以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。本実施形態の製造装置(1)は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粉末の製造過程において、最終製品としての乾燥したPTFE粉末を製造するために、濡れた状態のPTFE粉末に処理を施すための装置である。なお、以下の説明で用いる「右」「左」「前」「後」「手前」「奥」は、何れも製造装置(1)を正面側から見た場合のものを意味している。
ここで、PTFE粉末は、水中での重合反応によって生成される。このため、乾燥したPTFE粉末を得るには、重合反応により生成された濡れた状態のPTFE粉末を乾燥させる必要がある。また、PTFE粉末は、PTFE製の物品を押し出し成形する際の原料として用いられる場合がある。この用途に用いられるPTFE粉末には、押し出し成形する際の押出圧が概ね一定であることが要求され、その要求を満たすにはPTFE粉末に熱処理を施す必要がある。そこで、本実施形態の製造装置(1)は、濡れた状態のPTFE粉末を乾燥させる工程と、乾燥したPTFE粉末に熱処理を施す工程とを行う。
図1に示すように、本実施形態の製造装置(1)は、前段ユニット(20)と、後段ユニット(60)とを備えている。前段ユニット(20)は、PTFE粉末にマイクロ波を照射するためのユニットであって、後述する搬送用トレイ(14)と共に本発明に係る乾燥装置を構成している。後段ユニット(60)は、前段ユニット(20)を通過したPTFE粉末を高温の空気によって加熱するためのユニットである。この製造装置(1)では、後段ユニット(60)の上に前段ユニット(20)が設置されている。
本実施形態の製造装置(1)は、図2に示すようなトレイユニット(10)を複数備えている。各トレイユニット(10)は、4つの搬送用トレイ(14)と、1つのトレイラック(11)とによって構成されている。
図3に示すように、搬送用トレイ(14)は、上面が開口した扁平な直方体状の容器である。具体的に、搬送用トレイ(14)は、共にステンレス製の底板部(15)と側板部(16)とを備えている。底板部(15)は、概ね正方形状に形成された平板である。図示しないが、底板部(15)には、直径0.5mm程度の水抜き孔が1.0mm程度のピッチで多数開口している。側板部(16)は、長方形状に形成された平板である。側板部(16)は、底板部(15)と概ね直交する姿勢で、底板部(15)の各辺に沿って1枚ずつ設けられている。この搬送用トレイ(14)には、濡れた状態のPTFE粉末が載せられる。
図2に示すように、トレイラック(11)は、共にステンレス製の枠部材(12)と柱部材(13)とを4つずつ備えている。枠部材(12)は、矩形状に形成されており、互いに所定の間隔をおいて上下に配列されている。柱部材(13)は、棒状に形成されており、上下に配列された枠部材(12)の角部に1本ずつ配置されている。トレイラック(11)では、各枠部材(12)の上に搬送用トレイ(14)が1枚ずつ載せられる。トレイラック(11)における枠部材(12)同士の間隔は、各枠部材(12)に載せられた搬送用トレイ(14)同士の間隔が一定の値Hとなるように設定されている。つまり、トレイラック(11)では、上下に隣接する一対の搬送用トレイ(14)について、上方に位置する搬送用トレイ(14)の底板部(15)の底面と、下方に位置する搬送用トレイ(14)の側板部(16)の上端面との距離が、一定の値Hとなっている。
図4に示すように、前段ユニット(20)は、ケーシング部材である本体ケーシング(21)と、搬送機構であるローラーコンベア(25)とを備えている。また、前段ユニット(20)は、4つのマイクロ波照射部(40,45,50,55)を備えている。この前段ユニット(20)は、本発明に係る乾燥装置の本体部を構成している。
本体ケーシング(21)は、両端が閉塞された矩形断面のダクト状に形成されており、その長手方向が概ね水平方向となる姿勢で設置されている。本体ケーシング(21)の内部空間は、トレイラック(11)を収容するための収容空間となっている。本体ケーシング(21)の内部空間には、3つの区画用扉(24)がその長手方向に沿って等間隔で立設されている。区画用扉(24)については後述する。
本体ケーシング(21)の内部空間は、3つ区画用扉(24)によって4つの空間に仕切られている。本体ケーシング(21)において、区画用扉(24)によって仕切られた4つの空間は、最も左側に位置する空間が第1照射ゾーン(31)となり、その右隣に位置する空間が第2照射ゾーン(32)となり、更にその右隣に位置する空間が第3照射ゾーン(33)となり、最も右側に位置する空間が第4照射ゾーン(34)となっている。これら各照射ゾーン(31〜34)の広さは、1つのトレイユニット(10)を収納できる程度となっている。
区画用扉(24)は、本体ケーシング(21)の断面形状に対応した矩形状に形成されたステンレス製の平板である。この区画用扉(24)は、上下方向へ移動することによって開閉する。区画用扉(24)が開くと、区画用扉(24)を挟んで隣接する照射ゾーン(31〜34)が互いに連通する。
本体ケーシング(21)には、搬入用扉(22)と搬出用扉(23)とが設けられている。搬入用扉(22)は、本体ケーシング(21)の前面のうち第1照射ゾーン(31)に臨む部分に設けられている。搬入用扉(22)は、矩形状に形成されたステンレス製の平板であって、上下方向へ移動することによって開閉する。搬入用扉(22)が開くと、第1照射ゾーン(31)が本体ケーシング(21)の外部と連通する。一方、搬出用扉(23)は、本体ケーシング(21)の底面のうち第4照射ゾーン(34)に臨む部分に設けられている。搬出用扉(23)は、矩形状に形成されたステンレス製の平板であって、水平方向へ移動することによって開閉する。搬出用扉(23)が開くと、第4照射ゾーン(34)が本体ケーシング(21)の外部と連通する。
本体ケーシング(21)の内部空間には、ローラーコンベア(25)が収容されている。ローラーコンベア(25)は、本体ケーシング(21)の底部に配置されており、本体ケーシング(21)の長手方向に沿って本体ケーシング(21)のほぼ全長に亘って敷設されている。本体ケーシング(21)に収容されたトレイユニット(10)は、ローラーコンベア(25)の上に載せられ、ローラーコンベア(25)によって左から右へ向かって搬送される。
本体ケーシング(21)には、各照射ゾーン(31〜34)へ空気を供給するための給気ダクト(36)と、各照射ゾーン(31〜34)から空気を排出するための排気ダクト(37)とが接続されている。本体ケーシング(21)では、4つの照射ゾーン(31〜34)のそれぞれに対して、給気ダクト(36)と排気ダクト(37)が10本ずつ接続されている。
給気ダクト(36)は、本体ケーシング(21)の奥側の側面(即ち、背面)に接続され、対応する照射ゾーン(31〜34)に開口している。各照射ゾーン(31〜34)にトレイユニット(10)を収容した状態では、トレイユニット(10)における搬送用トレイ(14)同士の間(3箇所)と最上段の搬送用トレイ(14)の上側(1箇所)と最下段の搬送用トレイ(14)の下側(1箇所)とに、給気ダクト(36)が2つずつ開口している。
排気ダクト(37)は、本体ケーシング(21)の手前側の側面(即ち、前面)に接続され、対応する照射ゾーン(31〜34)に開口している。各照射ゾーン(31〜34)にトレイユニット(10)を収容した状態では、トレイユニット(10)における搬送用トレイ(14)同士の間(3箇所)と最上段の搬送用トレイ(14)の上側(1箇所)と最下段の搬送用トレイ(14)の下側(1箇所)とに、排気ダクト(37)が2つずつ開口している。
各マイクロ波照射部(40,45,50,55)は、マイクロ波発振器(41,46,51,56)と導波管(42,47,52,57)とを、1つのトレイユニット(10)に設けられる搬送用トレイ(14)と同数ずつ備えている。本実施形態では、1つのトレイユニット(10)に4つの搬送用トレイ(14)が設けられる。従って、本実施形態のマイクロ波照射部(40,45,50,55)には、マイクロ波発振器(41,46,51,56)と導波管(42,47,52,57)とが4つずつ設けられる。
各マイクロ波発振器(41,46,51,56)は、周波数が2.45GHzのマイクロ波を発生させるように構成されており、その出力が1.0kW程度となっている。各導波管(42,47,52,57)は、マイクロ波発振器(41,46,51,56)で発生したマイクロ波を照射ゾーン(31〜34)へ導くためのものであって、断面が横長の長方形状となった金属製の管により構成されている。各導波管(42,47,52,57)は、全体としてL字状に形成されている。マイクロ波発振器(41,46,51,56)は、各導波管(42,47,52,57)の始端に1つずつ接続されている。
各導波管(42,47,52,57)の終端は、本体ケーシング(21)の側面に取り付けられ、本体ケーシング(21)を貫通して対応する照射ゾーン(31〜34)に開口している。第1マイクロ波照射部(40)の導波管(42)は、本体ケーシング(21)の左端面に取り付けられており、その終端が第1照射ゾーン(31)に開口する照射口(43)となっている。第2マイクロ波照射部(45)の導波管(47)は、本体ケーシング(21)の奥側の側面(即ち、背面)のうち第2照射ゾーン(32)に臨む部分に取り付けられており、その終端が第2照射ゾーン(32)に開口する照射口(48)となっている。第3マイクロ波照射部(50)の導波管(52)は、本体ケーシング(21)の手前側の側面(即ち、前面)のうち第3照射ゾーン(33)に臨む部分に取り付けられており、その終端が第3照射ゾーン(33)に開口する照射口(53)となっている。第4マイクロ波照射部(55)の導波管(57)は、本体ケーシング(21)の右端面に取り付けられており、その終端が第4照射ゾーン(34)に開口する照射口(58)となっている。
各マイクロ波照射部(40,45,50,55)に4本ずつ設けられた導波管(42,47,52,57)は、それぞれの終端が互いに所定の間隔をおいて上下方向へ一列に並んでいる。つまり、本体ケーシング(21)内に形成された各照射ゾーン(31〜34)では、4つの照射口(43,48,53,58)が上下方向へ一列に並んで開口している。第1照射ゾーン(31)では、その奥行き方向の中央部に照射口(43)が開口している。第2照射ゾーン(32)では、その左右方向の中央部に照射口(48)が開口している。第3照射ゾーン(33)では、その左右方向の中央部に照射口(53)が開口している。第4照射ゾーン(34)では、その奥行き方向の中央部に照射口(58)が開口している。また、各照射ゾーン(31〜34)にトレイユニット(10)を収容した状態では、トレイユニット(10)における搬送用トレイ(14)同士の間(3箇所)と最上段の搬送用トレイ(14)の上側(1箇所)とに、照射口(43,48,53,58)が1つずつ配置される。
本体ケーシング(21)内の各照射ゾーン(31〜34)には、シールド用枠部(26)が1つずつ設けられている。シールド用枠部(26)は、本体ケーシング(21)の内側面や区画用扉(24)に沿って設けられ、照射ゾーン(31〜34)に収容されたトレイユニット(10)の最下段の搬送用トレイ(14)の周囲を囲っている。シールド用枠部(26)のうち区画用扉(24)に設けられた部分は、区画用扉(24)と一体になって上下に移動する。シールド用枠部(26)は、その断面形状が長方形状になっており、その内周面がトレイユニット(10)における最下段の搬送用トレイ(14)の側板部(16)と対面している。シールド用枠部(26)の高さは、搬送用トレイ(14)の高さと同じか、それよりもやや高くなっている。シールド用枠部(26)の材質は金属である。
図5に示すように、各照射ゾーン(31〜34)にトレイユニット(10)を収容した状態では、各照射ゾーン(31〜34)を形成する壁面と搬送用トレイ(14)との間隔が所定の値に設定されている。なお、図5は、第1照射ゾーン(31)にトレイユニット(10)が収容された状態を示している。
具体的に、トレイユニット(10)の最上段に設けられた搬送用トレイ(14)の側板部(16)の上端と本体ケーシング(21)の天井面との距離は、各搬送用トレイ(14)同士の間隔と同じ値Hに設定されている。また、トレイユニット(10)における上から3段目までの各搬送用トレイ(14)の側面と本体ケーシング(21)の内壁面との間隔は、左右方向の間隔と前後方向の間隔の何れもが同じ値Lとなっている。また、トレイユニット(10)の最下段の搬送用トレイ(14)の側面とシールド用枠部(26)の内周面との間隔は、搬送用トレイ(14)の全周に亘って一定の値Dとなっている。この搬送用トレイ(14)とシールド用枠部(26)との間隔Dは、搬送用トレイ(14)に照射されるマイクロ波が通過できない程度の値に設定されている。
ここで、各マイクロ波照射部(40,45,50,55)のマイクロ波発振器(41,46,51,56)が発生させるマイクロ波の周波数をλとする。本実施形態の各照射ゾーン(31〜34)では、距離Hがλ/2以上の値(H≧λ/2)に設定され、距離Lがλ以上の値(H≧λ)に設定されている。本実施形態のマイクロ波発振器(41,46,51,56)が発生させるマイクロ波は、その周波数が2.45GHzであり、その波長が128mmとなっている。従って、本実施形態の各照射ゾーン(31〜34)では、距離Hが64mm以上に設定され、距離Lが128mm以上に設定されている。
図6に示すように、後段ユニット(60)は、本体ケーシング(61)とローラーコンベア(65)とを備えている。
本体ケーシング(61)は、両端が閉塞された矩形断面のダクト状に形成されており、その長手方向が概ね水平方向となる姿勢で設置されている。本体ケーシング(61)の内部空間は、トレイラック(11)を収容するための収容空間となっている。後段ユニット(60)の本体ケーシング(61)の長さは、前段ユニット(20)の本体ケーシング(21)の長さの約1.5倍となっている。後段ユニット(60)の本体ケーシング(61)には、その長手方向に沿って6つのトレイユニット(10)が一列に並んで収容される。
本体ケーシング(61)の内部空間では、その長手方向に沿って6つのゾーン(71〜74,81,82)が形成され、各ゾーン(71〜74,81,82)にトレイユニット(10)が1つずつ収容される。ただし、これらのゾーン(71〜74,81,82)は仮想的なものであり、本体ケーシング(61)の内部空間が仕切板等によって物理的に区画されている訳ではない。
本体ケーシング(61)では、右端側から4つのゾーンが乾燥ゾーン(71〜74)となり、残りの2つのゾーンが熱処理ゾーン(81,82)となっている。この本体ケーシング(61)では、右から左へ向かって順に、第1乾燥ゾーン(71)と第2乾燥ゾーン(72)と第3乾燥ゾーン(73)と第4乾燥ゾーン(74)とが一列に並んでいる。また、本体ケーシング(61)では、第4乾燥ゾーン(74)の左隣が第1熱処理ゾーン(81)となり、最も左寄りのゾーンが第2熱処理ゾーン(82)となっている。
本体ケーシング(61)には、搬入用扉(62)と搬出用扉(63)とが設けられている。搬入用扉(62)は、本体ケーシング(61)の上面のうち第1乾燥ゾーン(71)に臨む部分に設けられている。搬入用扉(62)は、矩形状に形成されたステンレス製の平板であって、水平方向へ移動することによって開閉する。搬入用扉(62)が開くと、第1乾燥ゾーン(71)が本体ケーシング(61)の外部と連通する。一方、搬出用扉(63)は、本体ケーシング(61)の前面のうち第2熱処理ゾーン(82)に臨む部分に設けられている。搬出用扉(63)は、矩形状に形成されたステンレス製の平板であって、上下方向へ移動することによって開閉する。搬出用扉(63)が開くと、第2熱処理ゾーン(82)が本体ケーシング(61)の外部と連通する。
ここで、上述したように、後段ユニット(60)の上には前段ユニット(20)が載せられている。後段ユニット(60)の上に前段ユニット(20)が載った状態では、前段ユニット(20)の本体ケーシング(21)の下面に設けられた搬出用扉(23)と、後段ユニット(60)の本体ケーシング(61)の上面に設けられた搬入用扉(62)とが対面する。なお、本実施形態では、前段ユニット(20)の搬出用扉(23)と後段ユニット(60)の搬入用扉(62)とを1つの扉で兼用してもよい。
本体ケーシング(61)の内部空間には、ローラーコンベア(65)が収容されている。ローラーコンベア(65)は、本体ケーシング(61)の底部に配置されており、本体ケーシング(61)の長手方向に沿って本体ケーシング(61)のほぼ全長に亘って敷設されている。本体ケーシング(61)に収容されたトレイユニット(10)は、ローラーコンベア(65)の上に載せられ、ローラーコンベア(65)によって右から左へ向かって搬送される。
本体ケーシング(61)には、各ゾーン(71〜74,81,82)へ空気を供給するための給気ダクト(76,86)と、各ゾーン(71〜74,81,82)から空気を排出するための排気ダクト(77,87)とが接続されている。本体ケーシング(61)では、各乾燥ゾーン(71〜74)に対して、給気ダクト(76)と排気ダクト(77)が10本ずつ設けられている。また、本体ケーシング(61)では、各熱処理ゾーン(81,82)に対して、給気ダクト(86)と排気ダクト(87)が10本ずつ設けられている。
給気ダクト(76,86)は、本体ケーシング(61)の奥側の側面(即ち、背面)に接続され、対応するゾーン(71〜74,81,82)に開口している。各ゾーン(71〜74,81,82)にトレイユニット(10)を収容した状態では、トレイユニット(10)における搬送用トレイ(14)同士の間(3箇所)と最上段の搬送用トレイ(14)の上側(1箇所)と最下段の搬送用トレイ(14)の下側(1箇所)とに、給気ダクト(76,86)が2つずつ開口している。
排気ダクト(77,87)は、本体ケーシング(61)の手前側の側面(即ち、前面)に接続され、対応するゾーン(71〜74,81,82)に開口している。各ゾーン(71〜74,81,82)にトレイユニット(10)を収容した状態では、トレイユニット(10)における搬送用トレイ(14)同士の間(3箇所)と最上段の搬送用トレイ(14)の上側(1箇所)と最下段の搬送用トレイ(14)の下側(1箇所)とに、排気ダクト(77,87)が2つずつ開口している。
−運転動作−
本実施形態の製造装置(1)の運転動作について説明する。この製造装置(1)は、重合反応により生成された濡れた状態のPTFE粉末を乾燥させる工程と、この工程を経て乾燥したPTFE粉末に熱処理を施す工程とを行う。
なお、以下の説明で用いる含水率は、PTFE粉末自体に対する水の質量割合を百分率で示した値である。具体的に、濡れた状態のPTFE粉末が質量W1のPTFE粉末と質量W2の水との混合物であるとすると、その濡れた状態のPTFE粉末の含水率Rは、下記の式で得られる値となる。
R=(W2/W1)×100
搬送用トレイ(14)には、重合反応により生成された濡れた状態のPTFE粉末が載せられる。この搬送用トレイ(14)に載せられるPTFE粉末は、その含水率が約80%となっている。搬送用トレイ(14)には、濡れた状態のPTFE粉末が均した状態で載せられている。各トレイラック(11)には、濡れた状態のPTFE粉末の載った搬送用トレイ(14)が4枚ずつ載せられる。上述したように、1つのトレイラック(11)と4枚の搬送用トレイ(14)とによって1つのトレイユニット(10)が形成される。本実施形態の製造装置(1)には、トレイユニット(10)が15分間隔で1つずつ投入される。
前段ユニット(20)では、その第1照射ゾーン(31)へトレイユニット(10)が15分毎に搬入される一方、その第4照射ゾーン(34)からトレイユニット(10)が15分毎に搬出されてゆく。また、前段ユニット(20)において、その第1,第2,第3照射ゾーン(31,32,33)に収容されたトレイユニット(10)は、それぞれ15分毎に右隣の第2,第3,第4照射ゾーン(32,33,34)へ搬送される。
前段ユニット(20)の各照射ゾーン(31〜34)では、そこに収容されたトレイユニット(10)に対して、対応するマイクロ波照射部(40,45,50,55)がマイクロ波を照射する。各照射ゾーン(31〜34)において、対応するマイクロ波照射部(40,45,50,55)から照射されたマイクロ波は、各搬送用トレイ(14)上の濡れた状態のPTFE粉末に到達し、そのPTFE粉末に含まれる水分に吸収される。マイクロ波を吸収した水分は、発熱して蒸発してゆく。
また、前段ユニット(20)では、60℃〜100℃程度にまで加熱された外気が給気ダクト(36)から各照射ゾーン(31〜34)へ吹き出される一方、蒸発した水分(水蒸気)を含む各照射ゾーン(31〜34)内の空気が排気ダクト(37)へ吸い込まれる。排気ダクト(37)へ吸い込まれた空気は、その全部が屋外へ排出される。なお、排気ダクト(37)へ吸い込まれた空気は、有害物質の除去等の適切な処理が施された後に屋外へ放出される。
前段ユニット(20)の運転動作を、1つのトレイユニット(10)に着目して説明する。
トレイユニット(10)は、前段ユニット(20)に搬入される。その際、前段ユニット(20)では、搬入用扉(22)が開かれ、第1照射ゾーン(31)へトレイユニット(10)が搬入される。第1照射ゾーン(31)へ搬入されたトレイユニット(10)は、ローラーコンベア(25)の上に載せられる。その後、前段ユニット(20)では、搬入用扉(22)と搬出用扉(23)と区画用扉(24)の全てが閉じられ、各マイクロ波照射部(40,45,50,55)によるマイクロ波の照射が開始される。
第1照射ゾーン(31)内のトレイユニット(10)に対しては、第1マイクロ波照射部(40)がマイクロ波を照射する。第1マイクロ波照射部(40)のマイクロ波発振器(41)で発生したマイクロ波は、導波管(42)を通り、照射口(43)からトレイユニット(10)の各搬送用トレイ(14)に対して照射される。つまり、第1照射ゾーン(31)では、トレイユニット(10)の各搬送用トレイ(14)に対して左側方からマイクロ波が照射される。第1照射ゾーン(31)では、各搬送用トレイ(14)上のPTFE粉末に含まれていた水分がマイクロ波により加熱されて蒸発し、蒸発した水分が排気ダクト(37)へと吸い出されてゆく。
前段ユニット(20)では、マイクロ波の照射を再開してから15分間が経過すると、マイクロ波照射部(40,45,50,55)によるマイクロ波の照射が一旦停止される。また、前段ユニット(20)では、区画用扉(24)が開かれ、トレイユニット(10)が第1照射ゾーン(31)から第2照射ゾーン(32)へと搬送される。トレイユニット(10)が第2照射ゾーン(32)へ到達すると、区画用扉(24)が閉じられ、マイクロ波照射部(40,45,50,55)によるマイクロ波の照射が再開される。
第2照射ゾーン(32)内のトレイユニット(10)に対しては、第2マイクロ波照射部(45)がマイクロ波を照射する。第2マイクロ波照射部(45)のマイクロ波発振器(46)で発生したマイクロ波は、導波管(47)を通り、照射口(48)からトレイユニット(10)の各搬送用トレイ(14)に対して照射される。つまり、第2照射ゾーン(32)では、トレイユニット(10)の各搬送用トレイ(14)に対して後方からマイクロ波が照射される。第2照射ゾーン(32)では、各搬送用トレイ(14)上のPTFE粉末に含まれていた水分がマイクロ波により加熱されて蒸発し、蒸発した水分が排気ダクト(37)へと吸い出されてゆく。
前段ユニット(20)では、マイクロ波の照射を再開してから15分間が経過すると、マイクロ波照射部(40,45,50,55)によるマイクロ波の照射が一旦停止される。また、前段ユニット(20)では、区画用扉(24)が開かれ、トレイユニット(10)が第2照射ゾーン(32)から第3照射ゾーン(33)へと搬送される。トレイユニット(10)が第3照射ゾーン(33)へ到達すると、区画用扉(24)が閉じられ、マイクロ波照射部(40,45,50,55)によるマイクロ波の照射が再開される。
第3照射ゾーン(33)内のトレイユニット(10)に対しては、第3マイクロ波照射部(50)がマイクロ波を照射する。第3マイクロ波照射部(50)のマイクロ波発振器(51)で発生したマイクロ波は、導波管(52)を通り、照射口(53)からトレイユニット(10)の各搬送用トレイ(14)に対して照射される。つまり、第3照射ゾーン(33)では、トレイユニット(10)の各搬送用トレイ(14)に対して前方からマイクロ波が照射される。第3照射ゾーン(33)では、各搬送用トレイ(14)上のPTFE粉末に含まれていた水分がマイクロ波により加熱されて蒸発し、蒸発した水分が排気ダクト(37)へと吸い出されてゆく。
前段ユニット(20)では、マイクロ波の照射を再開してから15分間が経過すると、マイクロ波照射部(40,45,50,55)によるマイクロ波の照射が一旦停止される。また、前段ユニット(20)では、区画用扉(24)が開かれ、トレイユニット(10)が第3照射ゾーン(33)から第4照射ゾーン(34)へと搬送される。トレイユニット(10)が第4照射ゾーン(34)へ到達すると、区画用扉(24)が閉じられ、マイクロ波照射部(40,45,50,55)によるマイクロ波の照射が再開される。
第4照射ゾーン(34)内のトレイユニット(10)に対しては、第4マイクロ波照射部(55)がマイクロ波を照射する。第4マイクロ波照射部(55)のマイクロ波発振器(56)で発生したマイクロ波は、導波管(57)を通り、照射口(58)からトレイユニット(10)の各搬送用トレイ(14)に対して照射される。つまり、第4照射ゾーン(34)では、トレイユニット(10)の各搬送用トレイ(14)に対して右側方からマイクロ波が照射される。第4照射ゾーン(34)では、各搬送用トレイ(14)上のPTFE粉末に含まれていた水分がマイクロ波により加熱されて蒸発し、蒸発した水分が排気ダクト(37)へと吸い出されてゆく。
前段ユニット(20)では、マイクロ波の照射を再開してから15分間が経過すると、マイクロ波照射部(40,45,50,55)によるマイクロ波の照射が一旦停止される。また、前段ユニット(20)では、搬出用扉(23)が開かれ、トレイユニット(10)が第4照射ゾーン(34)から搬出される。第4照射ゾーン(34)から搬出されるトレイユニット(10)において、各搬送用トレイ(14)に載ったPTFE粉末の含水率は、約5%程度となっている。
このように、前段ユニット(20)において、第1照射ゾーン(31)では搬送用トレイ(14)に対して左側方からマイクロ波が照射され、第2照射ゾーン(32)では搬送用トレイ(14)に対して後方からマイクロ波が照射され、第3照射ゾーン(33)では搬送用トレイ(14)に対して前方からマイクロ波が照射され、第4照射ゾーン(34)では搬送用トレイ(14)に対して右側方からマイクロ波が照射される。つまり、前段ユニット(20)では、トレイユニット(10)が第1照射ゾーン(31)から第4照射ゾーン(34)へと順次移動するのにつれて、搬送用トレイ(14)に対するマイクロ波の照射方向が90°ずつ変化する。
前段ユニット(20)の第4照射ゾーン(34)から搬出されたトレイユニット(10)は、後段ユニット(60)の第1乾燥ゾーン(71)へ搬入されてローラーコンベア(65)の上に載せられる。後段ユニット(60)では、その第1乾燥ゾーン(71)へトレイユニット(10)が15分毎に搬入される一方、その第2熱処理ゾーン(82)からトレイユニット(10)が15分毎に搬出されてゆく。第1乾燥ゾーン(71)へトレイユニット(10)を搬入する際には、搬入用扉(62)が開かれる第2熱処理ゾーン(82)からトレイユニット(10)を搬出する際には、搬出用扉(63)が開かれる。
更に、後段ユニット(60)において、その第1,第2,第3乾燥ゾーン(73)(71,72,73)に収容されたトレイユニット(10)は、それぞれ15分毎に左隣の第2,第3,第4乾燥ゾーン(72,73,74)へ搬送される。また、後段ユニット(60)では、第4乾燥ゾーン(74)に収容されたトレイユニット(10)が15分毎に第1熱処理ゾーン(81)へ搬送されると共に、第1熱処理ゾーン(81)に収容されたトレイユニット(10)が15分毎に第2熱処理ゾーン(82)へ搬送される。
後段ユニット(60)では、100℃〜250℃程度(望ましくは130℃〜200℃程度)の所定温度にまで加熱された空気が給気ダクト(76)から各乾燥ゾーン(71〜74)へ吹き出される。各乾燥ゾーン(71〜74)では、給気ダクト(76)から供給された空気によって搬送用トレイ(14)上のPTFE粉末が加熱され、このPTFE粉末に含まれる水分が蒸発してゆく。蒸発した水分(水蒸気)を含んだ各乾燥ゾーン(71〜74)内の空気は、排気ダクト(77)へ吸い込まれる。排気ダクト(77)へ吸い込まれた空気は、その一部(例えば全体の2%程度)が屋外へ排出され、残りが外気と混合された後に給気ダクト(76)を通じて各乾燥ゾーン(71〜74)へ送り返される。なお、排気ダクト(77)へ吸い込まれて屋外へ排出される空気は、有害物質の除去等の適切な処理が施された後に屋外へ放出される。
後段ユニット(60)において、搬送用トレイ(14)上のPTFE粉末は、トレイユニット(10)が第1乾燥ゾーン(71)から第4乾燥ゾーン(74)にまで移動してゆく間(つまり、約60分間)に亘って、上記所定温度の熱風に晒され続ける。そして、トレイユニット(10)が第4乾燥ゾーン(74)から第1熱処理ゾーン(81)へ移動してゆく時点では、搬送用トレイ(14)上のPTFE粉末の含水率が0.01%以下程度の極めて低い値となる。
また、後段ユニット(60)では、100℃〜250℃程度(望ましくは130℃〜200℃程度)の所定温度にまで加熱された空気が給気ダクト(86)から各熱処理ゾーン(81,82)へ吹き出される一方、各熱処理ゾーン(81,82)内の空気が排気ダクト(87)へ吸い込まれる。排気ダクト(87)へ吸い込まれた空気は、その全部が再び上記所定温度にまで加熱された後に給気ダクト(86)を通じて各熱処理ゾーン(81,82)へ送り返される。このため、各熱処理ゾーン(81,82)内の気温が給気ダクト(86)から吹き出される熱風の温度と同程度に保たれ、各熱処理ゾーン(81,82)に収容された搬送用トレイ(14)上のPTFE粉末もそれと同程度の高温に保たれる。後段ユニット(60)において、搬送用トレイ(14)上のPTFE粉末は、トレイユニット(10)が第1熱処理ゾーン(81)から第2熱処理ゾーン(82)にまで移動してゆく間(つまり、約30分間)に亘って、その温度が100℃以上の高温に保たれる。
ここで、含水率がほぼ0%となったPTFE粉末の温度をある程度の高温に保つと、初めのうちは押出圧(PTFE粉末を押し出し成形する際に必要な圧力)が次第に上昇してゆき、ある程度の時間が経過すると押出圧がそれ以上は上昇せずに概ね一定のままになる。そこで、後段ユニット(60)では、PTFE粉末の押出圧が一定となるまでに要する時間以上に亘って、PTFE粉末の温度を100℃以上の高温に保つようにしている。この熱処理工程を行うことで、最終製品としてのPTFE粉末の押出圧が所定の目標範囲内の値となる。
このように、本実施形態の製造装置(1)へ投入された搬送トレイ上の濡れた状態のPTFE粉末は、前段ユニット(20)の照射ゾーン(31〜34)で行われるマイクロ波を利用した乾燥工程と、後段ユニット(60)の乾燥ゾーン(71〜74)で行われる熱風を利用した乾燥工程と、後段ユニット(60)の熱処理ゾーン(81,82)で行われる熱風を利用した熱処理工程とを順に経て、最終製品としての乾燥したPTFE粉末となる。
−実施形態1の効果−
本実施形態では、4枚の搬送用トレイ(14)が上下に配列されたトレイユニット(10)を構成し、このトレイユニット(10)を製造装置(1)へ投入するようにしている。このため、本実施形態の製造装置(1)では、処理対象となる搬送用トレイ(14)の全てを1つずつ水平方向へ並べる場合に比べると、搬送用トレイ(14)を収容するのに必要な床面積は1/4程度となる。従って、本実施形態によれば、搬送用トレイ(14)を収容する前段ユニット(20)や後段ユニット(60)が占有する床面積を大幅に削減することができ、製造装置(1)の小型化を図ることができる。
ここで、マイクロ波等の電磁波には、例えば金網の網目ような“金属同士の間に形成された電磁波の波長に対して充分に狭い隙間”を通過できないという特性がある。従って、上下に並べられた金属製の搬送用トレイ(14)の間隔が狭いと、隣り合う搬送用トレイ(14)同士の間にマイクロ波が入り込みにくくなり、搬送用トレイ(14)上の対象物をマイクロ波で充分に加熱できなくなる。
それに対し、本実施形態では、各トレイユニット(10)においてトレイラック(11)に載せられた搬送用トレイ(14)同士の間隔Hがλ/2以上に設定される(図5を参照)。更に、本実施形態の前段ユニット(20)では、金属製の本体ケーシング(21)の天井面とトレイユニット(10)における最上段の搬送用トレイ(14)との距離Hもλ/2以上に設定される(図5を参照)。
つまり、本実施形態の前段ユニット(20)では、上下方向における搬送用トレイ(14)同士の間隔Hや搬送用トレイ(14)と本体ケーシング(21)との距離Hが充分に確保されている。このため、上下に配列された金属製搬送用トレイ(14)に対して側方からマイクロ波を照射する場合であっても、マイクロ波は、搬送用トレイ(14)に妨げられることなく搬送用トレイ(14)に載ったPTFE粉末中の水分に到達する。従って、本実施形態によれば、各搬送用トレイ(14)上のPTFE粉末に含まれる水分を確実に加熱することができ、各搬送用トレイ(14)上のPTFEの含水率を確実に低下させることができる。
また、本実施形態の前段ユニット(20)では、本体ケーシング(21)の内壁面と各搬送用トレイ(14)の側板部(16)と距離Lがλ以上に設定されている。つまり、本実施形態では、マイクロ波の照射方向における本体ケーシング(21)と搬送用トレイ(14)の間隔が充分に確保されている。このため、搬送用トレイ(14)に対して側方から照射されたマイクロ波を拡散させて各搬送用トレイ(14)に行き渡らせることができる。従って、この発明によれば、各搬送用トレイ(14)に載ったPTFE粉末中の水分を満遍なく加熱することができ、搬送用トレイ(14)毎のPTFE粉末の含水率を平均化することができる。
ところで、搬送用トレイ(14)の材質をマイクロ波の透過率が比較的高い樹脂等にすれば、搬送用トレイ(14)同士の間隔や搬送用トレイ(14)と本体ケーシング(21)との間隔がそれ程広くなくても、マイクロ波は搬送用トレイ(14)に載ったPTFE粉末中の水分に到達する。しかしながら、一般に樹脂は金属よりも強度が低いため、搬送用トレイ(14)の材質を樹脂にすると、搬送用トレイ(14)の材質を金属にした場合に比べて搬送用トレイ(14)が重くなる。また、樹脂製の搬送用トレイ(14)は取扱中に欠けるおそれがある。そして、搬送用トレイ(14)の破片がPTFE粉末に混入すると、PTFE粉末に異物が混入することとなり、最終製品としてのPTFE粉末の品質低下を招くおそれもある。
それに対し、本実施形態の製造装置(1)では、搬送用トレイ(14)の材質を金属の一種であるステンレスとしている。このため、搬送用トレイ(14)を樹脂製とした場合に比べて搬送用トレイ(14)を軽量化することができ、搬送用トレイ(14)の取扱いを容易にすることができる。また、ステンレス製の搬送用トレイ(14)が取扱中に欠けることは無いため、異物の混入によるPTFE粉末の品質低下も回避することができる。
本実施形態では、前段ユニット(20)に収容された搬送用トレイ(14)に対してマイクロ波が複数の方向から照射される。前段ユニット(20)の各照射ゾーン(31〜34)では、照射されたマイクロ波がPTFE粉末中の水分に次第に吸収されてゆく。このため、各照射ゾーン(31〜34)内では、マイクロ波の出口である照射口(43,48,53,58)から離れるにつれて、到達するマイクロ波のエネルギが減衰してゆく。これに対し、本実施形態の前段ユニット(20)では、搬送用トレイ(14)に対して複数方向からマイクロ波を照射している。従って、本実施形態によれば、各搬送用トレイ(14)に載ったPTFE粉末中の水分を均一に加熱することができ、搬送用トレイ(14)毎のPTFE粉末の含水率を平均化することができる。
また、本実施形態の前段ユニット(20)では、概ね水平に設置された矩形状の搬送用トレイ(14)に対して、前後左右の4方向からマイクロ波を照射している。このため、搬送用トレイ(14)に載ったPTFE粉末中の水分に与えられるマイクロ波のエネルギは、搬送用トレイ(14)の各部において確実に平均化される。従って、本実施形態によれば、搬送用トレイ(14)上の各部におけるPTFE粉末の含水率を平均化することができ、搬送用トレイ(14)に載ったPTFE粉末の全てを確実に乾燥させることができる。
また、本実施形態の前段ユニット(20)では、1つのトレイユニット(10)を構成する搬送用トレイ(14)のそれぞれに対応して照射口(43,48,53,58)を1つずつ設置している。このため、各搬送用トレイ(14)上の対象物に与えられるマイクロ波のエネルギを平均化することができ、各搬送用トレイ(14)上の対象物の含水率を均一化することができる。
−実施形態1の変形例1−
本実施形態の製造装置(1)については、図7に示すように、前段ユニット(20)と後段ユニット(60)を前後に並べて配置してもよい。
本変形例の前段ユニット(20)において、搬出用扉(23)は、本体ケーシング(21)の背面のうち第4照射ゾーン(34)に臨む部分に設けられている。本変形例の後段ユニット(60)において、搬入用扉(62)は、本体ケーシング(61)の前面のうち第1乾燥ゾーン(71)に臨む部分に設けられている。
本変形例の製造装置(1)において、前段ユニット(20)と後段ユニット(60)は、互いの長手方向が平行となる姿勢で、前後方向に所定の間隔をおいて配置されている。また、前段ユニット(20)と後段ユニット(60)は、前段ユニット(20)の搬出用扉(23)と後段ユニット(60)の搬入用扉(62)とが互いに対面する姿勢で設置されている。前段ユニット(20)の第4照射ゾーン(34)から搬出されたトレイユニット(10)は、後方へ向かって搬送され、後段ユニット(60)の第1乾燥ゾーン(71)へ搬入される。
−実施形態1の変形例2−
本実施形態の製造装置(1)において、1つのトレイユニット(10)に設けられる搬送用トレイ(14)の枚数は、4枚に限定されるものではなく、任意に設定可能である。例えば、1つのトレイユニット(10)に6枚の搬送用トレイ(14)を設けることも可能である。その場合、前段ユニット(20)では、各マイクロ波照射部にマイクロ波発振器と導波管が6つずつ設けられることとなる。また、本体ケーシング(21)の内壁面では、各照射ゾーン(31〜34)に収容されたトレイユニット(10)の各搬送用トレイ(14)の直ぐ上側に照射口が1つずつ開口する。
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。本実施形態は、上記実施形態1の製造装置(1)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態の製造装置(1)について、上記実施形態1と異なる点を説明する。なお、以下の説明で用いる「右」「左」「前」「後」「手前」「奥」は、何れも製造装置(1)を正面側から見た場合のものを意味している。
図8に示すように、本実施形態では、1つのトレイユニット(10)に8枚の搬送用トレイ(14)が設けられる。このトレイユニット(10)のトレイラック(11)は、上下方向に所定の間隔で配置された8つの枠部材(12)を備えており、8枚の搬送用トレイ(14)を上下に一定の間隔Hをおいて配列できるように構成されている。
本実施形態の前段ユニット(20)では、本体ケーシング(21)の左右方向の長さが実施形態1の概ね半分となる一方、本体ケーシング(21)の高さが実施形態1の概ね2倍となっている。本体ケーシング(21)の内部空間では、その左右方向の中央部に1つの区画用扉(24)が立設されている。この内部空間は、区画用扉(24)によって2つの空間に仕切られている。本体ケーシングでは、区画用扉(24)の左側の空間が第1照射ゾーン(31)となり、区画用扉(24)の右側の空間が第2照射ゾーン(32)となっている。これら各照射ゾーン(31,32)の広さは、1つのトレイユニット(10)を収納できる程度となっている。
区画用扉(24)は、本体ケーシング(21)の断面形状に対応した矩形状に形成されたステンレス製の平板である。この区画用扉(24)は、上下方向へ移動することによって開閉する。区画用扉(24)が開くと、第1照射ゾーン(31)と第2照射ゾーン(32)が互いに連通する。
本実施形態の前段ユニット(20)においても、本体ケーシング(21)には、搬入用扉(22)と搬出用扉(23)とが設けられている。搬入用扉(22)は、本体ケーシング(21)の前面のうち第1照射ゾーン(31)に臨む部分に設けられている。搬入用扉(22)は、矩形状に形成されたステンレス製の平板であって、上下方向へ移動することによって開閉する。搬入用扉(22)が開くと、第1照射ゾーン(31)が本体ケーシング(21)の外部と連通する。一方、搬出用扉(23)は、本体ケーシング(21)の奥側の側面(即ち、背面)のうち第2照射ゾーン(32)に臨む部分に設けられている。搬出用扉(23)は、矩形状に形成されたステンレス製の平板であって、上下方向へ移動することによって開閉する。搬出用扉(23)が開くと、第2照射ゾーン(32)が本体ケーシング(21)の外部と連通する。
図示しないが、本実施形態の前段ユニット(20)においても、本体ケーシング(21)に給気ダクトと排気ダクトとが接続されている。給気ダクトは、本体ケーシング(21)の奥側の側面(即ち、背面)に接続されている。この給気ダクトは、本体ケーシング(21)の背面のうち第1照射ゾーン(31)に臨む部分と第2照射ゾーン(32)に臨む部分とのそれぞれに対して、所定の本数ずつ接続されている。排気ダクトは、本体ケーシング(21)の前面に接続されている。この排気ダクトは、本体ケーシング(21)の前面のうち第1照射ゾーン(31)に臨む部分と第2照射ゾーン(32)に臨む部分とのそれぞれに対して、所定の本数ずつ接続されている。
本実施形態の前段ユニット(20)には、4つのマイクロ波照射部(40,45,50,55)が設けられている。各マイクロ波照射部(40,45,50,55)は、マイクロ波発振器(41,46,51,56)と導波管(42,47,52,57)とを、1つのトレイユニット(10)に設けられる搬送用トレイ(14)の数の半分ずつ備えている。本実施形態では、1つのトレイユニット(10)に8つの搬送用トレイ(14)が設けられる。従って、本実施形態のマイクロ波照射部(40,45,50,55)には、マイクロ波発振器(41,46,51,56)と導波管(42,47,52,57)とが4つずつ設けられる。
第1マイクロ波照射部(40)は、本体ケーシング(21)の左側面に設けられている。具体的に、本体ケーシング(21)の左側面には、第1マイクロ波照射部(40)を構成する導波管(42)の終端が接続されている。この導波管(42)の終端は、第1照射ゾーン(31)に開口する照射口(43)を構成している。本体ケーシング(21)の内壁面において、この照射口(43)は、トレイユニット(10)における上から1段目と2段目の搬送用トレイ(14)の間、3段目と4段目の搬送用トレイ(14)の間、5段目と6段目の搬送用トレイ(14)の間、及び7段目と8段目の搬送用トレイ(14)の間のそれぞれに1つずつ開口している。
第2マイクロ波照射部(45)は、本体ケーシング(21)の奥側の側面(即ち、背面)に設けられている。具体的に、本体ケーシング(21)の背面には、第2マイクロ波照射部(45)を構成する導波管(47)の終端が接続されている。この導波管(47)の終端は、第1照射ゾーン(31)に開口する照射口(48)を構成している。本体ケーシング(21)の内壁面において、この照射口(48)は、トレイユニット(10)における最上段の搬送用トレイ(14)と本体ケーシング(21)の天井面の間、2段目と3段目の搬送用トレイ(14)の間、4段目と5段目の搬送用トレイ(14)の間、及び6段目と7段目の搬送用トレイ(14)の間のそれぞれに1つずつ開口している。
第3マイクロ波照射部(50)は、本体ケーシング(21)の前面に設けられている。具体的に、本体ケーシング(21)の前面には、第3マイクロ波照射部(50)を構成する導波管(52)の終端が接続されている。この導波管(52)の終端は、第2照射ゾーン(32)に開口する照射口(53)を構成している。本体ケーシング(21)の内壁面において、この照射口(53)は、トレイユニット(10)における最上段の搬送用トレイ(14)と本体ケーシング(21)の天井面の間、2段目と3段目の搬送用トレイ(14)の間、4段目と5段目の搬送用トレイ(14)の間、及び6段目と7段目の搬送用トレイ(14)の間のそれぞれに1つずつ開口している。
第4マイクロ波照射部(55)は、本体ケーシング(21)の右側面に設けられている。具体的に、本体ケーシング(21)の右側面には、第4マイクロ波照射部(55)を構成する導波管(57)の終端が接続されている。この導波管(57)の終端は、第2照射ゾーン(32)に開口する照射口(58)を構成している。本体ケーシング(21)の内壁面において、この照射口(58)は、トレイユニット(10)における上から1段目と2段目の搬送用トレイ(14)の間、3段目と4段目の搬送用トレイ(14)の間、5段目と6段目の搬送用トレイ(14)の間、及び7段目と8段目の搬送用トレイ(14)の間のそれぞれに1つずつ開口している。
本実施形態の前段ユニット(20)においても、各照射ゾーン(31,32)には、シールド用枠部(26)が1つずつ設けられている。上記実施形態1の場合と同様に、シールド用枠部(26)は、トレイユニット(10)における最下段の搬送用トレイ(14)を囲むように設けられており、その内周面が最下段の搬送用トレイ(14)の側板部(16)と対面している。
本実施形態の前段ユニット(20)では、トレイユニット(10)において上下に配列された搬送用トレイ(14)同士の間隔Hと、トレイユニット(10)における最上段の搬送用トレイ(14)と本体ケーシング(21)の天井面との間隔Hとの何れもが、λ/2以上の値に設定されている。また、この前段ユニット(20)において、本体ケーシング(21)の内壁面や区画用扉(24)と各搬送用トレイ(14)の側板部(16)との距離Lは、λ以上の値に設定されている。また、この前段ユニット(20)において、トレイユニット(10)における最下段の搬送用トレイ(14)の側板部(16)とシールド用枠部(26)の内周面との間隔Dは、両者の隙間をマイクロ波が通過できない程度の値に設定されている。
図示しないが、本実施形態の後段ユニット(60)では、本体ケーシング(61)の高さが上記実施形態1の場合の約2倍となっている。この本体ケーシング(61)は、8枚の搬送用トレイ(14)を備える本実施形態のトレイユニット(10)を収容できるように構成されている。なお、上記実施形態1の場合と同様に、本実施形態の後段ユニット(60)においても、本体ケーシング(61)内では、4つの乾燥ゾーン(71〜74)と2つの熱処理ゾーン(81,82)とが1列に並んで形成されている。
−運転動作−
本実施形態の前段ユニット(20)の動作について説明する。本実施形態の後段ユニット(60)の動作は、上記実施形態1の場合と同様である。
前段ユニット(20)では、その第1照射ゾーン(31)へトレイユニット(10)が30分毎に搬入される一方、その第2照射ゾーン(32)からトレイユニット(10)が30分毎に搬出されてゆく。また、前段ユニット(20)では、その第1照射ゾーン(31)に収容されたトレイユニット(10)が、30分毎に右隣の第2照射ゾーン(32)へ搬送される。
前段ユニット(20)の各照射ゾーン(31,32)では、そこに収容されたトレイユニット(10)に対して、対応するマイクロ波照射部(40,45,50,55)がマイクロ波を照射する。各照射ゾーン(31,32)において、マイクロ波照射部(40,45,50,55)から照射されたマイクロ波は、各搬送用トレイ(14)上の濡れた状態のPTFE粉末に到達し、そのPTFE粉末に含まれる水分に吸収される。マイクロ波を吸収した水分は、発熱して蒸発してゆく。
また、前段ユニット(20)では、60℃〜100℃程度にまで加熱された外気が給気ダクトから各照射ゾーン(31,32)へ吹き出される一方、蒸発した水分(水蒸気)を含んだ各照射ゾーン(31,32)内の空気が排気ダクトへ吸い込まれる。排気ダクトへ吸い込まれた空気は、その全部が屋外へ排出される。なお、排気ダクトへ吸い込まれた空気は、有害物質の除去等の適切な処理が施された後に屋外へ放出される。
前段ユニット(20)の運転動作を、1つのトレイユニット(10)に着目して説明する。
トレイユニット(10)は、前段ユニット(20)に搬入される。その際、前段ユニット(20)では、搬入用扉(22)が開かれ、第1照射ゾーン(31)へトレイユニット(10)が搬入される。第1照射ゾーン(31)へ搬入されたトレイユニット(10)は、ローラーコンベア(25)の上に載せられる。その後、前段ユニット(20)では、搬入用扉(22)と搬出用扉(23)と区画用扉(24)の全てが閉じられ、各マイクロ波照射部(40,45,50,55)によるマイクロ波の照射が開始される。
第1照射ゾーン(31)内のトレイユニット(10)に対しては、第1マイクロ波照射部(40)及び第2マイクロ波照射部(45)がマイクロ波を照射する。第1照射ゾーン(31)では、マイクロ波を照射された各搬送用トレイ(14)上のPTFE粉末に含まれていた水分が蒸発し、蒸発した水分が排気ダクトへと吸い出されてゆく。
具体的に、第1マイクロ波照射部(40)のマイクロ波発振器(41)で発生したマイクロ波は、導波管(42)を通り、照射口(43)からトレイユニット(10)の各搬送用トレイ(14)に対して照射される。この第1マイクロ波照射部(40)は、主にトレイユニット(10)における上から2段目、4段目、6段目、8段目の各搬送用トレイ(14)に対して、それぞれの左側方からマイクロ波を照射する。
一方、第2マイクロ波照射部(45)のマイクロ波発振器(46)で発生したマイクロ波は、導波管(47)を通り、照射口(48)からトレイユニット(10)の各搬送用トレイ(14)に対して照射される。この第2マイクロ波照射部(45)は、主にトレイユニット(10)における上から1段目、3段目、5段目、7段目の各搬送用トレイ(14)に対して、それぞれの後方からマイクロ波を照射する。
前段ユニット(20)では、マイクロ波の照射時間が30分間に達すると、マイクロ波照射部(40,45,50,55)によるマイクロ波の照射が一旦停止される。また、前段ユニット(20)では、区画用扉(24)が開かれ、トレイユニット(10)が第1照射ゾーン(31)から第2照射ゾーン(32)へと搬送される。トレイユニット(10)が第2照射ゾーン(32)へ到達すると、区画用扉(24)が閉じられ、マイクロ波照射部(40,45,50,55)によるマイクロ波の照射が再開される。
第2照射ゾーン(32)内のトレイユニット(10)に対しては、第3マイクロ波照射部(50)及び第4マイクロ波照射部(55)がマイクロ波を照射する。第2照射ゾーン(32)では、マイクロ波を照射された各搬送用トレイ(14)上のPTFE粉末に含まれていた水分が蒸発し、蒸発した水分が排気ダクトへと吸い出されてゆく。
具体的に、第3マイクロ波照射部(50)のマイクロ波発振器(51)で発生したマイクロ波は、導波管(52)を通り、照射口(53)からトレイユニット(10)の各搬送用トレイ(14)に対して照射される。この第3マイクロ波照射部(50)は、主にトレイユニット(10)における上から1段目、3段目、5段目、7段目の各搬送用トレイ(14)に対して、それぞれの前方からマイクロ波を照射する。
一方、第4マイクロ波照射部(55)のマイクロ波発振器(56)で発生したマイクロ波は、導波管(57)を通り、照射口(58)からトレイユニット(10)の各搬送用トレイ(14)に対して照射される。この第4マイクロ波照射部(55)は、主にトレイユニット(10)における上から2段目、4段目、6段目、8段目の各搬送用トレイ(14)に対して、それぞれの右側方からマイクロ波を照射する。
前段ユニット(20)では、マイクロ波の照射を再開してから30分間が経過すると、マイクロ波照射部(40,45,50,55)によるマイクロ波の照射が一旦停止される。また、前段ユニット(20)では、搬出用扉(23)が開かれ、トレイユニット(10)が第2照射ゾーン(32)から搬出される。
このように、トレイユニット(10)における上から1段目、3段目、5段目、7段目の各搬送用トレイ(14)に対しては、第1照射ゾーン(31)では主に後方からマイクロ波が照射され、第2照射ゾーン(32)では主に前方からマイクロ波が照射される。また、トレイユニット(10)における上から2段目、4段目、6段目、8段目の各搬送用トレイ(14)に対しては、第1照射ゾーン(31)では主に左側方からマイクロ波が照射され、第2照射ゾーン(32)では主に右側方からマイクロ波が照射される。つまり、本実施形態の前段ユニット(20)では、トレイユニット(10)が第1照射ゾーン(31)から第2照射ゾーン(32)へと移動するのにつれて、搬送用トレイ(14)に対するマイクロ波の照射方向が180°変化する。
−実施形態2の効果−
本実施形態によれば、上記実施形態1と同様の効果が得られる。また、本実施形態によれば、次のような効果も得られる。この効果について説明する。
ここで、仮に1つの照射ゾーンにおいて2つの照射口が互いに向かい合って開口していたとすると、一方の照射口から照射されたマイクロ波が向かい側の照射口へ侵入し、その照射口に接続するマイクロ波発振器の破損を招くおそれがある。
これに対し、本実施形態の前段ユニット(20)において、1つの照射ゾーン(31,32)に開口する照射口(43,48,53,58)は、互いの位置が水平方向に90°ずれており、更には上下方向にもずれている。このため、1つの照射ゾーン(31,32)にマイクロ波を照射する2つのマイクロ波照射部(40,45,50,55)について、一方のマイクロ波照射部(40,50)から照射されたマイクロ波によって他方のマイクロ波照射部(45,55)が損傷するといった事態は回避される。従って、本実施形態によれば、1つの照射ゾーン(31,32)に対して2つのマイクロ波照射部(40,45,50,55)からマイクロ波を照射する場合において、前段ユニット(20)の信頼性を確保することができる。
《発明の実施形態3》
本発明の実施形態3について説明する。ここでは、本実施形態の製造装置(1)について、上記実施形態1と異なる点を説明する。なお、以下の説明で用いる「右」「左」「前」「後」「手前」「奥」は、何れも製造装置(1)を正面側から見た場合のものを意味している。
図9に示すように、本実施形態の製造装置(1)は、4つの前段ユニット(20)と1つの後段ユニット(60)とを備えている。4つの前段ユニット(20)は、上下に積み重ねられている。
図10に示すように、各前段ユニット(20)の本体ケーシング(21)は、中空の直方体状に形成されている。本体ケーシング(21)の内部空間は、照射ゾーン(30)を構成している。
本体ケーシング(21)は、4枚の搬送用トレイ(14)を上下に一定の間隔Hをおいて配列した状態で収容できる程度の大きさとなっている。本体ケーシング(21)に4枚の搬送用トレイ(14)を収容した状態で、最上段に設けられた搬送用トレイ(14)の側板部(16)の上端と本体ケーシング(21)の天井面との間隔は、上下に配列された搬送用トレイ(14)同士の間隔Hと同じ値に設定される。また、搬送用トレイ(14)の各側板部(16)と、それに対向する本体ケーシング(21)の内壁面との距離は、搬送用トレイ(14)の全周に亘って長さLに設定されている。なお、本実施形態においても、本体ケーシング(21)の材質と搬送用トレイ(14)の材質は、何れもステンレスである。
図示しないが、前段ユニット(20)には、照射ゾーン(30)内で搬送用トレイ(14)を搬送するためのトレイ駆動部が設けられている。このトレイ駆動部は、搬送用トレイ(14)を載せるために水平方向へ延びるアーム部材を備えている。トレイ駆動部では、複数のアーム部材が等間隔で配列されている。アーム部材の間隔は、各アーム部材に載せられた搬送用トレイ(14)同士の間隔が所定の値Hとなるように設定されている。トレイ駆動部は、搬送用トレイ(14)を載せたアーム部材を移動させることによって、搬送用トレイ(14)を照射ゾーン(30)の上部から下部へと搬送する。
各前段ユニット(20)には、4つのマイクロ波照射部(40,45,50,55)が設けられている。各マイクロ波照射部(40,45,50,55)は、1つのマイクロ波発振器(41,46,51,56)によって構成されている。本実施形態においても、各マイクロ波発振器(41,46,51,56)は、周波数が2.45GHzのマイクロ波を発生させるように構成されており、その出力が1.0kW程度となっている。
第1マイクロ波照射部(40)を構成するマイクロ波発振器(41)は、本体ケーシング(21)の奥側の側面(即ち、背面)に取り付けられている。本体ケーシング(21)の背面では、最上段の搬送用トレイ(14)と本体ケーシング(21)の天井面との間に照射口(43)が開口している。このマイクロ波発振器(41)は、この照射口(43)を介して照射ゾーン(30)に連通している。
第2マイクロ波照射部(45)を構成するマイクロ波発振器(46)は、本体ケーシング(21)の右側面に取り付けられている。本体ケーシング(21)の右側面では、最上段の搬送用トレイ(14)と上から2段目の搬送用トレイ(14)との間に照射口(48)が開口している。このマイクロ波発振器(46)は、この照射口(48)を介して照射ゾーン(30)に連通している。
第3マイクロ波照射部(50)を構成するマイクロ波発振器(51)は、本体ケーシング(21)の前面に取り付けられている。本体ケーシング(21)の前面では、上から2段目の搬送用トレイ(14)と3段目の搬送用トレイ(14)との間に照射口(53)が開口している。このマイクロ波発振器(51)は、この照射口(53)を介して照射ゾーン(30)に連通している。
第4マイクロ波照射部(55)を構成するマイクロ波発振器(56)は、本体ケーシング(21)の左側面に取り付けられている。本体ケーシング(21)の左側面では、上から3段目の搬送用トレイ(14)と4段目の搬送用トレイ(14)との間に照射口(58)が開口している。このマイクロ波発振器(56)は、この照射口(58)を介して照射ゾーン(30)に連通している。
図示しないが、本実施形態の前段ユニット(20)においても、本体ケーシング(21)に給気ダクトと排気ダクトとが接続されている。給気ダクトは、本体ケーシング(21)の奥側の側面(即ち、背面)に接続されている。排気ダクトは、本体ケーシング(21)の前面に接続されている。本体ケーシング(21)内の照射ゾーン(30)には、60℃〜100℃程度にまで加熱された外気が給気ダクトから供給される。照射ゾーン(30)から排気ダクトへ吸い込まれた空気は、その全部が屋外へ排出される。なお、排気ダクトへ吸い込まれた空気は、有害物質の除去等の適切な処理が施された後に屋外へ放出される。
本実施形態の前段ユニット(20)では、照射ゾーン(30)内で上下に配列された搬送用トレイ(14)同士の間隔Hと、最上段の搬送用トレイ(14)と本体ケーシング(21)の天井面との間隔Hとの何れもが、λ/2以上の値に設定されている。また、この前段ユニット(20)において、本体ケーシング(21)の内壁面と各搬送用トレイ(14)の側板部(16)との距離Lは、λ以上の値に設定されている。なお、本実施形態の前段ユニット(20)では、シールド用枠部(26)が省略されている。
本実施形態の後段ユニット(60)において、本体ケーシング(61)は、縦長で中空の直方体状に形成されている。この本体ケーシング(61)では、その左右方向の幅がその前後方向の奥行きの概ね2倍となっている。本体ケーシング(61)の内部では、その左右方向の中央部に隔壁(66)が立設されている。本体ケーシング(61)の内部空間は、この隔壁(66)によって左側の上昇側空間(67)と右側の下降側空間(68)とに仕切られている。隔壁(66)の高さは、本体ケーシングの内部空間の高さよりも幾分低くなっている。このため、上昇側空間(67)と下降側空間(68)は、それぞれの上端部分が互いに連通している。
後段ユニット(60)の本体ケーシング(61)では、上昇側空間(67)と下降側空間(68)のそれぞれにおいて、複数の搬送用トレイ(14)が互いに所定の間隔をおいて上下に配列されている。図示しないが、後段ユニット(60)には、本体ケーシング(61)内で搬送用トレイ(14)を搬送するトレイ駆動部が設けられている。このトレイ駆動部は、搬送用トレイ(14)を載せるために水平方向へ延びるアーム部材を備えている。トレイ駆動部では、多数のアーム部材が等間隔で配列されている。トレイ駆動部は、搬送用トレイ(14)を載せたアーム部材を移動させることによって搬送用トレイ(14)を搬送する。具体的に、トレイ駆動部は、上昇側空間(67)へ送り込まれた搬送用トレイ(14)を上方へ移動させ、上昇側空間(67)の上端に達した搬送用トレイ(14)を下降側空間(68)へ移動させ、下降側空間(68)へ送り込まれた搬送用トレイ(14)を下方へ移動させる。
後段ユニット(60)の本体ケーシング(61)の内部空間には、乾燥ゾーン(70)と熱処理ゾーン(80)とが形成されている。具体的に、本体ケーシング(61)の内部空間では、上昇側空間(67)の全部と下降側空間(68)の上端から所定の距離だけ下方の位置に至るまでの部分とが乾燥ゾーン(70)を構成し、下降側空間(68)のうちの残りの部分が熱処理ゾーン(80)を構成している。ただし、乾燥ゾーン(70)と熱処理ゾーン(80)は仮想的なものであり、両者が仕切板等によって物理的に区画されている訳ではない。
図示しないが、後段ユニット(60)の本体ケーシング(61)には、乾燥ゾーン(70)に連通する給気ダクト及び排気ダクトと、熱処理ゾーン(80)に連通する給気ダクト及び排気ダクトとが接続されている。乾燥ゾーン(70)には、給気ダクトから100℃〜250℃程度(望ましくは130℃〜200℃程度)の所定温度の空気が供給される。乾燥ゾーン(70)から排気ダクトへ吸い込まれた空気は、その一部が屋外へ排出される。なお、この屋外へ排出される空気は、有害物質の除去等の適切な処理が施された後に屋外へ放出される。
排気ダクトへ吸い込まれた空気の残りは、外気と混ぜ合わされてから上記所定温度にまで再加熱され、その後に給気ダクトを通じて乾燥ゾーン(70)へ送り返される。熱処理ゾーン(80)には、給気ダクトから100℃〜250℃程度(望ましくは130℃〜200℃程度)の所定温度の空気が供給される。熱処理ゾーン(80)から排気ダクトへ吸い込まれた空気は、その全部が上記所定温度にまで再加熱されてから給気ダクトを通じて熱処理ゾーン(80)へ送り返される。
−運転動作−
本実施形態の製造装置(1)の運転動作について説明する。
各前段ユニット(20)では、濡れた状態のPTFE粉末を載せた搬送用トレイ(14)が、15分毎に照射ゾーン(30)の上端部へ1枚ずつ搬入される。照射ゾーン(30)内では、搬送用トレイ(14)が15分毎に1段ずつ下方へ移動してゆく。また、各前段ユニット(20)では、搬送用トレイ(14)が15分毎に照射ゾーン(30)の下端部から1枚ずつ搬出されてゆく。
前段ユニット(20)では、本体ケーシング(21)内の照射ゾーン(30)に収容された搬送用トレイ(14)に対し、各マイクロ波照射部(40,45,50,55)がマイクロ波を照射する。照射ゾーン(30)では、各搬送用トレイ(14)に載ったPTFE粉末中の水分がマイクロ波を吸収し、この水分が発熱して蒸発してゆく。搬送用トレイ(14)上のPTFE粉末から蒸発した水分は、照射ゾーン(30)内の空気と共に排気ダクトを通って屋外へ排出される。
前段ユニット(20)の運転動作を、1枚の搬送用トレイ(14)に着目して説明する。
水に濡れた状態のPTFE粉末を載せた搬送用トレイ(14)は、照射ゾーン(30)の最上段へ搬入される。この最上段に位置する搬送用トレイ(14)に対しては、主に第1マイクロ波照射部(40)で発生したマイクロ波がその後方から照射される。搬送用トレイ(14)が照射ゾーン(30)へ搬入されてから15分間が経過すると、搬送用トレイ(14)は1段分だけ下方へ移動する。
この上から2段目に位置する搬送用トレイ(14)に対しては、主に第2マイクロ波照射部(45)で発生したマイクロ波がその右側方から照射される。搬送用トレイ(14)が2段目へ移動してから15分間が経過すると、搬送用トレイ(14)は更に1段分だけ下方へ移動する。
この上から3段目に位置する搬送用トレイ(14)に対しては、主に第3マイクロ波照射部(50)で発生したマイクロ波がその前方から照射される。搬送用トレイ(14)が3段目へ移動してから15分間が経過すると、搬送用トレイ(14)は更に1段分だけ下方へ移動する。
この最下段に位置する搬送用トレイ(14)に対しては、主に第4マイクロ波照射部(55)で発生したマイクロ波がその左側方から照射される。搬送用トレイ(14)が最下段へ移動してから15分間が経過すると、搬送用トレイ(14)は前段ユニット(20)の本体ケーシング(21)から搬出されてゆく。各前段ユニット(20)から搬出された搬送用トレイ(14)は、後段ユニット(60)へ搬入される。
このように、前段ユニット(20)では、1段ずつ下降してゆく搬送用トレイ(14)に対し、最上段に位置する状態では後方からマイクロ波が照射され、上から2段目に位置する状態では右側方からマイクロ波が照射され、上から3段目に位置する状態では前方からマイクロ波が照射され、最下段に位置する状態では左側方からマイクロ波が照射される。つまり、前段ユニット(20)では、トレイユニット(10)が1段ずつ下方へ移動するのにつれて、搬送用トレイ(14)に対するマイクロ波の照射方向が90°ずつ変化する。
本実施形態の製造装置(1)では、各前段ユニット(20)に対して搬送用トレイ(14)を投入するタイミングが3分45秒ずつずれており、その結果、各前段ユニット(20)から搬送用トレイ(14)が搬出されるタイミングも3分45秒ずつずれている。そして、後段ユニット(60)には、各前段ユニット(20)から搬出された搬送用トレイ(14)が、3分45秒間隔で1枚ずつ搬入される。
後段ユニット(60)の本体ケーシング(61)では、上昇側空間(67)の下端部へ搬送用トレイ(14)が搬入される。上昇側空間(67)の下端部(即ち、乾燥ゾーン(70)の始端)へ搬入された搬送用トレイ(14)は、乾燥ゾーン(70)内を1段ずつ上方へ移動してゆく。上昇側空間(67)の最上段に達した搬送用トレイ(14)は、下降側空間(68)へと移送され、下降側空間(68)内を1段ずつ下方へ移動してゆく。搬送用トレイ(14)は、下降側空間(68)内を所定の段数だけ移動し、乾燥ゾーン(70)の終端に達する。搬送用トレイ(14)は、乾燥ゾーン(70)の始端から終端に至るまでの間に亘って、100℃以上の高温の熱風に晒され続ける。搬送用トレイ(14)において、その上に載ったPTFE粉末中の水分は、熱風によって加熱されて蒸発してゆく。
乾燥ゾーン(70)の終端に達した搬送用トレイ(14)は、更に1段だけ降下して熱処理ゾーン(80)の始端に達する。熱処理ゾーン(80)へ搬入された搬送用トレイ(14)は、1段ずつ下方へ移動し、やがて下降側空間(68)の下端部(即ち、熱処理ゾーン(80)の終端)に達する。搬送用トレイ(14)は、熱処理ゾーン(80)の始端から終端に至るまでの間に亘って、100℃以上の高温の熱風に晒され続ける。このため、搬送用トレイ(14)に載ったPTFE粉末は、その温度が熱風の温度と同程度に保たれる。下降側空間(68)の下端部に至った搬送用トレイ(14)は、後段ユニット(60)の本体ケーシング(61)から搬出される。
《発明の実施形態4》
本発明の実施形態4について説明する。本実施形態の製造装置(1)は、上記実施形態3の製造装置(1)において、前段ユニット(20)の構成を変更したものである。後段ユニット(60)の構成は、上記実施形態3と同様である。
図11に示すように、本実施形態の製造装置(1)は、前段ユニット(20)と後段ユニット(60)を1つずつ備えている。ここでは、本実施形態の製造装置(1)について、上記実施形態3と異なる点を説明する。なお、以下の説明で用いる「右」「左」「前」「後」「手前」「奥」は、何れも製造装置(1)を正面側から見た場合のものを意味している。
本実施形態において、前段ユニット(20)の本体ケーシング(21)は、中空の四角柱状に形成されており、その長手方向が概ね鉛直方向となる姿勢で設置されている。本体ケーシング(21)は、16枚の搬送用トレイ(14)を上下に一定の間隔Hをおいて配列した状態で収容できる程度の大きさとなっている。本体ケーシング(21)に16枚の搬送用トレイ(14)を収容した状態で、最上段に設けられた搬送用トレイ(14)の側板部(16)の上端と本体ケーシング(21)の天井面との間隔は、上下に配列された搬送用トレイ(14)同士の間隔Hと同じ値に設定される。また、搬送用トレイ(14)の各側板部(16)と、それに対向する本体ケーシング(21)の内壁面との距離は、搬送用トレイ(14)の全周に亘って長さLに設定されている。なお、本実施形態においても、本体ケーシング(21)の材質と搬送用トレイ(14)の材質は、何れもステンレスである。
図示しないが、前段ユニット(20)には、照射ゾーン(30)内で搬送用トレイ(14)を搬送するためのトレイ駆動部が設けられている。このトレイ駆動部は、上記実施形態3のものと同様に構成されている。つまり、トレイ駆動部は、搬送用トレイ(14)を載せたアーム部材を移動させることによって、本体ケーシング(21)の内部空間の上部から下部へと搬送用トレイ(14)を搬送する。
前段ユニット(20)の本体ケーシング(21)には、3つのシールド用枠部(26)が設けられている。各シールド用枠部(26)は、本体ケーシング(21)の内壁面に沿って形成され、搬送用トレイ(14)の周囲を囲っている。本体ケーシング(21)において、このシールド用枠部(26)は、上から4段目の搬送用トレイ(14)の周囲を囲む位置と、上から8段目の搬送用トレイ(14)の周囲を囲む位置と、上から12段目の搬送用トレイ(14)の周囲を囲む位置のそれぞれに、1つずつ配置されている。各シールド用枠部(26)は、その断面形状が長方形状になっており、その内周面が対応する搬送用トレイ(14)の側板部(16)と対面している。各シールド用枠部(26)の高さは、搬送用トレイ(14)の高さと同じか、それよりもやや高くなっている。各シールド用枠部(26)の材質は金属である。
本体ケーシング(21)の内部空間では、本体ケーシング(21)の上端から最上段のシールド用枠部(26)までの領域が第1照射ゾーン(31)を構成し、最上段のシールド用枠部(26)から2段目のシールド用枠部(26)までの領域が第2照射ゾーン(32)を構成し、2段目のシールド用枠部(26)から3段目のシールド用枠部(26)までの領域が第3照射ゾーン(33)を構成し、3段目のシールド用枠部(26)から本体ケーシング(21)の下端までの領域が第4照射ゾーン(34)を構成している。各照射ゾーン(31〜34)には、搬送用トレイ(14)が4枚ずつ収容される。
前段ユニット(20)には、4つのマイクロ波照射部(40,45,50,55)が設けられている。各マイクロ波照射部(40,45,50,55)は、4つのマイクロ波発振器(41,46,51,56)によって構成されている。本実施形態においても、各マイクロ波発振器(41,46,51,56)は、周波数が2.45GHzのマイクロ波を発生させるように構成されており、その出力が1.0kW程度となっている。
第1マイクロ波照射部(40)を構成するマイクロ波発振器(41)は、本体ケーシング(21)の奥側の側面(即ち、背面)に設けられている。本体ケーシング(21)の背面では、第1照射ゾーン(31)に臨む部分に4つの照射口(43)が開口している。これらの照射口(43)は、上下方向に1列に並んで形成されており、第1照射ゾーン(31)に収容された各搬送用トレイ(14)の直ぐ上側に1つずつ配置されている。このマイクロ波発振器(41)は、この照射口(43)に1つずつ取り付けられている。
第2マイクロ波照射部(45)を構成するマイクロ波発振器(46)は、本体ケーシング(21)の右側面に設けられている。本体ケーシング(21)の右側面では、第2照射ゾーン(32)に臨む部分に4つの照射口(48)が開口している。これらの照射口(48)は、上下方向に1列に並んで形成されており、第2照射ゾーン(32)に収容された各搬送用トレイ(14)の直ぐ上側に1つずつ配置されている。このマイクロ波発振器(46)は、この照射口(48)に1つずつ取り付けられている。
第3マイクロ波照射部(50)を構成するマイクロ波発振器(51)は、本体ケーシング(21)の前面に設けられている。本体ケーシング(21)の前面では、第3照射ゾーン(33)に臨む部分に4つの照射口(53)が開口している。これらの照射口(53)は、上下方向に1列に並んで形成されており、第3照射ゾーン(33)に収容された各搬送用トレイ(14)の直ぐ上側に1つずつ配置されている。このマイクロ波発振器(51)は、この照射口(53)に1つずつ取り付けられている。
第4マイクロ波照射部(55)を構成するマイクロ波発振器(56)は、本体ケーシング(21)の左側面に設けられている。本体ケーシング(21)の左側面では、第4照射ゾーン(34)に臨む部分に4つの照射口(58)が開口している。これらの照射口(58)は、上下方向に1列に並んで形成されており、第4照射ゾーン(34)に収容された各搬送用トレイ(14)の直ぐ上側に1つずつ配置されている。このマイクロ波発振器(56)は、この照射口(58)に1つずつ取り付けられている。
図示しないが、本実施形態の前段ユニット(20)においても、本体ケーシング(21)に給気ダクトと排気ダクトとが接続されている。給気ダクトは、本体ケーシング(21)の奥側の側面(即ち、背面)に接続されている。本体ケーシング(21)の背面において、給気ダクトは、各照射ゾーン(31〜34)に臨む部分のそれぞれに所定の本数ずつ接続されている。排気ダクトは、本体ケーシング(21)の前面に接続されている。本体ケーシング(21)の前面において、排気ダクトは、各照射ゾーン(31〜34)に臨む部分のそれぞれに所定の本数ずつ接続されている。
本体ケーシング(21)内の各照射ゾーン(31〜34)には、60℃〜100℃程度にまで加熱された外気が給気ダクトから供給される。各照射ゾーン(31〜34)から排気ダクトへ吸い込まれた空気は、その全部が屋外へ排出される。なお、排気ダクトへ吸い込まれた空気は、有害物質の除去等の適切な処理が施された後に屋外へ放出される。
本実施形態の前段ユニット(20)では、トレイユニット(10)において上下に配列された搬送用トレイ(14)同士の間隔Hと、トレイユニット(10)における最上段の搬送用トレイ(14)と本体ケーシング(21)の天井面との間隔Hとの何れもが、λ/2以上の値に設定されている。また、この前段ユニット(20)において、本体ケーシング(21)の内壁面と各搬送用トレイ(14)の側板部(16)との距離Lは、λ以上の値に設定されている。また、この前段ユニット(20)において、シールド用枠部(26)の内周面とシールド用枠部(26)に隣接する搬送用トレイ(14)の側板部(16)との間隔Dは、両者の隙間をマイクロ波が通過できない程度の値に設定されている。
−運転動作−
本実施形態の製造装置(1)の運転動作について説明する。なお、後段ユニット(60)の運転動作については、上記実施形態3の場合と同様であるため、その説明を省略する。
各前段ユニット(20)では、濡れた状態のPTFE粉末を載せた搬送用トレイ(14)が、3分45秒毎に第1照射ゾーン(31)の上端部へ1枚ずつ搬入される。前段ユニット(20)の本体ケーシング(21)内では、搬入された搬送用トレイ(14)が3分45秒毎に1段ずつ下方へ移動してゆく。搬送用トレイ(14)は、第1照射ゾーン(31)から第2照射ゾーン(32)と第3照射ゾーン(33)を経て第4照射ゾーン(34)に至る。前段ユニット(20)では、搬送用トレイ(14)が3分45秒毎に第4照射ゾーン(34)の下端部から1枚ずつ搬出されてゆく。
前段ユニット(20)では、本体ケーシング(21)内の搬送用トレイ(14)に対し、各マイクロ波照射部(40,45,50,55)がマイクロ波を照射する。各照射ゾーン(31〜34)では、各搬送用トレイ(14)に載ったPTFE粉末中の水分がマイクロ波を吸収し、この水分が発熱して蒸発してゆく。搬送用トレイ(14)上のPTFE粉末から蒸発した水分は、各照射ゾーン(31〜34)内の空気と共に排気ダクトを通って屋外へ排出される。
前段ユニット(20)の運転動作を、1枚の搬送用トレイ(14)に着目して説明する。
濡れた状態のPTFE粉末を載せた搬送用トレイ(14)は、第1照射ゾーン(31)の最上段へ搬入され、1段ずつ下方へ搬送されてゆく。第1照射ゾーン(31)内の各搬送用トレイ(14)に対しては、第1マイクロ波照射部(40)で発生したマイクロ波が後方から照射される。第1照射ゾーン(31)の下端に達した搬送用トレイ(14)は、第2照射ゾーン(32)に搬入される。
第2照射ゾーン(32)では、搬入された搬送用トレイ(14)が1段ずつ下方へ搬送されてゆく。第2照射ゾーン(32)内の各搬送用トレイ(14)に対しては、第2マイクロ波照射部(45)で発生したマイクロ波が右側方から照射される。第2照射ゾーン(32)の下端に達した搬送用トレイ(14)は、第3照射ゾーン(33)に搬入される。
第3照射ゾーン(33)では、搬入された搬送用トレイ(14)が1段ずつ下方へ搬送されてゆく。第3照射ゾーン(33)内の各搬送用トレイ(14)に対しては、第3マイクロ波照射部(50)で発生したマイクロ波が前方から照射される。第3照射ゾーン(33)の下端に達した搬送用トレイ(14)は、第4照射ゾーン(34)に搬入される。
第4照射ゾーン(34)では、搬入された搬送用トレイ(14)が1段ずつ下方へ搬送されてゆく。第4照射ゾーン(34)内の各搬送用トレイ(14)に対しては、第4マイクロ波照射部(55)で発生したマイクロ波が左側方から照射される。第4照射ゾーン(34)の下端に達した搬送用トレイ(14)は、本体ケーシング(21)から搬出されてゆく。前段ユニット(20)から搬出された搬送トレイは、後段ユニット(60)へ搬入されてゆく。
このように、前段ユニット(20)において、第1照射ゾーン(31)では搬送用トレイ(14)に対して後方からマイクロ波が照射され、第2照射ゾーン(32)では搬送用トレイ(14)に対して右側方からマイクロ波が照射され、第3照射ゾーン(33)では搬送用トレイ(14)に対して前方からマイクロ波が照射され、第4照射ゾーン(34)では搬送用トレイ(14)に対して左側方からマイクロ波が照射される。つまり、前段ユニット(20)では、トレイユニット(10)が第1照射ゾーン(31)から第4照射ゾーン(34)へと順次移動するのにつれて、搬送用トレイ(14)に対するマイクロ波の照射方向が90°ずつ変化する。
−実施形態4の変形例1−
図13に示すように、本実施形態の前段ユニット(20)は、各照射ゾーン(31〜34)に搬送用トレイ(14)を3枚ずつ収容するように構成されていてもよい。
本変形例の前段ユニット(20)では、その本体ケーシング(21)に12枚の搬送用トレイ(14)が収容される。また、前段ユニット(20)に設けられた4つのマイクロ波照射部(40,45,50,55)は、それぞれがマイクロ波照射部(40,45,50)を3つずつ備えることになる。
−実施形態4の変形例2−
図14に示すように、本実施形態の前段ユニット(20)は、本体ケーシング(21)内に2つの照射ゾーン(31,32)を形成するように構成されていてもよい。
本変形例の本体ケーシング(21)では、その上下方向の中央部にシールド用枠部(26)が1つだけ設けられる。本体ケーシング(21)の内部空間は、シールド用枠部(26)の上側の部分が第1照射ゾーン(31)を構成し、シールド用枠部(26)の下側の部分が第2照射ゾーン(32)を構成する。各照射ゾーン(31,32)には、搬送用トレイ(14)が4枚ずつ収容される。
本変形例の前段ユニット(20)には、2つのマイクロ波照射部(40,45)が設けられる。各マイクロ波照射部(40,45)は、4つのマイクロ波発振器(41,46)によって構成されている。
第1マイクロ波照射部(40)を構成するマイクロ波発振器(41)は、本体ケーシング(21)の奥側の側面(即ち、背面)に設けられている。本体ケーシング(21)の背面では、第1照射ゾーン(31)に臨む部分に4つの照射口(43)が開口している。これらの照射口(43)は、上下方向に1列に並んで形成されており、第1照射ゾーン(31)に収容された各搬送用トレイ(14)の直ぐ上側に1つずつ配置されている。このマイクロ波発振器(41)は、この照射口(43)に1つずつ取り付けられている。
第2マイクロ波照射部(45)を構成するマイクロ波発振器(46)は、本体ケーシング(21)の前面に設けられている。本体ケーシング(21)の前面では、第2照射ゾーン(32)に臨む部分に4つの照射口(48)が開口している。これらの照射口(48)は、上下方向に1列に並んで形成されており、第2照射ゾーン(32)に収容された各搬送用トレイ(14)の直ぐ上側に1つずつ配置されている。このマイクロ波発振器(46)は、この照射口(48)に1つずつ取り付けられている。
前段ユニット(20)の本体ケーシング(21)へ搬入された搬送用トレイ(14)は、第1照射ゾーン(31)の最上段から第2照射ゾーン(32)の最下段へ向かって、1段ずつ下方へ移動してゆく。第1照射ゾーン(31)内の搬送用トレイ(14)には、第1マイクロ波照射部(40)で発生したマイクロ波が後方から照射される。第2照射ゾーン(32)内の搬送用トレイ(14)には、第2マイクロ波照射部(45)で発生したマイクロ波が前方から照射される。
このように、前段ユニット(20)において、第1照射ゾーン(31)では搬送用トレイ(14)に対して後方からマイクロ波が照射され、第2照射ゾーン(32)では搬送用トレイ(14)に対して前方からマイクロ波が照射される。つまり、前段ユニット(20)では、トレイユニット(10)が第1照射ゾーン(31)から第2照射ゾーン(32)へと順次移動するのにつれて、搬送用トレイ(14)に対するマイクロ波の照射方向が180°変化する。
《その他の実施形態》
上記の各実施形態の前段ユニット(20)では、濡れた状態のPTFE粉末を処理対象物としているが、この前段ユニット(20)の処理対象物はPTFE粉末に限定されない。つまり、本実施形態の前段ユニット(20)では、例えばPTFE以外の樹脂からなる粒状体を処理対象物として乾燥させるようにしてもよい。なお、ここでいう粒状体には、粒径が数μm程度の微粒子から、粒径が数mm以上のペレットまでが包含される。
なお、粒状体の材質である樹脂の例としては、汎用樹脂や、いわゆるエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。具体的には、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂(アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル‐スチレン樹脂)、メタクリル樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリアニレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、含ふっ素樹脂などが、粒状体を構成する樹脂の例として挙げられる。
また、含ふっ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリふっ化ビニリデン(PVDF)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等が例示される。
上記の各実施形態では、搬送用トレイ(14)や前段ユニット(20)の本体ケーシング(21)等の金属製の部材の材質をステンレスとしているが、これら部材の材質をステンレス以外の金属(例えばチタン等)にしてもよい。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。