JP2008200557A - 積層体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属薄膜と基板との密着性が高く、バルク金属並の低い体積抵抗率を有し、微細配線形成性や、耐湿性等の特性にも優れた積層体の製造方法を提供することである。
【解決手段】 加熱処理によって弾性率が変化するイミド結合および/またはアミド結合を有する絶縁性樹脂層および/または絶縁性樹脂前駆体層を形成する工程(1)と、前記絶縁性樹脂層の上に加熱処理によって互いに融着する金属薄膜前駆体粒子を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、絶縁性樹脂層との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)、とを含む積層体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、プリント配線板等の電気配線回路基板に好適に用いられる金属積層体と、その製造方法に関する。
従来、基板上に金属薄膜を形成する方法には、メッキ法、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法、金属ペースト法等が知られている。
メッキ法によると、導電性を有する基材の上に、比較的容易に金属薄膜を形成することが可能であるが、絶縁基材の上に形成する場合には、導電層をはじめに形成する必要があるため、そのプロセスは煩雑なものになるという問題がある。また、メッキ法は溶液中での反応を利用するため、大量の廃液が副生し、この廃液処理に多大な手間とコストがかかるという問題があると共に、得られる金属薄膜の基板への密着性が充分ではない。
真空蒸着法、スパッタ法およびCVD法は、いずれも高価な真空装置を必要とし、いずれも成膜速度が遅いという問題がある。また、原子状態にある金属を膜状に積み上げるこれらの気相法においては、表面のわずかな凹凸や汚れ等によって金属が付着しない、いわゆるピンホールが発生しやすいという問題がある。
また、これらの気相法においては通常金属薄膜形成前に基板表面はプラズマ処理等の表面処理がなされるが、この表面処理によって基板がダメージを受ける場合がある。例えば、特許文献1にはポリイミドフィルムをプラズマ処理すると、表面層のイミド環が開裂し、酸素濃度条件の違いによって、酸素官能基や窒素官能基が生成することが開示されている。本文献1中には、酸素濃度(1〜10)×10−6Paの条件でプラズマ処理を行ったのち銅を蒸着することによって窒素官能基と銅との相互作用によって初期の接着強度が1kN/m程度の積層体が得られ、150℃×24時間〜168時間の加熱処理により銅酸化物との相互作用が強まって接着強度は1.2〜1.8kN/mまで増大するとの記載があるが、ポリイミドが変性して生ずる窒素官能基の存在は、ポリイミドフィルムの耐熱性の低下や、吸湿性の増大など、フィルム物性が低下するという懸念がある。
金属ペースト法は、金属フィラーを分散させた溶液を絶縁基板上に塗布し、加熱処理して金属薄膜を得る方法である。この方法によると、真空装置等の特別な装置を必要とせず、プロセスが簡易であるという利点を有することに加え、さらに、気相法のようなピンホールの発生も抑制できるという利点も有するが、金属フィラーを溶融するには、通常、1000℃以上の高温を必要とする。したがって、基材はセラミック基材等の耐熱性を有するものに限られ、また、基材が熱で損傷したり、加熱により生じた残留応力により基材が損傷を受けやすいという問題がある。さらに、得られる金属薄膜の基板への密着性が充分ではない。
特許文献2には、金属粉と反応性有機媒体からなる混合物を可溶性ポリイミド等の拡散および接着障壁である塗布層上に塗布し、加熱処理することで、基板への固着性が向上するとの記載がある。例えば、銅粉と、銅系反応性有機媒体からなる混合物から銅膜を形成する場合には、銅の酸化をふせぐため、保護雰囲気(酸素濃度3ppm未満の窒素雰囲気あるいは水素を含む還元性雰囲気)中での加熱処理が好ましく、その場合に、テープテストをクリアする程度の固着性が得られるとの記載があるが、その接着強度は約1kN/m程度であり、充分なものではない。また、2〜10μmの金属粉を用いるため、金属膜と基板との界面粗度が大きく、金属膜をフォトリソグラフィによって配線形成を行う用途においては、微細配線の形成が難しいという問題もある。
一方、金属フィラーの粒径を低減することによって、金属ペーストの焼成温度を低減する技術は公知であり、例えば、特許文献3には、粒径100nm以下の金属微粒子を分散した分散体を用いて金属薄膜を直接、絶縁基板上に形成する方法が開示されている。しかしながら、この方法で作成した金属薄膜の絶縁基板への密着性も充分ではない。さらに、ここで用いられている100nm以下の金属粒子の製造方法は、低圧雰囲気で揮発した金属蒸気を急速冷却する方法であるために、大量生産が難しく、したがって、金属フィラーのコストが高くなるという問題を有している。
金属酸化物フィラーを分散させた金属酸化物ペーストを用いて、金属薄膜を直接、絶縁基板上に形成する方法も知られている。特許文献4には、結晶性高分子を含み、粒径300nm以下の金属酸化物を分散させた金属酸化物ペーストを加熱し、結晶性高分子を分解させて金属薄膜を得る方法が開示されている。しかしながら、この方法では、300nm以下の金属酸化物を結晶性高分子中にあらかじめ分散させる必要があり、非常な手間を必要とするのに加えて、結晶性高分子を分解するのに400℃〜900℃の高温を必要とする。したがって、使用可能な基材は、その温度以上の耐熱性を必要とし、その種類に制限があるという問題がある。また、得られる金属薄膜の基板への密着性も充分ではない。
これらの課題を解決する金属薄膜の製造方法として、すでに本出願人は、安価な金属酸化物フィラーを分散させた分散体を基材上に塗布し、比較的低温での加熱処理によって金属薄膜を得るという方法を開示している(特許文献5)。この技術によって基板上に密着性が高く、薄い銅等の金属薄膜を容易に形成することが可能であり、ポリイミドフィルム等の上に銅膜を形成して、フレキシブル回路基板材料としても使用することが可能であるが、金属薄膜の低抵抗化と密着性を満足する材料の開発が求められている。
特開2005−54259号公報 特表2003−506882号公報 特許第2561537号 特開平5−98195号公報 国際公開第03/051562号パンフレット
本発明の課題は、バルク金属並みの高い導電性を有し、金属薄膜と基板との密着性が特に高く、微細配線形成性や、耐湿性等の特性にも優れた積層体の製造方法を提供することである。
本発明の目的は、プラズマ処理等による基板の改質を必要とせずに、また、高温を必要としない、簡便な方法で基板上に密着性の高い金属薄膜を形成する方法を提供することである。
本発明者らは、上記の問題点を解決するために鋭意検討を進めた結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
<1>絶縁基板上に、加熱処理によって弾性率が変化するイミド結合および/またはアミド結合を有する絶縁性樹脂層および/または絶縁性樹脂前駆体層を形成する工程(1)と、前記絶縁性樹脂層および/または絶縁性樹脂前駆体層の上に、金属薄膜前駆体を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥した塗布膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、絶縁性樹脂層との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)、とを含む積層体の製造方法。
<2>絶縁基板上に、ポリイミド樹脂前駆体の溶液を塗布した後、脱溶剤および脱水縮合反応のための熱処理を行って前記前駆体の一部をポリイミド樹脂に転化させる工程(1)と、前記の層の上に、金属薄膜前駆体を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥した塗布膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、残りの前記前駆体をポリイミド樹脂に転化させると共に、前記ポリイミド樹脂との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)、とを含むことを特徴とする積層体の製造方法。
<3>工程(1)のイミド結合への転化率が、70%以上100%未満である<2>に記載の積層体の製造方法。
<4>絶縁基板上に熱可塑性ポリイミド樹脂の溶液を塗布した後、脱溶剤処理を行って熱可塑性ポリイミド系樹脂からなる層を絶縁基板上に形成させる工程(1)と、次いで、前記熱可塑性ポリイミド樹脂層の上に、金属薄膜前駆体を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥した塗布膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、前記熱可塑性ポリイミド樹脂を可塑化させると共に、前記熱可塑性ポリイミド樹脂との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)、とを含むことを特徴とする積層体の製造方法。
<5>絶縁基板上に熱可塑性ポリアミドイミド樹脂の溶液を塗布した後、脱溶剤処理を行って熱可塑性ポリアミドイミド樹脂からなる層を絶縁基板上に形成させる工程(1)と、次いで、前記熱可塑性ポリアミドイミド樹脂層の上に、金属薄膜前駆体を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥した塗布膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、前記熱可塑性ポリアミドイミド樹脂を可塑化させると共に、前記熱可塑性ポリアミドイミド樹脂との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)、とを含むことを特徴とする積層体の製造方法。
<6>絶縁基板上に熱可塑性ポリイミド樹脂前駆体の溶液を塗布した後、脱溶剤および脱水縮合反応のための熱処理を行って前駆体をポリイミドに全転化して熱可塑性ポリイミド樹脂からなる層を絶縁基板上に形成させる工程(1)と、次いで、前記熱可塑性ポリイミド樹脂層の上に、金属薄膜前駆体を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥した塗布膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、前記熱可塑性ポリイミド樹脂を可塑化させると共に、前記熱可塑性ポリイミド樹脂との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)、とを含むことを特徴とする積層体の製造方法。
<7>工程(4)の加熱処理を、熱可塑性ポリイミド樹脂または熱可塑性ポリアミドイミド樹脂のガラス転移温度以上で行う<4>〜<6>のいずれかに記載の積層体の製造方法。
<8>金属薄膜前駆体が、金属粒子、金属酸化物粒子および金属水酸化物粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である<1>〜<7>のいずれかに記載の積層体の製造方法。
<9>金属薄膜前駆体粒子の1次粒子径が200nm以下である<8>に記載の積層体の製造方法。
<10>金属薄膜前駆体が酸化第一銅粒子である<8>または<9>に記載の積層体の製造方法。
<11>加熱処理を、酸化剤を含有する非酸化性ガス雰囲気で行うことを特徴とする<1>〜<7>のいずれかに記載の積層体の製造方法。
<12>酸化剤が酸素であり、非酸化性ガス雰囲気中の酸化剤の濃度が30〜500ppmであることを特徴とする<11>に記載の積層体の製造方法。
<13>分散体が、多価アルコールを含む<8>〜<12>のいずれかに記載の積層体の製造方法。
<14>分散体が、直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物を含む<8>〜<13>のいずれかに記載の積層体の製造方法。
<15><1>〜<14>のいずれかに記載の製造方法を用いて作成される積層体。
<16><15>の積層体を用いて作成されるプリント配線板。
本発明の積層体の製造方法は、比較的低温の加熱処理によって、バルク金属に近い体積抵抗率を有し、基板との接着性が高い積層体を製造する方法を提供する。得られる積層体はバルク金属に近い体積抵抗率と高い接着強度を有する以外に、微細配線形成性や耐湿性等の特性にも優れる。また、本発明によると、金属の膜厚を任意にコントロールすることができ、薄膜の金属膜も容易に形成できるので、プリント配線板の材料等として好適に使用することが可能である。さらに、基板上に金属薄膜を形成する際の、従来技術における前記の問題点が解決される。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の積層体の製造方法は、絶縁基板上に加熱処理によって弾性率が変化するイミド結合および/またはアミド結合を有する絶縁性樹脂層および/またはその前駆体層を形成する工程(1)と、前記絶縁性樹脂層および/または絶縁性樹脂前駆体層の上に金属薄膜前駆体を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、絶縁性樹脂層との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)とを含む。
絶縁基板は、有機材料および無機材料のいずれでもよいが、金属薄膜を形成する際に加熱処理を行うことから、耐熱性のものが好ましい。例えば、セラミックスやガラスなどの無機材料、ポリイミドフィルム等の耐熱性樹脂が好適に用いられる。
絶縁基板は、電気配線回路基板に通常用いられている程度の絶縁性を有するものであればよく、好ましくは、体積抵抗率として1013Ωcm以上を有するものである。
本発明で、絶縁基板として特に好適に使用される熱硬化性ポリイミドフィルムは、ピロメリット酸またはピロメリット酸誘導体と、芳香族ジアミンとを縮合してなるもの、例えば、カプトン(登録商標、東レ・デュポン株式会社製)、アピカル(登録商標、鐘淵化学株式会社製)等、ビフェニルテトラカルボン酸またはビフェニルテトラカルボン酸誘導体と、芳香族ジアミンとを縮合してなるもの、例えば、ユーピレックス(登録商標、宇部興産株式会社製)等である。ポリイミドフィルムの膜厚は限定されないが、通常、25〜100μm程度のものを用途に応じて適宜選択して用いることができる。
本発明では、このような基板をそのまま用いてもよいが、その上に形成するイミド結合および/またはアミド結合を有する絶縁性樹脂層との接着性を向上させるために、脱脂処理、酸またはアルカリによる化学処理、熱処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、サンドブラスト処理等の表面処理を行ってもよい。
加熱処理によって弾性率が変化するイミド結合および/またはアミド結合を有する絶縁性樹脂層および/または絶縁性樹脂前駆体層とは、金属薄膜前駆体の分散体を加熱処理する温度において弾性率の変化が観測され、かつ、イミド結合および/またはアミド結合を有している樹脂層および/または樹脂前駆体層のことを指す。例えば、ポリイミド樹脂前駆体としては、ポリアミック酸、ジイソシアナート付加体等の加熱によってイミド結合を形成する熱硬化性官能基を有する化合物を指す。
加熱処理による弾性率の変化とは、絶縁性樹脂層が熱可塑性樹脂からなる層である場合においては、加熱処理時の弾性率の一時的な低下を指し、絶縁性樹脂層が前駆体層あるいは前駆体を含有する層においては、未反応の熱硬化性官能基を有する弾性率の低い前駆体層が加熱処理によって架橋することによって弾性率が増大する変化を指す。前駆体層あるいは前駆体を含有する層を加熱処理して得られる絶縁性樹脂層は熱可塑性樹脂であっても非熱可塑性樹脂であってもかまわない。
絶縁性樹脂層を有するイミド結合および/またはアミド結合を有する樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミドエステル樹脂等が例示できる。ポリイミド樹脂とは、イミド結合を有する樹脂であって、通常は、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを縮合させることによって得られる。ポリアミド樹脂とは、アミド結合を有する樹脂であり、ジカルボン酸またはジカルボン酸のハロゲン化物成分とジアミン成分を縮合させることによって得られる。また、ポリアミドイミド樹脂はアミド結合と、イミド結合を共に有する。これらの樹脂は、通常、電気配線の絶縁膜として用いられている程度の絶縁性を有することが好ましく、体積抵抗率が1013Ωcm以上の絶縁性を有することが好ましい。
イミド結合および/またはアミド結合を有する樹脂は、非熱可塑性樹脂であっても、熱可塑性樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度以上の加熱によって弾性率が大きく低下する樹脂であって、そのガラス転移温度は、好ましくは150℃以上、350℃以下、より好ましくは150℃以上、300℃以下である。
積層体に高い耐熱性が要求される場合にイミド結合および/またはアミド結合を有する樹脂の中で特に好ましいのは、イミド結合を有する樹脂であり、非熱可塑性樹脂と熱可塑性樹脂のいずれも使用可能である。中でもポリイミド樹脂は特に好ましく、非熱可塑性ポリイミド樹脂と熱可塑性ポリイミド樹脂のいずれも用いることができる。
ここで、非熱可塑性ポリイミド樹脂とは、イミド環を有する高分子であり、かつ、ガラス転移温度を有しないか、ガラス転移温度を有する場合であっても、ガラス転移温度において弾性率の大きな低下がなく、可塑化しない(溶融流動しない)樹脂を指す。
樹脂の耐熱性や工業的な入手のし易さを考慮すると、非熱可塑性ポリイミド樹脂の中で特に好ましいのは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンもしくはジイソシアナートの重縮合によって得られるポリイミド系樹脂である。このような樹脂の例として、テトラカルボン酸成分として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ジアミン成分として、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等を用い、重縮合によって得られるポリイミド樹脂樹脂等が挙げられる。
熱可塑性ポリイミド樹脂は、熱可塑性を有するポリイミド樹脂であって、特に構造に制限はないが、回路形成材料として用いる場合には低熱膨張性のものが好ましい。
熱可塑性ポリイミド樹脂は、ガラス転移温度以上の加熱によって弾性率が大きく低下する。本発明における熱可塑性ポリイミド系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは150℃以上、350℃以下、より好ましくは200℃以上、350℃以下である。
ポリイミドのガラス転移温度が150℃未満になると、本発明の積層体をフレキシブルプリント配線板等に用いる際に、例えば、150℃における加熱時にポリイミド樹脂が軟化することにより、配線加工した金属層にずれが発生する場合がある。ガラス転移温度が350℃を越えると、金属薄膜と絶縁基板の高い密着性が発揮されなくなる場合がある。
熱可塑性ポリイミド系樹脂は、テトラカルボン酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフルオロメタン二無水物等の少なくとも1種を用い、ジアミン成分としては、〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、3,3‘−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、3,3’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)パーフルオロプロパン等の少なくとも1種を用いて重合反応させたものを用いることが好ましい。
非熱可塑性ポリイミド樹脂および熱可塑性ポリイミド樹脂は、それぞれ、単独でも、2種以上を混合して用いてもよく、異なる化学組成をもった樹脂から複数の層が形成されていてもよい。
本発明の製造方法において、絶縁性樹脂層の厚みは、絶縁基板と金属薄膜層との接着強度の観点、および経済性の観点から、0.1〜20μmの範囲が好ましく、0.1〜10μmがより好ましい。
金属薄膜前駆体とは、加熱処理等の後処理によって金属薄膜が形成できる化合物を指し、例えば加熱処理によって互いに融着する一次粒子径200nm以下の金属薄膜前駆体微粒子や、加熱処理によって金属に還元され金属薄膜を形成する金属錯体などを例示できる。
比較的厚い金属薄膜を形成するためには、金属薄膜前駆体を含有する分散体もしくは溶液の中で特に好ましいものは、一次粒子径200nm以下の金属薄膜前駆体微粒子の分散体である。
加熱処理によって互いに融着する金属薄膜前駆体粒子とは、この前駆体粒子を含む分散体を膜状に塗布し、加熱することによって金属粒子同士が相互に接合して、見かけ上、連続した金属層で形成された薄膜を形成する粒子である。
金属薄膜前駆体粒子は、加熱処理によって緻密な金属薄膜が得るという観点から、一次粒子径が200nm以下が好ましく、さらに好ましくは100nm以下、より好ましくは30nm以下である。また、分散体の粘度、取り扱い性の観点から、1次粒子径は1nm以上であることが好ましい。
本発明で用いられる金属薄膜前駆体粒子としては、加熱処理によって金属薄膜を形成する限り制限は無く、好ましくは、金属粒子、金属水酸化物粒子および金属酸化物粒子が挙げられる。
金属粒子としては、湿式法やガス中蒸発法等の手法により形成される1次粒径が10nm以下の金属微粒子が好ましく、特に銅微粒子が好ましい。
金属水酸化物粒子としては、水酸化銅、水酸化ニッケル、水酸化コバルト等の化合物からなる粒子を例示できるが、特に銅薄膜を与える金属水酸化物粒子としては、水酸化銅粒子が好ましい。
金属酸化物粒子は、加熱処理による金属薄膜形成の容易性から、特に好ましい。金属酸化物粒子としては、例えば、酸化銅、酸化銀、酸化パラジウム、酸化ニッケル等が挙げられる。加熱処理によって銅を与えることが可能な酸化銅としては、酸化第一銅、酸化第二銅、その他の酸化数をもった酸化銅のいずれも使用可能である。酸化第一銅粒子は、容易に還元が可能であるので特に好ましい。中でも、一次粒径が200nm以下の金属酸化物微粒子は分散媒への分散性も極めて高いので、特に好ましい。
これらの金属酸化物微粒子は、市販品を用いてもよいし、公知の合成方法を用いて合成することも可能である。例えば、粒子径が100nm未満の酸化第一銅超微粒子の合成方法としては、アセチルアセトナト銅錯体をポリオール溶媒中で200℃程度で加熱して合成する方法が公知である(アンゲバンテ ケミ インターナショナル エディション、40号、2巻、p.359、2001年)。
金属薄膜は、絶縁性樹脂層上に金属薄膜前駆体粒子を含有する分散体または溶液を塗布し、引き続き塗布膜を乾燥した後、さらに加熱処理することで形成される。酸化剤を含有する雰囲気で加熱処理することで、絶縁性樹脂層との界面に金属酸化物を有する金属薄膜が形成される。
本発明の製造方法において積層体の接着強度が向上する理由は必ずしも明確ではないが、次のように考えられる。
加熱処理して金属薄膜前駆体が金属薄膜層を形成する際に、金属薄膜前駆体の一部が絶縁性樹脂層および/または絶縁性樹脂前駆体層にもぐりながら金属薄膜層を形成し、微細なアンカーとなって絶縁性樹脂層と密着して界面の接着強度が増大することが考えられる。
界面に生成する金属酸化物は、イミド結合またはアミド結合を有する絶縁性樹脂層との間で化学的な結合をとることが考えられる。イミド結合とアミド結合は、O,N原子を有する極性基であり、金属酸化物と良好な化学結合を形成することが考えられる。
積層体の断面をTEM観察すると、金属微子がお互いに融着しながら、絶縁性樹脂層の界面にアンカーとなって埋め込まれている様子が観察され、また、その界面の組成分析を行うと金属酸化物が含まれていることが確認される。この微細なアンカーと化学的な結合によって、低粗度ながら高接着強度を得ることができる。絶縁性樹脂と金属層との間の粗度の低さは、本発明の積層体をフォトリソグラフィによって微細な配線を形成する場合に、配線の直線性が高いなど、特に好ましい影響を与える。
加熱処理中に弾性率が変化するイミド結合および/またはアミド結合を有する絶縁性樹脂および/または絶縁性樹脂前駆体層の作成方法に関し、特に(A)ポリイミド樹脂前駆体を含むポリイミド樹脂層と、(B)熱可塑性ポリイミド樹脂層、を作成する例を以下に記す。
(A)ポリイミド樹脂前駆体を含むポリイミド樹脂層の形成は、絶縁基板上にポリイミド樹脂前駆体の溶液を塗布した後、脱溶剤および脱水縮合反応のための熱処理を行って前記前駆体の一部をポリイミド樹脂に転化させることで形成させる。ポリイミド樹脂としては、非熱可塑性ポリイミド樹脂と、熱可塑性ポリイミド樹脂がともに使用できる。ポリイミド樹脂前駆体は、縮合反応によるポリイミド樹脂への転化が完了していない状態の化合物であり、例えば、ポリアミック酸、ジイソシアナート付加体等が挙げられる。ポリイミド樹脂前駆体は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
ポリイミド樹脂前駆体は、熱処理によってその一部がポリイミド樹脂に転化される。その転化率は限定されないが、70%以上、100%未満になるよう調整することが好ましい。転化率をこのように調整することにより、次に形成される金属薄膜層との接着性が向上する。例えば、ポリイミド樹脂前駆体としてポリアミック酸を用いてポリイミド膜を形成する場合には、120℃程度で予備加熱した後、200℃程度で転化反応を行うことによって、イミド化転化率(R1)が90%程度のポリイミド膜が得られる。
上記の転化率とは、ポリイミド樹脂層中のイミド結合を形成する縮合性官能基のうち、縮合している割合を表す指標である。すべての縮合性官能基が縮合し、イミド結合に転化された場合を転化率100%と定義する。通常、この転化率は、転化処理後のイミド結合の量を、赤外線吸収測定により測定して見積もることが可能である。具体的には1780cm−1付近のイミド基の赤外線吸収ピークの相対強度を、転化率100%のサンプルと比較することにより見積もることができる。
(B)熱可塑性ポリイミド樹脂層の形成方法は、絶縁基板上に熱可塑性ポリイミド樹脂の溶液を塗布した後、脱溶剤処理を行って熱可塑性ポリイミド樹脂からなる層を絶縁基板上に形成させる方法(B−1)と、絶縁基板上に熱可塑性ポリイミド系樹脂前駆体の溶液を塗布した後、脱溶剤および脱水縮合反応のための熱処理を行ってポリイミドに全転化した熱可塑性ポリイミド樹脂からなる層を絶縁基板上に形成させる方法(B−2)がある。
(B−1)の方法においては、絶縁基板上に塗工された熱可塑性ポリイミド樹脂溶液は、熱処理等の方法により溶剤が除去される。この際、熱処理は低温から徐々に高温に上昇させながら行うのが好ましい。熱処理を急激に高温で行なうと、樹脂表面にスキン層が生成して溶剤が蒸発しにくくなったり、発泡する場合がある。
(B−2)の方法によると、熱可塑性ポリイミド樹脂前駆体溶液を塗布後、熱処理により溶剤が除去され、脱水縮合反応によりイミド閉環が行われる。この熱処理に関して、脱溶剤処理およびイミド閉環処理は同時に行ってもよいし、逐次的に行ってもよい。熱処理は低温から徐々に高温まで上昇させながら熱処理するのが望ましい。複数のポリイミド前駆体を積層して用いることも可能であり、この場合、積層体における各ポリイミド樹脂層間に十分な接着力を付与するためには、複数の前駆体溶液の一括または逐次の塗工を行うか、イミド閉環反応温度以下での脱溶剤処理の後、前駆体のポリイミドへの加熱変換を一括して行うのが好ましい。
絶縁基板上に熱可塑性ポリアミドイミド樹脂を形成させる手法としては、絶縁基板上に熱可塑性ポリイミド樹脂の溶液を塗布した後、脱溶剤処理を行って熱可塑性ポリイミド樹脂からなる層を絶縁基板上に形成させる方法が通常用いられる。
絶縁基板上に、イミド結合および/またはアミド結合を有する絶縁性樹脂または絶縁性樹脂前駆体等の溶液を塗布する方法は限定されるものではなく、例えば、ディップコート、バーコート、スピンコート、ロールコート、スプレーコート等が用いられる。塗布する際の溶液に用いられる溶媒には、通常、有機溶媒が用いられる。有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチル尿素、N−メチルカプロラクタム、プチロラクタム、テトラヒドロフラン、m−ジオキサン、p−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス2−(2−メトキシエトキシ)エチルエーテル、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ピリジン、ピコリン等が挙げられる。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して用いることもできる。
前記溶液の濃度は、イミド結合および/またはアミド結合を有する絶縁性樹脂または絶縁性樹脂前駆体の重合度にもよるが、溶液粘土の観点から、通常5〜30重量%であり、好ましくは10〜20重量%である。溶液粘度が高い場合には、塗膜表面に平滑性を与えるための平滑剤、レベリング材、脱泡剤等の各種添加剤を必要に応じて添加することができる。溶剤の蒸発速度を調節するために、均一に溶解する範囲で芳香族炭化水素系溶媒を使用することもできる。さらに、公知のアミン系硬化剤等の硬化剤、シランカップリング剤、エポキシ化合物等の接着性付与剤、ゴム等の可撓性付与剤等の各種添加剤や触媒を加えてもよい。
本発明の積層体の製造方法においては、加熱処理によって弾性率が変化するイミド結合および/またはアミド結合を有する絶縁性樹脂および/または絶縁性樹脂前駆体からなる層を形成する工程(工程(1))に引き続き、金属薄膜前駆体を含有する分散体をこの層上に塗布し(工程(2))、前記塗布膜を乾燥する工程(工程(3))を経て、最終的に、酸化剤を含む雰囲気で加熱処理して金属酸化物を絶縁性樹脂層との界面に有する金属薄膜層を形成する(工程(4))。
加熱処理によって、[1]金属粒子が互いに融着した構造を有する金属薄膜層を形成し、[2] 金属薄膜層と絶縁性樹脂層の界面に金属酸化物を形成する。この加熱処理は、絶縁性樹脂層との界面に金属酸化物を形成するように、酸化剤を含む雰囲気中で行われる。酸化剤は、界面に金属酸化物を形成する限りにおいて特に制限はなく、酸素、オゾン、水、などが例示される。雰囲気中の酸化剤の濃度は、金属薄膜層の酸化の容易さなどを考慮して、適宜定めればよい。
加熱処理の他の目的は、[3]イミド結合および/またはアミド結合を有する絶縁性樹脂および/または絶縁性樹脂前駆体からなる層の弾性率を変化させる、[4] 未転化の絶縁性樹脂前駆体が残っている場合には、転化を完了させる、ことである。これら[1]〜[4]は、通常、同時に行われるが、逐次的に行ってもよい。
加熱処理は、金属薄膜層の下地に熱可塑性樹脂を用いる場合にはガラス転移温度以上で行うことが好ましく、ガラス転移温度より40〜100℃高い温度がより好ましく、通常は、200℃以上400℃以下の温度で行われる。例えば、絶縁性樹脂層にガラス転移温度が260℃である熱可塑性ポリイミドを用いる場合、そのガラス転移温度よりも高い300℃〜360℃で加熱処理することが好ましい。
加熱処理によって得られる金属薄膜層が銅等の酸化を受けやすい金属種である場合には、酸化剤を含有する非酸化性雰囲気で加熱処理することが好ましく、特に好ましいのは、酸素を30〜500ppm程度に調整した不活性雰囲気での加熱処理である。不活性雰囲気とは、例えば、アルゴン、窒素等の不活性ガスの雰囲気を指す。酸素濃度が30ppm未満では、界面の金属酸化物の生成に長時間の加熱処理を有する場合があるし、一方、酸素濃度が500ppmを超えると、酸化が過剰となって金属薄膜層の導電性が低下する場合がある。
加熱温度と、加熱時間は、上記[1]〜[4]を考慮した上で、金属薄膜前駆体の種類等に併せて適宜定めればよいが、加熱温度は通常200℃〜500℃、加熱時間は通常1分〜120分の範囲である。一次粒子径20nm程度の酸化第一銅超微粒子分散体から酸化第一銅を界面に有する銅薄膜を形成する場合には、通常、酸素濃度が100ppmであれば、350℃で30分程度の加熱処理が行われる。
これらの加熱処理には、遠赤外線、赤外線、マイクロ波、電子線等の放射線加熱炉や、電気炉、オーブン等の加熱手段が用いられる。
金属薄膜前駆体の分散体または溶液を塗布する方法として、例えば、ディップコーティング方法、スプレー塗布方法、スピンコーティング方法、バーコーティング方法、ロールコーティング方法、インクジェット方法、コンタクトプリンティング方法、スクリーン印刷方法等が挙げられる。分散体の粘度にあわせ、最適な塗布手法を適宜選択すればよい。塗布する分散体の膜厚を調整することによって、最終的に得られる金属薄膜の膜厚を調整することが可能である。
塗布した分散体を乾燥する工程(3)における乾燥工程とは、金属薄膜前駆体の金属薄膜化が起こる温度より低い温度で、分散媒などの易揮発性物質を揮発させる操作を指し、その方法には制限はない。乾燥温度は分散体を構成する組成物の揮発温度を考慮して適宜定めればよいが、通常50〜200℃の温度範囲において行われる。有機溶剤を揮発させる場合には、防爆対応を施したオーブン等を用いて行えばよい。
金属薄膜前駆体の分散体もしくは溶液を、回路形状に塗布し加熱処理すると、金属回路パターンを形成でき、本用途には、例えば、インクジェットプリンターやディスペンサー等、ドロップオンデマンドタイプの塗布装置が用いられる。
インクジェット法においては、分散体または溶液をインクジェットプリンターヘッドに入れて、ピエゾ素子等に電気駆動によって微小振動を加えることによって液滴が吐出される。ディスペンサー法においては、分散体を先端に吐出針のついたディスペンサーチューブに入れ、空気圧を加えることによって液滴が吐出される。
回路パターンは、インクジェットヘッドやディスペンサー吐出針をロボットによって平面方向に動かすことにより任意のパターンを形成することができる。これらの塗布手法においては、段差を有する基板においても、ロボットを垂直方向に動かすことで、段差に追従した回路を形成することも可能である。
インクジェット法においては、描画される配線パターンの線幅は、インクジェットプリンターヘッドから吐出される液滴サイズとその着弾パターンを制御することにより、またディスペンサー法においては吐出針から吐出される液滴の幅を吐出針の内外径や、吐出圧、描画スピード等によってコントロールすることにより、描画される配線パターンの線幅を調整することが可能である。
回路形状に塗布する用途においては、塗布する分散体または溶液の線幅は、通常は1〜400μmの範囲であり、得られる金属配線の線幅は0.5〜300μmである。また、塗布する分散体の厚みを調整することによって、最終的に得られる金属配線の厚みを調整することが可能である。通常は、塗布する分散体の厚みは0.1〜100μmであり、得られる金属配線の厚みは0.05〜50μmである。
本発明の金属薄膜前駆体微粒子の分散体に用いる分散媒は、粒子を均一に分散できるものであれば制限は無い。
分散体が多価アルコールを含有すると、加熱処理して、金属薄膜前駆体粒子から、金属薄膜を得るときの成膜性を向上させるので、さらに好ましい。
多価アルコールは、分子中に複数の水酸基を有する化合物である。多価アルコールは、その沸点が適度に高いため揮発しにくく、これを用いると、分散体の印刷性および金属薄膜形成時の成膜性に優れるので好ましい。多価アルコールの中で好ましいのは、炭素数が10以下の多価アルコ−ルであり、その中でも粘度の低い、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール等が特に好ましい。これらの多価アルコールは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
多価アルコールが金属薄膜形成時の成膜性を向上させる理由は必ずしも明らかではないが、金属薄膜前駆体粒子が金属酸化物粒子または金属水酸化物粒子の場合には、多価アルコールが粒子表面の水酸基と相互作用して粒子表面を保護し、粒子間の凝集を抑制する働きがあるものと思われる。また多価アルコールには、金属酸化物粒子または金属水酸化物粒子を還元する効果もあるので好ましい。
分散体が直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物を含有すると、金属薄膜形成時の成膜性を向上させる効果に加えて、加熱処理して得られる金属薄膜の抵抗値が低減するので好ましい。直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物が成膜性を向上させ、かつ抵抗値を低減させる理由は、直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物が易分解・易焼失性バインダーとして加熱処理中の金属薄膜前駆体粒子の局所的な造粒を防ぐためと考えられる。また、上記多価アルコールと直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物を併用することで、金属薄膜の抵抗値が特に下がる傾向があり、併用して用いることが好ましい。
直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物の好ましい数平均分子量は、150〜600である。分子量がこの範囲にあると、金属薄膜形成時の成膜性が極めて高く、一方、容易に分解・焼失するので得られる金属薄膜の体積抵抗率が下がりやすい。数平均分子量が150より小さいと、焼成して金属薄膜を得るときの成膜性が低下する傾向があり、数平均分子量が600を越えると、得られる金属薄膜の体積抵抗率が高くなる傾向がある。
直鎖状脂肪族ポリエ−テル化合物は、繰り返し単位が炭素数2〜6のアルキレン基であることが好ましい。直鎖状脂肪族ポリエ−テル化合物、2元以上のポリエ−テルコポリマ−やポリエ−テルブロックコポリマ−であってもよい。
具体的には、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリブチレングリコ−ルのようなポリエ−テルホモポリマ−のほかに、エチレングリコ−ル/プロピレングリコ−ル、エチレングリコ−ル/ブチレングリコ−ルの2元コポリマ−、エチレングリコ−ル/プロピレングリコ−ル/エチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル/エチレングリコ−ル/プロピレングリコ−ル、エチレングリコ−ル/ブチレングリコ−ル/エチレングリコ−ル等の直鎖状の3元コポリマ−が挙げられるがこれらに限定されるものではない。ブロックコポリマ−としては、ポリエチレングリコ−ルポリプロピレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ルポリブチレングリコ−ルのような2元ブロックコポリマ−、さらにポリエチレングリコ−ルポリプロピレングリコ−ルポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ルポリエチレングリコ−ルポリプロピレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ルポリブチレングリコ−ルポリエチレングリコ−ル等の直鎖状の3元ブロックコポリマ−のようなポリエ−テルブロックコポリマ−が挙げられる。
直鎖状脂肪族ポリエ−テル化合物の末端の構造は、粒子の分散性や分散媒への溶解性に悪影響を与えない限り制限は無いが、少なくとも一つの末端がアルキル基であると、焼成時におけるポリエーテル化合物の分解・焼失性が向上し、得られる金属薄膜の体積抵抗率が下がるので好ましい。アルキル基の長さが長すぎると、粒子の分散性を阻害して分散体の粘度が増大する傾向があるので、アルキル基の長さとしては、炭素数1〜4が好ましい。少なくとも一つの末端がアルキル基であることによって、焼成時の分解・焼失性が向上する理由は定かではないが、粒子とポリエーテル化合物の間、またはポリエーテル化合物とポリエーテル化合物間の水素結合等に基づく相互作用の力が弱まることが寄与しているものと推察される。
直鎖状脂肪族ポリエ−テル化合物の特に好ましい構造は、一つの末端がアルキル基であり、もう一方の末端が水酸基である構造であり、例えば、ポリエチレングリコールメチルエーテル、ポリプロピレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。
分散体中の金属薄膜前駆体粒子の割合に制限はないが、分散体総量に対して、重量%で、好ましくは5〜90%、より好ましくは20〜80%である。分散体中の粒子の重量がこれらの範囲にある場合には、粒子の分散状態が良好であり、また、1回の塗布・加熱処理によって適度な厚み厚みの金属薄膜が得られるので好ましい。
分散体中の多価アルコールの割合は、分散体総量に対して、重量%で、好ましくは5〜70%、より好ましくは10〜50%である。
分散体中の直鎖状脂肪族ポリエ−テル化合物の割合は、分散体総量に対して、緻密性の観点および基材との密着性の観点から、重量%で、好ましくは0.1〜70%、より好ましくは1〜50%である。
金属薄膜前駆体粒子に対するポリエーテル化合物の好ましい重量比は、用いる粒子の種類とポリエーテル化合物の種類により異なるが、通常は0.01〜10の範囲である。この範囲にあると得られる金属薄膜の緻密性が向上し、その体積抵抗率がさらに低下する。
本発明では、上記分散体に、必要に応じ、消泡剤、レベリング剤、粘度調整剤、安定剤等の添加剤を添加してもよい。また、上記分散体は、金属薄膜前駆体粒子の融着による金属薄膜の形成と絶縁性樹脂層への密着を阻害しない限りにおいて、金属薄膜前駆体粒子から発生する金属種と同種または異種の金属粉を含んでいても差し支えないが、絶縁性樹脂層との間で接着強度の高い界面形態を形成するためには、金属分の粒径は小さいことが好ましく、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは200nm以下である。
上記分散体の製造には、粉体を液体に分散する一般的な方法を用いることができる。例えば、金属薄膜前駆体粒子と分散媒と直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物等の構成原料を混合した後、超音波法、ミキサー法、3本ロール法、ボールミル法で分散を施せばよい。これらの分散手段のうち、複数を組み合わせて分散を行うことも可能である。これらの分散処理は室温で行ってもよく、分散体の粘度を下げるために、加熱して行ってもよい。金属薄膜前駆体粒子以外の構成物が固体である場合には、これらを液状になる温度に加熱しながら粒子を加え、上記操作を行うことが好ましい。分散体が流動可能な固体となる場合には、ずり応力を加えながら分散を行うことが好ましく、3本ロール法、ミキサー法等が好ましい。
本発明の製造方法で得られる金属薄膜層の上に金属メッキを施して第二の金属層を形成し、第一の金属薄膜層に機能・特性を付与することができる。金属メッキを施す場合に、金属薄膜前駆体から得られる金属薄膜層の体積抵抗率は、その上に金属メッキができる限りは制限がないが、好ましくは1×10−4Ωcm以下、より好ましくは1×10−5Ωcm以下である。体積抵抗率が1×10−4Ωcmより大きくなると、電解メッキ工程で電流密度を上げにくく、金属メッキに要する時間が長くなる場合がある。
金属薄膜前駆体から得られる金属薄膜の上に金属メッキを施す手法としては、乾式メッキ法及び湿式メッキ法が挙げられる。成膜速度の観点から好ましいのは湿式メッキ法である。湿式メッキ法としては、無電解メッキ法及び電解メッキ法のいずれも使用することができるが、メッキの成膜速度と、得られる金属膜の緻密性の観点から好ましいのは電解メッキ法である。
メッキの金属種に特に制限はないが、導電性や安定性の観点から好ましいのは、銅、ニッケル、金等である。銅は特に抵抗値が低く、また工業的な入手の容易性からも好ましい。メッキ工程は、必要に応じ被メッキ面を脱脂及び/または酸化層除去した後、メッキ反応液に基材を浸して行う。電解メッキであれば基材の被メッキ面に通電することによってメッキ層を形成することが可能となる。
本発明の製造方法を用いて製造される積層体は、絶縁基板と、絶縁基板上に形成されたイミド結合および/またはアミド結合を有する絶縁性樹脂層と、絶縁性樹脂層上に形成された金属微子が互いに融着した構造を有する金属薄膜層とからなる積層体であり、金属薄膜層は融着した金属微子が絶縁樹脂に絶縁性樹脂層に密着し、かつ、絶縁性樹脂層と金属薄膜層の接触界面に金属酸化物が存在することに特徴がある。
金属粒子がお互いに融着した構造とは、金属粒子が界面を融合させて、一体化した構造を指す。
金属粒子が互いに融着した構造を有する金属薄膜層は、通常、一次粒子径200nm以下の金属微粒子が互いに融着した構造を有する。
一次粒子径200nm以下の金属微粒子が互いに融着した構造を有する金属薄膜層は、電子顕微鏡で観察すると金属間の界面が観察される箇所と、連続層として観察される箇所が混在する。本発明の積層体における金属薄膜層の厚みに制限はないが、通常0.05〜50μmである。本発明における金属薄膜層の金属種は、金属薄膜前駆体から形成されうる限りにおいて特に制限はなく、銅、銀、ニッケル、パラジウム、などが好ましく用いられる。
上記金属薄膜層は融着した金属粒子が絶縁性樹脂に埋め込まれて絶縁性樹脂層に密着している。具体的には、積層体の断面をTEM観察すると、絶縁性樹脂層との界面において、融着した粒子がアンカーとなって絶縁性樹脂層に埋め込まれている構造が観察される。界面において金属粒子が絶縁性樹脂層に埋め込まれる最大深さは、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。また金属薄膜層と絶縁性樹脂層の界面において金属粒子が絶縁性樹脂層に埋め込まれることによる界面の荒れ性は、好ましくはRa=5〜100nm、さらに好ましくはRa=5〜50nmの範囲である。このような範囲に界面の状態を制御することによって、特に高い接着強度を発現することが可能になる。
1次粒径が8nm程度の金属酸化物超微粒子を金属薄膜前駆体粒子として用いて金属薄膜層を形成させた場合には、金属薄膜の絶縁性樹脂層との界面には、通常、融着して10nm〜50nm程度に成長した金属微粒子が1〜40nmの深さでポリイミド膜に埋め込まれている構造が確認でき、この界面のRaは10nm程度になる。
本発明の製造方法で得らえる積層体は、金属薄膜層と絶縁性樹脂層の接触界面に金属酸化物が存在することに第2の特徴がある。
界面に存在する金属酸化物は金属薄膜層と絶縁性樹脂層の間の接着強度を増大させる効果があり、従って界面全域に渡って均一に分布していることが好ましい。金属酸化物による接着強度の増大効果の理由は必ずしも明確でないが、絶縁性樹脂層のイミド基もしくはアミド基との間で好ましい化学的結合を形成するためと考えられる。
本発明では、絶縁性樹脂層をプラズマ処理等でイミド基もしくはアミド基の変性処理を行わなくても、金属酸化物の存在により高い接着強度が発現する。プラズマ処理では通常はイミド基もしくはアミド基がプラズマの高いエネルギーによって他の窒素含有極性基に変換されて、これが接着性改善に寄与すると言われているが、そのような極性基は吸湿性や金属イオンマイグレーションに悪影響を与える懸念がある。本発明ではそのような処理を行わなくても接着強度が高いという特徴がある。
本発明における金属酸化物の厚みに特に制限はないが、接着強度及び導電性の観点から、通常1nm〜200nmの範囲である。また、金属薄膜層の導電性を顕著に悪化させない限りにおいて、金属酸化物が絶縁性樹脂層の界面のみでなく、金属薄膜層の内層に分布していても差し障りはない。
金属酸化物の種類は、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化銀、酸化ルテニウム、酸化オスミウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化クロム、などが例示できる。特に酸化第一銅は接着向上効果が特に優れるので、特に好ましく用いられる。本発明における金属薄膜層と金属酸化物の組み合わせにおいて、特に好ましいものは、金属薄膜層が銅を含み、金属酸化物が酸化第一銅である場合である。
以下に、本発明の実施例および比較例を示す。本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
金属酸化物微粒子の粒子径、金属薄膜の体積抵抗率、接着性・接着強度、金属薄膜層と絶縁性樹脂層の界面粗さと金属粒子が絶縁性樹脂層に埋め込まれる最大深さ、およびイミド化転化率の測定法は以下のとおりである。
(1)金属酸化物微粒子の粒子径
カーボン蒸着された銅メッシュ上に、分散・希釈した粒子分散体を1滴たらし、減圧乾燥したサンプルを作成する。(株)日立製作所製透過型電子顕微鏡(JEM−4000FX)を用いて観察し、視野の中から、粒子径が比較的そろっている個所を3ヶ所選択し、被測定物の粒子径測定に最も適した倍率で撮影する。おのおのの写真から、一番多数存在すると思われる粒子を3点選択し、その直径をものさしで測り、倍率をかけて一次粒子径を算出する。これらの値の平均値を粒子径とする。
(2)金属薄膜の体積抵抗率
低抵抗率計「ロレスタ−(登録商標)」GP(三菱化学株式会社製)を用いて測定する。
(3)テープ剥離試験および接着強度測定(180度剥離試験)
テープ剥離試験は、得られた金属薄膜上にスコッチテープ(登録商標、住友スリーエム株式会社製)を貼り、これを剥がす際に、金属薄膜がスコッチテープに付着して基板から剥がれたか否かで判定する。
接着強度測定のための試料は、次のようにして作成する。得られた金属薄膜上に電気メッキにより金属膜を厚付けし、金属部分の総厚みを約15μmにした後、カッターナイフで幅3mm、長さ50mmの切れ込みを入れる。180度剥離試験は、幅3mmの側面の一方を少し剥離してアルミテープを貼り、このテープ部分を剥離試験機に固定し、180度方向に引き上げて、剥離するに必要な力を測定して、接着強度(kN/m)とする。
(4)金属薄膜、および金属薄膜と絶縁性樹脂層との界面形態の観察
金属薄膜の形態は積層体の断面TEM像を(株)日立製作所製透過型電子顕微鏡(JEM−4000FX)を用いて観察する。金属薄膜層と絶縁性樹脂層の界面粗さと金属粒子が絶縁性樹脂層に埋め込まれる最大深さは以下のようにして観察する。界面部分の断面TEM像をスキャナーでデジタル化し、融着して得られる金属薄膜界面の8ビットのグレースケール画像を取得する。2値化処理を施した後エッジ抽出を行い、金属薄膜の界面プロファイル像(ラインイメージ)を得る。また、画像プロファイル像の両端を結ぶ直線からの、ラインイメージの絶縁性樹脂層側への変位量を用いて、金属薄膜層と絶縁性樹脂層の界面粗さ(Ra)を見積もる。画像プロファイル像の両端を結ぶ直線から最も深い谷底までの深さを最大深さとして見積もる。
(5)イミド化転化率
ポリアミック酸を塗布し、ポリイミド膜を形成する場合について説明する。ポリアミック酸加熱処理後において、表面の赤外吸収スペクトルを測定し、1780cm−1付近のイミド基ピーク強度(A1)とイミド化反応によって変化しない1500cm−1付近のピーク強度(B1)を計算し、これらからイミド基の相対強度C1=A1/B1を導出する。次に、比較試料として、350℃で4時間加熱処理を行い、100%イミド化転化を行った試料を準備し、1780cm−1及び1500cm−1のピーク強度(A0,B0)を測定し、相対強度C0=A0/B0を導出する。このときの相対強度C0を100とし、C1と比較することで、加熱処理によるイミド化転化率は、(100×C1/C0)%と計算して求める。
[実施例1] 絶縁性樹脂層として熱可塑性ポリイミドを使用する例
(金属薄膜前駆体微粒子および分散体の調製)
無水酢酸銅(和光純薬工業株式会社製)8gに精製水70mlを加えた。25℃で攪拌しながらヒドラジン対酢酸銅のモル比が1.2になるように64重量%のヒドラジン抱水物2.6mlを加えて反応させ、平均1次粒子径20nmの酸化第一銅微粒子を得た。得られた酸化第一銅3gに対し、ポリエチレングリコールメチルエーテル(数平均分子量350、アルドリッチ製)2gと、ジエチレングリコール7gを加え、超音波分散を施して酸化第一銅分散体を得た。
(熱可塑性ポリイミド溶液の合成)
3,3’−4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの重縮合反応によって得られる溶剤可溶性ポリイミドの樹脂濃度20wt%のNMP(N−メチル−2−ピロリドン)溶液(新日本理化株式会社製リカコートPN−20)をNMPを加えて10wt%溶液に希釈し、ポリイミド樹脂溶液を調製した。この熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度は270℃であった。
(熱可塑性ポリイミド層を有する基板の作成)
10cm角のガラス基板上に同サイズで切り出したポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製カプトンフィルム、膜厚50μm)を両面テープで貼り合わせた後、ミカサ株式会社製スピンコーター(1H−D7型)にセットした。このポリイミドフィルム上に上記ポリイミド樹脂溶液を500rpm×5秒のプレスピンの後、2000rpm×10秒の条件でスピンコートを行った。スピンコート塗布した基板を、ホットプレート上で90℃×10分、120℃×10分、150℃×10分、180℃×10分、250℃×60分、300℃×60分の条件で加熱し、熱可塑性ポリイミド樹脂を表面に有するポリイミド基板を得た。
(金属薄膜の形成)
上記ポリイミド基板を再びスピンコーターにセットし、前述の酸化第一銅分散体を2mL滴下した後、500rpm×15秒の条件でスピンコートして塗布を行った。次に、この塗布膜を、オーブンに入れて130℃×10分乾燥させた後、酸素濃度100ppmの条件で、ホットプレートで350℃×15分の条件で窒素フローさせながら、上記ポリイミド膜のガラス転移温度(270℃)よりも高い温度で焼成した。すると、粒子径20nm以下の銅微粒子が互いに融着し、大きな銅グレインとなった構造の薄膜が得られた。銅薄膜のポリイミド膜との界面は、10nm〜50nm程度の大きさに融着した銅微粒子が最大約20nmの深さでポリイミド膜に埋め込まれている構造を有することが確認できた。界面のRaは7nmであった。銅薄膜の体積抵抗率は、3.0×10−6Ωcmであり、テープ剥離試験でまったく剥がれは観察されなかった。
(メッキ層の付与と、接着強度の測定、剥離界面の解析)
硫酸銅五水和物(和光純薬工業株式会社)80gと硫酸180gとを、精製水1リットルに溶解し、さらにメッキ添加剤を加えて電解メッキ浴を作成した。上記で得られた銅膜表面を酸洗・脱脂したのち、メッキ浴を浸し、室温にて、3A/dmの電流密度で、電解銅メッキを施し、金属層の総厚み(銅薄膜層+メッキで形成された銅膜)が15μmである、積層基板を完成させた。180度剥離試験による接着強度は、1.5kN/mと非常に高かった。銅層とポリイミド層の剥離界面について、銅の界面をXPS分析した所、酸化第一銅の存在が確認できた。
(積層基板の特性)
上記で得られた積層基板に対し、フォトリソグラフィによりライン/スペース=30μm/30μmの櫛型電極を作成したところ、配線の直線性はきわめて高く、微細配線形成性が高いことが確認された。また、ピンホールに起因すると考えられる配線の断線は観察されなかった。作成した櫛型電極を温度85℃×湿度85%、印加電圧100Vの条件でマイグレーション試験を行ったが、1000時間経過後においても配線間の絶縁性は1010Ω台を維持し、吸湿に伴う絶縁性の低下は観察されなかった。
[実施例2]絶縁性樹脂層としてポリイミド前駆体から非熱可塑性ポリイミドを形成する例
(ポリイミド樹脂前駆体を含むポリイミド樹脂層を有する基板の作成)
4,4’−ジアミノビフェニル18.6g(0.10モル)をN−メチルピロリドン(NMP)250gに溶解した。この溶液に3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物32.1g(0.10モル)の粉末を添加し、5℃で8時間攪拌することによって、ポリアミック酸のNMP溶液を得た。さらに本ポリアミック溶液10gに、NMPを7g加えて10重量パーセント濃度に希釈した。
10cm角のガラス基板上に同サイズで切り出したポリイミドフィルム(東レ・デュポ
ン社製カプトンフィルム、膜厚50μm)を両面テープで貼り合わせた後、ミカサ株式会
社製スピンコーター(1H−D7型)にセットした。希釈した上記ポリアミック酸を滴下
し、500rpm×5秒のプレスピンの後、2000rpm×10秒の条件でスピンコー
トを行なった。スピンコート塗布した基板を、ホットプレート上で120℃×30分、2
00℃×30分の条件で加熱し、ポリイミド膜を形成したポリイミド基板を得た。このポ
リイミド膜のイミド化転化率R1は90%であった。
(金属薄膜の形成)
上記ポリイミド基板を再びスピンコーターにセットし、実施例1と同一の酸化第一銅分散体を2ml滴下した後、500rpm×15秒の条件でスピンコートして塗布を行った。この塗布膜をオーブン中で130℃×10分間乾燥した後、ホットプレートで350℃×30分の条件で、酸素濃度150ppmの条件で焼成した。すると、粒子径20nm以下の銅微粒子が互いに融着し、大きな銅グレインとなった構造の薄膜が得られた。
また、ポリイミド膜中のイミド化転化率R2を分析すると100%であった。銅薄膜の体積抵抗率は、3.4×10−6Ωcmであり、テープ剥離試験でまったく剥がれは観察されなかった。
(メッキ層の付与と、接着強度の測定、剥離界面の解析)
実施例1と同様の操作で銅メッキを行って、銅膜厚15μmの積層基板を得た。銅薄膜は銅微粒子が互いに融着した構造を有し、ポリイミド膜との界面は、10nm〜40nmに融着した銅微粒子が最大約20nmの深さでポリイミド膜に埋め込まれている構造を有することが確認できた。界面のRaは8nmであった。180度剥離試験による接着強度は、1.4kN/mと非常に高かった。銅層とポリイミド層の剥離界面について、銅の界面をXPS分析した所、酸化第一銅の存在が確認できた。
[実施例3]絶縁性樹脂層として熱可塑性ポリイミドを使用する例
2,2’−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニルプロパン1.0モルと3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物1.0モルの比率となるように秤量し、NMPを固形分濃度が10wt%になるように加え、50℃で10時間攪拌溶解し、熱可塑性ポリイミド前駆体であるポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液をポリイミドフィルム上に500rpm×5秒のプレスピンの後、2000rpm×10秒の条件でスピンコートを行った。スピンコート塗布した基板を、ホットプレート上で120℃×30分、200℃×10分、250℃×60分、300℃×60分の条件で加熱し、熱可塑性ポリイミド樹脂を表面に有するポリイミド基板を得た。この熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度は260℃であった。
実施例1と同様の酸化第一銅分散体を実施例1と同様の手法でスピンコート塗布と乾燥を行って、酸素濃度150ppmの条件で、ホットプレート上で350℃×20分間焼成した。実施例2と同様に、微粒子が融着した構造の銅薄膜層を有する積層基板が得られた。得られた銅薄膜は銅微粒子が互いに融着した構造を有し、ポリイミド膜との界面は、10nm〜40nm程度の大きさに融着した銅微粒子が最大約20nmの深さでポリイミド膜に埋め込まれている構造を有することが確認できた。界面のRaは13nmであった。得られた銅薄膜の体積抵抗率は、3.2×10−6Ωcmであり、テープ剥離試験でまったく剥がれは観察されなかった。実施例1と同様に銅メッキを行って得た積層基板に対し、180度剥離試験を行うと、その接着強度は、1.5kN/mであった。銅層とポリイミド層の剥離界面について、銅の界面をXPS分析した所、酸化第一銅の存在が確認できた。
[実施例4]焼成条件依存性
酸化第一銅分散体の加熱処理条件を、酸素濃度50ppm、350℃×60分の条件で行う以外は実施例3と同一の条件で、メッキ層を有する積層基板を形成した。メッキ層形成前の銅薄膜層の体積抵抗率は2.8×10−6Ωcmであった。接着強度は1.5kN/mであった。得られた銅薄膜は銅微粒子が互いに融着した構造を有し、ポリイミド膜との界面は、10nm〜40nm程度の大きさに融着した銅微粒子が最大約17nmの深さでポリイミド膜に埋め込まれている構造を有することが確認できた。界面のRaは15nmであった。また、銅層とポリイミド層の剥離界面について、銅の界面をXPS分析した所、酸化第一銅の存在が確認できた。
[実施例5]焼成条件依存性
酸化第一銅分散体の加熱処理条件を、酸素濃度500ppm、350℃×10分の条件で行う以外は実施例3と同一の条件で、メッキ層を有する積層基板を形成した。メッキ層形成前の銅薄膜層の体積抵抗率は3.9×10−6Ωcmであった。接着強度は1.7kN/mであった。得られた銅薄膜は銅微粒子が互いに融着した構造を有し、ポリイミド膜との界面は、10nm〜50nm程度の大きさに融着した銅微粒子が最大約20nmの深さでポリイミド膜に埋め込まれている構造を有することが確認できた。界面のRaは12nmであった。また、銅層とポリイミド層の剥離界面について、銅の界面をXPS分析した所、酸化第一銅の存在が確認できた。
[実施例6]絶縁性樹脂層としてポリイミド前駆体から熱可塑性ポリイミドを形成する例
実施例3で得たポリアミド酸溶液をポリイミドフィルム上に500rpm×5秒のプレスピンの後、2000rpm×10秒の条件でスピンコートを行った。スピンコート塗布した基板を、ホットプレート上で120℃×30分、200℃×30分の条件で加熱し、イミド化転化率が91%である熱可塑性ポリイミド系樹脂を表面に有するポリイミド基板を得た。
実施例1と同様の酸化第一銅分散体をスピンコート塗布したのち、140℃×10分乾燥した後、酸素濃度200ppmの条件で、ホットプレートで350℃×30分焼成したところ、微粒子間が融着した構造の銅薄膜が得られた。銅薄膜は銅微粒子が互いに融着した構造を有し、ポリイミド膜との界面は、10nm〜50nm程度の大きさに融着した銅微粒子が最大約20nmの深さでポリイミド膜に埋め込まれている構造を有することが確認できた。界面のRaは8nmであった。また、焼成後の熱可塑性ポリイミド樹脂層のイミド化転化率は100%であった。得られた銅薄膜の体積抵抗率は、3.7×10−6Ωcmであり、テープ剥試験でまったく剥がれは観察されなかった。実施例1と同様に銅メッキを行って得た積層基板に対し、180度剥離試験による接着強度は、1.6kN/mであった。
銅層とポリイミド層の剥離界面について、銅の界面をXPS分析した所、酸化第一銅の存在が確認できた。
[実施例7]絶縁性樹脂層として熱可塑性ポリアミドイミド樹脂を形成する例
東洋紡績株式会社製のポリアミドイミド樹脂溶液をNMPで希釈して樹脂含有量が10wt%になるように調整した後、ポリイミドフィルム上に500rpm×5秒のプレスピンの後、2000rpm×10秒の条件でスピンコートを行った。スピンコート塗布した基板を、ホットプレート上で120℃×30分、300℃×30分の条件で加熱し、溶剤を揮発させて熱可塑性ポリアミドイミド樹脂を表面に有するポリイミド基板を得た。
実施例1と同様の酸化第一銅分散体をスピンコート塗布し、130℃×10分乾燥した後、酸素濃度200ppmの条件で、ホットプレートで350℃×30分焼成したところ、微粒子間が融着した構造の銅薄膜が得られた。銅薄膜は銅微粒子が互いに融着した構造を有し、ポリイミド膜との界面は、10nm〜50nm程度の大きさに融着した銅微粒子が最大約20nmの深さでポリイミド膜に埋め込まれている構造を有することが確認できた。界面のRaは7nmであった。得られた銅薄膜の体積抵抗率は、3.2×10−6Ωcmであり、テープ剥試験でまったく剥がれは観察されなかった。実施例1と同様に銅メッキを行って得た積層基板に対し、180度剥離試験による接着強度は、1.2kN/mであった。
銅層とポリイミド層の剥離界面について、銅の界面をXPS分析した所、酸化第一銅の存在が確認できた。
[実施例8]絶縁性樹脂層として熱可塑性ポリイミドを使用し、分散体をパターン塗布する例
(金属配線の形成)
実施例3で得たポリアミド酸溶液をポリイミドフィルム上に500rpm×5秒のプレスピンの後、2000rpm×10秒の条件でスピンコートを行った。スピンコート塗布した基板を、ホットプレート上で120℃×30分、200℃×30分の条件で加熱し、イミド化転化率が91%である熱可塑性ポリイミド樹脂を表面に有するポリイミド基板を得た。本ポリイミド基板をディスペンサー(武蔵エンジニアリング株式会社製)のテーブルに真空吸着した。ディスペンサーチューブに充填した上記分散体の先端にシリンジ(FN−0.50N(内径50μm)、武蔵エンジニアリング株式会社製)を固定して、ディスペンサーのエア供給チューブに接続した後、ディスペンサーロボットの所定位置に固定した。チューブに空気圧をかけ、分散体を押し出しながら、あらかじめプログラムした配線パターンにディスペンサーロボットを動かして、分散体を回路形状に塗布した。この時の、基板とシリンジ先端のギャップは90μmに調整した。
次に、この塗布基板を、オーブンで120℃×5分乾燥した後、酸素濃度100ppmの条件で、ホットプレートで350℃×15分の条件で加熱処理したところ、ポリイミド樹脂層のイミド化転化率100%となり、配線幅130μmの銅配線が得られた。配線部分の断面を観察したところ、粒子径20nm以下の銅微粒子が互いに融着し、大きな銅グレインとなった構造の銅配線が得られた。銅配線は銅微粒子が互いに融着した構造を有し、ポリイミド膜との界面は、10nm〜50nm程度の大きさに融着した銅微粒子が最大約20nmの深さでポリイミド膜に埋め込まれている構造を有することが確認できた。界面のRaは10nmであった。4端子法で測定した銅配線の抵抗値は3.2×10−6Ωcmであった。銅膜と熱可塑性ポリイミド樹脂層との間には、酸化第一銅が確認された。別に、ベタ膜を形成して求めた接着強度は1.3kN/mと高かった。
[比較例1]
ポリイミド膜を形成しないポリイミド基板に対して、実施例1と同様の手法で銅薄膜を形成したが、形成した銅薄膜はテープ剥離試験ですべて剥がれた。
[比較例2]
水素5%の窒素雰囲気中で350℃×30分の加熱処理を行う以外は、実施例3と同様の操作で銅薄膜を形成し、さらにメッキ膜をつけて接着強度を測定したが、接着強度は0.2kN/mであった。剥離した銅薄膜面を元素分析したが、銅酸化物は観察されなかった。
[比較例3]
市販の酸化第一銅(和光純薬工業株式会社製)を粉砕して得た平均一次粒子径1.2μmの酸化第一銅を用いる以外は、実施例1と同様の手法で絶縁性樹脂層として熱可塑性ポリイミドを有する基板上に酸化第一銅分散体を塗布し、加熱処理を行ったが、銅表面には多数の亀裂が発生し、銅薄膜としては不完全なものしか得られなかった。
本発明の製造方法で得られる積層体は、従来の金属薄膜と同等程度の高い導電性を有し、かつ金属薄膜と基板との密着性がきわめて高い。また、金属膜の膜厚を任意にコントロールすることができ、薄膜の金属膜も容易に形成できるので、フレキシブル配線板材料等として特に好適に使用することが可能である。
また、絶縁性樹脂層および/または絶縁性樹脂前駆体層を形成した絶縁基板上に、金属薄膜前駆体の分散体または溶液を用いて、インクジェット法等で配線パターン形状を直接描画し、これを加熱処理することによって、接着性の高い金属配線を形成することが可能である。従って、プリント配線板の回路形成だけでなく、プラズマディスプレイパネルや液晶パネル等のフラットパネルディスプレイ製造におけるガラス基板上に形成されたバス電極、アドレス電極の製造にも使用することができる。

Claims (16)

  1. 絶縁基板上に、加熱処理によって弾性率が変化するイミド結合および/またはアミド結合を有する絶縁性樹脂層および/または絶縁性樹脂前駆体層を形成する工程(1)と、前記絶縁性樹脂層および/または絶縁性樹脂前駆体層の上に、金属薄膜前駆体を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥した塗布膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、絶縁性樹脂層との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)、とを含む積層体の製造方法。
  2. 絶縁基板上に、ポリイミド樹脂前駆体の溶液を塗布した後、脱溶剤および脱水縮合反応のための熱処理を行って前記前駆体の一部をポリイミド樹脂に転化させる工程(1)と、前記の層の上に、金属薄膜前駆体を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥した塗布膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、残りの前記前駆体をポリイミド樹脂に転化させると共に、前記ポリイミド樹脂との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)、とを含むことを特徴とする積層体の製造方法。
  3. 工程(1)のイミド結合への転化率が、70%以上100%未満である請求項2に記載の積層体の製造方法。
  4. 絶縁基板上に熱可塑性ポリイミド樹脂の溶液を塗布した後、脱溶剤処理を行って熱可塑性ポリイミド系樹脂からなる層を絶縁基板上に形成させる工程(1)と、次いで、前記熱可塑性ポリイミド樹脂層の上に、金属薄膜前駆体を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥した塗布膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、前記熱可塑性ポリイミド樹脂を可塑化させると共に、前記熱可塑性ポリイミド樹脂との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)、とを含むことを特徴とする積層体の製造方法。
  5. 絶縁基板上に熱可塑性ポリアミドイミド樹脂の溶液を塗布した後、脱溶剤処理を行って熱可塑性ポリアミドイミド樹脂からなる層を絶縁基板上に形成させる工程(1)と、次いで、前記熱可塑性ポリアミドイミド樹脂層の上に、金属薄膜前駆体を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥した塗布膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、前記熱可塑性ポリアミドイミド樹脂を可塑化させると共に、前記熱可塑性ポリアミドイミド樹脂との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)、とを含むことを特徴とする積層体の製造方法。
  6. 絶縁基板上に熱可塑性ポリイミド樹脂前駆体の溶液を塗布した後、脱溶剤および脱水縮合反応のための熱処理を行って前駆体をポリイミドに全転化して熱可塑性ポリイミド樹脂からなる層を絶縁基板上に形成させる工程(1)と、次いで、前記熱可塑性ポリイミド樹脂層の上に、金属薄膜前駆体を含有する分散体または溶液を塗布する工程(2)と、前記塗布膜を乾燥する工程(3)と、前記乾燥した塗布膜を酸化剤を含む雰囲気中で加熱処理することによって、前記熱可塑性ポリイミド樹脂を可塑化させると共に、前記熱可塑性ポリイミド樹脂との界面に金属酸化物を有する金属薄膜を形成する工程(4)、とを含むことを特徴とする積層体の製造方法。
  7. 工程(4)の加熱処理を、熱可塑性ポリイミド樹脂または熱可塑性ポリアミドイミド樹脂のガラス転移温度以上で行う請求項4〜請求項6のいずれかに記載の積層体の製造方法。
  8. 金属薄膜前駆体が、金属粒子、金属酸化物粒子および金属水酸化物粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜請求項7のいずれかに記載の積層体の製造方法。
  9. 金属薄膜前駆体粒子の1次粒子径が200nm以下である請求項8に記載の積層体の製造方法。
  10. 金属薄膜前駆体が酸化第一銅粒子である請求項8または請求項9に記載の積層体の製造方法。
  11. 加熱処理を、酸化剤を含有する非酸化性ガス雰囲気で行うことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の積層体の製造方法。
  12. 酸化剤が酸素であり、非酸化性ガス雰囲気中の酸化剤の濃度が30〜500ppmであることを特徴とする請求項11に記載の積層体の製造方法。
  13. 分散体が、多価アルコールを含む請求項8〜請求項12のいずれかに記載の積層体の製造方法。
  14. 分散体が、直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物を含む請求項8〜請求項13のいずれかに記載の積層体の製造方法。
  15. 請求項1〜請求項14のいずれかに記載の製造方法を用いて作成される積層体。
  16. 請求項15の積層体を用いて作成されるプリント配線板。
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