JP2008153309A - 積層セラミック電子部品の製造方法 - Google Patents

積層セラミック電子部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】グリーンシートを薄層化し、さらにグリーンシートおよび内部電極パターン層に含まれるそれぞれのバインダが非相溶の組み合わせであっても、グリーンシートの積層性および接着性を良好にし、焼成後のクラックなどを有効に防止することができる積層セラミック電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】セラミック粉体とブチラール樹脂とを含むセラミックグリーンシートと、所定パターンの内部電極パターン層とを、加熱および加圧しながら交互に複数重ねて、グリーン積層体を得る熱圧着工程を有する積層セラミック電子部品の製造方法であって、内部電極パターン層を形成するための内部電極ペーストが、導電体粉末と、エチルセルロースを主成分とするバインダとを有しており、エチルセルロースが、導電体粉末100重量部に対して、1.0〜3.0重量部(ただし、1.0重量部を除く)含有される。
【選択図】図4

Description

本発明は、積層セラミック電子部品の製造方法に係り、さらに詳しくは、グリーンシートを薄層化した場合であっても、シート積層性およびシート接着性を良好にすることができる積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサは、通常、キャリアシート上に誘電体ペーストを用いてドクターブレード法などによりセラミックグリーンシートを形成し、この上に内部電極形成用の内部電極ペーストを所定パターンで印刷し、乾燥させて内部電極パターンを形成する。その後、キャリアシートからセラミックグリーンシートを剥離し、これを所望の層数まで積層する。
ここで、積層前にセラミックグリーンシートをキャリアシートから剥離する方法(シート法)と、積層圧着後にキャリアシートを剥離する方法(印刷法)の2種類の積層法が知られているが、両者ともに大きな違いはない。最後にこの積層体をチップ状に切断してグリーンチップが作成される。これらのグリーンチップを焼成後、外部電極を形成し積層セラミックコンデンサが得られる。
ところで近年、電子機器の軽薄短小化が進んできている。これに伴い、その電子機器に使用される積層セラミックコンデンサにおいても、より一層の小型化・高容量化が進められている。積層セラミックコンデンサを小型化・高容量化するために最も効果的な方法は、内部電極と誘電体層を双方ともに可能な限り薄くし(薄層化)、かつそれらを可能な限り多く積層する(多層化)ことである。
しかしながら、特にセラミックグリーンシートの薄層化を進めた場合、セラミックグリーンシート上に印刷された内部電極ペースト中の溶剤が、セラミックグリーンシート中の有機バインダを膨潤または溶解させる、いわゆる「シートアタック」現象が問題となる。すなわち、「シートアタック」現象が生じると、セラミックグリーンシートにしわや穴、亀裂などが発生し、最終物たる積層セラミック電子部品に、ショート不良や層間剥離現象(デラミネーション)が発生してしまう。この「シートアタック」現象を防止するために、互いのバインダを非相溶である組合せとしている。たとえば、特許文献1および2では、誘電体ペーストに含まれる有機バインダとしてポリビニルブチラール樹脂を使用し、内部電極ペーストに含まれる有機バインダとしてエチルセルロースが使用している。
また、多層化するための積層技術として、たとえば、特許文献3では、誘電体ペーストに含まれるバインダとして、重合度が1000以上のポリビニルブチラール樹脂を用いて、セラミックグリーンシートの強度を向上させている。
上記の手法を用いて、内部電極と誘電体層とを、薄層化および多層化した場合、セラミックグリーンシート中のポリビニルブチラール樹脂と、内部電極パターン中のエチルセルロースとは、非相溶であるため、たとえば積層時に加熱および加圧された場合にも、混合されず、接着性が悪い。しかも、ポリビニルブチラール樹脂の重合度が高いため、積層時の加熱によるセラミックグリーンシートの変形が少なくなってしまい、ますますセラミックグリーンシートと内部電極パターンとの接着性が悪化し、生産性の悪化を招いていた。
特開2002−43161号公報 特開2005−243561号公報 特開2005−158563号公報
本発明の目的は、セラミックグリーンシートの厚みを薄層化し、セラミックグリーンシートの強度が弱くなった場合、さらには、グリーンシートおよび内部電極パターン層に含まれるそれぞれのバインダが非相溶の組み合わせである場合であっても、グリーンシートの積層性および接着性を良好にし、焼成後のクラックなどを有効に防止することができる積層セラミック電子部品の製造方法を提供することである。
本発明者等は、内部電極パターン層に含まれるバインダとしてのエチルセルロースの含有量を減らし、熱圧着工程を行うことで、ブチラール樹脂が含まれるグリーンシートと、ブチラール樹脂と非相溶であるエチルセルロースが含まれる内部電極パターン層との濡れ性が改善され、その結果、グリーンシート積層性および接着性を改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、
セラミック粉体とブチラール樹脂とを含むセラミックグリーンシートと、所定パターンの内部電極パターン層とを、加熱および加圧しながら交互に複数重ねて、グリーンセラミック積層体を得る熱圧着工程を有する積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記内部電極パターン層を形成するための内部電極ペーストが、導電体粉末と、エチルセルロースを主成分とする有機バインダと、を有しており、
前記エチルセルロースが、前記導電体粉末100重量部に対して、1.0〜3.0重量部(ただし、1.0重量部を除く)、好ましくは、1.5〜2.5重量部含有されることを特徴とする。
セラミックグリーンシートに含まれるバインダとしてのブチラール樹脂と、内部電極パターン層に含まれるバインダとしてのエチルセルロースとは、非相溶の関係にあり、たとえば、加熱されて互いに流動性を有する場合であっても、均一に混合しない。そのため、熱圧着工程においても、セラミックグリーンシートと内部電極パターン層との界面部分では、両者が互いに相溶することなく分離した状態で存在している。
本発明では、内部電極ペーストに含まれるエチルセルロースの含有量を比較的に減らし、上記の範囲としている。このようにすることで、内部電極パターン層において、バインダ(エチルセルロース)が充填されていない部分が形成される。そのため、セラミックグリーンシートに含まれるブチラール樹脂が、熱圧着工程時に、グリーンシートと内部電極パターン層との界面を超えて内部電極パターン層に流動することができ、内部電極パターン層とグリーンシートとの濡れ性が向上する。すなわち、グリーンシートと内部電極パターン層との界面部分が、主に、ブチラール樹脂により占められることとなり、グリーンシート積層性やグリーンシートと内部電極パターン層との接着性が向上する。
好ましくは、前記ブチラール樹脂が、前記セラミック粉体100重量部に対して、5重量部より大きく、9重量部未満、より好ましくは、6〜8重量部含有される。ブチラール樹脂の含有量を上記の範囲とすることで、熱圧着工程時に、ブチラール樹脂が内部電極ペースト層に十分流動することができ、上記の効果をさらに高めることができる。
好ましくは、前記ブチラール樹脂の重合度が、350以上、1000未満、より好ましくは、350〜800である。ブチラール樹脂の重合度を上記の範囲とすることにより、グリーンシートの柔軟性が高くなり、シート積層時に変形することで、上記の効果をさらに高めることができる。
好ましくは、前記エチルセルロースの重量平均分子量が、190000〜250000未満、より好ましくは190000〜230000である。
好ましくは、前記エチルセルロースのエトキシル基含有率が、46.1重量%〜52.0重量%、より好ましくは48.0〜49.5重量%である。
好ましくは、前記ブチラール樹脂のブチラール化度が、73モル%より大きく、より好ましくは、77モル%以上である。
好ましくは、前記内部電極パターン層の乾燥後の厚みが、0.4μmより大きく、1.3μm未満である。
好ましくは、前記セラミックグリーンシートの乾燥後の厚みが、0.4μmより大きく、0.9μm未満である。
内部電極パターン層およびセラミックグリーンシートの乾燥後の厚みが、上記の範囲内にある場合に、特に、上記の効果を最大限発揮することができる。
本発明に係る方法により製造される積層セラミック電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、積層セラミックインダクタ、積層セラミックLC部品、多層セラミック基板等が例示される。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図、
図2(A)〜図2(C)は図1に示す積層セラミックコンデンサの製造工程の一部を示す要部断面図、
図3(A)および図3(B)は、図2(A)〜(C)に示す製造工程の続きを示す要部断面図、
図4(A)は、本発明に係る製造方法における、熱圧着工程時のセラミックグリーンシートと、内部電極パターン層との界面付近の模式図、
図4(B)は、従来例に係る製造方法における、熱圧着工程時のセラミックグリーンシートと、内部電極パターン層との界面付近の模式図である。
本実施形態では、積層セラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを例示して説明する。
積層セラミックコンデンサ
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素体10を有する。このコンデンサ素体10の両側端部には、素体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4,4が形成してある。内部電極層3は、各側端面がコンデンサ素体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4,4は、コンデンサ素体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
コンデンサ素体10の外形や寸法には特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、通常、外形はほぼ直方体形状とし、寸法は通常、縦(0.4〜5.6mm)×横(0.2〜5.0mm)×高さ(0.2〜1.9mm)程度とすることができる。
誘電体層2は、後述する図2(A)〜図2(C)に示すセラミックグリーンシート30を焼成して形成され、その材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。誘電体層2の厚みは、本実施形態では、好ましくは0.4〜0.9μm(ただし、0.4μmおよび0.9μmを除く)、より好ましくは0.4〜0.6μm(ただし、0.4μmを除く)に薄層化されている。
内部電極層3は、後述する図2(B)、図2(C)に示す所定パターンの内部電極ペーストで形成される内部電極パターン層40を焼成して形成される。内部電極層3の厚さは、0.4〜1.3μm(ただし、0.4μmおよび1.3μmを除く)、より好ましくは0.4〜0.6μm(ただし、0.4μmを除く)に薄層化されている。
外部電極4の材質は、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。外部電極4の厚みも特に限定されないが、通常10〜50μm程度である。
積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1の製造方法の一例を説明する。
誘電体ペーストの準備
(1)まず、焼成後に図1に示す誘電体層2を構成することになるセラミックグリーンシートを製造するために、誘電体ペーストを準備する。
本実施形態では、誘電体ペーストは、セラミック粉末と有機ビヒクルとを混練して得られる有機溶剤系ペーストで構成される。
セラミック粉末としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、混合して用いることができる。セラミック粉末は、通常、平均粒子径が2.0μm以下、好ましくは0.1〜0.8μm程度の粉体として用いられる。なお、きわめて薄いセラミックグリーンシートを形成するためには、セラミックグリーンシート厚みよりも細かい粉体を使用することが望ましい。
有機ビヒクルに用いられる有機バインダとしてのブチラール樹脂は、本実施形態では、ポリビニルブチラール樹脂である。ポリビニルブチラール樹脂は、セラミック粉体100重量部に対して、好ましくは5〜9重量部(ただし、5および9重量部を除く)、より好ましくは、6〜8重量部含有される。ポリビニルブチラール樹脂の含有量が少なすぎると、シート積層性が悪化する傾向にあり、多すぎると、脱バインダ工程において完全に除去されず、焼結体にクラックが多く発生する傾向にある。
また、ポリビニルブチラール樹脂の重合度は、好ましくは、350以上、1000未満、より好ましくは350〜800である。本実施形態では、重合度が、低あるいは中重合度のポリビニルブチラール樹脂を使用することができる。ポリビニルブチラール樹脂の重合度を低くすることにより、樹脂のガラス転移温度が低くなり、グリーンシートの柔軟性が向上する。その結果、熱圧着工程においても、グリーンシートの変形が大きくなるため、グリーンシート同士の接着がより容易となる。
重合度が小さすぎると、バインダとしての機能を果たすことができないため、グリーンシートを形成することができず、大きすぎると、グリーンシートと内部電極パターン層との接着性が悪化し、焼結体にクラックが多く発生する傾向にある。
また、ポリビニルブチラール樹脂のブチラール化度は、好ましくは73モル%より大きく、より好ましくは77モル%以上である。ブチラール化度が小さすぎると、グリーンシートと内部電極パターン層との接着性が悪化する傾向にある。なお、ブチラール化度は、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドとのブチラール化反応により決まり、その上限は、81.6モル%である。また、ポリビニルブチラール樹脂中の残留アセチル基量は、好ましくは6%未満、より好ましくは3%以下である。
有機ビヒクルに用いられる有機溶剤は、特に限定されるものではなく、メチルエチルケトン、ブチルカルビトール、アセトン、トルエンなどが用いられる。
誘電体ペースト中の各成分の含有量は、特に限定されるものではなく、たとえば、約1〜約50重量%の溶剤を含むように、誘電体ペーストを調製することができる。
誘電体ペースト中には、必要に応じて、各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されていてもよい。誘電体ペースト中に、これらの添加物を添加する場合には、総含有量を、約10重量%以下にすることが望ましい。
可塑剤としては、フタル酸ジオクチルやフタル酸ベンジルブチルなどのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。可塑剤を配合する場合の塗料中における可塑剤の重量割合は、特に限定されないが、バインダ100重量部に対して、好ましくは40〜70重量部である。可塑剤が少なすぎると、グリーンシートの伸びおよび可撓性が悪化する傾向にあり、多すぎると、グリーンシート表面に可塑剤が滲み出し、取り扱いが困難である。
本実施形態では、有機ビヒクル中の有機バインダとしてポリビニルブチラール樹脂を用いるので、この場合の可塑剤の含有量は、ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対して、約25〜約100重量部であることが好ましい。
誘電体ペーストは、上記各成分を、ボールミルなどで混練し、スラリー化することにより得ることができる。
セラミックグリーンシートの形成
(2)次に、この誘電体ペーストを用いて、ワイヤーバーコータやドクターブレード法などにより、図2(A)に示すように、支持体としてのキャリアシート20上に、好ましくは0.45〜1μm程度の厚みで、セラミックグリーンシート30を形成する。
キャリアシート20としては、たとえばPETフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、セラミックグリーンシート30が形成される面には、離型処理(シリコーンなどのコーティング)がしてあるものが好ましい。キャリアシート20の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜100μmである。
本実施形態では、後述するように、支持体としてのキャリアシート20上に形成されたセラミックグリーンシート30と、内部電極パターン層40とを熱圧着しながら交互に積層する(熱圧着工程)。この場合、シートを積層してから支持体を剥離するため、積層の際にグリーンシートの強度はあまり問題とならない。そのため、グリーンシートの強度に影響を与えるポリビニルブチラール樹脂の重合度を低くすることができる。また、厚みが1.0μm以下の極めて薄いグリーンシートであっても、ハンドリング性を損なうことはない。
セラミックグリーンシート30は、キャリアシート20に形成された後に乾燥される。セラミックグリーンシート30の乾燥温度は、好ましくは50〜100℃であり、乾燥時間は、好ましくは1〜20分である。
乾燥後のセラミックグリーンシート30の厚みは、乾燥前の厚みから5〜25%収縮する。本実施形態では、乾燥後のセラミックグリーンシート30の厚みが、好ましくは0.4〜0.9μm(ただし、0.4μmおよび0.9μmは除く)、さらに好ましくは0.4〜0.6μm(ただし、0.4μmは除く)となるように形成する。近年望まれている薄層化の要求に応えるためである。なお、グリーンシートの厚みが厚すぎると、内部電極パターン層の厚みによっては、1層あたりのバインダ樹脂含有量が多くなってしまい、焼成後にクラックが発生する傾向にある。
内部電極ペーストの準備
(3)次に、焼成後に図1に示す内部電極層3を構成することになる内部電極パターン層40を製造するために、内部電極ペーストを準備する。
内部電極ペーストは、導電体粉末と有機ビヒクルとを混練して得られる有機溶剤系ペーストで構成される。
導電体粉末としては、特に限定されないが、Cu、Niおよびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種で構成してあることが好ましく、より好ましくはNiまたはNi合金、さらにはこれらの混合物で構成される。
NiまたはNi合金としては、Mn、Cr、CoおよびAlから選択される少なくとも1種の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P、Fe、Mgなどの各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。
このような導電体粉末は、球状、リン片状等、その形状に特に制限はなく、また、これらの形状のものが混合したものであってもよい。また、導電体粉末の粒子径は、通常、球状の場合、平均粒子径が0.5μm以下、好ましくは0.01〜0.2μm程度のものを用いる。より一層確実に薄層化を実現するためである。
導電体粉末は、内部電極ペースト中に、好ましくは30〜60重量%、より好ましくは40〜50重量%含まれる。
有機ビヒクルは、有機バインダと溶剤とを主成分として含有するものである。
有機バインダの主成分はエチルセルロースである。有機バインダとしてエチルセルロースを主成分とする場合の、有機バインダ中のエチルセルロースの含有量は、95重量%以上であることが好ましく、より好ましくは100重量%である。
エチルセルロースは、内部電極ペースト中に、導電体粉末100重量部に対して、1.0〜3.0重量部(ただし、1.0重量部は除く)、好ましくは、1.5〜2.5重量部含まれる。エチルセルロースの含有量が少なすぎると、内部電極ペーストの粘度が低くなり、スクリーン印刷ができない傾向にある。また、含有量が多すぎると、シートの接着性が悪化し、焼結体にクラックが多く発生する傾向にある。
エチルセルロースの平均重量分子量(Mw)は、好ましくは、190000〜250000、より好ましくは、190000〜230000である。平均重量分子量が小さすぎると、内部電極ペーストの粘度が低くなり、スクリーン印刷ができない傾向にある。また、平均重量分子量が大きすぎると、シートの接着性が悪化し、焼結体にクラックが多く発生する傾向にある。
また、エチルセルロースのエトキシル基の含有率は、好ましくは、46.1重量%〜52.0重量%、より好ましくは、48.0〜49.5重量%である。エトキシル基の含有率が本発明の範囲外の場合には、シートの接着性が悪化し、焼結体にクラックが多く発生する傾向にある。
溶剤としては、シートアタック現象を防止するために、セラミックグリーンシートに含まれるポリビニルブチラール樹脂を良好に膨潤または溶解させない、すなわち、非相溶のものが好ましい。具体的には、α−ターピニルアセテート、イソボニルアセテート、ジヒドロターピニルアセテート、ジヒドロターピニルメチルエーテル、ターピニルメチルエーテル、I−ジヒドロカルビルアセテートなどが例示される。
溶剤は、内部電極ペースト中に、導電体粉末100重量部に対して、好ましくは50〜150重量部、より好ましくは80〜100重量部で含まれる。溶剤量が少なすぎるとペースト粘度が高くなりすぎ、多すぎるとペースト粘度が低くなりすぎる不都合がある。
有機ビヒクル中の上記バインダ及び溶剤の合計含有量は、95重量%以上であることが好ましく、より好ましくは100重量%である。ごく微量ではあるが、バインダ及び溶剤とともに有機ビヒクル中に含有させることが可能なものとしては、可塑剤、レベリング剤などがある。
本実施形態では、内部電極ペーストは、さらに上記誘電体ペーストに含まれるセラミック粉末と同じセラミック粉末である共材を有している。内部電極ペーストが共材を有していることで、内部電極ペーストに含まれる導電体粉末と、グリーンシートに含まれるセラミック粉体との、焼成時における収縮率の違いを緩和することができる。その結果、焼結体におけるクラックの発生を抑制することができる。共材として用いるセラミック粉末は、内部電極ペースト中に、導電体粉末100重量部に対して、好ましくは5〜50重量部で含まれる。共材量が少なすぎると、導電体粉末の焼結抑制効果が低下し、焼成後の内部電極層3のライン性(連続性)が悪化し、見かけの誘電率が低下する。一方で、共材量が多すぎると、焼成後の内部電極層3のライン性が悪化しやすくなり、見かけの誘電率も低下する傾向にある。
接着性の改善のため、内部電極ペーストには、可塑剤が含まれてもよい。この場合、可塑剤種および添加量は、上記の誘電体ペーストと同様とすればよい。
内部電極ペーストは、上記各成分を、ボールミルなどで混練し、スラリー化することにより得ることができる。
内部電極パターン層の形成
(4)次に、図2(B)に示すように、キャリアシート20上に形成されたセラミックグリーンシート30の表面に、所定パターンの内部電極パターン層40を形成する。
内部電極パターン層40の形成方法は、層を均一に形成できる方法であれば特に限定されないが、本実施形態では、上記の内部電極ペーストを用いたスクリーン印刷法が用いられる。
内部電極パターン層40の厚さは、好ましくは0.4〜1.3μm(ただし、0.4μmおよび1.3μmは除く)、さらに好ましくは0.4〜0.6μm(ただし、0.4μmは除く)である。内部電極パターン層40の厚さが厚すぎると、グリーンシートの厚みによっては、1層あたりのバインダ樹脂含有量が多くなってしまい、焼成後にクラックが発生する傾向にある。さらに、積層数を減少せざるをえなくなり取得容量が少なくなり、高容量化しにくくなる。一方、厚みが薄すぎると均一に形成することが困難であり、電極途切れが発生しやすくなる。
内部電極パターン層40の厚さは、現状の技術では前記範囲の程度であるが、電極の途切れが生じない範囲で薄い方がより望ましい。
余白パターン層の形成
(5)本実施形態では、セラミックグリーンシート30の表面に、所定パターンの電極層40を印刷法で形成した後、またはその前に、図2(B)に示す電極層40が形成されていないセラミックグリーンシート30の表面隙間(余白パターン部分50)に、図2(C)に示すように、内部電極パターン層40と実質的に同じ厚みの余白パターン層60を形成する。余白パターン層60の厚さを内部電極パターン層40と実質的に同じ厚みとするのは、実質的に同じでないと段差が生じ、特に多層化した場合に影響が増大するからである。
余白パターン層60の形成方法は、本実施形態では電極段差吸収用印刷ペーストを用いたスクリーン印刷法が用いられる。
本実施形態で用いる電極段差吸収用印刷ペーストとしては、特に限定されないが、上記で作製した誘電体ペーストを用いることが、工程上好ましい。
この電極段差吸収用印刷ペーストは、図2(B)に示す電極層40間の余白パターン部分50に印刷される。その後、電極層40および余白パターン層60は、必要に応じて乾燥される。乾燥温度は、特に限定されないが、好ましくは50〜120℃であり、乾燥時間は、好ましくは1〜15分である。
外層の形成
(6)本実施形態では、上記で作製した所定パターンの内部電極パターン層40と余白パターン層60が表面に形成されたセラミックグリーンシート30を、保護するために、外層32を形成する。すなわち、所定数積層されたセラミックグリーンシート30が、外層32に挟まれる構成となる。外層32は内部電極パターン層40が形成されていないセラミックグリーンシートが1層あるいは複数積層された構成となっている。
外層用グリーンシートは、セラミックグリーンシート30と同様に、外層用誘電体ペーストを用いてキャリアシート20上に形成される。外層用誘電体ペーストとしては、上記で作製した誘電体ペーストを用いてもよいが、バインダ種、バインダ添加量、バインダ重合度などを変えたものを用いてもよい。
熱圧着工程
(7)次に、図3(A)に示すように、キャリアシート20上に作製された外層32の上に、所定パターンの電極層40と余白パターン層60が表面に形成されたセラミックグリーンシート30を、加熱および加圧しながら積層して、キャリアシート20を剥離する。そして、図3(B)に示すように、上記の工程を所望の積層数まで繰り返し、グリーンセラミック積層体を得る。熱圧着工程における温度は、50〜100℃、圧力は、5〜25MPaとすることが好ましい。温度および圧力を上記の範囲とすることで、ポリビニルブチラール樹脂が、内部電極パターン層に流動しやすくなる。
グリーンチップの作製、焼成など
(8)得られたグリーンセラミック積層体を所定サイズに切断し、グリーンチップを作製し、脱バインダ工程、焼成工程、必要に応じて行われるアニール工程を経て形成された、焼結体で構成されるコンデンサ素体10に、外部電極用ペーストを印刷または転写して焼成し、外部電極4,4を形成して、積層セラミックコンデンサ1が製造される。
本実施形態で述べた方法により、セラミックグリーンシートの厚みを薄層化し、グリーンシートおよび内部電極パターン層に含まれるそれぞれのバインダが非相溶の組み合わせである場合であっても、グリーンシートの積層性および接着性を良好にし、焼成後のクラックなどが有効に防止された積層セラミックコンデンサ1を提供することができる。その理由は、たとえば次のようにして説明することができる。
図4(A)は、本発明に係る製造方法における、熱圧着工程時のセラミックグリーンシート30と、内部電極パターン層40との界面付近の模式図である。本発明では、内部電極ペーストに含まれるエチルセルロース量を減らしている。その結果、図4(A)に示すように、エチルセルロース90は、導電体粉末400同士を結合しているものの、導電体粉末400間には、エチルセルロース90が存在しない部分が生じている。一方、セラミックグリーンシート30には、比較的に多量のポリビニルブチラール樹脂80が存在し、セラミック粉末300同士を結合している。このポリビニルブチラール樹脂80が、積層時に、加熱および加圧されることで、流動性を示すようになる。そして、流動性を示すポリビニルブチラール樹脂80が、セラミックグリーンシート30と内部電極パターン層40との界面部分を超え、内部電極パターン層40中の導電体粉末400間のエチルセルロース90が存在しない部分を充填するようになる。その結果、セラミックグリーンシート30と内部電極パターン層40との界面部分は、ポリビニルブチラール樹脂80によって占められることとなり、セラミックグリーンシート30と内部電極パターン層40との接着性が確保されることとなる。
これに対し、図4(B)は、従来例に係る製造方法における、熱圧着工程時のセラミックグリーンシート30aと、内部電極パターン層40aとの界面付近の模式図である。この場合、内部電極パターン層40aにおいても、セラミックグリーンシート30aにおいても、それぞれ、十分な量のバインダが粉末同士を結合しており、バインダが存在しない部分は形成されていない。そのため、積層時に加熱および加圧されたポリビニルブチラール樹脂80aが流動性を示すようになっても、内部電極パターン層40aの導電体粉末400a間には、エチルセルロース90aが存在しているため、内部電極パターン層40aへ移動することができない。しかも、ポリビニルブチラール樹脂80aとエチルセルロース90aとは非相溶の関係にあるため、混合した状態となることはない。その結果、図4(B)に示すように、セラミックグリーンシート30aと内部電極パターン層40aとの接着性が悪化する。
なお、図4(A)および図4(B)において、セラミックグリーンシート中のセラミック粉末およびポリビニルブチラール樹脂、内部電極パターン層中の導電体粉末およびエチルセルロース以外の図示は省略した。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係る電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、多層セラミック基板などにも適用できることは勿論である。
また、本発明に係る方法により形成されたセラミックグリーンシート10aと、内部電極パターン12とが複数積層された積層体ユニットを所定数形成し、さらにこれらの積層体ユニットを熱圧着工程により積層することで、最終的な積層体を作製しても良い。
さらに、内部電極パターン層を転写法により形成してもよい。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
誘電体ペーストの作製
まず、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストを作製した。まず、BaTiO系セラミック粉末と、有機バインダとしてのポリビニルブチラール樹脂(PVB)と、溶剤としてのプロピルアルコール、キシレン、メチルエチルケトン、2−ブトキシエチルアルコール、可塑剤としてのフタル酸ジ−2−エチルヘキシルを準備した。次に、セラミック粉末100重量部に対して、6重量部のPVBと、150重量部の溶剤と、可塑剤をそれぞれ秤量し、直径2mmのジルコニアボールとともにボールミルで21時間混練し、スラリー化して誘電体ペーストを得た。なお、可塑剤は、ポリビニルブチラール100重量部に対して50重量部添加した。
内部電極ペーストの作製
次いで、内部電極パターン層40を形成するための内部電極ペーストを作製した。まず、導電体粉末としての平均粒径が0.2μmのNi粒子と、共材としてのBaTiO系セラミック粉末と、バインダとしてのエチルセルロースと、溶剤としてのα−ターピニルアセテートと、を準備した。そして、導電体粉末100重量部、共材30重量部の合計130重量部に対して、122重量部のα−ターピニルアセテートと、エチルセルロースとを添加し、これをボールミルで混練し、スラリー化して内部電極ペーストを得た。なお、エチルセルロースは、導電体粉末100重量部に対して、表1に示す量が含有されている。
内部電極ペーストの評価
得られた内部電極ペーストについて、粘度および最大法線応力を測定した。粘度は、せん断速度500s−1時の粘度を測定した。なお、測定では、パラレルプレート型粘度計を用いた。粘度は、1.0Pa・s以上を良好とした。結果を表1に示す。
最大法線応力は、法線応力が測定可能な粘弾性測定装置(レオメータ)を用いて測定を行った。一対のパラレルプレート(円形)の直径が40mm、プレート間の距離が300μm、内部電極ペーストの温度が25℃、内部電極ペーストに対するせん断速度が1000〜10000[1/s]の条件下で、内部電極ペーストの法線応力を測定した。最大法線応力は、0.2N以上を良好とした。結果を表1に示す。
積層セラミックチップコンデンサ試料の作製
次いで、上記にて作製した誘電体ペーストと、内部電極ペーストと、を用い、以下のようにして、図1に示す積層セラミックチップコンデンサ1を製造した。
まず、支持体としてのPETフィルムの離型処理された面上に、誘電体ペーストをワイヤーバーコータにより、所定厚みで塗布し、乾燥することで、厚みが0.6μmのグリーンシートを作製した。
次に、得られたグリーンシートの上に、内部電極ペーストを用いたスクリーン印刷法により、スクリーンパターンが4.0×1.2mmの短冊状で、乾燥後の厚さが0.6μmとなるように内部電極パターン層40(図2(B)参照)を形成した。
その後、グリーンシート上の内部電極パターン層40が形成されていない余白パターン部分50(図2(B)参照)に、誘電体ペーストを用いたスクリーン印刷法により内部電極パターン層40と実質的に同じ厚みの余白パターン層60(図2(C)参照)を形成し、図2(C)に示すような内部電極パターン膜40および余白パターン層60を持つセラミックグリーンシート30を得た。本実施例では、このセラミックグリーンシート30をグリーンシートとし、これを複数枚、準備した。
次に、ポリビニルブチラール樹脂の重合度を1500とした以外は、上記で作製した誘電体ペーストと同様にして、外層用グリーンシート形成用の誘電体ペーストを調製した。この誘電体ペーストをPETフィルムの離型処理された面上にワイヤーバーコータを用いて、所定厚みで塗布し、乾燥することで、厚みが12μmの外層用グリーンシートを作製した。
この外層用グリーンシートを8枚準備し、これらを熱圧着積層し、厚みが96μmの外層を形成した。
得られた外層の上に、内部電極パターン層と余白パターン層とが形成されたセラミックグリーンシートを、温度75℃および圧力12MPaの条件で熱圧着し、PETフィルムを剥離した(図3(A)参照)。この工程を繰り返し、内部電極パターン層と余白パターン層とが形成されたセラミックグリーンシートを所望数積層した(図3(B)参照)。その後、さらに、上記の厚み96μmの外層を熱圧着により形成し、グリーンセラミック積層体を得た。
なお、内部電極パターン層と余白パターン層とが形成されたセラミックグリーンシートの積層時には、直前に積層したセラミックグリーンシートに対し、内部電極部を短冊状の長手方向に半分だけずらし、かつ、短手方向には、各電極部が重なるように正確に位置決めを行った。
グリーンセラミック積層体の評価
得られたグリーンセラミック積層体について、支持体(PETフィルム)の剥離強度と、積層したグリーンシートの接着強度とを測定した。
支持体の剥離強度は、グリーンセラミック積層体のサンプル5個に対して測定し、その平均値を求めた。剥離強度の測定では、積層体における長さ5cm分のPETフィルムの一端を、積層体の積層面に対して90°の方向に、1000mm/分の速度で引き上げ、PETフィルムが、積層体ユニットから剥離する際に、PETフィルムに作用する力(mN/cm)を測定した。この力を支持体90°剥離強度とした。剥離強度を低くすることにより、積層体からのPETフィルムの剥離を良好に行うことができ、また、剥離時における積層体の破損も有効に防止することができる。よって、剥離強度は、低い程好ましく、20mN/cm以下を良好とした。結果を表1に示す。
グリーンセラミック積層体の接着性は、インストロン5543引張試験機を用いて積層体を引っ張り、剥離した時点での強度値を1cm角での積層体の接着強度に換算して求めた。シート接着性は、18N/cm以上を良好とし、25N/cm以上であることがさらに好ましい。結果を表1に示す。
なお、上記の評価は、グリーンセラミック積層体の一方の外層を形成しない状態で行った。すなわち、外層を形成するグリーンシートについてではなく、内部電極パターン層と余白パターン層とが形成されたセラミックグリーンシートについて、支持体からの剥離強度とグリーンシートの接着強度を評価した。
次に、得られたグリーンセラミック積層体を所定サイズに切断した後、脱バインダ処理、焼成及びアニールを下記の条件にて行い、焼結体を得た。
脱バインダは、昇温速度:15℃/時間、保持温度:280℃、保持時間:8時間、処理雰囲気:空気雰囲気、の条件で行った。
焼成は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1200〜1380℃、保持時間:2時間、降温速度:300℃/時間、処理雰囲気:還元雰囲気(酸素分圧:10−6PaにNとHとの混合ガスを水蒸気に通して調整した)、の条件で行った。
アニールは、保持温度:900℃、保持時間:9時間、降温速度:300℃/時間、処理雰囲気:加湿したNガス雰囲気、の条件で行った。焼成及びアニールにおけるガスの加湿には、ウェッターを用い、水温は35℃とした。
得られた焼結体のサイズは、縦1.6mm×横0.8mm×高さ0.8mmであり、一対の内部電極層間に挟まれる誘電体層2の厚みは約0.6μm、内部電極層3の厚みは0.6μmであった。
焼結体の評価
得られた焼結体を切断し、その断面を観察して、クラックの有無を評価した。これを10個のコンデンサ試料に対して行った。10個中、クラックが観察される試料が3個以下であることが好ましく、10個すべてにクラックが観察されないことがより好ましい。結果を表1に示す。
Figure 2008153309
表1に示すように、内部電極ペーストに含まれるエチルセルロースの含有量を1.5〜3.0重量部とした場合(試料番号2〜6)には、内部電極ペースト、積層体、焼結体のいずれについても良好な結果が得られている。
一方、エチルセルロースの含有量を1.0重量部とした場合(試料番号1)には、内部電極ペーストの粘度が低いために、スクリーン印刷が不可能であった。
実施例2
誘電体ペーストに含まれるポリビニルブチラール樹脂の含有量を表2に示す量とした以外は、実施例1と同様にして、誘電体ペーストおよび内部電極ペーストを調製し、さらにグリーンセラミック積層体および焼結体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。なお、内部電極層用ペーストに含まれるエチルセルロースの含有量は、2.5重量部とした。
Figure 2008153309
表2より、ポリビニルブチラール樹脂の含有量が本発明の好ましい範囲よりも少ない場合(試料番号7)には、積層することができなかった。これは、ポリビニルブチラール樹脂の含有量が少ないため、熱圧着工程時に、ポリビニルブチラール樹脂が内部電極パターン層に流動することができなかったためと考えられる。
また、ポリビニルブチラール樹脂の含有量が本発明の好ましい範囲よりも多い場合(試料番号10)には、積層体の接着性および剥離強度は良好であったが、焼結体においてクラックが発生した。これは、脱バインダ工程において完全に除去できなかったポリビニルブチラール樹脂により、焼成時に空隙等を生じたためと考えられる。
実施例3
誘電体ペーストに含まれるポリビニルブチラール樹脂の重合度を表3に示す数値とした以外は、実施例1と同様にして、誘電体ペーストおよび内部電極ペーストを調製し、さらにグリーンセラミック積層体および焼結体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。なお、内部電極ペーストに含まれるエチルセルロースの含有量は、2.5重量部とし、誘電体ペーストに含まれるポリビニルブチラール樹脂の含有量は、6重量部とした。
Figure 2008153309
表3より、ポリビニルブチラール樹脂の重合度が本発明の好ましい範囲よりも小さい場合(試料番号11)には、バインダとしての機能が発揮されず、支持体であるPETフィルム上にシートを形成することができなかった。
また、ポリビニルブチラール樹脂の重合度が本発明の範囲よりも好ましい大きい場合(試料番号14)には、積層体の接着性に劣り、焼結体においてもクラックが観察された。これは、ポリビニルブチラール樹脂の重合度が高いため、熱圧着工程時においても、グリーンシートに柔軟性がなく、シート同士が密着せず、空隙等が形成されたためと考えられる。
実施例4
内部電極ペーストに含まれるエチルセルロースの重量平均分子量を表4に示す数値とした以外は、実施例1と同様にして、内部電極ペーストおよび誘電体ペーストを調製し、さらにグリーンセラミック積層体および焼結体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表4に示す。なお、内部電極ペーストに含まれるエチルセルロースの含有量は、試料番号15〜17については2.5重量部とし、試料番号18、19については1.5重量部とした。また、誘電体ペーストに含まれるポリビニルブチラール樹脂の含有量は、6重量部とした。
Figure 2008153309
表4より、エチルセルロースの含有量に関係なく、エチルセルロースの重量平均分子量が、本発明の好ましい範囲内である場合(試料番号16〜19)には、内部電極ペースト、積層体、焼結体のいずれの評価についても良好な結果が得られている。なお、試料番号17については、若干、積層体の接着性に劣り、焼結体においてもクラックが観察される傾向にあった。
一方、エチルセルロースの重量平均分子量が、本発明の好ましい範囲よりも小さい場合(試料番号15)には、内部電極ペーストの粘度が低いために、スクリーン印刷が不可能であった。
実施例5
内部電極ペーストに含まれるエチルセルロースのエトキシル基含有量と、誘電体ペーストに含まれるポリビニルブチラール樹脂のブチラール化度と、を表4に示す数値とした以外は、実施例1と同様にして、内部電極ペーストおよび誘電体ペーストを調製し、さらにグリーンセラミック積層体および焼結体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表5に示す。なお、内部電極ペーストに含まれるエチルセルロースの含有量は、2.5重量部とし、誘電体ペーストに含まれるポリビニルブチラール樹脂の含有量は、6重量部とした。
Figure 2008153309
表5より、エチルセルロースのエトキシル基含有量が、本発明の好ましい範囲内である場合(試料番号20〜22)には、内部電極ペースト、積層体、焼結体のいずれの評価についても良好な結果が得られている。なお、試料番号20および22については、若干、積層体の接着性に劣り、焼結体にもクラックが観察される傾向にあった。
また、ポリビニルブチラール樹脂のブチラール化度が、本発明の好ましい範囲よりも小さい場合(試料番号23)にも、焼結体においてクラックが観察された。
実施例6
乾燥後の内部電極パターン層の厚みと、乾燥後のセラミックグリーンシートの厚みを表6に示す値とした以外は、実施例1と同様にして、内部電極ペーストおよび誘電体ペーストを調製し、さらにグリーンセラミック積層体および焼結体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表6に示す。なお、内部電極ペーストに含まれるエチルセルロースの含有量は、2.5重量部とし、誘電体ペーストに含まれるポリビニルブチラール樹脂の含有量は、6重量部とした。
Figure 2008153309
表6より、乾燥後の内部電極パターン層およびセラミックグリーンシートの厚みが、本発明の好ましい範囲内である場合(試料番号25、26、28)には、内部電極ペースト、積層体、焼結体のいずれの評価についても良好な結果が得られている。
一方、乾燥後の内部電極パターン層およびセラミックグリーンシートの厚みが、本発明の好ましい範囲外の場合(試料番号24、26a、27、29)には、積層体の接着性に劣り、焼結体にもクラックが観察された。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。 図2(A)〜図2(C)は図1に示す積層セラミックコンデンサの製造工程の一部を示す要部断面図である。 図3(A)および図3(B)は、図2(A)〜(C)に示す製造工程の続きを示す要部断面図である。 図4(A)は、本発明に係る製造方法における、熱圧着工程時のセラミックグリーンシートと、内部電極パターン層との界面付近の模式図、図4(B)は、従来例に係る製造方法における、熱圧着工程時のセラミックグリーンシートと、内部電極パターン層との界面付近の模式図である。
符号の説明
1… 積層セラミックコンデンサ
10… コンデンサ素体
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極
20… キャリアシート
30… セラミックグリーンシート
300… セラミック粉末
300a… セラミック粉末
32… 外層
40… 内部電極パターン層
400… 導電体粉末
400a… 導電体粉末
50… 余白パターン部分
60… 余白パターン層
80… ポリビニルブチラール樹脂
80a… ポリビニルブチラール樹脂
90… エチルセルロース
90a… エチルセルロース

Claims (8)

  1. セラミック粉体とブチラール樹脂とを含むセラミックグリーンシートと、所定パターンの内部電極パターン層とを、加熱および加圧しながら交互に複数重ねて、グリーンセラミック積層体を得る熱圧着工程を有する積層セラミック電子部品の製造方法であって、
    前記内部電極パターン層を形成するための内部電極ペーストが、導電体粉末と、エチルセルロースを主成分とする有機バインダと、を有しており、
    前記エチルセルロースが、前記導電体粉末100重量部に対して、1.0〜3.0重量部(ただし、1.0重量部を除く)含有されることを特徴とする積層セラミック電子部品の製造方法。
  2. 前記ブチラール樹脂が、前記セラミック粉体100重量部に対して、5重量部より大きく、9重量部未満含有される請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  3. 前記ブチラール樹脂の重合度が、350以上、1000未満である請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  4. 前記エチルセルロースの重量平均分子量が、190000〜250000である請求項1〜3のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  5. 前記エチルセルロースのエトキシル基含有率が、46.1重量%〜52.0重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  6. 前記ブチラール樹脂のブチラール化度が、73モル%より大きい請求項1〜5のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  7. 前記内部電極パターン層の乾燥後の厚みが、0.4μmより大きく、1.3μm未満である請求項1〜6のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
  8. 前記セラミックグリーンシートの乾燥後の厚みが、0.4μmより大きく、0.9μm未満である請求項1〜7のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
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