JP4073424B2 - 電子部品の製造方法 - Google Patents

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本発明は、積層セラミックコンデンサなどの電子部品の製造方法に係り、さらに詳しくは、小型化・高容量化対応の電子部品の製造方法に関する。
近年、電子機器の軽薄短小化が進んできている。これに伴い、その電子機器に使用される積層セラミック電子部品においても、より一層の小型化・高容量化が進められている。
積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサを小型化・高容量化するために最も効果的な方法は、内部電極と誘電体層を双方ともに可能な限り薄くし(薄層化)、かつそれらを可能な限り多く積層する(多層化)ことである。
このような積層セラミックコンデンサは、たとえば、以下に示す方法により製造される。まず、チタン酸バリウムなどに代表されるセラミック粉末とバインダを主成分とするセラミックグリーンシートを形成する。次いで、グリーンシー上に、電極ペーストを所定パターンで印刷して電極層を形成する。さらに、グリーンシート上の電極層が形成されていない部分(余白部分)には、電極段差を吸収するための余白パターン層を形成する。そして、この電極層および余白パターン層が形成されたグリーンシートを、複数枚積層した後、同時焼成して一体焼結させ、最後に外部電極を形成して製造される(たとえば、特許文献1〜3)。
しかしながら、内部電極形成用の電極ペーストとしては、導電性粉末や有機バインダの他に、印刷特性や塗布特性を保持するために溶剤が含有されている。そのため、電極ペーストを使用して、所定パターンの電極層をグリーンシート上に形成する際には、この電極ペースト中に含有される溶剤が、グリーンシート中の有機バインダを膨潤または溶解させる、いわゆる「シートアタック」現象が生じてしまう。
こうしたシートアタック現象は、グリーンシートの厚みが比較的厚いうちは実用上問題とならない。しかしながら、グリーンシートの厚みがたとえば5μm以下と薄い場合にシートアタック現象が生じると、電極ペーストを印刷されたグリーンシートをPETフィルムなどのキャリアシートから剥離する際に、グリーンシートが剥がれにくくなってしまう。そして、グリーンシートが剥がれにくくなると、剥離時に、グリーンシートにしわや穴、亀裂などが発生し、積層工程で正常な積層体が得られなくなってしまう。さらに、正常な積層体が得られないと、最終製品たる積層セラミック電子部品において、ショート不良が発生ししてしまい、歩留まりの低下を招いていた。
特開2001−126951号公報 特開2001−358036号公報 特開2002−43164号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、グリーンシートと支持シートとの間の剥離強度を低くすることにより、グリーンシートの支持シートからの剥離性を向上させ、ショート不良率の低減された電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、電極ペーストを使用して、電極層をグリーンシート上に形成し、その後、このグリーンシートの表面に形成された電極層を乾燥する際に、グリーンシートの電極層が形成された部分の反対側表面(グリーンシートと支持シートとのグリーンシート側界面)における、SEM観察による黒色側の滲み占有率が、20%以下となるように乾燥することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の電子部品の製造方法は、
支持シート上にグリーンシートを形成する工程と、
前記グリーンシートの表面に、電極ペーストを使用して、電極層を形成する工程と、を有する電子部品の製造方法であって、
前記グリーンシートの前記電極層が形成された部分の反対側表面における、SEM観察による黒色側の滲み占有率が、20%以下となるように、前記グリーンシートの表面に形成された前記電極層を乾燥することを特徴とする。
本発明においては、前記グリーンシートの前記電極層が形成された部分の反対側表面(支持シート側表面)における、SEM観察による黒色側の”滲み占有率”が、20%以下となるように前記電極層を形成することにより、グリーンシートの支持シートからの剥離性を向上させることができる。そして、グリーンシートの剥離性を向上させることにより、グリーンシートを薄層化した場合においても、グリーンシート剥離時におけるしわや穴、亀裂などの発生を抑制することができ、焼成により得られる焼結体のショート不良率を低減することができる。なお、本発明において、前記滲み占有率は20%以下とすれば良いが、好ましくは18%以下、より好ましくは10%以下とすることにより、グリーンシートと支持シートとの間の剥離強度を、より低くすることができ、さらなる剥離性の向上を図ることができる。
なお、本発明において、”滲み占有率”とは、電極層の形成されたグリーンシートにおいて、電極層が形成された部分の反対側表面に発生する滲みの面積比を意味し、以下に示す方法により測定される。
まず、グリーンシート上に電極層を形成し、乾燥した後に、電極層の形成されたグリーンシートを、支持シートから剥離する。次いで、走査型電子顕微鏡(SEM)により、電極層の形成されたグリーンシートの電極層が形成された部分の反対側表面のSEM写真を撮影する。SEM写真の撮影は、たとえば視野100μm×100μmについて行う。そして、SEM写真による撮影領域を、白色側から黒色側まで、その黒色度(あるいは、白色度)に応じて、3段階以上の領域に分け、その面積比を求める。その結果、黒色側の領域を滲み領域とし、その面積比を滲み占有率とする。
具体的には、その黒色度に応じて黒色度0〜黒色度2(黒色度の値が高いほど、より黒色側の領域であることを意味する)というように3段階の領域に分けた場合においては、黒色度2となった領域の面積比を、滲み占有率と定義する。好ましくは、黒色度を、黒色度0〜黒色度7というように8段階に分けた場合には、黒色度5〜黒色度7となった領域(合計3領域)の面積比を、滲み占有率とし、より好ましくは、黒色度0〜黒色度255というように256段階に分けた場合には、黒色度176〜黒色度255となった領域(合計80領域)の面積比を、滲み占有率とする。
なお、一般に、SEM像においては、測定試料の凹凸のうち凸部分のほうが、明るくなる(白くなる)傾向にある。そして、上記滲み部分は、平面となる(凸部分が形成されない)ため、該滲み部分は、誘電体粒子が表面に露出し、凸部を有している部分(滲みが発生していない部分)と比較して、そのSEM像は暗くなる(黒くなる)傾向にある。
しかも、測定試料に含まれる元素の平均原子番号が小さい程、電子線が透過し易いため、観察される像は、暗く(黒く)なる。そして、バインダの膨潤、溶解等によりグリーンシート反対側表面に発生する滲み部分は、主として有機物(C原子等)から構成されており、誘電体粒子(BaTiO等)より平均原子番号が小さいため、同様に、そのSEM像は暗くなる(黒くなる)傾向にある。
本発明において、好ましくは、前記グリーンシート上に形成した電極層を、75℃未満、より好ましくは70℃以下の温度で乾燥する。電極層の乾燥を、上記温度で行うことにより、乾燥前の電極層に含有されている溶剤が、グリーンシート中の有機バインダを膨潤または溶解させてしまうシートアタック現象を有効に防止することができ、滲み占有率を効果的に低下させることができる。
本発明において、好ましくは、前記電極ペーストには、溶剤が含まれており、前記溶剤が、ターピニルアセテートを主成分として含有する。前記電極ペーストに含有される溶剤として、ターピニルアセテートを使用することにより、ターピニルアセテート以外の溶剤を使用した場合よりも、比較的高い温度で乾燥しても滲み占有率を低くすることができる。そのため、溶剤として、ターピニルアセテートを使用した場合においては、好ましくは90℃以下と比較的高温で、電極層を乾燥することができる。
本発明において、電極ペーストにターピニルアセテートを使用した場合には、電極ペーストに含有される有機バインダとして、エチルセルロースなどのターピニルアセテートとの相溶性の高いバインダを使用することが好ましい。また、同様に、グリーンシートに含有される有機バインダとしては、ブチラール樹脂などのターピニルアセテートとの相溶性の低いバインダを使用することが好ましい。電極ペースト用のバインダとしてエチルセルロースを使用し、また、グリーンシート用のバインダとしてブチラール樹脂を使用することにより、電極ペーストに含有される溶剤によるシートアタックを有効に防止することができる。
好ましくは、前記電極層は、グリーンシートの表面に所定パターンで形成され、前記電極層が形成されていないグリーンシートの表面には、前記電極層と実質的に同じ厚みの余白パターン層が形成され、前記余白パターン層が、前記グリーンシートと実質的に同じ材質で構成してある。
余白パターン層を形成することで、所定パターンの電極層による表面の段差が解消される。そのため、グリーンシートを多数積層し、焼成前に加圧しても、積層体の外面が平面に保たれると共に、電極層が平面方向に位置ズレすることなく、しかも、グリーンシートを突き破り短絡の原因などになることもない。なお、本発明において、余白パターン層とは、電極層と相補的なパターンで形成されている誘電体層を意味する。
本発明によると、積層セラミックコンデンサなどの電子部品の製造方法において、グリーンシートの表面に形成された電極層を乾燥する際に、グリーンシートの電極層が形成された部分の反対側表面における、SEM観察による黒色側の滲み占有率が、20%以下となるように乾燥することにより、グリーンシートの支持シートからの剥離性を向上させ、ショート不良率を低減することができる。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図、
図2(A)〜図2(C)は本発明の一実施形態に係る電極層の形成方法を示す要部断面図、
図3(A)は本発明の実施例におけるグリーンシートのSEM写真、図3(B)は比較例におけるグリーンシートのSEM写真、
図4は滲み占有率とシート剥離強度との関係を示すグラフ、
図5は滲み占有率と剥離不良率との関係を示すグラフ、
図6は滲み占有率とショート不良率との関係を示すグラフである。
積層セラミックコンデンサ2
まず、本発明に係る方法により製造される電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサの全体構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、コンデンサ素体4と、第1端子電極6と第2端子電極8とを有する。コンデンサ素体4は、誘電体層10と、内部電極層12とを有し、誘電体層10の間に、これらの内部電極層12が交互に積層してある。交互に積層される一方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の第1端部の外側に形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続してある。また、交互に積層される他方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の第2端部の外側に形成してある第2端子電極8の内側に対して電気的に接続してある。
コンデンサ素体4の外形や寸法には特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、通常、外形はほぼ直方体形状とし、寸法は通常、縦(0.4〜5.6mm)×横(0.2〜5.0mm)×高さ(0.2〜1.9mm)程度とすることができる。
誘電体層10は、後述する図2(A)〜図2(C)に示すグリーンシート10aを焼成して形成される。誘電体層10を構成する材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。誘電体層10の厚みは、本実施形態では、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下に薄層化されている。
内部電極層12は、後述する図2(B)、図2(C)に示す所定パターンの電極ペーストで構成される電極層12aを焼成して形成される。内部電極層12の厚みは、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以下に薄層化されている。
第1端子電極6および第2端子電極8の材質は、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。第1,第2端子電極6,8の厚みも特に限定されないが、通常10〜50μm程度である。
積層セラミックコンデンサ2の製造方法
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2の製造方法の一例を説明する。
まず、焼成後に図1に示す誘電体層10を構成することになるグリーンシートを製造するために、誘電体ペーストを準備する。
本実施形態では、誘電体ペーストは、セラミック粉末と有機ビヒクルとを混練して得られる有機溶剤系ペーストで構成される。
セラミック粉末としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、混合して用いることができる。セラミック粉末は、通常、平均粒子径が2.0μm以下、好ましくは0.1〜0.8μm程度の粉体として用いられる。なお、きわめて薄いグリーンシートを形成するためには、グリーンシート厚みよりも細かい粉体を使用することが望ましい。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いられるバインダとしては、特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂などの通常の各種バインダが用いられるが、好ましくは、ポリビニルブチラールなどのブチラール樹脂が用いられる。有機ビヒクルに用いられる有機溶剤も、特に限定されるものではなく、メチルエチルケトン、ブチルカルビトール、アセトン、トルエンなどが用いられる。
誘電体ペースト中の各成分の含有量は特に限定されず、通常の含有量、たとえばバインダは1〜5質量%程度、溶剤は10〜50質量%程度とすればよい。
誘電体ペースト中には、必要に応じて、各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されていてもよい。誘電体ペースト中に、これらの添加物を添加する場合には、総含有量を、約10重量%以下にすることが望ましい。バインダ樹脂として、ブチラール系樹脂を用いる場合には、可塑剤は、バインダ樹脂100質量部に対して、25〜100質量部の含有量であることが好ましい。
そして、この誘電体ペーストを用いて、ドクターブレード法などにより、図2(A)に示すように、キャリアシート14上に、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは0.5〜10μm程度の厚みで、グリーンシート10aを形成する。
キャリアシート14としては、たとえばPETフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、シリコーンなどがコーティングしてあるものが好ましい。キャリアシート14の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜100μmである。
グリーンシート10aは、キャリアシート14上に形成された後に乾燥される。グリーンシート10aの乾燥温度は、好ましくは50〜100℃であり、乾燥時間は、好ましくは10秒〜2分である。
乾燥後のグリーンシート10aの厚みは、乾燥前に比較して、5〜25%の厚みに収縮する。本実施形態では、乾燥後のグリーンシート10aの厚みが、5μm以下、好ましくは3μm以下となるように形成する。近年望まれている薄層化の要求に応えるためである。
次に、図2(B)に示すように、キャリアシート14上に形成されたグリーンシート10aの表面に、焼成後に図1に示す内部電極層12となる所定パターンの電極層12aを形成する。
電極層12aの厚さは、好ましくは2μm以下、より好ましくは0.5〜1.5μmである。電極層12aの厚さが厚すぎると、積層数を減少せざるをえなくなり取得容量が少なくなり、高容量化しにくくなる。一方、厚みが薄すぎると均一に形成することが困難であり、電極途切れが発生しやすくなる。なお、電極層12aの厚さは、電極の途切れが生じない範囲で薄い方がより望ましい。
電極層12aの形成方法は、層を均一に形成できる方法であれば特に限定されないが、本実施形態では、電極ペーストを用いたスクリーン印刷法が用いられる。
本実施形態で用いる電極ペーストは、導電性粉末と有機ビヒクルとを含有する。
導電性粉末としては、特に限定されないが、Cu、Niおよびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種で構成してあることが好ましく、より好ましくはNiまたはNi合金、さらにはこれらの混合物で構成される。
NiまたはNi合金としては、Mn、Cr、CoおよびAlから選択される少なくとも1種の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P、Fe、Mgなどの各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。
このような導電性粉末は、球状、リン片状等、その形状に特に制限はなく、また、これらの形状のものが混合したものであってもよい。また、導電性粉末の粒子径は、通常、球状の場合、平均粒子径が0.5μm以下、好ましくは0.01〜0.4μm程度のものを用いる。より一層確実に薄層化を実現するためである。
導電性粉末は、電極ペースト中に、好ましくは30〜60重量%、より好ましくは40〜50重量%含まれる。
有機ビヒクルは、有機バインダと溶剤とを主成分として含有するものである。有機バインダとしては、例えばエチルセルロース、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、または、これらの共重合体などが例示されるが、なかでも、エチルセルロースが好ましい。有機バインダとしてエチルセルロースを主成分とする場合の、バインダ中のエチルセルロースの含有量は、95重量%以上であることが好ましく、より好ましくは100重量%である。ごく微量ではあるが、エチルセルロースと組み合わせて用いることが可能な樹脂としては、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などがある。
有機バインダは、電極ペースト中に、導電性粉末100質量部に対して、好ましくは4〜10質量部含まれる。
有機ビヒクルに用いられる溶剤としては、ターピネオール(TPO)、ジヒドロターピネオール、ターピニルアセテート(TPA)、ジヒドロターピニルアセテートなとが使用できる。これらのなかでも、ターピニルアセテートを使用することが好ましい。ターピニルアセテートを使用することにより、後に説明するように、他の溶剤を使用した場合と比較して、電極層の乾燥温度を比較的高温とした場合においても、滲み占有率を低くすることができるからである。また、ターピニルアセテートは、印刷適性においても、他の溶剤を使用した場合と比較して優れている。溶剤中のターピニルアセテートの含有量は、95重量%以上であることが好ましく、より好ましくは100重量%である。
溶剤は、電極ペースト中に、導電性粉末100重量部に対して、好ましくは50〜150重量部、より好ましくは80〜100重量部で含まれる。
有機ビヒクル中の上記バインダおよび溶剤の合計含有量は、95重量%以上であることが好ましく、より好ましくは100重量%である。ごく微量ではあるが、バインダおよび溶剤とともに有機ビヒクル中に含有させることが可能なものとしては、可塑剤、レベリング剤などがある。
電極ペースト中には、上記誘電体ペーストに含まれるセラミック粉末と同じセラミック粉末が共材として含まれていても良い。共材は、焼成過程において導電性粉末の焼結を抑制する作用を奏する。共材として用いるセラミック粉末は、電極ペースト中に、導電性粉末100重量部に対して、好ましくは5〜30重量部で含まれる。共材量が少なすぎると、導電性粉末の焼結抑制効果が低下し、焼成後の内部電極層12のライン性(連続性)が悪化し、見かけの誘電率が低下する。一方で、共材量が多すぎると、焼成後の内部電極層12のライン性が悪化しやすくなり、見かけの誘電率も低下する傾向にある。
接着性の改善のために、電極ペーストには、可塑剤が含まれてもよい。可塑剤としては、特に限定はないが、例えば、フタル酸ベンジルブチル(BBP)などのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。可塑剤は、有機ビヒクル中の有機バインダ100重量部に対して、好ましくは25〜150重量部、より好ましくは25〜100重量部で含有される。可塑剤の添加により、そのペーストを用いて形成される電極層12aの接着力は高まり、電極層12aとグリーンシート10aとの接着力が向上する。このような効果を得るためには、可塑剤の添加量は、25重量部以上が好ましい。ただし添加量が150重量部を越えると、そのペーストを用いて形成される電極層12aから過剰な可塑剤が滲み出すため好ましくない。
電極ペーストは、上記各成分を、ボールミルなどで混練し、スラリー化することにより得ることができる。
次いで、図2(B)に示すようにグリーンシート10a上に所定パターンで形成された電極層12aの乾燥を行う。
本実施形態では、グリーンシート10aの電極層12aが形成された部分の反対側表面(キャリアシート14側表面)における、SEM観察による黒色側の滲み占有率が20%以下、好ましくは18%以下、より好ましくは10%以下となるように、電極層12aの乾燥を行う。滲み占有率の値が上記所定範囲となるように、電極層12aの乾燥を行うことにより、グリーンシート10aのキャリアシート14からの剥離性を向上させることができる。そして、グリーンシート10aの剥離性を向上させることにより、グリーンシート10aを薄層化した場合においても、グリーンシート10aの剥離時におけるしわや穴、亀裂などの発生を抑制することができ、焼成により得られる焼結体のショート不良率を低減することができる。
本発明者等の知見によると、グリーンシート10aにおいて、電極層12aが形成された部分の反対側表面において、上記黒色側の滲みが顕著に発生してしまうと、グリーンシート10aとキャリアシート14との間の剥離強度が高くなってしまい、剥離時に剥離不良が多発することが確認されている。なお、上記黒色側の滲みの発生は、グリーンシート10aを薄層化した場合に特に顕著となる傾向にあった。
これに対して、本実施形態では、滲み占有率を上記所定範囲に制御することにより、グリーンシート10aとキャリアシート14との間の剥離強度を低下させ、剥離性の向上を可能としている。
なお、上記黒色側の滲みの原因については、必ずしも明らかではないが、電極ペーストに含有されている溶剤が、グリーンシート10a中の有機バインダを膨潤または溶解させたことによると考えられる。つまり、シートアタックの結果として、上記黒色側の滲みが発生すると考えられる。
また、本実施形態においては、グリーンシート10aの反対側表面の全面(電極層12aが形成された部分、および後述する余白パターン層16が形成された部分)における滲み占有率を18%以下、より好ましくは10%以下とすることが好ましい。グリーンシート10aの反対側表面の全面における滲み占有率を、上記範囲とすることにより、グリーンシート10aとキャリアシート14との間の剥離強度を、より効果的に低下させることができ、焼結体のショート不良率が低減できるとともに、誘電体層10と内部電極層12との層間剥離現象(デラミネーション)を有効に防止することができる。
本実施形態では、電極層12aを乾燥する際における乾燥温度は、好ましくは75℃未満、より好ましくは70℃以下と低温にする。乾燥温度を上記範囲とすることにより、上記黒色側の滲みの発生を有効に防止し、上述した滲み占有率を低くすることができる。一方、乾燥温度が高すぎると、滲み占有率が高くなり、剥離不良率やショート不良率が増大する傾向にある。なお、乾燥温度の下限は、特に限定されないが、通常50℃程度である。
あるいは、有機ビヒクルに用いられる溶剤として、ターピニルアセテート(TPA)、ジヒドロターピニルアセテートを使用した場合においては、電極層12aを乾燥する際における乾燥温度は、好ましくは90℃以下とする。ターピニルアセテートを使用することにより、他の溶剤を使用した場合よりも、比較的高い温度で乾燥しても、上記黒色側の滲みの発生を有効に防止することができ、滲み占有率を低くすることができる。
その理由としては、必ずしも明らかではないが、ターピニルアセテートは、電極ペーストの有機バインダとして一般的に用いられるエチルセルロースを十分に溶解する一方で、グリーンシート10aの有機バインダとして一般的に用いられるブチラール樹脂とは、相溶性が低く、溶解または膨潤させにくいためによると考えられる。
なお、電極層12aの乾燥は、電極層12a中に含有される溶剤が実質的に除去されるまで行えばよいが、乾燥時間は、通常1〜15分程度とする。
本実施形態では、グリーンシート10aの表面に、所定パターンの電極層12aを印刷法で形成した後、またはその前に、余白パターン層16を形成する。余白パターン層16は、図2(B)に示す電極層12aが形成されていないグリーンシート10a上の表面隙間に、図2(C)に示すように形成する。余白パターン層16の厚みは、電極層12aの形成により生じる段差を解消するため、電極層12aと実質的に同じとする。
余白パターン層16の形成方法は、本実施形態では余白パターン層用ペーストを用いたスクリーン印刷法が用いられる。
本実施形態で用いる余白パターン層用ペーストは、セラミック粉末と有機ビヒクルとを含有する。
セラミック粉末としては、グリーンシート10aに含まれるセラミック粉末と同じ組成、同じ平均粒径を有するものが用いられる。
セラミック粉末は、余白パターン層用ペースト中に、好ましくは25〜70重量%、より好ましくは30〜60重量%含まれる。セラミック粉末の含有割合が少なすぎるとペースト粘度が小さくなり印刷が困難になる。また、セラミック粉末の含有割合が多すぎると、印刷厚みを薄くすることが困難になる傾向にある。
有機ビヒクルは、バインダと溶剤とを主成分として含有するものである。有機ビヒクルに用いられるバインダとしては、特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂などの通常の各種バインダを用いることができ、特に、エチルセルロースを主成分とすることが好ましい。エチルセルロースを主成分とする場合における、バインダ中のエチルセルロースの含有量は、95重量%以上であることが好ましく、より好ましくは100重量%である。ごく微量ではあるが、エチルセルロースと組み合わせて用いることが可能な樹脂としては、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などがある。
有機バインダは、余白パターン層用ペースト中に、セラミック粉末100重量部に対して、好ましくは2.5〜16重量部で含まれる。バインダ量は多すぎても少なすぎても、レベリング、版離れ性等の印刷適正、精度が劣化する。
有機ビヒクルに用いられる溶剤としては、たとえばターピネオール(TPO)、ジヒドロターピネオール、ターピニルアセテート(TPA)、ジヒドロターピニルアセテートなどが使用できるが、本実施形態ではターピニルアセテートを主成分とすることが好ましい。ターピニルアセテートを主成分とすることで、上述した電極ペーストにおける場合と同様の作用効果を奏することができるからである。溶剤中のターピニルアセテートの含有量は、95重量%以上であることが好ましく、より好ましくは100重量%である。
溶剤は、余白パターン層用ペースト中に、セラミック粉末100重量部に対して、好ましくは50〜240重量部、より好ましくは80〜200重量部で含まれる。溶剤量が少なすぎると粘度が高く印刷適正、精度が悪化し厚さが厚くなる。多すぎると粘度が低く、スクリーンメッシュからペーストが垂れ、印刷適正、精度が悪化する不都合がある。
また、余白パターン層用ペーストには、分散剤、可塑剤、粘着剤、帯電除剤、といった各種添加剤が含有されても良い。
分散剤としては、特に限定はないが、たとえば、エステル系重合体、カルボン酸といった高分子材料が用いられ、その含有量は、セラミック粉末100重量部に対して、好ましくは0.25〜1.5重量部、さらに好ましくは0.5〜1.0質量部含有される事が好ましい。
可塑剤としては、特に限定はないが、例えば、フタル酸ベンジルブチル(BBP)などのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。本実施形態では、好ましくは、アジピン酸ジオクチル(DOA)、フタル酸ブチルブチレングリコール(BPBG)、フタル酸ジドデシル(DDP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ベンジルブチル(BBP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、セバシン酸ジブチルなどが用いられる。なかでも、フタル酸ジオクチル(DOP)が特に好ましい。可塑剤の含有量は、有機ビヒクル中のバインダ100重量部に対して、10〜200重量部、さらに好ましくは50〜100重量部で含有されることが望ましい。
帯電除剤としては、特に限定はないが、例えば、イミダゾリン系帯電除剤などが用いられ、その含有量は、セラミック粉末100重量部に対して0.1〜0.75重量部、さらに好ましくは0.25〜0.5重量部で含有されることが好ましい。
余白パターン層用ペーストは、上記各成分を、ボールミルなどで混練し、スラリー化することにより得ることができる。
次いで、図2(C)に示すように電極層12a間の余白部分に印刷された余白パターン層16は乾燥される。余白パターン層16は、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下で乾燥される。なお、余白パターン層用ペーストに用いられる溶剤として、ターピニルアセテートを使用した場合には、乾燥温度は、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下と比較的高温で乾燥することができる。
次に、以上のような、所定パターンの電極層12aと余白パターン層16とが表面に形成されたグリーンシート10aを複数積層して、グリーンチップを作製する。そして、このグリーンチップについて、脱バインダ工程、焼成工程、必要に応じて行われるアニール工程を経て形成された、焼結体で構成されるコンデンサ素体4に、外部電極用ペーストを印刷または転写して焼成し、外部電極6,8を形成して、積層セラミックコンデンサ2が製造される。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係る電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、多層セラミック基板などにも適用できることは勿論である。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
まず、下記の各ペーストを準備した。
誘電体ペースト
セラミック粉末としての平均粒径が0.5μmのBaTiO系セラミック粉末を準備した。次いで、このセラミック粉末100重量部に対して、有機バインダとしてのポリビニルブチラール(PVB)10重量部と、溶媒としてのメタノール150重量部と、可塑剤としてのフタル酸ジオクチル(DOP)5重量部と、をボールミルで混練し、スラリー化して誘電体ペーストを得た。
電極ペースト
導電性粉末としてのNi粉末と、このNi粉末100重量部に対して、有機バインダとしてのエチルセルロース4重量部と、溶剤としてのターピネオール(TPO)46重量部とをボールミルで混練し、スラリー化して電極ペーストを得た。
余白パターン層用ペースト
セラミック粉末として、誘電体ペーストと同じBaTiO系セラミック粉末を準備した。次いで、このセラミック粉末100重量部に対して、有機バインダとしてのエチルセルロース6重量部と、溶媒としてのターピネオール(TPO)69重量部とをボールミルで混練し、スラリー化して余白パターン層用ペーストを得た。
グリーンシートの製造
次いで、上記にて得られた各ペーストを使用して、図2(A)〜図2(C)に示す製造工程により、図2(C)に示すグリーンシートを製造した。
まず、表面にシリコーン系樹脂により剥離処理を施したPETフィルム14上に、上記の誘電体ペーストを、ダイコーターにより塗布し、その後、90℃および10秒の条件で乾燥することにより、グリーンシート10aを形成した。グリーンシート10aは、乾燥時の膜厚が2.5μmとなるように形成した。
次いで、グリーンシート10a上に、上記の電極ペーストを、スクリーン印刷機により印刷し、その後、乾燥することにより、所定パターンを有する電極層12aを形成した。本実施例では、電極層12aの乾燥は乾燥時間を2分、乾燥温度を表1に示す各温度とし、乾燥温度の異なる試料1〜7を作製した。なお、電極層12aは、乾燥時の膜厚が1.3μmとなるように形成した。
そして、グリーンシート10a上の電極層12aが形成されていない部分に、上記の余白パターン層用ペーストを、スクリーン印刷機により印刷し、その後、60℃および2分の条件で乾燥することにより、余白パターン層16を形成し、図2(C)に示すような電極層12aおよび余白パターン層16が形成されたグリーンシートを得た。余白パターン層16の印刷には、上記電極ペーストを印刷する際に使用したパターンと、相補的なパターンとなっているスクリーン製版を使用し、余白パターン層16は、乾燥時の膜厚が電極層12aと同じ厚みとなるように形成した。
なお、上記にて得られた電極層12aおよび余白パターン層16が形成されたグリーンシートの試料1〜7について、後に詳述するように、滲み占有率、シート剥離強度および剥離不良率を測定した。
積層セラミックコンデンサの製造
次に、上記にて作製した電極層12aおよび余白パターン層16が形成されたグリーンシートから支持シートであるPETフィルム14を剥離し、PETフィルム14を剥離したグリーンシートを積層した後に、最外に保護層を形成し圧着して、積層体を形成した。そして、この積層体を所定サイズに切断して、グリーンチップを作製した。
次いで、上記にて作製したグリーンチップについて、次に示す条件で、脱バインダ処理、焼成およびアニール(熱処理)を行って、チップ形状の焼結体を作製した。すなわち、脱バインダ処理は、温度280℃および12時間の条件で、焼成は、還元雰囲気中、1300℃および2時間の条件で、アニールは、温度900℃および9時間の条件で行った。
次いで、チップ形状の焼結体の端面をサンドブラストにて研磨したのち、銅ペーストを端部に塗布し、その後、N+H中にて800℃および30分の条件で端子電極の焼き付けを行うことにより外部電極を形成し、図1に示す構成の積層セラミックコンデンサのサンプルを得た。得られたコンデンサの試料1〜7について、ショート不良率の測定を行った。
滲み占有率の測定
上記にて作製した電極層および余白パターン層が形成されたグリーンシートの試料1〜7について、滲み占有率の測定を、以下に示す方法により行った。
まず、上記にて作製した電極層および余白パターン層が形成されたグリーンシートからPETフィルムを剥離し、グリーンシートの電極層が形成された部分の反対側表面(PETフィルムと接触していた面)について、SEM写真を撮影した。SEM写真の撮影は、走査型電子顕微鏡(日本電子製の品番JSM・6340F)を使用し、加速電圧5.0kV、視野100μm×100μm、倍率1000倍の条件で行った。
次いで、得られたSEM写真の撮影領域を、白色側から黒色側まで、その黒色度に応じて、黒色度0〜黒色度255の256段階に分けた。次いで、黒色側の領域である黒色度176〜黒色度255となった領域(合計80領域)の面積比を求め、これを滲み占有率とした。本実施例では、滲み占有率は、20%以下であることが望ましく、好ましくは10%以下である。結果を表1に示す。
また、図3(A)および図3(B)に測定の結果得られたSEM写真を、併せて示す。ここにおいて、図3(A)は、滲み占有率が7.5%である実施例の試料のSEM写真であり、図3(B)は、滲み占有率が25%である比較例の試料のSEM写真である。なお、図中の黒色部分が滲み部分である。図3(A)と図3(B)とを比較することにより、比較例の試料と比較して、実施例の試料には、黒色の滲み部分が明らかに少ないことが確認できる。
シート剥離強度の測定
シート剥離強度(単位は、g・f)の測定は、上記にて作製した電極層および余白パターン層が形成されたグリーンシートの試料1〜7について、幅87mmのPET付グリーンシートの端(剥離のきっかけを作るのりしろ部分)にロードセルを粘着テープでつけて、上に移動させながら荷重(負荷)を計ることにより行った。剥離強度を小さくすることにより、グリーンシートをPETフィルムから良好に剥離することができる。したがって、剥離強度は小さいほうが好ましい。本実施例では、剥離強度は、6g・f未満であることが好ましく、より好ましくは5.2g・f以下である。結果を表1に示す。
剥離不良率の測定
剥離不良率の測定は、上記にて作製した電極層および余白パターン層が形成されたグリーンシートの試料1〜7について、以下に示す方法により行った。
まず、各試料100枚のグリーンシートサンプルを準備した。そして、準備したグリーンシートサンプルからPETフィルムを剥離し、剥離不良の発生の有無を評価し、100枚のグリーンシートサンプルに対する、剥離不良の発生したサンプル数を求め、剥離不良率を算出した。剥離不良率は、低いほうが好ましい。結果を表1に示す。
ショート不良率の測定
ショート不良率の測定は、上記にて作製した積層セラミックコンデンサの試料1〜7について、以下に示す方法により行った。
まず、各試料200個のコンデンササンプルについて、絶縁抵抗計(HEWLETT PACKARD社製 E2377Aマルチメータ)を用いて25℃においてDC10Vを60秒間印加した後の絶縁抵抗値を測定した。測定の結果、絶縁抵抗値が10Ω以下となった試料をショート不良とし、200個のコンデンササンプルに対する、ショート不良が発生したサンプル数を求め、ショート不良率を算出した。ショート不良率は、低いほうが好ましい。結果を表1に示す。
実施例2
電極ペーストを作製する際に、溶剤として、ターピネオール(TPO)の代わりに、ターピニルアセテート(TPA)を使用し、電極層の乾燥温度を、表2に示す各温度とした以外は、実施例1と同様にして、電極層および余白パターン層の形成されたグリーンシート、および積層セラミックコンデンサの試料8〜12を作製した。
作製した試料8〜12について、滲み占有率、シート剥離強度、剥離不良率およびショート不良率を測定した。結果を表2に示す。
評価1
表1に、電極ペーストの溶剤としてターピネオール(TPO)を使用した実施例1の試料1〜7の乾燥温度、滲み占有率、シート剥離強度、剥離不良率およびショート不良率を示す。
Figure 0004073424
表1より、電極層の乾燥温度を、75℃未満とした実施例の試料4〜7は、滲み占有率が20%以下となり、シート剥離強度、剥離不良率およびショート不良率がいずれも低くなり、良好な結果となった。なかでも、乾燥温度を60℃以下とした試料6,7は、剥離不良率およびショート不良率のいずれも0%となり、特に良好な結果となった。
一方、電極ペーストの乾燥温度を、75℃以上とした比較例の試料1〜3は、滲み占有率が、いずれも20%を超え、シート剥離強度、剥離不良率およびショート不良率に劣る結果となった。
この結果より、電極ペーストの溶剤としてターピネオール(TPO)を使用した場合においては、電極層の乾燥温度を、好ましくは75℃未満に制御することにより、滲み占有率を低下させることができ、シート剥離強度、剥離不良率およびショート不良率を改善できることが確認できた。
評価2
表2に、電極ペーストの溶剤としてターピニルアセテート(TPA)を使用した実施例2の試料8〜12の乾燥温度、滲み占有率、シート剥離強度、剥離不良率およびショート不良率を示す。
Figure 0004073424
表2より、電極ペーストの乾燥温度を、90℃以下とした実施例の試料9〜12は、滲み占有率がいずれも20%以下となり、シート剥離強度が低く、また、剥離不良率およびショート不良率がいずれも0%となり、良好な結果となった。
一方、電極ペーストの乾燥温度を、100℃とした比較例の試料8は、滲み占有率が20%を超え、シート剥離強度、剥離不良率およびショート不良率に劣る結果となった。
この結果より、電極ペーストの溶剤としてターピニルアセテート(TPA)を使用した場合においては、電極層の乾燥温度を、好ましくは90℃以下に制御することにより、滲み占有率を低下させることができ、シート剥離強度、剥離不良率およびショート不良率を改善できることが確認できた。
すなわち、電極ペーストの溶剤としてターピニルアセテート(TPA)を使用した場合においては、ターピネオール(TPO)を使用した場合と比較して、乾燥温度を比較的高くした場合においても滲み占有率を低く抑えることができることが確認できた。
総合評価
図4〜図6に、上記の試料1〜12について、滲み占有率とシート剥離強度との関係(図4)、滲み占有率と剥離不良率との関係(図5)および滲み占有率とショート不良率との関係(図6)をグラフ化して示した。
図4より、滲み占有率が低くなると、シート剥離強度も低くなり、グリーンシートがPETフィルムから剥離し易くなる傾向にあることが確認できる。
また、図5より、滲み占有率が20%を超える範囲においては、剥離不良率は、滲み占有率の低下に伴い、低くなっていく傾向にあり、滲み占有率が20%以下となると、剥離不良率は、0%となることが確認できる。
さらに、図6より、ショート不良率は、滲み占有率の低下に伴い、低くなっていく傾向にあり、滲み占有率が20%以下となると、ショート不良率は1%以下と低くすることができ、また、滲み占有率が15.5%以下となると、ショート不良率は0%となることが確認できる。
この結果より、シート剥離強度、剥離不良率およびショート不良率を改善するためには、滲み占有率を低く抑える必要があり、滲み占有率は、20%以下とすることが望ましく、好ましくは18%以下、特に10%以下とすることが好ましいことが確認できた。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図である。 図2(A)〜図2(C)は本発明の一実施形態に係る電極層の形成方法を示す要部断面図である。 図3(A)は本発明の実施例におけるグリーンシートのSEM写真、図3(B)は比較例におけるグリーンシートのSEM写真である。 図4は滲み占有率とシート剥離強度との関係を示すグラフである。 図5は滲み占有率と剥離不良率との関係を示すグラフである。 図6は滲み占有率とショート不良率との関係を示すグラフである。
符号の説明
2… 積層セラミックコンデンサ
4… コンデンサ素体
6,8… 端子電極
10… 誘電体層
10a… グリーンシート
12… 内部電極層
12a… 電極層
14… キャリアシート(支持シート)
16… 余白パターン層

Claims (4)

  1. 支持シート上にグリーンシートを形成する工程と、
    前記グリーンシートの表面に、電極ペーストを使用して、電極層を形成する工程と、を有する電子部品の製造方法であって、
    前記グリーンシートの前記電極層が形成された部分の反対側表面における、SEM観察による黒色側の滲み占有率が、20%以下となるように、前記グリーンシートの表面に形成された前記電極層を乾燥することを特徴とする電子部品の製造方法。
  2. 前記グリーンシート上に形成した前記電極層を、75℃未満の温度で乾燥する請求項1に記載の電子部品の製造方法。
  3. 前記電極ペーストには、溶剤が含まれており、
    前記溶剤が、ターピニルアセテートを主成分として含有する請求項1に記載の電子部品の製造方法。
  4. 前記グリーンシート上に形成した電極層を、90℃以下の温度で乾燥する請求項3に記載の電子部品の製造方法。

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