JP4877303B2 - 導電性ペーストおよび電子部品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、積層セラミック電子部品の内部電極を形成するために用いる導電性ペーストに関する。また、本発明は該導電性ペーストを用いて内部電極パターン層を形成する工程を含む電子部品の製造方法に関する。
近年、電子機器の小型化、軽量化が進んできている。これに伴い、その電子機器に使用される積層セラミック電子部品においても、より一層の小型化・高容量化が進められている。
積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサを小型化・高容量化するために最も効果的な方法は、内部電極と誘電体層を双方ともに可能な限り薄くし(薄層化)、かつそれらを可能な限り多く積層する(多層化)ことである。
積層セラミックコンデンサは、チタン酸バリウムなどに代表されるセラミック粉末とバインダを主成分とするセラミックグリーンシートに、内部電極形成用の導電性ペーストを所定パターンで印刷して積層した後、同時焼成して一体焼結させ、最後に外部電極を形成して製造される。
内部電極形成用の導電性ペーストとしては、有機バインダを溶剤に溶解させた有機ビヒクル中に導電性粉末を分散させたものが用いられる。有機ビヒクル中の有機バインダとしては、たとえばエチルセルロースなどが使用され、有機ビヒクル中の溶剤としては、ターピネオールなどが使用されてきた。
しかしながら、ターピネオールを溶剤に使用した導電性ペーストをセラミックグリーンシート上に印刷すると、にじみ等の問題を発生することがあり、所定膜厚の薄層化された電極パターンを形成することができなかった。
また、ターピネオールを溶剤に使用した導電性ペーストを、ブチラール樹脂を有機バインダとしたセラミックグリーンシートと組み合わせて使用した場合に、導電性ペースト中の溶剤がセラミックグリーンシート中の有機バインダを膨潤または溶解させる、いわゆる「シートアタック」現象が生じる。
こうしたシートアタック現象が生じると、導電性ペーストを印刷後にセラミックグリーンシートをPETフィルムなどのキャリアシートから剥離する際に、セラミックグリーンシートが剥がれにくくなる。セラミックグリーンシートが剥がれにくくなると、この影響を受けてセラミックグリーンシートにしわや穴、亀裂などが発生し、積層工程で正常な積層体が得られない。正常な積層体が得られないと、最終物たる積層セラミック電子部品に、ショート不良、耐電圧不良(IR劣化)や、誘電体層と内部電極層との間に層間剥離現象(デラミネーション)が発生し、歩留まりの低下を招いていた。
そこで近年、このシートアタック現象を改善するための方策がいくつか提案されている。たとえば、特許文献1,2では、内部電極を形成するための導電性ペースト用の溶剤として、ブチラールとの相溶性が比較的に低い溶剤を使用することが提案されている。具体的には、特許文献1ではジヒドロターピネオールを用いた導電性ペーストが、特許文献2ではジヒドロターピニルアセテートを用いた導電性ペーストがそれぞれ提案されている。
しかしながら、これらジヒドロターピネオールやジヒドロターピニルアセテートを溶剤に用いても、少なからずシートアタック現象が起こってしまい、結果として、セラミックグリーンシートの厚みバラツキが発生していた。そして、この厚みバラツキに起因して、ショート不良、耐電圧不良(IR劣化)が悪化し、さらには、デラミネーションが発生してしまうという問題があった。そのため、こうした従来の導電性ペーストでは、積層セラミックコンデンサの更なる小型化・高容量化に限界があった。
特許文献3では、誘電体ペーストに含まれる有機バインダとしてポリビニルブチラール樹脂を使用し、導電性ペーストに含まれる有機バインダとしてエチルセルロースを使用している。
また、グリーンシートに含まれる有機バインダ樹脂と、導電性ペーストに含まれるエチルセルロースとの接着性を向上させるために、特許文献4および5では、導電性ペーストにロジン等の粘着付与剤を含有させている。
特開平9−17687号公報 特許2976268号公報 特開2005−243561号公報 特開平5−90069号公報 特開2004−186339号公報
上記のようにグリーンシートに含まれるバインダ樹脂と、導電性ペーストに含まれるバインダ樹脂とを互いに非相溶とすることで、「シートアタック」については改善される。しかし、互いに非相溶であるため、層間の接着性が低く、グリーンシートの積層時に位置ズレやデラミネーションを起こすことが多い。層間接着性を改善するため、粘着付与剤を増量することが考えられるが、粘着付与剤による接着性の向上効果は小さく、十分な接着強度を得るためには大量、過剰に粘着付与剤を配合する必要がある。この結果、ハンドリング性の低下を招き、また有機成分が増量するため、脱バインダに要する時間が長くなり、さらにクラックが多発することがある。
本発明の目的は、セラミックグリーンシートの厚みを薄層化し、セラミックグリーンシートの強度が弱くなった場合、さらには、グリーンシートおよび内部電極パターン層に含まれるそれぞれのバインダが非相溶の組み合わせである場合であっても、グリーンシートの積層性および接着性を良好にし、グリーンシートの積層時の位置ズレやデラミネーション、焼成後のクラックや層間剥離現象などを有効に防止することができる積層セラミック電子部品の導電性ペーストを提供することである。また、本発明は、該導電性ペーストを用いて内部電極パターン層を形成する工程を含む電子部品の製造方法をも提供する。
本発明者等は、内部電極パターン層およびグリーンシートに含まれるそれぞれのバインダが互いに非相溶である場合、導電性ペーストに、沸点が特定範囲にある溶剤を用いることで、内部電極パターン層およびグリーンシートの接着性を向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、上記課題を解決する本発明は、下記事項を要旨として含む。
(1)(A)セルロース樹脂、アクリル樹脂、及びブチラール樹脂からなる群から選択されるバインダと、
(B)ガムロジン、重合ロジン、テルペンフェノール、脂環族石油樹脂およびロジングリセリンエステルからなる群から選択される粘着付与剤と、
(C)常圧における沸点が300℃以上の溶剤と、
(D)導電性粉末と、
(E)セラミック粉末とを含む導電性ペースト。
(2)前記溶剤(C)がフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸アジペート、燐酸トリクレシル、ブチルフタリルブチルグリコレートからなる群から選択される(1)に記載の導電性ペースト。
(3)前記導電性粉末の比表面積換算粒子径が0.5μm以下である(1)または(2)に記載の導電性ペースト。
(4)前記セラミック粉末(E)の比表面積換算粒子径が0.01〜0.50μmである(1)〜(3)の何れかに記載の導電性ペースト。
(5)前記粘着付与剤(B)の含有量が、前記導電性粉末100重量部に対して0.1〜4.5重量部未満である(1)〜(4)の何れかに記載の導電性ペースト。
(6)前記溶剤(C)の含有量が、前記導電性粉末100重量部に対して0.2〜13.5重量部未満である(1)〜(5)の何れかに記載の導電性ペースト。
(7)前記バインダ(A)と粘着付与剤(B)との合計含有量が、前記導電性粉末100重量部に対して2重量部超9重量部未満である(1)に記載の導電性ペースト。
(8)前記バインダ(A)と前記粘着付与剤(B)との合計100重量%に対する前記粘着付与剤(B)の含有比率が、5〜50重量%である(1)に記載の導電性ペースト。
(9)前記溶剤(C)の含有量が、前記バインダ(A)と前記粘着付与剤(B)との合計100重量部に対して、10〜150重量部である(1)に導電性ペースト。
(10)セラミック粉末とバインダとを含むセラミックグリーンシートと、所定パターンの内部電極パターン層と、を交互に複数重ねて、グリーンセラミック積層体を得る工程を有する積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記内部電極パターン層を、(1)〜(9)の何れかに記載の導電性ペーストを、セラミックグリーンシート上に塗工して形成する工程を含む積層セラミック電子部品の製造方法。
本発明によれば、内部電極パターン層およびグリーンシートに含まれるそれぞれのバインダが互いに非相溶である場合であっても、内部電極パターン層およびグリーンシートの接着性を向上することができる。このため、グリーンシートの積層時に位置ズレやデラミネーション、焼成後のクラックや層間剥離現象などを有効に防止することができる。また、沸点が特定範囲にある溶剤は他の成分に比して比較的少量でも上記効果が奏されるため、導電性ペーストのハンドリング性や、ペースト塗布後にグリーンシートのハンドリング性が良好である。さらに、有機成分の増量が少ないため、脱バインダが容易になり、クラックの発生を防止できる。
以下、本発明を、その最良の形態を含めて、図面に示す実施形態を参照し詳細に説明する。
本発明の導電性ペーストを用いて製造される積層セラミック電子部品は、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、積層セラミックインダクタ、積層セラミックLC部品、多層セラミック基板等が例示される。
本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。 図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図、図2(A)〜図2(C)は図1に示す積層セラミックコンデンサの製造工程の一部を示す要部断面図、図3(A)および図3(B)は、図2(A)〜(C)に示す製造工程の続きを示す要部断面図である。
本実施形態では、積層セラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを例示して説明する。
積層セラミックコンデンサ
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素体10を有する。このコンデンサ素体10の両側端部には、素体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4,4が形成してある。内部電極層3は、各側端面がコンデンサ素体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4,4は、コンデンサ素体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
コンデンサ素体10の外形や寸法には特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、通常、外形はほぼ直方体形状とし、寸法は通常、縦(0.4〜5.6mm)×横(0.2〜5.0mm)×高さ(0.2〜1.9mm)程度とすることができる。
誘電体層2は、後述する図2(A)〜図2(C)に示すセラミックグリーンシート30が焼成されて形成され、その材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。誘電体層2の厚みは、本実施形態では、好ましくは1μm以下に薄層化されている。
内部電極層3は、後述する図2(B)、図2(C)に示す所定パターンの内部電極パターン層40を焼成して形成される。内部電極層3の厚みは、本実施形態では、好ましくは1μm以下に薄層化されている。
外部電極4の材質は、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。外部電極4の厚みも特に限定されないが、通常10〜50μm程度である。
導電性ペースト
内部電極層3は、導電性ペーストから形成される。導電性ペーストは、(A)バインダと、(B)粘着付与剤と、(C)常圧における沸点が300℃以上の溶剤と、(D)導電性粉末と、(E)セラミック粉末とを含む。
(A)バインダ
導電性ペーストのバインダ(A)は、セルロース樹脂、アクリル樹脂及びブチラール樹脂からなる群から選択される。セルロース樹脂、アクリル樹脂及びブチラール樹脂としては、電子部品の製造に用いられる誘電体ペーストや導電性ペーストに用いられる各種の樹脂が特に制限されることなく用いられる。
導電性ペーストのバインダ(A)としては、電子部品製造の際に用いられる誘電体ペーストに含まれるバインダと非相溶性の樹脂が好ましく用いられる。誘電体ペーストに含まれるバインダとしては、アクリル樹脂やブチラール樹脂が汎用されている。したがって、誘電体ペーストのバインダがアクリル樹脂の場合、導電性ペーストのバインダ(A)としては、セルロース樹脂あるいはブチラール樹脂が好ましく用いられる。また、誘電体ペーストのバインダがブチラール樹脂の場合、導電性ペーストのバインダ(A)としては、セルロース樹脂あるいはアクリル樹脂が好ましく用いられる。
さらに、導電性ペーストのバインダとしては、上記に加え、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン等が配合されていてもよい。
(B)粘着付与剤
導電性ペーストの粘着付与剤(B)は、ガムロジン、重合ロジン、テルペンフェノール、脂環族石油樹脂およびロジングリセリンエステルからなる群から選択される。これら粘着付与剤としては、従来より汎用の各種粘着付与剤が特に制限されることなく用いられる。これらの中でも、本発明においては、テルペンフェノール、脂環族石油樹脂が好ましく用いられる。上記粘着付与剤は、一種単独で、または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(C)常圧における沸点が300℃以上の溶剤
導電性ペーストの溶剤(C)は、常圧における沸点が300℃以上であり、好ましくは335〜500℃、さらに好ましくは370〜500℃である。溶剤の沸点が低すぎる場合には、導電性ペーストの塗布後、乾燥を行うと溶媒が揮発してしまい、内部電極パターン層とグリーンシートとの接着性が低下し、接着不良や層間剥離を引き起こす可能性がある。このような溶剤(C)としては、具体的には、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸アジペート、ブチルフタリルブチルグリコレート、燐酸トリクレシルが用いられ、さらに好ましくはフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ベンジルブチルが用いられる。上記溶剤は、一種単独で、または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において溶剤として用いられるフタル酸ジオクチル等は、一般に樹脂の可塑剤として使用されている。本発明においても可塑剤としての作用を発現しているものと考えられるが、この作用に加えて、上記のバインダ(A)および粘着付与剤(B)を膨潤または溶解し、均一なペーストを形成する作用を有し、また乾燥後にも内部電極パターン層に残留し、グリーンシートとの接着性の向上に寄与する。
(D)導電性粉末
導電性ペーストに含まれる導電体粉末(D)としては、特に限定されないが、Cu、Niおよびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種で構成してあることが好ましく、より好ましくはNiまたはNi合金、さらにはこれらの混合物で構成される。
NiまたはNi合金としては、Mn、Cr、CoおよびAlから選択される少なくとも1種の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P、Fe、Mgなどの各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。
このような導電体粉末は、球状、リン片状等、その形状に特に制限はなく、また、これらの形状のものが混合したものであってもよい。また、導電体粉末の比表面積換算粒子径は、好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.05〜0.2μmの範囲にある。これにより、確実に薄層化を実現することができる。
(E)セラミック粉末
導電性ペーストには、さらに、誘電体ペーストに含まれるセラミック粉末と同じセラミック粉末である共材が含まれる。導電性ペーストが共材を有していることで、内部電極パターン層に含まれる導電体粉末と、グリーンシートに含まれるセラミック粉体との、焼成時における収縮率の違いを緩和することができる。その結果、焼結体におけるクラックの発生を抑制することができる。
このようなセラミック粉末(E)は、その形状に特に制限はなく、また、各種の形状のものが混合したものであってもよい。また、セラミック粉末(E)の比表面積換算粒子径は、好ましくは0.01〜0.5μm、さらに好ましくは0.01〜0.1μmの範囲にある。これにより、確実に薄層化を実現することができる。
その他の成分
導電性ペーストには、上記成分に加えて、前記以外のバインダ、粘着付与剤、溶剤、導電性粉末、セラミック粉末が含まれていてもよい。また、導電性ペースト調整時に各成分を溶解ないしは分散するための分散媒を用いてもよい。導電性ペーストに用いる分散媒として、セラミックグリーンシート中に含まれるバインダを膨潤または溶解させない分散媒が好ましい。セラミックグリーンシートに含まれるバインダがポリビニルブチラール樹脂である場合には、導電性ペーストに用いる分散媒としては、たとえば、α−ターピニルアセテート、イソボニルアセテート、イソボニルプロピオネート、イソボニルブチレート、イソボニルイソブチレート、ジヒドロターピニルアセテート、ジヒドロターピニルメチルエーテル、ターピニルメチルエーテル、l−ジヒドロカルビルアセテートなどが挙げられる。
配合比
導電性ペーストにおける、(A)バインダと、(B)粘着付与剤と、(C)常圧における沸点が300℃以上の溶剤と、(D)導電性粉末と、(E)セラミック粉末との配合比率は特に限定はされないが、これらの含有量および添加比率を適度な範囲で設計することにより、良好なハンドリング性およびシート乾燥性および脱バインダ性、積層体の接着性を保つことができる。好ましい配合比を以下に示す。
導電性ペーストにおける導電体粉末(D)の含有量は、好ましくは30〜60重量%、より好ましくは40〜55重量%含まれる。導電体粉末(D)が多すぎる場合には、塗料化が困難であり、ペーストの塗工性が低下する。一方、導電体粉末(D)が少なすぎる場合には、焼成後の内部電極が断線するなどのおそれがある。
バインダ(A)の含有量は、導電性粉末(D)100重量部に対して、好ましくは1〜8.5重量部、好ましくは1〜6重量部である。バインダ(A)が多すぎる場合には、脱バインダ性が悪化し、クラックやラミネーションなどの内部構造欠陥の原因となるおそれがあり、一方少なすぎる場合にはペースト粘度が低く、印刷性が悪化するおそれがある。
粘着付与剤(B)の含有量は、導電性粉末(D)100重量部に対して、好ましくは0.1〜4.5重量部、好ましくは0.5〜4.0重量部である。粘着付与剤(B)が多すぎる場合には、ペースト粘度が低く、印刷性が悪化するおそれがあり、一方少なすぎる場合には接着力が不足し、ラミネーション不良などの積層体不良が多発するおそれがある。
溶剤(C)の含有量は、導電性粉末(D)100重量部に対して、好ましくは0.2〜13.5重量部、好ましくは0.5〜9重量部である。溶剤(C)が多すぎる場合には、印刷シートの乾燥性が悪化するおそれがあり、一方少なすぎる場合には接着力が不足し、ラミネーション不良などの積層体不良が多発するおそれがある。
さらに、本発明の導電性ペーストにおいて、バインダ(A)と粘着付与剤(B)との合計含有量は、導電性粉末100重量部に対して2重量部超9重量部未満、好ましくは2.5〜7重量部である。これにより、導電性ペーストの良好なハンドリング性と良好な脱バインダ性が保たれる。バインダ(A)と粘着付与剤(B)との合計含有量が少なすぎると、ペースト粘度が低すぎるためにスクリーン印刷ができない傾向となる。また、バインダ(A)と粘着付与剤(B)との合計含有量が多すぎると脱バインダ性が悪くなり、焼結体にクラックが発生する傾向となる。
バインダ(A)と粘着付与剤(B)との合計100重量%に対する前記粘着付与剤(B)の含有比率は、好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜50重量%である。これにより、導電性ペーストの良好なハンドリング性と良好な脱バインダ性が保たれる。粘着付与剤(B)の含有比率が少なすぎると、ペースト粘度が低すぎるためにスクリーン印刷ができない傾向となる。また、粘着付与剤(B)の含有比率が多すぎると脱バインダ性が悪くなり、焼結体にクラックが発生する傾向となる。
溶剤(C)の含有量は、バインダ(A)と粘着付与剤(B)との合計100重量部に対して、好ましくは10〜150重量部、さらに好ましくは10〜100重量部である。バインダ(A)、粘着付与剤(B)および溶剤(C)を併用して含有させることにより、積層体の接着力を格段に高めることが可能となる。また、溶剤(C)を用いているため、バインダ(A)、粘着付与剤(B)は少量であっても接着性が高められる。このため、バインダ(A)、粘着付与剤(B)の添加量を減らすことが可能となり、導電性ペーストの良好な脱バインダ性およびハンドリング性、積層体の接着性を実現することができる。これにより、印刷性不良、積層体不良、焼結体の不良の発生を一層確実に抑制できる。
また、共材として用いるセラミック粉末(E)は、導電性ペースト中に、導電性粉末(D)100重量部に対して、好ましくは5〜50重量部で含まれる。共材量が少なすぎると、導電性粉末の焼結抑制効果が低下し、焼成後の内部電極層3のライン性(連続性)が悪化し、見かけの誘電率が低下する。一方で、共材量が多すぎると、焼成後の内部電極層3のライン性が悪化しやすくなり、見かけの誘電率も低下する傾向にある。
導電性ペーストは、上記各成分を、ボールミルなどで混練し、スラリー化することにより得ることができる。
積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1の製造方法の一例を説明する。
誘電体ペーストの準備
(1)まず、焼成後に図1に示す誘電体層2を構成することになるセラミックグリーンシートを製造するために、誘電体ペーストを準備する。
本実施形態では、誘電体ペーストは、セラミック粉末と有機ビヒクルとを混練して得られる有機溶剤系ペーストで構成される。
セラミック粉末としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、混合して用いることができる。セラミック粉末は、通常、平均粒子径が2.0μm以下、好ましくは0.1〜0.8μm程度の粉体として用いられる。なお、きわめて薄いセラミックグリーンシートを形成するためには、セラミックグリーンシート厚みよりも細かい粉体を使用することが望ましい。
有機ビヒクルに用いられる有機バインダとしては、ブチラール樹脂、アクリル樹脂などが用いられる。有機バインダは、セラミック粉体100重量部に対して、好ましくは5重量部超10重量部未満、より好ましくは6〜9重量部含有される。有機バインダの含有量が少なすぎると、シート積層性(スタック性)が悪化する傾向にあり、多すぎると、脱バインダ工程において完全に除去されず、焼結体にクラックが多く発生する傾向にある。
有機ビヒクルに用いられる有機溶剤は、特に限定されるものではなく、メチルエチルケトン、ブチルカルビトール、アセトン、トルエンなどが用いられる。
誘電体ペースト中の各成分の含有量は、特に限定されるものではなく、たとえば、1〜50重量%の溶剤を含むように、誘電体ペーストを調製することができる。
誘電体ペースト中には、必要に応じて、各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されていてもよい。誘電体ペースト中に、これらの添加物を添加する場合には、総含有量を、約10重量%以下にすることが望ましい。
可塑剤としては、フタル酸ジオクチルやフタル酸ベンジルブチルなどのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。可塑剤を配合する場合の塗料中における可塑剤の重量割合は、特に限定されないが、バインダ100重量部に対して、好ましくは40〜70重量部である。可塑剤が少なすぎると、グリーンシートの伸びおよび可撓性が悪化する傾向にあり、多すぎると、グリーンシート表面に可塑剤が滲み出し、取り扱いが困難である。
誘電体ペーストは、上記各成分を、ボールミルなどで混練し、スラリー化することにより得ることができる。
セラミックグリーンシートの形成
(2)次に、この誘電体ペーストを用いて、ワイヤーバーコータやドクターブレード法などにより、図2(A)に示すように、支持体としてのキャリアシート20上に、好ましくは1μm以下程度の厚みで、セラミックグリーンシート30を形成する。
キャリアシート20としては、たとえばPETフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、セラミックグリーンシート30が形成される面には、離型処理(シリコーンなどのコーティング)がしてあるものが好ましい。キャリアシート20の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜100μmである。
セラミックグリーンシート30は、キャリアシート20に形成された後に乾燥される。セラミックグリーンシート30の乾燥温度は、好ましくは50〜100℃であり、乾燥時間は、好ましくは1〜20分である。
乾燥後のセラミックグリーンシート30の厚みは、乾燥前の厚みから5〜25%収縮する。本実施形態では、乾燥後のセラミックグリーンシート30の厚みが、好ましくは0.4〜0.8μm、さらに好ましくは0.4〜1.0μmとなるように形成する。近年望まれている薄層化の要求に応えるためである。なお、グリーンシートの厚みが厚すぎると、内部電極パターン層の厚みによっては、1層あたりのバインダ樹脂含有量が多くなってしまい、焼成後にクラックなどの内部構造欠陥が発生する傾向にある。
導電性ペーストの準備
(3)次に、焼成後に図1に示す内部電極層3を構成することになる内部電極パターン層40を、上記のセラミックグリーンシートの表面に形成するために、導電性ペーストを準備する。導電性ペーストは、前記したように、(A)バインダと、(B)粘着付与剤と、(C)常圧における沸点が300℃以上の溶剤と、(D)導電性粉末と、(E)セラミック粉末とを、ボールミルなどで混練し、スラリー化することにより得ることができる。
内部電極パターン層の形成
(4)次に、図2(B)に示すように、キャリアシート20上に形成されたセラミックグリーンシート30の表面に、導電性ペーストを用いて、所定パターンの内部電極パターン層40を形成する。
内部電極パターン層40の形成方法は、層を均一に形成できる方法であれば特に限定されないが、本実施形態では、上記の導電性ペーストを用いたスクリーン印刷法が用いられる。
内部電極パターン層40の厚さは、好ましくは0.4〜1μmである。内部電極パターン層40の厚さが厚すぎると、グリーンシートの厚みによっては、1層あたりのバインダ樹脂含有量が多くなってしまい、焼成後にクラックが発生する傾向にある。さらに、積層数を減少せざるをえなくなり取得容量が少なくなり、高容量化しにくくなる。一方、厚みが薄すぎると均一に形成することが困難であり、電極途切れが発生しやすくなる。
内部電極パターン層40の厚さは、現状の技術では前記範囲の程度であるが、電極の途切れが生じない範囲で薄い方がより望ましい。
その後、内部電極パターン層40は、必要に応じて乾燥される。乾燥温度は、特に限定されないが、好ましくは50〜120℃であり、乾燥時間は、好ましくは1〜15分である。
余白パターン層の形成
(5)本実施形態では、セラミックグリーンシートの表面に、所定パターンの内部電極パターン層40を印刷法で形成した後、またはその前に、図2(B)に示す内部電極パターン層40が形成されていないセラミックグリーンシート30の表面隙間(余白パターン部分50)に、図2(C)に示すように、内部電極パターン層40と実質的に同じ厚みの余白パターン層60を形成する。余白パターン層60の厚さを内部電極パターン層40と実質的に同じ厚みとするのは、実質的に同じでないと段差が生じ、特に多層化した場合に影響が増大するからである。
余白パターン層60の形成方法は、本実施形態では電極段差吸収用印刷ペーストを用いたスクリーン印刷法が用いられる。
本実施形態で用いる電極段差吸収用印刷ペーストとしては、特に限定されないが、上記で作製した誘電体ペーストを用いることが、工程上好ましい。
この電極段差吸収用印刷ペーストは、図2(B)に示す内部電極パターン層40間の余白パターン部分50に印刷される。その後、内部電極パターン層40および/または余白パターン層60は、必要に応じて乾燥される。乾燥温度は、特に限定されないが、好ましくは50〜120℃であり、乾燥時間は、好ましくは1〜15分である。
外層の形成
(6)本実施形態では、上記で作製した所定パターンの内部電極パターン層40と余白パターン層60が表面に形成されたセラミックグリーンシート30を、保護するために、外層32を形成する。すなわち、所定数積層されたセラミックグリーンシート30が、外層32に挟まれる構成となる。外層32は内部電極パターン層40が形成されていないセラミックグリーンシートが1層あるいは複数積層された構成となっている。
外層用グリーンシートは、セラミックグリーンシート30と同様に、外層用誘電体ペーストを用いてキャリアシート20上に形成される。外層用誘電体ペーストとしては、上記で作製した誘電体ペーストを用いてもよいが、バインダ種、バインダ添加量、バインダ重合度などを変えたものを用いてもよい。
積層工程
(7)次に、本実施形態では、図3(A)に示すように、キャリアシート20上に作製された外層32の上に、所定パターンの電極層40と余白パターン層60が表面に形成されたセラミックグリーンシート30をキャリアシート20から剥離して、積層する。
そして、図3(B)に示すように、上記の工程を所望の積層数まで繰り返し、グリーンセラミック積層体を得る。その後、このグリーンセラミック積層体をプレス圧着する。加圧温度は、50〜100℃、加圧力は、3〜25MPaとすることが好ましい。加圧力が大きすぎると積層体が変形し、クラックなどの内部構造欠陥の要因となり、加圧力が小さすぎると、積層体の接着強度が小さくなり、良好な積層体を得ることが困難となる。
グリーンチップの作製、焼成など
(8)得られたグリーンセラミック積層体を所定サイズに切断し、グリーンチップを作製し、脱バインダ工程、焼成工程、必要に応じて行われるアニール工程を経て形成された、焼結体で構成されるコンデンサ素体10に、外部電極用ペーストを印刷または転写して焼成し、外部電極4,4を形成して、積層セラミックコンデンサ1が製造される。
本実施形態で述べた方法により、内部電極パターン層およびグリーンシートに含まれるそれぞれのバインダが互いに非相溶である場合であっても、内部電極パターン層およびグリーンシートの接着性を向上することができる。このため、グリーンシート積層時の位置ズレや層間剥離を防止できる。また、沸点が特定範囲にある溶剤は他の成分に比して比較的少量でも上記効果が奏されるため、導電性ペーストのハンドリング性や、ペースト塗布後にグリーンシートのハンドリング性が良好である。さらに、有機成分の増量が少ないため、脱バインダが容易になり、クラックの発生を防止できる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係る電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、多層セラミック基板などにも適用できることは勿論である。
また、本発明に係る方法により形成されたセラミックグリーンシート30と、内部電極パターン40とが複数積層された積層体ユニットを所定数形成し、さらにこれらの積層体ユニットを積層することで、最終的な積層体を作製しても良い。
さらに、内部電極パターン層を転写法により形成してもよい。
以下、本発明を、以下の実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下の実施例および比較例において、「比表面積換算粒子径」、「印刷性」、「乾燥性」、「接着力」、「グリーン積層体不良」および「焼結体不良」については、次のように評価した。
(比表面積換算粒子径)
導電性粉末およびセラミック粉末の比表面積換算粒子径は、粉末試料の比表面積をBET法により、窒素吸着量から求め、下記式により算出した。
比表面積換算粒子径=6/(ρ×BET比表面積)
ここで、ρは試料の密度であり、Ni粉末の場合には8.902g/cm、BaTiO粉末の場合には6.01g/cmである
(印刷性)
導電性ペーストの印刷性についてはスクリーン印刷可能であるかどうかを判断した。
(乾燥性)
導電性ペーストの乾燥性は、電極パターンが印刷されたシートに、適当な大きさの紙を載せ、紙上に電極パターンが転写しないかどうかを判断した。
(接着力)
グリーンセラミック積層体の接着性は、引っ張り試験機にて、積層体を引っ張り、剥離した時点での強度値を1cm角での積層体の接着強度に換算して求めた。シート接着性は、20N/cm以上が好ましく、さらに好ましくは25N/cm以上とした。結果を表2に示す。
なお、上記の評価は、グリーンセラミック積層体の一方の外層を形成しない状態で行った。すなわち、外層を形成するグリーンシートについてではなく、内部電極パターン層と余白パターン層とが形成されたセラミックグリーンシートについて、グリーンシートの接着強度を評価した。
(グリーン積層体不良)
グリーンセラミック積層体を切断し、その断面を観察して、積層体不良例えば、位置ヅレ、ノンラミネーション、デラミネーション等の内部構造欠陥の有無を評価した。これを10個の試料に対して行った。10個中、欠陥の観察される試料が3個以下であることが好ましく、10個すべてに欠陥が観察されないことがより好ましい。
(焼結体不良)
グリーン積層体不良が見られなかったグリーンセラミック積層体を焼成し、得られた焼結体を切断し、その断面を観察して、積層体不良例えば、クラック、ノンラミネーション、デラミネーション等の内部構造欠陥の有無を評価した。これを10個の試料に対して行った。10個中、欠陥の観察される試料が3個以下であることが好ましく、10個すべてに欠陥が観察されないことがより好ましい。
(合否)
上記の「印刷性」、「乾燥性」、「接着力」、「グリーン積層体不良」および「焼結体不良」において、何れかについて良好な結果が得られていない試料を「×」と評価し、すべての項目において良好な結果が得られた試料を「○」と評価した。
実施例および比較例
誘電体ペーストの作製
まず、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストを作製した。BaTiO系セラミック粉末と、有機バインダとしてのポリビニルブチラール樹脂(PVB)(重合度:800)と、溶剤としてのプロピルアルコール、キシレン、メチルエチルケトン、2−ブトキシエチルアルコール、可塑剤としてのフタル酸ジオクチルを準備した。次に、セラミック粉末100重量部に対して、6重量部のPVBと、150重量部の溶剤と、可塑剤をそれぞれ秤量し、直径2mmのジルコニアボールとともにボールミルで21時間混練し、スラリー化して誘電体ペーストを得た。なお、可塑剤は、ポリビニルブチラール100重量部に対して50重量部添加した。
導電性ペーストの作製
次いで、内部電極パターン層40を形成するための導電性ペーストを作製した。
有機バインダ(A)として、エチルセルロース樹脂、アクリル樹脂及びブチラール樹脂、
粘着付与剤(B)として、ガムロジン、重合ロジン、テルペンフェノール、脂環族石油樹脂およびロジングリセリンエステル、
沸点300℃以上の溶剤(C)として、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ベンジルブチル(BBP)、フタル酸アジペート(DOA)、ブチルフタリルブチルグリコレート(BPBG)、燐酸トリクレシル(TCP)、
沸点が300℃未満の溶剤としてフタル酸ジエチル(DEP)、
導電性粉末(D)としての比表面積換算粒子径が0.1μmのNi粒子、
セラミック粉末(E)としての比表面積換算粒子径が0.03mのBaTiO系セラミック粉末、
分散媒としてのα−ターピニルアセテートを準備した。
これらを表1に記載の量で、ボールミルなどによって混練し、スラリー化して導電性ペーストを得た。なお、分散媒は導電性粉末(D)100重量部に対して、80重量部加えた。
積層セラミックチップコンデンサ試料の作製
次いで、上記にて作製した誘電体ペーストと、導電性ペーストと、を用い、以下のようにして、さらに、図1に示す積層セラミックチップコンデンサ1を製造した。
まず、支持体としてのPETフィルムの離型処理された面上に、誘電体ペーストをワイヤーバーコータにより、所定厚みで塗布し、乾燥することで、グリーンシートを作製した。
次に、得られたグリーンシートの上に、導電性ペーストを用いたスクリーン印刷法によりパターンを形成し、85℃〜95℃で1〜2分乾燥することで、内部電極パターン層40(図2(B)参照)を形成した。
その後、グリーンシート上の内部電極パターン層40が形成されていない余白パターン部分50(図2(B)参照)に、誘電体ペーストを用いたスクリーン印刷法により内部電極パターン層40と実質的に同じ厚みの余白パターン層60(図2(C)参照)を形成し、図2(C)に示すような内部電極パターン膜40および余白パターン層60を持つセラミックグリーンシート30を得た。本実施例では、このセラミックグリーンシート30をグリーンシートとし、これを複数枚、準備した。
次に、上記で作製した誘電体ペーストと同様にして、外層用グリーンシート形成用の誘電体ペーストを調製した。この誘電体ペーストをPETフィルムの離型処理された面上にワイヤーバーコータを用いて、所定厚みで塗布し、乾燥することで、外層用グリーンシートを作製した。
この外層用グリーンシートを複数枚、熱圧着積層し外層を形成した。得られた外層の上に、内部電極パターン層と余白パターン層とが形成されたセラミックグリーンシートを積層し、PETフィルムを剥離した(図3(A)参照)。この工程を繰り返し、内部電極パターン層と余白パターン層とが形成されたセラミックグリーンシートを所望数積層した(図3(B)参照)。その後、さらに、上記の外層を形成し、グリーンセラミック積層体を得た。次いで、グリーンセラミック積層体を温度80℃および圧力4MPaの条件でプレス圧着した。
なお、内部電極パターン層と余白パターン層とが形成されたセラミックグリーンシートの積層時には、直前に積層したセラミックグリーンシートに対し、内部電極部を短冊状の長手方向に半分だけずらし、かつ、短手方向には、各電極部が重なるように正確に位置決めを行った。
次に、得られたグリーンセラミック積層体を所定サイズに切断した後、脱バインダ処理、焼成及びアニールを下記の条件にて行い、焼結体を得た。
脱バインダは、昇温速度:15℃/時間、保持温度:280℃、保持時間:8時間、処理雰囲気:空気雰囲気、の条件で行った。
焼成は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1200〜1380℃、保持時間:2時間、降温速度:300℃/時間、処理雰囲気:還元雰囲気(酸素分圧:10−6PaにNとHとの混合ガスを水蒸気に通して調整した)、の条件で行った。
アニールは、保持温度:900℃、保持時間:9時間、降温速度:300℃/時間、処理雰囲気:加湿したNガス雰囲気、の条件で行った。焼成及びアニールにおけるガスの加湿には、ウェッターを用い、水温は35℃とした。
得られたグリーンセラミック積層体およびセラミック焼結体について、前記の評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 0004877303
Figure 0004877303
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。 図2(A)〜図2(C)は図1に示す積層セラミックコンデンサの製造工程の一部を示す要部断面図である。 図3(A)および図3(B)は、図2(A)〜(C)に示す製造工程の続きを示す要部断面図である。
符号の説明
1… 積層セラミックコンデンサ
10… コンデンサ素体
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極
20… キャリアシート
30… セラミックグリーンシート
32… 外層
40… 内部電極パターン層
50… 余白パターン部分
60… 余白パターン層

Claims (7)

  1. 積層セラミック電子部品の内部電極を形成するために用いられる導電性ペーストであって、
    (A)セルロース樹脂、アクリル樹脂、及びブチラール樹脂からなる群から選択されるバインダと、
    (B)テルペンフェノールおよび脂環族石油樹脂からなる群から選択される粘着付与剤と、
    (C)常圧における沸点が300℃以上の溶剤と、
    (D)導電性粉末と、
    (E)セラミック粉末とを含み、
    前記粘着付与剤(B)の含有量が、前記導電性粉末100重量部に対して0.1〜4.5重量部未満であり、
    前記溶剤(C)の含有量が、前記導電性粉末100重量部に対して0.2〜13.5重量部未満であり、
    前記バインダ(A)と粘着付与剤(B)との合計含有量が、前記導電性粉末100重量部に対して2重量部超9重量部未満であり、
    前記バインダ(A)と前記粘着付与剤(B)との合計100重量%に対する前記粘着付与剤(B)の含有比率が、5〜50重量%であり、
    前記溶剤(C)の含有量が、前記バインダ(A)と前記粘着付与剤(B)との合計100重量部に対して、10〜150重量部である、導電性ペースト。
  2. 前記溶剤(C)がフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸アジペート、燐酸トリクレシル、ブチルフタリルブチルグリコレートからなる群から選択される請求項1に記載の導電性ペースト。
  3. 前記導電性粉末の比表面積換算粒子径が0.5μm以下である請求項1または2に記載の導電性ペースト。
  4. 前記セラミック粉末(E)の比表面積換算粒子径が0.01〜0.50μmである請求項1〜3の何れかに記載の導電性ペースト。
  5. 前記粘着付与剤(B)がテルペンフェノールである請求項1〜4の何れかに記載の導電性ペースト。
  6. 前記粘着付与剤(B)が脂環族石油樹脂である請求項1〜4の何れかに記載の導電性ペースト。
  7. セラミック粉末とバインダとを含むセラミックグリーンシートと、所定パターンの内部電極パターン層と、を交互に複数重ねて、グリーンセラミック積層体を得る工程を有する積層セラミック電子部品の製造方法であって、
    前記内部電極パターン層を、請求項1〜の何れかに記載の導電性ペーストを、セラミックグリーンシート上に塗工して形成する工程を含む積層セラミック電子部品の製造方法。
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