JP2008226741A - 電極用複合粉末及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を低下させることなく、高電流密度での充放電特性が改善された電極を得ることができる、電極活物質と導電材との接合強度が改善された電極用複合粉末及びその製造方法を提供する。
【解決手段】電極活物質どうしが導電材を介して接合している構造を有する電極用複合粉末であって、前記電極用複合粉末は、
(1)電極活物質と導電材とを含有する原料混合物をメカノフュージョン処理することによって前記電極活物質と前記導電材とを予め結着させ、次いで、
(2)前記結着後の原料混合物を、導電性を有する型に充填し、60MPa以上の加圧下において直流パルス電流を通電して焼結させることにより得られる、電極用複合粉末。
【選択図】図1

Description

本発明は、電極用複合粉末及びその製造方法に関する。
近年の多様な機器やシステムの発展により、動力源としての電池(一次電池、二次電池、燃料電池、キャパシタ等)の高性能化の要求がますます高くなってきている。例えば、リチウム二次電池は、携帯通信機器、ノート型パソコン等の電子機器の電源を担う高エネルギー密度の二次電池として広く普及が進んでおり、また環境負荷低減の観点から自動車のモーター駆動用バッテリーとしても期待されている。このため、これら機器の高性能化に対応した高出力及び高エネルギー密度のリチウム二次電池の開発が求められている。
特に車載用としては、高電流密度での良好な充放電特性が求められるが、高電流密度で充放電を繰り返した際に容量劣化及びサイクル劣化が生じるという問題がある。例えば、車載用リチウム二次電池としては、アルミニウム添加ニッケルコバルト酸リチウム(LiNi0.8Co0.15 Al0.05)を正極活物質として用いるものが良く知られている。かかる車載用リチウム二次電池は理論容量が約260mAh/gと大きい。しかしながら、60℃の環境下、高電流密度で充放電を繰り返すと、正極の電気抵抗が増大してサイクル劣化を引き起こすという問題が指摘されている(非特許文献1)。
上記容量劣化及びサイクル劣化の原因としては、例えば、次の理由が考えられる。即ち、高電流密度で充放電を繰り返した際のリチウム脱離・挿入に伴う電極活物質の膨張・収縮によって導電材が電極活物質から剥離したり導電材どうしの導電ネットワークが切断したりすることにより、導電材の分布が不均一になると考えられる(非特許文献2)。
上記問題を改善するために、(1)電極活物質を微粒化して電極内のリチウムイオンの拡散距離を短くして活物質の利用率を上げる、(2)電極活物質に導電材を被覆又は接合して導電材の分布の不均一を緩和する、(3)導電材どうしの結合を強くして導電ネットワークを保持する、等の方法が考えられている。
例えば、特許文献1には、電極活物質と導電材を混合し、黒鉛型材を用いて50MPa程度までの加圧下、200〜800℃程度の温度で通電処理を行って電極活物質と導電材とを接合することが開示されている。この技術は上記(2)に対応するものであり、電極活物質と導電材とを接合して導電材の分布の不均一を緩和させている。
これまでに、高電流密度での充放電特性は徐々に改善されてきているが、各種機器の高性能化に追随すべく、高電流密度での充放電特性の更なる向上が求められている。かかる要求に応えるべく、電極活物質と導電材との接合強度を更に強くして導電ネットワークを更に強固なものとする技術の開発が望まれている。
特開2005−135723号公報 Y. Itou and Y. Ukyo, J. Power Sources, 146, 39 (2005). X.Zhang, P.N.Ross,Jr., R.Kostecki, F.Kong,S.Sloop, J.B.Kerr, K.Striebel, E.J.Cairns, and F.McLarnon, J.Electrochem. Soc., 148, A463 (2001).
本発明は、重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を低下させることなく、高電流密度での充放電特性が改善された電極を得ることができる、電極活物質と導電材との接合
強度が改善された電極用複合粉末及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、導電材と電極活物質とを含有する原料混合物を、少なくとも圧縮力と剪断力とを加えるメカノフュージョン処理に供することにより、電極活物質と導電材とを予め結着させ、更に特定条件で通電焼結させる場合には、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の電極用複合粉末及びその製造方法に関する。
1. 電極活物質どうしが導電材を介して接合している構造を有する電極用複合粉末であって、前記電極用複合粉末は、
(1)電極活物質と導電材とを含有する原料混合物をメカノフュージョン処理することによって前記電極活物質と前記導電材とを予め結着させ、次いで、
(2)前記結着後の原料混合物を、導電性を有する型に充填し、60MPa以上の加圧下において直流パルス電流を通電して焼結させることにより得られる、電極用複合粉末。
2. 前記メカノフュージョン処理は、前記原料混合物に少なくとも圧縮力と剪断力とを加え、前記電極活物質と前記導電材とを結着させる、上記項1に記載の電極用複合粉末。3. 前記メカノフュージョン処理は、回転するケーシングと前記ケーシング内に固定されたインナーピースとを備えるメカノフュージョン装置を用いる処理であって、
(1)前記ケーシングと前記インナーピースとの隙間距離は0.1〜10mmであり、
(2)前記ケーシング内に前記原料混合物を供給すると、前記原料混合物は遠心力により前記ケーシングの内壁面に押し付けられるとともに、前記インナーピースと前記内壁面の隙間で少なくとも圧縮力と剪断力とを加えられることにより、前記電極活物質と前記導電材とが結着し、
(3)前記処理は、前記ケーシング内に前記原料混合物を供給した後、前記ケーシングを1000〜8000rpmの速度で1〜30分間回転させることにより行う、上記項1に記載の電極用複合粉末。
4. 前記導電性を有する型は、タングステンカーバイドを含有する、上記項1〜3のいずれかに記載の電極用複合粉末。
5. 150MPa以上の加圧下において直流パルス電流を通電する、上記項1〜4のいずれかに記載の電極用複合粉末。
6. 前記電極活物質は、1)オリビン型構造の含リチウム化合物、2)層状岩塩型又は立方晶岩塩型の結晶構造を有する岩塩類縁構造の含リチウム化合物、及び3)スピネル型構造の含リチウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の正極活物質である、上記項1〜5のいずれかに記載の電極用複合粉末。
7. 前記電極活物質は、リン酸鉄リチウム;コバルト、マンガン及びニッケルからなる群から選択される少なくとも1種を固溶したリン酸鉄リチウム;リン酸コバルトリチウム;マンガン及びニッケルの少なくとも1種を固溶したリン酸コバルトリチウム;リン酸マンガンリチウム;ニッケルを固溶したリン酸マンガンリチウム;リン酸ニッケルリチウム;ニッケル酸リチウム;コバルト及びアルミニウムの少なくとも1種を固溶したニッケル酸リチウム;コバルト酸リチウム;鉄酸リチウム;チタン、マンガンの少なくとも1種を固溶した鉄酸リチウム;チタン酸リチウム;マンガン酸リチウム;及びクロムを固溶したマンガン酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1種の正極活物質である、上記項1〜5のいずれかに記載の電極用複合粉末。
8. 前記電極活物質は、炭素、珪素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、アルミニウム、インジウム、リチウム、酸化スズ、チタン酸リチウム、窒化リチウム、インジウムを固溶した酸化錫、インジウム−錫合金、リチウム−アルミニウム合金及びリチウム−インジウム合金からなる群から選択される少なくとも1種の負極活物質である、上記項1〜5のいずれかに記載の電極用複合粉末。
9. 上記項1〜8のいずれかに記載の電極用複合粉末を含有する電極を備えた、一次電
池、二次電池、燃料電池又はキャパシタ。
10. 電極活物質どうしが導電材を介して接合している構造を有する電極用複合粉末の製造方法であって、
(1)電極活物質と導電材とを含有する原料混合物をメカノフュージョン処理することによって前記電極活物質と前記導電材とを予め結着させ、次いで、
(2)前記結着後の原料混合物を、導電性を有する型に充填し、60MPa以上の加圧下において直流パルス電流を通電して焼結させる工程を有する、製造方法。
11. 前記メカノフュージョン処理は、前記原料混合物に少なくとも圧縮力と剪断力とを加え、前記電極活物質と前記導電材とを結着させる、上記項10に記載の製造方法。
12. 前記メカノフュージョン処理は、回転するケーシングと前記ケーシング内に固定されたインナーピースとを備えるメカノフュージョン装置を用いる処理であって、
(1)前記ケーシングと前記インナーピースとの隙間距離は0.1〜10mmであり、
(2)前記ケーシング内に前記原料混合物を供給すると、前記原料混合物は遠心力により前記ケーシングの内壁面に押し付けられるとともに、前記インナーピースと前記内壁面の隙間で少なくとも圧縮力と剪断力とを加えられることにより、前記電極活物質と前記導電材とが結着し、
(3)前記処理は、前記ケーシング内に前記原料混合物を供給した後、前記ケーシングを1000〜8000rpmの速度で1〜30分間回転させることにより行う、上記項10に記載の製造方法。

以下、本発明の電極用複合粉末及びその製造方法について詳細に説明する。
1.電極用複合粉末
本発明の電極用複合粉末は、電極活物質どうしが導電材を介して接合している構造を有する電極用複合粉末である。当該構造としては、例えば、導電材が表面に付着した又は導電材によって被覆された電極活物質どうしが接合している構造が挙げられる。
上記構造を有する本発明の電極用複合粉末は、
(1)電極活物質と導電材とを含有する原料混合物をメカノフュージョン処理することによって前記電極活物質と前記導電材とを予め結着させ、次いで、
(2)前記結着後の原料混合物を、導電性を有する型に充填し、60MPa以上の加圧下において直流パルス電流を通電して焼結させることにより得られる。
本発明の電極用複合粉末は、原料混合物をメカノフュージョン処理後、60MPa以上の加圧下で通電焼結することにより得るため、電極活物質と導電材との接合強度が大きく、これにより電極活物質と導電材との導電ネットワークが強固である。このような電極用複合粉末は、高電流密度で充放電を繰り返した場合でも導電ネットワークが損なわれ難く、各種電池及びキャパシタに適用し得る電極粉末として有用である。本発明の電極用複合粉末は、とりわけリチウム二次電池に対して有用性が高い。
以下、本発明の電極用複合粉末について、リチウム二次電池の電極材料として適用する場合を例示しながら説明する。
≪電極活物質≫
電極活物質としては特に限定されず、従来、電池やキャパシタに適用されている正極・負極活物質が使用できる。
リチウム二次電池用電極活物質で具体例を挙げれば、正極活物質としては、例えば、
1)オリビン型構造の含リチウム化合物、
2)層状岩塩型又は立方晶岩塩型の結晶構造を有する岩塩類縁構造の含リチウム化合物、
3)スピネル型構造の含リチウム化合物、
等が挙げられる。
具体的には、1)オリビン型構造の含リチウム化合物としては、例えば、リン酸鉄リチウム;コバルト、マンガン及びニッケルの少なくとも1種を固溶したリン酸鉄リチウム;リン酸コバルトリチウム;マンガン及びニッケルの少なくとも1種を固溶したリン酸コバルトリチウム;リン酸マンガンリチウム;ニッケルを固溶したリン酸マンガンリチウム、リン酸ニッケルリチウム等が挙げられる。
2)層状岩塩型又は立方晶岩塩型の結晶構造を有する岩塩類縁構造の含リチウム化合物としては、例えば、ニッケル酸リチウム;コバルト及びアルミニウムの少なくとも1種を固溶したニッケル酸リチウム;コバルト酸リチウム;鉄酸リチウム;チタン、マンガンの少なくとも1種を固溶した鉄酸リチウム;チタン酸リチウム等が挙げられる。
3)スピネル型構造の含リチウム化合物としては、例えば、マンガン酸リチウム;及びクロムを固溶したマンガン酸リチウム等が挙げられる。
これらの正極活物質は単独又は2種以上を混合して使用できる。本発明では、電極用複合粉末の製造条件を好適化することにより、ニッケル、コバルト、マンガン等の高価数を採り得る遷移金属を活物質として用いる場合でも、その還元を抑制しつつ導電材と強固に接合して電極用複合粉末とすることができる。
負極活物質としては、例えば、炭素、珪素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、アルミニウム、インジウム、リチウム、酸化スズ、チタン酸リチウム、窒化リチウム、インジウムを固溶した酸化錫、インジウム−錫合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−インジウム合金等が挙げられる。負極活物質も単独又は2種以上で使用できる。
電極活物質は市販品を使用すればよいが、調製することもできる。例えば、コバルト酸リチウムは、炭酸コバルトと炭酸リチウムとを混合して800〜1000℃で焼成する方法などで調製できる。
また、鉄含有マンガン酸リチウムは、例えば、次の手順で調製できる。即ち、Fe(NO・9HOとMnCl・4HOの混合水溶液を出発物質とし、これを−10℃に保持したLiOHの水−エタノール混合溶液に滴下して共沈物を作製後、沈殿を熟成する。かかる沈殿物にLiOH・HO、KOH及びKClOを加えて蒸留水中で混合後、220℃で5時間水熱処理を行う。水洗後、得られる沈殿物とLiOH水溶液を混合し、乾燥後、850℃まで1時間かけて昇温後、1分間保持する。この焼成物を水洗・濾過・乾燥することにより鉄含有マンガン酸リチウムは得られる(例えば、M. Tabuchi, Y.
Nabeshima, K. Ado, M. Shikano, H. Kageyama, and K. Tatsumi, IMLB 2006 Meeting Abstracts #5 (2006) )。
電極活物質の平均粒子径(電極用複合粉末における平均粒子径)は限定的ではないが、0.01〜50μm程度が好ましく、0.02〜30μm程度がより好ましい。なお、電極活物質の平均粒子径は、メカノフュージョン処理及び通電焼結に供する前後において、ほぼ同程度である。
≪導電材≫
導電材(電子伝導性粉末)としては、電子伝導性を有する材料であれば限定的ではなく、例えば、炭素、炭素基導電化合物、鉄、鉄を含む合金、銅、銅を含む合金、アルミニウム、アルミニウムを含む合金、酸化鉄、酸化鉄を端成分とする固溶体等が挙げられる。導
電材としては、これらの材料の単独又は2種以上を混合して使用できる。
上記の導電材のうち、炭素基導電化合物とは、主としてベンゼン骨格等の電子伝導経路を有し、炭素を主成分とする化合物である。例えば、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン等が挙げられる。
合金のうち、鉄を含む合金としては、例えば、Fe−Cr合金、Fe−Ni合金、Fe−Mg合金等が挙げられる。銅を含む合金としては、例えば、Ni−Cu合金、Cu−Sn合金、Cu−Zn合金等が挙げられる。アルミニウムを含む合金としては、例えば、Al−Zn合金、Al−Cu合金、Al−Mg合金等が挙げられる。合金中の各成分の割合は特に限定されず、適宜設定できる。
酸化鉄を端成分とする固溶体としては、例えば、酸化鉄にZn、Mn、Ni、Al、Ti、Co等を固溶させたものが挙げられる。固溶量は特に限定されず、適宜設定できる。
上記導電材のうち、炭素材料が好ましく、例えば、アセチレンブラック(AB)粉末を好適に使用できる。
導電材の平均粒子径(電極用複合粉末における平均粒子径)は限定的ではないが、0.005〜10μm程度が好ましく、0.01〜1μm程度がより好ましい。なお、かかる導電材の平均粒子径は、電極活物質との混合物に対して行うメカノフュージョン処理及び通電焼結の前後においてほぼ同程度である。また、電極用複合粉末中における導電材含有量は0.01〜30重量%程度が好ましく、0.02〜25重量%程度がより好ましい。
≪電極用複合粉末≫
本発明の電極用複合粉末は、前記電極活物質どうしが前記導電材を介して接合している構造を有する。例えば、導電材が表面に付着した又は導電材によって被覆された電極活物質どうしが接合している構造が挙げられる。
このような電極用複合粉末の密度は限定的ではないが、例えば、タップ密度が0.8g/cm以上が好ましく、1g/cm以上がより好ましい。なお、本明細書におけるタップ密度は、約0.2gの試料(ここでは電極用複合粉末)を25mlのメスシリンダーに入れて100回タップを行った後、測定した密度である。
本発明の電極用複合粉末は、電極活物質と導電材との関係において強固な接合強度(強固な導電ネットワーク)を有している。そして、電極活物質どうしは導電材を介して接合ている。この様な電極用複合粉末は、各種電池やキャパシタの電極材料として有用であり、重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を低下させることなく、高電流密度での充放電特性を高めた電極を作製することができる。
具体的には、本発明の電極用複合粉末は、一次電池、二次電池、燃料電池、キャパシタ用の電極粉末として有用である。
例えば、有機電解液系電池に適用する場合には、金属箔(又は金属メッシュ)上に電極用複合粉末からなる層を形成して正極シート及び/又は負極シートを得た後、正極シート及び負極シートで電解液を染み込ませたセパレータを挟むことにより、高電流密度で高容量を示す充放電サイクル特性に優れたリチウム二次電池を作製できる。尚、電極用複合粉末にバインダ(例えば、ポリビニリデンフルオライド等)を混練することにより、より容易に金属箔(又は金属メッシュ)上に電極用複合粉末層を形成できる。
例えば、有機電解液系リチウム二次電池を作製する場合には、電極用複合粉末とバインダ(例えば、ポリビニリデンフルオライドなど)と混錬して電極合剤を形成し、正極シート及び/又は負極シートを得た後、正極シート及び負極シートで電解液を染み込ませたセパレータを挟むことにより、高電流密度で高容量を示す充放電サイクル特性に優れたリチウム二次電池を作製できる。
2.電極用複合粉末の製造方法
本発明の電極用複合粉末の製造方法は、
(1)電極活物質と導電材とを含有する原料混合物をメカノフュージョン処理することによって前記電極活物質と前記導電材とを予め結着させ、次いで、
(2)前記結着後の原料混合物を、導電性を有する型に充填し、60MPa以上の加圧下において直流パルス電流を通電して焼結させる工程を有する。
原料混合物における電極活物質と導電材との混合比としては、導電材の量を、電極活物質及び導電材の合算量の0.01〜30重量%とすればよく、0.02〜25重量%が好ましい。導電材の量が0.01重量%未満では、電極活物質の電子伝導性の向上が不十分となり、良好な充放電サイクル特性が得られないおそれがある。30重量%以上では、電極活物質の重量比率及び体積比率の低下に伴って、電池の重量出力密度及び体積出力密度が低下するため好ましくない。
≪メカノフュージョン処理≫
メカノフュージョン処理は、複数の異なる粒子間に機械的エネルギー(機械的歪力)を加えて、異なる粒子どうしを結着させる処理であり、本発明では原料混合物に少なくとも圧縮力と剪断力とを加えることによって電極活物質と導電材とを結着させる処理である。
上記処理は、通常、図4の概略図に示されるようなメカノフュージョン装置により行う。図4の装置は、高速回転可能なケーシング(容器)1とその内部に固定された半円柱状のインナーピース2(摩擦部材)とスクレーパー3(掻き取り部材)とを有する。図4中の4は原料混合物である。図4には図示されていないが、摩擦熱による異常昇温を防止するために、ケーシングを取り囲むように冷却機が設置されていてもよい。
ケーシング1内に原料混合物を供給し、ケーシング1を高速回転させると、原料混合物はケーシング1の内壁面に遠心力により押し付けられて層4を形成する。ケーシング1の回転条件は限定的ではないが、1000〜8000rpmが好ましく、2000〜7000rpmがより好ましい。ケーシング1が回転中、原料混合物はインナーピース2とケーシング1との隙間(クリアランス)で少なくとも圧縮力及び剪断力を受ける。機械的歪力を受けた原料混合物は、スクレーパー3により掻き取られて再び原料混合物4に混じる。この処理を連続的に繰り返すことにより、電極活物質と導電材の分散性が均一化するとともに、両者が徐々に強く結着する。
上記クリアランスは0.1〜10mm程度が好ましく、0.2〜8mm程度がより好ましい。また、処理時間は回転条件に応じて設定するが1〜30分程度が好ましく、1〜25分程度がより好ましい。回転数が1000rpm未満又は処理時間が1分未満の場合には、結着程度が不十分になるおそれがある。他方、回転数が8000rpm超過又は処理時間が30分超過の場合には、電極活物質や導電材の過度な変形や温度上昇による変性等が生じる可能性がある。
メカノフュージョン装置としては、例えば、特開昭63−42728号公報に記載の粉粒体処理装置が挙げられ、具体的には、ホソカワミクロン(株)製のメカノフュージョンシステムが好適である。
≪通電焼結法≫
通電焼結法(通電接合法)としては、放電プラズマ焼結法、放電焼結法、プラズマ活性化焼結法等と称される直流パルス電流を通電する加圧焼結法であればよい。具体的には、所定の形状の導電性を有する型に試料を充填し、加圧しながらパルス状ON−OFF直流電流を通電することによって、加圧下における通電焼結を行うものであればよい。かかる通電焼結装置及びその作動原理は、例えば、特開平10−251070号公報などに開示されている。
放電プラズマ焼結機の模式図を図5に示す。図5に示される放電プラズマ焼結機1は、試料2を装填するダイ(型)3と上下一対のパンチ4及び5とを有する。パンチ4及び5は、それぞれパンチ電極6及び7に支持されており、このパンチ電極6及び7を介して、ダイ3に装填された試料2に必要に応じて加圧しながらパルス電流を供給できる。試料2に与える電流の種類としてはパルス電流が好ましい。パルス通電によって、試料2及びその近傍(ダイ3及び上下部パンチ4及び5)が加熱され、その加熱及びパルス電流の両方の効果により通電焼結体が得られる。
以下、電極活物質及び導電材の結着粉末(「結着混合物」とも言う)を、通電焼結機の電子伝導性型材内に充填後、60MPa以上の加圧下において通電焼結する手段について具体的に説明する。
通電処理に用いる電子伝導性型材としては、電子伝導性を有し、60MPa以上の圧力条件に耐え得るものであれば特に限定されない。例えば、タングステンカーバイド、鉄、銅、アルミニウム合金(例えばAl−Cu−Mg系合金)等を好適に使用できる。上記の型材の中でも特にタングステンカーバイド(WC)は超硬型材であるため耐圧性が高く、しかも通電焼結時における電極活物質の還元を抑制し易い観点から好ましい。
電子伝導性型材に直流パルス電流を印加することにより、充填された結着混合物の粒子間隙に生じる放電現象を利用して、放電プラズマ、放電衝撃圧力等による粒子表面の浄化活性化作用及び電場により生じる電界拡散効果やジュール熱による熱拡散効果、加圧による塑性変形圧力等が粒子接合の駆動力となって電極活物質どうしが導電材を介して接合される。具体的には、パルス電流の印加により、導電材の一部が気化して電極活物質表面に付着(被覆)し、そこに粒子の状態の導電材が接着し、これらが連続して起こることで電極活物質が導電材を介して強固に接合する。電極活物質の焼結もごく一部で起こることも考えられるが、電極活物質どうしが隣接して焼結するよりも導電材を介して接合していく場合が殆どであると考えられる。
電流を供給する際の条件としては、結着混合物に60MPa以上の圧力をかけて(加圧下に)通電する。好ましくはパルス電流を供給することが望ましい。圧力としては、60MPa以上とするが、150MPa以上(例えば150〜1000MPa)、300MPa以上(例えば300〜1000MPa)がより好ましい。耐圧条件を備えれば500MPa以上(例えば500〜1000MPa)でもよい。電極活物質と導電材との接合を十分なものとするためには、高圧条件が望ましいが、50000MPa程度を上限とする。
また、結着混合物に電流を供給する際のダイ3(図5参照)の温度は、電極活物質及び導電材の種類や粒径などに応じて適宜選択することができるが、通常100〜800℃、好ましくは150〜700℃程度である。100℃未満では電極活物質と導電材との接合が不十分となる場合がある。800℃以上では導電材又は電子伝導性型材の還元による電極活物質の分解が起こり得るため好ましくない。従って、150〜700℃程度の加熱が好適である。
加熱のために印加するパルス電流は、例えばパルス幅2〜3ミリ秒程度で、周期は3Hz〜300kHz程度のパルス状ON−OFF直流電流を用いればよい。電流値は型材の種類及び大きさにより異なるが、例えば内径10mmのタングステンカーバイド型材を用いた場合には300〜1000A程度、内径20mmの型材を用いた場合には500〜3000A程度が好適である。処理時は、型材温度をモニターしながら電流値を増減させ、所定の温度を管理できるように電流値を制御するか、もしくは投入電気エネルギー量(Wh値)を制御すればよい。
通電焼結による焼結時間については、使用する結着混合物の量、焼結温度などによって異なるので、一概に規定できないが、通常、上記した加熱温度範囲に1分〜2時間程度保持すればよい。
このようにして得られた本発明の電極用複合材料は、電極用複合材料に対する導電材の重量比が、1:0.0001〜0.3程度、好ましくは1:0.0002〜0.25程度である。
所定の温度で通電焼結処理を行った混合粉は冷却後、型材から取り出し、乳鉢等で軽く粉砕することにより導電材が接合した電極活物質を回収することができる。多量の接合処理を行う場合には、大きな型材を用い、上記のプロセスをスケールアップすればよい。このようにして本発明の電極用複合粉末は得られる。
上記では、電極活物質及び導電材の結着混合物を通電焼結法で処理して電極用複合粉末を製造する方法について説明した。尚、1)上記した電極活物質及び導電材の結着混合物からなる層を金属箔(又は金属メッシュ)上に形成したシート、前記1)のシートを巻き取って得られるロール状物を通電焼結法で処理する場合には、本発明の電極用複合粉末が金属箔上に層状に付着した電極材料を効率的に製造できる。上記混合粉末にバインダ(例えば、ポリビリニデンフルオライド等)を添加した場合には、金属箔(又は金属メッシュ)上に電極用複合粉末層をより形成し易くなる。バインダの添加量は特に限定されず、電極活物質及び導電材の種類等に応じて適宜調整すればよい。通常は、バインダは通電焼結により除去されるが、炭化した状態で残留した場合には、本発明における導電材と同様に取り扱えばよい。
本発明の電極用複合粉末は、原料混合物をメカノフュージョン処理後、60MPa以上の加圧下で通電焼結することにより得るため、電極活物質と導電材との接合強度が大きく、これにより電極活物質と導電材との導電ネットワークが強固である。このような電極用複合粉末は、高電流密度で充放電を繰り返した場合でも導電ネットワークが損なわれ難く、各種電池及びキャパシタに適用し得る電極粉末として有用である。本発明の電極用複合粉末は、とりわけリチウム二次電池に対して有用性が高い。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
実施例1
鉄含有LiMnO(組成式Li1.2Fe0.4Mn0.4)を合成した。
先ず、Fe(NO・9HOとMnCl・4HOの混合水溶液(モル比でFe:Mn=1:1)を出発物質とし、これを−10℃に制御されたLiOHの水−エタノ
ール混合溶液に滴下して共沈物を作製した。その後、混合溶液に空気泡を送りながら撹拌することで沈殿を一夜間熟成した。これを濾過後、得られる共沈物にLiOH・HO、KOH、KClOを加えて蒸留水中で混合し、220℃、5時間水熱処理を行った。水洗後、得られる沈殿物とLiOH水溶液を混合し、乾燥後、850℃まで1時間かけて昇温後、1分間保持した。この焼成物を水洗・濾過・乾燥することにより目的の鉄含有マンガン酸リチウム(Li1.2Fe0.4Mn0.4)を得た。
上記鉄含有LiMnOを電極活物質とし、市販のアセチレンブラック(AB)粉末を導電材とし、両者を重量比で97:3となるよう混合して原料混合物とした。電極活物質の比表面積は21.8m/gで、球換算粒径で約0.05μmであった。AB粉末の比表面積は約70m/gで、球換算粒径で約0.04μmであった。次に、原料混合物をホソカワミクロン(株)製メカノフュージョン装置 AMS−Miniに投入し、クリアランス1mm、ケーシング回転速度6970rpmとし、2分間メカノフュージョン処理を行った。
次に、結着後の原料混合物を内径10mmのWC型材に充填し、通電焼結機内にセットして約20Paまで減圧後、窒素ガスを大気圧になるまで導入した。次いで、WC型材を約500MPaで加圧しながら約400Aのパルス電流(パルス幅2.5ミリ秒のON−OFF直流電流、周期29Hz)を通電した。WC型材近傍は約50℃/分の昇温速度で加熱され、パルス電流の通電開始約5分後に270℃に到達した。この温度で約20分間保持した後、電流の通電と加圧を停止し、自然放冷させた。室温に冷却後、Li1.2Fe0.4Mn0.4−AB複合粉末(焼結体)を型材から取り出し、電極用粉末を得た。
複合粉末は黒色であり、X線回折パターンでは2θ=26°近傍にAB由来の幅広のハローが認められ、それ以外のピークは六方晶系の層状岩塩型鉄含有マンガン酸リチウムの単位胞(空間群R3m)で指数付けできた。
≪充放電特性≫
電極用粉末をリチウム二次電池の正極材料として用い、負極にリチウム金属、集電体にアルミニウムメッシュ、電解液としてLiPFをエチレンカルボネート/ジメチルカルボネート混合液に溶解させたものを用いて、電流密度42.5mA/g(1/3C)〜3825mA/g(30C)、カットオフ2.0〜4.8Vにおける定電流測定で充放電試験を行った。
図1に、リチウム二次電池の放電容量を、1/3Cでの容量を100%とした時の各レートにおける容量維持率として示す。5C未満のレートでは、メカノフュージョン処理のみの場合(比較例1)、通電処理のみの場合(比較例2)及びメカノフュージョン、通電焼結処理のいずれの処理も施さない場合(比較例3)とほぼ同等の容量を示したが、5C以上の高電流密度においてはこれら3つの場合に比べ、容量の増大が認められた。図2には1C、5C、20Cでの放電曲線を示すが、比較の3例に比べいずれも放電容量が高く、特に5C以上の高電流密度において放電平均電位が高いことが特徴で、活物質−導電材間の接合が良好で電子伝導性が充分に確保されていることを示唆している。
以上より、本発明の電極用複合粉末は、高電流密度で高エネルギー密度を示し、優れたレート特性を有するリチウム二次電池の正極材料として好適に使用できることが分かる。
比較例1(通電処理なし)
実施例1と同じ電極活物質Li1.2Fe0.4Mn0.4を用い、これとABを重量比97:3で秤量し、実施例1と同様に、ケーシング回転6970rpmで2分間メ
カノフュージョン処理を行った。
得られた粉末を用い、実施例1と全く同様にしてリチウム二次電池を作製し、同様の条件で充放電試験を行った。結果は図1及び図2に示す通り、メカノフュージョン処理を行わない場合(比較例3)に比べ放電容量及び放電平均電圧の増大が一部認められるものの、実施例1の場合ほどには増大効果は認められず、メカノフュージョン法のみでは充放電特性の改善効果は小さいことが分かった。
以上より、Li1.2Fe0.4Mn0.4とAB粉末からメカノフュージョン法を用いて複合粉末を作製しても、更に通電処理を加えた複合粉末ほどには両者の接合を強化することはできず、高電流密度で高エネルギー密度を示し、優れた充放電特性を有するリチウム二次電池を作製することは困難であることが分かった。
比較例2(メカノフュージョン処理なし)
実施例1と同じ電極活物質Li1.2Fe0.4Mn0.4を用い、これとABを重量比97:3で秤量し、メノウ乳鉢で混練した。これを内径10mmのタングステンカーバイド治具に充填し、実施例1と同様に、500MPaの加圧下、270℃で20分間、通電処理を行った。
得られた粉末を用い、実施例1と全く同様にしてリチウム二次電池を作製し、同様の条件で充放電試験を行った。結果は図1及び図2に示す通り、通電処理を行わない場合(比較例3)に比べ放電容量及び放電平均電圧の増大が一部認められるものの、実施例1の場合ほどには増大効果は認められず、通電処理のみでは充放電特性の改善効果は小さいことが分かった。
以上より、Li1.2Fe0.4Mn0.4とAB粉末から通電焼結法を用いて複合粉末を作製しても、更にメカノフュージョン法を加えた複合粉末ほどには両者の接合を強化することはできず、高電流密度で高エネルギー密度を示し、優れた充放電特性を有するリチウム二次電池を作製することは困難であることが分かった。
比較例3(メカノフュージョン処理・通電処理なし)
実施例1と同じ電極活物質Li1.2Fe0.4Mn0.4を用い、これとABを重量比97:3で秤量し、メノウ乳鉢で混練した。
得られた粉末を用い、実施例1と全く同様にしてリチウム二次電池を作製し、同様の条件で充放電試験を行った。結果は図1及び図2に示す通り、実施例1の場合に比べ、いずれの電流密度でも放電容量、放電平均電圧が低い値であった。
以上より、Li1.2Fe0.4Mn0.4とAB粉末を単に混合したのみでは、高電流密度で高エネルギー密度を示し、優れた充放電特性を有するリチウム二次電池を作製することは困難であることが分かった。
実施例2
電極活物質として平均粒子径9.4μmのLiNi0.8Co0.15Al0.05を用意した。
LiNi0.8Co0.15Al0.05と市販のアセチレンブラック(AB)粉末を重量比で97:3となるよう秤量し、これらをホソカワミクロン(株)製メカノフュージョン AMS−Miniに投入し、クリアランス1mm、ケーシング回転6970rpmで10分間メカノフュージョン処理を行った。
これを内径10mmのWC型材に充填し、通電焼結機内にセットして約20Paまで減圧後、窒素ガスを大気圧になるまで導入した。次いで、WC型材を約500MPaで加圧しながら約400Aのパルス電流(パルス幅2.5ミリ秒のON−OFF直流電流、周期29Hz)を通電した。WC型材近傍は約50℃/分の昇温速度で加熱され、パルス電流の通電開始約5分後に250℃に到達した。この温度で約20分間保持した後、電流の通電と加圧を停止し、自然放冷させた。室温に冷却後、LiNi0.8Co0.15Al0.05−AB複合粉末(焼結体)を型材から取り出し、電極用粉末を得た。
複合粉末は黒色であり、X線回折パターンでは2θ=26°近傍にAB由来の幅広のハローが認められ、それ以外のピークは六方晶系の層状岩塩型ニッケルコバルト酸リチウムの単位胞(空間群R3m)で指数付けできた。
≪充放電特性≫
電極用粉末をリチウム二次電池の正極材料として用い、負極にリチウム金属、集電体にアルミニウムメッシュ、電解液としてLiPFをエチレンカルボネート/ジメチルカルボネート混合液に溶解させたものを用いて、電流密度50mA/g(1/3C)〜9000mA/g(60C)、カットオフ2.0〜4.2Vにおける定電流測定で充放電試験を行った。
図3に、1C、10C、30C、60Cでのリチウム二次電池の放電曲線を示す。10C以下のレートでは、メカノフュージョン処理のみの場合(比較例4)、及びメカノフュージョン、通電焼結処理のいずれの処理も施さない場合(比較例5)に比べやや低い容量及び低い放電平均電圧を示したが、30C以上の高電流密度においてはこれら2つの比較例に比べ、容量の増大及び放電平均電圧の向上が認められた。これは、活物質−導電材間の接合が良好で電子伝導性が充分に確保されていることを示唆している。
以上より、本発明の電極用複合粉末は、高電流密度で高エネルギー密度を示し、優れたレート特性を有するリチウム二次電池の正極材料として好適に使用できることが分かる。
比較例4(通電処理なし)
実施例2と同じ電極活物質LiNi0.8Co0.15Al0.05を用い、これとABを重量比97:3で秤量し、実施例2と同様に、ケーシング回転6970rpmで10分間メカノフュージョン処理を行った。
得られた粉末を用い、実施例2と全く同様にしてリチウム二次電池を作製し、同様の条件で充放電試験を行った。結果は図3に示す通り、メカノフュージョン処理を行わない場合(比較例5)に比べ放電容量及び放電平均電圧の増大が30C以上の高電流密度において認められるものの、実施例2の場合ほどには増大効果は認められず、メカノフュージョン法のみでは充放電特性の改善効果は小さいことが分かった。
以上より、LiNi0.8Co0.15Al0.05とAB粉末からメカノフュージョン法を用いて複合粉末を作製しても、更に通電処理を加えた複合粉末ほどには両者の接合を強化することはできず、高電流密度で高エネルギー密度を示し、優れた充放電特性を有するリチウム二次電池を作製することは困難であることが分かった。
比較例5(メカノフュージョン処理・通電処理なし)
実施例2と同じ電極活物質LiNi0.8Co0.15Al0.05を用い、これとABを重量比97:3で秤量し、メノウ乳鉢で混練した。
得られた粉末を用い、実施例2と同様にしてリチウム二次電池を作製し、同様の条件で充放電試験を行った。結果は図3に示す通り、実施例2の場合に比べ、特に30C以上の高電流密度において放電容量、放電平均電圧が低い値であった。
以上より、LiNi0.8Co0.15Al0.05とAB粉末を単に混合したのみでは、高電流密度で高エネルギー密度を示し、優れた充放電特性を有するリチウム二次電池を作製することは困難であることが分かった。
実施例1、比較例1〜3で作製したリチウム二次電池の1/3C〜30Cにおける放電容量を、1/3Cでの放電容量を100%とした容量維持率で示した図である。 実施例1、比較例1〜3で作製したリチウム二次電池の1C、5C、20Cにおける放電特性を示す図である。 実施例2、比較例4〜5で作製したリチウム二次電池の1C、10C、30C、60Cにおける放電特性を示す図である。 メカノフュージョン装置の概略図である。 放電プラズマ焼結機の概略図である。
符号の説明
1.ケーシング
2.インナーピース(摩擦部材)
3.スクレーパー(掻き取り部材)
4.原料混合物

Claims (12)

  1. 電極活物質どうしが導電材を介して接合している構造を有する電極用複合粉末であって、前記電極用複合粉末は、
    (1)電極活物質と導電材とを含有する原料混合物をメカノフュージョン処理することによって前記電極活物質と前記導電材とを予め結着させ、次いで、
    (2)前記結着後の原料混合物を、導電性を有する型に充填し、60MPa以上の加圧下において直流パルス電流を通電して焼結させることにより得られる、電極用複合粉末。
  2. 前記メカノフュージョン処理は、前記原料混合物に少なくとも圧縮力と剪断力とを加え、前記電極活物質と前記導電材とを結着させる、請求項1に記載の電極用複合粉末。
  3. 前記メカノフュージョン処理は、回転するケーシングと前記ケーシング内に固定されたインナーピースとを備えるメカノフュージョン装置を用いる処理であって、
    (1)前記ケーシングと前記インナーピースとの隙間距離は0.1〜10mmであり、
    (2)前記ケーシング内に前記原料混合物を供給すると、前記原料混合物は遠心力により前記ケーシングの内壁面に押し付けられるとともに、前記インナーピースと前記内壁面の隙間で少なくとも圧縮力と剪断力とを加えられることにより、前記電極活物質と前記導電材とが結着し、
    (3)前記処理は、前記ケーシング内に前記原料混合物を供給した後、前記ケーシングを1000〜8000rpmの速度で1〜30分間回転させることにより行う、請求項1に記載の電極用複合粉末。
  4. 前記導電性を有する型は、タングステンカーバイドを含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の電極用複合粉末。
  5. 150MPa以上の加圧下において直流パルス電流を通電する、請求項1〜4のいずれかに記載の電極用複合粉末。
  6. 前記電極活物質は、1)オリビン型構造の含リチウム化合物、2)層状岩塩型又は立方晶岩塩型の結晶構造を有する岩塩類縁構造の含リチウム化合物、及び3)スピネル型構造の含リチウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種の正極活物質である、請求項1〜5のいずれかに記載の電極用複合粉末。
  7. 前記電極活物質は、リン酸鉄リチウム;コバルト、マンガン及びニッケルからなる群から選択される少なくとも1種を固溶したリン酸鉄リチウム;リン酸コバルトリチウム;マンガン及びニッケルの少なくとも1種を固溶したリン酸コバルトリチウム;リン酸マンガンリチウム;ニッケルを固溶したリン酸マンガンリチウム;リン酸ニッケルリチウム;ニッケル酸リチウム;コバルト及びアルミニウムの少なくとも1種を固溶したニッケル酸リチウム;コバルト酸リチウム;鉄酸リチウム;チタン、マンガンの少なくとも1種を固溶した鉄酸リチウム;チタン酸リチウム;マンガン酸リチウム;及びクロムを固溶したマンガン酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1種の正極活物質である、請求項1〜5のいずれかに記載の電極用複合粉末。
  8. 前記電極活物質は、炭素、珪素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、アルミニウム、インジウム、リチウム、酸化スズ、チタン酸リチウム、窒化リチウム、インジウムを固溶した酸化錫、インジウム−錫合金、リチウム−アルミニウム合金及びリチウム−インジウム合金からなる群から選択される少なくとも1種の負極活物質である、請求項1〜5のいずれかに記載の電極用複合粉末。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の電極用複合粉末を含有する電極を備えた、一次電池、二次電池、燃料電池又はキャパシタ。
  10. 電極活物質どうしが導電材を介して接合している構造を有する電極用複合粉末の製造方法であって、
    (1)電極活物質と導電材とを含有する原料混合物をメカノフュージョン処理することによって前記電極活物質と前記導電材とを予め結着させ、次いで、
    (2)前記結着後の原料混合物を、導電性を有する型に充填し、60MPa以上の加圧下において直流パルス電流を通電して焼結させる工程を有する、製造方法。
  11. 前記メカノフュージョン処理は、前記原料混合物に少なくとも圧縮力と剪断力とを加え、前記電極活物質と前記導電材とを結着させる、請求項10に記載の製造方法。
  12. 前記メカノフュージョン処理は、回転するケーシングと前記ケーシング内に固定されたインナーピースとを備えるメカノフュージョン装置を用いる処理であって、
    (1)前記ケーシングと前記インナーピースとの隙間距離は0.1〜10mmであり、
    (2)前記ケーシング内に前記原料混合物を供給すると、前記原料混合物は遠心力により前記ケーシングの内壁面に押し付けられるとともに、前記インナーピースと前記内壁面の隙間で少なくとも圧縮力と剪断力とを加えられることにより、前記電極活物質と前記導電材とが結着し、
    (3)前記処理は、前記ケーシング内に前記原料混合物を供給した後、前記ケーシングを1000〜8000rpmの速度で1〜30分間回転させることにより行う、請求項10に記載の製造方法。
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