JP2008214547A - 繊維強化複合材料用プリプレグおよび繊維強化複合材料 - Google Patents

繊維強化複合材料用プリプレグおよび繊維強化複合材料 Download PDF

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Abstract

【課題】
高い難燃性を有し、かつ、取り扱い性に優れた繊維強化複合材料用プリプレグ、およびそれから得られる繊維強化複合材料を提供する。
【解決手段】
難燃性マトリックス樹脂、ガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂および強化繊維からなり、少なくとも一方の表面に難燃性マトリックス樹脂が偏在している複合材料用プリプレグであって、難燃性マトリックス樹脂には、芳香環含有量が50重量%以上の熱硬化性樹脂または難燃剤で難燃化した熱硬化性樹脂が用いられる。

【選択図】 図1

Description

本発明は、航空機用途、船舶用途およびその他一般産業用途に好適な繊維強化複合材料を得るためのプリプレグ、およびそれから得られる繊維強化複合材料に関するものである。
強化繊維、特に炭素繊維とマトリックス樹脂からなる炭素繊維強化複合材料は、その力学特性が優れていることから、ゴルフクラブ、テニスラケットおよび釣り竿などのスポーツ用品をはじめ、航空機や車両などの構造材料やコンクリート構造物の補強など幅広い分野で使用されている。最近は、炭素繊維が導電性を有することにより、炭素繊維強化複合材料が優れた電磁波遮蔽性を有し、さらに優れた力学特性を持つため、ノートパソコンやビデオカメラなどの電気・電子機器の筐体などにも使用され、筐体の薄肉化や機器の重量軽減などに役立っている。このような繊維強化複合材料は、熱硬化性樹脂を強化繊維に含浸して得られるプリプレグを積層し硬化して得られることが多い。
これらの用途の中で、特に航空機や車両などの構造材料や建築材料などにおいては、火災によって構造材料が着火燃焼し、有毒ガスなどが発生することは非常に危険であるため、材料に難燃性を付与することが強く求められている。
また、電気・電子機器用途においても、装置内部からの発熱や外部の高温にさらされることにより、筐体や部品などが発火し燃焼する事故を防ぐために、材料の難燃化が求められている。
熱硬化性樹脂の難燃性を向上させる方法として、熱硬化性樹脂に難燃剤を配合する方法が一般的である。熱硬化性樹脂の難燃剤としては、臭素化合物などのハロゲン化合物が最も一般的であり難燃効果が高い。しかしながら、ハロゲン化合物を含む熱硬化性樹脂組成物は、燃焼時に臭化水素などの有害物質を発生し、人体や自然環境に悪影響を及ぼす可能性があることから、その使用が制限されつつある。
そこで、代替の難燃剤として、リン系難燃剤、窒素系難燃剤および無機系難燃剤等を使用することが検討されている(特許文献1および特許文献2参照。)。しかしながら、一般的にこれらの難燃剤は、ハロゲン系難燃剤に比べて難燃効果が劣るため、多量に用いたり、これらの難燃剤を組み合わせて使用する必要がある。その結果、繊維強化複合材料の耐熱性や弾性率が大幅に低下するなど、難燃性以外の特性が損なわれるという問題があった。
また、難燃剤を添加せずに熱硬化性樹脂の難燃性を向上させる方法として、従来の熱硬化性樹脂と比べて芳香環含有量が高く、難燃性が優れているベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂およびシアネートエステル樹脂などを繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として用いる方法が挙げられる。しかしながら、ベンゾオキサジン樹脂をはじめとするこれらの熱硬化性樹脂は高い難燃性を有するものの、強化繊維と組み合わせてプリプレグとした際、粘度が高いために、プリプレグを積層した際にプリプレグ同士を接着するために必要なタック(粘着性)がなく、またドレープ性(柔軟性)が低いという課題を有している。
そこで、ベンゾオキサジン樹脂を用いたプリプレグの取り扱い性を改善する方法として、エポキシ樹脂とベンゾオキサジン樹脂の組み合わせが提案されている(特許文献3参照。)。しかしながら、この提案においては、エポキシ樹脂をベンゾオキサジン樹脂に配合することにより取り扱い性は向上するものの、配合されるエポキシ樹脂については、難燃性は考慮されておらず燃えやすい構造のものであった。またこの提案では、ベンゾオキサジン樹脂100重量部に対しエポキシ樹脂を100重量部程度と多量に配合するものであり、ベンゾオキサジン樹脂組成物の難燃性が低下するという課題があった。
国際公開2005−082982号パンフレット 特開平11−147965号公報 特開2006−233188号公報
本発明の目的は、上記した従来技術における問題を解決し、高い難燃性および機械特性を有し、かつ、取り扱い性に優れた繊維強化複合材料用プリプレグ、およびそれから得られる繊維強化複合材料を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を有するものである。すなわち、本発明の複合材料用プリプレグは、難燃性マトリックス樹脂、ガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂および強化繊維からなり、少なくとも一方の表面に難燃性マトリックス樹脂が偏在していることを特徴とする複合材料用プリプレグである。
本発明の複合材料用プリプレグの好ましい態様によれば、前記の難燃性マトリックス樹脂は、芳香環含有量が50重量%以上の熱硬化性樹脂または難燃剤で難燃化した熱硬化性樹脂であり、さらに好ましくは難燃性マトリックス樹脂は、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、シアネートエステル樹脂または難燃剤で難燃化した熱硬化性樹脂である。
本発明の繊維強化複合材料は、前記のいずれかに記載の複合材料用プリプレグを、難燃性マトリックス樹脂の偏在した面が最外面にくるように積層した積層体となし、それを硬化させてなるものである。
本発明によれば、繊維強化複合材料に要求される諸特性を満足しながら、難燃剤を加えなくとも、または少量の難燃剤を配合するだけで優れた難燃性を示し、かつ取り扱い性に優れた複合材料用プリプレグ、および繊維強化複合材料が得られる。
以下、本発明の複合材料用プリプレグと繊維強化複合材料について、詳細に説明する。
本発明の複合材料用プリプレグは、マトリックス樹脂と強化繊維とにより構成され、そのマトリックス樹脂は、難燃性マトリックス樹脂とガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂からなり、少なくとも一方の表面に、難燃性マトリックス樹脂が多く偏在しているものである。
本発明において用いられるマトリックス樹脂が難燃性であるとは、骨格中の芳香環含有量(以後、Aromatic ring Content、略してACということがある。)が50重量%以上である、および/またはマトリックス樹脂を硬化して得られる硬化物の燃焼時の残渣量が15重量%以上であることを示す。
ここでいう芳香環含有量(AC)は、以下のように説明することができる。ベンゼン環やナフタレン環など芳香環構造の炭素原子を多く含む樹脂は、燃焼とともに樹脂硬化物の表面に炭化層が形成され易く、その炭化層の形成により、総分解ガス量が減少するため燃焼が抑制され、結果として高い難燃性を示す。
ここでいうAC(重量%)は、次式で求められる。
・樹脂骨格中の芳香環に属する炭素原子の質量(g)/樹脂の総質量(g)×100
ACは、難燃性の観点から高い方が好ましいが、通常は50〜80重量%である。本発明において難燃性であるとはACが50重量%以上であることを示し、さらに好ましくは55重量%以上である。
また、ここでいうマトリックス樹脂を硬化して得られる硬化物の燃焼時の残渣量は、以下のように説明することができる。残渣とは、硬化物が燃焼した後に燃え残った難燃性成分であり、燃焼後の残渣量が多ければ多いほど、その樹脂硬化物は高い難燃性を示すと言える。
ここでいう燃焼後の残渣量は、次の方法によって求められる。すなわち、コーンカロリーメーター(東洋精機(株)製)などの熱量測定装置を用い、難燃性マトリックス樹脂を硬化して得られる幅50mm、長さ50mm、厚さ3mmの硬化板を用い、輻射量50.0kW/mで高電圧スパークを使って試料から発生する可燃性ガスに点火させた後、スパークを試料から離し、消火したときの残渣量(重量%)で測定される。残渣量(重量%)は、次式で求められ、上限値は100重量%である。
・残渣量=加熱後の樹脂硬化物の質量(g)/加熱前の樹脂硬化物の質量(g)×100
本発明で用いられる難燃性マトリックス樹脂は、マトリックス樹脂を硬化して得られる硬化物の燃焼時の残渣量が15重量%以上であり、より好ましくは20重量%以上である。
本発明において、難燃性マトリックス樹脂とは、骨格中の芳香環含有量(AC)が50重量%以上である、および/またはマトリックス樹脂を硬化して得られる硬化物の燃焼時の残渣量が15重量%以上であるという2つの条件のうち、少なくとも一方を満たすマトリックス樹脂であり、両条件を満たしていても良いし、どちらか一方のみを満たしていても良い。
本発明において、芳香環含有量(AC)が高く、ACが50重量%以上である樹脂としては、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、シアネートエステル樹脂およびエポキシ樹脂等が好ましく用いられる。
これらの樹脂のうち、本発明で好ましく用いられるベンゾオキサジン樹脂は、フェノール樹脂とアミン類から合成され、次の一般式(I)
Figure 2008214547
(式中、Rは、炭素数1〜12の鎖状アルキル基、炭素数3〜8の環状アルキル基、フェニル基、または炭素数1〜12の鎖状アルキル基で置換されたフェニル基から選ばれる1つであり、芳香環の酸素原子が結合している炭素原子のオルト位とパラ位の少なくとも一方の炭素原子には水素が結合している。)、または次の一般式(II)
Figure 2008214547
(式中、Rは水素原子または炭素数1〜12の鎖状アルキル基のいずれかを表し、それぞれのRは互いに同一であっても異なっていても良い。また、Xは、−CH−、−C(CH−、−CH(CH)−、−S−、−SO−、−CO−または−O−で表される基のいずれか、またはXを持たない構造から選ばれる1つである。)で示される構造単位を有する化合物である。
上記の一般式(I)におけるRの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基、o−エチルフェニル基、m−エチルフェニル基、p−エチルフェニル基、o−t−ブチルフェニル基、m−t−ブチルフェニル基、p−t−ブチルフェニル基、o−クロロフェニル基、およびo−ブロモフェニル基などを挙げることができる。これらの中でも、良好な取り扱い性を与えることから、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、およびo−メチルフェニル基が好ましい。
本発明において、ベンゾオキサジン樹脂としては、良好な取り扱い性や硬化性が得られることから、例えば、次の化学式(III)〜(XIII)
Figure 2008214547
(AC=42重量%)
Figure 2008214547
(AC=62重量%)
Figure 2008214547
(AC=66重量%)
Figure 2008214547
(AC=64重量%)
Figure 2008214547
(AC=60重量%)
Figure 2008214547
(AC=66重量%)
Figure 2008214547
(AC=69重量%)
Figure 2008214547
(AC=64重量%)
Figure 2008214547
(AC=64重量%)
Figure 2008214547
(AC=59重量%)
Figure 2008214547
(AC=66重量%)
で表される樹脂からなる群から選ばれるものが好ましく用いられる。
ベンゾオキサジン樹脂は、モノマーからなるものでも良いし、数分子が重合してオリゴマー状態となっていても良く、また、異なる構造を有するベンゾオキサジン樹脂を同時に用いても良い。異なる構造を有するベンゾオキサジン樹脂を同時に用いることにより、単一化合物のみを用いる場合と比べて、ベンゾオキサジン樹脂の結晶化が抑制されて樹脂組成物の粘度が下がり、より低温での取り扱いが容易となる場合がある。
ベンゾオキサジン樹脂には、ベンゾオキサジン樹脂用硬化触媒や、ベンゾオキサジン樹脂硬化用硬化剤および硬化助剤を含ませることができる。これにより、得られる繊維強化複合材料中間体の硬化性や取り扱い性を向上させることができる。
ベンゾオキサジン樹脂の硬化触媒としては、酸系硬化触媒、アミン系硬化触媒および求核試薬等が挙げられる。中でも、硬化性の点で酸系硬化触媒が好ましく用いられる。
酸系硬化触媒としては、カルボン酸、スルホン酸、フェノール化合物およびルイス酸等を挙げることができ、これらの中でも、ルイス酸が好ましく用いられる。ルイス酸は、ベンゾオキサジン環の酸素原子の非共有電子対への強い求核性を有し、ベンゾオキサジン樹脂の硬化性を向上させる効果がある。ルイス酸としては、例えば、三フッ化ホウ素錯体、三塩化ホウ素錯体などの三ハロゲン化ホウ素錯体が挙げられる。中でも、硬化性の点から、三塩化ホウ素アミン錯体や三塩化ホウ素ジメチル硫黄錯体等の三塩化ホウ素錯体が好ましく利用され、特に好ましい硬化触媒は三塩化ホウ素アミン錯体である。
また、酸無水物やスルホン酸エステル等のように、化合物自体はプロトンを持たないが加水分解等によりプロトンを発生する化合物も用いることができる。そのような化合物として、硬化性と保存安定性を両立させることからトルエンスルホン酸誘導体が好ましく用いられる。トルエンスルホン酸誘導体から得られるスルホン酸は、酸性度が高いためプロトン供与性が高く、ベンゾオキサジン環の開環により生成する水酸基を安定化させるため、硬化性を向上させる効果が大きい。これらの硬化触媒は、単独または複数種を併用しても良い。
かかる硬化触媒の配合量は、難燃性マトリックス樹脂中のベンゾオキサジン樹脂およびその他熱硬化性樹脂成分の合計100重量部に対し、0.5〜30重量部とすることが好ましく、より好ましくは1〜25重量部である。硬化触媒が多すぎると、硬化触媒が樹脂硬化物中に多量に残存してしまい、繊維強化複合材料の機械特性および難燃性が低下する場合がある。また、硬化触媒が少なすぎると、ベンゾオキサジン環の開環を促進させる効果が不足する場合がある。
本発明で用いられるフェノール樹脂は、フェノール類とホルムアルデヒドの縮合反応により得られる反応生成物である。具体的には、ノボラック型フェノール樹脂(AC=71重量%)、フェノールアラルキル型フェノール樹脂(AC=74重量%)およびビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(AC=79重量%)が挙げられる。
フェノール樹脂は硬化性を向上させるために、硬化剤と組み合わせても好ましく用いられる。フェノール樹脂用硬化剤としては、トルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、キシレンスルホン酸等の芳香族スルホン酸や、エチレングリコールホスフェート等のリン酸エステル、およびリン酸や有機酸などが好ましく用いられる。
本発明におけるシアネートエステル樹脂は、次の化学式(XIV)で表される単位構造を有する化合物である。
Figure 2008214547
(式中、nは1以上の整数、Aはn価の有機酸である。)
上記の化学式(XIV)で表されるシアネートエステル樹脂としては、1,3−または1,4−ジシアネートベンゼン、4,4‘−ジシアネートビフェニル、オルト置換ジシアネートエステル、ポリアレフィンオキシドシアネートエステル、およびトリシアネートエステルが好ましく用いられる。これらのシアネートエステル樹脂のうち、高いACを有し、成形性および耐熱性の観点から、ビス(4−シアネートフェニル)メタン型シアネートエステル樹脂(AC=58重量%)、ビス(4−シアネートフェニル)エタン型シアネートエステル樹脂(AC=55重量%)、2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン型シアネートエステル樹脂(AC=55重量%)、およびフェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(AC=57重量%)が特に好ましく用いられる。
シアネートエステル樹脂は、モノマーのみからなるものでも良いし、数分子が重合してオリゴマー状態となっていても良く、また、異なる構造を有するシアネートエステル樹脂を同時に用いても良い。
かかるシアネートエステル樹脂には、硬化性を向上させるために硬化剤を配合することができる。シアネートエステル樹脂用硬化剤としては、金属配位型硬化剤や活性水素型硬化剤が好ましく用いられる。
金属配位型硬化剤としては、銅アセチルアセトナート、オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛ならびに鉄、コバルト、亜鉛、銅、マンガンおよびチタンとカテコールのような2座配位子とキレート等を使用することができ、硬化性および成形性の観点から、銅アセチルアセトナートを好ましく用いられる。
かかる金属配位型硬化剤の配合量は、上記のマトリックス樹脂の硬化性と安定性の両立の面から、難燃性マトリックス樹脂中のシアネートエステル樹脂およびその他熱硬化性樹脂成分の合計100重量部に対し、0.001〜10重量部とすることが好ましく、より好ましくは0.01〜3重量部である。
活性水素型硬化剤としては、フェノール類を配合することが好ましい。フェノール類としては、例えば、フェノール性ヒドロキシル基を1個有する炭素原子が1〜10個含まれるアルキル基を有するアルキルフェノール等や、フェノール性ヒドロキシル基を2個有するビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、(フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、およびこれらのアルキル置換体、フェノール性ヒドロキシル基を3個以上有するポリフェノール等が好ましく用いられる。これらのうち、硬化性に優れる点から、フェノール性ヒドロキシル基を2個以上有する化合物を用いることが好ましい。これらフェノール類の配合量は、難燃性マトリックス樹脂中のシアネートエステル樹脂およびその他熱硬化性樹脂成分の合計100重量部に対し、0.01〜10重量部とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。
本発明で用いられるエポキシ樹脂は、ACが高く、耐熱性と難燃性に優れた構造を持つものが好ましく用いられる。このようなエポキシ樹脂としては、具体的には、下記の化学式(XV)
Figure 2008214547
(式中、nは正の数を表す。)で示されるビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(AC=63重量%)(下記構造式XV)が挙げられる。
エポキシ樹脂は、硬化性を向上させるために、硬化剤と組み合わせても好ましく用いられる。エポキシ樹脂用硬化剤としては、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォンのような芳香族アミン、脂肪族アミン、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、カルボン酸アミド、ポリフェノール化合物、ノボラック樹脂およびルイス錯体などが好ましく用いられる。
本発明で用いられる難燃性マトリックス樹脂は、熱硬化性樹脂に難燃剤を配合して難燃性を付与することもできる。ここで熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネートエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、マレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂、アルキド樹脂および付加硬化型ポリイミド樹脂などを挙げることができる。これらの中でも、繊維強化複合材料用途には、難燃性、耐熱性、弾性率および耐薬品性に優れたエポキシ樹脂やベンゾオキサジン樹脂が特に好ましく用いられる。
本発明において、マトリックス樹脂に難燃剤を添加した場合、マトリックス樹脂を硬化して得られる硬化物の燃焼時の残渣量が15重量%以上となり高い難燃効果を示す場合が多い。
本発明において好ましく用いられる難燃剤としては、有機系の難燃剤や無機系の難燃剤が挙げられる。有機系の難燃剤としては、ハロゲン難燃剤、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、反応型リン酸エステル系化合物、ホウ酸エステルおよび無水ホウ酸等が好ましく用いられる。無機系の難燃剤としては、赤燐、三酸化アンチモンや金属水酸化物等が好ましく用いられる。
ハロゲン難燃剤としては、臭素化合物や塩素化合物が用いられ、比較的少ない添加量で高い難燃効果を持ち、かつ物性や成形加工性の低下が少ないことから好適に用いられ、特に臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの併用が相乗効果をもたらし、最も高い難燃性を示す。
臭素系化合物としては、ヘキサブロムベンゼン、ビス(ジブロモプロピール)テトラブロモビスフェノールA、ビス(ジブロモプロピール)テトラブロモビスフェノールS、トリス(ジブロモプロピール)イソシアヌレート、トリス(トリブロモネオペンチール)ホスフェート、ビス(ペンタブロモ)フェニールエタン、トリス(トリブロモフェノオキシ)トリアジン、ポリブロモフェニルインダン、テトラブロモフタレート、トリブロモフェノール、ジブロモメタクレゾール、ネオペンチルグリコール、臭素化ポリスチレン、臭素化フェニレンオキサイド、臭素化フェノールおよび臭素化エポキシ樹脂などが挙げられる。
塩素系化合物としては、塩素化ポリエチレン、デクロランプラス、クロレンド酸および無水クロレンド酸などが挙げられる。
しかしながら、ハロゲン難燃剤は、燃焼時に臭化水素などの有害物質を発生し、またハロゲン難燃剤と好ましく併用される三酸化アンチモンと共に環境や人体に悪影響を及ぼす可能性がある。
また、ハロゲン難燃剤における難燃効果は、ハロゲン難燃剤を添加しないマトリックス樹脂の熱分解温度よりも低温で分解し、発生するハロゲン化水素が熱と酸素からポリマーを遮断することにより難燃性を発揮するものであるため、ハロゲン難燃剤を含むマトリックス樹脂を硬化して得られる硬化物は、燃焼時の残渣量が15%よりも少なくなる場合がある。
リン酸エステルとしては、トリアリルホスフェート、アルキルアリルホスフェート、アルキルホスフェート、ホスフォネートが挙げられる。トリアリルホスフェートとしては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル2,6−キシレニルホスフェート、ヒドロキシジフェニルホスフェート等がある。アルキルアリルホスフェートとして、オクチルジフェニルホスフェート等がある。アルキルホスフェートとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリn−ブチルホスフェート、トリイソブチルホスフォネート、トリイソブチルホスフォネートおよびトリス(2メチルヘキシル)ホスフェート等が挙げられる。ホスフォネートとしては、ジメチルメチルホスフォネート等が挙げられる。
縮合リン酸エステルとしては、レゾルシノールビス(ジホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等が挙げられる。
リン系難燃剤は、マトリックス樹脂の固相において炭化層、溶融ガラス層および発泡炭化層の生成や、気体相においてマトリックス樹脂が燃焼して発生する可燃性ガスのラジカルをトラップすることにより燃焼を抑制し難燃性を発揮するため、リン難燃剤を含むマトリックス樹脂を硬化して得られる硬化物は、燃焼時の残渣量が15重量%以上となり、高い難燃性を示す場合が多いことから好ましく用いられる。また、このリン系難燃剤の中で、分子中のリン原子重量含有率ができるだけ高い化合物がより高い難燃性を示すため、好ましく用いられる。
また、熱硬化性樹脂の分子内にリン原子を結合させた反応型リン酸エステル系化合物や、リン原子とSi原子が同一分子中に含まれている難燃剤や、リン原子と窒素原子が同一分子中に含まれている難燃剤は、マトリックス樹脂燃焼時の残渣生成効果が高いことから好ましく用いられる。
本発明において用いられるリン酸エステルは、難燃性マトリックス樹脂中の熱硬化性樹脂成分の合計100重量部に対し、0.1〜30重量部配合することが好ましい。リン酸エステルの配合量が30重量部を超えると、ガラス転移温度が低下するなど耐熱性が著しく損なわれる場合がある。リン酸エステルの配合量は、さらに好ましくは0.1〜25重量部であり、より好ましくは0.1〜20重量部である。
ホウ酸エステルとしては、より高い割合でホウ素を含むものが好ましく、具体的には、ポリボラート、例えばビボラートおよび無水ホウ酸が好ましく使用される。これらのホウ酸エステルは、マトリックス樹脂を火に当てる際のホウ素化合物中の含有ホウ素−酸素結合が増大するために、ガラス形成度を高め、表面にガラスの膜を形成することにより高い難燃性を発揮することから、ホウ酸エステルを含むマトリックス樹脂を硬化して得られる硬化物は、燃焼時の残渣量が15%以上となる場合が多く、好ましく用いられる。
アンモニウム塩としては、ホウ酸アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウムおよびポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化スズ、水酸化ジルコニウム、ドーソナイト、アルミン酸カルシウム、メタホウ酸バリウム、ホウ酸亜鉛、ホウ砂、カオリンクレーおよび炭酸カルシウム等が挙げられる。
これらの難燃剤は、単独でも複数種を混合してもよいし、予めマトリックス樹脂等に混練してマスターバッチ状にしたものを用いてもよい。
ただし、これらの難燃剤は多量に添加すると繊維強化複合材料のガラス転移温度が低下するなど機械物性を著しく損なう場合があるため、難燃剤はできうる限り少量とすることが好ましく、さらには難燃剤を含まなくとも難燃性を示すことが好ましい。
本発明で用いられるガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂は、25℃の温度でプリプレグに適度なタックやドレープ性を与えることができるものであり、25℃で流動性を示すマトリックス樹脂である。ここでいうガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いてJIS K7121(1987)に基づいて求めた中間点温度であり、また、結晶性の熱硬化性樹脂の融点は、JIS K7121(1987)に基づいて求めた融解ピーク温度である。
マトリックス樹脂の貯蔵弾性率G’は、一般的にタックとの相関が認められ、貯蔵弾性率G’の大きいマトリックス樹脂を用いたプリプレグが、優れたタックを示す傾向にある。
本発明で用いられるガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂は、プリプレグに適度なタックを発現させるためには、25℃の温度における貯蔵弾性率G’が20000〜500000Paであることが好ましく、かつ50℃の温度における貯蔵弾性率G’が50〜2000Paであることが好ましい。貯蔵弾性率G’がかかる範囲を超える場合は、タックが大きすぎるため、例えば誤ってプリプレグを重ねてしまった場合に剥離することが難しく、剥離して修正することが困難になる。また、貯蔵弾性率G’がかかる範囲に満たない場合には、タックが小さすぎ、プリプレグの積層工程において重ねたプリプレグが剥離しやすく、積層作業に支障をきたす場合がある。
また、ガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂の25℃複素粘度ηは、20000〜500000Pa・sであることが好ましく、かつ50℃の温度における複素粘度ηは、100〜2000Pa・sであることが好ましい。その粘度が低すぎると、マトリックス樹脂を強化繊維に含浸させてプリプレグを作製した際、マトリックス樹脂が強化繊維に沈み込み、プリプレグ表面のマトリックス樹脂が少なくなるため、表面に十分なタックが得られないことや、成型時にマトリックス樹脂の流動が大きく、強化繊維の乱れが発生することがある。また、その粘度が高すぎると、強化繊維への含浸が困難となったり、成形加工性および成形体品位に悪影響をきたす場合がある。
ここでいう25℃および50℃の温度における貯蔵弾性率G’および複素粘度ηは、次の方法によって求められる。すなわち、ARES:TA Instruments Japan社製などの動的粘弾性測定装置を用い、パラレルプレートを用い、昇温速度1.5℃/minで単純昇温し、歪み100%、周波数0.5Hz、プレート間隔1mmで25℃および50℃の温度で測定を行い、貯蔵弾性率G’複素粘度ηを求めることができる。
このような熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネートエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、マレイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂、アルキド樹脂および付加硬化型ポリイミド樹脂などを挙げることができる。これらの中でも、繊維強化複合材料用途には、耐熱性、弾性率および耐薬品性に優れたエポキシ樹脂やベンゾオキサジン樹脂が特に好ましく用いられる。
ベンゾオキサジン樹脂としては、複合材料用プリプレグおよび繊維強化複合材料とした際に難燃性マトリックス樹脂との親和性を上げるために、前記の難燃性マトリックス樹脂で記述した化学式(III)〜(XIII)で表される樹脂からなる群から選ばれるものを用いても良い。ベンゾオキサジン樹脂は、モノマーからなるものでも良いし、数分子が重合してオリゴマー状態となっていても良く、また、異なる構造を有するベンゾオキサジン樹脂を同時に用いても良い。
エポキシ樹脂としては、分子内に1つ以上のエポキシ基を有する化合物が用いられる。硬化物の耐熱性と機械特性のバランス面から、2官能以上のエポキシ基(1分子当たりエポキシ基を2個以上有する)を用いることが好ましい。
本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノール化合物とジシクロペンタジエンの共重合体を原料とするエポキシ樹脂、ジグリシジルレゾルシノール、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタンのようなグリシジルエーテル型エポキシ樹脂組成物、テトラグリシジルジアミノフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルキシレンジアミンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂およびこれらの混合物でも良い。
本発明で用いられるガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂は、熱硬化性樹脂を1種または2種以上を混合してもよい。特に、ベンゾオキサジン樹脂は、粘度が高く、ガラス転移温度が25℃より高くなる場合があるため、エポキシ樹脂と組み合わせてガラス転移温度を25℃以下とすることが好ましい。
本発明で用いられるガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂には、必要に応じて、上記成分のほかに、他の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、ゴム粒子や熱可塑性樹脂粒子等の有機粒子、硬化剤、硬化促進剤およびシランカップリング剤を1種または2種以上含有させることができる。
ガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂は、ガラス転移温度が25℃以下であり、難燃性マトリックス樹脂と組み合わせて複合材料用プリプレグおよび繊維強化複合材料とした際、難燃性マトリックス樹脂とガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂の界面の接着性を上げるために、難燃性マトリックス樹脂から選ばれる樹脂を加えても良い。
本発明で用いられるガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂は、ガラス転移温度が−30℃以上であることが好ましく、より好ましくは−25℃以上である。ガラス転移温度が−30℃より低いと、プリプレグとした際にタック過多となったり、硬化過程中の粘度が低くなりすぎるため、樹脂フローが多くなったり、ボイドが発生する場合がある。
本発明において難燃性マトリックス樹脂とガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂は、それぞれ前記した成分を混合することにより得られる。混合方法としては特に限定されないが、ニーダーやプラネタリーミキサー、3本ロールおよび2軸押出機などが好ましく用いられる。
本発明の繊維強化複合材料用プリプレグは、上記の難燃性マトリックス樹脂、ガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂および強化繊維からなるものである。
本発明で用いられる強化繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル系、レーヨン系およびピッチ系の炭素繊維、黒鉛繊維およびガラスなどの絶縁性繊維、アルミニウムやステンレスなどの金属繊維、ボロン繊維、炭化ホウ素繊維、フェノール繊維、ナイロン繊維、アルミナ繊維、炭化珪素およびアラミド繊維などを挙げることができる。これらの中で、優れた難燃性を示すことから、炭素繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維および金属繊維が好ましく用いられ、優れた比弾性率および比強度を繊維強化複合材料に発現させるため、炭素繊維と黒鉛繊維を用いることがさらに好ましい態様である。また、これらの繊維を2種類以上混合して用いても構わない。
強化繊維として炭素繊維を用いる場合、用途に応じてあらゆる種類の炭素繊維を用いることが可能であり、通常引張強度が1.0GPa〜9.0GPaである炭素繊維が使用可能である。炭素繊維本来の引張強度や複合材料としたときの耐衝撃性が高いという面から、引張強度は高ければ高いほど好ましく、より好ましい引張強度は2.0GPa〜9.0GPaである。
また、用いられる炭素繊維は、通常その引張弾性率は50Gpa〜1000GPa程度であるが、引張弾性率が高い炭素繊維を用いることは、繊維強化複合材料としたときに高弾性率を得ることに繋がる。また、引張弾性率は、電気・電子機器の筐体など、より薄肉化・軽量化を重視する場合には、高い剛性が求められ、より好ましくは150GPa〜1000GPaである。ここでいう炭素繊維の引張強度と弾性率は、JIS R7601(1986)にしたがって測定されるストランド引張強度とストランド引張弾性率を意味する。
本発明の繊維強化複合材料用のプリプレグは、プリプレグ全質量に対する強化繊維の含有質量(以下、Wfと表すことがある。)が30〜90%であることが好ましく、Wfは、より好ましくは35〜85%であり、さらに好ましくは40〜85重量%である。強化繊維の含有質量(Wf)が30%より小さいと、マトリックス樹脂の量の方が多すぎて繊維強化複合材料に要求される諸特性を満たすことができない場合がある。また、Wfが90%より大きいと、強化繊維とマトリックス樹脂の接着性が低下し、繊維強化複合材料用プリプレグを積層した際にプリプレグ同士が接着せず、得られる繊維強化複合材料において層間で剥離してしまう場合がある。ここでいう強化繊維の含有質量(Wf)は、JIS K7071(1988)にしたがって測定される繊維質量含有率を意味する。
強化繊維の形態としては、一方向に引き揃えられた長繊維、二方向織物、多軸織物、不織布、マット、ニットおよび組み紐などが挙げられる。ここでいう長繊維とは、実質的に10mm以上連続な単繊維もしくは繊維束を意味する。
一方向に引き揃えられた長繊維を用いた、いわゆる一方向プリプレグは、強化繊維の方向が揃っており、強化繊維の曲がりが少ないため繊維方向の強度利用率が高い。また、一方向プリプレグは、複数のプリプレグを適切な積層構成で積層した後で成形すると、繊維強化複合材料の各方面の弾性率と強度を自由に制御することができる。
また、各種織物を用いた織物プリプレグも、強度と弾性率の異方性が少ない繊維強化複合材料が得られ、表面に繊維織物の模様が浮かび意匠性に優れている。複数種のプリプレグ、例えば、一方向プリプレグと織物プリプレグの両方を用いて繊維強化複合材料を成形することも可能である。
本発明の繊維強化複合材料用プリプレグは、2種のマトリックス樹脂と強化繊維とにより構成され、そのマトリックス樹脂は、難燃性マトリックス樹脂とガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂からなり、少なくとも一方の表面に、難燃性マトリックス樹脂が偏在しているものである。タックを有するガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂が一方の面に出ている形態の場合、積層する際のタックやプリプレグ同士の密着性が得られ、かつ積層体の外表面は難燃性マトリックス樹脂を配置することにより難燃性を有するために、プリプレグの取り扱い性と繊維強化複合材料の難燃性の両立が可能である。
ガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂は、強化繊維に含浸させてプリプレグとしたときの25℃の温度におけるタック値が0.1〜3.0kgであることが好ましく、さらに好ましくは、0.3〜2.0kgである。そのタック値が低すぎると、積層されたプリプレグが剥離しやすくなり、積層の作業に支障をきたすことがある。逆にプリプレグのタック値が高すぎると、剥離させて修正させることが困難となる。また、ドレープ性に乏しいと、曲面を有する金型を用いて積層する作業性が著しく低下する場合がある。
ここでいう25℃の温度におけるタックとは、プリプレグの表面粘着性の指標であり、次の方法によって求められる。すなわち、PICMAタックテスタII:(株)東洋精機製作所製などのタックテスタを用い、一般的には21.7±1.7℃、湿度50±5%の環境下において、18×18mmのカバーガラスを0.4kgfの力で5秒間プリプレグに圧着し、30mm/分の速度にて引張り、剥がれる際の抵抗力にてタックを評価することができる。
次に、本発明の繊維強化複合材料用プリプレグを得るために好適な製造方法について説明する。本発明の繊維強化複合材料用プリプレグは、マトリックス樹脂を強化繊維に含浸させることにより製造される。例えば、マトリックス樹脂を溶媒に溶解して低粘度化し、強化繊維に含浸させるウェット法、あるいは、マトリックス樹脂を、実質的に溶媒を用いずに、加熱により低粘度化し、強化繊維に含浸させるホットメルト法などの方法により、繊維強化複合材料用プリプレグを製造することができる。
ウェット法では、強化繊維をマトリックス樹脂を含む液体に浸漬した後、引き上げ、オーブンなどを用いて溶媒を蒸発させてプリプレグを得ることができる。
ホットメルト法では、加熱により低粘度化したマトリックス樹脂を、直接、強化繊維に含浸させる方法、あるいは一旦マトリックス樹脂を離型紙などの上にコーティングした樹脂フィルムをまず作製し、次いで強化繊維の両側あるいは片側からその樹脂フィルムを重ね、加熱加圧することによりマトリックス樹脂を強化繊維に含浸させてプリプレグを製造することができる。ホットメルト法では、プリプレグ中に残留する溶媒が実質的にないため、本発明では好ましく用いられる。
本発明の繊維強化複合材料用プリプレグは、マトリックス樹脂が必ずしも強化繊維束の内部まで含浸されている必要はなく、シート状に一方向に引き揃えられた強化繊維や強化繊維織物の表面付近にマトリックス樹脂が局在化している様態であっても良い。
本発明で用いられる難燃性マトリックス樹脂は、25℃の温度において、液体または固体のいずれであっても良い。
難燃性マトリックス樹脂が25℃の温度で固形である場合、その形状として粒子、繊維、フィルムまたはこれらの少なくとも2種の複合物というように種々の形状をとることができる。粒子状であるとは、具体的には球状、非球状、塊状または多孔質であることを指す。また、繊維状であるとは、具体的には短繊維、フロック状、織物、不織布または織布であることを指し、上記2つの形状は、一方向強化繊維や強化繊維織物の表面に付着させることによりプリプレグを得る製造方法において好適である。また、フィルム状であるとは、予め離型紙や離型フィルムの上に所定量の難燃性マトリックス樹脂を均一な厚みで塗布したものを指し、具体的にはシート状フィルム、テープ状フィルム、スリット入りシート状フィルム、多孔質フィルムである。形状がフィルム状である場合は、難燃性マトリックス樹脂を一方向強化繊維や強化繊維織物に加熱加圧することにより含浸させる、または、シート状およびテープ状のフィルムを一方向強化繊維や強化繊維織物の表面に貼り付けることによりプリプレグを得る製造方法において好適である。
上記粒子、繊維またはフィルムを単独で用いても良いし、繊維あるいは粒子を含むフィルム、粒子と繊維の併用というように組み合わせて用いても良い。
また、難燃性マトリックス樹脂が25℃の温度で液状である場合、取り扱い性からフィルム状の形状であることが好ましい。
次に、プリプレグの少なくとも一方の表面のみが、上記の難燃性マトリックス樹脂で覆われているプリプレグの製造方法について説明する。
難燃性マトリックス樹脂が粒子状の形状である場合は、難燃性マトリックス樹脂からなる粒子をガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂中に均一混合しておき、強化繊維に含浸させる過程において繊維間隙による濾過現象によりプリプレグの一方の表面に局在化させる方法、難燃性マトリックス樹脂からなる粒子を予め作製した強化繊維とガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂からなるプリプレグの表面に撒くなどして付着させる方法、難燃性マトリックス樹脂からなる粒子を一旦融解させ、予め作製した強化繊維とガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂からなるプリプレグの表面にブローさせる方法、難燃性マトリックス樹脂からなる粒子を、または、溶媒中に分散させた難燃性マトリックス樹脂からなる粒子をプリプレグの表面に直接吹きつけた後、オーブンなどを用いて溶媒のみ蒸発させる方法、難燃性マトリックス樹脂からなる粒子を一方向に引き揃えた繊維や繊維織物など基材の表面に先に付着させた後、ガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂を含浸させる方法などを用いることができる。
難燃性マトリックス樹脂がフィルム状の形状である場合は、強化繊維の片面に難燃性マトリックス樹脂からなるフィルムを、反対面からガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂からなるフィルムを同時に含浸させる方法、ガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂を強化繊維に含浸させた一次プリプレグをまず作製し、次に、難燃性マトリックス樹脂からなる樹脂フィルムを一次プリプレグの上に含浸させる方法、または含浸させずに貼り付ける方法などを用いることができる。
難燃性マトリックス樹脂が繊維状の形状である場合は、予め作製した強化繊維とガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂からなるプリプレグの表面に、チョップした難燃性マトリックス樹脂を付着させる、チョップした難燃性マトリックス樹脂をランダム方向に分散させマット状に固めたものを付着させる、またはクロス状織物、不織布を貼り付ける方法、難燃性マトリックス樹脂からなるチョップ状、マット状、織物、不織布を一方向に引き揃えた繊維や繊維織物など基材の表面に先に付着させた後、ガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂を含浸させる方法などを用いることができる。ここで、難燃性マトリックス樹脂は1〜100mmの範囲でチョップすることが好ましく、さらに好ましくは1〜50mmである。
本発明の繊維強化複合材料用プリプレグは、少なくとも一方の表面に、難燃性マトリックス樹脂が偏在していることを特徴とし、プリプレグの内部、または難燃性マトリックス樹脂が偏在した面の反対面はガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂が存在するものである。難燃性マトリックス樹脂はプリプレグの片面の表面に偏在していても、両表面に偏在していてもよいが、良好なタックを得られることから片面の表面に偏在していることが好ましい。また、裏表の様態が異なることからプリプレグを積層する際に積層する面や方向を間違えることがなくなる点でも好ましい。
ここで、繊維強化複合材料用プリプレグの一方の表面に難燃性マトリックス樹脂が偏在しているとは、難燃性マトリックス樹脂がプリプレグ表面の50%以上の面積を占めることを意味し、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。本発明における複合材料用プリプレグ表面の難燃性マトリックス樹脂の様態は、明視野顕微鏡または暗視野顕微鏡を用いてプリプレグの表面を観察し、難燃性マトリックス樹脂が占める面積を求めることができる。また、蛍光顕微鏡を用いて難燃性マトリックス樹脂から発する蛍光を観測したり、偏光顕微鏡を用いて内部構造や結晶構造の違いを観測するなど光学顕微鏡を用いた手法で観察することも可能である。
本発明において、繊維強化複合材料用プリプレグの一方の表面に難燃性マトリックス樹脂が偏在しているとは、難燃性マトリックス樹脂がプリプレグ表面の50%以上の面積を占めることを意味しており、プリプレグの断面厚さ方向においては特に規定されるものではない。
本発明の繊維強化複合材料用プリプレグにおいて、難燃性マトリックス樹脂とガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂の存在比(難燃性マトリックス樹脂の樹脂目付(g/m)/ガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂の樹脂目付(g/m)は、プリプレグのタックと繊維強化複合材料の難燃性とを両立するものであればよく、好ましくは0.05〜0.95であり、さらに好ましくは0.1〜0.9である。
本発明の繊維強化複合材料用プリプレグを用いて繊維強化複合材料を成形するには、プリプレグを積層後、積層物に圧力を付与しながら、マトリックス樹脂を加熱硬化させる方法などを用いることができる。
圧力を付与しながら繊維強化複合材料用樹脂組成物を加熱硬化させる方法には、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法および内圧成形法などがある。
本発明の繊維強化複合材料としてプリプレグを積層し、積層板を作成する方法としては、例えば、難燃性マトリックス樹脂が偏在している面とタックを有する面を交互に重ね合わせ、最後の面は難燃性マトリックス樹脂が存在している面が最外面にくるように重ね合わせて両表面を難燃性マトリックス樹脂で覆う方法などを用いることができる。
また、本発明の繊維強化複合材料用プリプレグは、ガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂のみが含浸されたプリプレグを一枚または複数枚重ね合わせた後、両最外面のみに、難燃性マトリックス樹脂が存在する面が表面にくるように積層する方法を用いることができる。
また、単に一方向に引き揃えた繊維や繊維織物などの基材を重ね合わせる場合のみならず、各種型やコア材の片面または両面に難燃性マトリックス樹脂で覆われた面が最外面にくるように、一枚または複数枚の上記プリプレグを重ね合わせることもできる。コア材としては、フォームコアやハニカムコアなどが好ましく用いられる。フォームコアの材料としては、ウレタンやポリイミドが好ましく用いられる。ハニカムコアとしてはアルミコアやガラスコア、アラミドコアなどが好ましく用いられる。
繊維強化複合材料を成形する温度は、マトリックス樹脂に含まれる硬化剤の種類などによるが、通常80〜220℃の温度が好ましい。成形温度が低すぎると、十分な硬化性が得られない場合があり、逆に高すぎると、熱歪みによる反りが発生しやすくなったりする場合がある。
本発明で得られる繊維強化複合材料は、UL94規格による測定で、V−2以上、好ましくはV−1以上の難燃性、より好ましくはV−0という高い難燃性を有したものとなり、高い難燃性が必要な鉄道車両、航空機、建築部材やその他一般産業用途に好適に用いられる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本実施例では、各種特性を次に示す方法で測定した。これらの物性は、昇温測定などの断りのない限り、温度23℃、相対湿度50%の環境下で行った。
(実施例1〜5、比較例1〜3)
(1)繊維強化複合材料用樹脂組成物の調合
難燃性マトリックス樹脂およびガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂は、それぞれ表1に示す組成で混合し調製した。
難燃性マトリックス樹脂における混合方法としては、実施例1〜4と、比較例1〜3については、まず熱硬化性樹脂に難燃剤とその他成分をニーダーで混合し、120℃の温度まで昇温させ、固形分を完全に溶解させた後、50〜60℃の温度まで降温し、これに硬化剤および硬化助剤を加え均一に分散するように10分間撹拌し、難燃性マトリックス樹脂を得た。実施例5については、NC3000、“jER”828(登録商標)およびハイジライトをニーダーで混合し、120℃の温度まで昇温させ、ハイジライトを均一に分散させた後、50〜60℃の温度まで降温し、これにジシアンジアミド、“オミキュア”(登録商標)24を加え、10分間撹拌し、難燃性マトリックス樹脂を得た。
また、実施例2と5における難燃性マトリックス樹脂は、ニーダーから取り出した後、室温まで冷却後、粉砕、分球し、粒径20μmの粒子を作製した。ここでいう粒径は、次の方法によって求められる。分球した難燃性マトリックス樹脂をレーザー回析粒度分布測定器(例えば、LMS−24:セイシン企業(株)製)で測定し、難燃性マトリックス樹脂粒子の粒度分布における累積重量%が50%となったところの粒径を本発明の粒径とした。
また、実施例3における難燃性マトリックス樹脂は、ニーダーから取り出した後にノズルから押し出して紡糸し、得られた長繊維を重ね合わせた後に熱ロールで熱溶着させることにより、目付25g/m、厚さ0.2mmの不織布を作製した。
また、ガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂(他のマトリックス樹脂)における混合方法としては、実施例1〜5と、比較例2については、熱硬化性樹脂と“ビニレック”(登録商標)Kとをニーダーで混合し、150℃の温度まで昇温させ、“ビニレック”(登録商標)Kを均一に溶解させた後、50〜60℃の温度まで降温し、これにジシアンジアミドおよび“オミキュア”(登録商標)24を加え、10分間撹拌し、ガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂を得た。比較例3については、F−a型ベンゾオキサジン樹脂を120℃の温度まで昇温させ、完全に溶解させた後、50〜60℃の温度まで降温し、p−トルエンスルホン酸メチルを加え、均一に分散するように10分間撹拌し、ガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂を得た。
ここでいう未硬化マトリックス樹脂のガラス転移温度は、次の方法によって求めた。JIS K7121(1987)にしたがって、示差走査熱流量計(DSC)を用い、窒素雰囲気下で、昇温速度40℃/minとし、DSC曲線が階段状変化を示す部分の測定される中間点ガラス転移温度をガラス転移温度とした。
ここで用いた原料成分は、下記に示すとおりである。また、表1中のマトリックス樹脂の数字は重量部を表す。
<難燃性マトリックス樹脂の原料成分>
・XU−371(フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、AC=重量57%、ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)
・F−a型ベンゾオキサジン(ビスフェノールF−アニリン型ベンゾオキサジン樹脂、AC=66重量%、ジャパンエポキシレジン(株)製)
・NC3000(ビフェニル型エポキシ樹脂、AC=重量63%、日本化薬(株)製)
・銅アセチルアセトナート(有機金属化合物、東京化成工業(株)製)
・ビスフェノールA(活性水素型触媒、ナカライテスク製)
・p−トルエンスルホン酸メチルエステル(東京化成工業(株)製)
・ジシアンジアミド(ジャパンエポキシレジン(株)製)
・“オミキュア”(登録商標)24(2,4−トルエンビス(3,3−ジメチルウレア)、ピイ・テイ・アイジャパン(株)製)
・PX200(芳香族縮合リン酸エステル、大八化学(株)製)下記構造式(XVI)
Figure 2008214547
・ハイジライト(水酸化アルミニウム、昭和電工(株)製)
<その他の成分>
・“jER”(商標登録)828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、AC=重量43%、ジャパンエポキシレジン(株)製)
<ガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂の原料成分>
・“jER”(商標登録)828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン(株)製)
・“jER”(商標登録)1001(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン(株)製)
・“jER”(商標登録)154(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン(株)製)
・NC3000(ビフェニル型エポキシ樹脂、日本化薬(株)製)
・ジシアンジアミド(ジャパンエポキシレジン(株)製)
・“オミキュア”(登録商標)24(2,4−トルエンビス(3,3−ジメチルウレア)、ピイ・テイ・アイジャパン(株)製)
・“ビニレック”(登録商標)K(ポリビニルホルマール、チッソ(株)製)
(2)繊維強化複合材料用プリプレグの作製
本発明において、実施例1〜5と比較例1〜3で用いたプリプレグは、下記のようにして作製した。模式図を、図1〜3に示した。図1〜3は、いずれも本発明の繊維強化複合材料用プリプレグの構成を例示する断面図である。
図1:リバースロールコーターを用いて、離型紙(コウテイシWBE90R−DT、リンテック(株)製)上に、上記(1)で得られた難燃性マトリックス樹脂1からなる25g/m目付の樹脂フィルムを作製した。また同様に、上記(1)で得られたガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂2(他のマトリックス樹脂)からなる25g/m目付の樹脂フィルムを作製した。次に、単位面積あたりの繊維重量が100g/mとなるようにシート状に一方向に整列させた強化繊維3に、前記の難燃性マトリックス樹脂1からなる樹脂フィルムとガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂2(他のマトリックス樹脂)からなる樹脂フィルムを両面から重ね、加熱加圧してマトリックス樹脂を含浸させ、Wfが67%の一方向プリプレグとした。ただし、比較例1のプリプレグは、上記(1)で得られた難燃性マトリックス樹脂1からなる25g/m目付の樹脂フィルムを作製し、単位面積あたりの繊維重量が100g/mとなるようにシート状に一方向に整列させた強化繊維に両面に同一の樹脂フィルムを重ね、加熱加圧してマトリックス樹脂を含浸させ、Wfが67%の一方向プリプレグとした(実施例1と5、比較例1〜3)。
図2:リバースロールコーターを用いて、離型紙(コウテイシWBE90R−DT、リンテック(株)製)上に、上記(1)で得られたガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂2からなる12.5g/m目付の樹脂フィルムを作製した。次に、単位面積あたりの繊維重量が100g/mとなるようにシート状に一方向に整列させた強化繊維3に前記の樹脂フィルムを両面から重ね、加熱加圧してマトリックス樹脂を含浸させ、一方向プリプレグを作製した。次に、上記(1)で作製した平均粒径20μmの難燃性マトリックス樹脂1からなる粒子を、25g/m目付となるようにプリプレグの片面の表面に均一になるよう撒いて、Wfが67%の一方向プリプレグとした(実施例2と4)。
図3:リバースロールコーターを用いて、離型紙(コウテイシWBE90R−DT、リンテック(株)製)上に、上記(1)で得られたガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂2からなる12.5g/m目付の樹脂フィルムを作製した。次に、単位面積あたりの繊維重量が100g/mとなるようにシート状に一方向に整列させた強化繊維3に前記の樹脂フィルムを両面から重ね、加熱加圧してマトリックス樹脂を含浸させ、一方向プリプレグを作製した。次に、上記(1)で作製した25g/m目付の難燃性マトリックス樹脂1からなる不織布をプリプレグの片面の表面に張り合わせて、Wfが67%の一方向プリプレグとした(実施例3)。
ここで、上記の強化繊維には、炭素繊維“トレカ”(登録商標)T700SC−12K−50C(引張強度4.9GPa、引張弾性率235GPa、繊維比重1.80、東レ(株)製)を用いた。
(3)タック(粘着性)
上記(2)で作製したプリプレグのタックを、タックテスタ(PICMAタックテスタII:東洋精機(株)製)を用い、18×18mmのカバーガラスを0.4kgfの力で5秒間プリプレグに圧着し、30mm/分の速度にて引張り、剥がれる際の抵抗力にてタックを測定した。ここで、タックは、プリプレグにおいて難燃性マトリックス樹脂が偏在していない面を測定し、以下の3段階で評価した。測定数はn=5とし、測定結果が異なる場合は悪い評価を採用した。
○:タック値が0.3kg以上、2.0kg以下であり、程良い粘着性を示す。
△:タック値が0.1kg以上0.3kg未満、または2.0kgより大きく3.0kg以下であり、粘着性がやや強すぎる若しくはやや弱い。
×:タック値が0.0kg以上0.1kg未満、または3.0kgより大きく、粘着性が強すぎる若しくは粘着性がない。
(4)難燃性
上記(2)で作製した一方向プリプレグを、図4と図5に示すように、難燃性マトリックス樹脂が偏在している面とタックを有する面を交互に重ね合わせ、最後の面は難燃性マトリックス樹脂が偏在している面が最外面にくるように15枚(図4)および2枚(図5)重ね合わせて0°方向に揃えて積層し、オートクレーブによる成形を180℃の温度で1時間、6kgf/cmの圧力下で行い、それぞれ厚さ1.5mmおよび0.2mmの繊維強化複合材料板を得て、それぞれの難燃性を測定した。
難燃性は、UL94規格に基づき、垂直燃焼試験により難燃性を評価した。成形された繊維強化複合材料から、幅12.7±0.1mm、長さ127±1mmの試験片5本を切り出した。バーナーの炎の高さを19mmに調整し、垂直に保持した試験片中央下端を炎に10秒間さらした後、炎から離し燃焼時間を記録した。消炎後は、ただちにバーナー炎を更に10秒間当てて炎から離し燃焼時間を計測した。有炎滴下物(ドリップ)がなく、1回目、2回目とも消火までの時間が10秒以内、かつ5本の試験片に10回接炎した後の燃焼時間の合計が50秒以内ならばV−0と判定し、燃焼時間が30秒以内かつ5本の試験片に10回接炎した後の燃焼時間の合計が250秒以内であればV−1と判定した。また、V−1と同じ燃焼時間でも有炎滴下物がある場合はV−2と判定し、燃焼時間がそれより長い場合、あるいは試験片保持部まで燃焼した場合はV−outと判定した。
(5)繊維強化複合材料のガラス転移温度
上記(4)で得られた厚さ1.5mmの繊維強化複合材料から質量約15mgの試験片をカットしてサンプルを準備し、JIS K7121(1987)にしたがって、示差走査熱流量計(DSC)を用い、窒素雰囲気下で、昇温速度40℃/minとし、DSC曲線が階段状変化を示す部分の測定される中間点ガラス転移温度をガラス転移温度とした。
結果を表1に示す。実施例1〜5と比較例1との比較から、難燃性マトリックス樹脂をプリプレグの一方の表面に偏在させることにより、プリプレグの取り扱いの際に適切なタックを有し、繊維強化複合材料の耐熱性を維持しつつ、かつ0.2〜1.5mmの厚さでV−0となり、優れた難燃性が得られることがわかる。また、実施例1〜5と比較例2、3との比較から、難燃性マトリックス樹脂とガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂を用いることにより、プリプレグの取り扱いの際に適切なタックを付与しつつ、繊維強化複合材料の高い難燃性を維持することができることがわかる。
Figure 2008214547
本発明の複合材料用プリプレグは、難燃性に優れかつ取り扱い性に優れている。そのため、繊維強化複合材料に要求される諸特性を満足しながら難燃性に優れ、かつ複合材料用のプリプレグとして取り扱い性に優れた繊維強化複合材料の生産に好適である。
図1は、本発明の繊維強化複合材料用プリプレグの構成を例示する断面図である。 図2は、本発明の他の繊維強化複合材料用プリプレグの構成を例示する断面図である。 図3は、本発明の他の繊維強化複合材料用プリプレグの構成を例示する断面図である。 図4は、本発明の繊維強化複合材料用プリプレグを15枚積層する方法を例示説明するための断面図である。 図5は、本発明の繊維強化複合材料用プリプレグを2枚積層する方法を例示説明するための断面図である。
符号の説明
1.難燃性マトリックス樹脂
2.ガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂(他のマトリックス樹脂)
3.強化繊維

Claims (5)

  1. 難燃性マトリックス樹脂、ガラス転移温度が25℃以下のマトリックス樹脂および強化繊維からなり、少なくとも一方の表面に難燃性マトリックス樹脂が偏在していることを特徴とする複合材料用プリプレグ。
  2. 難燃性マトリックス樹脂が、芳香環含有量が50重量%以上の熱硬化性樹脂または難燃剤で難燃化した熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1記載の複合材料用プリプレグ。
  3. 難燃性マトリックス樹脂が、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、シアネートエステル樹脂または難燃剤で難燃化した熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1記載の複合材料用プリプレグ。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の複合材料用プリプレグを、難燃性マトリックス樹脂の偏在した面が最外面にくるように積層してなる積層体。
  5. 請求項4記載の積層体を硬化させてなる繊維強化複合材料。
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