JP6506072B2 - N−ビニルラクタム系重合体およびn−ビニルラクタム系重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、重合時に多量の重合開始剤若しくは連鎖移動剤を使用した場合、単量体に由来する副生成物の副生量が増加する傾向にある。これらの副生成物の安全性は十分とは言い難いことから、用途によっては副生成物の除去のために、複雑な工程が必要になったり、コストが増大するなどして、煩雑である。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明においてN−ビニルラクタム系重合体とは、N−ビニルラクタムに由来する構造単位を有する重合体をいう。ここで、N−ビニルラクタムに由来する構造単位とは、N−ビニルラクタムがラジカル重合して形成される構造単位を言い、具体的にはN−ビニルラクタムの重合性炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合になった構造単位である。
N−ビニルラクタムの中でも、本発明の製造方法による低分子量化の効果が顕著であり、例えば重合体を中空糸の製造に好ましく使用できる傾向にあることから、から、N−ビニルピロリドン、および/またはN−ビニルカプロラクタムを必須とすることが好ましい。
本発明で製造されるN−ビニルラクタム系重合体は、フィケンチャー法によるK値が10以上である。また、フィケンチャー法によるK値が50以下である。なお、フィケンチャー法によるK値については後述する。
本発明で製造されるN−ビニルラクタム系重合体は、多分散度(z平均分子量(Mz)/重量平均分子量(Mw))が、2.35以下であることが好ましく、2.32以下であることがより好ましい。多分散度の下限値としては、特に制限は無いが、例えば1.00であり、好ましくは1.50である。
本発明のN−ビニルラクタム系重合体の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう)は、過酸化水素の存在下で、N−ビニルラクタム系重合体を低分子量化する工程(以下、「低分子量化工程」ともいう)を含む。
低分子量化工程で使用するN−ビニルラクタム系重合体(低分子量前のN−ビニルラクタム系重合体)は、任意の方法で製造することができる。上記N−ビニルラクタム系重合体は、市販のものを購入して使用しても良いし、例えば後述する「重合工程」を経て製造したものを使用しても良い。すなわち、本発明の製造方法は、後述する「重合工程」を含んでも良いし、含まなくても良い。
相対粘度ηrelは次式により得られる。
ηrel=(溶液の流動時間)÷(水の流動時間).
上記低分子量化工程は、過酸化水素の存在下で行われる。上記低分子量化工程における過酸化水素の使用量は、N−ビニルラクタム系重合体の使用量100質量%に対し、0.01質量%以上、500質量%以下であり、0.05質量%以上、300質量%以下使用することが好ましい。上記範囲で使用することにより、N−ビニルラクタム系重合体の低分子量化が効率よく進行する傾向にある。
上記重金属イオンの使用量としては、重合反応液全量に対して、0ppm以上、100ppm以下であることが好ましく、0ppm以上、50ppm以下であることがより好ましい。
上記低分子量化工程で使用可能な溶剤としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類が挙げられる。これらの溶剤の中でも、水を必須とする溶剤が好ましく、水を溶剤100質量%に対して、50〜100質量%含む溶剤がより好ましく、水を70〜100質量%含む溶剤がさらに好ましい。
上記反応温度は、反応中、常にほぼ一定に保持する必要はなく、変動させても良い。
上記低分子量化工程は、静置条件下で行っても良いが、撹拌条件下で行うことが好ましい。
本発明の製造方法により得られるN−ビニルラクタム系重合体(組成物)は、2−ピロリドンやε−カプロラクタムの含有量を低く抑えることが可能である。上記N−ビニルラクタム系重合体(組成物)における、2−ピロリドンとε−カプロラクタムの合計の含有量は、N−ビニルラクタム系重合体100質量%に対して、0質量%以上、1.0質量%以下であることが好ましく、0質量%以上、0.8質量%以下であることがより好ましい。
本発明の製造方法により得られるN−ビニルラクタム系重合体(組成物)は、N−ビニルラクタムの含有量を低く抑えることが可能である。上記N−ビニルラクタム系重合体(組成物)における、N−ビニルラクタム(2種以上存在する場合にはその合計)の含有量は、N−ビニルラクタム系重合体100質量%に対して、0質量%以上、0.1質量%以下であることが好ましく、0質量%以上、0.05質量%以下であることがより好ましい。
本発明の製造方法は、任意であるが、N−ビニルラクタムを重合する工程(以下、「重合工程」ともいう)を含んでも良い。
上記重合工程においては、重合開始剤の存在下でN−ビニルラクタムを必須とする単量体成分を重合することが好ましい。
上記単量体成分は、N−ビニルラクタム以外にその他の単量体を含んでいても良いが、全単量体(N−ビニルラクタムとその他の単量体)に対するN−ビニルラクタムの使用割合は、本発明の製造方法による低分子量化の効果が顕著であり、例えば重合体を中空糸の製造に好ましく使用できる傾向にあることから、50モル%以上、100モル%以下であることが好ましく、80モル%以上、100モル%以下であることがより好ましく、90モル%以上、100モル%以下であることがさらに好ましく、100モル%であることがもっとも好ましい。
全単量体に対するその他の単量体の使用割合は、0モル%以上、50モル%以下であることが好ましく、0モル%以上、20モル%以下であることがより好ましく、0モル%以上、10モル%以下であることがさらに好ましく、0モル%であることがもっとも好ましい。
ここで、アゾ系重合開始剤とは、アゾ結合を有し熱などによりラジカルを発生する化合物を言う。上記重合する工程で使用可能な水溶性アゾ系重合開始剤としては、2,2’−ビス(2−イミダゾリン−2−イル)[2,2’−アゾビスプロパン]二塩酸塩、2,2’−ビス(2−イミダゾリン−2−イル)[2,2’−アゾビスプロパン]二硫酸塩、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩等が例示される。
上記アゾ系重合開始剤は、10時間半減温度が30℃以上90℃以下であるものが好ましく、より好ましくは10時間半減温度が40℃以上70℃以下であるものである。
上記有機過酸化物は、10時間半減温度が30℃以上180℃以下であるものが好ましく、より好ましくは10時間半減温度が40℃以上170℃以下であるものである。
連鎖移動剤の使用量としては、目的とするN−ビニルラクタム系重合体の分子量等にもよるが、単量体(N−ビニルラクタムおよびその他の単量体)の使用量1モルに対して、0g以上、2g以下であり、0g以上、1g以下であることが好ましく、0g以上、0.5g以下であることがより好ましい。本発明の製造方法によれば、所定の分子量のN−ビニルラクタム系重合体を製造するために必要な連鎖移動剤の使用量を少なくできる傾向にある。
溶媒の使用量としては、単量体100質量%に対して40〜200質量%が好ましい。より好ましくは、45質量%以上であり、更に好ましくは、50質量%以上である。また、より好ましくは、180質量%以下であり、更に好ましくは、150質量%以下である。溶媒の使用量が40質量%未満であると、得られる重合体の分子量が高くなるおそれがあり、200質量%を超えると、得られる重合体の濃度が低くなり、保管等のコストが高額になるおそれがある。
上記重合温度は、重合反応において、常にほぼ一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間又は昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応中に経時的に温度変動(昇温又は降温)させてもよい。
窒素雰囲気下、150℃に加熱したオーブンで重合体水溶液2.0gを1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の質量変化から、固形分(%)と、揮発成分(%)を算出した。
単量体及び副生成物の分析は、以下の条件で、液体クロマトグラフィーを用いて分析した。
装置:資生堂「NANOSPACESI−2」
カラム:資生堂「CAPCELLPAK C18 UG120」、20℃
溶離液:LC用メタノール(和光純薬工業株式会社製)/超純水=1/24(質量比)、1−ヘプタンスルホン酸0.4質量%添加
流速:100μL/min。
本発明において、ポリマーの重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、そしてZ平均分子量Mzは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(以下、GPC法)で測定され、ポリエチレンオキサイド換算値として示される。
数平均分子量Mnは、高分子化合物に含まれる低分子量物による寄与を反映する。これに対して、MwとMzは高分子量物による寄与を反映し、Mzは、より高分子量物の寄与を大きく反映する。そのため、分子量分布Mw/Mnや多分散度Mz/Mwを用いることにより分子量分布の広がりを評価することができる。Mw/Mnが1であるとき単分散であり、大きくなるにつれて分子量分布が低分子量側を中心にブロードになることを示す。一方、Mz/Mwは大きくなるにつれて、分子量分布が高分子量側を中心にブロードになることを示す。
上記のように、Mw/MnとMz/Mwの示す分子量分布の広がりは異なるため、Mw/Mnが大きい場合でも、Mz/Mwが同様に大きくなるとは限らない。
装置:日立製作所製 LaChrom
検出器:RI
カラム:東ソー製 TSK−GEL ALPHA−M
カラム温度:40℃
流速:0.8ml/min
検量線:TSKgel standard Poly(ethylene oxide)
溶離液:アセトニトリルと0.8M 硝酸ナトリウム水溶液とを1:4で混合した溶液。
二枚パドル型の攪拌翼、ガラス製の蓋、撹拌シール付の撹拌器、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、19.5%のポリビニルピロリドン水溶液(K値85)25.5質量部を仕込み、35%の過酸化水素水7.1質量部と1000ppmの硫酸第一鉄・7水和物水溶液0.5質量部とを加えて200rpmで撹拌した。その後90℃まで昇温して、300分撹拌を続けて反応を完結させて目的の低分子量体Aを得た。
二枚パドル型の攪拌翼、ガラス製の蓋、撹拌シール付の撹拌器、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、2%のポリビニルピロリドン水溶液(K値85)15.0質量部とイオン交換水14.7質量部を仕込み、1NのH2SO4水溶液を加えてpH3とした。さらに12%の過酸化水素水0.03質量部と1000ppmの硫酸第一鉄・7水和物水溶液0.3質量部とを加えて200rpmで撹拌した。その後90℃まで昇温して、300分撹拌を続けて反応を完結させて目的の低分子量体Bを得た。
二枚パドル型の攪拌翼、ガラス製の蓋、撹拌シール付の撹拌器、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、2%のポリビニルピロリドン水溶液(K値85)15.0質量部とイオン交換水13.5質量部を仕込み、12%の過酸化水素水0.03質量部と1000ppmの硫酸第一鉄・7水和物水溶液1.5質量部とを加えて200rpmで撹拌した。その後40℃まで昇温して、300分撹拌を続けて反応を完結させて目的の低分子量体Cを得た。
マックスブレンド(住友重機械工業社の登録商標)型の攪拌翼、ガラス製の蓋、撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたSUS製反応容器に、イオン交換水604.1質量部を仕込み、窒素気流下200rpmで撹拌して、還流するまで昇温した。
単量体水溶液として、N−ビニルピロリドン(以下、「NVP」と記す)285.0質量部を用意した。
開始剤水溶液として5%過酸化水素水溶液(和光純薬工業社製、以下、「5%H2O2水」と記す)57.0質量部を、重合調整剤水溶液として25%アンモニア水溶液(和光純薬工業社製、以下、「25%NH3水」と記す)3.4質量部と0.001%硫酸銅水溶液以下(「0.001%CuSO4水」と記す)0.6質量部を加えた溶液とを調製した。撹拌器の内温を60℃に保ちながら、上記で調製を行った単量体水溶液、開始剤水溶液、重合調整剤水溶液を0−180分間連続的に滴下した。
引き続き5%H2O2水11.5質量部を投入した。投入後120分間、60℃に保って重合反応を完結させて比較低分子量体Dの水溶液を得た。得られた重合体のK値は29.6、Mz/Mw=2.41、副生成物の量はポリビニルピロリドンに対して1.7質量%であった。
Claims (4)
- 全単量体成分1モルに対して、0.05g〜15gの重合開始剤ならびに0g以上2g以下の連鎖移動剤を使用して、N−ビニルラクタムから、フィケンチャー法によるK値が85以上120以下であるN−ビニルラクタム系重合体を製造する重合工程と
該重合工程で得られたK値が85以上120以下であるN−ビニルラクタム系重合体100質量%に対し0.01質量%以上500質量%以下の過酸化水素の存在下で、該K値が85以上120以下であるN−ビニルラクタム系重合体を、該K値が10以上50以下になるように、反応温度25℃以上150℃以下で低分子量化する工程とを含むか、または、
全単量体成分1モルに対して、0.05g〜15gの重合開始剤ならびに0g以上2g以下の連鎖移動剤を使用して、N−ビニルラクタムから、フィケンチャー法によるK値が30以上120以下であるN−ビニルラクタム系重合体を製造する重合工程と
該重合工程で得られたK値が30以上120以下であるN−ビニルラクタム系重合体100質量%に対し0.01質量%以上500質量%以下の過酸化水素と、モール塩(Fe(NH4)2(SO4)2・6H2O)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化マンガンからなる群から選択された少なくとも1つの重金属化合物との存在下で、該K値が30以上120以下であるN−ビニルラクタム系重合体を、該K値が10以上50以下になるように、反応温度25℃以上150℃以下で低分子量化する工程とを含む、
N−ビニルラクタム系重合体の製造方法。 - 前記低分子量化する工程は、N−ビニルラクタムの含有量が、前記N−ビニルラクタム系重合体100質量%に対し、0質量%以上1質量%以下の条件下で行う、
請求項1に記載のN−ビニルラクタム系重合体の製造方法。 - 前記低分子量化する工程で得られたN−ビニルラクタム系重合体の多分散度(Mz/Mw)が、1.00以上、2.35以下である、
請求項1または2に記載のN−ビニルラクタム系重合体の製造方法。 - 前記低分子量化する工程で得られたN−ビニルラクタム系重合体組成物の2−ピロリドンとε−カプロラクタムの合計の含有量は、前記N−ビニルラクタム系重合体100質量%に対して、0質量%以上1.0質量%以下である、
請求項1〜3の何れか1項に記載のN−ビニルラクタム系重合体の製造方法。
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