JP2006305914A - 積層基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(1)加熱処理によって互いに融着する、一次粒径が200nm以下の金属薄膜前駆体微粒子を含有する分散体を絶縁基板上に塗布し、加熱処理することによって金属薄膜を形成する工程と、(2)前記金属薄膜上に金属メッキを行って金属膜を形成する工程を含む積層基板の製造方法。
【選択図】 選択図なし
Description
ここで、樹脂層と金属層を積層する方法として、例えば、樹脂層と金属層をエポキシ系接着剤などで貼り合わせるラミネート法が知られている。しかし、エポキシ系接着剤は耐熱性が弱く、また、絶縁信頼性も劣るという問題があった。
一方、金属箔の上面に、樹脂前駆体のドープを塗布・加熱することにより金属箔上に樹脂フィルムを形成する、いわゆるキャスト法により、樹脂層及び金属層間の接着性に優れた積層基板を提供可能であることが知られている。しかし、この方法においては、金属層の厚みが、用いる金属箔の厚みに制限されてしまうため、金属層を薄くしにくいという問題があった。近年、配線の狭ピッチ化に伴って、厚みの薄い金属層が切望されているが、このキャスト法によって形成された積層基板はこの目的に適うものではなかった。
しかし、スパッタ法は真空プロセスを用いるために製造コストの増大を招くことに加え、ニッケル、クロム又はそれらの合金等からなる金属層は樹脂層内までもぐりこむため、通常の銅層のエッチングによってはこの成分を完全に取り除くことが難しく、エッチング工程の後で配線間に残った金属成分によって、絶縁信頼性が悪影響を受けるという問題があった。
したがって、薄膜の金属層を低コストで形成でき、さらに、エッチング残りの少ない積層基板は満足するものが現状ではないのが実情である。
三宅徹、「回路基板用フィルム加工技術」、第29回プラスチックフィルム研究会講座講演要旨集、社団法人高分子学会、2001年、p.5−8
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1](1)加熱処理によって互いに融着する、一次粒径が200nm以下の金属薄膜前駆体微粒子を含有する分散体を絶縁基板上に塗布し、加熱処理することによって金属薄膜を形成する工程と、(2)前記金属薄膜上に金属メッキを行って金属膜を形成する工程を含む積層基板の製造方法。
[2]接着層を有する絶縁基板を用いることを特徴とする上記[1]に記載の積層基板の製造方法。
[3]接着層が、熱可塑性ポリイミド系樹脂からなることを特徴とする上記[2]に記載の積層基板の製造方法。
[4]接着層が、部分的に非熱可塑性ポリイミド系樹脂に転化した非熱可塑性ポリイミド系樹脂前駆体からなることを特徴とする上記[2]に記載の積層基板の製造方法。
[5]非熱可塑性ポリイミド系樹脂前駆体から非熱可塑性ポリイミド系樹脂への転化率を70%以上100%未満にすることを特徴とする上記[4]に記載の積層基板の製造方法。
[7]接着層を有する絶縁基板上に金属薄膜前駆体微粒子を含む分散体を塗布し、加熱処理を行うことによって金属薄膜を形成すると同時に、部分的に非熱可塑性ポリイミド系樹脂に転化した非熱可塑性ポリイミド系樹脂前駆体の転化率を100%にすることを特徴とする上記[4]に記載の積層基板の製造方法。
[8]金属薄膜前駆体微粒子が金属微粒子、金属酸化物微粒子及び金属水酸化物微粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[2]に記載の積層体の製造方法。
[9]金属薄膜前駆体微粒子が酸化第一銅微粒子であることを特徴とする上記[8]に記載の積層体の製造方法。
[10]分散体が多価アルコール及び/又は直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物を含むことを特徴とする上記[2]に記載の積層体の製造方法。
本発明は、絶縁基板上に、加熱によって互いに融着する一次粒径が200nm以下の金属薄膜前駆体微粒子を含有する分散体を塗布し、これを加熱処理することによってメッキ下地となる金属薄膜を形成する工程と、その上に、金属メッキを行って金属層を形成する工程を含むものである。
金属メッキ下地となる金属薄膜は、スパッタ法のように真空プロセスを必要とせず、金属薄膜前駆体微粒子を含有する分散体を塗布・加熱処理するという生産性の高いプロセスにより形成が可能であり、その上に金属メッキを行うので、膜厚が制御された薄膜の金属層を容易に形成できる。また、得られる金属薄膜は、基板との接触面がフラットであり、基板内にもぐりこむ金属は極めて少ないために、エッチング加工によって基板面に残る金属成分が少なく、回路形成時の絶縁信頼性が高いという特徴を有する。
絶縁基板として好適に使用されるポリイミドフイルムは、ピロメリット酸又はピロメリット酸誘導体と芳香族ジアミンとを縮合してなる、例えば、カプトン(登録商標、東レ・デュポン株式会社製)、アピカル(登録商標、鐘淵化学株式会社製)、ビフェニルテトラカルボン酸又はビフェニルテトラカルボン酸誘導体と芳香族ジアミンとを縮合してなる、例えば、ユーピレックス(登録商標、宇部興産株式会社製)等である。ポリイミドフイルムの膜厚は限定されないが、通常、25〜100μmのものが用途に応じて適宜選択されて用いられる。
本発明で用いられる金属薄膜前駆体微粒子とは、加熱により金属薄膜に変換される化合物を指し、一次粒径は200nm以下であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは30nm以下である。粒子径の下限は限定されないが、通常、1nm以上のものが用いられる。金属薄膜前駆体微粒子の一次粒子径が200nmを越えると、得られる金属薄膜の緻密性が低下して体積抵抗値が増大する。金属薄膜前駆体微粒子が含有する分散体を塗布・加熱焼成することによって、粒子径200nm以下の金属微粒子が、互いに融着した構造を有する金属薄膜が得られる。
金属水酸化物微粒子としては、水酸化銅、水酸化ニッケル、水酸化コバルト等の化合物からなる微粒子を例示できるが、特に銅薄膜を与える金属水酸化物微粒子としては、水酸化銅微粒子を例示することができる。
金属微粒子としては、湿式法やガス中蒸発法等の手法により形成される銅微粒子が好ましい。
これらの金属酸化物微粒子は、市販品を用いてもよいし、公知の合成方法を用いて合成することも可能である。例えば、粒子径が100nm未満の酸化第一銅超微粒子の合成方法としては、アセチルアセトナト銅錯体をポリオール溶媒中で200℃程度で加熱して合成する方法が公知である(アンゲバンテ ケミ インターナショナル エディション、40号、2巻、p.359、2001年)。
分散体が多価アルコール及び/又は直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物を含有すると、加熱処理して、金属薄膜前駆体微粒子から、金属薄膜を得るときの成膜性を向上させるので、さらに好ましい。
多価アルコールは、分子中に複数の水酸基を有する化合物である。多価アルコールは、その沸点が適度に高いため揮発しにくく、これを用いると、分散体の印刷性及び金属薄膜形成時の成膜性に優れるので好ましい。多価アルコールの中で好ましいのは、炭素数が10以下の多価アルコールであり、その中でも粘度の低い、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール等が特に好ましい。これらの多価アルコールは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
分散体が直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物を含有する場合、金属薄膜形成時の成膜性を向上させる効果に加えて、加熱処理して得られる金属薄膜の抵抗値が低減するので好ましい。直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物が成膜性を向上させ、かつ抵抗値を低減させる理由は、直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物が易分解・易焼失性バインダーとして加熱処理中の金属薄膜前駆体微粒子の局所的な造粒を防ぐためと考えられる。
直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物は、繰り返し単位が炭素数2〜6のアルキレン基であることが好ましい。直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物、2元以上のポリエーテルコポリマーやポリエーテルブロックコポリマーであってもよい。
分散体中の金属薄膜前駆体微粒子の割合に制限はないが、分散体総量に対して、質量%で、好ましくは5〜90%、より好ましくは20〜80%である。分散体中の微粒子の質量がこれらの範囲にある場合には、微粒子の分散状態が良好であり、また、1回の塗布・加熱処理によって適度な厚さの金属薄膜が得られるので好ましい。
分散体中の多価アルコールの割合は、分散体総量に対して、質量%で、好ましくは5〜70%、より好ましくは10〜50%である。
金属薄膜前駆体微粒子に対する直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物の好ましい質量比は、用いる微粒子の種類と直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物の種類により異なるが、通常は0.01〜10の範囲である。この範囲にあると得られる金属薄膜の緻密性が向上し、その体積抵抗値がさらに低下する。
上記分散体の製造には、粉体を液体に分散する一般的な方法を用いることができる。例えば、金属薄膜前駆体微粒子と分散媒と直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物等の構成原料を混合した後、超音波法、ミキサー法、3本ロール法、ボールミル法で分散を施せばよい。これらの分散手段のうち、複数を組み合わせて分散を行うことも可能である。これらの分散処理は室温で行ってもよく、分散体の粘度を下げるために、加熱して行ってもよい。金属薄膜前駆体微粒子以外の構成物が固体である場合には、これらを液状になる温度に加熱しながら微粒子を加え、上記操作を行うことが好ましい。分散体が流動可能な固体となる場合には、ずり応力を加えながら分散を行うことが好ましく、3本ロール法、ミキサー法等が好ましい。
分散体を塗布した後、加熱処理を行うことによって金属薄膜を形成する。
本発明において、「金属層」とは、一次粒子径が200nm未満の金属粒子同士が互いに接合して形成された連続層のことであり、電子顕微鏡を用いて3万倍の倍率で観察した時に、(1)粒子間の境界が消滅して連続層を形成している層、(2)金属粒子間の境界が粒子の周縁の一部又は全周にわたって観察される層、又は(3)両者が混在して存在する層をいう。
金属薄膜前駆体微粒子分散体から得られる金属薄膜の体積抵抗値は、その上に金属メッキができる限りは制限がない。好ましくは1×10−4Ωcm以下、より好ましくは1×10−5Ωcm以下である。体積抵抗値が1×10−4Ωcmより大きくなると、電解メッキ工程で電流密度を上げにくく、金属メッキに要する時間が長くなる場合がある。
メッキの金属種に特に制限はないが、導電性や安定性の観点から好ましいのは、銅、ニッケル、金等である。銅は特に抵抗値が低く、また工業的な入手の容易性からも好ましい。メッキ工程は、必要に応じ被メッキ面を脱脂及び/または酸化層除去した後、メッキ反応液に基材を浸して行う。電解メッキであれば基材の被メッキ面に通電することによってメッキ層を形成することが可能となる。
熱可塑性ポリイミド系樹脂は、イミド環構造を有する樹脂の総称であり、例えば、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ポリアミドイミド樹脂、熱可塑性ポリエステルイミド等が挙げられる。熱可塑性ポリイミド系樹脂は、低熱膨張性のものが好ましい。熱可塑性ポリイミド系樹脂は、通常、電気配線の絶縁膜として用いられている程度の絶縁性を有することが好ましく、体積抵抗率が1013Ωcm以上の絶縁性を有することが好ましい。
熱可塑性ポリイミド系樹脂及び熱可塑性ポリイミド系樹脂前駆体は、それぞれ単独でも、2種以上を混合して用いてもよく、熱可塑性ポリイミド系樹脂層と熱可塑性ポリイミド系樹脂前駆体を用いた樹脂層とを設けてもよい。また、異なる熱可塑性ポリイミド系樹脂からなる複数の層が形成されていてもよい。
(A)絶縁基板上に熱可塑性ポリイミド系樹脂を含有する溶液を塗布した後、脱溶剤処理を行って熱可塑性ポリイミド系樹脂からなる層を絶縁基板上に形成させる方法。
(B)絶縁基板上に熱可塑性ポリイミド系樹脂前駆体の溶液を塗布した後、脱溶剤及び脱水縮合反応のための熱処理を行って熱可塑性ポリイミド系樹脂からなる層を絶縁基板上に形成させる方法。
(C)絶縁基板上に熱可塑性ポリイミド系樹脂前駆体の溶液を塗布した後、脱溶剤及び脱水縮合反応のための熱処理を行って前記前駆体の一部を熱可塑性ポリイミド系樹脂に転化させて、熱可塑性ポリイミド系樹脂と熱可塑性ポリイミド系樹脂前駆体とからなる層を絶縁基板上に形成させる第一の工程、次いで、前記の層の上に、一次粒子径が200nm以下で、加熱することによって互いに融着する金属薄膜前駆体微粒子を含有する分散体を塗布し、加熱処理することによって、残りの前記前駆体を熱可塑性ポリイミド系樹脂に転化させる第二の工程からなる方法。
また、本発明では、熱可塑性ポリイミド系樹脂の代わりに、熱可塑性ポリイミド系樹脂に変換可能な熱可塑性ポリイミド系樹脂前駆体溶液を使用する(B)又は(C)の方法を採用することもできる。
(B)の方法によると、熱可塑性ポリイミド系樹脂前駆体溶液を塗布後、熱処理により溶剤が除去され、脱水縮合反応によりイミド閉環が行われる。この熱処理に関して、脱溶剤処理及びイミド閉環処理は同時に行ってもよいし、逐次的に行ってもよい。熱処理は低温から徐々に高温まで上昇させながら熱処理するのが望ましい。
複数のポリイミド前駆体を用いて多層構造を形成する場合、各ポリイミド系樹脂層間に十分な接着力を付与するためには、複数の前駆体溶液の多層塗工を行った後、イミド閉環反応温度以下での脱溶剤処理の後、前駆体のポリイミドへの加熱変換を一括して行うのが好ましい。
ここで、転化率とは、熱可塑性ポリイミド系樹脂層中のイミド結合を形成する縮合性官能基のうち、縮合している割合を表す指標である。すべての縮合性官能基が縮合し、イミド結合に転化された場合を転化率100%と定義する。通常、この転化率は、硬化処理後のイミド結合の量を赤外線吸収測定などの手法により測定することにより、見積もることが可能である。例えば、縮合によりイミド結合が得られる場合には、1780cm−1付近のイミド基の赤外線吸収ピークの相対強度を測定し、転化率100%のサンプルと比較することにより見積もることができる。
未転化の熱可塑性ポリイミド系樹脂前駆体を第二の工程において熱可塑性ポリイミド系樹脂に転化させる。積層体中に未転化の前駆体が残ると、吸水等により絶縁信頼性が低下しやすくなるので、熱可塑性ポリイミド系樹脂前駆体は100%転化させることが好ましい。
ここで、非熱可塑性ポリイミド系樹脂とは、イミド環を有する高分子であり、かつ、ガラス転移温度を有しないか、ガラス転移温度を有する場合であっても、ガラス転移温度において弾性率の大きな低下がなく、可塑化しない(溶融流動しない)樹脂を指す。この非熱可塑性ポリイミド系樹脂は、通常、電気配線の絶縁膜として用いられている程度の絶縁性を有することが好ましく、体積抵抗率が1013Ωcm以上の絶縁性を有することが好ましい。
非熱可塑性ポリイミド系樹脂前駆体の非熱可塑性ポリイミド系樹脂への転化は、熱処理における加熱温度と加熱時間を調整することでその転化率を調整することができ、その条件は用いる非熱可塑性ポリイミド系樹脂前駆体の種類に応じて適宜定めればよいが、通常、転化率70%以上100%未満の部分硬化膜を得る際には150℃〜250℃の温度域での加熱が好ましく、100%転化させる際には300〜400℃の温度域での加熱が好ましい。
非熱可塑性ポリイミド系樹脂又は非熱可塑性ポリイミド系樹脂前駆体溶液に用いられる溶媒には、通常、有機溶媒が用いられ、熱可塑性ポリイミド系樹脂と同様の溶媒を用いることができる。
接着層として熱可塑性ポリイミド系樹脂層、又は、部分硬化された非熱可塑性ポリイミド系樹脂層を有する絶縁基板上で、金属薄膜前駆体微粒子分散体を加熱処理する際に、加熱処理は、接着性向上の点から、接着層を構成する化合物の二次転移点(Tg)以上の温度で行うことが好ましい。Tg以上の温度で加熱処理を行うことによって接着性が向上する理由は必ずしも明確ではないが、接着層が二次転移を起すことで、金属薄膜前駆体微粒子が接着層との間で大きな接着面積をとることができるからであろうと考えられる。
金属薄膜前駆体微粒子の粒子径、金属薄膜の体積抵抗率、接着性・接着強度、及びイミド化転化率は以下の方法で測定する。
(1)金属薄膜前駆体微粒子の粒子径
カーボン蒸着された銅メッシュ上に、溶解・希釈した微粒子分散体を1滴たらし、減圧乾燥したサンプルを作成する。(株)日立製作所製透過型電子顕微鏡(JEM−4000FX)を用いて観察し、視野の中から、粒子径が比較的そろっている個所を3ヶ所選択し、被測定物の粒子径測定に最も適した倍率で撮影する。おのおのの写真から、一番多数存在すると思われる粒子を3点選択し、その直径をものさしで測り、倍率をかけて一次粒子径を算出する。これらの値の平均値を粒子径とする。
(2)金属薄膜と絶縁基板の抵抗率
金属薄膜の体積抵抗率は低抵抗率計「ロレスター(登録商標)」GP(三菱化学株式会社製)を用いて測定した。絶縁基板の抵抗率は、東亜ディーケーケー株式会社製極超絶縁計SM−10Eを用いて測定した。
(3)イミド化転化率
ポリアミック酸を塗布し、その一部を熱可塑性ポリイミド系樹脂に転化させる場合について、イミド化転化率の見積もり方法について説明する。ポリアミック酸加熱処理後において、表面の赤外吸収スペクトルを測定し、1780cm−1付近のイミド基ピーク強度(A1)とイミド化反応によって変化しない1500cm−1付近のピーク強度(B1)を計算し、これらからイミド基の相対強度C1=A1/B1を導出する。次に、比較試料として、350℃で4時間加熱処理を行い、100%イミド化転化を行った試料を準備し、1780cm−1及び1500cm−1のピーク強度(A0,B0)を測定し、相対強度C0=A0/B0を導出する。このときの相対強度C0を100とし、C1と比較することで、加熱処理によるイミド化転化率は、(100×C1/C0)%と計算して求める。
(金属薄膜前駆体微粒子及び分散体の調製)
無水酢酸銅(和光純薬工業株式会社製)8gに精製水70mlを加えた。25℃で攪拌しながらヒドラジン対酢酸銅のモル比が1.2になるように64質量%のヒドラジン抱水物2.6mlを加えて反応させ、粒子径20nmの酸化第一銅微粒子を得た。得られた酸化第一銅3gに対し、ポリエチレングリコール(数平均分子量200、アルドリッチ製)2gと、ジエチレングリコール7gを加え、超音波分散を施して酸化第一銅分散体を得た。
(金属薄膜の形成)
10cm角のガラス基板上に同サイズで切り出したポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製カプトンフィルム、膜厚50μm)を両面テープで貼り合わせた後、ミカサ株式会社製スピンコーター(1H−D7型)にセットした後、前述の酸化第一銅分散体を2mL滴下した後、600rpm×15秒の条件でスピンコートして塗布を行った。次に、この塗布膜を、ホットプレートで350℃×1hの条件で窒素フローさせながら350℃で加熱処理を行い、体積抵抗値6.2×10−6Ωcm、膜厚1.1μmの銅薄膜が得られた。
(銅メッキによる金属の厚つけ)
硫酸銅五水和物(和光純薬工業株式会社)80gと硫酸180gとを、精製水1リットルに溶解し、電解メッキ浴を作成した。このメッキ浴に、上記で得られた銅薄膜とポリイミドフィルムの積層体を浸し、室温にて、3A/dm2の電流密度で、電解銅メッキを施し、金属層の総厚み(酸化第一銅分散体から得られた銅薄膜+メッキで形成された銅膜)が5μmである、薄い銅薄膜層を有する、積層基板を完成させた。
(エッチング性の検討)
得られた積層基板を塩化第二鉄水溶液(関東化学)に室温で浸漬することでエッチングを行って銅層除去を行った後、精製水で洗浄・乾燥した後、銅層がついていた基板面の絶縁性を測定した所、絶縁性は1×1016Ωと高かった。
(ポリイミド溶液の合成)
3,3’−4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸ニ無水物と芳香族ジアミンとの重縮合反応によって得られる溶剤可溶性ポリイミドの樹脂濃度20wt%のNMP(N−メチル−2−ピロリドン)溶液(新日本理化株式会社製リカコートPN−20)をNMPを加えて10wt%溶液に希釈し、ポリイミド樹脂溶液を調製した。この熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度は270℃であった。
(接着層を形成した基板の作成)
10cm角のガラス基板上に同サイズで切り出したポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製カプトンフィルム、膜厚50μm)を両面テープで貼り合わせた後、ミカサ株式会社製スピンコーター(1H−D7型)にセットした。このポリイミドフィルム上に上記ポリイミド樹脂溶液を500rpm×5秒のプレスピンの後、2000rpm×10秒の条件でスピンコートを行った。スピンコート塗布した基板を、ホットプレート上で90℃×10分、120℃×10分、150℃×10分、180℃×10分、250℃×60分、300℃×60分の条件で加熱し、熱可塑性ポリイミド系樹脂を表面に有するポリイミド基板を得た。
(金属薄膜の形成)
上記ポリイミド基板を再びスピンコーターにセットし、実施例1と同一の酸化第一銅分散体を2mL滴下した後、600rpm×15秒の条件でスピンコートして塗布を行った。次に、この塗布膜を、ホットプレートで350℃×1hの条件で窒素フローさせながら上記ポリイミド膜のガラス転移温度(270℃)よりも高い温度である350℃で加熱処理を行い、体積抵抗値5.8×10−6Ωcm、膜厚1.1μmの銅薄膜が得られた。
(銅メッキによる金属の厚つけ及びエッチング性の検討)
実施例1と同様の方法で、電解銅メッキを施し、金属層の総厚み(酸化第一銅分散体から得られた銅薄膜+メッキで形成された銅膜)が5μmである、薄い銅薄膜層を有する、積層基板を完成させた。
(エッチング性の検討)
実施例1と同様にエッチング処理を行って絶縁性を測定した所、絶縁性は3×1015Ωと高かった。
Claims (10)
- (1)加熱処理によって互いに融着する、一次粒径が200nm以下の金属薄膜前駆体微粒子を含有する分散体を絶縁基板上に塗布し、加熱処理することによって金属薄膜を形成する工程と、(2)前記金属薄膜上に金属メッキを行って金属膜を形成する工程を含む積層基板の製造方法。
- 接着層を有する絶縁基板を用いることを特徴とする請求項1に記載の積層基板の製造方法。
- 接着層が、熱可塑性ポリイミド系樹脂からなることを特徴とする請求項2に記載の積層基板の製造方法。
- 接着層が、部分的に非熱可塑性ポリイミド系樹脂に転化した非熱可塑性ポリイミド系樹脂前駆体からなることを特徴とする請求項2に記載の積層基板の製造方法。
- 非熱可塑性ポリイミド系樹脂前駆体から非熱可塑性ポリイミド系樹脂への転化率を70%以上100%未満にすることを特徴とする請求項4に記載の積層基板の製造方法。
- 接着層を有する絶縁基板上に金属薄膜前駆体微粒子を含む分散体を塗布し、接着層を構成する化合物の二次転移点(Tg)以上の温度で加熱処理を行うことを特徴とする請求項3又は4に記載の積層基板の製造方法。
- 接着層を有する絶縁基板上に金属薄膜前駆体微粒子を含む分散体を塗布し、加熱処理を行うことによって金属薄膜を形成すると同時に、部分的に非熱可塑性ポリイミド系樹脂に転化した非熱可塑性ポリイミド系樹脂前駆体の転化率を100%にすることを特徴とする請求項4に記載の積層基板の製造方法。
- 金属薄膜前駆体微粒子が金属微粒子、金属酸化物微粒子及び金属水酸化物微粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の積層体の製造方法。
- 金属薄膜前駆体微粒子が酸化第一銅微粒子であることを特徴とする請求項8に記載の積層体の製造方法。
- 分散体が多価アルコール及び/又は直鎖状脂肪族ポリエーテル化合物を含むことを特徴とする請求項2に記載の積層体の製造方法。
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