JP3899278B2 - ビニルラクタム系重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はビニルラクタム系重合体の製造方法に関する。さらに詳しくは、ビニルラクタム系重合体中の残留ビニルラクタム系単量体低減化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリビニルピロリドン、ポリビニルカプロラクタムなどのビニルラクタム系重合体は、生体適合性、安全性、親水性等の長所、利点があることから、様々な用途で利用されており、特にポリビニルピロリドンはフィッケンチャー法によるK値約10〜100の幅広い分子量の重合体が合成され、医薬品、化粧品、粘接着剤、塗料、分散剤、インキ、電子部品等の種々の分野で広く用いられている。
【0003】
ところが、これらビニルラクタム系重合体製品にはしばしば未重合のビニルラクタム系単量体が残留することがある。残留する単量体の量は通常1%〜数100ppmのレベルであるが、このような少量の残留単量体でも 特に毒性の懸念および臭気の点で問題となり、近年、特に医薬品、化粧品用途を中心に、残留単量体低減の要望が増加しつつある。
【0004】
ビニルラクタム系重合体から残留単量体を除去する方法として、特公平7−59606号にはビニルピロリドン重合体水溶液を吸着剤で処理する方法が提案されている。しかしながら、このような方法は、高粘度を有する重合体水溶液に対しては適用が困難であるばかりでなく、使用した吸着材の再生や廃棄といった処理が必要になり、コストアップの要因となっていた。
【0005】
他方、ビニルラクタム系単量体は特に酸性領域で加水分解しやすいという性質を利用して、ビニルラクタム系重合体水溶液に酸を添加し、残留単量体を低減する方法が提案されている。たとえば、特表平7−503749号にはビニルラクタム系重合体水溶液に炭酸、ギ酸、酢酸、リン酸、硫酸を添加して50〜150℃で加熱する方法が記載されている。
【0006】
このような方法では、炭酸、ギ酸、酢酸の揮発性酸を用いた場合、反応温度を80℃以上とすると、上記酸が揮発し、系外に逃げるかもしくは気相部に移行してしまい、液中のpHを希望の値に保つことができず、残留単量体を速やかに低減させることが困難であった。一方、反応温度を80℃以下とすると酸の揮発は少なくなるが、残留単量体を速やかに低減させることが困難であった。また、重合体溶液を乾燥させる際にこれらの酸が揮発し、所望のpH値の乾燥物が得られない場合があった。さらに、リン酸、硫酸等の無機酸を用いた場合、得られた水溶液中あるいは乾燥した後の固体中の灰分が増加するという問題点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これらの状況を鑑み、特願2001−235831ではシュウ酸やコハク酸等の多価カルボン酸を用いて残留単量体を低減する方法が提案されている。しかしながら、シュウ酸等の一部の酸はカルシウムやマグネシウムと塩を形成するが、この塩は水に難溶である。すなわち、シュウ酸等の一部の酸をビニルラクタム系重合体の残留単量体の低減剤として使用すると、得られるビニルラクタム系重合体を硬水に溶解させた際に、濁りが生じるという問題があることが明らかになった。また、コハク酸等の酸を用いた場合には、得られるビニルラクタム系重合体の保存安定性が悪くなるといった問題があることが判明した。
【0008】
すなわち、本発明の課題は、残留単量体を速やかに低減することができ、しかも保存安定性が良く、上記の欠点を持たない、ビニルラクタム系重合体の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ビニルラクタム系単量体を必須成分とする重合性単量体を重合させた後、有機酸を添加して残存ビニルラクタム系単量体量を低減する工程を含むビニルラクタム系重合体の製造方法において、特定の有機酸を用いるにより前記課題が解決されることを見出した。そして、本発明により得られるビニルラクタム系重合体は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンを多く含有するような硬水に溶解した際にも、透明清澄な水溶液が得られるばかりでなく、保存時の分子量の低下が抑制された、品質の安定したものである。
【0010】
すなわち、本発明は、ビニルラクタム系単量体を必須成分とする重合性単量体を重合させた後、有機酸を添加して残存ビニルラクタム系単量体量を低減する工程を含むビニルラクタム系重合体の製造方法において、該有機酸が多価カルボン酸で、該有機酸のカルボキシル基の第1解離定数が3.0以下で、かつそのカルシウム塩の20℃での水への溶解度が0.1重量%以上であることを特徴とするビニルラクタム系重合体の製造方法に関するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の一形態について詳しく説明する。
【0012】
本発明の製造方法においては、ビニルラクタム系単量体を必須成分とする重合性単量体成分を重合する工程を含む。
【0013】
前記ビニルラクタム系単量体とは、下記一般式(1);
【0014】
【化1】
【0015】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基を表わす。mは、1〜3の整数を表わす。)で表わされる化合物であり、たとえば、ビニルピロリドン、ビニルピペリドン、ビニルカプロラクタム等が挙げられ、それらの1種または2種以上を用いることができる。
【0016】
前記のビニルラクタム系単量体のうち、汎用性が高いことから、ビニルピロリドンが好ましい。
【0017】
上記ビニルラクタム系単量体を必須成分とする重合性単量体成分においては、ビニルラクタム系単量体以外の単量体を含んでいてもいなくてもよいが、ビニルラクタム系単量体の使用量としては、たとえば、単量体成分全量に対して、1.0モル%以上であることが好ましい。1.0モル%未満であると、得られるビニルラクタム系重合体が、ビニルラクタム構造に由来する種々の特性を発現しないおそれがある。より好ましくは、10モル%以上であり、さらに好ましくは、20モル%以上である。
【0018】
前記ビニルラクタム系単量体以外の重合性単量体としては、ビニルラクタム系単量体と共重合可能な重合性単量体であれば特に限定されず、たとえば以下の1)〜13)の化合物の1種または2種以上を用いることができる。
【0019】
1)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;2)(メタ)アクリルアミドおよびN−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体類;3)ジメチルアミノエチル(メタ)アクリル酸エステル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、2−ビニルイミダゾール等の塩基性不飽和単量体およびその塩または第4級化物;4)ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、ビニルオキサゾリドン等のビニルアミド類;5)(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体およびその塩;6)無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物類;7)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;8)ビニルエチレンカーボネートおよびその誘導体;9)スチレンおよびその誘導体;10)(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチルエステルおよびその誘導体;11)ビニルスルホン酸およびその誘導体;12)メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;13)エチレン、プロピレン、オクテン、ブタジエン等のオレフィン類;等が挙げられる。これらの中でも、前記ビニルラクタム系単量体との共重合性等の点からは、上記1)〜8)が好適である。
【0020】
ビニルラクタム系重合体を得る重合反応においては、後述の任意の溶媒を用いることができるし、用いなくてもよい。該重合体中の残留ビニルラクタム系単量体を低減する工程において用いる溶媒または分散媒は、水を含有してなる水系溶媒である。前記水系溶媒中には、水以外の溶媒が入っていてもよく、その種類については特に制限されないが、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジエチレングリコール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアルキレングリコールのエーテル(アセテート)類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ―ブチロラクトン等のエステル類;ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン等の脂環式飽和炭化水素類;シクロヘキセン等の脂環式不飽和炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホン酸エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の炭酸エステル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の脂環式炭酸エステル類;等が挙げられる。
【0021】
これらのなかで特にエーテル(アセテート)類およびアミド類が好ましく、アルコール類および水のみでの使用がさらに好ましい。これらの溶媒は、単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0022】
前記水系溶媒中の水の含有量については、ビニルラクタム系単量体を含有する重合性単量体を重合させた後に、反応液中に残存するビニルラクタム系単量体を加水分解して低減できる量があれば特に制限されることはなく、好ましくは0.1重量%以上であり、さらに好ましくは1.0重量%以上であり、最も好ましくは10重量%以上である。
【0023】
また、これらの溶媒は、重合体濃度が、好ましくは1〜99重量%、さらに好ましくは5〜70重量%、最も好ましくは10〜60重量%となるように用いることが好ましい。前記水系溶媒中の水は、後述する任意の重合方法での重合工程後、反応液に添加してもよいし、重合工程中から配合しておいてもよい。
【0024】
本発明の製造方法における重合反応において、従来公知の重合開始剤、具体的には、例えば、2,2‘−アゾビスイソブチロニトリルや2,2‘−アゾビス(ジメチルブチロニトリル)や2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキシドや過酸化水素等の過酸化物等のラジカル重合系開始剤;三フッ化ホウ素またはその錯体、塩化鉄(II)、ジエチル塩化アルミニウム、ジエチル亜鉛、ヘテロポリ酸、活性白土等のカチオン重合系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;アスコルビン酸と過酸化水素、スルホキシル酸ナトリウムとt−ブチルヒドロパーオキシド、過硫酸塩と金属塩等の、酸化剤と還元剤とを組み合わせてラジカルを発生させる酸化還元型開始剤;等を用いて行なうことができる。
【0025】
重合反応における重合開始剤の濃度については、特に限定されないが、単量体成分に対して0.001〜10重量%が好ましく、0.005〜5重量%がさらに好ましく、0.01〜3重量%が最も好ましい。重合反応を行なう際には、重合開始剤の他に、適宜必要に応じて任意の連鎖移動剤、pH調節剤、緩衝剤等を用いることもできる。
【0026】
重合反応は、従来公知の重合方法、例えば、バルク重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、沈殿重合等任意の方法によって行なうことができる。
【0027】
重合反応における反応温度は、反応原料等の条件に応じて適宜設定すればよいが、好ましくは0〜250℃、さらに好ましくは20〜150℃、最も好ましくは40〜100℃である。
【0028】
また、重合反応中の反応系内の圧力は、任意の条件であって良いが、高温反応の場合は常圧または加圧が、厳密な温度制御を必要とする場合には常圧が好ましい。
【0029】
本発明が適用されるビニルラクタム系重合体のK値については時に限定されるものではないが、K値が経時的に低下しやすい高分子量の重合体の製造に本発明の製造方法を適用すると、より効果を発揮する。すなわち、K値が50〜150の重合体に適用するのが好ましく、K値が60〜120の重合体に適用するのがさらに好ましい。
【0030】
本発明においては、前記の任意の方法によって得られる重合体に対して、重合反応液に直接、後述の有機酸を添加してもよいし、重合体を前述の水系溶媒に希釈・溶解したり、水を添加した後、有機酸を添加してもよい。以下、ビニルラクタム系単量体量を低減する工程の反応系のことを反応液ということがある。
【0031】
本発明において、ビニルラクタム系重合体の反応液中に残留するビニルラクタム系単量体量を低減するために使用する有機酸は、多価カルボン酸であり、かつカルボキシル基の第1解離定数が3.0以下であり、かつカルシウム塩の20℃での水への溶解度が0.1重量%以上である。多価カルボン酸とは、1分子内に2つ以上のカルボキシル基を有してなるものである。カルボキシル基の第1解離定数とは、多価カルボン酸中の一番最初に解離するカルボキシル基の25℃での解離定数である。カルシウム塩とは、前記有機酸と、有機酸のカルボキシル基に対して0.5モルに相当するカルシウムとからなる塩である。前記カルシウム塩の水への溶解度は、水100gに対する、カルシウム塩の20℃における飽和溶解量(g)のことを指す。前記の条件を満たす有機酸としては、マロン酸、エチルマロン酸、エチルメチルマロン酸、エチルプロピルマロン酸等が挙げられ、中でもマロン酸が好ましい。
【0032】
本発明において使用される有機酸の量について、特に制限はないが、反応液のpHが5以下になるように配合することが好ましく、pHが3〜4になるように配合することがさらに好ましい。具体的には、重合反応前のビニルラクタム系単量体量に対し、100〜10000ppmが好ましく、500〜5000ppmがさらに好ましい。
【0033】
本発明の製造方法において、前記有機酸は、ビニルラクタム系重合体の反応液中に残留するビニルラクタム系単量体量を低減するために使用されるものである。有機酸を反応液に添加するタイミングについては特に制限されるものではないが、
有機酸を添加する際にビニルラクタム系単量体の転化率(重合率)が十分でないと、ビニルラクタム系単量体の加水分解物であるアルデヒドやラクタム量が多くなり、最終製品のビニルラクタム系重合体中に残留することがあるので好ましくない。
【0034】
ビニルラクタム系単量体の転化率が98%以上となった時点で、反応液に有機酸を添加するのが好ましく、前記転化率が99.5%以上となった時点で添加するのがさらに好ましい。
【0035】
有機酸を添加する方法については特に制限はなく、有機酸を直接反応液中に投入してもよいし、水等の任意の溶媒に希釈溶解して添加してもよく、一括添加または、分割添加や逐次添加等の任意の方法で行うことができる。
【0036】
有機酸を配合した後、より効率的に残留ビニルラクタム系単量体を低減するには40℃以上で加熱するのが好ましく、50℃〜100℃がさらに好ましい。さらに攪拌しながら行うのがより好ましいが、室温で静置させておいてもよく、任意の処置にて取り扱うことができる。
【0037】
前記有機酸を添加し、上記温度に保持する時間は特に制限はないが、5分〜24時間が好ましく、10分〜6時間がさらに好ましい。5分未満だと、残留単量体低減の効果が不十分である場合があり、24時間を超えると、重合体の分子量の低下が起こったり、着色が起こる場合がある。
【0038】
ビニルラクタム系重合体は、特に酸性領域において、酸素の影響を受けて分子量が低下しやすくなる。従って、有機酸を添加した後は、窒素ガス等を反応装置内に循環させる等により、反応装置内の気相部の酸素濃度を5%以下にしておくことが好ましく、重合工程において反応系内を不活性ガス雰囲気に調整した後、引き続いて前記の有機酸を添加してもよい。
【0039】
残留単量体の低減処理後のビニルラクタム系単量体量については特に限定はないが、最終製品のビニルラクタム系重合体に対して100ppm以下とするのが好ましく、10ppm以下とするのがさらに好ましく、1ppm以下とするのが最も好ましい。
【0040】
ビニルラクタム系単量体の低減処理後は、任意の方法でpH調整することができる。反応液に任意の塩基を添加することにより、pHを5以上とすることが好ましく、6〜10とすることがさらに好ましく、7〜9とするのが最も好ましい。前記の塩基の具体例としては炭酸グアニジン、トリエタノールアミン、アジピン酸ジヒドラジドが、pH調整が容易である、着色が少ない、安定した品質のものが得られる等の理由で好ましい。
【0041】
上記の製造方法で得られるビニルラクタム系重合体の水系溶液または水系分散体は、そのまま製品とすることができるが、従来公知の任意の乾燥方法、すなわちスプレー乾燥やドラム乾燥にて、フレーク状、シート状、スティック状、粉体等の形状に加工してもよい。
【0042】
さらに本発明においては、ビニルラクタム系重合体に対し、必要に応じて、たとえば、加工安定剤、可塑剤、分散剤、充填剤、老化防止剤、顔料、硬化剤等の各種添加剤を含ませておいても良い。
【0043】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、比較的少量の有機酸の添加でビニルラクタム系重合体に残存するビニルラクタム系単量体を低減でき、さらには硬水に溶解した際にも透明清澄な溶液を与え、保存安定性に優れたビニルラクタム系重合体を得ることができる。
【0044】
【実施例】
以下、本発明にかかる合成例および実施例について説明するが、本発明は該実施例により何ら制限されるものではない。合成例および実施例のK値については、ビニルラクタム系重合体の1重量%水溶液を用いて25℃で毛細管粘度計により相対粘度を測定する方法で測定した粘度を、次のフィッケンチャーの式に当てはめて計算した。
【0045】
K=(1.5 logηrel −1)/(0.15+0.003c)
+(300clogηrel +(c+1.5clogηrel )2)1/2/(0.15c+0.003c2)
ηrel : ビニルラクタム系重合体水溶液の水に対する相対粘度
c : ビニルラクタム系重合体水溶液中のビニルラクタム系重合体濃度(%)
合成例1
攪拌翼を備えた攪拌機、モノマー供給槽、温度計、冷却管および窒素ガス導入管を備えた2Lのフラスコに、水1280gを入れ、窒素ガスを導入し、攪拌しながら、フラスコ内温が70℃になるように加熱した。このフラスコ内に、ビニルピロリドン320gおよび2,2‘−アゾビス(ジメチルブチロニトリル)0.48gを2時間かけて系内に供給し、重合させた。同温度で2時間加熱した後、内温を90℃まで昇温し、さらに30分加熱して重合を完了させ、ポリビニルピロリドン水溶液を得た。得られたポリビニルピロリドン水溶液に含まれる未反応のビニルピロリドン残存量は、供給した全ビニルピロリドン量に対して600ppmであった。また、得られたポリビニルピロリドン水溶液のK値は92であった。
【0046】
合成例2
合成例1において2,2‘−アゾビス(ジメチルブチロニトリル)の代わりに2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.48gを用いる以外は合成例1と同様にして、ポリビニルピロリドン水溶液を得た。得られたポリビニルピロリドン水溶液に含まれる未反応のビニルピロリドン残存量は、供給した全ビニルピロリドン量に対して800ppmであった。また、得られたポリビニルピロリドン水溶液のK値は94であった。
【0047】
<実施例1>
合成例1に引き続き、ポリビニルピロリドン水溶液に、マロン酸(第1解離定数:2.8、20℃におけるカルシウム塩の溶解度:0.36重量%)0.48gを水4.5gに溶解した水溶液を加えた。得られたポリビニルピロリドン水溶液のpHは3.7であった。90℃で2時間攪拌した後、含まれる未反応のビニルピロリドン残存量は4ppmであった。さらに炭酸グアニジン0.32gおよびトリエタノールアミン0.85gを加え、30分間攪拌し、pH7.6とした。冷却後、140℃でドラム乾燥し、粉砕してK値が91のポリビニルピロリドンの粉末を得た。この粉末を、カルシウムを1000ppm含有する硬水に5%濃度で溶解したところ、溶液は透明であった。この粉末を酸素濃度0.5%の容器中に密閉し、40℃で1ヶ月保存した後のK値は90であった。
【0048】
<実施例2>
合成例2に引き続き、ポリビニルピロリドン水溶液に、マロン酸0.64gを水5.8gに溶解した水溶液を加えた。得られたポリビニルピロリドン水溶液のpHは3.5であった。90℃で2時間攪拌した後、含まれる未反応のビニルピロリドン残存量は1ppmであった。さらに炭酸グアニジン0.32gおよびトリエタノールアミン0.85gを加え、30分間攪拌し、pH7.4とした。冷却後、140℃でドラム乾燥し、粉砕してK値が93のポリビニルピロリドンの粉末を得た。この粉末を、カルシウムを1000ppm含有する硬水に5%濃度で溶解したところ、溶液は透明であった。この粉末を酸素濃度0.5%の容器中に密閉し、40℃で1ヶ月保存した後のK値は92であった。
【0049】
<比較例1>
合成例1に引き続き、ポリビニルピロリドン水溶液に、シュウ酸(第1解離定数:1.3、20℃におけるカルシウム塩の溶解度:0.0006重量%)0.48gを水4.5gに溶解した水溶液を加えた。得られたポリビニルピロリドン水溶液のpHは3.4であった。90℃で2時間攪拌した後、含まれる未反応のビニルピロリドン残存量は3ppmであった。さらに炭酸グアニジン0.32gおよびトリエタノールアミン0.85gを加え、30分間攪拌し、pH7.6とした。冷却後、140℃でドラム乾燥し、粉砕してK値が91のポリビニルピロリドンの粉末を得た。この粉末を、カルシウムを1000ppm含有する硬水に5%濃度で溶解し、室温で24時間攪拌を続けたが、溶液は白濁したままであった。この粉末を酸素濃度0.5%の容器中に密閉し、40℃で1ヶ月保存した後のK値は90であった。
【0050】
<比較例2>
合成例1に引き続き、ポリビニルピロリドン水溶液に、コハク酸(第1解離定数:4.2、20℃におけるカルシウム塩の溶解度:1.3重量%)0.48gを水4.5gに溶解した水溶液を加えた。得られたポリビニルピロリドン水溶液のpHは4.3であった。90℃で2時間攪拌した後、含まれる未反応のビニルピロリドン残存量は15ppmであった。さらに炭酸グアニジン0.32gおよびトリエタノールアミン0.85gを加え、30分間攪拌し、pH8.1とした。冷却後、140℃でドラム乾燥し、粉砕してK値が91のポリビニルピロリドンの粉末を得た。この粉末を、カルシウムを1000ppm含有する硬水に5%濃度で溶解したところ、溶液は透明であった。この粉末を酸素濃度0.5%の容器中に密閉し、40℃で1ヶ月保存すると、K値は88まで低下した。
【0051】
<比較例3>
合成例1に引き続き、ポリビニルピロリドン水溶液に、ギ酸(解離定数:3.8、20℃におけるカルシウム塩の溶解度:16.7重量%)0.48gを水4.5gに溶解した水溶液を加えた。得られたポリビニルピロリドン水溶液のpHは3.6であった。90℃で2時間攪拌した後、含まれる未反応のビニルピロリドン残存量は4ppmであった。さらに炭酸グアニジン0.32gおよびトリエタノールアミン0.85gを加え、30分間攪拌し、pH7.6とした。冷却後、140℃でドラム乾燥し、粉砕してK値が90のポリビニルピロリドンの粉末を得た。この粉末を、カルシウムを1000ppm含有する硬水に5%濃度で溶解したところ、溶液は透明であった。この粉末を酸素濃度0.5%の容器中に密閉し、40℃で1ヶ月保存すると、K値は84まで低下した。
Claims (3)
- ビニルラクタム系単量体を必須成分とする重合性単量体を重合させた後、有機酸を添加して残存ビニルラクタム系単量体量を低減する工程を含むビニルラクタム系重合体の製造方法において、該有機酸が多価カルボン酸で、該有機酸のカルボキシル基の第1解離定数が3.0以下で、かつそのカルシウム塩の20℃での水への溶解度が0.1重量%以上であることを特徴とするビニルラクタム系重合体の製造方法。
- 有機酸がマロン酸である請求項1記載のビニルラクタム系重合体の製造方法。
- ビニルラクタム系単量体がビニルピロリドンである請求項1または2記載のビニルラクタム系重合体の製造方法。
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