JP2013249364A - ポリエステルの製造方法およびそれを用いたフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】低屈折率、熱安定性に優れた高品質のポリエステルを長期連続して安定生産できる製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも脂環族ジカルボン酸アルキルエステルおよび少なくとも脂環族ジオールを用い、エステル交換反応を経た後、重縮合反応して、下記特性(A)、(B)を満足するポリエステルの製造において、アルカリ金属化合物の存在下でエステル交換反応をせしめ、反応終了後に3価のリン化合物を含まないリン化合物を添加し、その後重縮合触媒として、チタンアルコキシド、アルカリ化合物、水および/またはアルコール、およびアルキレングリコールからなり、かつチタンアルコキシドとして0.005〜30重量%含有したチタンアルコキシド含有触媒溶液を添加してなるポリエステルの製造方法。(A)ガラス転移点温度:65〜90℃、(B)屈折率:1.500〜1.570・・・(B)
【選択図】なし

Description

脂環族成分を共重合するに際し、アルカリ金属化合物存在下においてエステル交換反応をせしめ、リン化合物およびチタンアルコキシドを特定成分、量で調整され保存安定性に優れたチタンアルコキシド含有溶液を重縮合反応触媒として添加してなるポリエステルの製造方法である。本発明の製造方法によって得られたポリエステルは、熱安定性に優れ、さらには屈折率や光弾性係数が低く、光学等方性に優れたポリエステルに関し、特に光学等方性や光反射性に優れた光学ポリエステルフィルムに関する。
脂環族成分を含有するポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(以下、PET)などの芳香族ポリエステルとは異なった光学特性、結晶化特性、機械特性を有しており、該ポリエステルは単独、または芳香族ポリエステルと組み合わせて(積層)使用される。
例えば、特許文献1、2では、耐熱性を向上させるために、環状アセタール骨格を有するジカルボン酸、ジオール等を共重合するにあたり高圧力下や窒素雰囲気下においてエステル交換反応をせしめる製造方法、特許文献3、4では、ジカルボン酸とジオールから得られたエステルに環状アセタール骨格を有するジオールをチタン化合物の存在下でエステル交換反応を進め、安定的に製造するといった方法が提案されている。
しかしながら、該製造方法では環状アセタール骨格を有するジオールを効率良く反応できず、高分子化工程である重縮合反応において環状アセタール骨格を有するジーオル成分が飛散する等の問題が生じ、安定した生産が困難である。また、例えば剛直な分子鎖を有するスピログリコール等を共重合することでガラス転移点温度を高くすることや高過ぎることを抑制するために長鎖のジオール成分を更に共重合することが例示されている。しかし、仮に、該樹脂組成物を多層積層フィルムに使用した場合も、ガラス転移点温度が通常のPET樹脂組成物に対して高いことや同等であってもフィルムに成形する際にそれぞれ結晶性が異なることから積層ムラの発生や加工性に劣る。また、スピログリコールだけでは、十分に屈折率を下げることができず、多層積層フィルムとした際に、光反射率が低くなる。
さらに、特許文献5では、ポリエチレンナフタレート(以下、PEN)に共重合ポリエステル樹脂組成物を積層した光反射性フィルムが、特許文献6ではポリエステル樹脂組成物にナイロン樹脂組成物やアクリル樹脂組成物を積層した光反射性繊維が、特許文献7ではPENと共重合ポリエステル樹脂組成物を積層した多層光学フィルムが、特許文献8では透明性に優れたPEN共重合ポリエステル樹脂組成物からなる写真用フィルムが提案されている。しかしながら、特許文献5、7に記載のポリエステル樹脂組成物はガラス転移点温度が異なるポリエステル同士を積層しているために加工性に劣り、特許文献6のポリマーの組み合わせはポリマー同士の接着性が劣るために積層フィルムに転用することは不適当であり、さらに特許文献5、7、8に記載のポリエステルは光弾性係数が大きく、液晶ディスプレイ等には使用することができない。
特許文献9、10では、脂環族成分を共重合するためにポリエステルの酸化防止を目的にポリエステル製造工程において3価のリン化合物を添加している。しかし、該成分を高温の場に添加することで分解し、分解物が飛散し製造反応工程の留出回路に付着、堆積し安定した生産とすることが不可能となる。
特許文献11、12、13には、チタンアルコキシドの溶液化や溶液の保存安定性を向上させるための方法が提案されている。しかしながら、チタンアルコキシドと安定化剤等との比率が不十分なため、長期の保存安定性への効果が不十分なため安定したポリエステルを得るには至らない。
特開2004−67829号公報 特開2003−183422号公報 特開2005−314643号公報 特開2006−225621号公報 特開2000−141567号公報 WO98/46815号パンフレット 特表平9−506837号公報 特開平6−295014号公報 特開2009−1656号公報 特開2008−303271号公報 特開平07−207010号公報 特開昭58−206625号公報 特開2004−231831号公報
本発明の目的は、上記した従来の課題を解決し、屈折率や光弾性係数が低く、熱安定性に優れたポリエステルを製造する方法であって、その際アルカリ金属化合物、リン化合物、保存安定性に優れたチタンアルコキシドを用いることで安定した連続生産が可能となるポリエステルの製造方法である。また、該ポリエステルを積層フィルムとした際に、優れた光反射性を示すポリエステルフィルムを提供することにある。
すなわち、本発明の目的は、ジカルボン酸構成単位に少なくとも脂環族ジカルボン酸アルキルエステルおよびジオール構成単位に少なくとも脂環族ジオールを用い、エステル交換反応を経た後、重縮合反応して、下記特性(A)、(B)を満足するポリエステルの製造において、アルカリ金属化合物の存在下でエステル交換反応をせしめ、反応終了後に3価のリン化合物を含まないリン化合物を添加し、その後重縮合触媒として、チタンアルコキシド、アルカリ化合物、水および/またはアルコール、およびアルキレングリコールからなり、かつチタンアルコキシドとして0.005〜30重量%含有したチタンアルコキシド含有触媒溶液を添加してなるポリエステルの製造方法により達成される。
示差走査熱量測定によるガラス転移点温度:65〜90℃・・・・・・・・(A)
ナトリウムD線での屈折率 :1.500〜1.570・・・(B)
また、本発明のポリエステルの製造方法で得られたポリエステルとPETとを交互に積層する積層ポリエステルフィルムにより、反射率90%以上の特性が達成される。
本発明によれば、脂環族成分の化合物を共重合するに際し、アルカリ金属化合物の存在下でエステル交換反応をせしめ、3価のリン化合物を含まないリン化合物、チタンアルコキシドを特定成分、量で調整され保存安定性に優れたチタンアルコキシド含有触媒溶液を重縮合触媒として添加することで、安定した連続生産を行うことができる。また、連続生産において安定した品質、黒色異物の抑制、熱安定性(ゲル化、ポリエステルの黒色化抑制)に優れたポリエステルを製造することができる。
本発明により得られたポリエステルは、液晶ディスプレイに好適な低光弾性係数を有し、反射性に優れた積層ポリエステルフィルムを得ることができる。
本発明のポリエステルの製造方法は、ジカルボン酸構成単位に少なくとも脂環族ジカルボン酸アルキルエステルおよびジオール構成単位に少なくとも脂環族ジオールを用い、エステル交換反応を経た後、重縮合反応して、下記特性(A)、(B)を満足するポリエステルの製造において、アルカリ金属化合物の存在下でエステル交換反応をせしめ、反応終了後に3価のリン化合物を含まないリン化合物を添加し、その後重縮合触媒として、チタンアルコキシド、アルカリ化合物、水および/またはアルコール、およびアルキレングリコールからなり、かつチタンアルコキシドとして0.005〜30重量%含有したチタンアルコキシド含有触媒溶液を添加してなるポリエステルの製造方法である。
示差走査熱量測定によるガラス転移点温度:65〜90℃・・・・・・・・(A)
ナトリウムD線での屈折率 :1.500〜1.570・・・(B)
本発明のポリエステルの製造方法により得られたポリエステルは、ガラス転移点温度(以下、Tg)が65〜90℃の範囲にあることが必要である。
積層フィルムとする場合、本発明のポリエステルのTgを積層ポリマーのTgと合致させることが好ましく、積層ポリマーのTg(Tg1)と本発明のポリエステルのTg(Tg2)の差(|Tg1−Tg2|)が10℃以内、さらには5℃以内であることが好ましい。Tgが、65℃未満の場合は耐熱性が不足するためにポリエステルまたはその成形体の光学特性が経時変化しやすく、またPET等と積層して製膜する際には積層樹脂間のTg差が大きくなるために積層ムラ等が発生し、製膜安定性が損なわれる。一方、Tgが90℃を超える場合には、PET等を積層する際にTg差が大きくなりすぎるために、上記同様、積層ムラ等発生し、製膜安定性が損なわれ、またポリエステルフィルムの屈折率を低くすることが困難となる。よって、本発明のポリエステルのTgは、70〜87℃の範囲が好ましく、さらには75〜85℃の範囲が好ましい。
なお、本発明におけるTgは、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製 DSC7型)によって測定し、2度目の昇温過程でのTgを指す。
本発明のポリエステルの屈折率は、1.500〜1.570の範囲であることが必要である。屈折率を1.500未満とすることはポリエステルでは困難であり、1.570を超える場合には、例えば積層ポリマーをPETとした場合屈折率差が小さくなるため、得られた積層フィルムの反射率が小さくなる。よって、本発明のポリエステルの屈折率は、1.510〜1.560の範囲であることが好ましい。
なお、本発明における屈折率は、23℃の温度条件にてナトリウムD線を用いて測定した屈折率を指す。
本発明のポリエステルの製造方法では、前記した特性を与えるためには、ポリエステルはジカルボン酸構成単位に少なくとも脂環族ジカルボン酸アルキルエステルおよびジオール構成単位に脂環族ジオールを用いることが必要である。ポリエステルに含まれる芳香環はTgを高める効果があるが、同時に屈折率を高め、光弾性係数を高める効果がある。光弾性係数が大きい場合、フィルムに応力が作用した際に位相差が大きく変化するため、液晶ディスプレイ用途のフィルムには不適当である。
そこで、本発明のポリエステルは、この芳香族ジカルボン酸成分の一部を脂環族ジカルボン酸成分やジオール成分の一部を脂環族ジオールで置換することにより、屈折率や光弾性係数を低減させている。本発明における脂環族ジカルボン酸アルキルエステルとしては、シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルやデカリンジカルボン酸ジメチル等を挙げることができる。特に入手の容易性や重縮合反応性の観点からはシクロヘキサンジカルボン酸ジメチルが好ましい。
シクロヘキサンジカルボン酸アルキルエステルなどの脂環族成分には、立体異性体として、シス体、トランス体が存在する。本発明では、トランス体比率が40%以下であることが好ましい。トランス体比率が高いと光弾性係数が大きくなる傾向にあり好ましくない。また、トランス体は、シス体に比べ、融点が高いため、トランス体比率が高くなると、室温程度で保管、または輸送中等にて容易に凝固、沈降し、不均一な状態となり、取り扱い上においても作業性が好ましくなくなる。また、反応系に添加する際に添加量にばらつきが生じてポリエステルの品質が不安定なものとなる。よって、トランス体比率は、より好ましくは、35%以下、さらに好ましくは、30%以下である。
本発明における脂環族ジオールとしては、スピログリコールやイソソルビドが好ましく、特に得られるポリエステルの色調の観点からスピログリコールが好ましい。ここで、スピログリコールとは3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンを指す。
本発明において、例えばPETの場合、テレフタル酸成分(芳香環成分)をシクロヘキサンジカルボン酸成分等で置換するとTgが低下する。一方、エチレングリコール成分をスピログリコールやイソソルビドなど脂環族ジオール成分に置換することでTgが上昇し、結果として本発明の積層フィルムに用いる通常のPETと同程度のTgに調整することができる。Tgを上昇させる効果はスピログリコールやイソソルビドにおいて顕著である。
本発明のポリエステルは、屈折率や光弾性係数を低下させるために、ポリエステル1kg中に含有される芳香環モル数を4.8モル以下とすることが好ましい。4.8モルを超える場合には屈折率や光弾性係数が増大する傾向にあるため好ましくない。
なお、本発明における芳香環モル数とはベンゼン環モル数を基本単位としている。本発明における定義をPETとPENを例にして説明する。
PETの場合、基本繰り返し単位の分子量は192であるため、ポリエステル1kg当たりの基本繰り返し単位数は5.2となる。基本繰り返し単位中にテレフタル酸成分(ベンゼン環1個相当)は1モル含まれるため、PETの芳香環モル数は5.2と計算される。一方、PENの場合、基本繰り返し単位の分子量は242であり、ポリエステル1kg当たりの基本繰り返し単位数は4.1である。基本繰り返し単位中にナフタレンジカルボン酸成分は1モル含まれるが、ナフタレン環はベンゼン環2個に相当するため、PENの芳香環モル数は8.2モルと計算する。
本発明のポリエステルは、少なくとも脂環族ジカルボン酸成分および脂環族ジオール成分を含むが、その他ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸成分、イソフタル酸成分、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分から選択される少なくとも一種のジカルボン酸成分を全ジカルボン酸成分に対して20〜95モル%添加することが好ましい。また、ジオール成分については、エチレングリコール成分をジオール成分として20〜95モル%添加することが好ましい。前記した芳香族ジカルボン酸成分が20モル%未満の場合、Tgを65℃以上にすることが難しくなり、例えばPETやPENと積層する際にはこれらの樹脂との層間接着性が悪化してくる。同様にエチレングリコール成分が20モル%未満の場合、PETやPENと積層した際、これらの樹脂との層間接着性が悪化してくる。一方、芳香族ジカルボン酸成分が95モル%を超える場合、屈折率や光弾性係数を低減することが難しくなり、エチレングリコール成分が95モル%を超える場合にはTgを65℃以上にすることが難しくなる。
本発明のポリエステルにおいて、脂環族ジカルボン酸アルキルエステル、脂環族ジオールの添加量は、前記理由によりそれぞれ5〜80モル%の範囲が好ましく、さらに8〜50モル%が好ましい。
本発明のポリエステルは、非晶性であることが好ましく、また前記した共重合範囲では実質的に非晶性である。本発明における非晶性とは、示差走査熱量計(以下、DSC)測定において結晶融解熱量が4J/g以下であることをいう。このような非晶性のポリエステルはフィルム製造においてその光学特性が変化しにくく、好ましい。
一方、本発明の製造方法により得られた、非晶性ポリエステルは乾燥によって熱融着し、塊を作りやすい傾向がある。そこで、結晶性ポリエステルを5〜50重量%含ませることで乾燥による塊形成を抑制することができる。そのような結晶性ポリエステルとしては、DSC測定における結晶融解熱量が4J/g以上であることが好ましい。
結晶性ポリエステルを含ませる方法としては、ベント式押出機による溶融混練が好ましい。すなわち、結晶性ポリエステルと本発明のポリエステルをベント式押出機で溶融混練してペレットを得る方法である。結晶性ポリエステルとしてはPETやポリブチレンテレフタレート、PENやこれらの共重合体を挙げることができるが、PETが最も好ましい。
また、本発明のポリエステルに含有される芳香族ジカルボン酸成分は、屈折率や光弾性係数の観点からテレフタル酸成分やイソフタル酸成分が好ましく、これらは同時に使用してもかまわない。特に、テレフタル酸成分はその他ポリエステルとの接着性等の観点から主に使用することが好ましい。その他ジカルボン酸成分としては、特性の許す限り従来公知のものを共重合しても構わない、またジオール成分についても同様である。このような成分としては、例えばアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸成分、4,4’−ビスフェニレンジカルボン酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、ジフェン酸等の芳香族ジカルボン酸成分、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール成分を挙げることができる。さらには、無機粒子、有機粒子、染料、顔料、帯電防止剤、酸化防止剤、ワックス等を含有させても構わない。
本発明のポリエステルは、窒素雰囲気下での熱処理後のゲル化率が10%以下であることが好ましい。特に、スピログリコールを共重合したポリエステルは、酸性、水分含有下、熱により分解しゲル化する特徴がある。よって、窒素雰囲気下での熱処理後のゲル化率が10%を越えた場合、ポリエステルが著しくゲル化しやすいポリマーであることを意味し、例えば、重縮合後、ストランド状に吐出する際に、形状がフシ糸状となりカッターでカッティングできなくなることや製膜する際のフィルター濾過工程で多量のゲルにより濾圧が異常に上昇したり、積層フィルムの表面欠点が増加したり、多層積層フィルムの積層厚みが変動する等の問題を生じることがある。よって、窒素雰囲気下での熱処理後のゲル化率は、より好ましくは5%以下である。
また、本発明のポリエステルは、窒素雰囲気下での熱減量率が1%以下であることが好ましい。特に、脂環族ジカルボン酸アルキルエステルや脂環族ジオールを共重合したポリエステルであるがために熱安定性に劣る傾向にあり、ポリエステルのゲル化の発生やポリエステルが黒色に変色する特徴がある。よって、窒素雰囲気下の熱減量率が1%を超えた場合、ポリエステルが著しく熱安定性に劣ることを意味し、例えば、重縮合後、ストランド状に吐出する際に、形状がフシ糸状となりカッターでカッティングできなくなることや吐出終了後に口金孔に付着したポリエステルが黒色に変色し流動性を失い、吐出孔を閉塞したり、後続バッチの吐出ストランド中に黒色異物として混入する等の問題が生ずる。また、製膜する際のフィルター濾過工程で多量のゲルや黒色異物により濾圧が異常に上昇したり、分解ガスが発生したり、積層ムラが生じ積層フィルムの表面欠点が増加したり、多層積層フィルムの積層厚みが変動する等の問題を生じることがある。よって、窒素雰囲気下での熱減量率は、より好ましくは0.8%以下である。
本発明のポリエステルの製造方法では、脂環族成分、特にスピログリコールは水や酸により分解が促進し官能基が増加し、反応中に分子量分布が広くなり、またゲル化が促進することからエステル交換反応から重縮合反応を進めることが必要である。
また、本発明の製造方法において、反応系内の酸性度を抑制するために、エステル交換反応以前の工程においてアルカリ金属化合物を添加する必要がある。アルカリ金属化合物のアルカリ金属元素量として、得られるポリエステルに対して、3〜200ppm添加することが好ましい。アルカリ金属化合物を添加する際には、ポリエステルの原料であるエチレングリコールに溶解させて添加することが好ましい。また、添加においては、エステル交換反応装置に投入したポリエステルの原料中に添加、またポリエステルの原料であるエチレングリコールに添加、さらにはスピログリコールの添加においてはスピログリコールとポリエステルの原料であるエチレングリコールによってなるスラリー中に添加するなどの方法がある。
また、アルカリ金属元素の添加量が200ppm以下であると重縮合反応性が良好で、かつポリエステルの濁化が少なく良好である。さらに、エステル結合の分解が少なく分子量の低下やゲル化による機械的物性の低下が少なく良好である。一方、3ppm以上であると重縮合反応中のゲル化が少なく、さらに反応後の吐出ストランドに太細の発生も少なく、得られたポリエステルを成形加工した際にゲル化の発生や促進が少なく成形不良や物性低下が起こりにくく好ましい。よって、アルカリ金属化合物をアルカリ金属元素としての添加量は、好ましくは5〜180ppm、より好ましくは7〜150ppmである。
本発明の製造方法において、アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属元素を含む化合物であれば特に限定されるものではないが、例えばカリウム(以下、K)、ナトリウム(以下、Na)およびリチウム(以下、Li)から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属の水酸化物、酢酸塩およびリン酸塩が好ましい。しかし、Na、Li化合物はポリエステルを黄色く着色し易い傾向にあり、リン酸塩はポリエステルを若干濁化させる傾向にある。中でも、Kの水酸化物は前記した問題点が少ない傾向にあり特に好ましい。
本発明のポリエステルの製造方法における、エステル交換反応触媒としてアルカリ土類金属、コバルト(以下、Co)およびマンガン(以下、Mn)からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属化合物の金属元素量として、得られるポリエステルに対して、30〜300ppm添加することが好ましい。エステル交換反応触媒を添加する際には、ポリエステルの原料であるエチレングリコールに溶解、またはエチレングリコーのスラリーにして添加することが好ましい。また、添加においては、エステル交換反応装置に投入したポリエステルの原料中に添加、またポリエステルの原料であるエチレングリコールに添加するなどの方法がある。
また、金属元素量が300ppm以下であると耐熱性が良好であり、ゲル化や異物化も少ない傾向にある。一方、30ppm以上であれば、エステル交換反応が十分に完結するとともに反応時間も適正に保持できる。よって、アルカリ土類金属、CoおよびMnからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属化合物を金属元素としての添加量は、より好ましくは40〜250ppm、さらに好ましくは50〜200ppmである。
エステル交換反応触媒において、マグネシウム(以下、Mg)は異物を形成することがないので好ましい。また、Mnは異物や色調の点からも好ましい。特にMgとMnはポリエステルの透明性の観点からも好ましく、特にMnがこの点で更に好ましい。
前記した金属化合物は、ポリエステルに可溶なものが好ましく、水酸化物、塩化物や酢酸塩が好ましく、特に酢酸塩が好ましい。
本発明のポリエステルの製造方法において、ポリエステルのゲル化や黒色化抑制のための熱安定性の観点から、エステル交換反応終了後に3価のリン化合物を含まないリン化合物を添加することが必要である。リン化合物のリン元素量として、得られるポリエステルに対して、10〜300ppmを添加することが好ましい。リン化合物は、エステル交換反応触媒の失活剤として、また着色防止剤として、さらには耐熱安定剤としても有効である。一方、3価のリン化合物は高温のポリエステルの反応系内に添加すると分解し、ポリエステル製造工程の反応系外に分解物が飛散し、反応物の留出回路等で冷却され固化し、付着、さらに堆積することで反応工程を阻害するため、本発明においてはポリエステルの反応系に添加しない。リン化合物を添加する際には、ポリエステルの原料であるエチレングリコールの溶液にして添加することが好ましい。
また、リン元素の添加量が、300ppm以下であれば重縮合反応性や、ポリエステルのゲル化や黒色化抑制に対する効果が得られ、また経済的でもある。一方、10ppm以上であればポリエステルのゲル化や黒色化の抑制に効果的で、また得られたポリエステルの色調、耐熱性も良好である。よって、リン化合物をリン元素としての添加量は、より好ましくは15〜250ppm、さらに好ましくは20〜200ppmである。
前記したリン化合物については、例えばリン酸系、ホスホン酸系、ホスフィン酸系、ホスフィンオキサイド系化合物を挙げることができ、中でもこれらのエステル化合物が異物形成抑制の観点から好ましい。具体的には、例えば、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル等のリン酸系、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、メチルホスホン酸ジエチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、ジエチルホスホノ酢酸メチル、ジエチルホスホノ酢酸エチル等のホスホン酸系化合物、メチルホスフィン酸、エチルホスフィン酸、ジメチルホスフィン酸メチルエステル、ジエチルホスフィン酸メチルエステル、ジエチルホスフィン酸エチルエステル等のホスフィン酸系、トリメチルホスフィンオキサイド、トリエチルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系が挙げられ、これらのリン化合物は単独または併用してもよい。本発明の製造方法において、添加するリン化合物は特に限定する必要はないが反応性や耐熱性等の観点からリン酸トリメチルやジエチルホスホノ酢酸エチルが好ましい。
本発明のポリエステルの製造方法としては、脂環族ジオール成分の反応性向上の観点から、リン化合物添加後に重縮合触媒として、チタンアルコキシド、アルカリ化合物、水および/またはアルコール、およびアルキレングリコールからなり、かつチタンアルコキシドとして0.005〜30重量%含有したチタンアルコキシド含有触媒溶液を添加することが必要である。
ここで、未処理のチタンアルコキシド(例えば、テトラ−n−ブチルチタネート)は、常温、常圧下において保存すると、白濁、分離沈降、固化等といった経時変化が起こり保存安定性に欠けるといった問題が発生する。そのため、触媒貯留・添加装置を設けて重縮合反応を連続生産することができないないという大きな問題がある。また、ポリエステル製造工程に直接添加した際、ポリエステル中に黒色異物が発生する。
しかしながら、本発明に用いるチタンアルコキシド、アルカリ化合物、水および/またはアルコール、およびアルキレングリコールからなり、かつチタンアルコキシドとして0.005〜30重量%含有したチタンアルコキシド含有触媒溶液は2ヶ月以上保存しても品質変化の問題を発生することがない。また、ポリエステル製造工程で添加した際に異物の発生もない。
チタンアルコキシドを含有した触媒溶液中のチタンアルコキシドの含有量が30重量%を超える場合、触媒溶液は数日後に溶液の流動性が失われる傾向にあり、最終的に固化してしまい保存安定性が失われる。また、ポリエステルに添加する際、安定した添加量が得られず、安定した反応性やポリエステルの特性が得られなくなる。さらに、ポリエステル中に黒色異物が発生することがある。一方、0.005重量%未満の場合にはポリエステルに添加するチタンアルコキシド含有触媒溶液が多量となるため生産での設備対応や生産タイムサイクルが遅延するとともに、得られるポリエステル中に副生されるジエチレングリコール量が多くなることでポリエステルの特性に悪影響を与える。よって、チタンアルコキシドの含有量は、0.1〜25重量%の範囲が好ましく、さらには1〜15重量%の範囲が好ましい。
また、重縮合触媒であるチタンアルコキシド含有触媒溶液が、下記(1)〜(3)を満足することが該触媒溶液の保存安定性の点で好ましい。
触媒溶液中のアルカリ化合物量/全溶媒量の重量比率:0.01〜20%・ ・・(1)
(全溶媒量:アルカリ化合物量+水および/またはアルコール量+アルキレングリコール量)
触媒溶液中の水分および/またはアルコール含有量 :1〜40重量%・・・・・(2)
触媒溶液中のチタンアルコキシド含有量 :0.1〜25重量%・・・(3)
さらには、チタンアルコキシドのチタン元素量として、得られるポリエステルに対して、3〜100ppm添加することが好ましい。チタン元素添加量が、100ppm以下であるとゲル化の抑制や耐熱性が良好である。一方、3ppm以上であれば重縮合活性が十分である。また、高温下での長時間滞留でもゲル化が抑制できるので好ましい。よって、チタン元素の添加量は、より好ましくは5〜80ppm、さらに好ましくは10〜70ppmである。
チタンアルコキシドとして、例えばテトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラ−n−ペンチルチタネート、テトラ−n−ヘキシルチタネート等を挙げることができる。これらのうち特に反応性、取り扱い性の点でテトラ−n−ブチルチタネートが好ましい。
チタンアルコキシド含有触媒溶液を調整するアルカリ化合物として、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウム等の第4級アンモニウム化合物、またはナトリウム、カリウムおよびリチウムから選ばれた1種のアルカリ金属の水酸化が好ましい。特には、ポリエステル樹脂の色調や耐熱性向上の点から、第4級アンモニウム化合物である水酸化テトラエチルアンモニウムや水酸化カリウムが好ましい。また、水酸化テトラエチルアンモニウムについては水/メタノール溶液またはメタノール溶液を用いことができる。
また、チタンアルコキシド含有触媒溶液を調整するアルキレングリコールとしては、混合溶解するために、常温、常圧において液体を有することが好ましい。アルキレングリコールとして、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。また、前記アルキレングリコールは2種以上を混合してもよい。さらに、チタンアルコキシドを調整するアルキレングリコールとしては、目的により任意に選択できるが、得られるポリエステルに用いるジオール成分と同成分が好ましい。よって、本発明ポリエステルにおいてはエチレングリコールが好ましい。
本発明のポリエステルの製造方法としては、ポリエステルのゲル化や黒色化抑制のための耐熱性の観点から重縮合温度を260〜290℃の出来るだけ低温で実施することが好ましい。重縮合温度とは、通常、230〜240℃から徐々に温度を上げていき、ある目標の温度に到達した後は一定の温度で重縮合する、この最終の一定温度のことである。重縮合温度が290℃より低い温度の場合は、重縮合触媒であるチタンアルコキシドが重合活性を発揮すると同時に、本発明のポリエステルの熱劣化とゲル化を抑制でき、吐出口金孔等に付着したポリエステルの黒色化の生成も抑制でき好ましい。一方、重縮合温度が260℃より高い温度であれば、重縮合触媒であるチタンアルコキシドの重縮合活性が十分発揮でき、重縮合時間が適正となり、また同様にゲル化も抑制できるため好ましい。よって、重縮合温度は、好ましくは、270〜288℃、より好ましくは275〜285℃である。また、重縮合における低重合体の飛散を考慮すると、目標の温度に到達までに1〜3時間を要することが好ましい。さらに減圧速度は、1〜3時間と出来るだけゆっくりと行うことが好ましい。さらには、重縮合最終減圧度は133Pa以下で行うことが好ましい。
かくして得られた本発明のポリエステルは、固有粘度が0.60〜1.0の範囲であることが好ましい。固有粘度が、0.60以上であればポリエステルは脆くなく、固有粘度が1.0以下であれば、積層フイルムを形成する際に精度の良い積層フイルムとすることが可能となる。
本発明のポリエステルフィルムは、前記した本発明のポリエステルを含むものであり、屈折率、光弾性係数が小さく、液晶ディスプレイ用途等に好適に使用できる。
本発明の積層ポリエステルフィルムは、屈折率の異なるポリエステルと積層することで優れた光反射性を発揮するものである。本発明の積層ポリエステルフィルムは、本発明のポリエステルを少なくとも1層含むポリエステルフィルムであるが、優れた光反射性を得るためには、本発明のポリエステルとPETとを交互に積層することが好ましい。本発明のポリエステルは、屈折率がPETよりも低く、非晶性であるためにフィルムを延伸しても屈折率はほとんど変化しない。そのため、本発明のポリエステル層とPET層との界面で光を効率良く反射するのである。
反射率は高い方がもちろん好ましいが、90%以上であれば光反射性フィルムとして好ましい。優れた光反射性を得るためには、総積層数を250層以上とすることが好ましい。
このような積層フィルムを得る方法は、2台以上の押出機を用いて、異なる流路から送り出されたポリマーを多層積層装置に送り込むことで実現する。多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロックやスタティックミキサー等を挙げることができる。特に積層厚みの精度から、マルチマニホールドダイやフィードブロックを用いることが好ましい。このようにして積層されたポリエステルは口金からシート状に押し出され、冷却ドラムなどによって冷却され、未延伸シートを得ることができる。厚みムラや表面状態の良好な未延伸シートを得るには、静電印加法によることが好ましい。
得られた未延伸シートは、次いで一軸または二軸延伸することができる。二軸延伸では同時二軸延伸や逐次二軸延伸をおこなうことができる。
次に本発明のポリエステルの製造方法およびそれを用いたフィルムの製造方法について詳しく説明する。
本発明のポリエステルは、スピログリコールが酸や水によって分解しやすいため、ジカルボン酸アルキルエステルとジオールとをエステル交換反応させて低重合体を合成し、次いでこれを重縮合する方法を用いる。
原料として、例えばテレフタル酸ジメチル、シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、エチレングリコール、スピログリコールを所定のポリエステル組成となるようにエステル交換反応装置へ仕込む。この際、ジオール成分は全ジカルボン酸成分に対して1.6〜2.5モル倍添加することにより反応性が良好となる。また、スピログリコールの添加においてはスピログリコールとエチレングリコールによってなるスラリーとして添加しても良い。
前記原料からなるポリエステルに対して、酢酸マンガン・四水塩等の金属化合物をエチレングリコールの溶液に、またはエチレングリコーのスラリーにして、エステル交換反応触媒として仕込み、またカリウム元素を含有した水酸化物の水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物をエチレングリコールの溶液にして添加して、140℃程度でモノマー成分を溶解し、均一な溶融液体とする。次いで、反応缶内を235℃まで4時間かけて徐々に昇温しながらメタノールを留出させ、エステル交換反応を実施する。このようにして、エステル交換反応が終了し、エステル交換反応触媒の失活剤としてリン酸トリメチルやジエチルホスホノ酢酸エチルなどのリン化合物をエチレングリコールの溶液にして添加する。次いで、余剰のエチレングリコールを留出させ、その後該エステル交換反応装置、または該反応物を移行した235℃程度の重縮合反応装置へ、重縮合触媒として、チタンアルコキシド、アルカリ化合物、水および/またはアルコール、およびアルキレングリコールからなり、かつチタンアルコキシドとして0.005〜30重量%含有したチタンアルコキシド含有触媒溶液を添加する。その後、重縮合反応装置において反応物を攪拌しながら減圧および昇温を同時に行い、エチレングリコールを留出させながら重縮合反応を行う。なお、減圧は1.5時間かけて缶内圧力を常圧から133Pa以下に減圧し、また昇温は2.0時間かけて缶内温度235℃から缶内温度を280℃まで徐々に昇温する。重縮合反応の進行に従って反応物の粘度が上昇する。所定のポリエステル粘度は、撹拌トルクを目安に重縮合反応を終了し、重縮合装置吐出口金孔よりポリエステルをストランド状に水槽へ吐出する。吐出されたストランド状のポリエステルは、水槽で急冷され、カッターでチップとする。
このようなポリエステルの製造方法により本発明のポリエステルを得ることができるが、上記は一例であって、モノマーや触媒および重縮合条件はこれに限定されるわけではない。
次にポリエステルフィルムの製膜について説明する。
製膜方法には、厚みムラのない良好なT−ダイ法を好ましく用いることができる。
本発明のポリエステルの製造方法により得られたポリエステルチップを真空乾燥する。溶融押し出しには単軸あるいは二軸押出スクリューのついたエクストルーダ型溶融押出装置等が使用できる。積層フィルムとするには、2台以上の押出機を用い、マルチマニホールドダイやフィードブロック等で溶融ポリエステルを積層し、押し出すことで製造することができる。
キャスト方法は、溶融したポリエステルをギヤーポンプで計量した後にTダイ口金から吐出させ、冷却されたドラム上に、それ自体公知の密着手段である静電印加法、エアーチャンバー法、エアーナイフ法、プレスロール法などでドラムなどの冷却媒体に密着冷却固化させて室温まで急冷し、未延伸のフィルムを得ることが好ましい。特に平面性や均一な厚みを得るには、静電印加法が好ましく用いられる。
得られた未延伸フィルムは、さらに一軸延伸または二軸延伸することができる。
二軸延伸の延伸方式は特には限定されず、逐次二軸延伸方式、同時二軸延伸方式などの方法を用いることができる。
逐次二軸延伸により延伸する場合は、得られた未延伸フィルムをポリエステルのTg−30℃以上、Tg+50℃以下に加熱されたロール群上で接触昇温させて、長手方向に1.1〜4.0倍延伸し、これを一旦冷却した後に、テンタークリップに該フィルムの端部を噛ませて幅方向にポリエステルのTg+5℃以上、Tg+50℃以下の温度雰囲気下の中で1.1〜4.0倍延伸し、二軸配向したポリエステルフィルムを得る。
延伸の終了した二軸配向フィルムはさらにTg+50℃〜Tg+150℃の範囲の温度で熱処理すると寸法安定性が向上する。
このようにして得られたポリエステルフィルムは、屈折率、光弾性係数が低く、液晶ディスプレイ用フィルムとして好適である。また、PET等を交互に積層したフィルムは光反射性に優れ、反射材用途に好適である。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
なお、物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
(1)ポリエステルチップの固有粘度
固有粘度は、オルトクロロフェノール(以下、OCP)を溶媒とし、25℃で測定した。
(2)ポリエステルチップの溶液ヘイズ
溶液ヘイズは、ポリエステルチップ2gをOCP20mlに溶解し、光路長20mmの石英セルおよびヘイズメーター(スガ試験機社製 HGM−2DP型)を用い、積分球式光電光度法によって溶液のヘイズ値を測定した。
また、溶液ヘイズが5%未満を合格とした。
(3)ポリエステルチップの色調
色調は、ポリエステルチップを色差計(スガ試験機社製、SMカラーコンピュータ型式SM−T45)を用いて、ハンター値(L、b値)として測定した。
(4)ポリエステルチップの熱特性(ガラス転移点温度、結晶融解熱量)
熱特性は、ポリエステルチップを約10mg秤量し、アルミニウム製パン、パンカバーを用いて封入し、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製 DSC7型)によって測定した。測定においては、窒素雰囲気中で20℃から285℃まで16℃/分の速度で昇温した後、液体窒素を用いて急冷し、再び窒素雰囲気中で20℃から285℃まで16℃/分の速度で昇温する。この2度目の昇温過程でガラス転移点温度を測定した。
また、結晶融解熱量は、2度目の昇温過程で現れる結晶融解ピークの面積から算出した。
(5)ポリエステルチップのゲル化率
ゲル化率は、ポリエステルチップを凍結粉砕して直径300μm以下の粉体状にして真空乾燥する。この試料1gを、オーブン中で、窒素下、285℃で2.5時間熱処理する。これを、50mlのOCP中、160℃の温度で40分間溶解させる。続いて、ブフナー型ガラス濾過器(最大細孔の大きさ20〜30μm)で濾過し、洗浄・真空乾燥する。濾過前後の濾過器の重量の増分より、フィルターに残留したOCP不溶物の重量を算出し、OCP不溶物のポリエステル重量(1g)に対する重量分率を求め、ゲル化率(%)とした。
(6)ポリエステルチップの熱減量率
熱減量率は、ポリエステルチップ約10mg秤量し、アルミニウム製パンに入れ、60℃で24時間真空乾燥した後、改めてサンプル重量を測定し、アルミニウム製パンを用いて、示差熱・熱重量同時測定計(セイコーインスツルメンツ社製 TG/DTA6200型)によって測定した。測定においては窒素下で20℃から400℃まで10℃/分の速度で昇温した時の300℃における減量重量の全体に対する割合を求め、熱減量率(%)とした。
(7)シクロヘキサンジカルボン酸のシス、トランス体比率
シス、トランス体比率は、試料をメタノールで5〜6倍に希釈し、その希釈溶液0.4μlを液体クロマトグラフィーで下記条件にて測定した。
装置:島津製LC−10ADvp
カラム:キャピラリーカラム Agilent Technologies社製DB−17(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)
昇温条件:初期温度110℃、初期時間25分、昇温速度6℃/min、最終温度200℃。
(8)ポリエステルの屈折率
屈折率は、ポリエステルを溶融押し出しすることで厚さ100μmの未延伸シートを得る。次いで、光源としてナトリウムD線を用い23℃の温度条件にて株式会社アタゴ製「アッベ式屈折率計 NAR−4T」で測定した。
(9)光弾性係数(×10−12Pa−1
短辺1cm長辺7cmのサンプルを切り出した。このサンプルの厚みをd(μm)とする。このサンプルを(株)島津製作所社製TRANSDUCER U3C1−5Kを用いて、上下1cmずつをチェックに挟み長辺方向に1kg/mm(9.81×10Pa)の張力(F)をかけた。この状態で、ニコン(株)社製偏光顕微鏡5892を用いて位相差R(nm)を測定した。光源としてはナトリウムD線(589nm)を用いた。これらの数値を光弾性係数=R/(d×F)にあてはめて光弾性係数を計算した。
光弾性係数が100×10−12Pa−1未満の場合を合格とした。
(10)剥離性
JIS K5600(2002年)に従って試験を行った。なお、フィルムを硬い素地とみなし、2mm間隔で25個の格子状パターンを切り込んだ。また、約75mmの長さに切ったテープを格子の部分に接着し、テープを60°に近い角度で0.5〜1.0秒の時間で引き剥がした。ここで、テープにはセキスイ製セロテープ(登録商標)No.252(幅18mm)を用いた。評価結果は、格子1つ分が完全に剥離した格子の数で表した。また、試験フィルムの厚みが100μmより薄い場合には、厚さ100μmの二軸延伸PETフィルム(東レ製“ルミラー”T60)に試験フィルムを接着剤で強固に貼りあわせしたサンプルを剥離試験に用いた。この際には、試験サンプルを貫通しないように試験サンプルの面に格子を切り込んでテストを実施した。剥離個数が4個以下を合格とした。
(11)反射率
日立製作所製 分光光度計(U−3410 Spectrophotometer)にφ60積分球130−0632((株)日立製作所)および10°傾斜スペーサーを取り付け反射率のピーク値を測定した。なお、バンドパラメーターは2/servoとし、ゲインは3と設定し、187nm〜2600nmの範囲を120nm/min.の検出速度で測定した。また、反射率を基準化するため、標準反射板として付属のBaSO板を用いた。なお、本評価法では相対反射率となるため、反射率は100%以上となる場合もある。
以下にチタンアルコキシド触媒の調整方法を記す。
参考例1(チタン触媒A)
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えたフラスコ中に常温、常圧下においてエチレングリコール(以下、EG)90重量部と水酸化テトラエチルアンモニウムを20重量%含有した水(67重量%)/メタノール(13重量%)溶液(三洋化成工業(株)製品名:EAH−20)(以下、EAH−20)5重量部とを均一攪拌した後、撹拌されている混合溶液にテトラ−n−ブチルチタネート(以下、TBT)5重量部を滴下しながら加えた。滴下終了後、1時間攪拌し、透明な液体を得た(Ti含有量0.705重量%)。該液を常温、常圧下において2ヶ月保存したが、濁化することなく透明性を維持した液体であった。
参考例2(チタン触媒B)
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えたフラスコ中に常温、常圧下においてEG90重量部と純水4重量部とを均一攪拌した後、水酸化カリウム(以下、KOH:純度100%換算)1重量部を加えKOHが完全に溶解し均一攪拌した後、撹拌されている混合溶液にTBT5重量部を滴下しながら加えた。滴下終了後、1時間攪拌し、透明な液体を得た(Ti含有量0.705重量%)。
参考例3(チタン触媒C)
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えたフラスコ中に常温、常圧下においてEG90重量部と水酸化テトラエチルアンモニウムを20重量%含有したメタノール(80重量%)溶液(三洋化成工業(株)製品名:EAH−20M)(以下、EAH−20M)5重量部とを均一攪拌した後、撹拌されている混合溶液にTBT5重量部を滴下しながら加えた。滴下終了後、1時間攪拌し、透明な液体を得た(Ti含有量0.705重量%)。該液を常温、常圧下において2ヶ月保存したが、濁化することなく透明性を維持した液体であった。
参考例4(チタン触媒D)
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えたフラスコ中に常温、常圧下においてEG94.98重量部と純水4重量部とを均一攪拌した後、KOH1重量部を加えKOHが完全に溶解し均一攪拌した後、撹拌されている混合溶液にTBT0.02重量部を滴下しながら加えた。滴下終了後、1時間攪拌し、透明な液体を得た(Ti含有量0.003重量%)。該液を常温、常圧下において2ヶ月保存したが、濁化することなく透明性を維持した液体であった。
参考例5(チタン触媒E)
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えたフラスコ中に常温、常圧下においてEG94重量部と純水4重量部とを均一攪拌した後、KOH1重量部を加えKOHが完全に溶解し均一攪拌した後、撹拌されている混合溶液にTBT1重量部を滴下しながら加えた。滴下終了後、1時間攪拌し、透明な液体を得た(Ti含有量0.141重量%)。該液を常温、常圧下において2ヶ月保存したが、濁化することなく透明性を維持した液体であった。
参考例6(チタン触媒F)
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えたフラスコ中に常温、常圧下においてEG83重量部と純水1重量部とを均一攪拌した後、KOH1重量部を加えKOHが完全に溶解し均一攪拌した後、撹拌されている混合溶液にTBT15重量部を滴下しながら加えた。滴下終了後、1時間攪拌し、透明な液体を得た(Ti含有量2.114重量%)。該液を常温、常圧下において2ヶ月保存したが、濁化することなく透明性を維持した液体であった。
参考例7(チタン触媒G)
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えたフラスコ中に常温、常圧下においてEG55重量部とEAH−20 20重量部とを均一攪拌した後、撹拌されている混合溶液にTBT25重量部を滴下しながら加えた。滴下終了後、1時間攪拌し、透明な液体を得た(Ti含有量3.523重量%)。該液を常温、常圧下において2ヶ月保存したが、濁化することなく透明性を維持した液体であった。
参考例8(チタン触媒H)
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えたフラスコ中に常温、常圧下においてEG84.9重量部と純水10重量部とを均一攪拌した後、KOH0.1重量部を加えKOHが完全に溶解し均一攪拌した後、撹拌されている混合溶液にTBT5重量部を滴下しながら加えた。滴下終了後、1時間攪拌し、透明な液体を得た(Ti含有量0.705重量%)。該液を常温、常圧下において2ヶ月保存したが、濁化することなく透明性を維持した液体であった。
参考例9(チタン触媒I)
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えたフラスコ中に常温、常圧下においてEG51重量部とEAH−20 44重量部とを均一攪拌した後、撹拌されている混合溶液にTBT5重量部を滴下しながら加えた。滴下終了後、1時間攪拌し、透明な液体を得た(Ti含有量0.705重量%)。該液を常温、常圧下において2ヶ月保存したが、濁化することなく透明性を維持した液体であった。
参考例10(チタン触媒J)
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えたフラスコ中に常温、常圧下においてEG60重量部と純水4重量部とを均一攪拌した後、KOH1重量部を加えKOHが完全に溶解し均一攪拌した後、撹拌されている混合溶液にTBT35重量部を滴下しながら加えた。滴下終了後、1時間攪拌し、透明な液体を得た(Ti含有量4.932重量%)。該液を常温、常圧下において1週間保存したところで、液体中に透明の結晶体のようなものが観察された。
(実施例1)
(ポリエステルの合成)
テレフタル酸ジメチル(以下、DMT)を67.6重量部、シス/トランス体比率が75/25であるシクロヘキサンジカルボン酸ジメチル(以下、CHDC)を17.4重量部、エチレングリコール(以下、EG)を50重量部、スピログリコール(以下、SPG)19.9重量部をエステル交換反応(以下、EI反応)装置に仕込み、EI反応触媒として酢酸マンガン・四水塩(以下、酢酸Mn:純度100%換算)0.06重量部を含んだEG溶液1.2重量部を仕込み、水酸化カリウム(以下、水酸化K:純度100%換算)0.005重量部を含んだEG溶液0.25重量部を添加し、内容物を140℃で溶解させて撹拌した。
撹拌しながら反応内容物の温度を235℃まで4時間かけてゆっくり昇温しながらメタノールを留出させた。所定量のメタノールを留出させ、EI反応を終了した。その後、ジエチルホスホノ酢酸エチル(以下、TEPA:純度100%換算)を0.08重量部含んだEG溶液1.6重量部を添加した。TEPAを添加した後、余剰なEGを30分間撹拌しながら留出させた後、参考例1のチタン触媒Aをチタン元素として0.003重量部添加した後、余剰なEGを10分間撹拌しながら留出させ、反応を終了した。
その後、EI反応物を重縮合反応装置に移行した。続いて、1バッチ目同様に2バッチ目から5バッチまで連続してEI反応を進めた。
次いで、重縮合反応装置内容物を撹拌しながら減圧および昇温し、EGを留出させながら重縮合反応を行った。なお、減圧は90分かけて常圧から133Pa以下に減圧し、また昇温は120分かけて235℃から280℃まで昇温した。重縮合反応の間に真空度不良の発生はなく、重縮合反応時間3時間45分で撹拌トルクが所定の値に達した直後に減圧系を閉じ、重縮合反応装置内を窒素ガスにて常圧へ戻し、装置内を窒素にて微加圧し重縮合反応装置下部のバルブを開けてポリエステルをストランド状に水槽へ吐出した。水槽で冷却されたストランド状のポリエステルをカッターにてカッティングし、チップ化した。1バッチ目の重縮合反応が完了した後、重縮合反応装置の温度を初期状態に戻し、重縮合反応装置下部のバルブを閉じた。2バッチ目から5バッチまで連続して重縮合反応を実施した。また、重縮合反応装置の減圧回路を解体したところ、回路への飛沫付着物は観察されなかった。
このようにして得られたポリエステルチップの溶液ヘイズは連続生産バッチにおいても大きな変動もなく5%以下で、色調においても良好な特性であった。また、ポリエステルの耐熱性を示すゲル化率、熱減量率も低い値を示しており良好なものであった。さらに、ポリエステル組成および特性を表1〜3に示す。なお、得られたポリエステルの特性は、1バッチ目の特性であり、またポリエステルチップの溶液ヘイズを1バッチおきに示す。
(単層2軸延伸フィルムの製膜)
1バッチ目のポリエステルチップを真空乾燥したが、一部に塊状物が見られたため、これを崩してから、押出機に供給した。押出機に供給されたポリエステルは280℃で溶融されて金属不織布フィルターによって濾過されたのち、Tダイから溶融シートとして押し出した。溶融シートは静電印加法(電極は直径0.15ミリのタングステンワイヤーを使用)によって表面温度が25℃に制御された鏡面ドラム上で冷却固化され、未延伸シートとなった。該未延伸シートを用いて、屈折率および光弾性係数を測定した。結果を表3に示す。
(積層ポリエステルフィルムの製膜)
前記ポリエステルおよびPETをそれぞれ真空乾燥した後、2台の押出機にそれぞれ供給した。
ポリエステルおよびPETは、それぞれ、押出機にて280℃の溶融状態とし、ギヤーポンプおよびフィルターを介した後、101層のフィードブロックにて合流させた。このとき、積層フィルムの両表層がPET層となるようにし、積層厚みはポリエステル層/PET層が1/2となるように交互に積層した。すなわちポリエステル層は50層、PET層は51層となるように交互に積層した。
このようにして得られた101層からなる積層体を、ダイに供給し、シート状に押し出し、静電印加(直流電圧8kV)にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化した。
得られたキャストフィルムは、ロール式縦延伸機に導き、90℃に加熱されたロール群によって加熱し、周速の異なるロール間で長手方向に3倍に延伸した。縦方向に延伸が終了したフィルムは、次いでテンター式横延伸機に導いた。フィルムはテンター内で100℃の熱風で予熱し、横方向に3.3倍に延伸した。延伸されたフィルムはそのままテンター内で200℃の熱風にて熱処理した。このようにして厚さ50μmのフィルムを得ることができた。得られたフィルムの特性を表3に示す。
以上、本発明のポリエステルを用いた積層フィルムは、剥離性に問題なく、反射率は100%と優れていた。
(実施例2〜13)
EI反応触媒金属化合物、アルカリ金属化合物、リン化合物、チタン触媒種および重縮合温度を表1〜3のように変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルおよびフィルムを得た。すなわち、実施例2〜4は、実施例1のEI反応触媒である酢酸Mnを変更した。なお、実施例2は酢酸マグネシウム・四水塩(純度100%換算)0.06重量部を含んだEG溶液、実施例3は酢酸カルシウム・一水塩(純度100%換算)0.07重量部を含んだEG溶液、実施例4は酢酸コバルト・四水塩(純度100%換算)0.05重量部を含んだEG溶液を用いた。実施例5、6は、実施例1のアルカリ金属化合物である水酸化Kを変更した。なお、実施例5は水酸化ナトリウム(純度100%換算)0.004重量部を含んだEG溶液、実施例6は水酸化リチウム(純度100%換算)、0.002重量部を含んだEG溶液を用いた。実施例7〜13は、実施例1のチタン触媒Aをチタン触媒B、C、E、F、H、Iに変更した。さらに、実施例11は重縮合温度を270℃、実施例12は重縮合温度を288℃で行った。また、実施例13は実施例1のリン化合物であるTEPAをリン酸トリメチル(純度100%換算)0.05重量部を含んだEG溶液、また重縮合触媒をチタン触媒Bに変更した。結果を表3に示したがいずれも良好であった。
(実施例14〜17)
DMT、CHDC、EG、SPGの仕込み量比およびアルカリ金属化合物量、リン化合物量、チタン触媒種(チタン触媒B、D、G)および量を表1〜3のように変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルおよびフィルムを得た。すなわち、実施例14、15は、TgがPETよりもそれぞれ10℃程度異なるため積層フィルムを2軸延伸する際に若干のムラが発生したが本発明の範囲内にあった。実施例16は、芳香環モル数が大きいために光弾性係数が若干増加した。実施例17は、芳香環モル数が小さいためTgが若干高くなったため積層フィルムを2軸延伸する際に若干ムラが発生したが、屈折率が低下したため優れた反射性を示した。一方、共重合成分量が増加したためにPETとの相溶性が若干低下し、層間剥離性が弱くなった。結果を表3に示したがいずれも良好であった。
(実施例18、19)
固有粘度を表1〜3ように変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルおよびフィルムを得た。すなわち、実施例18は固有粘度が0.65とやや低目に、一方、実施例19は固有粘度が0.90とやや高目としたが屈折率および光弾性係数ともに良好であった。また、製膜時の積層性に若干のムラが見られたが、剥離性、反射率ともに良好であった。結果を表3に示す。
(実施例20)
表1〜3のように、CHDCのシス/トランス比率が60/40であるCHDCを用いた以外は実施例1と同様にしてポリエステルおよびフィルムを得た。実施例1に比較してCHDCのトランス比率が高いため、光弾性係数はやや高目の値であったが、剥離性、反射率ともに良好であった。結果を表3に示す。
(実施例21)
実施例1の積層総数101層を積層総数251層に変更した以外は実施例1同様にしてフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの厚みは50μmと積層増加により光反射層が増加したため、優れた光反射性を示した。結果を表1〜3に示す。
(比較例1)
SPGを含まず、さらにCHDC成分の代わりにイソフタル酸ジメチル(以下、DMI)を15mol%共重合した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルおよびフィルムを得た。脂環族ジカルボン酸成分、脂環族ジオール成分のいずれも含有しないために芳香環モル数が大きく、そのために屈折率、光弾性係数が大きく、積層フィルムの反射率も小さいものであった。結果を表4〜6に示す。
(比較例2)
CHDCを含まず、さらにSPG成分の代わりに1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下、CHDM)を30mol%共重合した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルおよびフィルムを得た。屈折率は低下したものの、若干光弾性係数が大きく、積層フィルムの反射率も若干劣るものであった。結果を表4〜6に示す。
(比較例3)
CHDCを含まず、さらにSPG成分の量を45mol%にし、かつ実施例15の触媒系に変更した以外は実施例1と同様してポリエステルおよびフィルムを得た。Tg、ゲル化率、熱減量率が高く、積層フィルムの剥離性も劣るものであった。結果を表4〜6に示す。
(比較例4)
SPGを含まず、CHDC成分の量を25mol%に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルおよびフィルムを得た。屈折率は目標範囲内であるが、Tgが低く、積層フィルムの剥離性に劣り、反射率も小さいものであった。結果を表4〜6に示す。
(比較例5)
比較例5は、実施例1のアルカリ金属化合物を添加しない以外は実施例1と同様にして、EI反応から重縮合反応を進めたところ重縮合反応時間が短縮し、重縮合反応装置下部のバルブを開けてストランド状のポリエステルを水槽へ吐出したところ吐出後半に吐出孔よりストランドが太細状で吐出される状況にあり、カッターでカッティングすることが不可能となり、チップ化を中断し、連続バッチの反応および製膜評価を中止した。得られたポリエステルは、ゲル化率や熱減量率の高いものであった。結果を表4〜6に示す。
(比較例6)
比較例6は、実施例1のTEPA添加量を0.03重量部に減量し、補足リン量として3価のリン化合物であるビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(旭電化工業(株)製品名:PEP36)0.07重量部をTEPAと混合したEGスラリーとして添加し、実施例1と同様に反応を進めた。その後、余剰のEGを攪拌しながら留出させる工程において、留出冷却ラインが詰まるトラブルが発生し、回路を増設対応し重縮合し吐出したがポリエステルの評価は行わなかった。詰まり成分は、PEP36の分解物(ジブチルヒドロキシトルエン)であった。このため連続バッチの反応および製膜評価を中止した。結果を表4〜6に示す。
(比較例7〜10)
比較例7〜10は、重縮合触媒をTBT未処理品、参考例10のチタン触媒J、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムに変更した以外は実施例1と同様に反応を進め、ポリエステルおよびフィルムを得た。結果を表4〜6に示す。
比較例7は、TBT未処理品に変更したところ、得られたポリエステル中に黒色の異物がチップ1kgあたり目視にて観察したところ13個、また一辺が3mm以上のものも観察されたため、連続バッチの反応および製膜評価を中止した。比較例8は、参考例10のチタン触媒Jに変更したところ、得られたポリエステル中に黒色の異物がチップ1kgあたり目視にて観察したところ8個、また一辺が3mm以上のものも観察されたため、連続バッチの反応および製膜評価を中止した。
比較例9は、三酸化アンチモン0.02重量部のEGスラリー、また比較例10は二酸化ゲルマニウム0.02重量部のEG溶液に変更したところ、両触媒系ともに重縮合反応において真空度不良が発生したものの重縮合反応時間が短縮し、重縮合反応装置下部のバルブを開けてストランド状のポリエステルを水槽へ吐出したところ吐出後半に吐出孔よりガットが太細状に吐出される状況にあり、ストランドをカッターにてカッティングすることが不可能となり、チップ化を中断した。また、ポリエステルはゲル化率、熱減量率が高いものであった。このため、連続バッチの反応および製膜評価を中止した。
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Claims (15)

  1. ジカルボン酸構成単位に少なくとも脂環族ジカルボン酸アルキルエステルおよびジオール構成単位に少なくとも脂環族ジオールを用い、エステル交換反応を経た後、重縮合反応して、下記特性(A)、(B)を満足するポリエステルの製造において、アルカリ金属化合物の存在下でエステル交換反応をせしめ、反応終了後に3価のリン化合物を含まないリン化合物を添加し、その後重縮合触媒として、チタンアルコキシド、アルカリ化合物、水および/またはアルコール、およびアルキレングリコールからなり、かつチタンアルコキシドとして0.005〜30重量%含有したチタンアルコキシド含有触媒溶液を添加してなるポリエステルの製造方法。
    示差走査熱量測定によるガラス転移点温度:65〜90℃・・・・・・・・(A)
    ナトリウムD線での屈折率 :1.500〜1.570・・・(B)
  2. 重縮合触媒であるチタンアルコキシド含有触媒溶液が、下記(1)〜(3)を満足したもので、下記のアルカリ化合物が第4級アンモニウム化合物および/または水酸化カリウムであることを特徴とする請求項1記載のポリエステルの製造方法。
    触媒溶液中のアルカリ化合物量/全溶媒量の重量比率:0.01〜20%・・・・(1)
    (全溶媒量:アルカリ化合物量+水および/またはアルコール量+アルキレングリコール量)
    触媒溶液中の水分および/またはアルコール含有量 :1〜40重量%・・・・・・(2)
    触媒溶液中のチタンアルコキシド含有量 :0.1〜25重量%・・・(3)
  3. チタンアルコキシド含有触媒溶液中のチタンアルコキシドがテトラ−n−ブチルチタネートであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルの製造方法。
  4. チタンアルコキシド含有触媒溶液中のアルキレングリコールがエチレングリコールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエステルの製造方法
  5. 得られるポリエステルに対して、アルカリ金属化合物(a)の金属元素量、3価のリン化合物を含まないリン化合物(b)のリン元素量およびチタンアルコキシド含有触媒溶液(c)のチタン金属元素量として下記(a)〜(c)となるよう添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエステルの製造方法。
    (a)の金属元素量:3〜200ppm(対ポリエステル)
    (b)の金属元素量:10〜300ppm(対ポリエステル)
    (c)の金属元素量:3〜100ppm(対ポリエステル)
  6. アルカリ金属化合物がカリウム、ナトリウムおよびリチウムから選ばれた少なくとも1種の水酸化物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のポリエステルの製造方法。
  7. エステル交換反応触媒がアルカリ土類金属、コバルト、マンガンからなる群から選らば少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のポリエステルの製造方法。
  8. リン化合物がリン酸トリメチル、ジエチルホスホノ酢酸エチルの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のポリエステルの製造方法。
  9. 脂環族ジカルボン酸アルキルエステル成分がシクロヘキサンジカルボン酸ジメチルであり、全ジカルボン酸成分中5〜80モル%添加することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載のポリエステルの製造方法。
  10. シクロへキサンジカルボン酸ジメチルとして立体異性体のシス、トランス体を含有し、トランス体の含有量が40%以下であることを特徴とする請求項9のポリエステルの製造方法。
  11. 脂環族ジオール成分がスピログリコールであり、全ジオール成分中5〜80モル%であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載のポリエステルの製造方法。
  12. ポリエステル繰り返し単位に含まれる芳香環モル数がポリエステル樹脂1kg当たりに換算して4.8モル以下である請求項1〜11のいずれか1項記載のポリエステルの製造方法。
  13. 重縮合反応温度を260〜290℃で行なうことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載のポリエステルの製造方法。
  14. 請求項1〜13のいずれか1項に記載のポリエステルの製造方法で得たポリエステルとポリエチレンテレフタレートとを交互に積層した積層ポリエステルフィルム。
  15. 反射率が90%以上である請求項14に記載の積層ポリエステルフィルム。
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