JP7306154B2 - ポリエステル樹脂組成物およびフィルム - Google Patents
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Description
ナフタレンジカルボン酸成分以外の芳香族ジカルボン酸成分の含有量としては、光学特性の点から、全ジカルボン酸成分に対して1mol%以上、30mol%以下である必要があり、さらには10mol%以上であることが好ましい。
ナフタレンジカルボン酸成分以外の芳香族ジカルボン酸成分としては、例えばフタル酸成分、テレフタル酸成分、イソフタル酸成分、5-スルホン酸ナトリウムイソフタル酸成分などを挙げることができるが、中でもイソフタル酸成分であることが、光学特性、熱特性の点から好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物のポリアルキレングリコールの含有量としては、ガラス転移温度の観点から、ポリエステル樹脂組成物の質量に対し、1重量%以上10重量%以下である必要がある。さらに、結晶性制御、製膜性、ポリエステル樹脂製造における反応性の点から、ポリアルキレングリコールの数平均分子量が200以上1000未満であることが好ましい。数平均分子量が1000以上となると、分子量の増大にともない、反応性低下、および非相溶化によりポリエステル樹脂が白化する傾向にある。
以下に具体的な製造例を示すが、これに限定されない。
ナフタレンジカルボン酸ジメチル79.5重量部、イソフタル酸ジメチル15.8重量部、エチレングリコール44.4重量部、ポリエチレングリコール(数平均分子量400)6.5重量部を反応容器に仕込み、180℃で溶解後、攪拌しながらエステル交換反応触媒を添加する。
本発明のポリアルキレングリコールの添加時期としては、エステル交換反応前から重縮合反応開始前までの任意の段階で添加することができるが、反応性の点から、エステル交換反応前に添加することが好ましい。
エステル交換反応触媒としては、チタンアルコキシド、チタンキレート化合物、酢酸マンガン、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウムなどの酢酸金属塩など、公知のエステル交換能を有する化合物を用いることができ、酢酸マンガン4水和物であれば、0.05~0.06重量部をエチレングリコール溶液として添加すれば十分に反応が進行する。
リン化合物としては、例えばリン酸系、亜リン酸系、ホスホン酸系、ホスフィン酸系化合物等を挙げることができ、リン酸、亜リン酸、トリメチフホスフェート、エチルジエチルホスホノアセテートなど、公知のリン化合物を使用することができる。このとき、リン酸アルカリ金属塩を併用すると耐熱性向上の点で好ましい。このようなリン化合物の添加量としては、ポリエステル樹脂組成物100重量部に対して、リン酸0.022重量部、リン酸二水素ナトリウム2水和物0.026重量部とすると、マンガン元素とリン元素のモル比率が1.0付近となり、耐熱性が良好となる。
本発明のアルカリ金属化合物の添加時期としては、エステル交換反応開始から重縮合反応開始前までの任意の段階で添加することができるが、リン酸アルカリ金属化合物として添加する場合は、エステル交換反応終了後から重縮合反応開始前までの間に添加することが好ましい。
本発明の積層フィルムにおいては、積層フィルムを構成するポリエステル樹脂層の少なくとも一つが本発明のポリエステル樹脂組成物を80重量%以上含有することが好ましく、かつもう一方のポリエステル樹脂層が結晶性ポリエステル樹脂から構成されることが好ましい。本発明のポリエステル樹脂組成物を80重量%以上含有する層は、熱処理工程において、配向が緩和されることにより、高い光学等方性(面方向・面直方向共に同じ屈折率)を発現することができる。一方、結晶性ポリエステル樹脂の場合においては、延伸工程で強く配向させることにより、面方向の屈折率(面内屈折率)と面直方向の屈折率(面直屈折率)の差を大きくすることができる。そして、本発明のポリエステル樹脂組成物を80重量%以上含有するポリエステル層と、結晶性ポリエステル樹脂の層の面方向の屈折率を同じにすることで、面直方向に屈折率差を設けることができる。
本発明の積層フィルムは、フィルム面に垂直に(フィルム面の法線に対して0°の角度で)入射する光の透過率が50%以上であることが好ましい。ここでの垂直に入射する光の透過率が50%以上であるとは、具体的には波長450~650nmにおけるフィルムの平均透過率が50%以上であることを示し、好ましくは、70%以上である。このような積層フィルムを得るためには、最終製品として2つの熱可塑性樹脂の間のフィルム面に平行な方向の屈折率差を小さくすることで達成され、フィルム面に平行な方向の屈折率差が0.06以下であれば透過率50%以上に、0.04以下であれば透過率は70%以上にすることが容易となる。
本発明の積層フィルムは、フィルム面の法線に対して70°の角度で入射したときの反射率(%)とは、波長450~650nmの平均反射率とする。70°の反射率が30%以上であることが好ましく、さらには、70°入射における反射率が50%であることが好ましい。このような積層フィルムを得るためには、最終製品として2つの熱可塑性樹脂の間のフィルム面に垂直な方向の屈折率差を大きくすることで達成され、フィルム面に垂直な方向の屈折率差が0.08以上であれば反射率は30%以上に、屈折率差が0.12以上であれば反射率は50%以上とすることが容易となる。
なお、物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
測定するサンプルを約10mg秤量し、アルミニウム製パン、パンカバーを用いて封入し、示差走査熱量計(Q2000型、TAインスツルメント社製)によって測定した。測定においては窒素雰囲気中で300℃まで昇温、5分間保持した後、急冷、再び窒素雰囲気中で20℃から16℃/分の速度で300℃昇温、5分間保持した後、16℃/分の速度で冷却する。16℃/分の速度で昇温したときの中間点ガラス転移温度(各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と,ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度)、16℃/分で冷却したときに観察される結晶化に由来する結晶化エネルギーを測定した。
原子吸光分析法(日立製作所製:偏光ゼーマン原子吸光光度計180-80。フレーム:アセチレン-空気)にて定量を行った。
ポリエステル樹脂組成物をベント付き二軸押出機にて280℃の溶融状態とした後、ギヤポンプおよびフィルターを介して、T-ダイに導いてシート状に成形した後、静電印加にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、厚み100μmの未延伸シートを得た。
得られた未延伸シートの屈折率について、JIS K7142(1996)A法に従って屈折率を測定した。
ポリエステル樹脂組成物2gを20mLのオルトクロロフェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタンの3/2(容積比)混合溶液に溶解し、光路長20mmのセルを用い、ヘイズメーター(スガ試験機社製 HZ-1)を用いて、積分球式光電光度法にて測定した。
溶液ヘイズは、値が低いほど透明性に優れることを示す指標であり、1.0%以下(○、△)を合格とした。
0.6%以上1.0%以下 ・・・・ △
1.1%以上 ・・・・ ×。
ポリエステル樹脂組成物7gを試験管に秤量し、160℃、8時間真空乾燥する。乾燥後のポリエステル樹脂組成物を窒素雰囲気下、290℃、1時間の溶融処理を行い、乾燥前の固有粘度(IV)と溶融処理後の固有粘度の差をΔIVとして算出した。
固有粘度(IV)は、JIS K7367-5:2000(ISO 1628-5:1998)に則って検量線を作成し、ポリマー0.1gをo-クロロフェノール10mlに160℃、20分で溶解し、25℃で測定した。
ΔIVの差が小さいほど溶融時の耐熱性が良好であることを示す指標であり、ΔIVが0.5以下を合格とした。
0.30以下 ・・・・ ○
0.31以上0.50以下 ・・・・ △
0.51以上 ・・・・ ×。
ポリマーのストランドもしくはチップを5g計量し、オーツカ光学株式会社製ENV-Bを用いて異物(黒色、白色、茶色)をマーキングした。マーキングした異物について、表層の樹脂部分をヘキサフルオロイソプロパノールで溶解し、異物を露出させSEM(日立製作所製 Regulus 8100)を用いて5000倍で観察を行い、最大直径が50μm以上の異物をカウントした。
異物0個 ・・・・ ○
異物1個以上 ・・・・ ×。
真空乾燥機にて減圧下、180℃で3時間以上乾燥した樹脂を用いて、島津製作所(株)島津フローテスタCFT-500形Aにて測定した。樹脂量は約5g、溶融温度は270℃に設定する。荷重は10N、20N、50N(サンプルセットを始めて5分後に荷重スタート)として、それぞれの荷重における剪断速度と溶融粘度を求めた。ダイスはφ1mm、L=10mmであった。各荷重それぞれの測定回数は3回とし、それぞれの平均値を求めて得られた各荷重での溶融粘度、剪断速度の数値データをグラフ化し、そのグラフから剪断速度100(1/sec)の値を求めた。
日立製作所製 分光光度計(U-4100 Spectrophotomater)に付属の角度可変透過付属装置ならびに付属のグランテーラ社製偏光子を取り付け、入射角度φ=0度における波長250~1600nmの透過率ならびにφ=70度の反射率を測定した。
得られた積層フィルムにおいてフローマークの有無で製膜性を判断し、目視でフローマークのないものを合格とした。
ナフタレンジカルボン酸ジメチル79.5重量部、イソフタル酸ジメチル15.4重量部、エチレングリコール44.4重量部、ポリエチレングリコール(数平均分子量400)6.5重量部を反応容器に仕込み180℃で溶解した後、攪拌しながら酢酸マンガン4水和物0.055重量部、三酸化アンチモン0.020重量部を添加し、エステル交換反応を開始した。3.5時間かけてメタノールを留出させながら235℃まで昇温し、エステル交換反応を終了した。リン酸0.022重量部、リン酸二水素ナトリウム2水和物0.026重量部、IRGANOX1010を0.1重量部添加し、余剰のエチレングリコールを留去させた。
得られたポリエステル樹脂組成物とポリエチレンテレフタレート樹脂を、2台の単軸押出機にそれぞれ投入し、290℃の温度で溶融させて混練した。次いで、ポリエステル樹脂組成物とポリエチレンテレフタレート樹脂を、それぞれFSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて計量しながら、スリット数801個の積層装置にて合流させて、厚み方向に交互に801層積層された積層体を得た。積層体とする方法は、日本特開2007-307893号公報〔0053〕~〔0056〕段の記載の方法に従って行い、最終製品として、反射帯域が400~1000nmとなるように設計された積層装置であった。
このようにして得られた一軸延伸フィルムをテンターに導き、90℃の温度の熱風で予熱後、95℃の温度でフィルム幅方向に3.2倍延伸した。延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で240℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度条件で幅方向に2%の弛緩処理を、さらに100度まで急冷した後に幅方向に5%の弛緩処理を施し、その後、巻き取り積層フィルムを得た。
アルカリ金属元素の含有量、アルカリ金属化合物の種類を変更する以外は、実施例1と同様にしてポリエステル組成物、および積層フィルムを得た。評価結果を表1、表2に示す。アルカリ金属含有量の増加に伴い、溶液ヘイズが上昇する傾向にあるが、実施例2~5においては、本発明の請求項1の範囲内であり、斜め入射角制御用フィルムとして問題ない性能であった。
ポリアルキレングリコールの数平均分子量、共重合量、化合物の種類を変更する以外は、実施例1と同様にしてポリエステル組成物、積層フィルムを得た。評価結果を表1、表2に示す。
比較例2は、ポリエチレングリコールを添加しなかったため、ラス転移温度が請求項1の範囲を外れており、フローマークの発生による積層精度の乱れが発生し、70度反射率、0度透過率が低下する結果となった
比較例3は、ガラス転移温度が高く、溶融状態からの結晶化ピークが検出されており、結晶化エネルギーも5.5J/gと請求項1の範囲を外れており、フローマークが発生した。イソフタル酸ジメチルを共重合していない分、屈折率が上昇したため、0度透過率は上昇したが、配向結晶化により70度反射率がていかしたものと推定する。
比較例4は、イソフタル酸ジメチルの共重合量が35mol%を超えており、得られたポリエステル組成物のガラス転移温度が低く、屈折率も低下したため、70度反射率、0度透過率ともに低下する結果となった。
比較例7
グリコール成分として1,4-ブタンジオールを10mol%共重合する以外は実施例1と同様にしてポリエステル組成物、積層フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
1,4ブタンジオールを共重合したことにより、エチレングリコール成分が95mol%を下回ったため、ポリエステル組成物の屈折率が下がり、70度反射率、0度透過率ともに低下する結果となった。
Claims (7)
- 芳香族ジカルボン酸単位とアルキレングリコール単位を有するポリエステルであって、全ジカルボン酸成分に対してナフタレンジカルボン酸成分を70mol%以上含有し、テレフタル酸成分、および/またはイソフタル酸成分を1mol%以上30mol%以下含有し、全ジオール成分に対してエチレングリコールを95mol%以上含有し、数平均分子量が200以上、1000未満であるポリエチレングリコール、および/またはポリテトラメチレングリコールの含有量がポリエステル樹脂組成物の質量に対して1重量%以上10重量%以下、ナトリウム、および/またはカリウムがポリエステル樹脂組成物の質量に対して10ppm以上100ppm以下であり、示差走査熱量測定におけるガラス転移温度が80℃以上100℃未満、溶融状態からの結晶化エネルギー(窒素雰囲気中で300℃まで昇温、5分間保持した後、急冷、再び窒素雰囲気中で20℃から16℃/分の速度で300℃昇温、5分間保持した後、16℃/分の速度で冷却したときに観察される結晶化に由来する結晶化エネルギー)が5J/g未満であるポリエステル樹脂組成物。
- 前記ナトリウムおよび/またはカリウムがリン酸塩として添加されたものである請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
- 溶融ヘイズが1.0%未満である請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物。
- 請求項1~3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物を80重量%以上含むポリエステルフィルム。
- 請求項4に記載のポリエステルフィルムからなる層を少なくとも1層以上含む積層ポリエステルフィルムであって、示差走査熱量測定における最も高いガラス転移温度が100℃以下である積層ポリエステルフィルム。
- 層数が50以上である請求項5記載の多層積層フィルム。
- 請求項5または6に記載の積層フィルムからなる斜め入射光反射フィルム。
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