JP2008195774A - ポリエステル成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】 結晶性が良好であり、かつ低い融点を有するポリエステル樹脂組成物を成形して成形品を提供する。
【解決手段】 ポリエステルとタルクとを含有するポリエステル樹脂組成物を成形してなる成形品であって、ポリエステルがジカルボン酸成分としてテレフタル酸を含有し、ジオール成分として1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールとを含有し、全ジオール成分の50モル%以上が1,6−ヘキサンジオールであり、融点が100〜150℃であり、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足し、タルクの平均粒径が3.0μm以下であるか、またはその比表面積が15m/g以上であり、タルクの含有量が0.1〜5.0質量%であるポリエステル樹脂組成物を成形してなる成形品。
b/a≧0.05mW/mg・℃ ・・・ (1)
【選択図】 なし

Description

本発明は、操業性が良好であり、低融点にも関わらず結晶性に優れたポリエステル樹脂組成物を成形してなる成形品に関するものである。
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、機械的特性、化学的安定性、透明性等に優れ、かつ、安価であるポリエステルであり、各種のシート、フィルム、容器等として幅広く用いられており、特に炭酸飲料、果汁飲料、液体調味料、食用油、酒、ワイン用等の中空容器(ボトル)用途の伸びが著しい。
近年、上記用途以外にも、リサイクル可能という観点から、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の他素材が使用されていた用途まで、ポリエステルが使われるようになってきている。
しかし、通常のPETは、これらの他素材に比べると融点が非常に高いため、他素材からPETに代替するには、成形条件を大幅に変えねばならないという問題があった。
そこで、これらの成形用ポリエステルには、種々の共重合成分を共重合したポリエステルを用いることが試みられている。例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステルは、耐熱性や耐衝撃性が良好であることから、成形用途においては幅広く用いられている。しかし、このような共重合ポリエステルは、PETとは異なり非晶性であるため、PETボトルのような延伸を行うことで強度やガスバリア性を高めることができないという問題があった。
上記問題を回避するには、共重合ポリエステルは、明確な結晶融点を示すことが望ましい。しかしながら、例えば比較的安価であり広く用いられる脂肪族酸であるアジピン酸を共重合した場合、ポリエステルの結晶性は良好であるが、ガラス転移温度が低くなることがある(例えば、特許文献1参照)。したがって、重合したポリエステルをストランド状に払い出してチップ化する際、ポリマーをガラス転移温度以下に冷却することが困難となり、ポリマーの固化が不足してしまうため、カッターブレードへのポリエステルの固着や、ストランド間の融着等が発生するなど、操業性に問題が生じる場合があった。
また、酸成分が芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ラクトンからなり、ジオール成分が脂肪族ジオール成分からなり、結晶性が良好なポリエステルも提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、この共重合ポリエステルは、融点が150〜200℃の範囲であり、他素材に比べるとまだ低融点領域であるとはいえず、成形条件を変えずに他素材からの置き換えができないものであった。
特開平10−298271号公報 特開平9−12693号公報
本発明は、結晶性が良好であり、かつ低い融点を有するポリエステル樹脂組成物を用いて成形品を提供しようとするものである。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、以下の構成を要旨とするものである。
ポリエステルとタルクとを含有するポリエステル樹脂組成物を成形してなる成形品であって、ポリエステルがジカルボン酸成分としてテレフタル酸を含有し、ジオール成分として1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールとを含有し、全ジオール成分の50モル%以上が1,6−ヘキサンジオールであり、融点が100〜150℃であり、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足し、タルクの平均粒径が3.0μm以下であるか、またはその比表面積が15m/g以上であり、タルクの含有量が0.1〜5.0質量%であるポリエステル樹脂組成物を成形してなる成形品。
b/a≧0.05mW/mg・℃ ・・・ (1)
(aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。)
本発明では、融点が低く、かつ十分な結晶性を備えているポリエステル樹脂組成物を用いるため、低温での成形や延伸配向が可能であり、強度やガスバリア性が良好なポリエステル製成形品を得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、ポリエステルは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸(以下、TPAと略す。)を、またジオール成分として1,6−ヘキサンジオール(以下、HDと略す。)とエチレングリコール(以下、EGと略す。)とを主成分とすることが必要である。また、HDは、全ジオール成分に対し、50モル%以上含まれていることが必要であり、60〜95モル%含まれていることが好ましい。HDが50モル%未満の場合、融点が本発明で規定した範囲を超えるため好ましくない。また、HDやEG以外のジオール成分を主成分として用いると、融点やb/aが本発明で規定する範囲から外れるため好ましくない。
なお、ポリエステルには、その特性を損なわない範囲で、他の共重合成分を含有させてもよい。共重合成分の具体例としては、イソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ビフェニルジカルボン酸、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、ビスフェノールA又はビスフェノールSのエチレンオキシド付加体等が挙げられる。
本発明において、ポリエステルの融点は、100〜150℃であることが必要であり、110〜140℃であることが好ましい。融点が100℃未満の場合、熱安定性が悪いため好ましくない。一方、融点が150℃を超えると、成形温度を高くする必要があり、他素材との成形温度が異なるため、成形条件を変えねばならず好ましくない。
本発明で用いるポリエステルは、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線において、b/aが0.05mW/mg・℃以上であることが必要であり、0.06以上であることが好ましい。
上記b/aは、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線より求められる。図1に示したように、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
b/aは、降温時の結晶性を表す指標であり、b/aの値が高いと結晶化速度が速く、逆に0に近いほど、結晶化速度が遅いことを示している。b/aが0.05mW/mg・℃未満の場合、結晶化速度が遅いため、ポリエステルのチップ化や貯蔵・運搬、および乾燥工程においてもブロッキングが生じやすくなるといった問題が生じるため好ましくない。また成形時に、延伸ができず、成形品の強度が低く、あるいは、ガスバリア性が不十分となるため、好ましくない。
上記b/aは、ポリエステルの共重合組成や後述するタルクの含有量を調節することにより、本発明で規定する範囲に設定することができる。
本発明においてポリエステルは、極限粘度が0.5以上であることが好ましい。極限粘度が0.5未満のものでは、各種の物理的、機械的、化学的特性が劣るため好ましくない。一方、極限粘度が高すぎても溶融粘度が高くなるため、押出が困難になったり、また溶融粘度を下げるべく成形温度を上げねばならず、実用上1.5以下であることが好ましい。
本発明においてポリエステル樹脂組成物は、タルクを含有することが必要である。タルクは、ポリエステル樹脂組成物中において、ポリエステルの結晶核剤として作用する。
本発明においてタルクは、平均粒径が3.0μm以下であるか、または比表面積が15m/g以上であることが必要である。タルクの平均粒径が3.0μm以下であるか、または比表面積が15m/g以上であることを満足していない場合、結晶核剤としての機能に乏しく、ポリエステルの結晶性が不十分となり、本発明にて規定したb/aを0.05mW/mg・℃以上とすることが出来ない。
また、タルクの含有量は0.1〜5.0質量%であることが必要である。含有量が0.1質量%未満である場合も結晶性が不足し、b/aを0.05mW/mg・℃以上とすることが出来ない。含有量が5.0質量%を超えると、タルクがポリマー中で凝集粒子となりやすく、成形品の表面が粗くなるか、あるいは結晶性改善の効果が飽和してしまい、コストが高くなるばかりで好ましくない。
本発明においてポリエステル樹脂組成物には、目的を損なわない範囲内で、リン酸エステル化合物やヒンダードフェノール化合物のような安定剤、コバルト化合物、蛍光増白剤、染料のような色調改良剤、可塑剤、顔料、制電剤、難燃剤などの各種添加剤を1種類または2種類以上含有してもよい。
ポリエステル樹脂組成物は、通常の方法により製造することが出来る。すなわち、テレフタル酸とジオール成分とをエステル化反応またはエステル交換反応させ、重縮合反応を行って所定のポリエステルを製造する。具体的には、重縮合反応は通常0.01〜10hPa程度の減圧下、220〜280℃の温度域で、所定の極限粘度のものが得られるまで行われる。
この重縮合反応は、触媒存在下で行われ、触媒としては従来一般に用いられているアンチモン、ゲルマニウム、スズ、チタン、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マンガンおよびコバルト等の金属化合物のほか、スルホサリチル酸、o−スルホ安息香酸無水物等の有機スルホン酸化合物が用いられる。触媒の添加量としては、ポリエステルの繰り返し単位1molに対し、通常0.1×10−4〜100×10−4mol、好ましくは0.5×10−4〜50×10−4mol、最適には1×10−4〜10×10−4molが適当である。
タルクや各種添加剤は、粉体またはジオールスラリー等の形態で、ポリエステルを製造する際の任意の段階で添加すればよい。例えば、エステル化またはエステル交換反応時に添加してもよいし、重縮合反応の段階で添加してもよい。
上記重縮合反応において、ポリエステルが所定の極限粘度に到達したら反応を終了し、ポリエステル樹脂組成物をストランド状に払い出して、冷却カットすることによりチップ化する。
本発明の成形品は、上記ポリエステル樹脂組成物を、射出成形あるいは押出成形により一段で成形したり、または射出成形あるいは押出成形により得られたプリフォームを延伸ブロー成形することで製造することができる。成形時の成形温度、具体的には、成形機のシリンダー各部及びノズルの温度は、140〜190℃の範囲とするのが適当である。
次に、実施例をあげて本発明を具体的に説明する。なお、特性値等の測定、評価方法は、次の通りである。
(a)極限粘度[η]
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、試料濃度0.5質量%、温度20℃の条件下で常法に基づき測定した。
(b)タルクの平均粒径
島津社製粒度分布測定装置[SALD−2000]を用いて、エチレングリコール中のタルクの平均粒径を測定した。
(c)タルクの比表面積
BET法による比表面積の値とした。
(d)融点、b/a
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計Diamond DSCを用いて、窒素気流中、温度範囲−20℃〜250℃、昇温(降温)速度20℃/minで測定し、得られたDSC曲線より、融点とb/aを求めた。
(e)ポリエステル組成
ポリエステルを重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比 1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA−400型NMR装置にて1H−NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から求めた。
(f)操業性
(f−1)チップ化
重合したポリエステル樹脂組成物をAUTOMATIK社製USG−600型カッターでチップ化する際、フィードローラーまたはカッターブレードへのポリエステルの巻き付きやストランド間の密着による連チップの発生等により、カッターの運転を中断した場合を×、融着等の問題は生じながらも、カッターの運転を中断することなくチップ化できた場合を○、融着による問題が生じることなくチップ化できた場合を◎とし、○および◎を合格とした。
(f−2)チップのブロッキング
チップの貯蔵・運搬および乾燥工程で、手で触れても崩れないブロック状物や壁面への融着物が生じた場合を×、ブロック状の塊や壁面への付着物があるものの、手で触れたり、ハンマー等により壁面へ衝撃を加えることによりそれらが解消される程度である場合を○、塊状物や壁面への融着がまったく発生しなかった場合を◎とし、○および◎を合格とした。
(g)中空容器の耐衝撃性
乾燥したポリエステル樹脂組成物を押し出し温度170℃、金型温度20℃、冷却時間10秒の条件で、射出成形機(日精エーエスビー社製 ASB−50HT)を用いて、プリフォームを成形し、次いで、このプリフォームを、80℃の雰囲気下、ブロー圧力2MPaで延伸ブロー成形し、中空容器を作成した。
得られた中空容器にイオン交換水1000mlを入れて、23℃、65%RHの条件で一日放置し、その後1mの高さからコンクリート面に落下させ、何回目で割れたかで示した。最高5回まで落下させた。5回落下させても破壊しない場合を○、2〜5回落下で破壊した場合を△、1回落下で破壊した場合を×とし、○を耐衝撃性良好で合格とした。
実施例1
PETオリゴマーの存在するエステル化反応缶に、TPAとEG(モル比1/1.6)のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で反応させ、滞留時間を8時間として、エステル化反応率95%のPETオリゴマーを連続的に得た。
このPETオリゴマー40kgを重縮合反応缶に移送し、HD28kgを重縮合反応缶に投入し、温度240℃、常圧下で1時間攪拌した。ついで、平均粒径1.0μm、比表面積35m/gのタルクを10質量%EGスラリーとして4.0kg、重縮合触媒としてテトラブチルチタネートを4質量%EG液として1.0kg重縮合反応缶に投入した後、反応器内の圧力を徐々に減じ、70分後に1.2hPa以下にした。この条件下で撹拌しながら重縮合反応を約3時間行い、常法によりストランド状に払出し、チップ化した。
得られたポリエステル樹脂組成物チップを乾燥後、押し出し温度150℃、金型温度20℃、冷却時間10秒の条件で、射出成形機(日精エーエスビー社製 ASB−50HT)を用いて、プリフォームを成形し、次いで、このプリフォームを延伸ブロー成形し、成形品として中空容器を作成した。
実施例2
タルクの投入量を変更したこと以外は実施例1と同様にして実施した。
実施例3
HDの投入量を変更したこと以外は実施例1と同様にして実施した。
実施例4
タルクを平均粒径3.2μm、比表面積25m/gのタルクに変更したこと以外は実施例1と同様にして実施した。
実施例5
タルクを平均粒径1.0μm、比表面積10m/gのタルクに変更したこと以外は実施例1と同様にして実施した。
比較例1
タルクを添加しないこと以外は実施例1と同様にして実施した。
比較例2
HDの投入量を5kgに変更したこと以外は実施例1と同様にして実施した。
比較例3
重縮合反応缶へのPETオリゴマーの投入量を24kgへ変更し、イソフタル酸(IPA)を15kg、EGを10kg投入したこと以外は実施例1と同様にして実施した。
比較例4
タルクを平均粒径4.0μm、比表面積10.5m/gのタルクに変更したこと以外は実施例1と同様にして実施した。
比較例5
タルクを平均粒径1.4μm、比表面積300m/gのシリカに変更したこと以外は実施例1と同様にして実施した。
得られたポリエステル樹脂組成物について組成、特性、操業性を、また成形品について耐衝撃性を表1に示す。
実施例1〜4により得られたポリエステル樹脂組成物については、チップ化工程での操業性に優れ、それより得られた中空容器は耐衝撃性やヘーズも良好であったが、比較例では、以下の問題があった。
比較例1では、タルクを含有していないため結晶性が低く、ブロッキングが起こり、また、成形時の延伸が不十分となり、耐衝撃性が低かった。比較例2では、HDが少ないため融点が220℃と高く、170℃の成形温度では成形ができなかった。比較例3では、TPAが少なかったため融点がDSCでは確認できず、結晶性を有しておらず、チップ化が不可能であった。比較例4では、タルクの平均粒径が大きく、結晶性が低いため、ブロッキングが起こり、また、成形時の配向が不十分で、耐衝撃性が低かった。比較例5では、タルクのかわりにシリカを使用したため、結晶性が低く、ブロッキングが起こり、また、成形時の延伸が不十分となり、耐衝撃性が低かった。
本発明におけるDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線の一例である。

Claims (1)

  1. ポリエステルとタルクとを含有するポリエステル樹脂組成物を成形してなる成形品であって、ポリエステルがジカルボン酸成分としてテレフタル酸を含有し、ジオール成分として1,6−ヘキサンジオールとエチレングリコールとを含有し、全ジオール成分の50モル%以上が1,6−ヘキサンジオールであり、融点が100〜150℃であり、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足し、タルクの平均粒径が3.0μm以下であるか、またはその比表面積が15m/g以上であり、タルクの含有量が0.1〜5.0質量%であるポリエステル樹脂組成物を成形してなる成形品。
    b/a≧0.05mW/mg・℃ ・・・ (1)
    (aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。)
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