JP2008223264A - 防水機能を備えた床 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価でリサイクル性に優れた材料を使用しつつ、その材料自体の特性に依存しない構造の防水機能を備えた床を提供する。
【解決手段】衛生設備室が設置される建物床上に据え付けられるフレーム状架台と、フレーム状架台の上に固定される板状架台と、板状架台の上に支持され廃プラスチックから分離されたポリプロピレン及びポリエチレンのみから実質的になる樹脂材を成形してなる防水パンとを備えて防水機能を備えた床が構成される。
【選択図】図1
【解決手段】衛生設備室が設置される建物床上に据え付けられるフレーム状架台と、フレーム状架台の上に固定される板状架台と、板状架台の上に支持され廃プラスチックから分離されたポリプロピレン及びポリエチレンのみから実質的になる樹脂材を成形してなる防水パンとを備えて防水機能を備えた床が構成される。
【選択図】図1
Description
本発明は、例えば浴室などの衛生設備室に使用される防水機能を備えた床に関する。
例えば浴槽と洗い場とを1つのユニットとして構成したユニットバスなどの浴室の床は、一般に、FRP(Fiber Reinforced Plastic)が用いられている。これは、FRPが、浴室の床に求められる強度、防水性、成形性、意匠性、コストなど、様々な要件をバランスよく満たしているためであり、ユニットバス誕生から現在までの長い間、中心的な素材となっている。
しかし、近年の資源循環型社会形成のための様々な動きを受けて、リサイクル性の低いFRPなどの熱硬化性樹脂を用いることが中心だった浴室業界にも、リサイクル性に優れた熱可塑性樹脂を用いることが提案されてきている(例えば、特許文献1、2)。
ただし、一般的な熱可塑性樹脂は、特別高価なものではないが、現在の中心的な普及材料であるFRPなどの熱硬化性樹脂に比べ、コストメリットがそれほど大きなものでもないため、なかなか抜本的な思い切った材料変更には至らず、実質的にはほとんど普及していないのが実情である。そこで、熱可塑性樹脂の普及を広く促し、資源循環型社会形成に大きく貢献するためには、コストメリットのより大きな(安価な)リサイクル材(再生樹脂)を使うことが考えられる。
しかし、リサイクル材は一般家庭等から排出されるプラスチックゴミ所以であるため、その材料的な構成比率や強度などの材料特性のばらつきがあり、よって、それを用いて部材を製造した場合、その製品に強度面や耐久性の面での品質の保証を与えにくく、強度や耐久性を要求される床構造部材には適用しにくい制約があった。
リサイクル材であっても構成材料の割合や強度的な特性などを設計的に許容できるばらつき内に抑えるように材料を精製、改良、改質等し、それを用いて防水パン等を製作することも考えられるが、その場合、余分な手間とコストがかかり、安価なリサイクル材を用いることによる利点が損なわれてしまう。
特開平11−210039号公報
特開2001−248198号公報
本発明は、安価でリサイクル性に優れた材料を使用しつつ、その材料自体の特性に依存しない構造の防水機能を備えた床を提供する。
本発明の一態様によれば、衛生設備室が設置される建物床上に据え付けられるフレーム状架台と、前記フレーム状架台の上に固定される板状架台と、前記板状架台の上に支持され、廃プラスチックから分離されたポリプロピレン及びポリエチレンのみから実質的になる樹脂材を成形してなる防水パンと、を備えたことを特徴とする防水機能を備えた床が提供される。
本発明によれば、安価でリサイクル性に優れた材料を使用しつつ、その材料自体の特性に依存しない構造の防水機能を備えた床が提供される。
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る防水機能を備えた床の分解斜視図である。
図2は、同第1の実施形態に係る床の要部断面構造を表す模式図である。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る防水機能を備えた床の分解斜視図である。
図2は、同第1の実施形態に係る床の要部断面構造を表す模式図である。
本実施形態では、例えば、浴室における洗い場の床を例に挙げて説明する。本実施形態に係る床は、フレーム状架台11と、板状架台12と、防水パン13と、表面意匠シート14とを備える。
フレーム状架台11は、支持脚21を介して、浴室が設置される建物床上に据え付けられる。フレーム状架台11は、浴室構造体の最下部で、板状架台12、防水パン13、壁パネル16、天井パネル(図示せず)等の重みや、床上の人が動くことによる動荷重を受けとめる土台として機能する。したがって、フレーム状架台11は、十分な強度を有し、例えば、鋼材からなる角材を縦横に組み合わせて構成される。また、支持脚21の下端部は、支持脚21の根元部に対してねじ込まれたボルト状構造になっており、設置高さの調整が可能となっている。
フレーム状架台11の上には、例えば、ネジ止めなどにより、板状架台12が固定される。板状架台12は、洗い場床面とほぼ同じ平面寸法を有する板状を呈し、フレーム状架台11と共に床の機械的強度を高める役割を担うと共に、床面のたわみや曲げに対する面強度(剛性)を高める役割を担う。
板状架台12は、例えば、石膏ボード、木質系ボード、硬質ポリウレタンフォームなどの芯材を薄い2枚の鋼板で挟んだサンドイッチ鋼板等からなる。これら材料は、樹脂に比べて、温度変化による寸法変化が小さく、形状安定性に優れ、組み立てに必要な精度を得ることができる。そのため、浴室の骨組みとなる柱部材15(図1において2点鎖線で表す)を取り付けるための取付金具22など、浴室内寸法を決定する部材は、板状架台12に固定される。例えば、本実施形態では、取付金具22を、板状架台12の四隅に固定させている。なお、取付金具22等の浴室内寸法決定部材を、同様に寸法安定性に優れ、鋼材等からなるフレーム状架台11に固定させてもよい。
また、特にサンドイッチ鋼板構造を採用した板状架台12において、硬質ポリウレタンフォームやロックウールボードなどの断熱性に優れた芯材を用いれば、床面を冷めにくくでき、使用者に不快感(冷たい感じ)を与えにくくできる。
板状架台12の上には、防水パン13が載置支持される。防水パン13は、例えば、ネジ、接着剤、両面テープ、樹脂の弾性変形を利用した係合方式などにより、板状架台12上に固定される。あるいは、防水パン13を板状架台12に固定させずに、板状架台12の上に載置させただけでもよい。この場合でも、板状架台12の四隅に固定された前述の取付金具22によって、防水パン13の面方向の位置ズレを規制することができる。
防水パン13は、浴室外部に湯水を漏出させない防水性を有する。防水パン13は、浅底の器状を呈し、その底面部には排水用開口28が形成されている。また、防水パン13の底面の表面部には、縁部から排水用開口28に向けて下向き傾斜した排水勾配が付けられている。
防水パン13の底面部中央には、点検口が開口されている(図1では、その点検口を塞ぐ蓋27を図示)。また、板状架台12の中央にも点検口23が開口され、この点検口23及び防水パン13に形成された点検口を一致させて防水パン13は板状架台12上に載置され、それら点検口を介して、フレーム状架台11の裏側に設けられた支持脚21の高さ調整やメンテナンスなどを行える。FRPのモノコック構造からなりその表面が意匠面となる従来の構造では、点検口を形成すると意匠性を損なってしまうが、本実施形態では、後述するように、表面意匠シート14を防水パン13上に敷設することで、蓋27と点検口との境い目を隠すことができる。
また、板状架台12及び防水パン13のそれぞれには、図示しない排水トラップに通じる排水用開口24、28が形成されている。これら排水用開口24、28から排水トラップに導かれた排水は、図示しない排水管を介して浴室外に排水される。
人や、床上設置物の重量を支える構造物の底としての機械的強度、および床の面強度(たわみや曲げに対する剛性)は、フレーム状架台11と板状架台12とによって十分に確保されるので、防水パン13は、防水機能のみ有すればよい。このため、例えば、後述するように、素材強度を優先せず安価な樹脂材を防水パン13として用いることができ、また、補強リブを設けたり、ガラス繊維等の補強材を含有させるなどの強度を高めるための各種工夫を施さなくてよい。したがって、防水パン13に要するコスト及び洗い場床全体のコスト低減が図れる。
本実施形態では、循環型社会形成推進基本法に基づく容器包装リサイクル法で扱われる例えば食品容器梱包廃棄物等の廃プラスチックの中から所望の熱可塑性樹脂を分離抽出し、それを材料に防水パン13を成型する。容器梱包廃棄物は、一般家庭から日常的に排出され、各自治体がそれを回収し、処理業者によって処分、あるいは再利用されるプラスチックゴミであるため、様々な種類の樹脂の混合体となっているが、本実施形態では、それらプラスチックゴミを構成する様々な熱可塑性樹脂素材の中から、比較的含有量が多く、再利用時の成形性もよく、リサイクル性に優れた材料であるポリプロピレン及びポリエチレンを防水パン13の材料として用いる。
すなわち、防水パン13を構成する樹脂材は、廃プラスチックから分離されたポリプロピレン及びポリエチレンを90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上含み、防水パン13を構成する樹脂材は、廃プラスチックから分離されたポリプロピレン及びポリエチレンのみから実質的になる。したがって、本実施形態によれば、非常に安価に防水パン13を形成できるとともに、廃棄物を再利用することによって環境面への負荷も小さくすることができる。もちろん、ポリプロピレン及びポリエチレンは熱可塑性樹脂であるので、不要になったら再度溶かして作り直しが可能であるため、資源循環型社会の形成に大きく貢献できる。
成型性、寸法安定性、強度など成型品の材料として要求される各種の性能においては、一般にポリエチレンよりもポリプロピレンの方が優れている面が多い。しかし、ポリプロピレンは低温時に脆くなりやすいという弱点がある。これに対して、ポリエチレンは寸法安定性、強度等はポリプロピレンより劣るが、粘り強くて割れにくく、低温時もその性質が変わりにくい特性を持つ。すなわち、ポリプロピレンにポリエチレンを混合すればポリプロピレンの持つ弱点をポリエチレンによって補填することができ、結果として、ポリプロピレンの優れた特性である成形性、寸法安定性、強度を確保しつつ、ポリエチレンの配合によって耐衝撃性、低温脆性を向上させることができる。ポリプロピレンとポリエチレンは同じオレフィン系の熱可塑性樹脂に属し、お互いの相溶性が比較的高く、両者の相乗的効果を得やすい。
ポリプロピレンに対してポリエチレンを配合することでポリプロピレンの弱点を補うことができるが、ポリエチレンの配合割合があまり高くなると、逆にポリプロピレンの優れた特性を打ち消す場合があるため、ポリプロピレンとポリエチレンとの配合割合は、ポリエチレンよりもポリプロピレンの方を多くすることが望ましい。
なお、ポリプロピレンの耐衝撃性や低温脆性を向上させるために、グラスファイバーなどの繊維質を添加することも考えられるが、グラスファイバーを添加した場合、コストアップやリサイクル性の低下をまねいてしまう。これに対して、本実施形態では、グラスファイバーなどは添加されず、ポリプロピレンに対してポリエチレンを添加することで耐衝撃性や低温脆性の向上を図っており、コストアップやリサイクル性の低下をまねかない。
また、ポリプロピレンとポリエチレンは物理的特性が良く似たオレフィン系の樹脂であり、ともに比重が1未満であるため、水中比重分離法を用いて、他の材料からポリプロピレンとポリエチレンとの混合物を分別するのは容易であるが、ポリプロピレンとポリエチレンとを相互に分離するのは難しくコストがかかる。したがって、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合材料を用いることで、両者を互いに分離する必要が無く、そのためのコストを要せず、素材コストがより安価になり、結果として安価な防水パン13を提供できる。
廃プラスチック材から分離・精製して得られる樹脂材は特性のばらつきが大きい傾向にあり、その樹脂材を用いた防水パン単独で浴室洗い場床として構成する場合、所望の強度、耐久性、寸法安定性が得られない場合がある。そこで、本実施形態では、廃プラスチックを再利用した材料からなる防水パン13自体には強度、耐久性、寸法安定性等を求めず、それら要件を備えた金属などの素材からなるフレーム状架台11及び板状架台12と組み合わせることで、安価でリサイクル性に優れ、且つ浴室洗い場床として必要な特性を備えた床構造を実現している。このような構造とすることで、所望の特性の安定した保証が得にくい材料を用いた場合でも、洗い場床として問題のない構造を成り立たせることができ、廃プラスチック材の利用価値を高め、リサイクルを促進し、資源循環型社会の形成に大きく貢献できる。
防水パン13の表面自体を、洗い場床の意匠面としてもよいが、廃プラスチックを分離・精製した樹脂材は意匠性に優れないことがあり、また点検口の蓋27を隠したい場合などには、別途、防水パン13の表面に表面意匠シート14を敷設してもよい。表面意匠シート14にも、排水トラップに通じる排水用開口29が形成される。
図2において2点鎖線で表すように、洗い場の壁を構成する壁パネル16が、防水パン13の縁部に立設される。壁パネル16の側端部は、図1に表す前述した柱部材15によって支えられる。表面意匠シート14と、防水パン13との境い目は、壁パネル16によって隠され、その境い目が表面に露見することによる見栄えの悪化を防げる。
以上説明したように、本実施形態では、浴室洗い場床に要求される強度、防水性、意匠性などの機能を、FRP単一材料によるモノコック構造(一体構造)で充足させるのではなく、それら各機能を担う別々の部材を組み合わせることで、全体として強度、防水性、意匠性を充足する構造体としている。各部材は、単一機能だけを充足すればよく、素材選択肢が広がり安価なものを用いることができ、これら安価なものを組み合わせることで、高機能なFRPのモノコック構造に比べて、全体のコストも低減できる。
強度は、フレーム状架台11及び板状架台12が担い、防水性は、防水パン13が担い、意匠性は、表面意匠シート14が担う。フレーム状架台11及び板状架台12には、防水性や意匠性は要求されず、単に強度だけを考慮して材料や構造を決定すればよく、例えば鋼材を用いた安価な汎用構造を採用できる。防水パン13には、強度や意匠性が要求されず、単に防水性だけを考慮して、前述したように、廃プラスチックから分離された非常に安価な再生樹脂を用いることができる。結果として、床構造全体のコストを、FRPの一体構造に比べて大幅に低減することができる。
また、単一材料による一体構造でないため、今までにない付加価値をつけやすい。表面意匠シート14は、ポリプロピレンやポリエチレン等の汎用樹脂や、水に強く、意匠性に優れ、浴室床の表面部の機能を満たす仕上げ素材等が用いられる。例えば、表面意匠シート14を軟質仕上げとしたり、断熱機能を付加するなどによって、FRP単一材料による一体構造では実現できない、やわらかくて暖かい質感の床という付加価値を加えることも可能となる。また、単一材料による一体構造に比べて、素材選択性や設計の自由度が高いため、様々な要求に対して柔軟且つ最適な組み合わせを実現可能となる。
また、本実施形態では、各部材は、例えば、ネジ止めや接着等、相互に分離可能に固定され、廃棄時の分解分別も容易でリサイクル性に優れる。
また、FRP単一材料によるモノコック構造では、成型方法が限られ、多大な初期投資が必要なホットプレス製法しか量産方法が選択できなかった。これに対して、防水パン13に用いられる熱可塑性樹脂(ポリプロピレンとポリエチレンとの混合樹脂)は、型投資額が比較的小さい射出、真空、スタンピング、ブローなどの低圧成型法を採用でき、このような初期投資額の小さい成型方法を、特に需要(出荷数)のそれほど多くないタイプの製品に対して適用すれば、売上高に対する投資額の増大を抑えられる。防水パン13以外のフレーム状架台11、板状架台12等は、生産型が基本的に必要ない非モールドで構成可能である。
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態に係る床の分解斜視図である。
図4は、同第2の実施形態に係る床の要部断面構造を表す模式図である。
図3は、本発明の第2の実施形態に係る床の分解斜視図である。
図4は、同第2の実施形態に係る床の要部断面構造を表す模式図である。
本実施形態に係る床は、フレーム状架台51と、板状架台52と、防水パン53と、表面意匠シート60とを備える。
フレーム状架台51は、支持脚63(図4に図示)を介して、浴室が設置される建物床上に据え付けられる。フレーム状架台51は、浴室構造体の最下部で、板状架台52、防水パン53、壁パネル16、天井パネル(図示せず)等の重みや、床上の人が動くことによる動荷重を受けとめる土台として機能する。フレーム状架台51は、例えば、弓形の2本の鋼材51aと、まっすぐな棒状の2本の鋼材51bとを縦横に組み合わせて構成される。
本実施形態では、浴室の骨組みとなる柱部材を取り付けるための取付金具54は、フレーム状架台51の四隅に位置する弓形鋼材51aの端部に固定させている。
フレーム状架台51の上には、例えば、ネジ止めなどにより、板状架台52が固定される。板状架台52は、凹部と凸部とが長手方向に交互に繰り返された波形に成形されたデッキプレートであり、フレーム状架台51と共に床の機械的強度を高める役割を担うと共に、床面のたわみや曲げに対する面強度(剛性)を高める役割を担う。
板状架台52として単一鋼板を使用した場合にはデッキプレート状に加工することで平板の場合に比べて剛性を高めることができる。したがって、平板の場合よりも薄肉にでき材料費を低減できる。板状架台52は、1枚の板に限らず、複数のデッキプレートを継ぎ合わせて構成してもよい。例えば、図3に表す具体例では、3枚のデッキプレートが1点鎖線aで継ぎ合わされて板状架台52を構成している。継ぎ合わせるデッキプレートの数を変えることで、床の長手方向寸法に柔軟に対応できる。
なお、必要に応じて、断面L字状の金属製補強部材62を、板状架台52の縁部に添えて設けて、より強度を高めるようにしてもよい。
板状架台52の上には、防水パン53が載置支持される。防水パン53は、浴室外部に湯水を漏出させない防水性を有する。防水パン53は、浅底の器状を呈し、その底面部には排水用開口61と、点検口(図3では、その点検口を塞ぐ蓋59を図示)が形成されている。板状架台52にも点検口55が開口され、この点検口55及び防水パン53に形成された点検口を一致させて防水パン53は板状架台52上に載置され、それら点検口を介して、フレーム状架台51の裏側に設けられた支持脚63(図4に図示)の高さ調整やメンテナンスなどを行える。
板状架台52及び防水パン53のそれぞれには、図示しない排水トラップに通じる排水用開口56、61が形成されている。これら排水用開口56、61から排水トラップに導かれた排水は、図示しない排水管を介して浴室外に排水される。
本実施形態においても、防水パン53を構成する樹脂材は、廃プラスチックから分離されたポリプロピレン及びポリエチレンを99%以上含み、防水パン53を構成する樹脂材は、廃プラスチックから分離されたポリプロピレン及びポリエチレンのみから実質的になる。したがって、非常に安価に防水パン53を形成できるとともに、廃棄物を再利用することによって環境面への負荷も小さくすることができ、資源循環型社会の形成に大きく貢献できる。
また、人や、床上設置物の重量を支える構造物の底としての機械的強度、および床の面強度(たわみや曲げに対する剛性)は、フレーム状架台51と板状架台52とによって十分に確保されるので、防水パン53は、防水機能のみ有すればよい。このため、前述したような安価な再生樹脂を防水パン53として用いることができ、また、補強リブを設けたり、ガラス繊維等の補強材を含有させるなどの強度を高めるための各種工夫を施さなくてよい。したがって、防水パン53に要するコスト及び洗い場床全体のコストの低減が図れる。
防水パン53の表面自体を、洗い場床の意匠面としてもよいが、別途、防水パン53の表面に表面意匠シート60を敷設してもよい。図4において2点鎖線で表すように、洗い場の壁を構成する壁パネル16が、防水パン53の縁部に立設される。表面意匠シート60と、防水パン53との境い目は、壁パネル16によって隠され、その境い目が表面に露見することによる見栄えの悪化を防げる。
本実施形態においても、浴室洗い場床に要求される強度、防水性、意匠性などの機能を、FRP単一材料によるモノコック構造(一体構造)で充足させるのではなく、それら各機能を担う別々の部材を組み合わせることで、全体として強度、防水性、意匠性を充足する構造体としている。各部材は、単一機能だけを充足すればよく、素材選択肢が広がり安価なものを用いることができ、これら安価なものを組み合わせることで、高機能なFRPのモノコック構造に比べて、全体のコストを低減できる。また、各部材は、例えば、ネジ止めや接着等、相互に分離可能に固定され、廃棄時の分解分別も容易でリサイクル性に優れる。
[第3の実施形態]
図5は、本発明の第3の実施形態に係る防水機能を備えた床の要部断面構造を表す模式図である。なお、前述した実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図5は、本発明の第3の実施形態に係る防水機能を備えた床の要部断面構造を表す模式図である。なお、前述した実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
防水パン13において、その外周部13aより内側には、面方向に伸縮可能な伸縮許容部が設けられている。本実施形態では、伸縮許容部は、防水パン13の裏面に形成されたスリット40によって構成される。
防水パン13の外周部13aは、板状架台12に固定される。図5に示す例では、例えばボルト41を用いて防水パン13の外周部13aを板状架台12に固定させているが、これに限ることはなく、防水パン13の外周部13aと板状架台12とを、接着剤、両面テープ、樹脂の弾性を利用した係合等によって固定させてもよい。
防水パン13においてスリット40を形成してなる伸縮許容部は、板状架台12の上に載置され、固定されておらず、板状架台12上で防水パン13の面方向に伸縮可能となっている。
温度変化により防水パン13が面方向に線膨張・収縮しようとすると、スリット40を形成してなる伸縮許容部が伸縮する。防水パン13に線膨張力が作用するとスリット40が広がる方向に伸縮許容部は伸びる。防水パン13に収縮力が作用するとスリット40が狭くなる方向に伸縮許容部は縮む。
防水パン13の外周部13aは、温度変化による寸法変化の小さい例えば金属材料からなる板状架台12に固定され、変形が制限されている。そして、その外周部13aよりも内側に、温度変化を受けたときに伸縮しやすい部分(伸縮許容部)を設けることで、防水パン13が温度変化環境下で膨張・収縮しようとしたときに、伸縮許容部が伸縮してくれることで、板状架台12に対して簡易的に拘束された外周部13aには、温度変化による変形の影響が及ばないようにした。
防水パン13の外周部13aは、浴室の内寸など基準となる寸法を規定する壁パネル16が載置される部分であり、その部分が変形せず寸法が安定しさえすれば、内側の部分が多少伸縮しても、部材間に隙間が形成される、過大な力がかかるなどの不具合が生じることがない。
本実施形態の構成を採用することで、FRPより線膨張係数が大きく寸法安定性に劣る樹脂材を防水パン13の素材として使用した場合でも、温度変化による寸法変化を起因とした不具合が起きない。
[第4の実施形態]
図6は、本発明の第4の実施形態に係る防水機能を備えた床の要部断面構造を表す模式図である。
図6は、本発明の第4の実施形態に係る防水機能を備えた床の要部断面構造を表す模式図である。
防水パン13における伸縮許容部としては、図6に表すように、防水パン13の表裏に互い違いに形成されたスリット40によって構成されるアコーディオン(蛇腹)形状の伸縮許容部であってもよい。
本発明は、浴室における洗い場床に限らず、浴槽設置部の床(防水パン)や、また、浴室以外にも例えばシャワー室、トイレ等の他の衛生設備室の床にも適用できる。
11…フレーム状架台、12…板状架台、13…防水パン、14…表面意匠シート、15…柱部材、16…壁パネル、40…スリット、51…フレーム状架台、52…板状架台、53…防水パン、60…表面意匠シート
Claims (11)
- 衛生設備室が設置される建物床上に据え付けられるフレーム状架台と、
前記フレーム状架台の上に固定される板状架台と、
前記板状架台の上に支持され、廃プラスチックから分離されたポリプロピレン及びポリエチレンのみから実質的になる樹脂材を成形してなる防水パンと、
を備えたことを特徴とする防水機能を備えた床。 - 前記防水パンは、面方向に伸縮可能な伸縮許容部を有することを特徴とする請求項1記載の防水機能を備えた床。
- 前記防水パンの表面及び裏面の少なくともいずれかに形成されたスリットによって、前記伸縮許容部が構成されることを特徴とする請求項2記載の防水機能を備えた床。
- 前記防水パンは、繊維状補強材を含まないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の防水機能を備えた床。
- 前記防水パンの表面に敷設された表面意匠シートをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の防水機能を備えた床。
- 前記衛生設備室の骨組みを構成する柱部材の取付金具が、前記板状架台または前記フレーム状架台に固定されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の防水機能を備えた床。
- 前記フレーム状架台は、鋼材からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の防水機能を備えた床。
- 前記板状架台は、2枚の金属板の間に芯材を挟んでなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の防水機能を備えた床。
- 前記芯材は、断熱材であることを特徴とする請求項8記載の防水機能を備えた床。
- 前記板状架台は、デッキプレートであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の防水機能を備えた床。
- 前記防水パン及び前記板状架台のそれぞれに点検口が設けられたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の防水機能を備えた床。
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