JP4371875B2 - N−ビニルアミド重合体及びその製造方法 - Google Patents

N−ビニルアミド重合体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、N−ビニルアミド重合体及びその製造方法に関する。より詳しくは、医薬品や化粧品、食品等の添加剤の他、粘接着剤、塗料、分散剤、インキ、電子部品等の製造原料等の各種用途に用いられるN−ビニルアミド重合体及びその製造方法に関する。
N−ビニルアミド重合体は、生体適合性、安全性、親水性等の利点があり、また、増粘剤、凝集剤等としての作用を有するものであることから、医薬品や化粧品、食品等の添加剤の他、粘接着剤、塗料、分散剤、インキ、電子部品等の製造原料として有用なものである。このようなN−ビニルアミド重合体をこれらの各種の用途に好適に用いることができるようにするためには、その品質や性能、安全性等を向上させることが重要である。
N−ビニルアミド重合体の製造においては、例えば、N−ビニルピロリドン(NVP)を水溶液重合すると、N−ビニルピロリドンの加水分解により2−ピロリドン(2−py)、アセトアルデヒド等が発生し、毒性や臭気、着色の原因となる場合がある。また、溶剤中で重合すると、単量体の加水分解を抑制することは可能であるがK値が低下することになることから、このような不具合を解消することが求められている。
従来のN−ビニルアミド重合体の製造方法に関して、以下のような開示がある。
すなわち、アゾ系開始剤を用いることで、不純物であるヒドラジンの発生を抑制し、K値の高いポリビニルピロリドン(PVP)を製造することが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。このような製造方法においては、不純物である2−ピロリドンの量に関する記載は全くないが、開示されている条件に基づいて重合すると、重合中に少なくとも0.05%は生成するものと考えられる。また、市販されているK値が90のポリビニルピロリドンには多くの場合、2−ピロリドンが0.1%以上含有されている。
ここで、このようなポリビニルピロリドン等のN−ビニルアミド重合体においては、通常では、K値によりその特性が示されている。K値とは、N−ビニルアミド重合体の1質量%水溶液について、毛細管粘度計により測定した相対粘度をフィッケンチャーの式に当てはめて計算した値であり、重合体の分子量と相関性を有するものであると考えられている。N−ビニルアミド重合体の場合、アミド結合を有し、これがゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のカラムに吸着して分子量を的確に示すことができないことから、K値が用いられている。
ビニルピロリドン重合物の製法について、連続的に1バール以上の圧力及び高温下において、有機溶剤中でビニルピロリドンをラジカル性重合開始剤の存在下に重合させることが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この製法においては、有機溶媒中、加圧下に重合することにより、不純物が少なく、K値が10〜35であるN−ビニルピロリドンの重合物が製造されることが記載されている。
N−ビニル−2−ピロリドン重合体を製造する方法について、N−ビニル−2−ピロリドンの10〜80重量%水溶液に、ジ三級ブチルパーオキシドを添加して重合させ、その際調節剤を添加して、K値が10〜100の重合体を製造することが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。この製法においては、混合物を撹拌しながら重合することが記載され、また、得られる重合体は、N−ビニル−2−ピロリドンを50重量%以上重合含有し、かつ水及び有機溶剤に澄明に溶解し、ヒドラジンが不含であることが記載されている。また、不純物である2−ピロリドンの量に関する記載は全くないが、開示されている条件に基づいて重合すると、重合中に少なくとも0.1%は生成するものと考えられる。
ビニルピロリドン重合体の製造方法について、ビニルピロリドンの水溶液に、水溶性有機過酸化物と亜硫酸塩とを添加して重合させることが開示されている。(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、この製造方法においては、亜硫酸ナトリウムの添加量が多く、得られるビニルピロリドン重合体には、灰分であるナトリウム分が重合体に対して0.1%以上程度は含まれると考えられる。
したがって、これらの製造方法においては、2−ピロリドンや灰分等の不純物の含有率が低減され、かつK値が高められたビニルピロリドン重合体を製造できる方法とする工夫の余地があった。
また水溶性重合物の製法に関して、単量体の少なくとも50重量%の水溶液を厚さが2cmを超えない薄いフィルムの形において、放射線源の下に配置された下敷きの上で照射することが開示されている(例えば、特許文献5参照。)。この製法においては、反応温度が5〜100℃であり、好ましくは熱を供給することなく行うことが記載されている。また、実施例においては、単量体としてN−ビニルピロリドンを用い、光重合開始剤としてベンゾインイソプロピルエーテルを用いることが記載されている。しかしながら、このような製造方法においては、得られる重合体の着色又は経時的な着色が避けられない。
ところで、水溶性重合体を製造する方法に関して、可動式ベルト上に、カチオン性ビニル系単量体と非イオン系界面活性剤とを含有するモノマー水溶液を3〜10mm厚さで供給し、紫外線を照射してアクリル系重合体を得ることが開示されている(例えば、特許文献6参照。)。この製造方法は、界面活性剤をモノマー水溶液に添加することにより、アクリル系重合体のゲル化を抑制しつつ高分子量化することができるものである。
また吸水性樹脂の製造方法に関して、単量体成分を静置水溶液重合する際に、得られた含水ゲル状重合体を、ピーク温度より少なくとも10℃低い温度で少なくとも30分保持することが開示されている(例えば、特許文献7参照。)。この製造方法においては、実施例で、アクリル酸やその塩を単量体成分の主成分として用いて、可動式ベルト重合機により重合することが記載されている。また、モノマー濃度としては45%以下が好ましいことが記載されている。
更に不飽和水溶性モノマーをラジカル重合する方法に関して、不飽和水溶性モノマー等を層厚さ2〜100mmでUV光を用いてラジカル重合するに当り、アントラキノン誘導体及び溶けたクロリドイオンを含有させて重合することが開示されている(例えば、特許文献8参照。)。この方法においては、(メタ)アクリルアミドを50重量%以上用いることが好ましく、ビニルピロリドンを用いてもよいことが記載されている。また、重合温度0〜100℃であり、得られる重合体は、粘結剤、仕上げ剤、糊剤等に使用されることが記載されている。
高分子固体電解質に好適なゲル状組成物に関して、環状N−ビニルラクタムを含む単量体成分を重合してなる架橋重合体と有機溶媒とを含むことが記載され(例えば、特許文献9参照。)、架橋重合体をベルトやバット上で静置重合して得ることが記載されている。また実施例において、重合開始剤としてアゾ系開始剤、環状N−ビニルラクタムとしてN−ビニル−2−ピロリドンを単量体濃度30重量%で用い、50℃で反応させることが記載されている。
また増粘剤や土壌改良剤に好適な重合体に関し、例えばN−ビニルピロリドンとアクリル酸の共重合体が記載されている(例えば、特許文献10参照。)。実施例においては、重合開始剤としてアゾ系開始剤、単量体成分としてN−ビニル−2−ピロリドン及びアクリル酸ナトリウムを用い、単量体濃度35%、反応温度45〜70℃で反応させたことが記載されている。
しかしながら、これらの製造方法においては、2−ピロリドンの生成や灰分を、同時に充分少ない量に抑えることができなかったり、得られる重合体が着色している等の課題があった。
特開平9−110912号公報(第2頁) 特開昭51−82387号公報(第1−2頁) 特開昭63−156810号公報(第2頁) 特開2002−69115号公報(第2、4−6頁) 特開昭46−2094号公報(第1、2、5頁) 特開昭61−155405号公報(第1−2頁) 特開2000−34307号公報(第2、7−10頁) 特開昭52−47084号公報(第1、3、4頁) 特開平10−101886号公報(第2、5、7頁) 特開2001−48938号公報(第2、5頁)
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、不純物の含有率や着色が低減され、かつK値が高められ、化粧品や医薬品等の種々の分野に好適に用いることができる新規なN−ビニルアミド重合体及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者等は、N−ビニルアミド重合体について種々検討したところ、特定範囲である高いK値を有するものとすることにより、基本性能に優れるものとできることを見いだした。また、N−ビニルアミド重合体の製造過程において不純物として混入するN−ビニルアミド単量体の加水分解物や灰分(無機成分)等に着目し、このような不純物の含有率が特定値以下に低減されたものとしたり、着色が低減されたものとしたりすることにより、化粧品、医薬品等の用途に好適である新規なN−ビニルアミド重合体となることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。また、N−ビニルアミド重合体の製造において、特定開始剤を用い、単量体濃度が特定範囲内にある反応液を重合することにより、不純物の少ない高いK値を有するN−ビニルアミド重合体を得ることが可能となり、特定温度範囲で重合することで、短時間で重合が可能であることより、単量体の加水分解が抑制され、より好ましく不純物が低減されたN−ビニルアミド重合体を得ることができ、液深を特定値以下として薄い層で重合することにより、除熱を容易に行うことができることから、副次的な反応が起こったり、反応が暴走して煙を発生したりするようなことがなく、N−ビニルアミド重合体を着色や不純物の含有率を充分に低減して製造できることを見いだし、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、N−ビニルアミド単量体単位を必須とするN−ビニルアミド重合体であって、上記N−ビニルアミド重合体は、K値が60以上であり、N−ビニルアミド単量体の加水分解物の含有率が0.02質量%以下であり、灰分の含有率が0.1質量%以下であり、かつ10%水溶液のJIS K0071による色相が10以下であるN−ビニルアミド重合体である。
本発明はまた、水性媒体中で単量体成分を重合する工程を含んでなるN−ビニルアミド重合体の製造方法であって、上記重合工程は、反応液における単量体濃度を40〜90質量%とし、アゾ系開始剤及び/又は過酸化水素を用いて重合するN−ビニルアミド重合体の製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
本発明のN−ビニルアミド重合体は、K値が60以上であり、60未満であると、各種用途において望まれている基本性能を充分には発揮できないこととなる。好ましい下限値としては、70であり、より好ましくは、80であり、更に好ましくは、90である。好ましい上限値としては、200であり、より好ましくは、150であり、更に好ましくは、120である。また、好ましい範囲としては、70〜200であり、より好ましくは、80〜150であり、更に好ましくは、90〜120である。
上記K値は、N−ビニルアミド重合体の1質量%水溶液について、25℃で毛細管粘度計により測定した相対粘度を、下記式であるフィッケンチャーの式にあてはめて計算することができる。
logηrel/C=[(75K )/(1+1.5KC)]+K
K=1000K
C:溶液100ml中のN−ビニルアミド重合体のg数
ηrel:相対粘度
本発明のN−ビニルアミド重合体は、特定の不純物の含有率が少なく特定されたものである。特定の不純物において、N−ビニルアミド単量体の加水分解物の含有率が0.02質量%を超えると、毒性、臭気、着色等を充分には低減することができないことになり、化粧品、医薬品等の用途において安全性等を充分に向上して好適に用いることができないことになる。好ましくは、0.002質量%以下であり、より好ましくは、0.0002質量%以下であり、更に好ましくは、0.00002質量%以下であり、特に好ましくは、実質的にN−ビニルアミド単量体の加水分解物を含有しないことである。
上記加水分解物は、N−ビニルアミド単量体が加水分解することにより生成する化合物であり、例えば、単量体としてN−ビニルピロリドンを用いる場合には、2−ピロリドン、アセトアルデヒド等を挙げることができる。
上記N−ビニルアミド単量体の加水分解物の含有率としては、液体クロマトグラフィー法により定量して求めることができる。
また灰分の含有率が0.1質量%を超えると、例えば、有機溶剤中に溶解した場合に、濁りを充分には低減できないことになり、また、医薬原料等としての適性を充分に向上することができないことになる。好ましくは、0.08質量%以下であり、より好ましくは、0.05質量%以下であり、更に好ましくは、0.02質量%以下であり、特に好ましくは、実質的に灰分を含有しないことである。
上記灰分とは、N−ビニルアミド重合体を燃焼させた後に残留する不燃性残渣であり、無機物質及びその酸化物を主成分として含有するものである。無機物質としては、例えば、ナトリウム原子、カリウム原子、マグネシウム原子、カルシウム原子等を含有する物質を挙げることができる。
上記灰分の含有率としては、日本薬局方の強熱残分の測定法に準拠して測定することができる。
上記N−ビニルアミド重合体においてはまた、該重合体の10%水溶液のJIS K0071による色相が10以下である。10を超えると、例えば、化粧品、医薬品等の用途において充分には好適に用いることができないことになる。好ましくは、8以下であり、より好ましくは、5以下である。
上記色相は、APHAにより規定されるものであり、JIS K0071に準拠して測定することができる。
上記N−ビニルアミド重合体においては、N−ビニルアミド単量体の含有率が1.5質量%以下であることが好ましい。1.5質量%を超えると、加水分解により不純物の含有率を充分に低減できなくなるおそれがある。より好ましくは、1.0質量%以下であり、更に好ましくは、0.5質量%以下である。
上記N−ビニルアミド単量体の含有率としては、上述したN−ビニルアミド単量体の加水分解物の含有率と同様に求めることができる。
本発明のN−ビニルアミド重合体の形態としては、粉体状、顆粒状、フレーク状、フィルム状、ゲル状、液状等のいずれであってもよく、特に限定されない。なお、粉体状等の場合、例えば、N−ビニルアミド単量体やその加水分解物の含有率を測定する際には、適宜溶剤等に溶解して液状とすればよい。
本発明のN−ビニルアミド重合体は、N−ビニルアミド単量体単位を必須とするものである。N−ビニルアミド単量体単位としては、N−ビニルアミド構造を有するものであればよく、例えば、下記一般式(1);
Figure 0004371875
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。RとRとは、結合して炭素数3〜5のアルキレン基を形成していてもよい。)で表される構造単位であることが好ましい。このようなN−ビニルアミド重合体としては、N−ビニルアミド単量体を必須として含有する単量体成分を重合して得られるものであることが好ましい。
上記N−ビニルアミド単量体としては、N−ビニルアミド構造を有する重合性化合物であればよく、下記一般式(2);
Figure 0004371875
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、メチル基又はエチル基を表す。RとRとは、結合して炭素数3〜5のアルキレン基を形成していてもよい。)で表される単量体であることが好ましい。
上記一般式(2)で表される単量体としては、例えば、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、N−ビニルプロピオンアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタム等が好適であり、1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、N−ビニルピロリドンが好ましい。
上記N−ビニルアミド単量体の含有量としては、単量体成分を100質量%すると、25質量%以上であることが好ましい。25質量%未満であると、親水性や吸着性等のN−ビニルアミド単量体単位由来の性質が、重合体に充分反映されないおそれがある。より好ましくは、50質量%以上であり、更に好ましくは、75質量%以上である。特に好ましくは、単量体成分のすべてがN−ビニルアミド単量体の場合である。
上記単量体成分においてはその他の共重合可能な単量体を含有していてもよく、例えば、以下のような単量体の1種又は2種以上を用いることができる。
(1)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類。
(2)(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体類。
(3)(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の塩基性不飽和単量体及びその塩又は第4級化物。
(4)ビニルオキサゾリン、イソプロペニルオキサゾリン等のイミノエーテル類。
(5)(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体及びその塩。
(6)2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル2−(ヒドロキシメチル)アクリレート、エチル2−(ヒドロキシメチル)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸モノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する不飽和単量体。
(7)無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和無水物類。
(8)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類。
(9)ビニルエチレンカーボネート及びその誘導体。
(10)スチレン及びその誘導体。
(11)(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル及びその誘導体。
(12)ビニルスルホン酸及びその誘導体;(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類及びその塩。
(13)メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(14)エチレン、プロピレン、オクテン、ブタジエン等のオレフィン類。
(15)グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する不飽和単量体。
上記N−ビニルアミド重合体の重合方法としては、例えば、水溶液重合法、有機溶媒中での溶液重合法、塊状重合法等が好適であり、反応条件等は重合法により適宜設定すればよい。また、これらの重合方法においては、熱及び/又は光重合であることが好ましい。
また重合の形態としては、撹拌重合形態、静置重合形態、ベルト重合形態等が好適である。
上記撹拌重合形態では、高濃度であるために通常の撹拌釜では反応液の粘度が高く撹拌できなかったり、除熱ができなかったりするため、ニーダー等の強力な撹拌力を有する装置を用いることや、押出し機等を用いて連続的に反応を行うことが好ましい。
上記ニーダーは、容器内部に並列した羽根を有した装置で、その羽根の回転により材料に圧縮・せん断・引張り等の外力を加え、混練を繰り返すことで、高粘度の材料であっても短時間に完全な混合を行える装置であり、容器外部や、羽根を加熱したり、冷却したりすることで容器内部の材料温度を制御できるようにされた装置がより好ましい。押出し機は、スクリュを備えた筒状の装置で単軸押出し機、2軸押出し機があり、これらも本発明のような高粘度の材料を混合するのに適した装置である。
本発明では、ニーダーや押出し機を用いて重合反応を行うだけでなく、続く後処理工程や変性工程をニーダーや押出し機を用いて行ってもよく、例えば重合終了後に酸性物質を添加し、ニーダーや押出し機で反応液と混合することで、わずかに残った残存モノマーを加水分解処理する等のことを行っても構わない。
上記ベルト重合形態では、例えば、可動式のベルト上で重合することで連続的に重合を行うことができる。ベルトの材質は特に制限はなく、金属製であってもガラスクロス等であっても構わないが、表面をフッ素加工又はテフロン(R)加工してあることが好ましい。ベルト重合装置としては、反応ブロックの酸素濃度を制御できるように反応ブロックを覆うようになっていることが好ましく、また、ベルトの裏面及び/又は上部から加熱したり冷却したりできるようになっている装置が好ましい。ベルト重合で得られた重合体は、引き続き粉砕して粉体としてもよいし、ニーダーや押出し機により後処理や変性を行っても構わない。
これらの形態の中でもベルト重合形態が好ましく、撹拌する必要がないことから、反応液の粘度や単量体濃度を高く設定することが可能となり、溶媒の除去も容易に行うことができることになる。
上記水溶液重合法を行う場合における溶媒としては、主に水を用いることとなるが、その他に水系溶媒を含有していてもよい。水系溶媒とは、水と混じり合うことができる化合物の1種又は2種以上の混合溶媒や、このような化合物に水が主成分となるように混合した混合溶媒を意味する。水と混じり合うことができる化合物としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール等のアルコール;エチレングリコール等のジオール;グリセリン等のトリオール類等の多価アルコール等が好適である。なお、これらの化合物に混じり合う反応物を混合した溶液を水系溶媒としてもよい。これらの中でも、水、又は、水とアルコールとの混合溶媒を用いることが好ましい。
上記重合においては、重合開始剤を用いてもよく、例えば、アゾ系開始剤、過酸化水素等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
上記重合開始剤の使用量としては、単量体成分100質量%に対して、0.001〜10質量%とすることが好ましい。より好ましくは、0.005質量%〜5質量%であり、更に好ましくは、0.01〜1質量%である。また、重合を行う際には、必要に応じて連鎖移動剤等を用いることもできる。
上記重合方法において、熱重合する場合の重合条件としては、単量体成分や溶媒の組成等に応じて適宜設定すればよく、重合温度としては、0〜250℃とすることが好ましい。より好ましくは、20〜200℃であり、更に好ましくは、40〜150℃である。また、反応圧力としては、高温反応の場合には常圧としてもよく、加圧してもよいが、厳密な温度制御を必要とする場合には常圧とすることが好ましい。また、重合時間としては、好ましくは、5〜120分であり、より好ましくは、10〜60分である。
また光重合する場合においては、紫外線等を照射して重合することが好ましく、紫外線を照射する装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、蛍光ケミカルランプ、蛍光青色ランプ等が挙げられる。
また紫外線の照射強度としては、単量体濃度等により適宜設定すればよく、好ましくは、10〜100W/mであり、より好ましくは、20〜50W/mである。照射時間としては、好ましくは、1〜60分であり、より好ましくは、5〜30分である。
本発明はまた、水性媒体中で単量体成分を重合する工程を含んでなるN−ビニルアミド重合体の製造方法であって、上記重合工程は、反応液における単量体濃度を40〜90質量%とし、アゾ系開始剤及び/又は過酸化水素を用いて重合するN−ビニルアミド重合体の製造方法でもある。
本発明の製造方法は、あらゆるK値を有するN−ビニルアミド重合体の製造に好適な方法であり、得られるN−ビニルアミド重合体における不純物の含有率においても、特に制限はないが、特定のK値を有し、かつ2−ピロリドン等の不純物の含有率を充分に低減されたN−ビニルアミド重合体を製造することも可能であり、生産性や経済性の点からも有利な製造方法である。
本発明の製造方法はまた、上述した本発明のN−ビニルアミド重合体を製造するのに好適な方法でもあり、上記製造方法により得られるN−ビニルアミド重合体が、K値が60以上であり、N−ビニルアミド単量体の加水分解物の含有率が0.02質量%以下であり、灰分の含有率が0.1質量%以下であり、かつ10%水溶液のJIS K0071による色相が10以下であるN−ビニルアミド重合体であることは、本発明の好ましい実施形態の一つである。
本発明においては、重合に際し、反応液の単量体濃度を40〜90質量%とすると、化粧品や医薬品等の種々の分野に好適に用いることができるN−ビニルアミド重合体を製造することが可能となる。好ましい下限値としては、55質量%であり、より好ましくは、60質量%である。好ましい上限値としては、85質量%であり、より好ましくは、80質量%である。また、好ましい範囲としては、55〜85質量%であり、より好ましくは、60〜80質量%である。
上記重合工程においては、アゾ系開始剤及び/又は過酸化水素を重合開始剤として用いることになる。アゾ系開始剤は、例えばK値が60以上のK値の高い重合体を得る場合に好適な開始剤であり、過酸化水素は、例えばK値が60未満のK値の低い重合体を得る場合に好適な開始剤である。このような重合開始剤は、上述のような割合で用いることが好ましい。アゾ系開始剤を用いる場合においては、単量体成分に対して、0.01〜1質量%用いることが好ましく、このような形態は本発明の好ましい実施形態の一つである。
上記重合工程においては、熱及び/又は光重合であることが好ましく、上述したような重合条件で重合することになる。また、重合工程において、反応液を100℃以上の温度で、3〜45分間保持することは、本発明の好ましい実施形態の一つである。N−ビニルアミド重合体は、100℃以上にしてもゲル化しにくく、また、このような操作を行うことにより、各種用途に好適に用いることができるN−ビニルアミド重合体を製造することができることになる。保持時間としては、5〜40分間であることがより好ましい。更に好ましくは、10〜35分間である。外部からの加熱及び重合熱により、反応液の温度が上昇するが、本発明では単量体濃度が高いため、常圧においても100℃以上の温度が得られる。
上記反応液を100℃以上の温度で保持する形態とは、重合開始から終了までのいずれかの間で反応液が連続して100℃以上である形態である。
本発明では、上述のように100℃以上で3分間以上保持することが反応時間を短縮する上で効果的であり、それにより2−ピロリドンの発生を抑制し、引いては着色等の防止に効果がある。従来の技術では、ベルト重合のような高濃度重合では100℃以上にすることはゲル化等の原因になり好ましくないと考えられてきたが、本発明においては、単量体成分をN−ビニルアミド単量体に限定することで、100℃以上の条件が副反応を抑制する上で効果的であるという全く想定されていない効果が見いだされたものである。
本発明においては、水性媒体及び単量体成分を含有する反応液の液深を50mm以下の状態にして重合することが好ましい。このような形態とすることにより、均一に重合が行われやすくなり、反応液を撹拌する必要がなくなり、反応液の粘度が高い場合においても充分に重合を行うことができ、また、溶媒の除去も容易に行うことができることになる。更に、不純物の混入を低減させることができることとなる。
上記液深50mm以下で重合するとは、例えば、反応器に反応液を薄く広げて重合する形態であればよく、例えば反応液を撹拌等して流動させたりせずに、静置した状態で重合する形態であることが好ましい。また、バッチ式の重合形態であっても、連続式の重合形態であってもよく、連続的に重合を行う場合には、例えばベルトコンベア型連続重合装置等を用いて重合するベルト重合の形態が好ましい。反応器としては、反応液の液深を50mm以下の状態に保持することができるものであればよく、深さのある器状のものだけでなく、例えば、反応液の粘度が高い場合には、深さのない板状のものを用いることも可能である。
上記液深において、50mmを超えると、突沸を起こし、反応物が飛散したり、異常発熱が起こる場合があり、K値の低下を充分には低減できないおそれがある。より好ましくは、35mm以下である。更に好ましくは、25mm以下であり、特に好ましくは、15mm以下である。
上記製造方法における単量体成分としては、重合することによりN−ビニルアミド重合体を形成することができる単量体であればよく、上述したN−ビニルアミド単量体を含有することが好ましい。また、これらの単量体の含有量としては、上述と同様であることが好ましく、単量体成分は、上述したその他の共重合可能な単量体を含有していてもよい。
また、重合に用いる水性媒体も、上述した水溶液重合法を行う場合における溶媒と同様であることが好ましい。
本発明のN−ビニルアミド重合体は、上述の構成よりなり、生体適合性、安全性、親水性等の利点があり、また、増粘剤、凝集剤等としての作用を充分に発揮することができ、医薬品や化粧品、食品等の添加剤の他、粘接着剤、塗料、分散剤、インキ、電子部品等の製造原料として有用なものである。また、本発明の製造方法は、各種分野に有用なN−ビニルアミド重合体を好適に製造することができるものである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
〔K値測定方法〕
N−ビニルアミド重合体の1質量%水溶液を25℃で毛細管粘度計により相対粘度を測定した結果を次式にあてはめて計算した。
logηrel/C=[(75K )/(1+1.5KC)]+K
K=1000K
C:溶液100ml中のN−ビニルアミド重合体のg数
ηrel:相対粘度
〔N−ビニルピロリドン量及び2−ピロリドン量測定方法〕
液体クロマトグラフィー法により定量した。
〔灰分測定方法〕
日本薬局方の強熱残分の測定法に準拠して行った。
〔APHA測定方法〕
JIS K0071に準拠して測定した。
実施例1
図1に示す重合反応装置を用いて実施した。N−ビニルピロリドン60部とイオン交換水40部からなる単量体水溶液を調製し、窒素バブリングすることで充分に溶存酸素を除去した。予め内部を窒素置換し、表面が100℃となるように加熱しておいた反応容器に供給口1から単量体水溶液を投入し、続いてアゾ系開始剤V−59(商品名、和光純薬工業社製、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル))0.06部をイソプロピルアルコール(IPA)1部に溶解した開始剤溶液を供給口2から投入した。反応液の反応容器内での液深は10mmであった。窒素気流下に重合を行い、約5分で反応液の温度は100℃に達した。その後、15分間、100℃以上の温度を維持し、無色透明でやや柔らかい固体状の塊が得られた。
得られたポリビニルピロリドン(PVP)の塊を分析したところ、K値は99.2、N−ビニルピロリドンが樹脂分に対して5300ppm、2−ピロリドンは0.2ppm含まれていた。また、10%水溶液のAPHAは5、灰分は200ppmであった。これらの結果を表1に示す。
実施例2
アゾ系開始剤の量を0.12部とする以外は実施例1と全く同様にして反応を行った。約5分で反応液の温度は100℃に達した。その後、12分間、100℃以上の温度を維持していた。無色透明でやや柔らかい固体状の塊が得られ、分析したところ、K値は95.3、樹脂分に対してN−ビニルピロリドンが2400ppm、2−ピロリドンは0.1ppm含まれていた。また、10%水溶液のAPHAは5、灰分は200ppmであった。これらの結果を表1に示す。
実施例3
単量体水溶液の総量を調整し、反応液の液深を15mmとした以外は実施例1と全く同様にして反応を行った。約5分で反応液の温度は100℃に達した。その後、17分間、100℃以上の温度を維持していた。無色透明でやや柔らかい固体状の塊が得られ、分析したところ、K値は100.0、樹脂分に対してN−ビニルピロリドンが5700ppm、2−ピロリドンは0.2ppm含まれていた。また、10%水溶液のAPHAは5、灰分は200ppmであった。これらの結果を表1に示す。
実施例4
図2に示す重合反応装置を用いて実施した。N−ビニルピロリドン70部とイオン交換水30部、アゾ系開始剤(V−59)0.14部からなる単量体水溶液を調製し、窒素バブリングすることで充分に溶存酸素を除去した。予め内部を窒素置換した反応容器に供給口3から単量体水溶液を投入した。反応液の反応容器内での液深は4mmであった。窒素気流下に20W/mの強度の紫外線を10分間照射して、無色透明で硬い樹脂塊を得た。
得られたポリビニルピロリドン(PVP)の塊を分析したところ、K値は92.1、N−ビニルピロリドンが樹脂分に対して4200ppm、2−ピロリドンは検出されなかった。また、5%水溶液のAPHAは5、灰分は200ppmであった。これらの結果を表1に示す。
実施例5
N−ビニルピロリドン60部とイオン交換水40部とする以外は、実施例4と全く同様にして反応を行った結果、K値は93.1、N−ビニルピロリドンが11000ppm、2−ピロリドンは検出されなかった。また、5%水溶液のAPHAは5、灰分は200ppmであった。これらの結果を表1に示す。
Figure 0004371875
表1中、「ND」とは、検出されなかったことを意味する。
比較例1
反応液の液深を55mmとした以外は実施例1と全く同様にして反応を行ったところ、反応液が突沸を起こし、安定に反応操作を行うことができなかった。
比較例2
反応液の初期モノマー濃度を40%とした以外は実施例1と全く同様にして反応を行った。反応の進行が遅く、90%以上の重合率を得るためには1時間以上の時間が必要であった。2−ピロリドンは300ppm含まれていた。
実施例6
N−ビニルピロリドン60部とイオン交換水40部からなる単量体水溶液を調製し、窒素バブリングすることで充分に溶存酸素を除去した。上記水溶液1000g/minと2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)の5%イソプロピルアルコール(IPA)溶液を12g/minをラインミキシングした後、窒素気流雰囲気下の可動式ベルト重合機に供給した。ベルトの裏から加熱することでベルト表面の温度は80℃に調整した。水溶液の厚みは20mmだった。可動式ベルトは100mm/minで駆動させ、8分後に反応系の温度は100℃を越え、約10分間100℃以上の温度を保ちつづけた。
得られたPVPを分析したところ、K値は98.0、樹脂分に対してNVPが4000ppm、2−ピロリドンは0.2ppm、灰分は100ppm、10%APHAは5であった。
実施例7
回転径120mmのシグマ型羽根を2本有した内容量13リットルのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに、N−ビニルピロリドン40部とイオン交換水60部からなる単量体水溶液を入れた。窒素ガスにより単量体水溶液を脱気し、反応系中を窒素置換した。次いでジャケットに20℃の水を通して温度を制御し、開始剤としてアゾ系開始剤(V−59)0.04部を添加した。撹拌しながら60分間反応を続行し、このとき最高到達温度は90℃であった。
得られたPVPを分析したところ、K値は92.0、樹脂分に対してNVPが4500ppm、2−ピロリドンは10ppm、灰分は100ppm、10%APHAは5であった。
図1は、実施例において用いた反応装置の概略図である。 図2は、実施例において用いた反応装置の概略図である。

Claims (5)

  1. 水性媒体中で単量体成分を重合する工程を含んでなるN−ビニルアミド重合体の製造方法であって、
    該重合工程は、反応液における単量体濃度を40〜90質量%とし、反応液を100℃以上の温度で、3〜45分間保持し、アゾ系開始剤及び/又は過酸化水素を用いて重合する
    ことを特徴とするN−ビニルアミド重合体の製造方法。
  2. 前記N−ビニルアミド単量体は、N−ビニルピロリドンである
    ことを特徴とする請求項1に記載のN−ビニルアミド重合体の製造方法。
  3. 前記重合の形態は、ベルト重合形態である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のN−ビニルアミド重合体の製造方法。
  4. 前記重合工程は、反応液における単量体濃度を55〜85質量%として重合する
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のN−ビニルアミド重合体の製造方法。
  5. 前記重合工程は、反応液の液深を50mm以下で重合する
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のN−ビニルアミド重合体の製造方法。
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