記(1)〜(5)記載のポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
(7)ポリエステル樹脂が、示差走査型熱量計で測定されるガラス転移温度が90℃以上、降温時結晶化発熱ピークの熱量が4J/g以下であることを特徴とする前記(1)〜(6)記載のポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
(8)含浸させるガスが二酸化炭素である前記(1)〜(7)記載のポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
(9)環状アセタール骨格を有するグリコールを10〜80モル%含むグリコールとジカルボン酸とを重縮合して得られるポリエステル樹脂を発泡して得られる気泡径50μm以下であるポリエステル樹脂発泡体。
(10) 環状アセタール骨格を有するジカルボン酸を10〜80モル%含むジカルボン酸とグリコールとを重縮合して得られるポリエステル樹脂を発泡して得られる気泡径50μm以下であるポリエステル樹脂発泡体。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明における環状アセタール骨格を有するグリコールとしては、従来公知の各種のもの、例えば、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンや5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
【0016】
本発明における環状アセタール骨格を有する以外のグリコールとしては、特に制限はされないが、その具体例を示すと、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル化合物類、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン、ペンタシクロドデカンジメタノール等の脂環族ジオール類、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、4,4’−スルホニルビスフェノール(ビスフェノールS)等のビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物、ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’―ジヒドロキシビフェニル、4,4’―ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’―ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物等が例示できる。また、3官能以上のポリオール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールを一部に使用することができる。
【0017】
本発明における環状アセタール骨格を有するジカルボン酸としては、従来公知の各種のもの、例えば、3,9−ビス(2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンや、3,9−ビス(2−カルボメトキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
【0018】
本発明における環状アセタール骨格を有する以外のジカルボン酸成分は、特に制限はされないが、その具体例を示すと、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸、イソホロンジカルボン酸等が挙げられる。また、3官能以上のポリカルボン酸、例えば、トリメリット酸、トリメシン酸、トリカルバリル酸、ピロメリット酸などを一部に使用することができる。
【0019】
本発明における芳香族ジカルボン酸としては、従来公知の各種のもの、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
【0020】
本発明に使用するポリエステル樹脂は以下の通りである。
(1)本発明で使用するポリエステル樹脂の1つの態様は、環状アセタール骨格を有するグリコールを10〜80モル%、さらに好ましくは、20〜80モル%含むグリコール成分とジカルボン酸から得られるポリエステル樹脂である。環状アセタール骨格を有するグリコールを上記配合割合とすることにより、本発明のポリエステル樹脂は、優れた発泡成形性を示すと共に、高い機械的性質、高い耐熱性を兼ね備えた発泡体を製造することができる特徴を有する。
【0021】
(2)本発明で使用するポリエステル樹脂のさらに他の態様は、環状アセタール骨格を有するグリコールを10〜80モル%含むグリコール成分と、芳香族ジカルボン酸を90〜100モル%含むジカルボン酸成分を重縮合して得られるポリエステル樹脂である。グリコールとジカルボン酸をそれぞれ上記配合割合とすることにより、本発明のポリエステル樹脂から得られる発泡体は、更に高い機械的性質、耐熱性を有する。
【0022】
(3)本発明で使用するポリエステル樹脂の他の態様は、環状アセタール骨格を有するジカルボン酸を10〜80モル%、さらに好ましくは、20〜80モル%含む含むジカルボン酸成分とグリコールとから得られるポリエステル樹脂である。環状アセタール骨格を有するジカルボン酸を上記配合割合とすることにより、本発明のポリエステル樹脂は、優れた発泡成形性を示すと共に、高い機械的性質、高い耐熱性を兼ね備えた発泡体を製造することができる。
【0023】
本発明において、ポリエステル樹脂の極限粘度及び溶融粘度は、以下の方法より測定する。
(1)極限粘度
混合溶媒(フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比)=6/4)を用いて25℃恒温下で測定した。
(2)溶融粘度
測定温度240℃、剪断速度100(1/s)の条件下で測定した。
【0024】
本発明で使用するポリエステル樹脂の極限粘度は、0.3〜1.2(dl/g)が好ましく、0.5〜1.0(dl/g)が特に好ましい。極限粘度が上記範囲内のポリエステル樹脂を使用した場合には、微細な気泡を含有し、発泡倍率の高いポリエステル樹脂の発泡体をより容易に製造し得る。本発明で使用するポリエステル樹脂の溶融粘度/極限粘度の比は、1500〜5000(Pa・s・g/dl)が好ましい。このような範囲の粘度比のポリエステル樹脂を使用することにより、気泡径50μm以下の微細な気泡を含有し、発泡倍率の高いポリエステル樹脂の発泡体をより容易に製造し得る。
【0025】
本発明で使用するポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が90℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度が90℃以上であると耐熱性の高い発泡体の製造が容易となる。また、本発明で使用するポリエステル樹脂は、降温時結晶化発熱ピークの熱量が4J/g以下(0も含む)であることが好ましい。降温時結晶化発熱ピークの熱量が4J/g以下(0も含む)であると微細な気泡を含有し、発泡倍率の高いポリエステル樹脂の発泡体を容易に製造し得る。
【0026】
本発明で使用するポリエステル樹脂を製造する方法には特に制限はなく、従来公知の方法を適用することが出来る。例えば、エステル交換法、直接エステル化法等の溶融重合法,溶液重合法などを挙げることが出来る。
【0027】
本発明で使用するポリエステル樹脂には、本発明の効果を妨げない範囲で、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、無機フィラー、発泡核剤などを添加しても良い。また、本発明の効果を妨げない範囲で、他の樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどをブレンドしても良い。
【0028】
本発明では、前記ポリエステル樹脂を成形体にして、発泡体を製造することが好ましい。成形する方法および成形体の形状には特に制限はなく、従来公知の方法を適用することが出来る。例えば、押出成形によりシート状、棒状あるいは管状の成形体を成形する、射出成形により各種の形状の成形体を成形する、プレス成形によりシート状の成形体を成形するなどが挙げられる。
【0029】
本発明で使用するガスとしては、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、フロンなどの不燃性ガス、酸素、塩素などの支燃性ガス、アセチレン、アンモニア、一酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、クロロメタン、ジクロロメタン、塩化ビニル、水素、二硫化炭素、メチルアミン、ジメチルエーテル、硫化水素、シアン化水素などの可燃性ガスが挙げられる。中でも樹脂への含浸量が多く、化学的に安定であることから、二酸化炭素が特に好ましい。
【0030】
本発明において、ガスを含浸させる条件は特に限定されないが、加圧含浸させる時間をできるだけ短くするため、圧力は3〜30MPa であることが好ましい。所定時間ガスを含浸させた後、圧力を解放する。圧力を解放する条件は特に限定されないが、短時間で圧力を解放することが好ましい。
【0031】
本発明において、ポリエステル樹脂成形体を加熱して発泡させる具体的な方法は、特に限定されず、成形体を熱媒体中に浸漬する方法でもよいし、成形体を加熱炉に装入する方法でもよい。前者の方法で用いられる熱媒体としては、非水溶媒、親水溶媒、又は常温常圧で気体の物質が挙げられる。また、所定の型内で加熱することにより,所望の形状、発泡倍率の発泡体を得ることもできる。加熱ロールで加熱するにより、シート状の発泡体を得ることもできる。発泡温度は50〜150℃が好ましい。また、加熱発泡時間は10〜1800秒であることが好ましい。加熱発泡時間が長すぎると、気泡径が大きくなるが、上記の範囲であれば気泡径50μm以下の微細な気泡を含有した発泡体を得ることができる。
【0032】
本発明においては、加熱発泡処理を受けた樹脂成形体を冷却することにより、所望のポリエステル樹脂発泡体を得る。
【0033】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に具体的に説明する。但し本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0034】
尚、実施例、比較例中、ジメチルテレフタレートを「DMT」と、3,9−ビス(2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンを「SPD」と、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルを「NDC」と、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルを「CDC」と、エチレングリコールを「EG」と、1,4−シクロヘキサンジメタノールを「CHDM」と、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンを「SPG」と、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサンを「DOG」、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールを「NPG」と略記する。
【0035】
実施例1〜8、比較例1〜4
ジカルボン酸成分として表中に記載のDMT、DMT/SPD、DMT/NDC、またはDMT/CDCの混合物を、グリコール成分としてEG、SPG/EG、DOG/EG、またはNPG/EGの混合物を用いて重縮合させポリエステル樹脂を得た。なお、比較例1はPETG(イーストマンケミカル社製 EASTER6763)を、比較例4はポリエチレンテレフタレート(日本ユニペット社製 RT543)を用いた。次いで、該樹脂を射出成形機を用いて2mm×19mm×42mmの直方体の形状に成形した。得られた成形品をオートクレーブに入れ、二酸化炭素を充填し9MPa、40℃の条件で24時間処理した後、圧力を解放した。その後、取り出した成形品を直ちに100℃の雰囲気で10分間処理し発泡させた。その後、発泡体を室温まで冷却した。得られた発泡体の性状を併せて表に示す。なお、樹脂及び発泡体の性状の測定は以下の方法によった。
【0036】
樹脂の性状の測定方法
〔ガラス転移温度〕ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、(株)島津製作所製、示査走査型熱量計(型式:DSC/TA−50WS)を使用し、試料約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(30ml/分)気流中昇温速度20℃/分で測定した。
〔降温時結晶化発熱ピーク熱量〕ポリエステル樹脂の降温時結晶化発熱ピーク熱量は、(株)島津製作所製、示査走査型熱量計(型式:DSC/TA−50WS)を使用し、試料約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(30ml/分)気流中昇温速度20℃/分で300℃まで加熱し、次いで降温速度10℃/分で20℃まで温度を低下させて測定した。
〔極限粘度〕混合溶媒(フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比)=6/4)を用いて25℃恒温下で測定した。
〔溶融粘度〕測定装置は東洋精機製キャピログラフを用いた。また、測定温度は240℃、剪断速度は100(1/s)の条件でおこなった。なお、比較例4は結晶性ポリエステルであり融点が測定温度以上であるため、測定できなかった。
【0037】
発泡体の性状の測定方法
〔発泡倍率〕発泡体の寸法より見掛け上の体積を求め、発泡前の成形品の体積で割った値を発泡倍率とした。
〔気泡径〕発泡体の気泡径は、発泡体の断面を走査型電子顕微鏡を使って観察し、平均気泡径を求めた。
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【発明の効果】
本発明の製造方法は、耐熱性、機械特性、耐薬品性、環境適性等に優れ、保温材、断熱材、耐衝撃材、吸遮音材などの有用な素材として用いることができる、発泡倍率が高く、気泡径50μm以下の微細な気泡を含有するポリエステル樹脂の発泡体を容易に製造することができ、本発明の工業的意義は大きい。
Claims (10)
- 環状アセタール骨格を有するグリコールを10〜80モル%含むグリコールとジカルボン酸とを重縮合して得られるポリエステル樹脂を、加圧下にガスを含浸させる工程と、圧力を解放した後、該樹脂を加熱して発泡させる工程と、発泡させた樹脂を冷却する工程とを有することを特徴とする、気泡径50μm以下であるポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
- ジカルボン酸が、芳香族ジカルボン酸を90〜100モル%含む請求項1記載のポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
- 環状アセタール骨格を有するグリコールが、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン及び/又は5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサンである請求項1〜2記載のポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
- 環状アセタール骨格を有するジカルボン酸を10〜80モル%含むジカルボン酸とグリコールとを重縮合して得られるポリエステル樹脂を、加圧下にガスを含浸させる工程と、圧力を解放した後、該樹脂を加熱して発泡させる工程と、発泡させた樹脂を冷却する工程とを有することを特徴とする、気泡径50μm以下であるポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
- 環状アセタール骨格を有するジカルボン酸が、3,9−ビス(2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン及び/又は3,9−ビス(2−カルボメトキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンである請求項4記載のポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
- ポリエステル樹脂が、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの質量比が6:4の混合溶媒を用いて25℃で測定した極限粘度が0.3〜1.2(dl/g)であり、かつ溶融粘度/極限粘度の比が1500〜5000(Pa・s・g/dl)である請求項1〜5記載のポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
- ポリエステル樹脂が、示差走査型熱量計で測定されるガラス転移温度が90℃以上、降温時結晶化発熱ピークの熱量が4J/g以下である請求項1〜6記載のポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
- 含浸させるガスが二酸化炭素である請求項1〜7記載のポリエステル樹脂発泡体の製造方法。
- 環状アセタール骨格を有するグリコールを10〜80モル%含むグリコールとジカルボン酸とを重縮合して得られるポリエステル樹脂を発泡して得られる気泡径50μm以下であるポリエステル樹脂発泡体。
- 環状アセタール骨格を有するジカルボン酸を10〜80モル%含むジカルボン酸とグリコールとを重縮合して得られるポリエステル樹脂を発泡して得られる気泡径50μm以下であるポリエステル樹脂発泡体。
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Effective date: 20080820 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 |
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A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20090204 |