JP2010018672A - ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 低融点にも関わらず結晶性に優れ、低温での製膜や製膜後の延伸配向が可能であり、操業性よく生産できるポリエステルで構成され、強度やガスバリア性が良好なポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 テレフタル酸と脂肪族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオールを主成分とするジオール成分とを含んだポリエステルからなるフィルムであって、前記ポリエステルにおいて、テレフタル酸の含有量が70モル%以上、1,6−ヘキサンジオールの含有量が80モル%以上、融点が100〜150℃、結晶核剤の含有量が0.01〜5.0質量%であり、かつ、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が特定の式を満足するポリエステルフィルム。結晶核剤は、平均粒径3.0μm以下、もしくは比表面積15m/g以上の無機系微粒子が好ましい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、1,6−ヘキサンジオールを多く含有し、低融点にも関わらず結晶性に優れたポリエステルからなるフィルムに関するものである。
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)は、機械的特性、化学的安定性、透明性等に優れ、かつ安価であり、各種のシート、フィルム、容器等として幅広く用いられている。また、リサイクル可能という観点から、これまでポリエチレンやポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の他素材が使用されていた用途まで、ポリエステルが使われるようになってきている。
しかし、通常のPETは、融点が非常に高いため、上記のような他素材からの代替には、フィルムの場合、製膜条件を大幅に変えねばならないという問題があった。
そこで、他素材からの代替用として、種々の成分を共重合したポリエステルを用いることが試みられている。例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステルは、耐熱性や耐衝撃性が良好であることから、成型用途においては幅広く用いられている。しかし、このような共重合ポリエステルは、PETとは異なり、非晶性のポリエステルであるため、PETフィルムのような延伸を行うことが困難で、その結果、強度やガスバリア性を高めることができないという問題がある。
上記の問題を回避するために、共重合ポリエステルは明確な結晶融点を有することが望ましい。しかしながら、例えば比較的安価で広く用いられる脂肪族酸であるアジピン酸を共重合した場合、ポリエステルの結晶性は良好であるが、ガラス転移温度が低いので、重合したポリエステルをストランド状に払い出してチップ化する際、ポリマーをガラス転移温度以下に冷却することが困難でポリマーの固化が不十分となるため、カッターブレードへのポリエステルの固着や、ストランド間の融着等が発生するなど、操業性に問題が生じる場合があった。
また、例えば特許文献1には、酸成分が芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸、ジオール成分が脂肪族ジオール成分からなり、融点が100〜190℃の範囲である共重合ポリエステルが提案されている。
しかし、この共重合ポリエステルは、融点こそ100〜190℃の範囲にあるが、結晶性が十分ではないため、例えばフィルムにして延伸する場合、延伸が不十分となり、得られるフィルムの強度やガスバリア性が不足するという問題がある。
特開平10−298271号公報
本発明は、上記の問題を解決し、低融点にも関わらず結晶性に優れ、低温での製膜や製膜後の延伸配向が可能であり、操業性よく生産できるポリエステルで構成され、強度やガスバリア性が良好なポリエステルフィルムを提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、次の構成を要旨とするものである。
(イ)テレフタル酸と脂肪族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオールを主成分とするジオール成分とを含んだポリエステルからなるフィルムであって、前記ポリエステルにおいて、テレフタル酸の含有量が70モル%以上、1,6−ヘキサンジオールの含有量が80モル%以上、融点が100〜150℃、結晶核剤の含有量が0.01〜5.0質量%であり、かつ、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足していることを特徴とするポリエステルフィルム。
b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
(ロ)結晶核剤が、平均粒径3.0μm以下、もしくは比表面積15m/g以上の無機系微粒子である上記(イ)記載のポリエステルフィルム。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、低融点にも関わらず結晶性に優れているため、低温での製膜や、製膜後の延伸配向が可能であり、そのため、本発明のポリエステルフィルムは、強度やガスバリア性が良好なものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリエステルフィルムは、特定のジカルボン酸成分とジオール成分からなるポリエステルによって構成されるものである。
本発明におけるジカルボン酸成分としては、テレフタル酸と脂肪族ジカルボン酸を主成分とすることが必要であり、テレフタル酸と脂肪族ジカルボン酸の含有量の総和が、全酸成分量に対し、75モル%以上であることが好ましい。
また、上記テレフタル酸(以下、TPAと略記する。)の含有量は、全酸成分量に対して70モル%以上を占めるものであることが必要であり、80モル%以上であることが好ましい。TPAの含有量が70モル%未満であると、得られるポリエステルの融点が本発明の範囲外のものとなるため好ましくない。
次に、脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等に例示される飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等に例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸又はこれらのエステル形成性誘導体等を使用することができる。
また、本発明におけるポリエステルは、酸成分として、得られるポリエステルの特性を損なわない範囲で上記以外の他のカルボン酸を含有してもよく、例えば、TPA以外の他の芳香族ジカルボン酸、ジカルボン酸以外の多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、及びそれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4、4’−ビフェニルジカルボン酸等が例示でき、これらのエステル形成性誘導体も挙げられる。
また、ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、及びこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、ヒドロキシ酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、及びこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
さらに、多価カルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物等が挙げられる。
次に、本発明におけるポリエステルのジオール成分は、1,6−ヘキサンジオール(以下、HDと略記する。)を主成分とするものである。このジオール成分において、HDは80モル%以上であることが好ましく、中でも90〜100モル%であることが特に好ましい。HDが80モル%未満の場合、得られるポリエステルが前記(1)式を満足しないおそれがあり、好ましくない。
また、本発明におけるポリエステルは、その特性を損なわない範囲で、HD以外の他のアルコール成分を共重合していてもよく、例えば、HD以外の脂肪族グリコール、芳香族グリコール、グリコール以外の多価アルコール、環状エステル等を使用できる。
まず、HD以外の脂肪族グリコールとしては、例えば、エチレングリコール(以下、EGと略記する。)、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
芳香族グリコールとしては、例えば、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA、2,5−ナフタレンジオール、及びこれらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール等が挙げられる。
また、グリコール以外の多価アルコールとしては、例えば、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオール等が挙げられる。さらに、環状エステルとしては、例えば、ε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、β-メチル-β-プロピオラクトン、δ-バレロラクトン、グリコリド、ラクチド等が挙げられる。
本発明のフィルムを構成するポリエステルの融点は、100〜150℃であることが必要であり、105〜140℃であることが好ましく、110〜130℃であることがより好ましい。この融点が100℃未満になると、得られるポリエステル並びにフィルムの熱安定性が悪くなる。一方、この融点が150℃を超えると、得られるポリエステルをフィルムに製膜するに当たって製膜温度を高くする必要があり、従前使用されていた他素材と製膜温度が異なるようになるため、製膜条件を変更する必要が生じる。これは、従前使用されていた低融点の他素材から、本発明におけるポリエステルへの変換をスムーズに行うという点において好ましくない。
また、本発明におけるポリエステルは、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線において、前記(1)式のようにb/aが0.05(mW/mg・℃)以上であることが必要であり、0.06以上であることが好ましい。因みに、b/aについては、その値が大きいほどポリエステルは結晶性に優れるものとなるが、本発明の目的とする効果を奏するには、b/aを0.5以下とすることが好ましい。
上記したb/aは、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線より求められる。すなわち、図1に示すように、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
b/aは、降温時の結晶性を表す指標であり、b/aの値が高いと結晶化速度が速く、逆に0に近いほど、結晶化速度が遅いことを示している。b/aが0.05(mW/mg・℃)未満の場合、結晶化速度が遅いため、ポリエステルのチップ化や貯蔵・運搬、及び乾燥工程においてブロッキングが生じやすくなる。また、フィルム化する際に、延伸・熱処理工程における熱処理温度を高くするとフィルムの融解が生じ、製膜化ができなかったり、延伸ができないので、得られるフィルムの強度が低下したり、ガスバリア性が不十分になるという問題が生じる。
上記のb/aは、ポリエステルの共重合組成や結晶核剤の含有量を調節することにより、本発明で規定する範囲に設定することができる。
なお、本発明における融点とDSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線は、パーキンエルマー社製示差走査型熱量計(Diamond DSC)を用いて、窒素気流中、温度範囲−20℃〜250℃、昇温(降温)速度20℃/分で測定するものである。
本発明におけるポリエステルは、結晶核剤を0.01〜5.0質量%、好ましくは0.
05〜3.0質量%含有するものである。この結晶核剤としては、平均粒径3.0μm以
下もしくは比表面積15m/g以上の無機系微粒子であることが好ましい。
本発明におけるポリエステルは、所定量の結晶核剤を含有することによって結晶性に優れたものとなり、前記(1)式を満足することができるものである。結晶核剤の含有量が0.01質量%未満であるとポリマーの結晶性が不十分となり、(1)式を満足することができない。一方、5.0質量%を超えると、結晶核剤の含有量が多くなりすぎ、ポリエステルの加工性が悪化して製膜時の操業性が低下する。
本発明において使用できる結晶核剤の種類は、特に限定されるものではないが、タルク等の珪素酸化物を主成分とした無機系粒子が好ましい。結晶核剤、好ましくは無機微粒子が前記平均粒径3.0μm以下、もしくは比表面積15m/g以上を満足していない場合には、結晶核としての機能が乏しいのでポリエステルの結晶性が不十分となり、(1)式を満足することが困難となる。
また、本発明におけるポリエステルは、極限粘度が0.5以上であることが好ましい。極限粘度が0.5未満のものでは、各種の物理的、機械的、化学的特性が低下するとともに、製膜時の操業性が低下しやすい。一方、極限粘度が高すぎても、溶融粘度が高くなるため押出が困難になったり、溶融粘度を下げるべく製膜温度を上げたりしなければならないので、実用上は1.5以下であることが好ましい。
本発明におけるポリエステル中には、本発明の効果を損なわない範囲内で、リン酸エステル化合物やヒンダードフェノール化合物のような安定剤、コバルト化合物、蛍光増白剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような艶消し剤、可塑剤、顔料、制電剤、難燃剤、易染化剤等の各種添加剤を、1種類又は2種類以上添加してもよい。
上記したポリエステルは、低融点にも関わらず結晶性に優れているため、低温での製膜や、製膜後の延伸配向が可能であり、このポリエステルで構成された本発明のポリエステルフィルムは、強度やガスバリア性が良好なものである。
本発明のポリエステルフィルムは、未延伸のシート状のものでもよいし、一軸又は二軸に延伸された延伸フィルムであってもよいが、二軸延伸フィルムが好ましい。また、フィルムの好ましい厚さは用途によって異なるが、例えば二軸延伸フィルムの場合、1〜20μm、特に5〜15μmとするのが好ましい。
次に、本発明のポリエステルフィルムの製造方法について、一例を用いて説明する。
まず、フィルムの製造に使用するポリエステルについては、ジカルボン酸成分とジオール成分とをエステル化反応又はエステル交換反応させた後、重縮合反応を行うことにより、目的とするポリエステルを製造することができる。
具体的には、重縮合反応は、通常 0.01〜10hPa程度の減圧下、220〜280℃の温度で所定の極限粘度のポリエステルが得られるまで行う。また、重縮合反応は、触媒存在下で行われるが、触媒としては従来一般に用いられているアンチモン、ゲルマニウム、スズ、チタン、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マンガン及びコバルト等の金属化合物のほか、スルホサリチル酸、o-スルホ安息香酸無水物等の有機スルホン酸化合物を用いることができる。
また、結晶核剤や各種添加剤は、粉体又はジオールスラリー等の形態で、ポリエステルを製造する際の任意の段階で添加すればよい。例えば、エステル化又はエステル交換反応時に添加してもよいし、重縮合反応の段階で添加してもよい。
そして、重縮合反応においてポリエステルが所定の極限粘度に到達したら、ストランド状に払い出し、冷却、カットすることによりチップ化する。
上記で得られたポリエステルを用いてフィルムとする製膜法は、従来公知の任意の方法を用いることができる。例えば二軸延伸フィルムの場合、まず上記のポリエステルを乾燥した後、溶融押し出しして未延伸シートとし、次いで二軸に延伸し、さらに熱処理することにより得られる。二軸延伸は、縦、横逐次延伸あるいは同時二軸延伸のいずれでもよく、延伸倍率は特に限定されるものではないが、通常は縦、横それぞれ2.0〜5.0倍が適当である。あるいは、縦、横延伸後、縦、横方向のいずれかに再延伸してもよい。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
〔無機系微粒子〕
(a)平均粒径
島津社製粒度分布測定装置(SALD-2000)を用いて、EG中の試料の平均粒径の値を測定した。
(b)比表面積
BET法により測定した。
〔ポリエステル樹脂〕
(c)極限粘度〔η〕
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、試料濃度0.5質量%、温度20℃の条件下で常法に基づき測定した。
(d)融点、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線
前記の方法により測定した。
(e)ポリマー組成
ポリエステルを重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA-400型NMR装置にて 1H-NMRを測定し、得られたチャートの各共重合成分のプロトンのピークの積分強度から求めた。
(f)操業性
〔チップ化〕
ポリエステルをAUTOMATIK社製USG−600型カッターでチップ化する際、フィードローラー又はカッターブレードへのポリエステルの巻き付きやストランド間の融着により2つ以上のチップが融着したものの発生等によるチップ化工程への影響度で、以下のように評価した。なお、○、◎を合格とした。
×:カッターの運転を中断した。
△:融着等の問題が生じ、時折中断するもののチップ化できた。
○:融着等の問題は生じながらも、カッターの運転を中断することなくチップ化できた。
◎:融着による問題が生じることなくチップ化できた。
〔チップのブロッキング〕
チップの貯蔵・運搬及び乾燥工程でのチップの挙動により、以下のように評価した。なお、○、◎を合格とした。
×:崩れないブロック状の塊や壁面への融着物が生じた。
△:ブロック状の塊や壁面への付着物があり、ハンマー等で直接衝撃を加える等、ある程度の力により解消された。
○:ブロック状の塊や壁面への付着物があるものの、手で触れたり、ハンマー等により壁面へ衝撃を加えることによりそれらが解消される程度であった。
◎:ブロック状の塊や壁面への融着が全く発生しなかった。
〔フィルムの引張強度〕
ASTM−D882に準じて、幅10mm、長さ10cmの試験片を用いて測定を行った。なお、フィルムの機械方向(MD)及びその直角方向(TD)にそれぞれ各10枚の試験片を採取して測定し、以下のように評価した。なお、○を合格とした。
×:200Mpa未満
○:200MPa以上
実施例1
エステル化反応缶に、TPA37.4kg、アジピン酸3.6kg、HD47.2kg(モル比 1/1.6)、エステル化反応触媒としてヒドロキシモノブチルスズオキサイドを0.01kg投入し、温度250℃、圧力0.2Mpaの条件で3時間撹拌し、エステル化反応を行った後、重縮合反応缶に移送した。
次に、結晶核剤として平均粒径1.0μm、比表面積35m/gのタルクを0.6kg、重縮合触媒としてテトラブチルチタネートをポリエステルの酸成分1モルに対して8×10−4モルを重縮合反応缶に投入した後、反応器内の圧力を徐々に減じ、70分後に1.2hPa以下にした。この条件下で撹拌しながら重縮合反応を約3時間行い、常法によりストランド状に払出し、チップ化した。
さらに、得られたポリエステルを乾燥した後、押し出し機に供給して180℃で溶融し、T型口金よりシート状に押し出し、冷却固化させ、未延伸フィルムを得た。次いで、未延伸フィルムを70℃に予熱した後、90℃で縦、横方向に各々3.3倍延伸して厚さ12μmの二軸延伸フィルムを得た。
実施例2〜5、比較例1〜4
共重合成分の種類や共重合量、結晶核剤としてのタルクの種類や含有量を変更した以外は、実施例1と同様にして実施した。
実施例1〜5及び比較例1〜4で得られたポリエステルの特性値、チップ化時の操業性及びフィルム特性を併せて表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜5のポリエステルは、b/aが(1)式を満足し、結晶性が優れていたので、チップ化工程での操業性が良好で製膜性もよく、これらのポリエステルから得られたフィルムの強度は十分なものであった。
一方、比較例1〜4では、次のような問題があった。
まず、比較例1のポリエステルはタルクを含有していないため、比較例2のポリエステルはタルクの含有量が少ないため、いずれも結晶性が低く、チップ化工程でブロッキングが起こり、また、製膜時の延伸が不十分となり、得られたフィルムは強度が低いものであった。
次に、比較例3のポリエステルは、TPAの含有量が少なかったので融点が100℃未満と低く、また、結晶性も小さかったので、製膜することができなかった。
さらに、比較例4のポリエステルは、HDの含有量が少なかったので融点が210℃と高く、170℃の成形温度では製膜することができなかった。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルの、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線の一例を示すグラフである。

Claims (2)

  1. テレフタル酸と脂肪族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1,6−ヘキサンジオールを主成分とするジオール成分とを含んだポリエステルからなるフィルムであって、前記ポリエステルにおいて、テレフタル酸の含有量が70モル%以上、1,6−ヘキサンジオールの含有量が80モル%以上、融点が100〜150℃、結晶核剤の含有量が0.01〜5.0質量%であり、かつ、DSCより求めた降温結晶化を示すDSC曲線が下記式(1)を満足していることを特徴とするポリエステルフィルム。
    b/a≧0.05 (mW/mg・℃) ・・・ (1)
    なお、aは、降温結晶化を示すDSC曲線における傾きが最大である接線とベースラインとの交点の温度A1(℃)と、傾きが最小である接線とベースラインとの交点の温度A2(℃)との差(A1−A2)であり、bは、ピークトップ温度におけるベースラインの熱量B1(mW)とピークトップの熱量B2(mW)との差(B1−B2)を試料量(mg)で割った値である。
  2. 結晶核剤が、平均粒径3.0μm以下、もしくは比表面積15m/g以上の無機系微粒子である請求項1記載のポリエステルフィルム。
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