JP2008231645A - 紙用剛度向上剤並びに当該剛度向上剤を塗工した紙 - Google Patents

紙用剛度向上剤並びに当該剛度向上剤を塗工した紙 Download PDF

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Abstract

【課題】 粘度を低下させて作業性を担保しながら、紙に充分な剛度を付与する。
【解決手段】 (A)B型粘度計による粘度が200mPa・s以上(固形分濃度2重量%水溶液、温度25℃)である多糖類と、(B)ポリアクリルアミド(PAM)系樹脂を含有するとともに、上記成分(A)がデンプン類を除く多糖類である紙用剛度向上剤である。多糖類(A)はセルロース類、キトサン類、アルギン酸類、ガム類などである。粘性の高い多糖類にPAM系樹脂を併用することで、全体の粘性を低下させながら、多糖類100%の場合に比べても遜色のない剛度向上効果を発揮でき、特に、少ない塗工量でも剛度を改善てきる。
【選択図】 なし

Description

本発明は紙用剛度向上剤並びに当該向上剤を塗工した紙に関して、全体の粘度を低下させて塗工時の作業性を良好にしながら、紙に充分な剛度を付与できるものを提供する。
製造コストの低減や資源保護の見地から、パルプ使用量の削減による軽量化、或は古紙利用率の向上が進んでいる。
しかし、この軽量化や古紙の利用率の向上は、従来の紙に比べて曲げこわさや腰といった剛度を低下させる原因になっている。また、例えば新聞用紙の場合、古紙由来の炭酸カルシウムを有効利用する面などから、従来の酸性抄紙から填料として炭酸カルシウムを主体に用いる中性抄紙への移行が進んでいるが、炭酸カルシウム等の填料の増量も曲げこわさや腰といった剛度を低下させる原因となる。
このような紙の剛度を改善するための内添薬品や塗工薬品を挙げると、次の通りである。
(1)特許文献1
平均分子量50万〜200万の分岐型の共重合ポリアクリルアミド(以下、PAMという)、特に両性PAMからなる紙用塗工剤を使用することで、PAM水溶液の粘度を低下するとともに、曳糸性をなくし、紙の剛度を改善することが開示されている(請求項1、段落1、段落12)。
(2)特許文献2
未中和のアニオン性基量、全アニオン性基量に対する未中和アニオン性基量、並びに全アニオン性基量に対するカチオン性基量を特定化した両性PAMを内添又は塗工して、紙の剛度を向上しながら、低密度化、軽量化を図ることが開示されている(請求項1、段落7、段落18〜19)。
(3)特許文献3
(メタ)アクリルアミドと、α,β−不飽和カルボン酸(塩)と、ジメチルアクリルアミドと、予めエチレンチオ尿素で変性したN−メチロール(メタ)アクリルアミドを特定比率で重合した特定の水溶性共重合体からなる加工処理剤を使用して、紙に剛度を付与することが開示されている(請求項1、段落1と5)。
(4)特許文献4
エポキシ樹脂とポリアミン化合物の混合樹脂からなる紙用塗工剤を使用して、剛度を向上することが開示されている(請求項1、段落1と8)。
(5)特許文献5
特定粘度の変性デンプンの水溶液を塗工したグラビア印刷用原紙であり、ミッシングドット(網点の欠損)の発生を低減しながら、剛度を向上することが開示されている(請求項1、段落1、7、49)。
上記変性デンプンには、酸化デンプン、酵素変性デンプン、エーテル化デンプン、エステル化デンプンなどが列挙されている(段落13)。
(6)特許文献6
抄紙機のプレス部において、微細繊維、或いはさらに紙力増強剤を湿紙の表面に塗布して、紙の剛度を向上することが開示されている(請求項1、段落1と14)。
上記微細繊維は約300μm以下の長さの微小寸法のパルプ繊維又はその破片をいい、上記紙力増強剤はデンプン、PAMなどをいう(段落20)。
(7)特許文献7
アルカリ金属の酢酸塩と酢酸を含むアセト酢酸エステル基含有のポリビニルアルコール(以下、PVAという)系樹脂を主成分とする紙加工剤であり、剛度を向上し、アセト酢酸エステル基を含むPVAにより耐水性を改善することが開示されている(請求項1、段落1〜2、4)。
(8)特許文献8
(A)チタン酸化物又は水酸化物の超微粒子分散液と、(B)紙力増強剤を含有する紙用剛度向上剤組成物である(請求項1、段落1)。
上記紙力増強剤はPAM系やPVA系の高分子化合物、デンプン類などである(請求項4と5、段落9)。
(9)特許文献9
カチオン性基及び/又はアニオン性基を有する重量平均分子量5万〜50万の分岐型の共重合PAMを使用することで、紙の剛度を向上するとともに、塗工時の曳糸性がなく、操業性を改善できることが開示されている(請求項1、段落11、13)。
特開2005−307417号公報 特開2003−278094号公報 特開平6−65893号公報 特開2004−300633号公報 特開平10−219596号公報 特開平10−331093号公報 特開平9−3797号公報 特開2001−123393号公報 特開2006−328563号公報
上記特許文献1や4でも記載されている通り、酸化デンプンやヒドロキシエチル化デンプンなどの化工デンプンを塗工すると紙の剛度向上に寄与するが(段落3〜4)、デンプン類は塗工量を多くする必要があり、高濃度にした塗工液の粘度は高いため、均一で良好な塗工性を得るのは容易でない。
一方、上記特許文献1〜9の薬剤は、塗工量を多くした条件では、ある程度の剛度向上効果は得られるが、しかし、その効果は必ずしも充分でない。また、塗工量を増やすと塗工工程や印刷工程の操業面で種々の問題が生じるため、塗布量を増やすことには限界があり、この面からも充分な剛度向上効果を得るのは難しい。特に、新聞用紙などの坪量が低い紙では塗工量アップに限界があるため、少ない塗工量でも良好な剛度を確保することが求められ、とりわけ剛度向上の必要性が期待されている。
本発明は、全体の粘度を低下させて作業性を担保するとともに、紙に充分な剛度向上効果を付与し、特に少ない塗工量でも剛度を良好に向上することを技術的課題とする。
一般に、粘度の高い多糖類を塗工すると剛度は向上するが、粘性の増大に伴って塗工の操業性は低下する。
そこで、本発明者らは、粘性の高い多糖類にポリアクリルアミド系樹脂を併用することで、全体の粘性を低下させながら、多糖類100%の場合に比べても遜色のない剛度向上効果を発現させることを着想し、多糖類として、デンプン類を除く、セルロース類、キトサン類、アルギン酸類、ガム類などの多糖類を使用することで、少ない塗工量でも紙の剛度を良好に改善しながら円滑な操業性を実現して、本発明を完成した。
即ち、本発明1は、(A)B型粘度計による粘度が200mPa・s以上(固形分濃度2重量%水溶液、温度25℃)である多糖類と、
(B)ポリアクリルアミド系樹脂を含有するとともに、
上記成分(A)がデンプン類を除く多糖類であることを特徴とする紙用剛度向上剤である。
本発明2は、上記本発明1において、多糖類(A)とポリアクリルアミド系樹脂(B)の重量比率が、A/B=1〜95/99〜5であることを特徴とする紙用剛度向上剤である。
本発明3は、上記本発明1又は2において、多糖類(A)がセルロース類、キトサン類、アルギン酸類、ガム類よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする紙用剛度向上剤である。
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、多糖類(A)とポリアクリルアミド系樹脂(B)を混合するとともに、
上記成分(B)のB型粘度計による粘度が100〜50000mPa・s(固形分濃度15重量%水溶液、温度25℃)であることを特徴とする紙用剛度向上剤である。
本発明5は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、多糖類の存在下で、構成単量体を重合してポリアクリルアミド系樹脂を製造するとともに、当該製造物のB型粘度計による粘度が100〜50000mPa・s(固形分濃度15重量%水溶液、温度25℃)であることを特徴とする紙用剛度向上剤である。
本発明6は、上記本発明1〜5のいずれかの紙用剛度向上剤を表面に塗工した紙である。
本発明7は、上記本発明6において、塗工量が両面で0.01〜0.5g/m2であることを特徴とする紙である。
粘性の高い多糖類(デンプン類を除く)にPAM系樹脂を併用することにより、全体の粘度を低下させるとともに、両者の間で電気的な相互作用又は絡合などの物理的な相互作用を働かせながら、紙の表層部に薬剤を局在化させて、紙に充分な剛度を付与することができる。
このため、粘度増大による塗工の困難性などの操業上の問題をなくせるとともに、特に、新聞用紙のような坪量の小さい紙では塗工量アップには限界があるが、このような新聞用紙などに本願発明を適用することで、塗工量の少ない条件でも有効に剛度を向上できる。
また、多糖類の存在下で構成単量体を重合してPAM系樹脂を合成して得られる剛度向上剤では、多糖類とPAM系樹脂の相互作用がより促進されると推定でき、多糖類とPAM系樹脂を単に混合した場合より、多糖類量を低減しても充分な剛度向上効果が得られる。このため、この重合方式で得られた塗工液にあっては、多糖類の含有比率の低減による塗工性の良好な改善を実現しながら、剛度を充分に確保することができ、生産性を効率的に高められる。
本発明は、第一に、特定粘度以上の多糖類(A)とPAM系樹脂(B)を含有する紙用剛度向上剤であり、第二に、当該剛度向上剤を表面に塗工した紙である。
但し、本発明では、成分(A)はデンプン類を除く多糖類である。当該デンプン類は、デンプンや化工デンプンをいい、さらに化工デンプンは酸化デンプン、酸処理デンプン、エーテル化デンプン、エステル化デンプン、デンプンのクラフト重合体、デキストリン類などをいう。
上述の通り、成分(A)はデンプン類を除く多糖類であり、本発明3に示すように、セルロース類、キトサン類、アルギン酸類、ガム類が好ましい。これらの多糖類はカチオン基、ノニオン基、疎水基のような官能基を有するものでも良い。
上記セルロース類は、カルボキシメチル化、カルボキシエチル化、スルホエチル化、尿素リン酸エステル化、スルフォコハク酸エステル化、マレイン化等のアニオン基を導入したセルロース類の誘導体及びその塩類などをいい、カルボキシメチルセルロース(以下、CMCという)及びその塩がより好ましい。
上記CMCについては、各種のエーテル化度、粘度を有する製品が市販されているが、粘度的には、作業上問題にならない範囲で本発明に使用可能である。エーテル化度については、エーテル化度が高くPAMとの混合や重合時に急激な増粘やゲル化を生じない範囲で使用可能である。また、エーテル化度が低く、完全に水に溶解しないタイプのCMCに関しても、本発明では使用することができる(後述のCMC−3(図5のC5、図6の実施例11)参照)。
上記キトサン類はキトサン(以下、CHIという)及びその塩類、アルギン酸類はアルギン酸(以下、ALGという)及びその塩類をいい、これらについてはCMCと同様に各種製品が市販されており、粘度的に作業上問題にならない範囲で本発明に使用可能である。
上記ガム類は、グアーガム、キサンタンガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、タマリンドガム、ジェランガムなどをいう。
その他の多糖類としては、アガロース、ペクチン、カラゲーナン、マンナンなどが挙げられる。
上記多糖類(A)は単独で使用しても良いし、急激な増粘やゲル化が生じない範囲で複数を併用しても良い。
本発明のPAM系樹脂は、(メタ)アクリルアミドのホモポリマー、(メタ)アクリルアミド系の水溶性共重合体をいう。上記(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミド(AMと略す)、メタクリルアミドを意味する。
上記水溶性共重合体としては、(a)(メタ)アクリルアミドと、(b)カチオン性モノマーと、(c)アニオン性モノマーとを構成成分とする水溶性両性共重合体、上記成分(a)と成分(c)を構成成分とする水溶性アニオン性共重合体、或は上記成分(a)と成分(b)を構成成分とする水溶性カチオン性共重合体が挙げられる。
上記PAM系共重合体の構成単位であるカチオン性モノマー(b)は、1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、1〜3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルアミド、4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート、ジアリルジアルキルアンモニウムハライドを初めとして、分子内にカチオン性基を1個乃至複数個有するものであり、例えば、4級アンモニウム塩基含有モノマーでは、下記の一般式(1)で示される化合物が代表例である。
[CH2=C(R1)−CO−A−R2−N+(R3)(R4)(R5)]X- …(1)
(式(1)中、R1はH又はCH3;R2はC1〜C3アルキレン基;R3、R4、R5はH、C1〜C3アルキル基、ベンジル基、CH2CH(OH)CH2+(CH3)3-であり、夫々同一又は異なっても良い;AはO又はNHである;Xはハロゲン、アルキルスルフェートなどのアニオン)
上記1〜2級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドは、アミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの1級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド、或は、メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの2級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドである。
また、上記3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミドは、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドを代表例とする。
上記1〜2級アミノ基含有(メタ)アクリレートは、アミノエチル(メタ)アクリレートなどの1級アミノ基含有(メタ)アクリレート、或は、メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの2級アミノ基含有(メタ)アクリレートである。
また、上記3級アミノ基含有(メタ)アクリレートは、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(ジメチルアミノエチルメタクリレートはDMと略す)、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートを代表例とする。
上記4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルアミド、又は4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレートは、3級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリルアミド、又は3級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレートを塩化メチル、塩化ベンジル、硫酸メチル、エピクロルヒドリンなどの4級化剤を用いたモノ4級塩基含有モノマーであり、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリルアミドプロピルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、メタクリロイロキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド(DMCと略す)、(メタ)アクリロイロキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド(メタクリロイロキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリドはDMBCと略す)、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノエチルトリエチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイロキシエチルトリエチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
また、カチオン性モノマー(b)としては、分子内に2個の4級アンモニウム塩基を有するビス4級塩基含有モノマーを使用することもでき、具体的には、2個の4級アンモニウム塩基を有するビス4級塩基含有(メタ)アクリルアミド、或はビス4級塩基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。ビス4級塩基含有(メタ)アクリルアミドの例としては、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドに、1−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドを反応させて得られるビス4級塩基含有(メタ)アクリルアミド(DMAPAA-Q2と略す)がある。このDMAPAA-Q2は、上記カチオン性モノマーの一般式(1)において、R1=H、R2=プロピレン基、A=NH、R3とR4は各メチル基、R5=CH2CH(OH)CH2+(CH3)3Cl-、X=塩素に相当する化合物である。
一方、上記4級アンモニウム塩基含有のカチオンモノマーに属するジアリルジアルキルアンモニウムハライドは、例えば、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドである。
前記PAM系共重合体の構成単位であるアニオン性モノマー(c)は、α,β−不飽和カルボン酸類、α,β−不飽和スルホン酸類である。
上記不飽和カルボン酸類は(メタ)アクリル酸(アクリル酸はAAと略す)、(無水)マレイン酸、フマル酸(FAと略す)、イタコン酸(IAと略す)、(無水)シトラコン酸、そのナトリウム、カリウム、アンモニウム塩などである。
上記不飽和スルホン酸類は、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、その塩などである。
水溶性両性PAM系共重合体の構成単位のうち、(メタ)アクリルアミド(a)の含有量は、共重合体の分子骨格の適性化や、カチオン性モノマー(b)やアニオン性モノマー(c)の含有量の適正化を担保できる範囲で任意に選択できる。
上記カチオン性モノマー(b)は単用又は併用でき、両性共重合体に対する含有量は、飽和状態になったカチオン電荷でポリマー同士が反発しない範囲で任意に選択できる。
また、上記アニオン性モノマー(c)は単用又は併用でき、低pH領域においてカルボキシル基(酸)が非解離状態となり水溶性が低下しない範囲で任意に選択できる。
水溶性両性PAM系共重合体においては、上記成分(a)〜(c)に、さらに、架橋性モノマー(d)及び/又は連鎖移動剤(e)を使用して、共重合体に分岐架橋構造を持たせるようにしても良い。
上記架橋モノマー(d)は共重合体の分子量を増し、多糖類やパルプとの相互作用を増加させるために寄与し、メチレンビスアクリルアミド(MBAMと略す)、エチレンビス(メタ)アクリルアミドなどのビス(メタ)アクリルアミド類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート類、ジメチルアクリルアミド(DMAMと略す)、メタクリロニトリルなどが使用できる。
上記連鎖移動剤は共重合体の粘度の増大を抑制し、分岐構造を増して分子量を調整する作用をし、イソプロピルアルコール(IPAと略す)、メタリルスルホン酸ナトリウム(SMSと略す)、アリルスルホン酸ナトリウム(SASと略す)、n−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、チオグリコール酸等のメルカプタン類などの公知の連鎖移動剤が使用できる。
さらに、前記水溶性両性共重合体では必要に応じて、他のモノマーとして、アクリロニトリルなどのノニオン系モノマーを使用しても差し支えない。
一方、アニオン性のPAM系共重合体の場合には、上記両性PAM系共重合体のうち、成分(a)と成分(c)を構成成分とする重合反応により得られる。
また、カチオン性のPAM系共重合体の場合には、上記両性PAM系共重合体のうち、成分(a)と成分(b)を構成成分とする重合反応により得られる。
このアニオン性又はカチオン性共重合体の場合、成分(a)〜(c)で使用できる具体的化合物は両性共重合体の場合と同様である。また、必要に応じて、他のモノマーとして、アクリロニトリルなどのノニオン系モノマーを使用できる点も両性共重合体の場合と同様である。
さらに、前記両性共重合体の場合と同様に、架橋性モノマー(d)及び/又は連鎖移動剤(e)を使用して、共重合体に分岐架橋構造を付与するようにできることは勿論である。
本発明のPAM系樹脂は、多糖類との併用により急激な増粘、ゲル化や不溶化を生じない範囲で、様々なイオン性、粘度、或は構造(直鎖/分岐)の樹脂が使用できる。
この場合、導入するイオン量は直接パルプに作用するためではなく、主に多糖類との相互作用を発現させるためなので、この必要性の範囲内で導入すれば良い。従って、当該導入量については、多糖類の種類、混合比率や他塗工薬品との相溶性を考慮する必要があり、10モル%以下が好ましい。
本発明の紙用剛度向上剤は多糖類(A)(デンプン類は除く)とPAM系樹脂(B)を含有したものであり、多糖類(A)のB型粘度計による粘度は200mPa・s以上であることが必要で、好ましくは300mPa・s以上である。粘度の測定条件は、固形分濃度2重量%水溶液、温度25℃、ローターNo.2、回転数30rpmである。但し、高粘度領域になるとローター番号も変化し、例えば、1000〜4000mPa・sの場合には、ローターNo.3となる(後述の多糖類の調製例参照)。
本発明では、PAM系樹脂より多糖類の方が剛度向上への寄与が大きいため、多糖類の粘度が200mPa・sより少ないと、PAM系樹脂を併用しても充分な剛度向上は難しくなる。
多糖類の粘度の上限については、使用可能な粘度であれば特に制限はなく、例えば15000mPa・s程度が一応の目安となるが、粘度が増すほど操業性が低下するので、粘度が極めて高いと操業上の見地から実用性に乏しい。
また、本発明の紙用剛度向上剤は、本発明4に示すように、多糖類(A)とPAM系樹脂(B)を混合して製造しても良いし(混合方式)、本発明5に示すように、多糖類(A)の存在下で、構成単量体を重合してPAM系樹脂(B)を製造しても良い(重合方式)。
上記混合方式では、PAM系樹脂に性能を発揮させる見地から、ある程度の分子量を確保する必要があり、従って、PAM系樹のB型粘度計による粘度は100〜50000mPa・s(固形分濃度15重量%水溶液、温度25℃)が好ましく(本発明4参照)、500〜20000mPa・sがより好ましい。
PAM系樹脂(B)の分子量の調整には、前記架橋性モノマーや連鎖移動剤を使用することが好ましい。
さらに、上記重合方式では、多糖類の存在下でPAM系樹脂を重合した製造物の全体のB型粘度計による粘度は100〜50000mPa・s(固形分濃度15重量%水溶液、温度25℃)が好ましく(本発明5参照)、より好ましくは500〜20000mPa・sである。
多糖類(A)とポリアクリルアミド系樹脂(B)を含有する本発明の剛度向上剤において、成分(A)と(B)の重量比率は、本発明2に示すように、A/B=1〜95/99〜5が好ましく(従って、全体に対する多糖類の比率は1〜95重量%である)、A/B=1〜30/99〜70がより好ましい。
多糖類(A)にあっては、粘性が高い品種ほど少ない比率で効果が大きいが、ある程度以上の比率になると効果が頭打ちになる場合が多い。
また、粘性による作業性への影響などの塗工液の物性面を考慮すると、粘度が増すほど塗工性は低下し、粘度が低いほど塗工性は良くなる。本発明は、粘性の高い多糖類にPAM系樹脂を併用することで、全体の粘性を低下させながら、多糖類100%の場合に比べても遜色のない剛度向上効果を発揮させることを目的とする。ちなみに、粘度が高い種類の多糖類であれば少ない比率で紙の剛度を向上でき、粘度の低い多糖類であれば比率を増すことになる。
このように、上記多糖類の性能面や塗工液の物性面、或はコスト面を考慮すれば、上記含有比率が現実的である。
本発明6は本発明1〜5の紙用剛度向上剤を表面に塗工した紙である。
塗工量は紙の坪量によって変化し、坪量の高い紙では吸液量が高く、操業性の良い低い濃度でも塗工量を増すことができる。逆に、新聞用紙のように坪量の低い紙で塗工量を増すには、塗工液の濃度を上げれば良いが、粘度増大による操業面の問題が発生して、塗工量の増大にも限界がある。本発明の剛度向上剤にあっては少ない塗工量でも充分な剛度を紙に付与できる。その際の塗工量は両面当たり0.01〜0.5g/m2が好ましく(本発明7参照)、0.03〜0.25g/m2程度がより好ましい。
また、紙の剛度や塗工性を低下させない範囲で、他の表面塗工剤を併用しても良い。他の表面塗工剤としては、デンプン、酸化デンプン等の化工デンプン、PVAなどの表面紙力剤、或は各種表面サイズ剤、防腐剤、防滑剤、防錆剤、紫外線防止剤、蛍光増白剤などが挙げられる。
本発明の剛度向上剤を塗工する紙の種類は任意であって特段の制限はなく、例えば、上質及び中質印刷用紙、新聞用紙、アート紙、キャストコート紙等の原紙、PPC用紙、インクジェット記録用紙、レーザープリンター用紙、感熱記録用紙、感圧記録用紙等の記録用紙などが挙げられる。
また、剛度向上剤を紙に塗工する場合には通常の製紙用塗工装置が使用でき、例えば、ゲートロールコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、スプレー塗工機などである。
以下、PAM系樹脂の合成例、本発明の多糖類の調製例、多糖類とPAM系樹脂を含有する本発明の紙用剛度向上剤の製造例、当該剛度向上剤を表面に塗工した紙の実施例、実施例で製造した紙の剛度並びに塗工性の評価試験例などを順次説明する。上記合成例、調製例、製造例、実施例に記載された「%」及び「部」は基本的に重量基準である。
尚、本発明は下記の合成例、調製例、製造例、実施例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
《PAM系樹脂の合成例》
下記の合成例A1はカチオン性PAM系共重合体、合成例A2はアニオン性PAM系共重合体、合成例A3はノニオン性PAM系ホモポリマー、合成例A4〜A5は両性PAM系共重合体の例である。
尚、図1に合成例A1〜A5の単量体組成、粘度などをまとめた。また、図中の略号は次の通りである。
AM:アクリルアミド、DM:ジメチルアミノエチルメタクリレート、DMC:DMの塩化メチル四級化物、DMBC:DMの塩化ベンジル四級化物、AA:アクリル酸、IA:イタコン酸、FA:フマル酸、SMS:メタリルスルホン酸ソーダ、SAS:アリルスルホン酸ソーダ、IPA:イソプロピルアルコール、MBAM:メチレンビスアクリルアミド、DMAM:ジメチルアクリルアミド
(1)合成例A1
攪拌機、温度計、還流冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに、水450g、50%アクリルアミド水溶液211.2g、ジメチルアミノエチルメタクリレート2.4g、EDTA0.05g、メタリルスルホン酸ソーダ0.6gを仕込み、酢酸でpH3.7に調節した後、窒素ガスを導入し、反応系中の酸素を除去した。
次いで、53℃に昇温して3%の過硫酸アンモニウム水溶液12g及び3%の亜硫酸ソーダ水溶液2gを投入して、重合を開始した。94℃まで昇温して発熱が停止した後、10分後に3%の過硫酸アンモニウム水溶液7gを投入して、90℃で30分間保温した。30分後に冷却して、不揮発分15.6%、25℃におけるB型粘度計の粘度が2,850mPa・s、pH4.3の安定な重合体水溶液A1を得た。
(2)合成例A2〜A5
図1に示す通り、モノマー組成、系のpH調整用の酸/アルカリ(酢酸/水酸化ナトリウム)量及び粘度を適正範囲に導くための触媒量を変更した以外は、上記合成例A1と同様にして、重合体水溶液A2〜A5を夫々得た。
《多糖類の調製例》
(1)カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−1〜4)の調製例
各CMCは攪拌下の水に少量ずつ投入し、投入終了後50℃まで昇温して60分間維持し、溶解させた。
CMC−1には日本製紙ケミカル(株)製のサンローズF10MC、CMC−2には同F30MC、CMC−3には同SLD−F1、CMC−4には同F01MCを夫々使用した。CMC−1〜3は本発明の多糖類の適正粘度に属するものであり、このうち、CMC−3はエーテル化度が低い水不溶性タイプである。また、CMC−4は本発明の多糖類の適正粘度から外れるものである(図2参照)。
(2)アルギン酸ナトリウム(ALG−1〜2)の調製例
各ALGは攪拌下の水に少量ずつ投入し、投入終了後50℃まで昇温して60分間維持し、溶解させた。
ALG−1には(株)キミカ製のアルギデックス−L、ALG−2には同アルギデックス−Hを夫々使用した。
(3)キトサン(CHI−1〜2)の調製例
CHIは攪拌下の水に少量ずつ投入し、投入後同重量の酢酸を仕込んで60分間攪拌し、溶解させた。
CHI−1には(株)キミカ製のキミカキトサン−L、CHI−2には同キミカキトサン−Hを夫々使用した。
(4)表面紙力用の酸化デンプン(ST)の調製例
ST(日本食品加工(株)製、MS−3800)は水に投入後、95℃まで昇温して30分間維持し、溶解させた。
図2には、使用した多糖類の2%水溶液の粘度を示した。
粘度はB型粘度計を用いて、下記の測定条件(温度:25℃)にて測定した。
(a)100mPa・s以下 :ローターNo.2、回転数60rpm
(b)100〜1000mPa・s :ローターNo.2、回転数30rpm
(c)1000〜4000mPa・s:ローターNo.3、回転数30rpm
(d)4000mPa・s以上 :ローターNo.3、回転数12rpm
《紙用剛度向上剤の製造例(B系列)》
下記の製造例B1〜B6及び比較製造例b1〜b2は上記多糖類と上記PAM系樹脂を混合して製造した剛度向上剤の例であり、製造例B2は多糖類とPAM系樹脂を1:1の重量比率で混合した例、他の製造例B1、B3〜B6及び比較製造例b1〜b2は多糖類の重量比率が少ない例である。
比較製造例b1〜b2は、本発明の適正粘度より低い多糖類を使用した例である。
尚、図3には、製造例B1〜B6及び比較製造例b1〜b2における、多糖類とPAM系樹脂の混合比率を示した。
(1)製造例B1
合成例A5の2%水溶液とCMC−1の2%水溶液を75:25の重量比率で混合し、均一化させるために充分撹拌して、塗工液(剛度向上剤)B1を得た。尚、当該塗工液(2%液)の粘度は60mPa・sであった。
(2)製造例B2〜B6
PAM系樹脂(A1〜A4)の2%水溶液と多糖類(CMC−1〜2、CHI−2、ALG−1〜2)の2%液を図3に示した種類と重量比率で、上記製造例B1と同様な方法にて混合し、塗工液B2〜B6を得た。
(3)比較製造例b1〜b2
PAM系樹脂(A3又はA5)の2%水溶液と多糖類(CMC−4又はST)の2%液を図3に示した種類と重量比率で、上記製造例B1と同様な方法にて混合し、塗工液b1〜b2を得た。
《原紙の作成例》
攪拌した脱墨古紙パルプ/機械パルプ/針葉樹晒クラフトパルプ=75/15/10(重量比)からなる原料パルプスラリー(濃度2.7%)に、硫酸バンド1.0%(対乾燥パルプ重量)、カチオン澱粉0.5%(対乾燥パルプ重量)、ロジン系サイズ剤0.3%(対乾燥パルプ重量)、炭酸カルシウム4%(対乾燥パルプ重量)及び歩留まり向上剤0.01%(対乾燥パルプ重量)の順に添加して紙料を調製した。
このパルプスラリーを角型手抄機(ワイヤー:80メッシュ)で抄造し、プレスで水分調整した後、ドラムドライヤーで乾燥させ、坪量=43.2g/m2、厚さ=0.0765mm、密度=0.535g/cm3、灰分=9.2%、剛度=38.2cm3/100の塗工原紙を得た。
そこで、上記原紙の表面に前記製造例B1〜B6及び比較製造例b1〜b2の剛度向上剤からなる各塗工液を塗工し、表面塗工紙を作成した。
《剛度向上剤を塗工した表面塗工紙の実施例(B系列)》
下記の実施例1〜6は、製造例B1〜B6の塗工液を表面紙力用の酸化デンプン及び水と各重量比率で混合した例であり、比較例1〜2はB系列の塗工液に代えて比較製造例b1〜b2の塗工液を使用した例である。
一方、多糖類とPAM系樹脂を混合した塗工液を使用せず、前記合成例A4のPAM系樹脂のみを表面紙力用の酸化デンプン及び水に混合したものを比較例3とした。
また、多糖類として挙げたCMC−2のみを表面紙力用の酸化デンプン及び水に混合したものを比較例4とした。
さらに、酸化デンプン及び水だけを塗工した例を比較例5とした。
図4の左寄り欄には、実施例1〜6及び比較例1〜5の塗工液の種類、塗工量をまとめた。
(1)実施例1
表面紙力用の酸化デンプンの5%水溶液50gに、前記塗工液B1の2%水溶液を12.5g、25g、37.5g及び水37.5g、25g、12.5gをそれぞれ混合して全体を100gとし、B1濃度の異なる3種類の塗工液を調製した。即ち、B1濃度は2%×(12.5g/100g)=0.25%、2%×(25g/100g)=0.5%、2%×(37.5g/100g)=0.75%であり、酸化デンプンの濃度は5%×(50g/100g)=2.5%である。
次いで、調製した上記塗工液をゴムワイパーで塗工原紙の片面に塗工した後、ドラムドライヤーで90℃、80秒間乾燥した。更に、他方の面にも同様にして塗工を行い、両面塗工の塗工紙を得た。
(2)実施例2〜6
2%の塗工液をB1から図4に示した液に変更する以外は、上記実施例1と同様の方法にて、実施例2〜6の各塗工紙を作成した。
(3)比較例1〜4
2%の塗工液をB1から図4に示した液に変更する以外は、上記実施例1と同様の方法にて、比較例1〜4の各塗工紙を作成した。
(4)比較例5
酸化デンプン(表面紙力増強用の成分)の5%水溶液50gに水を50gを混合した塗工液と、酸化デンプンの5%液をそのまま塗工液として用いる以外は、上記実施例1と同様の方法にて、比較例5の塗工紙を作成した。
《表面塗工紙の剛度及び塗工性の評価試験例(B系列)》
そこで、実施例1〜6及び比較例1〜5で得られた各表面塗工紙について、次の測定方法により剛度並びに塗工適性を調べた。
(1)剛度
・クラーク剛度:JIS P8143に準拠
剛度(こわさ)(cm3/100)=L3/100、L=張出し長さ(cm)
塗工後の紙は23℃/50%RHの恒温室で2日間放置後、剛度を測定した。
(2)塗工適性
評価基準は下記の通りである。
○:塗工性は良好であった。
×:ストリークや塗工ムラの発生により、塗工不良になった。
図4の右寄り欄はその試験結果である。
表面紙力用の酸化デンプンを除いて、PAM系樹脂(A4)のみを含有する液を塗工した比較例3では、剛度は余り改善されず(特に、少ない塗工量の場合には原紙の剛度を若干上回る程度であり)、多糖類(CMC−2)のみを含有する塗工液を使用した比較例4では、紙の剛度は向上するが、液の濃度が増すと粘性の増大により塗工不良になった。
これに対して、特定以上の粘度を有する多糖類とPAM系樹脂を混合する液を塗工した実施例1〜6では、多糖類のみを使用した上記比較例4に遜色のないレベルで剛度を向上できるとともに、優れた塗工性を示すことが分かった。
これにより、紙の剛度向上と塗工性の両方を良好に確保するには、塗工液に多糖類とPAM系樹脂を併用することの重要性が確認できた。
比較例1と2では、塗工液に含有する多糖類の粘度が特定範囲より低いので、剛度向上効果に乏しく、PAM系樹脂のみを使用した上記比較例3と同様の水準の剛度しか示さなかった。
この比較例1〜2を実施例1〜6に対比すると、剛度の良好な改善には特定以上の粘度の多糖類をPAM系樹脂と併用することの重要性が確認できた。
そこで、実施例1〜6の結果を詳細に検討すると、多糖類(A)とPAM系樹脂(B)の重量比率が1:1である実施例2では、紙の剛度は良好に改善され、多糖類が少ない割合(A/B=5〜25重量部/95〜75重量部)の実施例1、3〜6にあっても充分に剛度を改善できた。
即ち、CHI−2やALG−2では2%水溶液の粘度(25℃)が高いため(図2参照)、B4液やB6液のように各多糖類の混合割合が5重量%(図3参照)でも剛度を良好に改善できた(実施例4と6参照)。また、CMC−1では2%水溶液の粘度は380mPa・sであって、上記CHI−2などに比べてかなり粘度は低いが(図2参照)、B1液に示す通り、多糖類の混合割合が25重量%(図3参照)の場合、剛度を良好に改善できた(実施例1参照)。
《紙用剛度向上剤の製造例(C系列)》
前記製造例(B系列)は多糖類とPAM系樹脂を単に混合して剛度向上剤を製造した例であるが、本製造例(C系列)は多糖類の存在下で構成単量体を重合してPAM系樹脂を合成することにより剛性向上剤を製造した例である。
下記の製造例C1〜C9は共に少ない重量比率(1〜10重量%)の多糖類の存在下でPAM系樹脂を重合した例であり、特に、製造例C7では多糖類の比率は1重合%である。また、製造例C5は、多糖類にエーテル化度が少ない不溶性タイプのCMC−3を使用した例である。
一方、比較製造例c1〜c2は本発明の適正粘度より低い多糖類を使用した例である。 尚、図5には、製造例C1〜C9及び比較製造例c1〜c2の多糖類の含有率と、PAM系樹脂の構成単量体の組成などをまとめた。
(1)製造例C1
撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコに水190g、50%アクリルアミド水溶液204.8gを仕込み、撹拌を開始した。その中へ5.6gのCMC−1を少量ずつ仕込み、仕込み終了後に50℃まで昇温して、溶解を完結させた。
さらに、水300g、ジメチルアミノエチルメタクリレート2.4g、98%アクリル酸3.3g、EDTA0.05g、メタリルスルホン酸ソーダ0.6gを仕込み、系をpH3.6に調節した後、窒素ガスを導入し、反応系中の酸素を除去した。
次いで、55℃に昇温して3%の過硫酸アンモニウム水溶液17g及び3%の亜硫酸ソーダ水溶液1.8gを投入し、重合を開始した。95℃まで昇温して発熱が停止した後、10分後に3%の過硫酸アンモニウム水溶液10gを投入して、90℃で30分間保温した。30分後冷却して、不揮発分15.2%、25℃におけるB型粘度計の粘度が3,650mPa・s、pH4.4の安定な重合体水溶液C1を得た。
尚、当該塗工液(2%液)の粘度は15mPa・sである。
(2)製造例C2〜C9
図5に示したモノマー組成、系のpH調整用の酸/アルカリ(酢酸/水酸化ナトリウム)量及び粘度を適正な範囲に導くため触媒量を変更した以外は、上記製造例C1と同様な方法にて、製造例C2〜C9の各重合体水溶液を得た。
尚、キトサン系(製造例C6、C7)に関しては、投入後にCHI−1又は2と同重量の酢酸を仕込んで溶解させた。
(3)比較製造例c1〜c2
図5に示したモノマー組成、系のpH調整用の酸/アルカリ(酢酸/水酸化ナトリウム)量及び粘度を適正な範囲に導くため触媒量を変更した以外は、上記製造例C1と同様な方法にて、比較製造例c1〜c2の各重合体水溶液を得た。
そこで、前記B系列の液を塗工したものと同じ原紙の表面に前記製造例C1〜C9並びに比較製造例c1〜c2の各塗工液(剛度向上剤)を塗工し、表面塗工紙を作成した。
《剛度向上剤を塗工した表面塗工紙の実施例(C系列)》
下記の実施例7〜15は、製造例C1〜C9の各塗工液を表面紙力用の酸化デンプン及び水と各重量比率で混合した例であり、比較例6〜7は上記C系列の塗工液に代えて比較製造例c1〜c2の各塗工液を使用した例である。
尚、図6の左寄り欄には、実施例7〜15及び比較例6〜7の各塗工液の種類、塗工量をまとめた。
(1)実施例7〜15
2%の塗工液をB系列から図6に示したC系列の塗工液(製造例C1〜C9)に変更する以外は、前記実施例1と同様の方法にて、C系列の塗工液に酸化デンプンと水を3種類の重量比率で添加して、各塗工紙を作成した。
(2)比較例6〜7
2%の塗工液をB系列から図6に示したc系列の塗工液(比較製造例c1〜c2)に変更する以外は、前記実施例1と同様の方法にて、c系列の塗工液に酸化デンプンと水を3種類の重量比率で添加して、各塗工紙を作成した。
《表面塗工紙の剛度の評価試験例(C系列)》
そこで、実施例7〜15及び比較例6〜7で得られた各表面塗工紙について、前記の測定方法により剛度を調べた。
尚、塗工適性は実施例7〜15及び比較例6〜7共にすべて良好であった。
図6の最右欄はその試験結果である。
本発明の特定範囲より低い粘度の多糖類を使用した比較例6〜7では、剛度の改善効果は低かったが、多糖類の存在下に重合方式で得られたC系列の塗工液(実施例7〜15)は、前記混合方式によるB系列の塗工液(前記実施例1〜6)と同様に、紙の剛度を良好に向上できた。
例えば、CHIー2の重量比率が1%(図5:C7液)であるC系列の実施例13(図6参照)の各塗工量での剛度は、同CHIー2の比率が5%(図3:B4液)であるB系列の前記実施例4(図4参照)のそれと遜色がなく、また、CMCー1の重量比率が5%(図5:C1液)であるC系列の実施例7(図6参照)の各塗工量での剛度は、同CMCー1の比率が25%(図3:B1液)であるB系列の前記実施例1(図4参照)のそれとやはり遜色がなく、同様に、他の塗工液においても、同種の多糖類を使用したC系列とB系列の間では同レベルの剛度を示した。
このように、この重合方式で得られた塗工液では、単なる混合方式での塗工液に比べて、多糖類とPAM系樹脂の相互作用がより多く期待できるため、混合方式より多糖類の含有量が少なくても剛度を同水準に改善できるうえ、多糖類の比率の低下により塗工性を一層円滑に担保できることが明らかになった。
また、CMC−3(C5液:図5)を使用した実施例11(図6参照)にあっても、他種の多糖類を使用した実施例7〜10、12〜15と同様に剛度を改善できたことから、エーテル化度が低い不溶化タイプの多糖類も、水溶性タイプと同様に剛度向上に寄与することが確認できた。
《新聞用紙の実施例》
下記の実施例16〜19は、剛度向上剤として前記製造例で得た塗工液C5(図5)を用いて新聞用紙を製造した例である。
(1)実施例16
DIP100部の割合で調製したパルプスラリーに、対絶乾パルプ当たり炭酸カルシウムを5%添加し、ツインワイヤーのベルベフォーマー型抄紙機にて坪量44g/m2となるように中性抄紙し、オンマシンのゲートロールコーターにてヒドロキシエチル化澱粉100部に対し塗工液C5を3部配合したものを図7に示す塗工量となるように塗工し、坪量45g/m2のオフセット印刷用新聞用紙を得た。
(2)実施例17
DIP40部、TMP45部、NBKP15部の割合で混合離解して調製したパルプスラリーに、対絶乾パルプ当たり炭酸カルシウムを5%添加し、ツインワイヤーのベルベフォーマー型抄紙機にて坪量39g/m2となるように中性抄紙し、オンマシンのゲートロールコーターにて、ヒドロキシエチル化澱粉100部に対し塗工液C5を3部配合したものを図7に示す塗工量となるように塗工し、坪量40g/m2のオフセット印刷用新聞用紙を得た。
(3)実施例18〜19
DIP100部の割合で調製したパルプスラリーに、対絶乾パルプ当たり炭酸カルシウムを5%添加し、ツインワイヤーのベルベフォーマー型抄紙機にて坪量39g/m2となるように中性抄紙し、オンマシンのゲートロールコーターにて、ヒドロキシエチル化澱粉100部に対し塗工液C5を3部配合したものを図7に示す塗工量となるように塗工し、坪量40g/m2のオフセット印刷用新聞用紙を得た。
(4)比較例8〜10
比較例8は実施例16において塗工液C5を配合せず、同じく比較例9は実施例17において塗工液C5を配合せず、比較例10は実施例18において塗工液C5を配合せず、それ以外の条件は、各比較例8〜10ともに各相当する実施例16〜18と同様にしてオフセット印刷用新聞用紙を得た。
《新聞用紙の剛度の評価試験例》
そこで、実施例16〜19並びに比較例8〜10で得られた各新聞用紙について、前記の測定方法により剛度を調べた。
図7の最右欄はその試験結果である。
冒述したように、中性抄造による新聞用紙の製造では、炭酸カルシウム(填料)を増量するために剛度がさらに低下し易いが、実機で新聞用紙を製造した当該実施例16〜19にあっては、剛度を良好に向上できた。
尚、塗工適性は、実施例16〜19すべてで良好であった。
PAM系樹脂のモノマー組成、固形分濃度及び粘度をまとめた図表である。 多糖類の種類と2%水溶液での粘度をまとめた図表である。 剛度向上剤の製造例B1〜B6及び比較製造例b1〜b2をまとめた図表である。 B系列の剛度向上剤を表面塗工した紙の実施例1〜6及び比較例1〜5の塗工量、剛度、塗工適性をまとめた図表である。 剛度向上剤の製造例C1〜C9及び比較製造例c1〜c2をまとめた図表である。 C系列の剛度向上剤を表面塗工した紙の実施例7〜15及び比較例6〜7の塗工量、剛度をまとめた図表である。 剛度向上剤(C5液)を表面塗工した新聞用紙の実施例16〜19及び比較例8〜10の塗工量、剛度をまとめた図表である。

Claims (7)

  1. (A)B型粘度計による粘度が200mPa・s以上(固形分濃度2重量%水溶液、温度25℃)である多糖類と、
    (B)ポリアクリルアミド系樹脂を含有するとともに、
    上記成分(A)がデンプン類を除く多糖類であることを特徴とする紙用剛度向上剤。
  2. 多糖類(A)とポリアクリルアミド系樹脂(B)の重量比率が、A/B=1〜95/99〜5であることを特徴とする請求項1に記載の紙用剛度向上剤。
  3. 多糖類(A)が、セルロース類、キトサン類、アルギン酸類、ガム類よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の紙用剛度向上剤。
  4. 多糖類(A)とポリアクリルアミド系樹脂(B)を混合するとともに、
    上記成分(B)のB型粘度計による粘度が100〜50000mPa・s(固形分濃度15重量%水溶液、温度25℃)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の紙用剛度向上剤。
  5. 多糖類の存在下で、構成単量体を重合してポリアクリルアミド系樹脂を製造するとともに、当該製造物のB型粘度計による粘度が100〜50000mPa・s(固形分濃度15重量%水溶液、温度25℃)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の紙用剛度向上剤。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の紙用剛度向上剤を表面に塗工した紙。
  7. 塗工量が両面で0.01〜0.5g/m2であることを特徴とする請求項6に記載の紙。
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