JP2012224651A - N−ビニルラクタム系重合体組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】吸湿性を低く抑えたN−ビニルラクタム系重合体組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】水溶性アゾ系重合開始剤および/または水溶性有機過酸化物と、次亜リン酸の有機アミン塩を必須に含む連鎖移動剤との存在下で重合されたN−ビニルラクタム系重合体の乾燥物を含む組成物であって、このN−ビニルラクタム系重合体は、主鎖末端に次亜リン酸の有機アミン塩に由来する構造単位を有し、かつ、組成物中のN−ビニルラクタム系重合体に対してアンモニアおよびアンモニウム塩の合計量(アンモニア換算)が、0質量%〜0.1質量%であることを特徴とするN−ビニルラクタム系重合体組成物である。
【選択図】なし
【解決手段】水溶性アゾ系重合開始剤および/または水溶性有機過酸化物と、次亜リン酸の有機アミン塩を必須に含む連鎖移動剤との存在下で重合されたN−ビニルラクタム系重合体の乾燥物を含む組成物であって、このN−ビニルラクタム系重合体は、主鎖末端に次亜リン酸の有機アミン塩に由来する構造単位を有し、かつ、組成物中のN−ビニルラクタム系重合体に対してアンモニアおよびアンモニウム塩の合計量(アンモニア換算)が、0質量%〜0.1質量%であることを特徴とするN−ビニルラクタム系重合体組成物である。
【選択図】なし
Description
本発明は、N−ビニルラクタム系重合体組成物およびその製造方法に関する。より詳しくは、吸湿の少ないN−ビニルラクタム系重合体を含む粉体組成物およびその製造方法に関するものである。
N−ビニルラクタム系重合体、例えばポリビニルピロリドンは、安全な機能性ポリマーとして、幅広い分野で用いられている。例えば、化粧品、医農薬中間体、食品添加物、感光性電子材料、粘着付与剤等の用途や、種々の特殊工業用途(例えば、中空糸膜の製造)に用いられている。特に、低分子量のポリビニルピロリドンは、上記各種用途に有用である。
低分子量のポリビニルピロリドンは、一般的に、水媒体中、金属触媒の存在下で、過酸化水素を重合開始剤として、N−ビニル−2−ピロリドンを重合することにより製造される(特許文献1、2、3参照)。特に、各種用途に有用な、分子量が比較的低いポリビニルピロリドンを、低温・短時間で、安全に製造する方法として、過酸化水素、金属触媒、アンモニアおよび/またはアミン化合物の存在下で、ビニルピロリドンを含む単量体成分の重合反応を行い、ポリビニルピロリドンを製造する方法が報告されている(特許文献3参照)。
しかし、水溶液重合によってポリビニルピロリドンを得た後、乾燥して粉体化すると、ポリビニルピロリドンの高い吸湿性が災いして、貯蔵時にブロッキングを起こす等、ハンドリング性に劣ることがあった。
上記のように、種々のN−ビニルラクタム系重合体の製造方法が提案されているものの、粉体化した後の吸湿性に着目し、吸湿性を低く抑えることのできるN−ビニルラクタム系重合体を製造する方法は知られていない。
そこで本発明では、吸湿性を低く抑えたN−ビニルラクタム系重合体組成物およびその製造方法を提供することを課題として掲げた。
本発明は、水溶性アゾ系重合開始剤および/または水溶性有機過酸化物と、次亜リン酸の有機アミン塩を必須に含む連鎖移動剤との存在下で重合されたN−ビニルラクタム系重合体の乾燥物を含む組成物であって、このN−ビニルラクタム系重合体は、主鎖末端に次亜リン酸の有機アミン塩に由来する構造単位を有し、かつ、組成物中のN−ビニルラクタム系重合体に対してアンモニアおよびアンモニウム塩の合計量(アンモニア換算)が、0質量%〜0.1質量%であることを特徴とする。
N−ビニルラクタム系重合体中の次亜リン酸の有機アミン塩に由来する構造単位が、0.01〜5質量%であること、N−ビニルラクタム系重合体のK値が60以下であることは、いずれも本発明の好ましい実施態様である。
本発明には、水溶性アゾ系重合開始剤および/または水溶性有機過酸化物と、次亜リン酸の有機アミン塩を必須に含む連鎖移動剤との存在下で、水性溶媒中で、N−ビニルラクタムを必須とする単量体成分を重合する工程および得られた重合体を乾燥する工程を含むN−ビニルラクタム系重合体組成物の製造方法も含まれる。
この場合、連鎖移動剤の使用量は、単量体成分1モルに対し、0.5〜20gとすることが好ましい。
本発明のN−ビニルラクタム系重合体組成物は吸湿性が低く抑えられているので、吸湿によるブロッキング等の不都合を起こさず、ハンドリング性良好に各種用途に適用することができた。
本発明のN−ビニルラクタム系重合体組成物は、主鎖末端に次亜リン酸の有機アミン塩に由来する構造を有するN−ビニルラクタム系重合体の乾燥物を含むものである。本発明のN−ビニルラクタム系重合体組成物は、下記重合工程および乾燥工程にて得られる。以下、本発明を詳細に説明する。
[N−ビニルラクタム系重合体の製造方法(重合工程)]
<単量体>
本発明において、N−ビニルラクタム系重合体とは、N−ビニルラクタムに由来する構造単位を有する重合体をいう。ここで、N−ビニルラクタムに由来する構造単位とは、N−ビニルラクタムがラジカル重合して形成される構造単位をいう。
<単量体>
本発明において、N−ビニルラクタム系重合体とは、N−ビニルラクタムに由来する構造単位を有する重合体をいう。ここで、N−ビニルラクタムに由来する構造単位とは、N−ビニルラクタムがラジカル重合して形成される構造単位をいう。
N−ビニルラクタムはラクタム環を有する単量体であり、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−4−ブチルピロリドン、N−ビニル−4−プロピルピロリドン、N−ビニル−4−エチルピロリドン、N−ビニル−4−メチルピロリドン、N−ビニル−4−メチル−5−エチルピロリドン、N−ビニル−4−メチル−5−プロピルピロリドン、N−ビニル−5−メチル−5−エチルピロリドン、N−ビニル−5−プロピルビロリドン、N−ビニル−5−ブチルピロリドン、N−ビニル−4−メチルカプロラクタム、N−ビニル−6−メチルカプロラクタム、N−ビニル−6−プロピルカプロラクタム、N−ビニル−7−ブチルカプロラクタム等が挙げられる。
N−ビニルラクタムの中でも、重合性が良好であり、得られる重合体の高温での色調の安定性が良好であることから、N−ビニルピロリドンおよび/またはN−ビニルカプロラクタムを必須単量体とすることが好ましい。
単量体として、N−ビニルラクタム以外のその他の単量体(以下、その他の単量体と称する)を併用しても良い。その他の単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸のアルキルエステル(メチルアクリレート、エチルアクリレート等)、メタクリル酸のアルキルエステル(メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等)、アクリル酸のアミノアルキルエステル(ジエチルアミノエチルアクリレート等)、メタクリル酸のアミノアルキルエステル、アクリル酸とグリコールとのモノエステル、メタクリル酸とグリコールとのモノエステル(ヒドロキシエチルメタクリレート等)、アクリル酸のアルカリ金属塩、メタクリル酸のアルカリ金属塩、アクリル酸のアンモニウム塩、メタクリル酸のアンモニウム塩、アクリル酸のアミノアルキルエステルの第4級アンモニウム誘導体、メタクリル酸のアミノアルキルエステルの第4級アンモニウム誘導体、ジエチルアミノエチルアクリレートとメチルサルフェートとの第4級アンモニウム化合物、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルスルホン酸のアルカリ金属塩、ビニルスルホン酸のアンモニウム塩、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸塩、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸塩、酢酸ビニル、ビニルステアレート、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカルバゾール、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、グリコールジアクリレート、グリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、グリコールジアリルエーテル等が挙げられる。
得られる重合体を例えば中空糸膜の製造に使用した場合に中空糸膜の生産性が向上することから、N−ビニルラクタムとその他の単量体の合計(以下、全単量体成分)を100質量%した場合のN−ビニルラクタムの使用割合は50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%であることが最も好ましい。従って、全単量体成分におけるその他の単量体の使用割合は、50質量%未満が好ましく、20質量%未満がより好ましく、10質量%未満がさらに好ましく、0質量%未満が最も好ましい。
なお、全単量体成分中のその他の単量体等の使用割合を計算するときは、その他の単量体が酸基の塩を有する場合は当該酸基の塩を対応する酸基として(酸換算)、アミノ基の塩を有する場合には当該アミノ基の塩を対応するアミノ基として(アミン換算)、計算するものとする。後述する全単量体成分由来の構造単位に対するその他の単量体に由来する構造等を計算する場合、N−ビニルラクタム系重合体の全質量に対する、連鎖移動剤(還元剤)由来の構造単位を計算する場合も同様に、該当する場合には酸換算、アミン換算で計算するものとする。
<重合開始剤>
単量体の重合に際しては、重合開始剤を用いる。本発明では、重合開始剤として、水溶性アゾ系重合開始剤および/または水溶性有機過酸化物を用いる。
単量体の重合に際しては、重合開始剤を用いる。本発明では、重合開始剤として、水溶性アゾ系重合開始剤および/または水溶性有機過酸化物を用いる。
ここで、「水溶性」とは、20℃において、水100質量部に対し、1質量部以上溶解する性質をいう。また、アゾ系重合開始剤とは、アゾ結合を有し、熱等によりラジカルを発生する化合物を言う。
本発明で使用可能な水溶性アゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩、2,2’−ビス(2−イミダゾリン−2−イル)[2,2’−アゾビスプロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス−(プロパン−2−カルボアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド等が例示される。これらの中でも、低分子量のN−ビニルラクタム系重合体を効率よく製造できることから、また、得られる重合体の高温での色調が良好になることから、10時間半減温度が30℃以上90℃以下であるものが好ましく、より好ましくは10時間半減温度が40℃以上70℃以下であるものである。また、カルボキシル基を有するアゾ系重合開始剤(2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]等)は、着色に悪影響を及ぼすことがあるので、使用は控えた方がよい。
本発明で使用可能な水溶性有機過酸化物としては、ターシャリーブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ターシャリーヘキシルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド等のアルキルヒドロペルオキシド;ターシャリーブチルペルオキシアセテート、ジスクシノイルペルオキシド、過酢酸等が例示される。上記有機過酸化物の中でも、低分子量のN−ビニルラクタム系重合体を効率よく製造できることから、また、得られる重合体の高温での色調が良好になることから、アルキルヒドロペルオキシドであることが好ましく、ターシャリーブチルヒドロペルオキシドであることが特に好ましい。これらの有機過酸化物の中でも、10時間半減温度が30℃以上180℃以下のものが好ましく、より好ましくは10時間半減温度が40℃以上170℃以下のものである。
本発明で使用する重合開始剤は、上記アゾ系重合開始剤、上記水溶性有機過酸化物から選択される1種または2種以上を必須とするが、その他の重合開始剤を併用しても構わない。そのような開始剤としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素等が例示される。
上記重合開始剤の使用量(複数種使用する場合はその総量)は、特に言及する場合を除き、全単量体成分1モルに対して、15g以下、より好ましくは0.1〜12gであることが好ましい。
上記重合開始剤の中でも、低分子量のN−ビニルラクタム系重合体を効率よく製造でき、かつ、得られる重合体の高温での色調が良好になることから、水溶性アゾ系重合開始剤を使用する場合には、全単量体成分の1モルに対して、1.9g以下とすることが好ましく、1.6g以下とすることがより好ましく、1.2g以下とすることがさらに好ましく、1.1g以下とすることが特に好ましい。水溶性アゾ系重合開始剤の使用量の下限は、全単量体成分1モルに対して、0.1g以上が好ましく、0.2g以上がより好ましい。水溶性有機過酸化物を使用する場合も、その使用量の好適範囲は、水溶性アゾ系重合開始剤と同様である。
重合開始剤の反応系(重合釜)への添加方法としては、特に限定はされないが、重合中に実質的に連続的に添加する量が、重合開始剤の全使用量の50質量%以上であることが好ましい。特に好ましくは80質量%以上であり、全量を連続的に添加することが最も好ましい。重合開始剤を連続的に添加する場合、その滴下速度は変えてもよい。
なお、本発明において「重合中」とは、重合開始時点以降、重合終了時点以前を表す。本発明において、「重合開始時点」とは重合装置に単量体の少なくとも一部および開始剤の少なくとも一部の両方が添加された時点を指し、「重合終了時点」とは、単量体成分の全量の重合装置への添加が終了した時点を指す。
重合開始剤は、水等の溶媒に溶解せずにそのまま添加しても良いが、水等の溶媒に溶解して反応系(重合釜)へ添加することが好ましい。
<連鎖移動剤(還元剤)>
本発明では、低分子量のN−ビニルラクタム系重合体を得るためと、主鎖末端に次亜リン酸の有機アミン塩に由来する構造を導入するために、連鎖移動剤を用いる。連鎖移動剤には、少なくとも次亜リン酸の有機アミン塩が必須的に含まれる。これにより、N−ビニルラクタム系重合体の主鎖末端に次亜リン酸の有機アミン塩に由来する構造を導入することができる。次亜リン酸の有機アミン塩に由来する構造を主鎖末端に導入するのは、得られるN−ビニルラクタム系重合体の乾燥物(粉体)の吸湿性を低く抑制することが可能になることが見出されたからである。また、次亜リン酸の有機アミン塩を連鎖移動剤として用いることで、低分子量のN−ビニルラクタム系重合体を効率よく製造できる。さらに、N−ビニルラクタム系重合体の高温における色調が特に良好になるという効果もある。
本発明では、低分子量のN−ビニルラクタム系重合体を得るためと、主鎖末端に次亜リン酸の有機アミン塩に由来する構造を導入するために、連鎖移動剤を用いる。連鎖移動剤には、少なくとも次亜リン酸の有機アミン塩が必須的に含まれる。これにより、N−ビニルラクタム系重合体の主鎖末端に次亜リン酸の有機アミン塩に由来する構造を導入することができる。次亜リン酸の有機アミン塩に由来する構造を主鎖末端に導入するのは、得られるN−ビニルラクタム系重合体の乾燥物(粉体)の吸湿性を低く抑制することが可能になることが見出されたからである。また、次亜リン酸の有機アミン塩を連鎖移動剤として用いることで、低分子量のN−ビニルラクタム系重合体を効率よく製造できる。さらに、N−ビニルラクタム系重合体の高温における色調が特に良好になるという効果もある。
次亜リン酸の有機アミン塩を反応系(重合釜)に存在させるには、次亜リン酸の有機アミン塩を反応系に添加する態様、次亜リン酸と有機アミンとを別々に反応系に添加する態様、次亜リン酸の有機アミン塩以外の塩(例えば金属塩等)と有機アミンとを反応系に添加する態様、いずれでも構わない。なかでも、次亜リン酸と有機アミンとを別々に反応系に添加する態様が簡便で好ましい。
次亜リン酸の有機アミン塩(あるいは次亜リン酸と有機アミン)は、重合開始前に反応容器(重合釜)に添加しても良い(初期仕込みという)し、全部またはその一部を重合中に反応容器(重合釜)に添加しても良い。なお、本発明において「重合開始前」とは、上記重合開始時点より前を表し、「重合終了後」とは、上記重合終了時点より後を表す。次亜リン酸の有機アミン塩(あるいは次亜リン酸と有機アミン)は、重合中に反応系(重合釜)へ実質的に連続的に添加する場合は、例えば、実質的に連続的に添加する量を全使用量の50質量%以上とすることができる。
次亜リン酸塩としての有機アミン、あるいは次亜リン酸と共に用いられる有機アミンとしては、具体的には、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンが挙げられる。上記アミンは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
上記第1級アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、アリルアミン、イソプロピルアミン、ジアミノプロピルアミン、エチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−(ジエチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジブチルアミノ)プロピルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、t−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、3−(メチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3−メトキシプロピルアミンが挙げられる。上記第1級アミンは、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
上記第2級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、N−メチルエチルアミン、N−メチルプロピルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−メチルブチルアミン、N−メチルイソブチルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−エチルプロピルアミン、N−エチルイソプロピルアミン、N−エチルブチルアミン、N−エチルイソブチルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミン、N−メチルビニルアミン、N−メチルアリルアミン等の脂肪族第2級アミン;N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N−メチルトリメチレンジアミン、N−エチルトリメチレンジアミン、N,N’−ジメチルトリメチレンジアミン、N,N’−ジエチルトリメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン等の脂肪族ジアミンおよびトリアミン;N−メチルベンジルアミン、N−エチルベンジルアミン、N−メチルフェニチルアミン、N−エチルフェネチルアミン等の芳香族アミン;N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−イソブチルエタノールアミン等のモノアルカノールアミン;ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジブタノールアミン等のジアルカノールアミン;ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、モルホリン、チオモルホリン等の環状アミン;が挙げられる。上記第2級アミンは、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの第2級アミンのうち、ジアルカノールアミンおよびジアルキルアミンが好ましく、ジアルカノールアミンがより好ましく、中でもジエタノールアミンが特に好適である。
上記第3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミン等のトリアルカノールアミンが挙げられる。上記第3級アミンは、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの第3級アミンのうち、トリアルカノールアミンが好ましく、中でもトリエタノールアミンが特に好適である。
これらの有機アミンは、重合反応の促進やN−ビニルラクタムの加水分解の防止にも効果的である。また、助触媒としても機能し得る。すなわち、有機アミンが反応系に含まれると、含まれない場合と比較して、重合反応の進行がより一層促進され得る。さらに、塩基性pH調節剤としても機能し得る。
反応系における次亜リン酸の有機アミン塩としての存在量は、全単量体成分1モルに対して、5.0g以下とすることが好ましく、4.5g以下とすることがより好ましく、4.0g以下とすることがさらに好ましい。次亜リン酸の有機アミン塩の存在量の下限は、全単量体成分1モルに対して、0.5g以上が好ましく、1.0g以上がより好ましい。なお、次亜リン酸と有機アミンとを別々に添加する場合であって、どちらかのモル数が少ない場合は、少ないモル数の化合物の方に合わせて、生成する次亜リン酸の有機アミン塩量を調整すればよい。
次亜リン酸の有機アミン塩の存在量が多すぎると、連鎖移動に寄与しない次亜リン酸の有機アミン塩(重合体末端に取り込まれない次亜リン酸有機アミン塩)が増加し、例えば中空糸膜の製造に使用した場合に性能が低下する傾向にある。また、存在量が少なすぎると、後述するように、次亜リン酸の有機アミン塩に由来する構造の量が、好適範囲より少なくなって、吸湿性を抑制する効果が充分発現しないおそれがある。次亜リン酸の有機アミン塩には水和物も含まれる。次亜リン酸の有機アミン塩以外の塩、例えば、次亜リン酸の金属塩やアンモニウム塩も連鎖移動剤としての作用を有するため、重合の際に用いても構わないが、アンモニウム塩は臭気の原因となるため、後述する範囲の量となるように使用量を制限するか、全く使用しないことが望ましい。
次亜リン酸の有機アミン塩以外に使用可能な連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等の、チオール化合物;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等の、ハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の、第2級アルコール;亜リン酸、亜リン酸塩、およびこれらの水和物等;亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩等の重亜硫酸塩(水に溶解して重亜硫酸塩を発生する化合物を含む)等の、低級酸化物およびその塩等が挙げられる。これらの塩は、金属塩、アンモニウム塩または有機アミン塩である。上記連鎖移動剤は、2種以上用いても良い。
連鎖移動剤の添加量(総量)は、特に言及する場合を除き、次亜リン酸のアミン塩も含めて、全単量体成分1モルに対して、0.5〜20g、より好ましくは1.0〜15gである。0.5g未満であると、分子量の制御ができなかったり、吸湿性を抑制する効果が発現しないおそれがあり、逆に、20gを超えると、連鎖移動剤が残留し、重合体組成物の純度が低下するおそれがある。
<還元性化合物>
重合開始剤の分解触媒等として作用する還元性化合物として、重金属イオン(あるいは重金属塩)を使用しても良い。本発明で重金属とは、比重が4g/cm3以上の金属を意味する。重金属の中でも鉄が好ましく、上記還元性化合物として、モール塩(Fe(NH4)2(SO4)2・6H2O)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸銅(I)および/またはその水和物、硫酸銅(II)および/またはその水和物、塩化銅(II)および/またはその水和物等の重金属塩等を用いることが好ましい。
重合開始剤の分解触媒等として作用する還元性化合物として、重金属イオン(あるいは重金属塩)を使用しても良い。本発明で重金属とは、比重が4g/cm3以上の金属を意味する。重金属の中でも鉄が好ましく、上記還元性化合物として、モール塩(Fe(NH4)2(SO4)2・6H2O)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸銅(I)および/またはその水和物、硫酸銅(II)および/またはその水和物、塩化銅(II)および/またはその水和物等の重金属塩等を用いることが好ましい。
上記重金属イオンを使用する場合、その使用量は、重合反応完結時における重合反応液の全質量に対して好ましくは0.1〜10ppmであることが好ましい。重金属イオンの含有量が0.1ppm未満であると、重金属イオンによる効果が十分に発現しないおそれがある。一方、重金属イオンの含有量が10ppmを超えると、得られる重合体の色調の悪化を来たすおそれがある。
<その他の添加剤>
アンモニアは、上記有機アミンと同様な機能(助触媒機能や、pH調節機能等)を有するため、重合に際し用いてもよいが、この場合、N−ビニルラクタム重合体に対して、アンモニアとアンモニウム塩の合計が0〜0.1質量%となるように、量を抑えて用いる必要がある。アンモニアは臭気の原因となり、また着色にも影響を及ぼすからである。アンモニアを用いるときは、常温にて気体状の単体としてそのまま用いても良いし、水溶液(アンモニア水)として用いても良い。アンモニアの添加は、任意の適切な方法で行うことができ、例えば、重合初期より反応容器内に仕込んでおいてもよいし、重合中に反応容器中に逐次添加してもよい。
アンモニアは、上記有機アミンと同様な機能(助触媒機能や、pH調節機能等)を有するため、重合に際し用いてもよいが、この場合、N−ビニルラクタム重合体に対して、アンモニアとアンモニウム塩の合計が0〜0.1質量%となるように、量を抑えて用いる必要がある。アンモニアは臭気の原因となり、また着色にも影響を及ぼすからである。アンモニアを用いるときは、常温にて気体状の単体としてそのまま用いても良いし、水溶液(アンモニア水)として用いても良い。アンモニアの添加は、任意の適切な方法で行うことができ、例えば、重合初期より反応容器内に仕込んでおいてもよいし、重合中に反応容器中に逐次添加してもよい。
なお、上記重金属塩として銅塩を用い、さらに上記アンモニアを用いる場合、銅のアンミン錯塩が形成し得る。銅のアンミン錯塩としては、例えば、ジアンミン銅塩([Cu(NH3)2]2SO4・H2O、[Cu(NH3)2]Cl等)、テトラアンミン銅塩([Cu(NH3)4]SO4・H2O、[Cu(NH3)4]Cl2等)が挙げられる。
<重合溶媒>
本発明のN−ビニルラクタム系重合体は、N−ビニルラクタムを必須とする単量体成分を水性溶媒中で重合する工程(重合工程)により製造される。本発明において水性溶媒とは、水または水を含む混合溶媒を表す。水を含む混合溶媒としては、全溶媒に対して50質量%以上が水である混合溶媒が好ましく、80質量%以上が水であることがより好ましく、水のみを使用することが特に好ましい。水のみを使用する場合には、有機溶剤の残存が回避できる点で好適である。
本発明のN−ビニルラクタム系重合体は、N−ビニルラクタムを必須とする単量体成分を水性溶媒中で重合する工程(重合工程)により製造される。本発明において水性溶媒とは、水または水を含む混合溶媒を表す。水を含む混合溶媒としては、全溶媒に対して50質量%以上が水である混合溶媒が好ましく、80質量%以上が水であることがより好ましく、水のみを使用することが特に好ましい。水のみを使用する場合には、有機溶剤の残存が回避できる点で好適である。
ここで重合の際、水とともに使用できる溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;グリセリン;ポリエチレングリコール;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合工程は、好ましくは、重合終了後の固形分濃度(溶液の内、不揮発分の濃度であり、後述する測定方法で測定される)が、重合溶液100質量%に対して10〜70質量%となるように行うことが好ましく、15〜60質量%がより好ましく、20〜55質量%がさらに好ましい。
<その他の重合条件>
重合の際の温度は好ましくは70℃以上であり、より好ましくは75〜110℃であり、さらに好ましくは80〜105℃である。重合時の温度が上記範囲であれば、残存単量体成分が少なくなり、重合体の分散性が向上する傾向にある。なお、重合時の温度は、重合反応の進行中において、常に一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間または昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応の進行中に経時的に重合温度を変動(昇温または降温)させてもよい。
重合の際の温度は好ましくは70℃以上であり、より好ましくは75〜110℃であり、さらに好ましくは80〜105℃である。重合時の温度が上記範囲であれば、残存単量体成分が少なくなり、重合体の分散性が向上する傾向にある。なお、重合時の温度は、重合反応の進行中において、常に一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間または昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応の進行中に経時的に重合温度を変動(昇温または降温)させてもよい。
重合時のpHとしては、不純物あるいは副生成物の発生を抑制する観点から、6以上が好ましく、7以上がより好ましく、11以下が好ましい。
反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれであってもよいが、得られる重合体の分子量の点では、常圧下、または、反応系内を密閉し、加圧下で行うことが好ましい。また、加圧装置や減圧装置、耐圧性の反応容器や配管等の設備の点では、常圧(大気圧)下で行うことが好ましい。反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気とするのが好ましく、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。
重合時間(上記重合開始時点から重合終了時点の間)は、30分以上、5時間以下であることが好ましい。重合時間が長くなると、重合液の着色が大きくなる傾向にある。上記重合終了時点後、重合液に残存する単量体を低減する目的等で、熟成工程(重合後、加温・保温条件下で保持する工程をいう)を設けても良い。熟成時間は通常、1分以上、4時間以内である。熟成時間中に、更に重合開始剤を添加すれば、重合液に残存する単量体を低減できることから好ましい。
重合後期においては、単量体の添加終了時間よりも、開始剤の滴下終了時間を遅らすことが、重合液に残存する単量体を低減することができることから好ましい。より好ましくは1〜120分遅らせることであり、5〜60分遅らせることがさらに好ましい。
<有機酸の添加>
本発明では、重合反応終了後、反応液に有機酸またはその水溶液を添加することが好ましい。この際、重合反応時の反応温度を維持して行うことが好ましい。これにより、残存するN−ビニルラクタムが、酸によって加水分解されるので、未反応の単量体量(すなわち、反応液中における単量体の残存量)を低減することができる。例えば、単量体がN−ビニル−2−ピロリドンであるならば、酸によって2−ピロリドンへと加水分解される。
本発明では、重合反応終了後、反応液に有機酸またはその水溶液を添加することが好ましい。この際、重合反応時の反応温度を維持して行うことが好ましい。これにより、残存するN−ビニルラクタムが、酸によって加水分解されるので、未反応の単量体量(すなわち、反応液中における単量体の残存量)を低減することができる。例えば、単量体がN−ビニル−2−ピロリドンであるならば、酸によって2−ピロリドンへと加水分解される。
残存単量体量を低減するのに使用可能な有機酸として好ましいものは、有機酸添加時の反応液温度より高い沸点(例えば100℃以上)を有するカルボン酸であり、具体的には、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アスパラギン酸、クエン酸、グルタミン酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、フタル酸、トリメリト酸、ピロメリト酸等が挙げられる。中でも、カルボキシル基の第1解離定数が3.0以下であり、かつカルシウム塩の20℃における水への溶解度が0.1質量%以上であるような多価カルボン酸が好ましい。このような多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、エチルマロン酸、エチルメチルマロン酸、エチルプロピルマロン酸等が挙げられる。これらの有機酸は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの有機酸のうち、マロン酸が特に好適である。
有機酸の使用量は、重合反応時のN−ビニルラクタムの使用量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、重合後の反応液のpHが好ましくは5以下、より好ましくは3以上、4以下になるようにすればよい。具体的には、有機酸の使用量は、N−ビニルラクタムの使用量に対して、好ましくは100ppm以上、30,000ppm以下、より好ましくは500ppm以上、20,000ppm以下である。
<乾燥工程>
本発明では、重合工程で得られたN−ビニルラクタム系重合体溶液を、乾燥する工程が必要である。乾燥工程は、粉体化等を行う工程であり、粉砕工程も含む。乾燥や粉砕は、公知の一般的方法で行えばよく、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、流動床乾燥、ドラム乾燥、ベルト式乾燥等により、粉末を得ることができる。加熱乾燥する場合は、乾燥温度は100〜200℃程度、乾燥時間は0.2〜5分程度が好ましい。
本発明では、重合工程で得られたN−ビニルラクタム系重合体溶液を、乾燥する工程が必要である。乾燥工程は、粉体化等を行う工程であり、粉砕工程も含む。乾燥や粉砕は、公知の一般的方法で行えばよく、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、流動床乾燥、ドラム乾燥、ベルト式乾燥等により、粉末を得ることができる。加熱乾燥する場合は、乾燥温度は100〜200℃程度、乾燥時間は0.2〜5分程度が好ましい。
<その他の工程>
N−ビニルラクタム系重合体組成物を得るには、乾燥工程の前に、精製工程、脱塩工程、濃縮工程、希釈工程等を含んでいても良い。反応液(重合液)を陽イオン交換樹脂で処理することにより、得られるN−ビニルラクタム系重合体溶液の色調を改善することができる。陽イオン交換樹脂で処理する工程は、重合中(重合工程と並行して)または重合後に行うことができる。重合反応中における陽イオン交換樹脂による処理は、任意の適切な方法で処理し得る。好ましくは、単量体成分の重合反応が行われている反応容器中へ陽イオン交換樹脂を添加することにより行う。具体的には、例えば、重合反応が行われている反応容器中へ陽イオン交換樹脂を添加して微細に懸濁させ、その後に濾過する方法が挙げられる。陽イオン交換樹脂による処理の時間は、任意の適切な時間を採用し得る。好ましくは1分〜24時間であり、より好ましくは3分〜12時間であり、さらに好ましくは5分〜2時間である。処理時間が短すぎると色調改善効果が十分に発現できないおそれがある。処理時間が長すぎると生産性が悪くなるおそれがある。
N−ビニルラクタム系重合体組成物を得るには、乾燥工程の前に、精製工程、脱塩工程、濃縮工程、希釈工程等を含んでいても良い。反応液(重合液)を陽イオン交換樹脂で処理することにより、得られるN−ビニルラクタム系重合体溶液の色調を改善することができる。陽イオン交換樹脂で処理する工程は、重合中(重合工程と並行して)または重合後に行うことができる。重合反応中における陽イオン交換樹脂による処理は、任意の適切な方法で処理し得る。好ましくは、単量体成分の重合反応が行われている反応容器中へ陽イオン交換樹脂を添加することにより行う。具体的には、例えば、重合反応が行われている反応容器中へ陽イオン交換樹脂を添加して微細に懸濁させ、その後に濾過する方法が挙げられる。陽イオン交換樹脂による処理の時間は、任意の適切な時間を採用し得る。好ましくは1分〜24時間であり、より好ましくは3分〜12時間であり、さらに好ましくは5分〜2時間である。処理時間が短すぎると色調改善効果が十分に発現できないおそれがある。処理時間が長すぎると生産性が悪くなるおそれがある。
[本発明のN−ビニルラクタム系重合体]
本発明のN−ビニルラクタム系重合体は、N−ビニルラクタムに由来する構造単位を必須として含んでいる。N−ビニルラクタムに由来する構造単位とは、N−ビニルラクタムがラジカル重合して形成される構造単位であり、N−ビニルラクタムの重合性炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合になった構造である。
本発明のN−ビニルラクタム系重合体は、N−ビニルラクタムに由来する構造単位を必須として含んでいる。N−ビニルラクタムに由来する構造単位とは、N−ビニルラクタムがラジカル重合して形成される構造単位であり、N−ビニルラクタムの重合性炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合になった構造である。
本発明のN−ビニルラクタム系重合体に含まれる全単量体成分由来の構造単位(N−ビニルラクタムに由来する構造単位とその他の単量体に由来する構造単位の総量)100質量%中のN−ビニルラクタムに由来する構造単位の割合(質量%)は、得られる重合体を例えば中空糸膜の製造に使用した場合に中空糸膜の生産性が向上することから、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが最も好ましい。従って、その他の単量体に由来する構造単位の割合(質量%)は、50質量%未満であることが好ましく、20質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることがさらに好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
本発明のN−ビニルラクタム系重合体は、次亜リン酸の有機アミン塩由来の構造単位(リンを含む構造単位)を有している。N−ビニルラクタム系重合体の全質量100質量%における、次亜リン酸の有機アミン塩由来の構造単位の割合(質量%)は、0.01質量%以上、5質量%以下であることが好ましい。ここで、次亜リン酸の有機アミン塩由来の構造単位とは、−PH(=O)(OX)(Xは有機アミン残基)で表される。この構造単位が上記範囲であれば、N−ビニルラクタム系重合体の高温における色調が特に良好になり、また、吸湿性を抑制してブロッキング等の不都合を回避し得る。この構造単位の割合は、後述する実施例で説明するように、31P−NMRを用いて行える。
他の亜リン酸(塩)等を用いる場合も、リン系連鎖移動剤に由来する構造単位(リンを含む原子団ともいう)の合計が上記範囲であることが好ましい。
また、本発明のN−ビニルラクタム系重合体は、アンモニアとアンモニウム塩の合計含有量が0〜0.1質量%である。アンモニアは臭気の原因となり、また着色にも影響を及ぼすからである。アンモニアとアンモニウム塩の定量方法は実施例で説明する。
本発明のN−ビニルラクタム系重合体のフィケンチャー法によるK値は、60以下が好ましい。K値は10〜60がより好ましく、10〜40がさらに好ましく、10〜35が特に好ましい。フィケンチャー法によるK値は、以下の測定方法によって求めることができる。K値が20未満である場合には5質量%(g/100ml)溶液の粘度を測定し、K値が20以上の場合は1質量%(g/100ml)溶液の粘度を測定する。試料濃度は乾燥物換算する。K値が20以上の場合、試料は1.0gを精密に計りとり、100mlのメスフラスコに入れ、室温で蒸留水を加え、振とうしながら完全に溶かして蒸留水を加えて正確に100mlとする。この試料溶液を恒温槽(25±0.2℃)で30分放置後、ウベローデ型粘度計を用いて測定する。溶液が2つの印線の間を流れる時間を測定する。数回測定し、平均値をとる。相対粘度を測定するために、蒸留水についても同様に測定する。2つの得られた流動時間をハーゲンバッハ−キュッテ(Hagenbach−Couette)の補正に基づいて補正する。
本発明のN−ビニルラクタム系重合体(あるいは後述するN−ビニルラクタム系重合体組成物)は、吸湿性が低いことに加え、高温条件下での色調が良好(着色し難い)ことも特徴としており、例えば窒素通気下260℃で60分加熱した際の黄色度が25以下であることが好ましく、より好ましくは20以下である。また、ハンターLab色空間におけるb値が13以下であることが好ましく、より好ましくは10以下である。
[N−ビニルラクタム系重合体組成物]
N−ビニルラクタム系重合体組成物は、N−ビニルラクタム系重合体の乾燥物(粉体)を必須成分としており、残存単量体や重合時の副生成物、開始剤や連鎖移動剤(還元剤)等の残渣、残存溶媒等を含む。N−ビニルラクタム系重合体組成物中、N−ビニルラクタム系重合体は95〜100質量%、その他の成分(水や残存N−ビニルラクタム等)を0〜5質量%含む形態が好ましい。また、組成物中のN−ビニルラクタム系重合体に対して、アンモニアとアンモニウム塩の合計量は0〜0.1質量%とする。アンモニアは臭気の原因となり、また着色にも影響を及ぼすからである。
N−ビニルラクタム系重合体組成物は、N−ビニルラクタム系重合体の乾燥物(粉体)を必須成分としており、残存単量体や重合時の副生成物、開始剤や連鎖移動剤(還元剤)等の残渣、残存溶媒等を含む。N−ビニルラクタム系重合体組成物中、N−ビニルラクタム系重合体は95〜100質量%、その他の成分(水や残存N−ビニルラクタム等)を0〜5質量%含む形態が好ましい。また、組成物中のN−ビニルラクタム系重合体に対して、アンモニアとアンモニウム塩の合計量は0〜0.1質量%とする。アンモニアは臭気の原因となり、また着色にも影響を及ぼすからである。
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
また、重合体水溶液や重合体組成物の固形分量、重合体のK値、残存単量体と2−ピロリドンの定量は、下記の方法に従って測定した。
<重合体水溶液、重合体組成物の固形分測定方法>
窒素雰囲気下、150℃に加熱したオーブンで、重合体水溶液または重合体組成物2.0gを1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の質量変化から、固形分(%)と、揮発成分(%)を算出した。
窒素雰囲気下、150℃に加熱したオーブンで、重合体水溶液または重合体組成物2.0gを1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の質量変化から、固形分(%)と、揮発成分(%)を算出した。
<残存単量体、2−ピロリドンの定量分析>
以下の条件で、液体クロマトグラフィーを用いて定量分析した。
装置:資生堂「NANOSPACE(登録商標)SI−2」
カラム:資生堂「CAPCELLPAK(登録商標)C18 UG120」、20℃
溶離液:LC用メタノール(和光純薬工業社製)/超純水=1/24(質量比)、1−ヘプタンスルホン酸0.4%添加
流速:100μL/min
以下の条件で、液体クロマトグラフィーを用いて定量分析した。
装置:資生堂「NANOSPACE(登録商標)SI−2」
カラム:資生堂「CAPCELLPAK(登録商標)C18 UG120」、20℃
溶離液:LC用メタノール(和光純薬工業社製)/超純水=1/24(質量比)、1−ヘプタンスルホン酸0.4%添加
流速:100μL/min
<重合体の分子量の測定>
上記のK値の測定法により測定した。
上記のK値の測定法により測定した。
<重合体主鎖末端の次亜リン酸の有機アミン塩に由来する構造単位の分析>
重合体主鎖末端の次亜リン酸の有機アミン塩に由来する構造単位は、31P−NMRを用いて、主鎖末端の次亜リン酸構造を定量することにより測定した。すなわち、31P−NMRの積分強度比から、全てのリン化合物に対する重合体の主鎖末端の次亜リン酸基の割合を計算した。さらに、単量体とリン化合物の使用量から、N−ビニルラクタムの全質量100質量%における主鎖末端のリンを含む構造単位の割合(質量%)を算出した。
31P−NMRの測定条件:
測定する重合体を室温で減圧乾燥し、得られた固形分を重水(アルドリッチ社製)に10%となるように溶解し、Varian社製UnityPlus−400(400MHz、パルスシーケンス:s2pu1、測定間隔:10.000秒、パルス:45.0度、捕捉時間:0.800秒、積算回数:128回)にて測定した。
重合体主鎖末端の次亜リン酸の有機アミン塩に由来する構造単位は、31P−NMRを用いて、主鎖末端の次亜リン酸構造を定量することにより測定した。すなわち、31P−NMRの積分強度比から、全てのリン化合物に対する重合体の主鎖末端の次亜リン酸基の割合を計算した。さらに、単量体とリン化合物の使用量から、N−ビニルラクタムの全質量100質量%における主鎖末端のリンを含む構造単位の割合(質量%)を算出した。
31P−NMRの測定条件:
測定する重合体を室温で減圧乾燥し、得られた固形分を重水(アルドリッチ社製)に10%となるように溶解し、Varian社製UnityPlus−400(400MHz、パルスシーケンス:s2pu1、測定間隔:10.000秒、パルス:45.0度、捕捉時間:0.800秒、積算回数:128回)にて測定した。
<アンモニア、アンモニウム塩の定量>
得られたポリビニルピロリドン水溶液中のアンモニア量をイオンクロマトグラフ(日本ダイオネクス社製、「イオンクロマトグラフシステムDX−500」、アンモニア分析用カラム:「IonPacCS3」、溶離液:25mM−HCl/0.1mM−ジアミノプロピオン酸・一塩酸塩、流量:1.0mL/min)を用いて定量した。
得られたポリビニルピロリドン水溶液中のアンモニア量をイオンクロマトグラフ(日本ダイオネクス社製、「イオンクロマトグラフシステムDX−500」、アンモニア分析用カラム:「IonPacCS3」、溶離液:25mM−HCl/0.1mM−ジアミノプロピオン酸・一塩酸塩、流量:1.0mL/min)を用いて定量した。
<吸湿性>
重合後の水溶液を、マルチロールフィールド方式ドラムドライヤー(カツラギ工業社製)で130℃で0.75分乾燥した後、ハンマーミルにて粉砕し、粉砕後の粉体をJISの試験用の目開き250μmのふるいと、目開き150μmのふるいを用いて分級し、粒径が150〜250μmの粉体を調製した。この粉体を適宜採取して秤量し、20℃、相対湿度80%の恒温恒湿機で保管し、投入から、1時間後、3時間後、6時間後および24時間後の質量を測定した。質量増加率(%)は、下記式から算出した。
質量増加率(%)=100×{(測定時の粉体質量)−(試験前の粉体質量)}/(試験前の粉体質量)
重合後の水溶液を、マルチロールフィールド方式ドラムドライヤー(カツラギ工業社製)で130℃で0.75分乾燥した後、ハンマーミルにて粉砕し、粉砕後の粉体をJISの試験用の目開き250μmのふるいと、目開き150μmのふるいを用いて分級し、粒径が150〜250μmの粉体を調製した。この粉体を適宜採取して秤量し、20℃、相対湿度80%の恒温恒湿機で保管し、投入から、1時間後、3時間後、6時間後および24時間後の質量を測定した。質量増加率(%)は、下記式から算出した。
質量増加率(%)=100×{(測定時の粉体質量)−(試験前の粉体質量)}/(試験前の粉体質量)
[実施例]
N−ビニルピロリドン(NVP)の水溶液重合を行った。まず、マックスブレンド(住友重機械工業株式会社の登録商標)型の攪拌翼、ガラス製の蓋を備えたSUS製反応容器に、イオン交換水452部、ジエタノールアミン(DEA)6000ppm(NVPに対して:質量基準、以下同じ)、次亜リン酸(AHP)3000ppm(NVPに対して)を仕込み、95〜98℃に昇温した。
N−ビニルピロリドン(NVP)の水溶液重合を行った。まず、マックスブレンド(住友重機械工業株式会社の登録商標)型の攪拌翼、ガラス製の蓋を備えたSUS製反応容器に、イオン交換水452部、ジエタノールアミン(DEA)6000ppm(NVPに対して:質量基準、以下同じ)、次亜リン酸(AHP)3000ppm(NVPに対して)を仕込み、95〜98℃に昇温した。
NVP500部を滴下ロートに入れ、別の滴下ロートに2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩(和光純薬工業社製;V−50)2部をイオン交換水38部に溶解させた開始剤溶液を入れ、同時に滴下を開始した。NVPは180分かけて滴下し、開始剤溶液は210分かけて滴下した。反応温度は90℃に維持した。重合開始から210分後と240分後に、それぞれ、10質量%のV−50水溶液5部を一括で添加した。90℃を保ったまま撹拌を続け、重合開始から270分後に、マロン酸の10%水溶液を、マロン酸がNVPの使用量の1.6%となるように一括添加して、反応液のpHを調整した。重合開始から330分経過後、重合および熟成を終了した。
重合後の水溶液を、マルチロールフィールド方式ドラムドライヤー(カツラギ工業社製)で130℃で0.75分乾燥した後、ハンマーミルにて粉砕し、粉砕後の粉体をJISの試験用の目開き250μmのふるいと、目開き150μmのふるいを用いて分級し、粒径が150〜250μmの粉体(本発明の重合体組成物)を調製した。
なお、NVP重合体の全質量100質量%における主鎖末端のリンを含む構造単位の割合は0.074質量%であり、アンモニアおよびアンモニウム塩は0質量%(検出されなかった)であった。
[参考例]
DEAの量をNVPに対して1000ppmとし、次亜リン酸に変えて次亜リン酸ナトリウム(SHP)をNVPに対して7800ppm用いた以外は、実施例と同様にして、参考用の重合体組成物を得た。
DEAの量をNVPに対して1000ppmとし、次亜リン酸に変えて次亜リン酸ナトリウム(SHP)をNVPに対して7800ppm用いた以外は、実施例と同様にして、参考用の重合体組成物を得た。
実施例および参考例の重合処方、重合体および重合体組成物(乾燥品)の物性を表1に、吸湿性試験結果を表2に示した。
本発明のN−ビニルラクタム系重合体組成物は、吸湿性が低く、ブロッキング等の不都合を起こし難いため、ハンドリング性に優れている。従って、各種用途に有用である。用途の一例を挙げれば、各種無機物や有機物の分散剤、凝集剤、増粘剤、粘着剤、接着剤、表面コーティング剤、架橋性組成物等であり、より具体的には、泥土分散剤、セメント材料分散剤、セメント材料用増粘剤、洗剤用ビルダー、洗剤用色移り防止剤、重金属補足剤、金属表面処理剤、染色助剤、染料定着剤、泡安定剤、乳化安定剤、インク染料分散剤、水性インク安定剤、塗料用顔料分散剤、塗料用シックナー、感圧接着剤、紙用接着剤、スティック糊、医療用接着剤、貼付剤用粘着剤、化粧パック用粘着剤、樹脂用フィラー分散剤、記録紙用コーティング剤、インクジェット紙用表面処理剤、感光性樹脂用分散剤、帯電防止剤、保湿剤、吸水性樹脂用原料、肥料用バインダー、高分子架橋剤、樹脂相溶化剤、写真薬添加剤、化粧用調剤添加剤、整髪料助剤、ヘアスプレー添加剤、サンスクリーン組成物用添加剤、あるいは、種々の特殊工業用途(例えば、中空糸膜の製造)に用いられる。
Claims (5)
- 水溶性アゾ系重合開始剤および/または水溶性有機過酸化物と、次亜リン酸の有機アミン塩を必須に含む連鎖移動剤との存在下で重合されたN−ビニルラクタム系重合体の乾燥物を含む組成物であって、このN−ビニルラクタム系重合体は、主鎖末端に次亜リン酸の有機アミン塩に由来する構造単位を有し、かつ、組成物中のN−ビニルラクタム系重合体に対してアンモニアおよびアンモニウム塩の合計量(アンモニア換算)が、0質量%〜0.1質量%であることを特徴とするN−ビニルラクタム系重合体組成物。
- N−ビニルラクタム系重合体中の次亜リン酸の有機アミン塩に由来する構造単位が、0.01〜5質量%である請求項1に記載のN−ビニルラクタム系重合体組成物。
- N−ビニルラクタム系重合体のK値が60以下である請求項1または2に記載のN−ビニルラクタム系重合体組成物。
- 水溶性アゾ系重合開始剤および/または水溶性有機過酸化物と、次亜リン酸の有機アミン塩を必須に含む連鎖移動剤との存在下で、水性溶媒中で、N−ビニルラクタムを必須とする単量体成分を重合する工程および得られた重合体を乾燥する工程を含むことを特徴とするN−ビニルラクタム系重合体組成物の製造方法。
- 連鎖移動剤の使用量を、単量体成分1モルに対し、0.5〜20gとする請求項4に記載の製造方法。
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WO2016051922A1 (ja) * | 2014-09-30 | 2016-04-07 | 東亞合成株式会社 | アクリル酸系重合体水溶液及びその製造方法 |
JP2017043778A (ja) * | 2015-08-28 | 2017-03-02 | 株式会社日本触媒 | N−ビニルラクタム系架橋重合体の製造方法及びn−ビニルラクタム系架橋重合体 |
CN112661890A (zh) * | 2020-12-23 | 2021-04-16 | 安徽山河药用辅料股份有限公司 | 一种医药用低杂质聚维酮k30的制备方法 |
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