JP2004026577A - 化合物半導体単結晶成長装置及び化合物半導体単結晶成長方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】化合物半導体単結晶成長装置において、結晶直胴部に当たる成長容器の肉厚を適切に設定することにより、結晶直胴部の外周部の温度を高くし、結晶の固液界面形状を融液側に凹面からフラットに近づけて、高収率で化合物半導体の単結晶を得ることを可能にする。
【解決手段】種結晶2および原料3を入れた有底筒体状の成長容器1を垂直に設置し、該成長容器を取り囲むように設けた電気炉ヒータ6、7により上記原料を所定の温度分布で加熱して溶解させ、垂直方向に化合物半導体単結晶を成長させる化合物半導体単結晶成長装置において、結晶直胴部に当たる上記成長容器1の部分Cの肉厚をその他の部分1a、1bの肉厚の40%〜80%に設定する。
【選択図】 図1
【解決手段】種結晶2および原料3を入れた有底筒体状の成長容器1を垂直に設置し、該成長容器を取り囲むように設けた電気炉ヒータ6、7により上記原料を所定の温度分布で加熱して溶解させ、垂直方向に化合物半導体単結晶を成長させる化合物半導体単結晶成長装置において、結晶直胴部に当たる上記成長容器1の部分Cの肉厚をその他の部分1a、1bの肉厚の40%〜80%に設定する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化合物半導体単結晶成長装置及び化合物半導体単結晶成長方法に関し、特に化合物半導体の原料融液を冷却して垂直方向に単結晶を成長させる垂直グラジエントフリージング(VGF)法や垂直ブリッジマン(VB)法等に適用して有用な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、φ3インチを超える大型で、しかも低転位密度の化合物半導体の単結晶(例えばGaAs単結晶)を成長させる方法として、従来の液体封止引上法(LEC法)に代わり、垂直ブリッジマン法が注目されている。
【0003】
この垂直ブリッジマン法は、パイロリティック窒化硼素(PBN)製のるつぼ(成長容器)の下部に種結晶を入れ、その上にGaAsの多結晶を配置し、これを上部が高温で下部が低温の縦型電気炉発熱体(ヒータ)内に入れ、種結晶より上方に向けて結晶を成長させることによって単結晶を成長させる方法であり、直径76mmを超える大径の結晶成長を容易に行えることを特長としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、垂直ブリッジマン法の特徴である低転位化を実現するためには、(i) 結晶固化後に発生する熱的な歪みの抑制、(ii) 固液界面(結晶成長時の結晶固化形状を示す)が融液側へ凹面の形状となってしまうことによる機械的な歪みの抑制が必要となる。
【0005】
前者の点については、熱的な歪み対策の一つとして、低温度勾配下での結晶冷却が挙げられる。これは、結晶固化部を低温度勾配下でゆっくり冷却することで冷却時の熱歪みにより発生する転位を抑制することができるためである。また後者の点については、固液界面形状が融液側に凹面(結晶固化部が凹形状)の場合には発生した転位が結晶の内部に向かって集まり多結晶化しやすい条件となるため、VB法には凹面成長による転位の抑制、つまり固液界面形状が融液側に凸面(結晶固化部が凸形状)又は平坦となるようにすることが不可欠である。
【0006】
しかし、従来の成長容器は全体として肉厚が同じPBN製容器として造られていた。このため次のような課題があった。
【0007】
すなわち、垂直ブリッジマン法によれば、成長容器の側壁に沿った円柱状の単結晶が成長するため、結晶の外表面はるつぼを通して、ヒータからの輻射熱を受ける。ここで、るつぼ直胴部の肉厚が厚いほど、ヒータから結晶への輻射熱が分散されたり、るつぼから熱が逃げやすくなるため、結晶外周部の固液界面形状が融液側に凹面となり、結晶外周部に転位が集積し、外周部から多結晶化するという問題があった。
【0008】
逆に、るつぼ直胴部の肉厚を薄くするにつれ、ヒータからの輻射熱を結晶外周に集中させることができ、結晶外周部の固液界面形状を融液側に凹面からフラットあるいは凸面に近づけることができ、化合物半導体単結晶を成長することが可能となるが、るつぼ割れが発生し易くなるという問題があった。
【0009】
なお、固液界面形状は、一般的には、固液界面平坦性で表され、固液界面両端を結んだ直線に対する垂線を結晶中心で引き、界面までの垂線の長さを結晶の直径で割り、%で表す。固液界面形状が融液側に凹面の場合は、−数値で表し、固液界面形状が融液側に凸面の場合は、+数値で表す。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、化合物半導体単結晶の成長の際、結晶直胴部に当たる上記成長容器の肉厚を適切に設定することにより、結晶直胴部の外周部の温度を高くし、結晶の固液界面形状を融液側に凹面からフラットに近づけて、高収率で化合物半導体の単結晶を得ることができる化合物半導体単結晶成長装置及び化合物半導体単結晶成長方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0012】
請求項1の発明に係る化合物半導体単結晶成長装置は、種結晶および原料を入れた有底筒体状の成長容器を垂直に設置し、該成長容器を取り囲むように設けた電気炉ヒータにより上記原料を所定の温度分布で加熱して溶解させ、垂直方向に化合物半導体単結晶を成長させる化合物半導体単結晶成長装置において、結晶直胴部に当たる上記成長容器の肉厚をその他の部分の肉厚の40%〜80%にしたことを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1記載の化合物半導体単結晶成長装置において、上記成長容器をPBNで構成し、結晶直胴部以外の成長容器の肉厚を1.0〜2.0mmとし、結晶直胴部に当たる成長容器の肉厚を結晶直胴部以外の肉厚の40%〜80%にしたことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の化合物半導体単結晶成長装置において、上記成長容器が、下部細径部たる種結晶載置部、該種結晶載置部から上方に向けて直径が大きくなる増径部、及び該増径部から上方に続く直胴部を備えており、その直胴部のうち液体封止材の存する手前までの部分の肉厚が、他の部分の肉厚の40%〜80%に薄く形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物半導体単結晶成長装置において、上記成長容器が駆動架台で支持されたサセプタに収容され、上記電気炉ヒータがこれを取り囲み、さらに全体が高圧の不活性ガス雰囲気の気密容器で被われていることを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明に係る化合物半導体単結晶成長方法は、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物半導体単結晶成長装置を用い、垂直ブリッジマン法又は垂直グラジエントフリージング法により、加熱溶融した原料融液を融液下部あるいは上部から徐々に冷却し固化させることにより、垂直方向に化合物半導体単結晶を成長させることを特徴とする。
【0017】
<作用>
本発明の化合物半導体単結晶成長装置及び方法は、種結晶および原料を収容する有底筒体状の成長容器を垂直に設置し、該成長容器を取り囲むように設けた電気炉ヒータにより上記原料を所定の温度分布で加熱して溶解させ、加熱溶融した原料融液を融液下部あるいは上部から徐々に冷却し固化させることにより、垂直方向に化合物半導体単結晶を成長させる化合物半導体単結晶成長装置及び方法において、結晶直胴部に当たる上記成長容器の肉厚をその他の部分の肉厚の40%〜80%にし、化合物半導体単結晶を成長させるものである。これにより、結晶直胴部の外周部の温度を高くし、結晶の固液界面形状を融液側に凹面からフラットに近づけることができ、高収率で化合物半導体の単結晶を得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1にVB法による本発明の化合物半導体単結晶成長装置の概略を示す。図1に示すように、この化合物半導体単結晶成長装置は、種結晶2とGaAs原料3、液体封止材4を収容する筒状のPBN製の成長容器1と、成長容器1を収容するサセプタ5と、この成長容器1内の原料3を所定の温度勾配で加熱して溶解および成長させるための縦形の第一電気炉(ヒータ6)及び成長後の結晶を冷却させるための縦形の第二電気炉(ヒータ7)と、そして成長容器を収容したサセプタ5を下降させる駆動架台8を収容する高圧の不活性ガス雰囲気の気密容器9とから構成されている。
【0020】
詳述するに、図1において、1はるつぼから成るPBN製の成長容器であり、その下部に細径部たる種結晶載置部1aと、該種結晶載置部から上方に向けて直径が大きくなる増径部1bとを有すると共に、該増径部から上方に続く筒状の直胴部1cを有している。
【0021】
この成長容器1は、結晶成長時には、気密容器9内において、同一径の上下二段のヒータ6、7から成る縦型電気炉(加熱装置)内に配置されたサセプタ5内に収納される。このサセプタ5は、駆動架台8により回転自在に、且つ昇降自在に支持されており、結晶成長に応じて下降し得るように装置されている。
【0022】
そして、成長容器1下部の種結晶載置部1a内に種結晶2を設置し、その上にGaAs原料3を置き、液体封止材4を収容して、上部が高く下部が低い温度分布を設けた縦型電気炉(ヒータ6、7)の中で加熱して溶解させ、加熱溶融した原料融液を融液下部から徐々に上部に向かって冷却し固化させることにより、垂直方向にGaAs結晶を成長させる。
【0023】
上記縦型電気炉は、成長容器1内の原料3を所定の温度勾配で加熱して溶解および成長させるための抵抗発熱体からなる上側ヒータ(第一電気炉)6と、そして成長後の結晶を放熱させるための抵抗発熱体からなる下側ヒータ(第二電気炉)7とから構成されている。
【0024】
ここで、結晶直胴部に当たる上記成長容器1の肉厚はその他の部分の肉厚より薄く構成されている。具体的には、成長容器1の種結晶載置部1a及び増径部1bの肉厚は1.0〜2.0mmであり、これに対し成長容器1の直胴部1cのうち液体封止材4の手前までの部分Cの肉厚は、これら種結晶載置部1a及び増径部1bの肉厚の40%〜80%の厚みに形成されている。このように結晶直胴部に当たる成長容器1の部分Cの肉厚を、成長容器1のその他の部分(種結晶載置部1aや増径部1b)の肉厚の40%〜80%と薄くしている理由は、化合物半導体単結晶の成長の際、結晶直胴部の固液界面の平坦性を凹面の−1.5%以下にすることができ、化合物半導体の単結晶を得ることができるためである。
【0025】
本発明の効果を確認するため、下記の実施例及び比較例の成長装置について試作した。
【0026】
<実施例>
GaAs単結晶成長を例にとり、図1を参照しながら説明する。
【0027】
図1に示したように、グラファイト製のサセプタ5内に、内径160mm、厚さ1.2mmのPBN製の成長容器1を入れ、成長容器1の中に種結晶2とGaAs原料3を25000グラム、液体封止材4を1500グラム入れる。このサセプタ5を成長装置の駆動架台8の上に載せる。気密容器9内を8気圧に制御し、上側ヒータ(第一電気炉)6、下側ヒータ(第二電気炉)7で昇温する。上方の第一電気炉(上側ヒータ6)は原料融解成長用であり、設定温度を約1245℃にし、下方の第二電気炉(下側ヒータ7)は結晶放熱用であり、設定温度を約1150℃にする。この時、成長軸方向の温度勾配は1〜10℃/cmである。
【0028】
そこで、成長容器1を収容したサセプタ5を1〜5mm/hrの速度で下降させることにより結晶成長を行い、成長した結晶は、上方の第一電気炉(上側ヒータ6)と下方の第二電気炉(下側ヒータ7)の間を通過する。
【0029】
ここで、成長容器1としては、その種結晶載置部1a及び増径部1bの肉厚を1.2mmとし、結晶直胴部に当たる上記成長容器1の部分C(成長容器1の直胴部1cのうち液体封止材4より上方の縁部を除いた部分)の肉厚が、その他の部分(種結晶載置部1a、増径部1b)の肉厚の40〜80%となる範囲で変化させたものを用いて、それぞれ化合物半導体単結晶を成長させた。この条件の下で成長した結晶の直胴部の固液界面平坦性は凹面の−1%以下であり、結晶全域にわたり単結晶成長した。そして繰り返し成長したところ、5回連続して単結晶を成長することができた。
【0030】
<比較例>
(a) 比較例1として、結晶直胴部に当たる上記成長容器1の肉厚をその他の部分の肉厚の80%よりも高く設定し、それ以外は上記実施例と同じ条件で単結晶成長を5回行った。その結果、5回中3回、結晶直胴部の固液界面平坦性は凹面の−2.5%となり、直胴部30mmから多結晶化した。残りの2回は、結晶直胴部の固液界面平坦性は凹面の−2.0%となり、直胴部100mmから多結晶化した。
【0031】
(b) 比較例2として、結晶直胴部に当たる上記成長容器1の肉厚をその他の部分の肉厚の40%未満に設定し、それ以外は上記実施例と同じ条件で単結晶成長を3回行った。その結果、3回中1回、るつぼへGaAs原料をチャージする時にるつぼが割れ、成長できなかった。残り2回は、結晶直胴部の固液界面平坦性が凹面の−1%以下であり、結晶全域単結晶成長した。
【0032】
以上の結果から、結晶直胴部に当たる上記成長容器1の肉厚をその他の部分の肉厚の40〜80%にすることにより、高収率でGaAs単結晶を成長させることができることが分かる。
【0033】
上記実施例では、垂直ブリッジマン(VB)法により低転位密度のGaAs単結晶を成長させる場合を例にしたが、本発明は、垂直グラジエントフリージング(VGF)法にも適用することができる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、種結晶および原料を入れた有底筒体状の成長容器を垂直に設置し、該成長容器を取り囲むように設けた電気炉ヒータにより上記原料を所定の温度分布で加熱して溶解させ、垂直方向に化合物半導体単結晶を成長させる化合物半導体単結晶成長装置において、結晶直胴部に当たる上記成長容器の肉厚をその他の部分の肉厚の40%〜80%に設定しているため、化合物半導体単結晶を成長するに際し、結晶直胴部の固液界面の平坦性を凹面の−1.5%以下にすることができ、低転位化を実現し、高収率で化合物半導体の単結晶を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による化合物半導体単結晶成長装置の断面図である。
【符号の説明】
1 成長容器(るつぼ)
1a 種結晶載置部
1b 増径部
1c 直胴部
2 種結晶
3 GaAs原料
4 液体封止材
5 サセプタ
6 上側ヒータ(第一電気炉)
7 下側ヒータ(第二電気炉)
8 駆動架台
9 気密容器
C 結晶直胴部に当たる成長容器の部分
【発明の属する技術分野】
本発明は、化合物半導体単結晶成長装置及び化合物半導体単結晶成長方法に関し、特に化合物半導体の原料融液を冷却して垂直方向に単結晶を成長させる垂直グラジエントフリージング(VGF)法や垂直ブリッジマン(VB)法等に適用して有用な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、φ3インチを超える大型で、しかも低転位密度の化合物半導体の単結晶(例えばGaAs単結晶)を成長させる方法として、従来の液体封止引上法(LEC法)に代わり、垂直ブリッジマン法が注目されている。
【0003】
この垂直ブリッジマン法は、パイロリティック窒化硼素(PBN)製のるつぼ(成長容器)の下部に種結晶を入れ、その上にGaAsの多結晶を配置し、これを上部が高温で下部が低温の縦型電気炉発熱体(ヒータ)内に入れ、種結晶より上方に向けて結晶を成長させることによって単結晶を成長させる方法であり、直径76mmを超える大径の結晶成長を容易に行えることを特長としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、垂直ブリッジマン法の特徴である低転位化を実現するためには、(i) 結晶固化後に発生する熱的な歪みの抑制、(ii) 固液界面(結晶成長時の結晶固化形状を示す)が融液側へ凹面の形状となってしまうことによる機械的な歪みの抑制が必要となる。
【0005】
前者の点については、熱的な歪み対策の一つとして、低温度勾配下での結晶冷却が挙げられる。これは、結晶固化部を低温度勾配下でゆっくり冷却することで冷却時の熱歪みにより発生する転位を抑制することができるためである。また後者の点については、固液界面形状が融液側に凹面(結晶固化部が凹形状)の場合には発生した転位が結晶の内部に向かって集まり多結晶化しやすい条件となるため、VB法には凹面成長による転位の抑制、つまり固液界面形状が融液側に凸面(結晶固化部が凸形状)又は平坦となるようにすることが不可欠である。
【0006】
しかし、従来の成長容器は全体として肉厚が同じPBN製容器として造られていた。このため次のような課題があった。
【0007】
すなわち、垂直ブリッジマン法によれば、成長容器の側壁に沿った円柱状の単結晶が成長するため、結晶の外表面はるつぼを通して、ヒータからの輻射熱を受ける。ここで、るつぼ直胴部の肉厚が厚いほど、ヒータから結晶への輻射熱が分散されたり、るつぼから熱が逃げやすくなるため、結晶外周部の固液界面形状が融液側に凹面となり、結晶外周部に転位が集積し、外周部から多結晶化するという問題があった。
【0008】
逆に、るつぼ直胴部の肉厚を薄くするにつれ、ヒータからの輻射熱を結晶外周に集中させることができ、結晶外周部の固液界面形状を融液側に凹面からフラットあるいは凸面に近づけることができ、化合物半導体単結晶を成長することが可能となるが、るつぼ割れが発生し易くなるという問題があった。
【0009】
なお、固液界面形状は、一般的には、固液界面平坦性で表され、固液界面両端を結んだ直線に対する垂線を結晶中心で引き、界面までの垂線の長さを結晶の直径で割り、%で表す。固液界面形状が融液側に凹面の場合は、−数値で表し、固液界面形状が融液側に凸面の場合は、+数値で表す。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、化合物半導体単結晶の成長の際、結晶直胴部に当たる上記成長容器の肉厚を適切に設定することにより、結晶直胴部の外周部の温度を高くし、結晶の固液界面形状を融液側に凹面からフラットに近づけて、高収率で化合物半導体の単結晶を得ることができる化合物半導体単結晶成長装置及び化合物半導体単結晶成長方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0012】
請求項1の発明に係る化合物半導体単結晶成長装置は、種結晶および原料を入れた有底筒体状の成長容器を垂直に設置し、該成長容器を取り囲むように設けた電気炉ヒータにより上記原料を所定の温度分布で加熱して溶解させ、垂直方向に化合物半導体単結晶を成長させる化合物半導体単結晶成長装置において、結晶直胴部に当たる上記成長容器の肉厚をその他の部分の肉厚の40%〜80%にしたことを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1記載の化合物半導体単結晶成長装置において、上記成長容器をPBNで構成し、結晶直胴部以外の成長容器の肉厚を1.0〜2.0mmとし、結晶直胴部に当たる成長容器の肉厚を結晶直胴部以外の肉厚の40%〜80%にしたことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の化合物半導体単結晶成長装置において、上記成長容器が、下部細径部たる種結晶載置部、該種結晶載置部から上方に向けて直径が大きくなる増径部、及び該増径部から上方に続く直胴部を備えており、その直胴部のうち液体封止材の存する手前までの部分の肉厚が、他の部分の肉厚の40%〜80%に薄く形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物半導体単結晶成長装置において、上記成長容器が駆動架台で支持されたサセプタに収容され、上記電気炉ヒータがこれを取り囲み、さらに全体が高圧の不活性ガス雰囲気の気密容器で被われていることを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明に係る化合物半導体単結晶成長方法は、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物半導体単結晶成長装置を用い、垂直ブリッジマン法又は垂直グラジエントフリージング法により、加熱溶融した原料融液を融液下部あるいは上部から徐々に冷却し固化させることにより、垂直方向に化合物半導体単結晶を成長させることを特徴とする。
【0017】
<作用>
本発明の化合物半導体単結晶成長装置及び方法は、種結晶および原料を収容する有底筒体状の成長容器を垂直に設置し、該成長容器を取り囲むように設けた電気炉ヒータにより上記原料を所定の温度分布で加熱して溶解させ、加熱溶融した原料融液を融液下部あるいは上部から徐々に冷却し固化させることにより、垂直方向に化合物半導体単結晶を成長させる化合物半導体単結晶成長装置及び方法において、結晶直胴部に当たる上記成長容器の肉厚をその他の部分の肉厚の40%〜80%にし、化合物半導体単結晶を成長させるものである。これにより、結晶直胴部の外周部の温度を高くし、結晶の固液界面形状を融液側に凹面からフラットに近づけることができ、高収率で化合物半導体の単結晶を得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1にVB法による本発明の化合物半導体単結晶成長装置の概略を示す。図1に示すように、この化合物半導体単結晶成長装置は、種結晶2とGaAs原料3、液体封止材4を収容する筒状のPBN製の成長容器1と、成長容器1を収容するサセプタ5と、この成長容器1内の原料3を所定の温度勾配で加熱して溶解および成長させるための縦形の第一電気炉(ヒータ6)及び成長後の結晶を冷却させるための縦形の第二電気炉(ヒータ7)と、そして成長容器を収容したサセプタ5を下降させる駆動架台8を収容する高圧の不活性ガス雰囲気の気密容器9とから構成されている。
【0020】
詳述するに、図1において、1はるつぼから成るPBN製の成長容器であり、その下部に細径部たる種結晶載置部1aと、該種結晶載置部から上方に向けて直径が大きくなる増径部1bとを有すると共に、該増径部から上方に続く筒状の直胴部1cを有している。
【0021】
この成長容器1は、結晶成長時には、気密容器9内において、同一径の上下二段のヒータ6、7から成る縦型電気炉(加熱装置)内に配置されたサセプタ5内に収納される。このサセプタ5は、駆動架台8により回転自在に、且つ昇降自在に支持されており、結晶成長に応じて下降し得るように装置されている。
【0022】
そして、成長容器1下部の種結晶載置部1a内に種結晶2を設置し、その上にGaAs原料3を置き、液体封止材4を収容して、上部が高く下部が低い温度分布を設けた縦型電気炉(ヒータ6、7)の中で加熱して溶解させ、加熱溶融した原料融液を融液下部から徐々に上部に向かって冷却し固化させることにより、垂直方向にGaAs結晶を成長させる。
【0023】
上記縦型電気炉は、成長容器1内の原料3を所定の温度勾配で加熱して溶解および成長させるための抵抗発熱体からなる上側ヒータ(第一電気炉)6と、そして成長後の結晶を放熱させるための抵抗発熱体からなる下側ヒータ(第二電気炉)7とから構成されている。
【0024】
ここで、結晶直胴部に当たる上記成長容器1の肉厚はその他の部分の肉厚より薄く構成されている。具体的には、成長容器1の種結晶載置部1a及び増径部1bの肉厚は1.0〜2.0mmであり、これに対し成長容器1の直胴部1cのうち液体封止材4の手前までの部分Cの肉厚は、これら種結晶載置部1a及び増径部1bの肉厚の40%〜80%の厚みに形成されている。このように結晶直胴部に当たる成長容器1の部分Cの肉厚を、成長容器1のその他の部分(種結晶載置部1aや増径部1b)の肉厚の40%〜80%と薄くしている理由は、化合物半導体単結晶の成長の際、結晶直胴部の固液界面の平坦性を凹面の−1.5%以下にすることができ、化合物半導体の単結晶を得ることができるためである。
【0025】
本発明の効果を確認するため、下記の実施例及び比較例の成長装置について試作した。
【0026】
<実施例>
GaAs単結晶成長を例にとり、図1を参照しながら説明する。
【0027】
図1に示したように、グラファイト製のサセプタ5内に、内径160mm、厚さ1.2mmのPBN製の成長容器1を入れ、成長容器1の中に種結晶2とGaAs原料3を25000グラム、液体封止材4を1500グラム入れる。このサセプタ5を成長装置の駆動架台8の上に載せる。気密容器9内を8気圧に制御し、上側ヒータ(第一電気炉)6、下側ヒータ(第二電気炉)7で昇温する。上方の第一電気炉(上側ヒータ6)は原料融解成長用であり、設定温度を約1245℃にし、下方の第二電気炉(下側ヒータ7)は結晶放熱用であり、設定温度を約1150℃にする。この時、成長軸方向の温度勾配は1〜10℃/cmである。
【0028】
そこで、成長容器1を収容したサセプタ5を1〜5mm/hrの速度で下降させることにより結晶成長を行い、成長した結晶は、上方の第一電気炉(上側ヒータ6)と下方の第二電気炉(下側ヒータ7)の間を通過する。
【0029】
ここで、成長容器1としては、その種結晶載置部1a及び増径部1bの肉厚を1.2mmとし、結晶直胴部に当たる上記成長容器1の部分C(成長容器1の直胴部1cのうち液体封止材4より上方の縁部を除いた部分)の肉厚が、その他の部分(種結晶載置部1a、増径部1b)の肉厚の40〜80%となる範囲で変化させたものを用いて、それぞれ化合物半導体単結晶を成長させた。この条件の下で成長した結晶の直胴部の固液界面平坦性は凹面の−1%以下であり、結晶全域にわたり単結晶成長した。そして繰り返し成長したところ、5回連続して単結晶を成長することができた。
【0030】
<比較例>
(a) 比較例1として、結晶直胴部に当たる上記成長容器1の肉厚をその他の部分の肉厚の80%よりも高く設定し、それ以外は上記実施例と同じ条件で単結晶成長を5回行った。その結果、5回中3回、結晶直胴部の固液界面平坦性は凹面の−2.5%となり、直胴部30mmから多結晶化した。残りの2回は、結晶直胴部の固液界面平坦性は凹面の−2.0%となり、直胴部100mmから多結晶化した。
【0031】
(b) 比較例2として、結晶直胴部に当たる上記成長容器1の肉厚をその他の部分の肉厚の40%未満に設定し、それ以外は上記実施例と同じ条件で単結晶成長を3回行った。その結果、3回中1回、るつぼへGaAs原料をチャージする時にるつぼが割れ、成長できなかった。残り2回は、結晶直胴部の固液界面平坦性が凹面の−1%以下であり、結晶全域単結晶成長した。
【0032】
以上の結果から、結晶直胴部に当たる上記成長容器1の肉厚をその他の部分の肉厚の40〜80%にすることにより、高収率でGaAs単結晶を成長させることができることが分かる。
【0033】
上記実施例では、垂直ブリッジマン(VB)法により低転位密度のGaAs単結晶を成長させる場合を例にしたが、本発明は、垂直グラジエントフリージング(VGF)法にも適用することができる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、種結晶および原料を入れた有底筒体状の成長容器を垂直に設置し、該成長容器を取り囲むように設けた電気炉ヒータにより上記原料を所定の温度分布で加熱して溶解させ、垂直方向に化合物半導体単結晶を成長させる化合物半導体単結晶成長装置において、結晶直胴部に当たる上記成長容器の肉厚をその他の部分の肉厚の40%〜80%に設定しているため、化合物半導体単結晶を成長するに際し、結晶直胴部の固液界面の平坦性を凹面の−1.5%以下にすることができ、低転位化を実現し、高収率で化合物半導体の単結晶を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による化合物半導体単結晶成長装置の断面図である。
【符号の説明】
1 成長容器(るつぼ)
1a 種結晶載置部
1b 増径部
1c 直胴部
2 種結晶
3 GaAs原料
4 液体封止材
5 サセプタ
6 上側ヒータ(第一電気炉)
7 下側ヒータ(第二電気炉)
8 駆動架台
9 気密容器
C 結晶直胴部に当たる成長容器の部分
Claims (5)
- 種結晶および原料を入れた有底筒体状の成長容器を垂直に設置し、該成長容器を取り囲むように設けた電気炉ヒータにより上記原料を所定の温度分布で加熱して溶解させ、垂直方向に化合物半導体単結晶を成長させる化合物半導体単結晶成長装置において、
結晶直胴部に当たる上記成長容器の肉厚をその他の部分の肉厚の40%〜80%にしたことを特徴とする化合物半導体単結晶成長装置。 - 請求項1記載の化合物半導体単結晶成長装置において、上記成長容器をPBNで構成し、結晶直胴部以外の成長容器の肉厚を1.0〜2.0mmとし、結晶直胴部に当たる成長容器の肉厚を結晶直胴部以外の肉厚の40%〜80%にしたことを特徴とする化合物半導体単結晶成長装置。
- 請求項1又は2記載の化合物半導体単結晶成長装置において、
上記成長容器が、下部細径部たる種結晶載置部、該種結晶載置部から上方に向けて直径が大きくなる増径部、及び該増径部から上方に続く直胴部を備えており、その直胴部のうち液体封止材の存する手前までの部分の肉厚が、他の部分の肉厚の40%〜80%に薄く形成されていることを特徴とする化合物半導体単結晶成長装置。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の化合物半導体単結晶成長装置において、
上記成長容器が駆動架台で支持されたサセプタに収容され、上記電気炉ヒータがこれを取り囲み、さらに全体が高圧の不活性ガス雰囲気の気密容器で被われていることを特徴とする化合物半導体単結晶成長装置。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の化合物半導体単結晶成長装置を用い、垂直ブリッジマン法又は垂直グラジエントフリージング法により、加熱溶融した原料融液を融液下部あるいは上部から徐々に冷却し固化させることにより、垂直方向に化合物半導体単結晶を成長させることを特徴とする化合物半導体単結晶成長方法。
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-
2002
- 2002-06-26 JP JP2002185828A patent/JP2004026577A/ja not_active Withdrawn
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WO2006100927A1 (ja) * | 2005-03-23 | 2006-09-28 | Sumitomo Electric Industries, Ltd. | 結晶育成用坩堝 |
US7473317B2 (en) | 2005-03-23 | 2009-01-06 | Sumitomo Electric Industries, Ltd. | Crystal growth crucible |
CN104164699A (zh) * | 2013-05-17 | 2014-11-26 | 中国科学院合肥物质科学研究院 | 用于生长金属双晶的坩埚 |
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