JP2008294163A - 電極段差吸収用印刷ペーストおよび積層セラミック電子部品の製造方法 - Google Patents

電極段差吸収用印刷ペーストおよび積層セラミック電子部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】積層セラミック電子部品を製造するために用いられ、セラミックグリーンシートの厚みを薄層化した場合においても、シートアタックを有効に防止でき、かつ、印刷に適した粘度を保持しながら、通気性の高い余白パターン層を形成可能な電極段差吸収用印刷ペーストを提供すること。
【解決手段】積層セラミック電子部品を製造するために用いる電極段差吸収用印刷ペーストであって、ブチラール樹脂を含むセラミックグリーンシートと組み合わせて使用され、セラミック粉末と、有機バインダと、溶剤と、を少なくとも含み、前記バインダの含有量が、前記セラミック粉末100重量部に対して、1.0〜6.0重量部であり、前記有機バインダが、エチルセルロースおよびポリビニルブチラールを含有し、かつ、前記溶剤が、グリセリン、エチレングリコールおよびブチルカルビトールから選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする電極段差吸収用印刷ペースト。
【選択図】なし

Description

本発明は、積層セラミック電子部品を製造するために用いる電極段差吸収用印刷ペーストと、このペーストを用いた積層セラミック電子部品の製造方法と、に関する。
積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサは、通常、キャリアシート上に誘電体ペーストを用いてドクターブレード法などによりセラミックグリーンシートを形成し、この上に内部電極形成用の電極ペーストを所定パターンで印刷し、乾燥させて内部電極パターンを形成する。その後、キャリアシートからセラミックグリーンシートを剥離し、これを所望の層数まで積層する。
ここで、積層前にセラミックグリーンシートをキャリアシートから剥離する方法(シート法)と、積層圧着後にキャリアシートを剥離する方法(印刷法)の2種類の積層法が知られているが、両者ともに大きな違いはない。そして、最後にこの積層体をチップ状に切断してグリーンチップとし、これらのグリーンチップを焼成後、端子電極を形成することにより、積層セラミックコンデンサが得られる。
ところで近年、電子機器の軽薄短小化が進んできている。これに伴い、その電子機器に使用される積層セラミックコンデンサにおいても、より一層の小型化・高容量化が進められている。積層セラミックコンデンサを小型化・高容量化するために最も効果的な方法は、内部電極と誘電体層を双方ともに可能な限り薄くし(薄層化)、かつそれらを可能な限り多く積層する(多層化)ことである。
しかしながら、積層セラミックコンデンサのように、セラミックグリーンシートと内部電極パターンとを交互に積層する場合には、セラミックグリーンシートの間に挟まれる内部電極パターンの同列上には、電極が形成されない隙間(余白パターン部分)が形成される。この余白パターン部分のために、内部電極パターンが存在する部分との間で段差を生じ、それが原因で、製品チップの変形、クラック、シート間のデラミネーションなどが問題になる。特に、コンデンサの高容量化を狙って、さらに1層あたりの誘電体層厚みを内部電極の厚み程度にまで薄くした場合、段差が生じた部分で誘電体層が切断されやすくなり、その結果、内部電極間の短絡などによるショート不良を生じ易く、不良率が増大する傾向にあった。
そこで近年、このような段差によって生じる諸問題を解決するために、内部電極(内部電極パターン)の形成に引き続き、内部電極が形成されていない隙間(余白パターン部分)に、電極段差吸収用印刷ペーストからなる余白パターン層を形成し、形成面を平坦化しつつ積層していく技術が知られている。内部電極パターンと余白パターン層は、写真フィルムのネガティブとポジティブの関係になる。
このような電極段差吸収用印刷ペーストとしては、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストと同様に、有機バインダを溶剤に溶解させた有機ビヒクル中にセラミック粉末を分散させたものが用いられている。
たとえば、特許文献1では、ポリビニルブチラールおよびセルロースエステルの混合物からなる有機バインダと、溶剤と、セラミック粉末と、を含む電極段差吸収用印刷ペーストを用いて、積層型セラミック電子部品を製造する方法が開示されている。なお、この特許文献1では、電極段差吸収用印刷ペーストの溶剤として、テルピネオールを用いており、また、セラミックグリーンシートの有機バインダとして、ポリビニルブチラールを用いている。
一方で、電極段差吸収用印刷ペーストには、印刷パターンの精度を良好なものとするために、ある程度の粘度を必要とするが、粘度を保つために、電極段差吸収用印刷ペースト中の有機バインダ量を増加させると、形成されるペースト層の通気性が悪化してしまう。そして、その結果、積層時における空気の抱きこみが発生し、積層不良が発生してしまうという不具合や、さらには、有機バインダを除去するための熱処理(脱バインダ処理)時に発生するガスの影響により、焼成前素子本体にクラックが発生してしまうという不具合があった。
特に、上述の特許文献1では、電極段差吸収用印刷ペースト中に比較的多くの有機バインダを含有させているため、このような積層時における空気の抱きこみによる積層不良や、脱バインダ処理時におけるクラックの発生などの問題があった。また、特許文献1では、電極段差吸収用印刷ペーストの溶剤として、テルピネオールを用いているが、テルピネオールを溶剤に使用した電極段差吸収用印刷ペーストを、ポリビニルブチラールを有機バインダとしたセラミックグリーンシートと組み合わせて使用した場合に、ペースト中の溶剤がセラミックグリーンシート中の有機バインダを膨潤または溶解させる、いわゆる「シートアタック」現象が生じる。
特に、こうしたシートアタック現象は、セラミックグリーンシートの厚みを、薄層化した場合に、次のような不具合を引き起こす。すなわち、電極段差吸収用印刷ペーストを印刷した後にセラミックグリーンシートをPETフィルムなどのキャリアシートから剥離する際に、セラミックグリーンシートが剥がれにくくなる。セラミックグリーンシートが剥がれにくくなると、この影響を受けてセラミックグリーンシートにしわや穴、亀裂などが発生し、積層工程で正常な積層体が得られなくなる。そして、正常な積層体が得られないと、最終物たる積層セラミック電子部品に、ショート不良、耐電圧不良(IR劣化)や、誘電体層と内部電極層との間における層間剥離現象(デラミネーション)が発生してしまい、歩留まりが低下してしまうという不具合がある。
特開2001−232617号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、積層セラミック電子部品を製造するために用いられ、セラミックグリーンシートの厚みを薄層化した場合においても、シートアタックを有効に防止でき、かつ、印刷に適した粘度を保持しながら、通気性の高い余白パターン層を形成可能な電極段差吸収用印刷ペースト、および、この電極段差吸収用印刷ペーストを用いて製造され、高い信頼性を有する積層セラミック電子部品の製造方法を提供することである。
本発明者等は、電極段差吸収用印刷ペースト中に含有させる有機バインダとして、エチルセルロースとポリビニルブチラールとを含むものを使用するとともに、溶剤として、特定の多価アルコールを含むものを使用することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、積層セラミック電子部品を製造するために用いる電極段差吸収用印刷ペーストであって、
ブチラール樹脂を含むセラミックグリーンシートと組み合わせて使用され、
セラミック粉末と、有機バインダと、溶剤と、を少なくとも含み、
前記バインダの含有量が、前記セラミック粉末100重量部に対して、1.0〜6.0重量部であり、
前記有機バインダが、エチルセルロースおよびポリビニルブチラールを含有し、かつ、
前記溶剤が、グリセリン、エチレングリコールおよびブチルカルビトールから選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする電極段差吸収用印刷ペーストが提供される。
好ましくは、前記溶剤の含有量が、前記セラミック粉末100重量部に対して、50〜200重量部であり、
前記溶剤中における、グリセリン、エチレングリコールおよびブチルカルビトールの合計の含有量が、溶剤全体100重量%に対して、3〜50重量%である。
好ましくは、前記有機バインダ中における、エチルセルロースとポリビニルブチラールとの比率が、重量比で、エチルセルロース:ポリビニルブチラール=95:5〜35:65である。
また、本発明によれば、ブチラール樹脂を含むセラミックグリーンシートと所定パターンの電極層とを交互に複数重ねてグリーンセラミック積層体を形成する工程と、
前記積層体を焼成する工程と、を有する積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記積層体を形成する前に、所定パターンの前記電極層の隙間部分には、前記電極層と実質的に同じ厚みの余白パターン層を形成し、
前記余白パターン層を形成するための電極段差吸収用印刷ペーストとして、上記いずれかの電極段差吸収用印刷ペーストを用いることを特徴とする積層セラミック電子部品の製造方法が提供される。
前記電極段差吸収用印刷ペーストに含まれるセラミック粉末が、前記グリーンシートを形成するためのペーストに含まれるセラミック粉末と同じであることが好ましい。余白パターン層は、グリーンシートと共に、焼成後に一体化される部分だからである。
本発明に係る積層セラミック電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、積層セラミックインダクタ、積層セラミックLC部品、多層セラミック基板等が例示される。
本発明によれば、電極段差吸収用印刷ペーストを構成する有機バインダとして、エチルセルロースとポリビニルブチラールとを含むものを使用し、しかも、溶剤として、特定の多価アルコール、すなわち、グリセリン、エチレングリコールおよびブチルカルビトールから選択される少なくとも1種を含むものを用いている。そのため、本発明の電極段差吸収用印刷ペーストによれば、印刷に適した粘度を保持しながら、通気性の高い余白パターン層を形成することができる。さらには、セラミックグリーンシートの厚みを薄層化した場合においても、シートアタックを有効に防止することもできる。
特に、本発明で用いられるグリセリン、エチレングリコールおよびブチルカルビトールは、有機バインダとしてのエチルセルロースおよびポリビニルブチラールと組み合わせて用いることにより、余白パターン層の通気性を向上させる効果を奏する。すなわち、通気改質剤として作用する。しかも、これらグリセリン、エチレングリコールおよびブチルカルビトールは、ペースト粘度を向上させる効果もあるため、有機バインダの添加量を低減しながら、ペースト粘度の適正化を図ることもでき、これにより、印刷時における、印刷にじみの発生も有効に防止することができる。
そして、このような本発明の電極段差吸収用印刷ペーストを用いることにより、余白パターン層を優れた印刷精度で形成することができ、しかも形成される余白パターン層を通気性に優れたものとすることができるため、信頼性の高い積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品を得ることができる。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図、
図2(A)〜図2(C)は図1の積層セラミックコンデンサの製造工程の一部を示す断面図である。
まず、本発明に係る方法により製造される積層セラミック電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサの全体構成について説明する。
積層セラミックコンデンサ
図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、コンデンサ素体4と、第1端子電極6と第2端子電極8とを有する。コンデンサ素体4は、誘電体層10と、内部電極層12とを有し、誘電体層10の間に、これらの内部電極層12が交互に積層されている。交互に積層される一方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の第1端部の外側に形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続されている。また、交互に積層される他方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の第2端部の外側に形成されている第2端子電極8の内側に対して電気的に接続されている。
コンデンサ素体4の外形や寸法には特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、通常、外形はほぼ直方体形状とし、寸法は通常、縦(0.4〜5.6mm)×横(0.2〜5.0mm)×高さ(0.2〜1.9mm)程度とすることができる。
誘電体層10は、後述する図2(A)〜図2(C)に示すセラミックグリーンシート10aを焼成して形成される。誘電体層10の材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。誘電体層10の厚みは、本実施形態では、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下に薄層化されている。
内部電極層12は、後述する図2(B)、図2(C)に示す所定パターンの電極ペーストで構成される電極層12aを焼成して形成される。内部電極層12の厚さは、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以下に薄層化されている。
端子電極6,8の材質は、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。端子電極6,8の厚みも特に限定されないが、通常10〜50μm程度である。
積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2の製造方法の一例を説明する。
(1)まず、焼成後に図1に示す誘電体層10を構成することになるセラミックグリーンシートを製造するために、誘電体ペースト(グリーンシート用ペースト)を準備する。
誘電体ペーストは、セラミック粉末(誘電体原料)と、有機バインダおよび有機溶剤を含有する有機ビヒクルと、を混練して得られる有機溶剤系ペーストで構成される。
セラミック粉末としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、混合して用いることができる。セラミック粉末は、通常、平均粒子径が2.0μm以下、好ましくは0.1〜0.8μm程度の粉体として用いられる。なお、きわめて薄いセラミックグリーンシートを形成するためには、セラミックグリーンシート厚みよりも細かい粉体を使用することが望ましい。
有機ビヒクルは、有機バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いられる有機バインダとしては、本実施形態では、ポリビニルブチラールが用いられる。有機バインダとして、ポリビニルブチラールを用いることにより、得られるセラミックグリーンシートを、接着性および可撓性の高いものとすることができる。有機バインダの含有量は、特に限定されないが、セラミック粉末100重量部に対して、好ましくは5重量部より多く、9重量部未満、より好ましくは6〜8重量部である。有機バインダとしてのポリビニルブチラールの含有量が少なすぎると、得られるセラミックグリーンシート積層性が悪化する傾向にあり、多すぎると、脱バインダ工程において完全に除去されず、焼結体にクラックが多く発生する傾向にある。
ポリビニルブチラールの重合度は、好ましくは500〜2800、より好ましくは1000〜1700である。また、ブチラール化度が、好ましくは64〜78%であり、その残留アセチル基量が、好ましくは6%以下である。
ポリビニルブチラールの重合度は、たとえば原料であるポリビニルアセタールの重合度で測定することができる。また、ブチラール化度は、たとえばJIS K6728に準拠して測定することができる。さらに、残留アセチル基量は、JIS K6728に準拠して測定することができる。
ポリビニルブチラールの重合度が小さすぎると、得られるセラミックグリーンシートを、たとえば5μm以下、好ましくは3μm以下程度に薄層化した場合に、十分な機械的強度が得られにくい傾向にある。また、重合度が高すぎると、シート化した場合における表面粗さが劣化する傾向にある。また、ポリビニルブチラールのブチラール化度が低すぎると、ペーストへの溶解性が低下する傾向にあり、高すぎると、得られるグリーンシートの表面粗さが劣化する傾向にある。さらに、残留アセチル基量が多すぎると、得られるグリーンシートの表面粗さが劣化する傾向にある。
有機ビヒクルに用いられる有機溶剤は、特に限定されず、たとえばテルピネオール、アルコール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエンなどが用いられる。また、誘電体ペースト中の有機溶剤含有量は、特に限定されず、1〜50重量%の範囲とすれば良い。
誘電体ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、帯電除剤、誘電体、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されていてもよい。誘電体ペースト中に、これらの添加物を添加する場合には、総含有量を、約10重量%以下にすることが望ましい。
分散剤としては、特に限定されないが、好ましくはポリエチレングリコール系のノニオン性分散剤が用いられ、その親水性・親油性バランス(HLB)値が、5〜6のものが好ましい。分散剤は、セラミック粉末100重量部に対して、好ましくは0.5〜1.5重量部、より好ましくは0.5〜1.0重量部である。
可塑剤としては、たとえば、フタル酸ベンジルブチル(BBP)などのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが挙げられる。可塑剤を配合する場合の誘電体ペースト中における可塑剤の割合は、特に限定されないが、有機バインダ100重量部に対して、好ましくは40〜70重量部である。可塑剤が少なすぎると、グリーンシートの伸びおよび可撓性が悪化する傾向にあり、多すぎると、グリーンシート表面に可塑剤が滲み出し、取り扱いが困難となる。
誘電体ペーストは、上記各成分を、ボールミルなどで混練し、スラリー化することにより得ることができる。
(2)次に、この誘電体ペーストを用いて、ワイヤーバーコータやドクターブレード法などにより、図2(A)に示すように、支持体としてのキャリアシート20上に、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは0.5〜10μm程度の厚みで、セラミックグリーンシート10aを形成する。グリーンシート10aは、キャリアシート20に形成された後に乾燥される。グリーンシート10aの乾燥温度は、好ましくは50〜100℃であり、乾燥時間は、好ましくは1〜20分である。乾燥後のグリーンシート10aの厚みは、乾燥前に比較して、5〜25%の厚みに収縮する。乾燥後のグリーンシートの厚みは、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下とする。
キャリアシート20としては、たとえばPETフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、セラミックグリーンシート10aが形成される面には、離型処理(シリコーンなどのコーティング)がしてあるものが好ましい。キャリアシート20の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜100μmである。
(3)次に、図2(B)に示すように、キャリアシート20上に形成されたセラミックグリーンシート10aの表面に、焼成後に図1に示す内部電極層3となる所定パターンの電極層(内部電極パターン)12aを形成する。
電極層12aの厚さは、2μm以下、好ましくは0.5〜1.5μmである。電極層12aの厚さが厚すぎると、積層数を減少せざるをえなくなり、これにより取得容量が低くなり、高容量化しにくくなる。一方、厚みが薄すぎると均一に形成することが困難であり、電極途切れが発生しやすくなる。なお、電極層12aの厚さは、現状の技術では上記範囲の程度であるが、電極の途切れが生じない範囲で薄い方がより望ましい。
電極層12aの形成方法は、層を均一に形成できる方法であれば特に限定されないが、本実施形態では、電極ペーストを用いたスクリーン印刷法が用いられる。
本実施形態で用いる電極ペーストは、各種導電性金属や合金からなる導電体材料、または焼成後に上記した導電体材料となる各種酸化物、有機金属化合物、またはレジネート等と、有機バインダおよび有機溶剤を含む有機ビヒクルと、を混練して調製する。
電極ペーストを製造する際に用いる導体材料としては、NiやNi合金さらにはこれらの混合物を用いる。このような導体材料は、球状、リン片状等、その形状に特に制限はなく、また、これらの形状のものが混合したものであってもよい。また、導体材料の平均粒子径は、通常、0.1〜2μm、好ましくは0.2〜1μm程度のものを用いればよい。導体材料は、電極ペースト中に、好ましくは30〜60重量%、より好ましくは40〜50重量%含まれる。
有機ビヒクルに用いられる有機バインダとしては、たとえば、エチルセルロース、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、または、これらの共重合体などが例示されるが、本実施形態ではエチルセルロースを主成分とすることがより好ましい。有機バインダは、電極ペースト中に、導体材料(金属粉体)100重量部に対して、好ましくは1〜10重量部で含まれる。
接着性の改善のために、電極ペーストには、可塑剤が含まれることが好ましい。可塑剤としては、上述した誘電体ペーストと同様なものを用いることができる。
電極ペーストは、上記各成分を、ボールミルなどで混練し、スラリー化することにより得ることができる。
(4)本実施形態では、セラミックグリーンシート10aの表面に、所定パターンの電極層12aを印刷法で形成した後、またはその前に、図2(B)に示す電極層12aが形成されていないセラミックグリーンシート10aの表面隙間(余白パターン部分30)に、図2(C)に示すように、電極層12aと実質的に同じ厚みの余白パターン層22を形成する。余白パターン層22の厚さを電極層12aと実質的に同じ厚みとするのは、実質的に同じでないと段差が生じるからである。
余白パターン層22の形成方法は、本実施形態では電極段差吸収用印刷ペーストを用いたスクリーン印刷法が用いられる。
本実施形態で用いる電極段差吸収用印刷ペーストは、セラミック粉末と、有機バインダおよび有機溶剤を含む有機ビヒクルと、を含有する。
電極段差吸収用印刷ペーストを製造する際に用いるセラミック粉末としては、グリーンシート10aを構成する誘電体と同じセラミック粉末を用いることが好ましい。電極段差吸収用印刷ペーストにより形成される余白パターン層22は、焼成後に、誘電体層10と一体化されるからである。
セラミック粉末は、電極段差吸収用印刷ペースト中に、好ましくは30〜70重量%、より好ましくは40〜55重量%含まれる。セラミック粉末の含有割合が少なすぎるとペースト粘度が小さくなり印刷が困難になる。また、セラミック粉末の含有割合が多すぎると、印刷厚みを薄くすることが困難になる傾向にある。
有機ビヒクルに用いられる有機バインダとしては、本実施形態では、エチルセルロースおよびポリビニルブチラールの2種類の樹脂を混合して用いる。エチルセルロースとポリビニルブチラールとを混合して用いることにより、余白ペースト層22を、多孔化させることができ、これにより余白ペースト層22の通気性を向上させることがでる。電極段差吸収用印刷ペースト中における有機バインダの含有量は、セラミック粉末100重量部に対して、1.0〜6.0重量部、好ましくは2〜5重量部、より好ましくは3.5〜4.5重量部である。有機バインダの量が少なすぎると、余白ペースト層22の強度が著しく低下してしまう。一方、多すぎると、余白ペースト層22の通気性が低下してしまう。
有機ビヒクル中における、エチルセルロースとポリビニルブチラールとの比率は、重量比で、好ましくは、エチルセルロース:ポリビニルブチラール=95:5〜35:65であり、より好ましくは93:7〜50:50、さらに好ましくは90:10〜70:30である。エチルセルロースの比率が高すぎると、電極段差吸収用印刷ペーストの粘度が高くなり過ぎてしまい、余白パターン層22を形成した際に、その表面が粗くなってしまう傾向にある。一方、ポリビニルブチラールの比率が高すぎると、電極段差吸収用印刷ペーストの粘度が低くなり過ぎてしまい、印刷にじみが発生してしまう傾向にある。さらには、ポリビニルブチラールはセラミックグリーンシートの有機バインダと同種類であるため、その量が多すぎると、グリーンシートへのシートアタック現象が発生し易くなる。
なお、ポリビニルブチラールとしては、上述の誘電体ペーストと同様なものを用いれば良い。
有機ビヒクルに用いられる有機溶剤としては、グリセリン、エチレングリコールおよびブチルカルビトールから選択される少なくとも1種を含有するものを用いる。有機溶剤中に、これらグリセリン、エチレングリコール、ブチルカルビトールを含有させることにより、電極段差吸収用印刷ペーストの粘度を、印刷に適正な範囲に保持しながら、電極段差吸収用印刷ペーストにより形成される余白パターン層22の通気性を向上させることができる。すなわち、これらの溶剤は、有機バインダであるエチルセルロースおよびポリビニルブチラールと組み合わせて用いることにより、通気改質剤として作用するものである。なお、この理由としては、グリセリン、エチレングリコールおよびブチルカルビトールは、有機バインダであるエチルセルロースおよびポリビニルブチラールとの相溶性が低いこと、さらには、比較的に高い沸点を有すること、に起因すると考えられる。なお、グリセリン、エチレングリコール、ブチルカルビトールのなかでは、特性改善効果が大きいという点より、グリセリンが特に好ましい。
電極段差吸収用印刷ペースト中における、有機溶剤の含有量は、セラミック粉末100重量部に対して、好ましくは50〜200重量部であり、より好ましくは55〜65重量部である。また、有機溶剤中における、通気改質剤としてのグリセリン、エチレングリコールおよびブチルカルビトールの合計の含有量は、電極段差吸収用印刷ペースト中に含有させる有機溶剤の総量を100重量%とした場合に、好ましくは3〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%、さらに好ましくは13〜20重量%である。通気改質剤としてのグリセリン、エチレングリコールおよびブチルカルビトールの含有割合が低すぎると、特性改善効果が得られなくなる。一方、多すぎると、電極段差吸収用印刷ペーストの粘度が高くなる傾向にあり、印刷精度の低下を引き起こしてしまう。
なお、グリセリン、エチレングリコールおよびブチルカルビトールから選択される1種の溶剤と組み合わせて用いられる他の溶剤としては、有機バインダとの相溶性が高く、セラミックグリーンシート10aに対してシートアタックしないものが好ましく、たとえば、ターピニルアセテート、ジヒドロターピネオールなどが挙げられ、これらは組み合わせて用いることができる。また、このような溶剤としては、グリセリン、エチレングリコールおよびブチルカルビトールと比較して、沸点が低いものが好ましい。
また、電極段差吸収用印刷ペーストには、分散剤、可塑剤、粘着剤、帯電除剤、といった各種添加剤が含有されても良い。
分散剤としては、特に限定はないが、たとえば、エステル系重合体、カルボン酸といった高分子材料が用いられる。分散剤の含有量は、セラミック粉末100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.3〜1重量部である。
可塑剤としては、特に限定はないが、たとえば、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ベンジルブチル(BBP)およびフタル酸ブチルブチレングリコール(BPBG)などのフタル酸エステル、アジピン酸ジオクチル(DOA)などのアジピン酸エステル、セバシン酸ジブチルなどのセバシン酸エステルが挙げられる。これらのなかでも、フタル酸ジオクチル(DOP)が特に好ましい。可塑剤の含有量は、有機バインダ100重量部に対して、好ましくは50〜200重量部であり、より好ましくは80〜100重量部である。
帯電除剤としては、特に限定はないが、たとえば、イミダゾリン系帯電除剤などが用いられる。帯電除剤の含有量は、セラミック粉末100重量部に対して、好ましくは0.1〜0.75重量部、さらに好ましくは0.25〜0.5重量部である。
電極段差吸収用印刷ペーストは、上記各成分を、ボールミルなどで混練し、スラリー化することにより得ることができる。
この電極段差吸収用印刷ペーストは、図2(B)に示す電極層12a間の余白パターン部分30に印刷される。その後、電極段差吸収用印刷ペーストを印刷する事により形成される余白パターン層22は、有機溶剤を除去するために、好ましくは、温度40〜90℃の条件にて乾燥される。なお、乾燥は、電極層12aとともに行っても良いし、別々に行っても良い。
(5)次に、以上のような、所定パターンの電極層12aと余白パターン層22が表面に形成されたセラミックグリーンシート10aを複数積層して積層体とし、得られた積層体を所定サイズに切断して、グリーンチップとする。そして、その後、このグリーンチップについて、脱バインダ処理を施す。
脱バインダ処理は、通常の条件で行えばよいが、内部電極層の導電体材料にNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、昇温速度:5〜300℃/時間、特に5〜50℃/時間、保持温度:200〜700℃、特に300〜650℃、保持時間:0.5〜20時間、特に1〜10時間、雰囲気:加湿したNとHとの混合ガスとすることが好ましい。
次いで、脱バインダ処理を行ったグリーンチップについて、焼成および熱処理を施す。
焼成は、昇温速度:50〜500℃/時間、特に200〜300℃/時間、保持温度:1100〜1300℃、特に1150〜1250℃、保持時間:0.5〜8時間、特に1〜3時間、冷却速度:50〜500℃/時間、特に200〜300℃/時間、雰囲気ガス:加湿したNとHとの混合ガス等の条件とすることが好ましい。
ただし、焼成時の雰囲気中の酸素分圧は、10−2Pa以下、特に10−2〜10−8 Paとすることが好ましい。前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にあり、また、酸素分圧があまり低すぎると、内部電極層の電極材料が異常焼結を起こし、途切れてしまう傾向にある。
このような焼成を行った後の熱処理(アニール)は、保持温度または最高温度を、好ましくは900℃以上、さらに好ましくは1000〜1100℃として行うことが好ましい。熱処理時の保持温度または最高温度が、前記範囲未満では誘電体材料の酸化が不十分なために絶縁抵抗寿命が短くなる傾向にあり、前記範囲をこえると内部電極のNiが酸化し、容量が低下するだけでなく、誘電体素地と反応してしまい、寿命も短くなる傾向にある。熱処理の際の酸素分圧は、焼成時の還元雰囲気よりも高い酸素分圧であり、好ましくは10−3Pa〜1Pa、より好ましくは10−2Pa〜1Paである。前記範囲未満では、誘電体層10の再酸化が困難であり、前記範囲をこえると内部電極層12が酸化する傾向にある。
そして、そのほかの熱処理条件としては、保持時間:0〜6時間、特に2〜5時間、冷却速度:50〜500℃/時間、特に100〜300℃/時間、雰囲気用ガス:加湿したNガス等とすることが好ましい。
なお、Nガスや混合ガス等を加湿するには、例えば加温した水にガスを通し、バブリングする装置等を使用すればよい。この場合、水温は0〜75℃程度が好ましい。また脱バインダ処理、焼成および熱処理は、それぞれを連続して行っても、独立に行ってもよい。これらを連続して行なう場合、脱バインダ処理後、冷却せずに雰囲気を変更し、続いて焼成の際の保持温度まで昇温して焼成を行ない、次いで冷却し、熱処理の保持温度に達したときに雰囲気を変更して熱処理を行なうことが好ましい。一方、これらを独立して行なう場合、焼成に際しては、焼成の全過程を加湿したNとHとの混合ガス雰囲気下で行っても良く、脱バインダ処理時の保持温度までNガスあるいは加湿したNガス雰囲気下で昇温した後、雰囲気を変更してさらに昇温を続けても良く、熱処理時の保持温度まで冷却した後は、再びNガスあるいは加湿したNガス雰囲気に変更して冷却を続けても良い。また、熱処理に際しては、熱処理の全過程を加湿したNガス雰囲気としても良く、Nガス雰囲気下で保持温度まで昇温した後、雰囲気を変更しても良い。
このようにして得られた焼結体(素子本体4)には、例えばバレル研磨、サンドプラスト等にて端面研磨を施し、端子電極用ペーストを焼きつけて端子電極6,8が形成される。端子電極用ペーストの焼成条件は、例えば、加湿したNとHとの混合ガス中で600〜800℃にて10分間〜1時間程度とすることが好ましい。そして、必要に応じ、端子電極6,8上にめっき等を行うことによりパッド層を形成する。なお、端子電極用ペーストは、上記した電極ペーストと同様にして調製すればよい。
このようにして製造された本発明の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、上述の実施形態では、本発明により製造される積層セラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明の電極段差吸収用印刷ペーストが適用可能な積層セラミック電子部品であれば、何でも良い。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
電極段差吸収用印刷ペーストの作製
セラミック粉末の出発原料としてBaTiO粉体(BT−02/堺化学工業(株))と、添加成分として、BaTiO粉体100重量部に対して、(Ba0.6Ca0.4)SiO:1.48重量部、Y:1.01重量部、MgCO:0.72重量部、Cr:0.13重量部、およびV:0.045重量部と、を準備した。
そして、上記にて準備したセラミック粉末(BaTiOおよび添加成分):100重量部、有機バインダとして、エチルセルロースとポリビニルブチラールとの混合物(エチルセルロース:ポリビニルブチラール=85:15(重量比)):3.5重量部、有機溶剤として、ターピニルアセテートとグリセリン(通気改質剤)との混合溶剤:135重量部、可塑剤成分としてのDOP(フタル酸ジオクチル):5.5重量部、および分散剤としてのポリエチレングリコール系のノニオン性分散剤(HLB=5〜6):0.5重量部を、ボールミルで混合することにより、電極段差吸収用印刷ペーストを得た。
本実施例では、表1に示すように、有機溶剤として、ターピニルアセテートと、グリセリン(通気改質剤)と、の比率を変化させた複数のペースト(試料番号1〜6)を得た。たとえば、表1の試料番号4においては、有機溶剤中の比率は、ターピニルアセテート:グリセリン(通気改質剤)=83.8重量%:16.2重量%である。さらに、表1の試料番号1は、グリセリン(通気改質剤)を使用しなかった試料である。
なお、ポリビニルブチラールとしては、重合度2600、ブチラール化度64.5%、残留アセチル基量0.9%のものを使用した。また、分散剤としてのポリエチレングリコール系のノニオン性分散剤(HLB=5〜6)としては、ポリエチレングリコールと脂肪酸エステルのブロックポリマーを使用した。
そして、得られた電極段差吸収用印刷ペーストについて、グリーンシートへのシートアタック、通気性、および粘度を、以下の方法に従い評価した。
シートアタック
まず、以下の方法により、図1に示す誘電体層10を形成するためのセラミックグリーンシートを作製した。
すなわち、電極段差吸収用印刷ペーストの製造に用いたセラミック粉末(BaTiOおよび添加成分)と同じセラミック粉末を準備した。次いで、セラミック粉末:100重量部、有機バインダとしてのポリビニルブチラール:6重量部、有機溶剤としての混合溶剤((メチルエチルケトン)を主成分とする混合溶剤):120重量部、および可塑剤成分としてのDOP(フタル酸ジオクチル):3重量部をボールミルで混合することにより、誘電体ペーストを得た。次いで、得られた誘電体ペーストを用いて、PETフィルム上に、ワイヤーバーコーターを用いて塗布し、次いで、乾燥させ、厚み8μmのセラミックグリーンシートを形成した。
次いで、得られたセラミックグリーンシートに、スクリーン印刷にて、上記にて作製した電極段差吸収用印刷ペーストを印刷し、次いで、乾燥させ、厚み1.5μmの余白パターン層を形成することにより、シートアタック評価用のサンプルを得た。
そして、得られたシートアタック評価用のサンプルを、セラミックグリーンシートの余白パターン層とは反対面(PETフィルムに接する面)より、顕微鏡を用いて観察し、変形度合いと色合いによりセラミックグリーンシートの溶解度合いを確認することにより、シートアタックの有無を評価した。セラミックグリーンシートの溶解を確認できなかった場合を○、確認できた場合を×として判断した。結果を表1に示す。
通気性
まず、上述のシートアタックの評価において製造した誘電体ペーストと同様のペーストを用い、同様にして、厚み2μmのセラミックグリーンシートを形成した。そして、得られたセラミックグリーンシートに、スクリーン印刷にて、上記にて作製した電極段差吸収用印刷ペーストを全面に印刷し、次いで、乾燥させ、厚み1〜1.5μmの余白パターン層を形成し、最後に、余白パターン層を形成した複数のセラミックグリーンシートを、合計の厚みが30μmとなるように積層する(合計3層)ことにより、通気性評価用のサンプルを作製した。
そして、得られた通気性評価用のサンプルに、320Torrの空気圧をかけ、その流量が1L/minとなるように調整した際における、通気性評価用のサンプルを介在させる前と、介在させた後と、の圧力の変化率を測定し、測定結果から通気抵抗(単位は、Torr)を算出した。通気抵抗が低い程、通気性に優れると評価できる。結果を表1に示す。
粘度
電極段差吸収用印刷ペーストの粘度は、粘弾性測定装置(レオメータ)を用い、剪断速度8sec−1における粘度Vを測定することにより求めた。結果を表1に示す。
Figure 2008294163
表1より、有機バインダとして、所定量のエチルセルロースおよびポリビニルブチラールを用いるとともに、通気改質剤としてのグリセリンを添加することにより得られる電極段差吸収用印刷ペーストは、ペースト粘度を適性な印刷が可能な範囲に保持しながら、シートアタックも有効に防止でき、さらには、得られるシートの通気性を高くでき(通気抵抗を低くでき)ることが確認できる。一方で、通気改質剤としてのグリセリンを添加しなかった場合には、ペースト粘度が低くなる結果となった。
実施例2
有機バインダとしてのエチルセルロースとポリビニルブチラールとの混合物(エチルセルロース:ポリビニルブチラール=85:15(重量比))の添加量を、表2に示すように変化させた以外は、実施例1の試料番号4と同様にして、電極段差吸収用印刷ペーストを作製し、同様に評価を行った。すなわち、実施例2においては、エチルセルロースとポリビニルブチラールとの混合物の添加量を、セラミック粉末100重量部に対して、それぞれ、3重量部(試料番号7)、2.5重量部(試料番号8)、2重量部(試料番号9)とした試料を作製した。結果を表2に示す。
Figure 2008294163
表2より、有機バインダとしてのエチルセルロースとポリビニルブチラールとの混合物の添加量を変化させた場合においても、同様な結果が得られることが確認できる。なお、表2の試料番号4は、実施例1の試料番号4と同じ試料である。
実施例3
通気改質剤としてのグリセリンの代わりに、表3に示す通気改質剤を使用した以外は、実施例1の試料番号4と同様にして、電極段差吸収用印刷ペーストを作製し、同様に評価を行った。すなわち、実施例3においては、通気改質剤として、エチレングリコール(試料番号10)、ブチルカルビトール(試料番号11)、テトラメチレングリコール(試料番号12)、ジエチレングリコール(試料番号13)を用いた試料を作製した。結果を表3に示す。
Figure 2008294163
表3より、通気改質剤として、グリセリンの代わりに、エチレングリコールおよびブチルカルビトールを使用した場合にも、同様の結果が得られることが確認できる。一方で、グリセリンの代わりに、テトラメチレングリコールおよびジエチレングリコールを使用した場合には、ペーストを作製する際に、各成分が分離してしまい、印刷可能なペーストを得ることができなかった。なお、表3の試料番号4は、実施例1の試料番号4と同じ試料である。
参考実験例
電極段差吸収用印刷ペーストにおいて、有機バインダとしてのエチルセルロースとポリビニルブチラールとの比率を変化させた場合における傾向を確認するために、表4に示す組成を有する電極段差吸収用印刷ペーストを作製し、実施例1と同様な評価を行った。なお、本参考実験例においては、実施例1と比較して、エチルセルロースとポリビニルブチラールとの比率を表4に示すように変化させるとともに、有機バインダの添加量を4.7重量部に増やした。また、通気改質剤としてのグリセリンも使用しなかった。
Figure 2008294163
表4より、ポリビニルブチラールの比率を増加させると、シートアタックが発生し易くなるとともに、ペースト粘度が低下する傾向にあることが確認できる。また、エチルセルロースを添加しない場合には、ペーストを作製する際に、各成分が分離してしまい、印刷可能なペーストを得ることができなかった。
さらに、試料番号16とほぼ同等のペースト粘度を有する実施例1の試料番号4とを比較することにより、本発明の実施によれば、ペースト粘度を印刷に適性な範囲に保ちながら、通気性の向上が可能となることが確認できる。
実施例4
実施例1の試料番号4の電極段差吸収用印刷ペースト、実施例のシートアタックの評価に用いた誘電体ペースト、および以下の方法により得られた電極ペーストを用いて、以下に説明する方法により、積層セラミックコンデンサ試料を作製した。
すなわち、電極ペーストとしては、Ni粉末:100重量部、有機バインダとしてのエチルセルロース:4.5重量部、および有機溶剤としてのジヒドロターピネオール:100重量部をボールミルで混合することにより、調製したものを使用した。
そして、まず、PETフィルム上に誘電体ペーストをドクターブレード法により、所定厚みで塗布し、乾燥することで、厚みが20μmの外層用グリーンシートを作製した。また同様に厚みが3μmの内層用セラミックグリーンシートを作製した。本実施例では、この外層用グリーンシート5枚(100μm)で内層用グリーンシートを挟むような構成とする。内層用セラミックグリーンシートを第1グリーンシートとし、これを複数枚、準備した。
次に、得られた第1グリーンシートの上に、電極ペーストを用いて、スクリーン印刷法により厚さ約1.5μmの電極層(内部電極パターン)12a(図2(B)参照)を形成した。その後、第1グリーンシート上の電極層12aが形成されていない余白パターン部分30(図2(B)参照)に、実施例1の試料番号4の電極段差吸収用印刷ペーストを、スクリーン印刷法により印刷し、電極層12aと実質的に同じ厚みの余白パターン層22(図2(C)参照)を形成した。そして、これらを乾燥することにより、図2(C)に示すような電極層12aおよび余白パターン層22を持つセラミックグリーンシート10aを得た。本実施例では、このセラミックグリーンシート10aを第2グリーンシートとし、これを複数枚、準備した。
次に、外層用グリーンシートを厚さが100μmになるまで積層してグリーンシート群を形成した。このグリーンシート群の上に、第2グリーンシートを200枚積層し、この上にさらに、外層用グリーンシート群を積層、形成し、温度60℃及び圧力1.0トン/cmの条件で加熱・加圧してグリーンセラミック積層体を得た。
次に、得られた積層体を所定サイズに切断した後、脱バインダ処理、焼成及びアニールを下記の条件にて行い、焼結体を得た。脱バインダは、昇温速度:15℃/時間、保持温度:280℃、保持時間:8時間、処理雰囲気:空気雰囲気、の条件で行った。焼成は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1200〜1380℃、保持時間:2時間、降温速度:300℃/時間、処理雰囲気:還元雰囲気(酸素分圧:10−6PaにNとHとの混合ガスを水蒸気に通して調整した)、の条件で行った。アニールは、保持温度:900℃、保持時間:9時間、降温速度:300℃/時間、処理雰囲気:加湿したNガス雰囲気、の条件で行った。焼成及びアニールにおけるガスの加湿には、ウェッターを用い、水温は35℃とした。
次に、得られた焼結体の端面をサンドブラストにて研磨した後、In−Ga合金を塗布して、試験用電極を形成し、図1に示す積層セラミックチップコンデンサ試料を得た。コンデンサ試料のサイズは、縦1.6mm×横0.8mm×高さ0.8mmであり、一対の内部電極層間に挟まれる誘電体層2の厚みは約2μm、内部電極層3の厚みは1.5μmであった。
ショート不良率の測定
そして、得られたコンデンサ試料を用いて、ショート不良率を測定した。ショート不良率は、50個のコンデンササンプルを準備し、ショート不良が発生した個数を調べて測定した。具体的には、絶縁抵抗計(HEWLETT PACKARD社製E2377Aマルチメーター)を使用して、抵抗値を測定し、抵抗値が100kΩ以下となったサンプルをショート不良サンプルとし、全測定サンプルに対する、ショート不良サンプルの比率をショート不良率とした。本実施例ではショート不良率が10%以下である場合を良好とした。その結果、ショート不良率は5%であり、極めて良好な結果が得られた。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。 図2(A)〜図2(C)は図1の積層セラミックコンデンサの製造工程の一部を示す断面図である。
符号の説明
2… 積層セラミックコンデンサ
4… コンデンサ素体
6,8… 端子電極
10… 誘電体層
10a… セラミックグリーンシート
12… 内部電極層
12a… 電極層(内部電極パターン)
20… キャリアシート
22… 余白パターン層
30… 余白パターン部分

Claims (5)

  1. 積層セラミック電子部品を製造するために用いる電極段差吸収用印刷ペーストであって、
    ブチラール樹脂を含むセラミックグリーンシートと組み合わせて使用され、
    セラミック粉末と、有機バインダと、溶剤と、を少なくとも含み、
    前記バインダの含有量が、前記セラミック粉末100重量部に対して、1.0〜6.0重量部であり、
    前記有機バインダが、エチルセルロースおよびポリビニルブチラールを含有し、かつ、
    前記溶剤が、グリセリン、エチレングリコールおよびブチルカルビトールから選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする電極段差吸収用印刷ペースト。
  2. 前記溶剤の含有量が、前記セラミック粉末100重量部に対して、50〜200重量部であり、
    前記溶剤中における、グリセリン、エチレングリコールおよびブチルカルビトールの合計の含有量が、溶剤全体100重量%に対して、3〜50重量%である請求項1に記載の電極段差吸収用印刷ペースト。
  3. 前記有機バインダ中における、エチルセルロースとポリビニルブチラールとの比率が、重量比で、エチルセルロース:ポリビニルブチラール=95:5〜35:65である請求項1または2に記載の電極段差吸収用印刷ペースト。
  4. ブチラール樹脂を含むセラミックグリーンシートと所定パターンの電極層とを交互に複数重ねてグリーンセラミック積層体を形成する工程と、
    前記積層体を焼成する工程と、を有する積層セラミック電子部品の製造方法であって、
    前記積層体を形成する前に、所定パターンの前記電極層の隙間部分には、前記電極層と実質的に同じ厚みの余白パターン層を形成し、
    前記余白パターン層を形成するための電極段差吸収用印刷ペーストとして、請求項1〜3のいずれかに記載の電極段差吸収用印刷ペーストを用いることを特徴とする積層セラミック電子部品の製造方法。
  5. 前記電極段差吸収用印刷ペーストに含まれるセラミック粉末が、前記グリーンシートを形成するためのペーストに含まれるセラミック粉末と同じである請求項4に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
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