JP2008200557A - 積層体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 加熱処理によって弾性率が変化するイミド結合および/またはアミド結合を有する絶縁性樹脂層および/または絶縁性樹脂前駆体層を形成する工程(1)と、前記絶縁性樹脂層の上に加熱処理によって互いに融着する金属薄膜前駆体粒子を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、絶縁性樹脂層との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)、とを含む積層体の製造方法。
【選択図】なし
Description
メッキ法によると、導電性を有する基材の上に、比較的容易に金属薄膜を形成することが可能であるが、絶縁基材の上に形成する場合には、導電層をはじめに形成する必要があるため、そのプロセスは煩雑なものになるという問題がある。また、メッキ法は溶液中での反応を利用するため、大量の廃液が副生し、この廃液処理に多大な手間とコストがかかるという問題があると共に、得られる金属薄膜の基板への密着性が充分ではない。
真空蒸着法、スパッタ法およびCVD法は、いずれも高価な真空装置を必要とし、いずれも成膜速度が遅いという問題がある。また、原子状態にある金属を膜状に積み上げるこれらの気相法においては、表面のわずかな凹凸や汚れ等によって金属が付着しない、いわゆるピンホールが発生しやすいという問題がある。
本発明の目的は、プラズマ処理等による基板の改質を必要とせずに、また、高温を必要としない、簡便な方法で基板上に密着性の高い金属薄膜を形成する方法を提供することである。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
<1>絶縁基板上に、加熱処理によって弾性率が変化するイミド結合および/またはアミド結合を有する絶縁性樹脂層および/または絶縁性樹脂前駆体層を形成する工程(1)と、前記絶縁性樹脂層および/または絶縁性樹脂前駆体層の上に、金属薄膜前駆体を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥した塗布膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、絶縁性樹脂層との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)、とを含む積層体の製造方法。
<3>工程(1)のイミド結合への転化率が、70%以上100%未満である<2>に記載の積層体の製造方法。
<5>絶縁基板上に熱可塑性ポリアミドイミド樹脂の溶液を塗布した後、脱溶剤処理を行って熱可塑性ポリアミドイミド樹脂からなる層を絶縁基板上に形成させる工程(1)と、次いで、前記熱可塑性ポリアミドイミド樹脂層の上に、金属薄膜前駆体を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥した塗布膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、前記熱可塑性ポリアミドイミド樹脂を可塑化させると共に、前記熱可塑性ポリアミドイミド樹脂との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)、とを含むことを特徴とする積層体の製造方法。
<8>金属薄膜前駆体が、金属粒子、金属酸化物粒子および金属水酸化物粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である<1>〜<7>のいずれかに記載の積層体の製造方法。
<9>金属薄膜前駆体粒子の1次粒子径が200nm以下である<8>に記載の積層体の製造方法。
<11>加熱処理を、酸化剤を含有する非酸化性ガス雰囲気で行うことを特徴とする<1>〜<7>のいずれかに記載の積層体の製造方法。
<12>酸化剤が酸素であり、非酸化性ガス雰囲気中の酸化剤の濃度が30〜500ppmであることを特徴とする<11>に記載の積層体の製造方法。
<13>分散体が、多価アルコールを含む<8>〜<12>のいずれかに記載の積層体の製造方法。
<14>分散体が、直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物を含む<8>〜<13>のいずれかに記載の積層体の製造方法。
<15><1>〜<14>のいずれかに記載の製造方法を用いて作成される積層体。
<16><15>の積層体を用いて作成されるプリント配線板。
本発明の積層体の製造方法は、絶縁基板上に加熱処理によって弾性率が変化するイミド結合および/またはアミド結合を有する絶縁性樹脂層および/またはその前駆体層を形成する工程(1)と、前記絶縁性樹脂層および/または絶縁性樹脂前駆体層の上に金属薄膜前駆体を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、絶縁性樹脂層との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)とを含む。
絶縁基板は、有機材料および無機材料のいずれでもよいが、金属薄膜を形成する際に加熱処理を行うことから、耐熱性のものが好ましい。例えば、セラミックスやガラスなどの無機材料、ポリイミドフィルム等の耐熱性樹脂が好適に用いられる。
本発明で、絶縁基板として特に好適に使用される熱硬化性ポリイミドフィルムは、ピロメリット酸またはピロメリット酸誘導体と、芳香族ジアミンとを縮合してなるもの、例えば、カプトン(登録商標、東レ・デュポン株式会社製)、アピカル(登録商標、鐘淵化学株式会社製)等、ビフェニルテトラカルボン酸またはビフェニルテトラカルボン酸誘導体と、芳香族ジアミンとを縮合してなるもの、例えば、ユーピレックス(登録商標、宇部興産株式会社製)等である。ポリイミドフィルムの膜厚は限定されないが、通常、25〜100μm程度のものを用途に応じて適宜選択して用いることができる。
加熱処理によって弾性率が変化するイミド結合および/またはアミド結合を有する絶縁性樹脂層および/または絶縁性樹脂前駆体層とは、金属薄膜前駆体の分散体を加熱処理する温度において弾性率の変化が観測され、かつ、イミド結合および/またはアミド結合を有している樹脂層および/または樹脂前駆体層のことを指す。例えば、ポリイミド樹脂前駆体としては、ポリアミック酸、ジイソシアナート付加体等の加熱によってイミド結合を形成する熱硬化性官能基を有する化合物を指す。
絶縁性樹脂層を有するイミド結合および/またはアミド結合を有する樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミドエステル樹脂等が例示できる。ポリイミド樹脂とは、イミド結合を有する樹脂であって、通常は、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを縮合させることによって得られる。ポリアミド樹脂とは、アミド結合を有する樹脂であり、ジカルボン酸またはジカルボン酸のハロゲン化物成分とジアミン成分を縮合させることによって得られる。また、ポリアミドイミド樹脂はアミド結合と、イミド結合を共に有する。これらの樹脂は、通常、電気配線の絶縁膜として用いられている程度の絶縁性を有することが好ましく、体積抵抗率が1013Ωcm以上の絶縁性を有することが好ましい。
積層体に高い耐熱性が要求される場合にイミド結合および/またはアミド結合を有する樹脂の中で特に好ましいのは、イミド結合を有する樹脂であり、非熱可塑性樹脂と熱可塑性樹脂のいずれも使用可能である。中でもポリイミド樹脂は特に好ましく、非熱可塑性ポリイミド樹脂と熱可塑性ポリイミド樹脂のいずれも用いることができる。
樹脂の耐熱性や工業的な入手のし易さを考慮すると、非熱可塑性ポリイミド樹脂の中で特に好ましいのは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンもしくはジイソシアナートの重縮合によって得られるポリイミド系樹脂である。このような樹脂の例として、テトラカルボン酸成分として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ジアミン成分として、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等を用い、重縮合によって得られるポリイミド樹脂樹脂等が挙げられる。
熱可塑性ポリイミド樹脂は、ガラス転移温度以上の加熱によって弾性率が大きく低下する。本発明における熱可塑性ポリイミド系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは150℃以上、350℃以下、より好ましくは200℃以上、350℃以下である。
ポリイミドのガラス転移温度が150℃未満になると、本発明の積層体をフレキシブルプリント配線板等に用いる際に、例えば、150℃における加熱時にポリイミド樹脂が軟化することにより、配線加工した金属層にずれが発生する場合がある。ガラス転移温度が350℃を越えると、金属薄膜と絶縁基板の高い密着性が発揮されなくなる場合がある。
本発明の製造方法において、絶縁性樹脂層の厚みは、絶縁基板と金属薄膜層との接着強度の観点、および経済性の観点から、0.1〜20μmの範囲が好ましく、0.1〜10μmがより好ましい。
金属薄膜前駆体とは、加熱処理等の後処理によって金属薄膜が形成できる化合物を指し、例えば加熱処理によって互いに融着する一次粒子径200nm以下の金属薄膜前駆体微粒子や、加熱処理によって金属に還元され金属薄膜を形成する金属錯体などを例示できる。
加熱処理によって互いに融着する金属薄膜前駆体粒子とは、この前駆体粒子を含む分散体を膜状に塗布し、加熱することによって金属粒子同士が相互に接合して、見かけ上、連続した金属層で形成された薄膜を形成する粒子である。
金属薄膜前駆体粒子は、加熱処理によって緻密な金属薄膜が得るという観点から、一次粒子径が200nm以下が好ましく、さらに好ましくは100nm以下、より好ましくは30nm以下である。また、分散体の粘度、取り扱い性の観点から、1次粒子径は1nm以上であることが好ましい。
金属粒子としては、湿式法やガス中蒸発法等の手法により形成される1次粒径が10nm以下の金属微粒子が好ましく、特に銅微粒子が好ましい。
金属水酸化物粒子としては、水酸化銅、水酸化ニッケル、水酸化コバルト等の化合物からなる粒子を例示できるが、特に銅薄膜を与える金属水酸化物粒子としては、水酸化銅粒子が好ましい。
これらの金属酸化物微粒子は、市販品を用いてもよいし、公知の合成方法を用いて合成することも可能である。例えば、粒子径が100nm未満の酸化第一銅超微粒子の合成方法としては、アセチルアセトナト銅錯体をポリオール溶媒中で200℃程度で加熱して合成する方法が公知である(アンゲバンテ ケミ インターナショナル エディション、40号、2巻、p.359、2001年)。
本発明の製造方法において積層体の接着強度が向上する理由は必ずしも明確ではないが、次のように考えられる。
加熱処理して金属薄膜前駆体が金属薄膜層を形成する際に、金属薄膜前駆体の一部が絶縁性樹脂層および/または絶縁性樹脂前駆体層にもぐりながら金属薄膜層を形成し、微細なアンカーとなって絶縁性樹脂層と密着して界面の接着強度が増大することが考えられる。
積層体の断面をTEM観察すると、金属微子がお互いに融着しながら、絶縁性樹脂層の界面にアンカーとなって埋め込まれている様子が観察され、また、その界面の組成分析を行うと金属酸化物が含まれていることが確認される。この微細なアンカーと化学的な結合によって、低粗度ながら高接着強度を得ることができる。絶縁性樹脂と金属層との間の粗度の低さは、本発明の積層体をフォトリソグラフィによって微細な配線を形成する場合に、配線の直線性が高いなど、特に好ましい影響を与える。
(A)ポリイミド樹脂前駆体を含むポリイミド樹脂層の形成は、絶縁基板上にポリイミド樹脂前駆体の溶液を塗布した後、脱溶剤および脱水縮合反応のための熱処理を行って前記前駆体の一部をポリイミド樹脂に転化させることで形成させる。ポリイミド樹脂としては、非熱可塑性ポリイミド樹脂と、熱可塑性ポリイミド樹脂がともに使用できる。ポリイミド樹脂前駆体は、縮合反応によるポリイミド樹脂への転化が完了していない状態の化合物であり、例えば、ポリアミック酸、ジイソシアナート付加体等が挙げられる。ポリイミド樹脂前駆体は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
上記の転化率とは、ポリイミド樹脂層中のイミド結合を形成する縮合性官能基のうち、縮合している割合を表す指標である。すべての縮合性官能基が縮合し、イミド結合に転化された場合を転化率100%と定義する。通常、この転化率は、転化処理後のイミド結合の量を、赤外線吸収測定により測定して見積もることが可能である。具体的には1780cm−1付近のイミド基の赤外線吸収ピークの相対強度を、転化率100%のサンプルと比較することにより見積もることができる。
(B−1)の方法においては、絶縁基板上に塗工された熱可塑性ポリイミド樹脂溶液は、熱処理等の方法により溶剤が除去される。この際、熱処理は低温から徐々に高温に上昇させながら行うのが好ましい。熱処理を急激に高温で行なうと、樹脂表面にスキン層が生成して溶剤が蒸発しにくくなったり、発泡する場合がある。
絶縁基板上に、イミド結合および/またはアミド結合を有する絶縁性樹脂または絶縁性樹脂前駆体等の溶液を塗布する方法は限定されるものではなく、例えば、ディップコート、バーコート、スピンコート、ロールコート、スプレーコート等が用いられる。塗布する際の溶液に用いられる溶媒には、通常、有機溶媒が用いられる。有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチル尿素、N−メチルカプロラクタム、プチロラクタム、テトラヒドロフラン、m−ジオキサン、p−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス2−(2−メトキシエトキシ)エチルエーテル、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ピリジン、ピコリン等が挙げられる。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して用いることもできる。
加熱処理によって、[1]金属粒子が互いに融着した構造を有する金属薄膜層を形成し、[2] 金属薄膜層と絶縁性樹脂層の界面に金属酸化物を形成する。この加熱処理は、絶縁性樹脂層との界面に金属酸化物を形成するように、酸化剤を含む雰囲気中で行われる。酸化剤は、界面に金属酸化物を形成する限りにおいて特に制限はなく、酸素、オゾン、水、などが例示される。雰囲気中の酸化剤の濃度は、金属薄膜層の酸化の容易さなどを考慮して、適宜定めればよい。
加熱処理は、金属薄膜層の下地に熱可塑性樹脂を用いる場合にはガラス転移温度以上で行うことが好ましく、ガラス転移温度より40〜100℃高い温度がより好ましく、通常は、200℃以上400℃以下の温度で行われる。例えば、絶縁性樹脂層にガラス転移温度が260℃である熱可塑性ポリイミドを用いる場合、そのガラス転移温度よりも高い300℃〜360℃で加熱処理することが好ましい。
加熱温度と、加熱時間は、上記[1]〜[4]を考慮した上で、金属薄膜前駆体の種類等に併せて適宜定めればよいが、加熱温度は通常200℃〜500℃、加熱時間は通常1分〜120分の範囲である。一次粒子径20nm程度の酸化第一銅超微粒子分散体から酸化第一銅を界面に有する銅薄膜を形成する場合には、通常、酸素濃度が100ppmであれば、350℃で30分程度の加熱処理が行われる。
金属薄膜前駆体の分散体または溶液を塗布する方法として、例えば、ディップコーティング方法、スプレー塗布方法、スピンコーティング方法、バーコーティング方法、ロールコーティング方法、インクジェット方法、コンタクトプリンティング方法、スクリーン印刷方法等が挙げられる。分散体の粘度にあわせ、最適な塗布手法を適宜選択すればよい。塗布する分散体の膜厚を調整することによって、最終的に得られる金属薄膜の膜厚を調整することが可能である。
金属薄膜前駆体の分散体もしくは溶液を、回路形状に塗布し加熱処理すると、金属回路パターンを形成でき、本用途には、例えば、インクジェットプリンターやディスペンサー等、ドロップオンデマンドタイプの塗布装置が用いられる。
回路パターンは、インクジェットヘッドやディスペンサー吐出針をロボットによって平面方向に動かすことにより任意のパターンを形成することができる。これらの塗布手法においては、段差を有する基板においても、ロボットを垂直方向に動かすことで、段差に追従した回路を形成することも可能である。
回路形状に塗布する用途においては、塗布する分散体または溶液の線幅は、通常は1〜400μmの範囲であり、得られる金属配線の線幅は0.5〜300μmである。また、塗布する分散体の厚みを調整することによって、最終的に得られる金属配線の厚みを調整することが可能である。通常は、塗布する分散体の厚みは0.1〜100μmであり、得られる金属配線の厚みは0.05〜50μmである。
分散体が多価アルコールを含有すると、加熱処理して、金属薄膜前駆体粒子から、金属薄膜を得るときの成膜性を向上させるので、さらに好ましい。
多価アルコールは、分子中に複数の水酸基を有する化合物である。多価アルコールは、その沸点が適度に高いため揮発しにくく、これを用いると、分散体の印刷性および金属薄膜形成時の成膜性に優れるので好ましい。多価アルコールの中で好ましいのは、炭素数が10以下の多価アルコ−ルであり、その中でも粘度の低い、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール等が特に好ましい。これらの多価アルコールは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
分散体が直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物を含有すると、金属薄膜形成時の成膜性を向上させる効果に加えて、加熱処理して得られる金属薄膜の抵抗値が低減するので好ましい。直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物が成膜性を向上させ、かつ抵抗値を低減させる理由は、直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物が易分解・易焼失性バインダーとして加熱処理中の金属薄膜前駆体粒子の局所的な造粒を防ぐためと考えられる。また、上記多価アルコールと直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物を併用することで、金属薄膜の抵抗値が特に下がる傾向があり、併用して用いることが好ましい。
直鎖状脂肪族ポリエ−テル化合物は、繰り返し単位が炭素数2〜6のアルキレン基であることが好ましい。直鎖状脂肪族ポリエ−テル化合物、2元以上のポリエ−テルコポリマ−やポリエ−テルブロックコポリマ−であってもよい。
分散体中の金属薄膜前駆体粒子の割合に制限はないが、分散体総量に対して、重量%で、好ましくは5〜90%、より好ましくは20〜80%である。分散体中の粒子の重量がこれらの範囲にある場合には、粒子の分散状態が良好であり、また、1回の塗布・加熱処理によって適度な厚み厚みの金属薄膜が得られるので好ましい。
分散体中の多価アルコールの割合は、分散体総量に対して、重量%で、好ましくは5〜70%、より好ましくは10〜50%である。
金属薄膜前駆体粒子に対するポリエーテル化合物の好ましい重量比は、用いる粒子の種類とポリエーテル化合物の種類により異なるが、通常は0.01〜10の範囲である。この範囲にあると得られる金属薄膜の緻密性が向上し、その体積抵抗率がさらに低下する。
本発明では、上記分散体に、必要に応じ、消泡剤、レベリング剤、粘度調整剤、安定剤等の添加剤を添加してもよい。また、上記分散体は、金属薄膜前駆体粒子の融着による金属薄膜の形成と絶縁性樹脂層への密着を阻害しない限りにおいて、金属薄膜前駆体粒子から発生する金属種と同種または異種の金属粉を含んでいても差し支えないが、絶縁性樹脂層との間で接着強度の高い界面形態を形成するためには、金属分の粒径は小さいことが好ましく、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは200nm以下である。
金属薄膜前駆体から得られる金属薄膜の上に金属メッキを施す手法としては、乾式メッキ法及び湿式メッキ法が挙げられる。成膜速度の観点から好ましいのは湿式メッキ法である。湿式メッキ法としては、無電解メッキ法及び電解メッキ法のいずれも使用することができるが、メッキの成膜速度と、得られる金属膜の緻密性の観点から好ましいのは電解メッキ法である。
本発明の製造方法を用いて製造される積層体は、絶縁基板と、絶縁基板上に形成されたイミド結合および/またはアミド結合を有する絶縁性樹脂層と、絶縁性樹脂層上に形成された金属微子が互いに融着した構造を有する金属薄膜層とからなる積層体であり、金属薄膜層は融着した金属微子が絶縁樹脂に絶縁性樹脂層に密着し、かつ、絶縁性樹脂層と金属薄膜層の接触界面に金属酸化物が存在することに特徴がある。
金属粒子がお互いに融着した構造とは、金属粒子が界面を融合させて、一体化した構造を指す。
一次粒子径200nm以下の金属微粒子が互いに融着した構造を有する金属薄膜層は、電子顕微鏡で観察すると金属間の界面が観察される箇所と、連続層として観察される箇所が混在する。本発明の積層体における金属薄膜層の厚みに制限はないが、通常0.05〜50μmである。本発明における金属薄膜層の金属種は、金属薄膜前駆体から形成されうる限りにおいて特に制限はなく、銅、銀、ニッケル、パラジウム、などが好ましく用いられる。
1次粒径が8nm程度の金属酸化物超微粒子を金属薄膜前駆体粒子として用いて金属薄膜層を形成させた場合には、金属薄膜の絶縁性樹脂層との界面には、通常、融着して10nm〜50nm程度に成長した金属微粒子が1〜40nmの深さでポリイミド膜に埋め込まれている構造が確認でき、この界面のRaは10nm程度になる。
界面に存在する金属酸化物は金属薄膜層と絶縁性樹脂層の間の接着強度を増大させる効果があり、従って界面全域に渡って均一に分布していることが好ましい。金属酸化物による接着強度の増大効果の理由は必ずしも明確でないが、絶縁性樹脂層のイミド基もしくはアミド基との間で好ましい化学的結合を形成するためと考えられる。
本発明では、絶縁性樹脂層をプラズマ処理等でイミド基もしくはアミド基の変性処理を行わなくても、金属酸化物の存在により高い接着強度が発現する。プラズマ処理では通常はイミド基もしくはアミド基がプラズマの高いエネルギーによって他の窒素含有極性基に変換されて、これが接着性改善に寄与すると言われているが、そのような極性基は吸湿性や金属イオンマイグレーションに悪影響を与える懸念がある。本発明ではそのような処理を行わなくても接着強度が高いという特徴がある。
金属酸化物の種類は、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化銀、酸化ルテニウム、酸化オスミウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化クロム、などが例示できる。特に酸化第一銅は接着向上効果が特に優れるので、特に好ましく用いられる。本発明における金属薄膜層と金属酸化物の組み合わせにおいて、特に好ましいものは、金属薄膜層が銅を含み、金属酸化物が酸化第一銅である場合である。
金属酸化物微粒子の粒子径、金属薄膜の体積抵抗率、接着性・接着強度、金属薄膜層と絶縁性樹脂層の界面粗さと金属粒子が絶縁性樹脂層に埋め込まれる最大深さ、およびイミド化転化率の測定法は以下のとおりである。
(1)金属酸化物微粒子の粒子径
カーボン蒸着された銅メッシュ上に、分散・希釈した粒子分散体を1滴たらし、減圧乾燥したサンプルを作成する。(株)日立製作所製透過型電子顕微鏡(JEM−4000FX)を用いて観察し、視野の中から、粒子径が比較的そろっている個所を3ヶ所選択し、被測定物の粒子径測定に最も適した倍率で撮影する。おのおのの写真から、一番多数存在すると思われる粒子を3点選択し、その直径をものさしで測り、倍率をかけて一次粒子径を算出する。これらの値の平均値を粒子径とする。
(2)金属薄膜の体積抵抗率
低抵抗率計「ロレスタ−(登録商標)」GP(三菱化学株式会社製)を用いて測定する。
テープ剥離試験は、得られた金属薄膜上にスコッチテープ(登録商標、住友スリーエム株式会社製)を貼り、これを剥がす際に、金属薄膜がスコッチテープに付着して基板から剥がれたか否かで判定する。
接着強度測定のための試料は、次のようにして作成する。得られた金属薄膜上に電気メッキにより金属膜を厚付けし、金属部分の総厚みを約15μmにした後、カッターナイフで幅3mm、長さ50mmの切れ込みを入れる。180度剥離試験は、幅3mmの側面の一方を少し剥離してアルミテープを貼り、このテープ部分を剥離試験機に固定し、180度方向に引き上げて、剥離するに必要な力を測定して、接着強度(kN/m)とする。
金属薄膜の形態は積層体の断面TEM像を(株)日立製作所製透過型電子顕微鏡(JEM−4000FX)を用いて観察する。金属薄膜層と絶縁性樹脂層の界面粗さと金属粒子が絶縁性樹脂層に埋め込まれる最大深さは以下のようにして観察する。界面部分の断面TEM像をスキャナーでデジタル化し、融着して得られる金属薄膜界面の8ビットのグレースケール画像を取得する。2値化処理を施した後エッジ抽出を行い、金属薄膜の界面プロファイル像(ラインイメージ)を得る。また、画像プロファイル像の両端を結ぶ直線からの、ラインイメージの絶縁性樹脂層側への変位量を用いて、金属薄膜層と絶縁性樹脂層の界面粗さ(Ra)を見積もる。画像プロファイル像の両端を結ぶ直線から最も深い谷底までの深さを最大深さとして見積もる。
ポリアミック酸を塗布し、ポリイミド膜を形成する場合について説明する。ポリアミック酸加熱処理後において、表面の赤外吸収スペクトルを測定し、1780cm−1付近のイミド基ピーク強度(A1)とイミド化反応によって変化しない1500cm−1付近のピーク強度(B1)を計算し、これらからイミド基の相対強度C1=A1/B1を導出する。次に、比較試料として、350℃で4時間加熱処理を行い、100%イミド化転化を行った試料を準備し、1780cm−1及び1500cm−1のピーク強度(A0,B0)を測定し、相対強度C0=A0/B0を導出する。このときの相対強度C0を100とし、C1と比較することで、加熱処理によるイミド化転化率は、(100×C1/C0)%と計算して求める。
(金属薄膜前駆体微粒子および分散体の調製)
無水酢酸銅(和光純薬工業株式会社製)8gに精製水70mlを加えた。25℃で攪拌しながらヒドラジン対酢酸銅のモル比が1.2になるように64重量%のヒドラジン抱水物2.6mlを加えて反応させ、平均1次粒子径20nmの酸化第一銅微粒子を得た。得られた酸化第一銅3gに対し、ポリエチレングリコールメチルエーテル(数平均分子量350、アルドリッチ製)2gと、ジエチレングリコール7gを加え、超音波分散を施して酸化第一銅分散体を得た。
(熱可塑性ポリイミド溶液の合成)
3,3’−4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの重縮合反応によって得られる溶剤可溶性ポリイミドの樹脂濃度20wt%のNMP(N−メチル−2−ピロリドン)溶液(新日本理化株式会社製リカコートPN−20)をNMPを加えて10wt%溶液に希釈し、ポリイミド樹脂溶液を調製した。この熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度は270℃であった。
10cm角のガラス基板上に同サイズで切り出したポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製カプトンフィルム、膜厚50μm)を両面テープで貼り合わせた後、ミカサ株式会社製スピンコーター(1H−D7型)にセットした。このポリイミドフィルム上に上記ポリイミド樹脂溶液を500rpm×5秒のプレスピンの後、2000rpm×10秒の条件でスピンコートを行った。スピンコート塗布した基板を、ホットプレート上で90℃×10分、120℃×10分、150℃×10分、180℃×10分、250℃×60分、300℃×60分の条件で加熱し、熱可塑性ポリイミド樹脂を表面に有するポリイミド基板を得た。
上記ポリイミド基板を再びスピンコーターにセットし、前述の酸化第一銅分散体を2mL滴下した後、500rpm×15秒の条件でスピンコートして塗布を行った。次に、この塗布膜を、オーブンに入れて130℃×10分乾燥させた後、酸素濃度100ppmの条件で、ホットプレートで350℃×15分の条件で窒素フローさせながら、上記ポリイミド膜のガラス転移温度(270℃)よりも高い温度で焼成した。すると、粒子径20nm以下の銅微粒子が互いに融着し、大きな銅グレインとなった構造の薄膜が得られた。銅薄膜のポリイミド膜との界面は、10nm〜50nm程度の大きさに融着した銅微粒子が最大約20nmの深さでポリイミド膜に埋め込まれている構造を有することが確認できた。界面のRaは7nmであった。銅薄膜の体積抵抗率は、3.0×10−6Ωcmであり、テープ剥離試験でまったく剥がれは観察されなかった。
硫酸銅五水和物(和光純薬工業株式会社)80gと硫酸180gとを、精製水1リットルに溶解し、さらにメッキ添加剤を加えて電解メッキ浴を作成した。上記で得られた銅膜表面を酸洗・脱脂したのち、メッキ浴を浸し、室温にて、3A/dm2の電流密度で、電解銅メッキを施し、金属層の総厚み(銅薄膜層+メッキで形成された銅膜)が15μmである、積層基板を完成させた。180度剥離試験による接着強度は、1.5kN/mと非常に高かった。銅層とポリイミド層の剥離界面について、銅の界面をXPS分析した所、酸化第一銅の存在が確認できた。
(積層基板の特性)
上記で得られた積層基板に対し、フォトリソグラフィによりライン/スペース=30μm/30μmの櫛型電極を作成したところ、配線の直線性はきわめて高く、微細配線形成性が高いことが確認された。また、ピンホールに起因すると考えられる配線の断線は観察されなかった。作成した櫛型電極を温度85℃×湿度85%、印加電圧100Vの条件でマイグレーション試験を行ったが、1000時間経過後においても配線間の絶縁性は1010Ω台を維持し、吸湿に伴う絶縁性の低下は観察されなかった。
(ポリイミド樹脂前駆体を含むポリイミド樹脂層を有する基板の作成)
4,4’−ジアミノビフェニル18.6g(0.10モル)をN−メチルピロリドン(NMP)250gに溶解した。この溶液に3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物32.1g(0.10モル)の粉末を添加し、5℃で8時間攪拌することによって、ポリアミック酸のNMP溶液を得た。さらに本ポリアミック溶液10gに、NMPを7g加えて10重量パーセント濃度に希釈した。
10cm角のガラス基板上に同サイズで切り出したポリイミドフィルム(東レ・デュポ
ン社製カプトンフィルム、膜厚50μm)を両面テープで貼り合わせた後、ミカサ株式会
社製スピンコーター(1H−D7型)にセットした。希釈した上記ポリアミック酸を滴下
し、500rpm×5秒のプレスピンの後、2000rpm×10秒の条件でスピンコー
トを行なった。スピンコート塗布した基板を、ホットプレート上で120℃×30分、2
00℃×30分の条件で加熱し、ポリイミド膜を形成したポリイミド基板を得た。このポ
リイミド膜のイミド化転化率R1は90%であった。
上記ポリイミド基板を再びスピンコーターにセットし、実施例1と同一の酸化第一銅分散体を2ml滴下した後、500rpm×15秒の条件でスピンコートして塗布を行った。この塗布膜をオーブン中で130℃×10分間乾燥した後、ホットプレートで350℃×30分の条件で、酸素濃度150ppmの条件で焼成した。すると、粒子径20nm以下の銅微粒子が互いに融着し、大きな銅グレインとなった構造の薄膜が得られた。
また、ポリイミド膜中のイミド化転化率R2を分析すると100%であった。銅薄膜の体積抵抗率は、3.4×10−6Ωcmであり、テープ剥離試験でまったく剥がれは観察されなかった。
実施例1と同様の操作で銅メッキを行って、銅膜厚15μmの積層基板を得た。銅薄膜は銅微粒子が互いに融着した構造を有し、ポリイミド膜との界面は、10nm〜40nmに融着した銅微粒子が最大約20nmの深さでポリイミド膜に埋め込まれている構造を有することが確認できた。界面のRaは8nmであった。180度剥離試験による接着強度は、1.4kN/mと非常に高かった。銅層とポリイミド層の剥離界面について、銅の界面をXPS分析した所、酸化第一銅の存在が確認できた。
2,2’−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニルプロパン1.0モルと3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物1.0モルの比率となるように秤量し、NMPを固形分濃度が10wt%になるように加え、50℃で10時間攪拌溶解し、熱可塑性ポリイミド前駆体であるポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液をポリイミドフィルム上に500rpm×5秒のプレスピンの後、2000rpm×10秒の条件でスピンコートを行った。スピンコート塗布した基板を、ホットプレート上で120℃×30分、200℃×10分、250℃×60分、300℃×60分の条件で加熱し、熱可塑性ポリイミド樹脂を表面に有するポリイミド基板を得た。この熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度は260℃であった。
酸化第一銅分散体の加熱処理条件を、酸素濃度50ppm、350℃×60分の条件で行う以外は実施例3と同一の条件で、メッキ層を有する積層基板を形成した。メッキ層形成前の銅薄膜層の体積抵抗率は2.8×10−6Ωcmであった。接着強度は1.5kN/mであった。得られた銅薄膜は銅微粒子が互いに融着した構造を有し、ポリイミド膜との界面は、10nm〜40nm程度の大きさに融着した銅微粒子が最大約17nmの深さでポリイミド膜に埋め込まれている構造を有することが確認できた。界面のRaは15nmであった。また、銅層とポリイミド層の剥離界面について、銅の界面をXPS分析した所、酸化第一銅の存在が確認できた。
酸化第一銅分散体の加熱処理条件を、酸素濃度500ppm、350℃×10分の条件で行う以外は実施例3と同一の条件で、メッキ層を有する積層基板を形成した。メッキ層形成前の銅薄膜層の体積抵抗率は3.9×10−6Ωcmであった。接着強度は1.7kN/mであった。得られた銅薄膜は銅微粒子が互いに融着した構造を有し、ポリイミド膜との界面は、10nm〜50nm程度の大きさに融着した銅微粒子が最大約20nmの深さでポリイミド膜に埋め込まれている構造を有することが確認できた。界面のRaは12nmであった。また、銅層とポリイミド層の剥離界面について、銅の界面をXPS分析した所、酸化第一銅の存在が確認できた。
実施例3で得たポリアミド酸溶液をポリイミドフィルム上に500rpm×5秒のプレスピンの後、2000rpm×10秒の条件でスピンコートを行った。スピンコート塗布した基板を、ホットプレート上で120℃×30分、200℃×30分の条件で加熱し、イミド化転化率が91%である熱可塑性ポリイミド系樹脂を表面に有するポリイミド基板を得た。
実施例1と同様の酸化第一銅分散体をスピンコート塗布したのち、140℃×10分乾燥した後、酸素濃度200ppmの条件で、ホットプレートで350℃×30分焼成したところ、微粒子間が融着した構造の銅薄膜が得られた。銅薄膜は銅微粒子が互いに融着した構造を有し、ポリイミド膜との界面は、10nm〜50nm程度の大きさに融着した銅微粒子が最大約20nmの深さでポリイミド膜に埋め込まれている構造を有することが確認できた。界面のRaは8nmであった。また、焼成後の熱可塑性ポリイミド樹脂層のイミド化転化率は100%であった。得られた銅薄膜の体積抵抗率は、3.7×10−6Ωcmであり、テープ剥試験でまったく剥がれは観察されなかった。実施例1と同様に銅メッキを行って得た積層基板に対し、180度剥離試験による接着強度は、1.6kN/mであった。
銅層とポリイミド層の剥離界面について、銅の界面をXPS分析した所、酸化第一銅の存在が確認できた。
東洋紡績株式会社製のポリアミドイミド樹脂溶液をNMPで希釈して樹脂含有量が10wt%になるように調整した後、ポリイミドフィルム上に500rpm×5秒のプレスピンの後、2000rpm×10秒の条件でスピンコートを行った。スピンコート塗布した基板を、ホットプレート上で120℃×30分、300℃×30分の条件で加熱し、溶剤を揮発させて熱可塑性ポリアミドイミド樹脂を表面に有するポリイミド基板を得た。
実施例1と同様の酸化第一銅分散体をスピンコート塗布し、130℃×10分乾燥した後、酸素濃度200ppmの条件で、ホットプレートで350℃×30分焼成したところ、微粒子間が融着した構造の銅薄膜が得られた。銅薄膜は銅微粒子が互いに融着した構造を有し、ポリイミド膜との界面は、10nm〜50nm程度の大きさに融着した銅微粒子が最大約20nmの深さでポリイミド膜に埋め込まれている構造を有することが確認できた。界面のRaは7nmであった。得られた銅薄膜の体積抵抗率は、3.2×10−6Ωcmであり、テープ剥試験でまったく剥がれは観察されなかった。実施例1と同様に銅メッキを行って得た積層基板に対し、180度剥離試験による接着強度は、1.2kN/mであった。
銅層とポリイミド層の剥離界面について、銅の界面をXPS分析した所、酸化第一銅の存在が確認できた。
(金属配線の形成)
実施例3で得たポリアミド酸溶液をポリイミドフィルム上に500rpm×5秒のプレスピンの後、2000rpm×10秒の条件でスピンコートを行った。スピンコート塗布した基板を、ホットプレート上で120℃×30分、200℃×30分の条件で加熱し、イミド化転化率が91%である熱可塑性ポリイミド樹脂を表面に有するポリイミド基板を得た。本ポリイミド基板をディスペンサー(武蔵エンジニアリング株式会社製)のテーブルに真空吸着した。ディスペンサーチューブに充填した上記分散体の先端にシリンジ(FN−0.50N(内径50μm)、武蔵エンジニアリング株式会社製)を固定して、ディスペンサーのエア供給チューブに接続した後、ディスペンサーロボットの所定位置に固定した。チューブに空気圧をかけ、分散体を押し出しながら、あらかじめプログラムした配線パターンにディスペンサーロボットを動かして、分散体を回路形状に塗布した。この時の、基板とシリンジ先端のギャップは90μmに調整した。
ポリイミド膜を形成しないポリイミド基板に対して、実施例1と同様の手法で銅薄膜を形成したが、形成した銅薄膜はテープ剥離試験ですべて剥がれた。
水素5%の窒素雰囲気中で350℃×30分の加熱処理を行う以外は、実施例3と同様の操作で銅薄膜を形成し、さらにメッキ膜をつけて接着強度を測定したが、接着強度は0.2kN/mであった。剥離した銅薄膜面を元素分析したが、銅酸化物は観察されなかった。
市販の酸化第一銅(和光純薬工業株式会社製)を粉砕して得た平均一次粒子径1.2μmの酸化第一銅を用いる以外は、実施例1と同様の手法で絶縁性樹脂層として熱可塑性ポリイミドを有する基板上に酸化第一銅分散体を塗布し、加熱処理を行ったが、銅表面には多数の亀裂が発生し、銅薄膜としては不完全なものしか得られなかった。
また、絶縁性樹脂層および/または絶縁性樹脂前駆体層を形成した絶縁基板上に、金属薄膜前駆体の分散体または溶液を用いて、インクジェット法等で配線パターン形状を直接描画し、これを加熱処理することによって、接着性の高い金属配線を形成することが可能である。従って、プリント配線板の回路形成だけでなく、プラズマディスプレイパネルや液晶パネル等のフラットパネルディスプレイ製造におけるガラス基板上に形成されたバス電極、アドレス電極の製造にも使用することができる。
Claims (16)
- 絶縁基板上に、加熱処理によって弾性率が変化するイミド結合および/またはアミド結合を有する絶縁性樹脂層および/または絶縁性樹脂前駆体層を形成する工程(1)と、前記絶縁性樹脂層および/または絶縁性樹脂前駆体層の上に、金属薄膜前駆体を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥した塗布膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、絶縁性樹脂層との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)、とを含む積層体の製造方法。
- 絶縁基板上に、ポリイミド樹脂前駆体の溶液を塗布した後、脱溶剤および脱水縮合反応のための熱処理を行って前記前駆体の一部をポリイミド樹脂に転化させる工程(1)と、前記の層の上に、金属薄膜前駆体を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥した塗布膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、残りの前記前駆体をポリイミド樹脂に転化させると共に、前記ポリイミド樹脂との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)、とを含むことを特徴とする積層体の製造方法。
- 工程(1)のイミド結合への転化率が、70%以上100%未満である請求項2に記載の積層体の製造方法。
- 絶縁基板上に熱可塑性ポリイミド樹脂の溶液を塗布した後、脱溶剤処理を行って熱可塑性ポリイミド系樹脂からなる層を絶縁基板上に形成させる工程(1)と、次いで、前記熱可塑性ポリイミド樹脂層の上に、金属薄膜前駆体を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥した塗布膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、前記熱可塑性ポリイミド樹脂を可塑化させると共に、前記熱可塑性ポリイミド樹脂との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)、とを含むことを特徴とする積層体の製造方法。
- 絶縁基板上に熱可塑性ポリアミドイミド樹脂の溶液を塗布した後、脱溶剤処理を行って熱可塑性ポリアミドイミド樹脂からなる層を絶縁基板上に形成させる工程(1)と、次いで、前記熱可塑性ポリアミドイミド樹脂層の上に、金属薄膜前駆体を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥した塗布膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、前記熱可塑性ポリアミドイミド樹脂を可塑化させると共に、前記熱可塑性ポリアミドイミド樹脂との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)、とを含むことを特徴とする積層体の製造方法。
- 絶縁基板上に熱可塑性ポリイミド樹脂前駆体の溶液を塗布した後、脱溶剤および脱水縮合反応のための熱処理を行って前駆体をポリイミドに全転化して熱可塑性ポリイミド樹脂からなる層を絶縁基板上に形成させる工程(1)と、次いで、前記熱可塑性ポリイミド樹脂層の上に、金属薄膜前駆体を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥した塗布膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、前記熱可塑性ポリイミド樹脂を可塑化させると共に、前記熱可塑性ポリイミド樹脂との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)、とを含むことを特徴とする積層体の製造方法。
- 工程(4)の加熱処理を、熱可塑性ポリイミド樹脂または熱可塑性ポリアミドイミド樹脂のガラス転移温度以上で行う請求項4〜請求項6のいずれかに記載の積層体の製造方法。
- 金属薄膜前駆体が、金属粒子、金属酸化物粒子および金属水酸化物粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜請求項7のいずれかに記載の積層体の製造方法。
- 金属薄膜前駆体粒子の1次粒子径が200nm以下である請求項8に記載の積層体の製造方法。
- 金属薄膜前駆体が酸化第一銅粒子である請求項8または請求項9に記載の積層体の製造方法。
- 加熱処理を、酸化剤を含有する非酸化性ガス雰囲気で行うことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の積層体の製造方法。
- 酸化剤が酸素であり、非酸化性ガス雰囲気中の酸化剤の濃度が30〜500ppmであることを特徴とする請求項11に記載の積層体の製造方法。
- 分散体が、多価アルコールを含む請求項8〜請求項12のいずれかに記載の積層体の製造方法。
- 分散体が、直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物を含む請求項8〜請求項13のいずれかに記載の積層体の製造方法。
- 請求項1〜請求項14のいずれかに記載の製造方法を用いて作成される積層体。
- 請求項15の積層体を用いて作成されるプリント配線板。
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