JP2010047693A - N−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体およびその製造方法 - Google Patents

N−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体およびその製造方法 Download PDF

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和成 安村
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Abstract

【課題】
従来に比べて、より安定性、分散性およびカルシウムイオン捕捉能に優れたN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体及びその製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】
N−ビニル環状ラクタム単位を有する基幹ポリマーに(メタ)アクリル系単量体をラジカル開始剤の存在化で重合させて得られるN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体であって、該重合時の反応液中の溶存酸素濃度が3.5ppm以下であり、該重合時の反応液中の最大ラジカル発生速度が0.01〜0.16mmol/kg・minであることを特徴とする安定性、分散性およびカルシウムイオン捕捉能に優れたN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、改良されたN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体およびその製造方法に関する。
N−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体は、相溶性、密着性等を有し、これら特性を活かした幅広い用途に有用であることが期待されていた。
N−ビニル環状ラクタム単位を有する基幹ポリマーに対してカルボキシル基含有不飽和単量体が2質量%以上グラフト重合されてなり、かつ、グラフト鎖として導入されていないカルボキシル基含有不飽和単量体を含む不純物ポリマーの含有量がグラフト鎖質量に対して40質量%以下であるN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体及びその製造方法が、開示されている(特許文献1参照)。
N−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体は、貯蔵中にゲル化しやすいという性質があり、貯蔵安定性を向上させる手法が提案されている(特許文献2参照)。
特許文献2には、ポリビニルラクタム変性物が有するカルボキシル基の特定割合を中和したり、その製造に用いられる開始剤に対して特定割合の還元剤を含有させたりすることによる貯蔵中のゲル化抑制手法が記載されている。
また、N−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体を必須成分とする洗剤添加物は再汚染防止能と鉄イオン沈着防止能を兼ね備えることが知られている(特許文献3参照)。
これらは工業的に非常に重要なものとなっているが、微粒子分散性や金属イオン捕捉能をさらに向上させることにより、より多くの用途でさらに有用なものとするための工夫の余地があった。
本発明は、N−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体そのものを新規な特定構造に規定することで、重合体自体の安定性の向上、分散性およびカルシウムイオン捕捉能の向上効果を見出した。
特開2001−278922号公報 特開2003−26726号公報 特開2002−37820号公報
従来に比べて、より安定性、分散性およびカルシウムイオン捕捉能に優れたN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体及びその製造方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、相溶性、密着性等を有し、これら特性を活かした幅広い用途に有用であるN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体に着目し、より安定な重合体の構造について検討を行い安定性、分散性およびカルシウムイオン捕捉能に優れたN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体およびその製造方法を見出した。
すなわち、N−ビニル環状ラクタム単位を有する基幹ポリマーに(メタ)アクリル系単量体をラジカル開始剤の存在化で重合させて得られるN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体であって、該重合時の反応液中の溶存酸素濃度が3.5ppm以下であり、該重合時の反応液中の最大ラジカル発生速度が0.01〜0.16mmol/kg・minであることによって安定性、分散性およびカルシウムイオン捕捉能に優れたN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体を完成し、その製造方法も提供できる。
本発明のグラフト重合体は、重合体そのものの安定性、分散性およびカルシウムイオン捕捉能が向上した新規な重合体である。その重合体を製造する最適な方法が提供される。
重合体そのもの自体が高い貯蔵安定性を有し、無機微粒子の分散性向上に優れ、カルシウムイオン捕捉効果が優れている。
以下に、本発明を詳しく説明する。
本発明における基幹ポリマーとは、少なくともN−ビニル環状ラクタム単位を有するものであればよく、例えば、N−ビニルピロリドンやN−ビニルカプロラクタム類を重合あるいは共重合させて得られるホモポリマーあるいはコポリマーが挙げられる。このようなホモポリマーとしては、具体的には、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン)、ポリ(N−ビニル−2−ピペリドン)、ポリ(N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン)、ポリ(N−ビニル−ε−カプロラクタム)、ポリ(N−ビニル−7−メチル−ε−カプロラクタム)等が挙げられる。
また、前記コポリマーとしては、具体的には、N−ビニルピロリドンやN−ビニルカプロラクタム等を、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸エステル、マレイン酸、アクリロニトリル、スチレン、アルキルビニルエーテル、N−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、アリルアルコール、オレフィン類等と共重合させて得られるコポリマーが挙げられる。なお、前記エステルとしては、炭素数1〜20のアルキルエステル、ジメチルアミノアルキルエステルおよびその四級塩、ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。このような基幹ポリマーは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。 製造のしやすさや、入手のしやすさからポリビニルピロリドンが好ましい。
本発明においては、前記基幹ポリマーは、N−ビニルピロリドンやN−ビニルカプロラクタム等由来のN−ビニル環状ラクタム単位を20質量%以上有するポリマーであること、より好ましくは40質量%以上であること、さらに好ましくは80質量%以上であることが、グラフト効率を向上させる点から好ましい。
記基幹ポリマーは、N−ビニルピロリドンやN−ビニルカプロラクタムを公知の方法で重合することで得ることができ、市販品としてはポリビニルピロリドンK−30(株式会社日本触媒製)、Luvitec(BASF社製)などが挙げられる。
本発明においてグラフト鎖成分として用いられる(メタ)アクリル系単量体は、(メタ)アクリル基を有する化合物であればよく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの塩等、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミド類が挙げられる。前記エステルのエステル部としては、炭素数1〜20のアルキル基、ジメチルアミノアルキル基およびその四級塩、ヒドロキシアルキル基が挙げられる。(メタ)アクリル酸アミド類としては、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、N−アルキルアクリルアミドおよびN−アルキルメタクリルアミド、1級もしくは2級アミノ基を有するアミノアルコールとの(メタ)アクリル酸のアミド、少なくとも1個の1級または2級アミノ基を有するジアミンとの(メタ)アクリル酸のアミドおよびその四級塩、アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸およびその塩が挙げられる。
これらの中でも特に、(メタ)アクリル酸およびその塩、アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸およびその塩が好ましい。さらに、(メタ)アクリル酸およびその塩がより好ましく、アクリル酸およびその塩が最も好ましい。また、塩の場合には、具体的には、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルキルアミン類やエタノールアミン類等の有機アミン塩が挙げられるが、特に、アルカリ金属塩およびアンモニウム塩が好ましい。これら(メタ)アクリル系単量体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、グラフト重合を行うに際しては、前記グラフト鎖成分として、前記(メタ)アクリル系単量体と共重合可能な他のモノマーを併用して重合することもできる。他のモノマーとしては、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、アルキルビニルエーテル、スチレン、酢酸ビニル、アリルアルコール、オレフィン類等が挙げられる。
本発明におけるグラフト重合時の基幹ポリマーとグラフト鎖成分の割合は、基幹ポリマーに対して(メタ)アクリル系単量体の使用量を1〜100質量%とするのがよく、好ましくは3〜70質量%、より好ましくは5〜50質量%、最も好ましくは10〜30質量%である。なお、前記基幹ポリマーは、初期一括仕込みしてもよく、逐次添加してもよいが、反応時間の短縮や生産性等を考慮すると初期一括仕込みとするほうが好ましい。一方、前記(メタ)アクリル系単量体は、グラフト効率および反応制御の点を考慮すると、逐次添加する方が好ましいが、初期に一括仕込みすることもできる。また、(メタ)アクリル系単量体は溶媒希釈して添加してもよい。
本発明のN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体は、グラフト化率が40%以上であるものが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上であるものがよい。この範囲にすることで、安定性、分散性の特性を制御しやすくなる傾向がある。
グラフト化率については、以下の方法で定量することができる。まず、グラフト鎖の(メタ)アクリル系構造を加水分解し、ポリ(メタ)アクリル酸構造に変換する。次いで、ポリ(メタ)アクリル酸のカルボキシル基と等モル量のNaOHを加えることで、グラフト鎖の構造をポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム塩とする。この重合体をDMF系GPC溶離液に希釈し、可溶分であるポリN−ビニル環状ラクタムのGPC測定を行い、その面積比から未反応のポリN−ビニル環状ラクタム量を計算しグラフト化率を定量できる。すなわち、グラフト化率は以下の式で表される。
グラフト化率(%)=(1−(未反応のポリN−ビニル環状ラクタム量)/(仕込みのポリN−ビニル環状ラクタム量))×100
GPCとしては、例えば、下記の条件下で測定が可能である。
カラム:昭和電工(株)製 Shodex KD−G,Shodex−LF804,Shodex KD801
溶離液:0.1質量%臭化リチウム ジメチルホルムアミド溶液
溶離液流量:0.6mL/分
注入量:100μL
カラムオーブン:40℃
検出器:示差屈折計(RI)
サンプル濃度:0.5質量%
検量線:ポリスチレン換算
本発明において、ラジカル開始剤としては、加熱等によってラジカルが発生するものであればよいが、グラフト効率の点からは過酸化物系開始剤が好ましい。過酸化物系開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)p−ジイソプロピルヘキシン等のジアルキルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシエステル類;n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレエート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類;ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;等が挙げられる。これら開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、特に過硫酸塩、過酸化水素が好ましい。
また、ラジカル発生方法は上記過酸化物系開始剤と還元剤とを併用するレドックス系であってもよい。還元剤としては、具体的には、鉄(II)塩、亜ジチオン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、アスコルビン酸等が挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。また本発明においては、アゾ系開始剤を用いることもできるが、過酸化物系開始剤と比較してグラフト効率が劣るため、過酸化物系開始剤と併用して用いることが望ましい。
前記ラジカル開始剤の使用量については、グラフト鎖を構成するモノマー成分に対して0.1〜100モル%が好ましく、1〜20モル%がさらに好ましい。なお、グラフト重合を行う際の前記開始剤の添加方法は、特に限定されるものではなく、例えば、初期一括仕込みする方法や、あるいは逐次添加する方法が挙げられるが、残留モノマーの低減を考慮すると、逐次添加する方が好ましい。
本発明において、グラフト重合時の反応液中の溶存酸素濃度、及び重合時の反応液中の最大ラジカル存在量が、安定性、分散性の高いグラフト重合体を製造するには重要なポイントである。前記溶存酸素濃度を3.5ppm以下、前記最大ラジカル発生速度が0.01〜0.16mmol/kg・minでグラフト重合反応を行うことで従来よりも安定性、分散性の高い特定されたN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体を得ることができる。
本発明の溶存酸素濃度とは、グラフト重合時の反応液中の溶存酸素濃度をあらわし、市販の酸素濃度計で経時的に測定することができる。より好ましい溶存酸素濃度は、1.0ppm以下であり、さらに好ましい溶存酸素濃度は0.5ppm以下である。
重合反応時の任意の時点での溶存酸素濃度が、上記数値範囲であればよいが、好ましくは重合反応の開始から終了までの期間の1/2が前記範囲であり、3/4が前記範囲であることがより好ましい。
溶存酸素濃度を特定範囲にする方法としては、各種公知の方法を用いることができる。例えば、反応液中に不活性ガス(窒素など)をバブリングする方法、不活性ガスを反応系内に吹き込み気相中の酸素を減少させる方法が挙げられる。中でも反応液中に窒素をバブリングする方法が、短時間で溶存酸素濃度を前記範囲に制御しやすいので好ましい。
窒素をバブリングする具体的な方法としては、多孔質のフィルターを装着した窒素ラインを反応液中に入れ、反応液を攪拌しながら窒素をフローする方法が挙げられる。
本発明の最大ラジカル発生速度とは、グラフト重合時の反応液中における反応液単位重量あたりのラジカル発生速度の最大値をあらわし、使用するラジカル開始剤の量と反応温度から計算して得られる値をいう。具体的には、開始剤分解量が最大となる時間での開始剤分解量を求め、それをラジカル量に換算し、反応液の総重量で割ること求めることができる。上記の開始剤分解量は、文献等に記載の開始剤の分解速度式を用いる方法や、文献等に記載の開始剤の活性化エネルギーと単位時間半減温度を用いて算出する方法等により求めることができる(例えば、特開2002−128811号公報参考)。
本発明の手法をとることでN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体の安定性、分散性が改良される理由としては、推察ではあるが、グラフト鎖の長さとグラフト構造に起因すると考えている。本発明の手法では、従来のグラフト重合体よりも、より精密にグラフト構造が制御できたためグラフト重合体そのものの安定性、分散性が向上したと考えている。
すなわち、本発明では、溶存酸素濃度と反応液中のラジカル発生速度を規定することにより、反応液中のラジカル濃度、および基幹ポリマーに対するグラフト効率が一定範囲内となることで、従来技術と比較してグラフト鎖の数が少なく長さが長いポリマーが得られていると推察している。その結果、安定性悪化の原因となる分子間架橋反応に対し、分子内(同一グラフト鎖内)架橋反応が相対的に有利になったため安定性が向上し、また、長いグラフト鎖が無機微粒子を効果的に捕捉し分散させることができていると推測している。
本発明におけるグラフト重合反応の方法は、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、沈殿重合等の従来公知の重合方法によって行うことができるが、溶液重合が特に好ましい。
前記グラフト重合に際しては、反応温度は、ラジカル発生速度を制御するために任意に設定することができるが、好ましくは60〜95℃、より好ましくは65〜90℃、さらに好ましくは70〜87℃とするのがよい。前記グラフト重合に際しては、反応圧力は、常圧下、減圧下、加圧下のいずれで反応させてもよい。前記グラフト重合は、溶存酸素濃度を制御するために、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
前記グラフト重合に用いる溶媒は、N−ビニル環状ラクタム単位を有する基幹ポリマーが溶解するものであればよく、例えば、水;アルコール類;アミド類;スルホキシド類;等が挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、水、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、およびこれらの混合溶媒が好ましく、水が特に好ましい。
本発明においては、グラフト重合を行う際の前記溶媒の使用量は、前記基幹ポリマーが溶解する量を用いるのが好ましく、10〜50質量%となるように調整することが好ましい。なお、前記溶媒は、初期一括仕込みしてもよく、逐次添加してもよい。
本発明のN−ビニル環状タクタム系グラフト重合体の用途としては、例えば、各種無機物や有機物の分散剤、増粘剤、粘着剤、接着剤、表面コーティング剤、架橋剤等が挙げられる。より具体的には、スケール防止剤、泥土分散剤、セメント材料分散剤、セメント材料分離低減剤、セメント材料用増粘剤、凝集剤、洗剤用ビルダー、洗剤用色移り防止剤、重金属捕捉剤、金属表面処理剤、染色助剤、染料定着剤、泡安定剤、乳化安定剤、インク染料分散剤、水性インク安定剤、塗料用顔料分散剤、塗料用シックナー、感圧接着剤、紙用接着剤、医療用接着剤、貼付剤用粘着剤、スティック糊、化粧パック用粘着剤、樹脂用フィラー分散剤、記録紙用コーティング剤、インクジェット紙用表面処理剤、感光性樹脂用分散剤、エッチングレジスト、帯電防止剤、保湿剤、吸水性樹脂用原料、肥料用バインダー、高分子架橋剤、樹脂相溶化剤、写真薬添加剤、化粧料調剤添加剤、整髪料助剤、ヘアスプレー添加剤、サンスクリーン組成物添加剤等の用途に好適に用いられる。
以下実施例をもって本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、原料であるポリビニルピロリドンのK値は、以下の方法で測定した。すなわち、ポリビニルピロリドンを水に1質量%の濃度で溶解させ、その溶液の粘度を25℃において毛細管粘度計によって測定し、この測定値を用いて次のフィケンチャー式から計算した。K値が高いほど、分子量は高いと言える。
(logηrel )/C=〔(75Ko2)/(1+1.5Ko C)〕+KoK=1000Ko(但し、Cは、溶液100ml中のポリビニルピロリドンのg数を示し、ηrel は、溶媒に対する溶液の粘度を示す)
溶存酸素濃度は、溶存酸素計(セントラル科学株式会社製 UC−12−SOL型)を用いて測定した。
〔実施例1〕
温度計、攪拌機、滴下ロート、冷却管を備えた2000mlセパラブルフラスコに、50%ポリビニルピロリドン水溶液(K値28.5)800gおよび蒸留水865gを仕込み、攪拌しながら100mL/minの速度で窒素ガスを30分間バブリングし、均一溶液とした。この時、溶存酸素計により溶存酸素濃度が0.1ppmであることを確認した。その後、フラスコ内温が82℃となるまで昇温し、温度が一定となるよう保持した。
次いで、このフラスコ内に、80%アクリル酸水溶液125gと、10%アンモニア水溶液118g、および5%過硫酸アンモニウム水溶液80gを90分かけて滴下した。滴下終了後、引き続き同温度で30分間熟成を行い、続いて30分間で内温を74℃に低下させた。次に、V−50(2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、和光純薬工業社製試薬)10%水溶液12gを3分割で添加し、74℃で2.5時間熟成させた。反応終了後のK値は47.3であり、また、液体クロマトグラフィーでアクリル酸の転化率を分析したところ、97.3%であった。この重合において、最大ラジカル発生速度は0.12mmol/kg・minと計算された。
〔実施例2〕
実施例1において、重合時の内温を85℃、熟成時の内温を77℃とする以外は実施例1と同様の操作を行った。重合液の溶存酸素濃度は0.1ppmであった。反応終了時のアクリル酸の転化率は97.5%、K値は45.4であった。また、最大ラジカル発生速度は0.14mmol/kg・minと計算された。
〔比較例1〕
実施例1において、重合時の内温を88℃、熟成時の内温を80℃とする以外は実施例1と同様の操作を行った。重合液の溶存酸素濃度は0.1ppmであった。反応終了時のアクリル酸の転化率は97.2%、K値は43.8であった。また、最大ラジカル発生速度は0.17mmol/kg・minと計算された。
〔比較例2〕
温度計、攪拌機、滴下ロート、冷却管を備えた2000mlセパラブルフラスコに、50%ポリビニルピロリドン水溶液(K値28.5)800gおよび蒸留水865gを仕込み、フラスコ内部を窒素置換した後、攪拌溶解し均一溶液を得た。この時、溶存酸素計により溶存酸素濃度が3.6ppmであることを確認した。その後、フラスコ内温が85℃となるまで昇温し、温度が一定となるよう保持した。
次いで、このフラスコ内に、80%アクリル酸水溶液125gと、10%アンモニア水溶液118g、および5%過硫酸アンモニウム水溶液80gを90分かけて滴下した。滴下終了後、引き続き同温度で30分間熟成を行い、続いて30分間で内温を77℃に低下させた。次に、V−50(2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、和光純薬工業社製試薬)10%水溶液12gを3分割で添加し、74℃で2.5時間熟成させた。反応終了後のK値は45.2であり、また、液体クロマトグラフィーでアクリル酸の転化率を分析したところ、97.4%であった。この重合において、最大ラジカル発生速度は0.14mmol/kg・minと計算された。この実験は、特許文献2の合成例3に相当するものである。
〔比較例3〕
温度計、攪拌機、滴下ロート、冷却管を備えた2000mlセパラブルフラスコに、50%ポリビニルピロリドン水溶液(K値28.5)800gおよび蒸留水865gを仕込み、フラスコ内部を窒素置換した後、攪拌溶解し均一溶液を得た。その後、この溶液が還流状態になるまで昇温した(フラスコ内温103℃)。この時、溶液は沸騰状態であるため溶存酸素濃度は0ppmである。次いで、このフラスコ内に、80%アクリル酸水溶液125gと、10%アンモニア水溶液118g、および5%過硫酸アンモニウム水溶液80gを90分かけて滴下した。滴下終了後、引き続き同温度で60分間熟成を行った。次に、V−50(2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、和光純薬工業社製試薬)10%水溶液12gを3分割で添加し、同温度で2.5時間熟成させた。反応終了後のK値は35.5であり、また、液体クロマトグラフィーでアクリル酸の転化率を分析したところ、99.0%であった。この重合において、最大ラジカル発生速度は0.18mmol/kg・minと計算された。この実験は、特許文献1の実施例1に相当するものである。
実施例1、2および比較例1〜3で製造した重合体を用いて、イオン交換水/炭酸カルシウム/ポリマー固形分=100/2/0.02となる組成の水分散体を調整した。それらを10分間攪拌混合し、24時間静置した後の分散性を比較した。
表1に示す通り、本実施例で合成した重合体は分散性に優れていることがわかる。
Figure 2010047693
炭酸カルシウム分散性
○:沈降しない △:一部沈降する ×:沈降する
本発明の改良されたN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体は、分散性、相溶性、密着性等を有し、これら特性を活かした幅広い用途(分散剤、洗剤添加物、粘着剤等)に有用である。

Claims (5)

  1. N−ビニル環状ラクタム単位を有する基幹ポリマーに(メタ)アクリル系単量体をラジカル開始剤の存在化で重合させて得られるN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体であって、該重合時の反応液中の溶存酸素濃度が3.5ppm以下であり、該重合時の反応液中の最大ラジカル発生速度が0.01〜0.16mmol/kg・minであることを特徴とするN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体。
  2. 前記N−ビニル環状ラクタム単位を有する基幹ポリマーがビニルピロリドン系重合体であることを特徴とする請求項1記載のN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体。
  3. 前記(メタ)アクリル系単量体が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミド類であることを特徴とする請求項1〜2記載のN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体。
  4. N−ビニル環状ラクタム単位を有する基幹ポリマーに(メタ)アクリル系単量体をラジカル開始剤の存在化で重合させるN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体の製造方法であって、該重合時の反応液中の溶存酸素濃度が3.5ppm以下であり、該重合時の反応液中の最大ラジカル発生速度が0.01〜0.16mmol/kg・minであることを特徴とするN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体の製造方法。
  5. 該重合時に反応液中に窒素バブリングを行うことを特徴とする請求項4記載の製造方法。
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