JP4371875B2 - N−ビニルアミド重合体及びその製造方法 - Google Patents
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すなわち、アゾ系開始剤を用いることで、不純物であるヒドラジンの発生を抑制し、K値の高いポリビニルピロリドン(PVP)を製造することが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。このような製造方法においては、不純物である2−ピロリドンの量に関する記載は全くないが、開示されている条件に基づいて重合すると、重合中に少なくとも0.05%は生成するものと考えられる。また、市販されているK値が90のポリビニルピロリドンには多くの場合、2−ピロリドンが0.1%以上含有されている。
ここで、このようなポリビニルピロリドン等のN−ビニルアミド重合体においては、通常では、K値によりその特性が示されている。K値とは、N−ビニルアミド重合体の1質量%水溶液について、毛細管粘度計により測定した相対粘度をフィッケンチャーの式に当てはめて計算した値であり、重合体の分子量と相関性を有するものであると考えられている。N−ビニルアミド重合体の場合、アミド結合を有し、これがゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のカラムに吸着して分子量を的確に示すことができないことから、K値が用いられている。
したがって、これらの製造方法においては、2−ピロリドンや灰分等の不純物の含有率が低減され、かつK値が高められたビニルピロリドン重合体を製造できる方法とする工夫の余地があった。
また吸水性樹脂の製造方法に関して、単量体成分を静置水溶液重合する際に、得られた含水ゲル状重合体を、ピーク温度より少なくとも10℃低い温度で少なくとも30分保持することが開示されている(例えば、特許文献7参照。)。この製造方法においては、実施例で、アクリル酸やその塩を単量体成分の主成分として用いて、可動式ベルト重合機により重合することが記載されている。また、モノマー濃度としては45%以下が好ましいことが記載されている。
更に不飽和水溶性モノマーをラジカル重合する方法に関して、不飽和水溶性モノマー等を層厚さ2〜100mmでUV光を用いてラジカル重合するに当り、アントラキノン誘導体及び溶けたクロリドイオンを含有させて重合することが開示されている(例えば、特許文献8参照。)。この方法においては、(メタ)アクリルアミドを50重量%以上用いることが好ましく、ビニルピロリドンを用いてもよいことが記載されている。また、重合温度0〜100℃であり、得られる重合体は、粘結剤、仕上げ剤、糊剤等に使用されることが記載されている。
また増粘剤や土壌改良剤に好適な重合体に関し、例えばN−ビニルピロリドンとアクリル酸の共重合体が記載されている(例えば、特許文献10参照。)。実施例においては、重合開始剤としてアゾ系開始剤、単量体成分としてN−ビニル−2−ピロリドン及びアクリル酸ナトリウムを用い、単量体濃度35%、反応温度45〜70℃で反応させたことが記載されている。
しかしながら、これらの製造方法においては、2−ピロリドンの生成や灰分を、同時に充分少ない量に抑えることができなかったり、得られる重合体が着色している等の課題があった。
本発明はまた、水性媒体中で単量体成分を重合する工程を含んでなるN−ビニルアミド重合体の製造方法であって、上記重合工程は、反応液における単量体濃度を40〜90質量%とし、アゾ系開始剤及び/又は過酸化水素を用いて重合するN−ビニルアミド重合体の製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
logηrel/C=[(75K0 2)/(1+1.5K0C)]+K0
K=1000K0
C:溶液100ml中のN−ビニルアミド重合体のg数
ηrel:相対粘度
上記加水分解物は、N−ビニルアミド単量体が加水分解することにより生成する化合物であり、例えば、単量体としてN−ビニルピロリドンを用いる場合には、2−ピロリドン、アセトアルデヒド等を挙げることができる。
上記N−ビニルアミド単量体の加水分解物の含有率としては、液体クロマトグラフィー法により定量して求めることができる。
上記灰分とは、N−ビニルアミド重合体を燃焼させた後に残留する不燃性残渣であり、無機物質及びその酸化物を主成分として含有するものである。無機物質としては、例えば、ナトリウム原子、カリウム原子、マグネシウム原子、カルシウム原子等を含有する物質を挙げることができる。
上記灰分の含有率としては、日本薬局方の強熱残分の測定法に準拠して測定することができる。
上記色相は、APHAにより規定されるものであり、JIS K0071に準拠して測定することができる。
上記N−ビニルアミド単量体の含有率としては、上述したN−ビニルアミド単量体の加水分解物の含有率と同様に求めることができる。
上記N−ビニルアミド単量体としては、N−ビニルアミド構造を有する重合性化合物であればよく、下記一般式(2);
(1)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類。
(2)(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体類。
(3)(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の塩基性不飽和単量体及びその塩又は第4級化物。
(4)ビニルオキサゾリン、イソプロペニルオキサゾリン等のイミノエーテル類。
(5)(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体及びその塩。
(6)2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル2−(ヒドロキシメチル)アクリレート、エチル2−(ヒドロキシメチル)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸モノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する不飽和単量体。
(7)無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和無水物類。
(8)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類。
(9)ビニルエチレンカーボネート及びその誘導体。
(10)スチレン及びその誘導体。
(11)(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル及びその誘導体。
(12)ビニルスルホン酸及びその誘導体;(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類及びその塩。
(13)メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(14)エチレン、プロピレン、オクテン、ブタジエン等のオレフィン類。
(15)グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する不飽和単量体。
また重合の形態としては、撹拌重合形態、静置重合形態、ベルト重合形態等が好適である。
上記撹拌重合形態では、高濃度であるために通常の撹拌釜では反応液の粘度が高く撹拌できなかったり、除熱ができなかったりするため、ニーダー等の強力な撹拌力を有する装置を用いることや、押出し機等を用いて連続的に反応を行うことが好ましい。
上記ニーダーは、容器内部に並列した羽根を有した装置で、その羽根の回転により材料に圧縮・せん断・引張り等の外力を加え、混練を繰り返すことで、高粘度の材料であっても短時間に完全な混合を行える装置であり、容器外部や、羽根を加熱したり、冷却したりすることで容器内部の材料温度を制御できるようにされた装置がより好ましい。押出し機は、スクリュを備えた筒状の装置で単軸押出し機、2軸押出し機があり、これらも本発明のような高粘度の材料を混合するのに適した装置である。
本発明では、ニーダーや押出し機を用いて重合反応を行うだけでなく、続く後処理工程や変性工程をニーダーや押出し機を用いて行ってもよく、例えば重合終了後に酸性物質を添加し、ニーダーや押出し機で反応液と混合することで、わずかに残った残存モノマーを加水分解処理する等のことを行っても構わない。
これらの形態の中でもベルト重合形態が好ましく、撹拌する必要がないことから、反応液の粘度や単量体濃度を高く設定することが可能となり、溶媒の除去も容易に行うことができることになる。
上記重合開始剤の使用量としては、単量体成分100質量%に対して、0.001〜10質量%とすることが好ましい。より好ましくは、0.005質量%〜5質量%であり、更に好ましくは、0.01〜1質量%である。また、重合を行う際には、必要に応じて連鎖移動剤等を用いることもできる。
また紫外線の照射強度としては、単量体濃度等により適宜設定すればよく、好ましくは、10〜100W/m2であり、より好ましくは、20〜50W/m2である。照射時間としては、好ましくは、1〜60分であり、より好ましくは、5〜30分である。
本発明の製造方法は、あらゆるK値を有するN−ビニルアミド重合体の製造に好適な方法であり、得られるN−ビニルアミド重合体における不純物の含有率においても、特に制限はないが、特定のK値を有し、かつ2−ピロリドン等の不純物の含有率を充分に低減されたN−ビニルアミド重合体を製造することも可能であり、生産性や経済性の点からも有利な製造方法である。
本発明の製造方法はまた、上述した本発明のN−ビニルアミド重合体を製造するのに好適な方法でもあり、上記製造方法により得られるN−ビニルアミド重合体が、K値が60以上であり、N−ビニルアミド単量体の加水分解物の含有率が0.02質量%以下であり、灰分の含有率が0.1質量%以下であり、かつ10%水溶液のJIS K0071による色相が10以下であるN−ビニルアミド重合体であることは、本発明の好ましい実施形態の一つである。
上記反応液を100℃以上の温度で保持する形態とは、重合開始から終了までのいずれかの間で反応液が連続して100℃以上である形態である。
上記液深50mm以下で重合するとは、例えば、反応器に反応液を薄く広げて重合する形態であればよく、例えば反応液を撹拌等して流動させたりせずに、静置した状態で重合する形態であることが好ましい。また、バッチ式の重合形態であっても、連続式の重合形態であってもよく、連続的に重合を行う場合には、例えばベルトコンベア型連続重合装置等を用いて重合するベルト重合の形態が好ましい。反応器としては、反応液の液深を50mm以下の状態に保持することができるものであればよく、深さのある器状のものだけでなく、例えば、反応液の粘度が高い場合には、深さのない板状のものを用いることも可能である。
上記液深において、50mmを超えると、突沸を起こし、反応物が飛散したり、異常発熱が起こる場合があり、K値の低下を充分には低減できないおそれがある。より好ましくは、35mm以下である。更に好ましくは、25mm以下であり、特に好ましくは、15mm以下である。
また、重合に用いる水性媒体も、上述した水溶液重合法を行う場合における溶媒と同様であることが好ましい。
N−ビニルアミド重合体の1質量%水溶液を25℃で毛細管粘度計により相対粘度を測定した結果を次式にあてはめて計算した。
logηrel/C=[(75K0 2)/(1+1.5K0C)]+K0
K=1000K0
C:溶液100ml中のN−ビニルアミド重合体のg数
ηrel:相対粘度
〔N−ビニルピロリドン量及び2−ピロリドン量測定方法〕
液体クロマトグラフィー法により定量した。
〔灰分測定方法〕
日本薬局方の強熱残分の測定法に準拠して行った。
〔APHA測定方法〕
JIS K0071に準拠して測定した。
図1に示す重合反応装置を用いて実施した。N−ビニルピロリドン60部とイオン交換水40部からなる単量体水溶液を調製し、窒素バブリングすることで充分に溶存酸素を除去した。予め内部を窒素置換し、表面が100℃となるように加熱しておいた反応容器に供給口1から単量体水溶液を投入し、続いてアゾ系開始剤V−59(商品名、和光純薬工業社製、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル))0.06部をイソプロピルアルコール(IPA)1部に溶解した開始剤溶液を供給口2から投入した。反応液の反応容器内での液深は10mmであった。窒素気流下に重合を行い、約5分で反応液の温度は100℃に達した。その後、15分間、100℃以上の温度を維持し、無色透明でやや柔らかい固体状の塊が得られた。
得られたポリビニルピロリドン(PVP)の塊を分析したところ、K値は99.2、N−ビニルピロリドンが樹脂分に対して5300ppm、2−ピロリドンは0.2ppm含まれていた。また、10%水溶液のAPHAは5、灰分は200ppmであった。これらの結果を表1に示す。
アゾ系開始剤の量を0.12部とする以外は実施例1と全く同様にして反応を行った。約5分で反応液の温度は100℃に達した。その後、12分間、100℃以上の温度を維持していた。無色透明でやや柔らかい固体状の塊が得られ、分析したところ、K値は95.3、樹脂分に対してN−ビニルピロリドンが2400ppm、2−ピロリドンは0.1ppm含まれていた。また、10%水溶液のAPHAは5、灰分は200ppmであった。これらの結果を表1に示す。
単量体水溶液の総量を調整し、反応液の液深を15mmとした以外は実施例1と全く同様にして反応を行った。約5分で反応液の温度は100℃に達した。その後、17分間、100℃以上の温度を維持していた。無色透明でやや柔らかい固体状の塊が得られ、分析したところ、K値は100.0、樹脂分に対してN−ビニルピロリドンが5700ppm、2−ピロリドンは0.2ppm含まれていた。また、10%水溶液のAPHAは5、灰分は200ppmであった。これらの結果を表1に示す。
図2に示す重合反応装置を用いて実施した。N−ビニルピロリドン70部とイオン交換水30部、アゾ系開始剤(V−59)0.14部からなる単量体水溶液を調製し、窒素バブリングすることで充分に溶存酸素を除去した。予め内部を窒素置換した反応容器に供給口3から単量体水溶液を投入した。反応液の反応容器内での液深は4mmであった。窒素気流下に20W/m2の強度の紫外線を10分間照射して、無色透明で硬い樹脂塊を得た。
得られたポリビニルピロリドン(PVP)の塊を分析したところ、K値は92.1、N−ビニルピロリドンが樹脂分に対して4200ppm、2−ピロリドンは検出されなかった。また、5%水溶液のAPHAは5、灰分は200ppmであった。これらの結果を表1に示す。
N−ビニルピロリドン60部とイオン交換水40部とする以外は、実施例4と全く同様にして反応を行った結果、K値は93.1、N−ビニルピロリドンが11000ppm、2−ピロリドンは検出されなかった。また、5%水溶液のAPHAは5、灰分は200ppmであった。これらの結果を表1に示す。
反応液の液深を55mmとした以外は実施例1と全く同様にして反応を行ったところ、反応液が突沸を起こし、安定に反応操作を行うことができなかった。
反応液の初期モノマー濃度を40%とした以外は実施例1と全く同様にして反応を行った。反応の進行が遅く、90%以上の重合率を得るためには1時間以上の時間が必要であった。2−ピロリドンは300ppm含まれていた。
N−ビニルピロリドン60部とイオン交換水40部からなる単量体水溶液を調製し、窒素バブリングすることで充分に溶存酸素を除去した。上記水溶液1000g/minと2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)の5%イソプロピルアルコール(IPA)溶液を12g/minをラインミキシングした後、窒素気流雰囲気下の可動式ベルト重合機に供給した。ベルトの裏から加熱することでベルト表面の温度は80℃に調整した。水溶液の厚みは20mmだった。可動式ベルトは100mm/minで駆動させ、8分後に反応系の温度は100℃を越え、約10分間100℃以上の温度を保ちつづけた。
得られたPVPを分析したところ、K値は98.0、樹脂分に対してNVPが4000ppm、2−ピロリドンは0.2ppm、灰分は100ppm、10%APHAは5であった。
回転径120mmのシグマ型羽根を2本有した内容量13リットルのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに、N−ビニルピロリドン40部とイオン交換水60部からなる単量体水溶液を入れた。窒素ガスにより単量体水溶液を脱気し、反応系中を窒素置換した。次いでジャケットに20℃の水を通して温度を制御し、開始剤としてアゾ系開始剤(V−59)0.04部を添加した。撹拌しながら60分間反応を続行し、このとき最高到達温度は90℃であった。
得られたPVPを分析したところ、K値は92.0、樹脂分に対してNVPが4500ppm、2−ピロリドンは10ppm、灰分は100ppm、10%APHAは5であった。
Claims (5)
- 水性媒体中で単量体成分を重合する工程を含んでなるN−ビニルアミド重合体の製造方法であって、
該重合工程は、反応液における単量体濃度を40〜90質量%とし、反応液を100℃以上の温度で、3〜45分間保持し、アゾ系開始剤及び/又は過酸化水素を用いて重合する
ことを特徴とするN−ビニルアミド重合体の製造方法。 - 前記N−ビニルアミド単量体は、N−ビニルピロリドンである
ことを特徴とする請求項1に記載のN−ビニルアミド重合体の製造方法。 - 前記重合の形態は、ベルト重合形態である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のN−ビニルアミド重合体の製造方法。 - 前記重合工程は、反応液における単量体濃度を55〜85質量%として重合する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のN−ビニルアミド重合体の製造方法。 - 前記重合工程は、反応液の液深を50mm以下で重合する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のN−ビニルアミド重合体の製造方法。
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