JP2008303839A - 内燃機関のデコンプ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡易な構成でメンテナンス時のデコンプシャフトの脱落を防止した内燃機関のデコンプ装置を供する。
【解決手段】カムシャフト21の外周面に開口し嵌挿孔26に少なくとも一部が交差するピン挿入孔28に挿入された脱落防止ピン51が、嵌挿孔26に嵌挿されたデコンプシャフト42を回動可能な状態でデコンプシャフト42に係合することにより、デコンプシャフト42の軸方向の移動が禁止され、カムシャフト21の脱落防止ピン51が挿入されたピン挿入孔28の開口を軸受19が塞ぎ、デコンプシャフト42の揺動部は軸受側に向け突出して形成された軸受規制部45により軸受19の軸方向の移動を規制する内燃機関のデコンプ装置。
【選択図】図5

Description

本発明は、内燃機関の始動時に、機関弁を開弁することでピストンによる圧縮圧力を低減して始動を容易にするデコンプ装置に関する。
カムシャフトの嵌挿孔に軸方向に挿入されるデコンプシャフトと、カムシャフトに軸方向に直交して設けられたピン孔(プランジャ孔)内に移動可能に配置されるデコンプピン(デコンププランジャ)とを備える内燃機関のデコンプ装置において、デコンプシャフトとデコンプピンとが互いに係合し、デコンプシャフトの回動により作動されるデコンプピンが、機関弁を開弁させるデコンプ位置と機関弁を開弁させないデコンプ解除位置との間で移動するものは、既に知られている(例えば特許文献1参照)。
特開2006−144627号公報
同特許文献1では、デコンプシャフトが嵌挿孔に軸方向から抜き差し可能に挿入され、デコンプシャフトの挿入される側の端部の偏心突部がデコンプピンの側面に形成された凹溝に係合している。
デコンプシャフトの他端に設けられた遠心ウエイトの揺動によりデコンプシャフトが回動し、一体に旋回する偏心突部がデコンプピンを軸径方向に移動し、カムシャフトのカム面から出没する。
デコンプピンがカム面から突出した位置が機関弁を開弁させるデコンプ位置であり、カム面から没した位置が機関弁を開弁させないデコンプ解除位置である。
内燃機関のメンテナンス時などに、デコンプシャフトを駆動する駆動機構がカムシャフトから外されるなどした場合、元々抜き差し可能に挿入されていたデコンプシャフトが抜け落ちる可能性があり、デコンプシャフトが脱落すると、デコンプシャフトの端部の偏心突起とデコンプピンの凹溝との係合が外れ、デコンプピンも脱落してしまうおそれがあり、メンテナンス作業に手間がかかることになる。
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、簡易な構成でメンテナンス時のデコンプシャフトの脱落を防止した内燃機関のデコンプ装置を供する点にある。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、軸受により回転自在に軸支され外周面に形成された動弁カムにより機関弁を駆動するカムシャフトに対して回動自在に軸支されたデコンプシャフトを相対回動させてデコンプ出没部を前記動弁カム面に出没させることでデコンプまたはデコンプ解除を行う内燃機関のデコンプ装置において、前記デコンプシャフトが前記カムシャフトの一端面に開口し該カムシャフトの回転中心軸より偏位して軸方向に穿孔された嵌挿孔に相対回動可能に嵌挿され、前記デコンプシャフトの一端には前記カムシャフト一端面に沿って該デコンプシャフトの径方向に延出された揺動部を備え、前記カムシャフトの外周面に開口し前記嵌挿孔に少なくとも一部が交差するピン挿入孔に挿入された脱落防止ピンが、前記嵌挿孔に嵌挿された前記デコンプシャフトを回動可能な状態で該デコンプシャフトに係合することにより、前記デコンプシャフトの軸方向の移動が禁止され、前記カムシャフトのピン挿入孔の開口を前記軸受が塞ぎ、前記揺動部は前記軸受側に向け突出して形成された軸受規制部により前記軸受の軸方向の移動を規制する内燃機関のデコンプ装置とした。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の内燃機関のデコンプ装置において、一端を前記カムシャフトに他端を前記揺動部に係止されたスプリングにより前記デコンプシャフトが、一回動方向に付勢され、前記カムシャフトの端面に突出したストッパ部に前記スプリングに付勢されて前記揺動部が当接した状態で、所定位置に配置された前記軸受から前記軸受規制部までの距離が、所定位置に配置された前記軸受を軸方向に移動して前記カムシャフトのピン挿入孔を完全に開口させる移動距離より小さいことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の内燃機関のデコンプ装置において、前記デコンプシャフトを前記スプリングの付勢力に抗して回動すると、前記軸受規制部による前記軸受の軸方向の移動規制が解除されることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の内燃機関のデコンプ装置において、前記デコンプ出没部が、前記カムシャフトの前記嵌挿孔の奥部に連通し前記動弁カム面に開口したプランジャ収納孔に挿入されたデコンププランジャであり、前記デコンプシャフトの端部に前記デコンプカムが形成され、前記プランジャ収納孔に収納された前記デコンププランジャの凹部に前記デコンプシャフトの前記デコンプカムが係合することを特徴とする。
請求項1記載の内燃機関のデコンプ装置によれば、脱落防止ピンが、嵌挿孔に嵌挿されたデコンプシャフトに係合し、脱落防止ピンが挿入されたピン挿入孔の開口を軸受が塞ぎ、軸受規制部が同軸受の軸方向の移動を規制するので、軸受規制部が軸受の移動規制を解除しない限り、軸受が脱落防止ピンの抜けを防止してデコンプシャフトの移動が規制された状態にあるため、メンテナンス時などにデコンプシャフト等の脱落が防止され簡易な構成でメンテナンス等の作業性を高く維持することができる。
請求項2記載の内燃機関のデコンプ装置によれば、メンテナンス時等の機関停止時にはカムシャフトの端面に突出したストッパ部にスプリングに付勢されて揺動部が当接した状態であり、所定位置に配置された軸受からデコンプ作動部材の軸受規制部までの距離が、所定位置に配置された軸受を軸方向に移動してカムシャフトのピン挿入孔を完全に開口させる移動距離より小さいので、メンテナンス作業においてシリンダヘッドからカムシャフトを外す場合に、軸受が移動しても軸受規制部に規制されてピン挿入孔を完全に開口することがないため、脱落防止ピンが抜けることがなく、よってデコンプシャフト等が脱落することは防止される。
請求項3記載の内燃機関のデコンプ装置によれば、デコンプシャフトをスプリングの付勢力に抗して回動すると、軸受規制部による前記軸受の軸方向の移動規制が解除されるので、デコンプシャフトのメンテナンスなどで必要なときには、容易にデコンプシャフトの抜き取りができる。
請求項4記載の内燃機関のデコンプ装置によれば、前記デコンプ出没部が、カムシャフトの嵌挿孔の奥部に連通し動弁カム面に開口したプランジャ収納孔に挿入されたデコンププランジャであり、デコンプシャフトの端部にデコンプカムが形成され、プランジャ収納孔に収納されたデコンププランジャの凹部にデコンプシャフトのデコンプカムが係合するので、デコンプ出没部としてデコンプシャフトとは別体のデコンププランジャを備える場合でも、デコンプシャフトの移動が規制されることで、デコンプシャフトのデコンプカムとデコンププランジャの凹部の係合が維持されてデコンププランジャが脱落することは防止され、メンテナンス等の作業性を良好に維持することができる。
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図14に基づいて説明する。
本実施の形態に係るデコンプ装置40を備える内燃機関Eは、車両としての自動2輪車に搭載される単気筒4ストローク内燃機関である。
図1および図2を参照すると、内燃機関Eは、ピストン4が往復動可能に嵌合するシリンダ1と、シリンダ1の上端に結合されるシリンダヘッド2と、シリンダヘッド2の上端に結合されるヘッドカバー3とから構成される機関本体を備える。
そして、シリンダヘッド2とヘッドカバー3とにより、内燃機関Eに備えられる頭上カム軸型の動弁装置20が収容される動弁室5が形成される。
シリンダヘッド2には、シリンダ軸線方向でピストン4と対向する位置に設けられる燃焼室6と、燃焼室6に開口する左右1対の吸気口7aを有する吸気ポート7と、燃焼室6に開口する左右1対の排気口8aを有する排気ポート8とが形成されている。
自動2輪車にカムシャフトを横置きに搭載される内燃機関Eにおいて、排気口8aが前側に、吸気口7aが後側に位置する。
そして、両吸気口7aおよび両排気口8aをそれぞれ開閉するいずれもポペット弁からなる後側左右1対の吸気弁11および前側左右1対の排気弁12と、燃焼室6の中央部に臨む点火栓13(図3参照)とが設けられる。
機関弁としての吸気弁11および排気弁12は、シリンダヘッド2に圧入された弁ガイド14にそれぞれ摺動自在に嵌挿され、弁ばね15の弾発力により閉弁方向に常時付勢される。
吸気弁11と排気弁12は、動弁装置20により駆動され、燃焼室6に開口する吸気ポート7と排気ポート8を機関回転に同期して開閉する。
シリンダヘッドカバー3を外してシリンダヘッド2の内部構造を示したシリンダヘッド2の上面図である図3を併せて参照して、動弁装置20を収容する動弁室5において、左右一対の吸気弁11を挟んで左右にシリンダヘッド2から延出した軸受壁17,17が対向して形成され、左側軸受壁17のさらに左側に前後に長尺のチェーン室16が上下に貫通して形成されている。
左右の軸受壁17,17の上面には半円弧状の軸支部が形成され、同軸支部とカムシャフトホルダ18,18の半円弧状の軸支部とにより玉軸受であるベアリング19,19が挟持され、この左右のベアリング19,19によりカムシャフト21が回転自在に軸支される。
この左右方向に指向して軸支されたカムシャフト21は、左右のベアリング19,19の間において、左右の吸気弁11,11に対応して一対の動弁カムである吸気カムロブ22,22が形成され、左右の吸気カムロブ22,22の間に一対の動弁カムである排気カムロブ23,23が形成され、左側ベアリング19より左方に突出した左端部にはチェーン室16において被動チェーンスプロケット31が嵌着される。
図示されないクランクシャフトに嵌着された駆動チェーンスプロケットと前記被動チェーンスプロケット31との間にタイミングチェーン32が架渡され、クランクシャフトの動力がタイミングチェーン32を介してカムシャフト21にクランクシャフトの半分の回転速度で伝達される。
カムシャフト21に形成された吸気カムロブ22は、吸気弁11の上端に被せられたバルブリフタ11aの上面に接し、カムシャフト21の回転で、吸気カムロブ22が直接吸気弁11を所定の開閉時期およびリフト量で開閉駆動する。
このカムシャフト21の前方においてロッカアームシャフト33が左右軸受壁17,17に架設されてカムシャフト21に平行に設けられており、同ロッカアームシャフト33に揺動自在に一対のロッカアーム34,34が隣り合って軸支されている。
各ロッカアーム34は、後方に延出した端部に排気カムロブ23に接するローラ34aを有し、前方に延出した端部34bが排気弁12のバルブステムの上端に接している。
したがって、カムシャフト21の排気カムロブ23の回転によりロッカアーム34を介して排気弁12が所定の開閉時期およびリフト量で開閉駆動される。
したがって、吸気ポート7の入口が開口するシリンダヘッド2の側部2iに取り付けられる吸気管を有する吸気装置を通って吸入された空気は、気化器などの燃料供給装置から供給された燃料と混合して混合気を形成し、吸気行程において吸気ポート7を通って開弁した吸気弁11を経て燃焼室6に吸入され、ピストン4が上昇する圧縮行程において混合気の状態で圧縮される。
該混合気は圧縮行程の終期に点火栓13により点火されて燃焼し、ピストン4が下降する膨張行程において燃焼ガスの圧力により駆動されるピストン4がクランクシャフトを回転駆動する。
燃焼ガスは、ピストン4が上昇する排気行程において開弁した排気弁12を経て、排気ガスとして燃焼室6から排気ポート8を通った後、排気ポート8の出口が開口するシリンダヘッド2の側部2eに取り付けられる排気管を有する排気装置を通って内燃機関Eの外部に排出される。
この内燃機関Eは、その始動時の圧縮行程で、燃焼室6内の圧縮圧力を開放することにより、始動操作力を軽減するデコンプ装置40を備え、同デコンプ装置40はカムシャフト21に設けられる。
カムシャフト21は、図5および図8ないし図10に図示するように、有底円筒状をなし、左端に開口した大径円孔21a,中径円孔21b,小径円孔21cが順次右側に連続して形成され、右端が閉塞されている。
なお、小径円孔21cだけは、回転中心軸より偏心して形成されている。
カムシャフト21の閉塞された右端の円柱底部24は、その左側にフランジ24fが形成されて、同円柱底部24の外周面にベアリング19が嵌合される。
この円柱底部24の端面には、回転中心軸を中心に約90度開いた扇形状をして右方に突出したストッパ部25が形成されており、ストッパ部25を除く約270度部分について平坦な端面24aが形成されている(図9,図10参照)。
扇形状に突出したストッパ部25の一対の両側面がストッパ面25a,25bとなる。
図8を参照して、円柱底部24の端面24aに開口して嵌挿孔26が、回転中心軸より偏心して小径円孔21cに平行に(軸方向に)穿設され、端面24aから軸方向で略右側の排気カムロブ23の深さまで穿孔されている。
この嵌挿孔26に、後記するデコンプシャフト42が回動自在に嵌挿される。
したがって、図4および図5に示すように、カムシャフト21の回転中心軸Xから偏心した位置にデコンプシャフト42の回動中心軸Yがある。
右側の排気カムロブ23のカム面に開口し、嵌挿孔26に奥部で直交するプランジャ収納孔27が、小径円孔21cまで貫通して穿設されている。
このプランジャ収納孔27には、後記するデコンププランジャ50が出没自在に嵌挿される。
また、円柱底部24には、中心を通る直径方向に小径のピン挿入孔28が貫通して形成されており、同ピン挿入孔28は円柱底部24の外周面に開口している。
このピン挿入孔28は、その中心より一方に延びる孔部分が若干径が縮小されており、縮径されていない他方の孔部分が前記嵌挿孔26に一部交差しており(図10参照)、図8のカムシャフト21の断面図には嵌挿孔26の内側にピン挿入孔28に連通する開口28aが表れている。
このピン挿入孔28の嵌挿孔26に交差する縮径されていない孔部分には、脱落防止ピン51が挿入される。
なお、脱落防止ピン51は、その外径がピン挿入孔28の縮径された孔部分の内径より大きいので、縮径された孔部分には挿入されず、この縮径された孔部分は縮径されていない孔部分に挿入された脱落防止ピン51を抜くときに利用される。
このようなカムシャフト21にデコンプ装置40が組付けられる。
デコンプ装置40の主要部材であるデコンプ作動部材41は、図11ないし図14に示すような形状をしている。
すなわち、デコンプ作動部材41は、前記嵌挿孔26に嵌挿されるデコンプシャフト42と、その一端に径方向に延出したデコンプウエイト43を備えた揺動部分44と、他端に偏心して円柱状に突出したデコンプカム46とからなる。
図14を参照して、デコンプシャフト42の回動中心軸Yに偏心してデコンプカム46の中心軸Zがある。
デコンプシャフト42の揺動部分44側は若干径が大きく、その所定軸方向位置に溝条42aが周方向に全周に亘って形成されている。
揺動部分44は、径方向に大きく延出した部分にデコンプウエイト43が形成され、デコンプウエイト43と反対径方向に若干延出した延出部44aの先端からは軸方向デコンプシャフト42側に向けて突出した軸受規制部45が形成されている。
デコンプカム46は、デコンプシャフト42の円形端面42bからデコンプウエイト43と略反対方向に偏心して突出した縮径円柱部であり、軸方向視で図14に示すように、デコンプカム46の円形端面がデコンプシャフト42の円形端面42b内に完全に収まる位置にある。
カムシャフト21の排気カムロブ23に開口するプランジャ収納孔27に嵌挿されるデコンププランジャ50は、プランジャ収納孔27と略同じ長さの円柱部材であり、周面に凹溝50aが所定箇所に形成されており、プランジャ収納孔27に嵌挿されたとき排気カムロブ23のカム面から出没する端部は、球面50bを形成している(図8参照)。
カムシャフト21の円柱底部24に直径方向に貫通形成されたピン挿入孔28に挿入される脱落防止ピン51は、ピン挿入孔28と同じ長さの円柱状のピンであり、ピン挿入孔28に挿入すると、嵌挿孔26に開口する開口28aから一部が嵌挿孔26の内側にはみ出す。
なお、デコンプシャフト42の揺動部分44との付け根部分には、トーションスプリング52が巻装される。
以上のようなデコンプ装置40の部品が、カムシャフト21の端部に組付けられる。
プランジャ収納孔27にデコンププランジャ50が嵌挿され、嵌挿孔26に嵌挿されるデコンプシャフト42の端部のデコンプカム46をデコンププランジャ50の凹溝50aに係合させる。
そして、デコンプシャフト42を嵌挿孔26に所定位置まで嵌挿すると、デコンプシャフト42に形成された溝条42aがピン挿入孔28と軸方向位置が一致するので、同ピン挿入孔28に脱落防止ピン51を挿入すると、嵌挿孔26に開口する開口28aからはみ出した脱落防止ピン51の一部がデコンプシャフト42の外周面に形成された溝条42aに係合し、デコンプシャフト42の軸方向の移動を禁止する。
なお、脱落防止ピン51はデコンプシャフト42の環状の溝条42aの接線方向に係合するので、デコンプシャフト42の回動は可能である。
脱落防止ピン51が挿入されたピン挿入孔28の円柱底部24の外周面に開放した開口は、同円柱底部24に嵌合されるベアリング19によって塞がれる。
したがって、ベアリング19により脱落防止ピン51が抜け落ちるのを防止され、抜け落ちが防止された脱落防止ピン51によりデコンプシャフト42との係合が維持されて、デコンプシャフト42が嵌挿孔26から抜けて脱落するのを防止している(図5参照)。
デコンプシャフト42が嵌挿孔26に所定位置まで嵌挿されると、揺動部分44は、カムシャフト21の端面24aにトーションスプリング52を介して対向しストッパ部25と軸方向で同じ位置にある。
デコンプシャフト42に巻装されたトーションスプリング52は、一端52aがカムシャフト21のストッパ部25の外周に係止され、他端52bがデコンプ作動部材41の揺動部分44に係止されて、揺動部分44を図5において時計回りに付勢している。
したがって、カムシャフト21が停止しているときは、図4および図5に図示するように、トーションスプリング52の付勢力によりデコンプ作動部材41の揺動部分44が、ストッパ部25のストッパ面25aに当接している(図4参照)。
この揺動部分44の揺動状態でデコンプシャフト42の回動位置は、偏心したデコンプカム46をカムシャフト21の外方側に位置させており、これと係合するデコンププランジャ50を排気カムロブ23のカム面から突出させてデコンプ位置に位置させている(図5参照)。
この状態で、軸方向視で、揺動部分44のデコンプウエイト43はベアリング19と重なり、デコンプウエイト43と略反対側に延出した延出部44aの先端の軸受規制部45はベアリング19の内輪に重なり対向している(図4,図5参照)。
カムシャフト21の回転速度が増すと、デコンプ作動部材41はデコンプウエイト43の遠心力によりトーションスプリング52の付勢力に抗して揺動部分44を、図4および図6に示す軸方向視で反時計回りに揺動していく。
すると、図7に示すように、カムシャフト21の偏心したデコンプカム46が内方側に変位して、これと係合するデコンププランジャ50を排気カムロブ23のカム面から没してデコンプ解除位置に位置させている。
図6および図7に示すように、延出部44aがストッパ部25のストッパ面25bに当接するまで揺動部分44を揺動すると、軸方向視で、揺動部分44のデコンプウエイト43はベアリング19より外側にはみ出し、デコンプウエイト43と略反対側に延出した延出部44aの先端の軸受規制部45はベアリング19の内輪より内側に入る(図6参照)。
本デコンプ装置40は、以上のように構成されているので、内燃機関Eの始動時の機関回転速度が低速の場合は、カムシャフト21も低速回転で、デコンププランジャ50が排気カムロブ23のカム面から突出させたデコンプ位置にあって、始動時の圧縮行程で右側の排気弁12を開弁させ、燃焼室6の圧縮圧力を解放して内燃機関Eの始動を円滑に行うようにすることができる。
内燃機関Eの始動後、機関回転数が上昇すると、カムシャフト21も回転速度が増し、デコンプウエイト43が遠心力によりデコンプ作動部材41を回動し、デコンプカム46がデコンププランジャ50を排気カムロブ23のカム面から没してデコンプ解除位置になることで、圧縮行程で排気弁12が開弁しないデコンプ解除状態となる。
デコンプ装置40を組み込んだカムシャフト21が、ベアリング19,19を介して左右の軸受壁17,17とカムシャフトホルダ18,18に挟まれて取り付けられているときは、図2に示すように、各ベアリング19の外輪の外周に周方向に刻設された溝条19a(図5参照)に係合したストッパリング60が、軸受壁17とカムシャフトホルダ18の内周面に刻設された溝条にも係合してベアリング19の軸方向の移動を禁止している。
しかし、内燃機関Eの動弁系のメンテナンス時には、カムシャフトホルダ18を外して、カムシャフト21を取り出す場合があり、その際、ストッパリング60による係合がなくなるので、ベアリング19は、カムシャフト21に対して軸方向の移動が自由となる。
特に右側のベアリング19がカムシャフト21に対して右方に移動して円柱底部24から外れるようなことがあると、ピン挿入孔28の円柱底部24の外周面の開口が開放されて脱落防止ピン51が抜け落ち、デコンプシャフト42との係合がなくなってデコンプシャフト42が脱落することになる。
しかし、本デコンプ装置40は、デコンプ作動部材41の揺動部分44に外力を加わらない状態では、デコンプ装置40は、トーションスプリング52の付勢力により揺動部分44がストッパ部25のストッパ面25aに当接した図5に示す状態にある。
すなわち、この状態で、図5に示すように、円柱底部24の所定位置に配置されたベアリング19からデコンプ作動部材41の延出部44a先端で左方に突出した軸受規制部45までの距離dが、所定位置に配置されたベアリング19を軸方向右方に移動して塞いでいたピン挿入孔28を完全に開口させる移動距離Dより小さく設定している。
したがって、ベアリング19がカムシャフト21に対して右方に移動しても(左方への移動はフランジ24fにより規制されている)、揺動部分44の軸受規制部45により規制されてピン挿入孔28を完全に開口させるまで移動することができず、よってピン挿入孔28から脱落防止ピン51が抜け落ちることはなく、脱落防止ピン51のデコンプシャフト42との係合が維持されて、デコンプシャフト42が脱落することはない。
デコンプシャフト42の脱落が防止されるので、メンテナンス等の作業性を良好に維持することができる。
本デコンプ装置40を分解するときは、デコンプ作動部材41の揺動部分44をトーションスプリング52に抗して揺動し、延出部44a先端の軸受規制部45がベアリング19の内側に入るようにすると、図6および図7を参照して、ベアリング19がカムシャフト21に対して右方に移動したとき、左方に突出した軸受規制部45により規制されることがなく、図7に2点鎖線で示すように、ベアリング19はピン挿入孔28を完全に開口させるまで移動でき、よって開口したピン挿入孔28から脱落防止ピン51を抜き取り、脱落防止ピン51のデコンプシャフト42との係合を解除してデコンプシャフト42を嵌挿孔26から抜き取ることができる。
なお、デコンプシャフト42が抜き取られれば、デコンププランジャ50との係合も解除されて、デコンププランジャ50も取り外すことができる。
デコンプ装置40のカムシャフト21への組付けは、上記と逆の作業を行えばよい。
以上のように、本デコンプ装置40は、ベアリング19とデコンプウエイト43を備える揺動部分44を利用して、揺動部分44の軸受規制部45がベアリング19の移動を規制する簡単な構成で、メンテナンス等の作業性を良好に保つことができる。
以上の実施の形態では、デコンププランジャ50をデコンプ出没部材としてデコンプシャフト42とは別体であったが、デコンプシャフト自体にデコンプ出没部を形成したものであっても、メンテナンス時にデコンプシャフトの脱落を防止する本発明を適用することができる。
なお、デコンプシャフト42がデコンププランジャ50を出没させるデコンプカム46は、図14に示すように、デコンプシャフト42の円形端面42bから偏心して突出し、軸方向視でデコンプカム46の円形端面46bがデコンプシャフト42の円形端面42b内に完全に収まる位置にあったが、図15に示すデコンプ作動部材71の例では、デコンプシャフト72の円形端面72bから偏心して一部欠損した円柱状のデコンプカム76が突出しており(デコンプシャフト72の回動中心軸Yに対してデコンプカム76の中心軸Zが偏心している)、そのデコンプカム76の円形状端面76bの仮想完全円形は軸方向視でデコンプシャフト72の円形端面72bから多少はみ出している。
しかし、このはみ出し部分については、デコンプシャフト72の円形を回動中心軸Yを中心として加工するときに、同時に削り取ることで、簡易な加工であるにもかかわらずデコンププランジャを動作させない不感帯を精度良く設けつつ、軸方向視でデコンプシャフト72の円形端面72b内にデコンプカム76を収めることができ、嵌挿孔への嵌挿を容易にするとともに、同デコンプカム76と係合するデコンププランジャを前記実施の形態と同様に出没させることができる。
すなわち、デコンプシャフト72の回動中心軸Yに対するデコンプカム76の円形状端面76bの加工精度を向上させることができ、デコンププランジャ50の突出量精度を向上させることができる。
本発明の一実施の形態に係るデコンプ装置を適用した内燃機関のシリンダヘッドおよびその近傍の断面図である。 同内燃機関のシリンダヘッドおよびその近傍の別の断面で切断した断面図である。 シリンダヘッドカバーを外してシリンダヘッドの内部構造を示したシリンダヘッドの上面図である。 デコンプウエイトに外力が加わらない状態(デコンプ状態)でのカムシャフトを軸方向から視た右側面図である。 図4におけるV−V線断面図である。 デコンプウエイトをトーションスプリングに抗して揺動した状態(デコンプ解除状態)でのカムシャフトを軸方向から視た右側面図である。 図6におけるVI−VI線断面図である。 デコンプ装置の分解断面図である。 カムシャフトの上面図である。 同右側面図である。 デコンプ作動部材の上面図である。 同右側面図である。 同左側面図である。 同デコンプシャフトの拡大左側面図である。 別の例のデコンプシャフトの拡大左側面図である。
符号の説明
E…内燃機関、2…シリンダヘッド、17…軸受壁、18…カムホルダ、19…ベアリング、
20…動弁装置、21…カムシャフト、22…吸気カムロブ、23…排気カムロブ、24…円柱底部、25…ストッパ部、26…嵌挿孔、27…プランジャ収納孔、28…ピン挿入孔、
40…デコンプ装置、41…デコンプ作動部材、42…デコンプシャフト、42a…溝条、43…デコンプウエイト、44…揺動部分、45…軸受規制部、46…デコンプカム、50…デコンププランジャ、50a…凹溝、51…脱落防止ピン、52…トーションスプリング。

Claims (4)

  1. 軸受により回転自在に軸支され外周面に形成された動弁カムにより機関弁を駆動するカムシャフトに対して回動自在に軸支されたデコンプシャフトを相対回動させてデコンプ出没部を前記動弁カム面に出没させることでデコンプまたはデコンプ解除を行う内燃機関のデコンプ装置において、
    前記デコンプシャフトが前記カムシャフトの一端面に開口し該カムシャフトの回転中心軸より偏位して軸方向に穿孔された嵌挿孔に相対回動可能に嵌挿され、
    前記デコンプシャフトの一端には前記カムシャフト一端面に沿って該デコンプシャフトの径方向に延出された揺動部を備え、
    前記カムシャフトの外周面に開口し前記嵌挿孔に少なくとも一部が交差するピン挿入孔に挿入された脱落防止ピンが、前記嵌挿孔に嵌挿された前記デコンプシャフトを回動可能な状態で該デコンプシャフトに係合することにより、前記デコンプシャフトの軸方向の移動が禁止され、
    前記カムシャフトのピン挿入孔の開口を前記軸受が塞ぎ、
    前記揺動部は前記軸受側に向け突出して形成された軸受規制部により前記軸受の軸方向の移動を規制することを特徴とする内燃機関のデコンプ装置。
  2. 一端を前記カムシャフトに他端を前記揺動部に係止されたスプリングにより前記デコンプシャフトが、一回動方向に付勢され、
    前記カムシャフトの端面に突出したストッパ部に前記スプリングに付勢されて前記揺動部が当接した状態で、所定位置に配置された前記軸受から前記軸受規制部までの距離が、所定位置に配置された前記軸受を軸方向に移動して前記カムシャフトのピン挿入孔を完全に開口させる移動距離より小さいことを特徴とする請求項1記載の内燃機関のデコンプ装置。
  3. 前記デコンプシャフトを前記スプリングの付勢力に抗して回動すると、前記軸受規制部による前記軸受の軸方向の移動規制が解除されることを特徴とする請求項2記載の内燃機関のデコンプ装置。
  4. 前記デコンプ出没部が、前記カムシャフトの前記嵌挿孔の奥部に連通し前記動弁カム面に開口したプランジャ収納孔に挿入されたデコンププランジャであり、
    前記デコンプシャフトの端部に前記デコンプカムが形成され、
    前記プランジャ収納孔に収納された前記デコンププランジャの凹部に前記デコンプシャフトの前記デコンプカムが係合することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項記載の内燃機関のデコンプ装置。
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