JP2021008853A - 内燃機関 - Google Patents

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Abstract

【課題】デコンプ機構を積極的に潤滑できる内燃機関を提供する。【解決手段】内燃機関は、カムシャフト21と、カムシャフト21に回転可能に支持されたシャフト部47を有し、突出位置と退避位置との間で移動可能なデコンプカム41と、カムシャフト21の回転数が規定値以上の場合にデコンプカム41を突出位置から退避位置に移動させるデコンプウェイト51と、排気側ロッカーアームに設けられ、デコンプカム41に摺接可能に形成されたデコンプスリッパーと、を備える。カムシャフト21には、中心部からカム面28まで延びる第3分岐油路75が形成されている。シャフト部47の少なくとも一部は、第3分岐油路75に交差している。【選択図】図3

Description

本発明は、内燃機関に関するものである。
機関の始動時に圧縮圧力を低減するデコンプ機構を備えた内燃機関が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。デコンプ機構は、機関の始動時に圧縮行程となるタイミングでバルブを開くことにより、機関始動時の負荷を低減するものである。デコンプ機構は、通常、燃焼室のバルブを駆動するためのカムシャフト部分に組み込まれている。
特許文献1には、シリンダヘッドに回転自在に支承されるカムシャフトと、カムシャフトの軸線を中心とする円弧状のベース円部と、ベース円部よりも径方向外側に突出するようにしてベース円部に連設されるカム山部とを有し、カム山部でロッカーアームを介して排気弁を開閉させる排気カムと、排気カムの側面に回動可能に支承されるとともに、遠心力によって動作するデコンプウェイトと、デコンプウェイトに連結されてカムシャフトの正転方向と同方向に回動するとともに、ベース円部から突出する突出部とベース円部に対して没入する切欠き状の退避部とを備え、突出部がロッカーアームのカムフォロアに当接することで排気弁を開弁させるデコンプカムを備えた内燃機関のデコンプ装置が開示されている。
また、特許文献2には、排気弁または吸気弁に連動、連結されるとともに第1および第2当接部が設けられるカムフォロアと、第1当接部に摺接する動弁カムが設けられるカムシャフトと、カムシャフトと同一軸線まわりに回動可能なロータを有するロータリーソレノイドと、圧縮行程で第2当接部に摺接することを可能としてロータに一体に設けられるデコンプカムと、圧縮行程でのロータリーソレノイドの励磁によるロータの回動に応じてデコンプカムおよびカムシャフト間を連結する一方向クラッチとを備えてなるエンジンのデコンプ装置が開示されている。このデコンプ装置のカムシャフトには、動弁カムのカム面に開口した油路が形成され、カムフォロアと動弁カムとの摺動部を潤滑している。
特許第5756454号公報 特許第4010885号公報
しかしながら、従来技術の内燃機関にあっては、デコンプ機構を積極的に潤滑する構造を備えていない。
そこで本発明は、デコンプ機構を積極的に潤滑できる内燃機関を提供するものである。
請求項1に記載の発明では、内燃機関は、燃焼室(4)に臨むポート(8A,8B)が設けられ、前記ポート(8A,8B)を開閉可能なバルブ(10A,10B)を備えたシリンダヘッド(5)と、前記バルブ(10A,10B)を閉弁方向に付勢するスプリング(12)と、前記シリンダヘッド(5)に所定の回転軸線(P)回りに回転可能に支持されたカムシャフト(21)と、前記バルブ(10A,10B)に連係されるとともに前記カムシャフト(21)のカム面(28)に接触し、前記シリンダヘッド(5)に回動可能に支持されたロッカーアーム(37)と、前記カムシャフト(21)に回転可能に支持されたシャフト部(47)を有し、前記回転軸線(P)の軸線方向における所定の領域内において前記軸線方向から見て前記回転軸線(P)を中心とする仮想円(C)よりも外側に突出した突出位置と前記仮想円(C)よりも内側に没入する退避位置との間で移動可能なデコンプカム(41)と、前記カムシャフト(21)に揺動可能に支持されるとともに前記デコンプカム(41)に係合し、前記カムシャフト(21)の回転に伴って発生する遠心力によって変位して、前記カムシャフト(21)の回転数が規定値以上の場合に前記デコンプカム(41)を突出位置から退避位置に移動させるデコンプウェイト(51)と、前記ロッカーアーム(37)に設けられ、前記軸線方向の前記所定の領域内において前記軸線方向から見て前記仮想円(C)よりも外側で前記デコンプカム(41)に摺接可能に形成されたデコンプスリッパー(63)と、を備え、前記カムシャフト(21)には、中心部から前記カム面(28)まで延びる油路(75)が形成され、前記シャフト部(47)の少なくとも一部は、前記油路(75)に交差している、ことを特徴とする。
請求項2に記載の発明では、前記シャフト部(47)は、少なくとも一部が前記シャフト部(47)の軸線方向視で前記油路(75)の中心に交差している、ことを特徴とする。
請求項3に記載の発明では、前記シャフト部(47)の中心は、前記油路(75)の中心に交差している、ことを特徴とする。
請求項4に記載の発明では、前記シャフト部(47)の外周面における前記油路(75)に交差する箇所には、凹部(48)が設けられている、ことを特徴とする。
請求項5に記載の発明では、前記凹部(48)は、前記シャフト部(47)回りの全周にわたって延びている、ことを特徴とする。
請求項6に記載の発明では、前記カムシャフト(21)の中心部には、前記回転軸線(P)に沿って直線的に延びる軸心油路(71)が形成され、前記油路(75)は、前記軸心油路(71)から直線的に延びている、ことを特徴とする。
請求項7に記載の発明では、前記バルブ(10A,10B)は、燃焼室(4)に臨む排気ポート(8A,8B)を開閉可能な排気バルブである、ことを特徴とする。
請求項1に記載の内燃機関によれば、デコンプカムのシャフト部とカムシャフトとの摺動部に潤滑油が直接供給される。これにより、デコンプ機構を積極的に潤滑できる。
請求項2に記載の内燃機関によれば、シャフト部が油路の中心に交差していない場合と比較して、シャフト部と油路との交差部において油路の断面積が大きくなる。これにより、シャフト部とカムシャフトとの摺動部に流入する潤滑油が増える。したがって、シャフト部とカムシャフトとの摺動部への潤滑油の供給量を確保することができる。
請求項3に記載の内燃機関によれば、シャフト部とカムシャフトとの摺動部への潤滑油の供給量を可能な限り増やすことができる。
請求項4に記載の内燃機関によれば、内燃機関の組み立て後の初期馴染み用のグリスを凹部に保持することができる。また、グリスが凹部から抜けた後、潤滑油を凹部に保持して、シャフト部とカムシャフトとの摺動部に潤滑油を供給することができる。
請求項5に記載の内燃機関によれば、旋削等により凹部を容易に形成できる。また、凹部における潤滑油の保持量を確保することができる。さらに、凹部の内側を通じて、油路におけるシャフト部との交差部を挟んで上流側から下流側に潤滑油を流通させることができる。したがって、潤滑油をカムシャフトのカム面まで確実に供給することができる。
請求項6に記載の内燃機関によれば、油路および軸心油路がそれぞれ直線的に延びているので、油路および軸心油路を容易に形成することができる。また、油路が蛇行して延びている場合と比較して油路の長さが短くなるので、油路を形成することによるカムシャフトの強度の低下を抑制しつつ、潤滑油を速やかに供給することができる。
請求項7に記載の内燃機関によれば、排気バルブに連係されたロッカーアームにデコンプスリッパーが設けられるので、デコンプカムによって排気バルブを開閉できる。このため、内燃機関の始動時に燃焼室内の圧縮圧力を開放する際、燃焼室内の空気を排気ポートに流すことができる。これにより、燃焼室内の空気を吸気ポートに逆流させる場合と比較して、内燃機関の始動時の吸気が阻害されて始動性が悪化することを抑制できる。
実施形態に係る内燃機関の要部を示す断面図である。 実施形態に係る内燃機関の要部を示す断面図である。 実施形態に係るクランクシャフトおよびデコンプ機構の一部を示す断面図である。 図3のIV−IV線に相当する部分における断面図である。 図3のIV−IV線に相当する部分における断面図である。 図3のVI−VI線に相当する部分における断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2は、実施形態に係る内燃機関の要部を示す断面図である。
図1および図2に示すように、本実施形態の内燃機関1は、自動二輪車等に搭載される4ストローク単気筒SOHC型式の4バルブシステムの内燃機関である。内燃機関1は、ピストン2が摺動自在に嵌入されるシリンダ3と、シリンダ3の上部に取り付けられてピストン2の頂面とともに燃焼室4を形成するシリンダヘッド5と、シリンダヘッド5の上部を覆うシリンダヘッドカバー6と、を備える。シリンダヘッド5には、燃焼室4に臨む第1吸気ポート7Aおよび第2吸気ポート7Bと、燃焼室4に臨む第1排気ポート8Aおよび第2排気ポート8Bと、が設けられている。なお、図1において、第2吸気ポート7Bは、第1吸気ポート7Aの紙面奥側に配置されているが、図中では第1吸気ポート7Aを指す部分に括弧に入れて符号を付している。第2排気ポート8B、並びに後述する第2吸気バルブ9Bおよび第2排気バルブ10Bについても同様である。
シリンダヘッド5の上部には、第1吸気ポート7Aを開閉可能な第1吸気バルブ9Aと、第2吸気ポート7Bを開閉可能な第2吸気バルブ9Bと、第1排気ポート8Aを開閉可能な第1排気バルブ10Aと、第2排気ポート8Bを開閉可能な第2排気バルブ10Bと、が設けられている。各バルブ9A,9B,10A,10Bは、シリンダヘッド5に圧入されたスリーブ11にそれぞれ摺動自在に嵌入されているとともに、バルブスプリング12の弾発力によって閉弁方向に付勢されている。
また、シリンダヘッド5の上部には、各バルブ9A,9B,10A,10Bを図示しないクランクシャフトの回転に同期させて開閉作動させるための動弁機構20が配置されている。動弁機構20は、シリンダヘッド5およびシリンダヘッドカバー6によって画成された動弁室13内に収容されている。
動弁機構20は、シリンダヘッド5に所定の回転軸線P回りに回転可能に支持されたカムシャフト21と、シリンダヘッド5に回動可能に支持された吸気側ロッカーアーム34および排気側ロッカーアーム37と、を備える。なお、以下の説明では、カムシャフト21の回転軸線Pの延びる方向を軸線方向と称する。また、回転軸線P回りに周回する方向を周方向と称し、回転軸線Pに直交して回転軸線Pから放射状に延びる方向を径方向と称する。
図2に示すように、カムシャフト21の第1端部22は、動弁室13を画成する内側壁を貫いている。カムシャフト21の第1端部22には、従動スプロケット14が取り付けられるフランジ24が設けられている。従動スプロケット14には、カムチェーン15を介してクランクシャフトの回転が伝達される。カムシャフト21は、クランクシャフトの1/2の回転数でクランクシャフトに同期して回転する。カムシャフト21は、動弁室13を画成する内側壁に軸線方向の両側で回転可能に支持されている。具体的に、カムシャフト21は、第1端部22側でボールベアリング16を介してシリンダヘッド5に回転可能に支持され、第2端部23においてシリンダヘッド5に直接的に摺接して回転可能に支持されている。
図1および図2に示すように、動弁室13内において、カムシャフト21には、吸気バルブ9A,9Bを開閉する吸気カム25と、吸気カム25に隣接して排気バルブ10A,10Bを開閉する排気カム27と、が形成されている。排気カム27は、吸気カム25に対してカムシャフト21の第1端部22側に設けられている。すなわち、排気カム27は、吸気カム25とボールベアリング16との間に設けられている。
図1に示すように、吸気カム25のカム面26は、回転軸線Pを中心として一定の曲率で延びるベース面26aと、周方向でベース面26aに連なりベース面26aよりも回転軸線Pとは反対側(すなわち径方向の外側)に突出したリフト面26bと、を有する。リフト面26bは、吸気バルブ9A,9Bのリフト量を規定する。排気カム27のカム面28は、吸気カム25のカム面26と同様に、回転軸線Pを中心として一定の曲率で延びるベース面28aと、周方向でベース面28aに連なりベース面28aよりも回転軸線Pとは反対側に突出したリフト面28bと、を有する。リフト面28bは、排気バルブ10A,10Bのリフト量を規定する。
図3は、実施形態に係るクランクシャフトおよびデコンプ機構の一部を示す断面図である。
図3に示すように、排気カム27には、後述するデコンプピン54が挿入されるデコンプピン支持孔31と、後述するデコンプカム41のシャフト部47が挿入されるデコンプカム支持孔32と、が形成されている。デコンプピン支持孔31およびデコンプカム支持孔32は、それぞれ排気カム27を軸線方向に貫通している。デコンプピン支持孔31およびデコンプカム支持孔32は、それぞれ回転軸線Pに対して偏心した位置に設けられている。デコンプピン支持孔31は、排気カム27のリフト面28bと回転軸線Pとの間に設けられている。デコンプピン支持孔31におけるボールベアリング16側の端部には、デコンプピン54に装着されたカラー55を受け入れるざぐりが形成されている。デコンプカム支持孔32は、回転軸線Pを挟んで排気カム27のリフト面28bとは反対側に設けられている。
図1に示すように、吸気側ロッカーアーム34は、第1のロッカーシャフト17Aに回動可能に支持されている。第1のロッカーシャフト17Aは、カムシャフト21と平行に配置されている。これにより、吸気側ロッカーアーム34は、回転軸線Pと平行な軸線を中心に、シリンダヘッド5に回動可能に支持されている。吸気側ロッカーアーム34は、一対の吸気バルブ9A,9Bに連係されるとともに、カムシャフト21の吸気カム25のカム面26に接触している。具体的に、吸気側ロッカーアーム34は、第1端部において吸気カム25のカム面26に接するカムフォロアとしてのローラ35を回転可能に支持し、第2端部において一対の吸気バルブ9A,9Bのそれぞれに接している。
吸気バルブ9A,9Bは、バルブスプリング12により常に閉弁方向に付勢されているので、吸気側ロッカーアーム34のローラ35は、常に吸気カム25のカム面26に当接する方向に付勢されている。吸気側ロッカーアーム34は、カムシャフト21の吸気カム25の回転に伴い、吸気カム25のカム面26の形状に追従して揺動され、吸気バルブ9A,9Bを所定の開閉時期およびリフト量で開閉駆動する。具体的に、吸気側ロッカーアーム34は、ローラ35が吸気カム25のリフト面26b上を転動している際に、吸気バルブ9A,9Bを押圧し、吸気ポート7A,7Bを開放する。
排気側ロッカーアーム37は、第2のロッカーシャフト17Bに回動可能に支持されている。第2のロッカーシャフト17Bは、カムシャフト21と平行に配置されている。これにより、排気側ロッカーアーム37は、回転軸線Pと平行な軸線を中心に、シリンダヘッド5に回動可能に支持されている。排気側ロッカーアーム37は、一対の排気バルブ10A,10Bに連係されるとともに、カムシャフト21の排気カム27のカム面28に接触している。具体的に、排気側ロッカーアーム37は、第1端部において排気カム27のカム面28に接するカムフォロアとしてのローラ38を回転可能に支持し、第2端部において一対の排気バルブ10A,10Bのそれぞれに接している。
排気バルブ10A,10Bは、バルブスプリング12により常に閉方向に付勢されているので、排気側ロッカーアーム37のローラ38は、常に排気カム27のカム面28に当接する方向に付勢されている。排気側ロッカーアーム37は、カムシャフト21の排気カム27の回転に伴い、排気カム27のカム面28の形状に追従して揺動され、排気バルブ10A,10Bを所定の開閉時期およびリフト量で開閉駆動する。具体的に、排気側ロッカーアーム37は、ローラ38が排気カム27のリフト面28b上を転動している際に、排気バルブ10A,10Bを押圧し、排気ポート8A,8Bを開放する。
図2に示すように、内燃機関1は、内燃機関1の始動時に圧縮行程のタイミングで燃焼室4内の圧縮圧力を開放するデコンプ機構40と、動弁機構20およびデコンプ機構40を潤滑する潤滑機構70と、を備える。デコンプ機構40は、カムシャフト21に設けられたデコンプカム41と、カムシャフト21に支持され、カムシャフト21の回転数に応じた遠心力によりデコンプカム41を移動させるデコンプウェイト51と、カムシャフト21に対してデコンプウェイト51を付勢するリターンスプリング61と、デコンプカム41のカム面に摺接するデコンプスリッパー63と、を備える。
図3に示すように、デコンプカム41は、全体として共通の中心軸線を有する円柱体状に形成されている。デコンプカム41は、排気カム27を挟んで吸気カム25とは反対側、すなわち排気カム27とボールベアリング16との間に配置されたカム本体42と、カム本体42から軸線方向に延びて排気カム27のデコンプカム支持孔32に挿入されたシャフト部47と、を備える。カム本体42は、シャフト部47よりも大径の円柱体状に形成されている。シャフト部47は、カム本体42と一体的に設けられ、排気カム27に回転可能に支持されている。これにより、デコンプカム41は、カムシャフト21の回転に伴って、回転軸線P回りを周回する。
図4は、図3のIV−IV線に相当する部分における断面図である。
図4に示すように、デコンプカム41のカム本体42には、カム面となる外周面43と、デコンプウェイト51が係止される係止部44と、が形成されている。外周面43の一部には、軸線方向に平行な平面で切り欠いた退避部45が形成されている。係止部44は、カム本体42における排気カム27とは反対側(すなわちボールベアリング16側)に向く端面に溝状に形成されている。係止部44は、軸線方向から見てデコンプカム41の中心から直線的に延び、カム本体42の外周面43に開口している。係止部44および退避部45は、後述するデコンプカム41およびデコンプウェイト51の動作を実現可能な位置関係にある。
デコンプウェイト51は、排気カム27とボールベアリング16との間に配置されている(図3参照)。デコンプウェイト51は、カムシャフト21を半周程度囲むように延びている。デコンプウェイト51の第1端部52は、軸線方向から見て排気カム27のリフト面28bと回転軸線Pとの間に位置している。デコンプウェイト51の第2端部53は、軸線方向から見てデコンプカム41近傍に位置している。
図3に示すように、デコンプウェイト51の第1端部52には、軸線方向に延びるデコンプピン54が圧入されている。デコンプピン54は、デコンプウェイト51から排気カム27側に延び、排気カム27のデコンプピン支持孔31に回転可能に挿入されている。これにより、デコンプウェイト51は、カムシャフト21に揺動可能に支持され、かつカムシャフト21の回転に伴って発生する遠心力により変位可能とされている。
デコンプピン54には、排気カム27とデコンプウェイト51との間においてカラー55が装着されている。カラー55における排気カム27側の端部は、デコンプピン支持孔31のざぐりに挿入されている。カラー55は、排気カム27とデコンプウェイト51との間隔を一定以上に規制している。デコンプウェイト51の第2端部53は、デコンプカム41に対してボールベアリング16側に位置している。デコンプウェイト51の第2端部53には、軸線方向に延びる作動ピン56が排気カム27側に突出している。作動ピン56は、デコンプカム41の係止部44に相対変位可能に嵌入されている。これにより、デコンプウェイト51は、デコンプカム41に係合している。作動ピン56は、デコンプウェイト51の揺動に伴って変位し、デコンプカム41のシャフト部47を中心としてデコンプカム41を回動させる。
デコンプウェイト51は、ワッシャ57によってボールベアリング16側への軸線方向の移動を規制されている。ワッシャ57は、デコンプウェイト51とボールベアリング16との間に介在している。ワッシャ57は、内周部においてボールベアリング16に接触し、外周部においてデコンプウェイト51またはデコンプピン54に接触することがある。
リターンスプリング61は、デコンプウェイト51を遠心力に抗する方向に付勢している。リターンスプリング61は、ねじりコイルばねである。リターンスプリング61は、カラー55の外周に装着されている。リターンスプリング61の一端部は、デコンプウェイト51に係合している。リターンスプリング61の他端部は、カムシャフト21に係止されている。
ここで、デコンプスリッパー63の説明に先立って、デコンプカム41およびデコンプウェイト51の動作について説明する。
図4に示すように、正転方向へ回転するカムシャフト21の回転数が規定値未満である場合、デコンプウェイト51に発生する遠心力は、所定の基準よりも小さく、デコンプウェイト51の揺動角度が所定の角度よりも小さい。前記所定の基準は、初期位置にあるデコンプウェイト51に作用するリターンスプリング61の付勢力よりも僅かに大きい。この状態では、デコンプカム41の退避部45は、デコンプカム41のカム本体42の外周面43における回転軸線Pから最も離れた箇所よりも径方向の内側に位置している。換言すると、デコンプカム41の退避部45は、軸線方向から見て回転軸線Pとデコンプカム41の中心軸線とを通る直線に交差していない。これにより、デコンプカム41は、図3に示す軸線方向における退避部45が設けられた領域内において、軸線方向から見て回転軸線Pを中心とする仮想円Cよりも外側に突出した突出位置にある。例えば、仮想円Cは、排気カム27のベース面28aと同じ曲率に設定されている。ただし、図4および図5においては、図示の都合上、仮想円Cの曲率を排気カム27のベース面28aの曲率よりも小さく設定している。
図5は、図3のIV−IV線に相当する部分における断面図である。
図5に示すように、正転方向へ回転するカムシャフト21の回転数が規定値以上である場合、デコンプウェイト51に発生する遠心力は、前記所定の基準以上となり、デコンプウェイト51の揺動角度が前記所定の角度以上となる。この状態では、デコンプカム41の退避部45は、デコンプカム41のカム本体42の外周面43における回転軸線Pから最も離れた箇所に位置している。換言すると、デコンプカム41の退避部45は、軸線方向から見て回転軸線Pとデコンプカム41の中心軸線とを通る直線に交差している。これにより、デコンプカム41は、図3に示す軸線方向における退避部45が設けられた領域内において、軸線方向から見て前記仮想円Cよりも内側に没入した退避位置にある。つまり、デコンプウェイト51は、カムシャフト21の回転数が所定値以上の場合にデコンプカム41を突出位置から退避位置に移動させる。
図2に示すように、デコンプスリッパー63は、排気側ロッカーアーム37に設けられている。デコンプスリッパー63は、排気側ロッカーアーム37のローラ38に対してボールベアリング16側に設けられている。デコンプスリッパー63は、径方向から見てデコンプカム41のカム本体42の外周面43(図3参照)と重なる位置に設けられている。より詳細に、デコンプスリッパー63は、径方向から見てデコンプカム41のカム本体42の外周面43のうち退避部45(図3参照)のみと重なる位置に設けられている。
デコンプスリッパー63は、排気側ロッカーアーム37のローラ38が排気カム27のベース面28aに接触する状態、すなわち排気バルブ10A,10Bが排気ポート8A,8Bを閉じた状態で、軸線方向から見て前記仮想円C(図4参照)よりも外側に位置している。デコンプスリッパー63は、排気バルブ10A,10Bが排気ポート8A,8Bを閉じた状態で、図3に示す軸線方向における退避部45が設けられた領域内において、突出位置にあるデコンプカム41のカム本体42の外周面43に摺接可能となっている。これにより、排気側ロッカーアーム37は、正転方向へ回転するカムシャフト21の回転数が規定値未満である場合、デコンプスリッパー63とデコンプカム41のカム本体42の外周面43との接触により揺動する。このため、排気側ロッカーアーム37は、排気カム27とローラ38との当接に加えて、デコンプスリッパー63とデコンプカム41のカム本体42の外周面43との当接で揺動し、排気バルブ10A,10Bを押圧して排気ポート8A,8Bを開放する。一方で、排気側ロッカーアーム37は、正転方向へ回転するカムシャフト21の回転数が規定値以上である場合、排気カム27とローラ38との当接のみで揺動し、排気バルブ10A,10Bを押圧して排気ポート8A,8Bを開放する。
図2および図3に示すように、潤滑機構70は、主に動弁機構20およびデコンプ機構40の摺動部を潤滑する。潤滑機構70は、動弁室13内で潤滑油を循環させる。潤滑機構70は、カムシャフト21の中心部に形成された軸心油路71と、軸心油路71から延びる分岐油路72と、動弁室13の下部に貯留した潤滑油を軸心油路71に圧送する図示しないポンプと、を備える。
図3に示すように、軸心油路71は、回転軸線Pに沿って直線的に延びている。軸心油路71は、断面円形状に形成され、回転軸線Pと同軸に延びている。軸心油路71は、カムシャフト21の第2端部23の端面に開口している。軸心油路71は、カムシャフト21の第2端部23から、少なくとも径方向から見て排気カム27と重なる位置まで延びている。
分岐油路72は、カムシャフト21の第2端部23側から第1端部22側に向かって順に、第1分岐油路73と、第2分岐油路74と、第3分岐油路75と、を備える。第1分岐油路73、第2分岐油路74および第3分岐油路75は、それぞれ断面円形状に形成され、径方向に直線的に延びている。第1分岐油路73、第2分岐油路74および第3分岐油路75は、互いに周方向で異なる位置に設けられている。
第1分岐油路73は、径方向から見てカムシャフト21の外周面と動弁室13の内壁部との摺接箇所(図2参照)と重なる位置に設けられている。第1分岐油路73の径方向内側の端部は、軸心油路71の壁面に開口し、軸心油路71に連通している。第1分岐油路73の径方向外側の端部は、カムシャフト21の外周面に開口している。これにより、カムシャフト21の外周面と動弁室13の内壁部との摺接箇所には、軸心油路71から潤滑油が供給される。
第2分岐油路74は、径方向から見て吸気カム25と重なる位置に設けられている。第2分岐油路74の径方向内側の端部は、軸心油路71の壁面に開口し、軸心油路71に連通している。第2分岐油路74の径方向外側の端部は、吸気カム25のカム面26に開口している。これにより、吸気カム25のカム面26と吸気側ロッカーアーム34のローラ35との当接箇所(図2参照)には、軸心油路71から潤滑油が供給される。
第3分岐油路75は、径方向から見て排気カム27と重なる位置に設けられている。第3分岐油路75の径方向内側の端部は、軸心油路71の壁面に開口し、軸心油路71に連通している。第3分岐油路75の径方向外側の端部は、排気カム27のカム面28に開口している。
図6は、図3のVI−VI線に相当する部分における断面図である。
図6に示すように、第3分岐油路75は、デコンプカム支持孔32の少なくとも一部に重なっている。すなわち、第3分岐油路75には、デコンプカム41のシャフト部47の少なくとも一部が交差している。より詳細に、第3分岐油路75の中心軸線Aには、軸線方向から見てシャフト部47が交差している。本実施形態では、第3分岐油路75の中心軸線Aには、シャフト部47の中心軸線Bが交差している。なお、第3分岐油路75の内径は、デコンプカム支持孔32の内径よりも小さい。
図3に示すように、デコンプカム41のシャフト部47の外周面には、凹部48が形成されている。凹部48は、第3分岐油路75に交差する箇所に設けられている。凹部48は、第3分岐油路75よりも軸線方向の両側に大きく形成されている。凹部48は、シャフト部47回りの全周にわたって延びている(図6参照)。換言すると、凹部48は、シャフト部47における局所的に縮径した縮径部の外周面となっている。凹部48は、デコンプカム支持孔32の内周面との間に隙間を形成している。これにより、軸心油路71から第3分岐油路75に流入した潤滑油は、シャフト部47の凹部48とデコンプカム支持孔32の内周面との間の隙間を通って径方向外側に流れ、排気カム27のカム面28と排気側ロッカーアーム37のローラ38との当接箇所に供給される。また、シャフト部47の凹部48とデコンプカム支持孔32の内周面との間の潤滑油は、シャフト部47とデコンプカム支持孔32との間に供給され、シャフト部47と排気カム27との摺動部を潤滑する。
以上に説明したように、本実施形態の内燃機関1は、カムシャフト21に回転可能に支持されたシャフト部47を有し、突出位置と退避位置との間で移動可能なデコンプカム41と、カムシャフト21の回転数が規定値以上の場合にデコンプカム41を突出位置から退避位置に移動させるデコンプウェイト51と、排気側ロッカーアーム37に設けられ、突出位置にあるデコンプカム41に摺接可能に形成されたデコンプスリッパー63と、を備える。カムシャフト21には、中心部から排気カム27のカム面28まで延びる第3分岐油路75が形成されている。デコンプカム41のシャフト部47の少なくとも一部は、第3分岐油路75に交差している。
この構成によれば、デコンプカム41のシャフト部47とカムシャフト21との摺動部に潤滑油が直接供給される。これにより、デコンプ機構を積極的に潤滑できる。
また、シャフト部47は、第3分岐油路75の中心に交差している。
この構成によれば、デコンプカムのシャフト部が第3分岐油路75の中心に交差していない場合と比較して、シャフト部47と第3分岐油路75との交差部において第3分岐油路75の断面積が大きくなる。これにより、シャフト部47とカムシャフト21との摺動部に流入する潤滑油が増える。したがって、シャフト部47とカムシャフト21との摺動部への潤滑油の供給量を確保することができる。
また、シャフト部47の中心は、第3分岐油路75の中心に交差している。
この構成によれば、シャフト部47とカムシャフト21との摺動部への潤滑油の供給量を可能な限り増やすことができる。
また、シャフト部47の外周面における第3分岐油路75に交差する箇所には、凹部48が設けられている。
この構成によれば、内燃機関1の組み立て後の初期馴染み用のグリスを凹部48に保持することができる。また、グリスが凹部48から抜けた後、潤滑油を凹部48に保持して、シャフト部47とカムシャフト21との摺動部に潤滑油を供給することができる。
また、凹部48は、シャフト部47回りの全周にわたって延びている。
この構成によれば、旋削等により凹部48を容易に形成できる。また、凹部48における潤滑油の保持量を確保することができる。さらに、凹部48の内側を通じて、第3分岐油路75におけるシャフト部47との交差部を挟んで上流側から下流側に潤滑油を流通させることができる。したがって、潤滑油をカムシャフト21の排気カム27のカム面28まで確実に供給することができる。
また、カムシャフト21の中心部には、回転軸線Pに沿って直線的に延びる軸心油路71が形成されている。第3分岐油路75は、軸心油路71から直線的に延びている。
この構成によれば、第3分岐油路75および軸心油路71がそれぞれ直線的に延びているので、第3分岐油路75および軸心油路71を容易に形成することができる。また、第3分岐油路が蛇行して延びている場合と比較して第3分岐油路75の長さが短くなるので、第3分岐油路75を形成することによるカムシャフト21の強度の低下を抑制しつつ、潤滑油を速やかに供給することができる。
また、排気側ロッカーアーム37にデコンプスリッパー63が設けられているので、デコンプカム41によって排気バルブ10A,10Bを開閉できる。このため、内燃機関1の始動時に燃焼室4内の圧縮圧力を開放する際、燃焼室4内の空気を排気ポート8A,8Bに流すことができる。これにより、燃焼室4内の空気を吸気ポート7A,7Bに逆流させる場合と比較して、内燃機関1の始動時の吸気が阻害されて始動性が悪化することを抑制できる。
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、排気側ロッカーアーム37にデコンプスリッパー63が設けられている。すなわち、デコンプ機構40は、排気ポート8A,8Bを開放可能に形成されている。しかしながらこれに限定されず、デコンプ機構は、吸気ポート7A,7Bを開放可能に形成されていてもよい。ただし、燃焼室4内の空気を吸気ポート7A,7Bに逆流させないという点で、デコンプ機構が排気ポートを開放可能に形成されていることが望ましい。
また、上記実施形態では、第3分岐油路75の中心軸線Aにシャフト部47の中心軸線Bが交差している。しかしながらこれに限定されず、第3分岐油路の中心軸線にシャフト部47が交差しているだけでもよいし、第3分岐油路の中心軸線を含まない一部にシャフト部47が交差しているだけでもよい。また、第3分岐油路は、径方向に対して傾斜して直線状に延びていてもよい。また、第3分岐油路は、曲線状に延びていてもよい。
また、上記実施形態では、シャフト部47の外周面に形成された凹部48が全周にわたって延びている。しかしながらこれに限定されず、凹部は第3分岐油路75におけるデコンプカム支持孔32を挟んだ両側部分同士を互いに連通していればよい。これにより、軸心油路71から第3分岐油路75に流入した潤滑油を排気カム27のカム面28まで供給できる。
また、上記実施形態では、デコンプカム41のシャフト部47が排気カム27を貫通したデコンプピン支持孔31に挿入されている。しかしながらこれに限定されず、デコンプカム41のシャフト部47は、排気カム27を貫通していない穴に挿入されていてもよい。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
1…内燃機関 4…燃焼室 5…シリンダヘッド 8A,8B…排気ポート(ポート) 10A,10B…排気バルブ 12…バルブスプリング(スプリング) 21…カムシャフト 28…カム面 37…排気側ロッカーアーム(ロッカーアーム) 41…デコンプカム 47…シャフト部 48…凹部 51…デコンプウェイト 63…デコンプスリッパー 71…軸心油路 75…第3分岐油路(油路) P…回転軸線

Claims (7)

  1. 燃焼室(4)に臨むポート(8A,8B)が設けられ、前記ポート(8A,8B)を開閉可能なバルブ(10A,10B)を備えたシリンダヘッド(5)と、
    前記バルブ(10A,10B)を閉弁方向に付勢するスプリング(12)と、
    前記シリンダヘッド(5)に所定の回転軸線(P)回りに回転可能に支持されたカムシャフト(21)と、
    前記バルブ(10A,10B)に連係されるとともに前記カムシャフト(21)のカム面(28)に接触し、前記シリンダヘッド(5)に回動可能に支持されたロッカーアーム(37)と、
    前記カムシャフト(21)に回転可能に支持されたシャフト部(47)を有し、前記回転軸線(P)の軸線方向における所定の領域内において前記軸線方向から見て前記回転軸線(P)を中心とする仮想円(C)よりも外側に突出した突出位置と前記仮想円(C)よりも内側に没入する退避位置との間で移動可能なデコンプカム(41)と、
    前記カムシャフト(21)に揺動可能に支持されるとともに前記デコンプカム(41)に係合し、前記カムシャフト(21)の回転に伴って発生する遠心力によって変位して、前記カムシャフト(21)の回転数が規定値以上の場合に前記デコンプカム(41)を突出位置から退避位置に移動させるデコンプウェイト(51)と、
    前記ロッカーアーム(37)に設けられ、前記軸線方向の前記所定の領域内において前記軸線方向から見て前記仮想円(C)よりも外側で前記デコンプカム(41)に摺接可能に形成されたデコンプスリッパー(63)と、
    を備え、
    前記カムシャフト(21)には、中心部から前記カム面(28)まで延びる油路(75)が形成され、
    前記シャフト部(47)の少なくとも一部は、前記油路(75)に交差している、
    ことを特徴とする内燃機関。
  2. 前記シャフト部(47)は、少なくとも一部が前記シャフト部(47)の軸線方向視で前記油路(75)の中心に交差している、
    ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
  3. 前記シャフト部(47)の中心は、前記油路(75)の中心に交差している、
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関。
  4. 前記シャフト部(47)の外周面における前記油路(75)に交差する箇所には、凹部(48)が設けられている、
    ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の内燃機関。
  5. 前記凹部(48)は、前記シャフト部(47)回りの全周にわたって延びている、
    ことを特徴とする請求項4に記載の内燃機関。
  6. 前記カムシャフト(21)の中心部には、前記回転軸線(P)に沿って直線的に延びる軸心油路(71)が形成され、
    前記油路(75)は、前記軸心油路(71)から直線的に延びている、
    ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の内燃機関。
  7. 前記バルブ(10A,10B)は、燃焼室(4)に臨む排気ポート(8A,8B)を開閉可能な排気バルブである、
    ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の内燃機関。
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