JP2008247706A - コランダム単結晶の育成方法、コランダム単結晶およびコランダム単結晶ウェーハ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】コランダムの単結晶を育成するに際し、原料を容器内に収納した後、該容器を炉内に導く一方、炉内には炉の上部を高温とし、下部に向けて 0.1〜10.0℃/mmの温度勾配を付与した領域を設けておき、該容器を炉の上部から下部に向けてこの温度勾配を付与した領域を移動させることによって、該容器内の原料を一方向に凝固させる。
【選択図】図1
Description
キロプロス法は、封止されていないルツボ内のアルミナ融液または溶液中に冷却された種結晶を浸漬し、かかる融液または溶液中で種結晶周辺の融液または溶液から種結晶と同一方位を有する単結晶を析出させる育成法である。
CZ法は、封止されていないルツボ中のアルミナ融液に種結晶を浸漬し、この種結晶を上方に引き上げることにより、気液界面近傍にて種結晶と同一方位の単結晶を融液から連続的に凝固させる方法である。
HEM法は、アルミナ融液が入った封止されたルツボの底部に種結晶を設置し、この種結晶を冷却することにより種結晶周辺部の融液温度を低下させ、該種結晶周りに種結晶と同一方位を持つ単結晶を成長させることを特徴とする単結晶育成法である。
ベルヌーイ法は、ルツボを用いず、封止されていない炉の炉底部に種結晶を設置し、炉上部より、水酸化炎中にて融解した微小コランダム粉末融液を種結晶上に積み重ねることによって、該種結晶から種結晶と同一方位を持つ単結晶を成長させる方法である。
上記した4種の育成法はいずれも、バルク(塊)状のサファイア単結晶を得ることを目的とする単結晶育成法である。
(1) 単結晶基板ウェーハ内の結晶欠陥である高密度の転位に起因する、高輝度発光素子の収率の低さ。
(2) インゴットから切り出される単結晶ウェーハ基板の総重量の該インゴット重量に対する収率の低さ。すなわち歩留りが低い点。
これらの問題点は、高品質、すなわち低転位密度であるコランダム単結晶インゴットの育成の難しさと、育成されたインゴットの有効利用可能な部分がインゴットの一部分に限られることに起因する。
LEDまたはLDなどの発光素子は、上記したようなコランダム単結晶ウェーハ基板上にMOCVD(有機金属気相化学蒸着法)等により、GaN(窒化ガリウム)等の単結晶相を多数層にわたって堆積して作成する方法が用いられている。発光素子の発光強度は、これら発光のために堆積される単結晶層(以後、発光層と呼ぶ)中の結晶欠陥である転位の密度(以後、転位密度と呼ぶ)の多寡により大きく影響されることが分かっている。すなわち、発光層中に存在する転位は、発光効率の低下および熱の発生の原因となる。
従って、この条件に合致する単結晶育成方法は、キロプロス法、CZ法、HEM法およびEFG法である。但し、上記の転位密度の範囲から、CZ法、HEM法およびEFG法では、育成された単結晶の全てが高輝度発光素子用基板として使用できるわけではなく、育成単結晶の選別された部分または作製された単結晶ウェーハの一部分が高輝度発光素子用基板として使用できるにすぎない。
このため、高輝度発光素子の該単結晶ウェーハからの収率は、全体として低下することとなる。
「OPT-ELECTRONICS REVIEW 11(2)PP.77-84(2003)」 「マテリアルインテグレーション 17(11)PP.37-42(2004)」
すなわち、キロプロス法においては、融液または溶液中に種結晶を一部分浸漬し、冷却されている種結晶の周辺部から同一方位を持つ単結晶を析出させる。この工程は、融液または溶液中で行われるため、析出する単結晶の直径制御が困難である。その後、種結晶を上部に引き上げる工程が行われることもあるが、よく知られているCZ法によるシリコン単結晶の育成時に行われるような直径制御はキロプロス法においては非常に困難であり、現在知られているキロプロス法育成コランダム単結晶のインゴット形状から明らかなように、その直径は、種結晶部分から離れるに従って大きくなってしまう。そのため、このキロプロス法育成単結晶インゴットから所望の方位と直径を持つコランダム単結晶ウェーハを作成するときには、該単結晶インゴットから所望の方位をX線方位測定機などで確定し、その方位に合わせて、所望の直径のコアドリルを用いてインゴットをくり抜くことが必要である。そのため、該インゴットの直径が大きくても、利用できる部分が限られてしまうため、全体としての単結晶ウェーハの収率が低下することになる。
(1) ベルヌーイ法では勿論であるが、CZ法、HEM法およびEFG法においても、高輝度発光素子基板として必要と考えられている、結晶欠陥としての転位密度≦104個/cm2を満たすインゴットの部分が、これらの結晶育成法自体の持つ制約から、インゴット全体ではなく、その一部分にすぎないこと。そのため、これらの単結晶育成法により得られた単結晶ウェーハ基板上に形成される高輝度発光素子の収率が低下する。
(2) 転位密度≦104個/cm2を満たすキロプロス法においても、単結晶育成法自体の制約から、直径制御が困難であり、そのため、所望の方位、直径を持つ単結晶ウェーハ基板として利用できるインゴットの部分がインゴットの一部分に限られるため、単結晶ウェーハ基板として用いることのできるインゴット部分の重量の該インゴット総重量に対する収率が低下する。
1.コランダムの単結晶を育成するに際し、原料を容器内に収納した後、該容器を炉内に導く一方、炉内には炉の上部を高温とし、下部に向けて 0.1〜10.0℃/mmの温度勾配を付与した領域を設けておき、該容器を炉の上部から下部に向けてこの温度勾配を付与した領域を移動させることによって、該容器内の原料を一方向に凝固させることを特徴とするコランダム単結晶の育成方法。
また、本発明によれば、単結晶育成用容器の直径を最適化することにより、キロプロス法よりも収率よく高輝度発光素子用単結晶ウェーハ基板を得ることが可能となる。
さらに、これらの効果により、コランダム単結晶ウェーハを基板とする高品質・低コストのLEDやLD発光素子の作成が可能となる 。
さて、本発明では、所望とする単結晶ウェーハの直径に外周研削代を加えた直径を持つ高耐熱性の容器中に、コランダム単結晶の原料を収納し、この容器を、所定の温度勾配を付与した炉内を移動させるか、または容器は所定位置に固定したまま、炉の各位置での温度および温度勾配を適切に変化させることにより、容器に収納されたコランダム単結晶原料を一方向に凝固させる方法である。
図中、番号1が容器、2が原料、3が種結晶、4が容器支持台である。この容器支持台4は、その底部が水冷構造になっていて、容器1が炉内を移動中にも種結晶3が溶解しない仕組みになっている。5はヒーターである。
ここに、炉内に予め付与しておくべき温度勾配は 0.1〜10.0℃/mmの範囲とすることが肝要である。というのは、この温度勾配が 0.1℃/mm未満では、結晶育成時の抜熱効果が小さすぎるため、小さな降下速度で容器を降下させても多結晶化するという問題があり、一方10.0℃/mm超では、結晶育成時の抜熱効果が大きすぎるため周液界面の半径方向の温度差が大きくなりすぎ、多結晶化または熱歪によりクラックが発生するという問題が生じるためである。より好ましくは 0.5〜8.5℃/mmの範囲である。
なお、炉内の最高温度は、原料の主成分であるアルミナ(Al2O3)の溶解温度が約2050℃であるので、それよりも高い2060〜2100℃程度とすることが好適である。
すなわち、本発明の方法によれば、キロプロス法と同様に結晶欠陥発生の主たる要因である固液界面近傍での温度勾配をCZ法、HEM法やEFG法に比べ適切に制御することが可能であり、その結果、CZ法、HEM法やEFG法よりも結晶欠陥の密度の低い単結晶を育成することができるものと考えられる。
この場合において、加熱帯に付与すべき温度勾配および該加熱帯の移動速度は、前述した容器を移動させる場合と同じである。
すなわち、ヒーターの出力を制御することにより、適切な温度勾配に制御した加熱帯を炉の下部から上部に向けて適切な速度で移動させつつ、原料を収納した容器を炉の上部から下部に向けて適切な速度で移動させる方式である。
この方式によれば、前述した2つの方式よりも、より細かい温度調節ができる利点がある。
ここに、かような種結晶を用いることにより、コランダム単結晶の成長方位を、図2に示すような、a軸またはc軸、さらにはR軸に沿うように適宜調整することができる。
というのは、アルミナ(Al2O3)の溶解温度である2050℃以上の高温においては、容器に軟化や融解又は分解や蒸発が生じることにより、単結晶を安定して育成することが困難になるばかりでなく、単結晶中に容器を構成する物質が不純物として混入し、単結晶に必要な特性を劣化させるおそれがあるためである。
かような材料としては、Ir,Mo,Wなどが挙げられる。
というのは、種結晶の径dが、容器の内径Dに近づくほど、育成される単結晶の増径時において凝固熱と抜熱量の不安定さに起因する結晶欠陥の導入の可能性を低減できると同時に、種結晶を収納する容器部分の径dと目的とする結晶系である容器径Dの間の増径部を一体型の容器とする、作製時における技術的困難性が低減するからである。この点、d/Dが0.01未満では、十分な効果が得難くなる。
この例は、図1に示したような、原料を収納した容器を、所定の温度勾配を付与した炉内を移動(降下)させることによってコランダム単結晶を育成する場合で、かつ種結晶を使用しない場合の例である。
内径が105mmの容器内に、原料としてAl2O3粉を収納し、この容器を表1に示すような種々の温度勾配を付与した炉内に導き、上記の温度勾配になる領域を上部から下部に向けて0.05〜6.5mm/hの速度で降下させた。容器としてはIr製のものを用い、酸素分圧は0.1%以下とした。
また、表1には、各コランダム単結晶の成長方位についても併せて示す。
なお、従来のキロプロス法により得られる適正単結晶の歩留りが30%程度であることと比較すると、歩留りが格段に向上したことが分かる。
この例は、原料を収納した容器は炉内に設置したまま移動させず、加熱手段であるヒーターの出力を制御することにより、適切な温度勾配を有する加熱帯を形成し、かつこの加熱帯を該温度勾配を維持しつつ、容器の下部から上部に向けて移動させて、コランダム単結晶を育成する場合で、しかも種結晶を使用しない場合の例である。
内径が105mmの容器内に、原料としてAl2O3粉を収納した後、この容器を炉内の所定位置に固定した。ついで、ヒーターの出力を制御して、表2に示すような温度勾配が種々に異なる加熱帯を形成すると共に、この温度勾配を維持しつつ、加熱帯を0.05〜6.5mm/hの速度で上方に移動させた。容器としてはIr製のものを用い、酸素分圧は0.1%以下とした。
また、表2には、各コランダム単結晶の成長方位についても併せて示す。
この例は、図1に示したような、原料を収納した容器を、所定の温度勾配を付与した炉内を移動(降下)させることによってコランダム単結晶を育成する場合の例である。
底部に、表3−1〜表3−3に示す種々の配向軸を有する種結晶を配置した容器内に、原料としてAl2O3粉を収納し、この容器を同じく表3−1〜表3−3に示すような種々の温度勾配を付与した炉内に導き、上記の温度勾配になる領域を上部から下部に向けて0.05〜6.5mm/hの速度で降下させた。容器としてはIr製のものを用い、酸素分圧は0.1%以下とした。
なお、表3−1は単結晶の成長方位をa軸方向とした場合、表3−2は単結晶の成長方位をc軸方向とした場合、表3−3は単結晶の成長方位をR軸方向とした場合である。
なお、従来のキロプロス法により得られる適正単結晶の歩留りが30%程度であることと比較すると、歩留りが格段に向上したことが分かる。
この例は、原料を収納した容器は炉内に設置したまま移動させず、加熱手段であるヒーターの出力を制御することにより、適切な温度勾配を有する加熱帯を形成し、かつこの加熱帯を該温度勾配を維持しつつ、容器の下部から上部に向けて移動させて、コランダム単結晶を育成する場合の例である。
底部に、表4−1〜表4−3に示す種々の配向軸を有する種結晶を配置した容器内に、原料としてAl2O3粉を収納したのち、この容器を炉内の所定位置に固定した。ついで、ヒーターの出力を制御して、表2−1〜表2−3に示すような温度勾配が種々に異なる加熱帯を形成すると共に、この温度勾配を維持しつつ、加熱帯を0.05〜6.5mm/hの速度で上方に移動させた。容器としてはIr製のものを用い、酸素分圧は0.1%以下とした。
なお、表4−1は単結晶の成長方位をa軸方向とした場合、表4−2は単結晶の成長方位をc軸方向とした場合、表4−3は単結晶の成長方位をR軸方向とした場合である。
2 原料
3 種結晶
4 容器支持台
5 ヒーター
Claims (10)
- コランダムの単結晶を育成するに際し、原料を容器内に収納した後、該容器を炉内に導く一方、炉内には炉の上部を高温とし、下部に向けて 0.1〜10.0℃/mmの温度勾配を付与した領域を設けておき、該容器を炉の上部から下部に向けてこの温度勾配を付与した領域を移動させることによって、該容器内の原料を一方向に凝固させることを特徴とするコランダム単結晶の育成方法。
- コランダムの単結晶を育成するに際し、原料を容器内に収納した後、該容器を複数のヒーターを上下方向に並べて配置した炉内に設置し、ついで複数のヒーターの出力を制御することにより、上部が高温で下方に向けて 0.1〜10.0℃/mmの温度勾配を有し、最低温度が該原料の凝固温度に一致させた加熱帯を形成し、この加熱帯を該温度勾配を維持しつつ、該容器の下部から上部に向けて移動させることによって、該容器内の原料を一方向に凝固させることを特徴とするコランダム単結晶の育成方法。
- 請求項2において、前記温度勾配を有する加熱帯を該容器の下部から上部に向けて移動させつつ、該容器を昇降移動させることを特徴とするコランダム単結晶の育成方法。
- 請求項1〜3のいずれかにおいて、前記容器の底部にコランダムの種結晶を設置し、その上部に原料を充填したことを特徴とするコランダム単結晶の育成方法。
- 請求項4において、前記種結晶により規定される単結晶の成長方位が、コランダム単結晶におけるa軸であることを特徴とするコランダム単結晶の育成方法。
- 請求項4において、前記種結晶により規定される単結晶の成長方位が、コランダム単結晶におけるc軸であることを特徴とするコランダム単結晶の育成方法。
- 請求項4において、前記種結晶により規定される単結晶の成長方位が、コランダム単結晶におけるR軸であることを特徴とするコランダム単結晶の育成方法。
- 請求項4〜7のいずれかにおいて、前記容器の内径をD、前記種結晶の径をdとするとき、d/Dを0.01〜1.0の範囲を設定したことを特徴とするコランダム単結晶の育成方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の単結晶育成方法で育成されたことを特徴とするコランダム単結晶。
- 請求項9に記載のコランダム単結晶からなることを特徴とするコランダム単結晶ウェーハ。
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