JP2008274154A - ビニルピロリドン重合体の製造方法 - Google Patents

ビニルピロリドン重合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】K値が50〜95のビニルピロリドン重合体を短時間でしかも高濃度で製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】重合反応器中で、ビニルピロリドン水溶液中のビニルピロリドンを、ラジカル重合開始剤を用いて重合させてビニルピロリドン重合体を製造する方法において、該ラジカル重合開始剤が70℃の半減期が100〜2000分かつ95℃の半減期が5〜50分である油溶性のラジカル重合開始剤であり、該重合が40〜60℃で重合を開始させ、平均0.5〜3℃/分の速度で85〜100℃まで昇温させ、その後重合終了までその温度範囲を維持することによりK値が50〜95のビニルピロリドン重合体を製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ビニルピロリドン重合体の製造方法に関し、より詳しくは、残存ビニルピロリドン含有量および2−ピロリドン含有量が少なく、50〜95のK値を有するビニルピロリドン重合体を容易に製造することができるビニルピロリドン重合体の製造方法に関する。
従来のビニルピロリドンの重合方法としては、過酸化水素水を重合開始剤として用いる方法がある(DE−B922378)。しかし、この方法では、重合中にpHコントロールをする必要があった。また、過酸化水素が分子量調整剤の働きをするため、低分子量のビニルピロリドン重合体の製造には効果的であるが、高分子量のビニルピロリドン重合体を製造するには不向きであった。開始剤としてジ−tert−ブチルパーオキサイドを単独で用いる方法(特公平8−19174号公報)もあるが、ジ−tert−ブチルパーオキサイドは分解温度が高いため、100℃以上の温度および加圧下で重合を行う必要があった。
さらに重合開始剤としてアゾ系化合物を用いる方法も開示されている(特開昭64−38403号公報)。この方法でもK値の高いビニルピロリドン重合体を製造する場合、特に70以上のK値を有するビニルピロリドン重合体を製造するためには、正確な温度制御と長い反応時間が必要であった。つまり、上記特許では高いK値を有するビニルピロリドン重合体を製造する場合、所定温度を正確に維持しながら重合しなければならない。そのようにしない場合、所望のK値のビニルピロリドン重合体を得ることができない。したがって重合中、温度を一定にするために重合熱を常に冷却によって抑えなければならない。
実験スケールすなわち数百g〜数kgのビニルピロリドン単量体を重合する場合には冷却あるいは加熱による温度制御は可能であるかもしれないが、数tあるいは数十tスケールで重合する場合、冷却あるいは加熱による温度維持が困難である。特に、大きいスケールでの反応熱を抑えることは不可能である。そのため、従来では反応熱を抑えるためにビニルピロリドン単量体を徐々に反応系へ添加したり、分解速度の小さい開始剤を用いて長時間かけて重合する必要があった。そのため、重合時間が短く、所望のK値を有するビニルピロリドン重合体を容易に得られる合成方法が望まれた。
そこでさらに反応熱を利用して70℃前後から100℃近くまで昇温し、その後重合最後までその温度範囲を維持する方法が開示された(特開2003−40911号公報)。
特開2003−40911号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、重合濃度が20%以下で重合することが望ましく、20%を超える濃度では、K値を95以下に調整することが難しかった。
本発明の目的は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、K値が50〜95のビニルピロリドン重合体を短時間でしかも高濃度で容易に、製造できる方法、およびその方法により得られるビニルピロリドン重合体を提供することである。
本発明者らはK値が50〜95のビニルピロリドン重合体の製造方法について鋭意検討したところ、70℃の半減期が100〜2000分かつ95℃の半減期が5〜50分である油溶性のラジカル重合開始剤を用い、40〜60℃という低温から重合を開始させ、85〜100℃まで平均0.5〜3℃/分の速度で昇温させ、その後重合終了までその温度範囲を維持することによって、上記課題を解決することができることに想到した。重合開始からの昇温は反応熱を利用することによって特に煩雑な温度調節は必要なくなる。さらにpH調整などの操作も必要としない。また、上記重合においてビニルピロリドンの重合率が99%を超えた時点で酸を添加し反応液のpHを4以下にすることによってビニルピロリドン含有量が10重量ppm以下であり、かつ2−ピロリドン含有量が1重量%以下のビニルピロリドン重合体を短時間にしかも高濃度で容易に得られることを見出したものである。
すなわち本発明は、重合反応器中で、ビニルピロリドン水溶液中のビニルピロリドンを、ラジカル重合開始剤を用いて重合させてビニルピロリドン重合体を製造する方法において、該ラジカル重合開始剤が70℃の半減期が100〜2000分かつ95℃の半減期が5〜50分である油溶性のラジカル重合開始剤であり、該重合が40〜60℃で重合を開始させ、平均0.5〜3℃/分の速度で85〜100℃まで昇温させ、その後重合終了までその温度範囲を維持することによりK値が50〜95のビニルピロリドン重合体を製造することを特徴とするビニルピロリドン重合体の製造方法である。
本発明のビニルピロリドン重合体の製造方法においては、ビニルピロリドン水溶液が20〜40重量%の水溶液であることが好ましい。
また、前記重合開始剤は式(1)で表されるアゾニトリル化合物を好適に用いることができる。
Figure 2008274154
式中、R、Rは炭素数1または2のアルキル基を示す。
また、本発明のビニルピロリドン重合体の製造方法においては、ビニルピロリドンの重合率が99%を超えた後に酸を添加し反応液のpHを4以下にすることが好ましい。
さらに、本発明のビニルピロリドン重合体の製造方法においては、50℃の半減期が200〜10000分かつ75℃の半減期が5〜100分であるラジカル重合開始剤を併用することが好ましい。
本発明のビニルピロリドン重合体の製造方法によれば、残存ビニルピロリドン含有量および2−ピロリドン含有量が少なく、50〜95のK値を有するビニルピロリドン重合体を短時間で、かつ今まで難しかった20%を超える高濃度重合でも容易に製造することができる。また、ドラムドライヤーなどの乾燥機を使用し、ビニルピロリドン重合体溶液の乾燥物を得る場合においても、本発明にて得られる重合体は高濃度であるため、生産性が高くコスト的に有利となる。
本発明のビニルピロリドン重合体の製造方法では、ビニルピロリドン(以下VPともいう)水溶液を調製し、油溶性のラジカル重合開始剤を用いて、前記VP水溶液中のVPの重合を40〜60℃の温度条件下にて開始させ、反応熱を利用することにより反応液が85〜100℃まで平均0.5〜3℃/分の速度で昇温したのち重合終了までその温度範囲を維持することによってVP重合体を製造する。
ビニルピロリドン(VP)とは、通常、N−ビニル−2−ピロリドンをいう。VP重合体には、VPの単独重合体およびVPと他の単量体との共重合体(好ましくはVP単位を20重量%以上、より好ましくは30重量%以上含有する共重合体)が包含される。
他の単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸のアルキルエステル(メチルアクリレート、エチルアクリレートなど)、メタクリル酸のアルキルエステル(メチルメタクリレート、エチルメタクリレートなど)、アクリル酸のアミノアルキルエステル(ジエチルアミノエチルアクリレートなど)、メタクリル酸のアミノアルキルエステル、アクリル酸とグリコールとのモノエステル、メタクリル酸とグリコールとのモノエステル(ヒドロキシエチルメタクリレートなど)、アクリル酸のアルカリ金属塩、メタクリル酸のアルカリ金属塩、アクリル酸のアンモニウム塩、メタクリル酸のアンモニウム塩、アクリル酸のアミノアルキルエステルの第4級アンモニウム誘導体、メタクリル酸のアミノアルキルエステルの第4級アンモニウム誘導体、ジエチルアミノエチルアクリレートとメチルサルフェートとの第4級アンモニウム化合物、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルスルホン酸のアルカリ金属塩、ビニルスルホン酸のアンモニウム塩、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸塩、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸塩、酢酸ビニル、ビニルステアレート、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカルバゾール、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、グリコールジアクリレート、グリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、グリコールジアリエーテルなどが挙げられる。
VPの重合またはVPと他の単量体との共重合は、水媒体中での溶液重合によって行うことができる。例えば、VP水溶液に油溶性ラジカル重合開始剤を添加して重合することができる。
VP水溶液としては、VPの濃度が23〜40重量%の水溶液、好ましくは25〜40重量%の水溶液、より好ましくは25〜35重量%とする。
重合開始剤としては、70℃の半減期が100〜2000分、好ましくは100〜1000分、より好ましくは300〜700分であり、かつ95℃の半減期が5〜50分、好ましくは5〜40分、より好ましくは5〜30分である油溶性のラジカル重合開始剤が用いられる。
油溶性のラジカル重合開始剤の分解速度は水溶性のラジカル重合開始剤に比べて反応中のpHの影響を受け難い点で好ましく、70℃の半減期が100分未満の場合は、高分子量のVP重合体が得られ難くかつ反応系中のラジカル濃度が高くなり停止反応が促進されて開始剤が効率よく使われなくなる傾向があり、2000分を超える場合は重合時間が長くなる傾向がある。
前記ラジカル重合開始剤としては、油溶性アゾ化合物、例えば、式(1)で表されるアゾニトリル化合物、および油溶性過酸化物が挙げられ、特にアゾニトリル化合物が好ましい。
Figure 2008274154
式中、R、Rは炭素数1または2のアルキル基を示す。
炭素数1または2のアルキル基としては、メチル基およびエチル基を挙げることができる。RとRは同じであっても異なっていてもよい。
前記油溶性アゾ化合物の具体例としては、V−59(化合物名:2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、和光純薬工業株式会社製)、V−60(化合物名:2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、和光純薬工業株式会社製)などのアゾニトリル化合物、V−601(化合物名:ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、和光純薬工業株式会社製)などのアゾエステル化合物などを挙げることができる。また、前記油溶性過酸化物としては、オクタノイルパーオキシド(日本油脂株式会社製)、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂株式会社製)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂株式会社製)を挙げることができる。なお、油溶性のラジカル重合開始剤は、水に対して実質的に溶解しないか、または、難溶解性である。
さらに、50℃の半減期が200〜10000分かつ75℃の半減期が5〜100分であるラジカル重合開始剤を前記ラジカル重合開始剤と併用することが好ましい。具体的には、V−65(化合物名:2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、和光純薬工業株式会社製)などである。
前記ラジカル重合開始剤の添加量は、VPに対して0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜1重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%である。ラジカル重合開始剤の添加量が少なくなると重合速度が低下し、生産性が悪くなる傾向がある。また、添加量が多くなると、重合初期に激しい温度上昇を伴い、重合液が沸騰する可能性がある。
ラジカル重合開始剤は固体のまま添加してもよいし、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどの有機溶剤に溶かして添加してもよい。また、ラジカル重合開始剤は、反応液中に、一括して、または、分割して添加することができる。例えば、開始剤を反応液中に分割して添加することによって、得られるVP重合体中に残存するモノマー(VP)を極力少なくすることができる。反応途中に追加添加する開始剤は、初期添加のそれと違う種類のものが好ましく、追加添加する開始剤は、初期添加の開始剤より各温度においてその半減期が早いものの方がより好ましい。
重合開始温度は、40〜60℃、好ましくは50〜58℃とする。本発明における重合開始とは、VP水溶液に前記のラジカル重合開始剤が添加混合されることを意味する。今までの技術では、重合開始温度が低いと、重合速度が遅く、生産性が悪くなる傾向があったが、本発明では、重合開始温度が低くても、重合濃度を上げることで十分な重合速度が保て、より高い効率でVP重合体を製造することができる。
本発明のVP重合体の製造方法において、反応液の攪拌速度は特に制限されず、従来公知の速度でよい。
重合開始後、本発明の特定のラジカル重合開始剤を用いることにより、反応温度は85〜100℃に上昇する。通常反応熱により温度が上昇するため何も操作する必要はないが、放熱が激しく85℃まで温度が上昇しない場合は加熱操作により85〜100℃に調節してもよい。また突沸などの恐れがある場合は冷却しても構わない。
平均昇温速度は0.5〜3℃/分である。好ましくは0.5〜1℃/分である。昇温速度が0.5℃未満であるとK値95以下のVP重合体が得られず、3℃/分を超えると局所的に沸騰が起こり、局部で濃縮が起こりやはりK値が増大し95以下のものが得られない。
その後反応終了までその温度を維持して重合反応を行うことにより、VP重合体を製造する。この時放熱により温度が低下する場合は、温水、蒸気などにより温度を維持することもできる。85〜100℃とする理由としては、開始剤効率が最もよい範囲であり、また後に行う酸処理における残留モノマー(VP)を低減させるのに効率がよいことが挙げられる。85℃未満にすると製造時間が長くなり、100℃を超えると反応系中のラジカル濃度が高くなり停止反応が促進されて開始剤が効率よく使われなくなる。
VPは酸性水溶液中で加水分解を起こしやすいことから、重合反応液中の残留VPを低減することができるため、重合反応終了前に酸を添加するのが好ましい。酸を添加する時の温度は、前記の通り85〜100℃の温度とすることが好ましい。
添加する酸としては、ギ酸、酢酸、マロン酸、塩酸、硫酸などを例示することができる。酸の添加はVPの重合率が99%を超えた後に行い、反応液のpHを4以下、好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3以下にする。VPの重合率が99%以下の時点で酸を添加した場合、VP重合体中の2−ピロリドンおよびアセトアルデヒド含有量が増加する傾向がある。また、反応液のpHを4以下としない場合は、残留VPの加水分解速度が遅くなり、生産性が落ちる傾向がある。
前記の酸処理の後、任意の塩基性化合物により反応液を中和したり、pHを調節してもよい。
前記VP重合体の製造方法には、反応熱によって上昇する反応液の温度維持が反応釜の保温性によりさらに容易にかつ効率的に実施できるということから、反応釜伝熱面積Amと反応液体積BmのあいだにA/B<6の関係が成立する反応釜を用いて行うのが好ましい。反応釜伝熱面積とは、反応液が反応釜に接触している部分の面積である。
前記VP重合体の製造方法により、重合体中のモノマー(VP)含有量が微量、例えば仕込んだ全モノマーに対し10重量ppm以下であり、かつ2−ピロリドン含有量が1重量%以下であり、かつK値が50〜95のVP重合体を、容易に短時間で得ることができる。
前記重合反応は、通常合計0.5〜10時間でほぼ完了する。
本発明におけるK値とは、分子量の大きさをフィケンチャー(Fikentscher)法により表した式(2)で得られる値であり、以下の測定方法によって求めることができる。K値が20未満である場合には5%(g/100ml)溶液の粘度を測定し、K値が20以上の場合は1%(g/100ml)溶液の粘度を測定する。試料濃度は乾燥物換算する。K値が20以上の場合、1.0gの試料を精密に測りとり、100mlのメスフラスコに入れ、室温で蒸留水を加え、振とうしながら完全に溶かして蒸留水を加えて正確に100mlとする。この試料溶液を恒温槽(25±0.2℃)で30分間放置後、ウベローデ型粘度計を用いて試料溶液が2つの印線の間を流れる時間(流動時間)を測定する。数回測定し、平均値をとる。相対粘度を規定するために、蒸留水についても同様に測定する。2つの得られた流動時間をハーゲンバッハ−キュッテ(Hagenbach−Couette)の補正値に基づいて補正する。
K値={[300ClogZ+(C+1.5ClogZ)1/2+1.5ClogZ−C}/(0.15C+0.003C) ・・・(2)
上記式(2)中、Cは試料の濃度(%:g/100ml)、Zは濃度Cの溶液の相対粘度(ηrel)を示す。
相対粘度ηrelは次式より得られる。
ηrel=(溶液の流動時間)÷(水の流動時間)
所望の場合は、一般的な方法により、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、流動床乾燥、ドラム乾燥またはベルト式乾燥により、得られるVP重合体溶液を粉末に移行することができる。
以下に、実施例にもとづいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
(製造方法)
[実施例1]
VP700kg、水1300kgを容量約2.5mのジャケット付き釜に仕込んだ。この際の反応液体積(B)は2.0mであり、また反応釜伝熱面積(A)は10mであり、A/Bは5.0であった。チッ素パージしながら53℃に加熱し、ついでV−59をVPに対して0.18重量%(1.26kg)およびV−65をVPに対して0.1重量%(700g)を添加し、重合反応を開始した。60分後反応液の温度が95℃となるように昇温した(平均昇温速度0.7℃/分)。以後、重合終了まで反応液が90〜95℃となるようにジャケットに温水を流した。反応開始から3時間後、重合率が99%を超えたことを確認し、ギ酸をVPに対して1200重量ppm(840g)添加して、反応液のpHを4以下にさせ、1時間加熱保持した。その結果、重合時間3時間および酸処理時間1時間で、残存VP含有量が1重量ppmであり、2−ピロリドンの含有量が0.5重量%であり、K値が95であるVP重合体が得られた。
[実施例2]
VP600kg、水1400kgを容量約2.5mのジャケット付き釜に仕込んだ。この際の反応液体積(B)は2.0mであり、また反応釜伝熱面積(A)は9.0mであり、A/Bは4.5であった。チッ素パージしながら55℃に加熱し、ついでVPに対して0.38重量%(2.28kg)のV−59をイソプロピルアルコール(IPA)20.5kgに溶解させたのち添加し、重合反応を開始した。1時間後反応液の温度が93℃となるように昇温した(平均昇温速度0.63℃/分)。以後、重合終了まで反応液が85〜90℃となるようにジャケットに温水を流した。反応開始から2時間後、さらにVPに対して0.1重量%(600g)のV−59をIPA5400gに溶解させたのち添加した。反応開始から3時間後、重合率が99%を超えたことを確認し、ギ酸をVPに対して700重量ppm(420g)添加して、反応液のpHを4以下にさせ、2時間加熱保持した。その結果、重合時間3時間および酸処理時間2時間で、残存VP含有量が5重量ppmであり、2−ピロリドンの含有量が0.2重量%であり、K値が78であるVP重合体が得られた。
[実施例3]
VP800kg、水1200kgを容量約2.5mのジャケット付き釜に仕込んだ。この際の反応液体積(B)は2.0mであり、また反応釜伝熱面積(A)は9.0mであり、A/Bは4.5であった。チッ素パージしながら45℃に加熱し、ついでV−59をVPに対して0.6重量%(4.80kg)およびV−65をVPに対して0.2重量%(1.6kg)添加し、重合反応を開始した。25分後反応液の温度が100℃となるように昇温した(平均昇温速度2.2℃/分)。以後、重合終了まで反応液が88〜95℃となるようにジャケットに温水を流した。反応開始から3時間後、重合率が99%を超えたことを確認し、酢酸をVPに対して1600重量ppm(1.28kg)添加して、反応液のpHを4以下にさせ、3時間加熱保持した。その結果、重合時間3時間および酸処理時間3時間で、残存VP含有量が2重量ppmであり、2−ピロリドンの含有量が0.1重量%であり、K値が86であるVP重合体が得られた。
[実施例4]
VP3t、水7tを容量12mのジャケット付き釜に仕込んだ。この際の反応液体積(B)は10mであり、また反応釜伝熱面積(A)は45mであり、A/Bは4.5であった。チッ素パージしながら53℃に加熱し、ついでV−59をVPに対して0.25重量%(7.5kg)添加し、重合反応を開始した。60分後反応液の温度は、反応熱により90℃となった。以後、釜に熱を一切加えなかった。反応開始から2時間後、さらにV−65をVPに対して0.1重量%(3kg)添加した。反応開始から3時間後、重合率が99%を超えたことを確認し、マロン酸をVPに対して1000重量ppm(3kg)添加して、反応液のpHを4以下にさせ、3時間保持した。反応液温度は85℃であった。その後、トリエタノールアミンにて中和しpH7とした。その結果、重合時間3時間および酸処理時間3時間で、残存VP含有量が3重量ppmであり、2−ピロリドンの含有量が0.1重量%であり、K値が90であるVP重合体が得られた。
[比較例1]
VP800kg、水1200kgを容量約2.5mのジャケット付き釜に仕込んだ。この際の反応液体積(B)は2.0mであり、また反応釜伝熱面積(A)は9.0mであり、A/Bは4.5であった。チッ素パージしながら70℃に加熱し、ついで2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)をVPに対して0.6重量%(4.8kg)添加し、重合反応を開始した。反応液は、6分後に100℃となるように昇温した(平均昇温速度5℃/分)。反応開始から1時間後、重合率が99%を超えたことを確認し、酢酸をVPに対して1600重量ppm(1.28kg)添加して、反応液のpHを4以下にさせ、8時間加熱保持した。その結果、重合時間1時間および酸処理時間8時間で、残存VP含有量が3重量ppmであり、2−ピロリドンの含有量が0.5重量%であり、K値が101であるVP重合体が得られた。
[比較例2]
VP400kg、水1600kgを容量約2.5mのジャケット付き釜に仕込んだ。この際の反応液体積(B)は2.0mであり、また反応釜伝熱面積(A)は9.0mであり、A/Bは4.5であった。チッ素パージしながら55℃に加熱し、ついでt−ブチルペルオキシピバレートをVPに対して0.09重量%(360g)添加し、重合反応を開始した。重合反応は、温度56〜59℃で、5時間にわたって行った。ついで、t−ブチルペルオキシピバレートをVPに対して0.09重量%(360g)添加し、さらに2時間反応を継続させた。重合時間7時間で、残存VP含有量400重量ppmであり、2−ピロリドンの含有量が0.05重量%であり、K値が121であるVP重合体が得られた。
実施例で使用した重合開始剤の半減期は以下の通りである。
V−59:70℃半減期は400〜500分。95℃半減期は10〜20分。
V−65:50℃半減期は600〜800分。75℃半減期は10〜20分。
2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル):70℃半減期は5分未満。
t−ブチルペルオキシピバレート:70℃半減期は30〜40分、95℃半減期は4〜6分。
(評価方法)
K値:前記の方法により測定した。
残存VP(残存単量体)含有量(対固形分ppm):液体クロマトグラフィーを用いて235nmの吸収強度により、得られたVP重合体中に残存するVPの含有量を測定した。
重合率:100−残存VP(残存単量体)含有量(対固形分%)。
2−ピロリドン含有量:HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により分離し、UV検出器を用いて210nmにおける吸収強度を測定することにより定量した。
固形分:重合により得られたポリマー水溶液約5gを精秤し、105℃で12時間乾燥させ、蒸発残分を固形分として算出した。
(結果)
70℃の半減期が400〜500分であり、かつ95℃の半減期が10〜20分であるV−59(2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル))を重合開始剤として用いた実施例2、V−65(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))を併用した実施例1、3、4では、重合開始剤に2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)もしくはt−ブチルペルオキシピバレートを用いた比較例1および比較例2に比べ、残存VP含有量および2−ピロリドン含有量の少ない、K値が50〜95のVP重合体を得ることができた。また、重合反応開始温度が40〜60℃の範囲から0.5〜3℃/分の速さで昇温し85℃以上に達している実施例1〜4では、重合開始温度が高く昇温速度の早い比較例1に比べ、安全にかつ容易にK値をコントロールでき、重合反応終了前に酸を添加した実施例1〜4では、酸を添加しない比較例2に比べ、残存VP含有量の少ないVP重合体を得ることができた。
本発明のビニルピロリドン重合体の製造方法は、比較的大量のビニルピロリドン重合体を製造する場合に特に有用であり、得られたビニルピロリドン重合体は、例えば、化粧料や洗浄剤、医薬品等の乳化剤やバインダーとして有用である。

Claims (5)

  1. 重合反応器中で、ビニルピロリドン水溶液中のビニルピロリドンを、ラジカル重合開始剤を用いて重合させてビニルピロリドン重合体を製造する方法において、該ラジカル重合開始剤が70℃の半減期が100〜2000分かつ95℃の半減期が5〜50分である油溶性のラジカル重合開始剤であり、該重合が40〜60℃で重合を開始させ、平均0.5〜3℃/分の速度で85〜100℃まで昇温させ、その後重合終了までその温度範囲を維持することによりK値が50〜95のビニルピロリドン重合体を製造することを特徴とするビニルピロリドン重合体の製造方法。
  2. 前記ビニルピロリドン水溶液が23〜40重量%の水溶液である請求項1記載のビニルピロリドン重合体の製造方法。
  3. 前記重合開始剤が式(1)で表されるアゾニトリル化合物である請求項1または2記載のビニルピロリドン重合体の製造方法。
    Figure 2008274154
    (式中、R、Rは炭素数1または2のアルキル基を示す。)
  4. ビニルピロリドンの重合率が99%を超えた後に酸を添加し反応液のpHを4以下にする請求項1〜3のいずれかに記載のビニルピロリドン重合体の製造方法。
  5. 50℃の半減期が200〜10000分かつ75℃の半減期が5〜100分であるラジカル重合開始剤を併用する請求項1〜4のいずれかに記載のビニルピロリドン重合体の製造方法。
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