JP2010087370A - 積層セラミック電子部品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】グリーンシートおよび内部電極パターン層に含まれるバインダが非相溶であっても、グリーンシートの積層性および接着性を良好にし、焼成後のクラックを有効に防止できる積層セラミック電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】セラミック粒子とブチラール樹脂とを含むグリーンシートと内部電極パターン層とを積層して、積層体を得る工程を有する積層セラミック電子部品の製造方法であって、ブチラール樹脂が低または中重合度であり、内部電極ペーストが、導電体粉末と有機バインダ(エチルセルロース、ブチラール、アクリルから選ばれる少なくとも1つ)と、粘着付与剤(重合ロジン、テルペンフェノールおよび脂環族石油樹脂、ガムロジン、ロジングリセリンエステルから選ばれる少なくとも1つ)と、沸点が300℃以上かつ前記有機バインダを膨潤させるまたは前記バインダと相溶する可塑剤を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、積層セラミック電子部品の製造方法に係り、さらに詳しくは、グリーンシートを薄層化した場合であっても、シート積層性およびシート接着性を良好にすることができる積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサは、通常、キャリアシート上に誘電体ペーストを用いてドクターブレード法などによりセラミックグリーンシートを形成し、この上に内部電極形成用の内部電極ペーストを所定パターンで印刷し、乾燥させて内部電極パターンを形成する。その後、キャリアシートからセラミックグリーンシートを剥離し、これを所望の層数まで積層する。
ここで、積層前にセラミックグリーンシートをキャリアシートから剥離する方法(シート法)と、積層圧着後にキャリアシートを剥離する方法(印刷法)の2種類の積層法が知られているが、両者ともに大きな違いはない。最後にこの積層体をチップ状に切断してグリーンチップが作成される。これらのグリーンチップを焼成後、外部電極を形成し積層セラミックコンデンサが得られる。
ところで近年、電子機器の軽薄短小化が進んできている。これに伴い、その電子機器に使用される積層セラミックコンデンサにおいても、より一層の小型化・高容量化が進められている。積層セラミックコンデンサを小型化・高容量化するために最も効果的な方法は、内部電極と誘電体層を双方ともに可能な限り薄くし(薄層化)、かつそれらを可能な限り多く積層する(多層化)ことである。
しかしながら、特にセラミックグリーンシートの薄層化を進めた場合、セラミックグリーンシート上に印刷された内部電極ペースト中の溶剤が、セラミックグリーンシート中の有機バインダを膨潤または溶解させる、いわゆる「シートアタック」現象が問題となる。すなわち、「シートアタック」現象が生じると、セラミックグリーンシートにしわや穴、亀裂などが発生し、最終物たる積層セラミック電子部品に、ショート不良や層間剥離現象(デラミネーション)が発生してしまう。この「シートアタック」現象を防止するために、互いのバインダを非相溶である組合せとし、さらに内部電極ペーストに用いる溶剤は、内部電極に用いられる樹脂を溶解し、グリーンシート中の有機バインダを溶解しない溶剤を用いる。たとえば、特許文献1では、誘電体ペーストに含まれる有機バインダとしてポリビニルブチラール樹脂を使用し、内部電極ペーストに含まれる有機バインダとしてエチルセルロースを使用し、内部電極ペーストに含まれる溶剤としてターピニルアセテートなどを使用している。
また、グリーンシートに含まれる有機バインダ樹脂と、内部電極ペーストに含まれるエチルセルロースとの接着性を向上させるために、特許文献2および3では、内部電極ペーストにロジン等の粘着付与剤を含有させている。
しかしながら、上記のようにグリーンシートに含まれるバインダ樹脂と、内部電極ペーストに含まれるバインダ樹脂とが非相溶である場合には、同時に、接着性が悪化する。このような場合における、粘着付与剤については、ほとんど検討されておらず、生産性の悪化を招いていた。
特開2005−243561号公報 特開平5−90069号公報 特開2004−186339号公報
本発明の目的は、セラミックグリーンシートの厚みを薄層化し、セラミックグリーンシートの強度が弱くなった場合、さらには、グリーンシートおよび内部電極パターン層に含まれるそれぞれのバインダが非相溶の組み合わせである場合であっても、グリーンシートの積層性および接着性を良好にし、積層不良を防止することで、生産性を改善するための積層セラミック電子部品の製造方法を提供することである。
本発明者は、内部電極パターン層およびグリーンシートに含まれるそれぞれのバインダとして、非相溶であるエチルセルロースとブチラール樹脂とを組み合わせた場合、内部電極パターン層およびグリーンシートの接着性を向上させるためには、内部電極パターン層を形成するための内部電極ペーストが、特定の有機バインダ、粘着付与剤および可塑剤を有していることが必要であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、
セラミック粉体とブチラール樹脂とを含むセラミックグリーンシートと、所定パターンの内部電極パターン層と、を交互に複数重ねて、グリーンセラミック積層体を得る工程を有する積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記ブチラール樹脂の重合度が、350〜1000(ただし、1000を除く)であり、
前記内部電極パターン層を形成するための内部電極ペーストが、導電体粉末と、有機バインダと、粘着付与剤と、可塑剤とを有しており、
前記有機バインダは、エチルセルロース、ブチラール、アクリルから選ばれる少なくとも1つであり、
前記粘着付与剤は、重合ロジン、テルペンフェノールおよび脂環族石油樹脂、ガムロジン、ロジングリセリンエステルから選ばれる少なくとも1つであり、
前記有機バインダと粘着付与剤の合計含有量が、前記導電体粉末100重量部に対して、2重量部超9重量部未満であり、
前記粘着付与剤の含有量が、前記有機バインダと粘着付与剤の合計含有量の5〜50重量%であり、
前記可塑剤の含有量が、前記有機バインダと粘着付与剤の合計含有量100重量部に対して、10〜150重量部であり、
前記可塑剤は、沸点が300℃以上かつ前記有機バインダを膨潤させるまたは前記有機バインダと相溶することを特徴とする。
グリーンシートには、グリーンシートの柔軟性を利用して熱圧着積層するために、バインダ樹脂として低または中重合度のブチラール樹脂が使用される。
また、内部電極ペーストは、有機バインダとしてエチルセルロース、ブチラール、アクリルから選ばれる少なくとも一つを含む。このうち、エチルセルロースと、セラミックグリーンシートに含まれるブチラール樹脂は、非相溶の関係にあり、エチルセルロース樹脂は内部電極ペースト中の溶剤に溶解し、ブチラール樹脂は内部電極ペースト中の溶剤に溶解しないため、「シートアタック」は生じない。また、内部電極ペーストに含まれるブチラール、アクリルも、前記エチルセルロースと同様に内部電極ペースト中の溶剤に溶解するものを用いる。
さらに、内部電極ペーストに用いられる可塑剤も、「シートアタック」を生じさせないものを用いる。「シートアタック」を生じさせないためには、内部電極ペーストに有機バインダとして用いられるエチルセルロース、ブチラール、アクリルを溶解し、なおかつ、セラミックグリーンシートに含まれるポリビニルブチラール樹脂を膨潤または溶解させない溶剤を選択することが望ましい。
しかしながら、ブチラール樹脂を含むグリーンシートと、エチルセルロースを含む内部電極パターン層とは接着性が悪く、積層時に積層不良を生じてしまう。
本発明では、粘着付与剤として、内部電極ペーストに、重合ロジン、テルペンフェノールおよび脂環族石油樹脂、ガムロジン、ロジングリセリンエステルから選ばれる少なくとも1つを上記の比率で含有させる。このようにすることで、重合ロジン、テルペンフェノールおよび脂環族石油樹脂、ガムロジン、ロジングリセリンエステルから選ばれる少なくとも1つが、低または中重合度のブチラール樹脂およびエチルセルロースに相溶する。その結果、グリーンシートと内部電極パターン層との接着性を良好にし、シート積層性(スタック性)を向上させることができる。さらに、上述した粘着付与剤を含有させることにより、焼成温度の高いエチルセルロースの含有量を減らすことができるため、脱バインダが容易となる。
また、沸点が300℃以上かつ前記有機バインダを膨潤させるまたは前記有機バインダと相溶する可塑剤を、上記の比率で含有させることで、よりシート積層性(スタック性)を向上させることができる。
本発明に係る方法により製造される積層セラミック電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、積層セラミックインダクタ、積層セラミックLC部品、多層セラミック基板等が例示される。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図、
図2(A)〜図2(C)は図1に示す積層セラミックコンデンサの製造工程の一部を示す要部断面図、
図3(A)および図3(B)は、図2(A)〜(C)に示す製造工程の続きを示す要部断面図である。
本実施形態では、積層セラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを例示して説明する。
積層セラミックコンデンサ
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素体10を有する。このコンデンサ素体10の両側端部には、素体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4,4が形成してある。内部電極層3は、各側端面がコンデンサ素体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4,4は、コンデンサ素体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
コンデンサ素体10の外形や寸法には特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、通常、外形はほぼ直方体形状とし、寸法は通常、縦(0.4〜5.6mm)×横(0.2〜5.0mm)×高さ(0.2〜1.9mm)程度とすることができる。
誘電体層2は、後述する図2(A)〜図2(C)に示すセラミックグリーンシート30が焼成されて形成され、その材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。誘電体層2の厚みは、本実施形態では、好ましくは1μm以下に薄層化されている。
内部電極層3は、後述する図2(B)、図2(C)に示す所定パターンの内部電極パターン層40を焼成して形成される。内部電極層3の厚みは、本実施形態では、好ましくは1μm以下に薄層化されている。
外部電極4の材質は、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。外部電極4の厚みも特に限定されないが、通常10〜50μm程度である。
積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1の製造方法の一例を説明する。
誘電体ペーストの準備
(1)まず、焼成後に図1に示す誘電体層2を構成することになるセラミックグリーンシートを製造するために、誘電体ペーストを準備する。
本実施形態では、誘電体ペーストは、セラミック粉末と有機ビヒクルとを混練して得られる有機溶剤系ペーストで構成される。
セラミック粉末としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、混合して用いることができる。セラミック粉末は、通常、平均粒子径が2.0μm以下、好ましくは0.1〜0.8μm程度の粉体として用いられる。なお、きわめて薄いセラミックグリーンシートを形成するためには、セラミックグリーンシート厚みよりも細かい粉体を使用することが望ましい。
有機ビヒクルに用いられる有機バインダとしてのブチラール樹脂は、本実施形態では、ポリビニルブチラール樹脂である。ポリビニルブチラール樹脂は、セラミック粉体100重量部に対して、好ましくは5重量部超10重量部未満、より好ましくは6〜9重量部含有される。ポリビニルブチラール樹脂の含有量が少なすぎると、シート積層性(スタック性)が悪化する傾向にあり、多すぎると、脱バインダ工程において完全に除去されず、焼結体にクラックが多く発生する傾向にある。
本発明では、ポリビニルブチラール樹脂の重合度は、350〜1000(ただし、1000を除く)、好ましくは500〜1000(ただし、1000を除く)である。本実施形態では、重合度が、低あるいは中重合度のポリビニルブチラール樹脂を使用することができる。ポリビニルブチラール樹脂の重合度を低くすることにより、樹脂のガラス転移温度が低くなり、グリーンシートの柔軟性が向上する。その結果、積層工程において加熱圧着すると、グリーンシートの変形が大きくなるため、グリーンシート同士の接着がより容易となる。
重合度が小さすぎると、バインダとしての機能を果たすことができないため、グリーンシートを形成することができず、大きすぎると、グリーンシートと内部電極パターン層との接着性が悪化し、焼結体にクラックが多く発生する傾向にある。
ブチラール化度が小さすぎると、ポリビニルブチラール樹脂の特性変化によりグリーンシートと内部電極パターン層との接着性(スタック性)が悪化する傾向にある。なお、ブチラール化度は、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドとのブチラール化反応により決まり、その上限は、81.6モル%である。また、ポリビニルブチラール樹脂中の残留アセチル基量は、好ましくは6%未満、より好ましくは3%以下である。
有機ビヒクルに用いられる有機溶剤は、特に限定されるものではなく、メチルエチルケトン、ブチルカルビトール、アセトン、トルエンなどが用いられる。
誘電体ペースト中の各成分の含有量は、特に限定されるものではなく、たとえば、1〜50重量%の溶剤を含むように、誘電体ペーストを調製することができる。
誘電体ペースト中には、必要に応じて、各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されていてもよい。誘電体ペースト中に、これらの添加物を添加する場合には、総含有量を、約10重量%以下にすることが望ましい。
可塑剤としては、フタル酸ジオクチルやフタル酸ベンジルブチルなどのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。可塑剤を配合する場合の塗料中における可塑剤の重量割合は、特に限定されないが、バインダ100重量部に対して、好ましくは40〜70重量部である。可塑剤が少なすぎると、グリーンシートの伸びおよび可撓性が悪化する傾向にあり、多すぎると、グリーンシート表面に可塑剤が滲み出し、取り扱いが困難である。
本実施形態では、有機ビヒクル中の有機バインダとしてポリビニルブチラール樹脂を用いるので、この場合の可塑剤の含有量は、ポリビニルブチラール樹脂100重量部に対して、25〜100重量部であることが好ましい。
誘電体ペーストは、上記各成分を、ボールミルなどで混練し、スラリー化することにより得ることができる。
セラミックグリーンシートの形成
(2)次に、この誘電体ペーストを用いて、ワイヤーバーコータやドクターブレード法などにより、図2(A)に示すように、支持体としてのキャリアシート20上に、好ましくは1μm以下程度の厚みで、セラミックグリーンシート30を形成する。
キャリアシート20としては、たとえばPETフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、セラミックグリーンシート30が形成される面には、離型処理(シリコーンなどのコーティング)がしてあるものが好ましい。キャリアシート20の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜100μmである。
本実施形態では、後述するように、支持体としてのキャリアシート20上に形成されたセラミックグリーンシート30と、内部電極パターン層40とを熱圧着しながら交互に積層する(熱圧着工程)。この場合、シートを積層してから支持体を剥離するため、積層の際にグリーンシートの強度はあまり問題とならない。そのため、グリーンシートの強度に影響を与えるポリビニルブチラール樹脂の重合度の低いものを選択することができる。また、厚みが1.0μm以下の極めて薄いグリーンシートであっても、ハンドリング性を損なうことはない。
セラミックグリーンシート30は、キャリアシート20に形成された後に乾燥される。セラミックグリーンシート30の乾燥温度は、好ましくは50〜100℃であり、乾燥時間は、好ましくは1〜20分である。
乾燥後のセラミックグリーンシート30の厚みは、乾燥前の厚みから5〜25%収縮する。本実施形態では、乾燥後のセラミックグリーンシート30の厚みが、好ましくは0.4〜0.8μm、さらに好ましくは0.4〜1.0μmとなるように形成する。近年望まれている薄層化の要求に応えるためである。なお、グリーンシートの厚みが厚すぎると、内部電極パターン層の厚みによっては、1層あたりのバインダ樹脂含有量が多くなってしまい、焼成後にクラックなどの内部構造欠陥が発生する傾向にある。
内部電極ペーストの準備
(3)次に、焼成後に図1に示す内部電極層3を構成することになる内部電極パターン層40を、上記のセラミックグリーンシートの表面に形成するために、内部電極ペーストを準備する。
内部電極ペーストは、導電体粉末と有機ビヒクルとを混練して得られる有機溶剤系ペーストで構成される。
導電体粉末としては、特に限定されないが、Cu、Niおよびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種で構成してあることが好ましく、より好ましくはNiまたはNi合金、さらにはこれらの混合物で構成される。
NiまたはNi合金としては、Mn、Cr、CoおよびAlから選択される少なくとも1種の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P、Fe、Mgなどの各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。
このような導電体粉末は、球状、リン片状等、その形状に特に制限はなく、また、これらの形状のものが混合したものであってもよい。また、導電体粉末の粒子径は、通常、球状の場合、平均粒子径が0.5μm以下、好ましくは0.01〜0.2μm程度のものを用いる。より一層確実に薄層化を実現するためである。
導電体粉末は、内部電極ペースト中に、好ましくは30〜60重量%、より好ましくは40〜55重量%含まれる。
有機ビヒクルは、有機バインダと溶剤とを主成分として含有するものであり、他に粘着付与剤、可塑剤および溶剤などが含まれる。
本発明では、有機バインダはエチルセルロース、ブチラール、アクリルから選ばれる少なくとも1つであり、好ましくはエチルセルロースである。
前記粘着付与剤は重合ロジン、テルペンフェノールおよび脂環族石油樹脂、ガムロジン、とジングリセリンエステルから選ばれる少なくとも1つであり、好ましくは重合ロジンまたは、テルペンフェノールである。
前記可塑剤は、沸点が300℃以上(760mmHg)であり、かつ前記有機バインダを膨潤させるまたは前記有機バインダと相溶する。具体的には、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチルなどのフタル酸エステル類、フタル酸アジペート(DOA)などのアジピン酸エステル類、燐酸トリクレシルなどの燐酸エステル類、ブチルフタリルブチルグリコレートなどのグリコール類から選ばれる少なくとも1つが好ましく、より好ましくはフタル酸エステルである。
溶剤としては、シートアタック現象を防止するために、セラミックグリーンシートに含まれるポリビニルブチラール樹脂を良好に膨潤または溶解させない、すなわち、非相溶のものが好ましい。具体的には、α−ターピニルアセテート、イソボニルアセテート、イソボニルプロピオネート、イソボニルブチレート、イソボニルイソブチレート、ジヒドロターピニルアセテート、ジヒドロターピニルメチルエーテル、ターピニルメチルエーテル、l−ジヒドロカルビルアセテートなどが例示される。
上述した粘着付与剤を導電性ペーストに用いることで、低または中重合度を有するブチラール樹脂を含むグリーンシートと、エチルセルロースを含む内部電極パターン層とに対し粘着性を与えることができ、さらに、上述した可塑剤を併用することで、十分に積層可能な粘着性を与えることができる。
有機バインダと粘着付与剤の合計含有量は、導電体粉末100重量部に対して、2重量部超9重量部未満、好ましくは3〜8重量部である。
また、粘着付与剤の含有量は、前記有機バインダと粘着付与剤の合計含有量の、5〜50重量%である。
可塑剤の含有量は、前記有機バインダと粘着付与剤の含有量100重量部に対して、10〜150重量部であり、好ましくは25〜100重量部である。
溶剤は、内部電極ペースト中に、導電体粉末100重量部に対して、好ましくは50〜150重量部、より好ましくは80〜100重量部で含まれる。
有機バインダの含有量が少なすぎると、内部電極ペーストの粘度が低くなり、スクリーン印刷ができない傾向にある。また、含有量が多すぎると、脱バインダ性が悪化し、焼結体にクラックが多く発生する傾向にある。
有機バインダの全含有量に対する粘着付与剤の含有量が少なすぎると、シートの積層が困難となる傾向にある。また、含有量が多すぎると、内部電極ペーストの粘度が低くなり、スクリーン印刷ができない傾向にある。
可塑剤の量が少なすぎると、シートの積層性向上しない傾向にある。また、含有量が多すぎると、内部電極ペーストのハンドリング性が悪化し、さらには電極表面に可塑剤が滲み出し、乾燥が困難となる。
溶剤の量が少なすぎるとペースト粘度が高くなりすぎ、多すぎるとペースト粘度が低くなりすぎる不都合がある。
本実施形態では、内部電極ペーストは、さらに上記誘電体ペーストに含まれるセラミック粉末と同じセラミック粉末である共材を有している。内部電極ペーストが共材を有していることで、内部電極ペーストに含まれる導電体粉末と、グリーンシートに含まれるセラミック粉体との、焼成時における収縮率の違いを緩和することができる。その結果、焼結体におけるクラックの発生を抑制することができる。
共材として用いるセラミック粉末は、内部電極ペースト中に、導電体粉末100重量部に対して、好ましくは5〜50重量部で含まれる。共材量が少なすぎると、導電体粉末の焼結抑制効果が低下し、焼成後の内部電極層3のライン性(連続性)が悪化し、見かけの誘電率が低下する。一方で、共材量が多すぎると、焼成後の内部電極層3のライン性が悪化しやすくなり、見かけの誘電率も低下する傾向にある。
内部電極ペーストは、上記各成分を、ボールミルなどで混練し、スラリー化することにより得ることができる。
内部電極パターン層の形成
(4)次に、図2(B)に示すように、キャリアシート20上に形成されたセラミックグリーンシート30の表面に、所定パターンの内部電極パターン層40を形成する。
内部電極パターン層40の形成方法は、層を均一に形成できる方法であれば特に限定されないが、本実施形態では、上記の内部電極ペーストを用いたスクリーン印刷法が用いられる。
内部電極パターン層40の厚さは、好ましくは0.4〜1μmである。内部電極パターン層40の厚さが厚すぎると、グリーンシートの厚みによっては、1層あたりのバインダ樹脂含有量が多くなってしまい、焼成後にクラックが発生する傾向にある。さらに、積層数を減少せざるをえなくなり取得容量が少なくなり、高容量化しにくくなる。一方、厚みが薄すぎると均一に形成することが困難であり、電極途切れが発生しやすくなる。
内部電極パターン層40の厚さは、現状の技術では前記範囲の程度であるが、電極の途切れが生じない範囲で薄い方がより望ましい。
その後、内部電極パターン層40は、必要に応じて乾燥される。乾燥温度は、特に限定されないが、好ましくは50〜120℃であり、乾燥時間は、好ましくは1〜15分である。
余白パターン層の形成
(5)本実施形態では、セラミックグリーンシートの表面に、所定パターンの内部電極パターン層40を印刷法で形成した後、またはその前に、図2(B)に示す内部電極パターン層40が形成されていないセラミックグリーンシート30の表面隙間(余白パターン部分50)に、図2(C)に示すように、内部電極パターン層40と実質的に同じ厚みの余白パターン層60を形成する。余白パターン層60の厚さを内部電極パターン層40と実質的に同じ厚みとするのは、実質的に同じでないと段差が生じ、特に多層化した場合に影響が増大するからである。
余白パターン層60の形成方法は、本実施形態では電極段差吸収用印刷ペーストを用いたスクリーン印刷法が用いられる。
本実施形態で用いる電極段差吸収用印刷ペーストとしては、特に限定されないが、上記で作製した誘電体ペーストを用いることが、工程上好ましい。
この電極段差吸収用印刷ペーストは、図2(B)に示す内部電極パターン層40間の余白パターン部分50に印刷される。その後、内部電極パターン層40および/または余白パターン層60は、必要に応じて乾燥される。乾燥温度は、特に限定されないが、好ましくは50〜120℃であり、乾燥時間は、好ましくは1〜15分である。
外層の形成
(6)本実施形態では、上記で作製した所定パターンの内部電極パターン層40と余白パターン層60が表面に形成されたセラミックグリーンシート30を、保護するために、外層32を形成する。すなわち、所定数積層されたセラミックグリーンシート30が、外層32に挟まれる構成となる。外層32は内部電極パターン層40が形成されていないセラミックグリーンシートが1層あるいは複数積層された構成となっている。
外層用グリーンシートは、セラミックグリーンシート30と同様に、外層用誘電体ペーストを用いてキャリアシート20上に形成される。外層用誘電体ペーストとしては、上記で作製した誘電体ペーストを用いてもよいが、バインダ種、バインダ添加量、バインダ重合度などを変えたものを用いてもよい。
積層工程
次に、本実施形態では、図3(A)に示すように、キャリアシート20上に作製された外層32の上に、所定パターンの電極層40と余白パターン層60が表面に形成されたセラミックグリーンシート30を、加熱および加圧しながら積層して、キャリアシート20を剥離する。そして、図3(B)に示すように、上記の工程を所望の積層数まで繰り返し、グリーンセラミック積層体を得る。加圧温度は、50〜100℃、加圧力は、3〜25MPaとすることが好ましい。
加圧力が大きすぎると積層体が変形し、クラックなどの内部構造欠陥の要因となり、加圧力が小さすぎると、積層体の接着強度が小さくなり、良好な積層体を得ることが困難となる。
グリーンチップの作製、焼成など
(8)得られたグリーンセラミック積層体を所定サイズに切断し、グリーンチップを作製し、脱バインダ工程、焼成工程、必要に応じて行われるアニール工程を経て形成された、焼結体で構成されるコンデンサ素体10に、外部電極用ペーストを印刷または転写して焼成し、外部電極4,4を形成して、積層セラミックコンデンサ1が製造される。
本実施形態で述べた方法により、セラミックグリーンシートの厚みを薄層化し、グリーンシートに含まれるポリビニルブチラールの重合度が低あるいは中程度であっても、内部電極ペーストに含まれる粘着付与剤としての重合ロジン、テルペンフェノールおよび脂環族石油樹脂、ガムロジン、ロジングリセリンエステルから選ばれる少なくとも1つが、グリーンシートと内部電極パターン層とに相溶し粘着性を与え、さらに、沸点が300℃以上かつ前記有機バインダを膨潤させるまたは前記有機バインダと相溶する可塑剤を加えることで、より接着性を与えることができる。その結果、グリーンシートと内部電極パターン層との接着性および積層性を良好にし、積層体の不良を改善し、良好な積層体および積層セラミックコンデンサ1を提供することができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係る電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、多層セラミック基板などにも適用できることは勿論である。
また、本発明に係る方法により形成されたセラミックグリーンシート10aと、内部電極パターン12とが複数積層された積層体ユニットを所定数形成し、さらにこれらの積層体ユニットを積層することで、最終的な積層体を作製しても良い。
さらに、内部電極パターン層を転写法により形成してもよい。
以下、本発明を、以下の実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
誘電体ペーストの作製
まず、セラミックグリーンシートを形成するための誘電体ペーストを作製した。まず、BaTiO系セラミック粉末と、有機バインダとしてのポリビニルブチラール樹脂(PVB)(重合度:800)と、溶剤としてのプロピルアルコール、キシレン、メチルエチルケトン、2−ブトキシエチルアルコール、可塑剤としてのフタル酸ジオクチルを準備した。次に、セラミック粉末100重量部に対して、6重量部のPVBと、150重量部の溶剤と、可塑剤をそれぞれ秤量し、直径2mmのジルコニアボールとともにボールミルで21時間混練し、スラリー化して誘電体ペーストを得た。なお、可塑剤は、ポリビニルブチラール100重量部に対して50重量部添加した。
内部電極ペーストの作製
次いで、内部電極パターン層40を形成するための内部電極ペーストを作製した。まず、導電体粉末としての平均粒径が0.2μmのNi粒子と、共材としてのBaTiO系セラミック粉末と、有機バインダとして、エチルセルロース、ブチラール、アクリルから選ばれる少なくとも1つと、粘着付与剤として、重合ロジン、テルペンフェノールおよび脂環族石油樹脂、ガムロジン、ロジングリセリンエステルから選ばれる少なくとも1つと、可塑剤として、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ベンジルブチル(BBP)、フタル酸アジペート(DOA)、ブチルフタリルブチルグリコレート(BPBG)、燐酸トリクレシル(TCP)から選ばれる少なくとも1つと、溶剤として、α−ターピニルアセテートをボールミルなどによって混練し、スラリー化して内部電極ペーストを得た。
なお、Ni粉末の含有率を基準(100重量%)とした場合に、有機バインダと、粘着付与剤の合計含有量を2〜9重量部まで変化させた。また、粘着付与剤は、有機バインダと粘着付与剤の合計含有量に対して、0〜100重量%で含有され、沸点が300℃以上かつ前記有機バインダを膨潤させるまたは前記有機バインダと相溶する可塑剤の含有量は、有機バインダと粘着付与剤の合計含有量100重量部に対して0〜200重量部まで変化させた。
積層セラミックチップコンデンサ試料の作製
次いで、上記にて作製した誘電体ペーストと、内部電極ペーストと、を用い、以下のようにして、さらに、図1に示す積層セラミックチップコンデンサ1を製造した。
まず、支持体としてのPETフィルムの離型処理された面上に、誘電体ペーストをワイヤーバーコータにより、所定厚みで塗布し、乾燥することで、グリーンシートを作製した。
次に、得られたグリーンシートの上に、内部電極ペーストを用いたスクリーン印刷法によりパターンを形成し、85℃〜95℃で1〜2分乾燥することで、内部電極パターン層40(図2(B)参照)を形成した。
その後、グリーンシート上の内部電極パターン層40が形成されていない余白パターン部分50(図2(B)参照)に、誘電体ペーストを用いたスクリーン印刷法により内部電極パターン層40と実質的に同じ厚みの余白パターン層60(図2(C)参照)を形成し、図2(C)に示すような内部電極パターン膜40および余白パターン層60を持つセラミックグリーンシート30を得た。本実施例では、このセラミックグリーンシート30をグリーンシートとし、これを複数枚、準備した。
次に、ポリビニルブチラール樹脂の重合度を1500とした以外は、上記で作製した誘電体ペーストと同様にして、外層用グリーンシート形成用の誘電体ペーストを調製した。この誘電体ペーストをPETフィルムの離型処理された面上にワイヤーバーコータを用いて、所定厚みで塗布し、乾燥することで、外層用グリーンシートを作製した。
この外層用グリーンシートを複数枚、熱圧着積層し外層を形成した。得られた外層の上に、内部電極パターン層と余白パターン層とが形成されたセラミックグリーンシートを、温度80℃および圧力4MPaの条件で圧着し、PETフィルムを剥離した(図3(A)参照)。この工程を繰り返し、内部電極パターン層と余白パターン層とが形成されたセラミックグリーンシートを所望数積層した(図3(B)参照)。その後、さらに、上記の外層を形成し、グリーンセラミック積層体を得た。
なお、内部電極パターン層と余白パターン層とが形成されたセラミックグリーンシートの積層時には、直前に積層したセラミックグリーンシートに対し、内部電極部を短冊状の長手方向に半分だけずらし、かつ、短手方向には、各電極部が重なるように正確に位置決めを行った。
グリーンセラミック積層体の評価
得られたグリーンセラミック積層体について、接着強度の測定を行った。
グリーンセラミック積層体の接着性は、引っ張り試験機にて、積層体を引っ張り、剥離した時点での強度値を1cm角での積層体の接着強度に換算して求めた。シート接着性は、20N/cm以上が好ましく、さらに好ましくは25N/cm以上とした。結果を表1〜5に示す。
なお、上記の評価は、グリーンセラミック積層体の一方の外層を形成しない状態で行った。すなわち、外層を形成するグリーンシートについてではなく、内部電極パターン層と余白パターン層とが形成されたセラミックグリーンシートについて、グリーンシートの接着強度を評価した。
次に、得られたグリーンセラミック積層体を所定サイズに切断した後、脱バインダ処理、焼成及びアニールを下記の条件にて行い、焼結体を得た。
脱バインダは、昇温速度:15℃/時間、保持温度:280℃、保持時間:8時間、処理雰囲気:空気雰囲気、の条件で行った。
焼成は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:1200〜1380℃、保持時間:2時間、降温速度:300℃/時間、処理雰囲気:還元雰囲気(酸素分圧:10−6PaにNとHとの混合ガスを水蒸気に通して調整した)、の条件で行った。
アニールは、保持温度:900℃、保持時間:9時間、降温速度:300℃/時間、処理雰囲気:加湿したNガス雰囲気、の条件で行った。焼成及びアニールにおけるガスの加湿には、ウェッターを用い、水温は35℃とした。
焼結体の評価
得られた焼結体を切断し、その断面を観察して、積層体不良例えば、ノンラミネーション、デラミネーション等の内部構造欠陥の有無を評価した。これを10個のコンデンサ試料に対して行った。10個中、欠陥の観察される試料が3個以下であることが好ましく、10個すべてに欠陥が観察されないことがより好ましい。結果を表1〜5に示す。
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表1は、粘着付与剤を重合ロジン、テルペンフェノールおよび脂環族石油樹脂、ガムロジン、ロジングリセリンエステルと変え、さらにフタル酸ジオクチルの量を0重量部、20重量部と変化させた際の結果を示している。フタル酸ジオクチルが含有されていない場合には(試料1〜5)、いずれの粘着付与剤を添加しても接着性が乏しく、積層できなかったが、フタル酸ジオクチルを加えることで接着性が向上し、積層体不良も改善された(試料6〜10)。
表2は、粘着付与剤をテルペンフェノールとし、可塑剤としてフタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ベンジルブチル(BBP)、フタル酸アジペート(DOA)、ブチルフタリルブチルグリコレート(BPBG)、燐酸トリクレシル(TCP)それぞれ加えた際の結果を示している。
フタル酸ジエチルのみ接着効果が小さく、積層体の不良も多く見られた(試料11)。原因として、低沸点であるフタル酸ジエチルは、印刷シートの乾燥時に、揮発してしまったために、接着効果が小さかったと考えられる。そのため、有機バインダを膨潤させるまたは有機バインダと相溶する可塑剤として、沸点300℃以上の可塑剤を選ぶことが好ましい(試料12〜17)。
表3は、バインダ樹脂をエチルセルロース、ブチラール、アクリルと変えた際の結果を示している。いずれの樹脂においても接着性が保たれており、積層体の不良はなかった(試料18〜20)。
表4は、有機バインダであるエチルセルロースと粘着付与剤であるテルペンフェノールの合計量を2重量部から9重量部まで変化させた際の結果を示している。2重量部では、電極ペーストの粘度が低すぎることに起因した印刷の不良モードが多発した(試料21)。3重量部以上8重量部の量においては、良好な接着性を示し、積層体の不良もなかった(試料22〜24)。9重量部においては、積層体の接着性はあるものの、焼成後のチップ評価でデラミネーションなどの内部構造欠陥が目立った(試料25)。
表5は、テルペンフェノールの添加割合を変化させ、なおかつフタル酸ジオクチルを変化させた場合の結果を示している。表1でも述べたとおり、フタル酸ジオクチルが含有されていないサンプルでは、接着力に乏しく、積層体を作成することができなかった(試料26〜30)。フタル酸ジオクチルを10重量部以上加え、かつ粘着付与樹脂を5重量%以上添加することで積層体の接着強度が向上し、焼成後の積層体の内部構造欠陥も改善され、フタル酸ジオクチルの添加量を増加させるほど、接着力が向上した(試料32〜34、36〜44)。フタル酸ジオクチルの添加量が本発明の範囲よりも大きい場合、電極表面に可塑剤が滲み出し、乾燥できなかった(試料45〜47)。
接着性において、粘着付与剤の添加比率を多くするよりも、フタル酸ジオクチルの含有量を増加させることでより大きな効果を得ることができた。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。 図2(A)〜図2(C)は図1に示す積層セラミックコンデンサの製造工程の一部を示す要部断面図である。 図3(A)および図3(B)は、図2(A)〜(C)に示す製造工程の続きを示す要部断面図である。
符号の説明
1… 積層セラミックコンデンサ
10… コンデンサ素体
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極
20… キャリアシート
30… セラミックグリーンシート
32… 外層
40… 内部電極パターン層
50… 余白パターン部分
60… 余白パターン層

Claims (2)

  1. セラミック粉体とブチラール樹脂とを含むセラミックグリーンシートと、所定パターンの内部電極パターン層と、を交互に複数重ねて、グリーンセラミック積層体を得る工程を有する積層セラミック電子部品の製造方法であって、前記ブチラール樹脂の重合度が、350〜1000(ただし、1000を除く)であり、
    前記内部電極パターン層を形成するための内部電極ペーストが、導電体粉末と、有機バインダと、粘着付与剤と、可塑剤とを有しており、
    前記有機バインダは、エチルセルロース、ブチラール、アクリルから選ばれる少なくとも1つであり、
    前記粘着付与剤は、重合ロジン、テルペンフェノールおよび脂環族石油樹脂、ガムロジン、ロジングリセリンエステルから選ばれる少なくとも1つであり、
    前記有機バインダと粘着付与剤の合計含有量が、前記導電体粉末100重量部に対して、2重量部超9重量部未満であり、
    前記粘着付与剤の含有量が、前記有機バインダと粘着付与剤の合計含有量の5〜50重量%であり、
    前記可塑剤の含有量が、前記有機バインダと粘着付与剤の合計含有量100重量部に対して10〜150重量部であり、
    前記可塑剤は、沸点が300℃以上かつ前記有機バインダを膨潤させるまたは前記有機バインダと相溶することを特徴とする積層セラミック電子部品の製造方法。
  2. 前記可塑剤は、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチルなどのフタル酸エステル類、フタル酸アジペートなどのアジピン酸エステル類、燐酸トリクレシルなどの燐酸エステル類、ブチルフタリルブチルグリコレートなどのグリコール類から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。





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