前記特許文献1に開示のトイレットペーパホルダの場合、付勢機構によって旋回カバーの遊動が防止される。しかし、トイレットペーパには、薄手のシングルロール、2枚重ねの厚手のダブルロール、さらに、再生紙を用いた高剛性のもの、バージンパルプを用いた軟らかいもの等、種々の種類があり、たとえば、付勢力を厚手のダブルロールに合わせると、シングルロールでは付勢力が強すぎて旋回カバーの前端部や繰り出し機構がトイレットペーパの外周面に食い込み、繰り出し機構による繰り出しをスムースに行うことができない場合がある。逆に、付勢力を薄手のシングルロールに合わせると、ダブルロールでは付勢力が弱すぎて繰り出し機構がトイレットペーパの外周面ですべって繰り出しができない場合がある。
本発明は、前記従来技術の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、トイレットペーパの種類にかかわらず、トイレットペーパを確実かつスムースに繰り出すことができる繰り出し機構を有するトイレットペーパホルダを提供することにある。
前記課題を解決するための本発明の前提は、ロール状のトイレットペーパを回転可能に支持するホルダ本体と、ホルダ本体に支持されたトイレットペーパの上方に位置し、該トイレットペーパの中心軸に対して直交する方向へ延びる旋回カバーと、旋回カバーに形成されてトイレットペーパを回転させつつ該トイレットペーパの先端を繰り出す繰り出し機構とを備え、旋回カバーが、ホルダ本体に回転可能に支持された後端部と、後端部の反対側に位置してトイレットペーパの外周面に当接する前端部とを有し、旋回カバーの前端部が、後端部を中心として上下方向へ旋回可能なトイレットペーパホルダである。
前記前提における本発明の特徴として、トイレットペーパホルダには、旋回カバーの前端部をトイレットペーパの外周面に押し付ける方向へ付勢する付勢機構と、付勢機構による付勢力を調節する付勢力調節機構とが設けられていることにある。
本発明の一例としては、繰り出し機構が、旋回カバーに回転可能に支持されるとともにトイレットペーパの軸方向へ延びていて該トイレットペーパの外周面に当接する繰り出しローラであり、このトイレットペーパホルダでは、繰り出しローラを回転させることによってトイレットペーパが回転する。
本発明の他の一例としては、繰り出しローラがトイレットペーパから離間する方向とトイレットペーパに当接する方向とへ所定距離移動可能である。
本発明の他の一例として、旋回カバーの前端部には、トイレットペーパの軸方向へ延びていて該トイレットペーパの外周面に当接する低摩擦抵抗の凸部と、凸部の前縁に隣接してトイレットペーパをその軸方向へ切断する切断刃とが設けられ、このトイレットペーパホルダでは、前端部において凸部のみがトイレットペーパの外周面に当接し、凸部を除く前端部の残余の部位がトイレットペーパの外周面から離間している。
本発明の他の一例として、付勢機構は、一端が旋回カバーの後端部の回転軸となる回転支持部に連結されるレバーと、レバーを回転させる方向に付勢するバネ部材とから形成され、このトイレットペーパホルダでは、バネ部材の一端をレバーの自由端部に係止し、バネ部材の他端をホルダ本体に設けられたバネ受け部に係止する。
本発明の他の一例として、付勢力調節機構では、レバーとバネ受け部とのうちの少なくともいずれか一方においてバネ部材の係止位置を変更可能であり、このトイレットペーパホルダでは、バネ部材の係止位置を変更することによって該バネ部材の付勢力を調節可能である。
本発明の他の一例としては、ホルダ本体が、トイレットペーパの横方向両端を挟む一対の側板部と、トイレットペーパの後方に位置してそれら側板部を連結する連結板部とから形成され、このトイレットペーパホルダでは、付勢機構と付勢力調節機構とがそれら側板部それぞれに形成されている。
本発明にかかるトイレットペーパホルダによれば、旋回カバーの前端部をトイレットペーパの外周面に押し付ける方向へ付勢する付勢機構と、その付勢機構による付勢力を調節する付勢力調節機構とが設けられているから、トイレットペーパの種類に応じてカバーの付勢力を適切な付勢力に調節することができ、トイレットペーパの種類にかかわらず、繰り出し機構を介して各種トイレットペーパを確実に繰り出すことができる。このトイレットペーパホルダは、付勢機構によって旋回カバーの遊動が防止されるから、トイレットペーパの繰り出し操作を容易に行うことができる。
繰り出し機構が旋回カバーに回転可能に支持されてトイレットペーパの外周面に当接する繰り出しローラであり、繰り出しローラを回転させることによってトイレットペーパが回転するトイレットペーパホルダは、付勢機構を介してトイレットペーパの外周面に対する繰り出しローラの当接状態を維持することができ、トイレットペーパの種類にかかわらず、繰り出しローラを介してトイレットペーパを確実かつスムースに繰り出すことができる。このトイレットペーパホルダは、付勢機構によって旋回カバーの前端部がトイレットペーパの外周面に押し付けられるとともに、繰り出しローラがトイレットペーパの外周面に押し付けられるから、繰り出しローラがトイレットペーパの外周面から上方へ離間することはない。ゆえに、一方の手で旋回カバーをトイレットペーパに向かって旋回させつつ、他方の手で繰り出しローラを回転させる必要はなく、片手でローラを回転させるだけでトイレットペーパを繰り出すことができ、片手のみでトイレットペーパの繰り出し操作を行うことができる。
繰り出しローラがトイレットペーパから離間する方向とトイレットペーパに当接する方向とへ所定距離移動可能であるトイレットペーパホルダは、トイレットペーパが上下方向や前後方向へ不規則に動きながら(がたつきながら)回転したとしても、繰り出しローラの両端が移動することでトイレットペーパとの片当たりが防止され、トイレットペーパの外周面に対する繰り出しローラの全長にわたる均一な当接状態を維持することができる。なお、トイレットペーパを使用するにつれて、トイレットペーパの巻き径が小さくなるが、巻き径が小さくなるにつれて旋回カバーの前端部が旋回カバーの後端部を中心とする円弧状の移動軌跡を描いて下方に移動する。繰り出しローラも、旋回カバーの後端部を中心として円弧状に移動するが、旋回カバーの前端部よりも回転半径が小さいから、旋回カバーの前端部より移動距離が短い。そのため、巻き径が大きい状態で、旋回カバーの前端部と繰り出しローラとの双方がトイレットペーパの外周面に当接していても、トイレットペーパの巻き径が小さくなると、旋回カバーの前端部のみがトイレットペーパに当接し、繰り出しローラとトイレットペーパとの間に隙間が生じてしまう。しかし、このトイレットペーパホルダでは、繰り出しローラがトイレットペーパから離間する方向からトイレットペーパに当接する方向へ向かって所定距離移動可能であるから、トイレットペーパの巻き径が小さくなったとしても、繰り出しローラがトイレットペーパの側に移動し、トイレットペーパの外周面に対するローラの当接状態を確実に維持することができる。
トイレットペーパの外周面に当接する低摩擦抵抗の凸部とトイレットペーパをその軸方向へ切断する切断刃とが旋回カバーの前端部に設けられたトイレットペーパホルダは、トイレットペーパの使用によってその巻き径が変化したとしても、トイレットペーパの外周面に当接する凸部により、トイレットペーパの外周面と切断刃との間に形成される隙間を常時一定に保持することができ、切断刃を介してトイレットペーパをその軸方向へ確実に切断することができるとともに、片手のみでトイレットペーパの切断操作を行うことができる。このトイレットペーパホルダは、凸部の摩擦抵抗が低いから、凸部にトイレットペーパの外周面が当接したとしても、凸部がトイレットペーパの繰り出しの邪魔になることはなく、繰り出しローラを介してトイレットペーパをスムースに繰り出すことができる。
このトイレットペーパホルダは、旋回カバーの前端部において凸部のみがトイレットペーパの外周面に当接し、凸部を除く前端部の残余の部位がトイレットペーパの外周面から離間するから、旋回カバーとトイレットペーパとの接触部分を最小限にすることができ、トイレットペーパの衛生状態を保持することができる。
付勢機構が旋回カバーの後端部の回転軸となる回転支持部に連結されるレバーとレバーを回転させる方向に付勢するバネ部材とから形成されたトイレットペーパホルダは、付勢機構がそれを形成するレバーを介して旋回カバーの回転支持部に回転トルクを付与する構成となっているから、付勢機構をコンパクトにできるのみならず、付勢機構を介してトイレットペーパに対する繰り出しローラの当接状態を確実に維持することができる。
レバーとバネ受け部とのうちの少なくともいずれか一方においてバネ部材の係止位置を変更可能であり、バネ部材の係止位置を変更することによってバネ部材の付勢力を調節可能なトイレットペーパホルダは、ばね部材の端部の係止位置を変更するだけで、付勢機構の付勢力を簡単に調節することができる。このトイレットペーパホルダは、ばね部材の端部の係止位置を変更することで、付勢機構の付勢力の強弱を調節することができるから、トイレットペーパの種類に応じて旋回カバーの付勢力を適切な付勢力に調節することができる。このトイレットペーパホルダは、トイレットペーパの種類に応じてカバーの付勢力を適切な付勢力に調節することができ、トイレットペーパの種類にかかわらず、繰り出し機構を介して各種トイレットペーパを確実に繰り出すことができる。
付勢機構と付勢力調節機構とが両側板部に形成されたトイレットペーパホルダは、旋回カバーの両側に付勢機構による付勢力が作用するから、旋回カバーの前端部をトイレットペーパの外周面に向かって付勢する力が旋回カバーの全体に均一に作用し、付勢力の偏りが防止され、旋回カバーの前端部の全域を同一の付勢力でトイレットペーパの外周面に押し付けることができ、トイレットペーパの繰り出し中における旋回カバーの不規則な遊動を確実に防ぐことができる。
添付の図面を参照し、本発明に係るトイレットペーパホルダの詳細を説明すると、以下のとおりである。図1は、旋回カバー4をトイレットペーパ2に向かって旋回させた状態で示すトイレットペーパホルダ1Aの斜視図であり、図2は、旋回カバー4を上方へ旋回させた状態で示すトイレットペーパホルダ1Aの斜視図である。図3,4は、側板カバー33aの一部を破断して示すトイレットペーパホルダ1Aの側面図である。図5は、図1のトイレットペーパホルダ1Aの旋回カバー4を取り出して示した側面図であり、図6は、巻き径が小さくなった場合の旋回カバー4の凸部412と繰り出しローラ6との位置関係を示す説明図である。図1では、上下方向を矢印D1、前後方向を矢印D2で示し、横方向を矢印D3で示す。図3では、旋回カバー4を閉じた状態で示し、図4では、旋回カバー4を開いた状態で示す。このトイレットペーパホルダ1Aは、ロール状のトイレットペーパ2を回転可能に支持するホルダ本体3と、トイレットペーパ2の中心軸Nの軸方向(横方向)に対して直交する方向(前後方向)へ延びる旋回カバー4と、旋回カバー4をトイレットペーパ2の外周面に押し付ける方向へバネ付勢する付勢機構5と、トイレットペーパ2を回転させてトイレットペーパ2の先端を繰り出す繰り出しローラ6(繰り出し機構)と、付勢機構5による付勢力を調節する付勢力調節機構7とから形成されている。
トイレットペーパ2は、ロール状に巻いた形態であり、巻き芯となる筒があるもの、巻き芯の無いもののいずれでもよい。なお、トイレットペーパ2に特に限定はなく、ペーパが一枚の薄手のシングルロール、ペーパを2枚重ねた厚手のダブルロール、さらに、ペーパとして再生紙を用いた高剛性のもの、バージンパルプから作られた軟らかいペーパを用いたもの等を使用することができる。
ホルダ本体3は、図1,2に示すように、トイレットペーパ2を三方向から囲む断面コ字形のフレームである。ホルダ本体3は、トイレットペーパ2の横方向両端を挟む一対の側板部32,33と、側板部32,33を連結する連結板部31とから形成されている。連結板部31は、トイレットペーパ2の後方に位置して上下方向へ延びている。側板部32,33は、連結板部31の横方向両端から前方に向かって延びている。側板部32,33には、図3に示すように、トイレットペーパ2の巻き芯21の両端開口部に遊嵌状態に嵌合してトイレットペーパ2を回転可能に支持する一対の嵌合凸部34が取り付けられている。嵌合凸部34は、側板部32,33の横方向内方と横方向外方とへ進退可能であり、横方向内方へ向かってバネ付勢されている。ホルダ本体3では、トイレットペーパ2を片手で持ってそのトイレットペーパ2を側板部32,33の間に位置させるように、トイレットペーパ2をホルダ本体3の下方から上方へ徐々に移動させる。トイレットペーパ2を上方へ徐々に移動させると、トイレットペーパ2に当接する嵌合凸部34がバネ付勢に抗して横方向外方へ移動して側板部32,33に収納される。そのままトイレットペーパ2をさらに上方へ移動させ、巻き芯21の両端開口部が嵌合凸部34の位置に来ると、嵌合凸部34がバネの付勢力によって横方向内方へ突出し、凸部34が巻き芯21の両端開口部に嵌合する。ゆえに、このトイレットペーパホルダ1Aは、ホルダ本体3にトイレットペーパ2を片手でワンタッチ装着することができる。なお、トイレットペーパ2を支持する構成としては、このような構成に限らず、公知の種々の支持構造が適用可能であり、たとえば、嵌合凸部34の替わりに巻き芯21の両端開口部に挿通される芯棒を用いることもできる。
旋回カバー4は、トイレットペーパ2の上方に位置して前後方向へ直状に延びる板状部材であり、ホルダ本体3に支持されている。旋回カバー4は、ホルダ本体3に回転可能に支持された後端部42と、後端部42の反対側に位置する前端部41とを有する。前端部41は、トイレットペーパ2の頂部22を越え、トイレットペーパ2の上部前方円弧面部23との対向位置まで延びている。前端部41は、トイレットペーパ2の上部前方円弧面部23に向けて、下向きに傾斜するように屈曲している。旋回カバー4は、その後端部42を中心として上下方向へ旋回可能である。旋回カバー4の後端部42の横方向両側縁には、側板部32,33の後部上端部内側面と接するように下方に突出するブラケット44A,44Bが設けられている。一方のブラケット44Aには、回転支持部としての枢支軸43Aが突設され、側板部32に設けられた軸孔に回転自在に支持されている。他方のブラケット44Bにも枢支軸43Bが突設され、この枢支軸43Bが筒体511を介して側板部33に回転自在に支持されている。
また、旋回カバー4の横方向両側縁には、ブラケット44から前方に向けて直状に延びる補強リブ46が形成されている。補強リブ46の突出幅は、ブラケット44との接続位置でブラケット44の突出幅の半分程度である。補強リブ46は、前方に向かって徐々に突出幅が小さくなるように傾斜している。旋回カバー4の前端部41のトイレットペーパ2と対向する内面側には、トイレットペーパ2に摺動可能に接触する低摩擦抵抗の凸部412が形成されている。この凸部412は、その下面が円弧状で、旋回カバー4の前端部41の全長にわたって横方向へ直状に延びており、トイレットペーパ2の上部前方円弧面部23に対して直状に接触している。さらに、旋回カバー4の前端部41のトイレットペーパ2と対向する内面側には、凸部412の前縁に隣接してトイレットペーパ2を切断する切断刃411が取り付けられている。旋回カバー4の後端部42の回転中心の位置は、未使用で巻径が最大状態のトイレットペーパ2の頂部22よりも若干下に位置している。同様に、旋回カバー4の前端部41の凸部412のペーパ当接位置は、トイレットペーパ2の頂部22よりも下方に位置している。このトイレットペーパホルダ1Aでは、旋回カバー4の前端部41において凸部412のみがトイレットペーパ2の外周面に当接し、凸部412を除く前端部41の残余の部位がトイレットペーパ2の外周面から離間する。ゆえに、旋回カバー4とトイレットペーパ2との接触部分が最小となり、トイレットペーパ2の衛生状態が保持される。
付勢機構5は、一方の側板部33の側に形成されている。付勢機構5は、旋回カバー4の枢支軸43Bに連結されるレバー51と、レバー51を回転させる方向に付勢するバネ部材52とから形成されている。なお、側板部33には、付勢機構5を隠す側板カバー33aが取り付けられる。レバー51は、側板部33の上端部後方に位置し、枢支軸43Bに嵌合された筒体511を介してカバー4のブラケットに連結されている。すなわち、筒体511の一端がブラケット44Bに設けられた非円形の凹部44B1に回転方向に固定状態で嵌合し(図5参照)、筒体511の他端にレバー51が結合されている。レバー51は、図3に示すように、カバー4が閉じた状態で、後方に斜め下向きとなるように延びており、カバー4を上方に開くと前方に回転し、カバー4を閉じると後方に回転するようになっている。バネ部材52は、ねじりコイルスプリングであり、螺旋状に巻いた円形のコイル部523と、コイル部523の両端から所定角度で直状に延びる第1腕部521および第2腕部522とを備えた形状である。バネ部材52は、第1腕部521の端部がレバー51の自由端部に係止され、第2腕部522の先端が側壁部33に設けられたバネ受け部53に係止している。
バネ受け部53は、側板部33の中央部上方に形成され、レバー51の回動範囲の中間に位置している。この付勢機構5では、回転中心である枢支軸43Bとバネ受け部53とを結ぶ中立線M上を通る地点が思案点となり、思案点を越えるまではカバー4を閉じる方向に付勢力Fcが作用し、思案点を超えると、図4に示すように、カバー4を開く方向に付勢力Foが作用する。
バネ部材52の第1腕部521が係止されるレバー51の自由端部には、第1腕部521の端部が係止される一つの係止部7zが形成されている。一方、バネ部材52の第2腕部522が係止するバネ受け部53には、付勢力調節機構7を構成する複数の係止部、図示例では5箇所の係止部7a,7b,7c,7d,7eが形成されている。係止部7a〜7eは、枢支軸43Bの中心を通る中立線M上に、所定間隔をあけて直状かつ1列に配置されている。係止部7a〜7eは、バネ部材52の第1腕部521と第2腕部522との間の間隔を段階的に調節可能である。なお、図示の例では、係止部7a〜7eや係止部7zが穴構成となっているが、穴に限らず、バネ部材52の端部を係止可能な構成であれば、溝でもよいし、その他種々の構成を採用することができる。また、係止部7a〜7eの個数に特に限定はなく、少なくとも2つ以上の係止部が形成されていればよい。
付勢力調節機構7では、バネ部材52の第2腕部522の係止位置を変更することにより、バネ部材52のねじり変形量が変化し、レバー51に作用するバネ力(反発力)が調節される。枢支軸43Bに最も近い位置の係止部7aに係止した場合にバネ力が最大となり、係止部7aから遠くなるに連れて徐々にバネ力が小さくなる。バネ部材52のバネ力によって旋回カバー4の前端部41に作用する付勢力が異なる。なお、付勢力は、旋回カバー4の前端部41に作用する押圧力であり、350gfを中心に、100〜600gf程度の大きさに設定することが好適である。図示の例では、バネ受け部53に複数の係止部7a〜7eを設けているが、レバー51の側に複数の係止部を設けてバネ力を調節するようにしてもよく、レバー51とバネ受け部53との両方に複数の係止部を設けてバネ力を調節するようにしてもよい。
繰り出しローラ6は、旋回カバー4の前端部41からわずか後方の位置に取り付けられている。繰り出しローラ6は、旋回カバー4に回転可能に支持され、トイレットペーパ2の軸方向(横方向)へ延びている。繰り出しローラ6は、その周面がトイレットペーパ2の外周面に当接している。このトイレットペーパホルダ1Aでは、繰り出しローラ6を図1に示す矢印L1方向へ回転させることによってトイレットペーパ2が回転し、トイレットペーパ2の先端を繰り出すことができる。繰り出しローラ6は、円筒形状のゴムローラであり、表面に摩擦力を増大させるための複数の突起65が突設されている。繰り出しローラ6の横方向両端には、ローラ軸63が突出している。ローラ軸63は、旋回カバー4の上面に突設されたブラケット47に回転可能に支持されている。繰り出しローラ6は、旋回カバー4に設けられた開口部45を通して上側部分61がカバー4の上面側に露出し、下側部分62がカバー4の下面側に露出し、下側部分62がトイレットペーパ2の外周面に摩擦接触する構成となっている。
ブラケット47は、旋回カバー4の開口部45の横方向両側に半円状に突出形成されている。ブラケット47の開口部45に面する側面には、トイレットペーパ2に当接かつ離間する方向、図示の例では上下方向に延びる長孔47aが形成されている。長孔47aには、繰り出しローラ6のローラ軸61が回転可能かつ上下方向(トイレットペーパ2から離間する方向およびトイレットペーパ2に当接する方向)へ所定距離移動可能に係合している。ゆえに、繰り出しローラ6は、トイレットペーパ2から離間する方向とトイレットペーパ2に当接する方向とへ長孔47aの長さだけ移動することができる。なお、長孔47aの下端は、止め板48によって閉塞されている。
次に、このトイレットペーパホルダ1Aの使用方法について説明する。旋回カバー4の付勢力の調節は、トイレットペーパホルダ1を設置する際、あるいは設置した後、使用者が使うトイレットペーパ2の種類に応じて調節する。付勢力の調節は、一方の側板部33の側板カバー33aを外し、図3に示すように、バネ部材52の第1腕部521を、バネ受け部53の係止部7a〜7eのうち、所定の係止部を選択することにより行う。図示の例では、中間位置の係止部7cに係止され、バネ部材52のバネ力が中間的なバネ力に調整されている。ゆえに、旋回カバー4の付勢力が中間的な付勢力に調節されている。付勢力の調節が済んだ後は、側板部33に側板カバー33aを取り付ける。
トイレットペーパホルダ1Aでは、図4に示すように、旋回カバー4を上方へ開き、トイレットペーパ2を側板部32,33の間に装着する。旋回カバー4を開いていくと、レバー51が思案点Pを超え、バネ力Foの作用方向が上方(図中時計回り方向)となり、カバー2から手を離してもバネ部材52の付勢力によって開いた状態に維持される。
旋回カバー2を閉じると、レバー51が思案点Pを越え、バネ力Fcの作用方向が下方(図中反時計回り方向)に切り替わり、カバー4に下方向の付勢力が作用する。旋回カバー2の前端部41の凸部412がトイレットペーパ2の外周面に当接する前に、繰り出しローラ6の下側部62がトイレットペーパ2の外周面に先に当接する。繰り出しローラ6の下側部62がトイレットペーパ2に当接した後、旋回カバー4の凸部412がトイレットペーパ2の外周面に当接するまでの間、ローラ軸63がカバー4のブラケット43に設けられた長孔47a内を相対的に上方に移動する。図示の例では、トイレットペーパ2の巻き径が最大の状態であって、凸部412がトイレットペーパ2の外周面に当接した時点で、繰り出しローラ6のローラ軸61が長孔47aの上端縁に達するような位置関係に設定されている。
凸部412がトイレットペーパ2の外周面に当接する前に、繰り出しローラ6のローラ軸61が長孔47aの上端縁に当たると、凸部412とトイレットペーパ2の外周面との間に隙間が生じることになる。逆に、凸部412がトイレットペーパ2の外周面に圧接した時点で、ローラ軸63が長孔47aの上端縁に達していない場合は、繰り出しローラ6の自重のみがトイレットペーパ2の外周面に対するローラ6の接触圧となる。もっとも、ローラ軸61と長孔47aとの位置関係は厳密なものではなく、トイレットペーパ2は軟かいので、トイレットペーパ2の変形によって凸部412と繰り出しローラ6との当接位置の多少のずれは吸収される。
トイレットペーパ2の使用時には、繰り出しローラ6の上側部61に片手をおいて繰り出しローラ6を回転させる。繰り出しローラ6を回転させると、繰り出しローラ6の下側部62とトイレットペーパ2の外周面との摩擦力により、トイレットペーパ2が繰り出しローラ6の回転方向と逆方向へ回転し、トイレットペーパ2の先端が下方へ順次繰り出す。仮に、旋回カバー4の回転軸が傾いたり、トイレットペーパ2が不規則に動きながら(がたつきながら)回転したとしても、繰り出しローラ6の横方向両端が上下に移動するから、ローラ6のトイレットペーパ2との片当たりが防止され、トイレットペーパ2の外周面に対する繰り出しローラ6の全長にわたる均一な当接状態を維持することができる。繰り出されたペーパ部分は、下方に垂れ下がり、切断刃411を利用して適当な長さで切断する。
旋回カバー4は、その前端部41がバネ部材52のバネ力によってトイレットペーパ2の外周面に向かって付勢されているから、カバー4の凸部412によってトイレットペーパ2が押さえられた状態で回転するとともに、カバー4が不規則に動く(ばたつく)ことはない。したがって、旋回カバー4に支持された繰り出しローラ6についても、スムースに回転させることができ、トイレットペーパ2の繰り出し操作を片手でスムースに行うことができる。このトイレットペーパホルダ1では、トイレットペーパ2の種類に応じてバネ部材52のバネ力を調節することができるから、シングルロールのような薄手のトイレットペーパ2の場合、繰り出しローラ6がトイレットペーパ2を弱い力で押圧するようにバネ部材52のバネ力を弱め、旋回カバー4の付勢力を弱める。それによって、繰り出し中のトイレットペーパ2にしわが生じることはなく、繰り出し中のトイレットペーパ2の不用意な破損を防ぐことができる。また、厚めのトイレットペーパ2や剛性が大きいトイレットペーパ2の場合には、繰り出しローラ6がトイレットペーパ2を強い力で押圧するようにバネ部材52のバネ力を強め、旋回カバー4の付勢力を強める。それによって、繰り出しローラ6の空回りを防ぐことができ、トイレットペーパ2をスムースに繰り出すことができる。
トイレットペーパ2を使用するにつれて、トイレットペーパ2の巻き径が小さくなるが、巻き径の収縮量に追随して凸部412が下方に移動する。一方、繰り出しローラ6も巻き径の収縮量に追随して下方に移動していく。凸部412と繰り出しローラ6との移動軌跡は、図6に示すように、カバー後端部42の回転中心Qを中心とする円弧状の軌跡となるが、繰り出しローラ6の当接位置の回転軌跡6Aの半径r2が凸部412の回転軌跡の半径r1より小さいので、繰り出しローラ6の移動量は凸部412の移動量よりも小さい。したがって、繰り出しローラ6のローラ軸63が上下方向に移動不能であれば、図6の二点鎖線で示すように、繰り出しローラ6と小径のトイレットペーパ2の外周面との間に隙間gが生じることになる。しかし、このトイレットペーパホルダ1Aでは、繰り出しローラ6が長孔47aに沿って上下方向へ移動可能となっているから、ローラ軸63が長孔47a内を下方に移動し、繰り出しローラ6とトイレットペーパ2の外周面との間に隙間が生じることはなく、トイレットペーパ2の外周面に対するローラ6の当接状態を確実に維持することができる。
図7は、旋回カバー4をトイレットペーパ2に向かって旋回させた状態で示す他の一例のトイレットペーパホルダ1Bの斜視図である。図8は、側板カバー32aを取り外した状態で示す側板部32の斜視図であり、図9は、嵌合凸部34の拡大斜視図である。図10は、旋回カバー4の部分破断斜視図であり、図11,12は、側板カバー32aの一部を破断して示すトイレットペーパホルダ1Bの側面図である。図7では、上下方向を矢印D1、前後方向を矢印D2で示し、横方向を矢印D3で示す。図11では、旋回カバー4を閉じた状態で示し、図12では、旋回カバー4を開いた状態で示す。このトイレットペーパホルダ1Bが図1のそれと異なるのは、嵌合凸部34を横方向内方へ付勢するコイルバネ8がそれら側板部33,32に装着されている点と、付勢機構5が一方の側板部33の側に形成されているのみならず、他方の側板部32の側にも形成されている点と、繰り出しローラに突起65ではなく横方向へ延びる突条66が形成されている点とにある。なお、このトイレットペーパホルダ1Bのその他の構成は図1のトイレットペーパホルダ1Aと同一であるから、図1のそれと同一の符号を付すことで、このトイレットペーパホルダ1Bのその他の構成の説明は省略する。
このトイレットペーパホルダ1Bは、図1のそれと同様に、ロール状のトイレットペーパ2を回転可能に支持するホルダ本体3と、トイレットペーパ2の中心軸N(図3参照)の軸方向(横方向)に対して直交する方向(前後方向)へ延びる旋回カバー4と、旋回カバー4をトイレットペーパ2の外周面に押し付ける方向へバネ付勢する付勢機構5と、トイレットペーパ2を回転させてトイレットペーパ2の先端を繰り出す繰り出しローラ6(繰り出し機構)と、付勢機構5による付勢力を調節する付勢力調節機構7とから形成されている。
嵌合凸部34は、図8,9に示すように、側板部32に形成された開口321に着脱可能に装着されてトイレットペーパ2の巻き芯21(図3参照)の両端開口部に嵌合する嵌合部分341と、側板部32に形成された支持部322に着脱可能に支持された旋回部分342とから形成されている。なお、側板部33に位置する嵌合凸部34は、側板部32のそれと同一であるから、図8,9を援用し、その説明は省略する。嵌合部分341には、ホルダ本体3の下方から上方へ向かって傾斜する斜面343が形成されている。嵌合部分341は、ホルダ本体3の下方から上方へ向かってその厚み寸法が次第に厚くなっている。嵌合凸部34は、その周縁部分344が開口321を囲繞する側板部32の内面に当接している。ゆえに、嵌合凸部34の開口321からの抜脱が防止される。嵌合凸部34の側板カバー32aに対する対向面と側板カバー32aの内面との間には、横方向へ延びるコイルバネ8が配置されている。コイルバネ8は、その一端が嵌合凸部34の対向面に形成された十字状の指示部345に指示され、その他端が側板カバー32a,33aの内面に形成された円筒状の指示孔32bに指示されている。コイルバネ8は、そのバネ力によってそれら嵌合凸部34を横方向内方へ付勢している。ゆえに、嵌合部分341が開口321から側板部32の内側に突出している。
嵌合凸部34は、側板部32,33の横方向内方と横方向外方とへ進退可能である。ホルダ本体3では、トイレットペーパ2を片手で持ってそのトイレットペーパ2を側板部32,33の間に位置させるように、トイレットペーパ2をホルダ本体3の下方から上方へ徐々に移動させる。トイレットペーパ2を上方へ徐々に移動させると、トイレットペーパ2に嵌合部分341の斜面が当接しつつ、嵌合凸部34がコイルバネの付勢に抗して横方向外方へ移動して側板部32,33に収納される。そのままトイレットペーパ2をさらに上方へ移動させ、巻き芯21の両端開口部が嵌合部分341の位置に来ると、嵌合凸部34がコイルバネの付勢力によって横方向内方へ突出し、嵌合部分341が巻き芯21の両端開口部に嵌合する。ゆえに、このトイレットペーパホルダ1Bは、ホルダ本体3にトイレットペーパ2を片手でワンタッチ装着することができる。
旋回カバー4は、トイレットペーパ2の上方に位置して前後方向へ直状に延びる板状部材であり、ホルダ本体3に支持されている。旋回カバー4は、ホルダ本体3に回転可能に支持された後端部42と、後端部42の反対側に位置する前端部41と、前後端部41,42の間に延びる中間部43とを有する。前端部41は、トイレットペーパ2の上部前方円弧面部23を越え、トイレットペーパ2の中間部前方円弧面部24との対向位置まで延びている。前端部41は、トイレットペーパ2の中間部前方円弧面部24に向けて、下向きに傾斜するように屈曲している。旋回カバー4は、その後端部42を中心として上下方向へ旋回可能である。旋回カバー4の後端部42の横方向両側縁には、側板部32,33の後部上端部内側面と接するように下方に突出するブラケット44A,44Bが設けられている。一方のブラケット44Aには、回転支持部としての枢支軸43Aが突設され、側板部32に設けられた軸孔に回転自在に支持されている。他方のブラケット44Bにも枢支軸43Bが突設され、この枢支軸43Bが筒体511を介して側板部33に回転自在に支持されている。
また、旋回カバー4の横方向両側縁には、ブラケット44から前方に向けて直状に延びる補強リブ46が形成されている。補強リブ46の突出幅は、ブラケット44との接続位置でブラケット44の突出幅の半分程度である。補強リブ46は、前方に向かって徐々に突出幅が小さくなるように傾斜している。旋回カバー4の前端部41のトイレットペーパ2と対向する内面側には、トイレットペーパ2に摺動可能に接触する低摩擦抵抗の複数の凸部413が形成されている。それら凸部413は、その下面が円弧状に形成されている。それら凸部413は、旋回カバー4の前端部41の全長にわたって形成され、横方向へ等間隔で並んでいる。凸部413は、トイレットペーパ2の中間部前方円弧面部24に部分的に接触している。旋回カバー4の前端部41のトイレットペーパ2と対向する内面側には、凸部412の前縁に隣接してトイレットペーパ2を切断する切断刃411が取り付けられている。旋回カバー4の後端部42の回転中心の位置は、未使用で巻径が最大状態のトイレットペーパ2の頂部22よりも若干下に位置している。このトイレットペーパホルダ1Bでは、旋回カバー4の前端部41において凸部413のみがトイレットペーパ2の外周面に部分的に当接し、凸部413を除く前端部41の残余の部位がトイレットペーパ2の外周面から離間する。このトイレットペーパホルダ1Bでは、旋回カバー4とトイレットペーパ2との接触部分が図1のトイレットペーパホルダ1Aよりも一層小さくなり、トイレットペーパ2の衛生状態を確実に保持することができる。
ブラケット44Aには回転支持部としての枢支軸43Aが突設され、この枢支軸43Aが筒体511を介して側板部32に回転自在に支持されている。付勢機構5は、一方の側板部33の側と他方の側板部32の側とに形成されている。なお、一方の側板部33の側に形成された付勢機構5は、側板部32の側に形成されたそれと同一であるから、図11,12を援用することで、その説明は省略する。側板部32の側に形成された付勢機構5は、旋回カバー4の枢支軸43Aに連結されるレバー51と、レバー51を回転させる方向に付勢するバネ部材52とから形成されている。なお、側板部32には、付勢機構5を隠す側板カバー32aが取り付けられる。レバー51は、枢支軸43Aに嵌合された筒体511を介してカバー4のブラケットに連結されている。すなわち、筒体511の一端がブラケット44Aに設けられた非円形の凹部44A1に回転方向に固定状態で嵌合し(図5参照)、筒体511の他端にレバー51が結合されている。レバー51は、図11に示すように、カバー4が閉じた状態で、後方に斜め下向きとなるように延びており、カバー4が開いた状態で、前後方向へ略直状になって延びる。レバー51は、カバー4を上方に開くと前方に回転し、カバー4を閉じると後方に回転するようになっている。バネ部材52は、ねじりコイルスプリングであり、螺旋状に巻いた円形のコイル部523と、コイル部523の両端から所定角度で直状に延びる第1腕部521および第2腕部522とを備えた形状である。バネ部材52は、第1腕部521の端部がレバー51の自由端部に係止され、第2腕部522の先端が側壁部33に設けられたバネ受け部53に係止している。
バネ受け部53は、側板部32の中央部上方に形成され、レバー51の回動範囲の中間に位置している。この付勢機構5では、回転中心である枢支軸43Aとバネ受け部53とを結ぶ中立線M上を通る地点が思案点となり、思案点を越えるまではカバー4を閉じる方向に付勢力Fcが作用し、思案点を超えると、図12に示すように、カバー4を開く方向に付勢力Foが作用する。
バネ部材52の第1腕部521が係止されるレバー51の自由端部には、第1腕部521の端部が係止される一つの係止部7oが形成されている。一方、バネ部材52の第2腕部522が係止するバネ受け部53には、付勢力調節機構7を構成する複数の係止部、図示例では3箇所の係止部7l,7m,7nが形成されている。係止部7l〜7nは、枢支軸43の中心を通る中立線M上に、所定間隔をあけて直状かつ1列に配置されている。係止部7l〜7nは、バネ部材52の第1腕部521と第2腕部522との間の間隔を段階的に調節可能である。なお、図1のトイレットペーパホルダ1Aと同様に、係止部7l〜7nや係止部7oが穴構成となっているが、穴に限らず、バネ部材52の端部を係止可能な構成であれば、溝でもよいし、その他種々の構成を採用することができる。また、係止部7l〜7nの個数に特に限定はなく、少なくとも2つ以上の係止部が形成されていればよい。
付勢力調節機構7では、バネ部材52の第2腕部522の係止位置を変更することにより、バネ部材52のねじり変形量が変化し、レバー51に作用するバネ力(反発力)が調節される。枢支軸43Bに最も近い位置の係止部7lに係止した場合にバネ力が最大となり、係止部7lから遠くなるに連れて徐々に付勢力が小さくなる。バネ部材52のバネ力によって旋回カバー4の前端部41に作用する付勢力が異なる。付勢力は、旋回カバー4の前端部41に作用する押圧力であり、図1のトイレットペーパホルダ1Aと同様に、175gfを中心に、50〜400gf程度の大きさに設定することが好適である。このトイレットペーパホルダ1Bでは、バネ受け部53に3つの係止部7l〜7nを設けているが、レバー51の側に複数の係止部を設けてバネ力を調節するようにしてもよく、レバー51とバネ受け部53との両方に複数の係止部を設けてバネ力を調節するようにしてもよい。
繰り出しローラ6は、旋回カバー4の中間部43の前方の位置に取り付けられている。繰り出しローラ6は、旋回カバー4に回転可能に支持され、トイレットペーパ2の軸方向(横方向)へ延びている。繰り出しローラ6は、その周面がトイレットペーパ2の外周面に当接している。このトイレットペーパホルダ1では、繰り出しローラ6を図7に示す矢印L1方向へ回転させることによってトイレットペーパ2が回転し、トイレットペーパ2の先端を繰り出すことができる。繰り出しローラ6は、円筒形状のプラスチックから作られ、その外周面全域に環状のゴムが着脱可能に嵌め込まれている。ゴムには、摩擦力を増大させるための横方向へ延びる複数の突条66が形成されている。突条66は、その断面形状が三角形に作られている。繰り出しローラ6の横方向両端には、ローラ軸63が突出している。ローラ軸63は、旋回カバー4の上面に突設されたブラケット47に回転可能に支持されている。繰り出しローラ6は、旋回カバー4に設けられた開口部45を通して上側部分61がカバー4の上面側に露出し、下側部分62がカバー4の下面側に露出し、下側部分62(突条66)がトイレットペーパ2の外周面に摩擦接触する構成となっている。
ブラケット47は、旋回カバー4の開口部45の横方向両側に半円状に突出形成されている。ブラケット47の開口部45に面する側面には、トイレットペーパ2に当接かつ離間する方向、図示の例では上下方向に延びる長孔47aが形成されている。長孔47aには、繰り出しローラ6のローラ軸61が回転可能かつ上下方向(トイレットペーパ2から離間する方向およびトイレットペーパ2に当接する方向)へ所定距離移動可能に係合している。ゆえに、繰り出しローラ6は、トイレットペーパ2から離間する方向とトイレットペーパ2に当接する方向とへ長孔47aの長さだけ移動することができる。なお、トイレットペーパホルダ1Aと異なり、長孔47aの下端に止め板48は取り付けられていない。繰り出しローラ6は、長孔47aの下端から上方へ圧入することによって、長孔47aに入れることができる。また、長孔47aの下端から下方へ押圧することによって、長孔47aから取り外すことができる。このトイレットペーパホルダ1Bの使用方法は図1のトイレットペーパホルダ1Aのそれと同一であるから、図5,6を援用し、その説明は省略する。
このトイレットペーパホルダ1Bは、図1のトイレットペーパホルダ1Aが有する効果に加え、以下の効果を有する。このトイレットペーパホルダ1Bは、付勢機構5が側板部33の側と側板部32の側とに形成されているから、旋回カバー4の両側にバネ部材52の付勢力が作用する。ゆえに、旋回カバー4の前端部41をトイレットペーパ2の外周面に向かって付勢する力がカバー4の全体に均一に作用し、付勢力の偏りが防止され、カバー4の前端部41の全域を均一の付勢力でトイレットペーパ2の外周面に押し当てることができ、トイレットペーパ2の繰り出し中におけるカバー4の不用意なばたつきを確実に防ぐことができる。このトイレットペーパホルダ1Bは、旋回カバー4の前端部41がバネ部材52の付勢力によってトイレットペーパ2の外周面に向かって付勢されているから、カバー4によってトイレットペーパ2が押さえられた状態で回転する。したがって、旋回カバー4に支持された繰り出しローラ6についても、スムースに回転させることができ、トイレットペーパ2の繰り出し操作をスムースに行うことができる。このトイレットペーパホルダ1Bでは、トイレットペーパ2の種類に応じてバネ部材52の付勢力を調節することができるから、シングルロールのような薄手のトイレットペーパ2の場合、繰り出しローラ6がトイレットペーパ2を弱い力で押圧するようにバネ部材52の付勢力を弱める。それによって、繰り出し中のトイレットペーパ2にしわが生じることはなく、繰り出し中のトイレットペーパ2の不用意な破損を防ぐことができる。また、厚めのトイレットペーパ2や剛性が大きいトイレットペーパ2の場合には、繰り出しローラ6がトイレットペーパ2を強い力で押圧するようにバネ部材52の付勢力を強める。それによって、繰り出しローラ6の空回りを防ぐことができ、トイレットペーパ2を片手でスムースに繰り出すことができる。
なお、それら図示のトイレットペーパホルダ1A,1Bでは、繰り出し機構として回転する繰り出しローラ6を用いた例について説明したが、たとえば、特許文献1に開示された機構のように前後に往復移動させてトイレットペーパ2を回転させる構成でもよいし、その他、種々の繰り出し手段を適用することができる。また、このトイレットペーパホルダ1A,1Bでは、付勢機構5のバネ部材6としてねじりコイルスプリングを用いたが、ねじりコイルスプリングに限定されるものではなく、コイルスプリングや板バネを用いてもよく、ぜんまいやトーションバーを用いてもよい。すなわち、旋回カバー4の前端部41をトイレットペーパ2の外周面に向かって付勢できる構成であれば、バネ部材6に特に限定はなく、バネ部材6として種々のものを使用することができる。さらに、旋回カバー4を回転支持する機構についても、枢支軸を用いる構成ではなく、各種ヒンジ構造を用いることが可能であり、付勢機構5についてもカバー4自体にバネ部材を係合させてカバー4に付勢力を作用させる構成としてもよい。ホルダ本体3や旋回カバー4、切断刃411、凸部412は、プラスチックや金属から作ることができる。凸部412は、円弧状の表面が鏡面研磨されており、滑りがよく、摩擦抵抗が小さい。繰り出しローラ6は、弾性変形可能なゴムから作られていることが好ましいが、プラスチックのみから作られていてもよい。トイレットペーパホルダ1Bでは、側板部33の側に形成された付勢機構5と同様のそれが側板部32の側に形成されていてもよい。