しかしながら、湿った撥水性粉末にマイクロ波を照射する方法では、そこに残存する水分量をある程度以下にまで低下させるのが困難である。この問題点について説明する。
湿った撥水性粉末を乾燥させる過程において、ある程度の量の水分がその中に残存している間は、撥水性粒子同士の隙間が水で満たされた状態となっている。この状態の撥水性粉末にマイクロ波を照射したときの状況は、容器などに溜めた水にマイクロ波を照射するときと同じような状況となる。そして、照射されたマイクロ波の殆どが撥水性粉末と混在する水に吸収され、水がどんどん蒸発してゆく。
一方、マイクロ波を利用して対象物を乾燥させる場合、対象物に含まれる水の割合(含水率)が低くなるのにつれて照射されたマイクロ波のうち水に吸収される分の割合も低くなることが知られている。特に、PTFE粉末などの撥水性粉末と水の混合物では、粒子と接触した水が液滴化しやすい。このため、含水率がさほど低くない状態でも、混合物中に含まれる水が微細な液滴となって粉末中に分散してしまうことになる。そして、水がマイクロ波の波長よりも大幅に短い液滴となって粉末中に分散すると、水に吸収されるマイクロ波の割合が一層低くなり、場合によっては、いくらマイクロ波を照射しても水滴の温度は殆ど上昇しない状態に陥ってしまう。
このため、湿った撥水性粉末に残存する水の量がある程度以下になり、水が撥水性粉末中に微細な液滴となって分散した状態になると、マイクロ波を照射するだけでは水を蒸発させることができなくなり、結果として撥水性粉末中の水分量をある程度以下には下げられなくなるおそれがあった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、湿った撥水性粉末を乾燥させる過程において、撥水性粉末における水分の残留量を短時間で充分に低い値にまで低下させることにある。
第1の発明は、撥水性粉末の乾燥方法を対象としている。そして、撥水性粉末と水の混合物である湿り粉末(80)にマイクロ波を照射することによって該湿り粉末(80)に含まれる水を蒸発させる第1工程と、上記第1工程を経た湿り粉末(80)を温風で加熱することにより該湿り粉末(80)に残存する水を蒸発させて乾燥した撥水性粉末を得る第2工程とを備えるものである。
第1の発明では、湿り粉末(80)から乾燥した撥水性粉末を得るまでの過程において、第1工程と第2工程が行われる。
なお、撥水性粉末の例としては、汎用樹脂の粉末や、いわゆるエンジニアリングプラスチックの粉末等が挙げられる。具体的には、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂(アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル‐スチレン樹脂)、メタクリル樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリアニレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、含ふっ素樹脂などの粉末が、撥水性粉末の例として挙げられる。
また、撥水性粉末の一種である含ふっ素樹脂の粉末としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリふっ化ビニリデン(PVDF)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等からなる粉末が例示される。
第1の発明の第1工程では、湿り粉末(80)にマイクロ波が照射される。湿り粉末(80)に含まれる水は、マイクロ波を吸収することによって発熱して蒸発する。その結果、湿り粉末(80)に含まれる水の量が次第に減少してゆく。
第1の発明の第2工程では、第1工程を経た湿り粉末(80)に温風を当て、湿り粉末(80)に残存する水を温風で加熱することによって蒸発させる。第1工程を経た湿り粉末(80)は、水の含有量がある程度低くなっており、残存する水が細かい液滴となって分散した状態になっている場合がある。これに対し、第2工程では、マイクロ波ではなく温風で加熱することによって水を蒸発させているため、微細な液滴となった水も加熱されて蒸発してゆく。
また、第1の発明は、上記第2工程を経た撥水性粉末を所定時間に亘って所定温度に保つ第3工程を更に備えるものである。
第1の発明では、第1工程と第2工程の終了後に第3工程が行われる。第3工程において、第1工程と第2工程を経て水の残存量が充分に低くなると同時に温風に晒されて温度上昇した撥水性粉末が、所定時間に亘って所定温度に保たれる。例えば、撥水性粉末の一種であるPTFE粉末については、ある程度の時間に亘って一定温度の高温に晒すと、それを押し出し成形する際に必要な圧力(押出圧)がある値でほぼ一定となる。この第3工程は、例えば撥水性粉末の押出圧を安定化させることを目的に行われる。
第2の発明は、上記第1の発明において、搬送用トレイ(70)に上記湿り粉末(80)を載せ、該湿り粉末(80)が載せられた搬送用トレイ(70)を一つの経路に沿って移動させることによって、上記第1工程を行うための空間(41)、上記第2工程を行うための空間(42)、上記第3工程を行うための空間(43)の順に上記搬送用トレイ(70)を通過させるものである。
第2の発明では、湿り粉末(80)を載せた搬送用トレイ(70)が一つの経路に沿って移動してゆく。その過程において、搬送用トレイ(70)は、上記第1工程を行うための空間(41)と、上記第2工程を行うための空間(42)と、上記第3工程を行うための空間(43)を順に通過する。第1工程を行うための空間(41)内を搬送用トレイ(70)が移動する間は、その搬送用トレイ(70)上の湿り粉末(80)にマイクロ波が照射される。第2工程を行うための空間(42)内を搬送用トレイ(70)が移動する間は、その搬送用トレイ(70)上の湿り粉末(80)が温風によって加熱される。第3工程を行うための空間(43)内を搬送用トレイ(70)が移動する間は、その搬送用トレイ(70)上の撥水性粉末が所定温度に保たれる。
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記第2工程では、換気が行われる収容空間(42)内に湿り粉末(80)を収容して該収容空間(42)内で温風を流通させる一方、上記第3工程では、換気が行われない収容空間(43)内に撥水性粉末を収容して該収容空間(43)内の気温を所定値に保つものである。
第3の発明において、第2工程では、収容空間(42)の換気が行われる。第2工程において湿り粉末(80)から蒸発した水(水蒸気)は、収容空間(42)内の空気と共に収容空間(42)から排出される。なお、この発明において、収容空間(42)を換気する際には、収容空間(42)から流出した空気の全部を排気し、収容空間(42)から流出する空気の流量と収容空間(42)へ供給する外気の流量を同じにしてもよいし、収容空間(42)から流出した空気の一部だけを排気し、残りを外気と混合して収容空間(42)へ送り返すようにしてもよい。
また、この第3の発明において、第3工程では、収容空間(43)の換気は行わずに収容空間(43)内の気温を所定値に保つ。この第3工程では、第1工程と第2工程を経て既に水の残存量が充分に低くなった撥水性粉末を処理対象としているため、収容空間(43)内の撥水性粉末から水は殆ど蒸発してこない。そこで、この発明では、収容空間(43)の換気を行わないようにしている。
第4の発明は、上記第1,第2又は第3の発明において、上記第1工程では、収容空間(41)内に収容した湿り粉末(80)にマイクロ波を照射すると共に、該収容空間(41)の換気を行うものである。
第4の発明において、第1工程では、収容空間(41)内の換気が行われる。第1工程において湿り粉末(80)から蒸発した水(水蒸気)は、収容空間(41)内の空気と共に収容空間(41)から排出される。なお、この発明において、収容空間(41)を換気する際には、収容空間(41)から流出した空気の全部を排気し、収容空間(41)から流出する空気の流量と収容空間(41)へ供給する外気の流量を同じにしてもよいし、収容空間(41)から流出した空気の一部だけを排気し、残りを外気と混合して収容空間(41)へ送り返すようにしてもよい。
第5の発明は、上記第1,第2,第3又は第4の発明において、上記第1工程の直前に上記湿り粉末(80)を予め加熱する予熱工程を備えるものである。
第5の発明において、予熱工程では、湿り粉末(80)が加熱され、そこに含まれる撥水性粉末の水の温度が上昇する。第1工程では、予熱工程で予め加熱された湿り粉末(80)に対してマイクロ波が照射される。
第6の発明は、上記第1,第2,第3,第4又は第5の発明において、上記撥水性粉末がポリテトラフルオロエチレン粉末であるものである。
第6の発明では、PTFE粉末と水の混合物である湿り粉末(80)の乾燥が行われ、その結果、乾燥したPTFE粉末が製造される。
第7の発明は、上記第1の発明において、上記第3工程では、上記撥水性粉末に含まれる不純物を蒸発させるために、該撥水性粉末の温度を上記不純物の沸点よりも高温に保つものである。
第7の発明において、第3工程では、第2工程を経た撥水性粉末の温度が、所定時間に亘って、その撥水性粉末中の不純物の沸点よりも高い値に保たれる。ここで、撥水性粉末の製造工程では、例えば粒子の生成反応を促進させる等の目的で添加物が加えられる場合がある。そのような場合は、その添加物が粉末中に不純物として残留することが多い。そこで、この発明の第3工程では、撥水性粉末をそこに含まれる不純物の沸点よりも高温に保ち、撥水性粉末中の不純物を蒸発させることによって撥水性粉末から除去するようにしている。
第8の発明は、撥水性粉末の製造過程において撥水性粉末と水の混合物として得られる半製品(80)に処理を施して最終製品としての撥水性粉末を製造する方法を対象としている。そして、上記半製品(80)にマイクロ波を照射することによって該半製品(80)に含まれる水を蒸発させる第1工程と、上記第1工程を経た半製品(80)を温風で加熱することによって該半製品(80)に残存する水を蒸発させる第2工程とを備えるものである。
第8の発明では、半製品(80)から最終製品としての撥水性粉末を得るまでの過程において、第1工程と第2工程が行われる。
第8の発明の第1工程では、半製品(80)にマイクロ波が照射される。半製品(80)に含まれる水は、マイクロ波を吸収することによって発熱して蒸発する。その結果、半製品(80)に含まれる水の量が次第に減少してゆく。
第8の発明の第2工程では、第1工程を経た半製品(80)に温風を当て、半製品(80)に残存する水を温風で加熱することによって蒸発させる。第1工程を経た半製品(80)は、水の含有量がある程度低くなっており、残存する水が細かい液滴となって分散した状態になっている場合がある。これに対し、第2工程では、マイクロ波ではなく温風で加熱することによって水を蒸発させているため、微細な液滴となった水も加熱されて蒸発してゆく。
また、第8の発明は、上記第2工程を経た半製品(80)を所定時間に亘って所定温度に保つことによって最終製品としての撥水性粉末を得る第3工程を更に備えるものである。
第8の発明では、第1工程と第2工程の終了後に第3工程が行われる。第3工程において、第1工程と第2工程を経て水の残存量が充分に低くなると同時に温風に晒されて温度上昇した半製品(80)は、所定時間に亘って所定温度に保たれる。例えば、撥水性粉末の一種であるPTFE粉末については、ある程度の時間に亘って一定温度の高温に晒すと、それを押し出し成形する際に必要な圧力(押出圧)がある値でほぼ一定となる。この第3工程は、例えば撥水性粉末の押出圧を安定化させることを目的に行われる。
第9の発明は、上記第8の発明において、搬送用トレイ(70)に上記半製品(80)を載せ、該半製品(80)が載せられた搬送用トレイ(70)を一つの経路に沿って移動させることによって、上記第1工程を行うための空間(41)、上記第2工程を行うための空間(42)、上記第3工程を行うための空間(43)の順に上記搬送用トレイ(70)を通過させるものである。
第9の発明では、半製品(80)を載せた搬送用トレイ(70)が一つの経路に沿って移動してゆく。その過程において、搬送用トレイ(70)は、上記第1工程を行うための空間(41)と、上記第2工程を行うための空間(42)と、上記第3工程を行うための空間(43)を順に通過する。第1工程を行うための空間(41)内を搬送用トレイ(70)が移動する間は、その搬送用トレイ(70)上の半製品(80)にマイクロ波が照射される。第2工程を行うための空間(42)内を搬送用トレイ(70)が移動する間は、その搬送用トレイ(70)上の半製品(80)が温風によって加熱される。第3工程を行うための空間(43)内を搬送用トレイ(70)が移動する間は、その搬送用トレイ(70)上の半製品(80)が所定温度に保たれる。
第10の発明は、上記第8又は第9の発明において、上記第2工程では、換気が行われる収容空間(42)内に半製品(80)を収容して該収容空間(42)内で温風を流通させる一方、上記第3工程では、換気が行われない収容空間(43)内に半製品(80)を収容して該収容空間(43)内の気温を所定値に保つものである。
第10の発明において、第2工程では、収容空間(42)の換気が行われる。第2工程において半製品(80)から蒸発した水(水蒸気)は、収容空間(42)内の空気と共に収容空間(42)から排出される。なお、この発明において、収容空間(42)を換気する際には、収容空間(42)から流出した空気の全部を排気し、収容空間(42)から流出する空気の流量と収容空間(42)へ供給する外気の流量を同じにしてもよいし、収容空間(42)から流出した空気の一部だけを排気し、残りを外気と混合して収容空間(42)へ送り返すようにしてもよい。
また、この第10の発明において、第3工程では、収容空間(43)の換気は行わずに収容空間(43)内の気温を所定値に保つ。この第3工程では、第1工程と第2工程を経て既に水の残存量が充分に低くなった半製品(80)を処理対象としているため、収容空間(43)内の半製品(80)から水は殆ど蒸発してこない。そこで、この発明では、収容空間(43)の換気を行わないようにしている。
第11の発明は、第8,第9又は第10の発明において、上記第1工程では、収容空間(41)内に収容した半製品(80)にマイクロ波を照射すると共に、該収容空間(41)の換気を行うものである。
第11の発明において、第1工程では、収容空間(41)内の換気が行われる。第1工程において半製品(80)から蒸発した水(水蒸気)は、収容空間(41)内の空気と共に収容空間(41)から排出される。なお、この発明において、収容空間(41)を換気する際には、収容空間(41)から流出した空気の全部を排気し、収容空間(41)から流出する空気の流量と収容空間(41)へ供給する外気の流量を同じにしてもよいし、収容空間(41)から流出した空気の一部だけを排気し、残りを外気と混合して収容空間(41)へ送り返すようにしてもよい。
第12の発明は、第8,第9,第10又は第11の発明において、上記第1工程の直前に上記半製品(80)を予め加熱する予熱工程を備えるものである。
第12の発明において、予熱工程では、半製品(80)が加熱され、そこに含まれる撥水性粉末の水の温度が上昇する。第1工程では、予熱工程で予め加熱された半製品(80)に対してマイクロ波が照射される。
第13の発明は、第8,第9,第10,第11又は第12の発明において、上記撥水性粉末がポリテトラフルオロエチレン粉末であるものである。
第13の発明では、PTFE粉末と水の混合物として得られた半製品(80)から、最終製品としての乾燥したPTFE粉末が製造される。
第14の発明は、上記第8の発明において、上記第3工程では、上記半製品(80)に含まれる不純物を蒸発させるために、該半製品(80)の温度を上記不純物の沸点よりも高温に保つものである。
第14の発明において、第3工程では、第2工程を経た半製品(80)の温度が、所定時間に亘って、その半製品(80)中の不純物の沸点よりも高い値に保たれる。ここで、撥水性粉末の製造工程では、例えば粒子の生成反応を促進させる等の目的で添加物が加えられる場合がある。そのような場合は、その添加物が粉末中に不純物として残留することが多い。そこで、この発明の第3工程では、半製品(80)をそこに含まれる不純物の沸点よりも高温に保ち、半製品(80)中の不純物を蒸発させることによって撥水性粉末から除去するようにしている。
第15の発明は、撥水性粉末の製造過程において撥水性粉末と水の混合物として得られる半製品(80)に処理を施して最終製品としての撥水性粉末を製造する装置を対象とする。そして、記半製品(80)にマイクロ波を照射することによって該半製品(80)に含まれる水を蒸発させる第1処理部(16)と、上記第1処理部(16)を通過した半製品(80)を収容するための第2空間(42)を形成し、該第2空間(42)内の半製品(80)を温風で加熱することによって該半製品(80)に残存する水を蒸発させる第2処理部(17)とを備えるものである。
第15の発明では、第1処理部(16)に第1空間(41)が、第2処理部(17)に第2空間(42)がそれぞれ形成される。
第15の発明の第1処理部(16)は、第1空間(41)へ収容した半製品(80)に対してマイクロ波を照射する。半製品(80)に含まれる水は、マイクロ波を吸収することによって発熱して蒸発する。その結果、半製品(80)に含まれる水の量が次第に減少してゆく。
第15の発明の第2処理部(17)は、第1処理部(16)を通過した半製品(80)を第2空間(42)へ収容し、第2空間(42)内の半製品(80)を温風によって加熱する。温風によって加熱された半製品(80)からは、そこに残存する水が蒸発してゆく。第1処理部(16)を通過した半製品(80)は、水の含有量がある程度低くなっているため、残存する水が細かい液滴となって分散した状態になっている場合がある。これに対し、第2処理部(17)では、マイクロ波ではなく温風で加熱することによって水を蒸発させているため、微細な液滴となった水も加熱されて蒸発してゆく。
また、第15の発明は、上記第2処理部(17)を通過した半製品(80)を収容するための第3空間(43)を形成し、該第3空間(43)内の半製品(80)を所定時間に亘って所定温度に保つことによって最終製品としての撥水性粉末を得る第3処理部(18)を更に備えるものである。
第15の発明では、第3処理部(18)に第3空間(43)が形成される。第3処理部(18)は、第2処理部(17)を通過した半製品(80)を第3空間(43)へ収容し、第3空間(43)内の半製品(80)を所定時間に亘って所定温度に保つ。この第3処理部(18)では、水の残存量が充分に低くなると同時に温風に晒されて温度上昇した半製品(80)が、所定時間に亘って所定温度に保たれる。例えば、撥水性粉末の一種であるPTFE粉末については、ある程度の時間に亘って一定温度の高温に晒すと、それを押し出し成形する際に必要な圧力(押出圧)がある値でほぼ一定となる。この第3処理部(18)における工程は、例えば撥水性粉末の押出圧を安定化させることを目的に行われる。
第16の発明は、上記第15の発明において、上記半製品(80)を載せるための搬送用トレイ(70)と、上記半製品(80)が載せられた搬送用トレイ(70)が第1処理部(16)、第2処理部(17)、第3処理部(18)の順に通過するように、該搬送用トレイ(70)を一つの経路に沿って搬送する搬送機構(50)とを備えるものである。
第16の発明において、搬送機構(50)は、半製品(80)が載せられた搬送用トレイ(70)を一つの経路に沿って移動させる。この搬送用トレイ(70)は、搬送機構(50)によって搬送される間に、第1処理部(16)の第1空間(41)と第2処理部(17)の第2空間(42)と第3処理部(18)の第3空間(43)を順に通過する。
第17の発明は、上記第15又は第16の発明において、上記第2処理部(17)は、上記第2空間(42)を換気しながら該第2空間(42)内で温風を流通させるように構成され、上記第3処理部(18)は、上記第3空間(43)を換気せずに該第3空間(43)内の気温を所定値に保つように構成されるものである。
第17の発明では、第2処理部(17)が第2空間(42)の換気を行う。第2処理部(17)において半製品(80)から蒸発した水(水蒸気)は、第2空間(42)内の空気と共に第2空間(42)から排出される。なお、この発明において、第2空間(42)を換気する際には、第2空間(42)から流出した空気の全部を排気し、第2空間(42)から流出する空気の流量と第2空間(42)へ供給する外気の流量を同じにしてもよいし、第2空間(42)から流出した空気の一部だけを排気し、残りを外気と混合して第2空間(42)へ送り返すようにしてもよい。
また、この第17の発明において、第3処理部(18)は、第3空間(43)の換気は行わずに第3空間(43)内の気温を所定値に保つ。この第3処理部(18)では、第1処理部(16)と第2処理部(17)を通過して既に水の残存量が充分に低くなった半製品(80)を処理対象としているため、第3空間(43)内の半製品(80)から水は殆ど蒸発してこない。そこで、この第3処理部(18)では、第3空間(43)の換気を行わないようにしている。
第18の発明は、上記第15,第16又は第17の発明において、上記第1処理部(16)は、上記第1空間(41)を換気するように構成されるものである。
第18の発明では、第1処理部(16)が第1空間(41)内の換気を行う。第1処理部(16)において半製品(80)から蒸発した水(水蒸気)は、第1空間(41)内の空気と共に第1空間(41)から排出される。なお、この発明において、第1空間(41)を換気する際には、第1空間(41)から流出した空気の全部を排気し、第1空間(41)から流出する空気の流量と第1空間(41)へ供給する外気の流量を同じにしてもよいし、第1空間(41)から流出した空気の一部だけを排気し、残りを外気と混合して第1空間(41)へ送り返すようにしてもよい。
第19の発明は、上記第15,第16,第17又は第18の発明において、上記第1処理部(16)へ送られる直前の半製品(80)を収容するための予熱空間(46)を形成し、該予熱空間(46)内の上記半製品(80)を加熱する予熱部(19)を備えるものである。
第19の発明において、予熱部(19)の予熱空間(46)には、第1処理部(16)へ送られる直前の半製品(80)が収容される。予熱部(19)では、予熱空間(46)に収容された半製品(80)が加熱され、その半製品(80)に含まれる撥水性粉末の温度が上昇する。第1処理部(16)では、予熱部(19)で予め加熱された半製品(80)に対してマイクロ波が照射される。
第20の発明は、上記第15,第16,第17,第18又は第19の発明において、上記撥水性粉末がポリテトラフルオロエチレン粉末であるものである。
第20の発明では、PTFE粉末と水の混合物として得られた半製品(80)から、最終製品としての乾燥したPTFE粉末が製造される。
第21の発明は、上記第15の発明において、上記第3処理部(18)は、上記半製品(80)に含まれる不純物を蒸発させるために、該半製品(80)の温度を上記不純物の沸点よりも高温に保つように構成されるものである。
第21の発明において、第3処理部(18)では、第2処理部(17)を通過した半製品(80)の温度が、所定時間に亘って、その半製品(80)中の不純物の沸点よりも高い値に保たれる。ここで、撥水性粉末の製造工程では、例えば粒子の生成反応を促進させる等の目的で添加物が加えられる場合がある。そのような場合は、その添加物が粉末中に不純物として残留することが多い。そこで、この発明の第3処理部(18)では、半製品(80)をそこに含まれる不純物の沸点よりも高温に保ち、半製品(80)中の不純物を蒸発させることによって撥水性粉末から除去するようにしている。
本発明では、撥水性粉末と水の混合物(即ち、上記第1〜第7の各発明における「湿り粉末」、上記第8〜第21の各発明における「半製品」)に先ずマイクロ波を照射して混合物に含まれる水を蒸発させ、続いて水の残存量がある程度低くなった混合物に温風を当てることによって、撥水性粉末の乾燥を行っている。このため、撥水性粉末と水の混合物における水の残存量が多いとき(即ち、撥水性粉末中に水がある程度集まった状態で存在するとき)には、マイクロ波で加熱することによって水を速やかに蒸発させる一方、その混合物における水の残存量が少なくなって(即ち、撥水性粉末中に水が液滴となって分散して)マイクロ波では水を効率よく加熱できなくなったときには、温風で加熱することによって水を確実に蒸発させることができる。従って、本発明によれば、最終製品としての撥水性粉末における水の残存量を低く抑えることができる。それと同時に、本発明によれば、撥水性粉末と水の混合物における水の含有量に応じて最適な加熱方法を選択することによって、撥水性粉末と水の混合物の乾燥に要する時間を短縮することができる。
また、上記第1,第8及び第15の各発明では、水の残存量が既に充分に低くなった撥水性粉末を所定温度に保つ工程を行うが、その工程の直前で行われる工程において撥水性粉末と水の混合物を温風によって加熱している。撥水性粉末と水の混合物を温風によって加熱する場合は、そこに残存する水の温度だけでなく撥水性粉末の温度も上昇する。つまり、撥水性粉末を所定温度に保つ工程が始まる時点では、撥水性粉末の温度が既にある程度高くなっている。従って、この発明によれば、この工程で撥水性粉末の温度が目標値に達するまでの時間を短縮でき、この工程に要する時間を短縮することができる。
また、上記第2,第9及び第16の各発明では、撥水性粉末と水の混合物が載せられた搬送用トレイ(70)を一つの経路に沿って搬送する過程で、搬送用トレイ(70)上の混合物に対する処理が順次行われる。つまり、これらの発明では、各処理が行われる空間(41,42,43)内を搬送用トレイ(70)が移動してゆくことになる。従って、こららの発明によれば、撥水性粉末と水の混合物を複数の搬送用トレイ(70)に分けて載せる場合でも、各搬送用トレイ(70)上の混合物に施される処理の条件(例えば、温風の温度や風量、到達するマイクロ波の強度など)を同一にすることができ、最終的に得られる撥水性粉末の品質を安定させることができる。
また、上記第3,第10及び第17の各発明では、温風による乾燥が終了した撥水性粉末を所定温度に保つ工程(即ち、第10の発明では第3工程、第17の発明では第3処理部(18)で行われる工程)において、撥水性粉末が置かれた空間(43)の換気を行わないようにしている。従って、これらの発明によれば、その空間(43)内の気温を所定温度に保つために要するエネルギを削減することができる。
また、上記第4,第11及び第18の各発明では、撥水性粉末と水の混合物が置かれた空間(41)を換気しながら該空間(41)内の混合物にマイクロ波を照射している。従って、これらの発明によれば、その空間(41)内で混合物から蒸発した水(水蒸気)を該空間(41)の外へ速やかに排出することができ、混合物を乾燥させて水分が殆ど残存しない撥水性粉末を得るのに要する時間を更に短縮することができる。
また、上記第5,第12及び第19の各発明では、撥水性粉末と水の混合物を加熱して撥水性粉末の温度をある程度にまで上昇させておき、それから混合物にマイクロ波を照射している。このため、マイクロ波の照射による混合物の乾燥に要する時間を短縮できる。
この点について説明する。
撥水性粉末はマイクロ波を殆ど吸収しないものが多いため、マイクロ波の照射による撥水性粉末の温度上昇は殆ど期待できない。このため、例えば20℃前後の比較的低温の混合物にマイクロ波を照射すると、混合物中の水の温度は速やかに上昇する一方、混合物中の撥水性粉末の温度は徐々にしか上昇してゆかない。この状態では、混合物における水の残存量がなかなか低下してゆかないことが多い。その原因は、加熱されて蒸発した水の多くが低温の撥水性粉末と接触して凝縮してしまうからだと推測される。
それに対し、上記第5,第12及び第19の各発明では、混合物中の撥水性粉末の温度をある程度にまで上昇させた後に、マイクロ波の照射を行っている。このため、蒸発した水分が撥水性粉末と接触しても凝縮しなくなり、混合物における水の残存量を速やかに低下させることができる。
また、上記第6,第13及び第20の各発明では、撥水性粉末の一種であるPTFEの粉末を処理対象としている。ここで、PTFEは撥水性が高いため、PTFE粉末に混入している水は液滴化しやすくなる。このため、PTFE粉末については、マイクロ波を利用した乾燥だけでは水の残存量を充分に下げるのが特に困難であった。これに対し、本発明では、PTFE粉末と水の混合物にマイクロ波を照射してから温風を当てるようにしている。従って、これらの発明によれば、撥水性の高いPTFE粉末についても、水の残存量を確実に低下させることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。
−製造装置−
本実施形態の製造装置(10)は、PTFE粉末の製造過程においてPTFE粉末と水の混合物として得られる半製品(80)に処理を施すことで、最終製品としての乾燥したPTFE粉末を製造するためのものである。なお、以下の説明で用いる「右」「左」「手前」「奥」は、何れも製造装置(10)を正面側から見た場合のものを意味している。
図1に示すように、製造装置(10)の本体部(15)は、縦長の直方体状に形成された金属製の本体ケーシング(20)を備えている。本体ケーシング(20)は、左右方向の横幅が奥行きよりも長くなっている。本体ケーシング(20)は、その内部空間が通路空間(25)を構成している。通路空間(25)には、平板状の区画壁(22)が立設されている。通路空間(25)は、この区画壁(22)によって左側の上昇側空間(26)と右側の下降側空間(27)とに仕切られている。区画壁(22)の高さは通路空間(25)の高さよりも低くなっている。このため、上昇側空間(26)の上端と下降側空間(27)の上端は、互いに連通している。
本体部(15)の下端には、その左側から投入側ローラーコンベア(51)が、その右側から排出側ローラーコンベア(52)がそれぞれ挿入されている。投入側ローラーコンベア(51)は、その終端部が上昇側空間(26)内に位置しており、半製品(80)の載った搬送用トレイ(70)を上昇側空間(26)へ搬入する。排出側ローラーコンベア(52)は、その始端部が下降側空間(27)内に位置しており、最終製品としてのPTFE粉末の載った搬送用トレイ(70)を下降側空間(27)から搬出する。なお、搬送用トレイ(70)の構造については後述する。
本体部(15)には、トレイ駆動部(50)が搬送機構として設けられている。図示しないが、トレイ駆動部(50)は、搬送用トレイ(70)を載せるために水平方向へ延びるアーム部材を備えている。トレイ駆動部(50)では、多数のアーム部材が等間隔で配列されている。トレイ駆動部(50)は、搬送用トレイ(70)を載せたアーム部材を移動させることによって、通路空間(25)内で搬送用トレイ(70)を搬送する。具体的に、トレイ駆動部(50)は、上昇側空間(26)へ送り込まれた搬送用トレイ(70)を上方へ移動させ、上昇側空間(26)の上端に達した搬送用トレイ(70)を下降側空間(27)へ移動させ、下降側空間(27)へ送り込まれた搬送用トレイ(70)を下方へ移動させる。
図2にも示すように、上昇側空間(26)は、その下端部が投入ゾーン(44)を、投入ゾーン(44)の上端から所定高さに亘る部分が第1乾燥ゾーン(41)を、第1乾燥ゾーン(41)の上側に位置する残りの部分が第2乾燥ゾーン(42)をそれぞれ構成している。また、下降側空間(27)は、その下端部が排出ゾーン(45)を、排出ゾーン(45)の上端から所定高さに亘る部分が熱処理ゾーン(43)を、熱処理ゾーン(43)の上側に位置する残りの部分が第2乾燥ゾーン(42)をそれぞれ構成している。つまり、第2乾燥ゾーン(42)は、上昇側空間(26)から下降側空間(27)に亘って形成されている。
第1乾燥ゾーン(41)は、搬送用トレイ(70)上の半製品(80)にマイクロ波を照射して半製品(80)中の水分を蒸発させる処理を行うための空間であり、第1空間あるいは収容空間を構成している。本体ケーシング(20)のうち第1乾燥ゾーン(41)を形成する部分は、第1ゾーン形成部(21)を構成している。第1ゾーン形成部(21)には、マイクロ波発生器(60)が取り付けられている。マイクロ波発生器(60)は、マイクロ波(即ち、周波数が300MHz以上30GHz以下の電磁波)を発生させ、発生したマクロ波を第1乾燥ゾーン(41)内へ放射する。
本体ケーシング(20)では、その背面(即ち、奥側の側面)のうち第1乾燥ゾーン(41)に臨む部分に第1吹出口(31)が開口し、その前面(即ち、手前側の側面)のうち第1乾燥ゾーン(41)に臨む部分に第1吸込口が開口している。本体部(15)は、第1乾燥ゾーン(41)の換気を行うように構成されている。具体的に、本体部(15)は、取り込んだ外気を80℃程度にまで加熱して第1吹出口(31)から第1乾燥ゾーン(41)へ供給し、第1吸込口へ取り込んだ空気の全てを屋外へ排出する。本体部(15)のうち第1乾燥ゾーン(41)を形成する部分は、第1処理部(16)を構成する。
第2乾燥ゾーン(42)は、搬送用トレイ(70)上の半製品(80)に熱風を当てて半製品(80)中の水分を蒸発させる処理を行うための空間であり、第2空間あるいは収容空間を構成している。本体ケーシング(20)の背面では、上昇側空間(26)側の第2乾燥ゾーン(42)に臨む部分に第2吹出口(32)が、下降側空間(27)側の第2乾燥ゾーン(42)に臨む部分に第3吹出口(33)がそれぞれ開口している。また、本体ケーシング(20)の前面では、上昇側空間(26)内の第2乾燥ゾーン(42)に臨む部分に第2吸込口が、下降側空間(27)内の第2乾燥ゾーン(42)に臨む部分に第3吸込口がそれぞれ開口している。
本体部(15)は、第2乾燥ゾーン(42)の換気を行うように構成されている。具体的に、本体部(15)は、第2吸込口及び第3吸込口へ取り込んだ空気の一部を屋外へ排出すると共に、その残りを外気と混合して第2吹出口(32)及び第3吹出口(33)から第2乾燥ゾーン(42)へ供給する。その際、本体部(15)は、第2吹出口(32)及び第3吹出口(33)から第2乾燥ゾーン(42)へ供給される空気の温度が160℃程度となるように、空気の加熱を行う。本体部(15)のうち第2乾燥ゾーン(42)を形成する部分は、第2処理部(17)を構成する。
上記熱処理ゾーン(43)は、搬送用トレイ(70)上の半製品(80)を所定時間に亘って所定温度に保つ処理を行うための空間であり、第3空間あるいは収容空間を構成している。本体ケーシング(20)では、その背面のうち熱処理ゾーン(43)に臨む部分に第4吹出口(34)が開口し、その前面のうち熱処理ゾーン(43)に臨む部分に第4吸込口が開口している。
本体部(15)は、熱処理ゾーン(43)内の気温を平均化するために、熱処理ゾーン(43)内で空気を流通させるように構成されている。具体的に、本体部(15)は、熱処理ゾーン(43)内の空気を第4吸込口から取り込み、取り込んだ空気の全部を第4吹出口(34)から熱処理ゾーン(43)へ送り返す。その際、本体部(15)は、熱処理ゾーン(43)内の気温が160℃程度に保たれるように、第4吹出口(34)から熱処理ゾーン(43)へ供給される空気を適宜加熱する。本体部(15)のうち熱処理ゾーン(43)を形成する部分は、第3処理部(18)を構成する。
搬送用トレイ(70)は、概ね正方形状に形成されている。図3及び図4に示すように、搬送用トレイ(70)は、金属製の底板部材(71)と、樹脂製の側板部材(73)とによって構成されている。底板部材(71)は、概ね正方形の平板状に形成されている。側板部材(73)は、細長い長方形板状に形成され、底板部材(71)の四辺に沿って立設されている。底板部材(71)の材質としては、例えばステンレスが例示される。また、側板部材(73)の材質としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が例示される。なお、側板部材(73)の材質は、損失係数が小さい(即ち、マイクロ波を透過させ易い、あるいはマイクロ波を吸収しにくい)ものであればよく、各種の樹脂だけでなく、例えばガラスやセラミックなどでもよい。
搬送用トレイ(70)では、底板部材(71)に対して側板部材(73)が着脱可能となっている。図5に示すように、底板部材(71)では、その周縁に沿って延びる突出部(72)が、周縁から外側へ突出するように形成されている。突出部(72)は、断面形状がT字状となっている。側板部材(73)の下部には、その長手方向に沿って延びる嵌合溝(74)が形成されている。嵌合溝(74)は、その断面形状が突出部(72)の断面形状に対応したT字状となっている。側板部材(73)は、その嵌合溝(74)が底板部材(71)の突出部(72)に嵌り込むことで、底板部材(71)と連結される。
図3に示すように、本体ケーシング(20)の第1ゾーン形成部(21)には、金属製の枠状部材(23)が設けられている。枠状部材(23)は、第1乾燥ゾーンを移動してゆく搬送用トレイ(70)の周囲を囲むような姿勢で、第1乾燥ゾーンの入口と出口に1つずつ配置されている。
第1ゾーン形成部(21)の入口側と出口側の各端部(即ち、下側と上側の各端部)は、その内側面が枠状部材(23)の内側面によって構成されている。各枠状部材(23)の内側面は、高さがHの平面となっている。この内側面の高さHは、第1乾燥ゾーン内を上下に並んで移動してゆく搬送用トレイ(70)のうち、互いに隣接する2つの底板部材(71)の間隔Hと等しくなっている。この間隔Hは、マイクロ波発生器(60)から放射されるマイクロ波の波長λの1/4(即ち、λ/4)以上に設定される。例えば、マイクロ波発生器(60)で発生するマイクロ波の周波数が2.5GHzの場合、そのマイクロ波の波長λは120mmであるため、距離Hは30mm以上に設定される。
枠状部材(23)の側方に搬送用トレイ(70)が位置する状態において、その搬送用トレイ(70)の底板部材(71)と枠状部材(23)の内側面との距離Lは、マイクロ波発生器(60)から放射されるマイクロ波の波長λの1/4(即ち、λ/4)未満に設定される。つまり、上記の例(λ=120mmの場合)では、距離Lが30mm未満に設定される。上述したように、枠状部材(23)の内側面の高さは、隣り合う搬送用トレイ(70)の底板部材(71)同士の間隔と等しくなっている。従って、枠状部材(23)の内側面と、その枠状部材(23)に最も近接する搬送用トレイ(70)の底板部材(71)との間隔は、搬送用トレイ(70)の位置とは無関係に常に距離Lとなる。
−製造方法−
本実施形態の製造方法は、PTFE粉末の製造過程においてPTFE粉末と水の混合物として得られる半製品(80)に処理を施すことで、最終製品としての乾燥したPTFE粉末を製造するためのものである。この製造方法は、湿り粉末としての上記半製品(80)を対象として本発明に係る乾燥方法を行うものである。
本実施形態の製造方法は、上記製造装置(10)において行われる。そこで、ここでは、図2,図6及び図7を参照しながら、この製造方法を上記製造装置(10)の動作として説明する。
この製造方法が行われる工程の前段の工程でPTFE粉末と水の混合物として得られた半製品(80)は、搬送用トレイ(70)に載せられる。搬送用トレイ(70)では、そこに載せられた半製品(80)の層の厚さが概ね均一となっている。この状態の半製品(80)は、その含水率がほぼ100%となっている。つまり、この半製品(80)では、100質量部のPTFE粉末に対して100質量部の水が混入している。
含水率が100%の半製品(80)を載せた搬送用トレイ(70)は、投入側ローラーコンベア(51)によって運ばれ、本体部(15)の投入ゾーン(44)へ搬入される。投入ゾーン(44)の搬送用トレイ(70)に載せられた半製品(80)では、図6(a)に示すように、PTFE粒子(81)同士の隙間が完全に水で満たされた状態となっている。投入ゾーン(44)へ搬入された搬送用トレイ(70)は、トレイ駆動部(50)によって運ばれ、通路空間(25)の上昇側空間(26)を上方へ移動して第1乾燥ゾーン(41)へ搬入される。トレイ駆動部(50)は、搬送用トレイ(70)を、例えば毎分2cm程度のゆっくりとした速度で移動させる。
第1乾燥ゾーン(41)では、搬送用トレイ(70)上の半製品(80)(即ち、湿り粉末)を対象とした第1乾燥工程が第1工程として行われる。具体的に、第1乾燥ゾーン(41)では、搬入された搬送用トレイ(70)がゆっくりと上方へ移動してゆき、移動している搬送用トレイ(70)上の半製品(80)にマイクロ波が照射される。半製品(80)に含まれる水は、マイクロ波を吸収することでその温度が上昇し、蒸発してゆく。半製品(80)から蒸発した水(即ち、水蒸気)は、第1乾燥ゾーン(41)内の空気と共に屋外へ排出される。
その結果、第1乾燥ゾーン(41)を移動する搬送用トレイ(70)上の半製品(80)では、図6や図7に示すように、そこに含まれる水の量が次第に減少してゆく。
具体的に、第1乾燥工程の初期では、PTFE粒子(81)同士の隙間がほぼ完全に水で満たされた状態(図6(b)を参照)、あるいはPTFE粒子(81)同士の隙間に水が大きな塊となって存在する状態(図6(c)を参照)となっている。この状態において、搬送用トレイ(70)上の半製品(80)に吸収されたマイクロ波のエネルギは、その殆ど全部が水を蒸発させるために費やされる。つまり、第1乾燥工程の初期は、いわゆる恒率乾燥期間(あるいは定率乾燥期間)となっている。
一方、第1乾燥工程の中期から終期において、半製品(80)では、比較的大きな塊になった水と、比較的小さな液滴になった水とが混在した状態(図6(d)を参照)になっている。この状態において、搬送用トレイ(70)上の半製品(80)に吸収されたマイクロ波のエネルギは、その一部がPTFE粒子(81)の温度を上昇させるために費やされ、残りが水を蒸発させるために費やされる。つまり、第1乾燥工程の中期と終期は、いわゆる恒率乾燥と減率乾燥の両方行われる期間となっている。
この第1乾燥ゾーン(41)では、搬送用トレイ(70)上の半製品(80)にマイクロ波が照射されると同時に、その内部を80℃程度の熱風が流通している。搬送用トレイ(70)上の半製品(80)では、その表面付近に位置するPTFE粒子(81)が熱風によって加熱され、そのPTFE粒子(81)の温度が比較的速やかに上昇する。このため、半製品(80)から蒸発した水は、PTFE粒子(81)と接触しても凝縮せずに空気中へ放出され、空気と共に第1乾燥ゾーン(41)から排出されてゆく。
第1乾燥ゾーン(41)の出口に到達した搬送用トレイ(70)上の半製品(80)では、その含水率が20%程度にまで低下している。また、この半製品(80)では、PTFE粉末の温度(粉温)が約80℃にまで上昇している。含水率が約20%の半製品(80)を載せた搬送用トレイ(70)は、第1乾燥ゾーン(41)から第2乾燥ゾーン(42)へと運ばれてゆく。
第2乾燥ゾーン(42)では、搬送用トレイ(70)上の半製品(80)(即ち、湿り粉末)を対象とした第2乾燥工程が第2工程として行われる。具体的に、上昇側空間(26)内の第2乾燥ゾーン(42)では、搬入された搬送用トレイ(70)がゆっくりと上方へ移動してゆく。一方、下降側空間(27)内の第2乾燥ゾーン(42)では、搬入された搬送用トレイ(70)がゆっくりと下方へ移動してゆく。そして、第2乾燥ゾーン(42)では、移動している搬送用トレイ(70)上の半製品(80)に160℃程度の熱風が吹きつけられる。半製品(80)に含まれる水は、熱風によって加熱されて蒸発する。半製品(80)から蒸発した水(即ち、水蒸気)は、第2乾燥ゾーン(42)内の空気と共に屋外へ排出される。なお、ここでは第2乾燥ゾーン(42)を流れる熱風の温度を約160℃としているが、この熱風の温度は、大気圧下における水の蒸発温度(即ち、100℃)よりも高い値であればよい。
その結果、第2乾燥ゾーン(42)を移動する搬送用トレイ(70)上の半製品(80)では、図6や図7に示すように、そこに含まれる水の量が次第に減少してゆく。
具体的に、第2乾燥工程の開始時点において、半製品(80)に残存する水は、微細な液滴となってPTFE粉末中に分散した状態(図6(e)を参照)となっている。PTFEは撥水性の物質であるため、半製品(80)の含水率がそれ程低くない状態(例えば含水率が20%程度の状態)であっても、半製品(80)に残存する水が液滴化して分散する。この状態において、熱風から半製品(80)へ付与された熱は、その一部が水を蒸発させるために費やされ、残りがPTFE粒子(81)の温度を上昇させるために費やされる。つまり、第2乾燥工程は、いわゆる減率乾燥期間となっている。
第2乾燥ゾーン(42)の出口に到達した搬送用トレイ(70)上の半製品(80)では、その含水率が0.01%以下にまで低下している。また、この半製品(80)では、PTFE粉末の温度が155℃程度にまで上昇している。含水率がほぼ0%の半製品(80)を載せた搬送用トレイ(70)は、第2乾燥ゾーン(42)から熱処理ゾーン(43)へと運ばれてゆく。
熱処理ゾーン(43)では、搬送用トレイ(70)上の半製品(80)(即ち、乾燥が終了したPTFE粉末)を対象とした熱処理工程が第3工程として行われる。具体的に、熱処理ゾーン(43)の気温は、約160℃に保たれている。熱処理ゾーン(43)では、搬入された搬送用トレイ(70)がゆっくりと下方へ移動してゆき、搬送用トレイ(70)上の半製品(80)(即ち、含水率がほぼ0%となったPTFE粉末)が約160℃雰囲気に晒される。熱処理ゾーン(43)へ移動してきた搬送用トレイ(70)は、約30分程度かけて熱処理ゾーン(43)の出口へ到達する。つまり、熱処理ゾーン(43)では、図7に示すように、搬送用トレイ(70)上のPTFE粉末の温度が、約30分間に亘って約155℃に保たれる。
含水率がほぼ0%となったPTFE粉末の温度をある程度の高温に保つと、初めのうちは押出圧(PTFE粉末を押し出し成形する際に必要な圧力)が次第に上昇してゆき、ある程度の時間が経過すると押出圧がそれ以上は上昇せずに概ね一定のままになる。そこで、熱処理ゾーン(43)で行われる熱処理工程では、PTFE粉末の押出圧が一定となるまでに要する時間以上に亘って、PTFE粉末の温度を約155℃に保つようにしている。この熱処理工程を行うことで、最終製品としてのPTFE粉末の押出圧は、基準値に対して±約7%の範囲内の値となる。
熱処理ゾーン(43)の下端に達した搬送用トレイ(70)上には、最終製品としてのPTFE粉末が載っている。最終製品としてのPTFE粉末が載った搬送用トレイ(70)は、排出側ローラーコンベア(52)の始端部に下ろされ、本体部(15)の外へ搬出される。
−実施形態1の効果−
本実施形態の製造装置(10)及び製造方法では、PTFE粉末と水の混合物として得られる半製品(80)を乾燥させる際に、マイクロ波を用いる第1乾燥工程と、熱風を用いる第2乾燥工程とを順に行っている。
ここで、粉末と水の混合物において、その混合物の含水率がある程度以下になると、水は一箇所に集まるのではなく粉末中に広く分散した状態となる。特に、PTFEは撥水性の高い物質であるため、PTFE粉末に比較的少量の水が含まれる状態では、殆どの水は細かな液滴の状態でPTFE粉末中に散らばっている。このため、含水率が20%程度にまで低下した半製品(80)では、図6(e)に示すように、水が微細な液滴となってPTFE粉末中に分散した状態となっていると推定される。
一方、マイクロ波を利用して対象物を乾燥させる場合、対象物の含水率が低くなるのにつれて照射されたマイクロ波のうち水に吸収される分の割合も低下することが知られている。特に、撥水性を有するPTFE粉末と水の混合物では、水がPTFE粒子(81)と接触して液滴化しやすい。このため、含水率がさほど低くない状態でも、半製品(80)中に含まれる水が微細な液滴となって分散してしまうことになる。そして、水がマイクロ波の波長よりも大幅に短い液滴となって分散すると、水に吸収されるマイクロ波の割合が一層低くなり、いくらマイクロ波を照射しても水滴の温度は殆ど上昇しない状態に陥ってしまう。
そこで、本実施形態の製造装置(10)及び製造方法では、半製品(80)の含水率が比較的高いとき(即ち、PTFE粉末中に水がある程度集まった状態で存在するとき)には、マイクロ波で加熱することによって水を速やかに蒸発させる一方、半製品(80)の含水率が低くなって(即ち、PTFE粉末中に水が液滴となって分散した状態となって)マイクロ波では水を効率よく加熱できなくなったときには、熱風で加熱することによって水を確実に蒸発させるようにしている。従って、本実施形態によれば、最終製品としてのPTFE粉末の含水率を殆ど0%にまで低下させることができると同時に、半製品(80)の含水率に応じて最適な加熱方法を選択することによって、従来は十数時間を要していた半製品(80)の乾燥を2〜3時間程度で完了させることができる。
参考のため、半製品(80)を乾燥させる際に、マイクロ波と熱風を併用した場合と、熱風だけを用いた場合と、マイクロ波だけを用いた場合のそれぞれについて、乾燥工程の継続時間(乾燥時間)と半製品(80)の含水率との関係を図8に示す。熱風だけで半製品(80)を加熱する場合には、同図に四角印でプロットしたように、半製品(80)の含水率は緩やかにしか低下せず、乾燥時間を極めて長くしなければ半製品(80)の含水率をほぼ0%にまで低下させることができない。また、マイクロ波の照射だけで半製品(80)を加熱する場合には、同図に丸印でプロットしたように、マイクロ波を照射し始めた直後は半製品(80)の含水率が急激に低下してゆくものの、ある程度の時間が経過すると含水率の低下する速度が鈍り、20数%以下には含水率が低下しなくなる。それに対し、本実施形態のようにマイクロ波の照射と熱風の供給とを併用して半製品(80)を加熱する場合には、半製品(80)の含水率が急激に低下してゆき、乾燥の開始から70分前後が経過した時点では半製品(80)の含水率が概ね0%に達する。
ところで、PTFE粉末はマイクロ波を殆ど吸収しないため、マイクロ波の照射によるPTFE粉末の温度上昇は殆ど期待できない。これは上述した通りである。そのため、製造装置(10)の周囲温度と同程度(例えば20℃前後)の半製品(80)にマイクロ波を照射すると、半製品(80)中の水の温度は速やかに上昇する一方、半製品(80)中のPTFE粉末の温度は徐々にしか上昇してゆかない。この状態では、混合物における水の残存量がなかなか低下してゆかないことが多い。その原因は、加熱されて蒸発した水の多くが低温の撥水性粉末と接触して凝縮してしまうからだと推測される。
それに対し、本実施形態の製造装置(10)は、その第1乾燥ゾーン(41)において、搬送用トレイ(70)上の半製品(80)にマイクロ波を照射すると同時に、水の沸点に近い温度(例えば80℃〜100℃程度)の熱風を流通させている。その結果、搬送用トレイ(70)上の半製品(80)では、その表面付近に位置するPTFE粒子(81)が熱風によって加熱され、そのPTFE粒子(81)の温度が比較的速やかに上昇する。このため、半製品(80)から蒸発した水は、PTFE粒子(81)と接触しても凝縮することなく空気中へ放出され、空気と共に第1乾燥ゾーン(41)から排出されてゆくことになる。従って、本実施形態によれば、蒸発した水分のうちPTFE粒子(81)と接触して凝縮するものの量を大幅に削減でき、混合物における水の残存量を速やかに低下させることができる。
また、本実施形態では、最終製品であるPTFE粉末の押出圧を所定の目標範囲内の値とするために熱処理工程を行うが、その熱処理工程の直前で行われる第2乾燥工程において半製品(80)を熱風によって加熱している。半製品(80)を熱風によって加熱する場合は、半製品(80)に残存する水の温度だけでなくPTFE粉末の温度も上昇する。そして、本実施形態では、第2乾燥ゾーン(42)へ供給される熱風を熱処理ゾーン(43)へ供給される熱風と同じ温度にしているため、熱処理工程の開始時点において、PTFE粉末の温度は既に熱処理に必要な温度に達している。従って、本実施形態によれば、熱処理工程に要する時間を短縮でき、半製品(80)から最終製品としてのPTFE粉末を得るのに要する時間を短縮できる。
また、本実施形態の製造装置(10)では、半製品(80)を載せた搬送用トレイ(70)を本体部(15)内で上下に並べ、上下に並んだ複数の搬送用トレイ(70)を上下方向へ移動させながら各搬送用トレイ(70)上の半製品(80)を乾燥させるようにしている。ここで、複数の搬送用トレイ(70)を水平方向に並べる場合、配列された搬送用トレイ(70)が占める床面積は、搬送用トレイ(70)の底面積に搬送用トレイ(70)の個数を乗じた値になる。これに対し、本実施形態のように複数の搬送用トレイ(70)を上下方向に二列に並べる場合、配列された搬送用トレイ(70)が占める床面積は、搬送用トレイ(70)の底面積の2倍だけである。このため、本実施形態のように複数の搬送用トレイ(70)を上下に配列すれば、製造装置(10)の本体部(15)が占める床面積を大幅に削減でき、製造装置(10)の小型化を図ることができる。
また、本実施形態の製造装置(10)では、本体部(15)内の通路空間(25)を上昇側空間(26)と下降側空間(27)とに区画し、上昇側空間(26)では搬送用トレイ(70)を上向きに、下降側空間(27)では搬送用トレイ(70)を下向きにそれぞれ移動させている。つまり、搬送用トレイ(70)は、通路空間(25)の上昇側空間(26)を上方へ移動してゆき、その後に折り返して下降側空間(27)を下方へ移動してくる。従って、本実施形態によれば、本体部(15)内で搬送用トレイ(70)を上向き又は下向きの一方だけに移動させる場合に比べ、本体部(15)の高さを低く抑えることができる。
また、本実施形態では、第1乾燥ゾーン(41)の気温を80℃程度に保つと同時に、この第1乾燥ゾーン(41)の換気を行っている。従って、本実施形態によれば、第1乾燥ゾーン(41)内の相対湿度を低く保って半製品(80)からの水の蒸発を促進でき、更には半製品(80)から蒸発した水を第1乾燥ゾーン(41)から速やかに排出することができるため、第1乾燥工程に要する時間を短縮することができる。
また、本実施形態の製造装置(10)では、第1乾燥工程と第2乾燥工程を行うことで半製品(80)としてのPTFE粉末の含水率を殆ど0%にまで下げることができるため、熱処理工程が行われる熱処理ゾーン(43)を換気する必要が無くなる。このため、熱処理ゾーン(43)の気温を所定値に保つために必要な熱量を削減することができ、PTFE粉末の製造に要するエネルギを削減することができる。
また、本実施形態の製造装置(10)では、本体部(15)の通路空間(25)内で上下に並べられる搬送用トレイ(70)の底板部材(71)を金属製とし、上下に配列された搬送用トレイ(70)の側方に設けたマイクロ波発生器(60)から搬送用トレイ(70)にマイクロ波を照射している。一般に、金属は、マイクロ波を反射する性質を持っている。このため、搬送用トレイ(70)の側方から照射されたマイクロ波は、図3に示すように、下側の底板部材(71)の上面と上側の底板部材(71)の下面で反射されながらマイクロ波発生器(60)から離れた部分にまで行き渡る。従って、本実施形態によれば、第1乾燥ゾーン(41)内の搬送用トレイ(70)上の半製品(80)を、その全体に亘ってマイクロ波で平均的に加熱することができる。
また、本実施形態の製造装置(10)では、搬送用トレイ(70)の側板部材(73)の材質を、マイクロ波を透過させる性質をもった樹脂としている。このため、上下に配列された搬送用トレイ(70)の側方に設けたマイクロ波発生器(60)から照射されたマイクロ波は、側板部材(73)を透過して殆どロス無く半製品(80)に到達することになる。従って、本実施形態によれば、マイクロ波発生器(60)から照射されたマイクロ波を無駄なく半製品(80)の乾燥に利用することができる。
また、本実施形態の製造装置(10)では、第1乾燥ゾーン(41)の下端と上端のそれぞれに金属製の枠状部材(23)を設け、枠状部材(23)の内側面と搬送用トレイ(70)の底板部材(71)との距離Lを、マイクロ波発生器(60)から照射されるマイクロ波の波長λの1/4(即ち、λ/4)未満としている。ここで、マイクロ波を含む電磁波は、金属製部材同士の隙間が電磁波の波長の1/4未満である場合は、その隙間を通過することができない。更に、本実施形態の製造装置(10)では、本体ケーシング(20)を金属製としている。このため、本実施形態によれば、第1乾燥ゾーン(41)からのマイクロ波の漏洩を防ぐことができ、製造装置(10)の安全性を確保することができる。
また、本実施形態の製造装置(10)では、上下に配列された多数の搬送用トレイ(70)を一方向へ移動させながら、各搬送用トレイ(70)上の半製品(80)に対する第1乾燥工程と第2乾燥工程と熱処理工程を順次行うようにしている。このため、PTFE粉末の製造過程で得られた半製品(80)を複数の搬送用トレイ(70)に分けて処理を施す場合であっても、全ての搬送用トレイ(70)上の半製品(80)に対する処理の条件(例えば半製品(80)に当たる熱風の温度や流速)を同じにすることができる。このため、本体部(15)から搬出される搬送用トレイ(70)上のPTFE粉末の特性(具体的には含水率と押出圧)を均一化でき、安定した品質のPTFE粉末を得ることができる。
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。本実施形態は、上記実施形態1の製造装置(10)の本体部(15)に予熱ゾーン(46)を形成し、この予熱ゾーン(46)において半製品(80)を加熱する予熱工程を行うようにしたものである。ここでは、本実施形態の製造装置(10)の構成および動作について、上記実施形態1と異なる点を説明する。
−製造装置−
図9に示すように、本実施形態の製造装置(10)では、本体部(15)の上昇側空間(26)の一部が予熱ゾーン(46)を構成している。具体的に、この上昇側空間(26)は、その下端部が投入ゾーン(44)を、投入ゾーン(44)の上端から所定高さに亘る部分が予熱ゾーン(46)を、予熱ゾーン(46)の上端から所定高さに亘る部分が第1乾燥ゾーン(41)を、第1乾燥ゾーン(41)の上側に位置する残りの部分が第2乾燥ゾーン(42)をそれぞれ構成している。
上記予熱ゾーン(46)は、搬送用トレイ(70)上の半製品(80)を加熱してその温度を上昇させるための空間であり、予熱空間あるいは収容空間を構成している。本体ケーシング(20)では、その背面(即ち、奥側の側面)のうち予熱ゾーン(46)に臨む部分に予熱用吹出口(35)が開口し、その前面(即ち、手前側の側面)のうち予熱ゾーン(46)に臨む部分に予熱用吸込口が開口している。
本体部(15)は、予熱ゾーン(46)内に収容された半製品(80)を加熱するために、予熱ゾーン(46)内で空気を流通させるように構成されている。具体的に、本体部(15)は、熱処理ゾーン(43)内の空気を予熱用吸込口から取り込み、取り込んだ空気の全部を予熱用吹出口(35)から予熱ゾーン(46)へ送り返す。その際、本体部(15)は、予熱用吸込口から取り込んだ空気を例えば80℃程度にまで加熱し、加熱した空気を予熱用吹出口(35)から予熱ゾーン(46)へ供給する。本体部(15)のうち予熱ゾーン(46)を形成する部分は、予熱部(19)を構成する。
−製造方法−
本実施形態の製造装置(10)によって実行される製造方法について説明する。
この製造装置(10)において、投入ゾーン(44)へ搬入された搬送用トレイ(70)は、トレイ駆動部(50)によって予熱ゾーン(46)へ移送される。この時点において、搬送用トレイ(70)上の半製品(80)の温度は、製造装置(10)の周囲温度(例えば20℃前後)とほぼ同じになっている。
予熱ゾーン(46)では、搬送用トレイ(70)上の半製品(80)(即ち、湿り粉末)を対象とした予熱工程が行われる。具体的に、予熱ゾーン(46)では、搬入された搬送用トレイ(70)がゆっくりと上方へ移動してゆき、移動している搬送用トレイ(70)上の半製品(80)が予熱ゾーン(46)内を流通する熱風に晒される。半製品(80)は熱風によって加熱され、そこに含まれるPTFE粒子(81)と水の温度が上昇してゆく。搬送用トレイ(70)が予熱ゾーン(46)の出口に到達した時点において、半製品(80)に含まれるPTFE粒子(81)と水の温度は、搬送用トレイ(70)が予熱ゾーン(46)へ搬入された時点に比べて大幅に高い値(例えば60℃〜70℃程度)となっている。予熱ゾーン(46)で加熱された半製品(80)を載せた搬送用トレイ(70)は、予熱ゾーン(46)から第1乾燥ゾーン(41)へと運ばれてゆく。
第1乾燥ゾーン(41)では、搬入されてきた搬送用トレイ(70)上の半製品(80)に対してマイクロ波が照射される。第1乾燥ゾーン(41)で行われる第1乾燥工程は、図2に示す製造装置(10)におけるものと同じである。つまり、半製品(80)に含まれる水は、マイクロ波を吸収して温度上昇し、蒸発して空気中へ放出されてゆく。
−実施形態2の効果−
上述したように、PTFE粒子(81)の温度が高くない状態の半製品(80)にマイクロ波を照射する場合には、半製品(80)に含まれる水がマイクロ波を吸収して一旦は蒸発するものの低温のPTFE粒子(81)と接触して凝縮し、再び液体に戻ってしまうという現象が起こると推測される。
それに対し、本実施形態で第1乾燥ゾーン(41)へ搬送されてきた搬送用トレイ(70)上の半製品(80)は、予熱ゾーン(46)で加熱されて比較的高温の状態となっている。このため、本実施形態の第1乾燥ゾーン(41)では、既に温度が比較的高くなっている半製品(80)にマイクロ波を照射するため、半製品(80)中の水がマイクロ波を吸収して一気に蒸発し、更にはPTFE粒子(81)と接触しても凝縮せずに空気中へ放出されてゆく。従って、本実施形態によれば、蒸発した水分のうちPTFE粒子(81)と接触して凝縮するものの量を大幅に削減でき、第1乾燥ゾーン(41)での第1乾燥工程に要する時間を短縮できる。
《その他の実施形態》
上記各実施形態の製造装置(10)や製造方法については、以下に示すような変形例が考えられる。
−第1変形例−
上記製造装置(10)では、本体部(15)に複数のマイクロ波発生器(60)を設けてもよい。
例えば、図10に示すように、第1ゾーン形成部(21)の側壁に沿って複数のマイクロ波発生器(60)を上下一列に配置してもよい。また、図11に示すように、第1乾燥ゾーン(41)の上側の隅角部に複数のマイクロ波発生器(60)を配置してもよい。
−第2変形例−
上記製造装置(10)では、マイクロ波発生器(60)の前面に、発生したマイクロ波を拡散させるための部材を設けてもよい。
例えば、図12に示すように、マイクロ波発生器(60)の前面にパンチングメタル(61)を設け、マイクロ波発生器(60)から照射されたマイクロ波をパンチングメタル(61)で拡散させるようにしてもよい。
また、図13に示すように、マイクロ波発生器(60)の前面に複数の金属製のフラップ(62)を並べ、各フラップ(62)の角度を調節することでマイクロ波発生器(60)から照射されたマイクロ波を拡散させるようにしてもよい。
また、図14に示すように、マイクロ波発生器(60)の前面に金属製のプロペラからなるスターラ(63)を設置し、マイクロ波発生器(60)から照射されたマイクロ波を回転するスターラ(63)によって拡散させるようにしてもよい。
−第3変形例−
上記製造装置(10)では、本体ケーシング(20)の全体を金属製としているが、そのうちの第1ゾーン形成部(21)だけを金属製とし、残りの部分の材質を金属以外にしてもよい。
−第4変形例−
上記製造装置(10)では、搬送用トレイ(70)をゆっくりとした速度(例えば毎分2cm程度)で連続的に移動させているが、搬送用トレイ(70)を所定の時間間隔で間欠的に移動させるようにしてもよい。この場合には、搬送用トレイ(70)を、例えば5分間ごとに10cmずつ移動させることになる。つまり、この例では、搬送用トレイ(70)を10cmだけ移動させてからその位置に保持し、直前に搬送用トレイ(70)の移動を開始した時点から5分間が経過すると、搬送用トレイ(70)を更に10cmだけ先へ進めることになる。
−第5変形例−
上記各実施形態の製造装置(10)及び製造方法では、含ふっ素樹脂の一種であるPTFEを対称としているが、これらの対象はPTFEに限定されるものではない。例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリふっ化ビニリデン(PVDF)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等の粉末を製造するために、本実施形態の製造装置(10)及び製造方法を用いてもよい。
また、本実施形態の製造装置(10)及び製造方法によって製造される粉末は、撥水性を有する物質からなる粉末(即ち、撥水性粉末)であればよく、含ふっ素樹脂からなる粉末には限定されない。ここで、一般に、撥水性の指標となるのは固体表面での水滴の接触角であることが知られている。そして、ある物質からなる固体の表面における水滴の接触角が90°以上である場合は、その物質には撥水性があると一般的に言われている。
このような撥水性粉末の例としては、汎用樹脂の粉末や、いわゆるエンジニアリングプラスチックの粉末等が挙げられる。具体的には、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂(アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル‐スチレン樹脂)、メタクリル樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリアニレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、含ふっ素樹脂などの粉末が、撥水性粉末の例として挙げられる。
また、対象とする撥水性粉末の種類や用途によっては、熱処理工程を行う必要がない場合もある。このような場合は、製造装置(10)の本体部(15)から第3処理部(18)を省略し、第1乾燥工程と第2乾燥工程だけを行うことになる。
−第6変形例−
上記各実施形態の製造装置(10)の第3処理部(18)では、半製品(80)に残存する不純物を蒸発させて除去する工程(不純物除去工程)を行ってもよい。つまり、本実施形態の製造方法では、この不純物除去工程を第3工程として行ってもよい。
ここで、PTFE粉末の製造工程では、例えばPTFE粒子(81)の生成反応を促進させることを目的として、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩などの含フッ素乳化剤等が添加される場合がある。このような添加剤を加えると、その添加物が半製品(80)中に不純物として残留することがある。そこで、本変形例の不純物除去工程では、半製品(80)をそこに含まれる不純物の沸点や昇華点よりも高温に保つようにしている。例えば、添加剤がパーフルオロオクタン酸アンモニウム塩である場合は、その昇華点は約120℃であるため、半製品(80)の温度が120℃よりも高い値に保たれる。このように半製品(80)の温度を不純物の沸点よりも高温に保つと、半製品(80)中の不純物が蒸発してPTFE粉末から除去される。
本変形例の不純物除去工程では、蒸発した不純物を第3処理部(18)から排出するのが望ましい。従って、本変形例の第3処理部(18)では、半製品(80)を収容する空間の換気を行いながら、その空間内において不純物の沸点よりも高温の熱風を流通させるのが望ましい。
図15に白抜きの三角印でプロットしたように、半製品(80)の含水率は、搬送用トレイ(70)が第3処理部(18)へ到達するまでの間に急激に低下してゆき、搬送用トレイ(70)が第3処理部(18)へ搬入された時点では殆ど0%になっている。それに対し、半製品(80)における添加剤の残留量は、同図に黒塗りの三角印でプロットしたように、搬送用トレイ(70)が第2処理部(17)の中頃を過ぎた頃から低下し始め、搬送用トレイ(70)が第3処理部(18)の出口へ到達した時点になってやっと数ppmにまで低下する。つまり、搬送用トレイ(70)が第2処理部(17)の中頃に至るまでは、PTFE粒子(81)の温度が添加剤の沸点よりも大幅に低いため、添加剤はPTFE粒子(81)から殆ど蒸発してゆかない。そして、搬送用トレイ(70)が第3処理部(18)に達した頃にはPTFE粒子(81)の温度が添加剤の沸点よりも高温となり、添加剤がPTFE粒子(81)から盛んに蒸発してゆくことになる。
本変形例の第3処理部(18)において、ある程度の時間に亘って半製品(80)を160℃程度に保つ場合には、PTFE粉末から不純物が蒸発してゆくと同時に、PTFE粉末の押出圧が安定化する。つまり、この場合の第3処理部(18)では、PTFE粉末から不純物を蒸発させる不純物除去工程と、PTFE粉末の押出圧を安定化させるための熱処理工程とが、同時に並行して行われることになる。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。